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特開2023-113562含フッ素組成物の保存方法、含フッ素組成物入り容器、及び含フッ素組成物入り容器の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113562
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】含フッ素組成物の保存方法、含フッ素組成物入り容器、及び含フッ素組成物入り容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/336 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
C08G65/336
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022190796
(22)【出願日】2022-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2022015928
(32)【優先日】2022-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榊原 愛理
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 卓也
【テーマコード(参考)】
4J005
【Fターム(参考)】
4J005AA00
4J005AB00
4J005BA00
4J005BB01
4J005BD05
4J005BD08
(57)【要約】
【課題】保存後の含フッ素組成物を用いても、基材に対して、撥水性に優れた表面処理層を形成し得る含フッ素組成物の保存方法を提供すること。
【解決手段】含フッ素組成物の保存方法は、反応性シリル基を有する含フッ素化合物を含む含フッ素組成物が収容された容器内の気相部における二酸化炭素の濃度を、25℃で4~380体積ppmとするものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性シリル基を有する含フッ素化合物を含む含フッ素組成物が収容された容器内の気相部における二酸化炭素の濃度を、25℃で4~380体積ppmとする含フッ素組成物の保存方法。
【請求項2】
前記気相部における二酸化炭素の濃度が、25℃で5~350体積ppmである請求項1に記載の含フッ素組成物の保存方法。
【請求項3】
前記容器内部の体積に占める前記気相部の割合が、10~60体積%である請求項1又は請求項2に記載の含フッ素組成物の保存方法。
【請求項4】
反応性シリル基を有する含フッ素化合物を含む含フッ素組成物が収容された密閉容器内の気相部における二酸化炭素の濃度を、25℃で4~380体積ppmに維持する含フッ素組成物の保存方法。
【請求項5】
前記気相部における二酸化炭素の濃度が、25℃で5~350体積ppmである請求項4に記載の含フッ素組成物の保存方法。
【請求項6】
前記密閉容器内部の体積に占める前記気相部の割合が、10~60体積%である請求項4又は請求項5に記載の含フッ素組成物の保存方法。
【請求項7】
反応性シリル基を有する含フッ素化合物を含む含フッ素組成物が収容された状態で密閉されており、気相部における二酸化炭素の濃度が25℃で4~380体積ppmである含フッ素組成物入り容器。
【請求項8】
前記気相部における二酸化炭素の濃度が、25℃で5~350体積ppmである請求項7に記載の含フッ素組成物入り容器。
【請求項9】
容器内部の体積に占める前記気相部の割合が、10~60体積%である請求項7又は請求項8に記載の含フッ素組成物入り容器。
【請求項10】
反応性シリル基を有する含フッ素化合物を含む含フッ素組成物が収容された容器を密閉することを含み、
前記容器内の気相部における二酸化炭素の濃度を25℃で4~380体積ppmとする、含フッ素組成物入り容器の製造方法。
【請求項11】
前記気相部における二酸化炭素の濃度が、25℃で5~350体積ppmである請求項10に記載の含フッ素組成物入り容器の製造方法。
【請求項12】
前記容器内部の体積に占める前記気相部の割合が、10~60体積%である請求項10又は請求項11に記載の含フッ素組成物入り容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、含フッ素組成物の保存方法、含フッ素組成物入り容器、及び含フッ素組成物入り容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素化合物は、基材の表面に、撥水撥油性、耐摩擦性、低指紋付着性、指紋汚れ除去性、潤滑性等を付与できるとして、近年、注目されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、末端に反応性シリル基を有する含フッ素化合物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017/038830号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
含フッ素化合物を含む含フッ素組成物を容器内に収容した状態で保存し、保存後の含フッ素組成物を用いて基材の表面処理を行った際に、含フッ素組成物の保存状態によっては、基材に対して十分な撥水性が付与されないことが分かった。
【0006】
本開示はこのような事情に鑑みてなされたものであり、本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、保存後の含フッ素組成物を用いても、基材に対して、撥水性に優れた表面処理層を形成し得る含フッ素組成物の保存方法を提供することにある。
本発明の別の実施形態が解決しようとする課題は、撥水性に優れた表面処理層を形成し得る含フッ素組成物が収容されている含フッ素組成物入り容器を提供することにある。
本発明の別の実施形態が解決しようとする課題は、撥水性に優れた表面処理層を形成し得る含フッ素組成物が収容されている含フッ素組成物入り容器の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 反応性シリル基を有する含フッ素化合物を含む含フッ素組成物が収容された容器内の気相部における二酸化炭素の濃度を、25℃で4~380体積ppmとする含フッ素組成物の保存方法。
<2> 前記気相部における二酸化炭素の濃度が、25℃で5~350体積ppmである<1>に記載の含フッ素組成物の保存方法。
<3>
前記容器内部の体積に占める前記気相部の割合が、10~60体積%である請求項1又は請求項2に記載の含フッ素組成物の保存方法。
<4> 反応性シリル基を有する含フッ素化合物を含む含フッ素組成物が収容された密閉容器内の気相部における二酸化炭素の濃度を、25℃で4~380体積ppmに維持する含フッ素組成物の保存方法。
<5> 前記気相部における二酸化炭素の濃度が、25℃で5~350体積ppmである請求項4に記載の含フッ素組成物の保存方法。
<6> 前記密閉容器内部の体積に占める前記気相部の割合が、10~60体積%である<4>又は<5>に記載の含フッ素組成物の保存方法。
<7> 反応性シリル基を有する含フッ素化合物を含む含フッ素組成物が収容された状態で密閉されており、気相部における二酸化炭素の濃度が25℃で4~380体積ppmである含フッ素組成物入り容器。
<8> 前記気相部における二酸化炭素の濃度が、25℃で5~350体積ppmである<7>に記載の含フッ素組成物入り容器。
<9> 容器内部の体積に占める前記気相部の割合が、10~60体積%である<7>又は<8>に記載の含フッ素組成物入り容器。
<10> 反応性シリル基を有する含フッ素化合物を含む含フッ素組成物が収容された容器を密閉することを含み、前記容器内の気相部における二酸化炭素の濃度を25℃で4~380体積ppmとする、含フッ素組成物入り容器の製造方法。
<11> 前記気相部における二酸化炭素の濃度が、25℃で5~350体積ppmである<10>に記載の含フッ素組成物入り容器の製造方法。
<12> 前記容器内部の体積に占める前記気相部の割合が、10~60体積%である<10>又は<11>に記載の含フッ素組成物入り容器の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、保存後の含フッ素組成物を用いても、基材に対して、撥水性に優れた表面処理層を形成し得る含フッ素組成物の保存方法が提供される。
本発明の別の実施形態によれば、撥水性に優れた表面処理層を形成し得る含フッ素組成物が収容されている含フッ素組成物入り容器が提供される。
本発明の別の実施形態によれば、撥水性に優れた表面処理層を形成し得る含フッ素組成物が収容されている含フッ素組成物入り容器の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示における以下の用語の意味は、以下の通りである。
本開示において、式(1)で表される化合物を化合物(1)と記す。他の式で表される化合物、基等もこれに準ずる。
ペルフルオロアルキル基とは、アルキル基の水素原子が全てフッ素原子で置換された基を意味する。また、フルオロアルキル基とは、パーシャルフルオロアルキル基とペルフルオロアルキル基とを合わせた総称である。パーシャルフルオロアルキル基とは、水素原子の1個以上がフッ素原子で置換され、かつ、水素原子を1個以上有するアルキル基である。すなわち、フルオロアルキル基は、1個以上のフッ素原子を有するアルキル基である。
「表面処理層」とは、基材の表面に、表面処理によって形成される層を意味する。
【0010】
<含フッ素組成物の保存方法>
本開示の含フッ素組成物の保存方法は、反応性シリル基を有する含フッ素化合物を含む含フッ素組成物が収容された容器内の気相部における二酸化炭素の濃度を、25℃で4~380体積ppmとするものである。
本開示において、気相部とは、含フッ素組成物を収容する容器内部の空間うち、含フッ素組成物が占める部分を除いた部分をいう。
【0011】
二酸化炭素は大気中に含まれる成分であり、含フッ素組成物を収容する容器の気相部にも、一定量含まれ得る化合物である。二酸化炭素は酸性物質であることから、気相部に含まれる二酸化炭素が含フッ素化合物に含まれる反応性シリル基の加水分解を促進する。
反応性シリル基の加水分解が促進されることで、含フッ素組成物を容器内に収容した状態で保存すると含フッ素化合物の縮合反応が生ずる。含フッ素化合物の縮合反応は、含フッ素化合物の劣化の原因となる。含フッ素化合物が劣化することで、基材に対して表面処理層が形成されにくくなる。一方、表面処理層を形成する際に反応性シリル基の加水分解が促進されることで、基材表面に強固な表面処理層が形成されやすくなる。
本発明者等は鋭意検討の結果、含フッ素組成物が収容された容器内の気相部における二酸化炭素の濃度を、25℃で4~380体積ppmとすることで、保存後の含フッ素組成物を用いて、基材に対して表面処理を行った場合に、基材に対して、撥水性に優れた表面処理層を形成することができることを見出し、本開示に係る発明を完成させた。また、本開示によれば、保存後のフッ素組成物は、耐摩擦性に優れた表面処理層を形成し得ることも見出された。
【0012】
以下、本開示の含フッ素組成物の保存方法について説明する。
【0013】
本開示の含フッ素組成物の保存方法では、反応性シリル基を有する含フッ素化合物を含む含フッ素組成物が、容器に収容される。
