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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114707
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】分光計測器
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20230810BHJP
【FI】
G01N21/27 A
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017171
(22)【出願日】2022-02-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(71)【出願人】
【識別番号】504177284
【氏名又は名称】国立大学法人滋賀医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】茂木 遥平
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 延康
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB08
2G059BB20
2G059CC20
2G059EE01
2G059FF01
2G059HH02
2G059JJ01
2G059KK04
2G059MM01
(57)【要約】
【課題】光源に対する対象物の反射スペクトルの測定、及び、測定時の光源と分光器との位置関係の特定を可能にする分光計測器を提供する。
【解決手段】分光計測器1は、光源12に対する対象物11の反射スペクトルの測定の結果を示す測定情報を出力する分光器2と、光源12からの光L1を受ける対象面90aに影を生じさせる遮蔽物91,92,93を含む影生成部9と、対象面90aを含む撮像範囲の画像を示す画像情報を出力する撮像装置3と、コンピュータ可読媒体40が取り外し可能に接続されるストレージインターフェース4と、処理装置6とを備える。処理装置6は、分光器2、撮像装置3及びストレージインターフェース4に接続され、分光器2からの測定情報と、撮像装置3からの画像情報とを、ストレージインターフェース4に接続されたコンピュータ可読媒体40に格納する測定処理を実行する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源に対する対象物の反射スペクトルの測定をし、前記測定の結果を示す測定情報を出力する分光器と、
前記光源からの光を受ける対象面、及び、前記光源からの光により前記対象面に影を生じさせる1以上の遮蔽物を含む影生成部と、
前記対象面を含む撮像範囲を撮像し、前記撮像範囲の画像を示す画像情報を出力する撮像装置と、
コンピュータ可読媒体が取り外し可能に接続されるストレージインターフェースと、
前記分光器、前記撮像装置及び前記ストレージインターフェースに接続され、前記分光器からの前記測定情報と、前記撮像装置からの前記画像情報とを、前記ストレージインターフェースに接続された前記コンピュータ可読媒体に格納する測定処理を実行する処理装置と、
を備える、
分光計測器。
【請求項2】
前記撮像範囲は、前記1以上の遮蔽物の少なくとも一つを含む、
請求項1に記載の分光計測器。
【請求項3】
前記1以上の遮蔽物は、前記対象面に直交する方向に延びる垂直棒部材を含む、
請求項1又は2に記載の分光計測器。
【請求項4】
前記垂直棒部材は、前記分光器の向きの指標となる位置にある、
請求項3に記載の分光計測器。
【請求項5】
前記1以上の遮蔽物は、前記対象面の左右方向に延びる棒状の水平棒部材を含む、
請求項1~4のいずれか一つに記載の分光計測器。
【請求項6】
前記1以上の遮蔽物は、前記対象面の外周の少なくとも一部を規定する壁部材を含む、
請求項1~5のいずれか一つに記載の分光計測器。
【請求項7】
前記撮像範囲は、前記対象物を含む、
請求項1~6のいずれか一つに記載の分光計測器。
【請求項8】
前記処理装置は、前記測定情報を、前記測定情報の時刻と同時刻の前記画像情報に関連付ける、
請求項1~7のいずれか一つに記載の分光計測器。
【請求項9】
前記光源からの光を反射して前記分光器に入射させるための反射板を、更に備える、
請求項1~8のいずれか一つに記載の分光計測器。
【請求項10】
前記分光器は、撮像面を有する検出器を含み、
前記撮像面は、前記光源からの光のうち前記対象物で反射された第1反射光が入射する第1測定領域と、前記光源からの光のうち前記反射板で反射された第2反射光が入射する第2測定領域とを含む、
請求項9に記載の分光計測器。
【請求項11】
前記撮像面は、垂直方向及び水平方向に並ぶ複数の画素を含み、
前記分光器は、前記撮像面の前方にあって前記垂直方向に延びるスリットと前記撮像面との間にあって前記スリットからの光を前記水平方向において波長毎に分ける分光素子を、更に含み、
前記第1測定領域及び前記第2測定領域は、前記垂直方向において並ぶ、
請求項10に記載の分光計測器。
【請求項12】
前記対象面の左右方向を水平方向に一致させるための水準器を、更に備える、
請求項1~11のいずれか一つに記載の分光計測器。
【請求項13】
情報処理システムでの処理の対象になる情報を提供するための分光計測器であって、
前記分光計測器は、
光源に対する対象物の反射スペクトルの測定をし、前記測定の結果を示す測定情報を出力する分光器と、
前記光源からの光を受ける対象面、及び、前記光源からの光により前記対象面に影を生じさせる1以上の遮蔽物を含む影生成部と、
前記対象面を含む撮像範囲を撮像し、前記撮像範囲の画像を示す画像情報を出力する撮像装置と、
コンピュータ可読媒体が取り外し可能に接続されるストレージインターフェースと、
前記分光器、前記撮像装置及び前記ストレージインターフェースに接続され、前記分光器からの前記測定情報と、前記撮像装置からの前記画像情報とを、前記ストレージインターフェースに接続された前記コンピュータ可読媒体に格納する測定処理を実行する処理装置と、
を備え、
前記情報処理システムは、前記コンピュータ可読媒体を経由して前記測定情報及び前記画像情報を取得し、前記画像情報が示す前記撮像範囲の画像に写る前記対象面に前記光源からの光により生じた前記1以上の遮蔽物の影から、測定時の前記光源と前記分光器との位置関係を特定する、
分光計測器。
【請求項14】
前記情報処理システムは、前記画像情報が示す前記撮像範囲の画像に写る前記対象面に前記光源からの光により生じた前記1以上の遮蔽物の影から、測定時の前記光源の広がりの評価値を決定する、
請求項13に記載の分光計測器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分光計測器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~6は、植物で反射された太陽光のスペクトルに基づいて、植物の種類を判別し、植物の健康状態を判定し、もしくは植物の育成状態を判定することを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-314215号公報
【特許文献2】特開2006-317195号公報
【特許文献3】特開2015-077113号公報
【特許文献4】特開2015-223101号公報
【特許文献5】特開2008-076346号公報
【特許文献6】特開2012-196167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
屋外における、農作物、土壌、岩石、森林、海洋、大気等のスペクトル(反射スペクトル、散乱スペクトル等)の計測では、スペクトルが、スペクトルの測定時の光源と分光器との位置関係、例えば、太陽からの光の入射方向に対する分光器の視野方向の角度の影響を受ける。そのため、スペクトルを正確に評価するためには、スペクトルの測定時の光源と分光器との位置関係に関する情報を用いることが望ましい。しかしながら、特許文献1~6に開示された技術では、測定時の光源と分光器との位置関係に関する情報を得ることはできない。
【0005】
本開示は、分光器による光源に対する対象物の反射スペクトルの測定、及び、測定時の光源と分光器との位置関係の特定を可能にする分光計測器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様にかかる分光計測器は、光源に対する対象物の反射スペクトルの測定をし、測定の結果を示す測定情報を出力する分光器と、光源からの光を受ける対象面と、光源からの光により対象面に影を生じさせる1以上の遮蔽物と、対象面を含む撮像範囲を撮像し、撮像範囲の画像を示す画像情報を出力する撮像装置と、コンピュータ可読媒体が取り外し可能に接続されるストレージインターフェースと、分光器、撮像装置及びストレージインターフェースに接続され、分光器からの測定情報と、撮像装置からの画像情報とを、ストレージインターフェースに接続されたコンピュータ可読媒体に格納する測定処理を実行する処理装置と、を備える。
【0007】
