(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023114930
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20230810BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20230810BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20230810BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
H01L29/78 652H
H01L29/78 652F
H01L29/78 653A
H01L29/78 652T
H01L29/78 652N
H01L29/78 652P
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
H01L29/78 652J
H01L29/06 301M
H01L29/78 658E
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017531
(22)【出願日】2022-02-07
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】武井 学
(72)【発明者】
【氏名】馬場 正和
(72)【発明者】
【氏名】岡田 将和
(72)【発明者】
【氏名】原田 信介
(57)【要約】
【課題】耐圧を向上させることができる炭化珪素半導体装置を提供すること。
【解決手段】ドリフト層2は、内側を第1並列pn層51とし、それ以外の部分を第2並列pn層54としたSJ構造である。第1並列pn層51の少なくとも1つのp型領域53は、第1方向XにJTE構造32の内側端部よりも外側に配置され、JTE構造32のp
-型領域33に接する。第2並列pn層54は、第1方向XにJTE構造32の外側端部から10μm以下程度の範囲内で外側まで配置される。第2並列pn層54は、深さ方向ZにJTE構造32に対向する。第2並列pn層54のp型領域56は、半導体基板40のおもて面からJTE構造32のp
-型領域33よりも深い位置に配置され、これらの領域に接していない。第2並列pn層54とJTE構造32のp
-型領域33との間はSJ構造でない通常のn
-型ドリフト領域2bである。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素からなる半導体基板と、
活性領域において前記半導体基板の内部に設けられた、第1の第1導電型領域と第1の第2導電型領域とを前記半導体基板の第1主面に平行な第1方向に交互に繰り返し配置した第1並列pn層と、
前記活性領域の周囲を囲む終端領域において前記半導体基板の内部に、前記第1並列pn層の外側に隣接して設けられた、第2の第1導電型領域と第2の第2導電型領域とを前記第1方向に交互に繰り返し配置した第2並列pn層と、
前記活性領域において前記半導体基板の第1主面と前記第1並列pn層との間に設けられた所定の素子構造と、
前記半導体基板の第1主面に設けられ、前記素子構造に電気的に接続された第1電極と、
前記半導体基板の第2主面に設けられた第2電極と、
前記終端領域において前記半導体基板の第1主面と前記第2並列pn層との間に選択的に設けられ、前記活性領域の周囲を囲み、前記第1電極に電気的に接続されて耐圧構造を構成する第2導電型の第1半導体領域と、
を備え、
前記第2並列pn層は、前記半導体基板の第1主面から前記第1半導体領域よりも深い位置に前記第1半導体領域と離れて配置され、かつ前記第1半導体領域の外側端部よりも外側まで設けられ、
前記第2並列pn層と前記第1半導体領域との間に、前記第1半導体領域に接して、第1導電型の第2半導体領域が設けられていることを特徴とする炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記第2の第2導電型領域は、フローティング電位であることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記第1の第1導電型領域および前記第1の第2導電型領域は、前記半導体基板の第1主面に平行でかつ前記第1方向と直交する第2方向にストライプ状に延在し、
前記第2の第1導電型領域および前記第2の第2導電型領域は、前記第2方向にストライプ状に延在し、
前記第2並列pn層は、前記第1方向に前記第1並列pn層に隣接することを特徴とする請求項1または2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記第1の第1導電型領域および前記第1の第2導電型領域は、前記半導体基板の第1主面に平行でかつ前記第1方向と直交する第2方向にストライプ状に延在し、
前記第2の第1導電型領域および前記第2の第2導電型領域は、前記第2方向にストライプ状に延在し、
前記第2並列pn層は、前記第1方向に前記第1並列pn層に隣接し、
前記終端領域において前記半導体基板の内部に選択的に設けられ、前記第2の第2導電型領域を前記第1の第2導電型領域に連結する第2導電型連結領域をさらに備え、
前記第2導電型連結領域は、前記第1半導体領域の外側端部よりも外側において前記第1方向に直線状に延在し、前記第1の第2導電型領域と前記第2の第2導電型領域との端部同士を連結することを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記第1並列pn層は、前記第1方向に前記活性領域から前記第1半導体領域の内側端部よりも外側まで設けられ、深さ方向に前記第1半導体領域に隣接する少なくとも1つの前記第1の第2導電型領域を有することを特徴とする請求項4に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
前記第2の第2導電型領域の幅は、前記第1の第2導電型領域の幅よりも20%以下の範囲内で広くなっていることを特徴とする請求項3~5のいずれか一つに記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項7】
前記第2の第2導電型領域の幅は、前記第1の第2導電型領域の幅よりも5%以上15%以下の範囲内で広くなっていることを特徴とする請求項6に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項8】
前記第2並列pn層は、前記第1方向に前記第1半導体領域の外側端部よりも10μm以下の範囲内で外側まで設けられていることを特徴とする請求項3~7のいずれか一つに記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項9】
前記第1の第1導電型領域および前記第1の第2導電型領域は、前記半導体基板の第1主面に平行でかつ前記第1方向と直交する第2方向にストライプ状に延在し、
前記第2の第2導電型領域は、前記半導体基板の第1主面側から見てマトリクス状に配置され、
前記第2の第1導電型領域は、前記半導体基板の第1主面側から見て前記第2の第2導電型領域の周囲を囲む格子状に配置され、
前記第2並列pn層は、前記第1並列pn層の周囲を囲むことを特徴とする請求項1または2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項10】
前記第1並列pn層と前記第2並列pn層との境界は、前記活性領域と前記終端領域との間の中間領域に位置することを特徴とする請求項9に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項11】
前記第2並列pn層と前記第1半導体領域との間隔は、0.5μm以上1.5μm以下であることを特徴とする請求項1~10のいずれか一つに記載の炭化珪素半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炭化珪素半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドリフト層を、n型領域とp型領域とを基板主面に平行な方向に交互に繰り返し隣接して配置してなる並列pn層とした超接合(SJ:Super Junction)構造の半導体装置が公知である。並列pn層を構成するn型領域およびp型領域は、半導体基板(半導体チップ)の主面に平行にストライプ状に延在する。並列pn層を構成するn型領域およびp型領域は、半導体基板の中央(チップ中央)の活性領域から半導体基板の端部(チップ端部)にわたって、半導体基板の略全体に略均一に設けられている。
【0003】
従来のSJ構造の炭化珪素半導体装置の構造について、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:金属-酸化膜-半導体の3層構造からなる絶縁ゲートを備えたMOS型電界効果トランジスタ)を例に説明する。
図15は、従来の炭化珪素半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。
図16,17は、それぞれ
図15の切断線AA-AA’および切断線BB-BB’における断面構造を示す断面図である。
【0004】
図15~17に示す従来の炭化珪素半導体装置150は、炭化珪素からなる半導体基板(半導体チップ)140の活性領域110に一般的なトレンチゲート構造を備え、ドリフト層102を並列pn層151としたSJ構造の縦型MOSFETである。半導体基板140は、矩形状の平面形状を有する。活性領域110は、略矩形状の平面形状を有し、半導体基板140の中央(チップ中央)に設けられている。活性領域110の周囲は、中間領域120を介してエッジ終端領域130に囲まれている。
【0005】
中間領域120には、ゲートランナー等のゲート配線層(不図示)が配置される。エッジ終端領域130は、中間領域120と半導体基板140の端部(チップ端部)との間の領域である。エッジ終端領域130には、耐圧構造として、接合終端拡張(JTE:Junction Termination Extension)構造132と、n+型チャネルストッパ領域134と、が配置されている。JTE構造132は、中間領域120を介して活性領域110の周囲を囲む。
【0006】
n