【0014】
(容器)
含フッ素組成物を収容するための容器は、特に限定されない。容器としては、例えば、固定した保存容器である貯蔵タンク、輸送に使用される充填ボンベ、2次充填ボンベ(サービス缶)等の耐圧容器が挙げられる。また、容器は、一時的に保存するための簡易な容器であってもよい。
【0015】
容器の材質は特に限定されず、例えば、ガラス、炭素鋼、マンガン鋼、クロムモリブデン鋼、ステンレス鋼、及びアルミニウム合金が挙げられる。
【0016】
容器を密閉するための蓋の形状は特に限定されず、平面視において、円形であってもよく、多角形であってもよい。中でも、含フッ素組成物の保存安定性を向上させる観点から、容器の蓋の形状は、多角形であることが好ましく、六角形~十二角形であることがより好ましい。
【0017】
含フッ素組成物を容器に収容する方法は特に限定されず、通常公知の方法を用いることができる。容器内部の体積に占める気相部の割合は、貯蔵安定性の観点から、60体積%以下であることが好ましく、50体積%以下であることがより好ましい。また、容器内部の体積に占める気相部の割合は、輸送しやすさの観点から、10体積%以上であることが好ましく、20体積%以上であることがより好ましい。
以上の観点から、容器内部の体積に占める気相部の割合は、10~60体積%であることが好ましく、20~50体積%であることがより好ましい。
【0018】
本開示の含フッ素組成物の保存方法では、含フッ素組成物が容器内に収容された後、容器を密閉することが好ましい。
【0019】
容器を密閉する方法は特に限定されず、例えば、容器の蓋を閉めることにより行われる。容器を密閉するに際し、内蓋を用いてもよい。
【0020】
含フッ素組成物が収容された容器内の気相部における二酸化炭素の濃度は、25℃で4~380体積ppmであり、5~350体積ppmが好ましく、8~320体積ppmがより好ましい。
容器内の気相部における二酸化炭素の濃度の調整方法は特に限定されるものではない。例えば、容器内を乾燥窒素、乾燥アルゴン等の不活性気体で置換した後、容器内に含フッ素組成物を充填してもよい。また、容器内に含フッ素組成物を充填した後、容器内を不活性気体で置換してもよい。
容器内の気相部における二酸化炭素の濃度は、ガスクロマトグラフのTCD(熱伝導度
検出器)を使用して測定できる。
【0021】
(含フッ素組成物)
本開示の含フッ素組成物の保存方法において、含フッ素組成物は、反応性シリル基を有する含フッ素化合物を含む。以下、反応性シリル基を有する含フッ素化合物の詳細について説明する。
【0022】
反応性シリル基とは、Si原子に反応性基が結合した基を意味する。
【0023】
含フッ素化合物が有する反応性シリル基の数は、1以上であり、表面処理層の耐摩擦性をより向上させる観点から、1~18が好ましく、2~12がより好ましく、2~8がさらに好ましい。
【0024】
反応性シリル基としては、下記式1で表される基が好ましい。
-Si(R)3-n …(1)
【0025】
式1中、Rは1価の炭化水素基であり、Lは加水分解性基又は水酸基であり、nは0~2の整数である。
【0026】
基(1)が1分子中に複数ある場合、複数の基(1)は、同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。原料の入手容易性、及び、含フッ素化合物の製造容易性の観点からは、複数の基(1)は、同じであることが好ましい。
【0027】
Rは、1価の炭化水素基であり、1価の飽和炭化水素基が好ましい。Rの炭素数は、1~6が好ましく、1~3がより好ましく、1~2がさらに好ましい。
【0028】
Lは、加水分解性基又は水酸基である。
加水分解性基は、加水分解反応により水酸基となる基である。すなわち、Si-Lで表される加水分解性を有するシリル基は、加水分解反応によりSi-OHで表されるシラノール基となる。シラノール基は、さらにシラノール基間で反応してSi-O-Si結合を形成する。また、シラノール基は、基材の表面に存在する酸化物に由来するシラノール基と脱水縮合反応して、Si-O-Si結合を形成できる。
【0029】
加水分解性基としては、例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、及びイソシアナート基(-NCO)が挙げられる。アルコキシ基は、炭素数1~4のアルコキシ基であることが好ましい。アリールオキシ基は、炭素数3~10のアリールオキシ基であることが好ましい。ただし、アリールオキシ基のアリール基は、ヘテロアリール基を含む。ハロゲン原子は、塩素原子であることが好ましい。アシル基は、炭素数1~6のアシル基であることが好ましい。アシルオキシ基は、炭素数1~6のアシルオキシ基であることが好ましい。
【0030】
中でも、Lは、含フッ素化合物の製造容易性の観点から、炭素数1~4のアルコキシ基又はハロゲン原子であることが好ましい。Lは、塗布時のアウトガスが少なく、含フッ素化合物の保存安定性がより優れる点から、炭素数1~4のアルコキシ基であることが好ましい。含フッ素化合物の長期の保存安定性が必要な場合には、Lは、エトキシ基であることがより好ましい。塗布後の反応時間を短時間とする場合には、Lは、メトキシ基であることがより好ましい。
【0031】
nは、0~2の整数であり、0又は1が好ましく、0がより好ましい。Lが複数存在することによって、表面処理層の基材への密着性がより強固になる。
nが1以下である場合、1分子中に存在する複数のLは、同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。原料の入手容易性、及び、含フッ素化合物の製造容易性の観点から、複数のLは同じであることが好ましい。nが2である場合、1分子中に存在する複数のRは同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。原料の入手容易性、及び、含フッ素化合物の製造容易性の観点から、複数のRは同じであることが好ましい。
【0032】
含フッ素化合物は、表面処理層の撥水性を向上させる観点から、ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖を有することが好ましい。
【0033】
ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖は、下記式2で表される。
(OX) …(2)
【0034】
式2中、Xは、1個以上のフッ素原子を有するフルオロアルキレン基である。
【0035】
フルオロアルキレン基の炭素数は、表面処理層の耐候性及び耐食性を向上させる観点から、1~6が好ましく、2~4がより好ましい。
フルオロアルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよい。
フルオロアルキレン基におけるフッ素原子の数は、表面処理層の耐食性を向上させる点から、炭素原子の数の1倍~2倍が好ましく、1.7倍~2倍がより好ましい。
中でも、フルオロアルキレン基は、フルオロアルキレン基中の全ての水素原子がフッ素原子に置換された基(すなわち、ペルフルオロアルキレン基)であることが好ましい。
【0036】
(OX)の具体例としては、-OCHF-、-OCFCHF-、-OCHFCF-、-OCFCH-、-OCHCF-、-OCFCFCHF-、-OCHFCFCF-、-OCFCFCH-、-OCHCFCF-、-OCFCFCFCH-、-OCHCFCFCF-、-OCFCFCFCFCH-、-OCHCFCFCFCF-、-OCFCFCFCFCFCH-、-OCHCFCFCFCFCF-、-OCF-、-OCFCF-、-OCFCFCF-、-OCF(CF)CF-、-OCFCFCFCF-、-OCF(CF)CFCF-、-OCFCFCFCFCF-、-OCFCFCFCFCFCF-、-O-cycloC-、-O-cycloC-、及び-O-cycloC10-が挙げられる。
ここで、-cycloC-は、ペルフルオロシクロブタンジイル基を意味する。ペルフルオロシクロブタンジイル基としては、ペルフルオロシクロブタン-1,2-ジイル基、及びペルフルオロシクロブタン-1,3-ジイル基が挙げられる。-cycloC-は、ペルフルオロシクロペンタンジイル基を意味する。ペルフルオロシクロペンタンジイル基としては、ペルフルオロシクロペンタン-1,2-ジイル基、及びペルフルオロシクロペンタン-1,3-ジイル基が挙げられる。-cycloC10-は、ペルフルオロシクロヘキサンジイル基を意味する。ペルフルオロシクロヘキサンジイル基としては、ペルフルオロシクロヘキサン-1,2-ジイル基、ペルフルオロシクロヘキサン-1,3-ジイル基、及びペルフルオロシクロヘキサン-1,4-ジイル基が挙げられる。
【0037】
(OX)の繰り返し数mは、2以上の整数であり、2~200の整数がより好ましく、5~150の整数がさらに好ましく、5~100の整数が特に好ましく、10~50の整数が最も好ましい。
【0038】
(OX)は、2種以上の(OX)を含んでいてもよい。
2種以上の(OX)の結合順序は限定されず、ランダム、交互、及びブロックのいずれに配置されていてもよい。
2種以上の(OX)を含むとは、含フッ素化合物中において、炭素数の異なる2種以上の(OX)が存在すること、水素原子数が異なる2種以上の(OX)が存在すること、水素原子の位置が異なる2種以上の(OX)が存在すること、及び、炭素数が同一であっても側鎖の有無や側鎖の種類(例えば、側鎖の数、側鎖の炭素数等)が異なる2種以上の(OX)が存在することをいう。
2種以上の(OX)の配置については、例えば、{(OCFm21(OCFCFm22}で表される構造は、m21個の(OCF)とm22個の(OCFCF)とがランダムに配置されていることを表す。また、(OCFCF-OCFCFCFCFm25で表される構造は、m25個の(OCFCF)とm25個の(OCFCFCFCF)とが交互に配置されていることを表す。
【0039】
中でも、(OX)は、[(OCHma(2-ma)m11(OCmb(4-mb)m12(OCmc(6-mc)m13(OCmd(8-md)m14(OCme(10-me)m15(OCmf(12-mf)m16(O-cycloCmg(6-mg)m17(O-cycloCmh(8-mh)m18(O-cycloCmi(10-mi)m19]が好ましい。ここで、-cycloCmg(6-mg)は、フルオロシクロブタン-ジイル基を意味する。フルオロシクロブタン-ジイル基としては、フルオロシクロブタン-1,2-ジイル基、及びフルオロシクロブタン-1,3-ジイル基が挙げられる。-cycloCmh(8-mh)は、フルオロシクロペンタンジイル基を意味する。フルオロシクロペンタンジイル基としては、フルオロシクロペンタン-1,2-ジイル基、及びフルオロシクロペンタン-1,3-ジイル基が挙げられる。-cycloCmi(10-mi)は、フルオロシクロヘキサンジイル基を意味する。フルオロシクロヘキサンジイル基としては、フルオロシクロヘキサン-1,2-ジイル基、フルオロシクロヘキサン-1,3-ジイル基、及びフルオロシクロヘキサン-1,4-ジイル基が挙げられる。
maは0又は1であり、mbは0~3の整数であり、mcは0~5の整数であり、mdは0~7の整数であり、meは0~9の整数であり、mfは0~11の整数であり、mgは0~5の整数であり、mhは0~7の整数であり、miは0~9の整数である。
m11、m12、m13、m14、m15、m16、m17、m18及びm19は、それぞれ独立に、0以上の整数であり、100以下が好ましい。