本開示の一態様にかかる分光計測器は、情報処理システムでの処理の対象になる情報を提供するための分光計測器であって、光源に対する対象物の反射スペクトルの測定をし、測定の結果を示す測定情報を出力する分光器と、光源からの光を受ける対象面、及び、光源からの光により対象面に影を生じさせる1以上の遮蔽物を含む影生成部と、対象面を含む撮像範囲を撮像し、撮像範囲の画像を示す画像情報を出力する撮像装置と、コンピュータ可読媒体が取り外し可能に接続されるストレージインターフェースと、分光器、撮像装置及びストレージインターフェースに接続され、分光器からの測定情報と、撮像装置からの画像情報とを、ストレージインターフェースに接続されたコンピュータ可読媒体に格納する測定処理を実行する処理装置と、を備える。情報処理システムは、コンピュータ可読媒体を経由して測定情報及び画像情報を取得し、画像情報が示す撮像範囲の画像に写る対象面に光源からの光により生じた1以上の遮蔽物の影から、測定時の光源と分光器との位置関係を特定する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の態様は、分光器による光源に対する対象物の反射スペクトルの測定、及び、測定時の光源と分光器との位置関係の特定を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施の形態にかかる分光計測器の使用例の概略図
図2図1の分光計測器による光源に対する対象物からの反射スペクトルの測定の説明図
図3図1の分光計測器の回路の構成例のブロック図
図4図1の分光計測器の構成例の概略斜視図
図5図1の分光計測器の概略断面図
図6図1の分光計測器の影生成部の第1遮蔽物と光源の関係の一例の概略説明図
図7図1の分光計測器の影生成部の第2遮蔽物と光源の関係の一例の概略説明図
図8図1の分光計測器の影生成部の第3遮蔽物と光源の関係の第1例の概略説明図
図9図8の第3遮蔽物と光源の関係の第2例の概略説明図
図10図8の第3遮蔽物と光源の関係の第3例の概略説明図
図11図7の第2遮蔽物と光源の関係の別例の概略説明図
図12図1の分光計測器の影生成部により生じる影の濃さの分布のグラフ
図13図1の分光計測器の分光器の撮像面の概略図
図14図1の分光計測器の分光器により得られる反射スペクトルのグラフ
図15】光源の反射スペクトルを用いて補正した対象物の反射スペクトルのグラフ
図16】データベースへのエントリの追加の手順のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者(ら)は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0011】
上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。以下の実施の形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。また、各要素の寸法比率は図面に図示された比率に限られるものではない。
【0012】
[1.実施の形態]
[1.1 構成]
[1.1.1 全体構成]
図1は、本実施の形態にかかる分光計測器1の使用例の概略図である。分光計測器1は、光源12に対する対象物11の反射スペクトルの測定を行う。
【0013】
本実施の形態において、対象物11は、稲である。対象物11は、稲以外の農作物であってよい。対象物11は、農作物以外の植物であってもよい。対象物11は、植物に限らず、動物、医薬品、鉱物、食品等であってよい。対象物11は、個体ではなく、群体であってよい。例えば、対象物11は、一本の木ではなく、測定範囲内に存在する複数本の木であってよい。対象物11は、反射スペクトルが得られればよく、土壌、岩石、森林、海洋、大気等も含み得る。
【0014】
本実施の形態において、光源12は、太陽である。光源12は、太陽に限定されず、ハロゲンランプ、LEDランプ、紫外線ランプ、赤外線ランプ等の種々の光源から選択され得る。光源12は、対象物11から所望の波長範囲の反射スペクトルが得られるように選択されてよい。
【0015】
分光計測器1による測定の結果は、情報処理システム100での処理に利用される。分光計測器1は、情報処理システム100での処理の対象になる情報を提供する。
【0016】
情報処理システム100は、対象物11に関する種々の情報処理を実行する。図1の情報処理システム100は、データベース装置110と、サーバ装置120とを含む。
【0017】
データベース装置110は、1以上のコンピュータシステムにより構築され得る。データベース装置110は、データベースDB1を格納する。データベースDB1は、サーバ装置120で実行され得る情報処理に利用され得る。データベースDB1は、サーバ装置120で利用する情報の集合であり、ここでは、データベースDB1をライブラリDB1という場合がある。
【0018】
データベースDB1は、対象物11に関する複数のレコード(エントリ)を含む。複数のレコードの各々は、「スペクトルデータ」、「測定条件データ」、「状態データ」、及び、「結果データ」を含む。
【0019】
スペクトルデータは、対象物11の反射スペクトルのデータ、及び、光源12のスペクトルのデータを含む。対象物11の反射スペクトルのデータは、所定の波長範囲において、所定の波長間隔の、光源12からの光のうち対象物11で反射された光の強度を示す。光源12のスペクトルのデータは、所定の波長範囲において、所定の波長間隔の、光源12からの光の強度を示す。所定の波長範囲は、可視光線及び赤外線を含む範囲であるとよい。所定の波長範囲は、例えば、400nm~1000nmであるとよいが、420nm~840nmであっても十分である。所定の波長間隔は、例えば、4nmである。本実施の形態において、スペクトルデータは、画像に関するデータを含み得る。画像の例としては、対象物11に関連する画像と光源12に関連する画像とが挙げられる。
【0020】
測定条件データは、スペクトルデータを得るための測定に関する条件を示す。分光計測器1で測定される光源12に対する対象物11の反射スペクトルは、光源12と分光計測器1との位置関係の影響を受け得る。つまり、光源12と分光計測器1との位置関係が異なれば、同じ対象物11であっても、分光計測器1で測定される反射スペクトルは異なり得る。光源12に対する対象物11の反射スペクトルを正しく評価するためには、この反射スペクトルの測定時の光源12と分光計測器1との位置関係の情報を用いることが好ましい。
【0021】
図2は、分光計測器1による光源12に対する対象物11からの反射スペクトルの測定の説明図である。光源12と分光計測器1との位置関係は、対象物11に対する分光計測器1の角度、対象物11に対する光源12の角度、及び、光源12と分光計測器1との方位角差により特定され得る。対象物11に対する分光計測器1の角度は、例えば、垂直方向Vに対する分光計測器1の角度θ1[°]又は水平面に対する分光計測器1の角度(90°-θ1)で表され得る。対象物11に対する光源12の角度は、例えば、垂直方向Vに対する光源12の角度θ2[°]又は水平面に対する光源12の角度(90°-θ2)で表され得る。光源12と分光計測器1との方位角差は、例えば、分光計測器1と対象物11とを含んで水平面に直交する垂直面P1と光源12と対象物11とを含んで水平面に直交する垂直面P2との間の角度Az[°]で表され得る。図2において、Azは反時計周りに増加するとして定義されている。
【0022】
本実施の形態において、測定条件データは、例えば、光源12と分光計測器1との方位角差(Az)、対象物11に対する分光計測器1の角度(θ1)、及び、対象物11に対する光源12の角度(θ2)を含む。
【0023】
さらに、測定条件データは、測定時の光源12の条件又は状態に関する。例えば、測定条件データは、光源12の広がりの評価値を含む。光源12の広がりの評価値は、対象物11の周囲環境による光源12からの光の散乱の度合いを示す。対象物11の周囲環境による光源12からの光の散乱の度合いは、大気の透明度、天候(例えば、雲の多さ)、大気中のエアロゾルの多さ等の影響を受ける。一例として、光源12の広がりの評価値は、光源12から対象物11に直接的に届く光(直達光成分)の量に対する、対象物11の周囲環境による散乱された光(散乱光成分)の割合で表され得る。光源12から対象物11にどのように光が当たるのかは、対象物11の周囲環境の影響を受ける。例えば、晴天時と曇天時とで、光源12からの光の対象物11への当たり方は変化する。晴天時は、光源12から対象物11には一方向に光が当たると考えてよいが、曇天時には雲によって光源12からの光が散乱され、光源12から対象物11には場合によっては全方向から光が当たると考えられる。晴天時と曇天時とで比較すれば、反射スペクトルには、晴天時のほうが、曇天時よりも、光源12と分光計測器1との位置関係による影響が表れやすい。よって、光源12に対する対象物11の反射スペクトルを正しく評価するために、測定条件データは、光源12の広がりの評価値を含むことが好ましい。光源12の広がりの評価値によって、晴天時と曇天時の曇り加減の定量化又は判別が可能になる。なお、光源12の広がりの評価値は、晴れと曇りとの段階評価を示す値であってよい。例えば、評価値は、5段階評価で、5が晴天、1が曇天に対応してよい。
【0024】
