(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023112943
(43)【公開日】2023-08-15
(54)【発明の名称】剥離試験装置
(51)【国際特許分類】
G01N 19/04 20060101AFI20230807BHJP
【FI】
G01N19/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022014982
(22)【出願日】2022-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】金山 克幸
(57)【要約】
【課題】作業者による試験結果のばらつきがなく、一定の試験条件下で剥離試験を短時間で行うことが可能な剥離試験装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る剥離試験装置は、支持台と、支持台に回転可能に支持された状態で、巻回された粘着テープを保持するテープリールと、支持台に回転可能に支持された状態で、テープリールから引っ張り出された粘着テープを試験対象物に貼付して剥離する圧着ローラと、支持台に圧着ローラと同期回転可能に支持された状態で、圧着ローラを介して試験対象物に所定の荷重を加え、試験対象物から剥離された粘着テープを巻き取る荷重ローラとを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持台と、
前記支持台に回転可能に支持された状態で、巻回された粘着テープを保持するテープリールと、
前記支持台に回転可能に支持された状態で、前記テープリールから引っ張り出された前記粘着テープを試験対象物に貼付して剥離する圧着ローラと、
前記支持台に前記圧着ローラと同期回転可能に支持された状態で、前記圧着ローラを介して前記試験対象物に所定の荷重を加え、前記試験対象物から剥離された前記粘着テープを巻き取る荷重ローラとを備える剥離試験装置。
【請求項2】
前記圧着ローラの前方に設けられ、前記粘着テープを前記試験対象物から剥離する際の角度を調整する剥離角度調整部をさらに備える請求項1に記載の剥離試験装置。
【請求項3】
前記圧着ローラを、前記荷重ローラの直下の位置と前記荷重ローラの前方の位置との間で往復移動させる移動機構をさらに備える請求項1又は2に記載の剥離試験装置。
【請求項4】
前記剥離試験装置の移動方向に沿って延びるガイド部材と、
前記ガイド部材に嵌合される溝部を有するガイドステーをさらに備える請求項1から3のいずれか1項に記載の剥離試験装置。
【請求項5】
前記支持台の下部に設けられた本体部と、前記本体部に回転可能に取り付けられたボールとを有するキャスターをさらに備える請求項1から4のいずれか1項に記載の剥離試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離試験装置に関する。特に、基材に密着して貼り合わされた箔及び印刷等により印刷又は塗布された塗膜の密着性を評価するために、粘着テープの貼付及び剥離を一定の試験条件下によって短時間で行うことができる剥離試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材等に密着して貼り付けられた箔や印刷等の接着性、密着性を試験する場合がある。このような試験に用いられる装置が、例えば、特許文献1及び特許文献2に提案されている。
【0003】
特許文献1に開示された剥離試験機では、粘着面を外向きにしたテープがローラの外周に固定された状態で、一軸ステージが往復動作する。その結果、ローラの自重によってテープの貼付及び剥離が一定の条件で行われるため、作業者による試験結果のばらつきを抑制できる。
【0004】
一方、特許文献2に開示されたテープ剥離試験装置では、被検査体に粘着テープを貼付するときには、貼着ユニットを用いる。その後、被検査体から粘着テープを剥離する時には、テープ剥離ユニットを用いる。貼着ユニットは、粘着テープに押圧力を付与しつつ転動させて被検査体に粘着テープを貼り付けるテープ貼着ローラと、テープ貼着ローラを保持するテープホルダとを有する。
【0005】
テープ剥離ユニットは、被検査体に貼着された粘着テープを巻き取りつつ剥がすテープ剥離ローラと、テープ剥離ローラの軸線方向への移動を案内するガイド及び粘着テープの巻取り長さとテープ剥離ローラの移動距離とが同じになるように、テープ剥離ローラを転動させる転動手段とを有する。このテープ剥離試験装置においても、作業者による試験結果のばらつきを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-225518号公報
