(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023113925
(43)【公開日】2023-08-16
(54)【発明の名称】非水系電池電極用スラリー、並びに非水系電池電極及び非水系電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20230808BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20230808BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096498
(22)【出願日】2023-06-12
(62)【分割の表示】P 2019570716の分割
【原出願日】2019-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2018022334
(32)【優先日】2018-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(72)【発明者】
【氏名】花▲崎▼ 充
(72)【発明者】
【氏名】彭 駿
(57)【要約】
【課題】スラリーを厚塗りし、電極活物質層を厚く形成してもクラックが入りにくい電極を得ることができる非水系電池電極用スラリーを提供する。
【解決手段】本発明の非水系電池電極用スラリーは、非水系電池電極用活物質(A)と、バインダー樹脂(B)と、クラック防止剤(C)と、水と、を含み、前記クラック防止剤(C)は、1気圧での沸点が120℃以上であり、20℃における水への溶解度が10g/100mL以上であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水系電池電極用活物質(A)と、
バインダー樹脂(B)と、
クラック防止剤(C)と、
水と
を含む非水系電池電極用スラリーであって、
前記クラック防止剤(C)は、1気圧での沸点が120℃以上であり、20℃における水への溶解度が10g/100mL以上であり、
前記クラック防止剤(C)の含有量は、バインダー樹脂(B)100質量部に対し、10~200質量部であり、
前記バインダー樹脂(B)が、スチレン系単量体とジエン系単量体との共重合体(P1)、及びスチレン系単量体とエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体との共重合体(P2)から選択される少なくとも1種であることを特徴とする非水系電池電極用スラリー。
【請求項2】
前記クラック防止剤(C)がN-メチルピロリジン-2-オン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドから選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の非水系電池電極用スラリー。
【請求項3】
前記クラック防止剤(C)は、1気圧での沸点が150℃以上の有機溶媒である、請求項1に記載の非水系電池電極用スラリー。
【請求項4】
前記クラック防止剤(C)は、1気圧での沸点が200℃超の有機溶媒である、請求項1に記載の非水系電池電極用スラリー。
【請求項5】
さらに、増粘剤(D)を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の非水系電池電極用スラリー。
【請求項6】
前記増粘剤(D)がカルボキシメチルセルロース(CMC)である、請求項5に記載の非水系電池電極用スラリー。
【請求項7】
前記バインダー樹脂(B)が、スチレン系単量体とエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体との共重合体(P2)から選択される少なくとも1種である、請求項1~6のいずれか1項に記載の非水系電池電極用スラリー。
【請求項8】
前記バインダー樹脂(B)が、スチレン系単量体とジエン系単量体との共重合体(P1)を含み、前記共重合体を構成する全エチレン性不飽和単量体成分のうちスチレン系単量体成分が5~70質量%であり、ジエン系単量体成分が30~95質量%である、請求項1~7のいずれか1項に記載の非水系電池電極用スラリー。
【請求項9】
前記バインダー樹脂(B)が、スチレン系単量体とエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体との共重合体(P2)を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の非水系電池電極用スラリー。
【請求項10】
前記バインダー樹脂(B)が、スチレン系単量体とエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体とエチレン性不飽和カルボン酸単量体との共重合体を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の非水系電池電極用スラリー。
【請求項11】
前記バインダー樹脂(B)におけるスチレンの使用量が前記共重合体を形成する全エチレン性不飽和単量体成分の10~70質量%であり、
前記エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体の使用量が前記共重合体を形成する全エチレン性不飽和単量体成分の25~85質量%であり、
前記エチレン性不飽和カルボン酸単量体の使用量が前記共重合体を形成する全エチレン性不飽和単量体成分の0.01~10質量%である、請求項10に記載の非水系電池電極用スラリー。
【請求項12】
集電体上に、請求項1~11のいずれか1項に記載のスラリーを塗布し、乾燥する工程を有する非水系電池電極の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の非水系電池電極の製造方法を有する非水系電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系電池電極用スラリー、並びに非水系電池電極及び非水系電池の製造方法に関する。
本願は、2018年2月9日に、日本に出願された特願2018-022334号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートパソコン等の電子機器、携帯電話等の通信機器、及び電動工具等の小型化、軽量化の面からリチウムイオン非水系電池が注目されている。
【0003】
リチウムイオン非水系電池は、コバルト酸リチウム等の金属酸化物を活物質とした正極と、黒鉛等の炭素材料を活物質とした負極と、カーボネート類を中心した電解液溶剤とを含む。リチウムイオン非水系電池は、リチウムイオンが正極と負極間を移動することにより電池の充放電が行われる。
正極は、アルミ箔等の正極集電体表面に、金属酸化物等の正極活物質及びバインダーを含む組成物から正極層を形成することにより得ることができる。負極は、銅箔等の負極集電体表面に、黒鉛等の負極活物質及びバインダーを含む組成物から負極層を形成することにより得られる。したがって、各バインダーは、活物質とバインダーとを結着させ、正極層及び負極層の凝集破壊を防ぐ役割がある。
【0004】
バインダーとして、有機溶剤系のN-メチルピロリジン-2-オン(NMP)を溶剤としたポリフッ化ビニリデン(PVDF)系バインダーがよく知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このバインダーは活物質同士及び活物質と集電体との結着性が低く、実際に使用するには多量のバインダーを必要とし、結果として非水系電池の容量が低下する欠点がある。またバインダーに高価な有機溶剤であるNMPを使用しているため、最終製品の価格、及びスラリーまたは集電体作製時の作業環境保全にも問題があった。
