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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113225
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】ポリエチレン系多孔質延伸フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/00 20060101AFI20230808BHJP
   B29C 67/20 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
C08J9/00 A CES
B29C67/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015425
(22)【出願日】2022-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(72)【発明者】
【氏名】原田 雄太
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸幸
【テーマコード(参考)】
4F074
4F214
【Fターム(参考)】
4F074AA17
4F074AA18
4F074AA21
4F074AA98
4F074AB05
4F074AC26
4F074AD12
4F074AD16
4F074AG03
4F074CA03
4F074CA04
4F074CA06
4F074CA07
4F074DA10
4F074DA24
4F074DA33
4F074DA53
4F214AA04
4F214AB16
4F214AC03
4F214AG01
4F214AG20
4F214AH63
4F214UA32
4F214UB01
4F214UC02
4F214UG02
(57)【要約】
【課題】 密度が異なる2種以上のポリエチレンを併用した場合においても、高い透湿度を有しながら透湿度が均一であるポリエチレン系多孔質延伸フィルムを提供する。
【解決手段】 密度の異なる2種以上のポリエチレンを含む樹脂成分100質量部、無機充填剤80~130質量部よりなる多孔質延伸フィルムであって、上記ポリエチレンのメルトインデックス(MI)がいずれも1.5~5.0g/10分で、且つMIの最高値と最低値との差が最大で1.5g/10分を許容し、温度40℃、相対湿度90%において測定される透湿度が3500g/m・24hr以上、フィルムの幅方向における前記透湿度の最高値と最低値の差が500g/m・24hr以下、耐水圧が150kPa以上を達成することができるポリエチレン多孔質延伸フィルムである。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度の異なる2種以上のポリエチレンを含む樹脂成分100質量部、無機充填剤80~130質量部よりなる多孔質延伸フィルムであって、上記ポリエチレンのメルトインデックス(MI)がいずれも1.5~5.0g/10分で、且つMIの最高値と最低値との差が最大で1.5g/10分を許容することを特徴とするポリエチレン系多孔質延伸フィルム。
【請求項2】
前記2種以上のポリエチレンの少なくとも一つが植物由来のポリエチレンである請求項1記載のポリエチレン系多孔質延伸フィルム。
【請求項3】
前記2種以上のポリエチレンのMIの最高値と最低値との差が0.5g/10分以下である請求項1又は2に記載のポリエチレン系多孔質延伸フィルム。
【請求項4】
前記2種以上のポリエチレンが、密度0.930g/cm以上のポリエチレンと密度0.930g/cm未満のポリエチレンとを含む請求項1~3のいずれか1項に記載のポリエチレン系多孔質延伸フィルム。
【請求項5】
可塑剤を実質的に含まない請求項1~4のいずれか1項に記載のポリエチレン系多孔質延伸フィルム。
【請求項6】
以下の特性を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリエチレン系多孔質延伸フィルム。
(1)温度40℃、相対湿度90%において測定される透湿度が3500g/m・24hr以上
(2)フィルムの幅方向における前記透湿度の最高値と最低値の差が500g/m・24hr以下
(3)耐水圧が150kPa以上
【請求項7】
