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特開2023-114863無線通信方法、無線通信システム、及び無線端末
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114863
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】無線通信方法、無線通信システム、及び無線端末
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/16 20090101AFI20230810BHJP
   H04W 74/08 20090101ALI20230810BHJP
   H04W 84/06 20090101ALI20230810BHJP
   H04B 7/15 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
H04W28/16
H04W74/08
H04W84/06
H04B7/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017419
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 宗大
(72)【発明者】
【氏名】山下 史洋
(72)【発明者】
【氏名】糸川 喜代彦
(72)【発明者】
【氏名】五藤 大介
(72)【発明者】
【氏名】岡田 啓
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 完介
【テーマコード(参考)】
5K067
5K072
【Fターム(参考)】
5K067AA13
5K067BB27
5K067DD11
5K067EE02
5K067EE07
5K067JJ12
5K072AA12
5K072AA15
5K072AA29
5K072BB02
5K072BB13
5K072BB22
5K072BB25
5K072CC25
5K072DD03
5K072DD11
5K072DD16
5K072EE02
(57)【要約】
【課題】1つの無線通信装置に接続する無線端末の数が増加しても、システム全体の通信容量低下を軽減する。
【解決手段】複数の無線端末が複数の無線チャネルからランダムに選択したタイムスロットによりパケットを送信する無線通信方法において、複数の無線チャネルそれぞれに対する送信トラヒック量の制限値及び利用ウエイトの少なくともいずれかを算出する算出工程と、算出した結果を示すデータを無線端末それぞれに対して送信する送信工程と、送信されたデータを無線端末それぞれが受信する受信工程と、無線端末それぞれが受信したデータに基づいて、使用する無線チャネルの選択、及び送信トラヒック量の少なくともいずれかを制御する制御工程とを含むことを特徴とする。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線端末が複数の無線チャネルからランダムに選択したタイムスロットによりパケットを送信する無線通信方法において、
複数の無線チャネルそれぞれに対する送信トラヒック量の制限値及び利用ウエイトの少なくともいずれかを算出する算出工程と、
算出した結果を示すデータを前記無線端末それぞれに対して送信する送信工程と、
送信されたデータを前記無線端末それぞれが受信する受信工程と、
前記無線端末それぞれが受信したデータに基づいて、使用する無線チャネルの選択、及び送信トラヒック量の少なくともいずれかを制御する制御工程と
を含むことを特徴とする無線通信方法。
【請求項2】
前記無線端末それぞれが利用可能な無線チャネルを示す情報を取得するチャネル情報取得工程をさらに含み、
前記算出工程では、
前記チャネル情報取得工程で取得した情報に基づいて、複数の無線チャネルそれぞれに対する送信トラヒック量の制限値及び利用ウエイトの少なくともいずれかを算出すること
を特徴とする請求項1に記載の無線通信方法。
【請求項3】
複数の無線チャネルそれぞれのトラヒック量を推定するトラヒック量推定工程をさらに含み、
前記算出工程では、
前記トラヒック量推定工程で推定したトラフィック量に基づいて、複数の無線チャネルそれぞれに対する送信トラヒック量の制限値及び利用ウエイトの少なくともいずれかを算出すること
を特徴とする請求項1又は2に記載の無線通信方法。
【請求項4】
複数の無線チャネルそれぞれの利用率を測定するチャネル利用率測定工程をさらに含み、
前記トラヒック量推定工程では、