【0005】
これらの問題を解決する方法として、従来から水分散系バインダーの開発が進められている。たとえば、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)を併用したスチレン-ブタジエンゴム(SBR)系の水分散体が知られている(例えば、特許文献2~特許文献4参照)。また、二次電池の電極に使用される水分散系バインダーとして、特許文献5には、スチレンと、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体と、エチレン性不飽和カルボン酸単量体及び内部架橋剤とを含有するエチレン性不飽和単量体を、界面活性剤の存在下、乳化重合して得られるものが提案されている。
これらは水分散体であるため安価であり、作業環境保全の観点から有利である。また、活物質同士及び活物質と集電体との結着性が比較的良好なことから、PVDF系バインダーよりも少ない使用量で電極の生産が可能であり、結果として非水系電池の高出力化、及び高容量化ができるという利点がある。
【0006】
最近では環境に優しい観点から、電気自動車又はハイブリッド自動車用の非水系電池として、特に高電圧、高容量、高エネルギー密度化したリチウムイオン非水系電池が強く求められてきている。
これらの改善策として、電極集電体へスラリーを厚塗りし、電極活物質層を厚く形成する方法がある。
しかし、厚塗りすると電極にクラックが入りやすくなり、電池性能が必ずしも良好にできるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10-298386号公報
【特許文献2】特開平5-74461号公報
【特許文献3】特開平8-250123号公報
【特許文献4】特開2011-204573号公報
【特許文献5】特開2011-243464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来技術の問題点を解決し、水分散系のものであって、活物質同士及び活物質と集電体との結着性が良好で、厚塗りしてもクラックが入りにくく、活物質が集電体表面から剥離しにくい、非水系電池電極用スラリー、並びに該スラリーを用いる非水系電池電極及び非水系電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究し、特定の有機溶剤をクラック防止剤として水分散系スラリーに添加することでクラックの発生を防止することができることに着目し、上記課題を解決するに至った。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
【0010】
[1] 非水系電池電極用活物質(A)と、バインダー樹脂(B)と、クラック防止剤(C)と、水とを含む非水系電池電極用スラリーであって、
前記クラック防止剤(C)は、1気圧での沸点が120℃以上であり、20℃における水への溶解度が10g/100mL以上であることを特徴とする非水系電池電極用スラリー。
[2] 前記クラック防止剤(C)がN-メチルピロリジン-2-オン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドから選択される少なくとも1つである、[1]に記載の非水系電池電極用スラリー。
[3] 前記クラック防止剤(C)は、1気圧での沸点が150℃以上の有機溶媒である、[1]に記載の非水系電池電極用スラリー。
[4] 前記クラック防止剤(C)は、1気圧での沸点が200℃超の有機溶媒である、請求項1に記載の非水系電池電極用スラリー。
[5] バインダー樹脂(B)100質量部に対し、前記クラック防止剤(C)を10~500質量部含む、[1]~[4]のいずれかに記載の非水系電池電極用スラリー。
[6] さらに、増粘剤(D)を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の非水系電池電極用スラリー。
[7] 前記増粘剤(D)がカルボキシメチルセルロース(CMC)である、[6]に記載の非水系電池電極用スラリー。
[8] 前記バインダー樹脂(B)が、スチレン系単量体とジエン系単量体との共重合体、及びスチレン系単量体とエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体との共重合体から選択される少なくとも1種である、[1]~[7]のいずれかに記載の非水系電池電極用スラリー。
[9] 前記バインダー樹脂(B)が、スチレン系単量体とジエン系単量体との共重合体を含み、前記共重合体を構成する全エチレン性不飽和単量体成分のうちスチレン系単量体成分が5~70質量%であり、ジエン系単量体成分が30~95質量%である、[1]~[8]のいずれかに記載の非水系電池電極用スラリー。
[10] 前記バインダー樹脂(B)が、スチレン系単量体とエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体との共重合体を含む、[1]~[9]のいずれかに記載の非水系電池電極用スラリー。
[11] 前記バインダー樹脂(B)が、スチレン系単量体とエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体とエチレン性不飽和カルボン酸単量体との共重合体を含む、[1]~[10]のいずれかに記載の非水系電池電極用スラリー。
[12] 前記バインダー樹脂(B)におけるスチレンの使用量が前記共重合体を形成する全エチレン性不飽和単量体成分の10~70質量%であり、
前記エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体の使用量が前記共重合体を形成する全エチレン性不飽和単量体成分の25~85質量%であり、
前記エチレン性不飽和カルボン酸単量体の使用量が前記共重合体を形成する全エチレン性不飽和単量体成分の0.01~10質量%である、[11]に記載の非水系電池電極用スラリー。
[13] 集電体上に、[1]~[12]のいずれかに記載のスラリーを塗布し、硬化する工程を有する非水系電池電極の製造方法。
[14] [13]に記載の非水系電池電極の製造工程を有する非水系電池の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の非水系電池電極用スラリーを用いることより、スラリーを厚塗りし、電極活物質層を厚く形成してもクラックが入りにくい電極を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(非水系電池電極用スラリー)
本発明の非水系電池電極用スラリーは活物質(A)、バインダー樹脂(B)、クラック防止剤(C)、及び水を必須成分として含む。前記クラック防止剤(C)は、1気圧での沸点が120℃以上であり、20℃における水への溶解度が10g/100mL以上であることを特徴とする。また、さらに(D)増粘剤を含んでいてもよい。
本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリルとメタクリルの総称であり、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの総称である。
【0013】
[活物質(A)]
