(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115003
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】試験測定装置及び試験測定装置における方法
(51)【国際特許分類】
G01R 29/02 20060101AFI20230810BHJP
G01R 31/3173 20060101ALI20230810BHJP
G01R 31/28 20060101ALI20230810BHJP
H04B 3/462 20150101ALI20230810BHJP
【FI】
G01R29/02 L
G01R31/3173
G01R31/28 R
H04B3/462
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023016571
(22)【出願日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】202221006430
(32)【優先日】2022-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】18/105,736
(32)【優先日】2023-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】マドゥスーダン・アチャリア
(72)【発明者】
【氏名】ヨゲシュ・エム・パイ
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナ・エヌ・エイチ・スリ
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・ビー・アンブローズ
(72)【発明者】
【氏名】ブレア・バティ
(72)【発明者】
【氏名】ダラス・ジェイ・モーラー
(57)【要約】
【課題】高速シリアル・データで発生する電源誘導ジッタ(PSIJ)を特定し、測定する。
【解決手段】試験測定装置1100には、測定ユニット1120があり、電源の出力のノイズを測定し、被試験デバイス(DUT)1101内の上記電源に結合されたデータ生成回路によって生成されるシリアル・データ信号のジッタを測定し、シリアル・データ信号のジッタに対する電源から測定されたノイズの相関関係を明らかにする。この相関処理は、周波数領域で行っても良い。測定されたノイズと測定されたジッタのスペクトル・プロットが生成され、ユーザに表示されても良い。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験測定装置における方法であって、
電源の出力におけるノイズを測定する処理と、
上記電源に結合されたデータ生成回路によって生成されるシリアル・データ信号のジッタを測定する処理と、
上記電源から測定されたノイズと上記シリアル・データ信号のジッタとの相関関係を明らかにする処理と
を具える方法。
【請求項2】
ある周波数範囲に広がる測定されたノイズの周波数領域での第1スペクトル・プロット表示を生成する処理と、
同じ上記周波数範囲に広がる測定されたジッタの周波数領域での第2スペクトル・プロット表示を生成する処理と、
出力表示画面に上記第1スペクトル・プロット表示及び上記第2スペクトル・プロット表示を表示する処理と
を更に具える請求項1による試験測定装置における方法。
【請求項3】
上記電源から測定されたノイズと上記シリアル・データ信号のジッタとの相関関係を明らかにする処理が、
ある周波数範囲を通して上記電源の出力のノイズ成分を探索する処理と、
同じ上記周波数範囲を通して上記シリアル・データ信号のジッタ成分を探索する処理と、
上記電源の出力の上記ノイズ成分が第1閾値を超え、かつ、上記シリアル・データ信号の上記ジッタ成分が第2閾値を超える上記周波数範囲内の特定の周波数を求める処理と
を有する請求項1による試験測定装置における方法。
【請求項4】
生成したストレス信号を上記特定の周波数で上記電源に印加する処理を更に具える請求項1による試験測定装置における方法。
【請求項5】
上記シリアル・データ信号の垂直ノイズを測定する処理と、
上記シリアル・データ信号の上記垂直ノイズに対する上記電源から測定されたノイズの相関関係を明らかにする処理と
を更に具える請求項1による試験測定装置における方法。
【請求項6】
上記シリアル・データ信号にノッチ・フィルタを適用してフィルタ処理されたシリアル・データ信号を生成する処理と、
上記フィルタ処理されたシリアル・データ信号の視覚的出力を表示する処理と
を更に具える請求項1による試験測定装置における方法。
【請求項7】
上記フィルタ処理されたシリアル・データ信号の視覚的出力を表示する処理が、上記フィルタ処理されたシリアル・データ信号のアイ・ダイアグラムを生成する処理、上記フィルタ処理されたシリアル・データ信号のスペクトル・プロット表示を生成する処理、又は、上記フィルタ処理されたシリアル・データ信号のヒストグラムを生成する処理を有する請求項6による試験測定装置における方法。
【請求項8】
上記ノッチ・フィルタの適用前後の上記シリアル・データ信号から生成されたアイ・ダイアグラムの開口部の増加量を求める処理と、
求めた改善量をディスプレイ上に表示する処理と
を更に具える請求項6による試験測定装置における方法。
【請求項9】
上記電源から測定されたノイズと上記シリアル・データ信号のジッタとの相関関係を明らかにする処理が、特定の周波数において、上記電源から測定されたリップルを上記シリアル・データのタイム・インターバル・エラーと比較する処理を有する請求項1による試験測定装置における方法。
【請求項10】
上記電源から測定された、予め定めた周波数より小さいリップルのみを上記相関関係を明らかにする処理に用いる請求項1による試験測定装置における方法。
【請求項11】
一連のインタラクティブな画面を上記試験測定装置のユーザに表示する処理を更に具え、上記一連のインタラクティブな画面は、ユーザから電圧のリップル周波数を受けて、受けたリップル周波数で電圧リップルを上記電源に印加する請求項1による試験測定装置における方法。
【請求項12】
試験測定システムであって、
電源と該電源から供給される電力を使用するシリアル・データ生成部を有する試験対象の被試験デバイス(DUT)と、
該DUTに結合された試験測定装置と
を具え、
該試験測定装置が、
上記DUTの電源から電源信号を受ける入力チャンネルと、
上記DUTによって生成されるシリアル・データ信号を受ける別の入力チャンネルと、
上記電源信号のノイズを測定すると共に上記DUTによって生成される上記シリアル・データ信号のジッタを測定するように構成される測定ユニットと、
上記シリアル・データ信号のジッタに対する上記電源から測定されるノイズの相関関係を明らかにするように構成されたプロセッサと、
相関関係の結果を表示するように構成されたディスプレイと
を有する試験測定システム。
【請求項13】
上記相関関係の結果が、
ある周波数範囲に広がる電源ノイズの周波数領域での第1スペクトル・プロット表示と、
同じ上記周波数範囲に広がるジッタの周波数領域での第2スペクトル・プロット表示と
を有する請求項12による試験測定システム。
【請求項14】
上記試験測定装置の上記プロセッサが、上記シリアル・データ信号にノッチ・フィルタを適用してフィルタ処理されたシリアル・データ信号を生成するように構成され、上記ディスプレイが、上記フィルタ処理されたシリアル・データ信号の視覚的出力を表示するように構成される請求項12による試験測定システム。
【請求項15】
上記フィルタ処理されたシリアル・データ信号の視覚的出力が、上記フィルタ処理されたシリアル・データ信号のアイ・ダイアグラム、上記フィルタ処理されたシリアル・データ信号のスペクトル・プロット表示又は上記フィルタ処理されたシリアル・データ信号のヒストグラムを有する請求項14による試験測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、信号品質分析に関し、より詳細には、高速シリアル(high-speed serial:HSS)データにおいて生じる電源誘導ジッタ(Power Supply Induced Jitter:PSIJ)の特定に関する。
【背景技術】
【0002】
高速シリアル・データを生成する現在のシステムでは、動作周波数は、異なる高速負荷をオンにする複数の電源レール(パワー・レール)で、最大数十GHzの値を達成できる。最新の回路における電源電圧の低下と、スイッチング速度の向上を考慮すると、現代のシステム設計者にとって最も困難なタスクの1つは、生成される高速データ信号の信号品質(Integrity:インテグリティ)を維持し、不完全な電力信号によるキャリーオーバーの影響を最小限に抑えることである。回路がサブ・マイクロ・メートルのサイズにまで微細化されて、電力信号が高速データ信号を生成するコンポーネントにますます物理的に近づき、キャリーオーバー効果が悪化するにつれて、このクロスオーバー効果を最小化する必要性が一層重要になる。
【0003】
