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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113378
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】発光素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/20 20100101AFI20230808BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20230808BHJP
   H01L 33/38 20100101ALI20230808BHJP
【FI】
H01L33/20
H01L33/32
H01L33/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015713
(22)【出願日】2022-02-03
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】岸 明徳
【テーマコード(参考)】
5F241
【Fターム(参考)】
5F241AA03
5F241AA22
5F241AA24
5F241CA03
5F241CA05
5F241CA12
5F241CA22
5F241CA40
5F241CA83
5F241CA93
5F241CB11
(57)【要約】
【課題】光取り出し効率の向上と順方向電圧の低減が可能な発光素子を提供すること。
【解決手段】発光素子は、下方から上方に向かって順に、p側半導体層と、活性層と、n側半導体層と、を有する半導体構造体であって、上面視において、前記n側半導体層は第1部分と第2部分とを有し、前記第1部分の下方に位置する前記p側半導体層の下面である第1面と、前記第2部分の上面である第2面と、前記第2部分の下方に位置する前記p側半導体層の下面である第3面と、を有する半導体構造体と、前記第1面に配置されたp側電極と、前記第2面に配置されたn側電極と、前記第3面に配置された絶縁性部材と、を備え、前記第1部分の最大厚さは、前記第2部分の最大厚さよりも薄い。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方から上方に向かって順に、p側半導体層と、活性層と、n側半導体層と、を有する半導体構造体であって、上面視において、前記n側半導体層は第1部分と第2部分とを有し、前記第1部分の下方に位置する前記p側半導体層の下面である第1面と、前記第2部分の上面である第2面と、前記第2部分の下方に位置する前記p側半導体層の下面である第3面と、を有する半導体構造体と、
前記第1面に配置されたp側電極と、
前記第2面に配置されたn側電極と、
前記第3面に配置された絶縁性部材と、
を備え、
前記第1部分の最大厚さは、前記第2部分の最大厚さよりも薄い発光素子。
【請求項2】
前記第1部分と前記第2部分との境界は、前記第1面に平行な方向において前記p側電極の外縁から0.1μm以上15μm以下、前記p側電極の外側に離れた位置にある請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記n側電極は、パッド部と、前記パッド部から延伸する延伸部と、を有し、
上面視において、前記パッド部の近傍領域における前記第1部分と前記第2部分との境界と前記p側電極の外縁との間の第1距離は、前記延伸部の近傍領域における前記第1部分と前記第2部分との境界と前記p側電極の外縁との間の第2距離よりも大きい請求項1に記載の発光素子。
【請求項4】
前記第1距離と前記第2距離との差が0.1μm以上15μm以下である請求項3に記載の発光素子。
【請求項5】
前記パッド部の近傍領域における前記第1部分と前記第2部分との境界は、前記第1面に平行な方向において前記p側電極の前記外縁から0.1μm以上15μm以下、前記p側電極の外側に離れた位置にあり、
前記延伸部の近傍領域における前記第1部分と前記第2部分との境界は、上面視において前記p側電極の前記外縁に重なる位置にある請求項3に記載の発光素子。
【請求項6】
前記第1部分の厚さが0.6μm以上1.5μm以下であり、前記第2部分の厚さが1.3μm以上3.1μm以下である請求項1~5のいずれか1つに記載の発光素子。
