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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114769
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】基板処理方法及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20230810BHJP
   C23F 1/12 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
H01L21/302 104C
H01L21/302 101H
H01L21/302 101C
C23F1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017271
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】小濱 直道
【テーマコード(参考)】
4K057
5F004
【Fターム(参考)】
4K057DB08
4K057DD01
4K057DE01
4K057DE06
4K057DJ03
4K057DN01
5F004AA05
5F004AA15
5F004AA16
5F004BA04
5F004BA20
5F004BB13
5F004BB14
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB29
5F004BC03
5F004BC05
5F004BC06
5F004CA06
5F004CB15
5F004DA04
5F004DA18
5F004DA26
5F004DB08
5F004EA28
(57)【要約】
【課題】基板表面のモリブデン膜のエッチング時に生じた反応生成物を、生産性の悪化を抑制しながら除去する。
【解決手段】複数の基板を前記基板毎に順次処理する基板処理方法であって、前記基板は、モリブデン膜を表面に有し、(A)前記基板を、処理容器の内部に搬入し載置台に載置する工程と、(B)前記(A)工程の後、フッ素を含む第1の処理ガスをプラズマ化し前記モリブデン膜をエッチングする工程と、(C)前記(B)工程の後、塩素を含む第2の処理ガスをプラズマ化し前記モリブデン膜をエッチングする工程と、(D)前記(A)工程と前記(B)工程との間において、前記処理容器の内部に前記第1の処理ガスのプラズマを生成し、前記処理容器の内部をクリーニングする工程と、を有し、前記(D)工程は、予め定められた波長のプラズマ光の発光強度が変化しなくなるまで継続される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板を前記基板毎に順次処理する基板処理方法であって、
前記基板は、モリブデン膜を表面に有し、
(A)前記基板を、処理容器の内部に搬入し載置台に載置する工程と、
(B)前記(A)工程の後、フッ素を含む第1の処理ガスをプラズマ化し前記モリブデン膜をエッチングする工程と、
(C)前記(B)工程の後、塩素を含む第2の処理ガスをプラズマ化し前記モリブデン膜をエッチングする工程と、
(D)前記(A)工程と前記(B)工程との間において、前記処理容器の内部に前記第1の処理ガスのプラズマを生成し、前記処理容器の内部をクリーニングする工程と、を有し、
前記(D)工程は、予め定められた波長のプラズマ光の発光強度が変化しなくなるまで継続される、基板処理方法。
【請求項2】
前記(D)工程と前記(B)工程は連続して実施される、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記第1の処理ガスは六フッ化硫黄ガスを含み、前記第2の処理ガスは塩素ガスを含む、請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記(D)工程において、前記基板は、前記第1の処理ガスのプラズマに晒されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
複数の基板を前記基板毎に順次処理する基板処理装置であって、
表面にモリブデン膜を有する前記基板が載置される載置台と、
減圧可能に構成され、前記載置台を内部に収容する処理容器と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
(A)前記基板を、前記処理容器の内部に搬入し前記載置台に載置する工程と、