前記チャネル利用率測定工程で推定した利用率に基づいて、複数の無線チャネルそれぞれのトラヒック量を推定すること
を特徴とする請求項3に記載の無線通信方法。
【請求項5】
複数の無線チャネルそれぞれのスループットを測定するスループット測定工程をさらに含み、
前記トラヒック量推定工程では、
前記スループット測定工程で測定したスループットに基づいて、複数の無線チャネルそれぞれのトラヒック量を推定すること
を特徴とする請求項4に記載の無線通信方法。
【請求項6】
複数の無線端末が複数の無線チャネルからランダムに選択したタイムスロットによりパケットを送信する無線通信システムにおいて、
複数の無線チャネルそれぞれに対する送信トラヒック量の制限値及び利用ウエイトの少なくともいずれかを算出する算出部と、
前記算出部が算出した結果を示すデータを前記無線端末それぞれに対して送信する送信部と
を備え、
前記無線端末それぞれは、
前記送信部が送信したデータを受信する受信部と、
前記受信部が受信したデータに基づいて、使用する無線チャネルの選択、及び送信トラヒック量の少なくともいずれかを制御する制御部と
を有することを特徴とする無線通信システム。
【請求項7】
前記無線端末それぞれは、
利用可能な無線チャネルを示す情報を取得するチャネル情報取得部をさらに有し、
前記算出部は、
前記チャネル情報取得部が取得した情報に基づいて、複数の無線チャネルそれぞれに対する送信トラヒック量の制限値及び利用ウエイトの少なくともいずれかを算出すること
を特徴とする請求項6に記載の無線通信システム。
【請求項8】
複数の無線チャネルからランダムに選択したタイムスロットによりパケットを送信する無線端末において、
複数の無線チャネルそれぞれに対する送信トラヒック量の制限値及び利用ウエイトの少なくともいずれかを算出した結果を示すデータを受信する受信部と、
前記受信部が受信したデータに基づいて、使用する無線チャネルの選択、及び送信トラヒック量の少なくともいずれかを制御する制御部と
を有することを特徴とする無線端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信方法、無線通信システム、及び無線端末に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モノとの通信を行うIoTサービスが発展している。IoT端末(無線端末)は、無線通信装置を搭載することにより、無線通信を用いてインターネットに接続することができ、遠隔監視やテレメタリングなど様々なサービスが期待されている。
【0003】
無線通信規格には、例えば無線LAN(IEEE 802.11ah)や、LTEなどの既存モバイル通信システムの他、低消費電力が特徴であるLPWAなどがある。LPWAには、アンライセンスバンドを使う規格として、SigfoxやLoRaWAN、ELTRESなどが策定されている。また、ライセンスバンドを使う規格としてLTE-MやNB-IoTがある。
【0004】
また、無線通信装置として低軌道衛星を使った衛星通信サービスが注目されている。衛星通信サービスでは、複数の通信衛星が高度数百km~2000kmの軌道に投入され、地上の無線端末は、これら通信衛星に接続することにより、高速な通信を行うことができる。
【0005】
例えば、Oneweb社やSpaceX社は、多数の通信衛星を打ち上げて通信サービスを開始している。また、これらを組み合わせて低軌道衛星を用いるIoTサービスが検討されている。
【0006】
例えば、IoT端末は、低軌道衛星に接続し、低軌道衛星を介してインターネットに接続する。そして、低軌道衛星を用いるIoTサービスは、地上ネットワークが整備されていない山間部などの僻地の他や、地上ネットワークの電波が届かない海上や空中エリアにおいて、IoTサービスを提供するシステムとして有望である。例えば、Globalstar社は、低軌道衛星を用いて衛星IoTサービスを提供している。
【0007】
低軌道衛星を用いるIoT端末は、例えば複数の無線チャネルを使って低軌道衛星にパケットを送信する。また、複数のIoT端末が無線チャネルを使ってパケットを送信するために、TDMAやFDMAなどのアクセス方式が用いられる。
【0008】
TDMAやFDMAのアクセス方式を用いる場合、例えばシステム側の制御装置が制御を行い、各IoT端末に対してパケットを送信するための時間や周波数などのリソースを割り当てる。また、IoT端末が自律的に制御を行うアクセス方式として、Slotted ALOHA方式がある。さらに、非特許文献1には、ALOHAシステムの特性を改善する方法として、送信トラヒックの制御を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000-299692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述したALOHAシステムの特性を改善する方法などでは、衛星に接続する無線端末が多くなると、システム全体としての通信容量が低下してしまうことがある。