前記2種以上のポリエチレンを含み、上記ポリエチレンのMIがいずれも1.5~5.0g/10分で、且つMIの最高値と最低値との差が最大で1.5g/10分の樹脂成分100質量部と無機充填剤80~130質量部よりなる樹脂組成物をシート状に成形後、それぞれ機械方向(MD)に150~200%および垂直方向(TD)に110~160%延伸することを特徴とするポリエチレン系多孔質延伸フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なポリエチレン系多孔質延伸フィルムに関する。詳しくは、密度が異なる2種以上のポリエチレンを併用した場合においても、高い透湿度を有し、且つ、透湿度が均一であるポリエチレン系多孔質延伸フィルムを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエチレンに充填剤を添加した樹脂組成物のシートを延伸することで微多孔を形成した多孔質フィルムは、透湿性と液不透過性を兼ね備えていることが知られている。これらの特性を利用して、紙おむつ用バックシートや生理用ナプキンなどの衛生材料、乾燥剤・除湿剤等の包装材料等、種々の用途に使用されている。
【0003】
上記用途において、多孔質延伸フィルムは、高い透湿性と液不透過性に加えて、柔軟性や引張強度、引裂強度等の物性が要求される。
【0004】
従来、ポリエチレン系多孔質延伸フィルムの成形安定性、引張強度、引裂強度、透湿性等の物性を改良する目的で、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を2種以上組み合わせて使用することが知られている。例えば、特許文献1の実施例では、LLDPE・HDPEを組み合わせて使用することで良好な成形安定性に加えて、高い強度を維持しながら高い透湿性を有することが出来た。
【0005】
しかしながら、上記のように密度の異なるポリエチレンを使用する際、組合せによっては、樹脂組成物の均一性が低下し、これを用いて得られるポリエチレン系多孔質延伸フィルムの性能が低下することが判明した。即ち、密度の異なる2種以上のポリエチレンを組み合わせて使用した場合、十分な透湿性が発揮されないばかりではなく、フィルムにおける透湿性のバラつきが大きくなる現象が生じる場合がある。特に、近年、カーボンニュートラルの観点から使用が進んでいる植物由来のポリエチレンは、石油由来のポリエチレンと併用されるケースが増えつつあるが、多様化した製品が乏しく、石油由来のポリエチレンとの組み合わせにおいて上記問題が起こり易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1-4338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、密度が異なる2種以上のポリエチレンを併用した場合においても、高い透湿度を有しながら透湿度が均一であるポリエチレン系多孔質延伸フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、密度が異なる2種以上のポリエチレンを併用した場合において、MIの低いポリエチレンが存在していたり、ポリエチレンそれぞれのMIの差が大きかったりすると、組成物の均一性が低下し、前記問題が生じるとの知見を得た。上記知見に基づき、さらに研究を重ねた結果、使用するポリエチレンの組み合わせにおいて、MIが特定の範囲内にあるものを使用することにより、それぞれのMIが多少異なっていても、組成の均一性を確保でき、高い透湿度を有しながら、透湿度が均一なポリエチレン系多孔質延伸フィルムを得ることに成功し、本発明を提案するに至った。
【0009】
即ち、本発明によれば、密度の異なる2種以上のポリエチレンを含む樹脂成分100質量部、無機充填剤80~130質量部よりなる多孔質延伸フィルムであって、上記ポリエチレンのMI(メルトインデックス)がいずれも1.5~5.0g/10分で、且つMIの最高値と最低値との差が最大で1.5g/10分を許容することを特徴とするポリエチレン系多孔質延伸フィルムが提供される。
【0010】
前記ポリエチレン系多孔質延伸フィルムは、前記2種以上のポリエチレンの少なくとも一つが植物由来のポリエチレンである場合、特に有効である。
【0011】
また、前記ポリエチレン系多孔質延伸フィルムにおいて、2種以上のポリエチレンのMIの最高値と最低値との差が0.5g/10分以下であることが好ましい。
【0012】
更に、前記ポリエチレン系多孔質延伸フィルムは、2種以上のポリエチレンが、密度0.930g/cm以上のポリエチレンと密度0.930g/cm未満のポリエチレンとを含むことが好ましい。
【0013】
更にまた、前記ポリエチレン系多孔質延伸フィルムは、可塑剤を実質的に含まないことが好ましい。
【0014】
本発明のポリエチレン系多孔質延伸フィルムによれば、以下の特性を発揮することができる。
【0015】
(1) 温度40℃、相対湿度90%において測定される透湿度が3500g/m・24hr以上
(2) フィルムの幅方向における前記透湿度の最高値と最低値の差が500g/m・24hr以下
(3) 耐水圧が150kPa以上