+型チャネルストッパ領域134は、JTE構造132よりも外側(チップ端部側)に、JTE構造132と離れて配置され、半導体基板140の端部に達する。n
+型チャネルストッパ領域134は、半導体基板140の端部に沿って延在し、JTE構造132の周囲を囲む。
図15には、n
+型チャネルストッパ領域134の内周を破線134aで示す。n
+型チャネルストッパ領域134は破線134aから外側の全域に設けられており、n
+型チャネルストッパ領域134の外周は半導体基板140の端部である。
【0007】
並列pn層151は、活性領域110からエッジ終端領域130にわたって半導体基板140の略全体に一様に設けられている。並列pn層151は、n型領域152とp型領域153とを半導体基板140のおもて面に平行な第1方向Xに交互に繰り返し隣接して配置したSJ構造である。並列pn層151のn型領域152およびp型領域153は、半導体基板140のおもて面に平行でかつ第1方向Xと直交する第2方向Yにストライプ状に延在する。
図15には、p型領域153をハッチングで示す。
【0008】
並列pn層151のn型領域152およびp型領域153は、JTE構造132およびn
+型チャネルストッパ領域134の直下(n
+型ドレイン領域101(
図16,17参照)側)においてエッジ終端領域130の略全域に配置される。並列pn層151は、JTE構造132およびn
+型チャネルストッパ領域134の全周で深さ方向ZにJTE構造132およびn
+型チャネルストッパ領域134に隣接し、JTE構造132とn
+型チャネルストッパ領域134との間で半導体基板140のおもて面に達する。
【0009】
従来の炭化珪素半導体装置150の断面構造について説明する。半導体基板140は、炭化珪素からなるn+型出発基板141にドリフト層102およびp型ベース領域104となる各エピタキシャル層142,143を順に積層させてなる。半導体基板140のp型エピタキシャル層143側の主面をおもて面とし、n+型ドレイン領域101であるn+型出発基板141側の主面を裏面とする。エピタキシャル層142はドリフト層(ドリフト領域)102となる部分であり、並列pn層151を含む。
【0010】
p型エピタキシャル層143の、エッジ終端領域130の部分はエッチングにより除去され、半導体基板140のおもて面に段差131が形成されている。半導体基板140のおもて面は、段差131を境にして、活性領域110側の部分(以下、第1面とする)140aよりもエッジ終端領域130側の部分(以下、第2面とする)140bでn+型ドレイン領域101側に凹んでいる。符号140cは、半導体基板140のおもて面の第1面140aと第2面140bとをつなぐ部分(以下、第3面とする)である。
【0011】
エッジ終端領域130において半導体基板140のおもて面の第2面140bに、n
-型エピタキシャル層142が露出されている。半導体基板140のおもて面の第2面140bの表面領域においてn
-型エピタキシャル層142の内部に、JTE構造132を構成する複数のp型領域と、n
+型チャネルストッパ領域134と、がそれぞれ選択的に設けられている。
図16,17には、活性領域110の周囲を囲む同心状に隣接して配置されてJTE構造132を構成する複数のp型領域を一つのp
-型領域133で示す。
【0012】
JTE構造132のp-型領域133は、活性領域110から段差131よりも外側まで延在するp+型外周領域113を介してソース電極(不図示)の電位に固定されている。p+型外周領域113の段差131よりも外側の部分と、JTE構造132のp-型領域133と、n+型チャネルストッパ領域134と、は半導体基板140のおもて面の第2面140bに露出されている。半導体基板140のおもて面の第2面140bに露出とは、当該第2面140b上のフィールド絶縁膜135に接することである。
【0013】
並列pn層151のn型領域152およびp型領域153は、活性領域110からエッジ終端領域130にわたって半導体基板140の略全体に等間隔に配置されている。並列pn層151のn型領域152およびp型領域153は、中間領域120においてp+型外周領域113の直下に配置され、エッジ終端領域130においてp-型領域133およびn+型チャネルストッパ領域134の直下に配置されて、深さ方向Zにp+型外周領域113、p-型領域133およびn+型チャネルストッパ領域134に接する。
【0014】
並列pn層151のn型領域152およびp型領域153は、JTE構造132のp-型領域133とn+型チャネルストッパ領域134との間で半導体基板140のおもて面の第2面140bに露出されている。並列pn層151の隣接するn型領域152とp型領域153とでチャージバランスがとれるように、並列pn層151のn型領域152およびp型領域153それぞれのキャリア濃度(不純物濃度)および幅(第1方向Xの幅)Wn,Wpが設定される。
【0015】
チャージバランスがとれているとは、n型領域152のキャリア濃度と幅Wnとの積で表されるチャージ量と、p型領域153のキャリア濃度と幅Wpとの積で表されるチャージ量と、がプロセスのばらつきによる許容誤差を含む範囲で略同じであることを意味する。符号102aは、並列pn層151とn+型ドレイン領域101との間のSJ構造でない通常のn型ドリフト領域である。符号114,116,136は、それぞれ層間絶縁膜、ドレイン電極およびパッシベーション膜である。
【0016】
従来のSJ構造の炭化珪素半導体装置として、並列pn層のn型領域およびp型領域の幅を、エッジ終端領域において活性領域の外縁を規定するp++型外周コンタクト領域と、その外側に隣接するp型リサーフ領域と、の直下で相対的に広くすることで、エッジ終端領域の耐圧を向上させるとともに、MOSFETのオフ時にp++型外周コンタクト領域およびp型リサーフ領域に流れる正孔電流を抑制してdV/dt耐量を向上させた装置が提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【0017】
従来のSJ構造の別の炭化珪素半導体装置として、エッジ終端領域におけるドリフト層の異なる深さ位置に、半導体基板のおもて面に平行に延在して並列pn層のn型領域およびp型領域に直交し、かつ活性領域の周囲を囲む1つ以上のp型横型リサーフ領域を備えた装置が提案されている(例えば、下記特許文献2参照。)。下記特許文献2では、MOSFETのオフ時にp型横型リサーフ領域によって空乏層が外側へ延伸されることで、エッジ終端領域の電界が緩和されるため、エッジ終端領域の所定耐圧が安定して得られる。
【0018】
従来のSJ構造の別の炭化珪素半導体装置として、活性領域よりも外側において並列pn層のp型領域にかからないように、並列pn層のn型領域の表面領域のみに選択的にp型リサーフ領域を設けた装置が提案されている(例えば、下記特許文献3参照。)。下記特許文献3では、並列pn層のp型領域とp型リサーフ領域とが重なって形成されること(オーバーラップ)によって並列pn層のp型領域の不純物濃度が高くなることを抑制し、当該オーバーラップに起因して空乏化条件がずれることを回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】国際公開第2018/029951号
【特許文献2】特開2010-067737号公報
【特許文献3】特開2010-040973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、従来の炭化珪素半導体装置150(
図15~17参照)では、活性領域110および中間領域120の耐圧(BV:Breakdown Voltage)に対してエッジ終端領域130の耐圧が小さい。
図14は、従来の炭化珪素半導体装置の耐圧特性をシミュレーションした結果を示す特性図である。耐圧を3.3kVに設定した従来の炭化珪素半導体装置150の活性領域110および中間領域120(活性領域+中間領域)の耐圧分布と、エッジ終端領域130の耐圧分布と、を
図14に示す。
【0021】
図14の横軸はエッジ終端領域130の並列pn層151のp型領域153の幅の中心条件からの差分ΔWp(%)であり、縦軸は耐圧である。エッジ終端領域130の並列pn層151のp型領域153の幅の中心条件とは、活性領域110で「n型領域152の不純物濃度×n型領域152の幅=p型領域153の不純物濃度×p型領域153の幅」を満たす並列pn層151のp型領域153の幅に対して、
図14のΔWp=(活性領域110の並列pn層151のp型領域153の幅-エッジ終端領域130の並列pn層151のp型領域153の幅)/(活性領域110の並列pn層151のp型領域153の幅)=0%に相当する。
【0022】
ΔWp<0%の場合およびΔWp>0%の場合は、それぞれ、活性領域110の並列pn層151のp型領域153の幅に対してエッジ終端領域130の並列pn層151のp型領域153の幅を広くした場合および狭くした場合である。
図14には、エッジ終端領域130の並列pn層151のp型領域153の幅を活性領域110の並列pn層151のp型領域153の幅よりも10%程度広くすることで(ΔWp=-10%)、活性領域110およびエッジ終端領域130ともに耐圧が3.3kVを超え、かつエッジ終端領域130の耐圧が最も大きくなることが示されている。
【0023】
図14に示すように、従来の炭化珪素半導体装置150では、エッジ終端領域130の並列pn層151のp型領域153の幅に依らず、活性領域110および中間領域120の耐圧よりもエッジ終端領域130の耐圧が小さくなることが確認された。エッジ終端領域130でアバランシェ降伏しやすく、半導体基板140の大半を占める面積(表面積)の広い活性領域110でアバランシェ降伏する場合と比べて、炭化珪素半導体装置150の全体の耐圧やアバランシェ耐量が小さくなる。
【0024】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、耐圧を向上させることができる炭化珪素半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、次の特徴を有する。活性領域において、炭化珪素からなる半導体基板の内部に、第1の第1導電型領域と第1の第2導電型領域とを前記半導体基板の第1主面に平行な第1方向に交互に繰り返し配置した第1並列pn層が設けられている。前記活性領域の周囲を囲む終端領域において前記半導体基板の内部に、前記第1並列pn層の外側に隣接して、第2の第1導電型領域と第2の第2導電型領域とを前記第1方向に交互に繰り返し配置した第2並列pn層が設けられている。前記活性領域において前記半導体基板の第1主面と前記第1並列pn層との間に、所定の素子構造が設けられている。
