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特開2023-114760表面形状測定装置及び表面形状測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114760
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】表面形状測定装置及び表面形状測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20230810BHJP
【FI】
G01B11/24 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017255
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】川田 善之
(72)【発明者】
【氏名】森山 克文
(72)【発明者】
【氏名】森井 秀樹
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA53
2F065DD03
2F065DD08
2F065FF01
2F065FF04
2F065FF52
2F065FF67
2F065GG24
2F065HH13
2F065JJ03
2F065JJ09
2F065JJ26
2F065LL04
2F065LL12
2F065MM07
2F065NN11
2F065PP24
2F065QQ24
(57)【要約】
【課題】測定時に生じる振動による影響を抑制し、測定精度を高めることが可能な表面形状測定装置及び表面形状測定方法を提供する。
【解決手段】光学ヘッドを測定対象物に対して垂直方向に相対的に走査しながら前記測定対象物の観察画像を取得する表面形状測定装置は、光学ヘッドにより取得された観察画像を撮影するカメラと、光学ヘッドを測定対象物に対して垂直な走査方向に相対的に走査する駆動部と、測定対象物を光学ヘッドに対し相対的に移動するステージと、測定対象物に対する光学ヘッドの走査方向位置を検出するためのエンコーダと、エンコーダから所定間隔毎に出力される位置信号に基づいてカメラに観察画像の撮影を指令する撮影指令部と、ステージの位置毎にカメラのフレームドロップの発生率を示すフレームドロップ発生率を算出するフレームドロップ発生率算出部と、フレームドロップ発生率に基づいて、測定対象物の表面形状を測定するための測定条件をステージの位置毎に設定する測定条件設定部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学ヘッドを測定対象物に対して垂直方向に相対的に走査しながら前記測定対象物の観察画像を取得する表面形状測定装置であって、
前記光学ヘッドにより取得された前記観察画像を撮影するカメラと、
前記光学ヘッドを前記測定対象物に対して垂直な走査方向に相対的に走査する駆動部と、
前記測定対象物を前記光学ヘッドに対し相対的に移動するステージと、
前記測定対象物に対する前記光学ヘッドの走査方向位置を検出するためのエンコーダと、
前記エンコーダから所定間隔毎に出力される位置信号に基づいて前記カメラに前記観察画像の撮影を指令する撮影指令部と、
前記ステージの位置毎に前記カメラのフレームドロップの発生率を示すフレームドロップ発生率を算出するフレームドロップ発生率算出部と、
前記フレームドロップ発生率に基づいて、前記測定対象物の表面形状を測定するための測定条件を前記ステージの位置毎に設定する測定条件設定部と、
を備える、表面形状測定装置。
【請求項2】
前記測定条件設定部は、前記測定条件として、前記カメラの視野範囲を設定する、
請求項1に記載の表面形状測定装置。
【請求項3】
前記測定条件設定部は、前記測定条件として、前記測定対象物に対する前記光学ヘッドの走査速度を設定する、
請求項1又は2に記載の表面形状測定装置。
【請求項4】
前記測定条件設定部は、前記フレームドロップ発生率とフレームドロップ発生率閾値とを比較した結果に基づいて、前記測定条件の変更が必要であるか否かを判定する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の表面形状測定装置。
【請求項5】
前記測定条件設定部は、前記測定条件の変更が必要であると判定した場合、前記フレームドロップ発生率が前記フレームドロップ発生率閾値よりも小さくなるように、前記測定条件を変更する、
請求項4に記載の表面形状測定装置。
【請求項6】
前記測定条件設定部は、前記測定条件として、前記カメラの視野範囲と前記測定対象物に対する前記光学ヘッドの走査速度との双方を設定可能であり、前記測定条件の変更が必要であると判定した場合、前記フレームドロップ発生率が前記フレームドロップ発生率閾値以下になるように、前記光学ヘッドの走査速度よりも前記カメラの視野範囲を優先して変更する、
請求項5に記載の表面形状測定装置。
【請求項7】
前記フレームドロップ発生率をFDRとし、前記カメラが実際に撮像した前記観察画像のフレーム数をNとし、前記位置信号に基づいて前記カメラが本来撮影すべき前記観察画像の予定フレーム数をMとした場合、前記フレームドロップ発生率算出部は、次式を用いて前記フレームドロップ発生率を算出する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の表面形状測定装置。
FDR=1-N/M
【請求項8】
前記光学ヘッドは白色干渉顕微鏡である、
請求項1から7のいずれか1項に記載の表面形状測定装置。
【請求項9】
光学ヘッドにより取得された測定対象物の観察画像を撮影するカメラと、
前記光学ヘッドを前記測定対象物に対して垂直な走査方向に相対的に走査する駆動部と、
前記測定対象物を前記光学ヘッドに対し相対的に移動させるステージと、
前記測定対象物に対する前記光学ヘッドの走査方向位置を検出するためのエンコーダと、
前記エンコーダから所定間隔毎に出力される位置信号に基づいて前記カメラに前記観察画像の撮影を指令する撮影指令部と、
を備える、表面形状測定装置により表面形状を測定する表面形状測定方法であって、
前記ステージの位置毎に前記カメラのフレームドロップの発生率を示すフレームドロップ発生率を算出し、前記フレームドロップ発生率に基づいて、前記測定対象物の表面形状を測定するための測定条件を前記ステージの位置毎に設定する表面形状測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面形状測定装置及び表面形状測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白色干渉方式、又はフォーカスバリエーション(Focus Variation)方式など、顕微鏡走査型の表面形状測定装置を用いて、測定対象物の測定面の三次元形状を測定する測定方法が知られている(特許文献1及び2参照)。このような走査型の表面形状測定装置は、カメラ付きの顕微鏡を走査方向に沿って走査しながら一定のピッチごとにカメラにより測定面を撮影し、ピッチごとの観察画像とスケールからの情報に基づき、画素ごとに高さ情報を演算或いは各観察画像の画素ごとに合焦度(顕微鏡の焦点位置)を演算することで、測定面の三次元形状を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-90520号公報