【0011】
本発明は、1つの無線通信装置に接続する無線端末の数が増加しても、システム全体の通信容量低下を軽減することができる無線通信方法、無線通信システム、及び無線端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様にかかる無線通信方法は、複数の無線端末が複数の無線チャネルからランダムに選択したタイムスロットによりパケットを送信する無線通信方法において、複数の無線チャネルそれぞれに対する送信トラヒック量の制限値及び利用ウエイトの少なくともいずれかを算出する算出工程と、算出した結果を示すデータを前記無線端末それぞれに対して送信する送信工程と、送信されたデータを前記無線端末それぞれが受信する受信工程と、前記無線端末それぞれが受信したデータに基づいて、使用する無線チャネルの選択、及び送信トラヒック量の少なくともいずれかを制御する制御工程とを含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一態様にかかる無線通信システムは、複数の無線端末が複数の無線チャネルからランダムに選択したタイムスロットによりパケットを送信する無線通信システムにおいて、複数の無線チャネルそれぞれに対する送信トラヒック量の制限値及び利用ウエイトの少なくともいずれかを算出する算出部と、前記算出部が算出した結果を示すデータを前記無線端末それぞれに対して送信する送信部とを備え、前記無線端末それぞれは、前記送信部が送信したデータを受信する受信部と、前記受信部が受信したデータに基づいて、使用する無線チャネルの選択、及び送信トラヒック量の少なくともいずれかを制御する制御部とを有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一態様にかかる無線端末は、複数の無線チャネルからランダムに選択したタイムスロットによりパケットを送信する無線端末において、複数の無線チャネルそれぞれに対する送信トラヒック量の制限値及び利用ウエイトの少なくともいずれかを算出した結果を示すデータを受信する受信部と、前記受信部が受信したデータに基づいて、使用する無線チャネルの選択、及び送信トラヒック量の少なくともいずれかを制御する制御部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、1つの無線通信装置に接続する無線端末の数が増加しても、システム全体の通信容量低下を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】無線通信システムの第1構成例を示す図である。
図2】Slotted ALOHAによる通信を概念的に示す図である。
図3】無線端末のスループット特性を示す図である。
図4】無線通信システムの第2構成例を示す図である。
図5】無線端末が有する機能を例示する機能ブロック図である。
図6】衛星が有する機能を例示する機能ブロック図である。
図7】制御装置が有する機能を例示する機能ブロック図である。
図8】無線通信システムの第1動作例を示すフローチャートである。
図9】無線通信システムにおける複数の無線端末の配置を例示する図である。
図10】各無線端末の利用可能チャネルを例示する図である。
図11】無線チャネルを選択する選択率を例示する図である。
図12】無線通信システムの第2動作例を示すフローチャートである。
図13】無線通信システムに対するシミュレーションによるスループット特性を示すグラフである。
図14図13に示したシミュレーションにおけるシミュレーションパラメータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を用いて無線通信システムの構成について説明する。図1は、無線通信システムの第1構成例を示す図である。図1に示すように、無線通信システムの第1構成例(無線通信システム1)は、例えば2台の無線端末2-1~2-n、衛星3、地上基地局10、及びサーバ12を備え、地上基地局10とサーバ12とがネットワーク100を介して接続されている。なお、無線端末2-1~2-nのように複数ある構成のいずれかを特定しない場合には、単に無線端末2などと略記する。
【0018】