(B)前記(A)工程の後、フッ素を含む第1の処理ガスをプラズマ化し、前記基板の表面に形成された前記モリブデン膜を、エッチングする工程と、
(C)前記(B)工程の後、塩素を含む第2の処理ガスをプラズマ化し前記モリブデン膜をエッチングする工程と、
(D)前記(A)工程と前記(B)工程との間において、前記処理容器の内部に前記第1の処理ガスのプラズマを生成し、前記処理容器の内部をクリーニングする工程と、を実行し、且つ、
前記(D)工程を、予め定められた波長のプラズマ光の発光強度が変化しなくなるまで継続するよう制御する、基板処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記(D)工程と前記(B)工程を連続して実行するよう制御する、請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記第1の処理ガスは六フッ化硫黄ガスを含み、前記第2の処理ガスは塩素ガスを含む、請求項5または6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記(D)工程において、前記基板は、前記第1の処理ガスのプラズマに晒されている、請求項5~7のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示のエッチング装置のクリーニング方法は、金属膜を有する試料を1枚エッチングする毎に、ダミー基板と試料を入れ替える。この方法では、第1工程となる酸素と四フッ化炭素のプラズマ処理により炭素系物質の堆積物を除去し、第2工程となる三塩化ホウ素と塩素のプラズマ処理により第1工程で除去できなかった残留物及び金属膜の除去を行って、真空容器内のクリーニングを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-237432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、基板表面のモリブデン膜のエッチング時に生じた反応生成物を、生産性の悪化を抑制しながら除去する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、複数の基板を前記基板毎に順次処理する基板処理方法であって、前記基板は、モリブデン膜を表面に有し、(A)前記基板を、処理容器の内部に搬入し載置台に載置する工程と、(B)前記(A)工程の後、フッ素を含む第1の処理ガスをプラズマ化し前記モリブデン膜をエッチングする工程と、(C)前記(B)工程の後、塩素を含む第2の処理ガスをプラズマ化し前記モリブデン膜をエッチングする工程と、(D)前記(A)工程と前記(B)工程との間において、前記処理容器の内部に前記第1の処理ガスのプラズマを生成し、前記処理容器の内部をクリーニングする工程と、を有し、前記(D)工程は、予め定められた波長のプラズマ光の発光強度が変化しなくなるまで継続される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板表面のモリブデン膜のエッチング時に生じた反応生成物を、生産性の悪化を抑制しながら除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態にかかる基板処理装置としてのプラズマ処理装置の構成の概略を示す縦断面図である。
図2図1のプラズマ処理装置の処理対象の基板を示す断面図である。
図3図1のプラズマ処理装置による基板処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図4】基板処理中の基板の状態を示す図である。
図5】基板処理中の基板の状態を示す図である。
図6】比較例のステップS3における第1の処理ガスのプラズマによるモリブデン膜のエッチング時に発光モニタで検出された、特定のプラズマ光の発光強度の時間変化を示す図である。
図7】実施例のステップS2における第1の処理ガスのプラズマによるクリーニング及びステップS2に連続して行われるステップS3における同プラズマによるモリブデン膜のエッチング時に、発光モニタで検出された、特定のプラズマ光の発光強度の時間変化を示す図である。
図8】比較例のステップS4における第2の処理ガスのプラズマによるモリブデン膜のエッチング時に発光モニタで検出された、特定のプラズマ光の発光強度の時間変化を示す図である。
図9】実施例において図8と同様に検出された特定のプラズマ光の発光強度の時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
