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特開2023-11391ペースト状シリコーン組成物、その製造方法及び化粧料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023011391
(43)【公開日】2023-01-24
(54)【発明の名称】ペースト状シリコーン組成物、その製造方法及び化粧料
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/14 20060101AFI20230117BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20230117BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20230117BHJP
   A61K 8/89 20060101ALI20230117BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20230117BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230117BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20230117BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
C08L83/14
C08L83/07
C08L83/05
A61K8/89
A61K8/891
A61Q19/00
A61Q1/00
A61Q5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021115224
(22)【出願日】2021-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 絵美
【テーマコード(参考)】
4C083
4J002
【Fターム(参考)】
4C083AC012
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD172
4C083BB11
4C083BB12
4C083CC01
4C083EE01
4C083FF01
4J002AA05X
4J002CP03X
4J002CP04W
4J002CP14W
4J002CP19W
4J002DD066
4J002FD02X
4J002FD146
4J002GB00
(57)【要約】
【課題】可塑戻りなどの経時変化が少なく、異臭が少なく、安定したペースト状シリコーン組成物を提供する。
【解決手段】(A)(A-1)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(A-2)1分子中にケイ素原子に結合した炭素数2~10のアルケニル基を2個以上有するアルケニル基含有オルガノポリシロキサンのヒドロシリル化反応物からなる架橋型オルガノポリシロキサン、及び(B)25℃で液状の油剤を含むペースト状シリコーン組成物であって、該組成物中に含まれるオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びドデカメチルシクロヘキサシロキサンがそれぞれ2,000ppm未満のものであることを特徴とするペースト状シリコーン組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペースト状シリコーン組成物であって、下記成分(A)および成分(B)を含み、前記ペースト状シリコーン組成物中に含まれるオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びドデカメチルシクロヘキサシロキサンがそれぞれ2,000ppm未満のものであることを特徴とするペースト状シリコーン組成物。
(A):下記成分(A-1)と成分(A-2);
(A-1)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(A-2)1分子中にケイ素原子に結合した炭素数2~10のアルケニル基を2個以上有するアルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
のヒドロシリル化反応物からなる架橋型オルガノポリシロキサン、
(B):25℃で液状の油剤
【請求項2】
前記成分(A-1)が下記一般式(1)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンであることを特徴とする請求項1に記載のペースト状シリコーン組成物。
【化1】
(前記一般式(1)中、Rは独立して、炭素数1~30のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアラルキル基から選ばれる基であり、Rは独立して前記Rまたは水素原子から選ばれる基であり、ただし、1分子中2個以上のRは水素原子であり、3≦a≦100,000、1≦b≦50の整数である。)
【請求項3】
前記成分(A-2)が下記一般式(2)で表されるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のペースト状シリコーン組成物。
【化2】
(前記一般式(2)中、Rは独立して、炭素数1~30のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアラルキル基から選ばれる基であり、Rは独立して前記Rまたは炭素数2~10のアルケニル基から選ばれる基であり、ただし、1分子中2個以上のRはアルケニル基であり、3≦c≦100,000、0≦d≦50の整数である。)
【請求項4】