無線端末2は、地上に位置して衛星3と無線通信を行う衛星IoT端末であり、衛星に対してIoTデータを格納したパケットを送信する。このパケットは、衛星3及び地上基地局10を介してサーバ12へ送信される。
【0019】
サーバ12は、IoTアプリケーションサーバであり、各種のIoTサービスに必要なデータ加工、解析、及びデータクレンジングなどの処理を行う。
【0020】
無線端末2それぞれは、複数の無線チャネルのいずれかを用いて衛星3へパケットを送信する。このとき、サーバ12が無線端末2それぞれに対してパケットを送信するための時間や周波数などのリソースを割り当てる集中的なアクセス制御の他に、無線端末2が自律的に制御を行うアクセス方式として、Slotted ALOHA方式がある。
【0021】
図2は、Slotted ALOHAによる通信を概念的に示す図である。複数の無線チャネルは、複数の時間スロットによって区切られている。無線端末2は、ランダムにスロットを選択し、選択したスロットによってパケットを送信する。
【0022】
図2に示した例では、無線端末2-1がt0~t1の間にch2のスロット、無線端末2-2がt1~t2の間にch1のスロット、無線端末2-3がt2~t3の間にch3のスロットを選択し、パケットを送信する。このように、Slotted ALOHA方式は、サーバ12による制御が不要であるため、IoTサービスのように非常に多くの無線端末2が接続し、無線端末当たりの送信トラヒックが少ない無線通信システム1などに適している。
【0023】
しかしながら、低軌道衛星などを使ったIoTサービスでは、衛星3が地表においてカバーするエリアが広大であるために、多数の無線端末2が衛星に接続する。無線端末2の数が多くなると、複数の無線端末2の間の干渉によって通信に障害が発生し、無線通信システム1の通信容量が低下することがある。
【0024】
Slotted ALOHA方式では、接続する無線端末2の数が増加すると、通信容量も増加するが、無線端末2の数が所定数に達すると通信容量が急激に低下することがある。これは、複数の無線端末2が同一のスロットを選択してパケットを送信する確率が上がり、干渉によってパケットの受信ができなくなるためである。無線通信システム1全体の通信容量が低下すると、IoTサービスに支障をきたすこととなる。
【0025】
各スロットあたりのパケット数kの分布をポアソン分布と仮定し、Gをスロット当たりの正規化トラヒック量とすると、各スロットでパケット数kが存在する確率は、下式(1)に示したようになる。
【0026】
【数1】
【0027】
また、各スロットでチャネルが利用されている割合(チャネル利用率)は、下式(2)に示したようになる。
【0028】
【数2】
【0029】
また、スループットは、下式(3)に示したようになる。
【0030】
【数3】
【0031】
図3は、無線端末2のスループット特性を示す図である。無線端末2のスループットは、G=1の時に最大となり、Gが1より大きくなるとパケット衝突によって低下する。
【0032】
ALOHAシステムの特性を改善するために、無線端末2ごとに独立してパケットを送信できる時間帯と送信できない時間帯を設定することにより、送信トラヒック量を調整する方法がある。
【0033】
しかしながら、この手法では、Slotted ALOHAの特性に基づいた送信トラヒック量の調整を行うことは想定されておらず、最適な送信トラヒック量の調整を行うことはできない。また、無線通信システム1が複数のチャネルを利用可能なIoTシステムである場合、無線端末2による最適なチャネル選択を行うことはできず、システム全体としての通信容量を最大化することはできない。
【0034】
図4は、無線通信システムの第2構成例を示す図である。図4に示すように、無線通信システムの第2構成例(無線通信システム1a)は、例えばn台の無線端末2a-1~2a-n、衛星3a、地上基地局10、サーバ12、及び制御装置4を備え、地上基地局10とサーバ12とがネットワーク100を介して接続されている。無線通信システム1aは、複数の無線端末2aが複数の無線チャネルからランダムに選択したタイムスロットによりパケットを送信する無線通信システムである。
【0035】
無線端末2aは、IoTサービスとして測定やセンシングなどを行い、得られたIoT情報をパケットにして無線通信により衛星3aへ送信する。また、無線端末2aは、利用可能なチャネル情報をパケットにして衛星3aへ送信する。
【0036】
衛星3aは、無線端末2aから送信されたパケットを地上基地局10へ中継する。また、衛星3aは、制御装置4から通知された、各無線チャネルの利用ウエイトや送信トラヒックの制限値を、ブロードキャストにより各無線端末2aへ通知する。なお、利用ウエイト及び送信トラヒック量の制限値の詳細については後述する。