【特許文献2】特開2021-131328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された剥離試験機では、ローラ径及び一軸ステージの長さによって一度に剥離試験を行うことができる粘着テープの長さが制限される。そのため、例えば、複数箇所に配置された試験対象物や、ストライプ状の長い試験対象物を試験する場合には、
作業者が剥離試験機のローラに粘着テープを取り付けて剥離試験を実施し、被検査体から粘着テープを剥離する作業を何度も行う必要があり、多くの試験時間を必要とする。
【0008】
また、特許文献2に記載されたテープ剥離試験装置では、貼着ユニットで粘着テープを被検査体に貼付した後、粘着テープを剥離する際に、貼着ユニットからテープ剥離ユニットへの交換作業が必要になる。この交換作業に手間取ると、試験時間が長くなってしまう。
【0009】
そこで、本発明は、作業者による試験結果のばらつきがなく、一定の試験条件下で剥離試験を短時間で行うことが可能な剥離試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る剥離試験装置は、支持台と、支持台に回転可能に支持された状態で、巻回された粘着テープを保持するテープリールと、支持台に回転可能に支持された状態でテープリールから引っ張り出された粘着テープを試験対象物に貼付して剥離する圧着ローラと、支持台に圧着ローラと同期回転可能に支持された状態で、圧着ローラを介して試験対象物に所定の荷重を加え、試験対象物から剥離された粘着テープを巻き取る荷重ローラと、を備える。
【0011】
本発明に係る剥離試験装置は、圧着ローラの前方に設けられ、粘着テープを試験対象物から剥離する際の角度を調整する剥離角度調整部をさらに備えていてもよい。
【0012】
本発明に係る剥離試験装置は、圧着ローラを、荷重ローラの直下の位置と荷重ローラの前方の位置との間で往復移動させる移動機構をさらに備えていてもよい。
【0013】
本発明に係る剥離試験装置は、剥離試験装置の移動方向に沿って延びるガイド部材と、ガイド部材に嵌合される溝部を有するガイドステーと、をさらに備えていてもよい。
【0014】
本発明に係る剥離試験装置は、支持台に取り付けられ、作業者によって把持される把手をさらに備えていてもよい。
【0015】
本発明に係る剥離試験装置は、支持台の下部に設けられた本体部と、本体部に回転可能に取り付けられたボールと、を有するキャスターをさらに備えていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、作業者に関わらず一定の試験条件下で剥離試験を短時間で行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る剥離試験装置の斜視図である。
【
図2】(a)は支持台の上面図であり、(b)はその側面図である。
【
図3】(a)はテープリールの上面図であり、(b)はその側面図である。
【
図4】(a)は圧着ローラの上面図であり、(b)はその側面図である。
【
図5】(a)は荷重ローラの上面図であり、(b)はその側面図である。
【
図6】第1実施形態に係る剥離試験装置を用いた剥離試験方法の一例を説明するための側面図である。
【
図7】(a)は剥離試験の開始直後の剥離試験装置の状態を示す側面図であり、(b)はその終了後の剥離試験装置の状態を示す側面図である。
【
図8】箔材のレイアウトの一例を示す上面図である。
【
図9】箔材のレイアウトの他の一例を示す上面図である。
【
図11】第2実施形態に係る剥離試験装置の斜視図である。
【
図12】(a)は第2実施形態に係る剥離試験装置の上面図であり、(b)はその側面図である。
【
図13】第2実施形態に係る剥離試験装置の背面図である。
【
図14】第2実施形態に係る剥離試験装置の移動中の状態の一例を示す側面図である。
【
図15】第3実施形態に係る剥離試験装置の斜視図である。
【
図16】第3実施形態に係る剥離試験装置の側面図である。
【
図17】剥離角度調整部の変形例を示す側面図である。
【
図18】(a)は第4実施形態に係る剥離試験装置の上面図であり、(b)はその側面図である。
【
図19】(a)は、圧着ローラの移動後の状態を示す上面図であり、(b)は、その状態を示す側面図である。
【
図20】(a)は圧着ローラを移動前の位置に戻した状態を示す上面図であり、(b)はその状態を示す側面図である。
【
図21】(a)は粘着テープを剥離中の状態を示す上面図であり、(b)は、その状態を示す側面図である。
【
図22】第5実施形態に係る剥離試験装置の斜視図である。
【