前記一般式(2)において、d=0であることを特徴とする請求項3に記載のペースト状シリコーン組成物。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のペースト状シリコーン組成物の製造方法であって、前記成分(A-1)と前記成分(A-2)をヒドロシリル化反応用触媒存在下でヒドロシリル化反応を行って、前記成分(A)を得る工程を含み、前記成分(A-1)並びに前記成分(A-2)として、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びドデカメチルシクロヘキサシロキサンの含有量がそれぞれ2,000ppm以下のものを用いることを特徴とするペースト状シリコーン組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のペースト状シリコーン組成物の製造方法において、前記ヒドロシリル化反応を、前記ペースト状シリコーン組成物に配合される成分(B)の配合量の0.01~100質量%の存在下で行うことを特徴とするペースト状シリコーン組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のペースト状シリコーン組成物を含むものであることを特徴とする化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペースト状シリコーン組成物、その製造方法及び化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン油や炭化水素油、エステル油などを化粧料やパーソナルケア組成物に安定に配合する方法として、架橋構造を有するオルガノシロキサン重合物が提案されている(特許文献1、2、3)。これは既に公知の技術であり、架橋構造を有するオルガノシロキサン重合物(以下、シリコーン架橋物と記す)は、主にオルガノハイドロジェンポリシロキサンとアルケニル基含有オルガノポリシロキサンのヒドロシリル化反応により得られ、使用される油剤の一部と予め混合・ペースト化された状態で化粧料やパーソナルケア組成物に配合されている。
【0003】
しかしながら、これらの先行技術では、使用されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンやアルケニル基含有オルガノポリシロキサンについて、含有する低分子シロキサン成分については特に言及されていない。オルガノハイドロジェンポリシロキサンやアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、一般的に、ジメチルクロルシランを加水分解したものや、環状シロキサンオリゴマーを主成分とするシロキサン類を原料とし、強酸や強塩基下で再分配反応させ製造する。このとき、未反応残留物や副生物、不純物として、揮発性の高い低分子シロキサンやヘキサン、ヘキセンのような炭化水素が残ることが多い。これらの低分子成分は、不快な臭いや刺激の原因となるだけでなく、増粘効果の低下や可塑戻りの原因となる。
ここで、可塑戻りとは、経時でペースト状シリコーン組成物の粘度が増加し、性状が変化することであり、具体的には、なめらかで流動性のある液状ペーストが、流動性のないゼリー状に変化する等の現象である。この現象は物理現象と考えられ、再混合等を行うことにより元のペースト状態に戻すことが可能であるが、使用性が著しく低下することは否めない。よって、ペースト状シリコーン組成物の品質向上のためには、揮発性の高い低分子成分量を管理する必要がある。
【0004】
上記の技術分野において高揮発性成分とは、主に分子量300未満のものであり、これらは減圧加熱や薄膜蒸留、水蒸気蒸留、カラムによる分取等で取り除くことが可能であることが知られている。しかしながら、ヒドロシリル化反応により架橋構造を形成した後、もしくは、油剤と混合してペースト状シリコーン組成物とした後での除去は困難である。製造工程が煩雑になるだけでなく、当該油剤が揮発性の場合、上述の処理により油剤も除去される可能性があり、組成が変わる懸念もある。
また、近年、特に環状の低分子シロキサンに関して使用や含有量を規制する国や地域もあるため、これらの地域においても、低分子シロキサンが高含有率で残存していることは、使用する上で懸念材料となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平01-207354号公報
【特許文献2】特開平02-043263号公報
【特許文献3】特開2012-162700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、可塑戻りなどの経時変化が少なく、異臭が少なく、安定したペースト状シリコーン組成物を提供することを目的とする。また、一部の国や地域で規制されている環状低分子シロキサン成分の少ないペースト状シリコーン組成物を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、ペースト状シリコーン組成物であって、下記成分(A)および成分(B)を含み、前記ペースト状シリコーン組成物中に含まれるオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びドデカメチルシクロヘキサシロキサンがそれぞれ2,000ppm未満のものであるペースト状シリコーン組成物を提供する。
(A):下記成分(A-1)と成分(A-2);
(A-1)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(A-2)1分子中にケイ素原子に結合した炭素数2~10のアルケニル基を2個以上有するアルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
のヒドロシリル化反応物からなる架橋型オルガノポリシロキサン、
(B):25℃で液状の油剤
【0008】
このようなペースト状シリコーン組成物であれば、可塑戻りなどの経時変化が少なく、異臭が少なく、安定したペースト状シリコーン組成物となる。
【0009】
この時、前記成分(A-1)が下記一般式(1)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンであることが好ましい。
【化1】
(前記一般式(1)中、Rは独立して、炭素数1~30のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアラルキル基から選ばれる基であり、Rは独立して前記Rまたは水素原子から選ばれる基であり、ただし、1分子中2個以上のRは水素原子であり、3≦a≦100,000、1≦b≦50の整数である。)
【0010】
このようなペースト状シリコーン組成物であれば、本発明の効果をより向上させることができる。
【0011】
この時、前記成分(A-2)が下記一般式(2)で表されるアルケニル基含有オルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【化2】