本発明のポリエチレン系多孔質延伸フィルムは、2種以上のポリエチレンを含み、上記ポリエチレンのMIがいずれも1.5~5.0g/10分で、且つMIの最高値と最低値が最大で1.5g/10分の樹脂成分100質量部と無機充填剤80~130質量部よりなる樹脂組成物をシート状に成形後、それぞれ機械方向(MD)に150~200%および垂直方向(TD)に110~160%延伸することにより製造することができる。
【0016】
尚、本発明において、ポリエチレンのMIは、JIS K 7210に準じて、測定温度190℃、荷重2.16kgとしてA法にて測定した値である。また、本発明におけるポリエチレンの密度は、JIS K 7112法により測定されたものである。更に、前記透湿度は、JIS Z 0208に準じて、40℃、相対湿度90%、測定時間24時間の条件で、塩化カルシウム法にて測定した値である。更にまた、耐水圧は、JIS L 1092に準じて、耐水圧測定器でそれぞれ測定した値である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、密度が異なる2種以上のポリエチレンを使用したポリエチレン系多孔質延伸フィルムにおいて、高い透湿性を有しながら透湿度が均一であるポリエチレン系多孔質延伸フィルムを得ることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[ポリエチレン系多孔質延伸フィルム]
本発明のポリエチレン系多孔質延伸フィルムは、密度の異なる2種以上のポリエチレンを含む樹脂成分100質量部、無機充填剤80~130質量部よりなる樹脂組成物からなる。
【0019】
本発明において、ポリエチレンとしては、公知のものが特に制限なく使用されるが、特に直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)などが好適に使用される。また、上記LLDPEとしては、エチレンとブテン-1、ヘキセン-1、4-メチルペンテン-1などの共重合体が挙げられる。
【0020】
上記ポリエチレンについて、原料とするエチレンの由来は特に限定されず、石油由来のエチレンから重合された石油由来ポリエチレンでも、植物由来のエチレンから重合された植物由来ポリエチレンでも使用することが可能であるが、石油枯渇や地球温暖化などの環境問題に対して優れていることから、ポリエチレンの一部または全部として、植物由来ポリエチレンを使用することが好ましい。植物由来ポリエチレンを石油由来ポリエチレンと植物由来ポリエチレンは、エチレンを得た後の重合過程が全く同じであれば、ポリエチレンの素性が何ら変わることはなく、コストなどを考慮して任意の割合で配合することが出来る。
【0021】
本発明において、前記密度の異なる2種以上のポリエチレンの組み合わせは、特に制限されるものではないが、密度0.930g/cm以上のポリエチレンと密度0.930g/cm未満のポリエチレンを含むことが、柔軟性と剛性に優れたポリエチレン系多孔質延伸フィルムを得ることが出来、好ましい。
【0022】
本発明において、前記密度が異なる2種以上のポリエチレンのMIは、いずれも1.5~5.0g/10分の範囲内であることが重要である。即ち、ポリエチレン系多孔質延伸フィルムを構成するポリエチレンとして、MIが上記範囲内のものを使用することにより、ポリエチレン間のMIに差があっても、十分な透湿性が確保され、しかも、透湿性にバラつきを生じる現象を効果的に防止することができる。
【0023】
前記2種以上のポリエチレンのMIの最高値と最低値との差は、最大で1.5g/10分まで許容されるが、1.0g/10分以下が好ましく、特に0.5g/10分以下とすることにより、樹脂同士がより均一に混合され、高い透湿性を発揮すると共に、均一な透湿度を確保することができる。
【0024】
一方、最高値と最低値との差の下限は、0が最も好ましいが、本発明の目的に照らせば、上記差が0.2種以上の場合に特に有効である。即ち、前記したように、グレード数が比較的少ない植物由来のポリエチレンを他の密度の異なるポリエチレンと組み合わせて使用したい場合、多少の密度差があっても問題無く使用できる点に本発明の最大のメリットがある。
【0025】
本発明において、前記無機充填剤としては、従来から多孔性フィルムの製造において公知の無機充填剤を特に制限なく使用することが出来る。最も一般的に使用されている無機充填剤として、炭酸カルシウムが挙げられ、本発明において最も好適に使用される。
【0026】
前記無機充填剤の粒径は特に制限されるものではないが、得られるポリエチレン系多孔質延伸フィルムの性能のバランスを考慮すれば、平均粒子径が1~10μm、好ましくは、1~5μmのものが好適である。平均粒子径が上記範囲にあると、延伸時に連通孔の形成が容易になり、フィルム成形時の破断を抑制することが出来る。
【0027】