液晶表示装置(LCD)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)の製造に際し、ガラス基板等の基板表面に形成されたモリブデン(Mo)膜を、プラズマによりエッチングする場合がある。Mo膜のエッチングは基板処理装置の処理容器内の載置台に基板が載置された状態で行われる。
【0009】
ところで、Mo膜をエッチングすると、反応生成物が生じる。一の基板についてMo膜のエッチングが終わった後、この反応生成物が処理容器内に残った状態で、次の基板についてエッチングを行うと、基板に欠陥が生じる等、問題となる場合がある。そのため、処理容器内の反応生成物を除去するクリーニングが行われている。
【0010】
クリーニング方法としては、エッチングが終わった後、処理容器内の基板をダミー基板に入れ替えて載置台に載置し、その状態で、クリーニング用ガスのプラズマを生成し、処理容器内の反応生成物を除去する方法がある。また、ダミー基板を用いないクリーニング方法も存在する。この方法では、エッチング後の基板を処理容器から搬出した後、次の基板を搬入する前に、クリーニング用ガスのプラズマを生成し、処理容器内の反応生成物を除去する。
【0011】
しかし、ダミー基板を用いる方法では、通常の製品用の基板とダミー基板との入れ替えに要する時間等があるため、生産性が悪化する。また、ダミー基板を用いない方法では、載置台の基板載置面がプラズマに晒されるため、プラズマの強度を高くすることができないので、処理容器内の反応生成物の除去に時間を要する。したがって、ダミー基板を用いない方法も生産性の点で改善の余地がある。
【0012】
そこで、本開示にかかる技術は、基板表面のモリブデン膜のエッチング時に生じた反応生成物を、生産性の悪化を抑制しながら除去する。
【0013】
以下、本実施形態にかかる基板処理方法及び基板処理装置について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
<プラズマ処理装置1>
図1は、本実施形態にかかる基板処理装置としてのプラズマ処理装置の構成の概略を示す縦断面図である。図2は、図1のプラズマ処理装置の処理対象の基板を示す断面図である。
【0015】
図1のプラズマ処理装置1は、複数の基板を基板毎に順次処理する枚葉式の装置である。プラズマ処理装置1の処理対象の基板は、平面視矩形のガラス基板G(以下、「基板G」という。)である。基板Gの表面には図2に示すようにモリブデン(Mo)膜F1が形成されている。
プラズマ処理装置1は、処理ガスのプラズマにより基板Gを処理して、Mo膜F1をエッチングする。
【0016】
本実施形態において、Mo膜F1は、ゲート絶縁(GI)膜F2上に形成されており、ゲート電極として機能するようプラズマ処理装置1にエッチングされる。GI膜F2は例えばシリコン系絶縁膜である。Mo膜F1上にはエッチングマスクとしてのフォトレジスト(PR)膜F3が形成されている。
また、Mo膜F1の厚さは例えば200nm~300nmである。
【0017】
プラズマ処理装置1は、図1に示すように、有底の角筒形状の容器本体10を備える。容器本体10は、導電性材料、例えばアルミニウムから形成され、電気的に接地されている。また、容器本体10の上面には開口が形成されている。この開口は、容器本体10と絶縁されて設けられた矩形状の金属窓20によって気密に塞がれ、具体的には、金属窓20及び後述の金属枠14によって気密に塞がれる。容器本体10及び金属窓20によって囲まれた空間は、プラズマ処理の処理対象の基板Gがプラズマ処理時に位置する処理空間K1となり、金属窓20の上方側の空間は、後述の高周波アンテナ(プラズマアンテナ)80が配置されるアンテナ室K2となる。容器本体10の側壁には、処理空間K1内に基板Gを搬入出するための搬入出口11及び搬入出口11を開閉するゲートバルブ12が設けられている。
【0018】
処理空間K1の下部側には、金属窓20と対向するように、載置台30が設けられている。載置台30は、その上面が、基板Gが載置される基板載置面となる台本体31を有し、台本体31が脚部32を介して容器本体10の底面に設置されている。
【0019】
台本体31は、導電性材料、例えばアルミニウムで構成された基部31aと、基板Gを静電吸着により保持する静電チャック31bが設けられている。
基部31aには、整合器40を介して高周波電源41が接続されている。高周波電源41は、バイアス用の高周波電力、例えば周波数が3.2MHzの高周波電力を基部31aに供給する。これにより、処理空間K1内に生成されたプラズマ中のイオンを基板Gに引き込むことができる。