(前記一般式(2)中、Rは独立して、炭素数1~30のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアラルキル基から選ばれる基であり、Rは独立して前記Rまたは炭素数2~10のアルケニル基から選ばれる基であり、ただし、1分子中2個以上のRはアルケニル基であり、3≦c≦100,000、0≦d≦50の整数である。)
【0012】
このようなペースト状シリコーン組成物であれば、本発明の効果をさらに向上させることができる。
【0013】
この時、前記一般式(2)において、d=0であることが好ましい。
【0014】
このようなペースト状シリコーン組成物であれば、本発明の効果をさらに一層向上させることができる。
【0015】
また、本発明では、上記ペースト状シリコーン組成物の製造方法であって、前記成分(A-1)と前記成分(A-2)をヒドロシリル化反応用触媒存在下でヒドロシリル化反応を行って、前記成分(A)を得る工程を含み、前記成分(A-1)並びに前記成分(A-2)として、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びドデカメチルシクロヘキサシロキサンの含有量がそれぞれ2,000ppm以下のものを用いるペースト状シリコーン組成物の製造方法を提供する。
【0016】
このようなペースト状シリコーン組成物の製造方法が、使用性や製造上の観点から好ましい。
【0017】
この時、前記ヒドロシリル化反応を、前記ペースト状シリコーン組成物に配合される成分(B)の配合量の0.01~100質量%の存在下で行うことが好ましい。
【0018】
このようなペースト状シリコーン組成物の製造方法であれば、使用性や製造上の観点からより好ましい。
【0019】
また、本発明では、上記に記載のペースト状シリコーン組成物を含むものである化粧料を提供する。
【0020】
このような化粧料であれば、安定性や官能性の良い、環境に配慮した化粧料となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、環状低分子シロキサンの含有量を低減した原料を用いることで、可塑戻りなどの経時変化が少なく、異臭の少ない、安定したペースト状シリコーン組成物を提供することができる。また、近年、環状シロキサンの使用や含有量を規制する国や地域においても、懸念無く使用できる点でも有効である。さらに、このペースト状シリコーン組成物を配合することで、安定性や官能性の良い、環境に配慮した化粧料が提供可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
上述のように、可塑戻りなどの経時変化が少なく、異臭が少なく、安定したペースト状シリコーン組成物の開発が求められていた。
【0023】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、ペースト状シリコーン組成物に含まれるオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びドデカメチルシクロヘキサシロキサンの量を低減することで、不快な臭気や可塑戻りを抑制することを見出し、本発明を完成させた。オクタメチルシクロテトラシロキサンは分子量296、デカメチルシクロペンタシロキサンは370、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンは444であるため、これらの量を管理することで、分子量300未満の高揮発性成分も充分に除去された状態となる。
【0024】
即ち、本発明は、ペースト状シリコーン組成物であって、下記成分(A)および成分(B)を含み、前記ペースト状シリコーン組成物中に含まれるオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びドデカメチルシクロヘキサシロキサンがそれぞれ2,000ppm未満のものであるペースト状シリコーン組成物である。
(A):下記成分(A-1)と成分(A-2);
(A-1)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(A-2)1分子中にケイ素原子に結合した炭素数2~10のアルケニル基を2個以上有するアルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
のヒドロシリル化反応物からなる架橋型オルガノポリシロキサン、
(B):25℃で液状の油剤
【0025】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
[ペースト状シリコーン組成物]
本発明のペースト状シリコーン組成物は、下記成分(A)および成分(B)を含み、前記ペースト状シリコーン組成物中に含まれるオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びドデカメチルシクロヘキサシロキサンがそれぞれ2,000ppm未満のものである。以下各成分について説明する。
【0027】
[成分(A)]
本発明の成分(A)は、下記成分(A-1)と成分(A-2);
(A-1)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(A-2)1分子中にケイ素原子に結合した炭素数2~10のアルケニル基を2個以上有するアルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
のヒドロシリル化反応物からなる架橋型オルガノポリシロキサンである。
また、上記成分(A-1)並びに成分(A-2)において、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びドデカメチルシクロヘキサシロキサンの含有量がそれぞれ2,000ppm以下、好ましくは1,000ppm以下であるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0028】
上記オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A-1)の構造は、特に限定されるものではないが、下記式(1)で表されるものであることが好ましい。
【化3】
(前記一般式(1)中、Rは独立して、炭素数1~30のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアラルキル基から選ばれる基であり、Rは独立して前記Rまたは水素原子から選ばれる基であり、ただし、1分子中2個以上のRは水素原子であり、3≦a≦100,000、1≦b≦50の整数である。)
【0029】