【特許文献2】特開2016-99213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
走査型の表面形状測定装置では、走査中に振動が発生すると、顕微鏡と測定対象物との間の相対位置関係にずれが生じ、測定誤差を招く要因となる。また、スケールの振動などに由来するカメラのフレームドロップにより測定誤差が発生する。また、ワークを測定するためのXYステージを有する表面形状測定装置では、ステージを移動することで重心が変わるため、振動による測定誤差の程度も大きく変化する。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、測定時に生じる振動による影響を抑制し、測定精度を高めることが可能な表面形状測定装置及び表面形状測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様の、光学ヘッドを測定対象物に対して垂直方向に相対的に走査しながら測定対象物の観察画像を取得する表面形状測定装置は、光学ヘッドにより取得された観察画像を撮影するカメラと、光学ヘッドを測定対象物に対して垂直な走査方向に相対的に走査する駆動部と、測定対象物を光学ヘッドに対し相対的に移動するステージと、測定対象物に対する光学ヘッドの走査方向位置を検出するためのエンコーダと、エンコーダから所定間隔毎に出力される位置信号に基づいてカメラに観察画像の撮影を指令する撮影指令部と、ステージの位置毎にカメラのフレームドロップの発生率を示すフレームドロップ発生率を算出するフレームドロップ発生率算出部と、フレームドロップ発生率に基づいて、測定対象物の表面形状を測定するための測定条件をステージの位置毎に設定する測定条件設定部と、を備える。
【0007】
第2態様の表面形状測定装置において、測定条件設定部は、測定条件として、カメラの視野範囲を設定する。
【0008】
第3態様の表面形状測定装置において、測定条件設定部は、測定条件として、測定対象物に対する光学ヘッドの走査速度を設定する。
【0009】
第4態様の表面形状測定装置において、測定条件設定部は、フレームドロップ発生率とフレームドロップ発生率閾値とを比較した結果に基づいて、測定条件の変更が必要であるか否かを判定する。
【0010】
第5態様の表面形状測定装置において、測定条件設定部は、測定条件の変更が必要であると判定した場合、フレームドロップ発生率がフレームドロップ発生率閾値よりも小さくなるように、測定条件を変更する。
【0011】
第6態様の表面形状測定装置において、測定条件設定部は、測定条件として、カメラの視野範囲と測定対象物に対する光学ヘッドの走査速度との双方を設定可能であり、測定条件の変更が必要であると判定した場合、フレームドロップ発生率がフレームドロップ発生率閾値以下になるように、光学ヘッドの走査速度よりもカメラの視野範囲を優先して変更する。
【0012】
第7態様の表面形状測定装置において、フレームドロップ発生率をFDRとし、カメラが実際に撮像した観察画像のフレーム数をNとし、位置信号に基づいてカメラが本来撮影すべき観察画像の予定フレーム数をMとした場合、フレームドロップ発生率算出部は、次式を用いてフレームドロップ発生率を算出する。
【0013】
FDR=1-N/M
【0014】
第8態様の表面形状測定装置において、光学ヘッドは白色干渉顕微鏡である。
【0015】
第9態様の、光学ヘッドにより取得された測定対象物の観察画像を撮影するカメラと、光学ヘッドを測定対象物に対して垂直な走査方向に相対的に走査する駆動部と、測定対象物に対する光学ヘッドの走査方向位置を検出するためのエンコーダと、エンコーダからサンプリング間隔毎に出力されるトリガ信号によりカメラに観察画像の撮影を指令する撮影指令部と、を備える、表面形状測定装置により表面形状を測定する表面形状測定方法において、ステージの位置毎にカメラのフレームドロップの発生率を示すフレームドロップ発生率を算出し、フレームドロップ発生率に基づいて、測定対象物の表面形状を測定するための測定条件をステージの位置毎に設定する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、測定時に生じる振動による影響を抑制し、測定精度を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は表面形状測定装置の概略図である。
図2図2は表面形状測定装置のブロック図である。
図3図3は複数の測定対象物の測定を説明するための図である。
図4図4は表面形状測定装置による測定対象物の三次元形状の演算を説明するための図である。
図5図5は視野範囲を説明するための図である。
図6図6は事前調整モードでの測定条件の設定を示すフローチャートである。
図7図7図6に示したステップS3における事前調整モードでの測定条件の設定を示すフローチャートである。
図8図8は測定モードを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面にしたがって本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0019】
図1は、測定対象物Wの表面形状を測定する表面形状測定装置10の概略図である。なお、図中の互いに直交するXYZ方向のうち、XY方向は水平方向であり、Z方向は上下方向(垂直方向)である。
【0020】
図1に示すように、表面形状測定装置10は、測定対象物Wの測定面の三次元形状(表面形状)の測定を行うため、光学ヘッド12と、駆動部16と、エンコーダ18と、制御装置20と、を備える。図1に示す表面形状測定装置10は、ステージ22と、ステージ駆動部24と、を備える。なお、光学ヘッド12、カメラ14、駆動部16、及びエンコーダ18を含めて光学ヘッドユニットとも称する場合がある。
【0021】
光学ヘッド12は、図1に示すようにマイケルソン型の白色干渉顕微鏡で構成される。
【0022】
光学ヘッド12は、カメラ14と、光源部26と、ビームスプリッタ28と、干渉対物レンズ30と、結像レンズ32と、を備える。
【0023】
干渉対物レンズ30と、ビームスプリッタ28と、結像レンズ32と、カメラ14とが、測定対象物WからZ方向上方側に沿って、この順で配置されている。また、ビームスプリッタ28に対してX方向(Y方向でも可)に対向する位置に光源部26が配置される。
【0024】
光源部26は、制御装置20の制御の下、ビームスプリッタ28に向けて平行光束の白色光(可干渉性の少ない低コヒーレンス光)を、測定光L1として出射する。この光源部26、図示は省略するが、発光ダイオード、半導体レーザ、ハロゲンランプ、及び高輝度放電ランプなどの測定光L1を出射可能な光源と、この光源から出射された測定光L1を平行光束に変換するコレクタレンズと、を備える。
【0025】
