(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114125
(43)【公開日】2023-08-17
(54)【発明の名称】集団状態推定システム、マッチングシステム、これらの方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20230809BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016282
(22)【出願日】2022-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】598121341
【氏名又は名称】慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】大橋 盛徳
(72)【発明者】
【氏名】中平 篤
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓太
(72)【発明者】
【氏名】戸田 穂乃香
(72)【発明者】
【氏名】土屋 志高
(72)【発明者】
【氏名】岸上 順一
(72)【発明者】
【氏名】前田 至剛
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC11
(57)【要約】
【課題】社会関係資本の観点から集団の状態を推定する技術、集団の状態に基づいて集団間のマッチングを行う技術を提供する。
【解決手段】集団状態推定システムは、集団に属する各個人の行動ログに基づいて、各個人の社会関係資本タイプを推定する社会関係資本タイプ推定部3と、推定された社会関係資本タイプに基づいて、集団の状態を推定する集団状態推定部4と、を備えている。マッチングシステムは、集団状態推定システムを備えており、集団状態推定システムは、複数の集団のそれぞれの状態を推定し、推定された各集団の状態に基づいて、所定の基準の下で相性が良い集団の情報を出力する集団マッチング部5を更に備えている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集団に属する各個人の行動ログに基づいて、前記各個人の社会関係資本タイプを推定する社会関係資本タイプ推定部と、
前記推定された社会関係資本タイプに基づいて、前記集団の状態を推定する集団状態推定部と、
を含む集団状態推定システム。
【請求項2】
請求項1の集団状態推定システムであって、
前記社会関係資本タイプ推定部は、前記各個人の行動ログを構成する各行動がポジティブ又はネガティブである度合いに基づいて前記各個人の社会関係資本タイプを推定する、
集団状態推定システム。
【請求項3】
請求項1の集団状態推定システムであって、
前記集団状態推定部は、各社会関係資本タイプであると推定された個人の数に基づいて、前記集団の状態を推定する、
集団状態推定システム。
【請求項4】
請求項1から3の何れかの集団状態推定システムを含み、
前記集団状態推定システムは、複数の集団のそれぞれの状態を推定し、
前記推定された各集団の状態に基づいて、所定の基準の下で相性が良い集団の情報を出力する集団マッチング部を更に含む、
マッチングシステム。
【請求項5】
社会関係資本タイプ推定部が、集団に属する各個人の行動ログに基づいて、前記各個人の社会関係資本タイプを推定する社会関係資本タイプ推定ステップと、
集団状態推定部が、前記推定された社会関係資本タイプに基づいて、前記集団の状態を推定する集団状態推定ステップと、
を含む集団状態推定方法。
【請求項6】
請求項5の集団状態推定方法を含み、
前記集団状態推定方法は、複数の集団のそれぞれの状態を推定し、
集団マッチング部は、前記推定された各集団の状態に基づいて、所定の基準の下で相性が良い集団の情報を出力する集団マッチングステップを更に含む、
マッチング方法。
【請求項7】
請求項1から3の何れかの集団状態推定システム又は請求項4のマッチングシステムの各部としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個人により構成される集団の状態を推定する技術、集団間のマッチングを行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