【0026】
第1電極は、前記半導体基板の第1主面に設けられ、前記素子構造に電気的に接続されている。第2電極は、前記半導体基板の第2主面に設けられている。前記終端領域において前記半導体基板の第1主面と前記第2並列pn層との間に、第2導電型の第1半導体領域が選択的に設けられている。前記第1半導体領域は、前記活性領域の周囲を囲み、前記第1電極に電気的に接続されて耐圧構造を構成する。前記第2並列pn層は、前記半導体基板の第1主面から前記第1半導体領域よりも深い位置に前記第1半導体領域と離れて配置され、かつ前記第1半導体領域の外側端部よりも外側まで設けられている。前記第2並列pn層と前記第1半導体領域との間に、前記第1半導体領域に接して、第1導電型の第2半導体領域が設けられている。
【0027】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第2の第2導電型領域は、フローティング電位であることを特徴とする。
【0028】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第1の第1導電型領域および前記第1の第2導電型領域は、前記半導体基板の第1主面に平行でかつ前記第1方向と直交する第2方向にストライプ状に延在する。前記第2の第1導電型領域および前記第2の第2導電型領域は、前記第2方向にストライプ状に延在する。前記第2並列pn層は、前記第1方向に前記第1並列pn層に隣接することを特徴とする。
【0029】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第1の第1導電型領域および前記第1の第2導電型領域は、前記半導体基板の第1主面に平行でかつ前記第1方向と直交する第2方向にストライプ状に延在する。前記第2の第1導電型領域および前記第2の第2導電型領域は、前記第2方向にストライプ状に延在する。前記第2並列pn層は、前記第1方向に前記第1並列pn層に隣接する。前記終端領域において前記半導体基板の内部に、前記第2の第2導電型領域を前記第1の第2導電型領域に連結する第2導電型連結領域が選択的に設けられている。前記第2導電型連結領域は、前記第1半導体領域の外側端部よりも外側において前記第1方向に直線状に延在し、前記第1の第2導電型領域と前記第2の第2導電型領域との端部同士を連結することを特徴とする。
【0030】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第1並列pn層は、前記第1方向に前記活性領域から前記第1半導体領域の内側端部よりも外側まで設けられ、深さ方向に前記第1半導体領域に隣接する少なくとも1つの前記第1の第2導電型領域を有することを特徴とする。
【0031】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第2の第2導電型領域の幅は、前記第1の第2導電型領域の幅よりも20%以下の範囲内で広くなっていることを特徴とする。
【0032】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第2の第2導電型領域の幅は、前記第1の第2導電型領域の幅よりも5%以上15%以下の範囲内で広くなっていることを特徴とする。
【0033】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第2並列pn層は、前記第1方向に前記第1半導体領域の外側端部よりも10μm以下の範囲内で外側まで設けられていることを特徴とする。
【0034】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第1の第1導電型領域および前記第1の第2導電型領域は、前記半導体基板の第1主面に平行でかつ前記第1方向と直交する第2方向にストライプ状に延在する。前記第2の第2導電型領域は、前記半導体基板の第1主面側から見てマトリクス状に配置されている。前記第2の第1導電型領域は、前記半導体基板の第1主面側から見て前記第2の第2導電型領域の周囲を囲む格子状に配置されている。前記第2並列pn層は、前記第1並列pn層の周囲を囲むことを特徴とする。
【0035】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第1並列pn層と前記第2並列pn層との境界は、前記活性領域と前記終端領域との間の中間領域に位置することを特徴とする。
【0036】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第2並列pn層と前記第1半導体領域との間隔は、0.5μm以上1.5μm以下であることを特徴とする。
【0037】
上述した発明によれば、オフ時に、耐圧構造を構成する第1半導体領域の内部まで完全に空乏化させることができ、エッジ終端領域の耐圧を向上させることができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明にかかる炭化珪素半導体装置によれば、エッジ終端領域の耐圧を活性領域の耐圧に近づけることができるため、炭化珪素半導体装置の全体の耐圧を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。
【
図2】
図1の活性領域の断面構造を示す断面図である。
【
図3】
図1の切断線A1-A2における断面構造を示す断面図である。
【
図4】
図1の切断線A2-A3における断面構造を示す断面図である。
【
図5】実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。
【
図6】
図5の切断線B1-B2における断面構造を示す断面図である。
【
図7】実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。
【
図8】
図7の矩形枠Cを拡大して示す平面図である。
【
図9】
図7の切断線D1-D2における断面構造である。
【
図10】
図7の切断線E1-E2における断面構造である。
【
図11】
図7の切断線D2-D3および切断線E2-E3における断面構造である。
【
図12】実施例1のエッジ終端領域の電界強度のシミュレーション結果を示す特性図である。
【
図13】実施例2のエッジ終端領域の耐圧のシミュレーション結果を示す分布図である。
【
図14】従来の炭化珪素半導体装置の耐圧特性をシミュレーションした結果を示す特性図である。
【
図15】従来の炭化珪素半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。
【
図16】
図15の切断線AA-AA’における断面構造を示す断面図である。
【
図17】
図15の切断線BB-BB’における断面構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および-は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0041】
(実施の形態1)
実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構造についてMOSFETを例に説明する。
図1は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。
図1には、第1,2並列pn層51,54のp型領域53,56をそれぞれ異なるハッチングで示す。
図1には、例えば3mm
2角の半導体基板40のレイアウトを示す。
図1では、第1,2並列pn層51,54のn型領域(第1,2の第1導電型領域)52,55およびp型領域(第1,2の第2導電型領域)53,56の個数が簡略化され、
図2~4と異なる。
【0042】
図2は、
図1の活性領域の断面構造を示す断面図である。
図2には、活性領域10に配置される同一構造の複数の単位セル(素子の構成単位)のうちの1つの単位セルを示す。
図3,4は、それぞれ
図1の切断線A1-A2および切断線A2-A3における断面構造を示す断面図である。
図3には、中間領域20との境界付近から、中間領域20とエッジ終端領域30との境界付近までを示す。
図4には、中間領域20とエッジ終端領域30との境界付近から半導体基板40の端部(チップ端部)までを示す。
【0043】
図1~4に示す実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置50は、炭化珪素(SiC)からなる半導体基板(半導体チップ)40に活性領域10、中間領域20およびエッジ終端領域30を備え、活性領域10からエッジ終端領域30にわたってドリフト層(ドリフト領域)2を並列pn層(第1,2並列pn層51,54)としたSJ構造のトレンチゲート構造(素子構造)の縦型MOSFETである。活性領域10は、MOSFETがオン状態のときに主電流が流れる領域であり、半導体基板40の中央(チップ中央)に配置されている。
【0044】
中間領域20は、活性領域10に隣接して、活性領域10の周囲を囲む。エッジ終端領域30は、中間領域20と半導体基板40の端部との間の領域であり、中間領域20を介して活性領域10の周囲を囲む。活性領域10および中間領域20は、ドリフト層2を第1並列pn層51としたSJ構造である。エッジ終端領域30は、ドリフト層2を、内側(チップ中央側)の所定部分で第1並列pn層51とし、この第1並列pn層51とした部分以外の部分を第2並列pn層54としたSJ構造である。
【0045】
活性領域10と中間領域20との境界は、後述する少数キャリア(正孔)引き抜きのためのp
++型外周コンタクト領域21(
図3参照)の内側端部(内周)である。中間領域20とエッジ終端領域30との境界は、後述するJTE構造32の内側端部(内周)である。JTE構造32の内側端部とは、JTE構造32を構成する複数のp型領域(
図4ではまとめて一つのp
-型領域(第1半導体領域)33で図示)のうちの最も内側のp型領域の内側端部であり、中間領域20の後述するp
+型外周領域13(
図4参照)との接合部(界面)である。
【0046】