ここで、上記一般式(1)中、Rは独立して、炭素数1~30のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、及び炭素数7~30のアラルキル基から選ばれる基であり、上記アルキル基は、好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~6のアルキル基である。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等の鎖状アルキル基やシクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基である。
【0030】
上記アリール基は、好ましくは炭素数6~20、より好ましくは炭素数6~10のアリール基である。アリール基の例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。
上記アラルキル基は、好ましくは炭素数7~20、より好ましくは炭素数7~10のアラルキル基である。アラルキル基の例としては、ベンジル基、フェネチル基などが挙げられ、好ましくはベンジル基である。
【0031】
は独立して上記Rまたは水素原子から選ばれる基であり、1分子中、2個以上のRは水素原子であり、2個以上5個以下であることが好ましい。また、式(1)中の、aは、3≦a≦100,000の整数であり、5≦a≦1,000であることが好ましく、10≦a≦500であることがより好ましい。bは、1≦b≦50の整数であり、1≦b≦30であることが好ましく、2≦b≦10であることがより好ましい。また、b=0のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを併用することも可能である。
【0032】
また、上記アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A-2)の構造は、特に限定されるものではないが、下記式(2)で表されるものであることが好ましい。
【化4】
(前記一般式(2)中、Rは独立して、炭素数1~30のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアラルキル基から選ばれる基であり、Rは独立して前記Rまたは炭素数2~10のアルケニル基から選ばれる基であり、ただし、1分子中2個以上のRはアルケニル基であり、3≦c≦100,000、0≦d≦50の整数である。)
【0033】
ここで、上記一般式(2)中、Rは上述の通りであり、Rは独立して上記Rまたは炭素数2~10のアルケニル基から選ばれる基であり、1分子中に2個以上のRがアルケニル基である。アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基などがあげられるが、ケイ素に結合した水素原子とのヒドロシリル化反応のし易さや安定性の良さから、ビニル基であることが好ましい。また、cは3≦c≦100,000の整数であり、好ましくは5≦c≦10,000であり、10≦c≦1,000であるとより好ましい。dは、0≦d≦50の整数であり、好ましくは、0≦d≦10、より好ましくはd=0の整数である。d=0の時、本発明の効果をさらに一層向上させることができる。
【0034】
また、成分(A)を得る際、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を1つだけ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンや、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を1つだけ有するオルガノポリシロキサンを併用することも可能である。
【0035】
[成分(B)]
成分(B)は、25℃で液状の油剤であれば特に限定されないが、ペースト化の際の取り扱い性が良い点で、25℃における動粘度が1.0~10,000mm/sである液状の油剤が好ましく、好ましい油剤としては、以下のシリコーン油、炭化水素油、エステル油、フッ素系油剤、天然動植物油、半合成油があげられる。なお、本明細書中で動粘度とは、JIS Z 8803:2011に記載のキャノン-フェンスケ粘度計を用いた方法による25℃での動粘度を指すものとする。
【0036】
シリコーン油としては、ジメチコン(INCI)、エチルメチコン(INCI)、エチルトリシロキサン(INCI)、へキシルジメチコン(INCI)等のアルキル変性シリコーン、カプリリルメチコン(INCI)等の長鎖アルキル変性シリコーン、フェニルトリメチコン(INCI)、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン(INCI)、ジフェニルジメチコン(INCI)、テトラフェニルジメチルジシロキサン(INCI)等の直鎖或いは分岐状のオルガノポリシロキサン、シクロテトラシロキサン(INCI)、シクロペンタシロキサン(INCI)、シクロヘキサシロキサン(INCI)、シクロヘプタシロキサン(INCI)、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン等の環状オルガノポリシロキサン、アモジメチコン(INCI)、アミノプロピルジメチコン(INCI)等のアミノ変性オルガノポリシロキサン、PCAジメチコン(INCI)等のピロリドン変性オルガノポリシロキサン、ピロリドンカルボン酸変性オルガノポリシロキサン、アミノ酸変性シリコーン、フッ素変性シリコーンが挙げられる。
【0037】
炭化水素油としては、鎖式及び環式の炭化水素油が挙げられる。具体的には、オレフィンオリゴマー(INCI)、(C13,14)イソパラフィン(INCI)等のイソパラフィン、イソドデカン(INCI)、ウンデカン(INCI)、ドデカン(INCI)、イソヘキサデカン(INCI)、水添ポリイソブテン(INCI:Hydrogenated Polyisobutene)、スクワラン(INCI)、ミネラルオイル(INCI)、ヤシアルカン(INCI)、(C13-15)アルカン(INCI)などのアルカン等が挙げられる。
【0038】