企業対企業、企業対個人、個人対個人の間で、見知らぬ相手とのマッチングを提供する仕組みが存在する。例えば、就活サイトによる企業と個人のマッチング、婚活サイトによる個人と個人のマッチング、企業間の商談マッチングなどのマッチングの仕組みが存在する。
【0003】
婚活サイトにおけるマッチングでは、個人の趣味などの属性を用いてマッチングが行われる。企業間の商談マッチングでは、経営資源(技術資源、人的資源、生産資源、販売資源、資金資源)を考慮してマッチングが行われる。
【0004】
ユーザに属性値を入力してもらうのではなく、特許文献1のようにユーザの行動(会話の返答に使用される語句の同意、非同意強度)を用いて価値観を推定する方法も提案されている。
【0005】
通常のマッチングは直接的に関心のある事項を使いマッチングを行う。
【0006】
昨今では、良好なマッチングだけでなく、マッチング後の個人や集団も含めて良好な状態(Well-being)を目指すことが重要となってきている。
【0007】
そのためには、個人と集団をシームレスに扱える概念、言い換えれば論理的に個人と集団を特徴づける概念が必要である。
【0008】
ここで、社会集団や社会関係の状態を評価する概念として、社会関係資本が知られている。社会関係資本は、社会関係の中に見いだされる概念的存在であり、その効果として、社会関係の諸個人間の円滑な相互作用をもたらすものである。
【0009】
このように、社会関係資本は、個人と集団を特徴づける概念である。このため、社会関係資本を測定することができれば、個人と集団の状態をシームレスに分析し理解することが可能になる。
【0010】
しかしながら、社会関係資本の観点から集団の状態を推定する技術はこれまでなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、社会関係資本の観点から集団の状態を推定する集団状態推定システム、集団の状態に基づいて集団間のマッチングを行うマッチングシステム、これらの方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明の一態様による集団状態推定システムは、集団に属する各個人の行動ログに基づいて、各個人の社会関係資本タイプを推定する社会関係資本タイプ推定部と、推定された社会関係資本タイプに基づいて、集団の状態を推定する集団状態推定部と、を備えている。
【0014】
この発明の一態様によるマッチングシステムは、集団状態推定システムを備えており、集団状態推定システムは、複数の集団のそれぞれの状態を推定し、推定された各集団の状態に基づいて、所定の基準の下で相性が良い集団の情報を出力する集団マッチング部を更に備えている。
【発明の効果】
【0015】
社会関係資本の観点から集団の状態を推定することができる。集団の状態に基づいて集団間のマッチングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、集団状態推定システムの機能構成の例を示す図である。
【
図2】
図2は、集団状態推定方法の処理手続きの例を示す図である。
【
図3】
図3は、社会関係資本タイプの推定の処理の例を説明するための図である。
【
図4】
図4は、社会関係資本タイプの推定の処理の例を説明するための図である。
【
図5】
図5は、マッチングシステム機能構成の例を示す図である。
【
図6】
図6は、マッチング方法の処理手続きの例を示す図である。
【
図7】
図7は、コンピュータの機能構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、図面中において同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【0018】
[集団状態推定システム及び方法]
集団状態推定システムは、
図1に示すように、制御部2、社会関係資本タイプ推定部3及び集団状態推定部4を例えば備えている。集団状態推定システムと、ユーザ端末1とは、情報の送受信が可能なように接続されている。
【0019】
集団状態推定方法は、集団状態推定システムの各構成部が、以下に説明し及び
図2に示すステップS3からステップS4の処理を行うことにより例えば実現される。
【0020】
以下、集団状態推定システムの各構成部について説明する。
【0021】
<ユーザ端末1>
ユーザ端末1は、PC、スマートフォン、タブレット端末等のユーザが使用する情報端末である。
【0022】
ユーザは、ユーザ端末1を用いて、Twitter(登録商標)等のSNS、Slack(登録商標)等のメッセージアプリから、集団に属する各個人の行動ログを取得する。