シグナル(信号)インテグリティ(Signal integrity:SI)分析は、通常、ビット・エラー・レート(BER)の観点から、トランスミッタ、基準クロック、チャンネル及びレシーバ回路の性能に焦点を当てる。逆に、パワー(電力)インテグリティ(Power integrity:PI)分析は、通常、電圧スパイクと、低インピーダンスのリターン・パスなしで、一連の電源レールを介して一定の電力を供給する配電回路網(power distribution network:PDN)の能力に焦点を当てている。更に、高速システムでは、PIシステムとSIシステムは、ある程度相互依存しているため、PIの変化もSIの品質に影響を与える可能性がある。
【0004】
また、PDN自体がノイズやジッタの原因となる可能性がある。電圧レギュレータ・モジュール(voltage regulator module:VRM)、オンチップ・パッケージ、ピン、トレース、ビア、コネクタなど、このような回路で使用される回路設計とコンポーネントは、PDNのインピーダンスに影響を与えるため、供給される電力の品質が影響を受ける。従って、パワー・インテグリティの問題が、信号品質の低下を引き起こしているかどうかを分析することが重要である。
【0005】
更に、高速シリアル・ジッタに関連する問題を特定するには、電源レールとシリアル・データが同じ基板構造上に存在するため、電力品質及び信号品質の両方の問題を理解する必要がある。よって、電源誘導ジッタ(PSIJ)などのパワー・インテグリティの問題は、基板の寄生成分が回路の最終結果に影響を与えるため、シミュレーション段階など、新しい回路の設計段階の早い段階で特定するのが最善である。また、PSIJをシステム・レベルで評価することも重要であり、そうしないと、電源(Power Supply:PS)に起因する問題が正しく特定されない可能性がある。PSIJは、検証サイクルの最後に、高速側で検出するのが最適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2012-532369号公報
【特許文献2】特開2016-33513号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「ジッタ」、山下勝巳の「これだけは知っておきたいアナログ用語」、EDNジャパン、2011年5月13日公開、[オンライン]、[2023年2月6日検索]、インターネット<https://edn.itmedia.co.jp/edn/articles/1003/03/news127.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、検証サイクルの最後にPSIJが検出された後にだけ設計変更を行うのは、このような遅い段階で、そのような変更を行うと、多大な労力とやり直しが必要になるため、非効率である。また、上述したように、PSIJが、高速シリアル・データを生成する回路に及ぼす悪影響は、設計の小型化による部品密度の向上に伴い増大する。
【0009】
現在のシミュレーション・モデルは、複雑で時間がかかり、高速シリアル(HSS)データに現れるノイズの原因に関するガイダンスを提供しない。このため、HSSデータで生じる電源誘導ジッタ(PSIJ)を特定して測定するためのシンプルな解決手法がない。
【0010】
本開示による実施形態は、従来技術におけるこれら及び他の欠陥に取り組むものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下では、本願で開示される技術の理解に有益な実施例が提示される。この技術の実施形態は、以下で記述する実施例の1つ以上及び任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0012】
実施例1は、試験測定装置における方法であって、電源(Power Supply:PS)の出力におけるノイズを測定する処理と、上記電源に結合されたデータ生成回路によって生成されるシリアル・データ信号のジッタを測定する処理と、上記電源から測定されたノイズと上記シリアル・データ信号のジッタとの相関関係を明らかにする処理とを具える。
【0013】
実施例2は、実施例1による方法であって、ある周波数範囲に広がる測定されたノイズの周波数領域での第1スペクトル・プロット表示を生成する処理と、同じ上記周波数範囲に広がる測定されたジッタの周波数領域での第2スペクトル・プロット表示を生成する処理と、出力表示画面に上記第1スペクトル・プロット表示及び上記第2スペクトル・プロット表示を表示する処理とを更に具える。
【0014】
実施例3は、実施例2による方法であって、上記周波数範囲をユーザが指定する。
【0015】
実施例4は、実施例1~3のいずれかに記載の方法であって、上記電源から測定されたノイズと上記シリアル・データ信号のジッタとの相関関係を明らかにする処理が、ある周波数範囲を通して上記電源の出力のノイズ成分を探索する処理と、同じ上記周波数範囲を通して上記シリアル・データ信号のジッタ成分を探索する処理と、上記電源の出力のノイズ成分が第1閾値を超え、かつ、上記シリアル・データ信号のジッタ成分が第2閾値を超える上記周波数範囲内の特定の周波数を求める処理とを有する。
【0016】
実施例5は、実施例1~4のいずれかに記載の方法であって、生成したストレス信号を上記特定の周波数で上記電源に印加する処理を更に具える。
【0017】
実施例6は、実施例1~5のいずれかに記載の方法であって、上記電源の出力におけるノイズを測定する処理が、リップルを測定する処理を含む。
【0018】
実施例7は、実施例1~6のいずれかに記載の方法であって、上記シリアル・データ信号のジッタを測定する処理が、タイム・インターバル・エラーを測定する処理を含む。
【0019】
実施例8は、実施例1~7のいずれか1つに記載の方法であって、上記シリアル・データ信号の垂直ノイズを測定する処理と、上記シリアル・データ信号の上記垂直ノイズに対する上記電源から測定されたノイズの相関関係を明らかにする処理とを更に具える。
【0020】
実施例9は、実施例1~8のいずれか1つに記載の方法であって、上記シリアル・データ信号にノッチ・フィルタを適用してフィルタ処理されたシリアル・データ信号を生成する処理と、上記フィルタ処理されたシリアル・データ信号の視覚的出力を表示する処理とを更に具える。
【0021】
実施例10は、実施例9による方法であって、上記ノッチ・フィルタのパラメータは、上記試験測定装置のユーザによって設定可能である。
【0022】
実施例11は、実施例9による方法であって、上記フィルタ処理されたシリアル・データ信号の視覚的出力を表示する処理が、上記フィルタ処理されたシリアル・データ信号のアイ・ダイアグラムを生成する処理、上記フィルタ処理されたシリアル・データ信号のスペクトル・プロット表示を生成する処理、又は、上記フィルタ処理されたシリアル・データ信号のヒストグラムを生成する処理を有する。
【0023】
実施例12は、実施例9による方法であって、上記ノッチ・フィルタを適用する前に、上記シリアル・データ信号の視覚的出力を表示する処理を更に具える。
【0024】
実施例13は、実施例9による方法であって、上記ノッチ・フィルタの適用前後の上記シリアル・データ信号から生成されたアイ・ダイアグラムの開口部の増加量を求める処理と、求めた改善量をディスプレイ上に表示する処理とを更に具える。
【0025】
実施例14は、実施例1~13のいずれかに記載の方法であって、上記電源から測定されたノイズと上記シリアル・データ信号のジッタとの相関関係を明らかにする処理が、特定の周波数において、上記電源から測定されたリップルを上記シリアル・データのタイム・インターバル・エラーと比較する処理を含む。
【0026】
実施例15は、実施例14による方法であって、上記電源から測定されたリップル閾値より大きいリップルのみを上記相関関係を明らかにする処理に用いる。
【0027】
実施例16は、実施例1~14のいずれかに記載の方法であって、上記電源から測定された、予め定めた周波数より小さいリップルのみを上記相関関係を明らかにする処理に用いる。
【0028】
実施例17は、実施例1~16のいずれか1つに記載の方法であって、一連のインタラクティブな画面を上記試験測定装置のユーザに表示する処理を更に具える。
【0029】
実施例18は、実施例17による方法であって、上記一連のインタラクティブな画面は、ユーザから電圧のリップル周波数を受けて、受けたリップル周波数で電圧リップルを上記電源に印加する。
【0030】
実施例19は、実施例17による方法であって、上記試験測定装置は、上記電源及び上記データ生成回路を含む被試験デバイスに結合され、上記一連のインタラクティブな画面は、上記電源に結合される上記試験測定装置の入力チャンネルを定めるユーザからの入力を受けると共に、上記データ生成回路の入力チャンネルを定めるユーザからの入力を受ける。
【0031】
実施例20は、試験測定システムであって、電源と該電源から供給される電力を使用するシリアル・データ生成部を有する試験対象の被試験デバイス(DUT)と、該DUTに結合された試験測定装置とを具え、該試験測定装置は、上記DUTの電源から電源信号を受ける入力チャンネルと、上記DUTによって生成されるシリアル・データ信号を受ける別の入力チャンネルと、上記電源信号のノイズを測定すると共に上記DUTによって生成される上記シリアル・データ信号のジッタを測定するように構成される測定ユニットと、上記シリアル・データ信号のジッタに対して上記電源から測定されるノイズの相関関係を明らかにするように構成されたプロセッサと、相関関係の結果を表示するように構成されたディスプレイとを有する。