【請求項7】
前記n側半導体層は、アルミニウムとガリウムを含む窒化物半導体層である、第1層と第2層とを有し、前記第1層のアルミニウム組成比は前記第2層のアルミニウム組成比よりも低く、
前記第1部分の前記第1層の厚さは、前記第2部分の前記第1層の厚さよりも薄い請求項1~6のいずれか1つに記載の発光素子。
【請求項8】
前記n側半導体層は、アルミニウムとガリウムを含む窒化物半導体層である、第1層と第2層とを有し、前記第1層のアルミニウム組成比は前記第2層のアルミニウム組成比よりも低く、
前記第1部分には前記第1層が配置されていない請求項1~6のいずれか1つに記載の発光素子。
【請求項9】
前記活性層からの光のピーク波長は、410nm以下である請求項1~8のいずれか1つに記載の発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、発光素子において、半導体構造体を薄くすることで、光取り出し効率を向上させることが開示されているが、順方向電圧の上昇をまねくおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-84878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、光取り出し効率の向上と順方向電圧の低減が可能な発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、発光素子は、下方から上方に向かって順に、p側半導体層と、活性層と、n側半導体層と、を有する半導体構造体であって、上面視において、前記n側半導体層は第1部分と第2部分とを有し、前記第1部分の下方に位置する前記p側半導体層の下面である第1面と、前記第2部分の上面である第2面と、前記第2部分の下方に位置する前記p側半導体層の下面である第3面と、を有する半導体構造体と、前記第1面に配置されたp側電極と、前記第2面に配置されたn側電極と、前記第3面に配置された絶縁性部材と、を備え、前記第1部分の最大厚さは、前記第2部分の最大厚さよりも薄い。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、光取り出し効率の向上と順方向電圧の低減が可能な発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態の発光素子の模式上面図である。
図2図1のII-II線における模式断面図である。
図3】本発明の一実施形態の発光素子における半導体構造体の模式上面図である。
図4】サンプルA~Eについての光出力と順方向電圧の測定結果を示すグラフである。
図5】本発明の一実施形態の発光素子の模式上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。各図面中、同じ構成には同じ符号を付している。なお、各図面は、実施形態を模式的に示したものであるため、各部材のスケール、間隔若しくは位置関係などが誇張、又は部材の一部の図示を省略する場合がある。また、断面図として、切断面のみを示す端面図を示す場合がある。
【0009】
以下の説明において、実質的に同じ機能を有する構成要素は共通の参照符号で示し、説明を省略することがある。また、特定の方向又は位置を示す用語(例えば、「上」、「下」及びそれらの用語を含む別の用語)を用いる場合がある。しかしながら、それらの用語は、参照した図面における相対的な方向又は位置を分かり易さのために用いているに過ぎない。参照した図面における「上」、「下」等の用語による相対的な方向又は位置の関係が同一であれば、本開示以外の図面、実際の製品等において、参照した図面と同一の配置でなくてもよい。本明細書において「平行」とは、2つの直線、辺、面等が延長しても交わらない場合だけでなく、2つの直線、辺、面等がなす角度が10°以内の範囲で交わる場合も含む。本明細書において「上」と表現する位置関係は、接している場合と、接していないが上方に位置している場合も含む。
【0010】
図1及び図2に示すように、発光素子1は、半導体構造体20と、p側電極31と、n側電極32と、絶縁性部材41とを備える。
【0011】
半導体構造体20は、後述するように第1面20aを有する。第1面20aに平行な方向であって互いに直交する2方向を第1方向Y及び第2方向Xとする。第1方向Y及び第2方向Xに直交する方向を第3方向Zとする。半導体構造体20は、第3方向Zにおいて下方から上方に向かって順に、p側半導体層23と、活性層22と、n側半導体層21とを有する。