【0023】
行動ログは、文字や同意非同意等感情が表現された絵等でのコミュニケーション行動の集合である。例えば、ある個人のTwitterのツイートが複数ある場合、この複数のツイートからなる集合が、この個人の行動ログである。
【0024】
そして、ユーザ端末1は、取得した集団に属する各個人の行動ログを集団状態推定システムに出力する。なお、ユーザ端末1は、集団に属する各個人の行動ログを、集団IDと共に集団状態推定システムに出力してもよい。
【0025】
<制御部2>
制御部2には、ユーザ端末1が出力した集団に属する各個人の行動ログが入力される。
【0026】
制御部2は、必要に応じて、集団に属する各個人の行動ログを、個人ごとに分類して整形する。
【0027】
制御部2が、ユーザ端末1から受け取った集団に属する各個人の行動ログが、既に、個人ごとに分類されており、集団状態推定システムが処理可能なフォーマットに整形されている場合には、この制御部2の処理は行われなくてもよい。
【0028】
必要に応じて分類された整形された集団に属する各個人の行動ログは、社会関係資本タイプ推定部3に出力される。
【0029】
制御部2の他の処理については、後述する。
【0030】
<社会関係資本タイプ推定部3>
社会関係資本タイプ推定部3には、集団に属する各個人の行動ログが入力される。
【0031】
社会関係資本タイプ推定部3は、集団に属する各個人の行動ログに基づいて、各個人の社会関係資本タイプを推定する(ステップS3)。社会関係資本タイプ推定部3の処理は、個人ごとに行われる。これにより、各個人の社会関係資本タイプが推定される。
【0032】
推定された各個人の社会関係資本タイプは、集団状態推定部4に出力される。推定された各個人の社会関係資本タイプは、
図2に例示するように、制御部2を介して集団状態推定部4に出力されてもよい。集団状態推定システムに集団IDが入力されている場合には、各個人の社会関係資本タイプは、集団IDと共に集団状態推定部4に出力されてもよい。
【0033】
社会関係資本は、個人と集団を特徴づける概念である(例えば、参考文献1及び2参照。)。
【0034】
<参考文献1>三隅一人著、「社会関係資本」、ミネルヴァ書房出版、2013年09月30日
<参考文献2>Wikipedia、“Social capital”、[online]、[令和4年1月7日検索]、インターネット<URL:https://en.wikipedia.org/wiki/Social_capital>
社会関係資本タイプの例は、橋渡し型SC志向性、結束型SC志向性、連携型SC志向性、関係維持型、結束型ベース、橋渡し型ベースである(例えば、参考文献3及び4参照。)。
【0035】
<参考文献3>Ellison, N. B., Steinfield, C., & Lampe, C. (2007) The Benefits of Facebook “Friends:” Social Capital and College Students’ Use of Online Social Network Sites. Journal of Computer-Mediated Communiation, 12, 1143-1168
<参考文献4>The impact of online social capital on social trust and risk perception(2017)
以下、社会関係資本タイプとして、橋渡し型SC志向性及び結束型SC志向性が用いられる場合を例に挙げて説明をする。もちろん、他の社会関係資本タイプが用いられてもよい。
【0036】
例えば、社会関係資本タイプ推定部3は、各個人の行動ログを構成する各行動がポジティブ又はネガティブである度合いに基づいて各個人の社会関係資本タイプを推定する。
【0037】
具体的には、社会関係資本タイプ推定部3は、各行動に対してポジティブネガティブ分析をすることで、各行動のポジティブ比率を求める。ポジティブ比率は例えば0以上1以下の数値であり、ポジティブ比率の値が大きいほどポジティブである度合いが大きいとする。
【0038】
ポジティブネガティブ分析とは、例えばテキストである行動にどのような感情特性があるのか(すなわち、ポジティブな発言が多いのか、ネガティブな発言が多いのかその度合い)についての分析である。ポジティブネガティブ分析には、例えば既存の手法が用いられる。
