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特開2023-112653生分解性樹脂用可塑剤、生分解性樹脂組成物およびその成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112653
(43)【公開日】2023-08-14
(54)【発明の名称】生分解性樹脂用可塑剤、生分解性樹脂組成物およびその成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/12 20060101AFI20230804BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20230804BHJP
   C08G 63/50 20060101ALI20230804BHJP
   C08L 1/10 20060101ALI20230804BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20230804BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20230804BHJP
【FI】
C08L101/12
C08L67/02 ZBP
C08G63/50
C08L1/10
C08L67/00
C08L101/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022187249
(22)【出願日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2022014094
(32)【優先日】2022-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 知代
(72)【発明者】
【氏名】田尻 裕輔
【テーマコード(参考)】
4J002
4J029
4J200
【Fターム(参考)】
4J002AB021
4J002CF031
4J002CF032
4J002CF181
4J002EH096
4J002FD022
4J002FD026
4J002GA00
4J002GB00
4J002GG01
4J002GK01
4J029AA01
4J029AB02
4J029AB07
4J029AC04
4J029AD01
4J029AD02
4J029AD03
4J029AE15
4J029BA03
4J029BA08
4J029BF09
4J029CA04
4J029CA05
4J029CA06
4J029FA12
4J029HA01
4J029HB01
4J029JB131
4J029JF321
4J029KE03
4J029KE06
4J200AA04
4J200AA05
4J200AA06
4J200BA14
4J200BA15
4J200BA16
4J200BA20
4J200BA38
4J200DA01
4J200DA17
4J200DA18
4J200DA22
4J200EA03
4J200EA11
(57)【要約】
【課題】生分解性樹脂に対して優れた相溶性を有し、生分解性樹脂を十分に可塑化できる生分解性樹脂用可塑剤を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるポリエステルである生分解性樹脂用可塑剤(式中、B11およびB12は、それぞれ独立に、含酸素複素環を有するモノアルコールのアルコール残基である)。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるポリエステルである生分解性樹脂用可塑剤。
【化1】
(前記一般式(1)中、
11およびB12は、それぞれ独立に、含酸素複素環を有するモノアルコールのアルコール残基であり、
Aは、それぞれ独立に、炭素原子数2~12のアルキレンジカルボン酸残基又は炭素原子数6~18のアリールジカルボン酸残基であり、
Gは、炭素原子数2~12のアルキレングリコール残基又は炭素原子数4~12のオキシアルキレングリコール残基であり、
nは繰り返し数を表す。)
【請求項2】
前記含酸素複素環を有するモノアルコールのアルコール残基が、テトラヒドロフルフリルアルコール残基である請求項1に記載の生分解性樹脂用可塑剤。
【請求項3】
前記Aが、コハク酸残基、グルタル酸残基、アジピン酸残基、セバシン酸又はアゼライン酸残基である請求項1又は2に記載の生分解性樹脂用可塑剤。
【請求項4】
前記Gが、エチレングリコール残基、1,2-プロピレングリコール残基、1,3-プロパンジオール残基、1,2-ブタンジオール残基、1,3-ブタンジオール残基、2-メチル-1,3-プロパンジオール残基、ネオペンチルグリコール残基、ジエチレングリコール残基又はジプロピレングリコール残基である請求項1~3のいずれかに記載の生分解性樹脂用可塑剤。
【請求項5】
前記ポリエステルが、含酸素複素環を有するモノアルコール、炭素原子数4~14のアルキレンジカルボン酸および/又は炭素原子数8~20のアリールジカルボン酸、並びに炭素原子数2~12のアルキレングリコールおよび/又は炭素原子数2~12のオキシアルキレングリコールを反応原料とするポリエステルである請求項1~4のいずれかに記載の生分解性樹脂用可塑剤。
【請求項6】
前記ポリエステルの数平均分子量が300~3,000の範囲である請求項1~5のいずれかに記載の生分解性樹脂用可塑剤。
【請求項7】
セルロースエステル樹脂用可塑剤である請求項1~6のいずれかに記載の生分解性樹脂用可塑剤。
【請求項8】
請求項1~6のいずれかに記載の生分解性樹脂用可塑剤と生分解性樹脂とを含有する生分解性樹脂組成物であって、前記生分解性樹脂100質量部に対して、前記生分解性樹脂用可塑剤を1~100質量部の範囲で含有する生分解性樹脂組成物。
【請求項9】