【0037】
地上基地局10は、衛星3aを経由して伝送されたパケットを受信し、制御装置4及びサーバ12へ伝送する。例えば、地上基地局10は、利用可能なチャネル情報のパケットを制御装置4へ伝送する。
【0038】
サーバ12は、各無線端末2aから伝送されたデータを用いてデータ加工、解析、データクレンジングなどの処理を行う。
【0039】
制御装置4は、各無線端末2aから伝送された利用可能なチャネル情報に基づいて、各無線チャネルの利用ウエイトや送信トラヒック制限値を算出する。
【0040】
なお、無線通信システム1aは、各無線チャネルの利用ウエイト及び送信トラヒックの制限値の算出を定期的に行う。無線端末2aは、上記の利用ウエイト及び送信トラヒックの制限値に基づいて、パケットを送信するチャネルの選択及び送信トラヒック量を決定し、パケットの送信処理を行う。
【0041】
次に、無線通信システム1aを構成する各装置の具体的な構成例を図5~7を用いて説明する。
【0042】
図5は、無線端末2aが有する機能を例示する機能ブロック図である。図5に示すように、無線端末2aは、受信部20、制御部22、及び送信部24を有する。
【0043】
受信部20は、衛星3が送信するデータを受信し、制御部22に対して出力する。
【0044】
制御部22は、チャネル情報取得部220、チャネル選択部222、リスト作成部224、及びトラヒック制御部226を有し、無線端末2aを構成する各部を制御する。
【0045】
チャネル情報取得部220は、受信部20が受信したデータに基づいて、利用可能な無線チャネルを示す情報を取得する。チャネル選択部222は、受信部20が受信したデータに基づいて、使用可能な無線チャネル、及び使用する無線チャネルを選択する。リスト作成部224は、チャネル選択部222が選択した無線チャネルをリスト化する。トラヒック制御部226は、受信部20が受信したデータに基づいて、使用する無線チャネルの選択、及び送信トラヒック量の少なくともいずれかを制御する。
【0046】
送信部24は、制御部22が出力したデータを衛星3に対して送信する。
【0047】
図6は、衛星3aが有する機能を例示する機能ブロック図である。図6に示すように、衛星3aは、受信部30、測定部32、増幅部34、及び送信部36を有する。
【0048】
受信部30は、無線端末2a又は地上基地局10が送信するデータを受信し、測定部32及び増幅部34に対して出力する。
【0049】
測定部32は、複数の無線チャネルのチャネル利用率を測定し、測定結果を受信部30に対して出力する。
【0050】
増幅部34は、受信部30が出力したデータを増幅させて送信部36へ出力する。
【0051】
送信部36は、増幅部34が増幅させたデータを無線端末2a又は地上基地局10へ送信する。
【0052】
図7は、制御装置4が有する機能を例示する機能ブロック図である。図7に示すように、制御装置4は、受信部40、制御処理部42、及び送信部44を有する。
【0053】
受信部40は、地上基地局10が衛星3aから受信したデータを、ネットワーク100を介して受信する。
【0054】
制御処理部42は、スループット測定部420、チャネル利用率測定部421、トラヒック量推定部422、リスト作成部423、及び算出部5を有し、制御装置4を構成する各部を制御する。
【0055】
スループット測定部420は、複数の無線チャネルそれぞれのスループットを測定する。チャネル利用率測定部421は、複数の無線チャネルそれぞれの利用率を測定する。トラヒック量推定部422は、スループット測定部420が測定したスループット、及びチャネル利用率測定部421が測定した利用率の少なくともいずれかに基づいて、複数の無線チャネルそれぞれのトラヒック量を推定する。リスト作成部423は、例えば使用可能な無線チャネル、及び使用する無線チャネルをリスト化する。
【0056】
算出部5は、利用ウエイト算出部50及び制限値算出部52を有する。
【0057】
利用ウエイト算出部50は、無線端末2aのチャネル情報取得部220が取得した情報、及びトラヒック量推定部422が推定したトラフィック量の少なくともいずれかに基づいて、複数の無線チャネルそれぞれに対する利用ウエイト算出する。なお、利用ウエイトの詳細については後述する。
【0058】
制限値算出部52は、無線端末2aのチャネル情報取得部220が取得した情報、及びトラヒック量推定部422が推定したトラフィック量の少なくともいずれかに基づいて、複数の無線チャネルそれぞれに対する送信トラヒック量の制限値を算出する。なお、送信トラヒック量の制限値の詳細については後述する。
