(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113585
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】動的な標準化されたプリンタの性能監視
(51)【国際特許分類】
G06F 3/12 20060101AFI20230808BHJP
【FI】
G06F3/12 329
G06F3/12 303
G06F3/12 382
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023012495
(22)【出願日】2023-01-31
(31)【優先権主張番号】17/591760
(32)【優先日】2022-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】マルヤモサダット ネマトラヒ マハニ
(72)【発明者】
【氏名】リサ オークリーフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴラド アリン イオルダチェスク
(57)【要約】
【課題】プリンタ分析のためのシステム及び方法を提供する。
【解決手段】一実施形態はプリンタ分析サーバを含む。サーバは、メモリと、プリンタの母集団及び対象プリンタから性能データを継続的に収集してメモリに記憶するように構成されたインタフェースと、性能データに基づいてプリンタの母集団に対する対象プリンタの生産目標を決定できるコントローラとを含む。生産目標は、プリンタの母集団の性能データの関数として、時間とともに動的に変化する。さらに、コントローラは、対象プリンタ及びプリンタの母集団の性能データが時間とともに変化するとき、生産目標からの対象プリンタの逸脱を示すレポートを生成し、対象プリンタを運用する印刷所の印刷サーバにレポートを送信することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンタ分析サーバを含むシステムであって、
前記プリンタ分析サーバは、
メモリと、
プリンタの母集団及び対象プリンタから性能データを継続的に収集して前記メモリに記憶するように構成されたインタフェースと、
前記性能データに基づいて前記プリンタの母集団に対する前記対象プリンタの生産目標を決定するように構成されたコントローラと
を含み、
前記生産目標は、前記プリンタの母集団の前記性能データの関数として、時間とともに動的に変化し、
前記コントローラは、前記対象プリンタ及び前記プリンタの母集団の前記性能データが時間とともに変化するとき、前記生産目標からの前記対象プリンタの逸脱を示すレポートを生成し、前記対象プリンタを運用する印刷所の印刷サーバに前記レポートを送信するように更に構成される、システム。
【請求項2】
前記生産目標は、単位時間当たりに印刷された印刷媒体のフィート数、単位時間当たりに印刷されたページ数、単位時間当たりの稼働時間の分数、単位時間当たりの印刷に費やされた分数、及び単位時間当たりに印刷された印刷ジョブ数から構成されるグループから選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コントローラは、複数の印刷ジョブ、予め定義された期間、又は連続期間のうち少なくとも1つにわたって前記プリンタの母集団の前記性能データを決定するように更に構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記プリンタの母集団内の前記プリンタのそれぞれのモデル又はシリーズのうち少なくとも1つに基づいて、前記プリンタの母集団からプリンタをフィルタで除去するように更に構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記コントローラは、印刷された印刷ジョブの数、印刷された印刷ジョブのサイズ、及び印刷された印刷ジョブの色のうち少なくとも1つに基づいて、前記プリンタの母集団からプリンタをフィルタで除去するように更に構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記コントローラは、前記プリンタの母集団にわたる前記性能データの分布に基づいて、前記対象プリンタの前記生産目標を設定するように更に構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記生産目標は、上位四分の一、平均値からの標準偏差の数、又は前記性能データの中央値のうち少なくとも1つを含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記プリンタの母集団内の少なくとも1つのプリンタは、前記対象プリンタとは異なる法人によって運用される、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