【0020】
容器本体10の底壁には、排気口13が形成され、この排気口13には不図示の圧力制御バルブや真空ポンプ等を有する排気部50が接続されている。処理空間K1は、この排気部50によって減圧され、クリーニング処理やエッチング処理などの間、所定の圧力に維持されうる。排気部50は、複数の排気口13のそれぞれに設けられてもよいし、複数の排気口13に共通に設けられてもよい。
【0021】
容器本体10の側壁の上面側には、アルミニウム等の金属材料から形成された矩形状の枠体である金属枠14が設けられている。容器本体10と金属枠14と金属窓20とが、減圧可能に構成され載置台30を収容する処理容器Cを構成する。
【0022】
金属窓20は、例えば平面視矩形状に形成されている。また、金属窓20は、処理空間K1に処理ガスを供給するシャワーヘッドとして機能する。例えば、金属窓20には、処理ガスを下方に吐出する多数のガス吐出孔21と、処理ガスを拡散させる拡散室22が形成されており、ガス吐出孔21と拡散室22とが連通している。
【0023】
拡散室22は、ガス供給管60を介してガス供給源61に接続されている。ガス供給管60には、ガス供給機構62が接続されている。ガス供給機構62は、流量調整弁(図示せず)や開閉弁(図示せず)等を備え、ガス供給源61からの処理ガス等を拡散室22に供給する。
なお、金属窓20は、絶縁部材23によって金属枠14から電気的に絶縁されている。
【0024】
さらに、金属窓20の上方側には天板部70が配置されている。天板部70は、金属枠14上に設けられた側壁部71によって支持されている。
【0025】
上述の金属窓20、側壁部71及び天板部70にて囲まれた空間はアンテナ室K2を構成し、アンテナ室K2の内部には、金属窓20に面するように高周波アンテナ80が配置されている。
【0026】
高周波アンテナ80は、例えば、絶縁材料から形成されるスペーサ(図示せず)を介して金属窓20から離間して配置される。
高周波アンテナ80には、整合器42を介して、プラズマ生成手段としての高周波電源43が接続されている。高周波アンテナ80には、高周波電源43から整合器42を介して、例えば13.56MHzの高周波電力が供給される。これにより、金属窓20を介して、処理空間K1の内部に誘導電界が形成され、ガス吐出孔21から吐出された処理ガスが誘導電界によってプラズマ化される。
【0027】
さらに、プラズマ処理装置1では、容器本体10の側壁に窓15が設けられている。また、プラズマ処理装置1には、処理容器Cの内部のプラズマ光が窓15を介して検出器としての発光モニタ90に入射するよう、当該発光モニタ90が接続されている。発光モニタ90は、プラズマ光の特定の波長の光について、発光強度を検出する。発光モニタ90による検出結果は後述の制御部Uに出力される。
【0028】
さらに、プラズマ処理装置1には制御部Uが設けられている。制御部Uは、例えばCPU等のプロセッサやメモリ等を備えたコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、プラズマ処理装置1による後述の基板処理を制御するプログラムが格納されている。上述のプログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、当該記憶媒体から制御部Uにインストールされたものであってもよい。また、上記記憶媒体は一時的なものであっても非一時的なものであってもよい。プログラムの一部または全ては専用ハードウェア(回路基板)で実現してもよい。
なお、制御部Uは、基板Gを搬送し処理容器C内に搬入出する搬送機構100も制御する。
【0029】
<基板処理>
次に、プラズマ処理装置1による基板処理について説明する。図3は、プラズマ処理装置1による基板処理の一例を説明するためのフローチャートである。図4及び図5は、基板処理中の基板Gの状態を示す図である。
【0030】
(ステップS1)
まず、図3に示すように、制御部Uの制御の下、基板Gが、処理容器Cの内部に搬入され、載置台30に載置される。
具体的には、制御部Uが、容器本体10の側壁の搬入出口11が開状態となるよう、ゲートバルブ12を制御する。また、基板Gが、処理容器Cに隣接する真空雰囲気の搬送室(図示せず)から搬入出口11を介して処理空間K1内に搬送され、載置台30の上面すなわち基板載置面に載置されるよう、制御部Uが搬送機構100等を制御する。なお、図1においては、説明上の都合により搬送機構100が上述の搬送室から離れて図示されているが、実際の装置においては搬送機構100は処理容器Cに隣接する搬送室の内部に配置され、搬送室と処理容器Cとの間で基板Gを搬送可能なように構成されている。