ビームスプリッタ28は、例えばハーフミラーが用いられる。ビームスプリッタ28は、光源部26から入射した測定光L1の一部をZ方向下方側の干渉対物レンズ30に向けて反射する。また、ビームスプリッタ28は、干渉対物レンズ30から入射する後述の合波光L3の一部をZ方向上方側に透過して、この合波光L3を結像レンズ32に向けて出射する。
【0026】
干渉対物レンズ30は、マイケルソン型であり、対物レンズ30Aと、ビームスプリッタ30Bと、参照面30Cと、を備える。測定対象物WからZ方向上方側に沿ってビームスプリッタ30B及び対物レンズ30Aが順に配置される。また、ビームスプリッタ30Bに対してX方向(Y方向でも可)に対向する位置に参照面30Cが配置される。
【0027】
対物レンズ30Aは、集光作用を有しており、ビームスプリッタ28から入射した測定光L1を、ビームスプリッタ30Bを通して測定対象物Wに集光させる。
【0028】
ビームスプリッタ30Bは、例えばハーフミラーが用いられる。ビームスプリッタ30Bは、対物レンズ30Aから入射する測定光L1の一部を参照光L2として分割し、残りの測定光L1を透過して測定対象物Wに出射し且つ参照光L2を参照面30Cに向けて反射する。ビームスプリッタ30Bを透過した測定光L1は、測定対象物Wに照射された後、測定対象物Wにより反射されてビームスプリッタ30Bに戻る。
【0029】
参照面30Cは、例えば反射ミラーが用いられ、ビームスプリッタ30Bから入射した参照光L2をビームスプリッタ30Bに向けて反射する。この参照面30Cは、不図示の位置調整機構によってX方向の位置を手動調整可能である。これにより、ビームスプリッタ30Bと参照面30Cとの間の参照光L2の光路長を調整することができる。この参照光路長は、ビームスプリッタ30Bと測定対象物Wとの間の測定光L1の光路長と一致(略一致を含む)するように調整される。
【0030】
ビームスプリッタ30Bは、測定対象物Wから戻る測定光L1と参照面30Cから戻る参照光L2との合波光L3を生成し、この合波光L3をZ方向上方側の対物レンズ30Aに向けて出射する。この合波光L3は、対物レンズ30A及びビームスプリッタ28を透過して結像レンズ32に入射する。白色干渉顕微鏡の場合、合波光L3は干渉縞を含む干渉光となる。
【0031】
結像レンズ32は、ビームスプリッタ28から入射した合波光L3をカメラ14の撮像面(図示は省略)に結像させる。具体的には結像レンズ32は、対物レンズ30Aの焦点面上における点を、カメラ14の撮像面上の像点として結像する。
【0032】
カメラ14は、図示は省略するがCCD(Charge Coupled Device)型又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型の撮像素子を備える。カメラ14は、結像レンズ32により撮像面に結像された合波光L3を観察画像として撮影し、撮影された観察画像36を出力する。ここでは、観察画像36は干渉縞を含んでいる。
【0033】
駆動部16は、公知のリニアモータ或いはモータ駆動機構により構成される。駆動部16は、光学ヘッド12を垂直な走査方向(光学ヘッド12の光軸方向)であるZ方向に、測定対象物Wに対して相対的に走査自在に保持する。駆動部16は、制御装置20の制御の下、測定対象物Wに対して光学ヘッド12を、設定された走査速度及び走査方向の範囲で、相対的に移動させる。
【0034】
なお、駆動部16は、測定対象物Wに対して光学ヘッド12を走査方向に相対的に走査可能であればよく、例えば、測定対象物Wを支持するステージ22を走査方向に走査させてもよい。
【0035】
ステージ22は、測定対象物Wを支持するステージ面を有する。ステージ面X方向及びY方向に略平行な平坦面で構成される。ステージ駆動部24は、公知のリニアモータ或いはモータ駆動機構により構成されており、制御装置20の制御の下、光学ヘッド12に対してステージ22を走査方向に垂直な面内(X方向及びY方向)で相対的に水平移動させる。
【0036】
なお、ステージ駆動部24は、光学ヘッド12に対してステージ22をX方向及びY方向に相対的に移動可能であればよく、例えば、測定対象物Wを支持するステージ22に対して、光学ヘッド12をX方向及びY方向に移動させてもよい。
【0037】
エンコーダ18は、測定対象物Wに対する光学ヘッド12の走査方向位置を検出する位置検出センサであり、例えば、光学式リニアエンコーダ(スケールとも称する)が用いられる。光学式リニアエンコーダは、例えば、一定間隔でスリットが形成されたリニアスケールと、リニアスケールを挟んで対向配置された受光素子及び発光素子と、により構成される。エンコーダ18は、光学ヘッド12の走査方向位置(Z方向位置)を繰り返し検出し、走査方向位置(Z方向位置)を示す位置情報を含む位置信号38を制御装置20に対して繰り返し出力する。
【0038】
制御装置20は、操作部21に対する入力操作に応じて、測定対象物Wを測定する前の調整(事前調整モード)と測定対象物Wの測定(測定モード)との切り替え、各モードにおける測定条件の設定、及び測定モードにおける三次元形状の演算など、表面形状測定装置10を統括的に制御する。表示部23は、制御装置20の制御の下、各種情報を表示する。
【0039】
制御装置20は、各種のプロセッサ(Processor)及びメモリ等から構成された演算回路を備える。各種のプロセッサには、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及びプログラマブル論理デバイス[例えばSPLD(Simple Programmable Logic Devices)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、及びFPGA(Field Programmable Gate Arrays)]等が含まれる。なお、制御装置20の各種機能は、1つのプロセッサにより実現されてもよいし、同種または異種の複数のプロセッサで実現されてもよい。
【0040】
図2は、制御装置20の機能ブロック図である。図2に示すように、制御装置20には、光学ヘッド12のカメラ14及び光源部26、駆動部16、エンコーダ18、ステージ駆動部24、及び操作部21、が接続される。
【0041】
制御装置20は、図2に示すように、記憶部100、測定制御部102、トリガ信号出力部104、三次元形状演算部106、測定条件設定部108、フレームドロップ発生率算出部110、トリガ信号数カウント部112、カメラフレーム数カウント部114及び制御部116を備え、記憶部100から読み出した不図示の制御プログラムを実行することで、それぞれの機能を実現し、処理を実行する。制御部116は制御装置20の全体の処理を制御する。
【0042】
図2に示すように、測定制御部102は、光源部制御部120、撮影指令部122、駆動部制御部124、及びステージ駆動部制御部126を備え、光学ヘッド12の光源部26、カメラ14、駆動部16,及びステージ駆動部24を制御する。
【0043】
光源部制御部120が光源部26からの測定光L1の出射を開始させる。駆動部制御部124が、駆動部16を制御して、光学ヘッド12を、設定された走査速度、及び走査範囲内において、走査方向に走査させる。