【0032】
実施例21は、実施例20による試験測定システムであって、上記相関関係の結果が、ある周波数範囲に広がる電源ノイズの周波数領域での第1スペクトル・プロット表示と、同じ上記周波数範囲に広がるジッタの周波数領域での第2スペクトル・プロット表示とを有する。
【0033】
実施例22は、実施例20による試験測定システムであって、上記試験測定装置の上記プロセッサが上記シリアル・データ信号にノッチ・フィルタを適用してフィルタ処理されたシリアル・データ信号を生成するように構成され、上記ディスプレイが上記フィルタ処理されたシリアル・データ信号の視覚的出力を表示するように構成される。
【0034】
実施例23は、実施例22による試験測定システムであって、上記フィルタ処理されたシリアル・データ信号の視覚的出力が、上記フィルタ処理されたシリアル・データ信号のアイ・ダイアグラム、上記フィルタ処理されたシリアル・データ信号のスペクトル・プロット表示又は上記フィルタ処理されたシリアル・データ信号のヒストグラムを含む。
【0035】
実施例24は、実施例22による試験測定システムであって、上記プロセッサは、ノッチ・フィルタを適用する前と後の上記シリアル・データ信号から生成されるアイ・ダイアグラム表示の開口部の増加量を求め、上記ディスプレイは、求めた結果を表示するように構成される。
【0036】
実施例25は、実施例20~24のいずれかに記載の試験測定システムであって、上記試験測定装置が、上記電源のノイズ及び上記シリアル・データ信号上のジッタを測定する処理に関連する、上記ディスプレイ上の一連のインタラクティブな画面を記憶するためのメモリを有する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、本開示技術の実施形態による試験装置及び方法が動作できる、配電回路網(PDN)及び高速シリアル(HSS)基板図を示す。
【
図2】
図2は、本開示技術の実施形態による試験装置及び方法によって特定できる、高速シリアル・データに影響を及ぼすノイズ成分の様々な発生源を示すPDNのブロック図である。
【
図3A】
図3Aは、本開示技術の実施形態による、電源誘導ジッタを測定するための操作ガイド形式のワークフロー・プロセスを実現するために、試験装置のユーザに表示される画面例である。
【
図3B】
図3Bは、本開示技術の実施形態による、電源誘導ジッタを測定するための操作ガイド形式のワークフロー・プロセスを実現するために、試験装置のユーザに表示される画面例である。
【
図3C】
図3Cは、本開示技術の実施形態による、電源誘導ジッタを測定するための操作ガイド形式のワークフロー・プロセスを実現するために、試験装置のユーザに表示される画面例である。
【
図3D】
図3Dは、本開示技術の実施形態による、電源誘導ジッタを測定するための操作ガイド形式のワークフロー・プロセスを実現するために、試験装置のユーザに表示される画面例である。
【
図3E】
図3Eは、本開示技術の実施形態による、電源誘導ジッタを測定するための操作ガイド形式のワークフロー・プロセスを実現するために、試験装置のユーザに表示される画面例である。
【
図3F】
図3Fは、本開示技術の実施形態による、電源誘導ジッタを測定するための操作ガイド形式のワークフロー・プロセスを実現するために、試験装置のユーザに表示される画面例である。
【
図3G】
図3Gは、本開示技術の実施形態による、電源誘導ジッタを測定するための操作ガイド形式のワークフロー・プロセスを実現するために、試験装置のユーザに表示される画面例である。
【
図3H】
図3Hは、本開示技術の実施形態による、電源誘導ジッタを測定するための操作ガイド形式のワークフロー・プロセスを実現するために、試験装置のユーザに表示される画面例である。
【
図3I】
図3Iは、本開示技術の実施形態による、電源誘導ジッタを測定するための操作ガイド形式のワークフロー・プロセスを実現するために、試験装置のユーザに表示される画面例である。
【
図3J】
図3Jは、本開示技術の実施形態による、電源誘導ジッタを測定するための操作ガイド形式のワークフロー・プロセスを実現するために、試験装置のユーザに表示される画面例である。
【
図3K】
図3Kは、本開示技術の実施形態による、電源誘導ジッタを測定するための操作ガイド形式のワークフロー・プロセスを実現するために、試験装置のユーザに表示される画面例である。
【
図4】
図4は、本開示技術の実施形態による、リップル周波数測定を示す試験測定装置のディスプレイ上に表示されても良い結果画面の例である。
【
図5】
図5は、本開示技術の実施形態による、電源レールのスペクトル成分のスペクトル・プロット及びタイム・インターバル・エラー(TIE)のスペクトルを示す試験装置のディスプレイに表示される結果画面の一例である。
【
図6A】
図6Aは、本開示技術の実施形態による、PSIJによるHSS信号のアイ・ダイアグラム及びヒストグラムを示す試験装置のディスプレイに表示される画面例である。
【
図6B】
図6Bは、本開示技術の実施形態による、PSIJ除去後のHSS信号のアイ・ダイアグラム及びヒストグラムを示す試験装置のディスプレイに表示される画面例である。
【
図7A】
図7Aは、本開示技術の実施形態による、PSIJを除去する前及び除去後の両方のアイ・ダイアグラム及びスペクトル・プロット表示を示す試験装置のディスプレイに表示される画面例である。
【
図7B】
図7Bは、本開示技術の実施形態による、PSIJを除去する前及び除去後の両方のアイ・ダイアグラム及びスペクトル・プロット表示を示す試験装置のディスプレイ上に提示される別の例のスクリーンである。
【
図8】
図8は、本開示技術の実施形態による、測定装置によって生成された測定の結果を伝えるためにユーザに表示されるデータ画面の例である。
【
図9A】
図9Aは、本開示技術の実施形態による、電源誘導ジッタを測定するための第2のガイドなし形式のワークフロー・プロセスを実現するために、試験装置のユーザに表示される画面例である。
【
図9B】
図9Bは、本開示技術の実施形態による、電源誘導ジッタを測定するための第2のガイドなし形式のワークフロー・プロセスを実現するために、試験装置のユーザに表示される画面例である。
【
図9C】
図9Cは、本開示技術の実施形態による、電源誘導ジッタを測定するための第2のガイドなし形式のワークフロー・プロセスを実現するために、試験装置のユーザに表示される画面例である。
【
図9D】
図9Dは、本開示技術の実施形態による、電源誘導ジッタを測定するための第2のガイドなし形式のワークフロー・プロセスを実現するために、試験装置のユーザに表示される画面例である。
【
図9E】
図9Eは、本開示技術の実施形態による、電源誘導ジッタを測定するための第2のガイドなし形式のワークフロー・プロセスを実現するために、試験装置のユーザに表示される画面例である。
【
図9F】
図9Fは、本開示技術の実施形態による、電源誘導ジッタを測定するための第2のガイドなし形式のワークフロー・プロセスを実現するために、試験装置のユーザに表示される画面例である。
【
図9G】
図9Gは、本開示技術の実施形態による、電源誘導ジッタを測定するための第2のガイドなし形式のワークフロー・プロセスを実現するために、試験装置のユーザに表示される画面例である。
【
図10】
図10は、本開示技術の実施形態による電源誘導ジッタの測定に用いても良い工程を示すフロー図の例である。
【
図11】
図11は、本開示技術の実施形態による電源の品質及び当該電源から給電される結果として得られた回路への影響を測定するための例示的な試験測定装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
当業者であれば、本願のいずれのブロック図も、本開示の原理を具体化する例示的方法の概念図を表していることが理解できよう。同様に、任意のフローチャート、フロー図などは、コンピュータ可読媒体で実質的に表現され、コンピュータ又はプロセッサ(そのようなコンピュータ又はプロセッサが明示的に示されているかどうかにかかわらず)によって、実行され得る様々なプロセスを表していることが理解できよう。
【0039】
本開示技術の実施形態は、高速シリアル(high-speed serial:HSS)データにおいて生じる電源誘導ジッタ(power supply induced jitter:PSIJ)を測定するための方法及び装置に関し、更に、そのようなジッタが、電源(Power Supply:PS)内のノイズに関連するか否かを決定するためのツールをユーザに提供することに関する。
【0040】
図1は、配電回路網(power distribution network:PDN)100及び高速シリアル(HSS)基板130の一例を示すブロック図であり、これらについて、本開示技術の実施形態による試験装置及び方法が動作しても良い。配電回路網100は、電源電圧110から給電されるAC-DCアダプタ112などの様々なコンポーネントを有していても良い。電源電圧は、例えば、8~25ボルトの間であっても良い。供給された電圧は、アダプタ112から電源114に渡される。電源114は、それ自体が、例えば、AC-DC整流回路に加えて、電圧レギュレータ・モジュール(voltage regulator module:VRM)を有していても良い。
【0041】