前記生分解性樹脂が、セルロースエステル樹脂、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリヒドロキシ酪酸-ヒドロキシヘキサン酸、ポリヒドロキシ酪酸-ヒドロキシバリレート、ポリブチレンサクシネートアジペートおよびポリエチレンテレフタレートサクシネートからなる群から選択される1種以上である請求項8に記載の生分解性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の生分解性樹脂組成物の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性樹脂用可塑剤、生分解性樹脂組成物およびその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル樹脂(PVC)等の汎用プラスチックは幅広い用途で用いられており、このような汎用プラスチックは一般に可塑剤が添加されて柔軟にしてから用いられる。しかしながら、汎用プラスチックは分解されにくいため、近年の「持続可能性」重視の観点から、汎用プラスチックから生分解性樹脂に切り替える動きがでている。
【0003】
生分解性樹脂は汎用プラスチックに比べて一般に高極性であるため、従来の汎用プラスチック用可塑剤とは異なる、生分解性樹脂に適した可塑剤が求められている。このニーズに応えるべく、生分解性樹脂用の可塑剤が種々提案されている(例えば特許文献1-2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-218529号公報
【特許文献2】国際公開2014/061644号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1-2が開示する可塑剤を生分解性樹脂に多量に添加した場合、十分に相溶できずにブリードアウトしてしまう問題があった。このように特許文献1-2の可塑剤は生分解性樹脂に対する相溶性が不十分であるため、得られる可塑化効果にも限界があった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、生分解性樹脂に対して優れた相溶性を有し、生分解性樹脂を十分に可塑化できる生分解性樹脂用可塑剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記一般式(1)で表されるポリエステルである生分解性樹脂用可塑剤に関するものである。
【0008】
【化1】
(前記一般式(1)中、
11およびB12は、それぞれ独立に、含酸素複素環を有するモノアルコールのアルコール残基であり、
Aは、それぞれ独立に、炭素原子数2~12のアルキレンジカルボン酸残基又は炭素原子数6~18のアリールジカルボン酸残基であり、
Gは、炭素原子数2~12のアルキレングリコール残基又は炭素原子数4~12のオキシアルキレングリコール残基であり、
nは繰り返し数を表す。)
【発明の効果】
【0009】
本発明により、生分解性樹脂に対して優れた相溶性を有し、生分解性樹脂を十分に可塑化できる生分解性樹脂用可塑剤が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
また、以下に記載するアルコールおよびカルボン酸は、いずれも石油由来でもよく、バイオマス由来でもよい。
【0011】
[生分解性樹脂用可塑剤]
本発明の生分解性樹脂用可塑剤は、下記一般式(1)で表されるポリエステル(以下、「本発明のポリエステル」という場合がある)である。
【0012】
【化2】
(前記一般式(1)中、
11およびB12は、それぞれ独立に、含酸素複素環を有するモノアルコールのアルコール残基であり、
Aは、それぞれ独立に、炭素原子数2~12のアルキレンジカルボン酸残基又は炭素原子数6~18のアリールジカルボン酸残基であり、
Gは、炭素原子数2~12のアルキレングリコール残基又は炭素原子数4~12のオキシアルキレングリコール残基であり、
nは繰り返し数を表す。
括弧内の複数のAは互いに同じでも異なってもよい。
括弧内の複数のGは互いに同じでも異なってもよい。)
【0013】
本発明において「アルコール残基」とは、アルコールから水酸基を除いた残りの有機基を示すものである。
本発明において「グリコール残基」とは、グリコールから水酸基を除いた残りの有機基を示すものである。
本発明において「カルボン酸残基」とは、カルボン酸からカルボキシル基を除いた残りの有機基を示すものである。尚、カルボン酸残基の炭素原子数については、カルボキシル基中の炭素原子は含まないものとする。
【0014】
本発明の生分解性樹脂用可塑剤では、末端が含酸素複素環を有する化合物で封止されているため、一般に高極性な生分解性樹脂に対して優れた相溶性を示すことができる。
【0015】
11およびB12の含酸素複素環を有するモノアルコールは、含酸素複素環および1つの水酸基を有する化合物であり、例えば下記一般式(2)で表される化合物である。
【0016】
【化3】
(前記一般式(2)中、
Xは、エポキシ環、オキセタン環、テトラヒドロフラン環、オキサビシクロ環、フラン環又はピラン環である含酸素複素環であり、
Yは単結合又は2価の有機基であり、
Zは水酸基を除く置換基であり、
mは0以上の整数である。)
【0017】
Yの2価の有機基としては、好ましくは炭素原子数1~10のアルキレン基又は炭素原子数1~10のアルキレンオキシ基である。
【0018】
Yの炭素原子数1~10のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-へキシレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ノニレン基、n-デシレン基、n-ドデシレン基、イソプロピレン基、2-メチルプロピレン基、2-メチルへキシレン基、テトラメチルエチレン基等が挙げられる。
【0019】
Yの炭素原子数1~10のアルキレン基は、好ましくは炭素原子数1~6のアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数1~3のアルキレン基であり、さらに好ましくはメチレン基である。
【0020】
Yの炭素原子数1~10のアルキレンオキシ基は、例えば前記アルキレン基の中の1つ以上の-CH-が-O-に置換された基である。
Yの炭素原子数1~10のアルキレンオキシ基は、好ましくは炭素原子数1~8のアルキレンオキシ基であり、さらに好ましくはメチレンオキシ基、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、オキシトリメチレン基、ブチレンオキシ基、オキシテトラメチレン基、ペンチレンオキシ基、ヘプチレンオキシ基又はオクチレンオキシ基である。
【0021】
Yの2価の有機基が、炭素原子数1~10のアルキレン基又は炭素原子数1~10のアルキレンオキシ基である場合、これら2価の有機基は、-CH-の一部がカルボニル基(-C(=O)-)やフェニレン基に置き変わっていてもよい。