【0039】
そして、社会関係資本タイプ推定部3は、このポジティブ比率に基づいて、社会関係資本タイプを推定する。
【0040】
例えば、社会関係資本タイプ推定部3は、ポジディブ比率が高い個人を橋渡し型SC志向性と推定し、ポジディブ比率が高くない個人を結束型SC志向性と推定する。
【0041】
例えば、ポジティブネガティブ分析により、ある個人の行動ログに含まれる複数の行動のポジティブ比率のヒストグラムに対応する回帰直線が
図3のように得られたとする。
図3の横軸は、ポジティブ比率であり、
図3の縦軸は、対応するポジティブ比率に対応する行動の度数である。
図3により、この個人はポジティブ比率が高い行動の度数が多いことがわかる。このため、社会関係資本タイプ推定部3は、この個人は橋渡し型SC志向性であると推定する。
【0042】
このように、社会関係資本タイプ推定部3は、ある個人の行動ログに含まれる複数の行動のポジティブ比率のヒストグラムに対応する回帰直線の傾きが所定の傾きよりも大きい場合には、この個人は橋渡し型SC志向性であると推定してもよい。
【0043】
また、例えば、ポジティブネガティブ分析により、ある個人の行動ログに含まれる複数の行動のポジティブ比率のヒストグラムに対応する回帰直線が
図4のように得られたとする。
図4の横軸は、ポジティブ比率であり、
図4の縦軸は、対応するポジティブ比率に対応する行動の度数である。
図4により、この個人はポジティブ比率が高い行動の度数が多くないことがわかる。
【0044】
このため、社会関係資本タイプ推定部3は、この個人は結束型SC志向性であると推定する。このように、社会関係資本タイプ推定部3は、ある個人の行動ログに含まれる複数の行動のポジティブ比率のヒストグラムに対応する回帰直線の傾きが所定の傾きよりも小さい場合には、この個人は結束型SC志向性であると推定してもよい。
【0045】
また、社会関係資本タイプ推定部3は、ネットワークの多様性から、社会関係資本タイプを推定してもよい。
【0046】
例えば、社会関係資本タイプ推定部3は、ある個人の行動ログに含まれるユニークID(リツイート等で登場する他者のID)から多様性を算出する。(ユニークID数)/(IDが登場した行動数)を算出したとき、橋渡し型SC志向性ではこの算出値が1よりになり、結束型SC志向性ではこの算出値が0よりになる。ここで、IDが登場した行動数とは、行動ログに含まれる、他者IDが登場した行動の数である。(ユニークID数)/(IDが登場した行動数)は、ネットワークの多様性を示している。
【0047】
このため、社会関係資本タイプ推定部3は、(ユニークID数)/(IDが登場した行動数)が所定の閾以上である場合にはその個人は橋渡し型SC志向性であると推定し、そうではない場合にはその個人は結束型SC志向性であると推定してもよい。
【0048】
これまで説明してきた社会関係資本タイプの推定を、第一段階目の社会関係資本タイプの推定と呼ぶ。
【0049】
社会関係資本タイプ推定部3は、行動が集団外に向けられている度合いを更に考慮して、最終的な社会関係資本タイプを推定してもよい。
【0050】
そのために、例えば、社会関係資本タイプ推定部3は、ある個人の行動ログに含まれる複数の行動のそれぞれが集団外に向けられているかどうかをまず判断する。
【0051】
例えば、行動がSNSにおける投稿である場合であって、行動がフォロー及び/又はフォロワーの関係でない者に向けられているときには、その行動は集団外に向けられていると判断することができる。一方、行動がフォロー及び/又はフォロワーの関係である者に向けられているときには、その行動は集団内に向けられていると判断することができる。
【0052】
また、例えば、行動がSNSにおける投稿である場合であって、行動が、個人が参加していない投稿チャンネルに対する投稿である場合には、その行動は集団外に向けられていると判断することができる。一方、行動が、個人が参加している投稿チャンネルに対する投稿である場合には、その行動は集団内に向けられていると判断することができる。
【0053】
ここで、ある個人の、集団外に向けられている行動のポジティブ比率の和をΣoutとし、ある個人の、集団外に向けられている行動の数をNoutとし、ある個人の、集団内に向けられている行動のポジティブ比率の和をΣinとし、ある個人の、集団内に向けられている行動の数をNinとする。また、Vout=Σout/Nout, Vin=Σin/Ninとする。