配電回路網100の更なるコンポーネントとしては、電源114からの電圧を降圧するための降圧コンバータ116に加えて、配電回路網の品質を測定するための電源レール・プローブ・アクセス120があっても良い。配電回路網100のこれらのコンポーネントは、一緒に動作して、基板、パッケージ又はダイ(die)に供給される様々な電源レール(パワー・レール)のための電力を生成する。配電回路網100の上述したコンポーネントのいずれか、又は、他のものが、配電回路網が給電するコンポーネントで生成されるデータに影響を与えることがあるノイズ源となる可能性がある。
【0042】
図示の実施形態では、配電回路網100によって生成された電力は、高速シリアル(HSS)データを生成するための回路を含む基板130に提供される。通常、様々な理由から、1つの基板、パッケージ又はダイに、複数の電源レールが与えられる。一部の電源レールは、異なる電圧を伝送するため、互いに分離する必要がある。他の電源レールは、干渉を最小限に抑えてコンポーネントに電力を配電するために分離されている。例えば、ノイズの特に多いコンポーネントを通過して電源レールを配線するのではなく、電力を分割して、最初の電源レールでノイズの多いコンポーネントより前のコンポーネントに電力を供給し、もう一方の電源レールでノイズの多いコンポーネントより後のコンポーネントに電力を供給することもできる。
【0043】
図1において、基板130には、第1電源レール122、第2電源レール124、n番目の電源レール128などと、複数の電源レール出力がある。省略記号126は、PDN100から基板130に供給される任意の個数の別々の電源レールが存在しても良いことを示す。干渉又はノイズは、配電回路網100の任意のコンポーネント上に存在することがあり、これらは更に、共通の基板、パッケージ又はダイを有する他の回路に伝達されることがある。PDN100からのノイズは、それ自身はリップルや電圧ドリフトとして現れることがあり、これは、以下に説明するように、測定装置によって測定されても良い。PDN100からの電源信号のスペクトル分析が、PDNからのノイズが特定の周波数で発生しているかどうかを決定するために利用されても良い。
【0044】
また、本開示のいくつかの実施形態には、ストレス生成部115を有していても良く、これは、PDNに人為的にストレスを与えるために、特定の周波数での繰り返し信号をPDN100に注入するために使用されても良い。PDN100に対する人工ストレスの影響は、PDN100上のノイズと、PDN100によって給電されるデータ生成回路上のノイズとの間の因果関係を決定するのを助けるために、測定装置によって測定されても良い。ストレス生成部115は、PDN100に繰り返し波形を印加するための関数発生回路又は他の信号源を有していても良い。この波形は、正弦波などのリップルの形態であっても良いし、三角波、鋸歯状波又は方形波などの他の形状の波形を有していても良い。
【0045】
いくつかの実施形態では、ユーザは、繰り返し波形が印可される周波数を指定しても良い。更に、ストレス生成部115は、リップルその他のストレスを電源114及び電源レールに加えるものとして説明されているが、ストレス生成部115は、PDN100内の任意のコンポーネントに結合してストレスを生成することができる。ストレス生成部115は、必ずしも全ての実施形態において用いられるわけではなく、代わりに、PDN100上に自然に存在するノイズ又はリップルを、以下に説明するように測定及び評価しても良い。
【0046】
基板130には、3つの別々の回路132、134及び138が図示されており、これらは、電源100、又は、場合によっては隣接する回路の動作のいずれかに由来するノイズ又は外乱(disturbance:障害)で影響を受ける可能性がある。ある特定の回路のノイズは、様々な発生源(Source:ソース)から発生する可能性がある。
【0047】
第1タイプのノイズは、特定の回路にネイティブに(先天的に)存在することがあり、これは自己加害(self-aggression)ノイズと呼ばれる。2番目のタイプのノイズは、ある回路がノイズを別の回路に伝送するときに発生する。一般に、ノイズを生成する要素は、加害者(aggressor:アグレッサ)と呼ばれ、その相手方の回路は、被害者(victim:ビクティム)回路と呼ばれる。3番目のタイプのノイズは、2つの回路が互いに影響し合う場合で、相互加害(mutual aggression)ノイズと呼ばれることがある。相互加害ノイズは、2つの回路間のクロストーク・ノイズとして現れることがある。
【0048】
配電回路網から生じるノイズなど、パッケージや相互接続部に結合されるノイズは、HSS回路に影響を与えることが多い、更に別のタイプのノイズである。本開示技術の実施形態は、電源に結合されたHSS信号中に存在する電源ノイズの発生源を特定するツール及び方法を提供する。
【0049】
図2は、本開示技術の実施形態による試験装置及び方法によって特定されても良い、高速シリアル・データに影響を及ぼすノイズ成分の様々な発生源を示す別の配電回路網のブロック図である。
【0050】
図2は、高速シリアル(HSS)データに影響を与える電源のノイズ成分の典型的な発生源を示している。電源210は、配電回路網220用の電力を生成する。
図2において、配電回路網220は、4つの異なるレギュレータ・モジュール230、232、234及び236に結合され、これらは、配電回路網によって給電される様々な回路に対して異なる電圧を生成しても良い。
図1にあるように、いくつかの実施形態では、以下で説明するように、リップルその他のノイズをPDN220に注入するために、ストレス生成部225を使用して、データ生成回路についてのジッタとの相関分析を支援しても良い。
【0051】
図2において、加害者回路240は、ノイズの多い回路であり、それ自身のノイズを被害者回路242に伝送する。ノイズは、参照番号252として表される。加害者240及び被害者242の両方の出力は、ポイント・オブ・ロード(Point of Load:POL)と呼ばれる高速シリアル負荷である。従って、加害者回路240内のノイズは、加害者回路自体内又は電圧レギュレータ・モジュール230内に、その発生源があり得る。いずれにしても、この例では、加害者回路240のノイズは、被害者回路242に伝送され、ここでは、被害者回路242のPOL上のノイズとして表現されても良い。
【0052】
ノイズ伝送の関連する形態としては、2つの回路が互いに影響し合う場合があり、これは、2つの相互加害者(co-aggressor)回路244、246間で伝送されるノイズ256として図示される。この相互加害者のノイズはクロストークと呼ばれることがあり、これは両方の相互加害者244、246のPOL上に表されても良い。
【0053】
配電回路網220によって給電される更なる電力レールである電力レール222、223から生じる第3の形態のノイズが図示されている。これらの電力レール222、223は、配電回路網220内の他のノイズの多いレールに結合されているおかげで、ノイズが多い。このような結合されたノイズの発生源は、
図2に示したコンポーネントのいずれでも生成される可能性があるため、検出が困難な場合がある。
【0054】
本開示では、複数の特徴の中でも、特に、ユーザ/設計エンジニアが、電源に結合された高速シリアル・データ(HSS)回路における電源誘導ジッタ(PSIJ)のようなノイズを特定することを可能にするための様々な形式のワークフロー・プロセスを有する試験測定装置について説明する。これらのワークフロー・プロセスには、試験中を通じてユーザをガイドする操作ガイド(wizard:ウィザード)形式のワークフローを含めることも、ガイド付きでないメニュー・ワークフローを含めることもできる。どちらのタイプのワークフローも、測定装置のグラフィカル・ユーザ・インタフェース(GUI)を使用して、ユーザが、高速データのジッタやその他のノイズを測定し、電源レールのノイズに起因するかどうかを判断するのに有益である。以下の説明は、主にHSSデータにおけるジッタの特定に関して述べるが、開示技術の実施形態は、また、配電回路網のノイズと相関することがある垂直ノイズ、位相ノイズ、その他の欠陥など、生成されたデータ中の他の欠陥を特定しても良い。
【0055】
概して、PSIJを特定するための測定装置は、被試験デバイス(DUT)から測定又は試験される信号を受けるための1つ以上の入力部又はチャンネルを含む。装置の例を
図11を参照して以下で説明する。この例では、DUTは、高速シリアル・データを生成するデバイスである。オペレータは、試験する入力信号のパラメータを測定するように測定装置を設定する。この例では、オペレータは、リップル、電圧ドリフト又はその他の検出可能なアーチファクト(artifact:本来存在しないはずのもの)などの電源ノイズが高速シリアル・データのノイズに寄与しているかどうかを判断するために測定装置を設定する。いくつかの実施形態では、オペレータは、プログラミング・コマンドを使用して測定装置をプログラムしても良い。以下に説明する別の実施形態では、オペレータは、測定装置の表示画面上のGUIを使用して、セットアップを実行し、HSSデータを生成するDUTの試験をガイドし、その結果、ユーザは、HSSデータ上のノイズが電源に起因するかどうかを容易に判断できる。
【0056】