その後、制御部Uが、搬入出口11が閉状態となるよう、ゲートバルブ12を制御する。そして、制御部Uが、処理空間K1内が排気され所定の圧力になるよう、排気部50を制御する。
【0031】
(ステップS2)
続いて、制御部Uの制御の下、後述のステップS3におけるフッ素を含む第1の処理ガスのプラズマによるMo膜F1のエッチングの前に、処理容器Cの内部に同じ第1の処理ガスのプラズマが生成され、処理容器Cの内部がクリーニングされる。
具体的には、六フッ化硫黄(SF)ガスと酸素(O)ガスとの混合ガスが第1の処理ガスとして金属窓20を介して処理空間K1に供給されるよう、制御部Uがガス供給機構62等を制御する。また、SFガス及びOガスがプラズマ化されるよう、制御部Uが高周波電源43等を制御する。これにより、処理容器Cの内部が、SFガス及びOガスのプラズマでクリーニングされる。
【0032】
このクリーニング中、プラズマの発光強度は発光モニタ90により検出されており、検出結果は制御部Uに出力されている。
そして、このクリーニングは、予め定められた波長のプラズマ光の発光強度が変化しなくなるまで継続される。
具体的には、以下の通りである。
【0033】
すなわち、クリーニング中、フッ素の輝線スペクトルの波長のプラズマ光の発光強度は、一度ピークを迎えた後、クリーニングの進行すなわち処理容器C内の異物の減少に伴い徐々に低下し、処理容器C内の異物が無くなる付近では一定となる(後述の図7参照)。そのため、クリーニング中、発光モニタ90が、フッ素の輝線スペクトルの波長のプラズマ光を受光し、その強度を測定し、測定結果を出力するよう、制御部Uが発光モニタ90を制御する。そして、制御部Uが、フッ素の輝線スペクトルにかかる発光強度の単位時間当たりの低下量が閾値を超えていた状態から閾値以下となった否か判定し、閾値以下の判定が得られるまで、クリーニングが行われるよう制御する。
【0034】
(ステップS3)
次いで、制御部Uの制御の下、フッ素を含む第1の処理ガスがプラズマ化されMo膜F1がエッチングされる。
具体的には、ステップS2と同様、SFガスとOガスとの混合ガスが第1の処理ガスとして金属窓20を介して処理空間K1に供給され且つSFガス及びOガスがプラズマ化されるよう、制御部Uがガス供給機構62、高周波電源43等を制御する。これにより、基板G上のMo膜F1がエッチングされる。具体的には、図4に示すように、基板G上のMo膜F1におけるPR膜F3にマスクされていない部分(以下、非マスク部分)がエッチングされる。
【0035】
ステップS3の、フッ素を含む第1の処理ガスのプラズマ(具体的にはSFガス及びOガスのプラズマ)を用いたMo膜F1のエッチングは、エッチング速度及びPR膜に対する選択比が高いがGI膜F2に対する選択比が低い。そのため、ステップS3のエッチングはGI膜F2が露出しないように行われる。具体的には、ステップS3のエッチングは、Mo膜F1における非マスク部分の厚さが30~50nmになるまで行われる。
【0036】
また、ステップS3のエッチングはステップS2のクリーニングから連続して行われる。すなわち、ステップS3のエッチングとステップS2のクリーニングとの間で、プラズマ生成用の高周波電力の供給の停止等は行われない。
【0037】
ステップS3のエッチングの時間は、例えば、ステップS2のクリーニングの終了時点(すなわちフッ素の輝線スペクトルにかかる発光強度の単位時間当たりの変化量が閾値以下となった時点)を基準に設定される。つまり、ステップS3のエッチングは、例えば、ステップS2のクリーニングの終了時点(すなわち予め定められた波長のプラズマ光の発光強度が変化しなくなった時点)から所定の時間が経過するまで継続される。そして、上記所定の時間は、ステップS3のエッチングにより上述のようにGI膜F2が露出しないよう設定され、例えば数十秒である。
なお、ステップS3のエッチングとステップS2のクリーニングとで、フッ素を含む第1の処理ガス(具体的にはSFガスとOガス)の流量や処理容器C内の圧力、高周波電源43により供給される高周波電力などの処理条件は、基本的には同じであり、プラズマからの発光により特定されるクリーニングの終了時点よりも前をステップS2、それ以降をステップS3として判別する。ただし、必要に応じてステップS3とステップS2の処理条件を変えてもよい。
【0038】