【0044】
駆動部16が光学ヘッド12を走査方向に走査する間、位置信号38がエンコーダ18から出力され、位置信号38がトリガ信号出力部104に供給される。トリガ信号出力部104は位置信号38の検出結果に基づき、所定間隔毎にトリガ信号を出力する。
【0045】
撮影指令部122は、トリガ信号出力部104から所定間隔毎に出力されるトリガ信号によりカメラ14に観察画像の撮影を指令する。撮影指令部122は、トリガ信号出力部104から出力されるトリガ信号によりカメラ14に観察画像の撮影を指令する。
【0046】
カメラ14は、トリガ信号出力部104から出力されるトリガ信号に基づいて、オペレータにより操作部21を介して設定された走査範囲内で、上記所定間隔(すなわち、サンプリング間隔)毎に測定対象物Wの観察画像36を複数取得する。カメラ14により所定間隔(サンプリング間隔)毎に取得された複数の観察画像36は制御装置20に出力され、観察画像36とその観察画像36を取得したときの位置信号38(Z方向位置を示す位置情報を含む)とが関連付けられる。三次元形状演算部106が、観察画像36と位置信号38とに基づいて測定対象物Wの表面形状を演算する。関連付けられた観察画像36と位置信号38とは記憶部100に記憶されてもよい。三次元形状演算部106は記憶部100に記憶された観察画像36と位置信号38に基づいて測定対象物Wの表面形状を演算しもてよい。
【0047】
図3は複数の測定対象物Wの測定を説明するための図である。図3に示すように、複数の測定対象物Wが、一つのパレット25に載置されている。複数の測定対象物Wが載置されたパレット25がステージ22に支持されている。ステージ22はX方向とY方向に平行の2軸で移動可能に構成される。
【0048】
図3の3Aでは、複数の測定対象物Wの一つが測定対象として選択され、ステージ22を面内で移動することで、その測定対象物Wと光学ヘッド12とが位置合わせされる。表面形状装置10が測定対象物Wの表面形状を測定する。
【0049】
図3の3Bでは、3Aとは異なる測定対象物Wが測定対象として選択され、ステージ22を面内で移動することで、その測定対象物Wと光学ヘッド12とが位置合わせされる。表面形状装置10が、3Aと異なる測定対象物Wの表面形状を測定する。同種の複数の測定対象物Wが表面形状装置10により測定される。
【0050】
図3では、複数の測定対象物Wがパレット25の上に載置された例を示した。しかしながら、測定対象物Wはこれに限定されない。例えば、半導体ウエハと、その半導体ウエハ上に形成された複数の回路パターンも、同種の複数の測定対象物と見立てることができる。半導体ウエハがパレットに相当し、複数の回路パターンが複数の測定対象物Wに相当しうる。
【0051】
また、図3では、ステージ22はX方向とY方向の2軸に移動可能な場合を例示した。しかしながら、ステージ22はX方向又はY方向のいずれか1軸に移動可能な場合であってもよいし、ステージ22はX方向とY方向及びZ方向の3軸、またはそれ以上の数の軸に移動可能であってもよい。ステージ22を移動する場合を説明したが、光学ヘッド12とステージ22とを相対的に移動できれば、光学ヘッド12が移動されてもよい。
【0052】
図4は、表面形状測定装置10による測定対象物Wの三次元形状の演算を説明するための説明図である。図4の4Aは、光学ヘッド12の走査方向を示す概略図である。図4の4Bは、光学ヘッド12を測定対象物WSに近接した位置から走査方向に上昇させながら、各走査方向位置で、カメラ14が取得した観察画像を示す。図4の4Cは、画素(ピクセル)ごとに、Z方向位置(高さ)と輝度の相関関係及び干渉縞曲線を例示した図である。
【0053】
三次元形状演算部106は、光学ヘッド12を走査方向に走査させる間、カメラ14の視野範囲において、サンプリング間隔毎に撮影された測定対象物Wの観察画像36をカメラ14から取得する。
【0054】
次に、三次元形状演算部106は、4B及び4Cに示すように、干渉縞が発生している各観察画像36の画素ごとの輝度値を検出する。そして、三次元形状演算部106は、各観察画像36(カメラ14の撮像素子)の同一座標の画素ごとの輝度値(符号Pix1参照)を比較する。三次元形状演算部106は、各観察画像36の同一座標の画素ごとに輝度値が最大になるZ方向位置を決定することで、同一座標の画素ごとに測定対象物Wの高さ情報を演算する。
【0055】
表面形状測定装置10は、ステージ22を移動させることで、複数の測定対象物Wの高さ情報を演算する。
【0056】
次に、表面形状測定装置10において設定される測定条件の1つであるカメラ14の視野範囲と最大フレームレートとの関係について説明する。
【0057】
図5は、測定条件の一つであるカメラ14の視野範囲を説明する図であり、測定対象物Wを、走査方向(Z方向)に沿ってカメラ14の側から観察した図である。一般に、カメラ14の視野範囲が、測定対象物Wを一回で測定できる範囲となる。したがって、カメラ14の視野範囲を小さくすると、測定対象物Wの目的の測定箇所がカメラ14の視野範囲に全て収まらず、その結果、複数回の測定が必要となり、測定効率が低下する場合がある。
【0058】
したがって、図5に示すように、測定効率の観点から、カメラ14の視野範囲は、測定対象物Wの測定箇所を含み、且つ最大視野範囲Pmaxであることが好ましい。
【0059】
一方、カメラ14の最大フレームレートF[fps]は、カメラ14が1秒間で撮影可能なフレーム(撮影画像)の数の最大値であるが、カメラ14の最大フレームレートFとカメラ14の視野範囲Pとは、以下の式(1)に示すような反比例の関係がある。
【0060】
【数1】
【0061】
すなわち、カメラ14の視野範囲Pを大きくすると、測定回数を減らすことができるので測定効率を向上させることできる反面、カメラ14の最大フレームレートFが小さくなるので、後述する式(4)から理解されるとおり、振動の影響によってフレームドロップが生じやすくなり、測定精度の低下を招く場合がある。一方、カメラ14の視野範囲Pを小さくすると、カメラ14の最大フレームレートFが大きくなるので、前者の場合に比べてフレームドロップが生じにくくなり、測定精度を向上させることができるが、視野範囲Pを小さくすることによって測定回数が増えてしまい、測定効率の低下を招くことになる。そのため、測定効率と測定精度との両立を図るためには、カメラ14の視野範囲Pを適切に設定することが重要となる。なお、測定効率の観点から、カメラ14の視野範囲Pは、少なくとも測定対象物Wを含む最小視野範囲Pminに設定されることが好ましい。カメラ14の視野範囲Pは、矢印で示すように最小視野範囲Pminと最大視野範囲Pmaxとの間で設定される。
【0062】