データベースDB1には、同一の対象物11に関して、少なくとも、例えば、光源12と分光計測器1との方位角差(Az)、対象物11に対する分光計測器1の角度(θ1)、及び、対象物11に対する光源12の角度(θ2)の組み合わせが異なる複数のレコードがあることが好ましい。例えば、Az、θ1及びθ2は、それぞれ、20°毎、好ましくは10°毎、より好ましくは5°毎に異なるように、複数のレコードが存在するとよい。
【0025】
状態データは、対象物11に関する状態を示す。本実施の形態において、対象物11は稲であり、状態データは、時間で変化し得る稲に関する状態に関する。状態データの例としては、生育状態に関する評価値、病害虫に関する評価値、含有成分に関する評価値、及び土壌状態に関する評価値が挙げられる。状態データは、スペクトルデータを得るための測定の時期に検査等を実施することで得られ得る。
【0026】
結果データは、対象物11に関する結果を示す。対象物11に関する結果は、例えば、対象物11の状態の終着点に関連する。本実施の形態において、対象物11は稲であり、結果データは、稲の生育状態の終着点である、収穫に関するデータを含み得る。結果データの例としては、収穫量、及び、収穫時期を含む。結果データは、スペクトルデータを得るための測定の時期ではなく、実際に稲が収穫された際に生成され得る。収穫量は、実際に稲を収穫して計測され、収穫時期は、実際に稲を収穫した日にちに基づいて決定され得る。
【0027】
サーバ装置120は、1以上のコンピュータシステムにより構築され得る。サーバ装置120は、有線又は無線ネットワークを通じて、データベース装置110と通信可能に接続され得る。サーバ装置120は、後述のコンピュータ可読媒体40が取り外し可能に接続されるストレージインターフェースを備える。
【0028】
サーバ装置120は、データベースDB1の管理を実行し得る。データベースDB1の管理は、データベースDB1のレコード(エントリ)の追加、削除、及び編集を含み得る。本実施の形態において、サーバ装置120は、分光計測器1から得られる情報を利用して、レコードの追加を行うことができる。
【0029】
[1.1.2 分光計測器]
図1の分光計測器1は、データベースDB1のスペクトルデータ及び測定条件データを得るために用いられ得る。以下、分光計測器1について図3図5を参照して更に詳細に説明する。
【0030】
図3は、分光計測器1の回路の構成例のブロック図である。図4は、分光計測器1の構成例の概略斜視図である。図5は、分光計測器1の概略断面図である。
【0031】
図3に示すように、分光計測器1は、分光器2と、撮像装置3と、ストレージインターフェース4と、入出力インターフェース5と、処理装置6と、を備える。図4及び図5に示すように、分光計測器1は、更に筐体7を備える。筐体7には、分光器2と、撮像装置3と、ストレージインターフェース4と、入出力インターフェース5と、処理装置6とが取り付けられる。筐体7には、分光計測器1の電源となるバッテリが取り外し可能に収容される。
【0032】
筐体7は、人が持ち運び可能な重さ及び大きさを有する。つまり、分光計測器1は、可搬型である。筐体7の前後方向、上下方向、及び左右方向は、分光計測器1の前後方向、上下方向、及び左右方向のそれぞれを規定する。筐体7は、図3及び図5に示すように、本体部8と、影生成部9とを備える。
【0033】
図4及び図5の本体部8は、収容部80と、反射板81と、保持部82とを備える。
【0034】
収容部80は、分光器2、ストレージインターフェース4、入出力インターフェース5及び処理装置6を収容する。本実施の形態において、収容部80は、直方体の箱状である。収容部80は、前面にスリット80aを有する。スリット80aは、収容部80の外部からの光を分光器2に入射させるために設けられる。
【0035】
反射板81は、収容部80の外側において、スリット80aと対向する。反射板81は、光源12からの光L1を反射してスリット80aを介して分光器2に入射させる反射面81aを有する。本実施の形態において、反射面81aは、白色である。反射面81aは、白色に限定されず、灰色等であってもよい。
【0036】
保持部82は、収容部80の外側において反射板81がスリット80aと対向するように反射板81を収容部80に連結する。本実施の形態において、保持部82は、収容部80においてスリット80aが形成される面から延び、保持部82の先端に反射板81が配置される。
【0037】
影生成部9は、光源12からの光L1により影を生じさせるための構造を有する。影生成部9により生じた影は、分光計測器1と光源12との位置関係の決定に利用され得る。本実施の形態において、影生成部9は、本体部8に取り付けられる。図5では、影生成部9は、本体部8の収容部80の上面にある。
【0038】
図4及び図5の影生成部9は、平板部90と、複数の遮蔽物(第1遮蔽物91、第2遮蔽物92及び第3遮蔽物93)と、支持台94と、水準器95とを備える。
【0039】
支持台94は、影生成部9の底を規定する。支持台94は、平板部90及び第1~第3遮蔽物91,92,93を支持する。支持台94は、本体部8の収容部80の上面に取り付けられる。本実施の形態において、支持台94は、矩形の板状である。
【0040】
平板部90は、支持台94における収容部80とは反対側に設けられる。平板部90の上面は平坦である。平板部90の上面は、光源12からの光L1を受ける対象面90aとして用いられる。平板部90の上面は、例えば、影を識別しやすい色、例えば、白色である。本実施の形態において、平板部90は矩形状であり、対象面90aも矩形状である。対象面90aに直交する方向は、分光計測器1の上下方向に対応する。対象面90aの前後方向(本実施の形態において、長さ方向)は、分光計測器1の前後方向に対応する。対象面90aの左右方向(本実施の形態において、幅方向)は、分光計測器1の左右方向に対応する。
【0041】
水準器95は、対象面90aの左右方向(X方向)を水平方向に一致させるために使用され得る。人が自身の感覚で対象面90aのX方向を水平方向に一致させる場合よりも、対象面90aのX方向を水平方向により正確に一致させることができる。水準器95を用いることにより、分光計測器1の位置合わせが容易になる。本実施の形態において、水準器95は、支持台94に配置される。水準器95は、分光計測器1の使用時に人が視認しやすい位置にあればよい。
【0042】
第1~第3遮蔽物91,92,93は、光源12からの光L1により対象面90aに影を生じさせるために設けられる。ただし、光源12と分光計測器1との位置関係によっては、対象面90aに影が生じない場合がある。第1~第3遮蔽物91,92,93は、撮像装置3の撮像範囲に含まれるように設置される。これによって、第1~第3遮蔽物91,92,93によって対象面90aに生じた影と第1~第3遮蔽物91,92,93との比較が容易になる。
【0043】
第1遮蔽物91は、対象面90aに直交する方向に延びる垂直棒部材である。図5の第1遮蔽物91は、直径が一定な丸棒状である。第1遮蔽物91は、分光器2の向きの指標となる位置にある。本実施の形態において、第1遮蔽物91は、対象面90aの長さ方向の第1端(図5における右端)にある。図4に示すように、第1遮蔽物91の位置は、収容部80のスリット80aの位置と対応する。より詳細には、対象面90aに直交する方向において、遮蔽物91とスリット80aとが並んでいる。遮蔽物91を利用して、対象物11に対する分光計測器1の向き、特に、分光器2の向きを設定することができる。したがって、分光計測器1の位置合わせが容易になる。さらに、第1遮蔽物91は、対象面90aに直交する方向を、垂直方向に一致させるための基準に用いられ得る。つまり、対象面90aに直交する方向を、垂直方向に一致させる作業が容易になる。したがって、分光計測器1の位置合わせが容易になる。
【0044】
第2遮蔽物92は、対象面90aの左右方向に延びる水平棒部材である。図5の第2遮蔽物92は、直径が一定な丸棒状である。第2遮蔽物92は、対象面90aの幅方向に対象面90aを横切る長さを有する。第2遮蔽物92は、対象面90a上に、対象面90aから所定の距離を離して配置される。第2遮蔽物92は、対象面90aの左右方向を、水平方向に一致させるための基準に用いられ得る。つまり、対象面90aの左右方向を、水平方向に一致させる作業が容易になる。したがって、分光計測器1の位置合わせが容易になる。
【0045】
第3遮蔽物93は、対象面90aの外周の少なくとも一部を規定する壁部材である。第3遮蔽物93は、対象面90aの範囲を定めるために利用でき、対象面90aの範囲を明確にでき得る。第3遮蔽物93は、余分な物体の影が対象面90aに写る可能性を低減し得る。本実施の形態において、第3遮蔽物93は、対象面90aの幅方向の第1端に位置する第1壁部931と、対象面90aの幅方向の第2端に位置する第2壁部932と、対象面90aの長さ方向の第1端に位置する第3壁部933と、を含む。第1壁部931の高さ、第2壁部932の高さ及び第3壁部933の高さはそれぞれ均一であり、互いに等しい。本実施の形態において、第3遮蔽物93の第1壁部931及び第2壁部932が、第2遮蔽物92を対象面90aから所定の距離を離して配置するために利用される。
【0046】