ステップS3におけるエッチングが終了すると、SFガス及びOガスのプラズマ生成用の高周波電力の供給が停止され、SFガス及びOガスの供給が停止され、処理容器C内のSFガス及びOガスの排出が行われるよう、制御部Uがガス供給機構62、高周波電源43、排気部50等を制御する。
【0039】
なお、ステップS2においてもMo膜F1のエッチングが多少進み、ステップS3においても処理容器C内のクリーニングが多少進む。そのため、ステップS2、ステップS3の2つのステップは、以下の1つのステップと捉えることができる。すなわち、フッ素を含む第1の処理ガスのプラズマ(具体的にはSFガス及びOガスのプラズマ)を用いたMo膜F1のエッチング及び処理容器C内のクリーニングが、予め定められた波長のプラズマ光の発光強度が変化しなくなるまで継続される、1つのステップと捉えることができる。
【0040】
(ステップS4)
続いて、制御部Uの制御の下、塩素を含む第2の処理ガスがプラズマ化されMo膜F1がさらにエッチングされる。
具体的には、塩素(Cl)ガスとOガスとの混合ガスが第2の処理ガスとして金属窓20を介して処理空間K1に供給されるよう、制御部Uがガス供給機構62等を制御する。また、Clガス及びOガスがプラズマ化されるよう、制御部Uが高周波電源43等を制御する。これにより、基板G上のMo膜F1がエッチングされる。具体的には、図5に示すように、Mo膜F1におけるステップS3で薄くされた部分が除去されるよう、すなわち、非マスク部分においてGI膜F2が露出するよう、エッチングが行われる。
【0041】
ステップS4の、塩素を含む第2の処理ガスのプラズマ(具体的にはClガス及びOガスのプラズマ)を用いたMo膜F1のエッチングは、エッチング速度は低いが、GI膜F2に対する選択比が高い。そのため、GI膜F2の非マスク部分を、その厚さを変えずにMo膜F1から露出させることができる。
【0042】
ステップS4のエッチング中、プラズマの発光強度は発光モニタ90により検出されており、検出結果は制御部Uに出力されている。
そして、ステップS4のエッチングは、予め定められた波長のプラズマ光の発光強度が変化しなくなるまで継続される。
具体的には、以下の通りである。
【0043】
すなわち、Clガス及びOガスのプラズマを用いたMo膜F1のエッチングが進むと、酸素の輝線スペクトルの波長のプラズマ光の発光強度は、徐々に強くなり、GI膜F2の所望の部分全体が露出する付近では一定となる(後述の図9参照)。そのため、エッチング中、発光モニタ90が、酸素の輝線スペクトルの波長のプラズマ光を受光し、その強度を測定し、測定結果を出力するよう、制御部Uが発光モニタ90を制御する。そして、制御部Uが、酸素の輝線スペクトルにかかる発光強度の単位時間当たりの上昇量が閾値を超えていた状態から閾値以下となったか否か判定し、閾値以下の判定が得られるまで、エッチングが行われるよう制御する。
【0044】
ステップS4におけるエッチングが終了すると、Clガス及びOガスのプラズマ生成用の高周波電力の供給が停止され、Clガス及びOガスの供給が停止され、処理容器C内のClガス及びOガスの排出が行われるよう、制御部Uがガス供給機構62、高周波電源43、排気部50等を制御する。
【0045】
(ステップS5)
そして、制御部Uの制御の下、基板Gが、処理容器Cから搬出される。
具体的には、制御部Uが、容器本体10の側壁の搬入出口11が開状態となるよう、ゲートバルブ12を制御する。また、載置台30上に載置されていた基板Gが、搬入出口11を介して処理容器Cから搬出されるよう、制御部Uが搬送機構100等を制御する。その後、制御部Uが、搬入出口11が閉状態となるよう、ゲートバルブ12を制御する。
【0046】
これにより一連の基板処理が終了し、次の基板Gについて、ステップS1~S5が順に行われる。言い換えると、本実施形態では、プラズマ処理装置1で複数の基板Gを連続処理する場合、基板G毎にステップS1~S5を順に行う。
【0047】
<作用効果>
本実施形態において、ステップS4のエッチングでは、前述のように、塩素を含む第2の処理ガスのプラズマ(具体的にはClガス及びOガスのプラズマ)を用いている。このプラズマによるMo膜F1のエッチングは、GI膜F2に対する選択比が高いが、塩化モリブデン(MoCl)という蒸気圧の低い反応生成物が生成される。この反応生成物は、蒸気圧が低い故に、処理容器Cの内壁に付着しやすい。付着を防止するために、処理容器Cの内壁面が高温になるように構成しても、処理容器C内の圧力等によっては付着を完全に防ぐことはできない。
【0048】