エステル油としては、アジピン酸ジイソブチル(INCI:Diisobutyl Adipate)、アジピン酸ジヘキシルデシル(表示名称)、アジピン酸ジヘプチルウンデシル(INCI:Diheptylundecyl Adipate)、イソステアリン酸イソステアリル(INCI:Isostearyl Isostearate)、イソステアリン酸イソセチル(INCI:Isocetyl Isostearate)等のモノイソステアリン酸アルキルグリコール、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン(INCI:Trimethylolpropane Triisostearate)、ジエチルヘキサン酸グリコール(INCI:Glycol Diethylhexanoate)、エチルヘキサン酸セチル(INCI:Cetyl Ethylhexanoate)、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン(INCI:Trimethylolpropane Triethylhexanoate)、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル(INCI:Pentaerythrityl Tetraethylhexanoate)、オクタン酸セチル(INCI:Cetyl Ethylhexanoate)、ステアロイルオキシステアリン酸オクチルドデシル(INCI:Octyldodecyl Stearoyl Stearate)等のオクチルドデシルエステル、オレイン酸オレイル(INCI:Oleyl Oleate)、オレイン酸オクチルドデシル(INCI:Octyldodecyl Oleate)、オレイン酸デシル(INCI:Decyl Oleate)、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール(INCI:Neopentyl Glycol Diethylhexanoate)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(INCI:Neopentyl Glycol Dicaprate)、リンゴ酸ジイソステアリル(INCI:Diisostearyl Malate)、クエン酸トリエチル(INCI:Triethyl Citrate)、コハク酸ジエチルヘキシル(INCI:Diethylhexyl Succinate)、酢酸アミル(INCI:Amyl Acetate)、酢酸エチル(INCI:Etyl Acetate)、酢酸ブチル(INCI:Butyl Aceetate)、ステアリン酸イソセチル(INCI:Isocetyl Stearate)、ステアリン酸ブチル(INCI:Butyl Stearate)、セバシン酸ジイソプロピル(INCI:Diisopropyl Sebacate)、セバシン酸ジエチルヘキシル(INCI:Diethylhexyl Sebacate)、乳酸セチル(INCI:Cetyl Lactate)、乳酸ミリスチル(INCI:Myristyl Lactate)、イソノナン酸イソノニル(INCI:Isononyl Isononanoate)、イソノナン酸イソトリデシル(INCI:Isotridecyl Isononanoate)、パルミチン酸イソプロピル(INCI:Isopropyl Palmitate)、パルミチン酸エチルヘキシル(INCI:Ethylhexyl Isopalmitate)、パルミチン酸ヘキシルデシル(INCI:Isocetyl Palmitate、Hexyldecyl Palmitate)等のパルミチン酸エステル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル(INCI:Cholesteryl Hydroxystearate)、ミリスチン酸イソプロピル(INCI:Isopropyl Myristate)、ミリスチン酸オクチルドデシル(INCI:Octyldodecyl Myristate)、ミリスチン酸ミリスチル(INCI:Myristyl Myristate)等のミリスチン酸エステル、ラウリン酸エチルへキシル(INCI:Ethylhexyl Laurate)、ラウリン酸ヘキシル(INCI:Hexyl Laurate)、ラウロイルグルタミン酸ジオクチルドデシル(INCI:Dioctyldodecyl Lauroyl Glutamate)、ラウロイルサルコシンイソプロピルエステル(INCI:Isopropyl Lauroyl Sarcosinate)等が挙げられる。
【0039】
また、エステル油の中で、グリセライド油としては、トリエチルヘキサノイン(INCI)、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(INCI:Caprylic/Capric Triglyceride)、ココグリセリル(INCI)、(カプリル酸/カプリン酸/コハク酸)トリグリセリル(INCI:Caprylic/Capric/Succinic Triglyceride)、(カプリル酸/カプリン酸)グリセリズ(INCI)等が挙げられる。
【0040】
フッ素系油剤としては、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカリン、パーフルオロオクタン等が挙げられる。
【0041】
また、天然動植物油剤及び半合成油剤としては、アボガド油(INCI:Persea Gratissima (Avocado) Oil)、アマニ油(INCI:Linum Usitatissimum (Linseed) Seed Oil)、アーモンド油(INCI:Prunus Amygdalus Dulcis (Sweet Almond) Oil)、エゴマ油(表示名称)、オリーブ油(INCI:Olea Europaea (Olive) Fruit Oil)、アメリカガヤ油(INCI:Torreya Californica (California Nutmeg) Oil)、コウスイガヤ油(INCI:Cymbopogon Nardus (Citronella) Oil)、カヤ種子油(INCI:Torreya Nucifera Seed Oil)、キョウニン油(INCI:Kyounin Yu)、ゴマ油(INCI:Sesamum Indicum (Sesame) Seed Oil)、コメヌカ油(INCI:Oryza Sativa (Rice) Bran Oil)、サザンカ油(INCI:Camellia Kissi Seed Oil)、サフラワー油(INCI:Carthamus Tinctorius (Safflower) Seed Oil)、ダイズ油(INCI:Glycine Soja(Soybean)Oil)、チャ実油(INCI:Camellia Sinensis Seed