次に、図6図10を参照して、影生成部9により生じる影と光源12との関係について説明する。図6図10では、単に説明の簡略化のために、対象面90aの左右方向をX方向、対象面90aの前後方向をY方向、対象面90aに直交する方向をZ方向という場合がある。図6図10では、対象面90aの左右方向は、実空間での水平方向に一致する。
【0047】
図6は、影生成部9の第1遮蔽物91と光源12の関係の一例の概略説明図である。図6では、単に説明の簡略化のために第2遮蔽物92及び第3遮蔽物93の図示を省略している。図6では、単に説明の簡略化のために第1遮蔽物91が対象面90aの幅方向の中央に位置している。
【0048】
図6に示すように、第1遮蔽物91が光源12からの光L1を遮ることで、対象面90aに、第1遮蔽物91による影91aが生じる。図6の影91aが生じる条件の一つは、光源12と分光計測器1との方位角差(Az)が90°≦Az≦270°を満たすことである。図6において、影91aの長さをD11、第1遮蔽物91の高さをH1、対象面90aに対する光源12の角度をθ31[°]とすると、θ31は、次式(1)で表される。
【0049】
【数1】
【0050】
一例として、対象物11に対する分光計測器1の角度(θ1)、対象物11に対する光源12の角度(θ2)、及び、対象面90aに対する光源12の角度(θ31)については、θ1+θ2+θ31=180°が成立する。θ31は式(1)より得られ、θ2は対象物11の位置及び時刻から特定され得る。よって、θ31が求まれば、θ1を特定でき得る。
【0051】
図6のX方向での影91aの長さをD12、Y方向に対する影91aの中心線C1の角度をθ32[°]とすると、θ32は、次式(2)で表される。
【0052】
【数2】
【0053】
光源12の方向は、第1遮蔽物91に対する影91aの方向とは反対側の方向である。光源12と分光計測器1との方位角差(Az)は、Az=180+θ32で与えられる。
【0054】
第1遮蔽物91の影91aから、光源12と分光計測器1との方位角差(Az)、及び、対象物11に対する分光計測器1の角度(θ1)を求めることが可能である。
【0055】
図7は、影生成部9の第2遮蔽物92と光源12の関係の一例の略説明図である。図7では、単に説明の簡略化のために第1遮蔽物91及び第3遮蔽物93の図示を省略している。
【0056】
図7に示すように、第2遮蔽物92が光源12からの光L1を遮ることで、対象面90aに、第2遮蔽物92による影92aが生じる。図7の影92aが生じる条件の一つは、光源12と分光計測器1との方位角差(Az)が0°≦Az<90°又は270°<Az<360°を満たすことである。図7において、Y方向での第2遮蔽物92と影92aとの間の距離をD2、第2遮蔽物92の高さをH2、YZ平面での対象面90aに対する光源12の角度をθ4[°]とすると、θ4は、次式(3)で表される。
【0057】
【数3】
【0058】
図8及び図9は、影生成部9の第3遮蔽物93と光源12の関係の例の概略説明図である。図8及び図9では、単に説明の簡略化のために第1遮蔽物91及び第2遮蔽物92の図示を省略している。
【0059】
図8に示すように、第3遮蔽物93の第1壁部931が光源12からの光L1を遮ることで、対象面90aに、第3遮蔽物93の第1壁部931の影931aが生じる。図8の影931aが生じる条件の一つは、光源12と分光計測器1との方位角差(Az)が180°<Az<360°を満たすことである。図8において、X方向での第1壁部931の影931aの長さをD31、第1壁部931の高さをH31、XZ平面での対象面90aに対する光源12の角度をθ51[°]とすると、θ51は、次式(4)で表される。
【0060】
【数4】
【0061】
図9に示すように、第3遮蔽物93の第2壁部932が光源12からの光L1を遮ることで、対象面90aに、第3遮蔽物93の第2壁部932の影932aが生じる。図9の影932aが生じる条件の一つは、光源12と分光計測器1との方位角差(Az)が0°<Az<180°を満たすことである。図9において、X方向での第2壁部932の影932aの長さをD32、第2壁部932の高さをH32、XZ平面での対象面90aに対する光源12の角度をθ52[°]とすると、θ52は、次式(5)で表される。
【0062】
【数5】
【0063】
図10に示すように、第3遮蔽物93の第3壁部933が光源12からの光L1を遮ることで、対象面90aに、第3遮蔽物93の第3壁部933の影933aが生じる。図10の影933aが生じる条件の一つは、光源12と分光計測器1との方位角差(Az)が90°<Az<270°を満たすことである。図10において、Y方向での影933aの長さをD33、第3遮蔽物93の第3壁部933の高さをH33、YZ平面での対象面90aに対する光源12の角度をθ53[°]とすると、θ53は、次式(6)で表される。
【0064】
【数6】
【0065】
第2遮蔽物92による影92aと第3遮蔽物93による影931a,932a,933aの状態に基づいて、対象面90aに対する光源12の角度と、光源12と分光計測器1との方位角差(Az)とを求めることができる。
【0066】
一例としては、0°<Az<90°の場合、YZ平面での対象面90aに対する角度がθ4である平面とXZ平面での対象面90aに対する角度がθ52である平面との交線のベクトルから、対象面90aに対する光源12の角度と、Azとを求めることができる。90°<Az<180°の場合、YZ平面での対象面90aに対する角度がθ53である平面とXZ平面での対象面90aに対する角度がθ52である平面との交線のベクトルから、対象面90aに対する光源12の角度と、Azとを求めることができる。180°<Az<270°の場合、YZ平面での対象面90aに対する角度がθ51である平面とXZ平面での対象面90aに対する角度がθ53である平面との交線のベクトルから、対象面90aに対する光源12の角度と、Azとを求めることができる。270°<Az<360°の場合、YZ平面での対象面90aに対する角度がθ4である平面とXZ平面での対象面90aに対する角度がθ51である平面との交線のベクトルから、対象面90aに対する光源12の角度と、Azとを求めることができる。
【0067】
影生成部9により生じる影の形状は、遮蔽物の形状によって決まるが、光源12の広がりの影響を受ける。光源12の広がりは、対象物11の周囲環境による光源12からの光の散乱の度合いに対応する。対象物11の周囲環境による光源12からの光の散乱の度合いは、大気の透明度、例えば、雲の多さに依存する。例えば、晴天時には対象物11の周囲環境による光源12からの光の散乱の度合いが小さく、曇天時には対象物11の周囲環境による光源12からの光の散乱の度合いが大きい。
【0068】
光源12の広がりの、影への影響について図7及び図11を参照して説明する。図11は、図7の第2遮蔽物92と光源12の関係の別例の概略説明図である。図7は、光源12の広がりが小さい場合、つまりは、晴天時の例であり、図11は、光源12の広がりが大きい場合、つまりは、曇天時の例である。図7及び図11から、光源12の広がりが大きくなるほど、影92aの幅が広くなり、影92aの色が薄くなる傾向にあることがわかる。つまり、光源12の広がりが大きくなるほど、影92aの鮮明さが低下する。
【0069】
図12は、分光計測器1の影生成部9により生じる影、特に第2遮蔽物92による影92aの輝度の分布のグラフである。図12において、F1は、光源12の広がりが小さい場合の影92aの輝度の分布を示し、F2は、光源12の広がりが大きい場合の影92aの輝度の分布を示す。図12において、Pは影92aの中心位置を示す。W1は、光源12の広がりが小さい場合の影92aの全幅であり、W2は、光源12の広がりが大きい場合の影92aの全幅である。HW1は、光源12の広がりが小さい場合の影92aの半値幅(ここでは半値全幅)であり、HW2は、光源12の広がりが小さい場合の影92aの半値幅(ここでは半値全幅)である。光源12の広がりと影の半値全幅(又は半値半幅)との間には相関関係が存在し得る。そのため、影の半値全幅に基づいて、光源12の広がりの評価値を求めることが可能である。例えば、影の半値全幅は、画像情報D2が示す撮像範囲の画像から求められる。撮像範囲の画像から、影に対応する領域を抽出し、影の幅に対する影の輝度の分布を求めることで、影の半値全幅を求めることが可能である。
【0070】
以上述べた影生成部9は、上述の測定条件データを特定するための情報を提供し得る。より詳細には、影生成部9があることで、測定条件データの、光源12と分光計測器1との方位角差(Az)、対象物11に対する分光計測器1の角度(θ1)、対象物11に対する光源12の角度(θ2)、及び、光源12の広がりの評価値を決定することが可能となる。
【0071】
分光器2は、光源12に対する対象物11の反射スペクトルの測定をし、測定の結果を示す測定情報D1を出力する。図3の分光器2は、検出器20と、分光素子21と、レンズ22とを備える。
【0072】