図23】第6実施形態に係る剥離試験装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他の様々な実施形態が含まれる。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る剥離試験装置の斜視図である。
図1に示す剥離試験装置1は、支持台11と、テープリール12と、圧着ローラ13と、荷重ローラ14と、を備える。この剥離試験装置1では、テープリール12、圧着ローラ13及び荷重ローラ14は、支持台11に回転可能に支持される。また、テープリール12と圧着ローラ13との間で粘着テープ100の張力が生じるように、圧着ローラ13は、テープリール12に対して斜め下方向に配置される。また、荷重ローラ14は、圧着ローラ13の上部に配置される。荷重ローラ14の重量は、例えば、1kgである。この場合、1kgfの荷重(自重)が、荷重ローラ14から圧着ローラ13を介して試験対象物に加わる。
【0020】
図2(a)は、支持台11の上面図である。一方、
図2(b)は、支持台11の側面図である。
図2(a)及び
図2(b)に示すように、支持台11は、平板状の部材である。支持台11の側面には、軸穴111と、軸穴112と、長穴113とが形成される。軸穴111は、テープリール12を支持台11に回転可能に取り付けるための円形状の貫通穴である。軸穴112は、圧着ローラ13を支持台11に回転可能に取り付けるための円形状の貫通穴である。長穴113は、荷重ローラ14を支持台11に回転可能かつ鉛直方向に移動可能に取り付けるための楕円状の貫通穴である。
【0021】
図3(a)は、テープリール12の上面図である。一方、
図3(b)は、テープリール12の側面図である。
図3(a)及び
図3(b)に示すように、テープリール12は、本体部121及び軸芯122を有する。本体部121には、環状に巻回された粘着テープ100が取り付けられる。軸芯122は本体部121から突出している。軸芯122が支持台11の軸穴111に挿入されることによって、テープリール12は、軸芯122を中心にして回転可能となる。
【0022】
図4(a)は、圧着ローラ13の上面図である。一方、
図4(b)は、圧着ローラ13の側面図である。
図4(a)及び
図4(b)に示すように、圧着ローラ13は、ゴム層131と、鉄芯132と、軸芯133とを有する。ゴム層131は、鉄芯132を覆っている。ゴム層131には、テープリール12から引っ張り出された粘着テープ100が巻き付けられる。鉄芯132には、軸芯133が連結されている。軸芯133は、支持台11の軸穴112に挿入される。これにより、圧着ローラ13は、軸芯133を中心に回転可能となる。
【0023】
図5(a)は、荷重ローラ14の上面図である。一方、
図5(b)は、荷重ローラ14の側面図である。
図5(a)及び
図5(b)に示すように、荷重ローラ14は、本体部141及び軸芯142を有する。本体部141には、試験対象物から剥離された粘着テープ100が巻き取られる。軸芯142は、本体部141から突出している。軸芯142が支持台11の長穴113に挿入されることによって、荷重ローラ14は、軸芯142を中心にして圧着ローラ13と同期回転可能となる。また、荷重ローラ14は、本体部141における粘着テープ100の巻き取り量に応じて、長穴113に沿って、鉛直方向に昇降する。
【0024】
次に、
図6を参照して、上記のように構成された剥離試験装置1を用いた剥離試験方法について説明する。
【0025】
図6に示す剥離試験方法では、基材200に熱接着された箔材210が試験対象物である。基材200は、作業テーブル300の上面に設置された固定部310に固定される。
【0026】
箔材210の剥離試験を行う場合、まず、芯材110に巻き付けられた粘着テープ100が、テープリール12と圧着ローラ13との間で張力を有するようにテープリール12から引っ張り出される。このとき、粘着テープ100は、非粘着面101が外向きで粘着面102が内向きとなる状態で引っ張り出される。
【0027】
次に、作業者が、支持台11を
図6に示す移動方向X(圧着ローラ13に対して、テープリール12が位置する方向)に直線移動させると、テープリール12、圧着ローラ13、及び荷重ローラ14が、それぞれ回転する。テープリール12及び圧着ローラ13の回転によって、粘着テープ100が箔材210の表面に次々と貼付される。また、圧着ローラ13及び荷重ローラ14の回転によって、粘着テープ100が箔材210から剥離される。剥離された粘着テープ100は、圧着ローラ13と荷重ローラ14との間を通って、最終的に荷重ローラ14の外周部に巻き取られる。
【0028】
図7(a)は、剥離試験の開始直後の剥離試験装置1の状態を
図6とは反対側から見た側面図である。また、
図7(b)は、剥離試験の終了後の剥離試験装置1の状態を
図6とは反対側から見た側面図である。