次に、カメラ14のフレームドロップが発生する条件について説明する。既述したように観察画像は、光学ヘッド12を走査方向に走査させる間、トリガ信号出力部104から所定間隔毎に出力されるトリガ信号(すなわち、エンコーダ18から所定間隔毎に出力される位置信号38)に基づきカメラ14により撮影される。このとき、カメラ14により撮影される観察画像の撮影間隔をサンプリング間隔という。ここで、測定対象物Wに対する光学ヘッド12の走査速度をV[nm/s]とし、カメラ14のサンプリング間隔をD[nm]とし、カメラ14のサンプリング周波数をF[Hz]とすると、以下の式(2)の関係がある。
【0063】
【数2】
カメラ14のサンプリング周波数Fは、トリガ信号出力部104から出力されたトリガ信号に基づいてカメラ14が観察画像を撮影した場合の1秒間に撮影される観察画像の枚数となる。
【0064】
したがって、カメラ14の最大フレームレートFとサンプリング周波数Fとが以下の式(3)の関係を満たす場合(最大フレームレートFよりサンプリング周波数Fが大きい場合)、最大フレームレートFを超えるスピードで撮影の指示をすると超えた分は無視されて、いわゆるフレームドロップが発生する。フレームドロップが発生すると測定精度の低下を招くおそれがある。特に、走査速度Vが速くなると、式(2)に示すようにカメラ14のサンプリング周波数Fが上がるため、フレームドロップが発生しやすくなる。
【0065】
【数3】
【0066】
したがって、式(3)を満たさないように(すなわち、サンプリング周波数Fが最大フレームレートF以下となるように)、カメラ14のサンプリング周波数Fを設定することが必要となる。
【0067】
しかしながら、表面形状測定装置10が設置される環境によって振動が発生することがあり、その振動が表面形状測定装置10の測定に影響を与える場合がある。例えば、表面形状測定装置10に取り付けられたファン、床から振動、ワーク搬送システムのモータなどが振動源となる。表面形状測定装置10は、例えば、走査中に振動が発生すると、測定対象物Wの振動により、測定対象物Wと光学ヘッド12との相対位置がずれてしまい、そのずれが原因で測定誤差が発生する場合がある。また、光学ヘッドユニットの振動に起因するカメラ14のフレームドロップにより、測定の誤差が発生する場合がある。このように、振動は、光学ヘッド12の走査速度を速くしうる要素となるので、光学ヘッド12の走査速度が速すぎる場合にはフレームドロップが起きやすくなる。ここで、表面形状測定装置10の測定中に発生する振動に起因する振動周波数をF[Hz]とすると、カメラ14の最大フレームレートFとサンプリング周波数Fと振動周波数Fとが以下の式(4)の関係を満たす場合、フレームドロップが発生する。なお、振動周波数Fは、カメラ14のサンプリング間隔と同レベルの振幅強度をもとものとする。
【0068】
【数4】
【0069】
したがって、表面形状測定装置10の測定中に上記のような振動が発生してもフレームドロップによる測定精度の低下を抑止するためには、式(4)を満たさないように、振動周波数Fを考慮してカメラ14のサンプリング周波数Fを設定する必要がある。
【0070】
式(2)及び(4)から、走査速度Vが大きい、サンプリング間隔Dが小さい(いずれもカメラサンプリング周波数Fが大きくなる)、振動周波数Fが大きい、視野範囲Pが大きい(最大フレームレートFが小さくなる)等の場合、フレームドロップが発生しやすくなる。
【0071】
しかしながら、測定中に発生する振動に起因する振動周波数Fを直接測定することは困難であるため、上記振動による影響を十分に抑止することができず、測定精度を向上させるには限界があった。
【0072】
そこで発明者等は、上記課題を解決するため、フレームドロップ発生率という考えを導入し、フレームドロップ発生率に基づいて表面形状測定装置10の測定条件を設定することで、上記振動による影響を抑止して、測定効率の向上を図ることが可能な本発明に至った。
【0073】
以下、フレームドロップ発生率について説明する。このフレームドロップ発生率は、測定予定フレーム数と実際に測定したフレーム数とから算出される。
【0074】
測定予定フレーム数は、トリガ信号出力部104から所定間隔毎に出力されるトリガ信号に基づきカメラ14が撮影動作を行った場合において、フレームドロップが発生しなかったと仮定した場合に、カメラ14において本来取得されるべきフレームの数(観察画像の枚数)である。この測定予定フレーム数をMとし、カメラ14のサンプリング周波数をF[fps]、サンプリング間隔をD[nm]、光学ヘッド12の走査範囲をD[nm]、走査速度をV[nm/s]、走査時間をt[s]とすると、測定予定フレーム数Mは、以下の式(5)により求めることができる。
【0075】
【数5】
【0076】
測定したフレーム数はカメラ14が測定時に実際に撮影したフレームの数(観察画像)の枚数である。測定したフレーム数をNとし、フレームドロップ発生率をFDRとすると、フレームドロップ発生率FDRは以下の式(6)で算出できる。
【0077】
【数6】
【0078】
式(6)では、フレームドロップ発生率FDRは、測定したフレーム数Nを測定予定フレーム数Mで除することで撮影された観察画像の比率を求め、1からその比率を減ずることで算出される。FDR>0の場合、フレームドロップが発生していることを意味しており、その数値が大きい程、フレームドロップが多く発生していることを意味する。光学ヘッドユニットに発生した振動が、フレームドロップ発生率FDRを算出することで、間接的に検知される。
【0079】
測定対象物Wの振動を検出しやすくするために、白色干渉顕微鏡(光学ヘッドユニット)の質量は、光学ヘッドユニットを取り付ける土台の質量より小さく設計しておくことが好ましい。白色干渉顕微鏡の固有振動数を土台の固有振動数より大きくできる。
【0080】
本実施形態においては、以下に説明するように、表面形状測定装置10の測定条件が、フレームドロップ発生率FDRに基づいて設定されるので、測定時に生じる振動による影響を抑制し、測定精度を高めることが可能となる。
【0081】
一方で、図3に示すように、複数の測定対象物Wを測定する場合、光学ヘッド12とステージ22とが相対的に移動され、位置決めされる。したがって、3A及び3Bに示されるように、測定対象物Wの位置により、光学ヘッド12とステージ22との相対的な位置関係が異なる。光学ヘッド12とステージ22とを含む一つの系として見ると、3Aと3Bとでは、系の重心が異なる。重心位置の違いにより、振動のしやすさは、ステージ22の位置毎(測定対象物Wの位置毎)に変化する。
【0082】
測定条件を設定する場合、フレームドロップ発生率FDRに基づいて測定条件を設定すると共に、ステージ22の位置毎に測定条件を設定することで、表面形状測定装置10は、測定精度の低下の抑制をより確実に達成できる。
【0083】
<事前調整モード>
次に、フレームドロップ発生率を用いた事前調整モードでの測定条件の設定の一例について説明する。事前調整モードは、フレームドロップ発生率FDRに対してフレームドロップ発生率閾値Thを設定し、フレームドロップ発生率FDRとフレームドロップ発生率閾値Thとを比較し、測定条件の変更が必要であるか否かを判定する。測定条件の変更が必要なしと判定された場合、フレームドロップ発生率FDRを算出した際の測定条件が、測定モードで使用される測定条件として設定される。
【0084】