プリンタの母集団及び対象プリンタから性能データを継続的に収集してメモリに記憶するステップと、
前記性能データに基づいて前記プリンタの母集団に対する前記対象プリンタの生産目標を決定するステップであって、前記生産目標は、前記プリンタの母集団の前記性能データの関数として、時間とともに動的に変化する、ステップと、
前記対象プリンタ及び前記プリンタの母集団の前記性能データが時間とともに変化するとき、前記生産目標からの前記対象プリンタの逸脱を示すレポートを生成するステップと、
前記対象プリンタを運用する印刷所の印刷サーバに前記レポートを送信するステップと
を含む方法。
【請求項10】
前記生産目標は、単位時間当たりに印刷された印刷媒体のフィート数、単位時間当たりに印刷されたページ数、単位時間当たりの稼働時間の分数、単位時間当たりの印刷に費やされた分数、及び単位時間当たりに印刷された印刷ジョブ数から構成されるグループから選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記プリンタの母集団の前記性能データは、複数の印刷ジョブ、予め定義された期間、又は連続期間のうち少なくとも1つにわたって決定される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記プリンタの母集団内の前記プリンタのそれぞれのモデル又はシリーズのうち少なくとも1つに基づいて、前記プリンタの母集団からプリンタをフィルタで除去するステップを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
印刷された印刷ジョブの数、印刷された印刷ジョブのサイズ、及び印刷された印刷ジョブの色のうち少なくとも1つに基づいて、前記プリンタの母集団からプリンタをフィルタで除去するステップを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記プリンタの母集団にわたる前記性能データの分布に基づいて、前記対象プリンタの前記生産目標を設定するステップを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記生産目標は、上位四分の一、平均値からの標準偏差の数、又は前記性能データの中央値のうち少なくとも1つを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記プリンタの母集団内の少なくとも1つのプリンタは、前記対象プリンタとは異なる法人によって運用される、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
プログラム命令を具体化した非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体であって、
前記プログラム命令は、プロセッサによって実行されると、
プリンタの母集団及び対象プリンタから性能データを継続的に収集してメモリに記憶するステップと、
前記性能データに基づいて前記プリンタの母集団に対する前記対象プリンタの生産目標を決定するステップであって、前記生産目標は、前記プリンタの母集団の前記性能データの関数として、時間とともに動的に変化する、ステップと、
前記対象プリンタ及び前記プリンタの母集団の前記性能データが時間とともに変化するとき、前記生産目標からの前記対象プリンタの逸脱を示すレポートを生成するステップと、
前記対象プリンタを運用する印刷所の印刷サーバに前記レポートを送信するステップと
を行うように動作可能である、非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項18】
前記生産目標は、単位時間当たりに印刷された印刷媒体のフィート数、単位時間当たりに印刷されたページ数、単位時間当たりの稼働時間の分数、単位時間当たりの印刷に費やされた分数、及び単位時間当たりに印刷された印刷ジョブ数から構成されるグループから選択される、請求項17に記載の非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項19】
前記プリンタの母集団の前記性能データは、複数の印刷ジョブ、予め定義された期間、又は連続期間のうち少なくとも1つにわたって決定される、請求項17に記載の非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項20】
前記プログラム命令は、前記プリンタの母集団内の前記プリンタのそれぞれのモデル又はシリーズのうち少なくとも1つに基づいて、前記プリンタの母集団からプリンタをフィルタで除去するように更に動作可能である、請求項17に記載の非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の開示は、印刷の分野に関し、特にプリンタの監視に関する。