図3Aは、最初の画面(メニュー)302を、試験測定装置のユーザ又はオペレータに表示される操作ガイド形式のプロセス・フローで示している。この例では、測定装置は、試験対象の1つ以上の電源レールと1つ以上のHSSデータ生成部を含むDUTに結合されている。メニュー302の第1ウィンドウにおいて、オペレータは、パワー・インテグリティ(PI)試験の設定を選択する。PIの設定では、オペレータは、測定する特定の電源レール信号源のチャンネルを選択し、DUT内の電源レールの総数を入力する。図の例では、試験される電源レールは、チャンネル1であり、4つの電源レールがある。オペレータは、メニュー302内のラベル付けウィンドウにおいて、試験にラベルを付けても良い。メニュー302を使用した設定が完了すると、ユーザは、操作ガイド(wizard)開始ボタンを選択して、以下に説明する操作ガイド形式のプロセス・フローを開始できる。
【0057】
図3Bは、PI操作ガイドを開始したウィンドウ304を示し、これは、ユーザがパワー・インテグリティを分析するのを補助する。PI操作ガイドを開始した後には、
図3Cに図示されるように、PI操作ガイドの電源レール設定メニュー306が続く。PI操作ガイドの電源レール設定メニュー306において、ユーザは、電源信号のHSS信号への影響は、加害者としてか又は被害者としてかを指定するなど、電源のタイプを定義する。図示の実施形態では、ユーザは、電源信号が加害者としてHSS信号に影響を及ぼすと定義している。
【0058】
ユーザは、
図3Dに示す電源レール設定メニュー308によって、電源レールを信号源とするチャンネルを選択し、電源レールに印加される人工的で周期的なノイズのリップル周波数を設定できる。この印加ノイズは、測定装置によってDUTの他のコンポーネントで特定できるものであって良く、これは、全体的な性能に影響を与える可能性のあるDUT内のノイズの多いコンポーネントの発生源を特定するのに有益である。
【0059】
具体的には、回路によって生成されたHSSデータも分析して、電源に印加されたノイズがHSSデータに見られるかどうかを判断しても良い。電源レールに周期的なノイズを印加すると、配電システムに異常が発生し、これをユーザが試験して、HSSデータ中のPJ(periodic jitter:周期ジッタ)が配電システムによって引き起こされたかどうかを判断しても良い。
【0060】
いくつかの実施形態では、試験中に外部ノイズ又はリップルを電源に印加せず、代わりに、配電回路網に先天的に存在するノイズで分析には十分である。いずれの場合も、上記のワークフロー・プロセスにより、ユーザは、設定された電源レール内の有意な(significant:かなり大きな)ノイズ周波数とHSSデータとの間の相関関係を試験できる。
【0061】
図3Dのメニュー308を再び参照すると、選択された電源レールのチャンネルは、HSSデータ上のPSIJを分析するように設定される。電源レールのリップル周波数は、自動又は手動で設定できる。手動モードでは、測定装置の選択した入力チャンネルに結合された電源レール信号源のリップルなどのノイズの周波数を、ユーザが測定する。リップルが、測定したDC電圧において、有意である(significant:かなり大きい)場合、測定装置上で示される測定画面400の例を示す
図4に示されるように、測定装置にはAC成分として表示される。
【0062】
ユーザは、例えば、オシロスコープのカーソル410、412を用いて、この周波数を手動で測定できる。リップル周波数を測定する別のプロセスは、
図4でプロットのカーソル420で強調表示されているように、電源レールが信号源のチャンネルでFFT演算をオンにし、基本波成分の後の支配的な周波数を特定することである。この測定値は、手動モードにおいて、リップル周波数としてメニュー308(
図3D)に入力できる。
【0063】
一実施形態では、FFT演算を用いた支配的な周波数の特定を自動化できる。これに代えて、ユーザは、HSSデータ生成部を含むDUTを記述するデータ・シートから、周波数値を選択することによって、手動設定において、メニュー308の値に周波数値を入力しても良い。
【0064】
ユーザがメニュー302~308を使用して電源レールを設定した後、次に、ユーザは、
図3E、3F、3G及び3Hに夫々図示されるメニュー310、312、314及び316を用いて、HSSデータ試験パラメータを設定する。これらメニュー310~316も、ユーザが試験測定装置上での試験を自動化するのに役立つ操作ガイド・フローの一部である。
【0065】
メニュー310では、電源のノイズの影響を受ける可能性のあるシリアル・データを信号源とするチャンネルが選択される。図示の実施形態では、HSSデータは、測定装置のチャンネル2で受信される。このHSSデータを信号源とする試験は、ユーザが、電源レールのノイズがスイッチングによって引き起こされているのか、それとも電源に起因する別の発生源があるのかを特定するのに有益である。更に、シリアル・データ設定メニュー310において、ユーザは、周期ジッタ(periodic jitter:PJ)に関して、期間の観点でのPJ閾値、周期ジッタの最大周波数(PJ)を入力しても良い。このPJ設定により、測定装置は、PJ閾値の期間より長く、最大PJ周波数値以下となる全てのPJ成分を検討することができる。
【0066】
一実施形態では、電源レールのPJ周波数の周波数上限と、PJの時間的閾値を指定することより、電源レールのノイズがスイッチングから生じているのか、それとも電源から発生しているのかを特定するのに役立つ。通常、PJの最大周波数リミットは、その構造で使用されるレギュレータのスイッチング周波数に関する知識によって決まる。一実施形態では、PJ周波数の上限は、10MHz未満であっても良い。
【0067】
メニュー310は、HSSデータとして1つの信号源、即ち、チャンネル2のみを特定しているが、本開示技術の実施形態は、
図3Fのメニュー312に図示されるような2つのHSSデータを信号源に指定しても良い。ユーザが単一のHSSを信号源とするように測定装置を設定する場合、ユーザは、メニュー310に図示されるように、メニュー内の第2のシリアル・データの信号源ウィンドウを「なし」として設定できる。この単一の信号源の測定では、測定装置は全帯域幅(BW)試験を利用する。メニュー312のように、2つの信号源が測定に使用される場合、測定装置は、指定された2つの信号源の差として、演算で差分波形を計算する。
【0068】
図3A~3Kで説明される操作ガイド形式のフローにおいて、次に、
図3Gに図示するように、メニュー314が、高速シリアル・データを駆動するクロックについてのクロック・リカバリ情報を設定するようユーザに促す。具体的には、ユーザは、
図3Gのメニュー314に図示されるように、信号形式、パターン検出、クロック・エッジ及びデータ・レートに関する情報を入力する。信号形式は、データ、クロック又は自動としても良い。パターン検出は、自動又は手動検出としても良い。ユーザは、クロックの立ち上がりエッジ(Rising edge)、立ち下がりエッジ(Falling edge)又は立ち上がりエッジと立ち下がりエッジの両方を検出するように指定できる。5Gb/sのようなデータ・レートも、メニュー314において、ユーザによって指定される。測定されたタイム・インターバル・エラー(TIE:観測されたクロック・エッジとその期待されるエッジとの間の時間差の測定値)に、周期的なジッタを測定するための全ての成分が含まれるように、通常、コンスタント・クロック・リカバリ(CCR)方式が推奨される。
【0069】
クロック・リカバリ情報がメニュー314に入力された後、ユーザは、メニュー316(
図3H)の自動設定ボタンを押すことで、PSリップルと呼ばれる選択された電源レール上の電圧リップルを測定し、選択されたHSSデータのチャンネルについてTIEを測定するように測定装置を自動的に設定できる。具体的には、メニュー316の自動設定ボタンを押すと、電源及びHSSの設定に関するユーザ入力に基づいて、オシロスコープなどの測定装置にパラメータが設定される。例えば、設定パラメータとしては、リップルが良くわかるような、最適な垂直スケールでの電源レールの信号源についての電圧オフセット値がある。メニュー314に入力されたHSSデータ・レートに基づくサンプル・レートでの水平時間軸も設定される。トリガも測定装置に自動的に設定され、HSS波形に供給される。
【0070】
図5は、メニュー316を通して設定され、測定の初期設定を行った後の測定装置の表示例500を示す。この表示500は、測定装置のメイン・ディスプレイに表示されても良いし、リモート・ディスプレイに表示されても良い。概して、選択された電源レールのPSリップル測定値のスペクトル・プロット表示510は、表示500の上部に表示され、一方、選択されたHSSデータのTIE測定値のスペクトル・プロット表示520は、表示500の下部に表示される。これら2つの測定値は、同じ周波数スパンで測定値をマッピングすることによって、相関関係が明らかにされる。つまり、TIEスペクトル520は、電源スペクトル510とオーバーラップしている。この相関関係表示により、オーバーラップしている支配的な電源成分が、シリアル・データ上のジッタ成分を示しているのか、という相関関係を、ユーザに視覚的に示すことができる。
【0071】