上記無機充填剤は、混合樹脂100質量部に対して、80~130質量部、好ましくは、90~120質量部の割合で配合される。上記無機充填剤の割合が80質量部より少ない場合は、ポリエチレン系多孔質延伸フィルムに十分な多孔性を付与できず、十分な透湿性を確保することが出来ない。また。130質量部を超えるとポリエチレン系多孔質延伸フィルムに十分な強度を付与することが困難となる。
【0028】
本発明の樹脂組成物においては、通常の樹脂組成物に用いられている添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、中和剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、帯電防止剤、滑剤等が挙げられる。
【0029】
尚、本発明の樹脂組成物に添加剤として可塑剤は配合されない方が好ましい。本発明における可塑剤とは、樹脂の可塑性を改善し、フィルムに柔軟性を与える化合物の総称であり、可塑剤を添加すると、樹脂組成物のMIが過度に大きくなり、透湿性や透湿度の均一性が低下する傾向にある。
【0030】
本発明のポリエチレン系多孔質延伸フィルムは、前記樹脂成分と無機充填剤との組成よりなり、透湿度が3500g/m・24h以上、特に、4000g/m・24h以上と高い透湿性を有する。
【0031】
また、本発明のポリエチレン系多孔質延伸フィルムは、フィルムの幅に対して等間隔に5点測定したときの透湿度の最高値と最低値との差が500g/m・24h以下、特に400g/m・24h以下を示し、透湿度の均一性においても優れている。
【0032】
上記透湿度の均一性は、フィルムの幅方向について測定される値であり、ロール状に巻かれた状態であれば、ロールの幅方向がそれに該当し、切断後のフィルムにおいては、延伸状態よりフィルム長手方向を確認し、それと直角となる方向で測定すればよい。また、製造直後のフィルムは、フィルムの全幅に対して両端の20%をそれぞれ除いて測定される。また、前記測定は、幅が1m以上あるフィルムについて行うことが好ましく、各測定箇所でのサンプリングは、透湿度の測定が可能な大きさ、具体的には、100mm×100mm程度で行うのが一般的である。更に、耐水圧は、150kPa以上の値を示す。
【0033】
本発明のポリエチレン系多孔質延伸フィルムの他の特性は特に制限されない。例えば、フィルムの目付は、10~200g/m、特に、30~100g/mが一般的である。
また、本発明のポリエチレン系多孔質延伸フィルムにおいて、フィルムの機械方向(MD)の引裂強度は0.4N以上を満たすことが好ましく、更に0.6N以上を満たすことがより好ましい。引裂強度は、JIS K 7128-1(トラウザー引裂法)に準じて、引裂きが試験片の長軸の終端に達するまでに必要とする引裂力を測定した値である。
【0034】
[ポリエチレン系多孔質延伸フィルムの製造方法]
本発明のポリエチレン系多孔質延伸フィルムの製造方法は特に制限されないが、代表的な製造方法を例示すれば、前記2種以上のポリエチレンを含み、上記ポリエチレンのMIがいずれも1.5~5.0g/10分で、且つMIの最高値と最低値が最大で1.5g/10分である樹脂成分100質量部と無機充填剤80~130質量部よりなる樹脂組成物をシート状に成形後、それぞれ機械方向(MD)に150~200%および垂直方向(TD)に110~160%延伸することを特徴とするポリエチレン系多孔質延伸フィルムの製造方法により製造することが出来る。
【0035】
上記製造方法において、ポリエチレン、無機充填剤は、前述のものが使用される。また、上記製造方法において、樹脂組成物をフィルム状に成形する方法は、特に制限されないが、Tダイ、環状ダイより押し出す方法が一般的である。また、フィルム状に押し出された樹脂組成物は、上記それぞれの形状により、公知の延伸方法により延伸される。例えば、Tダイより押し出されたフィルム状物は、ロールにより縦方向に延伸され、また、テンターにより横方向に延伸される。また、環状ダイより押し出されたフィルム状物は、ロールにより縦方向に延伸された後、マンドレルを介して横方向に延伸される。フィルム状物の延伸温度は、40~120℃が好ましい。さらに、延伸したフィルムは必要に応じて熱固定処理を行ってもよい。熱固定処理における処理温度は、樹脂の軟化点以上及び融点未満の温度で、80~120℃が好ましい。
【実施例0036】
以下、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例および比較例における各種物性は、下記の方法により測定した。
(1)目付(g/m
試料のフィルムから100mm×100mmの試験片を採取し、天秤で質量を測定した。このサンプルの面積及び質量から目付を算出した。
【0037】
(2)透湿度(g/m・24hr)