エッジ終端領域30は、活性領域10および中間領域20におけるドリフト層2の、半導体基板40のおもて面(第1主面)側の電界を緩和して耐圧を保持する機能を有する。耐圧とは、リーク電流が過度に増大せず、素子が誤動作や破壊を起こさない限界の電圧である。エッジ終端領域30には、耐圧構造として、接合終端拡張(JTE)構造32と、n+型チャネルストッパ領域34と、が配置されている。JTE構造32は、中間領域20を介して活性領域10の周囲を囲む。
【0047】
JTE構造32は、複数のp型領域を、活性領域10から離れるにしたがって不純物濃度の低いp型領域が配置されるように、中間領域20を介して活性領域10の周囲を囲む同心状に隣接して配置した構造である。JTE構造32により、中間領域20よりも外側の電界集中が緩和され、所定電圧(エッジ終端領域30の耐圧)未満の電圧印加による素子破壊を防止することができる。JTE構造32は、例えば、ダブルゾーンJTE構造や空間変調JTE構造であってもよい。
【0048】
ダブルゾーンJTE構造は、JTE構造を互いに隣り合う2つのp型領域(p
-型領域とその外側のp
--型領域)で構成した構造である。空間変調JTE構造は、JTE構造を構成する互いに隣り合うp型領域(または、1つのp型領域とその外側の後述する通常のn
-型ドリフト領域(第2半導体領域)2b(
図4参照))間に、これら2つの領域の中間の不純物濃度と空間的に等価な不純物濃度分布を有する空間変調領域を配置して、JTE構造全体の不純物濃度分布を外側(チップ端部側)へ向って緩やかに減少させた構造である。
【0049】
空間変調JTE構造を構成する空間変調領域は、自身の両側それぞれに隣接する領域(JTE構造を構成する互いに隣り合うp型領域、または1つのp型領域とその外側の通常のn-型ドリフト領域2b)と略同じ不純物濃度の2つの小領域を所定パターンで交互に繰り返し隣接して配置してなる。空間変調領域全体の空間的な不純物濃度分布は2つの小領域の幅および不純物濃度比で決まる。空間変調JTE構造は、空間変調領域を有していない一般的なJTE構造と比べて、所定耐圧をより安定して確保可能である。
【0050】
n
+型チャネルストッパ領域34は、JTE構造32よりも外側に、JTE構造32と離れて配置され、例えば半導体基板40の端部の4辺(直線部)で半導体基板40の端部に達する。n
+型チャネルストッパ領域34は、半導体基板40の端部に沿って延在して、JTE構造32の周囲を囲む。
図1には、n
+型チャネルストッパ領域34の内周を破線34aで示す。n
+型チャネルストッパ領域34は破線34aから外側の全域に設けられており、n
+型チャネルストッパ領域34の外周は略矩形状の平面形状の半導体基板40の端部である。
【0051】
第1並列pn層51は、n型領域52とp型領域53とを半導体基板40のおもて面に平行な第1方向Xに交互に繰り返し隣接して配置したSJ構造である。第1並列pn層51のn型領域52およびp型領域53は、半導体基板40のおもて面に平行でかつ第1方向Xと直交する第2方向Yにストライプ状に例えば半導体基板40の端部付近まで延在している。第1並列pn層51のn型領域52およびp型領域53の端部(ストライプの長手方向(第2方向Y)の端部)は、n+型チャネルストッパ領域34に対向する位置まで延在して、深さ方向Zにn+型チャネルストッパ領域34に接していてもよい。
【0052】
また、第1並列pn層51は、第1方向XにJTE構造32の内側端部よりも外側まで配置されている。したがって、第1並列pn層51と第2並列pn層54との境界はエッジ終端領域30内に位置する。第1並列pn層51は、活性領域10および中間領域20を通るn型領域52およびp型領域53と、中間領域20のみを通るn型領域52およびp型領域53と、を有する。これに加えて、第1並列pn層51は、第1方向XにJTE構造32の内側端部よりも外側に少なくとも1つのp型領域53が配置されるようにエッジ終端領域30に配置され、エッジ終端領域30のみを通るn型領域52およびp型領域53を有する。第1並列pn層51の第1方向Xの最も外側はp型領域53である。
【0053】
第1並列pn層51のn型領域52およびp型領域53は、深さ方向Zに、中間領域20のp
+型外周領域13と、エッジ終端領域30のJTE構造32と、に接する。第1並列pn層51のp型領域53は、p
+型外周領域13およびJTE構造32を介してソース電極15(
図2,3参照)の電位に固定されている。このため、第1並列pn層51のp型領域53を第1方向XにJTE構造32の内側端部よりも外側まで配置することで、MOSFETのオフ時に中間領域20のp
+型外周領域13とJTE構造32との接合部への電界集中を抑制することができる。
【0054】
第1並列pn層51の隣接するn型領域52とp型領域53とは概ねチャージバランスがとれている。チャージバランスがとれているとは、並列pn層のn型領域のキャリア濃度(不純物濃度)と幅との積で表されるチャージ量と、p型領域のキャリア濃度と幅との積で表されるチャージ量と、がプロセスのばらつきによる許容誤差を含む範囲で略同じであることを意味する。したがって、第1並列pn層51の隣接するn型領域52とp型領域53とで概ねチャージバランスがとれるように、n型領域52およびp型領域53それぞれのキャリア濃度および幅(第1方向Xの幅)W1n,W1pが設定される。
【0055】
第1並列pn層51の隣接するn型領域52とp型領域53とが概ねチャージバランスがとれていればよく、第1並列pn層51のn型領域52およびp型領域53それぞれのキャリア濃度および幅W1n,W1pは適宜設定される。例えば、第1並列pn層51のn型領域52の幅W1nとp型領域53の幅W1pとが略同じであってもよい。この場合、n型領域52のキャリア濃度とp型領域53のキャリア濃度とを略同じに設定すればよい。幅およびキャリア濃度が略同じとは、それぞれ、プロセスのばらつきによる許容誤差を含む範囲で同じ幅および同じキャリア濃度であることを意味する。
【0056】
第2並列pn層54は、n型領域55とp型領域56とを半導体基板40のおもて面に平行な第1方向Xに交互に繰り返し隣接して配置したSJ構造である。第2並列pn層54のn型領域55およびp型領域56は、第1並列pn層51のn型領域52およびp型領域53が第2方向Yに延在する長さと同じ長さで、第1並列pn層51のn型領域52およびp型領域53に平行して第2方向Yにストライプ状に延在する。第2並列pn層54のn型領域55およびp型領域56は、JTE構造32のp-型領域33に接していない。第2並列pn層54のp型領域56は、フローティング(浮遊)電位となっている。
【0057】
例えば、従来構造(
図15~17参照)のように並列pn層151のp型領域153がJTE構造132のp
-型領域133を介してソース電極の電位に固定されていると、MOSFETのオフ時に、JTE構造132のp
-型領域133がp型領域153との連結部の直上(層間絶縁膜114側)の部分で空乏化しにくい。一方、実施の形態1においては、JTE構造32のp
-型領域33に第2並列pn層54のp型領域56が接していないことで、MOSFETのオフ時にJTE構造32のp
-型領域33が一様に空乏化しやすいため、従来構造よりもエッジ終端領域30の耐圧を向上させることができる。
【0058】
第2並列pn層54は、第1方向Xに第1並列pn層51の両側にそれぞれ隣接して、エッジ終端領域30にのみ配置されている。第2並列pn層54は、第1並列pn層51の第1方向Xに最も外側のp型領域53に第1方向Xに外側にn型領域55が隣接するように配置される。また、第2並列pn層54は、第1方向XにJTE構造32の外側端部(外周)よりも外側に少なくとも1つのp型領域56が配置されるように、第1方向XにJTE構造32の外側端部よりも外側まで配置されている。
【0059】
第2並列pn層54のp型領域56を第1方向XにJTE構造32の外側端部よりも外側まで配置することで、MOSFETのオフ時にJTE構造32の外側端部への電界集中を抑制することができる。JTE構造32の外側端部とは、JTE構造32を構成する複数のp型領域のうちの最も内側のp型領域の外側端部である。また、第2並列pn層54は、第1方向XにJTE構造32の外側端部から例えば10μm以下程度の範囲まで配置されてもよい。
【0060】
第2並列pn層54を配置する範囲を第1方向XにJTE構造32の外側端部から上記範囲内として、エッジ終端領域30に配置されるフローティングのp型領域56の個数を少なくする。これによって、MOSFETのスイッチング等によりエッジ終端領域30に蓄積されて外部へ吐き出されずに残る少数キャリア(正孔)の蓄積電荷量を低減させることができる。このため、第1方向XにJTE構造32の外側端部よりも外側に配置されるp型領域56の個数は少ないことが好ましい。
【0061】
第2並列pn層54は、第1方向XにJTE構造32の外側端部から上記範囲内であれば、第1方向Xにn
+型チャネルストッパ領域34の直下(n
+型ドレイン領域1側)まで配置されてもよい。第1方向Xに第2並列pn層54と半導体基板40の端部との間に後述する通常のn
-型ドリフト領域2c(
図4参照)が配置されてもよい。この通常のn
-型ドリフト領域2cを設けないか、またはこの通常のn
-型ドリフト領域2cの幅を狭くするほど、半導体基板40を小型化することができる。
【0062】
第2並列pn層54の隣接するn型領域55とp型領域56とは概ねチャージバランスがとれている。第2並列pn層54の隣接するn型領域55とp型領域56とで概ねチャージバランスがとれるように、n型領域55およびp型領域56それぞれのキャリア濃度および幅(第1方向Xの幅)W2n,W2pが設定される。第2並列pn層54の隣接するn型領域55とp型領域56とが概ねチャージバランスがとれていればよく、第2並列pn層54のn型領域55およびp型領域56それぞれのキャリア濃度および幅W2n,W2pは適宜設定される。
【0063】
例えば、第2並列pn層54のn型領域55の幅W2nとp型領域56の幅W2pとが略同じであってもよい。この場合、n型領域55のキャリア濃度とp型領域56のキャリア濃度とを略同じに設定すればよい。第2並列pn層54のp型領域56の幅W2pは、第1並列pn層51のp型領域53の幅W1pよりも例えば20%以下程度の範囲内で広くしてもよく(
図13の範囲G1参照)、好ましくは第1並列pn層51のp型領域53の幅W1pよりも例えば5%以上15%以下程度の範囲内で広いことがよい(