【0029】
剥離試験の開始直後では、箔材210から剥離されて荷重ローラ14に巻き取られた粘着テープ100の巻き取り量が少ない。そのため、
図7(a)に示すように、荷重ローラ14の軸芯142は、支持台11に形成された長穴113の下部に位置する。その後、剥離試験が終了すると、荷重ローラ14における粘着テープ100の巻き取り量が増加する。そのため、
図7(b)に示すように、荷重ローラ14の軸芯142は、長穴113の下部から上部に移動する。このように、荷重ローラ14が、粘着テープ100の巻き取り量に応じて長穴113に沿って昇降することによって、粘着テープ100は、一定の力で箔材210に貼付されるとともに剥離される。
【0030】
ここで、
図8~
図10を参照して、箔材210について説明する。
【0031】
図8は、箔材210のレイアウトの一例を示す上面図である。
図8に示す基材200は、例えば、大判の印刷物である。基材200は、複数の印刷領域201で区切られている。各印刷領域201には、箔材210が、パッチ状に形成されている。箔材210は、例えば、偽造防止用のマークである。
【0032】
図9は、箔材210のレイアウトの他の一例を示す上面図である。
図9に示す基材200も、
図8と同様に複数の印刷領域201で区切られている。その一方で、箔材210は、複数の印刷領域201に跨ってストライプ状に形成されている。
【0033】
図10は、箔材210の構造を示す断面図である。
図10に示すように、箔材210は、接着剤層211、金属層212及び保護層213を積層した積層膜である。接着剤層211は、基材200の上面に熱接着される。金属層212は、接着剤層211上に形成される。金属層212には、光反射性を有する金属、例えば、アルミニウムが含まれている。保護層213は、例えば、透明樹脂を用いて金属層212上に形成される。なお、
図10に示す箔材210は、接着剤層211と金属層212との界面及び金属層212と保護層213との界面に凹凸構造を有し、この凹凸構造は回析格子として機能する。
【0034】
本実施形態に係る剥離試験装置1を用いて箔材210の剥離試験を行うと、保護層213と金属層212の一部が、粘着テープ100の粘着面102に付着して剥離される。その後、基材200上の箔材210に残った金属層212の画像に基づいて、剥離試験の合否が判定される。
【0035】
以上説明した本実施形態によれば、テープリール12で巻回された粘着テープ100を圧着ローラ13で引っ張り出して箔材210に貼付する際に、荷重ローラ14の自重が圧着ローラ13を介して箔材210に加えられる。そのため、作業者に関わらず一定の圧力条件下で粘着テープ100が箔材210に貼付される。また、粘着テープ100の貼付から荷重ローラ14により粘着テープ100の剥離及び巻き取りまで連続して行われる。そのため、試験時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0036】
(第2実施形態)
図11は、第2実施形態に係る剥離試験装置の斜視図である。ここでは、上述した第1実施形態と同じ構成要素には、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。本実施形態に係る剥離試験装置2は、上述した第1実施形態における剥離試験装置1の構成要素に加えて、把手15及びキャスター16をさらに備える。
【0037】
把手15は、支持台11の後面上部に取り付けられている。なお、支持台11における把手15の取り付け位置は、テープリール12、圧着ローラ13及び荷重ローラ14の回転を妨げなければ、特に制限されない。また、把手15の形状は、
図11に示すように作業者が把持しやすいL字型であることが望ましい。ただし、把手15の形状は、L字型に限定されるものではなく、両手持ちの形状(図示せず)としてもよい。
【0038】
キャスター16は、本体部161及びボール162を有する。ここで、
図12(a)、
図12(b)及び
図13を参照してキャスター16の構成について説明する。
図12(a)及び
図12(b)は、第2実施形態に係る剥離試験装置2の上面図及び側面図である。また、
図13は、第2実施形態に係る剥離試験装置2の背面図である。
【0039】
本体部161は、支持台11の下部のテープリール12寄りに設けられ、支持台11に対して直交する向きに延びている。本体部161の裏面の両側には、
図13に示すように、2つの凹部161aが形成されている。各凹部161aは、本体部161の裏面に対して半球状に凹んでいる。ボール162は、本体部161の各凹部161aに回転可能に取り付けられている。本実施形態では、本体部161は金属製であり、ボール162は磁性体である。これにより、ボール162は、凹部161a内で自由自在に回転可能となる。その結果、