【0022】
Zの置換基は水酸基以外であれば特に限定されず、例えば炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数6~12のアリール基等が挙げられる。
【0023】
mの上限はXの含酸素複素環の置換可能数に対応する数字であり、例えばXがテトラヒドロフラン環であればmの上限は7となり、Xがフラン環であればmの上限は3となる。
【0024】
11およびB12の含酸素複素環を有するモノアルコールのアルコール残基としては、テトラヒドロフルフリルアルコール残基(テトラヒドロフラン-2-メタノール残基)、フルフリルアルコール残基、テトラヒドロピラン-2-メタノール残基、テトラヒドロ-4-ピラノール残基等が挙げられる。
これらのなかでもサステナビリティの観点から、植物由来の成分であるテトラヒドロフルフリルアルコール残基が好ましい。
【0025】
Aの炭素原子数2~12の脂肪族ジカルボン酸残基の脂肪鎖は、直鎖でも分岐状でもよく、脂環構造および/又はエーテル結合(-O-)を含んでもよい。
【0026】
Aの炭素原子数2~12の脂肪族ジカルボン酸残基としては、例えばコハク酸残基、グルタル酸残基、アジピン酸残基、マレイン酸残基、ピメリン酸残基、スベリン酸残基、セバシン酸残基、アゼライン酸残基、シクロヘキサンジカルボン酸残基等が挙げられる。
【0027】
Aの炭素原子数6~18のアリールジカルボン酸残基としては、例えば、フタル酸残基、テレフタル酸残基、イソフタル酸残基、1,4-ナフタレンジカルボン酸残基、2,3-ナフタレンジカルボン酸残基、2,6-ナフタレンジカルボン酸残基、2,7-ナフタレンジカルボン酸残基、1,8-ナフタレンジカルボン酸残基等が挙げられる。
【0028】
Aは、好ましくは炭素原子数2~12の脂肪族ジカルボン酸残基であり、より好ましくは炭素原子数2~8の脂肪族ジカルボン酸残基であり、さらに好ましくはコハク酸残基、グルタル酸残基、アジピン酸残基、セバシン酸残基又はアゼライン酸残基であり、最も好ましくはコハク酸残基、グルタル酸残基又はアジピン酸残基である。
【0029】
Gの炭素原子数2~12のアルキレングリコール残基としては、例えばエチレングリコール残基、1,2-プロピレングリコール残基、1,3-プロパンジオール残基、1,2-ブタンジオール残基、1,3-ブタンジオール残基、2-メチル-1,3-プロパンジオール残基、1,4-ブタンジオール残基、1,5-ペンタンジオール残基、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)残基、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール(3,3-ジメチロ-ルペンタン)残基、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(3,3-ジメチロールヘプタン)残基、3-メチル-1,5-ペンタンジオール残基、1,6-ヘキサンジオール残基、2,2,4-トリメチル1,3-ペンタンジオール残基、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール残基、2-メチル-1,8-オクタンジオール残基、1,9-ノナンジオール残基、1,10-デカンジオール残基、1,12-ドデカンジオール残基等が挙げられる。
【0030】
Gの炭素原子数2~12のアルキレングリコール残基の脂肪鎖は、脂環構造を含んでもよく、当該脂環構造を含む炭素原子数2~12の脂肪族ジオール残基としては、例えば1,3-シクロペンタンジオール残基、1,2-シクロヘキサンジオール残基、1,3-シクロヘキサンジオール残基、1,4-シクロヘキサンジオール残基、1,2-シクロヘキサンジメタノール残基、1,4-シクロヘキサンジメタノール残基等が挙げられる。
【0031】
Gの炭素原子数2~12のアルキレングリコール残基は、好ましくは炭素原子数2~6のアルキレングリコール残基であり、より好ましくはエチレングリコール残基、1,2-プロピレングリコール残基、1,3-プロパンジオール残基、1,2-ブタンジオール残基、1,3-ブタンジオール残基、2-メチル-1,3-プロパンジオール残基、ネオペンチルグリコール残基、ジエチレングリコール残基又はジプロピレングリコール残基である。
【0032】
Gの炭素原子数4~12のオキシアルキレングリコール残基は、アルキレングリコール残基のいずれかの1つ炭素炭素結合間にエーテル結合(-O-)が挿入された基であり、例えばジエチレングリコール残基、トリエチレングリコール残基、テトラエチレングリコール残基、ジプロピレングリコール残基、トリプロピレングリコール残基等が挙げられる。
【0033】
Gは、好ましくはエチレングリコール残基、1,2-プロピレングリコール残基、1,3-プロパンジオール残基、1,2-ブタンジオール残基、1,3-ブタンジオール残基、2-メチル-1,3-プロパンジオール残基、ネオペンチルグリコール残基、ジエチレングリコール残基又はジプロピレングリコール残基であり、より好ましくはエチレングリコール残基、ジエチレングリコール残基又は1,2-プロピレングリコール残基である。
【0034】
nの繰り返し数は、例えば0~20の範囲の整数である。
nの繰り返し数の平均値は、好ましくは0.2~10.0の範囲であり、より好ましくは0.3~5.0の範囲であり、より好ましくは0.5~3.0の範囲である。
nの繰り返し数の平均値は、本発明のポリエステルの数平均分子量から算出することができる。
【0035】
本発明のポリエステルの数平均分子量(Mn)は、例えば100~5,000の範囲であり、好ましくは300~3,000の範囲であり、より好ましくは350~2,000の範囲であり、さらに好ましくは400~980の範囲である。
上記数平均分子量(Mn)はゲルパーミエージョンクロマトグラフィー(GPC)測定に基づきポリスチレン換算した値であり、実施例に記載の方法により測定する。
【0036】
本発明のポリエステルの酸価は、例えば10mgKOH/g以下であり、好ましくは5mgKOH/g以下であり、より好ましくは3mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは1mgKOH/g以下である。
本発明のポリエステルの酸価の下限は特に限定されないが、例えば0mgKOH/gである。