m11+m12+m13+m14+m15+m16+m17+m18+m19は2以上の整数であり、2~200の整数がより好ましく、5~150の整数がより好ましく、5~100の整数がさらに好ましく、10~50の整数が特に好ましい。
【0040】
中でも、m12は2以上の整数が好ましく、2~200の整数が特に好ましい。
また、Cmc(6-mc)、Cmd(8-md)、Cme(10-me)及びCmf(12-mf)は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよいが、表面処理層の耐摩擦性を向上させる観点から、直鎖状が好ましい。
【0041】
なお、上記式は単位の種類とその数を表すものであり、単位の配列を表すものではない。すなわち、m11~m19は単位の数を表すものであり、例えば、(OCHma(2-ma)m11は、(OCHma(2-ma))単位がm11個連続したブロックを表すものではない。同様に、(OCHma(2-ma))~(O-cycloCmi(10-mi))の記載順は、その記載順にそれらが配列していることを表すものではない。
上記式において、m11~m19の2以上が0でない場合(すなわち、(OX)が2種以上の単位から構成されている場合)、異なる単位の配列は、ランダム配列、交互配列、ブロック配列及びそれら配列の組合せのいずれであってもよい。
さらに、上記各単位も、また、その単位が2以上含まれている場合、それらの単位は異なっていてもよい。例えば、m11が2以上の場合、複数の(OCHma(2-ma))は同一であっても異なっていてもよい。
【0042】
(OX)は、下記の構造を有することが好ましい。
{(OCFm21(OCFCFm22}、
(OCFCFm23
(OCFCFCFm24
(OCFCF-OCFCFCFCFm25
(OCFCFCFCFCFm26(OCFm27
(OCFCFCFCFCFm26(OCFCFm27
(OCFCFCFCFCFCFm26(OCFm27
(OCFCFCFCFCFCFm26(OCFCFm27
(OCFCFCFCFCF-OCFm28
(OCFCFCFCFCF-OCFCFm28
(OCFCFCFCFCFCF-OCFm28
(OCFCFCFCFCFCF-OCFCFm28
(OCF-OCFCFCFCFCFm28
(OCF-OCFCFCFCFCFCFm28
(OCFCF-OCFCFCFCFCFm28
(OCFCF-OCFCFCFCFCFCFm28
ただし、m21は1以上の整数であり、m22は1以上の整数であり、m21+m22は2~500の整数であり、m23及びm24はそれぞれ独立に、2~500の整数であり、m25は、1~250の整数であり、m26及びm27はそれぞれ独立に、1以上の整数であり、m26+m27は、2~500の整数であり、m28は、1~250の整数
である。
【0043】
(OX)は、含フッ素化合物の製造容易性の観点から、下記構造を有することがより好ましい。
{(OCFm21(OCFCFm22}、
(OCFCFCFm24
(OCFCF{(OCFm21(OCFCFm22-2}、
(OCFCF-OCFCFCFCFm25-1OCFCF
(OCFCFCFCFCF-OCFm28
(OCFCFCFCFCFCF-OCFm28
(OCFCF-OCFCFCFCFCFm28-1OCFCF
(OCFCF-OCFCFCFCFCFCFm28-1OCFCF
ただし、m22-2、m25-1及びm28-1については、1以上の整数となるように、m22、m25及びm28の数が選択される。
【0044】
中でも、表面処理層の耐摩擦性がより優れる点から、(OX)は、{(OCFm21(OCFCFm22}であることが好ましい。
{(OCFm21(OCFCFm22}において、m22/m21は、表面処理層の耐摩擦性がより優れる点から、0.1~10が好ましく、0.2~5.0がより好ましく、0.2~2.0がさらに好ましく、0.2~1.5が特に好ましく、0.2~0.85が最も好ましい。
【0045】
ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖の数平均分子量(Mn)は、1,000~20,000が好ましく、1,500~15,000がより好ましく、2,000~10,000が特に好ましい。
Mnが1,000以上であれば、含フッ素化合物の分子鎖の流動性及びフッ素含有量が高くなるので、表面処理層の耐摩擦性がより優れる。
【0046】
含フッ素化合物は、表面処理層の耐摩擦性により優れる点で、下記式3で表される化合物が好ましい。
[A-(OX)-][-Si(R)3-n …(3)
【0047】
式3中、Aは、ペルフルオロアルキル基又は-Y[-Si(R)3-nであり、Yは(j+g)価の連結基であり、Yは(k+1)価の連結基であり、jは1以上の整数であり、gは1以上の整数であり、kは1以上の整数であり、R、L、n、X、及びmの定義は、上述の通りである。
【0048】
ペルフルオロアルキル基中の炭素数は、表面処理層の耐摩擦性がより優れる点から、1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~6がさらに好ましく、1~3が特に好ましい。
ペルフルオロアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよい。
ただし、Aが-Y[-Si(R)3-nである場合、jは1~3が好ましい。
【0049】
ペルフルオロアルキル基としては、例えば、CF-、CFCF-、CFCFCF-、CFCFCFCF-、CFCFCFCFCF-、CFCFCFCFCFCF-、及びCFCF(CF)-が挙げられる。
ペルフルオロアルキル基としては、表面処理層の撥水性がより優れる点から、CF-、CFCF-、又はCFCFCF-が好ましい。
【0050】
は、(k+1)価の連結基である。
としては、本開示の効果を損なわない基であればよく、例えば、エーテル性酸素原子又は2価のオルガノポリシロキサン残基を有していてもよいアルキレン基、炭素原子、窒素原子、ケイ素原子、2~8価のオルガノポリシロキサン残基、及び、後述する式(3-1A)、式(3-1B)、式(3-1A-1)~(3-1A-7)からSi(R)3-nを除いた基が挙げられる。
また、Yは、後述する基(g2-1)~基(g2-14)であってもよい。
【0051】
は、(j+g)価の連結基である。
は、本開示の効果を損なわない基であればよく、例えば、エーテル性酸素原子又は2価のオルガノポリシロキサン残基を有していてもよいアルキレン基、炭素原子、窒素原子、ケイ素原子、2~8価のオルガノポリシロキサン残基、及び、後述する式(3-1A)、式(3-1B)、式(3-1A-1)~(3-1A-7)からSi(R)3-nを除いた基が挙げられる。
また、Yは、後述する基(g2-1)~(g2-14)であってもよい。
【0052】
jは、1以上の整数である。表面処理層の撥水性がより優れる点から、jは1~6であることが好ましい。含フッ素化合物を製造しやすい点から、jは1であることが特に好ましい。
【0053】
gは、1以上の整数である。表面処理層の耐摩擦性がより優れる点からは、gは、1~15であることが好ましく、1~6であることがより好ましく、2~4であることがさらに好ましく、2又は3であることが特に好ましい。一方で、表面処理層の指紋除去性がより優れる点からは、gは、1~3であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0054】
kは、1以上の整数である。表面処理層の耐摩擦性がより優れる点からは、kは、1~15であることが好ましく、1~6であることがより好ましく、2~4であることがさらに好ましく、2又は3であることが特に好ましい。一方で、表面処理層の指紋除去性がより優れる点からは、kは、1~3であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
Aが-Y[-Si(R)3-nの場合、表面処理層の耐摩擦性がより優れる点からは、k+gは、2~25であることが好ましく、4~18であることがより好ましく、6~12であることが特に好ましい。一方で、表面処理層の指紋除去性がより優れる点からは、k+gは、2~6であることが好ましく、2~4であることがより好ましく、2であることが特に好ましい。
【0055】
化合物(3)が[-Si(R)3-n]を複数有する場合、複数の[-Si(R)3-n]は同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0056】
化合物(3)としては、表面処理層の耐摩擦性がより優れる点から、下式(3-1)で表される化合物及び下式(3-2)で表される化合物が好ましく、下式(3-2)で表される化合物が特に好ましい。
[Rf1-(OX)-]j110[-Si(R)3-ng1 …(3-1)
[L3-n(R)Si-]k212-(OX)-Y11[-Si(R)3-ng2 …(3-2)
【0057】
式(3-1)中、X、L、R、m、nの定義は、式(3)中の各基の定義と同義である。Y10は、(j1+g1)価の連結基であり、その具体例は式(3)中のYと同じである。Rf1は、ペルフルオロアルキル基であり、ペルフルオロアルキル基の好適態様及び具体例は上述の通りである。j1及びg1はそれぞれ、式(3)中のj及びgの定義と同義である。
【0058】
式(3-2)中、X、L、R、m、nの定義は、式(3)中の各基の定義と同義である。Y11は、(g2+1)価の連結基であり、その具体例は式(3)中のYと同じである。Y12は、(k2+1)価の連結基であり、その具体例は式(3)中のYと同じである。k2及びg2はそれぞれ、式(3)におけるk及びgの定義と同義である。
化合物(3-1)が[Rf1-(OX)-]を複数有する場合、複数の[Rf1-(OX)-]は同一であっても異なっていてもよい。化合物(3-1)及び化合物(3-2)が[-Si(R)3-n]を複数有する場合、複数の[-Si(R)3-n]は同一であっても異なっていてもよい。
【0059】
式(3-1)における-Y10[-Si(R)3-ng1で表される基、並びに、式(3-2)における-Y11[-Si(R)3-ng2で表される基及びY12[-Si(R)3-nk2で表される基はそれぞれ、基(3-1A)又は基(3-1B)が好ましい。
【0060】
-Q-X31(-Q-Si(R)3-n(-R31 …(3-1A)
-Q-[CHC(R32)(-Q-Si(R)3-n)]-R33 …(3-1B)
なお、式(3-1A)及び式(3-1B)中、R、L、及び、nの定義は、上述した通りである。
【0061】
は、単結合又は2価の連結基である。
2価の連結基としては、例えば、2価の炭化水素基、2価の複素環基、-O-、-S-、-SO-、-N(R)-、-C(O)-、-Si(R-及び、これらを2種以上組み合わせた基が挙げられる。
上記2価の炭化水素基としては、2価の飽和炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基、アルケニレン基、アルキニレン基であってもよい。2価の飽和炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状であってもよく、例えば、アルキレン基が挙げられる。その炭素数は、1~20が好ましい。また、2価の芳香族炭化水素基としては、炭素数5~20のものが好ましく、例えば、フェニレン基が挙げられる。それ以外にも、炭素数2~20のアルケニレン基、炭素数2~20のアルキニレン基であってもよい。