図13の範囲G2参照)。
【0064】
第2並列pn層54のp型領域56の幅W2pを上記範囲で広くすることで、第1,2並列pn層51,54のp型領域53,56の幅W1p,W2pが等しい場合と比べて、エッジ終端領域30の耐圧を向上させることができる。より好ましくは、第2並列pn層54のp型領域56の幅W2pを第1並列pn層51のp型領域53の幅W1pよりも例えば10%程度広くすることで、エッジ終端領域30の耐圧を活性領域10の耐圧程度まで向上させることができる(
図13参照)。
【0065】
実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置50の断面構造について説明する。
図2に示すように、活性領域10において半導体基板40のおもて面側に一般的なトレンチゲート構造が設けられている。トレンチゲート構造は、p型ベース領域4、n
+型ソース領域5、p
++型コンタクト領域6、ゲートトレンチ7、ゲート絶縁膜8およびゲート電極9で構成される。半導体基板40は、炭化珪素からなるn
+型出発基板41のおもて面上にドリフト層2およびp型ベース領域4となる各エピタキシャル層42,43を順に堆積してなる。
【0066】
半導体基板40のp型エピタキシャル層43側の主面をおもて面として、n+型出発基板41側の主面を裏面(第2主面)とする。n+型出発基板41は、n+型ドレイン領域1である。p型エピタキシャル層43の、エッジ終端領域30の部分はエッチングにより除去され、半導体基板40のおもて面に段差31が形成されている。半導体基板40のおもて面は、段差31を境にして、活性領域10側の部分(第1面)40aよりもエッジ終端領域30側の部分(第2面)40bでn+型ドレイン領域1側に凹んでいる。
【0067】
半導体基板40のおもて面の第2面40bは、p型エピタキシャル層43が除去されることで露出されたn-型エピタキシャル層42の露出面である。半導体基板40のおもて面の第1面40aと第2面40bとをつなぐ部分(第3面:段差31のメサエッジ)40cで、活性領域10および中間領域20とエッジ終端領域30と素子分離される。ゲートトレンチ7は、深さ方向Zに半導体基板40のおもて面の第1面40aからp型エピタキシャル層43を貫通してn-型エピタキシャル層42内に達する。
【0068】
ゲートトレンチ7は、例えば、半導体基板40のおもて面に平行な方向に(ここでは第2方向Yに)ストライプ状に延在する。ゲートトレンチ7の内部に、ゲート絶縁膜8を介してゲート電極9が設けられている。p型ベース領域4、n+型ソース領域5およびp++型コンタクト領域6は、互いに隣り合うゲートトレンチ7間にそれぞれ選択的に設けられている。p型ベース領域4は、p型エピタキシャル層43の、n+型ソース領域5およびp++型コンタクト領域6を除く部分である。
【0069】
p型ベース領域4は、活性領域10から外側(チップ端部側)へ延在して、半導体基板40のおもて面の第3面40cに達する。n+型ソース領域5およびp++型コンタクト領域6は、半導体基板40のおもて面の第1面40aとp型ベース領域4との間に、p型ベース領域4に接してそれぞれ選択的に設けられ、かつ半導体基板40のおもて面の第1面40aに露出されている。半導体基板40のおもて面の第1面40aに露出とは、層間絶縁膜14のコンタクトホールにおいてソース電極15に接することである。
【0070】
p++型コンタクト領域6は、n+型ソース領域5よりもゲートトレンチ7から離れて配置されている。n-型エピタキシャル層42の、後述するn型電流拡散領域3、p+型領域11,12、p+型外周領域13、p-型領域33およびn+型チャネルストッパ領域34を除く部分がMOSFETのドリフト領域として機能するドリフト層2であり、第1,2並列pn層51,54を含む。ドリフト層2の、第1,2並列pn層51,54とn+型出発基板41との間の部分がSJ構造でない通常のn型ドリフト領域2aであってもよい。
【0071】
第1,2並列pn層51,54は、n-型エピタキシャル層42の内部の上述した所定位置に設けられている。第1,2並列pn層51,54は、例えば、ドリフト層2となるn-型エピタキシャル層42を複数回に分けて多段にエピタキシャル成長させるごとに当該n-型エピタキシャル層42に深さ方向Zに同導電型領域同士が隣接するようにイオン注入によりn型領域52,55およびp型領域53,56となる各領域をそれぞれ選択的に形成する多段エピタキシャル方式を用いて形成される。
【0072】
第1並列pn層51と第2並列pn層54とは半導体基板40のおもて面の第2面40bからの深さ位置が異なる。このため、多段エピタキシャル方式によって第1,2並列pn層51,54を同時に形成するには、複数回に分けて多段にエピタキシャル成長させるドリフト層2となるn-型エピタキシャル層42の最上段または(最上段から1,2段)には第1並列pn層51のみを形成し、第2並列pn層54の直上にあたる部分にn-型エピタキシャル層42のイオン注入しない部分を残せばよい。
【0073】
また、第1,2並列pn層51,54は、例えば、n型エピタキシャル層にトレンチ(以下、SJトレンチとする)を形成してn型領域52,55となる部分を残し、SJトレンチをp型領域53,56となるp型エピタキシャル層で埋め込むトレンチ埋め込みエピタキシャル方式を用いて形成されてもよい。トレンチ埋め込みエピタキシャル方式によって第1,2並列pn層51,54を同時に形成するには、n型領域52,55となるn型エピタキシャル層を2回以上に分けて多段にエピタキシャル成長させればよい。
【0074】
例えば、トレンチ埋め込みエピタキシャル方式によって第1,2並列pn層51,54を同時に形成するにあたって、n型領域52,55となるn型エピタキシャル層を2回に分けて多段にエピタキシャル成長させるとする。この場合、1段目のn型エピタキシャル層にはp型領域53,56を埋め込むSJトレンチを形成する。2段目のn型エピタキシャル層にはp型領域53を埋め込むSJトレンチのみを形成し、n-型エピタキシャル層42の第2並列pn層54の直上にあたる部分にSJトレンチを形成しなければよい。
【0075】
活性領域10においてp型ベース領域4と第1並列pn層51(ドリフト層2)との間に、n型電流拡散領域3およびp+型領域11,12がそれぞれ選択的に設けられている。n型電流拡散領域3およびp+型領域11,12は、例えば、n-型エピタキシャル層42の内部にイオン注入により形成された拡散領域である。n型電流拡散領域3およびp+型領域11,12は、ゲートトレンチ7の底面よりもn+型ドレイン領域1側に深い位置に配置され、ゲートトレンチ7に平行して第2方向Yに直線状に延在している。
【0076】
n型電流拡散領域3は、キャリアの広がり抵抗を低減させる、いわゆる電流拡散層(CSL:Current Spreading Layer)である。n型電流拡散領域3は、互いに隣り合うゲートトレンチ7間において、p+型領域11,12、p型ベース領域4および第1並列pn層51のn型領域52に接し、ゲートトレンチ7の底面よりもn+型ドレイン領域1側に深い位置に達する。n型電流拡散領域3に代えて、n-型エピタキシャル層42のイオン注入されない部分が配置されてもよい。
【0077】
p+型領域11,12は、ゲートトレンチ7の底面にかかる電界を緩和する機能を有する。p+型領域11,12は、深さ方向Zにそれぞれ第1並列pn層51の異なるp型領域53に接する。p+型領域11は、p型ベース領域4と離れて配置され、深さ方向Zにゲートトレンチ7の底面に対向する。p+型領域12は、互いに隣り合うゲートトレンチ7間において、p型ベース領域4に接して、かつp+型領域11およびゲートトレンチ7と離れて設けられている。
【0078】
層間絶縁膜14は、活性領域10のコンタクト部および後述する中間領域20の外周コンタクト部を除いて、半導体基板40のおもて面の全面を覆う。活性領域10のコンタクト部は、ソース電極15とn+型ソース領域5およびp++型コンタクト領域6とのオーミックコンタクト部である。中間領域20の外周コンタクト部は、ソース電極15と後述するp++型外周コンタクト領域21(p++型外周コンタクト領域21を設けない場合はp型ベース領域4)とのオーミックコンタクト部である。
【0079】
中間領域20において半導体基板40のおもて面側には、活性領域10から、p型ベース領域4と、第1方向Xに最も外側のゲートトレンチ7の底面に対向するp+型領域11(以下、p+型外周領域13とする)と、が延在している。中間領域20のp型ベース領域4は、活性領域10の周囲を囲む。中間領域20において、半導体基板40のおもて面の第1面40aとp型ベース領域4との間に、p++型コンタクト領域(以下、p++型外周コンタクト領域)21が選択的に設けられている。
【0080】
p++型外周コンタクト領域21は、MOSFETのスイッチング等によりエッジ終端領域30に蓄積された少数キャリア(正孔)を、MOSFETのオフ時にp+型外周領域13およびp型ベース領域4を介してソース電極15へ引き抜くためのソース電極15との外周コンタクト部である。p++型外周コンタクト領域21は、活性領域10の周囲を囲む。p++型外周コンタクト領域21は、ソース電極15の中間領域に延在する部分にオーミック接触している。
【0081】
p+型外周領域13は、活性領域10と中間領域20との境界に沿って延在して、活性領域10の周囲を囲む。p+型外周領域13には、活性領域10のすべてのp+型領域11,12の端部が連結されている。また、p+型外周領域13は、半導体基板40のおもて面の段差31よりも外側へ延在して、半導体基板のおもて面の第2面40bに露出されている。半導体基板40のおもて面の第2面40bに露出とは、当該第2面40b上の後述するフィールド酸化膜35に接することである。
【0082】
中間領域20およびエッジ終端領域30において半導体基板40のおもて面の上には、p++型外周コンタクト領域21よりも外側の全面に、フィールド酸化膜35および層間絶縁膜14を順に積層した絶縁層が設けられている。中間領域20においてフィールド酸化膜35上には、p++型外周コンタクト領域21よりも外側に、ゲート電極9とゲートパッド(不図示)とを電気的に接続するゲートランナーとなるポリシリコン(poly-Si)層22および金属配線層23が順に積層されている。
【0083】