上記ポリエステルの酸価は実施例に記載の方法により確認する。
【0037】
本発明のポリエステルの性状は、数平均分子量や組成などによって異なるが、通常、常温にて液体、固体、ペースト状などである。
【0038】
本発明のポリエステルは、前記一般式(1)を満たすポリエステルであればよく、例えば互いに構造が異なる2種以上のポリエステルを用いてもよい。
【0039】
本発明のポリエステルは、含酸素複素環を有するモノアルコール、アルキレンジカルボン酸および/又はアリールジカルボン酸、並びにアルキレングリコールおよび/又はオキシアルキレングリコールを含む反応原料を用いて得られる。ここで反応原料とは、本発明のポリエステルを構成する原料という意味であり、ポリエステルを構成しない溶媒や触媒を含まない意味である。
本発明のポリエステルの製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができ、後述する製造方法により製造することができる。
【0040】
本発明のポリエステルの製造に用いる含酸素複素環を有するモノアルコールは、B11およびB12の含酸素複素環を有するモノアルコールのアルコール残基に対応するモノアルコールであり、使用する含酸素複素環を有するモノアルコールは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のポリエステルの製造に用いるアルキレンジカルボン酸は、Aの炭素原子2~12のアルキレンジカルボン酸残基に対応するアルキレンジカルボン酸であり、使用するアルキレンジカルボン酸は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のポリエステルの製造に用いるアリールジカルボン酸は、Aの炭素原子数6~18のアリールジカルボン酸残基に対応するアリールジカルボン酸であり、使用するアリールジカルボン酸は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のポリエステルの製造に用いるアルキレングリコールは、Gの炭素原子数2~12のアルキレングリコール残基に対応するアルキレングリコールであり、使用するアルキレングリコールは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のポリエステルの製造に用いるオキシアルキレングリコールは、Gの炭素原子数4~12のオキシアルキレングリコール残基に対応するオキシアルキレングリコールであり、使用するオキシアルキレングリコールは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
本発明のポリエステルの製造に用いる含酸素複素環を有するモノアルコール、アルキレンジカルボン酸、アルキレングリコールおよびオキシアルキレングリコールは、いずれもその誘導体を用いることができる。
当該誘導体としては、例えばエステル化物、酸塩化物、無水物、環状エステル等が挙げられる。
【0042】
本発明のポリエステルは、例えば本発明のポリエステルの各残基を構成する含酸素複素環を有するモノアルコール、アルキレンジカルボン酸および/又はアリールジカルボン酸、並びにアルキレングリコールおよび/又はオキシアルキレングリコールを反応原料に含まれる水酸基の当量がカルボキシル基の当量よりも多くなる条件下で一括で反応させることによって製造できる。
本発明のポリエステルは、例えば本発明のポリエステルの各残基を構成するアルキレンジカルボン酸および/又はアリールジカルボン酸、並びにアルキレングリコールおよび/又はオキシアルキレングリコールを、反応原料に含まれるカルボキシル基の当量が水酸基の当量よりも多くなる条件下で反応させ、主鎖の末端にカルボキシル基を有するポリエステルを得た後、得られたポリエステルにさらに含酸素複素環を有するモノアルコールを反応させることによっても製造できる。
【0043】
本発明のポリエステルの製造において、前記反応原料の反応は、必要に応じてエステル化触媒の存在下で、例えば170~250℃の温度範囲内で10~25時間の範囲でエステル化反応させるとよい。
尚、エステル化反応の温度、時間などの条件は特に限定されず、適宜設定してよい。
【0044】
前記エステル化触媒としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタン系触媒;酢酸亜鉛等の亜鉛系触媒;オクチル酸錫、ジブチル錫オキサイド等のスズ系触媒;p-トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸系触媒などが挙げられる。
【0045】
前記エステル化触媒の使用量は、適宜設定すればよいが、通常、反応原料の全量100質量部に対して、0.0001~0.1質量部の範囲で使用する。
【0046】
[生分解性樹脂組成物]
本発明の生分解性樹脂組成物は、本発明の生分解性樹脂用可塑剤および生分解性樹脂を含有する。
本発明の生分解性樹脂用可塑剤は、ポリエステルの末端が含酸素複素環を有する化合物で封止されているため、一般に高極性な生分解性樹脂に対して優れた相溶性を示すことができる。また、本発明の生分解性樹脂用可塑剤は、可塑剤として一般に使用されるモノエステル化合物およびジエステル化合物と比べて長鎖であるため、不揮発性(生分解性樹脂中に留まる能力)にも優れる。
【0047】
本発明の生分解性樹脂組成物が含有する生分解性樹脂としては、セルロースエステル樹脂、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリエチレンテレフタレート-サクシネート(PETS)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンアジペート-テレフタレート(PBAT)、ポリエチレンアジペート-テレフタレート(PEAT)、ポリブチレンサクシネート-テレフタレート(PBST)、ポリエチレンサクシネート-テレフタレート(PEST)、ポリブチレンサクシネート-アジペート(PBSA)、ポリブチレンサクシネート-カーボネート(PEC)、ポリブチレンサクシネート-アジペート-テレフタレート(PBSAT)、ポリエチレンサクシネート-アジペート-テレフタレート(PESAT)、ポリテトラメチレンアジペート-テレフタレート(PTMAT)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、ポリヒドロキシ酪酸-ヒドロキシヘキサン酸(PHBH)、ポリヒドロキシ酪酸-ヒドロキシバリレート(PHBV)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリカプロラクトン-ブチレンサクシネート(PCLBS)等が挙げられる。