検出器20は、スリット80aを通じて外部からの光が入射するように収容部80内に配置される。検出器20は、所定の波長範囲に対して感度を有する。所定の波長範囲は、例えば、420nm~840nmである。検出器20は、例えば、イメージセンサとプロセッサとを含む。イメージセンサの例としては、CMOSイメージセンサ又はCCDイメージセンサが挙げられる。検出器20は、撮像面200を有する。図13は、撮像面200の概略図である。図13の撮像面200は、垂直方向VD及び水平方向HDに並ぶ複数の画素201を含む。図13では、画素201の数は24×24であるが、これは撮像面200の図示を簡略化するためである。撮像面200を構成する画素201の数は、目的の反射スペクトルの波長範囲に対して十分な数だけ用意され得る。本実施の形態において、スリット80aは、垂直方向VDに延びる。スリット80aの長さ方向は垂直方向VDに、スリット80aの幅方向は水平方向HDに対応する。垂直方向VD及び水平方向HDは実空間での方向ではなく、あくまでも撮像面200での画素201の配列に対して規定される方向である。検出器20での波長の分解能は、スリット80aの幅により決定される。スリット80aの幅を狭くすることで、波長の分解能を小さくできる。波長の分解能は、例えば、4nm以下に設定でき、一例として、3.77nmに設定でき得る。
【0073】
分光素子21は、検出器20とスリット80aとの間に位置する。分光素子21は、スリット80aから収容部80内に入射した光を波長毎に分ける光学素子である。本実施の形態において、分光素子21は、スリット80aからの光を第2方向において波長毎に分ける。分光素子21は、例えば、グレーティング(回折格子)、プリズム、光学フィルタ(リニアバリアブルフィルタ)、又はこれらの組み合わせであり得る。本実施の形態において、分光素子21は、透過型のグレーティングである。
【0074】
レンズ22は、検出器20と分光素子21との間に位置する。レンズ22は、例えば、集光レンズである。レンズ22は、分光素子21からの光を検出器20の撮像面200に集光させる。
【0075】
本実施の形態において、検出器20に対する反射板81の位置は、反射板81が検出器20の検出範囲の全部ではなく一部を占めるように、設定される。つまり、本実施の形態において、検出器20は、撮像面200に、光源12からの光L1のうち対象物11で反射された第1反射光L2と、光源12からの光L1のうち反射板81の反射面81aで反射された第2反射光L3とが入射する。したがって、図13に示すように、撮像面200は、光源12からの光L1のうち対象物で反射された第1反射光L2が入射する第1測定領域200aと、光源12からの光L1のうち反射板81で反射された第2反射光L3が入射する第2測定領域200bとを含む。これによって、第1反射光L2と第2反射光L3とを一度に検出可能となる。つまり、第1反射光L2による反射スペクトルと第2反射光L3による反射スペクトルとの両方を一度に測定できる。図13において、垂直方向VDは分光計測器1の上下方向に対応する空間軸の方向であるが、水平方向HDに並ぶ画素201は波長軸の方向である。これは、スリット80aの長さ方向が垂直方向VDに、スリット80aの幅方向が水平方向HDに対応しているためである。各画素201の輝度値は、反射スペクトルの強度に対応する。したがって、第1測定領域200a内の各画素201の位置及び画素値に基づいて、所定の波長範囲での第1反射光L2による反射スペクトルが得られる。第2測定領域200b内の各画素201の位置及び画素値に基づいて、所定の波長範囲での第2反射光L3による反射スペクトルが得られる。
【0076】
図14は、分光器2により得られる反射スペクトルのグラフである。図14において、横軸は波長[nm]であり、縦軸は光の強度である。図14において、S1は、第1反射光L2による反射スペクトル、つまりは、対象物11の反射スペクトルのグラフである。S2は、第2反射光L3による反射スペクトル、つまりは、光源12の反射スペクトルのグラフである。分光計測器1では、分光器2により、対象物11の反射スペクトルと光源12の反射スペクトルとの両方が得られる。そのため、光源12の反射スペクトルを基準として対象物11の反射スペクトルを補正することができる。図15は、光源12の反射スペクトルを用いて補正した対象物11の反射スペクトルのグラフである。図15において、横軸は波長[nm]であり、縦軸は反射率である。図15の反射スペクトルでは、光源12の反射スペクトルの影響が低減されるため、異なる光源12を用いて得られた対象物11の反射スペクトル同士の比較等が可能となる。
【0077】
分光器2で生成される測定情報D1は、反射スペクトルの測定の結果を示す情報を含む。本実施の形態において、反射スペクトルの測定の結果を示す情報は、第1反射光L2による反射スペクトルの情報と第2反射光L3による反射スペクトルの情報との両方を含む。第1反射光L2による反射スペクトルの情報は、対象物11の反射スペクトルの情報である。第2反射光L3による反射スペクトルの情報は、光源12の反射スペクトルの情報である。分光器2は、測定情報D1に、測定が実行された時刻をメタデータとして含めてもよい。つまり、測定情報D1は、測定の結果の情報に加えて、測定が実行された時刻の情報を含んでよい。
【0078】
撮像装置3は、対象面90aを含む撮像範囲を撮像し、撮像範囲の画像を示す画像情報D2を出力する。撮像装置3は、例えば、イメージセンサと、光学フィルタと、プロセッサとを含む。イメージセンサの例としては、CMOSイメージセンサ又はCCDイメージセンサが挙げられる。光学フィルタは、可視光の波長帯域を透過してイメージセンサにより可視画像を生成するために用いられる。
【0079】
図3では、撮像装置3は、影生成部9の対象面90aの長さ方向の第2端(図5における左端)にある。撮像装置3の位置及び向きは、撮像装置3の撮像範囲が対象面90aを含むように設定される。本実施の形態において、撮像装置3は、撮像装置3の撮像範囲が対象面90aを含むように支持部材30により支持される。つまり、撮像装置3から得られる画像には、対象面90aが写る。
【0080】
本実施の形態において、撮像装置3の位置及び向きは、撮像装置3の撮像範囲が、更に、第1~第3遮蔽物91,92,93を含むように設定される。つまり、撮像装置3から得られる画像には、第1~第3遮蔽物91,92,93が写る。これによって、対象面90aと第1~第3遮蔽物91~93とが一枚の画像に収まる。つまり、対象面90aの画像と第1~第3遮蔽物91~93の画像の両方を含む画像が得られる。
【0081】
本実施の形態において、撮像装置3の位置及び向きは、撮像装置3の撮像範囲が、更に、対象物11を含むように設定される。つまり、撮像装置3から得られる画像には、対象物11が写る。これによって、対象面90aと対象物11とが一枚の画像に収まる。つまり、対象面90aの画像と対象物11の画像の両方を含む画像が得られる。
【0082】
撮像装置3で生成される画像情報D2は、撮像範囲の画像を含み、撮像範囲には、対象面90a、第1~第3遮蔽物91,92,93、及び対象物11が含まれる。撮像装置3は、画像情報D2に、撮像範囲の画像が得られた時刻をメタデータとして含めてもよい。つまり、画像情報D2は、撮像範囲の画像の情報に加えて、撮像範囲の画像が得られた時刻の情報を含んでよい。
【0083】
ストレージインターフェース4は、分光計測器1へのコンピュータ可読媒体40の取り外し可能な接続を可能にする。コンピュータ可読媒体40は、非一時的な記憶媒体である。コンピュータ可読媒体40は、分光計測器1で生成される情報、例えば、測定情報D1及び画像情報D2を保管するために用いられる。コンピュータ可読媒体40とストレージインターフェース4との組み合わせの一例としては、USBメモリとUSBコネクタとの組み合わせが挙げられる。
【0084】
入出力インターフェース5は、ユーザからの情報の入力のための入力装置、及び、ユーザへの情報の出力のための出力装置としての機能を有する。つまり、入出力インターフェース5は、分光計測器1への情報の入力、及び、分光計測器1からの情報の出力に利用される。入出力インターフェース5は、1以上のヒューマン・マシン・インタフェースを備える。ヒューマン・マシン・インタフェースの例としては、メカニカルスイッチ、キーボード、ポインティングデバイス(マウス、トラックボール等)、タッチパッド、マイクロフォン等の入力装置、ディスプレイ、スピーカ等の出力装置、タッチパネル等の入出力装置が挙げられる。本実施の形態において、入出力インターフェース5は、ディスプレイと、タッチパッド及びメカニカルスイッチとを備える。入出力インターフェース5は、例えば、収容部80の後面に配置される。これは、入出力インターフェース5に光源12からの光L1が直接的に当たらないようにして、入出力インターフェース5の操作性を確保するためである。
【0085】
処理装置6は、分光計測器1の動作を制御する。処理装置6は、分光器2と、撮像装置3と、ストレージインターフェース4と、入出力インターフェース5とに接続される。処理装置6は、ストレージインターフェース4を通じて、ストレージインターフェース4に接続されているコンピュータ可読媒体40にアクセス可能である。処理装置6は、例えば、1以上のプロセッサ(マイクロプロセッサ)と1以上のメモリとを含むコンピュータシステムにより実現され得る。1以上のプロセッサが(1以上のメモリに記憶された)プログラムを実行することで、所定の機能を実現する。プログラムは、ここでは1以上のメモリに予め記録されているが、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。処理装置6は、例えば、シングルボードコンピュータにより構成されてよい。