一実施形態では、スペクトル・オーバーレイ・プロットは、柔軟にズームでき、また、ユーザが水平軸の範囲を設定できるので、より良い視覚が得られる。このスペクトル表示には、全てのPJ成分と高調波が含まれており、ユーザは、電源に存在するジッタを分析してキャプチャできる。
図5の出力500に示すようなオーバーラップされたスペクトルでは、同じ周波数における全てのPS及びTIEの相関する成分が記録され、ユーザに表示される。表示520は、HSSデータのTIEを示すが、HSSデータ信号の他の特性、例えば、垂直ノイズや位相ノイズに加えて、他の形態のジッタなどが、測定及び表示されても良い。
【0072】
本開示技術の実施形態には、操作ガイド・ベース(wizard-based)のフローが、測定装置によって測定される周期ジッタを低減又は最小化するための方法及び特定のパラメータを、先行するステップにおいて、自動的に提案する能力がある。
図3Iのメニュー320に例示されるように、操作ガイド・ベースのフローにより、ユーザはフィルタ又はフィルタ処理技術を適用して、シリアル・データから特定のPJ成分を除去し、フィルタを適用した後にHSSデータ出力を再構築できる。
【0073】
図3Jのメニュー322では、操作ガイド・ベースのフローは、HSSデータに適用するノッチ・フィルタのパラメータを自動的に決定し、これによって、配電回路網から供給される電力のノイズ・レベルが低い場合に、データがどのように見えるかを視覚化できる。又は、これもメニュー322に図示されるように、「自動」ボックスのチェックを外すことによって、ユーザが、特定のスタート周波数及びストップ周波数を入力し、これら入力された周波数に一致する適切なノッチ・フィルタを測定装置がHSSデータに適用できるようにしても良い。これは、HSSデータ波形からPSIJを効果的に除去し、次いで、ユーザが見るためのHSSデータ波形を再構築するという、HSSデータ回路の効果的な回路設計のための強力なツールをユーザに提供する。
【0074】
操作ガイド・ベースのフローの最後のメニュー324が
図3Kに現れ、ここでは、測定装置が、ノッチ・フィルタを適用した後、再構築されたHSSデータの結果を、アイ・ダイアグラム、スペクトル・オーバーラップ表示又はヒストグラムのいずれかで表示するかどうかの選択肢をユーザに提供する。
【0075】
マージンの増加を示すアイ・ダイアグラムの例を
図6A及び6Bに示す。具体的には、
図6Aの表示画面600は、上述したPSIJの測定に用いられる測定装置の表示出力の例であっても良く、開口部610を有するアイ・ダイアグラムがある。表示画面600上のアイ・ダイアグラムは、任意のノッチ・フィルタが適用される前のHSSデータのアイ・ダイアグラムである。上述したように、ノッチ・フィルタがHSSデータに適用された後の新しいアイ・ダイアグラムは、
図6Bの表示画面601に図示されており、開口部611を有する。よく観察すればわかるように、
図6Bのアイ・ダイアグラム中のアイ開口部611は、
図6Aのアイ・ダイアグラム中のアイ開口部610よりも大きい。
【0076】
図6Aと
図6Bのアイ・ダイアグラム間の開口部サイズの増加は、上述したように、HSSデータにノッチ・フィルタを適用したことに起因する。具体的には、
図6Aのアイ・ダイアグラムは、何らのフィルタ処理もしていない基本となる(ベースの)HSSデータのダイアグラムであり、一方、
図6Bのアイ・ダイアグラムは、ノッチ・フィルタ適用後の基本となるHSSデータのダイアグラムである。ノッチ・フィルタを適用すると、電源に起因するPSIJを除去又は低減することにより、HSSデータ信号の品質が向上する。
図6A及び
図6Bの間のアイ・ダイアグラムの変化を表示することに加えて、測定装置によって測定されたジッタ測定データを、表示600、601の右下側に示される測定値表示ブロック620、621に表示することもできる。
【0077】
TIEヒストグラムも、
図6A及び
図6B夫々の画面600、601の例において、ウィンドウとして示されている。具体的には、例示的な画面600、601夫々の左上隅にあるウィンドウは、ノッチ・フィルタが適用される前(
図6A)と、後(
図6B)のHSSデータから取られたTIEのヒストグラムを生成する。より詳細には、
図6AのTIEヒストグラム630は、多種多様なるデータ・スパイクを示し、これらは、電源レールに印加されるリップルの高調波を示す。リップルがHSSデータのTIE中にどのように現れるかは、つまるところ、この設計では、電源のノイズが最終的なHSSデータに直接の影響があることに留意されたい。
【0078】
図6AのTIEヒストグラム631は、フィルタが適用された後のHSSデータのTIEを示しており、PSIJの除去をシミュレートしている。このため、上述のように、これらのツールを使用する設計者は、電源レール上のノイズと、その結果として生じる、生成されたHSSデータに対する影響との関係を容易に判断できる。試作設計に対してこの分析を実行することで、設計者は、特定の設計が加害者ノイズ、クロストーク又は結合ノイズの影響を受けやすいことを発見できる。よって、設計者は、そのようなノイズ源に対して、設計を強化するための調整を行うことができる。
【0079】
図7A及び7Bは、例示的な表示画面700、701を示し、これらは、実施形態による測定装置のディスプレイ上でも表示されて良く、PSIJを除去する前及び後の両方のアイ・ダイアグラム及びスペクトル・プロット表示を示す。
図7Aの表示画面700には、左端の表示ウィンドウに2つのアイ・ダイアグラムが含まれている。参照番号710及び711は、ノッチ・フィルタを適用することによって、アイ幅がどのくらい開くかを示す。更に、表示画面700は、HSSデータのスペクトル表示中にPSIJスパイク730を示し、一方、参照番号731は、ノッチ・フィルタを適用するとスパイクが実質的にどのくらい減少するかを示す。
図6A及び
図6Bの表示600、601の表示と同様に、表示画面700には、測定値表示ブロック720があり、ノッチ・フィルタの適用前後の両方の測定データを示す。
図7Bは、
図7Aのものと同様の表示を含むが、更に、ユーザが、本開示技術の実施形態を用いて測定データを視覚化するのに、どのように表示をカスタマイズするかを示す。
【0080】
一実施形態では、測定装置が、マージン改善として知られているアイ開口部の改善のパーセンテージ(百分率)を計算して示しても良い。このマージン改善分析には、フィルタの適用前と適用後のアイ開口部のサイズを比較する処理と、PSIJ除去をシミュレートする処理とがある。マージン改善は、結果バッジに表示されても良く、これが表示画面に表示されても良い。具体的には、数式1及び数式2に示すようにして、アイ幅(Eye Width:EW)及びアイ高さ(Eye Height:EH)の改善を求めることができる。
【0081】
【0082】
【0083】
これら改善のパーセンテージのいずれか又は両方は、表示画面800上など、測定装置のディスプレイ上に示され、これは、
図8に図示されている
【0084】
上記からわかるように、
図3A~3Kを参照して説明した操作ガイド形式(wizard-style)のフローを使用すると、ユーザは、PSIJを測定し、それがHSSデータ生成デバイスの性能にどのように影響するかを判断するプロセスを通して、ガイドしてもらうことができる。また、操作ガイド形式のフローでは、HSSデータ波形に適用したときに、PSIJなしだとHSSデータがどのように現れるかをシミュレートする様々なノッチ・フィルタのパラメータを自動で、又は、ユーザが手動で設定できる。
【0085】
HSSデータ生成回路のPSIJを測定するための新しいガイドなしのメニュー・ワークフロー・プロセスが
図9A~9Gに示されており、これらは、測定装置のディスプレイに表示されることがある様々なメニューを示している。ユーザは、ガイドのないメニューを操作して、測定装置をセットアップ及び設定してPSIJを測定し、HSSデータのTIEの形で測定されたノイズが、測定されたPSIJと相関しているかどうかを判断する。ガイドなしのワークフローは、
図3A~3Kを参照して上述した操作ガイド形式のワークフローと類似し、ユーザから同じ又は類似の情報を受け取るが、ガイドなしのワークフローでは、セットアップ・プロセスは、測定装置によって提示されるのではなく、ユーザによってガイドされる。
【0086】
図9Aのメニュー902は、PSIJを測定するための電源設定を示し、メニュー904(
図9B)は、ユーザが、電源の形式、ラベル、レール数、リップル周波数及び電源レール信号源を設定できる電源レール設定ウィンドウを示す。
図9Cは、メニュー906を示し、これによれば、ユーザは、高速シリアル・データを信号源とするチャンネルの設定に加えて、PJ閾値及び最大PJ周波数を設定できる。
図9Dに示すメニュー908によれば、ユーザは、信号形式の設定(データ、クロック、自動)、クロック・エッジ(立ち上がり、立ち下がり、両方)、パターン検出(自動又は手動)などのクロック・リカバリ情報を設定し、HSSデータのデータ・レートを指定できる。
図9Eのメニュー910は、パターン形式(繰り返し、任意)とパターンの長さを指定する機能をユーザに提供する。
【0087】
次に、
図9Fのメニュー912は、ジッタ抑制設定を示し、これは、上述したように、HSSデータにフィルタを適用する。メニュー912によれば、ユーザは、中心周波数及び周波数スパンを入力することで、フィルタのパラメータを手動で設定できるし、あるいは、ユーザは、自動設定を選択できる。