【0054】
そして、社会関係資本タイプ推定部3は、f(Vout,Vin)の値を計算して、この値が所定の閾値よりも大きい場合にはこの個人は橋渡し型SC志向性であると推定し、そうでない場合にはこの個人は結束型SC志向性であると推定する。この社会関係資本タイプの推定を、第二段階目の社会関係資本タイプの推定と呼ぶ。なお、fは、Voutについて非減少であり、Vinについて非増加である所定の関数である。fの例は、f=Vout/Vinである。fは、f=Vout-Vinであってもよい。
【0055】
社会関係資本タイプ推定部3は、(1)第一段階目の社会関係資本タイプの推定において橋渡し型SC志向性と推定され、第二段階目の社会関係資本タイプの推定において橋渡し型SC志向性と推定された場合には、最終的な社会関係資本タイプを「橋渡し型SC志向性」と推定し、(2)第一段階目の社会関係資本タイプの推定において橋渡し型SC志向性と推定され、第二段階目の社会関係資本タイプの推定において結束型SC志向性と推定された場合には、最終的な社会関係資本タイプを「弱い橋渡し型SC志向性」と推定し、(3)第一段階目の社会関係資本タイプの推定において結束型SC志向性と推定され、第二段階目の社会関係資本タイプの推定において結束型SC志向性と推定された場合には、最終的な社会関係資本タイプを「結束型SC志向性」と推定し、(4)第一段階目の社会関係資本タイプの推定において結束型SC志向性と推定され、第二段階目の社会関係資本タイプの推定において橋渡し型SC志向性と推定された場合には、最終的な社会関係資本タイプを「弱い結束型SC志向性」と推定してもよい。
【0056】
また、社会関係資本タイプ推定部3は、少なくとも3種類の方法のそれぞれで個人の社会関係資本タイプを推定して、最も多い社会関係資本タイプをその個人の社会関係資本タイプとして推定してもよい。少なくとも3種類の方法の例は、第一段階目の社会関係資本タイプの推定で説明したポジティブ比率に基づく社会関係資本タイプの推定、第一段階目の社会関係資本タイプの推定で説明したネットワークの多様性に基づく社会関係資本タイプの推定、第二段階目の社会関係資本タイプの推定である。なお、社会関係資本タイプ推定部3は、最も多い社会関係資本タイプが2種類以上ある場合には、第一段階目の社会関係資本タイプの推定で説明したポジティブ比率に基づく社会関係資本タイプの推定の結果を優先してもよい。
【0057】
なお、社会関係資本タイプ推定部3は、各個人のネガティブな行動の数と、各個人のポジティブな行動の数とを必要に応じて、集団状態推定部4に更に出力してもよい。
【0058】
ネガティブな行動は、例えば、ポジティブ比率が所定の閾値よりも小さい行動のことである。また、ポジティブな行動は、例えば、ポジティブ比率が所定の閾値よりも大きい行動のことである。
【0059】
なお、社会関係資本タイプ推定部3は、予め学習された、社会関係資本タイプの推定モデルに、集団に属する各個人の行動ログを入力した場合の出力値を計算することで、各個人の社会関係資本タイプを推定してもよい。
【0060】
社会関係資本タイプの推定モデルは、例えば、社会関係資本タイプを問う質問用紙と行動の組み合わせに基づいて、予め学習されているとする。
【0061】
<集団状態推定部4>
集団状態推定部4には、社会関係資本タイプ推定部3により推定された各個人の社会関係資本タイプが入力される。
【0062】
集団状態推定部4は、推定された社会関係資本タイプに基づいて、集団の状態を推定する(ステップS4)。推定された集団の状態は、制御部2に出力される。
【0063】
例えば、集団状態推定部4は、各社会関係資本タイプであると推定された個人の数に基づいて、集団の状態を推定する。
【0064】
より詳細には、集団状態推定部4は、例えば、(1)結束型SC志向性であると推定された個人の数が所定の第一閾値よりも大きく、集団内のネガティブな行動の数が所定の第二閾値よりも大きい場合には、集団は「集団極性化しやすい状態」であると推定し、(2)結束型SC志向性であると推定された個人の数が所定の第一閾値よりも大きく、集団内のポジティブな行動の数が所定の第三閾値よりも大きい場合には、集団は「内部のつながりが強く安定しやすい状態」であると推定し、(3)橋渡し型SC志向性であると推定された個人の数が所定の第四閾値よりも大きく、集団内のネガティブな行動の数が所定の第五閾値よりも大きい場合又は集団に属する個人の行動ログの行動の和が所定の第六閾値によも小さい場合には、集団は「集団としての繋がりが弱くなっている状態」であると推定し、(4)橋渡し型SC志向性であると推定された個人の数が所定の第七閾値よりも大きく、集団内のポジティブな行動の数が所定の第八閾値よりも大きい場合には、集団は「創造性が豊かになりやすい状態」であると推定してもよい。