【0012】
p側半導体層23、活性層22、及びn側半導体層21は、窒化物半導体層である。窒化物半導体は、InAlGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)なる化学式において組成比x及びyをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成の半導体を含む。
【0013】
p側半導体層23は、p型不純物を含むp型層を有する。n側半導体層21は、n型不純物を含むn型層を有する。p側半導体層23及びn側半導体層21は、n型不純物やp型不純物を意図的にドープせずに形成したアンドープ層を含んでいてもよい。
【0014】
活性層22は、紫外光を発することができる。活性層22からの光のピーク波長は、例えば、410nm以下であり、具体的には210nm以上、410nm以下である。活性層22は、例えば、複数の井戸層と複数の障壁層とを含む多重量子井戸構造を有することができる。
【0015】
図3に示すように、半導体構造体20の上面視における形状は、第1方向Yに延びる2辺及び第2方向Xに延びる2辺を有する四角形である。半導体構造体20の上面視において、最表面にn側半導体層21が位置する。n側半導体層21は、上面視において、第1部分21-1と第2部分21-2とを有する。図3において、第2部分21-2をドットパターンで表す。
【0016】
第2部分21-2は、半導体構造体20の4辺の近傍において4辺に沿って第1方向Y及び第2方向Xに延伸する第1延伸部21cを有する。また、第2部分21-2は、第2方向Xに延びる2つの第1延伸部21cの第1方向Xにおける中央部同士をつなぐように延伸する2つの第2延伸部21dを有する。2つの第2延伸部21dは、互いに離隔して配置されている。上面視において、第1部分21-1の周囲は、第2部分21-2に囲まれている。第1部分21-1の上面の面積は、第2部分21-2の上面の面積よりも大きい。
【0017】
図2に示すように、半導体構造体20は、第1面20aと、第2面20bと、第3面20cと、第4面20dとを有する。第1面20aは、n側半導体層21の第1部分21-1の下方に位置するp側半導体層23の下面である。p側半導体層23の下面は、p側半導体層23における活性層22側の面の反対側に位置する面である。第2面20bは、n側半導体層21の第2部分21-2の上面である。第3面20cは、n側半導体層21の第2部分21-2の下方に位置するp側半導体層23の下面である。第4面20dは、n側半導体層21の第1部分21-1の上面である。n側半導体層21の第1部分21-1の上面及び第2部分21-2の上面は、n側半導体層21における活性層22側の面の反対側に位置する面である。
【0018】
活性層22からの光は、主に第4面20dから発光素子1の外部に取り出される。第4面20dは、粗面化され、複数の凸部を有する。これにより、発光素子1からの光取り出し効率を向上させることができる。第2面20bの表面粗さは、第4面20dの表面粗さよりも小さい。
【0019】
n側半導体層21の第1部分21-1の最大厚さは、n側半導体層21の第2部分21-2の最大厚さよりも薄い。第1部分21-1の最大厚さは、n側半導体層21の第4面20dと、第3方向Zにおいて第4面20dの反対側に位置するn側半導体層21の下面との間の第3方向Zにおける最大距離を表す。第2部分21-2の最大厚さは、n側半導体層21の第2面20bと、第3方向Zにおいて第2面20bの反対側に位置するn側半導体層21の下面との間の第3方向Zにおける最大距離を表す。
【0020】
p側電極31は、第1面20aに配置され、p側半導体層23と電気的に接続されている。p側電極31は、第3面20cには配置されていない。p側電極31は、活性層22が発する光に対して高い反射性を有することが好ましい。p側電極31は、例えば、活性層22が発する光に対して60%以上の反射率、好ましくは70%以上の反射率を有することが好ましい。p側電極31の材料として、例えば、Ag、Alなどを用いることができる。
【0021】