上記Rは、アルキル基(好ましくは炭素数1~10)、又は、フェニル基である。上記Rは、水素原子又はアルキル基(好ましくは炭素数1~10)である。
なお、上記これらを2種以上組み合わせた基としては、例えば、-OC(O)-、-C(O)O-、-C(O)N(R)-、-N(R)C(O)-、-N(R)C(O)N(R)-、-N(R)C(O)O-、-OC(O)N(R)-、-SON(R)-、-N(R)SO-、-C(O)N(R)-を有するアルキレン基、-N(R)C(O)-を有するアルキレン基、エーテル性酸素原子を有するアルキレン基、-OC(O)-を有するアルキレン基、-C(O)O-を有するアルキレン基、-SON(R)-を有するアルキレン基、アルキレン基-Si(R-フェニレン基-Si(Rが挙げられる。
【0062】
31は、単結合、アルキレン基、炭素原子、窒素原子、ケイ素原子、2~8価のオルガノポリシロキサン残基、又は(h+i+1)価の環を有する基である。
なお、上記アルキレン基は、-O-、シルフェニレン骨格基、2価のオルガノポリシロキサン残基又はジアルキルシリレン基を有していてもよい。アルキレン基は、-O-、シルフェニレン骨格基、2価のオルガノポリシロキサン残基及びジアルキルシリレン基からなる群から選択される基を複数有していてもよい。
31で表されるアルキレン基の炭素数は、1~20が好ましく、1~10が特に好ましい。
2~8価のオルガノポリシロキサン残基としては、2価のオルガノポリシロキサン残基、及び、後述する(w2+1)価のオルガノポリシロキサン残基が挙げられる。
式(3-1A)中、X31が(h+i+1)価の環を有する基である場合、Q、(-Q-Si(R)3-n)及びR31は、該環を構成する原子に直接結合している。ただし、該環はオルガノポリシロキサン環以外の環である。
31における環は、単環、縮合多環、橋かけ環、スピロ環及び集合多環のいずれであってもよく、環を構成する原子は、炭素原子のみからなる炭素環でもよく、2価以上の原子価を有するヘテロ原子と炭素原子とからなるヘテロ環でもよい。また、環を構成する原子間の結合は、単結合であってもよく、多重結合であってもよい。さらに、環は芳香族性の環であってもよく、非芳香族性の環であってもよい。
単環としては、4員環~8員環が好ましく、5員環及び6員環がより好ましい。縮合多環としては、4員環~8員環の2以上が縮合した縮合多環が好ましく、5員環及び6員環から選ばれる環の2又は3個結合した縮合多環、及び、5員環及び6員環から選ばれる環の1又は2個と4員環1個が結合した縮合多環がより好ましい。橋かけ環としては、5員環又は6員環を最大の環とする橋かけ環が好ましく、スピロ環としては、4員環~6員環の2つからなるスピロ環が好ましい。集合多環としては、5員環及び6員環から選ばれる環の2又は3個が単結合、炭素原子の1~3個、又は原子価が2又は3のヘテロ原子1個を介して結合した集合多環が好ましい。なお、集合多環においては、各環にQ、(-Q-Si(R)3-n)及びR31(i=1以上の場合)のいずれかが結合していることが好ましい。
上記環を構成するヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子及びイオウ原子が好ましく、窒素原子及び酸素原子がより好ましい。環を構成するヘテロ原子の数は3個以下が好ましい。また、環を構成するヘテロ原子の数が2個以上の場合、それらのヘテロ原子は異なっていてもよい。
【0063】
31における環としては、化合物が製造しやすく、表面処理層の耐摩擦性がさらに優れる点から、3~8員環の脂肪族環、ベンゼン環、3~8員環のヘテロ環、これらの環のうちの2又は3個が縮合した縮合多環、5員環又は6員環を最大の環とする橋かけ環、及び、これらの環のうちの2つ以上を有し、連結基が単結合、炭素数3以下のアルキレン基、酸素原子又は硫黄原子である集合多環からなる群から選ばれる1種が好ましい。
好ましい環は、ベンゼン環、5員又は6員の脂肪族環、窒素原子又は酸素原子を有する5員又は6員のヘテロ環、及び、5員又は6員の炭素環と4~6員のヘテロ環との縮合多環である。
具体的な環としては、以下に示す環と、1,3-シクロヘキサジエン環、1,4-シクロヘキサジエン環、アントラセン環、シクロプロパン環、デカヒドロナフタレン環、ノルボルネン環、ノルボルナジエン環、フラン環、ピロール環、チオフェン環、ピラジン環、モルホリン環、アジリジン環、イソキノリン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、ピラン環、ピリダジン環、ピリミジン環、及びインデン環が挙げられる。なお、以下には、オキソ基(=O)を有する環も示す。
【0064】
【化1】
【0065】
31における環を構成する原子の環を構成しない結合手は、Q、(-Q-Si(R)3-n)又はR31に結合する結合手である。残余の結合手がある場合には、残余の結合手は、水素原子又は置換基に結合している。該置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基(炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子を含んでいてもよい。)、シクロアルキル基、アルケニル基、アリル基、アルコキシ基、オキソ基(=O)等が挙げられる。
また、環を構成する炭素原子の1個が、Q、(-Q-Si(R)3-n)又はR31に結合する結合手を2つ有する場合、その1個の炭素原子にQと(-Q-Si(R)3-n)とが結合していてもよく、2つの(-Q-Si(R)3-n)が結合していてもよい。Qと、(-Q-Si(R)3-n)又はR31とは別の環構成原子に結合していることが好ましい。h個の(-Q-Si(R)3-n)はそれぞれ別個の環構成原子に結合してもよく、そのうちの2個は1個の環構成炭素原子に結合してもよく、さらに2個の(-Q-Si(R)3-n)が結合した環構成炭素原子は2個以上存在してもよい。i個のR31はそれぞれ別個の環構成原子に結合してもよく、そのうちの2個は1個の環構成炭素原子に結合してもよく、さらに2個のR31が結合した環構成炭素原子は2個以上存在してもよい。
【0066】
は、単結合又は2価の連結基である。
2価の連結基の定義は、上述したQで説明した定義と同義である。
【0067】
31は、水素原子、水酸基又はアルキル基である。
アルキル基の炭素数は、1~5が好ましく、1~3がより好ましく、1が特に好ましい。
【0068】
31が単結合又はアルキレン基の場合、hは1、iは0であり、
31が窒素原子の場合、hは1~2の整数であり、iは0~1の整数であり、h+i=2を満たし、
31が炭素原子又はケイ素原子の場合、hは1~3の整数であり、iは0~2の整数であり、h+i=3を満たし、
31が2~8価のオルガノポリシロキサン残基の場合、hは1~7の整数であり、iは0~6の整数であり、h+i=1~7を満たす。
31が(h+i+1)価の環を有する基の場合、hは1~7の整数であり、iは0~6の整数であり、h+i=1~7を満たす。
(-Q-Si(R)3-n)が2個以上ある場合は、2個以上の(-Q-Si(R)3-n)は、同一であっても異なっていてもよい。R31が2個以上ある場合は、2個以上の(-R31)は、同一であっても異なっていてもよい。
【0069】
は、単結合又は2価の連結基である。
2価の連結基の定義は、上述したQで説明した定義と同義である。
エーテル性酸素原子を有していてもよいアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
【0070】
32は、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基であり、化合物を製造しやすい点から、水素原子であることが好ましい。
アルキル基としては、メチル基が好ましい。
【0071】
は、単結合又はアルキレン基である。アルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、1~6が特に好ましい。化合物を製造しやすい点から、Qは、単結合又はCH-であることが好ましい。
【0072】
33は、水素原子又はハロゲン原子であり、化合物を製造しやすい点から、水素原子であることが好ましい。
【0073】
yは、1~10の整数であり、1~6の整数であることが好ましい。
2個以上の[CHC(R32)(-Q-Si(R)3-n)]は、同一であっても異なっていてもよい。
【0074】
基(3-1A)としては、基(3-1A-1)~(3-1A-7)が好ましい。
-(X32s1-Qb1-Si(R)3-n …(3-1A-1)
-(X33s2-Qa2-N[-Qb2-Si(R)3-n …(3-1A-2)
-Qa3-Si(R)[-Qb3-Si(R)3-n …(3-1A-3)
-[Qs4-Qa4-(O)t4-C[-(O)u4-Qb4-Si(R)3-n3-w1(-R31w1 …(3-1A-4)
-Qa5-Si[-Qb5-Si(R)3-n …(3-1A-5)
-[Q-Qa6-Z[-Qb6-Si(R)3-nw2 …(3-1A-6)
-[Qs4-Qa4-(O)t4-Z[-(O-Qb4u4-Si(R)3-nw3(-OH)w4 …(3-1A-7)
なお、式(3-1A-1)~(3-1A-7)中、R、L、及び、nの定義は、上述した通りである。
【0075】
基(3-1A-1)において、X32は、-O-、-C(O)O-、-SON(R)-、-N(R)SO-、-N(R)C(O)-、又は、-C(O)N(R)-である(ただし、式中のNはQb1に結合する)。
の定義は、上述した通りである。
s1は、0又は1である。
【0076】
b1は、アルキレン基である。なお、アルキレン基は、-O-、シルフェニレン骨格基、2価のオルガノポリシロキサン残基又はジアルキルシリレン基を有していてもよい。アルキレン基は、-O-、シルフェニレン骨格基、2価のオルガノポリシロキサン残基及びジアルキルシリレン基からなる群から選択される基を複数有していてもよい。
なお、アルキレン基が-O-、シルフェニレン骨格基、2価のオルガノポリシロキサン残基又はジアルキルシリレン基を有する場合、炭素原子-炭素原子間にこれらの基を有することが好ましい。
b1で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
【0077】
b1としては、s1が0の場合は、-CHOCHCHCH-、-CHOCHCHOCHCHCH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHOCHCHCHSi(CHOSi(CHCHCH-が好ましい。(X32s1が-O-の場合は、-CHCHCH-、-CHCHOCHCHCH-が好ましい。(X32s1が-C(O)N(R)-の場合は、炭素数2~6のアルキレン基が好ましい(ただし、式中のNはQb1に結合する)。Qb1がこれらの基であると化合物が製造しやすい。
【0078】
基(3-1A-1)の具体例としては、以下の基が挙げられる。下記式中、*は、(OX)との結合位置を表す。
【化2】
【0079】
基(3-1A-2)において、X33は、-O-、-NH-、-C(O)O-、-OC(O)-、-SON(R)-、-N(R)SO-、-N(R)C(O)-、-OC(O)N(R)-、又は、-C(O)N(R)-である。
の定義は、上述した通りである。
【0080】
a2は、単結合、アルキレン基、-C(O)-、又は、炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-C(O)N(R)-、-N(R)C(O)-、-N(R)C(O)N(R)-、-N(R)C(O)O-、-OC(O)N(R)-、-SON(R)-、-N(R)SO-、-C(O)N(R)-、もしくは-NH-を有する基である。