【0086】
処理装置6は、分光器2、撮像装置3及びストレージインターフェース4に接続される。さらに、処理装置6は、入出力インターフェース5に接続される。
【0087】
処理装置6は、測定処理を実行する機能を有する。処理装置6は、入出力インターフェース5に対する所定の操作に応じて、測定処理を開始し得る。測定処理は、分光器2からの測定情報D1と、撮像装置3からの画像情報D2とを、ストレージインターフェース4に接続されたコンピュータ可読媒体40に格納する。例えば、測定処理は、第1取得処理と、第2取得処理と、格納処理とを含む。第1取得処理は、分光器2から測定情報D1を取得する。第1取得処理では、処理装置6は、例えば、分光器2に制御信号を出力することによって、分光器2から測定情報D1を取得する。第2取得処理は、撮像装置3から画像情報D2を取得する。第2取得処理では、処理装置6は、例えば、撮像装置3に制御信号を出力することによって、撮像装置3から画像情報D2を取得する。格納処理は、第1取得処理で取得した測定情報D1と第2取得処理で取得した画像情報D2とをコンピュータ可読媒体40に格納する。格納処理において、処理装置6は、測定情報D1を、測定情報D1の時刻と同じ時刻の画像情報D2に関連付ける。測定情報D1の時刻は、例えば、測定の実行された時刻であり得る。画像情報D2の時刻は、撮像範囲の画像が得られた時刻であり得る。処理装置6は、測定情報D1を、撮像範囲の画像が得られた時刻が測定の実行された時刻と同じである画像情報D2に関連付ける。ここでいう「同じ時刻」又は「時刻が同じ」という表現は、厳密な意味ではなく、「同じ時刻」又は「時刻が同じ」とみなせる範囲であればよく、どの程度の範囲を「同じ時刻」又は「時刻が同じ」とみなせるかは、測定に必要な時間に基づいて適宜設定され得る。なお、格納処理において、処理装置6は、測定情報D1及び画像情報D2を暗号化してコンピュータ可読媒体40に格納してよい。
【0088】
分光計測器1では、対象物11及び光源12の少なくとも一方に対する分光計測器1の位置を変えて測定処理を実行することを繰り返すことで、測定条件を変えて測定を実行することができ、測定処理毎に測定情報D1と画像情報D2との組み合わせがコンピュータ可読媒体40に蓄積される。
【0089】
処理装置6は、表示処理を実行する機能を有する。処理装置6は、入出力インターフェース5に対する所定の操作に応じて、表示処理を開始し得る。表示処理は、撮像装置3からの画像情報D2が示す画像を、入出力インターフェース5により表示する。これによって、ユーザは、分光計測器1でどのような画像が取得されるかを、確認することができる。
【0090】
[1.1.3 データベースへのエントリの追加の手順]
次に、データベースDB1へのエントリの追加の手順について図16を参照して説明する。図16は、データベースDB1へのエントリの追加の手順のフローチャートである。
【0091】
まず、分光計測器1を所望の位置及び向きに配置する(S10)。分光計測器1で対象物11の反射スペクトルを測定するにあたっては、対象面90aの左右方向が実空間上の水平方向に一致するように分光計測器1の位置及び向きが決められる。対象面90aの左右方向を実空間上の水平方向に一致させる際には、第1遮蔽物91及び第2遮蔽物92を利用することができる。これは、分光計測器1のロール角を0にする作業である。対象面90aの左右方向を実空間上の水平方向に一致させることによって、光源12と分光器2との位置関係を特定しやすくなる。
【0092】
次に、分光器2による反射スペクトルの測定、及び、撮像装置3による撮像範囲の画像の撮像を行う(S20)。例えば、分光計測器1の入出力インターフェース5を用いて所定の操作を実行することで、処理装置6が測定処理を開始し、分光器2から測定情報D1を取得する第1取得処理、及び、撮像装置3から画像情報D2を取得する第2取得処理を実行する。
【0093】
続いて、処理装置6は、格納処理を実行する(S30)。格納処理は、第1取得処理で取得した測定情報D1と第2取得処理で取得した画像情報D2とをコンピュータ可読媒体40に格納する。このとき、測定情報D1は、測定情報D1の時刻と同じ時刻の画像情報D2に関連付けられる。
【0094】
このようにして、分光計測器1に接続されたコンピュータ可読媒体40には、測定情報D1及び画像情報D2が格納される。分光計測器1で得られた測定情報D1及び画像情報D2は、コンピュータ可読媒体40を経由して情報処理システム100に入力される(S40)。
【0095】
情報処理システム100において、サーバ装置120は、測定情報D1に基づいて、スペクトルデータを生成する(S50)。より詳細には、サーバ装置120は、測定情報D1とともに画像情報D2を用いて、スペクトルデータを生成する。測定情報D1は、反射スペクトルの測定の結果を示す情報を含む。本実施の形態において、反射スペクトルの測定の結果を示す情報は、第1反射光L2による反射スペクトルの情報と第2反射光L3による反射スペクトルの情報との両方を含む。第1反射光L2による反射スペクトルの情報は、対象物11の反射スペクトルの情報である。第2反射光L3による反射スペクトルの情報は、光源12の反射スペクトルの情報である。よって、サーバ装置120は、測定情報D1から、対象物11の反射スペクトルのデータ及び光源12のスペクトルのデータを抽出する。画像情報D2は、撮像範囲の画像を含み、撮像範囲には、対象面90a、第1~第3遮蔽物91,92,93、及び対象物11が含まれる。つまり、撮像範囲の画像は、対象物11に関連する画像と、対象面90a及び第1~第3遮蔽物91,92,93の画像とを含む。対象面90a及び第1~第3遮蔽物91,92,93の画像は、光源12からの光L1によって対象面90aに生じる影に関するから、光源12に関連する画像である。サーバ装置120は、画像情報D2から、対象物11に関連する画像と光源12に関連する画像とを画像に関するデータとして抽出する。サーバ装置120は、測定情報D1から抽出した対象物11の反射スペクトルのデータ及び光源12のスペクトルのデータと、画像情報D2から抽出した画像に関するデータをまとめて、スペクトルデータを生成する。
【0096】
サーバ装置120は、画像情報D2に基づいて、測定条件データを生成する(S60)。画像情報D2は、上述したように、対象面90aの画像を含む。サーバ装置120は、画像情報D2が示す撮像範囲の画像に写る対象面90aに光源12からの光L1により生じた1以上の遮蔽物91,92,93の影91a,92a,931a,932a,933aから、測定時の光源12と分光器2との位置関係の特定をする。測定時の光源12と分光器2との位置関係は、例えば、光源12と分光計測器1との方位角差(Az)、対象物11に対する分光計測器1の角度(θ1)、対象物11に対する光源12の角度(θ2)で表される。さらに、サーバ装置120は、画像情報D2が示す撮像範囲の画像に写る対象面90aに光源12からの光L1により生じた1以上の遮蔽物91,92,93の影91a,92a,931a,932a,933aから、光源12の広がりの評価値を決定する。このように、サーバ装置120は、画像情報D2に基づいて、画像処理を実行することによって、光源12と分光計測器1との方位角差(Az)、対象物11に対する分光計測器1の角度(θ1)、対象物11に対する光源12の角度(θ2)、及び、光源12の広がりの評価値を決定する。これによって、サーバ装置120は、画像情報D2に基づいて、測定条件データを生成する。
【0097】
サーバ装置120は、測定情報D1及び画像情報D2の組み合わせに対して、測定情報D1及び画像情報D2に基づいて、スペクトルデータ及び測定条件データを生成することによってエントリを生成し、生成したエントリをデータベース装置110のデータベースDB1に追加する(S70)。
【0098】
図16のフローチャートでは、スペクトルデータの生成(S50)と測定条件データの生成(S60)とがこの順番に行われるが、これらの順番は特に限定されない。測定条件データの生成(S60)は、スペクトルデータの生成(S50)の前、又は、並行して実行され得る。
【0099】
[1.1.4 効果等]
以上述べた分光計測器1は、分光器2により反射スペクトルの測定の結果を示す測定情報D1を提供できる。さらに、分光計測器1は、光源12からの光L1によって影を生じる影生成部9を有しており、影生成部9により生じた影を撮像装置3で撮影し、画像情報D2として提供することが可能である。画像情報D2に基づいて、影生成部9により生じた影のでき方、例えば、影の位置又は形状を解析することで、測定時の光源12と分光器2との位置関係、例えば、光源12に対する分光器2の向き(分光器2の視野方向)を直接的に求めることが可能となる。
【0100】