【背景技術】
【0002】
相当な印刷需要を有する事業体は、典型的にはプロダクションプリンタを使用する。プロダクションプリンタは、大型ロールに蓄積された印刷媒体のウェブ上に印刷する連続式プリンタのような、ボリューム印刷に使用される高速プリンタである。プロダクションプリンタは、典型的には、プリンタの全体的な動作を管理するローカル印刷コントローラと、マーキングエンジン(場合によっては「イメージングエンジン」又は「印刷エンジン」と呼ばれる)とを含む。マーキングエンジンは1つ以上の印刷ヘッドの配列を含む。
【0003】
印刷ジョブを受信すると、印刷コントローラは(例えば、ジョブの各ページを表すビットマップを作成するために)ジョブの論理ページをラスタライズし、マーキングエンジンは、ラスタライズされた論理ページに基づいてウェブをマーキングするように個々の印刷ヘッドを動作させる。したがって、プリンタは印刷ジョブのデジタル情報に基づいて物理ページをマーキングする。
【0004】
プロダクションプリンタは、印刷所(print shop)の中心を形成する高価な機械であるので、プロダクションプリンタにおける休止時間(例えば、点検、整備、修理等によるもの)は、印刷所の全体的な生産性に悪影響を及ぼす。しかし、実際の生産性及び想定される休止時間の量は、プリンタによって変化する。したがって、一般的には、各プリンタが印刷所で最適な効率で動作しているか否かを、印刷所の運営者が判断することは不可能である。
【発明の概要】
【0005】
本明細書に記載の実施形態は、モデル毎又はシリーズ毎に、複数の印刷所にわたるプリンタの生産性の集約的な監視及び報告を提供する。プリンタのタイプ毎に性能のグローバルなメトリックを識別して報告することによって、これらの実施形態は、各モデル又はシリーズの個々のプリンタが、実際の環境における同じモデルの他のプリンタと比較して効率的に動作しているか否かを運営者が判断することを可能にする。さらに、この報告は継続的且つリアルタイムに実行されてもよく、印刷所におけるプリンタの生産目標を決定するためにも使用されてもよい。
【0006】
一実施形態は、プリンタ分析サーバを含むシステムである。サーバは、メモリと、プリンタの母集団及び対象プリンタから性能データを継続的に収集してメモリに記憶するように構成されたインタフェースと、性能データに基づいてプリンタの母集団に対する対象プリンタの生産目標を決定できるコントローラとを含む。生産目標は、プリンタの母集団の性能データの関数として、時間とともに動的に変化する。さらに、コントローラは、対象プリンタ及びプリンタの母集団の性能データが時間とともに変化するとき、生産目標からの対象プリンタの逸脱を示すレポートを生成し、対象プリンタを運用する印刷所の印刷サーバにレポートを送信することができる。
【0007】
更なる実施形態は、プリンタの母集団及び対象プリンタから性能データを継続的に収集してメモリに記憶するステップと、性能データに基づいてプリンタの母集団に対する対象プリンタの生産目標を決定するステップとを含む方法である。生産目標は、プリンタの母集団の性能データの関数として、時間とともに動的に変化する。当該方法はまた、対象プリンタ及びプリンタの母集団の性能データが時間とともに変化するとき、生産目標からの対象プリンタの逸脱を示すレポートを生成するステップと、対象プリンタを運用する印刷所の印刷サーバにレポートを送信するステップとを含む。
【0008】
更なる実施形態は、プロセッサによって実行されると、方法を実行するためのプログラム命令を具体化した非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体である。当該方法は、プリンタの母集団及び対象プリンタから性能データを継続的に収集してメモリに記憶するステップと、性能データに基づいてプリンタの母集団に対する対象プリンタの生産目標を決定するステップとを含む。生産目標は、プリンタの母集団の性能データの関数として、時間とともに動的に変化する。当該方法はまた、対象プリンタ及びプリンタの母集団の性能データが時間とともに変化するとき、生産目標からの対象プリンタの逸脱を示すレポートを生成するステップと、対象プリンタを運用する印刷所の印刷サーバにレポートを送信するステップとを含む。
【0009】
他の例示的な実施形態(例えば、上記の実施形態に関連する方法及びコンピュータ読み取り可能媒体)は、以下に記載され得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
ここで、本発明のいくつかの実施形態について、単なる例として添付の図面を参照して説明する。全ての図面において、同じ参照符号は同じ要素又は同じ種類の要素を表す。
【