図12(a)に示すように、剥離試験装置2は前後左右に移動可能となる。
【0040】
上記のように構成された剥離試験装置2を用いて、箔材210(
図8、9参照)の剥離試験を行う場合、
図12(b)に示すように、ボール162は、作業テーブル300の上面に接触する。作業者が把手15を把持して剥離試験装置2を手前側に引っ張ると、ボール162は、剥離試験装置2の直線移動を補助する。これにより、剥離試験装置2の移動がスムーズになる。
【0041】
図14は、剥離試験装置2の移動中の状態の一例を示す側面図である。例えば、1つの箔材210の剥離試験が終わって、次の箔材210まで剥離試験装置2を移動させる場合、
図14に示すように、把手15を下方向に押し下げると、ボール162が支点となって圧着ローラ13が作業テーブル300から浮き上がった状態となる。これにより、粘着テープ100が、剥離試験済みの箔材210から完全に離れるため、剥離試験装置2を次の箔材210までスムーズに移動させることができる。
【0042】
以上説明した本実施形態によれば、キャスター16を支持台11に取り付けることによって、剥離試験装置2の移動がスムーズになる。これにより、操作性が向上するため、試験時間をさらに短縮することが可能となる。なお、剥離試験装置2にはボール162が取り付けられている実施形態を示したが、コロを用いてもよい。ただし、前後左右に自由自在に移動可能することを考慮すればボールが望ましい。
【0043】
(第3実施形態)
図15は、第3実施形態に係る剥離試験装置の斜視図である。また、
図16は、第3実施形態に係る剥離試験装置の側面図である。ここでは、上述した第2実施形態と同じ構成要素には、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。本実施形態に係る剥離試験装置3は、上述した第2実施形態における剥離試験装置2の構成要素に加えて、剥離角度調整部17をさらに備える。
【0044】
図15及び
図16に示すように、剥離角度調整部17は、支持台11の下部で圧着ローラ13の前方(圧着ローラ13に対して、テープリール12の位置とは反対の位置)に設けられている。剥離角度調整部17の先端部は、粘着テープ100を箔材210(試験対象物)から剥がす際の剥離角度α(
図16参照)に応じた形状となっている。
図15及び
図16に示す剥離試験装置3では、剥離角度αが45度に設定されるため、剥離角度調整部17の先端部は、その側面から見ると、
図16に示すように三角形状(刃型)となっている。なお、剥離角度αは、45度等の鋭角に限定されず、剥離試験の規格に応じて、例えば、90度であってもよいし180度であってもよい。
【0045】
図17は、剥離角度調整部の変形例を示す側面図である。
図17に示す剥離角度調整部17aでは、剥離角度αが約180度である。剥離角度調整部17aの先端部は、
図16に示す剥離角度調整部17よりも支持台11の前方へ突出している。また、剥離角度調整部17aの先端部は、その側面から見ると長方形状になっている。
【0046】
本実施形態に係る剥離試験装置3を用いて箔材210(
図8、9参照)の剥離試験を行う場合、作業者が把手15を把持して剥離試験装置3を移動方向Xに直線移動させると、テープリール12から引っ張り出された粘着テープ100は、荷重ローラ14によって、圧着ローラ13の底面で箔材210に貼付される。続いて、作業者が剥離試験装置3を移動方向Xにさらに直線移動させると、箔材210に貼付された粘着テープ100は、剥離角度調整部17又は剥離角度調整部17aで設定された剥離角度αで剥離される。
【0047】
以上説明した本実施形態によれば、剥離角度調整部17又は剥離角度調整部17aによって、箔材210から粘着テープ100を剥離する際の角度が、作業者に関わらず一定となる。そのため、試験条件が粘着テープ100の貼付時だけでなく剥離時も安定する。したがって、剥離試験に要する時間を短縮しつつ、作業者による試験ばらつきをさらに抑制することが可能となる。
【0048】
(第4実施形態)
図18(a)は、第4実施形態に係る剥離試験装置の上面図である。また、
図18(b)は、第4実施形態に係る剥離試験装置の側面図である。ここでは、上述した第2実施形態と同じ構成要素には、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。本実施形態に係る剥離試験装置4は、上述した第2実施形態における剥離試験装置2の構成要素に加えて、圧着ローラ13を荷重ローラ14の直下の位置と荷重ローラ14の前方の位置との間で往復移動させる移動機構をさらに備える。この移動機構は、レール18、スライダー19、移動レバー20、固定ストッパー21及び固定シャフト22で構成される。