Oil)、ツバキ油(INCI:Camellia Japonica Seed Oil)、月見草油(INCI:Oenothera Biennis (Evening Primrose) Oil)、ナタネ油(INCI:RAPE SHUSHI YU)、トウモロコシ胚芽油(INCI:Zea Mays (Corn) Germ Oil)、コメ胚芽油(INCI:Oryza Sativa (Rice) Germ Oil)、コムギ胚芽油(INCI:Triticum Vulgare (Wheat) Germ Oil)等の胚芽油、パーシック油(表示名称)、パーム油(INCI:Elaeis Guineensis (Palm) Oil)、パーム核油(INCI:Elaeis Guineensis (Palm) Kernel Oil)、ヒマシ油(INCI:Ricinus Communis (Castor) Seed Oil)、ヒマワリ油(INCI:Helianthus Annuus (Sunflower) Seed Oil)、ブドウ種子油(INCI:Vitis Vinifera (Grape) Seed Oil)、ホホバ種子油(INCI:Simmondsia Chinensis (Jojoba) Seed Oil)、マカデミア種子油(INCI:Macadamia Ternifolia Seed Oil)、メドウフォーム油(INCI:Limnanthes Alba (Meadowfoam) Seed Oil)、綿実油(INCI:Gossypium Herbaceum (Cotton) Seed Oil)、ヤシ油(INCI:Cocos Nucifera (Coconut) Oil)、落花生油などの天然植物油、サメ肝油(INCI:Shark Liver Oil)、タラ肝油(INCI:Cod Liver Oil)、魚肝油(INCI:Fish Liver Oil)、タートル油(INCI:Turtle Oil)、ミンク油(INCI:Mink Oil)、卵黄油(INCI:Egg Oil)などの天然動物油、水添ヤシ油(INCI:Hydrogenated Coconut Oil)、液状ラノリン(INCI)等の半合成油脂等が挙げられる。
【0042】
上述の油剤は、単独で用いても複数を組み合わせても良く、上記中、シリコーン油、炭化水素油、またはエステル油を用いることが好ましく、シリコーン油または炭化水素油であることが特に好ましい。また、成分(B)の配合量は、成分(A)によっても異なるが、ペースト状シリコーン組成物の1~98質量%が好ましく、より好ましくは10~95質量%の範囲が好適である。
【0043】
また、本発明のペースト状シリコーン組成物中に含まれるオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びドデカメチルシクロヘキサシロキサンが、それぞれ2000ppm未満であり、好ましくは1500ppm未満、より好ましくは1000ppm未満、更に好ましくは100ppm未満である。上記環状シロキサンのいずれかが2000ppm以上であると、環状低分子シロキサンの使用や含有量を規制する国や地域において、使用できない懸念がある。
【0044】
[化粧料]
また、本発明におけるペースト状シリコーン組成物を含む化粧料としては、乳液、クリーム、クレンジング、パック、マッサージ料、美容液、美容オイル、洗浄剤、脱臭剤、ハンドクリーム、リップクリーム、しわ隠し等のスキンケア化粧料、メークアップ下地、コンシーラー、白粉、リキッドファンデーション、油性ファンデーション、頬紅、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー、アイブロウ、口紅等のメークアップ化粧料、シャンプ-、リンス、トリートメント、セット剤等の毛髪化粧料、日焼け止めオイルや日焼け止め乳液、日焼け止めクリームなどの紫外線防御化粧料、制汗剤等が挙げられる。
【0045】
また、これらの化粧料の形状としては、液状、乳液状、クリーム状、固形状、ペースト状、ゲル状、粉末状、プレス、多層状、ムース状、スプレー状、スティック状等、種々の形状を選択することができる。
【0046】
また、これらの化粧料の形態としては、水性、油性、油中水型エマルション、水中油型エマルション、非水エマルション、W/O/WやO/W/Oなどのマルチエマルション等、種々の形態を選択することができる。
【0047】
さらに、本発明のペースト状シリコーン組成物は、化粧料分野を超えて、シーラント、塗工剤、グリース、接着剤、泡消剤、医薬品、殺虫剤、除草剤などの用途へ展開し、材料の粘度調整やレオロジー特性の改善に利用することも可能である。
【0048】
[ペースト状シリコーン組成物の製造方法]
本発明のペースト状シリコーン組成物の製造方法は、前記成分(A-1)と前記成分(A-2)をヒドロシリル化反応用触媒存在下でヒドロシリル化反応を行って、前記成分(A)を得る工程を含み、前記成分(A-1)並びに前記成分(A-2)として、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びドデカメチルシクロヘキサシロキサンの含有量がそれぞれ2,000ppm以下のものを用いる製造方法であれば、特に限定されず、例えば、前記成分(A)を得る工程により得られる上記成分(A)と上記成分(B)を常法により混錬することによってペースト状シリコーン組成物を得ることができる。架橋物の原料となるオルガノハイドロジェンポリシロキサンやアルケニル基含有オルガノポリシロキサン中に残存するオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びドデカメチルシクロヘキサシロキサンの量を予め低減することで、不快な臭気や可塑戻りを抑制することができる。
【0049】
[成分(A-1)及び成分(A-2)の製造方法]
上記オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A-1)や、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A-2)の製造方法は、特に限定されないが、一般には、ジメチルジクロルシランの加水分解、或いは更にこの加水分解物を水酸化カリウム等のアルカリ触媒存在下でクラッキングした環状及び/または非環状シロキサンオリゴマーを主成分とするシロキサン類を原料とし、酸触媒やアルカリ触媒下で平衡化反応を行うことで得られる。得られたポリシロキサンに減圧ストリッピング等の処理を施すことで、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びドデカメチルシクロヘキサシロキサンをそれぞれ2,000ppm以下に低減させることができる。