【0065】
この例では、各個人のネガティブな行動の数と、各個人のポジティブな行動の数とが集団状態推定部4に更に入力されている。
【0066】
集団内のネガティブな行動の数は、集団に属する個人のネガティブな行動の数の総和である。集団内のポジティブな行動の数は、集団に属する個人のポジティブな行動の数の総和である。
【0067】
上記の集団の状態を推定は、一例に過ぎない。集団状態推定部4は、集団の目的や状態推定の目的等に応じて、他の手法により集団の状態を推定してもよい。
【0068】
例えば、集団状態推定部4は、結束型SC志向性であると推定された個人の数が所定の第九閾値よりも大きい場合には、集団は「フェイク情報を受け入れる可能性がある状態」であると推定してもよい。また、集団状態推定部4は、橋渡し型SC志向性であると推定された個人の数が所定の第十閾値よりも大きい場合には、集団は「フェイク情報を受け入れる可能性が低い状態」であると推定してもよい。
【0069】
制御部2は、集団状態推定部4により推定された集団の状態を、ユーザ端末1に出力する。
【0070】
なお、集団状態推定部4は、集団SC比率を更に計算してもよい。この場合、集団状態推定部4は、計算された集団SC比率を更に制御部2に出力してもよい。また、この場合、制御部2は、集団状態推定部4により計算された集団SC比率を、ユーザ端末1に更に出力してもよい。集団SC比率は、集団に属する個人の社会関係資本タイプの比率である。集団SC比率は例えば0以上1以下の数値であり、集団SC比率の値が大きいほど橋渡し型SC志向性又は結束型SC志向性であると推定された個人の数が多いとする。
【0071】
集団状態推定部4は、集団SC比率と所定の閾値とを比較して、集団が橋渡し型傾向の強い状態である又は結束型傾向の強い状態であると推定してもよい。例えば、集団SC比率の値が大きいほど橋渡し型SC志向性であると推定された個人の数が多い場合には、集団状態推定部4は、集団SC比率の値が所定の閾値よりも大きいときに集団が橋渡し型傾向の強い状態であると推定し、そうでないときには集団が結束型傾向の強い状態であると推定する。集団状態推定部4は、集団SC比率の値が大きいほど結束型SC志向性であると推定された個人の数が多い場合には、集団状態推定部4は、集団SC比率の値が所定の閾値よりも大きいときに集団が結束型傾向の強い状態であると推定し、そうでないときには集団が橋渡し型傾向の強い状態であると推定する。
【0072】
上記の集団状態推定システムの処理により、社会関係資本の観点から集団の状態を推定することができる。
【0073】
[マッチングシステム及び方法]
マッチングシステムは、
図5に示すように、集団状態推定システムと、集団マッチング部5とを備えている。
【0074】
マッチング方法は、マッチングシステムの各構成部が、以下に説明し及び
図6に示すステップS3からステップS5の処理を行うことにより例えば実現される。
【0075】
以下、マッチングシステムの各構成部について説明する。
【0076】
集団状態推定システムは、複数の集団のそれぞれの状態を推定する。
【0077】
マッチングシステムの中の集団状態推定システムにおける集団の状態の推定については、[集団状態推定システム及び方法]の欄で説明したため、重複説明を省略する。
【0078】
集団状態推定部4により推定された集団の状態が制御部2に出力された後に、制御部2は、推定された集団の状態を集団マッチング部5に出力する。集団状態推定システムに集団IDが入力されている場合には、制御部2は、推定された集団の状態を、集団IDと共に集団マッチング部5に出力してもよい。
【0079】
集団マッチング部5は、推定された集団の状態を集団マッチング部5の中の図示していない記憶部に記憶する。集団IDが入力されている場合には、集団の状態は集団IDと共に記憶される。集団マッチング部5は、例えばこの記憶部から読み込んだ集団の状態を用いて、以下のマッチングの処理を行う。
【0080】
集団マッチング部5は、推定された各集団の状態に基づいて、所定の基準の下で相性が良い集団の情報を出力する(ステップS5)。