測定時の光源12と分光器2との位置関係は、例えば、方位センサ又は仰角センサを用いても特定することは可能ではある。しかしながら、方位センサ又は仰角センサ自体の誤差の影響が不可避である。例えば、方位センサには、方位センサで測定される方位角の誤差が±10度を超えものもある。方位角の誤差が±10度を超えると、実際の方位角が10度の時に計測された反射スペクトルと実際の方位角が20度のときに計測された反射スペクトルとが逆の方位角や同じ方位角のときに計測された反射スペクトルとして記録される可能性がある。つまり、方位センサで得られた方位角による反射スペクトルの順序は、実際の方位角による反射スペクトルの順序と異なってしまう場合がある。見かけ上、方位角に対して反射スペクトルがばらついているようにも捉えられる。分光計測器1が提供する画像情報D2では、影生成部9により生じた影の位置又は形状を解析することで、測定時の光源12と分光器2との位置関係を直接的に特定することが可能である。そのため、分光計測器1によれば、方位センサ又は仰角センサを利用する場合に比べて、実際の角度と分光計測器1から得られる角度との誤差が小さくなる。そのため、分光計測器1によれば、測定時の光源12と分光器2との位置関係の特定の精度を向上できる。分光計測器1は、方位センサ又は仰角センサのような電子機器を必要としないから、製造コストの低減が図れる。
【0101】
さらに、画像情報D2を用いることで、影生成部9により生じた影の鮮明さから、光源12の広がり、例えば、対象物11の周囲環境による光源12からの光の散乱の度合いを求めることができる。そのため、対象物11の周囲環境による光源12からの光の散乱の度合いに起因する、対象物11の反射スペクトルへの影響を低減する処理が可能である。
【0102】
このように、分光計測器1は、測定情報D1に加えて、画像情報D2を提供可能である。画像情報D2は、測定情報D1が示す測定の結果が得られた時の測定条件の特定を可能にする。そのため、分光計測器1は、測定条件を考慮した、測定の結果の評価を可能にする。つまり、分光計測器1によれば、天候等の対象物11の周囲環境、光源12の明るさ(光源12の反射スペクトル)、及び、光源12と分光器2との位置関係による影響を低減できるから、結果として、対象物11の反射スペクトルを高精度で安定して測定することが可能となる。
【0103】
分光計測器1を用いた計測では、対象物11に対して分光計測器1及び光源12の少なくとも一方の位置を異ならせて複数回の計測を行うことを想定しており、測定情報D1及び画像情報D2が大量に生成される。分光計測器1は、上述したように、測定情報D1及び画像情報D2を、取り外し可能なコンピュータ可読媒体40に格納する。測定情報D1及び画像情報D2が大量にあり、分光計測器1からサーバ装置120に測定情報D1及び画像情報D2を移動させるデータの量が多い場合には、無線通信を利用するよりも、取り外し可能なコンピュータ可読媒体40を用いるほうが、無線通信の遅延又は無線通信の失敗等の影響がなく、データを安全で確実に移動させることができる。分光計測器1は、無線通信のための通信インターフェース及び無線通信のための設定を必要としないから、製造コストの低減が図れる。
【0104】
[2.変形例]
本開示の実施の形態は、上記実施の形態に限定されない。上記実施の形態は、本開示の課題を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下に、上記実施の形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0105】
一変形例において、分光計測器1は、水準器95を備えていなくてもよい。水準器95がない場合でも、人が自身の感覚で対象面90aのX方向を水平方向に一致させてよい。なお、人が自身の感覚で対象面90aの左右方向(X方向)を水平方向に一致させるにあたっては、第1遮蔽物91又は第2遮蔽物92を用いてよい。これによって、人が自身の感覚だけで対象面90aのX方向を水平方向に一致させる場合よりも、対象面90aのX方向を水平方向により正確に一致させることができる。
【0106】
一変形例において、分光器2は、必ずしも、測定情報D1に、測定が実行された時刻をメタデータとして含めなくてもよい。例えば、処理装置6は、クロック回路を利用して、分光器2から測定情報D1を得た時刻を、測定が実行された時刻として利用できる。分光器2は、測定情報D1に、測定が実行された場所をメタデータとして含めてもよい。つまり、測定情報D1は、測定の結果を示す情報に加えて、測定の実行された場所の情報を含んでよい。分光器2自体は、上記の実施の形態の構成に限定されない。分光器2は、従来周知の構成であってよい。
【0107】
一変形例において、撮像装置3は、画像情報D2に、撮像範囲の画像が得られた時刻をメタデータとして含めなくてもよい。例えば、処理装置6は、クロック回路を利用して、撮像装置3から画像情報D2を得た時刻を、撮像範囲の画像が得られた時刻として利用できる。撮像装置3は、画像情報D2に、撮像範囲の画像が得られた場所をメタデータとして含めてもよい。つまり、画像情報D2は、撮像範囲の画像の情報に加えて、撮像範囲の画像が得られた場所の情報を含んでよい。撮像装置3自体は、上記の実施の形態の構成に限定されない。撮像装置3は、従来周知の構成であってよい。
【0108】
一変形例において、ストレージインターフェース4は、特に限定されない。ストレージインターフェース4は、処理装置6によるコンピュータ可読媒体40へのアクセスを可能にするデバイスであってよい。コンピュータ可読媒体40は、USBメモリ以外のメモリであってよい。コンピュータ可読媒体40の例としては、CD-ROM、DVD等の光学ディスク、及び、磁気ディスクが挙げられる。
【0109】
一変形例において、入出力インターフェース5は、特に限定されない。分光計測器1は、リモートコントローラ等による遠隔制御により処理装置6に測定処理を実行させる構成であってもよく、この場合、入出力インターフェース5は、必須ではない。
【0110】
一変形例において、処理装置6は、特に限定されない。処理装置6は、リモートコントローラ等による遠隔制御に応じて測定処理を実行するように構成されてもよい。処理装置6は、シングルボードコンピュータに限定されず、その他のコンピュータシステムにより構成されてもよい。
【0111】
一変形例において、筐体7は、特に限定されない。例えば、本体部8と影生成部9との位置関係は、上記の実施の形態と異なっていてもよい。筐体7は、必ずしも人が持ち運び可能な重さ及び大きさでなくてもよい。筐体7は、移動装置を用いて対象物11及び光源12に対して異なる位置に配置可能であればよい。移動装置の例としては、所定位置に固定されて分光計測器1を対象物11に対して移動させるジンバル又はレール、分光計測器1とともに移動する車両、ドローン又は人工衛星等の移動体が挙げられる。
【0112】
本体部8は、上記実施の形態の構成に限定されない。本体部8において、収容部80は、分光器2、ストレージインターフェース4、入出力インターフェース5及び処理装置6を包括的に覆う形状でなくてもよい。収容部80は、少なくとも分光器2の全体を覆う形状であればよい。反射板81を保持する保持部82は、収容部80に、取り外し可能に取り付けられてよい。保持部82は、反射板81が収容部80のスリット80aに対向する位置と、反射板81が収容部80のスリット80aに対向しない位置との間で移動可能に取り付けられてよい。分光器2は、測定情報D1として、第1反射光L2による反射スペクトルの情報を含む第1測定情報と、第2反射光L3による反射スペクトルの情報を含む第2測定情報とを個別に出力可能であってよい。反射板81及び保持部82は必須ではない。
【0113】
影生成部9は、上記実施の形態の構成に限定されない。対象面90aは、必ずしも白色である必要はなく、対象面90a上の影を判別できる色であればよい。第1~第3遮蔽物91~93は、対象面90aに影を生じさせるための遮蔽物の一例に過ぎない。遮蔽物の数、遮蔽物の形状及び遮蔽物の配置は、光源12と分光計測器1との方位角差及び対象面90aに対する光源12の角度が決定できれば、特に制限されない。遮蔽物の数、遮蔽物の形状及び遮蔽物の配置は、分光計測器1に対して光源12がどの位置にきても、対象面90aに影が生じるように設定されることが望ましいが、光源12の位置によっては対象面90aに影が生じないことも許容され得る。遮蔽物の数、遮蔽物の形状及び遮蔽物の配置は、光源12と分光計測器1との方位角差及び対象面90aに対する光源12の角度が容易に求められることが処理負荷の軽減から望ましいが、光源12と分光計測器1との方位角差及び対象面90aに対する光源12の角度の演算が容易であることは必須ではない。遮蔽物は、対象面90aに光源12の位置に関する情報を与えることができればよく、必ずしも不透明ではなく、光源12からの光L1の一部を透過してもよい。
【0114】
[3.態様]
上記実施の形態及び変形例から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。以下では、実施の形態との対応関係を明示するためだけに、符号を括弧付きで付している。なお、文章の見やすさを考慮して2回目以降の括弧付きの符号の記載を省略する場合がある。
【0115】