図9Gは、メニュー914において、PS及びHSSチャンネルの夫々についてオシロスコープなどの測定装置を設定するための自動設定を示す。また、このメニュー916によれば、ユーザは、アイ・ダイアグラム、オーバーラップ(PS及びTIE)スペクトル又はTIEヒストグラムを使用して出力を選択することによって、PSIJ及びHSSデータの分析の出力を選択できる。アイ・ダイアグラムの例は、
図6A、6B、7A及び7Bを参照して上述している。オーバーラップされたPSスペクトルとTIEスペクトルは、
図5を参照して上述している。
【0088】
ガイドなしのワークフローは、
図5~
図7に図示されるような測定値のグラフィック表現に加えて、測定データの改善をユーザに直接伝えるために、更に、
図8のウィンドウ800のような結果ウィンドウを生成しても良い。
【0089】
図3A~3Kの操作ガイド形式のワークフローと、
図9A~
図9Gのガイドなしのワークフローの両方で説明した上記のプロセスは、
図10に図示される例示的な工程を組み入れた方法によって実施できる。
【0090】
図10において、本開示技術の実施形態による一例のプロセス1000は、工程1002におけるオシロスコープなどの測定装置の初期化及びセットアップから始まる。初期化工程の例としては、電源値の設定や、試験対象の回路設計のPSIJを測定及び特定するための1つ以上の信号源(ソース)のチャンネルの設定などがある。測定対象のHSSデータの信号源を特定するために、別のチャンネルが設定される。次いで、工程1004において、指定/測定されたリップル周波数における電源レールを信号源として電圧リップルその他のノイズが測定装置によって測定され、PSリップルとして記録される。工程1006において、測定装置は、HSSデータ入力チャンネルからHSS波形を生成し、次いで、HSS波形からTIEスペクトルを生成する。このようなTIEスペクトルの一例は、
図5の下部に示されている。
【0091】
次に、工程1008で、測定装置は、電源が信号源の入力チャンネルから、中心周波数を指定されたリップル周波数(PSスペクトル[])に設定して、スペクトル表示を生成する。この指定のリップル周波数は、工程1004で指定又は測定されても良い。次に、工程1010は、PJ閾値(PJ閾値(Y))と最大PJ周波数(PJ周波数最大値(X))値との間のHSSのTIEスペクトル値をチェックすることによって、HSSのTIE測定値から求めた周期ジッタ(PJ)に対する工程1004で測定された電源リップル(PSリップル)の相関関係を明らかにする。次いで、プロセス1000は、工程1012へと続き、これは、電源コンポーネント中の同じ周波数のノイズが、HSSデータにおいても検知されるか否かを比較して判断する。もしそうであるなら、全体的な回路設計は、最終的なHSSデータ出力に伝えられる電源のノイズの影響を受けやすいことになる。
【0092】
電源で検出される周波数と最終的なHSSデータ出力の間に相関関係があまりない場合、全体的な回路設計は、HSSデータ出力に影響を与える電源のノイズの影響を受けにくいことになる。より具体的には、工程1012における比較は、ユーザ指定の最大PJ閾値及びPJ閾値周波数に関するTIEスペクトルを評価する。工程1012には、2つの別個の基準がある。工程1012の第1基準は、本試験において測定装置によって記録された全てのTIEスペクトルが、ユーザが工程1004において指定した最大PJ周波数以下である場合に満たされる。工程1012の第2基準は、測定装置によって記録されたTIEスペクトルの夫々が、ユーザ指定のPJ閾値以下である場合に満たされる。
【0093】
工程1012の両方の基準が満たされる場合、プロセス1000は、工程1014へと続き、ここでプロセス1000は、工程1012で指定された基準を満たす全てのTIEスペクトル成分を記録する。代わりに、工程1012の基準のいずれかが満たされない場合、プロセス1000は、工程1020へ進み、ここでユーザは「エラー'原因となる電源ノイズを特定できない'」のように、ディスプレイで通知される。言い換えると、プロセス1000が工程1020に到達した場合、このプロセスは、工程1012で概説された試験を使用した場合、電源から生じるノイズを元々の起源とするノイズは、HSSデータにおいて検出されない(又は有意な十分な量のノイズが検出されない)と判断したことになる。
【0094】
工程1014に戻ると、この工程では、工程1012において指定された基準を満たす本試験の全てのTIEスペクトル成分が記録される。次に、工程1016では、工程1014に記録されたPSスペクトル周波数(PSスペクトル[])を、工程1006で記録されたTIEスペクトル周波数(TIEスペクトル[])と比較する。これらのPS及びTIE成分について、同じ周波数で共通性がある場合、相関する成分の全てが工程1022で記録される。そして、PS及びTIE成分のいずれも共通の周波数を有しない場合、プロセス1000は、工程1020に戻り、ここでエラーその他の説明メッセージがユーザに提供される。プロセス1000が工程1020に達すると、即ち、電源レール上のジッタなどのノイズが、いかなる共通周波数でもHSSデータ中に見出されない場合、プロセス1000は、工程1030で終了する。
【0095】
代わりに、電源レール上のジッタなどのノイズがHSSデータ上に見出されるノイズと相関していることが判明した場合、プロセス1000は、ノイズが除去された場合に、HSSデータがどのように見えるかを示す新しいHSSデータ信号を生成する。具体的には、電源レール上のノイズがHSSデータに見つかった場合、測定装置はリップル周波数にノッチ・フィルタなどのフィルタを適用し、工程1024において、HSSデータ波形を再構築する。次いで、工程1026は、この再構築されたHSSデータ波形を、測定装置の出力ディスプレイ又は他の場所にプロットして、ノッチ・フィルタの適用によってHSSデータがどのように改善されるかをユーザに示す。上述したように、これらの結果は、アイ表示又はヒストグラム(両方とも
図6A、6B、7A及び7Bを参照して上述)又はオーバーラップ・スペクトル(
図5を参照して上述)の形式で、ユーザに示されても良い。加えて、そのような改善の結果は、
図8に示すようなデータ表示でユーザに示されても良い。
【0096】
上述のように、測定装置が、電源から測定装置が生成したPSスペクトルと、HSSデータから装置が生成したTIEスペクトル成分とが同じ周波数で発生すると判断した場合、これはジッタが電源レールのノイズによるものであることを示す。TIEスペクトル値は、上記の例では、HSSデータの分析に関して記載されているが、本開示技術の実施形態は、相関分析において他の形式のジッタ又はノイズ値を使用しても良い。本開示技術の実施形態を用いて、設計エンジニアは、相関を最小化するように回路設計を修正できる。更に、本開示技術の実施形態は、出力データ信号のアイ・ダイアグラムを生成することによって、回路の改善を定量化する機能を提供する。このアイ・ダイアグラムは、設計した回路からジッタが除去された後、クリーンなシミュレーションがどのようになるかを示す。これにより、提案する解決手法は、改良された高速シリアルシステムの設計につながる。
【0097】
提案する方法及び装置の利点の一つは,設計エンジニアが、非常に早い段階で、回路からの電源誘導ジッタを低減するように、配電回路網の設計を修正できることである。もう一つの利点は、設計エンジニアが、プロトタイプの初期段階で、PI側のハードウェア設計を変更する前に、洞察力と自信を持てることである。
【0098】
図11は、本願に開示されるような開示技術の実施形態を実施するための、オシロスコープなどの一例の試験測定装置1100のブロック図である。試験測定装置1100は、上述した測定装置の一例であっても良い。試験測定装置1100には、1つ以上の試験ポート1102があり、これは、任意の電気信号伝送媒体であっても良い。試験ポート1102は、レシーバ、トランスミッタやトランシーバを有していても良い。試験ポート1102は、接続されたデバイス、例えば、DUT1101、回路、ディスクリート・デバイス若しくはデバイスのセット又は他の被試験対象物から信号を受けるために使用される。いくつかの実施形態では、DUT1101は、複数の電源レールを有するHSSデータ生成デバイスであり、HSSデータは、試験ポート1102に結合される。入力ポート1102の夫々は、試験測定装置1100のチャンネルを表しても良い。
【0099】
上述したように、DUT1101の1つ以上の電源レールは、1つ以上のチャンネルを介して装置1100に結合されてもよく、1つ以上のHSSデータ出力は、残りのチャンネルを介して装置1100に結合されても良い。装置は、試験のためにこれらの複数のチャンネルを並行して、つまり同時に受信しても良い。入力ポート1102は、1つ以上のプロセッサ1116と結合されて、1つ以上の被試験デバイス1101からポート1102で受信された信号や波形を処理する。
図11では、説明を簡単にするため、プロセッサ1116を1つだけ示しているが、当業者であればわかるように、単一のプロセッサ1116ではなく、様々なタイプの複数のプロセッサ1116を組み合わせて使用しても良い。
【0100】