半導体基板40のおもて面の第2面40bの表面領域においてn-型エピタキシャル層42の内部に、JTE構造32を構成する複数のp型領域が選択的に設けられ、その外側にJTE構造32と離れてn+型チャネルストッパ領域34が選択的に設けられている。JTE構造32を構成する複数のp型領域のうちの最も内側のp型領域は、半導体基板40のおもて面に平行な方向にp+型外周領域13に接する。JTE構造32を構成する複数のp型領域は、p+型外周領域13を介してソース電極15の電位に固定されている。
【0084】
JTE構造32とn+型チャネルストッパ領域34との間はSJ構造でない通常のn-型ドリフト領域2bである。JTE構造32を構成する複数のp型領域(p-型領域33)とn+型チャネルストッパ領域34とはn-型エピタキシャル層42へのイオン注入により形成された拡散領域であり、半導体基板40のおもて面の第2面40bに露出されている。通常のn-型ドリフト領域2bは、n-型エピタキシャル層42の表面領域にイオン注入されずに残る部分であり、半導体基板40のおもて面の第2面40bに露出されている。
【0085】
第1並列pn層51のn型領域52およびp型領域53は、中間領域20において深さ方向Zにp+型外周領域13に隣接し、エッジ終端領域30において深さ方向ZにJTE構造32のp-型領域33に隣接する。第2並列pn層54のn型領域55およびp型領域56は、深さ方向ZにJTE構造32のp-型領域33に対向する。第2並列pn層54のn型領域55およびp型領域56は、半導体基板40のおもて面の第2面40bからJTE構造32のp-型領域33およびn+型チャネルストッパ領域34よりも深い位置に配置され、これらの領域に接していない。
【0086】
第2並列pn層54とJTE構造32のp-型領域33との間はSJ構造でない通常のn-型ドリフト領域2bである。第2並列pn層54とJTE構造32のp-型領域33との間隔W3は、例えば0.5μm以上1.5μm以下程度である。第2並列pn層54と半導体基板40の端部との間にSJ構造でない通常のn-型ドリフト領域2cが配置されてもよい。通常のn-型ドリフト領域2cは、n-型エピタキシャル層42の、第2並列pn層54と半導体基板40の端部との間にイオン注入されずに残る部分である。
【0087】
半導体基板40のおもて面の第2,3面40b,40cは、上述したようにフィールド酸化膜35および層間絶縁膜14を順に積層した絶縁層で覆われている。パッシベーション膜36は、半導体基板40のおもて面の全面を覆って、半導体基板40のおもて面を保護する。ソース電極15の、パッシベーション膜36の開口部から露出する部分はソースパッドとして機能する。半導体基板40の裏面(n+型出発基板41の裏面)の全面に、ドレイン電極(第2電極)16が設けられている。
【0088】
次に、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置50の製造方法について説明する。まず、n+型ドレイン領域1となるn+型出発基板(半導体ウエハ)41のおもて面上に、第1,2並列pn層51,54を含むドリフト層2を形成する。例えば多段エピタキシャル方式を用いる場合、ドリフト層2となるn-型エピタキシャル層42を複数回に分けて多段(例えば9段)にエピタキシャル成長させるごとに当該n-型エピタキシャル層42に深さ方向Zに同導電型領域同士が隣接するようにイオン注入によりn型領域52,55およびp型領域53,56となる各領域をそれぞれ選択的に形成する。
【0089】
複数回に分けて多段にエピタキシャル成長させたn-型エピタキシャル層42の最上段(または最上段から1,2段(例えば9段目もしくは8,9段目))には第1並列pn層51のみを形成し、第2並列pn層54の直上にあたる部分にn-型エピタキシャル層42のイオン注入しない部分を残す。これにより、第1並列pn層51がn-型エピタキシャル層42の表面に露出され、第2並列pn層54がn-型エピタキシャル層42の表面に露出されない。このため、後の工程で形成される半導体基板40のおもて面の第2面40bからの深さ位置が異なる第1,2並列pn層51,54を形成することができる。
【0090】
また、イオン注入により、第1並列pn層51の表面領域に、n型電流拡散領域3、p+型領域11,12およびp+型外周領域13を形成する。活性領域10および中間領域においてn-型エピタキシャル層42の最上段に第1並列pn層51を形成せずに、n型電流拡散領域3、p+型領域11,12およびp+型外周領域13を形成してもよい。n型電流拡散領域3、p+型領域12およびp+型外周領域13は下部および上部の2段に分けてn-型エピタキシャル層42をエピタキシャル成長させるごとに形成し、p+型領域11はp+型領域12およびp+型外周領域13の下部と同時に形成してもよい。
【0091】
次に、n
-型エピタキシャル層42の上に、p型ベース領域4となるp型エピタキシャル層43をエピタキシャル成長させる。これによって、n
+型出発基板41上にエピタキシャル層42,43が順に積層され、かつエピタキシャル層42に第1,2並列pn層51,54を含む半導体基板(半導体ウエハ)40が作製される。次に、p型エピタキシャル層43の、エッジ終端領域30側の部分をエッチングにより除去して、半導体基板40のおもて面に、活性領域10側の部分(第1面40a)よりもエッジ終端領域30側の部分(第2面40b)で低くした段差31を形成する(
図3,4参照)。
【0092】
エッジ終端領域30において新たに半導体基板40のおもて面となった第2面40bに、n-型エピタキシャル層42が露出される。半導体基板40のおもて面の、第1面40aと第2面40bとの間の部分(第3面40c)は例えば第1,2面40a,40bに対して鈍角(傾斜面)をなしてもよいし、略直角(垂直面)をなしていてもよい。半導体基板40のおもて面の第2,3面40b,40cには、p型ベース領域4およびp+型外周領域13が露出される。この段差31を形成するエッチングにより、p型エピタキシャル層43とともにn-型エピタキシャル層42が若干除去されてもよい。
【0093】
次に、イオン注入により、n+型ソース領域5、p++型コンタクト領域6、p++型外周コンタクト領域21、JTE構造32の複数のp型領域(p-型領域33)、およびn+型チャネルストッパ領域34をそれぞれ選択的に形成する。n+型ソース領域5、p++型コンタクト領域6およびp++型外周コンタクト領域21は、p型エピタキシャル層43の表面領域にそれぞれ形成する。p型エピタキシャル層43の、n+型ソース領域5、p++型コンタクト領域6およびp++型外周コンタクト領域21を除く部分がp型ベース領域4となる。
【0094】
JTE構造32のp-型領域33およびn+型チャネルストッパ領域34は、エッジ終端領域30における半導体基板40のおもて面の第2面40bに露出するn-型エピタキシャル層42の表面領域にそれぞれ選択的に形成する。n+型ソース領域5、p++型コンタクト領域6、p++型外周コンタクト領域21、JTE構造32の複数のp型領域(p-型領域33)、およびn+型チャネルストッパ領域34の形成順序は入れ替え可能である。段差31の形成前にn+型ソース領域5、p++型コンタクト領域6およびp++型外周コンタクト領域21を形成してもよい。
【0095】
次に、エピタキシャル層42,43にイオン注入した不純物を活性化させるための熱処理(以下、活性化アニールとする)を行う。次に、半導体基板40のおもて面からn+型ソース領域5およびp型ベース領域4を貫通して、n型電流拡散領域3の内部においてp+型領域11に対向するゲートトレンチ7を形成する。次に、半導体基板40のおもて面およびゲートトレンチ7の内壁に沿ってゲート絶縁膜8を形成する。次に、ゲートトレンチ7の内部に埋め込むように半導体基板40のおもて面上に堆積したポリシリコン層をエッチバックして、ゲート電極9となる部分をゲートトレンチ7の内部に残す。
【0096】
中間領域20およびエッジ終端領域30において半導体基板40のおもて面にフィールド酸化膜35を形成する。中間領域20においてフィールド酸化膜35上に、ゲートランナーとなるポリシリコン層22を形成する。このポリシリコン層22は、ゲート電極9の形成時に半導体基板40のおもて面上に堆積したポリシリコン層の一部で形成してもよい。次に、半導体基板40のおもて面の全面に層間絶縁膜14を形成する。次に、一般的な方法により半導体基板40の両面にそれぞれ表面電極(ソース電極15、ゲートパッド、金属配線層23およびドレイン電極16)を形成する。
【0097】
次に、半導体基板40のおもて面の、ソース電極15の一部(ソースパッドとなる部分)と、ゲートパッドと、金属配線層23と、を除く部分をパッシベーション膜36で覆って保護する。その後、半導体ウエハ(半導体基板40)をダイシング(切断)して個々のチップ状に個片化することで、
図1~4に示す炭化珪素半導体装置50が完成する。
【0098】
以上、説明したように、実施の形態1によれば、エッジ終端領域の第2並列pn層のp型領域とJTE構造のp-型領域とが接していない。第2並列pn層とJTE構造のp-型領域との間はSJ構造でない通常のn-型ドリフト領域であり、JTE構造のp-型領域と通常のn-型ドリフト領域とのpn接合が半導体基板のおもて面の第2面に平行に形成されている。MOSFETのオフ時に、このpn接合から広がる空乏層により、JTE構造のp-型領域の内部まで完全に空乏化される。
【0099】
これによって、JTE構造のp-型領域に部分的に電界が集中することを抑制することができる。このため、JTE構造のp-型領域に対向する部分でエッジ終端領域の並列pn層のすべてのp型領域が接する従来構造と比べて、エッジ終端領域の耐圧(静耐圧)を向上させることができる。また、エッジ終端領域の耐圧が向上することで、エッジ終端領域でアバランシェ降伏することを抑制することができる。このため、エッジ終端領域のアバランシェ耐量(動耐圧)を向上させることができる。
【0100】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構造について説明する。
図5は、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。
図6は、
図5の切断線B1-B2における断面構造を示す断面図である。
図6(a)にはp型連結領域(第2導電型連結領域)61が深さ方向Zにn
+型チャネルストッパ領域34に対向している場合を示し、
図6(b)にはp型連結領域61が深さ方向Zにn