【0050】
[成分(A)の製造方法]
構成要素であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン(A-1)と、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A-2)の反応は、ヒドロシリル化反応用触媒存在下でヒドロシリル化反応により行うことができる。これにより成分(A)が製造される。ヒドロシリル化反応用触媒としては、特に制限はないが、例えば、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸-ビニルシロキサン錯体等の白金化合物、又はロジウム化合物等のヒドロシリル化反応用触媒の存在下で、(A-1)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(A-2)のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンを反応させればよい。この際、反応温度は特に限定されないが、40~120℃であることが好ましい。前記ヒドロシリル化反応用触媒の添加量は周知の有効量でよく、上記(A-1)及び(A-2)の合計量に対して、白金族金属の換算量で、通常、0.1~500ppm、好ましくは0.5~200ppm、より好ましくは、1~100ppmである。また、このヒドロシリル化反応において、全アルケニル基/全ヒドロシリル基のモル比は、特に限定されないが、好ましくは、1/10~10/1であり、より好ましくは、8/10~3/1である。
【0051】
上記ヒドロシリル化反応を行なう際には、無溶剤で行なってもよいし、必要に応じて有機溶剤や揮発性のあるジメチルシリコーンを使用してもよい。かかる有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、2―プロパノール、ブタノール等の脂肪族アルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;n-ペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤等が挙げられる。中でも、化粧料用途として用いるという観点から、無溶剤、エタノール又は2-プロパノールが好ましい。揮発性のあるジメチルシリコーンとしては、動粘度5mm/s以下のジメチルポリシロキサン等が挙げられる。これらの有機溶剤や、揮発性のあるジメチルシリコーンは、必要に応じて、反応後に、減圧加熱などで取り除くことも可能である。また、液状の油剤成分(B)の存在下に行ってもよく、他の溶剤を用いないため、使用性や製造上、この方法が最も好ましい。この場合、本発明のペースト状シリコーン組成物に配合される成分(B)の配合量のうち、0.01~100質量%の存在下で行うことが好ましく、0.1~90質量%がより好ましい。例えば、前記成分(A-1)と前記成分(A-2)をヒドロシリル化反応用触媒存在下でヒドロシリル化反応を行って、前記成分(A)を得る工程を含み、前記成分(A)を得る工程においてヒドロシリル化反応を、前記ペースト状シリコーン組成物に配合される成分(B)の配合量の0.01~100質量%の存在下で行うことができる。
【実施例0052】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、各測定方法は以下に示す通りである。
【0053】
・環状シロキサン含有量:サンプル0.5gを、テトラデカンを内部標準として20質量ppm含有するアセトン10mlと混合(6時間振とう)した後、遠心分離を行い、アセトン層を採取してガスクロマトグラフィー分析に供し、各環状シロキサン成分を定量した。結果を表1に記載した。
・稠度:JIS K 2220:2013に記載の方法に準じて測定した。
・絶対粘度:JIS K 7117-1:1999に記載のB型回転粘度計(装置名:東機産業社製TVB-10M型粘度計)を用いた方法によって測定した。
・動粘度:JIS Z 8803:2011に記載のキャノン-フェンスケ粘度計を用いた方法により25℃で測定した。
・異臭:臭気を9人のパネラーによる官能評価を行い、下記判断基準において最も回答の多い結果を記載した。
(1)なし、(2)ややあり、(3)あり
・可塑戻り:性状,翌日の性状を目視および、ヘラによる手混ぜ撹拌で状態を確認し、下記の表現にて記載した。
(1)なし、(2)ややあり、(3)あり
【0054】
実施例1
反応容器に、下記表1に記載の(1)のオルガノハイドロジェンポリシロキサン40.9質量部、下記表1に記載の(6)のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン10.8質量部、25℃で液状の油剤としてジメチルシロキサン(動粘度2mm/s)51.8質量部、及びヒドロシリル化反応用触媒として、塩化白金酸1質量%のジビニルテトラメチルジシロキサン溶液0.02質量部を加え、70~80℃にて2時間反応させた。
【0055】
次に、得られた反応物の全量を、3本ロールを使用し、上記ジメチルシロキサン(動粘度2mm/s)155質量部と充分に混練し、反応物/液状の油剤=20/80質量比で、稠度270の滑らかなペースト状シリコーン組成物を得た。異臭はなく、翌日の性状も変化なしであった。この時、ペースト状シリコーン組成物中のオクタメチルシクロテトラシロキサンとデカメチルシクロペンタシロキサンの含有量はそれぞれ100ppm未満、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンは100ppmであった。
【0056】
実施例2
反応容器に、下記表1に記載の(1)のオルガノハイドロジェンポリシロキサン40.9質量部、下記表1に記載の(7)のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン10.0質量部、25℃で液状の油剤としてジメチルシロキサン(動粘度2mm/s)50.9質量部、及びヒドロシリル化反応用触媒として、塩化白金酸1質量%のジビニルテトラメチルジシロキサン溶液0.02質量部を加え、70~80℃にて2時間反応させた。
【0057】