a2で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、1~6が特に好ましい。
a2で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-C(O)N(R)-、-N(R)C(O)-、-N(R)C(O)N(R)-、-N(R)C(O)O-、-OC(O)N(R)-、-SON(R)-、-N(R)SO-、-C(O)N(R)-、又は-NH-を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
【0081】
a2は、化合物を製造しやすい点から、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHOCHCH-、-CHNHCHCH-、-CHOC(O)CHCH-、又は-C(O)-が好ましい。
【0082】
s2は、0又は1(ただし、Qa2が単結合の場合は0である。)である。化合物を製造しやすい点から、0が好ましい。
【0083】
b2は、アルキレン基、又は、炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間に、2価のオルガノポリシロキサン残基、エーテル性酸素原子もしくは-NH-を有する基である。
b2で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
b2で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間に、2価のオルガノポリシロキサン残基、エーテル性酸素原子又は-NH-を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
【0084】
b2としては、化合物を製造しやすい点から、-CHCHCH-、-CHCHOCHCHCH-が好ましい(ただし、右側がSiに結合する。)。
【0085】
2個の[-Qb2-Si(R)3-n]は、同一であっても異なっていてもよい。
【0086】
基(3-1A-2)の具体例としては、以下の基が挙げられる。下記式中、*は、(OX)との結合位置を表す。
【化3】
【0087】
基(3-1A-3)において、Qa3は、単結合、又は、エーテル性酸素原子を有していてもよいアルキレン基であり、化合物を製造しやすい点から、単結合が好ましい。
エーテル性酸素原子を有していてもよいアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
【0088】
は、水素原子、水酸基又はアルキル基である。Rで表されるアルキル基の炭素数は、1~4が好ましい。
【0089】
b3は、アルキレン基、又は、炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子もしくは2価のオルガノポリシロキサン残基を有する基である。
b3で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
b3で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子又は2価のオルガノポリシロキサン残基を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
b3は、化合物を製造しやすい点から、-CHCH-、-CHCHCH-、又は-CHCHCHCHCHCHCHCH-が好ましい。
【0090】
2個の[-Qb3-Si(R)3-n]は、同一であっても異なっていてもよい。
【0091】
基(3-1A-3)の具体例としては、以下の基が挙げられる。下記式中、*は、(OX)との結合位置を表す。
【化4】
【0092】
基(3-1A-4)において、Qは、-C(O)O-、-OC(O)-、-SON(R)-、-N(R)SO-、-N(R)C(O)-、-OC(O)N(R)-、又は、-C(O)N(R)-である。
31の定義は、上述した通りである。
s4は、0又は1である。
a4は、単結合、又は、エーテル性酸素原子を有していてもよいアルキレン基である。
エーテル性酸素原子を有していてもよいアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
t4は、0又は1(ただし、Qa4が単結合の場合は0である。)である。
-Qa4-(O)t4-としては、化合物を製造しやすい点から、s4が0の場合は、単結合、-CHO-、-CHOCH-、-CHOCHCHO-、-CHOCHCHOCH-、-CHOCHCHCHCHOCH-が好ましく(ただし、左側が(OX)に結合する。)、s4が1の場合は、単結合、-CH-、-CHCH-が好ましい。
【0093】
b4は、アルキレン基であり、上記アルキレン基は-O-、-C(O)N(R)-(Rの定義は、上述した通りである。)、シルフェニレン骨格基、2価のオルガノポリシロキサン残基又はジアルキルシリレン基を有していてもよい。
なお、アルキレン基が-O-又はシルフェニレン骨格基を有する場合、炭素原子-炭素原子間に-O-又はシルフェニレン骨格基を有することが好ましい。また、アルキレン基が-C(O)N(R)-、ジアルキルシリレン基又は2価のオルガノポリシロキサン残基を有する場合、炭素原子-炭素原子間又は(O)u4と結合する側の末端にこれらの基を有することが好ましい。
b4で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
【0094】
u4は、0又は1である。
-(O)u4-Qb4-としては、化合物を製造しやすい点から、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHOCHCHCH-、-CHOCHCHCHCHCH-、-OCHCHCH-、-OSi(CHCHCHCH-、-OSi(CHOSi(CHCHCHCH-、-CHCHCHSi(CHPhSi(CHCHCH-が好ましい(ただし、右側がSiに結合する。)。
【0095】
w1は、0~2の整数であり、0又は1が好ましく、0が特に好ましい。
[-(O)u4-Qb4-Si(R)3-n]が2個以上ある場合は、2個以上の[-(O)u4-Qb4-Si(R)3-n]は、同一であっても異なっていてもよい。
31が2個以上ある場合は、2個以上の(-R31)は、同一であっても異なっていてもよい。
【0096】
基(3-1A-4)の具体例としては、以下の基が挙げられる。下記式中、*は、(OX)との結合位置を表す。
【化5】

【化6】
【0097】
基(3-1A-5)において、Qa5は、エーテル性酸素原子を有していてもよいアルキレン基である。
エーテル性酸素原子を有していてもよいアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
a5としては、化合物を製造しやすい点から、-CHOCHCHCH-、-CHOCHCHOCHCHCH-、-CHCH-、-CHCHCH-が好ましい(ただし、右側がSiに結合する。)。
【0098】
b5は、アルキレン基、又は、炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子もしくは2価のオルガノポリシロキサン残基を有する基である。
b5で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
b5で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子又は2価のオルガノポリシロキサン残基を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
b5としては、化合物を製造しやすい点から、-CHCHCH-、-CHCHOCHCHCH-が好ましい(ただし、右側がSi(R)3-nに結合する。)。
【0099】
3個の[-Qb5-Si(R)3-n]は、同一であっても異なっていてもよい。
【0100】
基(3-1A-5)の具体例としては、以下の基が挙げられる。下記式中、*は、(OX)との結合位置を表す。
【化7】
【0101】
基(3-1A-6)中のQの定義は、上述の基(3-1A-4)において定義した通りである。
vは、0又は1である。
【0102】
a6は、エーテル性酸素原子を有していてもよいアルキレン基である。
エーテル性酸素原子を有していてもよいアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
a6としては、化合物を製造しやすい点から、-CHOCHCHCH-、-CHOCHCHOCHCHCH-、-CHCH-、-CHCHCH-が好ましい(ただし、右側がZに結合する。)。
【0103】
は、(w2+1)価のオルガノポリシロキサン残基である。
w2は、2~7の整数である。
(w2+1)価のオルガノポリシロキサン残基としては、下記の基が挙げられる。ただし、下式におけるRは、上述の通りである。
【化8】
【0104】
b6は、アルキレン基、又は、炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子もしくは2価のオルガノポリシロキサン残基を有する基である。
b6で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
b6で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子又は2価のオルガノポリシロキサン残基を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
b6としては、化合物を製造しやすい点から、-CHCH-、-CHCHCH-が好ましい。
w2個の[-Qb6-Si(R)3-n]は、同一であっても異なっていてもよい。
基(3-1A-6)の具体例としては、以下の基が挙げられる。下記式中、*は、(OX)との結合位置を表す。
【化9】
【0105】
基(3-1A-7)において、Zは(w3+w4+1)価の炭化水素基である。
w3は、4以上の整数である。
w4は、0以上の整数である。
、s4、Qa4、t4、Qb4、及びu4の定義及び好ましい範囲は基(3-1A-4)中の各符号の定義と同じである。
【0106】
は炭化水素鎖からなってもよく、炭化水素鎖の炭素原子-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有してもよく、炭化水素鎖からなることが好ましい。
の価数は5~10価が好ましく、5~8価がより好ましく、5~6価がさらに好ましい。
の炭素数は7~50が好ましく、10~40がより好ましく、15~30がさらに好ましい。
w3は、4~10が好ましく、4~8がより好ましく、4~5がさらに好ましい。
w4は、0~10が好ましく、0~8がより好ましく、0がさらに好ましい。
[-(O-Qb4u4-Si(R)3-n]が2個以上ある場合は、2個以上の[-(O-Qb4u4-Si(R)3-n]は、同一であっても異なっていてもよい。
【0107】
基(3-1A-7)の具体例としては、以下の基が挙げられる。下記式中、*は、(OX)との結合位置を表す。
【化10】
【0108】