n側電極32は、第2面20bに配置され、n側半導体層21と電気的に接続されている。n側電極32は、第4面20dには配置されていない。n側電極32の材料として、例えば、Ti、Pt、およびAuからなる群から選択される少なくとも1つの金属を用いることができる。
【0022】
絶縁性部材41は、第3面20cに配置されている。絶縁性部材41の上方にn側電極32が配置されている。p側電極31の上方にはn側電極32が配置されていない。これにより、n側電極32の直下の領域における電流の集中を低減し、絶縁性部材41が配置されていない領域に電流が拡がりやすくなる。絶縁性部材41の材料として、例えば、酸化シリコン、または窒化シリコンを用いることができる。
【0023】
p側半導体層23の下面において、p側電極31が配置された第1面20aの面積は、絶縁性部材41が配置された第3面20cの面積よりも大きい。上面視において、n側電極32は、p側電極31と重ならない位置に配置されることが好ましい。これにより、半導体構造体20における電流密度の偏りを軽減することができる。
【0024】
半導体構造体20の第2面20b、第4面20d、及び側面と、n側電極32とを、保護膜42で覆うことが好ましい。保護膜42により、半導体構造体20及びn側電極32を、埃や水分等から保護することができる。保護膜42の材料として、例えば、酸化シリコン、または窒化シリコンを用いることができる。
【0025】
実施形態の発光素子1において、半導体構造体20における主な光取り出し面である第4面20dの反対側に基板11を備えることができる。基板11は、p側電極31及び絶縁性部材41と接合部材12を介して接合されている。基板11の下面には、導電性部材33を配置することができる。
【0026】
基板11は、半導体構造体20を支持する支持部材であるとともに、導電性部材33とp側電極31との間の電流経路としても機能する。したがって、基板11及び接合部材12は、導電性を有する。基板11として、例えば、シリコン基板を用いることができる。接合部材12として、例えば、Ti、Pt、Auなどの金属を用いることができる。接合部材12は、例えば、複数の金属層を含む積層構造とすることができ、半導体構造体20側から順に、Ti、Pt、Au、Pt、Tiの金属層を含む積層構造を用いることができる。導電性部材33の材料として、例えば、Auなどを用いることができる。
【0027】
実施形態の発光素子1は、導電性部材33を配線部が配置された配線基板に対向させ、第4面20d及びn側電極32を配線基板の上方に向けて、配線基板に配置することができる。導電性部材33は、例えば、はんだなどを介して、配線基板に配置された配線部と電気的に接続される。
【0028】
図1に示すように、n側電極32は、パッド部32aと、パッド部32aから延伸する延伸部32bとを有することができる。延伸部32bは、n側半導体層21の第2部分21-2の第1延伸部21c及び第2延伸部21dに沿って、第2部分21-2の上面である第2面20bに配置されている。パッド部32aは、第2部分21-2の第1延伸部21cと第2延伸部21dとの接続部に位置する。パッド部32aの上面の少なくとも一部は保護膜42から露出している。パッド部32aの上面のうち保護膜42から露出した露出部は、導電性を有するワイヤなどにより、配線基板に配置された配線部と電気的に接続される。導電性部材33にアノード電位、n側電極32にカソード電位を与えることで、活性層22が発光する。活性層22からの光は、主に第4面20dから発光素子1の外部に取り出される。
【0029】
実施形態によれば、第1部分21-1の最大厚さを第2部分21-2の最大厚さよりも薄くすることで、第1部分21-1の上面である第4面20dからの光取り出し効率を向上させることができる。また、n側電極32が配置される第2部分21-2の最大厚さを第1部分21-1の最大厚さよりも厚くすることで、n側電極32とp側電極31との間の電流経路の断面積が大きくなり、その電流経路の抵抗が低減し、順方向電圧を低減することができる。光取り出し効率の向上と順方向電圧の低減を可能にするため、例えば、第1部分21-1の最大厚さと第2部分21-2の最大厚さとの差は、0.7μm以上1.6μm以下が好ましい。第1部分21-1の厚さは、例えば、0.6μm以上1.5μm以下とすることが好ましい。第1部分21-1の厚さを0.6μm以上にすることで、第1部分21-1が薄すぎることによるリーク電流の発生を防止することができる。また、第1部分21-1の厚さを1.5μm以下にすることで、光取り出し効率を高めることができる。第2部分21-2の厚さは、例えば、1.3μm以上3.1μm以下とすることができる。