試料フィルムより100mm×100mmの試験片を採取し、JIS Z 0208に準じて、40℃、相対湿度90%、測定時間24時間、塩化カルシウム法で測定した。
【0038】
(3)透湿度の均一性[最大値-最小値](g/m・24hr)
試料フィルムの全幅の20%の長さを両端からの除いた範囲において等間隔に5点、100mm×100mmの試験片を採取し、JIS Z 0208に準じて、40℃、相対湿度90%、測定時間24時間、塩化カルシウム法で測定し、測定値の最大値と最小値の差を算出した。
【0039】
(4)耐水圧(kPa)
試料フィルムより150mm×150mmの試験片を採取し、JIS L 1092のA法(低水圧法)に準じて、補強材としてポリオレフィン不織布(ENEOSテクノマテリアル(株)製、商品名:ワリフ)を表側に重ねて、耐水圧試験装置に取り付け、試験片の表側に水圧を加えていき、試験片の裏側に3か所から水が出たときの水圧を読み取った。
【0040】
(5)引裂強度(N)
試料フィルムより巾40mm、長さ150mmの試験片を採取し、その中央に長さ75mmのスリットを加えた試験片を作製し、JIS K 7128-1(トラウザー引裂法)に準じて、チャック間距離50mm、引張速度200mm/minでスリット部を引張り、引裂きが試験片の長軸の終端に達するまでに必要とする引裂力を測定した。
【0041】
尚、実施例、比較例においては以下の原料を使用した。
【0042】
A:直鎖状低密度ポリエチレン[ダウ・ケミカル(株)製、商品名:CEFOR1221P、密度:0.918g/cm、MI:2.0g/10分]
B:直鎖状低密度ポリエチレン[SABIC社製、商品名:318BJ、密度:0.918g/cm、MI:2.8g/10分]
C:高密度ポリエチレン[(株)プライムポリマー製、商品名:ハイゼックス5000SF、密度:0.956g/cm、MI:0.7g/10分]
D:分岐状低密度ポリエチレン[(株)ENEOS NUC製、商品名:NUC8008、密度:0.918g/cm、MI:4.7g/10分]
E:植物由来直鎖状低密度ポリエチレン[Braskem社製、商品名:SLL118、密度:0.918g/cm、MI:1.0g/10分]
F:植物由来直鎖状低密度ポリエチレン[Braskem社製、商品名:SLH218、密度:0.916g/cm、MI:2.3g/10分]
G:植物由来高密度ポリエチレン[Braskem社製、商品名:SGE7252NS、密度:0.953g/cm、MI:2.0g/10分]
H:炭酸カルシウム[(株)カルファイン製、商品名:LAC-2000]
I:可塑剤(硬化ひまし油)[ケイエフ・トレーディング(株)製、商品名:HCO-P3]
J:添加剤[ヒンダードフェノール系熱安定剤(BASFジャパン(株)製、商品名:IRGANOX3114)15質量部、リン系熱安定剤(BASFジャパン(株)製、商品名:IRGAFOS168)85質量部]。
【0043】
実施例1
表1に示す直鎖状低密度ポリエチレンAが44質量部、直鎖状低密度ポリエチレンBが33質量部、植物由来高密度ポリエチレンGが23質量部からなる混合樹脂100質量部に、炭酸カルシウムHを122質量部、さらに添加剤Jを0.6質量部含む樹脂組成物を混合し、190℃の二軸押出機でペレット状に加工した。次に、上記ペレットを190℃の押出機に供給し、環状ダイによりインフレーション成形することでフィルム状物を得た。前記フィルム状物をさらに45℃に加熱された延伸ロールとの間で縦方向に一軸延伸(延伸倍率:180%)し、加えて85℃に加熱されたマンドレルを介して横方向にも二軸延伸(延伸倍率:120%)することで二軸延伸フィルムを得た。その後、90℃に加熱した熱セットロールで熱固定処理を行い、巻取機でフィルム状に巻き取ることでポリエチレン系多孔質延伸フィルムを得た。
【0044】
得られたポリエチレン系多孔質延伸フィルムの目付、透湿度、透湿度の均一性、耐水圧、機械方向(MD)の引裂強度の評価を行った結果を表2に示した。
【0045】
実施例2~6
組成物の配合を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にポリエチレン系多孔質フィルムを製造して評価を行い、結果を表2に示した。いずれの多孔質延伸フィルムも良好な透湿度を有しながら、かつ透湿度の最大値と最小値の差が500g/m・24h以下で均一であり、耐水性も優れた結果であった。
【0046】
比較例1~5
組成物の配合を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にポリエチレン系多孔質延伸フィルムを製造して評価を行い、結果を表2にそれぞれ併せて示した。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】