図1】例示的な実施形態におけるプリンタ監視環境のブロック図である。
【
図2】例示的な実施形態においてプリンタ監視環境を動作させるための方法を示すフローチャートである。
【
図3】例示的な実施形態における動的プリンタ生産追跡を示す図である。
【
図4】例示的な実施形態における動的プリンタ生産追跡を示す図である。
【
図5】例示的な実施形態においてプリンタの母集団の性能データに基づいて対象プリンタの生産目標を設定するための方法を示すフローチャートである。
【
図6】例示的な実施形態におけるプリンタ性能の分布を示す。
【
図7】例示的な実施形態におけるプリンタの母集団の性能に基づく動的生産目標を含むグラフィカルユーザインタフェース(GUI, Graphical User Interface)を示す。
【
図8】例示的な実施形態において生産目標をプリンタに割り当てるためのGUIを示す。
【
図9】例示的な実施形態において所望の機能を実行するためのプログラム命令を具体化したコンピュータ読み取り可能媒体を実行するように動作可能な処理システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面及び以下の説明は、本発明の具体的で例示的な実施形態を示す。したがって、当業者は、本明細書に明示的に記載又は図示されていないが、本発明の原理を具体化し且つ本発明の範囲内に含まれる様々な構成を考案することができることが認識される。さらに、本明細書に記載のいずれかの例は、本発明の原理の理解を助けることを意図するものであり、このように具体的に記載された例及び条件に限定されるものではないと解釈されるべきである。結果として、本発明は、以下に記載の具体的な実施形態又は例に限定されず、特許請求の範囲及びその均等物によって限定される。
【0012】
図1は、例示的な実施形態におけるプリンタ監視環境100のブロック図である。プリンタ監視環境100は、1つ以上の印刷所における1つ以上のプリンタの生産をアクティブに追跡するように動作可能ないずれかのシステム、デバイス又はコンポーネントを含む。この実施形態では、プリンタ監視環境100は複数の印刷所110を含み、複数の印刷所110はプリンタ分析サーバ120によって監視される。各印刷所110は印刷サーバ114と1つ以上のプリンタ112とを含む。印刷所110は、必ずしも同じ法人によって運営される必要はない。いくつかの実施形態では、印刷所110は異なる法人によって運営される。
【0013】
プリンタ112は、リアルタイム(例えば、1ページ毎、1分間に1回、1時間に1回、1日に1回等)に、ネットワーク130を介して性能データをプリンタ分析サーバ120に送信する。ネットワーク130は、インターネット又はプライベートネットワークを含んでもよい。イーサネット又は他のネットワークインタフェースのようなインタフェース126は、性能データを受信する。性能データ自体は、各プリンタ112によって印刷された印刷媒体のページ数又はフィート数をリアルタイムに決定するために、或いは、他の性能メトリックを決定するために、コントローラ122によって使用されてもよい。次いで、この情報は対象プリンタ140の生産目標を決定するために使用される。本明細書で使用される「対象プリンタ(subject printer)」は、生産目標からの逸脱を追跡する対象となるプリンタである。任意の数の印刷所にわたる任意の数のプリンタが対象プリンタとして一度に使用されてもよい。したがって、本明細書で説明するいずれかの実装において、単一の対象プリンタである必要はない。コントローラ122は、生産目標をメモリ124に記憶する。コントローラ122は、カスタム回路、プログラム命令を実行するハードウェアプロセッサ等として実装されてもよい。
【0014】
コントローラ122は、母集団150の性能データをリアルタイムに継続的に監視し、対象プリンタ140の生産目標をリアルタイムに更新することで、対象プリンタ140の性能が常にアクティブに分析され、他のプリンタと比較されることを確保する。
【0015】
本明細書に記載のコンポーネントの特定の配置、数及び構成は、例示的であり、限定的ではない。プリンタ監視環境の動作の例示的な詳細について、
図1に関して説明する。この実施形態では、1つ以上の印刷所110におけるプリンタ112が、対応する印刷所110からの命令に従ってアクティブに印刷ジョブを印刷しており、処理のために性能データをプリンタ分析サーバ120に送信していると仮定する。一実施形態では、性能データはプリンタ分析サーバ120に直接送信されるが、更なる実施形態では、性能データは印刷サーバ114に送信され、印刷サーバ114がプリンタ分析サーバ120による分析のために性能データを集めて提示する。
【0016】
図2は、例示的な実施形態においてプリンタ監視環境100を動作させるための方法200を示すフローチャートである。方法200のステップは、