+型チャネルストッパ領域34に対向していない場合を示す。
【0101】
図5,6には、第2並列pn層54のp型領域56およびp型連結領域61を、第1並列pn層51のp型領域53と異なるハッチングで示す。
図5,6には、例えば3mm
2角の半導体基板40のレイアウトを示す。
図5では、第1,2並列pn層51,54のn型領域52,55およびp型領域53,56の個数が簡略化されている。実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置60の活性領域10および中間領域20の断面構造はそれぞれ
図2,3と同様である。
【0102】
実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置60が実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置50(
図1,4参照)と異なる点は、第2並列pn層54のp型領域56の端部(ストライプの長手方向の端部)がp型連結領域61を介して第1並列pn層51のp型領域53に連結されてソース電極15(
図2,3参照)の電位に固定されている点である。実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置60のエッジ終端領域30のp型連結領域61以外の構成は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置50と同様である。
【0103】
p型連結領域61は、エッジ終端領域30における半導体基板40のおもて面の第2面40bの表面領域においてn-型エピタキシャル層42の内部に選択的に設けられている。p型連結領域61は、第2並列pn層54のすべてのp型領域56を第1並列pn層51のp型領域53に連結する。具体的には、p型連結領域61は、例えば、第2並列pn層54のすべてのp型領域56の上端部(層間絶縁膜14側の端部)を連結して、第1並列pn層51のp型領域53側へ延在しp型領域53に接する。
【0104】
p型連結領域61は、例えば第1,2並列pn層51,54のp型領域53,56のすべての端部(ストライプの長手方向の端部)同士をつなぐように、半導体基板40の第1方向Xに平行な辺に沿ってエッジ終端領域30を直線状に延在している(
図5)。p型連結領域61は、例えば、第1,2並列pn層51,54のp型領域53,56の両端部にそれぞれ設けられている。半導体基板40のおもて面側から見て、p型連結領域61と第1,2並列pn層51,54のp型領域53,56とで梯子状にp型領域が配置される。
【0105】
p型連結領域61は、JTE構造32よりも外側に、JTE構造32と離れて設けられている。p型連結領域61は、半導体基板40のおもて面の第2面40bからJTE構造32およびn
+型チャネルストッパ領域34よりも深い位置に配置されている。p型連結領域61は、深さ方向Zにn
+型チャネルストッパ領域34に対向する位置に配置されてもよいし(
図6(a))、n
+型チャネルストッパ領域34よりも内側に配置されていてもよい(
図6(b))。
【0106】
実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置60の製造方法は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置50の製造方法において、第2並列pn層54のp型領域56の上端部となる部分を形成する際に、第2並列pn層54のp型領域56の上端部と同時にp型連結領域61を形成すればよい。
【0107】
以上、説明したように、実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果を奏する。また、実施の形態2によれば、第2並列pn層のp型領域がp型連結領域を介して活性領域を通る第1並列pn層のp型領域に電気的に接続されている。これにより、MOSFETのオン時にエッジ終端領域に蓄積された少数キャリア(正孔)を、MOSFETのオフ時に第1並列pn層のp型領域を介して、半導体基板の大半を占める面積(表面積)の広い活性領域からソース電極へ吐き出すことができる。
【0108】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置の構造について説明する。
図7は、実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。
図8は、
図7の矩形枠Cを拡大して示す平面図である。
図9,10は、
図7の切断線D1-D2および切断線E1-E2における断面構造である。
図11は、
図7の切断線D2-D3および切断線E2-E3における断面構造である。
図7の切断線D2-D3および切断線E2-E3のいずれにおいても第2並列pn層74は同じ断面構造である。
【0109】
図9,10の活性領域10の断面構造は、
図2の符号51~53を符号71~73に変えたものである。
図7には、例えば3mm
2角の半導体基板40のレイアウトを示す。
図7には、第1,2並列pn層71,74のp型領域73,76をそれぞれ異なるハッチングした直線状およびハッチングしたドット状に示す。
図8には、第1,2並列pn層71,74のp型領域73,76をそれぞれ太線およびドットで示す。
図7,9,10では、第1,2並列pn層71,74のn型領域72,75およびp型領域73,76の個数が簡略化され、
図8と異なる。
【0110】
実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置70が実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置50(
図1,4参照)と異なる点は、次の3点である。1つ目の相違点は、半導体基板40のおもて面側から見て、エッジ終端領域30の第2並列pn層74のp型領域76をマトリクス状(ドット状)に配置し、n型領域75をp型領域76の周囲を囲む格子状に配置した点である。2つ目の相違点は、第1,2並列pn層71,74の境界が中間領域20内に位置する点である。3つ目の相違点は、第2並列pn層74が第1並列pn層71の周囲を囲む点である。
【0111】
例えば、従来構造(
図15~17)では、JTE構造132の複数のp型領域が内側から外側へ向かう法線方向に延在するのに対して、並列pn層151のn型領域152およびp型領域153には、JTE構造132に直交する部分(
図16:第1方向Xに平行な断面)と、JTE構造132に平行な部分(
図17:第2方向Yに平行な断面)と、が存在する。このため、並列pn層151を、JTE構造132の延在方向に対する断面構造の異なる両部分で耐圧が略同じとなる最適条件にする必要があるため、設計が煩雑になる。
【0112】
また、従来構造では、並列pn層151のn型領域152およびp型領域153にJTE構造132に直交する部分とJTE構造32に平行な部分とが存在することで、これらのいずれか一方の部分でエッジ終端領域130の耐圧が相対的に低くなる。このため、MOSFETのオフ時にエッジ終端領域130でアバランシェ降伏すると、エッジ終端領域130の耐圧が相対的に低くなっている部分にアバランシェ降伏で発生したアバランシェ電流が集中し、アバランシェ電流の集中箇所でアバランシェ耐量が低くなる。
【0113】
一方、実施の形態3においては、半導体基板40のおもて面側から見て第2並列pn層74のp型領域76がマトリクス状に配置されていることで、JTE構造32の延在方向(法線方向)に対して、エッジ終端領域30の第2並列pn層74は第1,2方向X,Yともに略同じ断面構造となっている(
図11)。このため、従来構造のように並列pn層151がJTE構造132の延在方向に対して第1,2方向X,Yで異なる断面構造となっている場合と比べて、設計を簡略化することができる。
【0114】
また、第2並列pn層74がJTE構造32の延在方向に対して第1,2方向X,Yともに略同じ断面構造であるため、エッジ終端領域30は全体にわたって略同じ耐圧となる。エッジ終端領域30に相対的に耐圧が低い部分が生じないことで、エッジ終端領域30の耐圧を向上させることができる。また、エッジ終端領域30を全体にわたって略同じ耐圧にすることができるため、エッジ終端領域30の全体でアバランシェ電流を負担することができ、エッジ終端領域30のアバランシェ耐量を向上させることができる。
【0115】
実施の形態3において、活性領域10の第1並列pn層71の第2方向Y(長手方向)の長さは、半導体基板40の端部コーナー付近において、第1方向Xに外側へ向かうにしたがって段階的に短くなっている(
図8)。第1並列pn層71のn型領域72およびp型領域73は、深さ方向Zにp
+型外周領域13に接する。第2並列pn層74のn型領域75およびp型領域76は、p
+型外周領域13、JTE構造32およびn
+型チャネルストッパ領域(不図示)に接していない(
図9,10)。
【0116】
第2並列pn層74は、深さ方向Zにp+型外周領域13およびJTE構造32のp-型領域33に対向する。第2並列pn層74は、深さ方向Zにn+型チャネルストッパ領域に対向していてもよい。第2並列pn層74は、半導体基板40のおもて面からp+型外周領域13およびJTE構造32のp-型領域33よりも深い位置に配置されている。第2並列pn層74のp型領域76と、p+型外周領域13およびJTE構造32のp-型領域33と、の間はSJ構造でない通常のn-型ドリフト領域2bである。
【0117】
第2並列pn層54とJTE構造32のp-型領域33との間隔W13は、実施の形態1と同様に、例えば0.5μm以上1.5μm以下程度である。中間領域20で第1,2並列pn層71,74のn型領域72,75同士が連結されている。第1,2並列pn層71,74のp型領域73,76同士は接していない。第1,2並列pn層71,74の境界を中間領域20に配置することで、中間領域20とエッジ終端領域30の境界付近においてエッジ終端領域30の所定耐圧を安定して得ることができる。
【0118】