一方、測定条件の変更が必要である判定された場合、フレームドロップ発生率FDRを算出した際の測定条件を変更し、フレームドロップ発生率FDRを算出する。測定条件の変更が必要なしと判定されまるで、繰り返し測定条件を変更しながらフレームドロップ発生率FDRを算出する。最終的に、測定条件の変更が必要なしと判定された際の、フレームドロップ発生率FDRを算出した測定条件が測定モードで使用される測定条件として設定される。
【0085】
あるステージ位置に対する測定条件が設定されると、ステージ22が別の位置に移動し、その位置での測定条件の設定が実行される。最終的に、測定モードで使用される測定条件が、全てのステージ22の位置毎に設定される。
【0086】
なお、式(4)で説明したように、走査速度Vが大きい場合、または視野範囲Pが大きい場合、フレームドロップが発生しやすくなる。そこで、事前調整モードでは、ステージ22の位置毎に視野範囲Pと走査速度Vとの双方が測定条件として設定される。
【0087】
測定条件を設定するため、事前の準備として、測定する測定対象物Wを載置したパレット25が設置される。既述したように、ステージ22の位置により、重心位置が変わり、振動のしやすさが異なる。表面形状測定装置10は、ステージ22の位置をX方向あるいはY方向に複数変えながら測定し、ステージ22の各位置でのフレームドロップ率を計算する。
【0088】
例えば、X軸を例に説明すると、ステージ22が0からXまで移動できるとする。0からXを4分割し、0、X/4、2X/4、3X/4、及びXの5箇所が、測定条件を設定する箇所として決定される。決定された各設定箇所の位置において、各視野範囲Pと各走査速度Vを測定し、以下の表1に示すように測定条件マップを作成し記憶する。視野範囲P、P、P、P、P、及び走査速度V、V、V、V、Vにおけるインデックスは各位置での視野範囲と走査速度を意味している。視野範囲P、P、P、P、Pは、それぞれ同じ視野範囲であってもよいし、異なる視野範囲であってもよい。同様に、走査速度V、V、V、V、及びVは、それぞれ同じ走査速度であってもよいし、異なる走査速度であってもよい。
【表1】
【0089】
測定モードでは、表面形状測定装置10は、ステージ22の位置毎に設定された測定条件(表1に示すマップ)により、測定対象物Wの表面形状を測定する。なおマップに存在しない、ステージ22上の位置する測定対象物Wを測定する場合、線形補間する等により測定条件を推定し測定してもよい。
【0090】
図6及び図7は、事前調整モードでの測定条件の設定を示すフローチャートである。事前調整モードでは、表面形状測定装置10は、測定モードで使用する測定条件を設定する処理を実行する。
【0091】
以下、図6及び図7のフローチャートでは、測定条件を設定すべきステージ22の箇所を位置Xとし、視野範囲を視野範囲Pとし、走査速度を走査速度Vとして説明する。パラメータmは各位置mを識別するためのインデックスであり、パラメータiは各視野範囲Pを識別するためのインデックスであり、パラメータkは各走査速度Vを識別するためのインデックスである。
【0092】
オペレータは、事前調整モードで使用される複数の測定対象物Wをステージ22に載置し、操作部21から事前調整モードを選択する。オペレータの選択結果が制御部116に入力され、制御部116は事前調整モードの処理全体を制御する。
【0093】
位置Xのインデックスを示すパラメータmに対しi=0を設定する(ステップS1)。次に、ステージを位置Xに移動する(ステップS2)。次に、表面形状測定装置10は位置Xに対して測定条件設定の処理を実行する(ステップS3)。
【0094】
図7は、ステップS3の測定条件設定処理の一例を示すフローチャート(サブルーチン)である。
【0095】
オペレータは、測定対象物Wに基づいて最小視野範囲Pmin図5参照)、及びフレームドロップ発生率閾値Thを設定する(ステップS11)。ステップS11は図6のステップS1で実施してもよい。また、事前測定モードで一度設定されると、事前測定モードを終了するまで、最小視野範囲Pmin、及びフレームドロップ発生率閾値Thは変更する必要はない。最小視野範囲Pminは、カメラ14の視野範囲Pの中で、測定対象物Wの測定箇所が最低限含まれる大きさの面積を持つ視野範囲を意味する。最小視野範囲Pminは測定対象物Wの測定箇所を含んでいるので、測定対象物Wを複数回測定する状況を回避できる。フレームドロップ発生率閾値Thは、後述するステップにおいて、フレームドロップ発生率FDRと比較され、測定条件を変更するか否かが判定される。最小視野範囲Pminとフレームドロップ発生率閾値Thとは、手動又は自動で設定できる。最小視野範囲Pminとフレームドロップ発生率閾値Thの情報は、制御装置20の測定条件設定部108に入力される。最小視野範囲Pminとフレームドロップ発生率閾値Thの情報は、記憶部100に記憶されていてもよい。
【0096】
次に、測定条件設定部108は、視野範囲Pのインデックスを示すパラメータiに対しi=1を設定し、走査速度Vのインデックスを示すパラメータkに対しk=1を設定する(ステップS12)。さらに、測定条件設定部108は、初期値として、視野範囲Pにカメラ14の最大視野範囲Pmaxを設定し、走査速度Vに最大走査速度Vmaxを設定する。図7のフローでは、初期値として、視野範囲Pと走査速度Vとは、測定効率を優先する条件で設定されている。
【0097】
次に、測定制御部102は、測定条件設定部108により設定された視野範囲P、及び走査速度Vに基づいて、光源部制御部120、撮影指令部122、駆動部制御部124により光学ヘッドユニットを制御する。カメラ14が測定対象物Wの観察画像36を取得し、制御装置20がエンコーダ18からの位置信号38を取得し、測定を終了する(ステップS13)。観察画像36と位置信号38とを取得する間、トリガ信号数カウント部112は、トリガ信号出力部104が出力したトリガ数をカウントする。トリガ信号数カウント部112においてカウントされたトリガ数は、上述した測定予定フレーム数Mに相当する値となる。なお、サンプリング間隔D[nm]と走査範囲D[nm]とが取得もしくは設定されている場合には、例えばフレームドロップ発生率算出部110などにおいて、式(5)に基づいて測定予定フレーム数を算出するようにしてもよい。この場合、トリガ信号数カウント部112は不要となる。また、カメラフレーム数カウント部114は、カメラ14が実際に取得した観察画像36の枚数を、測定したフレーム数Nとしてカウントする。
【0098】
次に、フレームドロップ発生率算出部110は、トリガ信号数カウント部112が取得した「測定予定フレームM」及びカメラフレーム数カウント部114が取得した「測定したフレーム数N」に基づいて、フレームドロップ発生率FDRを算出する(ステップS14)。
【0099】
次に、測定条件設定部108は、フレームドロップ発生率FDRがフレームドロップ発生率閾値Th以下(FDR≦Th)であるかを判定する(ステップS15)。ステップS15で「Yes」の場合には、測定条件設定部108は、測定条件の変更が必要でないと判定し、最新(FDR≦Thを満たした際)の視野範囲P及び走査速度Vを保存し、保存した視野範囲P及び走査速度Vを、測定モードで適用する測定条件として設定する(ステップS16)。そして、表面形状測定装置10は事前調整モードを終了する。