使用する生分解性樹脂は目的とする用途に応じて決定すればよく、上記生分解性樹脂を1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
生分解性樹脂は、好ましくはセルロースエステル樹脂、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリヒドロキシ酪酸-ヒドロキシヘキサン酸、ポリブチレンサクシネートアジペートおよびポリエチレンテレフタレートサクシネートからなる群から選択される1種以上であり、より好ましくはセルロースエステル樹脂である。
【0049】
セルロースエステル樹脂には、例えば、セルロースアセテート(CA)、セルロースジアセテート(DAC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースアセテートフタレート、ポリカプロラクトングラフト化セルロースアセテート等が挙げられる。これらの中でも、透明性、加工性、機械的特性(引張強度、曲げ強度、曲げ弾性等)が良好なことから、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等のアセチル化されたセルロースが好ましく、セルロースジアセテートが最も好ましい。
セルロースエステル樹脂は、1種単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0050】
セルロースエステル樹脂が、アセチル化されたセルロースの場合には、その重合度が100~400の範囲であることが好ましく、100~200の範囲であることがより好ましくい。また、セルロースエステル樹脂が、アセチル化されたセルロースの場合には、アセチル基の置換度の上限は3.0以下であることが好ましく、置換度2.7以下であることがより好ましく、置換度2.6以下の範囲であることがさらに好ましい。置換度の下限は1.0以上であることが好ましく、1.5以上であることが好ましく、2.0以上であることがさらに好ましい。
前記セルロースアセテートの重合度と置換度が上記範囲であれば、優れた機械的物性を有するフィルムを得ることができる。本発明では、所謂セルロースジアセテートを使用することがより好ましい。
【0051】
尚、「平均重合度」とは、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、「繊維学会誌」、第18巻第1号、105~120頁、1962年)に準拠して測定できる。具体的には、絶乾したセルロースエステル0.2gを精秤し、メチレンクロライド:エタノール=9:1(質量比)の混合溶媒100mlに溶解し、この溶液をオストワルド粘度計にて恒温水槽温度25℃で落下秒数を測定して、平均重合度を以下の〔式1〕により算出する。
平均重合度=[η]/K・・・〔式1〕
[η]=(lnηrel)/C
ηrel=T/T
=6×10-4
T:測定サンプルの落下時間(秒)
:溶剤の落下時間(秒)
C:サンプルの濃度(g/l)
【0052】
セルロースエステル樹脂は、市販品を用いてもよく、当該市販品としては、例えば、株式会社ダイセル製「L-20」(平均アセチル置換度2.41、平均重合度145)、「L-30」(平均アセチル置換度2.41、平均重合度160)、「L-50」(平均アセチル置換度2.41、平均重合度180)、「L-70」(平均アセチル置換度2.41、平均重合度190)等のセルロースジアセテート、株式会社ダイセル製「LT-35」(平均アセチル置換度2.87、平均重合度270)、「LT-105」(平均アセチル置換度2.87、平均重合度350)等のセルローストリアセテート、イーストマンケミカル製「CAP482-20」、「CAP141-20」等のセルロースアセテートプロピオネート、「CAB381-20」、「CAB171-15」等のセルロースアセテートブチレート、および「CA398-30」等のセルロースアセテート等が挙げられる。
【0053】
本発明の生分解性樹脂組成物における本発明の生分解性樹脂用可塑剤の含有量は、生分解性樹脂との相溶性等の観点から、生分解性樹脂100質量部に対して好ましくは1~100質量部の範囲であり、より好ましくは5~60質量部の範囲であり、より好ましくは10~50質量部の範囲であり、さらに好ましくは20~45質量部である。
【0054】
本発明の生分解性樹脂組成物における生分解性樹脂および本発明の生分解性樹脂用可塑剤の合計含有量は、例えば組成物中の固形分の80質量%以上、90質量%以上又は95質量%以上である。生分解性樹脂および本発明の生分解性樹脂用可塑剤の合計含有量の上限は特に限定されず、例えば100質量%以下、95質量%以下又は90質量%以下である。
【0055】
本発明の生分解性樹脂組成物は、生分解性樹脂と本発明の生分解性樹脂用可塑剤を含有すればよく、非生分解性樹脂、本発明の生分解性樹脂用可塑剤以外の可塑剤(その他可塑剤)、その他の添加剤等を含有してもよい。
【0056】
前記非生分解性樹脂としては、特に限定されず、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリサルファイド、ポリ塩化ビニル、変成ポリサルファイド、シリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリエステル、不飽和ポリエステル等が挙げられる。
【0057】