式(3-1)におけるY10は、基(g2-1)(ただし、j1=d1+d3、g1=d2+d4である。)、基(g2-2)(ただし、j1=e1、g1=e2である。)、基(g2-3)(ただし、j1=1、g1=2である。)、基(g2-4)(ただし、j1=h1、g1=h2である。)、基(g2-5)(ただし、j1=i1、g1=i2である。)、基(g2-6)(ただし、j1=1、g1=1である。)、又は、基(g2-7)(ただし、j1=1、g1=i3である。)であってもよい。
また、式(3-2)におけるY11及びY12はそれぞれ独立に、基(g2-1)(ただし、g2=d2+d4、k2=d2+d4である。)、基(g2-2)(ただし、g2=e2、k2=e2である。)、基(g2-3)(ただし、g2=2、k2=2である。)、基(g2-4)(ただし、g2=h2、k2=h2である。)、基(g2-5)(ただし、g2=i2、k2=i2である。)、基(g2-6)(ただし、g2=1、k2=1
である。)、又は、基(g2-7)(ただし、g2=i3、k2=i3である。)であってもよい。
【0109】
【化11】
【0110】
(-A-Q12-)e1C(Re24-e1-e2(-Q22-)e2 …(g2-2)
-A-Q13-N(-Q23-) …(g2-3)
(-A-Q14-)h1(-Q24-)h2 …(g2-4)
(-A-Q15-)i1Si(Re34-i1-i2(-Q25-)i2 …(g2-5)
-A-Q26- (g2-6)
-A-Q12-CH(-Q22-)-Si(Re33-i3(-Q25-)i3 …(g2-7)
【0111】
ただし、式(g2-1)~(g2-7)においては、A側が(OX)に接続し、Q22、Q23、Q24、Q25又はQ26側が[-Si(R)3-n]に接続する。
は、単結合、-C(O)NR-、-C(O)-、-OC(O)O-、-NHC(O)O-、-NHC(O)NR-、-O-又はSONR-である。
11は、単結合、-O-、アルキレン基、又は炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間に-C(O)NR-、-C(O)-、-NR-又はO-を有する基である。
12は、単結合、アルキレン基、又は炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間に-C(O)NR-、-C(O)-、-NR-又はO-を有する基であり、Y10、Y11又はY12がQ12を2以上有する場合、2以上のQ12は同一であっても異なっていてもよい。
13は、単結合(ただし、Aは-C(O)-である。)、アルキレン基、炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間に-C(O)NR-、-C(O)-、-NR-又はO-を有する基、又はアルキレン基のN側の末端に-C(O)-を有する基である。
14は、Q14が結合するZにおける原子が炭素原子の場合、Q12であり、Q14が結合するZにおける原子が窒素原子の場合、Q13であり、Y10、Y11又はY12がQ14を2以上有する場合、2以上のQ14は同一であっても異なっていてもよい。
15は、アルキレン基、又は炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間に-C(O)NR-、-C(O)-、-NR-又はO-を有する基であり、Y10、Y11又はY12がQ15を2以上有する場合、2以上のQ15は同一であっても異なっていてもよい。
22は、アルキレン基、炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間に-C(O)NR-、-C(O)-、-NR-又はO-を有する基、アルキレン基のSiに接続しない側の末端に-C(O)NR-、-C(O)-、-NR-又はO-を有する基、又は炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間に-C(O)NR-、-C(O)-、-NR-又はO-を有しかつSiに接続しない側の末端に-C(O)NR-、-C(O)-、-NR-又はO-を有する基であり、Y10、Y11又はY12がQ22を2以上有する場合、2以上のQ22は同一であっても異なっていてもよい。
23は、アルキレン基、又は炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間に-C(O)NR-、-C(O)-、-NR-又はO-を有する基であり、2個のQ23は同一であっても異なっていてもよい。
24は、Q24が結合するZにおける原子が炭素原子の場合、Q22であり、Q24が結合するZにおける原子が窒素原子の場合、Q23であり、Y10、Y11又はY12がQ24を2以上有する場合、2以上のQ24は同一であっても異なっていてもよい。
25は、アルキレン基、又は炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間に-C(O)NR-、-C(O)-、-NR-又はO-を有する基であり、Y10、Y11又はY12がQ25を2以上有する場合、2以上のQ25は同一であっても異なっていてもよい。
26は、アルキレン基、又は炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間に-C(O)NR-、-C(O)-、-NR-又はO-を有する基である。
は、Q14が直接結合する炭素原子又は窒素原子を有しかつQ24が直接結合する炭素原子又は窒素原子を有するh1+h2価の環構造を有する基である。
e1は、水素原子又はアルキル基であり、Y10、Y11又はY12がRe1を2以上有する場合、2以上のRe1は同一であっても異なっていてもよい。
e2は、水素原子、水酸基、アルキル基又はアシルオキシ基である。
e3は、アルキル基である。Rは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基又はフェニル基である。
【0112】
d1は、0~3の整数であり、1又は2であることが好ましい。d2は、0~3の整数であり、1又は2であることが好ましい。d1+d2は、1~3の整数である。
d3は、0~3の整数であり、0又は1であることが好ましい。d4は、0~3の整数であり、2又は3であることが好ましい。d3+d4は、1~3の整数である。
d1+d3は、Y10においては1~5の整数であり、1又は2であることが好ましく、Y11及びY12においては1である。
d2+d4は、Y10においては1~5の整数であり、4又は5であることが好ましく、Y11及びY12においては3~5の整数であり、4又は5であることが好ましい。
e1+e2は、3又は4である。e1は、Y10においては1~3の整数であり、1又は2であることが好ましく、Y11及びY12においては1である。e2は、Y10においては1~3の整数であり、2又は3であることが好ましく、Y11及びY12においては2又は3である。
h1は、Y10においては1以上の整数であり、1又は2であることが好ましく、Y11及びY12においては1である。h2は、1以上の整数であり、2又は3であることが好ましい。
i1+i2は、3又は4である。i1は、Y10においては1~3の整数であり、1又は2であることが好ましく、Y11及びY12においては1である。i2は、Y10においては1~3の整数であり、2又は3であることが好ましく、Y11及びY12においては2又は3である。
i3は、2又は3である。
【0113】
11、Q12、Q13、Q14、Q15、Q22、Q23、Q24、Q25及びQ26のアルキレン基の炭素数は、化合物(3-1)及び化合物(3-2)を製造しやすい点
、及び表面処理層の耐摩擦性がさらに優れる点から、1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~4が特に好ましい。ただし、炭素原子-炭素原子間に特定の結合を有する場合のアルキレン基の炭素数の下限値は2である。
【0114】
における環構造としては、上述した環構造が挙げられ、好ましい形態も同様である。なお、Zにおける環構造にはQ14やQ24が直接結合するため、例えば、環構造にアルキレン基が連結して、そのアルキレン基にQ14やQ24が連結することはない。
【0115】
e1、Re2又はRe3のアルキル基の炭素数は、化合物(3-1)及び化合物(3-2)を製造しやすい点から、1~6が好ましく、1~3がより好ましく、1~2が特に好ましい。
e2のアシルオキシ基のアルキル基部分の炭素数は、化合物(3-1)及び化合物(3-2)を製造しやすい点から、1~6が好ましく、1~3がより好ましく、1~2が特に好ましい。
h1は、化合物(3-1)及び化合物(3-2)を製造しやすい点、並びに、表面処理層の耐摩擦性がさらに優れる点から、1~6が好ましく、1~4がより好ましく、1又は2がさらに好ましく、1が特に好ましい。
h2としては、化合物(3-1)及び化合物(3-2)を製造しやすい点、並びに、表面処理層の耐摩擦性がさらに優れる点から、2~6が好ましく、2~4がより好ましく、2又は3が特に好ましい。
【0116】
10の他の形態としては、基(g2-8)(ただし、j1=d1+d3、g1=d2×k3+d4×k3である。)、基(g2-9)(ただし、j1=e1、g1=e2×k3である。)、基(g2-10)(ただし、j1=1、g1=2×k3である。)、基(g2-11)(ただし、j1=h1、g1=h2×k3である。)、基(g2-12)(ただし、j1=i1、g1=i2×k3である。)、基(g2-13)(ただし、j1=1、g1=k3である。)、又は基(g2-14)(ただし、j1=1、g1=i3×k3である。)が挙げられる。
11及びY12の他の形態としては、基(g2-8)(ただし、k2=d2×k3、g2=d4×k3である。)、基(g2-9)(ただし、k2=e2×k3、g2=e2×k3である。)、基(g2-10)(ただし、k2=2×k3、g2=2×k3である。)、基(g2-11)(ただし、k2=h2×k3、g2=h2×k3である。)、基(g2-12)(ただし、k2=i2×k3、g2=i2×k3である。)、基(g2-13)(ただし、k2=k3、g2=k3である。)、又は基(g2-14)(ただし、k2=i3×k3、g2=i3×k3である。)が挙げられる。
【0117】
【化12】
【0118】
(-A-Q12-)e1C(Re24-e1-e2(-Q22-Ge2 …(g2-9)
-A-Q13-N(-Q23-G …(g2-10)
(-A-Q14-)h1(-Q24-Gh2 …(g2-11)
(-A-Q15-)i1Si(Re34-i1-i2(-Q25-Gi2 …(g2-12)
-A-Q26-G …(g2-13)
-A-Q12-CH(-Q22-G)-Si(Re33-i3(-Q25-Gi3 …(g2-14)
【0119】
ただし、式(g2-8)~(g2-14)においては、A側が(OX)に接続し、G側が[-Si(R)3-n]に接続する。Gは、基(g3)であり、Y10、Y11又はY12が有する2以上のGは同一であっても異なっていてもよい。G以外の符号は、式(g2-1)~(g2-7)における符号と同じである。
-Si(R3-k3(-Q-)k3 …(g3)
ただし、式(g3)においては、Si側がQ22、Q23、Q24、Q25及びQ26に接続し、Q側が[-Si(R)3-n]に接続する。Rは、アルキル基である。Qは、アルキレン基、炭素数2以上のアルキレン基の炭素原子-炭素原子間に-C(O)NR-、-C(O)-、-NR-もしくは-O-を有する基、又は(OSi(R-O-であり、2以上のQは同一であっても異なっていてもよい。k3は、2又は3である。Rは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基又はフェニル基である。Rは、アルキル基、フェニル基又はアルコキシ基であり、2個のRは同一であっても異なっていてもよい。pは、0~5の整数であり、pが2以上の場合、2以上の(OSi(R)は同一であっても異なっていてもよい。