本実施形態では、上述のように処理容器Cの内部の反応生成物の除去すなわちクリーニングを行っているが、このクリーニングのためにダミー基板を用いていない。したがって、ダミー基板と製品用の基板と入れ替えが不要であるため、生産性の悪化を抑制しながら上記反応生成物を除去することができる。
【0049】
また、本実施形態では、載置台30の基板載置面に基板Gが載置された状態でクリーニングが行われ、載置台30の基板載置面がプラズマに晒されないため、載置台30の基板載置面がプラズマに晒される場合と異なり、プラズマの強度を高くすることができる。この観点からも、本実施形態によれば、生産性の悪化を抑制しながら上記反応生成物を除去することができる。
【0050】
さらに、本実施形態では、ステップS2のクリーニングに連続してステップS3のエッチングを行っている。したがって、ステップS2のクリーニングとステップS3のエッチングの間に他のステップを挟む形態に比べて、本実施形態は基板処理に要する時間が短いため、高い生産性で上記反応生成物を除去しながら、Mo膜F1をエッチングすることができる。
【0051】
さらにまた、本実施形態では、上述のように基板G毎にステップS1~ステップS5を順で行っている。具体的には、本実施形態では、基板G毎に、ステップS3のMo膜F1のエッチングの前に、ステップS2において処理容器Cの内部の反応生成物の除去すなわちクリーニングを行う。そのため、基板Gの処理を重ねたときに、ステップS4で生成された反応生成物が処理容器Cの内部に蓄積されるのを抑制することができる。
また、本実施形態では、ステップS2の処理容器Cの内部のクリーニングを、予め定められた波長のプラズマ光の発光強度が変化しなくなるまで継続している。そのため、上記クリーニングにより、処理容器Cの内部の反応生成物の量を十分少なくすることができ、反応生成物が基板Gに悪影響を及ぼすのをさらに抑制することができる。
【0052】
ここで、本実施形態と異なり、ステップS2の処理容器C内のクリーニングを省略し、ステップS3のMo膜F1のエッチングを所定の時間を行った後、ステップS4のMo膜F1のエッチングを行う方法(以下、比較の方法)について説明する。この比較の方法で基板Gを連続して処理すると、処理容器Cの内部に反応生成物が蓄積していく。反応生成物が蓄積していくと、ステップS3において、第1の処理ガスのプラズマがMo膜F1のエッチングではなく反応生成物との反応で利用される割合が増えていく。そうすると、比較の方法では、基板の処理枚数を重ねる毎に、ステップS3のエッチング後におけるMo膜F1の非マスク部分が厚くなっていってしまう。
【0053】
ステップS3のエッチング後におけるMo膜F1の非マスク部分は所望の厚さでなければならない。その理由は以下の通りである。
すなわち、ステップS3に続いて行われる、塩素を含む第2の処理ガスのプラズマを用いたステップS4のMo膜F1のエッチングが、PR膜F3に対する選択比が低い。そのため、Mo膜F1の非マスク部分が厚くエッチングし切るのに時間を要すると、マスクが過度に消耗してマスクの線幅が細くなり、これにより、ステップS4のエッチング後のMo膜F1の線幅が細くなってしまうから、である。
したがって、比較の方法では、基板の処理枚数を重ねる毎に、ステップS4のエッチング後のMo膜F1の線幅が細くなっていってしまう。
【0054】
それに対し、本実施形態では、ステップS2の処理容器Cの内部のクリーニングを、予め定められた波長のプラズマ光の発光強度が変化しなくなるまで継続し、処理容器Cの内部の反応生成物の量を十分少なくすることを基板G毎に行う。そして、本実施形態では、ステップS3のMo膜F1のエッチングを、ステップS2のクリーニングの終了時点(すなわち予め定められた波長のプラズマ光の発光強度が変化しなくなった時点)から所定の時間が経過するまで行う。そのため、本実施形態では、ステップS3のエッチング後におけるMo膜F1の非マスク部分は所望の厚さで一定となる。したがって、本実施形態によれば、基板Gの処理を重ねたときに、各基板Gについて、ステップS4のエッチング後のMo膜F1を、所望の形状(具体的には所望の線幅)にすることができる。
【実施例0055】
比較例では、前述の比較の方法で複数枚の基板Gを連続して処理した。
一方、実施例では本実施形態にかかる方法で5枚の基板Gを連続して処理した。
比較例及び実施例では、第1の処理ガスとしてSFガス及びOガスを用いて、第2の処理ガスとしてClガス及びOガスを用いた。