前記その他可塑剤としては、例えば、ジエチレングリコールジベンゾエート等の安息香酸エステル;フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジウンデシル(DUP)、フタル酸ジトリデシル(DTDP)等のフタル酸エステル;テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DOTP)等のテレフタル酸エステル;イソフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DOIP)等のイソフタル酸エステル;ピロメリット酸テトラ-2-エチルヘキシル(TOPM)等のピロメリット酸エステル;アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル(DOS)、セバシン酸ジイソノニル(DINS)等の脂肪族二塩基酸エステル;リン酸トリ-2-エチルヘキシル(TOP)、リン酸トリクレジル(TCP)等のリン酸エステル;ペンタエリスリトール等の多価アルコールのアルキルエステル;アジピン酸等の2塩基酸とグリコールとのポリエステル化によって合成された分子量800~4,000のポリエステル;エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化エステル;ヘキサヒドロフタル酸ジイソノニルエステル等の脂環式二塩基酸;ジカプリン酸1.4-ブタンジオール等の脂肪酸グリコールエステル;アセチルクエン酸トリエチル(ATEC)、クエン酸トリエチル(TEC)、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)、クエン酸トリブチル(TBC)等のクエン酸エステル;トリアセチン、ジアセチン等のグリセリンエステル;パラフィンワックスやn-パラフィンを塩素化した塩素化パラフィン;塩素化ステアリン酸エステル等の塩素化脂肪酸エステル;オレイン酸ブチル等の高級脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0058】
本発明の生分解性樹脂組成物に前記その他の可塑剤を用いる場合、当該その他の可塑剤の含有量としては、本発明の生分解性樹脂用可塑剤100質量部に対して例えば10~300質量部の範囲であり、好ましくは20~200質量部の範囲である。
【0059】
前記その他添加剤としては、例えば、難燃剤、安定剤、安定化助剤、着色剤、加工助剤、充填剤、酸化防止剤(老化防止剤)、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、架橋助剤等を例示することができる。
【0060】
[生分解性樹脂組成物の製造方法]
本発明の生分解性樹脂組成物の製造方法は特に限定されない。
例えば、生分解性樹脂、本発明の生分解性樹脂用可塑剤、上記その他添加剤を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダー、各種ニーダー等の溶融混練機を用いて溶融混練する方法により得ることができる。
【0061】
[生分解性樹脂組成物の成形品]
本発明の生分解性樹脂組成物は、汎用プラスチックに適用される各種成形方法により成形することができる。
上記成形方法としては例えば、圧縮成形(圧縮成形、積層成形、スタンパブル成形)、射出成形、押出成形や共押出成形(インフレ法やTダイ法によるフィルム成形、ラミネート成形、パイプ成形、電線/ケーブル成形、異形材の成形)、熱プレス成形、中空成形(各種ブロー成形)、カレンダー成形、固体成形(一軸延伸成形、二軸延伸成形、ロール圧延成形、延伸配向不織布成形、熱成形(真空成形、圧空成形)、塑性加工、粉末成形(回転成形)、各種不織布成形(乾式法、接着法、絡合法、スパンボンド法等)等が挙げられる。
射出成形、押出成形、圧縮成形又は熱プレス成形が好適に適用される。具体的な形状としては、シート、フィルム、容器への適用が好ましい。
【0062】
上記で得られた成形品に二次加工を施してもよい。当該二次加工としては、エンボス加工、塗装、接着、印刷、メタライジング(めっき等)、機械加工、表面処理(帯電防止処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、フォトクロミズム処理、物理蒸着、化学蒸着、コーティング等)等が挙げられる。
【0063】
本発明の生分解性樹脂組成物から得られる成形品は、生分解性樹脂で構成され分解可能であるため、環境負荷が小さい成形品である。
【0064】
本発明の生分解性樹脂組成物から得られる成形品は、液状物や粉粒物、固形物を包装するための包装用資材、農業用資材、建築資材等の幅広い用途に好適に用いられる。
具体的用途としては、射出成形品(例えば、生鮮食品のトレー、ファーストフードの容器、コーヒーカプセルの容器、カトラリー、野外レジャー製品等)、押出成形品(例えば、フィルム、シート、釣り糸、漁網、植生ネット、2次加工用シート、保水シート等)、中空成形品(ボトル等)等が挙げられる。
【0065】
用途は上記に限定されず、メンディングテープ、メガネフレーム、アグレット、農業用のフィルム、コーティング資材、肥料用コーティング材、育苗ポット、ラミネートフィルム、板、延伸シート、モノフィラメント、不織布、フラットヤーン、ステープル、捲縮繊維、筋付きテープ、スプリットヤーン、複合繊維、ブローボトル、ショッピングバッグ、ゴミ袋、コンポスト袋、化粧品容器、洗剤容器、漂白剤容器、ロープ、結束材、衛生用カバーストック材、保冷箱、クッション材フィルム、マルチフィラメント、合成紙、医療用として手術糸、縫合糸、人工骨、人工皮膚、マイクロカプセル、創傷被覆材等にも使用可能である。
【実施例0066】
以下、実施例と比較例とにより、本発明を具体的に説明する。
尚、本発明は下記実施例に限定されない。
【0067】
本願実施例において、酸価および水酸基価の値は、下記方法により評価した値である。
[酸価の測定方法]
JIS K0070-1992に準じた方法により測定した。
[水酸基価の測定方法]
JIS K0070-1992に準じた方法により測定した。
【0068】
本願実施例において、ポリエステルの数平均分子量は、GPC測定に基づきポリスチレン換算した値であり、測定条件は下記の通りである。
[GPC測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製高速GPC装置「HLC-8320GPC」
カラム:東ソー株式会社製「TSK GURDCOLUMN SuperHZ-L」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM-M」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM-M」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZ-2000」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZ-2000」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「EcoSEC Data Analysis バージョン1.07」