【0081】
所定の基準の例は、相補的なマッチングを行うという基準、安定性を増したいという基準、創造性を増したいという基準、集団の心理的幸福感を高めたいという基準である。もちろん、所定の基準は他の基準であってもよい。
【0082】
所定の基準は、予め定められた基準であってもよいし、例えばユーザ端末1を操作することによりユーザが設定した基準であってもよい。すなわち、所定の基準は、ユーザが選択可能であってもよい。ユーザが基準を設定した場合には、そのユーザが設定した基準は、制御部2を介して、集団マッチング部5に送られるとする。
【0083】
例えば、所定の基準が相補的なマッチングを行うという基準であり、相性を調べる集団が結束型傾向が強い状態である場合、集団マッチング部5は、橋渡し型傾向の強い状態である集団をマッチング結果として選択する。
【0084】
また、例えば、所定の基準が相補的なマッチングを行うという基準であり、相性を調べる集団が橋渡し型傾向が強い状態である場合、集団マッチング部5は、結束型傾向の強い状態である集団をマッチング結果として選択する。
【0085】
また、例えば、所定の基準が安定性を増したいという基準である場合、集団マッチング部5は、結束型が強まるマッチングを行う。すなわち、集団マッチング部5は、結束型傾向が強い状態である集団をマッチング結果として選択する。
【0086】
また、例えば、所定の基準が創造性を増したいという基準である場合、集団マッチング部5は、橋渡し型が強まるマッチングを行う。すなわち、集団マッチング部5は、橋渡し型傾向の強い状態である集団をマッチング結果として選択する。
【0087】
また、例えば、所定の基準が集団の心理的幸福感を高めたいという基準である場合、集団マッチング部5は、橋渡し型が強まるマッチングを行う。すなわち、集団マッチング部5は、橋渡し型傾向の強い状態である集団をマッチング結果として選択する。
【0088】
集団マッチング部5は、選択した集団の情報を、所定の基準の下で相性が良い集団の情報として、制御部2に出力する。
【0089】
制御部2は、受け取った集団の情報を、ユーザ端末1に出力する。
【0090】
ユーザは、ユーザ端末1を操作することにより相性を調べる集団を選択可能であってもよい。この場合、ユーザが選択した相性を調べる集団は、制御部2を介して、集団マッチング部5に送られるとする。そして、集団マッチング部5は、所定の基準の下で、相性を調べる集団と相性が良い集団の情報を出力する。
【0091】
なお、所定の基準の下で相性が良い集団は、相性が最も良い1つの集団であってもよいし、相性が良い複数の集団であってもよい。
【0092】
例えば、集団マッチング部5は、所定の基準の下で、集団の状態に基づいて、相性を調べる集団と各集団間との相性を表すスコアを計算する。このスコアは、スコアの値が大きいほど相性が良いことを表すとする。この場合、集団マッチング部5は、スコアが所定の閾値よりも大きい少なくとも1つの集団をマッチング結果として選択する。または、この場合、集団マッチング部5は、スコアが大きい方から少なくとも1つの集団をマッチング結果として選択する。所定の基準の下で相性が良い集団の情報には、スコアが含まれていてもよい。
【0093】
集団状態推定部4が、集団SC比率を計算している場合には、集団マッチング部5は、集団SC比率に基づいて、所定の基準の下で相性が良い集団の情報を出力する処理を行ってもよい。この場合、集団SC比率は、制御部2を介して、集団マッチング部5に入力されるとする。
【0094】
また、集団マッチング部5は、集団状態推定部4の代わりに、集団SC比率と所定の閾値とを比較して、集団が橋渡し型傾向の強い状態である又は結束型傾向の強い状態であると推定してもよい。この推定処理は、先に説明した集団状態推定部4による集団が結束型傾向又は橋渡し型傾向の強い状態であるという推定処理と同じであるため、ここでは重複説明を省略する。
【0095】
上記のマッチングシステムの処理により、集団の状態に基づいて集団間のマッチングを行うことができる。
【0096】
上記の説明における、所定の傾き、所定の閾値、所定の第一閾値から所定の第十閾値は、所望の結果が得られるように適宜設定される。所定の傾き、所定の閾値、所定の第一閾値から所定の第十閾値は、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0097】
[変形例]