【0120】
のアルキレン基の炭素数は、化合物(3-1)及び化合物(3-2)を製造しやすい点、並びに、表面処理層の耐摩擦性がさらに優れる点から、1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~4が特に好ましい。ただし、炭素原子-炭素原子間に特定の結合を有する場合のアルキレン基の炭素数の下限値は2である。
のアルキル基の炭素数は、化合物(3-1)及び化合物(3-2)を製造しやすい点から、1~6が好ましく、1~3がより好ましく、1~2が特に好ましい。
のアルキル基の炭素数は、化合物(3-1)及び化合物(3-2)を製造しやすい点から、1~6が好ましく、1~3がより好ましく、1~2が特に好ましい。
のアルコキシ基の炭素数は、化合物(3-1)及び化合物(3-2)の保存安定性に優れる点から、1~6が好ましく、1~3がより好ましく、1~2が特に好ましい。
pは、0又は1が好ましい。
【0121】
化合物(3-1)及び化合物(3-2)としては、例えば、下式の化合物が挙げられる。下式の化合物は、工業的に製造しやすく、取扱いやすく、表面処理層の耐摩擦性がさらに優れる点から好ましい。下式の化合物におけるR及びQはそれぞれ、上述した式(3-1)における[Rf1-(OX)-]及び式(3-2)における-(OX)-と同様であり、好ましい形態も同様である。
【0122】
10が基(g2-1)である化合物(3-1)としては、例えば、下式の化合物が挙げられる。
【化13】
【0123】
10が基(g2-2)である化合物(3-1)としては、例えば、下式の化合物が挙げられる。
【化14】

【化15】
【0124】
10が基(g2-3)である化合物(3-1)としては、例えば、下式の化合物が挙げられる。
【化16】
【0125】
10が基(g2-4)である化合物(3-1)としては、例えば、下式の化合物が挙げられる。
【化17】
【0126】
10が基(g2-5)である化合物(3-1)としては、例えば、下式の化合物が挙げられる。
【化18】
【0127】
10が基(g2-6)である化合物(3-1)としては、例えば、下式の化合物が挙げられる。
【化19】
【0128】
10が基(g2-7)である化合物(3-1)としては、例えば、下式の化合物が挙げられる。
【化20】
【0129】
10が基(g2-8)である化合物(3-1)としては、例えば、下式の化合物が挙げられる。
【化21】
【0130】
10が基(g2-9)である化合物(3-1)としては、例えば、下式の化合物が挙げられる。
【化22】
【0131】
10が基(g2-10)である化合物(3-1)としては、例えば、下式の化合物が
挙げられる。
【化23】
【0132】
10が基(g2-11)である化合物(3-1)としては、例えば、下式の化合物が挙げられる。
【化24】

【化25】
【0133】
10が基(g2-12)である化合物(3-1)としては、例えば、下式の化合物が挙げられる。
【化26】
【0134】
10が基(g2-13)である化合物(3-1)としては、例えば、下式の化合物が挙げられる。
【化27】
【0135】
10が基(g2-14)である化合物(3-1)としては、例えば、下式の化合物が挙げられる。
【化28】
【0136】
11及びY12が基(g2-1)である化合物(3-2)としては、例えば、下式の化合物が挙げられる。
【化29】
【0137】
11及びY12が基(g2-2)である化合物(3-2)としては、例えば、下式の化合物が挙げられる
【化30】

【化31】
【0138】
11及びY12が基(g2-3)である化合物(3-2)としては、例えば、下式の化合物が挙げられる。
【化32】
【0139】
11及びY12が基(g2-4)である化合物(3-2)としては、例えば、下式の化合物が挙げられる。
【化33】
【0140】
11及びY12が基(g2-5)である化合物(3-2)としては、例えば、下式の化合物が挙げられる。
【化34】
【0141】
11及びY12が基(g2-6)である化合物(3-2)としては、例えば、下式の化合物が挙げられる。
【化35】
【0142】
11及びY12が基(g2-7)である化合物(3-2)としては、例えば、下式の化合物が挙げられる。
【化36】
【0143】
11及びY12が基(g2-9)である化合物(3-2)としては、例えば、下式の化合物が挙げられる。
【化37】
【0144】
含フッ素化合物の具体例としては、例えば、下記の文献に記載のものが挙げられる。
特開平11-029585号公報に記載のパーフルオロポリエーテル変性アミノシラン。
特許第2874715号公報に記載のケイ素含有有機含フッ素ポリマー。
特開2000-144097号公報に記載の有機ケイ素化合物。
特開2000-327772号公報に記載のパーフルオロポリエーテル変性アミノシラン。
特表2002-506887号公報に記載のフッ素化シロキサン。
特表2008-534696号公報に記載の有機シリコーン化合物。
特許第4138936号公報に記載のフッ素化変性水素含有重合体。
米国特許出願公開第2010/0129672号明細書、国際公開第2014/126064号、特開2014-070163号公報に記載の化合物。
国際公開第2011/060047号、国際公開第2011/059430号に記載のオルガノシリコン化合物。
国際公開第2012/064649号に記載の含フッ素オルガノシラン化合物。
特開2012-72272号公報に記載のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー。
国際公開第2013/042732号、国際公開第2013/121984号、国際公開第2013/121985号、国際公開第2013/121986号、国際公開第2014/163004号、特開2014-080473号公報、国際公開第2015/087902号、国際公開第2017/038830号、国際公開第2017/038832号、国際公開第2017/187775号に記載の含フッ素エーテル化合物。
特開2014-218639号公報、国際公開第2017/022437号、国際公開第2018/079743号、国際公開第2018/143433号に記載のパーフルオロ(ポリ)エーテル含有シラン化合物。
特開2015-199906号公報、特開2016-204656号公報、特開2016-210854号公報、特開2016-222859号公報に記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シラン。
国際公開第2018/216630号、国際公開第2019/039226号、国際公開第2019/039341号、国際公開第2019/039186号、国際公開第2019/044479号、特開2019-44158号公報、特願2017-251611に記載の含フッ素エーテル化合物。
【0145】
含フッ素化合物の数平均分子量(Mn)は、1,000~20,000であることが好ましく、2,000~18,000であることがより好ましく、3000~1,5000であることが特に好ましい。
Mnが1,000以上であれば、含フッ素化合物の分子鎖の流動性及びフッ素含有量が高くなるので、含フッ素化合物の指紋除去性がより優れる。Mnが20,000以下であれば、粘性を適切な範囲内に調節しやすく、また溶解性が向上するので、成膜時のハンドリング性が優れる。
【0146】
含フッ素組成物は、反応性シリル基を有する含フッ素化合物以外の他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、液状媒体が挙げられる。なお、本開示の含フッ素組成物の保存方法では、含フッ素組成物は、他の成分を含まず、含フッ素化合物のみを保存してもよい。
【0147】
液状媒体としては、水及び有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、フッ素系有機溶媒及び非フッ素系有機溶媒が挙げられる。
含フッ素組成物に含まれる有機溶媒は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0148】
フッ素系有機溶媒の具体例としては、フッ素化アルカン、フッ素化芳香族化合物、フルオロアルキルエーテル、フッ素化アルキルアミン、及びフルオロアルコールが挙げられる。
【0149】
フッ素化アルカンは、炭素数4~8の化合物であることが好ましい。フッ素アルカンとしては、例えば、C13H(製品名「AC-2000」、AGC社製)、C13(製品名「AC-6000」、AGC社製)、及びCCHFCHFCF(製品名「バートレル」、デュポン社製)が挙げられる。
【0150】
フッ素化芳香族化合物としては、ヘキサフルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、ペルフルオロトルエン、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、及び1,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンが挙げられる。
【0151】
フルオロアルキルエーテルは、炭素数4~12の化合物であることが好ましい。フルオロアルキルエーテルとしては、例えば、CFCHOCFCFH(製品名「AE-3000」、AGC社製)、COCH(製品名「ノベック-7100」、3M社製)、COC(製品名「ノベック-7200」、3M社製)、及びCCF(OCH)C(製品名「ノベック-7300」、3M社製)が挙げられる。
【0152】
フッ素化アルキルアミンとしては、ペルフルオロトリプロピルアミン、及びペルフルオロトリブチルアミンが挙げられる。
【0153】
フルオロアルコールとしては、2,2,3,3-テトラフルオロプロパノール、2,2,2-トリフルオロエタノール、及びヘキサフルオロイソプロパノールが挙げられる。
【0154】
非フッ素系有機溶媒としては、水素原子及び炭素原子のみからなる化合物、又は、水素原子、炭素原子及び酸素原子のみからなる化合物が好ましい。非フッ素系有機溶媒として、具体的には、炭化水素、ケトン、エーテル、エステル、及びアルコールが挙げられる。
【0155】
炭化水素の具体例としては、ヘキサン、へプタン、及びシクロヘキサンが挙げられる。
【0156】
ケトンの具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトンが挙げられる。
【0157】
エーテルの具体例としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、及びテトラエチレングリコールジメチルエーテルが挙げられる。
【0158】
エステルの具体例としては、酢酸エチル、及び酢酸ブチルが挙げられる。
【0159】
アルコールの具体例としては、イソプロピルアルコールが挙げられる。
【0160】
含フッ素組成物中の含フッ素化合物の含有量は、含フッ素組成物の全質量に対して、0.01質量%~50.00質量%が好ましく、1.00質量%~30.00質量%が特に好ましい。
含フッ素組成物中の液状媒体の含有量は、含フッ素組成物の全質量に対して、50.00質量%~99.99質量%が好ましく、70.00質量%~99.00質量%が特に好ましい。
【0161】