カラム温度:40℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.35mL/分
測定試料:試料7.5mgを10mlのテトラヒドロフランに溶解し、得られた溶液をマイクロフィルターでろ過したものを測定試料とした。
試料注入量:20μl
標準試料:前記「HLC-8320GPC」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0069】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-300」
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
東ソー株式会社製「F-288」
【0070】
(合成実施例1:ポリエステル(P1)の合成)
1リットル4つ口フラスコに、グリコール成分としてジエチレングリコール(以下「DEG」と略す)202g、ジカルボン酸成分としてコハク酸(以下「SuA」と略す)337g、アルコール成分としてテトラヒドロフルフリルアルコール(以下「THFA」と略す)213gおよび触媒であるテトライソプロピルチタネート(以下「TIPT」と略す)0.045gを仕込み、窒素導入管より窒素気流下、段階的に210℃まで昇温した。210℃で10~30時間縮合反応させ、酸価が1.0以下になった時点で反応生成物から減圧下150℃にて未反応成分を除去して、ポリエステル(P1)を得た。
得られたポリエステル(P1)は、常温で淡黄色液体であり、酸価0.85、水酸基価8であり、数平均分子量は660であった。
【0071】
(合成実施例2:ポリエステル(P2)の合成)
1リットル4つ口フラスコに、グリコール成分としてDEG138g、ジカルボン酸成分としてSuA307g、アルコール成分としてTHFA319gおよび触媒であるTIPT0.045gを仕込み、窒素導入管より窒素気流下、段階的に210℃まで昇温した。210℃で10~30時間縮合反応させ、酸価が1.0以下になった時点で反応生成物から減圧下150℃にて未反応成分を除去して、ポリエステル(P2)を得た。
得られたポリエステル(P2)は、常温で淡黄色液体であり、酸価0.75、水酸基価0であり、数平均分子量は480であった。
【0072】
(合成実施例3:ポリエステル(P3)の合成)
1リットル4つ口フラスコに、グリコール成分としてプロピレングリコール(以下「PG」と略す)99g、ジカルボン酸成分としてSuA307g、アルコール成分としてTHFA319gおよび触媒であるTIPT0.045gを仕込み、窒素導入管より窒素気流下、段階的に210℃まで昇温した。210℃で10~30時間縮合反応させ、酸価が1.0以下になった時点で反応生成物から減圧下150℃にて未反応成分を除去して、ポリエステル(P3)を得た。
得られたポリエステル(P3)は、常温で淡黄色液体であり、酸価0.65、水酸基価20であり、数平均分子量は400であった。
【0073】
(合成実施例4:ポリエステル(P4)の合成)
1リットル4つ口フラスコに、グリコール成分としてDEG138g、ジカルボン酸成分としてアジピン酸(以下「AA」と略す)380g、アルコール成分としてTHFA319gおよび触媒であるTIPT0.023gを仕込み、窒素導入管より窒素気流下、段階的に210℃まで昇温した。210℃で10~30時間縮合反応させ、酸価が1.0以下になった時点で反応生成物から減圧下150℃にて未反応成分を除去して、ポリエステル(P4)を得た。
得られたポリエステル(P4)は、常温で淡黄色液体であり、酸価0.77、水酸基価4であり、数平均分子量は490であった。
【0074】
(合成実施例5:ポリエステル(P5)の合成)
1リットル4つ口フラスコに、グリコール成分としてDEG138g、ジカルボン酸成分としてグルタル酸344g、アルコール成分として、THFA319gおよび触媒であるTIPT0.023gを仕込み、窒素導入管より窒素気流下、段階的に210℃まで昇温した。210℃で10~30時間縮合反応させ、酸価が1.0以下になった時点で反応生成物から減圧下150℃にて未反応成分を除去して、ポリエステル(P5)を得た。
得られたポリエステル(P5)は、常温で淡黄色液体であり、酸価0.76、水酸基価5であり、数平均分子量は460であった。
【0075】
(合成実施例6:ポリエステル(P6)の合成)
1リットル4つ口フラスコに、グリコール成分としてエチレングリコール(以下「EG」と略す)81g、ジカルボン酸成分としてAA380g、アルコール成分としてTHFA319gおよび触媒であるTIPT0.023gを仕込み、窒素導入管より窒素気流下、段階的に210℃まで昇温した。210℃で10~30時間縮合反応させ、酸価が1.0以下になった時点で反応生成物から減圧下150℃にて未反応成分を除去して、ポリエステル(P6)を得た。
得られたポリエステル(P6)は、常温で淡黄色液体であり、酸価0.60、水酸基価3であり、数平均分子量は450であった。
【0076】
(合成実施例7:ポリエステル(P7)の合成)
1リットル4つ口フラスコに、グリコール成分としてPG79g、ジカルボン酸成分としてAA342g、アルコール成分としてTHFA279gおよび触媒であるTIPT0.020gを仕込み、窒素導入管より窒素気流下、段階的に210℃まで昇温した。210℃で10~30時間縮合反応させ、酸価が1.0以下になった時点で反応生成物から減圧下150℃にて未反応成分を除去して、ポリエステル(P7)を得た。
得られたポリエステル(P7)は、常温で淡黄色液体であり、酸価0.80、水酸基価7であり、数平均分子量は440であった。
【0077】
(合成比較例1:ジエステル(D1’)の合成)
1リットル4つ口フラスコに、ジカルボン酸成分としてAA234g、アルコール成分として、ベンジルアルコール199gおよびメチルカルビトール221g、並びに触媒であるTIPT0.020gを仕込み、窒素導入管より窒素気流下、段階的に210℃まで昇温した。220℃で10~30時間縮合反応させ、酸価が1.0以下になった時点で反応生成物から減圧下150℃にて未反応成分を除去して、ジエステル(D1’)を得た。