入力ポート1102及び1つ以上のプロセッサ1116は、更に、試験装置1100内の測定ユニット1120に接続しても良い。測定ユニット1120は、上述した測定及び相関処理を実行するための個々の機能を有していても良い。例えば、測定ユニット1120は、時間領域及び周波数領域のいずれか又は両方において、入力ポート1102を介して受信された信号の特性を測定できる任意のコンポーネント又は処理機能を有することができる。例えば、測定ユニットは、上述のように、リップルを測定するための機能又はプロセス、受信したHSSデータからTIEスペクトルを作成するための機能又はプロセス及びPJデータからスペクトルを作成するための機能又はプロセスを有していても良い。これらの測定機能が完了すると、1つ以上のプロセッサ1116は、DUT1101から得られる測定値について、これらの測定機能を調整及び評価しても良い。
【0101】
可視化ユニット1130は、測定ユニット1120によって行われた測定及び分析から生成された各種表示を組み合わせ、試験測定装置1100上で表示するために、これらをディスプレイ1112に送信する。場合によっては、このディスプレイは、試験測定装置1100自体から離れていても良い。可視化処理には、アイ・ダイアグラム、1つ以上のスペクトル(2つ以上の測定に基づく複数のスペクトルを同じ周波数範囲にわたって並べたもの)、ヒストグラム及びデータ・レポート(測定データを数値形式で表示しても良い)のような表示が含まれても良い。これら視覚化形式の夫々については、先に、詳細に説明し、図示している。
【0102】
更に、フィルタ処理機能1140は、上述のように動作しても良く、このとき、フィルタ処理機能は、特定の波形に対して、特定の周波数においてフィルタを適用する。また、上述したように、このフィルタ処理は、HSSデータに影響を与える電源レール上のノイズのように、特定のコンポーネントが互いに及ぼす可能性のある影響を低減した結果をシミュレートする効果がある。
【0103】
試験測定装置1100は、更なる分析のために受信信号を波形に変換するための、コンディショニング回路、アナログ・デジタル・コンバータその他の回路のような追加のハードウェアやプロセッサを有していても良い。得られた波形は、次いで、メモリ1110に記憶することができ、また、ディスプレイ1112上に表示できる。
【0104】
1つ以上のプロセッサ1116は、メモリ1110からの命令を実行するように構成されてもよく、開示技術の実施形態に従って、結合されたデバイスに測定された値を表示するなど、そのような命令によって示される任意の方法や関連するステップを実行しても良い。1つ以上のプロセッサ1116は、測定ユニット1120、可視化ユニット1130又はフィルタ1140を参照して、上述した機能を実行しても良いし、又は、1つ以上のプロセッサ1116は、こうした機能を実行するために、更に別のプロセッサと連携して動作しても良い。メモリ1110は、プロセッサ・キャッシュ、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、ソリッド・ステート・メモリ、ハード・ディスク・ドライブ又は任意の他のメモリ形式として実装されても良い。メモリ1110は、データ、コンピュータ・プログラム・プロダクト及び他の命令を格納するための媒体として機能する。
【0105】
ユーザ入力部1114は、1つ以上のプロセッサ1116に結合される。ユーザ入力部1114は、ディスプレイ1112上のユーザ・インタフェースを使ってユーザが利用可能な、キーボード、マウス、トラックボール、タッチスクリーン、その他の任意の操作装置を有していても良い。ディスプレイ1112のユーザ・インタフェースは、操作ガイド形式のワークフロー又はガイドなしのワークフロー(両方とも上述)をユーザに表示しても良い。ディスプレイ1112は、波形、測定値及び他のデータをユーザに表示するための、デジタル・スクリーン、ブラウン管ベースのディスプレイ、その他の任意のモニタであっても良い。
【0106】
試験測定装置1100のコンポーネントは、試験測定装置1100内に統合されているように描かれているが、これらのコンポーネントのいずれかが試験測定装置1100の外部にあって良く、従来の任意の方法(例えば、有線や無線の通信媒体や機構)で、試験測定装置1100に結合されても良いことが、当業者には理解できよう。例えば、いくつかの実施形態では、ディスプレイ1112は、試験測定装置1100から離れていても良い。
【0107】
本開示技術の態様は、特別に作成されたハードウェア、ファームウェア、デジタル・シグナル・プロセッサ又はプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータ上で動作できる。本願における「コントローラ」又は「プロセッサ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC及び専用ハードウェア・コントローラ等を意図する。本開示技術の態様は、1つ又は複数のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)その他のデバイスによって実行される、1つ又は複数のプログラム・モジュールなどのコンピュータ利用可能なデータ及びコンピュータ実行可能な命令で実現できる。概して、プログラム・モジュールとしては、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含み、これらは、コンピュータその他のデバイス内のプロセッサによって実行されると、特定のタスクを実行するか、又は、特定の抽象データ形式を実現する。コンピュータ実行可能命令は、ハードディスク、光ディスク、リムーバブル記憶媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶しても良い。当業者には理解されるように、プログラム・モジュールの機能は、様々な実施例において必要に応じて組み合わせられるか又は分散されても良い。更に、こうした機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのようなファームウェア又はハードウェア同等物において全体又は一部を具体化できる。特定のデータ構造を使用して、本開示技術の1つ以上の態様をより効果的に実施することができ、そのようなデータ構造は、本願に記載されたコンピュータ実行可能命令及びコンピュータ使用可能データの範囲内と考えられる。
【0108】
本発明の上述の説明は、単に本発明を説明するために設定されたものであり、限定することを意図するものではない。本発明の物質を組み込んだ開示された実施形態の修正が当業者に生じ得るので、本発明は本発明の範囲内の全てを含むと解釈されるべきである。
【0109】
以下の説明では、説明の都合上、本開示の理解を提供するために、具体的な詳細が記載される。しかしながら、本開示がこれらの詳細なしに実施され得ることは、当業者にとって明らかであろう。当業者は、本開示の実施形態(そのいくつかが以下に説明される)が、多数のシステムに組み込まれ得ると理解できよう。
【0110】
しかし、システム及び方法は、本願に記載される特定の実施形態に限定されない。また、図に示す構造及び装置は、本開示の例示的な実施形態の例示であり、本開示が不明瞭になるのを回避するためのものである。
【0111】
この説明は、本発明の原理を例示しているに過ぎないことに留意すべきである。従って、当業者であれば、本願に明示的に記載されていないが、本発明の原理を具体化する様々な配置を考案できるであろうことが理解できよう。更に、本願で説明されるすべての実施例は、主として、本発明者が提供する本発明の原理及び概念を読者が理解して技術を進めるためのもので、そのような具体的に説明された例及び条件に限定されないものとして解釈されべきである。更に、本発明の原理、態様及び実施形態、並びにその具体例を説明する本願の全ての記述は、それらの等価物を包含すると意図される。
例
【0112】
開示された本件の上述のバージョンは、記述したか又は当業者には明らかであろう多くの効果を有する。それでも、開示された装置、システム又は方法のすべてのバージョンにおいて、これらの効果又は特徴のすべてが要求されるわけではない。
【0113】
加えて、本願の記述は、特定の特徴に言及している。本明細書での開示技術は、これら特定の特徴のあり得る全ての組み合わせを含むと理解すべきである。例えば、ある特定の特徴が特定の形態に関連して開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の形態との関連においても利用できる。
【0114】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。
【0115】
説明の都合上、本開示技術の具体的な態様を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本開示技術は、添付の請求項以外では、限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0116】
1100 試験測定装置
1101 被試験デバイス(DUT)
1102 試験ポート
1110 メモリ
1112 ディスプレイ
1114 ユーザ入力部
1116 プロセッサ
1120 測定ユニット
1130 可視化ユニット
1140 フィルタ処理機能
【外国語明細書】