図1のプリンタ分析サーバ120を参照して記載されるが、当業者は、方法200が他のシステムで実行されてもよいことを認識する。本明細書に記載のフローチャートのステップは必ずしも包含的なものではなく、図示しない他のステップを含んでもよい。本明細書に記載のステップはまた、別の順序で実行されてもよい。
【0017】
ステップ202において、インタフェース126は、プリンタ112の母集団150及び対象プリンタ140から性能データを継続的に収集してメモリ124に記憶する。母集団150は、対象プリンタ140と同じモデル又はシリーズの全てのプリンタを含んでもよい。したがって、多くの実施形態では、対象プリンタ140自体が母集団150のメンバである。更なる実施形態では、インタフェース126は、プリンタ112の別のシリーズ又はモデルにそれぞれ対応する多くの母集団150の性能データを収集する。これは、プリンタ112の多くのシリーズ又はモデルについて、動的な生産目標がコントローラ122によって同時に生成及び更新されることを可能にする。
【0018】
プリンタ112からの性能データは、各プリンタ112における印刷エンジンによって対応する印刷サーバ114に送信される簡易ネットワーク管理プロトコル(SMNP, Simple Networking Management Protocol)メッセージングを含んでもよい。多くの実施形態では、メッセージングは人間が読み取れない生データを含む。この生データは、一定期間に或いは複数の印刷ジョブにわたってプリンタ112の全体的な生産量を決定するために、印刷サーバ114又はプリンタ分析サーバ120のコントローラ122によって処理される。期間が考慮される実施形態では、期間は予め定義された期間(例えば、2つの定義された時間の間の期間)でもよく、或いは、連続期間(例えば、前の時間、前の日、前の月等)でもよい。
【0019】
一実施形態では、コントローラ122は生データを処理してスループット(例えば、或る期間に母集団150内の各プリンタ112によって印刷されたページ数又は直線フィート数)を決定する。生産量はまた、母集団150内の各プリンタ112のスループット及び稼働時間(例えば、或る期間中の各プリンタ112のスループットに稼働時間のパーセンテージを乗算したもの)に基づいて計算された印刷速度でもよく、或いは、印刷速度として決定されてもよい。生産量は、プリンタ112が経験した休止時間の量と考えられてもよい。更に別の実施形態では、コントローラ122は、このようなメトリックの組み合わせを含む調整されたスループット/生産量を決定する。例えば、コントローラ122は、稼働時間と休止時間との差で乗算してから稼働時間の量で除算したスループットの量として、プリンタ112の調整されたスループット/生産量を決定してもよい。コントローラ122は、全てのスループット/生産量が0から100の値の間、又は0から1の値の間に入るように、均一なスケールに従って調整されたスループット/生産量を更にスケーリング又は正規化してもよい。このようなスケーリングは、プリンタのスループットをその期間の最高の測定スループットで除算し、所望の値(例えば、100、1等)で乗算することによって実行されてもよい。
【0020】
更なる実施形態では、生産量は、単位時間当たりに印刷された印刷媒体のフィート数、単位時間当たりに印刷されたページ数、単位時間当たりの稼働時間の分数、単位時間当たりの印刷に費やされた分数、又は単位時間当たりに印刷された印刷ジョブ数として決定される。
【0021】
一実施形態では、プリンタの母集団150内の少なくとも1つのプリンタ112は、対象プリンタ140とは異なる法人によって運用される。このような実施形態では、対象プリンタ140を管理する印刷サーバ114に生産目標データを送信する前に、性能データはコントローラ122によって匿名化、非識別化又は集約されてもよい。これは、別の事業体がプライバシーの懸念を損なうことなく性能データを確信して共有し得ることを確保する。或いは、各法人について考慮される母集団150は、その法人のプリンタ112のみから選択されてもよい。
【0022】
ステップ204において、コントローラ122は、プリンタ112の母集団150に対する対象プリンタ140の生産目標を決定する。決定は性能データに基づき、生産目標はプリンタ112の母集団150の性能データの関数として時間とともに動的に変化する。一実施形態では、生産目標は、最高の生産量を有する母集団150におけるプリンタ112の性能のパーセンテージ又は割合として決定されてもよい。生産目標は、単位時間当たりに印刷された印刷媒体のフィート数、単位時間当たりに印刷されたページ数、単位時間当たりの稼働時間の分数、単位時間当たりの印刷に費やされた分数、又はプリンタ112の単位時間当たりに印刷された印刷ジョブ数として定義されてもよい。