以上、本発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、これらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計の変更等があっても、本発明に含まれることはいうまでもない。
【0098】
実施の形態において説明した各種の処理は、記載の順に従って時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されてもよい。
【0099】
例えば、集団状態推定システム又はマッチングシステムの構成部間のデータのやり取りは直接行われてもよいし、図示していない記憶部を介して行われてもよい。
【0100】
また、制御部2は、ユーザ端末1に実装されてもよい。
【0101】
また、集団状態推定システム又はマッチングシステムは、ユーザ端末1を備えていてもよい。
【0102】
[プログラム、記録媒体]
上述した集団状態推定システム又はマッチングシステムの各部の処理をコンピュータにより実現してもよく、この場合は各装置が有すべき機能の処理内容はプログラムによって記述される。そして、このプログラムを
図7に示すコンピュータ1000の記憶部1020に読み込ませ、演算処理部1010、入力部1030、出力部1040、表示部1060などに動作させることにより、上記各装置における各種の処理機能がコンピュータ上で実現される。
【0103】
この処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体は、例えば、非一時的な記録媒体であり、具体的には、磁気記録装置、光ディスク、等である。
【0104】
また、このプログラムの流通は、例えば、そのプログラムを記録したDVD、CD-ROM等の可搬型記録媒体を販売、譲渡、貸与等することによって行う。さらに、このプログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することにより、このプログラムを流通させる構成としてもよい。
【0105】
このようなプログラムを実行するコンピュータは、例えば、まず、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、一旦、自己の非一時的な記憶装置である補助記録部1050に格納する。そして、処理の実行時、このコンピュータは、自己の非一時的な記憶装置である補助記録部1050に格納されたプログラムを記憶部1020に読み込み、読み込んだプログラムに従った処理を実行する。また、このプログラムの別の実行形態として、コンピュータが可搬型記録媒体から直接プログラムを記憶部1020に読み込み、そのプログラムに従った処理を実行することとしてもよく、さらに、このコンピュータにサーバコンピュータからプログラムが転送されるたびに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することとしてもよい。また、サーバコンピュータから、このコンピュータへのプログラムの転送は行わず、その実行指示と結果取得のみによって処理機能を実現する、いわゆるASP(Application Service Provider)型のサービスによって、上述の処理を実行する構成としてもよい。なお、本形態におけるプログラムには、電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるもの(コンピュータに対する直接の指令ではないがコンピュータの処理を規定する性質を有するデータ等)を含むものとする。
【0106】
また、この形態では、コンピュータ上で所定のプログラムを実行させることにより、本装置を構成することとしたが、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェア的に実現することとしてもよい。例えば、制御部2、社会関係資本タイプ推定部3、集団状態推定部4、集団マッチング部5は、処理回路により構成されてもよい。
【0107】
制御部2、社会関係資本タイプ推定部3、集団状態推定部4、集団マッチング部5は、同一のコンピュータに実装されてもよいし、異なるコンピュータに実装されてもよい。
【0108】
その他、この発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0109】
3 社会関係資本タイプ推定部
4 集団状態推定部
5 集団マッチング部