【0030】
n側半導体層21は、アルミニウムとガリウムを含む窒化物半導体層から構成することができる。また、n側半導体層21は、第1層21aと、第1層21aよりも活性層22側に位置する第2層21bとを有することができる。第1層21a及び第2層21bは、例えば、AlGaN層である。活性層22からピーク波長が410nm以下の比較的波長の短い光が出射される場合、n側半導体層21にAlGaNを用いることで、n側半導体層21にGaNを用いるよりもn側半導体層21による光吸収を低減することができる。
【0031】
第1層21aのアルミニウム組成比は、第2層21bのアルミニウム組成比よりも低くすることが好ましい。第1層21aのアルミニウム組成比を低くすることで、第1層21aの抵抗を低減することができる。例えば、第1層21aのアルミニウム組成比は1%以上3%以下であり、第2層21bのアルミニウム組成比は3%以上5%以下である。第1層21aのアルミニウム組成比と第2層21bのアルミニウム組成比の差は、1%以上4%以下であることが好ましい。例えば、第1層21aのアルミニウム組成比は3%、第2層21bのアルミニウム組成比は5%とすることができる。
【0032】
第2部分21-2は、第1層21aと第2層21bとを有する。第2部分21-2の第2面20bは、第1層21aの上面である。第1部分21-1は、少なくとも第2層21bを有する。第1部分21-1には第1層21aが配置されていない。または、第1部分21-1の第1層21aの厚さは、第2部分21-2の第1層21aの厚さよりも薄い。
【0033】
第1層21aのアルミニウム組成比は第2層21bのアルミニウム組成比よりも低いため、第1層21aにおける光吸収率は第2層21bにおける光吸収率よりも高い。第1部分21-1の第1層21aの厚さを第2部分21-2の第1層21aの厚さよりも薄くする、または第1部分21-1に第1層21aを配置しないことで、第1部分21-1における光吸収を低減し、第4面20dからの光取り出し効率を向上させることができる。
【0034】
AlGaN層におけるアルミニウム組成比が高くなるにつれて、AlGaN層にクラックが発生しやすくなる。また、AlGaN層の厚さを厚くするにつれて、AlGaN層にクラックが発生しやすくなる。
【0035】
実施形態によれば、前述したように、n側電極32が配置される第2部分21-2の抵抗を低減するため、第2部分21-2の最大厚さを第1部分21-1の最大厚さよりも厚くする。このために、第2部分21-2に第2層21bだけでなく、第2層21bよりもアルミニウム組成比が低くクラックが発生しにくい第1層21aを配置している。これにより、第2層21bのみで第2部分21-2を、第1部分21-1よりも厚くするより、クラックの発生を低減しつつ、第2部分21-2の抵抗を低減して順方向電圧を低減することができる。
【0036】
次に、図4を参照して、サンプルA~Eについての光出力と順方向電圧の測定結果について説明する。図4において、左側の縦軸は光出力を表し、右側の縦軸は順方向電圧を表す。光出力及び順方向電圧ともに、サンプルAの測定値を1とした相対値を表す。棒グラフが光出力の測定値を表し、黒点が順方向電圧の測定値を表す。
【0037】
サンプルAにおいては、第1部分21-1の最大厚さと、第2部分21-2の最大厚さとを同じ厚さにした。サンプルB~Eにおいては、第1部分21-1の最大厚さを、第2部分21-2の最大厚さよりも薄くした。すなわち、サンプルAにおいては、n側半導体層21の全体の厚さを、サンプルB~Eにおける第2部分21-2の最大厚さよりも薄くした。サンプルAにおいて、n側半導体層21の全体の厚さを、1.3μmにした。サンプルB~Eにおいて、第1部分21-1の最大厚さを1.3μm、第2部分21-2の最大厚さを2.2μmにした。
【0038】
サンプルBにおいては、第1部分21-1と第2部分21-2との境界は、上面視においてp側電極31に重なる位置にある。第1面20aに平行な方向(第1方向Y及び第2方向X)において、第1部分21-1と第2部分21-2との境界と、p側電極31の外縁31aとの距離は10μmである。p側電極31の外縁31aは、p側半導体層23の下面上におけるp側電極31と絶縁性部材41との境界に位置する。すなわち、サンプルBにおいては、第2部分21-2の一部が、上面視においてp側電極31に重なる位置にある。