次に、得られた反応物の全量を、3本ロールを使用し、上記ジメチルシロキサン(動粘度2mm/s)152.7質量部と充分に混練し、反応物/液状の油剤=20/80質量比で、稠度273の滑らかなペースト状シリコーン組成物を得た。異臭はなく、翌日の性状も変化なしであった。この時、ペースト状シリコーン組成物中のオクタメチルシクロテトラシロキサンとデカメチルシクロペンタシロキサンの含有量はそれぞれ100ppm未満、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンは180ppmであった。
【0058】
実施例3
反応容器に、下記表1に記載の(3)のオルガノハイドロジェンポリシロキサン8.0質量部、下記表1に記載の(9)のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン96.5質量部、およびヒドロシリル化反応用触媒として、塩化白金酸1質量%のジビニルテトラメチルジシロキサン溶液0.03質量部を加え、70~80℃にて2時間反応させた。
【0059】
次に、得られた反応物の全量を、3本ロールを使用し、25℃で液状の油剤としてイソドデカン185.8質量部と充分に混練し、反応物/液状の油剤=36/64質量比で、稠度318の滑らかなペースト状シリコーン組成物を得た。異臭はなく、翌日の性状も変化なしであった。この時、ペースト状シリコーン組成物中のオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンとドデカメチルシクロヘキサシロキサンは、それぞれ100ppm未満であった。
【0060】
実施例4
反応容器に、下記表1に記載の(5)のオルガノハイドロジェンポリシロキサン7.2質量部、下記表1に記載の(9)のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン21.5質量部、25℃で液状の油剤としてジフェニルシロキシフェニルトリメチコン(表示名称;信越化学工業(株)社製 KF-56A)114.6質量部、およびヒドロシリル化反応用触媒として、塩化白金酸1質量%のジビニルテトラメチルジシロキサン溶液0.02質量部を加え、70~80℃にて2時間反応させた。
【0061】
次に、得られた反応物の全量を、3本ロールを使用し、上記ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン143.7質量部と充分に混練し、反応物/液状の油剤=10/90質量比で、粘度78Pa・sの流動性のあるペースト状シリコーン組成物を得た。異臭はなく、翌日の性状も変化なしであった。この時、ペースト状シリコーン組成物中のオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンは、それぞれ100ppm未満であった。
【0062】
実施例5
反応容器に、下記表1に記載の(4)のオルガノハイドロジェンポリシロキサン8.6質量部、下記表1に記載の(10)のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン103.1質量部、およびヒドロシリル化反応用触媒として、塩化白金酸1質量%のジビニルテトラメチルジシロキサン溶液0.03質量部を加え、70~80℃にて2時間反応させた。
【0063】
得られた反応物26.4質量部を、3本ロールを使用し、25℃で液状の油剤としてイソドデカン46.9質量部と充分に混練し、反応物/液状の油剤=36/64質量比で、稠度318のペースト状シリコーン組成物を得た。わずかに異臭はあるが、翌日の性状はなめらかなペースト状で、可塑戻りは確認されなかった。この時、ペースト状シリコーン組成物中のオクタメチルシクロテトラシロキサンは、1480ppm、デカメチルシクロペンタシロキサンは1960ppm、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンは710ppmであった。
【0064】
比較例1
反応容器に、下記表1に記載の(2)のオルガノハイドロジェンポリシロキサン45.2質量部、下記表1に記載の(8)のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン11.0質量部、25℃で液状の油剤としてジメチルシロキサン(動粘度2mm/s)56.3質量部、及びヒドロシリル化反応用触媒として、塩化白金酸1質量%のジビニルテトラメチルジシロキサン溶液0.02質量部を加え、70~80℃にて2時間反応させた。
【0065】
得られた反応物60.0質量部を、3本ロールを使用し、上記ジメチルシロキサン(動粘度2mm/s)89.9質量部と充分に混練し、反応物/液状の油剤=20/80質量比で、稠度307のペースト状シリコーン組成物を得た。異臭があり、翌日、硬化し可塑戻りを確認した。この時、ペースト状シリコーン組成物中のオクタメチルシクロテトラシロキサンは、170ppm、デカメチルシクロペンタシロキサンは2800ppm、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンは1900ppmであった。
【0066】
実施例1~5及び比較例1で用いたオルガノポリシロキサンを下記表1に、実施例1~5及び比較例1をまとめた結果を下記表2に示す。
【0067】
【表1】
環状シロキサン含有量を求めるためのサンプルには(1)~(10)のオルガノポリシロキサンを用いた。
D4:オクタメチルシクロテトラシロキサン
D5:デカメチルシクロペンタシロキサン
D6:ドデカメチルシクロヘキサシロキサン
【0068】
【表2】
環状シロキサン含有量を求めるためのサンプルには実施例1~5、比較例1のペースト状シリコーン組成物を用いた。
D4:オクタメチルシクロテトラシロキサン
D5:デカメチルシクロペンタシロキサン
D6:ドデカメチルシクロヘキサシロキサン
【0069】
表2の実施例1~5に示す通り、本発明のペースト状シリコーン組成物であれば、可塑戻りなどの経時変化が少なく、異臭が少なく、安定したペースト状シリコーン組成物となった。特に実施例1~4は異臭がなかった。
【0070】
一方、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びドデカメチルシクロヘキサシロキサンのいずれかの含有量が2,000ppmを超えたペースト状シリコーン組成物である比較例1では、可塑戻りなどの経時変化があり、異臭があり、安定したペースト状シリコーン組成物とならなかった。
【0071】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。