本発明の非水電池電極用スラリーは活物質(A)を必須成分として含む。本発明に用いる活物質は正極活物質でも負極活物質でもよい。本発明の一実施形態の非水電池電極用スラリーにおいては、活物質(A)が負極活物質である。活物質(A)としては負極活物質を用いた場合に効果を発揮しやすい。
活物質の形状は、特に限定されず、球状、燐片状等のものを用いることができる。 活物質の平均粒子径(体積基準での50%メジアン径)は、活物質の分散性の観点から、5~100μmであることが好ましく、10~50μmであることがより好ましく、15~30μmであることがさらに好ましい。なお、体積基準での50%メジアン径はレーザー回折法により算出できる。
活物質のBET比表面積は、活物質の分散性の観点から、0.1~100m2/gであることが好ましく、0.5~50m2/gであることがより好ましく、1.0~30m2/gであることがさらに好ましい。なお、BET比表面積は、BET窒素吸着法による比表面積測定(JIS Z8830に準じる)から得ることができる。
【0014】
正極活物質としては、金属複合酸化物、例えばリチウム及び鉄、コバルト、ニッケル、マンガンの少なくとも1種類以上の金属を含有する金属複合酸化物が挙げられる。好ましくは、LixMy1O2(但し、Mは1種以上の遷移金属、好ましくはCo、MnまたはNiの少なくとも一種を表し、1.10>x>0.05、1≧y1>0である)、LixMy2O4(但し、Mは1種以上の遷移金属、好ましくはMnまたはNiを表し、1.10>x>0.05、2≧y2>0である。)、あるいはLixMy1PO4(但し、Mは1種以上の遷移金属、好ましくはFe、Co、MnまたはNiの少なくとも一種を表し、1.10>x>0.05、1≧y1>0である)等を含んだ活物質が挙げられる。具体例としては、LiCoO2、LiNiO2、LixNiy3MnzCoaO2(式中、1.10>x>0.05、1>y3>0、1>z>0、1>a>0である。)、LiMn2O4、LiFePO4等で表される複合酸化物が挙げられる。
【0015】
負極活物質としては、電気化学的に金属イオン(例えば、リチウムイオン)を吸蔵・放出可能なものであれば、特に制限はない。具体例としては、炭素質物質、金属複合酸化物、珪素化合物等が挙げられる。
炭素質物質としては、例えば、人造黒鉛、天然黒鉛等の黒鉛類;石油コークス、ピッチコークス、石炭コークス等のコークス類等を使用することができる。金属複合酸化物としては、例えば、チタン酸リチウム等を使用することができる。珪素化合物としては、シリコン、珪素酸化物等を使用することができる。これらの活物質を用いた場合に極めて顕著な効果を発揮できる。
これら活物質の中でも結着性向上の観点からは炭素質物質、特に炭素質物質の中の黒鉛類又はコークス類が好ましい。その中でも体積当たりのエネルギー密度の観点からは、人造黒鉛、天然黒鉛等の黒鉛類を用いることがより好ましい。また、炭素質物質以外の活物質の中でも、体積当たりのエネルギー密度の観点からLi4Ti5O12等のチタン酸リチウム、シリコン等も好適である。
これら活物質は1種を単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて併用してもよい。
本発明のスラリー中の不揮発成分における活物質の含有割合は、90.0~99.5質量%であることが好ましく、95.0~99.0質量%であることがより好ましく、96.0~98.0質量%であることがさらに好ましい。スラリーの不揮発成分は、スラリーを大気下において、105℃で1時間乾燥させて、残る成分である。また、「スラリーの不揮発分」とは、スラリーに含まれる不揮発成分の割合である。
【0016】
[バインダー樹脂(B)]
本発明の非水系電池電極用スラリーは、バインダー樹脂(B)を必須成分として含む。
本発明のスラリー中の不揮発成分におけるバインダー樹脂(B)の含有割合は、0.5~5.0質量%であることが好ましく、0.5~2.0質量%であることがより好ましく、0.5~1.8質量%であることがさらに好ましい。
本発明に用いるバインダー樹脂(B)は活物質(A)を均一に分散できるのであれば特に制限は無いが、1種又は2種以上のエチレン性不飽和単量体の重合体であることが好ましい。
【0017】
本発明に用いるバインダー樹脂(B)は、本発明のスラリーから形成した電極を割れにくくする観点から、ガラス転移温度を30℃以下とすることが好ましく、20℃以下とすることがより好ましく、15℃以下とすることがさらに好ましい。なお、取り扱い性の観点から、バインダー樹脂(B)のガラス転移温度は、-20℃以上とすることが好ましい。
【0018】
バインダー樹脂(B)のガラス転移温度は、バインダー樹脂(B)の重合に使用されるエチレン性不飽和単量体Mi(i=1,2,...,i)の各ホモポリマーのガラス転移温度Tgi(i=1,2,...,i)と、エチレン性不飽和単量体Miの各重量分率Xi(i=1,2,...,i)とから、下記式(I)により理論値として算出できる。
【0019】
1/Tg=Σ(Xi/Tgi) ‥(I)
【0020】
バインダー樹脂(B)は、水を分散媒とする水系エマルジョン(EM)中に分散されている状態になっているものをスラリーのための原料とすることがより好ましい。
【0021】
バインダー樹脂(B)の水系エマルジョン(EM)は、以下の方法で調整することができる。
(1)乳化剤とホモジナイザーを用いてバインダー樹脂(B)を水に分散させて水系エマルジョン(EM)を調製する。
(2)バインダー樹脂(B)を生成する重合性単量体と乳化剤を用い、乳化重合して水系エマルジョン(EM)を調製する。
バインダー樹脂(B)は、酸価が100mgKOH/g以下のものが好ましく、75mgKOH/g以下のものがより好ましく、50mgKOH/g以下のものがさらに好ましい。
水系エマルジョン(EM)におけるバインダー樹脂(B)の含有量、すなわち水系エマルジョン(EM)の不揮発分は、1~60質量%が好ましく、1~55質量%がより好ましい。
【0022】
本発明に用いるバインダー樹脂(B)としては、例えば、スチレン-ブタジエンゴム等のスチレン系単量体とジエン系単量体との共重合体(P1);スチレン系単量体とエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体との共重合体(P2);エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-バーサチック酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体等のエチレン-エチレン性不飽和カルボン酸エステル共重合体等が挙げられる。これらの中でも、スチレン系単量体とジエン系単量体との共重合体(P1)、及びスチレン系単量体とエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体との共重合体(P2)は、活物質とバインダー樹脂(B)との結着性を良好にできるとともに、電解液溶剤に対する耐膨潤性に優れ、充放電サイクル特性に優れる点で好適である。また、スチレン系単量体とジエン系単量体との共重合体(P1)、及びスチレン系単量体とエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体との共重合体(P2)は、集電体との結着性にも優れる点で良好である。
【0023】
<スチレン系単量体とジエン系単量体との共重合体(P1)>