【0100】
ステップS15で「No」の場合(FDR>Th)には、測定条件設定部108は、測定条件の変更が必要であると判定し、測定条件を変更する(ステップS17)。すなわち、測定条件設定部108は、設定された測定条件では、振動が表面形状測定装置10の測定精度に影響を与えると間接的に判定する。
【0101】
図7のフローでは、測定条件の変更が必要であると判定された場合、測定条件設定部108は、フレームドロップ発生率FDRがフレームドロップ発生率閾値Thよりも小さくなるように、視野範囲P又は走査速度Vを変更する。
【0102】
図7のフローでは、視野範囲P及び走査速度Vの双方の測定条件が設定可能であるが、光学ヘッド12の走査速度Vよりもカメラ14の視野範囲Pを優先して変更する。フレームドロップ発生率FDRがフレームドロップ発生率閾値Thよりも小さくするためには、視野範囲Pを小さくするか、または走査速度Vを遅くすることが必要となる。走査型の表面形状測定装置10では、走査速度Vの低下(変更)が、測定効率の低下を招くので、視野範囲Pを優先して変更する。
【0103】
ステップS17では、測定条件設定部108は、例えば、以下の式(7)に従って、視野範囲Pi+1を計算し、視野範囲Pを変更する。ステップS17では、測定条件設定部108は、視野範囲Pのみを変更する。
【0104】
【数7】
【0105】
式(7)では、視野範囲Pを減らす割合が、ステップS14で算出したフレームドロップ発生率FDRの値によって変化している。フレームドロップ発生率FDRに応じて視野範囲Pを減らす割合を変化させることによって、単に視野範囲Pに0.95を乗じる場合と比較して、同じ低減ルーチンを複数回繰り返す必要がない。測定条件の設定が効率化できる。式(7)は、「0.95」の数値を使用したが、他の数値であってもよい。また、以下の式(8)に示すように、視野範囲Pを減らす割合は、フレームドロップ発生率FDRの値によって割合を変化させない場合であってもよい。
【0106】
【数8】
【0107】
次に、測定条件設定部108は、視野範囲Pi+1が最小視野範囲Pmin以上(Pi+1≧Pmin)であるか判定する(ステップS18)。ステップS18で「Yes」の場合には、測定条件設定部108は、パラメータiを1だけインクリメントする(ステップS19)。次に、処理フローはステップS13に進む。
【0108】
ステップS13では、測定制御部102は、測定条件設定部108で変更された視野範囲P、及び維持された走査速度Vに基づいて、光学ヘッドユニットを制御し、測定対象物Wの測定を実行する。
【0109】
視野範囲Pi+1≧最小視野範囲Pminを満たす限り、フレームドロップ発生率FDR≦フレームドロップ発生率閾値Thを満たすまで、処理フローはステップS13、ステップS14、ステップS15、ステップS17及びステップS19を繰り返す。ステップS15において、フレームドロップ発生率FDR≦フレームドロップ発生率閾値Thを満たした場合(Yesの場合)、処理フローはステップS16に進む。測定条件設定部108は、最新の視野範囲P及び最新の走査速度Vを保存し、保存した視野範囲P及び走査速度Vが、測定モードで適用する測定条件として設定される。
【0110】
次に、ステップS18で「No」の場合には、測定条件設定部108は、視野範囲Pの変更では、フレームドロップ発生率FDR≦フレームドロップ発生率閾値Thを満たさないと判定し、視野範囲Pの変更を終了し、走査速度Vを変更する(ステップS20)。
【0111】
ステップS20では、測定条件設定部108は、例えば、以下の式(9)に従って、走査速度Vk+1を計算し、走査速度Vを変更する。ステップS20では、測定条件設定部108は、走査速度Vのみを変更する。
【0112】
【数9】
【0113】
式(9)では、ステップS17と同様に、走査速度Vを減らす割合がステップS14で算出したフレームドロップ発生率FDRの値によって変化している。測定条件の設定が効率化できる。走査速度Vを減らす割合は、フレームドロップ発生率FDRの値によって割合を変化させない場合であってもよい。
【0114】
次に、測定制御部102は、ステップS17で変更された視野範囲Pi+1、及びステップS20で変更された走査速度Vk+1に基づいて、光学ヘッドユニットを制御し、測定対象物Wの測定を実行する(ステップS21)。
【0115】
次に、フレームドロップ発生率算出部110は、トリガ信号数カウント部112が取得した「測定予定フレームM」及びカメラフレーム数カウント部114が取得した「測定したフレーム数N」に基づいて、フレームドロップ発生率FDRを算出する(ステップS22)。
【0116】
次に、測定条件設定部108は、フレームドロップ発生率FDRがフレームドロップ発生率閾値Th以下(FDR≦Th)であるかを判定する(ステップS23)。
【0117】
ステップS23で「No」の場合(FDR>Th)には、測定条件の変更が必要であると判定し、パラメータkを1だけインクリメントする(ステップS24)。次に、処理フローはステップS10に進む。フレームドロップ発生率FDR≦フレームドロップ発生率閾値Thを満たすまで、処理フローはステップS20、ステップS21、ステップS22、ステップS23及びステップS24を繰り返す。
【0118】
ステップS23において、フレームドロップ発生率FDR≦フレームドロップ発生率閾値Thを満たした場合(Yesの場合)、処理フローはステップS16に進み、最新の視野範囲P及び最新の走査速度Vを保存し、保存した視野範囲P及び走査速度Vが、測定モードで適用する測定条件として設定される。
【0119】
図6に戻って、ステップS3の事前調整モードを終えると、処理フローはステップS4に進む。ステップS4は、事前調整モードで設定された最新の視野範囲と走査速度とを視野範囲Pと走査速度Vとして、位置Xに関連付けて記憶する。
【0120】
制御部116は、パラメータmを1だけインクリメントする(ステップS5)。次に、制御部116は、全ての位置の測定を終了したか否かを判定する(ステップS6)。ステップS6で「No」の場合には、処理フローはステップS2に進む。全ての位置の測定を終了するまで、処理フローはステップS2、ステップS3、ステップS4、及びステップS5を繰り返す。
【0121】
ステップS6で「Yes」の場合には、事前調整モードを終了する。事前調整モードを終了すると、表面形状測定装置10は、表1で示したような位置Xと視野範囲Pと走査速度Vとを関連付けたマップを作成し、記憶部100に記憶する。
【0122】
既述したように、表面形状測定装置10は、最大視野範囲Pmaxを初期の視野範囲Pとして設定し、最大走査速度Vmaxを初期の走査速度Vとして設定して、事前調整モードを開始する。表面形状測定装置10は、フレームドロップ発生率FDRに基づいて、位置X毎に測定モードで使用される視野範囲P及び走査速度Vを設定するので、測定モードでの測定精度の低下を抑制できる。