【0049】
レール18は、支持台11におけるテープリール12、圧着ローラ13及び荷重ローラ14が取り付けられた側面に沿って設けられている。レール18の一端は、荷重ローラ14の直下に位置し、他端は、荷重ローラ14の前方に位置する。
【0050】
スライダー19は、レール18を滑走可能である。レール18には、圧着ローラ13が連結されている。そのため、圧着ローラ13は、レール18に沿って往復移動することができる。
【0051】
移動レバー20は、スライダー19とは反対側で圧着ローラ13に連結されている。移動レバー20は、手動で圧着ローラ13をレール18に沿って往復移動させるための部品である。
【0052】
固定ストッパー21は、移動レバー20及び固定シャフト22に脱着可能に取り付けられる部品である。固定ストッパー21が移動レバー20及び固定シャフト22に装着されると、
図18(b)に示すように、圧着ローラ13は、荷重ローラ14の直下の位置に固定される。一方、固定ストッパー21が移動レバー20及び固定シャフト22から取り外されると、圧着ローラ13は、レール18に沿って荷重ローラ14の前方に移動可能な状態となる。
【0053】
固定シャフト22は、支持台11におけるテープリール12、圧着ローラ13及び荷重ローラ14が取り付けられた側面とは反対側の側面から突出している。固定シャフト22は、圧着ローラ13を荷重ローラ14の直下の位置に固定するための部品である。
【0054】
本実施形態に係る剥離試験装置4を用いて箔材210(
図8、9参照)の剥離試験を行う場合、作業者が把手15を把持して剥離試験装置4を移動方向Xに直線移動させると、
図18(a)及び
図18(b)に示すように、テープリール12から引っ張り出された粘着テープ100は、荷重ローラ14によって、圧着ローラ13の底面で箔材210に貼付される。
【0055】
図19(a)は、圧着ローラ13の移動後の状態を示す上面図である。
図19(b)は、圧着ローラ13の移動後の状態を示す側面図である。粘着テープ100が箔材210に貼付されると、続いて、作業者は、固定ストッパー21を取り外して、移動レバー20を把持して圧着ローラ13をレール18に沿って荷重ローラ14の前方、換言すると剥離試験装置4の移動方向Xと反対の-X方向に移動させる。圧着ローラ13の移動によって、
図19(a)及び
図19(b)に示すように、粘着テープ100は、テープリール12からさらに引っ張り出される。なお、圧着ローラ13の移動について、歯車等を用いて制御してもよい。
【0056】
図20(a)は、圧着ローラ13を移動前の位置に戻した状態を示す上面図である。
図20(b)は、圧着ローラ13を移動前の位置に戻した状態を示す側面図である。作業者は、圧着ローラ13を荷重ローラ14の前方に移動させた後、移動レバー20を把持して圧着ローラ13を移動前の位置、すなわち、荷重ローラ14の直下の位置へ戻す。このとき、
図20(b)に示すように、粘着テープ100が箔材210に貼付された状態は維持される。
【0057】
図21(a)は、粘着テープ100を剥離中の状態を示す上面図である。
図20(b)は、粘着テープ100を剥離中の状態を示す側面図である。作業者は、固定ストッパー21を移動レバー20及び固定シャフト22に装着し、続けて把手15を把持して剥離試験装置を移動方向Xに引っ張る。これにより、
図21(b)に示すように、荷重ローラ14が回転し始めて、粘着テープ100が箔材210から剥離して荷重ローラ14に巻き取られる。このとき、粘着テープ100の剥離前に圧着ローラ13を荷重ローラ14の前方に移動させていたため、剥離角度αを設定することができる。
なお、本実施形態では、圧着ローラ13の移動距離、すなわち荷重ローラ14との離間距離が長くなるにつれて、剥離角度αは180度に近い角度となる。また、圧着ローラ13の径を小さくすることによっても、剥離角度αを180度に近づけることができる。
【0058】
本実施形態によれば、圧着ローラ13を移動可能な機構を設けることによって剥離角度αを調整できる。そのため、作業者による試験ばらつきをさらに抑制することが可能となる。
【0059】
(第5実施形態)
図22は、第5実施形態に係る剥離試験装置の斜視図である。ここでは、上述した第2実施形態と同じ構成要素には、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。本実施形態に係る剥離試験装置5は、上述した第2実施形態における剥離試験装置2の構成要素に加えて、ガイド板23及びガイドステー24をさらに備える。
【0060】