スチレン系単量体とジエン系単量体との共重合体(P1)(以下、単に「共重合体(P1)」と称する場合がある。)は、スチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルナフタレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、α-メチルスチレン等のスチレン系単量体に由来する構造単位と;ブタジエン、イソプレン等のジエン系単量体に由来する構造単位とを有する共重合体である。
スチレン系単量体とジエン系単量体との共重合体は、例えば、水性溶媒中、スチレン及びブタジエンを含有する原料組成物を、乳化剤の存在下、乳化重合することで得ることができる。
【0024】
スチレン系単量体とジエン系単量体との共重合体(P1)において、ジエン系単量体由来の構造単位の割合は、30~95質量%が好ましく、より好ましくは40~90質量%、さらに好ましくは50~70質量%である。すなわち、スチレン系単量体とジエン系単量体との共重合体(P1)の製造原料に含まれているジエン系単量体の割合は、30~95質量%以上が好ましく、より好ましくは40~90質量%、さらに好ましくは50~70質量%である。
スチレン系単量体とジエン系単量体との共重合体(P1)中のスチレン系単量体由来の構造単位の割合は、5~70質量%が好ましく、10~60質量%がさらに好ましい。すなわちスチレン系単量体とジエン系単量体との共重合体(P1)の製造原料に含まれているスチレン系単量体の割合は、5~70質量%が好ましく、10~60質量%がさらに好ましい。
【0025】
また、スチレン系単量体とジエン系単量体との共重合体(P1)を得るために、前記スチレン系単量体とジエン系単量体と、エチレン性不飽和カルボン酸単量体等のその他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体と共重合することも可能である。
【0026】
その他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのエチレン性不飽和ニトリル化合物;(メタ)アクリル酸等のエチレン性不飽和カルボン酸;メタアクリル酸メチル等のエチレン性不飽和カルボン酸エステル;エチレン、プロピレン等のオレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン原子含有単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビエルエーテル等のビニルエーテル類;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、ブチルビニルケトン、ヘキシルビニルケトン、イソプロペニルビニルケトン等のビニルケトン類;N-ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の複素環含有ビニル化合物が挙げられる。
【0027】
<スチレン系単量体とエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体との共重合体(P2)>
スチレン系単量体とエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体との共重合体(P2)(以下、単に「共重合体(P2)」と称する場合がある。)は、スチレン系単量体由来の構造とエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体由来の構造とを有する。該共重合体(P2)は、例えば、水性溶媒中、スチレン系単量体、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体を含有する原料組成物を、乳化剤の存在下、乳化重合することで得ることができる。
【0028】
スチレン系単量体は、主として、活物質と樹脂との結着性、及び電極活物質層と集電体との結着性を良好にする役割を有する。特に、活物質として人造黒鉛を用いた場合、より一層その効果を発揮できる。
スチレン系単量体の使用量は、上記共重合体(P2)を形成する全エチレン性不飽和単量体成分の10~75質量%であることが好ましく、30~60質量%であることがより好ましく、35~55質量%であることがさらに好ましい。
スチレン系単量体の使用量を10質量%以上とすることにより、活物質と樹脂との結着性、及び電極活物質層と集電体との結着性が良好になる。また、スチレンの使用量を70質量%以下とすることにより、本発明の組成物から形成した電極が割れにくい(クラックが生じにくい)。
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルナフタレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、α-メチルスチレン等が挙げられる。中でも活物質分散性の面から好ましくはスチレン又はビニルトルエンであり、より好ましくはスチレンである。
【0029】
エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体は、官能基を有しても有しなくてもよい。
官能基を有さないエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸iso-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸イソボロニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。
【0030】
官能基を有するエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体としては、例えば、ヒドロキシ基、グリシジル基等を有するエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体が挙げられる。具体例としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシアルキル、アクリル酸グリシジル等が挙げられる。これらの中でも、乳化重合の容易さ及び耐久性の観点から、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸イソボロニル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルが好ましい。
【0031】
エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体の使用量としては、上記共重合体(P2)を形成する全エチレン性不飽和単量体成分の25~90質量%であることが好ましく、30~65質量%であることがより好ましく、40~55質量%であることがさらに好ましい。
エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体の使用量を25質量%以上とすることにより、形成した電極の柔軟性や耐熱性を良好にでき、90質量%以下とすることにより、活物質と樹脂との結着性、及び活物質層と集電体との結着性を良好にできる。
【0032】
上記共重合体(P2)を形成する単量体として、さらにエチレン性不飽和カルボン酸単量体を用いてもよい。
エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸またはこれら不飽和ジカルボン酸のハーフエステル等が挙げられ、これらの中でも、アクリル酸、イタコン酸が好ましい。これらのエチレン性不飽和カルボン酸単量体は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