また、第1,2並列pn層71,74の境界を中間領域20に配置し、かつ第1並列pn層71のn型領域72およびp型領域73を第2方向Yに延在するストライプ状に配置することで、n型領域72およびp型領域73の第2方向Yの位置ずれによる活性領域10の耐圧低下が抑制される。また、第1,2並列pn層71,74の境界を中間領域20に配置することで、第2並列pn層74のp型領域76のドットパターンをJTE構造32よりも内側に配置することができるため、エッジ終端領域30のコーナー部(半導体基板40の4つの頂点付近)で第1,2方向X,Yいずれから見ても第2並列pn層74のレイアウトが等しくなり、均一な耐圧を得ることができる。
【0119】
第2並列pn層74のn型領域75とp型領域76とは概ねチャージバランスがとれている。第2並列pn層74のn型領域75およびp型領域76は第1並列pn層71のn型領域72およびp型領域73と略同じチャージバランスとなっている。第2並列pn層74のn型領域75およびp型領域76が第1並列pn層71のn型領域72およびp型領域73と略同じチャージバランスとなっていればよく、第2並列pn層74のp型領域76の平面形状は種々変更可能であり、例えば略矩形状や円形状であってもよい。
【0120】
以上、説明したように、実施の形態3によれば、実施の形態1と同様の効果を奏する。また、実施の形態3によれば、第2並列pn層がJTE構造の延在方向に対して第1,2方向ともに略同じ断面構造であるため、設計を簡略化させることができる。また、第2並列pn層がJTE構造の延在方向に対して第1,2方向ともに略同じ断面構造であるため、エッジ終端領域を全体にわたって略同じ耐圧(静耐圧)にすることができ、エッジ終端領域の耐圧およびアバランシェ耐量(動耐圧)をさらに向上させることができる。
【0121】
(実施例1)
上述した実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置50(
図1~4参照)のエッジ終端領域30の耐圧について検証した。
図12は、実施例1のエッジ終端領域の電界強度のシミュレーション結果を示す分布図である。上述した実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置50(以下、実施例1とする)のエッジ終端領域30の深さ方向Zの電界強度分布を
図12(a)に示す。すなわち、実施例1においては、第2並列pn層54は深さ方向ZにJTE構造32のp
-型領域33と離れて配置され、第2並列pn層54のp型領域56とJTE構造32のp
-型領域33との間はSJ構造でない通常のn
-型ドリフト領域2bである。
【0122】
比較として、従来の炭化珪素半導体装置150(以下、従来例1とする:
図15~17参照)のエッジ終端領域30の深さ方向Zの電界強度分布を
図12(b)に示す。従来例1が実施例1と異なる点は、深さ方向ZにJTE構造132に対向する部分で並列pn層151のすべてのp型領域153がJTE構造132のp
-型領域133に接する点である。実施例1の第1,2並列pn層51,54のn型領域52,55の不純物濃度および幅W1n,W2nを同じ設計条件とし、p型領域53,56の不純物濃度および幅W1p,W2pを同じ設計条件とした。従来例の並列pn層151を実施例1の第1並列pn層51と同じ設計条件とした。
【0123】
図12に示す結果から、従来例1では、MOSFETのオフ時に、JTE構造132のp
-型領域133が並列pn層151のp型領域153との連結部の直上の部分で空乏化しにくいことが確認された(枠F2で囲む部分)。一方、実施例1においては、MOSFETのオフ時に、JTE構造32のp
-型領域33と通常のn
-型ドリフト領域2bとのpn接合から広がる空乏層により、JTE構造32の略全体にわたってJTE構造32のp
-型領域33の内部まで完全に空乏化されることが確認された(枠F1で囲む部分)。これにより、実施例1は、従来例1と比べてエッジ終端領域30の耐圧を向上させることができることが確認された。
【0124】
(実施例2)
第2並列pn層54のp型領域56の幅W2pとエッジ終端領域30の耐圧との関係について検証した。
図13は、実施例2のエッジ終端領域の耐圧のシミュレーション結果を示す特性図である。実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置50(以下、実施例2とする:
図1~4参照)の活性領域10および中間領域20(活性領域+中間領域)の耐圧分布と、エッジ終端領域30の耐圧分布と、を
図13に示す。実施例2の全体の耐圧を3.3kVに設定した。実施例2の第2並列pn層54とJTE構造32のp
-型領域33との間隔W3を1.0μmとした。
【0125】
また、
図13には、比較として、従来の炭化珪素半導体装置150(以下、従来例2とする:
図15~17参照)のエッジ終端領域130の耐圧分布を示す。従来例2が実施例2と異なる点は、深さ方向ZにJTE構造132に対向する部分で並列pn層151のすべてのp型領域153がJTE構造132のp
-型領域133に接する点である。従来例2の活性領域110および中間領域120(活性領域+中間領域)の耐圧分布は実施例2と同じである。
図13の従来例2のエッジ終端領域130の耐圧分布は、
図14のエッジ終端領域130の耐圧分布と同じである。
【0126】
実施例2において、
図13の横軸は第2並列pn層54のp型領域56の幅W2pの中心条件からの差分ΔWp(%)であり、縦軸は耐圧である。第2並列pn層54のp型領域56の幅W2pの中心条件とは、「n型領域52の不純物濃度×n型領域52の幅W1n=p型領域53の不純物濃度×p型領域53の幅W1p」を満たす第1並列pn層51のp型領域53の幅W1pに対して、
図13のΔWp=(第1並列pn層51のp型領域53の幅W1p-第2並列pn層54のp型領域56の幅W2p)/(第1並列pn層51のp型領域53の幅W1p)=0%に相当する。
【0127】
ΔWp<0%の場合およびΔWp>0%の場合は、それぞれ、第1並列pn層51のp型領域53の幅W1pに対して第2並列pn層54のp型領域56の幅W2pを広くした場合および狭くした場合である。従来例2において、
図13の横軸の差分ΔWp(%)は
図14の横軸と同じである。従来例2において耐圧を3.3kVに設定する場合、エッジ終端領域130の並列pn層151のp型領域153の幅Wpは、活性領域110およびエッジ終端領域130ともに耐圧3.3kV以上となるΔWp=-10%程度に設定される。
【0128】
一方、
図13に示す結果から、実施例2においては、第2並列pn層54のp型領域56の幅W2pに依らず、活性領域10および中間領域20の耐圧よりもエッジ終端領域30の耐圧が小さくなったが、従来例2と比べてエッジ終端領域30の耐圧が高くなることが確認された。なお、実施例2は、活性領域110およびエッジ終端領域130の並列pn層151のp型領域153の各幅をそれぞれ実施例2の第1,2並列pn層51,54のp型領域53,56の各幅W1p,W2pと同じにした従来例2と比較している。
【0129】
実施例2において、第2並列pn層54のp型領域56の幅W2pを第1並列pn層51のp型領域53の幅W1pよりも20%以下程度の範囲内で広くすることで(最大でΔWp=-20%)、エッジ終端領域30の耐圧を規定耐圧(3.3kV)以上にすることができることが確認された。また、第2並列pn層54のp型領域56の幅W2pを第1並列pn層51のp型領域53の幅W1pよりも5%以上15%以下程度に広くすることで(ΔWp=-15%~-5%)、エッジ終端領域30の耐圧をさらに高くすることができることが確認された。
【0130】
例えば、従来例のエッジ終端領域130のp型領域153の幅を広くしてもよい範囲は活性領域110のp型領域153の幅よりも10%±2%程度であるため、実施例2は従来例と比べてエッジ終端領域30の第2並列pn層54の設計の自由度が高いことがわかる。また、実施例2においては、第2並列pn層54のp型領域56の幅W2pを第1並列pn層51のp型領域53の幅W1pよりも10%程度広くすることで、エッジ終端領域30の耐圧を活性領域10の耐圧程度まで高くすることができることが確認された。
【0131】
以上において本発明は、上述した各実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上述した各実施の形態において、並列pn層とn+型出発基板との間のSJ構造でない通常のn型ドリフト領域の不純物濃度が並列pn層のn型領域の不純物濃度よりも高くてもよい。また、本発明は、導電型(n型、p型)を反転させても同様に成り立つ。
【産業上の利用可能性】
【0132】
以上のように、本発明にかかる炭化珪素半導体装置は、電力変換装置や種々の産業用機械などの電源装置などに使用されるSJ構造のパワー半導体装置に有用である。
【符号の説明】
【0133】
1 n+型ドレイン領域
2 ドリフト層
2a 第1,2並列pn層とn+型出発基板との間のSJ構造でない通常のn型ドリフト領域
3 n型電流拡散領域
4 p型ベース領域
5 n+型ソース領域
6 p++型コンタクト領域
7 ゲートトレンチ
8 ゲート絶縁膜
9 ゲート電極
10 活性領域
11,12,13 p+型領域
14 層間絶縁膜
15 ソース電極
16 ドレイン電極
20 中間領域
21 p++型外周コンタクト領域
22 ポリシリコン層(ゲートランナー)
23 金属配線層(ゲートランナー)
30 エッジ終端領域
31 半導体基板のおもて面の段差
32 JTE構造
33 JTE構造のp-型領域
34 n+型チャネルストッパ領域
35 フィールド酸化膜
36 パッシベーション膜
40 半導体基板
40a 半導体基板のおもて面の活性領域側の部分(第1面)
40b 半導体基板のおもて面のエッジ終端領域側の部分(第2面)
40c 半導体基板のおもて面の、第1面と第2面とをつなぐ部分(第3面)
41 n+型出発基板
42 n-型エピタキシャル層
43 p型エピタキシャル層
50,60,70 炭化珪素半導体装置
51,71 第1並列pn層
52,72 第1並列pn層のn型領域
53,73 第1並列pn層のp型領域
54,74 第2並列pn層
55,75 第2並列pn層のn型領域
56,76 第2並列pn層のp型領域
61 p型連結領域
W1n 第1並列pn層のn型領域の幅
W1p 第1並列pn層のp型領域の幅
W2n 第2並列pn層のn型領域の幅
W2p 第2並列pn層のp型領域の幅
W3,W13 第2並列pn層とJTE構造のp-型領域との間隔
X 半導体基板のおもて面に平行な方向(第1方向)
Y 半導体基板のおもて面に平行で第1方向と直交する方向(第2方向)
Z 深さ方向