【0039】
サンプルCにおいては、第1部分21-1と第2部分21-2との境界は、上面視においてp側電極31の外縁31aに重なる位置にある。
【0040】
サンプルDにおいては、第1部分21-1と第2部分21-2との境界は、第1面20aに平行な方向においてp側電極31の外縁31aから10μm、p側電極31の外側に離れた位置にある。すなわち、サンプルDにおいては、第1部分21-1の一部が、上面視において絶縁性部材41に重なる位置にある。
【0041】
図5は、サンプルEにおける発光素子1の模式上面図である。サンプルEにおいても、n側電極32の延伸部32bは、第2部分21-2の第1延伸部21c及び第2延伸部21dに沿って、第2部分21-2の上面である第2面20bに配置されている。n側電極32のパッド部32aは、第2部分21-2の第1延伸部21cと第2延伸部21dとの接続部に位置する。
【0042】
サンプルEにおいては、上面視において、n側電極32のパッド部32aの近傍領域Aにおける第1部分21-1と第2部分21-2との境界は、サンプルDと同様に、第1面20aに平行な方向においてp側電極31の外縁31aから10μm、p側電極31の外側に離れた位置にある。n側電極32の延伸部32bの近傍領域における第1部分21-1と第2部分21-2との境界は、サンプルCと同様に、上面視においてp側電極31の外縁31aに重なる位置にある。上面視において、n側電極32のパッド部32aの近傍領域Aにおける第1部分21-1と第2部分21-2との境界と、p側電極31の外縁31aとの間の距離を、第1距離とする。n側電極32の延伸部32bの近傍領域における第1部分21-1と第2部分21-2との境界と、p側電極31の外縁31aとの間の距離を、第2距離とする。サンプルEにおいては、第1距離は、第2距離よりも大きい。サンプルEにおいては、n側電極32の延伸部32bの近傍領域よりも電流が集中しやすいパッド部32aの近傍領域Aのみ、第1部分21-1の一部が、上面視において絶縁性部材41に重なる位置にある。
【0043】
図4に示す結果より、n側半導体層21に薄い部分(第1部分21-1)と厚い部分(第2部分21-2)とを配置するサンプルB~Eは、n側半導体層21の全体を薄くするサンプルAよりも、順方向電圧を低くすることができる。
【0044】
第1部分21-1の一部が、上面視において、p側電極31に重ならず、絶縁性部材41に重なる位置にあるサンプルDにおいては、サンプルAと同等の光出力を確保しつつ、順方向電圧をサンプルAよりも低減することができる。サンプルDの測定結果の考察から、光取り出し効率の向上と順方向電圧の低減を可能にするために、第1部分21-1と第2部分21-2との境界は、第1面20aに平行な方向においてp側電極31の外縁31aから0.1μm以上15μm以下、好ましくは0.5μm以上15μm以下、p側電極31の外側に離れた位置にあることが好ましい。
【0045】
また、パッド部32aの近傍領域Aのみ、第1部分21-1の一部が、上面視において絶縁性部材41に重なる位置にあるサンプルEは、サンプルAと同等の光出力を確保しつつ、サンプルDよりも順方向電圧をさらに低減することができる。サンプルEの測定結果の考察から、前述した第1距離と第2距離との差は、0.1μm以上15μm以下が好ましく、0.5μm以上15μm以下がさらに好ましい。
【0046】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。本発明の上述した実施形態を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての形態も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものである。
【符号の説明】
【0047】
1…発光素子、11…基板、12…接合部材、20…半導体構造体、20a…第1面、20b…第2面、20c…第3面、20d…第4面、21…n側半導体層、21-1…第1部分、21-2…第2部分、21a…第1層、21b…第2層、22…活性層、23…p側半導体層、31…p側電極、32…n側電極、32a…パッド部、32b…延伸部、33…導電性部材、41…絶縁性部材、42…保護膜
図1
図2
図3
図4
図5