エチレン性不飽和カルボン酸単量体の使用量としては、上記共重合体(P2)を形成する全エチレン性不飽和単量体成分の0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上8質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上7質量%以下であることがさらに好ましい。エチレン性不飽和カルボン酸単量体が0.01質量%以上であれば、乳化重合安定性や機械的安定性が向上する。また、10質量%以下であれば、活物質と樹脂との結着性、及び活物質層と集電体との結着性が良好である。
また、共重合体(P2)の酸価を前記の範囲内とすることが製造安定性の面で好ましい。
【0034】
上記共重合体(P2)を形成する単量体として、さらに、少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和基を有する上述した以外の単量体を用いてもよい。このような単量体としては、(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のアミド基、ニトリル基等の官能基を有するエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体以外の化合物、パラスチレンスルホン酸ソーダ等が挙げられる。
【0035】
スチレン系単量体とエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体との共重合体(P2)の原料組成物中には、乾燥皮膜の電解液溶剤に対する耐膨潤性をより向上させるために、さらに内部架橋剤(内部架橋性単量体)を含むこともできる。
【0036】
内部架橋剤としては、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を有し、上述した単量体が有する官能基と反応性を有する反応性基を有するもの、或いは、2つ以上のエチレン性不飽和結合を有するものを用いることができる。
【0037】
このような内部架橋剤としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート等の不飽和基を2個以上有する架橋性多官能単量体、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリオキシプロピルトリエトキシシラン等の少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を有するシランカップリング剤等が挙げられ、これらの中でも、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びγ-メタクリオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。これらの内部架橋剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
内部架橋剤の使用量としては、上記共重合体(P2)を形成する全エチレン性不飽和単量体成分の0.01~5質量%であることが好ましく、0.01~4質量%であることがより好ましく、0.01~3質量%であることがさらに好ましい。内部架橋剤の使用量を0.01質量%以上とすることにより、電解液に対する乾燥皮膜の耐膨潤性を良好にしやすくでき、5質量%以下とすることにより、乳化重合安定性の低下を防止できる。
【0039】
また、上記共重合体(P2)を形成する単量体として、さらに、後述する反応性の乳化剤を用いても良い。
【0040】
<乳化剤>
乳化重合の際に用いられる乳化剤としては、通常のアニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤が用いられる。
アニオン性乳化剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸塩等が挙げられる。ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン多環フィニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、乳化剤として反応性の乳化剤を用いれば、乳化剤のブリードアウトが防止され、本発明の組成物から形成した電極の機械的安定性を向上できる点で好適である。反応性の乳化剤としては、例えば、以下の一般式(1)~(5)に示すものが挙げられる。
【0041】
【化1】
式中、Rはアルキル基、mは10~40の整数を示す。
【0042】
【化2】
式中、nは10~12の整数、mは10~40の整数を示す。
【0043】
【化3】
式中、Rはアルキル基、MはNH
4又はNaを示す。
【0044】
【0045】
【化5】
式中、Aは炭素数2又は3のアルキレンオキシド、mは10~40の整数を示す。
【0046】
乳化剤の好適な使用量は、非反応性の乳化剤の場合、上記共重合体を形成する全エチレン性不飽和単量体成分100質量部に対して、0.1~3.0質量部であることが好ましく、0.1~2.0質量部であることがより好ましく、0.2~1.0質量部であることがさらに好ましい。反応性の乳化剤の場合、上記共重合体を形成する全エチレン性不飽和単量体成分(当反応性乳化剤を含む)の0.3~5.0質量%であることが好ましく、0.5~4.0質量%であることがより好ましく、0.5~2.0質量%であることがさらに好ましい。また、非反応性の乳化剤、反応性の乳化剤はそれぞれ単独で用いてもよいが、混合して用いることが好ましい。
【0047】
<開始剤>
乳化重合の際に用いられるラジカル重合開始剤としては公知慣用のものを用いることができ、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、t-ブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。また、必要に応じて、これらの重合開始剤を重亜硫酸ナトリウム、ロンガリット(ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム)、アスコルビン酸等の還元剤と併用してレドックス重合としてもよい。
【0048】
また、上記共重合体(P2)の分子量を調整するために、重合時にメルカプタン、チオグリコール酸及びそのエステル、β-メルカプトプロピオン酸及びそのエステルなどを用いてもよい。
【0049】
<重合方法>
乳化重合法としては、バインダー樹脂(B)を構成する単量体を一括して仕込む重合方法、各成分を連続供給しながら重合する方法等が適用される。重合は通常30~90℃の温度で攪拌下に行われる。なお、上記共重合体の重合中または重合終了後に塩基性物質を加えてpHを調整することにより、乳化重合時の重合安定性、機械的安定性、化学的安定性を向上させることができる。この場合に使用される塩基性物質としては、アンモニア、トリエチルアミン、エタノールアミン、苛性ソーダ等を使用する事ができる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。調整した水系エマルジョン(EM)のpHは2.5~8.0であることが好ましく、5~7であることがより好ましい。
【0050】
[クラック防止剤(C)]