【0123】
<測定モード>
次に、測定モードについて、図8を参照して説明する。測定モードでは、表面形状測定装置10は、ステージ22の位置毎に記憶された測定条件に基づいて測定し、且つフレームドロップ発生率FDRに基づいて、測定条件の変更が必要であるか否かを判定し、変更が必要であると判定した場合は、測定条件を変更しながら、測定対象物(ワーク)Wを再測定(リトライ)する。
【0124】
オペレータは、測定モードで使用される複数のワークWをステージ22の所定の位置Xに載置し、操作部21から測定モードを選択する。オペレータの選択結果が制御部116に入力され、制御部116が測定モードの処理全体を制御する。
【0125】
オペレータの操作により、測定条件設定部108は、走査速度Vのインデックスを示すパラメータkに対してk=1を設定し、位置Xのインデックスを示すパラメータmに対してm=1を設定し、測定モードでのフレームドロップ発生率閾値Thを設定する(ステップS31)。測定モードのフレームドロップ発生率閾値Thは、事前調整モードのフレームドロップ発生率閾値Thと同じであっても、異なっていてもよい。フレームドロップ発生率閾値Thがフレームドロップ発生率閾値Thより小さい場合、表面形状測定装置10はリトライのリスクを小さくできる。
【0126】
次に、ステージ駆動部制御部126がステージ駆動部24を制御し、ステージ22の位置Xに位置するワークWを、光学ヘッド12に対向する位置に移動する(ステップS32)。
【0127】
次に、測定制御部102は、測定条件設定部108により設定された位置Xに対応する測定条件(視野範囲P、走査速度Vk,m)を、例えば、記憶部100に記憶されたマップから読み出す(ステップS33)。視野範囲Pは位置Xにおける視野範囲であり、走査速度Vk,mにおける位置Xにおける走査速度である。kは走査速度Vを繰り返し変更する際のカウンタとなる。
【0128】
次に、測定制御部102は、読み出された測定条件(視野範囲P、走査速度Vk,m)に基づいて、光源部制御部120、撮影指令部122、駆動部制御部124により光学ヘッドユニットを制御する。カメラ14がワークWの観察画像36を取得し、制御装置20がエンコーダ18からの位置信号38を取得し、測定を終了する(ステップS34)。観察画像36と位置信号38とを取得する間、トリガ信号数カウント部112は、トリガ信号出力部104が出力したトリガ数をカウントする。また、カメラフレーム数カウント部114は、測定したフレーム数Nをカウントする。
【0129】
次に、フレームドロップ発生率算出部110は、トリガ信号数カウント部112が取得した「測定予定フレームM」及びカメラフレーム数カウント部114が取得した「測定したフレーム数N」に基づいて、フレームドロップ発生率FDRを算出する(ステップS35)。
【0130】
次に、測定条件設定部108は、フレームドロップ発生率FDRがフレームドロップ発生率閾値Th以下(FDR≦Th)であるかを判定する(ステップS36)。
【0131】
ステップS36で「No」の場合(FDR>Th)には、測定条件設定部108は、再測定のための測定条件の変更が必要であると判定し、測定条件設定部108は、測定条件を変更する(ステップS37)。すなわち、測定条件設定部108は、設定された測定条件では、振動が表面形状測定装置10の測定精度に影響を与えると間接的に判定する。
【0132】
測定条件の変更が必要であると判定された場合、測定条件設定部108は、フレームドロップ発生率FDRがフレームドロップ発生率閾値Thよりも小さくなるように、光学ヘッド12の走査速度Vk、mを遅くする。
【0133】
ステップS37では、測定条件設定部108は、例えば、式(9)に従って、走査速度Vk+1を計算し、走査速度Vを変更する。
【0134】
次に、測定条件設定部108は、パラメータkを1だけインクリメントする(ステップS38)。次に、処理フローはステップS34に進み、ワークWを再測定する。
【0135】
その後、測定制御部102は、フレームドロップ発生率FDR≦フレームドロップ発生率閾値Thを満たすまで、処理フローはステップS34、ステップS35、ステップS36、ステップS37、及びステップS38を繰り返す。
【0136】
次に、ステップS36で「Yes」の場合には、制御部116は、全ワークWの測定を終了したか否かを判定する(ステップS39)。
【0137】
ステップS39で「No」の場合には、制御部116は、パラメータmを1だけインクリメントし、測定条件設定部108は、パラメータkに対してk=1を設定する(ステップS40)。次に、処理フローはステップS34に進む。
【0138】
全ワークWの測定を終了するまで、処理フローはステップS32、ステップS33、ステップS34、ステップS35、ステップS36、ステップS37、ステップS38、ステップS39及びステップS40を繰り返す。
【0139】
次に、ステップS39において「Yes」の場合には、表面形状測定装置10はワークWの測定を終了する。
【0140】
表面形状測定装置10は、事前調整モードでステージ位置毎の測定条件を設定しているので、測定モードでは、光学ヘッド12とステージ22との相対的な位置関係が変化しても、振動の影響を受けにくく、測定精度の低下を抑制できる。また、表面形状測定装置10は、フレームドロップ発生率FDR>フレームドロップ発生率閾値Thとなった場合には振動が測定精度に影響があると判定し、位置X毎の初期測定条件の走査速度Vを変更して、再測定する。測定条件を変更し再測定することにより、振動による影響を排除でき、測定精度の低下を防止することができる。
【0141】
測定モードでは、表面形状測定装置10が走査速度Vを変更する例を示したが、走査速度Vに代えて、視野範囲Pを変更してもよい。また、表面形状測定装置10は視野範囲P及び走査速度Vを変更してもよい。
【0142】
また、光学ヘッド12がマイケルソン型の白色干渉顕微鏡である場合を説明したが、ミラウ型の白色干渉顕微鏡であっても、リニック型の白色干渉顕微鏡であってもよい。また光学ヘッド12はフォーカスバリエーション型の顕微鏡であってもよい。
【符号の説明】
【0143】
10…表面形状測定装置、12…光学ヘッド、14…カメラ、16…駆動部、18…エンコーダ、20…制御装置、21…操作部、22…ステージ、23…表示部、24…ステージ駆動部、25…パレット、26…光源部、28…ビームスプリッタ、30…干渉対物レンズ、30A…対物レンズ、30B…ビームスプリッタ、30C…参照面、32…結像レンズ、36…観察画像、38…位置信号、100…記憶部、102…測定制御部、104…トリガ信号出力部、106…三次元形状演算部、108…測定条件設定部、110…フレームドロップ発生率算出部、112…トリガ信号数カウント部、114…カメラフレーム数カウント部、116…制御部、120…光源部制御部、122…撮影指令部、124…駆動部制御部、126…ステージ駆動部制御部、L1…測定光、L2…参照光、L3…合波光、W…測定対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8