【0059】
送信部44は、算出部5が算出した結果を示すデータなどの制御処理部42が処理したデータを、ネットワーク100及び地上基地局10を介して衛星3aへ送信する。
【0060】
次に、無線通信システム1aの第1動作例について説明する。図8は、無線通信システム1aの第1動作例を示すフローチャートである。図8に示すように、ステップ100(S100)において、例えば各無線端末2aは、データ送信に利用可能なチャネルリスト(無線チャネルのリスト)を、衛星3aを介して制御装置4へ送付する。
【0061】
ステップ102(S102)において、制御装置4は、各衛星3aから受信したチャネルリストに基づいて、各チャネル(無線チャネル)の利用ウエイトを算出する。
【0062】
ステップ104(S104)において、制御装置4は、各チャネルの送信トラヒック量の制限値を算出する。
【0063】
ステップ106(S106)において、制御装置4は、各無線端末2に算出した利用ウエイト及び送信トラヒック量の制限値を報知する。
【0064】
ステップ108(S108)において、各無線端末2は、使用するチャネルの選択、及び送信トラヒックを制御して無線通信を行う。
【0065】
無線通信システム1aの動作の具体例について説明する。図9は、無線通信システム1aにおける複数の無線端末2aの配置を例示する図である。ここでは、IoTサービス用の無線チャネルは4つであるとする。また、無線端末2aは、地上のネットワークを利用しているIoTサービスへの干渉を防ぐために、地上のネットワークに接続されている他の無線端末2aが利用しているチャネルを利用不可とする。
【0066】
また、ここでは2つサービスエリアA,Bに対して8台の無線端末2aが配置されているとする。サービスエリアAには、2台の無線端末2aが収容され、サービスエリアBにも2台の無線端末2aが収容されている。
【0067】
また、サービスエリアAではチャネル2ch,3ch,4chが利用されており、サービスエリアBではチャネル1ch,3ch,4chが利用されている。このときの各無線端末2aの利用可能チャネルは、図10に示されている。
【0068】
各無線端末2aは、衛星3aを介して定期的に利用可能な無線チャネルを示す情報を制御装置4へ送信する。制御装置4は、各無線端末2aから送信された利用可能なチャネルの情報を収集し、グループ毎に分類する。
【0069】
例えば、1chのみ利用可能な無線端末2aをグループ1、2chのみ利用可能な無線端末2aをグループ2、全チャネル(1ch,2ch,3ch,4ch)を利用可能な無線端末2aをグループ3とする。
【0070】
ここで、各グループxの生成トラヒック量をgx、各グループにおいて利用可能なチャネルのベクトルをCxとし、Cx=(cx1, cx2, cx3, cx4)と定義する。
【0071】
cxjは、xグループにおいてjchを利用可能な場合は1とし、利用不可の場合は0とする。各グループの生成トラヒック量は無線端末2aの数と等しいとする。このとき、グループ1,2,3に対応するgx及びCxは以下のようになる。
【0072】
g1=2, g2=2, g3=4
C1=(1,0,0,0)、C2=(0,1,0,0)、 C3=(1,1,1,1)
【0073】
次に、制御装置4は、各無線チャネルの利用ウエイトを算出する。利用ウエイト行列として、W=(w1, w2, w3, w4)を定義する。ここでwjは、jchの利用ウエイトを示す。
【0074】
利用ウエイト算出部50は、下式(4)を満たすように利用ウエイト行列Wを算出する。
【0075】
【数4】
【0076】
mはグループの数、Nは全端末数、Cはチャネル数である。ここでは、m=3, N=8, C=4とする。また、Tは転置を表す。
【0077】
上式(4)により、ウエイトWは、以下のように算出される。
W=(0.001, 0.001, 1, 1)
【0078】
ただし、w1及びw2は限りなく0に近い数値として、0.001としている。
【0079】
また、無線端末2aは、制限値算出部52が送信トラヒック量の制限値を算出する。利用ウエイトを用いた後の各無線チャネルの送信トラヒック量をGとする。利用ウエイトを用いると、各チャネルの送信トラヒック量は均一化され、下式(5)のように算出される。
【0080】
【数5】
【0081】
また、無線チャネルの送信トラヒック量の制限値Trを下式(6)のように定義する。
【0082】
【数6】
【0083】
ここでは、各無線チャネルに接続される無線端末2aの数の平均が2台となるため、