本発明のスラリーは、1気圧での沸点が120℃以上であり、20℃における水への溶解度が10g/100mL以上であるクラック防止剤(C)を含む。クラック防止剤(C)は有機溶媒であることが好ましく、その沸点は、150℃以上であることが好ましく、200℃超であることがより好ましい。20℃における水への溶解度は20g/100mL以上であることが好ましく、50g/100mL以上であることがより好ましい。
クラック防止剤(C)の沸点が120℃以上であることにより、スラリーを乾燥する際に発生するひび割れの原因となりやすい応力を緩和しながら徐々に電極活物質層を形成することができると考えられる。
20℃における水への溶解度が10g/100mL以上であることにより、クラック防止剤(C)は水への溶解度が高く、親水性が高くなり、スラリーの大部分を構成する活物質(A)へ吸収されにくく、スラリーの流動性を維持できると考えられる。
また、本発明においては沸点が高い有機溶媒ほど活物質同士及び活物質と集電体との結着性が良好であるとの傾向があることを見出した。詳細は不明であるが、水との沸点の差が大きい高沸点溶媒は、乾燥工程での蒸発の際に水を引き連れにくい。水の引き連れに伴う水素結合によるバインダーの位置変化等が生じにくいため、バインダーが活物質に均一に付着したまま乾燥できると考えられる。
クラック防止剤(C)は沸点と溶解度を満たせば特に制限は無い。具体例として、N-メチルピロリジン-2-オン(沸点202℃、水に混和)、エチレングリコール(沸点197℃、水に混和)、ジエチレングリコール(沸点244℃、水に混和)、エチレングリコールモノブチルエーテル(沸点171℃、水に混和)、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(沸点174℃、水に混和)、N,N-ジメチルホルムアミド(沸点153℃、水に混和)、ジメチルスルホキシド(沸点189℃、25℃における水への溶解度25.3g/100mL)等が挙げられる。その中でも、特に水溶性が高く、かつ高沸点であることから、特に、N-メチルピロリジン-2-オンが好ましい。
【0051】
クラック防止剤(C)の含有量はバインダー樹脂(B)100質量部に対し、10~500質量部であることが好ましく、より好ましくは20~400質量部であり、さらに好ましくは30~300質量部であり、特に好ましくは100~200質量部である。
【0052】
クラック防止剤(C)はスラリーの不揮発成分100質量部に対し、0.1~20.0質量部含むことが好ましく、より好ましくは0.3~10.0質量部含むことであり、さらに好ましくは0.5~5.0質量部含むことである。
【0053】
本発明のスラリーは、クラック防止剤(C)を0.01~10質量%含むことが好ましく、0.10~5.0質量%含むことがより好ましく、0.20~3.00質量%含むことがさらに好ましい。
【0054】
本発明のスラリーに含まれているクラック防止剤(C)は、後述の方法で電極を形成する場合、電極中に残留している量が少ない方が好ましい。電極中のブラック防止剤(C)の残留量は0.05質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましい。[増粘剤(D)]
本発明のスラリーは、必要に応じて増粘剤等を更に含むことができる。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン、及びこれらの塩、アラビアゴム、キサンタンゴム、アルギン酸化合物等が使用できる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
増粘剤はスラリーの不揮発成分全体に対して0.1~10.0質量%が好ましく、0.5~5.0質量%がより好ましく、さらに0.8~3.0質量%が好ましい。
[スラリー分散媒]
本発明のスラリー分散媒は水である。純水又はイオン交換水であってもよい。水はバインダー樹脂(B)を水系乳化重合して製造する分散媒をそのまま適用しても良い。スラリーには水以外の分散媒を含んでいても良い。ただし、クラック防止剤(C)は分散媒に算入しない。他の分散媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;アセトン等のケトン類等が挙げられる。他の分散媒を用いる場合は、水の含有量が分散媒全体の80質量%以上であることが好ましい。
【0055】
[その他の添加剤]
本発明のスラリーには導電助剤を添加することも可能である。導電助剤は、活物質間の電気伝導性を持つ材料であればよい。導電助剤の例としては、アセチレンブラック等のカーボンブラック、ポリマー炭、及びカーボンファイバーが挙げられる。
【0056】
(非水系電池電極用スラリーの調製方法)
本発明のスラリーの調製方法の一実施形態は、例えば以下の工程を含む方法が挙げられる。
(I)バインダー樹脂(B)を溶媒に分散、溶解または混練させる工程。
(II)活物質(A)及び必要に応じて用いる添加剤を加えて、さらに、分散、溶解または混練する工程。
クラック防止剤(C)、増粘剤(D)及びその他の添加剤は、工程(I)で混合することも、工程(II)で混合することも可能である。
【0057】
本発明のスラリーの調製方法のその他の実施形態は、例えば以下の工程を含む方法が挙げられる。
(I)前記1種又は2種以上のエチレン性不飽和単量体を乳化重合して、バインダー樹脂(B)の水系エマルジョン(EM)を得る工程。
(II)前記水系エマルジョン(EM)に活物質(A)及び必要に応じて用いる添加剤を加えて、さらに、分散、溶解する工程。
クラック防止剤(C)、増粘剤(D)及びその他の添加剤は、工程(I)後に混合することも、工程(II)で混合することも可能である。
【0058】
(非水系電池電極)
本発明の一実施態様の非水系電池電極(以下、「本実施態様の電極」と称する場合がある。
)は、集電体上に、上述した本発明の非水系電池電極用スラリーから形成されてなる電極活物質層を有するものである。
本発明の一実施態様の電極は、非水系電池の正極としても、負極としても用いることができるが、負極として用いた場合に、特に効果を発揮できる。特に、リチウムイオン非水系電池電極の負極として用いた場合に、最も効果を発揮できる。
【0059】
本実施態様の電極における集電体としては、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレスなどの金属性のものであれば、特に限定されない。これらの中でも、正極用の集電体としてはアルミニウムが好ましく、負極用の集電体としては銅が好ましい。
集電体の形状についても、特に限定されないが、通常、厚さ0.001~0.5mmのシート状のものを用いることが好ましい。
【0060】
本実施態様の電極は集電体と、集電体上に形成された電極活物質層とを有し、電極活物質層は、バインダー樹脂(B)と活物質(A)とを含む。電極活物質層は、非水系電池電極用スラリーを硬化(乾燥)してなるものである。
【0061】
本発明の一実施態様の非水系電池電極が負極の場合、前述の負極活物質を含む本発明の非水系電池電極用スラリーを用いて、集電体上に負極活物質層を形成する。集電体上に形成された片面のスラリーの不揮発成分量(負極活物質層の目付量)は、片面で1~20mg/cm2が好ましく、5~20mg/cm2がより好ましく、10~15mg/cm2がさらに好ましい。
本発明の一実施態様の非水系電池電極が正極の場合、前述の正極活物質を含む本発明の非水系電池電極用スラリーを用いて、集電体上に正極活物質層を形成する。集電体上に形成された片面のスラリーの不揮発成分量(正極活物質層の目付量)は、片面で10~40mg/cm2が好ましく、13~30mg/cm2がより好ましく、15~25mg/cm2がさらに好ましい。