含フッ素組成物は、液状媒体以外の他の成分を含んでいてもよい。
他の成分としては、含フッ素化合物の製造工程で生成した副生物、未反応の原料等の製造上の不可避の化合物が挙げられる。
【0162】
含フッ素組成物が他の成分を含む場合、他の成分の含有量は、含フッ素組成物の全質量に対して、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下が特に好ましい。
【0163】
本開示の保存方法により保存された含フッ素組成物は、基材に対して撥水性に優れる表面処理層を形成するための表面処理剤として有用である。
【0164】
表面処理層を形成する方法は、ドライコーティング法であってもよく、ウェットコーティング法であってもよい。
【0165】
ドライコーティング法の具体例としては、真空蒸着法、CVD法、及びスパッタリング法が挙げられる。中でも、含フッ素組成物の分解を抑える点、及び、装置の簡便さの点から、真空蒸着法が好適である。
【0166】
ウェットコーティング法の具体例としては、スピンコート法、ワイプコート法、スプレーコート法、スキージーコート法、ディップコート法、ダイコート法、インクジェット法、フローコート法、ロールコート法、キャスト法、ラングミュア・ブロジェット法、及びグラビアコート法が挙げられる。
【0167】
表面処理層が形成される基材としては、表面処理層が形成される面がガラス、金属又は樹脂である基材が好ましく、表面処理層が形成される面がガラス又は金属である基材が特に好ましい。表面処理層が形成される面が金属である基材としては、金属からなる基材であってもよく、樹脂、ガラス、セラミックス等の非金属からなる本体の表面に金属層を有する複合基材であってもよい。金属からなる基材は、金属本体の表面に、本体とは異なる金属からなる金属層を有する複合金属基材であってもよい。
【0168】
表面処理層は、基材の表面上に直接形成されてもよいし、基材の表面に形成された他の膜を介して基材上に形成されてもよい。上記他の膜の具体例としては、国際公開第2011/016458号の段落0089~0095に記載の化合物やSiO等で基材を下地処理して、基材の表面に形成される下地膜が挙げられる。
【0169】
また、本開示の含フッ素組成物の保存方法は、反応性シリル基を有する含フッ素化合物を含む含フッ素組成物が収容された密閉容器内の気相部における二酸化炭素の濃度を、25℃で4~380体積ppmに維持する方法であってもよい。
密閉容器内の気相部における二酸化炭素の濃度を、25℃で4~380体積ppmに維持する方法は特に限定されず、例えば、密閉容器の蓋を開けずに、密閉容器を保存する環境における温度変化を20℃以下に保持する方法が挙げられる。
気相部における二酸化炭素の濃度は、25℃で5~350体積ppmであることが好ましい。また、密閉容器内部の体積に占める気相部の割合は、10~60体積%であることが好ましい。
含フッ素組成物及び密閉容器の好ましい態様は、上記のとおりである。
【0170】
<含フッ素組成物入り容器>
本開示の含フッ素組成物の含フッ素組成物入り容器は、反応性シリル基を有する含フッ素化合物を含む含フッ素組成物が収容された状態で密閉されており、気相部における二酸化炭素の濃度が25℃で4~380体積ppmである。
気相部における二酸化炭素の濃度は、25℃で5~350体積ppmであることが好ましい。また、容器内部の体積に占める気相部の割合は、10~60体積%であることが好ましい。
含フッ素組成物及び容器の好ましい態様は、上記のとおりである。
【0171】
<含フッ素組成物入り容器の製造方法>
本開示の含フッ素組成物入り容器の製造方法は、反応性シリル基を有する含フッ素化合物を含む含フッ素組成物が収容された容器を密閉することを含み、容器内の気相部における二酸化炭素の濃度を25℃で4~380体積ppmとする方法である。
気相部における二酸化炭素の濃度は、25℃で5~350体積ppmであることが好ましい。また、容器内部の体積に占める気相部の割合は、10~60体積%であることが好ましい。
含フッ素組成物及び容器の好ましい態様は、上記のとおりである。
【実施例0172】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、例1及び例7~9が比較例であり、例2~6及び例10~20が実施例である。
【0173】
[化合物1の合成]
特開2014-218639号公報の合成例11~15に記載の方法に従い、下記化合物1を得た。化合物1において、mは18、nは22である。化合物1の数平均分子量は4600である。なお、m個の(CFO)鎖と、n個の(CFCFO)鎖とはランダムに配列されている。
【0174】
【化38】
【0175】
[化合物2の合成、及び組成物1の調製]
国際公開第2020/071330号に記載されている化合物A-2の合成方法に従い、下記化合物2を得た。化合物2において、nは13である。化合物2の数平均分子量は5035である。
【化39】
【0176】
次に、得られた化合物1をCOC(製品名「ノベック-7200」、3M社製)で希釈し、化合物1の濃度が20質量%である組成物1を得た。
【0177】
[容器への収容]
次に、得られた各化合物又は組成物を容器に収容した。
例1~9については、化合物1の100gを、ガラス製の100mLバイアル瓶(製品名「シリンジバイアル」、マルエム社製、実容量124mL)に収容した。容器内部の体積に占める気相部の割合は、49.6体積%であった。
例10~11については、化合物1の165gを、ガラス製の100mLバイアル瓶(製品名「シリンジバイアル」、マルエム社製、実容量124mL)に収容した。容器内部の体積に占める気相部の割合は、16.8体積%であった。
例12~13については、化合物1の85gを、ガラス製の100mLバイアル瓶(製品名「シリンジバイアル」、マルエム社製、実容量124mL)に収容した。容器内部の体積に占める気相部の割合は、57.2体積%であった。
例14については、化合物1の10gを、ガラス製の10mLバイアル瓶(製品名「シリンジバイアル」、マルエム社製、実容量12.4mL)に収容した。容器内部の体積に占める気相部の割合は、49.6体積%であった。
例15については、組成物1の100gを、ガラス製の100mLバイアル瓶(製品名「シリンジバイアル」、マルエム社製、実容量124mL)に収容した。容器内部の体積に占める気相部の割合は、46.2体積%であった。
例16については、組成物1の1000gを、ガラス製の1000mL細口瓶(製品名「細口瓶」、マルエム社製、実容量1120mL)に収容した。容器内部の体積に占める気相部の割合は、40.5体積%であった。
例17~19については、化合物2の100gを、ガラス製の100mLバイアル瓶(製品名「シリンジバイアル」、マルエム社製、実容量124mL)に収容した。容器内部の体積に占める気相部の割合は、55.2体積%であった。
例20については、化合物2の10gを、ガラス製の10mLバイアル瓶(製品名「シリンジバイアル」、マルエム社製、実容量12.4mL)に収容した。容器内部の体積に占める気相部の割合は、55.2体積%であった。
次いで、例1~6及び例10~20については、気相部における二酸化炭素の濃度が表1に記載の濃度となるまで容器内に乾燥窒素を供給した。例8~9については、気相部における二酸化炭素の濃度が表1に記載の濃度となるまで容器内に二酸化炭素を供給した。例7については、容器内に乾燥窒素及び二酸化炭素の供給を行わなかった。その後、容器を密閉した。
上述のようにして気相部における二酸化炭素の濃度を調整した後、恒温槽内において25℃で30日間保存した。30日間保存した後、気相部における二酸化炭素の濃度は、容器を密閉した際の、気相部における二酸化炭素の濃度と同じであり、保存中に二酸化炭素の濃度は維持されていた。
【0178】
[縮合物生成の有無]
保存後の化合物1を、孔径1μmのPTFE製メンブランフィルターと吸引濾過器を使用して濾過し、縮合物を分取した。縮合物生成の有無を、目視により下記基準で評価した。得られた結果を表1に示す。また、得られた縮合物の生成量を表1に示す。
A:縮合物の発生なし。
B:若干縮合物の生成が認められるが実用上問題なし。
C:縮合物の生成が認められ実用上問題あり。
【0179】
[真空蒸着]
保存後の化合物1を用いて基材への真空蒸着を実施した。真空蒸着は、真空蒸着装置(製品名「VTR-350M」、ULVAC社製)を用いて行った。保存後の化合物1の0.5gを、真空蒸着装置内のモリブデン製ボートに充填し、真空蒸着装置内の圧力が1×10-3Pa以下になるよう排気した。ボートを昇温速度10℃/分以下の速度で加熱し、水晶発振式膜厚計による蒸着速度が1nm/秒を超えた時点でシャッターを開けて基材の表面への成膜を開始させた。膜厚が約50nmとなった時点でシャッターを閉じて基材の表面への成膜を終了させた。保存後の化合物1が堆積された基材を、200℃で30分間加熱処理し、イソプロパノールを用いて洗浄することによって、基材の表面に表面処理層を有する物品を得た。
基材としては、化学強化ガラスを用いた。
【0180】
[評価]
得られた物品に対して、下記評価を実施した。
<接触角の測定方法>
表面処理層の表面に置いた、約2μLの蒸留水の接触角を、接触角測定装置(協和界面科学社製、DM-500)を用いて測定した。表面処理層の表面における異なる5箇所で測定を行い、その平均値を算出した。接触角の算出には2θ法を用いた。
<初期水接触角>
表面処理層について、初期水接触角を前記測定方法で測定した。評価基準は下記のとおりである。
A(優) :115度以上。
B(良) :110度以上115度未満。
C(可) :100度以上110度未満。
D(不可) :100度未満。
【0181】
<耐摩擦性(消しゴム)>
表面処理層について、JIS L0849:2013(ISO 105-X12:2001)に準拠して往復式トラバース試験機(ケイエヌテー社製)を用い、Rubber Eraser(Minoan社製)を荷重:4.9N、速度:60rpmで1万回往復させた後、水接触角を測定した。摩擦後の撥水性(水接触角)の低下が小さいほど摩擦による性能の低下が小さく、耐摩擦性に優れる。評価基準は下記のとおりである。
A(優) :1万回往復後の水接触角の変化が2度以下。
B(良) :1万回往復後の水接触角の変化が2度超5度以下。
C(可) :1万回往復後の水接触角の変化が5度超10度以下。
D(不可) :1万回往復後の水接触角の変化が10度超。
【0182】
<耐摩擦性(スチールウール)>
表面処理層について、JIS L0849:2013(ISO 105-X12:2001)に準拠して往復式トラバース試験機(ケイエヌテー社製)を用い、スチールウールボンスター(♯0000)を圧力:98.07kPa、速度:320cm/分で1万回往復させた後、水接触角を測定した。摩擦後の撥水性(水接触角)の低下が小さいほど摩擦による性能の低下が小さく、耐摩擦性に優れる。評価基準は下記のとおりである。
A(優) :1万回往復後の水接触角の変化が2度以下。
B(良) :1万回往復後の水接触角の変化が2度超5度以下。
C(可) :1万回往復後の水接触角の変化が5度超10度以下。
D(不可) :1万回往復後の水接触角の変化が10度超。
【0183】
【表1】
【0184】
表1に示すように、容器内の気相部における二酸化炭素の濃度を、25℃で4~380体積ppmの範囲内とすることで、保存された含フッ素組成物を用いて表面処理を行った場合に、基材に対して、耐摩擦性に優れた表面処理層を形成できることが分かった。