【0023】
ステップ206において、コントローラ122は、対象プリンタ140及びプリンタ112の母集団150の性能データが時間とともに変化するとき、生産目標からの対象プリンタ140の逸脱を示すレポートを生成する。この動作は、例えば、コントローラ122が対象プリンタ140の受信した性能データに基づいて対象プリンタ140の生産量を決定し、対象プリンタ140の生産量を生産目標と比較することによって達成されてもよい。対象プリンタ140の生産量が生産目標以上である場合、対象プリンタ140は適合している。そうでない場合、対象プリンタは適合していない。レポートは、目標からの逸脱量、閾値よりも大きい逸脱に対処するための推奨ステップ等を示してもよい。生産目標に対して単一の対象プリンタ140を比較するこれらの動作は、母集団内の全てのプリンタ112又はその部分集合のように、所望のプリンタの任意の組み合わせについて実行されてもよい。
【0024】
ステップ208において、コントローラ122は、対象プリンタ140を運用する印刷所110の印刷サーバ114に、インタフェース126を介してレポートを送信する。レポートは、印刷サーバ114のディスプレイを介して印刷所の運営者に提示され、運営者は、対象プリンタ140の動作を変更して対象プリンタ140の何らかの逸脱を修正することを選択してもよい。
【0025】
方法200は、実際の動作環境におけるプリンタの能力を表す目標に対して、プリンタの性能がリアルタイムに追跡されることを可能にするので、従来の技術よりも技術的な利点を提供する。すなわち、対象プリンタ140の生産量を、実際に物理的に存在しており他の印刷所で運用されている他のプリンタの生産量と比較することによって、対象プリンタ140の生産目標に対して現実的な想定が適用され得る。有利なことに、これはまた、対象プリンタ140が準最適に動作していることを判断する機能を向上させる。
【0026】
図3~4は、例示的な実施形態における動的プリンタ生産追跡を示す図である。これらの図は、プリンタ分析サーバ120から印刷サーバ114に提供されるレポートにおいて生成されて含まれもよい。
図3は、時間とともに(例えば、日毎、時間毎、分毎等)対象プリンタ140の生産量を、同じモデルの最も生産性の高いプリンタ及び最も生産性の低いプリンタと比較する
図300を示す。このため、線310は対象プリンタと同じモデルのプリンタによって達成される最高の生産量を表し、線320は対象プリンタ140の生産量を表し、線330は対象プリンタ140と同じモデルのプリンタによって報告された最低の生産量を表す。
【0027】
図300からのデータは、対象プリンタ140の性能を、同じモデルのいずれかのプリンタによって報告された最高の生産量420に対するパーセンテージとして決定するために利用されてもよい。具体的には、
図4は、最高の生産量420を示しており、日毎に報告された最高の生産量のパーセンテージ(例えば、60%、80%、90%等)を含む生産目標410を更に示す
図400である。次いで、対象プリンタ140の生産量430は、最高の生産量420及び生産目標410に対して表される。対象プリンタ140の生産量430が生産目標410を下回った場合、対象プリンタ140は不適合と考えられる。
【0028】
図5は、例示的な実施形態においてプリンタ112の母集団150の性能データに基づいて対象プリンタ140の生産目標を設定するための方法500を示すフローチャートである。したがって、方法500は、いくつかの実施形態においてステップ204の詳細な実装を含んでもよい。
【0029】
ステップ502は、プリンタ112の母集団150内のプリンタ112のそれぞれのモデル又はシリーズのうち少なくとも1つに基づいて、プリンタ112の母集団150からプリンタ112をフィルタリングで除去することを含む。これは、例えば、対象プリンタ140と同じモデルではないか或いは同じシリーズではないプリンタを考慮から除去することによって実行されてもよい。各プリンタのモデル及び/又はシリアル番号は、印刷サーバ114及び/又はプリンタ112からの入力に基づいて決定されてもよい。
【0030】
ステップ504は、プリンタ112によって印刷された印刷ジョブのプロパティに基づいて、プリンタ112の母集団150からプリンタ112をフィルタリングで除去することを含んでもよい。例えば、プリンタ112によって印刷された印刷ジョブの数、印刷された印刷ジョブのサイズ、及び印刷された印刷ジョブの色のうち少なくとも1つに対してフィルタリングが実行されてもよい。すなわち、期間中に印刷ジョブの閾値数よりも少なく印刷するか或いは印刷ジョブのサイズ未満で印刷した母集団150内のプリンタ112は母集団150からフィルタリングで除去されてもよい。これは、完全にアクティブなプリンタのみが生産目標を設定するために考慮されることを確保する。同様に、モノクロ印刷ではなくカラー操作で操作されるプリンタ112(又はその逆)は、モノクロ印刷がカラー印刷よりもしばしば著しく高速であり、そのためカラーを使用するプリンタ112の結果をゆがめる可能性があるので、フィルタリングで除去されてもよい。