第1の態様は、分光計測器(1)であって、光源(12)に対する対象物(11)の反射スペクトルの測定をし、前記測定の結果を示す測定情報(D1)を出力する分光器(2)と、前記光源(12)からの光(L1)を受ける対象面(90a)、及び、前記光源(12)からの光(L1)により前記対象面(90a)に影(91a,92a,931a,932a,933a)を生じさせる1以上の遮蔽物(91,92,93)を含む影生成部(9)と、前記対象面(90a)を含む撮像範囲を撮像し、前記撮像範囲の画像を示す画像情報(D2)を出力する撮像装置(3)と、コンピュータ可読媒体(40)が取り外し可能に接続されるストレージインターフェース(4)と、前記分光器(2)、前記撮像装置(3)及び前記ストレージインターフェース(4)に接続され、前記分光器(2)からの前記測定情報(D1)と、前記撮像装置(3)からの前記画像情報(D2)とを、前記ストレージインターフェース(4)に接続された前記コンピュータ可読媒体(40)に格納する測定処理を実行する処理装置(6)とを備える。この態様は、光源(12)に対する対象物(11)の反射スペクトルの測定、及び、測定時の光源(12)と分光器(2)との位置関係の特定を可能にする。
【0116】
第2の態様は、第1の態様に基づく分光計測器(1)である。第2の態様において、前記撮像範囲は、前記1以上の遮蔽物(91,92,93)の少なくとも一つを含む。この態様は、遮蔽物(91,92,93)によって対象面(90a)に生じた影と遮蔽物(91,92,93)との比較が容易になる。
【0117】
第3の態様は、第1又は第2の態様に基づく分光計測器(1)である。第3の態様において、前記1以上の遮蔽物(91,92,93)は、前記対象面(90a)に直交する方向に延びる垂直棒部材(第1遮蔽物91)を含む。この態様は、垂直棒部材(第1遮蔽物91)を、対象面(90a)の左右方向を水平方向に一致させるための基準に用いることができ、分光計測器(1)の位置合わせが容易になる。
【0118】
第4の態様は、第3の態様に基づく分光計測器(1)である。第4の態様において、前記垂直棒部材(第1遮蔽物91)は、前記分光器(2)の向きの指標となる位置にある。この態様は、垂直棒部材(第1遮蔽物91)を、分光器(2)の向きを決定するための基準に用いることができ、分光計測器(1)の位置合わせが容易になる。
【0119】
第5の態様は、第1~第4の態様のいずれか一つに基づく分光計測器(1)である。第5の態様において、前記1以上の遮蔽物(91,92,93)は、前記対象面(90a)の左右方向に延びる棒状の水平棒部材(第2遮蔽物92)を含む。この態様は、水平棒部材(第2遮蔽物92)を、対象面(90a)の左右方向を水平方向に一致させるための基準に用いることができ、分光計測器(1)の位置合わせが容易になる。
【0120】
第6の態様は、第1~第5の態様のいずれか一つに基づく分光計測器(1)である。第6の態様において、前記1以上の遮蔽物(91,92,93)は、前記対象面(90a)の外周の少なくとも一部を規定する壁部材(第3遮蔽物93)を含む。この態様は、壁部材(第3遮蔽物93)を対象面(90a)の範囲を定めるために利用できる。
【0121】
第7の態様は、第1~第6の態様のいずれか一つに基づく分光計測器(1)である。第7の態様において、前記撮像範囲は、前記対象物(11)を含む。この態様は、撮像装置(3)により、対象面(90a)の画像と対象物(11)の画像との両方を一度に取得できる。
【0122】
第8の態様は、第1~第7の態様のいずれか一つに基づく分光計測器(1)である。第8の態様において、前記処理装置(6)は、前記測定情報(D1)を、前記測定情報(D1)の時刻と同時刻の前記画像情報(D2)に関連付ける。この態様は、測定情報(D1)と画像情報(D2)とを正しく対応付けることが可能になる。
【0123】
第9の態様は、第1~第8の態様のいずれか一つに基づく分光計測器(1)である。第9の態様において、前記分光計測器(1)は、前記光源(12)からの光(L1)を反射して前記分光器(2)に入射させるための反射板(81)を、更に備える。この態様は、光源(12)の反射スペクトルの測定が可能になる。
【0124】
第10の態様は、第9の態様に基づく分光計測器(1)である。第10の態様において、前記分光器(2)は、撮像面(200)を有する検出器(20)を含む。前記撮像面(200)は、前記光源(12)からの光(L1)のうち前記対象物(11)で反射された第1反射光(L2)が入射する第1測定領域(200a)と、前記光源(12)からの光(L1)のうち前記反射板(81)で反射された第2反射光(L3)が入射する第2測定領域(200b)とを含む。この態様は、対象物(11)の反射スペクトルと光源(12)の反射スペクトルとの両方を一度に測定できる。
【0125】
第11の態様は、第10の態様に基づく分光計測器(1)である。第11の態様において、前記撮像面(200)は、垂直方向(VD)及び水平方向(HD)に並ぶ複数の画素(201)を含む。前記分光器(2)は、前記撮像面(200)の前方にあって前記垂直方向(VD)に延びるスリット(80a)と前記撮像面(200)との間にあって前記スリット(80a)からの光(L2,L3)を前記水平方向(HD)において波長毎に分ける分光素子(21)を更に含む。前記第1測定領域(200a)及び前記第2測定領域(200b)は、前記垂直方向において並ぶ。この態様は、対象物(11)の反射スペクトルと光源(12)の反射スペクトルとの両方を一度に測定できる。
【0126】
第12の態様は、第1~第11の態様のいずれか一つに基づく分光計測器(1)である。第12の態様において、前記分光計測器(1)は、前記対象面(90a)の左右方向を水平方向に一致させるための水準器(95)を、更に備える。この態様は、分光計測器(1)の位置合わせの精度が向上する。
【0127】
第13の態様は、情報処理システム(100)での処理の対象になる情報を提供するための分光計測器(1)であって、光源(12)に対する対象物(11)の反射スペクトルの測定をし、前記測定の結果を示す測定情報(D1)を出力する分光器(2)と、前記光源(12)からの光(L1)を受ける対象面(90a)、及び、前記光源(12)からの光(L1)により前記対象面(90a)に影(91a,92a,931a,932a,933a)を生じさせる1以上の遮蔽物(91,92,93)を含む影生成部(9)と、前記対象面(90a)を含む撮像範囲を撮像し、前記撮像範囲の画像を示す画像情報(D2)を出力する撮像装置(3)と、コンピュータ可読媒体(40)が取り外し可能に接続されるストレージインターフェース(4)と、前記分光器(2)、前記撮像装置(3)及び前記ストレージインターフェース(4)に接続され、前記分光器(2)からの前記測定情報(D1)と、前記撮像装置(3)からの前記画像情報(D2)とを、前記ストレージインターフェース(4)に接続された前記コンピュータ可読媒体(40)に格納する測定処理を実行する処理装置(6)とを備える。前記情報処理システム(100)は、前記コンピュータ可読媒体(40)を経由して前記測定情報(D1)及び前記画像情報(D2)を取得し、前記画像情報(D2)が示す前記撮像範囲の画像に写る前記対象面(90a)に前記光源(12)からの光(L1)により生じた前記1以上の遮蔽物(91,92,93)の影(91a,92a,931a,932a,933a)から、測定時の前記光源(12)と前記分光器(2)との位置関係を特定する。この態様は、光源(12)に対する対象物(11)の反射スペクトルの測定、及び、測定時の光源(12)と分光器(2)との位置関係の特定を可能にする。
【0128】
第14の態様は、第13の態様に基づく分光計測器(1)である。第14の態様において、前記情報処理システム(100)は、前記画像情報(D2)が示す前記撮像範囲の画像に写る前記対象面(90a)に前記光源(12)からの光(L1)により生じた1以上の遮蔽物(91,92,93)の影(91a,92a,931a,932a,933a)から、測定時の前記光源(12)の広がりの評価値を決定する。この態様は、測定時の光源(12)の広がりの評価値が得られるから、対象物(11)の反射スペクトルの評価の精度の向上を可能にする。
【0129】
上記の第2~第12の態様は、第13又は第14の態様に組み合わせて適用することが可能である。上記の第2~第12の態様は、任意の要素である。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本開示は、分光計測器に適用可能である。具体的には、光源に対する対象物の反射スペクトルを測定するための分光計測器に、本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0131】
1 分光計測器
2 分光器
20 検出器
200 撮像面
200a 第1測定領域
200b 第2測定領域
201 画素
21 分光素子
3 撮像装置
4 ストレージインターフェース
40 コンピュータ可読媒体
6 処理装置
80a スリット
81 反射板
9 影生成部
90a 対象面
91 遮蔽物(第1遮蔽物、垂直棒部材)
92 遮蔽物(第2遮蔽物、水平棒部材)
93 遮蔽物(第3遮蔽物、壁部材)
91a,92a,931a,932a,933a 影
100 情報処理システム
11 対象物
12 光源
L1 光
L2 第1反射光
L3 第2反射光
D1 測定情報
D2 画像情報
VD 垂直方向
HD 水平方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16