【0062】
本発明の一実施態様の電極は、バインダー樹脂(B)により活物質同士の結着性が良好であり、電極活物質層の凝集破壊を防止することができる。また、本実施態様の電極は、電極活物質層と集電体との結着性も良好にすることができる。特に、本発明の非水系電池電極用スラリーを用いることより、スラリーを厚塗りし、電極活物質層を厚く形成してもクラックが入りにくい電極を得ることができる。これにより、非水系電池の高エネルギー密度化を達成することができる。このうような効果は、特に、集電体として銅を用いた場合に、極めて良好にすることができる。
【0063】
[非水系電池]
本発明の一実施態様の非水系電池はリチウムイオン非水系電池である(以下、「本実施態様の電池」と称する場合がある。)。本実施態様の電池は、上述した本発明の一実施態様の非水系電池電極を用いてなるものである。すなわち、本発明の非水系電池電極用スラリーを用いて電極活物質層を厚く形成した、クラックが入りにくい電極を用いてなるものである。
例えば、本実施態様の非水系電池は、厚みが両面の合計で10~40mg/cm2である上記負極活物質層を含むことが好ましく、20~30mg/cm2であることがより好ましい。
【0064】
本実施態様の電池は、正極及び負極と、電解液と、必要に応じてセパレータ等の部品を用い、公知の方法にしたがって製造できる。電極としては、正極及び負極ともに上述した本発明の電極を用いてもよく、正極又は負極の一方に上述した本実施態様の電極を用いてもよいが、負極に上述した本実施態様の電極を用いた場合に特に効果を発揮できる。
電池の外装体としては、金属外装体やアルミラミネート外装体を使用できる。電池の形状は、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角型、扁平型等いずれの形状であってもよい。電池の電解液中の電解質としては、公知のリチウム塩がいずれも使用でき、活物質の種類に応じて選択すればよい。例えば、LiClO4、LiBF6、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiB10Cl10、LiAlCl4、LiCl、LiBr、LiB(C2H5)4、CF3SO3Li、CH3SO3Li、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、Li(CF3SO2)2N、低級脂肪酸カルボン酸リチウム等が挙げられる。
【0065】
電解質を溶解する溶媒としては、電解質を溶解させる液体として通常用いられるものであれば特に限定されるものではなく、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ビニレンカーボネート(VC)などのカーボネート化合物;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンなどのラクトン化合物;トリメトキシメタン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、2-エトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフランなどのエーテル化合物;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド化合物;1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソランなどのオキソラン化合物;アセトニトリル、ニトロメタン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミドなどの含窒素化合物;ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの有機酸エステル化合物;リン酸トリエステルやジグライム化合物;トリグライム化合物;スルホラン、メチルスルホランなどのスルホラン化合物;3-メチル-2-オキサゾリジノンなどのオキサゾリジノン化合物;1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、ナフタスルトンなどのスルトン化合物;等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の一実施態様の非水系電池は、リチウムイオン非水系電池であってもよい。
【0066】
(非水系電池電極の製造方法)
本発明の一実施態様の非水系電池電極の製造方法は、以下の工程を含む。
(III)前記工程(I)及び(II)で得られた非水系電池電極用スラリーを、集電体上に塗布して乾燥することより電極活物質層を形成する工程。
本実施態様の電極は、例えば、集電体上に、上述した本発明の非水系電池電極用スラリーを塗布し、乾燥することにより得ることができる。
塗布方法は、一般的な方法を用いることができ、例えば、リバースロール法、ダイレクトロール法、ドクターブレード法、ナイフ法、エクストルージョン法、カーテン法、グラビア法、バー法、ディップ法およびスクイーズ法をあげることができる。これらの中でも、本発明のスラリーの粘性等の諸物性及び乾燥性に合わせて塗布方法を選定することにより、電極活物質層の表面状態を良好にし得るという観点から、ドクターブレード法、ナイフ法、又はエクストルージョン法が好ましい。乾燥温度は、25℃から180℃までスラリーに含まれる樹脂の諸物性及び乾燥性、乾燥時間に合わせて選定することができる。作業効率の観点から、例えば、50℃から150℃が好ましく、60℃から120℃がより好ましい。
また、本実施態様の電極は、電極活物質層の形成後、必要に応じてプレスすることができる。プレスの方法としては、一般的な方法を用いることができるが、特に金型プレス法やカレンダープレス法が好ましい。プレス圧は、特に限定されないが、0.2~3t/cm2が好ましい。
【実施例0067】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の「部」および「%」は、特に断りのない場合はそれぞれ質量部、質量%を示す。
また、実施例及び比較例で使用した材料、並びに、実施例及び比較例で得られた非水系電池電極用スラリー、及び非水系電池用電極について、以下の測定及び評価を行った。結果を表2又は3に示す。
【0068】
[評価方法]
(水系エマルジョン(EM)の不揮発分及びスラリーの不揮発分)
直径5cmのアルミ皿に評価サンプルとして水系エマルジョン(EM)又はスラリーを1g秤量し、大気下において、105℃で1時間乾燥させ、残分を秤量することで算出した。
【0069】
(粘度)
ブルックフィールド型回転粘度計を用いて、液温23℃、回転数60rpm、No.2またはNo.3ローターにて測定した。
【0070】
(pH)
水系エマルジョン(EM)のpH(23℃)をガラス電極法により測定した。pH測定にはpHメーター(株式会社堀場製作所製、F-52)を使用した。
【0071】
(水系エマルジョン(EM)中に分散された樹脂粒子の平均粒子径)
UPA型粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製)にて平均粒子径(体積基準での50%メジアン径)を測定した。
(酸価)
JIS K 0070の電位差滴定法に準拠し、測定した酸価(mgKOH/g)を固形分換算して求めた。
【0072】
(スラリー外観)