制限値Tr=1/2と算出される。
【0084】
制御装置4は、各無線チャネルの利用ウエイト行列及び送信トラヒック量の制限値を算出した後、算出結果を無線端末2aへ報知する。すなわち、制御装置4は、W及びTrを各無線端末2aに対してブロードキャスト送信する。
【0085】
無線端末2aは、各無線チャネルの利用ウエイト行列及び送信トラヒック量の制限値の情報を受信した後、無線チャネル選択及び、送信トラヒックの制御を行う。各無線チャネルの選択率は下式(7)によって計算される。
【0086】
【数7】
【0087】
なお、上式(7)の分母は下式(8)~(10)のように算出される。
【0088】
【数8】
【0089】
【数9】
【0090】
【数10】
【0091】
各グループにおいて、各無線チャネルを選択する選択率は、図11のように示される。グループ1に所属の無線端末2a-1,2a-2は、1chを選択し、送信トラヒック量を1/2に制限して送信処理を行う。このとき、無線端末2a-1,2a-2は、送信トラヒック量の制限は、送信機会を1/2に減らす制御を行う。
【0092】
例えば、無線端末2aは、データの送信時に0及び1の乱数をランダムに発生させ、0が出た場合には送信を中止し、1が出た場合に送信を行う制御を行う。同様に、グループ2に所属の無線端末2a-7,2a-8は、2chを選択して送信トラヒック量を1/2に制限し、送信処理を行う。
【0093】
グループ3に所属の2a-3~2a-6は、各無線チャネルの利用ウエイトに基づいて各無線チャネルを選択し、送信トラヒック量を1/2に制限して送信処理を行う。
【0094】
このように、無線通信システム1aは、複数の無線チャネル間でトラヒック量を分散し、かつトラヒック量を調整して、各無線チャネルのスループットが最大になるように送信制御を行うことができる。
【0095】
次に、無線通信システム1aの第2動作例について説明する。無線通信システム1aの第2動作例では、制御装置4は、各無線端末2aからの利用可能な無線チャネルの情報を用いないこととする。
【0096】
図12は、無線通信システム1aの第2動作例を示すフローチャートである。図12に示すように、ステップ200(S200)において、例えば衛星3aは、各無線チャネルのチャネル利用率を測定し、測定結果を制御装置4へ送信する。
【0097】
ステップ202(S202)において、制御装置4は、各衛星3aから受信したチャネル利用率に基づいて、各チャネル(無線チャネル)の利用ウエイトを算出する。
【0098】
ステップ204(S204)において、制御装置4は、各チャネルの送信トラヒック量の制限値を算出する。
【0099】
ステップ206(S206)において、制御装置4は、各無線端末2に算出した利用ウエイト及び送信トラヒック量の制限値を報知する。
【0100】
ステップ208(S208)において、各無線端末2は、使用するチャネルの選択、及び送信トラヒックを制御して無線通信を行う。そして、無線通信システム1aは、定期的にS200~S208の処理を繰り返す。
【0101】
ここでは、図9と同様に複数の無線端末2aが配置され、無線チャネルは4つあるとする。また、各無線端末2aの利用可能な無線チャネルも図10と同様とする。また、無線端末2aは、地上ネットワークに接続されているIoTサービスへの干渉を防ぐために、地上ネットワーク接続されている他の無線端末2aが利用しているチャネルを利用不可とする。
【0102】
制御装置4は、定期的に各無線チャネルのチャネル利用率を測定する。制御装置4は、衛星3aが測定したチャネルjのチャネル利用率ujから、下式(11)に基づいて、各無線チャネルjの送信トラヒック量Gjを推定する。
【0103】
【数11】
【0104】
次に、制御装置4は、チャネルjにおける利用ウエイトwjを算出する。制御装置4は、ウエイトをチャネル利用率の測定タイミングに合わせて遂次更新していく。例えば、制御装置4は、チャネルjにおける、時点kの利用ウエイトを、下式(12)に基づいて算出する。
【0105】
【数12】
【0106】
次に、制御装置4は、送信トラヒック量の制限値を算出する。また、制御装置4は、各無線チャネルにおける利用ウエイトと同様に、送信トラヒック量の制限値も遂次更新していく。まず、制御装置4は、下式(13)により正規化トラヒックの推定値を算出する。
【0107】
【数13】
【0108】
ここで、Cはチャネル数である。制御装置4は、推定した正規化トラヒック値に基づいて各無線チャネルの送信トラヒック量の制限値Trを下式(14)により算出する。
【0109】
【数14】
【0110】