【0031】
ステップ506は、プリンタ112の母集団150にわたる性能データの分布を決定することを含む。これは、母集団内のプリンタ112のそれぞれの生産量を決定し、プリンタ112の母集団の生産データから平均、中央値、標準偏差、及び/又は他の統計的メトリックを計算することによって実行されてもよい。
【0032】
ステップ508は、プリンタ112の母集団150にわたる性能データの分布に基づいて、対象プリンタ140の生産目標を設定することを含む。例えば、生産目標は、上位四分の一、母集団150内のプリンタ112の平均生産量からの標準偏差の数、又は性能データの中央値若しくは平均値を含んでもよい。これらの生産目標は、母集団150内のプリンタ112のそれぞれについて、プリンタ112について受信した新たな性能データに基づいて時間とともに動的に更新され、その結果、時間とともにプリンタ112の生産量の予測に対する動的な変化をもたらす。
【0033】
一実施形態では、生産目標を確立するために、母集団150内の全てのプリンタ112の時系列データが、指定の期間(例えば、1日、5日、1か月、6か月、1年等)にわたって評価される。最高の生産量は、指定の期間部分において選択された期間にプリンタ(「ターゲットプリンタ」)によって達成された最大生産量をキャプチャすることによって測定される。例えば、3か月の指定の期間内において、スループット/生産量の時間当たりの最高の性能レートが時間当たり1万ページでもよく、1日当たりの最高の性能が1日当たり18万ページでもよく、週当たりの最高の性能が週当たり45万ページ等でもよい。平均生産量の値は、累積移動平均の技術に従って決定されてもよい。
【0034】
方法500は、対象プリンタ140との比較のために考慮されるプリンタ112が性質上及び動作上で類似していることを確保することによって技術的な利点を提供する。これは、決定された生産目標の関連性を向上させる。さらに、方法500は、リアルタイム性能追跡を可能にし、これは、プリンタがその実際のピーク性能又はそれに近い性能で動作し続けることを確保する上で非常に有益である。例として、プリンタのモデルが何年も販売されていないが、そのモデルのプリンタが依然としてアクティブに使用されており、老朽化している場合、実際の性能データは、時間とともに劣化するこれらのプリンタの実際の能力を正確に示し得る。
【0035】
図6は、例示的な実施形態におけるプリンタ性能の分布610を示す。この実施形態では、生産目標620は、分布610の中央値630の上の標準偏差の数(例えば、zスコア)として選択される。分布610は正規分布として示されているが、更なる実施形態では、受信した性能データに依存して異なる分布が可能である。
【0036】
図7は、例示的な実施形態におけるプリンタの母集団の性能に基づく動的生産目標を含むグラフィカルユーザインタフェース(GUI, Graphical User Interface)700を示す。GUI700は、例えば、プリンタ分析サーバ120からの入力に基づいて、印刷所110の印刷サーバ114において提示されてもよい。この実施形態では、GUI700は複数のカード710を含み、それぞれが印刷所110における別のプリンタ112の状態を報告する。各プリンタ112のカード710は、プリンタの識別子(ID, identifier)と、プリンタ112のモデル又はシリーズとを含む識別領域を含む。各カード710はまた、プリンタ112の現在の印刷状態を報告する領域714も含む。この実施形態では、現在の印刷状態は、プリンタ112によって印刷されている現在の印刷ジョブの名前と、その印刷ジョブで印刷するために残されたページ数とを使用して報告される。カード710はまた、プリンタ112の1日当たりのスループットを報告するが、更なる実施形態では期間が異なってもよい。1日当たりのスループットは生産目標(例えば、モデルに依存した「80k」、「600k」等)と比較して報告され、生産目標は同じモデルの他のプリンタ112について報告された実際の性能データに基づいて動的に決定される。
【0037】
図8は、例示的な実施形態において生産目標をプリンタに割り当てるためのGUI800を示す。GUI800は、例えばGUI700からカード710を選択すると提示されてもよい。GUI800は、カード710によって表されるプリンタの動的生産目標を設定するためのオプション820を含む。オプション820は、期間の設定、目標がスループットに設定されるか否か、印刷ジョブの数等を有効にする。GUI800はまた、同じモデルの最高のプリンタの生産量、同じシリーズの最高のプリンタの生産量、同じモデルの平均的なプリンタの生産量、又は同じシリーズの平均的なプリンタの生産量のような、カードによって表されるプリンタの目標方法の選択を可能にするオプション830も含む。このプリンタ毎の目標設定は、プリンタの全体の母集団150の性能データが各印刷所に固有の目標を設定するために使用されることを可能にする。