ガイド板23は、作業テーブル300上に載置される。ガイド板23上には、直方体のガイド部材231が設けられている。一方、ガイドステー24は、キャスター16の本体部161に取り付けられている。ガイドステー24には、ガイド部材231に嵌合する溝部241が形成されている。
【0061】
本実施形態に係る剥離試験装置5を用いて箔材210(
図8、9参照)の剥離試験を行う場合、まず、作業者が把手15を把持して剥離試験装置5を移動方向Xに引っ張る。このとき、ガイドステー24の溝部241がガイド板23のガイド部材231に嵌合しているため、剥離試験装置5は、ガイド部材231に沿って直線移動する。つまり、ガイド板23及びガイドステー24が剥離試験装置5の直線移動を補助する。
【0062】
したがって、本実施形態によれば、剥離試験装置5の直進性が向上するので、剥離試験装置の移動時間を短縮しつつ試験条件を安定させることが可能となる。これにより、剥離試験時間を短縮しつつ、作業者による試験ばらつきを抑制することが可能となる。
【0063】
なお、本実施形態では、ガイドステー24は、キャスター16に取り付けられているが、ガイドステー24の取り付け位置は、キャスター16に限定されない。ガイドステー24は、例えば、支持台11に取り付けられていてもよい。この場合も、ガイド板23及びガイドステー24によって、剥離試験装置5の直線移動が補助される。そのため、剥離試験装置5の直線移動を安定させることが可能となる。
【0064】
(第6実施形態)
図23は、第6実施形態に係る剥離試験装置の側面図である。ここでは、上述した第1実施形態と同じ構成要素には、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。本実施形態に係る剥離試験装置6を用いて箔材210の剥離試験を行う場合、剥離試験装置6の移動方向は、第1実施形態に係る剥離試験装置1の移動方向と反対である。すなわち、剥離試験を行う際、第1実施形態に係る剥離試験装置1は、移動方向Xに引っ張られるのに対し、本実施形態に係る剥離試験装置6は、Xと反対の-X方向に押される。本実施形態では、剥離試験装置6を-X方向に移動させても、第1実施形態と同様に、荷重ローラ14による一定の荷重がかかった状態で粘着テープ100を貼付し、さらに粘着テープ100の貼付から剥離までを連続して行うために、粘着テープ100の移動経路が第1実施形態と異なる。
【0065】
上述した第1実施形態では、
図6に示すように、粘着テープ100は、非粘着面101が外向きで粘着面102が内向きの状態でテープリール12から圧着ローラ13まで直接引っ張り出される。また、第1実施形態では、剥離試験装置1を移動方向Xに引っ張ることによって、圧着ローラ13は時計回りに回転するとともに、荷重ローラ14は反時計回りに回転する。そのため、箔材210から剥離された粘着テープ100は、圧着ローラ13の左半周部分を通過して荷重ローラ14の右半周部分から巻回される。
【0066】
一方、本実施形態では、
図23に示すように、粘着テープ100は、非粘着面101が内向きで粘着面102が外向きの状態でテープリール12から荷重ローラ14の上半部分を周回するようにして圧着ローラ13まで引っ張り出される。また、本実施形態では、剥離試験装置6を-X方向に押すことによって、圧着ローラ13は反時計回りに回転するとともに、荷重ローラ14は時計回りに回転する。そのため、箔材210から剥離された粘着テープ100は、圧着ローラ13の右半周部分を通過して荷重ローラ14の左半周部分から巻回される。
【0067】
以上説明した本実施形態によれば、粘着テープ100の移動経路を上記のようにすることによって、作業者が剥離試験装置6を押す動作を行っても、荷重ローラ14による一定の荷重がかかった状態で粘着テープ100を貼付し、さらに粘着テープ100の貼付から剥離までを連続して行うことができる。よって、作業者に関わらず一定の試験条件下で剥離試験を短時間で行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0068】
1~6 剥離試験装置
11 支持台
12 テープリール
13 圧着ローラ
14 荷重ローラ
15 把手
16 キャスター
17、17a 剥離角度調整部
18 レール
19 スライダー
20 移動レバー
21 固定ストッパー
22 固定シャフト
23 ガイド板
24 ガイドステー
100 粘着テープ
101 非粘着面
102 粘着面
110 芯材
111、112 軸穴
113 長穴
121 粘着テープ本体部
122 軸心
131 ゴム層
132 鉄芯
133、142 軸芯
141、161 本体部
161a 各凹部
162 ボール
200 基材
201 複数の印刷領域
210 箔材
211 接着剤層
212 金属層
213 保護層
231 ガイド部材
241 溝部
300 作業テーブル
310 固定部