また、比較例において、ステップS3のMo膜F1のエッチングは約40秒行われた。一方、実施例では、ステップS3のMo膜のエッチングは、フッ素の輝線スペクトルの波長(704nm)にかかるプラズマ光の発光強度の単位時間当たりの変化量が前述のように閾値以下となった時点から約40秒経過するまで行われた。
【0056】
図6は、比較例のステップS3におけるSFガス及びOガスのプラズマによるMo膜F1のエッチング時に発光モニタ90で検出された、特定のプラズマ光の発光強度の時間変化を示す図である。図7は、実施例のステップS2におけるSFガス及びOガスのプラズマによるクリーニング及びステップS2に連続して行われるステップS3における同プラズマによるMo膜F1のエッチング時に、発光モニタ90で検出された、特定のプラズマ光の発光強度の時間変化を示す図である。図6において、横軸は、ステップS3の開始すなわちSFガス及びOガスのプラズマ生成開始からの経過時間を示し、図7において、横軸は、ステップS2の開始すなわちSFガス及びOガスのプラズマ生成開始からの経過時間を示している。また、図6及び図7において、縦軸はフッ素の輝線スペクトルの波長(704nm)にかかるプラズマ光の発光強度を示している。
【0057】
図6に示すように、比較例では、基板Gの処理を重ねる毎に、フッ素の輝線スペクトルの波長(704nm)にかかるプラズマ光の発光強度のピークが遅れて発生するようになっていた。これは、基板Gの処理を重ねる毎に、処理容器C内に反応生成物が蓄積されていることを示している。
【0058】
一方、図7に示すように、実施例では、基板Gの処理を重ねても、フッ素の輝線スペクトルの波長(704nm)にかかるプラズマ光の発光強度のピークの位置が変わらなかった。これは、処理容器C内への反応生成物の蓄積を抑制できていることを示している。
【0059】
図8は、比較例のステップS4におけるClガス及びOガスのプラズマによるMo膜F1のエッチング時に発光モニタ90で検出された、特定のプラズマ光の発光強度の時間変化を示す図である。図9は、実施例において図8と同様に検出された特定のプラズマ光の発光強度の時間変化を示す図である。図8及び図9において、横軸は、ステップS4の開始すなわちClガス及びOガスのプラズマ生成開始からの経過時間を示し、縦軸は酸素の輝線スペクトルの波長(777nm)にかかるプラズマ光の発光強度を示している。
【0060】
図8に示すように、比較例では、基板Gの処理を重ねる毎に、酸素の輝線スペクトルの波長(777nm)にかかるプラズマ光の発光強度の単位時間当たりの上昇量が前述のように閾値以下となるタイミング(二点鎖線参照)が遅れるようになっていた。具体的には、4枚目の基板Gでは、1枚目の基板Gに比べて、上記タイミングが約14秒遅れていた。これは、基板Gの処理を重ねる毎に、Mo膜F1の非マスク部分をステップS4でエッチングし切るのに要する時間が長くなっていることを示している。Mo膜F1の非マスク部分をエッチングし切るのに要する時間が長くなれば、ステップS4のエッチング後におけるMo膜F1のマスク部分の線幅が細くなってしまう。
【0061】
一方、図9に示すように、実施例では、基板Gの処理を重ねても、上記タイミング(二点鎖線参照)がほとんど変わらなかった。具体的には、2枚目の基板Gでは、1枚目の基板Gに比べて、上記タイミングが約4秒遅れているが、3枚目以降の基板Gは2枚目の基板Gと上記タイミングがほとんど変わらなかった。これは、基板Gの処理を重ねても、Mo膜F1の非マスク部分をステップS4でエッチングし切るのに要する時間がほとんど変わらないことを示している。したがって、実施例では、各基板Gについて、ステップS4のエッチング後におけるMo膜F1のマスク部分を、所望の線幅とすることができる。
【0062】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0063】
例えば、以上では、本実施形態にかかるプラズマ処理装置について、金属窓を有する誘導結合プラズマ装置として説明したが、金属窓の代わりに誘電体窓を有する誘導結合プラズマ装置であってもよい。この場合、処理ガスは、側壁から供給されてもよく、或いは、誘電体窓を下側から支持する梁をシャワーヘッドとして構成し、梁から供給するようにしてもよい。また、本開示にかかる技術は、誘導結合プラズマ装置に限らず、容量結合プラズマ装置や、マイクロ波プラズマ装置など、他の方式のプラズマ装置においても適用しうる。
【符号の説明】
【0064】
1 プラズマ処理装置
30 載置台
C 処理容器
F1 モリブデン膜
G ガラス基板
U 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9