制御装置4は、各無線チャネルの利用ウエイト及び送信トラヒック量制限値の算出後、算出した情報を衛星3aへ通知する。衛星3aは、通知された情報を各無線端末2aに対してブロードキャスト送信する。
【0111】
無線端末2aは、報知された情報に基づいて、無線チャネルの選択、及び送信トラヒックの制限を行う。
【0112】
そして、無線通信システム1aは、上述した処理を繰り返すことにより、各無線チャネルの利用ウエイト及び送信トラヒック量制限値の更新を行い、各無線チャネルの利用ウエイト及び送信トラヒック量制限値を最適な値にする。
【0113】
次に、無線通信システム1aの第3動作例について説明する。無線通信システム1aの第2動作例では、各無線チャネルjのトラヒック量Gjを、測定したチャネル利用率から推定したが、無線通信システム1aの第3動作例では、無線チャネル利用率とスループット値を組み合わせてトラヒック量を推定する。制御装置4は、測定されたチャネルjのスループット値をThjとすると、下式(15)に基づいて各無線チャネルjのトラヒック量Gjを算出する。
【0114】
【数15】
【0115】
その後、制御装置4は、第2動作例と同様に、各無線チャネルの利用チャネルウエイトや送信トラヒック量制限値を算出する。
【0116】
このように、無線通信システム1aは、使用する無線チャネルの選択、及び送信トラヒック量の少なくともいずれかを制御するので、1つの衛星3aなどに接続する無線端末の数が増加しても、システム全体の通信容量低下を軽減することができる。
【0117】
すなわち、無線通信システム1aは、Slotted ALOHAの特性に基づいたチャネル選択及び送信トラヒック制御を行うことができ、接続する無線端末2aの過多によって生じる通信容量の低下の影響を軽減し、最大のシステム容量を達成することができる。
【0118】
図13は、無線通信システム1aに対するシミュレーションによるスループット特性を示すグラフである。Gはスロット当たりの生成トラヒック量(正規化)である。ここでは、半数の無線端末2aが半数の無線チャネルを利用可能としている。図14は、図13に示したシミュレーションにおけるシミュレーションパラメータを示す図である。
【0119】
図13に示すように、無線チャネルの利用ウエイト算出・制御がない場合に対して、チャネル利用のウエイト算出・制御を行った場合には、スループットが改善されていることが分かる。また、送信トラヒック制限を行うことにより、送信トラヒック量が増加した場合でも送信が抑制され、スループットが最大に保たれている。なお、無線通信システム1aが送信トラヒック量の制御を行った場合、無線端末2aが送信するトラヒック量は生成(潜在送信)トラヒック量であり、送信制限のために全トラヒックが送信されているとは限らない。
【0120】
なお、無線端末2a、衛星3a、及び制御装置4がそれぞれ有する各機能は、それぞれ一部又は全部がPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアによって構成されてもよいし、CPU等のプロセッサが実行するプログラムとして構成されてもよい。
【0121】
例えば、無線端末2a、衛星3a、及び制御装置4は、コンピュータとプログラムを用いて実現することができ、プログラムを記憶媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0122】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明してきたが、上述の実施形態は、本発明の例示に過ぎず、本発明が上述の実施形態に限定されるものではないことは明らかである。したがって、本発明の技術思想及び範囲を逸脱しない範囲で、構成要素の追加、省略、置換、その他の変更が行われてもよい。
【符号の説明】
【0123】
1,1a・・・無線通信システム、2,2a・・・無線端末、3,3a・・・衛星、4・・・制御装置、5・・・算出部、10・・・地上基地局、12・・・サーバ、20・・・受信部、22・・・制御部、24・・・送信部、30・・・受信部、32・・・測定部、34・・・増幅部、36・・・送信部、40・・・受信部、42・・・制御処理部、44・・・送信部、50・・・利用ウエイト算出部、52・・・制限値算出部、220・・・チャネル情報取得部、222・・・チャネル選択部、224・・・リスト作成部、226・・・トラヒック制御部、420・・・スループット測定部、421・・・チャネル利用率測定部、422・・・トラヒック量推定部、423・・・リスト作成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14