【0038】
例
以下の例では、更なるプロセス、システム及び方法について説明する。以下の節及び/又は例は、更なる実施形態又は例に関連する。これらの例における詳細は、1つ以上の実施形態のどこにおいても使用されてもよい。異なる実施形態又は例の様々な特徴は、様々な異なる用途に適合するように、含まれる特徴及び除外される特徴と様々に組み合わされてもよい。例は、方法、方法の動作を実行するための手段、機械によって実行されたときに機械に方法の動作を実行させる命令を含む少なくとも1つの機械読み取り可能媒体、又は本明細書に記載の実施形態及び例に従った装置若しくはシステムのような主題を含んでもよい。
【0039】
本明細書に開示の実施形態は、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア又はこれらの様々な組み合わせの形式をとることができる。1つの特定の実施形態では、ソフトウェアは、本明細書に開示の様々な動作を実行するようにプリンタ監視環境100の処理システムを指示するために使用される。
図9は、例示的な実施形態において所望の機能を実行するようにプログラム命令を具現するコンピュータ読み取り可能媒体を実行するように動作可能な処理システム900を示す。処理システム900は、コンピュータ読み取り可能記憶媒体912上に実体的に具現されたプログラム命令を実行することにより、上記の動作を実行するように動作可能である。この点に関して、本発明の実施形態は、コンピュータ又はいずれかの他の命令実行システムによって使用されるプログラムコードを提供するコンピュータ読み取り可能媒体912を介してアクセス可能なコンピュータプログラムの形式をとることができる。この説明の目的のため、コンピュータ読み取り可能記憶媒体912は、コンピュータにより使用されるプログラムを包含又は記憶できるいずれかのものとすることができる。
【0040】
コンピュータ読み取り可能記憶媒体912は、電子、磁気、光学、電磁気、赤外線又は半導体デバイスとすることができる。コンピュータ読み取り可能記憶媒体912の例は、ソリッドステートメモリ、磁気テープ、取り外し可能コンピュータディスケット、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、リジッド磁気ディスク及び光ディスクを含む。光ディスクの現在の例は、コンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD-ROM)、読み書き用コンパクトディスク(CD-R/W)及びDVDを含む。
【0041】
処理システム900は、プログラムコードを記憶及び/又は実行するのに適しており、システムバス950を通じてプログラム及びデータメモリ904に接続された少なくとも1つのプロセッサ902を含む。プログラム及びデータメモリ904は、プログラムコードの実際の実行中に使用されるローカルメモリと、バルクストレージと、キャッシュメモリとを含むことができ、これらのメモリは、コード及び/又はデータが実行中にバルクストレージから取得される回数を低減するために、少なくともいくつかのプログラムコード及び/又はデータの一時的なストレージを提供する。
【0042】
入力/出力又はI/Oデバイス906(キーボード、ディスプレイ、ポインティングデバイス等を含むが、これらに限定されない)は、直接的に或いは介在するI/Oコントローラを通じて接続できる。ネットワークアダプタインタフェース908もまた、処理システム900が介在するプライベート又はパブリックネットワークを通じて他のデータ処理システム又は記憶デバイスに接続されることを可能にするために、システムと統合されてもよい。モデム、ケーブルモデム、IBMチャネルアタッチメント、SCSI、ファイバチャネル及びイーサネットカードは、現在利用可能な種類のネットワーク又はホストインタフェースアダプタのうち単なる数個に過ぎない。ディスプレイデバイスインタフェース910は、プロセッサ902により生成されたデータの提示のための印刷システム及びスクリーンのような1つ以上のディスプレイデバイスとインタフェース接続するために、システムと統合されてもよい。
【0043】
ここでは、特定の実施形態について説明したが、本発明の範囲は、これらの特定の実施形態に限定されない。本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲及びそのいずれかの均等物により定義される。