得られたジエステル(D1’)は、常温で淡黄色液体であり、酸価0.80、水酸基価5であり、数平均分子量は330であった。
【0078】
(合成比較例2:ポリエステル(P1’)の合成)
2リットル4つ口フラスコに、グリコール成分としてEG217g、ジカルボン酸成分としてAA614g、モノアルコール成分としてブタノール125gおよび触媒としてTiPT0.057gを仕込み、窒素導入管より窒素気流下、攪拌しながら段階的に220℃まで昇温した。220℃で13時間縮合反応させ、酸価が1.0以下になった時点で反応生成物から減圧下200℃で未反応成分を除去して、ポリエステル(P1’)を得た。
得られたポリエステル(P1’)は常温で淡黄色液体であり、酸価0.30、水酸基価12であ、り、数平均分子量は1,280であった。
【0079】
(合成比較例3:ポリエステル(P2’)の合成)
2リットル4つ口フラスコに、グリコール成分としてEG83gおよびPG102g、ジカルボン酸成分としてAA574g、モノアルコール成分としてイソノニルアルコール482gおよび触媒としてTiPT0.062gを仕込み、窒素導入管より窒素気流下、攪拌しながら段階的に220℃まで昇温した。220℃で13時間縮合反応させ、酸価が1.0以下になった時点で反応生成物から減圧下200℃で未反応成分を除去して、ポリエステル(P2’)を得た。
得られたポリエステル(P2’)は透明淡黄色液体であり、酸価0.30、水酸基価9、数平均分子量は1,190であった。
【0080】
(実施例1:セルロース樹脂成型品の製造と評価)
酢酸セルロース樹脂(株式会社ダイセル製「L-50」)100質量部に、ポリエステル(P1)を40質量部、安定剤としてIRGANOX-1076を0.1質量部を配合し、70℃以上の温度で攪拌混合した。得られた組成物を小型溶融混練装置(ラボプラストミル)を使用して混練し、ホットプレス機を用いて厚さ3mmおよび60mm四方のプレス板を作製した。
得られたプレス板について以下の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0081】
(1)透明性
プレス板の表面を目視で確認し、以下の基準でプレス板の透明性を評価した。
プレス板表面に濁りおよび異物が確認できない :○
プレス板表面に濁りおよび/又は異物が確認できる:×
【0082】
(2)湿熱試験後の相溶性
プレス板を60℃、相対湿度90%の環境下(湿熱環境下)に120時間晒し、湿熱試験後のプレス板の状態を目視で確認し、以下の基準で可塑剤の相溶性を評価した。
プレス板表面に異物のブリードアウトが確認できない:○
プレス板表面に異物のブリードアウトが確認できる :×
【0083】
(3)揮発性(湿熱試験後減量)
上記(2)湿熱試験後の相溶性と同じ条件でプレス板について湿熱試験を実施し、湿熱試験24時間後のプレス板と120時間後のプレス板とで重量を比較し、(24時間後のプレス板の質量-120時間後のプレス板の質量)/湿熱試験24時間後のプレス板の計算をして、湿熱試験後のプレス板の減量を評価した。この値が低いほど、プレス板中の可塑剤の不揮発性に優れることになり好ましい。
【0084】
(4)組成物のメルトフローレイト(MFR)
プレス板の製造に用いた組成物について、組成物のMFRをJISK-7210:1999に準拠して、温度:220℃、荷重:10Kgで測定した。
【0085】
(実施例2~7および比較例1~5:セルロース樹脂成型品の製造と評価)
表1に示すポリエステルを表1に示す量で用いた他は実施例1と同様にしてプレス板を製造し、評価した。結果を表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
表中の「DAIFATTY-101」は市販の生分解性樹脂用可塑剤(大八化学株式会社製)であり、ポリエステルではなく二塩基酸エステル(ジエステル)である。また、表中において「-」は評価を実施していないことを意味する。
【0088】
表1の結果から、実施例のポリエステル可塑剤が、酢酸セルロース樹脂に対する高い相溶性を有し、且つ、十分な可塑化効果を示していることが分かる。一方、末端に含酸素複素環を有さない比較例1-5の可塑剤は、酢酸セルロース樹脂に対して十分な相溶性が得られていないことが分かる。また、エステル結合を2つしか有さないジエステルを用いた比較例1および3では、可塑剤の不揮発性が十分ではないことが読み取れる。
尚、実施例で使用した酢酸セルロース樹脂は、可塑剤の添加無しではMFRの測定が実施できないほど成形性に乏しい樹脂である。
【0089】
(実施例8:ポリ乳酸成型品の製造と評価)
ポリ乳酸(TotalEnergiesCorbion社製「Luminy LX175」)100質量部に、可塑剤の含有割合が10質量%となるようにポリエステル(P2)を11.1質量部、安定剤としてIRGANOX-1010を0.1質量部を配合し、70℃以上の温度で攪拌混合した。得られた組成物を小型溶融混練装置(ラボプラストミル)を使用して混練し、ホットプレス機を用いて厚さ3mmおよび60mm四方のプレス板を作製した。
得られたプレス板について以下の評価を実施した。結果を表2に示す。
【0090】
(5)透明性
プレス板の表面を目視で確認し、以下の基準でプレス板の透明性を評価した。
プレス板表面に濁りおよび異物が確認できない :○
プレス板表面に濁りおよび/又は異物が確認できる:×
【0091】
(6)湿熱試験後の相溶性
プレス板を85℃、相対湿度90%の環境下(湿熱環境下)に6時間晒し、湿熱試験後のプレス板の状態を目視で確認し、以下の基準で可塑剤の相溶性を評価した。
プレス板表面に異物のブリードアウトが確認できない:○
プレス板表面に異物のブリードアウトが確認できる :×
【0092】
(7)組成物のメルトフローレイト(MFR)
プレス板の製造に用いた組成物について、組成物のMFRをJISK-7210:1999に準拠して、温度:190℃、荷重:2.16Kgで測定した。
【0093】
(実施例9および比較例6:ポリ乳酸成型品の製造と評価)
表2に示すポリエステルを表2に示す量で用いた他は実施例8と同様にしてプレス板を製造し、評価した。結果を表2に示す。
尚、比較例6では可塑剤を添加していない。
【0094】
【表2】
【0095】
表2の結果から、実施例のポリエステル可塑剤が、酢酸セルロース樹脂だけでなくポリ乳酸に対しても高い相溶性を有し、且つ、十分な可塑化効果を示していることが分かる。