後述の成分を混合して非水系電池電極(負極)用スラリーを得て10分経過後、目視観察し、液に分離、沈降物が見られるもの、及び流動性がないものを×、均一に分散しているものを○とした。
【0073】
(電極外観)
電極作製後に表面を目視観察し、クラックがあるものを×、クラックが無いものを○とした。
【0074】
(電極の密着性)
作製した負極を23℃、50%RH下で24時間放置したものを試験片とした。試験片の活物質層と集電体との間の剥離強度をJIS K6854-2に基づいて測定した。試験片のスラリー塗布面とSUS板とを両面テープを用いて貼り合わせ、180°剥離を実施し(剥離幅25mm、剥離速度100mm/min)、剥離強度を測定した。剥離強度が小さいものは、活物質層が凝集破壊しやすく、活物質同士及び活物質と集電体との結着性が低いことを意味している。
【0075】
[合成例]
(バインダー樹脂B-1の合成)
冷却管、温度計、攪拌機、滴下ロートを有するセパラブルフラスコに、イオン交換水32.6質量部及び上記一般式(4)に示す反応性のアニオン性乳化剤(三洋化成工業株式会社製、商品名エレミノールJS-20、有効成分40質量%)0.11質量部、非反応性のアニオン性乳化剤(第一工業製薬株式会社製、商品名ハイテノール08E、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩)0.02質量部を仕込み、窒素ガスによる液中バブリングを1時間実施してから75℃に昇温した。
次いで、上記一般式(4)に示す反応性のアニオン性乳化剤を0.48質量部、非反応性のアニオン性乳化剤(第一工業製薬株式会社製、商品名ハイテノール08E、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩)0.17質量部、スチレン49.2質量部、アクリル酸2-エチルヘキシル43.1質量部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル1.90質量部、アクリル酸1.90質量部、パラスチレンスルホン酸ソーダ0.60質量部、ジビニルベンゼン0.04質量部及びイオン交換水67.9質量部を予め混合してなる単量体乳化物を3時間かけて滴下した。同時に重合開始剤として過硫酸カリウム0.40質量部をイオン交換水9.30質量部に溶解したものを3時間かけて80℃で滴下重合した。滴下終了後、2時間熟成後冷却し、アンモニア水2.10質量部を添加して、バインダー樹脂B-1が分散したアニオン性の水系エマルジョンEM1を得た。得られたアニオン性水系エマルジョンEM1はpH5.0、粘度40mPa・s、水系エマルジョン中のバインダー樹脂B-1の割合(不揮発分)40質量%であり、エマルジョン中の樹脂粒子の平均粒子径は250nmであり、バインダー樹脂はガラス転移温度15℃、酸価40mgKOH/gであった。
【0076】
(バインダー樹脂B-2の合成)
単量体としてスチレン52.4質量部、アクリル酸2-エチルヘキシル40.6質量部、アクリル酸3.80質量部、イタコン酸1.90質量部、パラスチレンスルホン酸ソーダ0.60質量部、ジビニルベンゼン0.67質量部を使用した以外は、水系エマルジョンEM1と同様の方法でバインダー樹脂B-2が分散したアニオン性の水系エマルジョンEM2を得た。得られたアニオン性水系エマルジョンEM2は不揮発分40質量%、pH7.0、粘度60mPa・sであり、水系エマルジョン中の樹脂粒子の平均粒子径は300nmであり、バインダー樹脂B-2はガラス転移温度15℃、酸価40mgKOH/gであった。
【0077】
(バインダー樹脂B-3)
バインダー樹脂B-3が分散したアニオン性水系エマルジョンEM3として、日本ゼオン社製BM-400B(スチレン69.8質量%、ブタジエン30質量%のスチレン-ブタジエンゴム、不揮発分40質量%、pH7.0、粘度11mPa・s、水系エマルジョン中の樹脂粒子の平均粒子径190nm、ガラス転移温度-7℃、酸価25mgKOH/g)を準備した。
【0078】
(実施例1)
<負極用スラリーの作製>
活物質(人造黒鉛SCMG(登録商標)-XRs、昭和電工社製、粒子径12μm、比表面積2.5m2/g)、カーボンブラックC-65(ティムカル社製)、増粘剤(D)としてCMC(重量平均分子量300万、置換度0.9)の2質量%水溶液、及び水を表1の割合で混合(工程1)した後、バインダー樹脂(B)としてエマルジョンEM1、クラック防止剤(C)としてNMP、及び水を表1の割合で混合(工程2)して、実施例1の非水系電池電極(負極)用スラリーを得た。評価結果は表2に示す。
【0079】
【0080】
(負極の作製)
集電体である銅箔の片面上に、非水系電池電極(負極)用スラリーをWet厚みが280μmとなるように塗布し、60℃で2分加熱乾燥後、更に100℃で2分間乾燥した。
その後もう一方の片面についても同様に塗布および乾燥を行った。集電体上に形成された片面のスラリーの不揮発成分量12mg/cm2、両面で24mg/cm2の電極を得た。評価結果は表2に示す。
【0081】
(実施例2~10)(比較例1~8)
クラック防止剤(C)及びバインダー樹脂(B)として水系エマルジョン(EM)を表2及び表3の配合に変更した以外は、実施例1と同様にして、非水系電池電極用スラリー、及び非水系電池電極を得た。評価結果を表2及び表3に示す。
使用したクラック防止剤は以下の通りである。
NMP:N-メチルピロリジン-2-オン(和光純薬工業株式会社製)
ブチルセロソルブ:エチレングリコールモノブチルエーテル(ダウ・ケミカル日本株式会社製)
EG:エチレングリコール(丸善石油化学株式会社製)
DEG:ジエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製)
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド(和光純薬工業株式会社製)
DMSO:ジメチルスルホキシド(和光純薬工業株式会社製)
ソルフィット:3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(株式会社クラレ製)
IPA:イソプロピルアルコール(株式会社トクヤマ社製)
n-ブタノール:1-ブタノール(三菱ケミカル株式会社製)
ベンジルアルコール:ベンジルアルコール(アーク株式会社製)
フェノキシエタノール-SP:フェノキシエタノール(四日市合成株式会社製)
ワイジノールEHP01:プロピレングリコール-モノ-2-エチルヘキサノエート(四日市合成株式会社製)
テキサノール:2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール2-メチルプロパノアート(チッソ株式会社製)
ベンゾフレックス9-88:ジプロピレングリコールジベンゾエート(Velsicol Chemical製)
【0082】
【0083】
【0084】
(実施例11~12)(比較例9~10)
クラック防止剤(C)及び水系エマルジョン(EM)を表2及び表3の配合に変更した以外は、実施例1及び比較例1と同様にして、非水系電池電極用スラリー、及び非水系電池電極を得た。評価結果を表2及び表3に示す。
【0085】
表2及び3に示した非水系電池電極用スラリーの評価結果及びそれを用いて作製された非水系電池電極の評価結果から明らかなように、本発明の非水系電池電極用スラリーを用いた実施例1~12は、電極にクラック等が入らず、電極への密着性も高かった。中でも沸点が200℃超のクラック防止剤を用いた実施例1~4、7、11、及び12は、特に電極密着性に優れていた。