(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023011503
(43)【公開日】2023-01-24
(54)【発明の名称】加熱装置及び加熱方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20230117BHJP
F26B 3/04 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
H01L21/30 567
F26B3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094244
(22)【出願日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2021114856
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】井手 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】山中 晋一郎
(72)【発明者】
【氏名】相良 慎一
【テーマコード(参考)】
3L113
5F146
【Fターム(参考)】
3L113AA01
3L113AA03
3L113AB02
3L113BA34
3L113DA11
5F146KA04
5F146KA05
5F146KA10
(57)【要約】
【課題】基板を加熱し当該基板に形成された塗布膜を乾燥させる加熱処理の面内均一性を向上させる。
【解決手段】基板を加熱処理する加熱装置であって、基板が載置され、該載置された基板を加熱する熱板と、前記熱板の上方の空間へガスを流入させるガス流入部と、前記空間から排気する排気部と、を備え、前記ガス流入部と前記排気部は、平面視において前記熱板に載置された基板を挟み互いに対向するように設けられ、前記空間の排気部側へ、前記ガス流入部側に向かう方向に、ガスを供給するガス供給部をさらに備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を加熱処理する加熱装置であって、
基板が載置され、該載置された基板を加熱する熱板と、
前記熱板の上方の空間へガスを流入させるガス流入部と、
前記空間から排気する排気部と、を備え、
前記ガス流入部と前記排気部は、平面視において前記熱板に載置された基板を挟み互いに対向するように設けられ、
前記空間の排気部側へ、前記ガス流入部側に向かう方向に、ガスを供給するガス供給部をさらに備える、加熱装置。
【請求項2】
前記ガス供給部は、斜め上方向にガスを供給する、請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記ガス供給部は、前記排気部の下側からガスを供給する、請求項2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記ガス供給部は、前記ガス流入部から前記排気部に向かう気流方向と平面視において直交する方向の前記基板の幅の範囲に形成された吐出口を有する、請求項1に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記ガス供給部から供給されるガスの流速は、前記ガス流入部から前記排気部へ向かうガスの流速よりも低い、請求項1~4のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記ガス流入部から前記排気部に向かう気流方向と平面視において直交する方向にかかる、前記熱板に載置された基板の側方から、前記空間へ、前記直交する方向にガスを供給する別のガス供給部をさらに備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項7】
前記空間を挟んで前記熱板と対向する天板と、
基板を昇降させる昇降機構と、
制御部と、をさらに備え、
前記制御部は、前記天板に対し基板が所定距離離れた第1の状態を保ち基板上の塗布膜の乾燥を進め、その後、前記第1の状態よりも前記天板と基板の間隔が大きい第2の状態で所定の処理温度まで基板を加熱し、前記塗布膜の乾燥をさらに進めるよう、請求項1~4のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項8】
前記第1の状態では、前記第2の状態よりも基板が熱板に対し離れている、請求項7に記載の加熱装置。
【請求項9】
前記第1の状態では、前記ガス供給部のガスの吐出軸と基板の裏面が交差する、請求項7に記載の加熱装置。
【請求項10】
加熱装置により基板を加熱処理する加熱方法であって、
前記加熱装置は、
基板が載置され、該載置された基板を加熱する熱板と、
前記熱板の上方の空間へガスを流入させるガス流入部と、
前記空間から排気する排気部と、を備え、
前記ガス流入部と前記排気部は、平面視において前記熱板に載置された基板を挟み互いに対向するように設けられ、
ガス供給部から、前記空間の排気部側へ、前記ガス流入部側に向かう方向に、ガスを供給する工程を含む、加熱方法。
【請求項11】
前記ガスを供給する工程は、前記ガス供給部から斜め上方向にガスを供給する、請求項10に記載の加熱方法。
【請求項12】
前記ガスを供給する工程は、前記排気部の下側に位置する前記ガス供給部からガスを供給する、請求項11に記載の加熱方法。
【請求項13】
前記ガスを供給する工程は、前記ガス流入部から前記排気部に向かう気流方向と平面視において直交する方向に幅を有する前記ガス供給部の吐出口から、ガスを供給する、請求項10に記載の加熱方法。
【請求項14】
前記ガスを供給する工程において、前記ガス供給部から供給されるガスの流速は、前記ガス流入部から前記排気部へ向かうガスの流速よりも低い、請求項10~13のいずれか1項に記載の加熱方法。
【請求項15】
前記ガスを供給する工程は、前記ガス流入部から前記排気部に向かう気流方向と平面視において直交する方向にかかる、前記熱板に載置された基板の側方に位置する別のガス供給部から、前記空間へ、前記直交する方向にガスを供給する工程を含む、請求項10~13のいずれか1項に記載の加熱方法。
【請求項16】
前記加熱装置は、前記空間を挟んで前記熱板と対向する天板をさらに備え、
(A)熱処理期間中で最も温度が高い所定の処理温度まで基板を加熱し、基板上の塗布膜の乾燥を進める工程と、
(B)前記天板と基板との間隔を調整し、前記(A)工程よりも基板表面に沿って流れる気流が弱い状態にする工程と、
(C)前記(A)工程前に、前記気流が弱い状態で基板を加熱し、基板上の塗布膜の乾燥を進める工程と、を含む、請求項10~13のいずれか1項のいずれか1項に記載の加熱方法。
【請求項17】
前記気流が弱い状態では、前記(A)工程のときよりも基板が熱板に対し離れている、請求項16に記載の加熱方法。
【請求項18】
前記気流が弱い状態では、前記ガス供給部の吐出軸と基板の裏面が交差する、請求項16に記載の加熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加熱装置及び加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板が載置され、当該基板を加熱処理するための熱板を有する加熱ユニットが開示されている。この加熱ユニットは、熱板が設けられた処理容器を備え、処理容器には、当該処理容器内を排気する排気装置が備えられている。熱板の奥手側近傍には排気装置に接続された排気口が形成され、熱板の手前側近傍にはガス供給源に接続された吐出口が形成されている。熱板の上方には天板が配設されている。この加熱ユニットでは、吐出口からパージ用ガスを供給し、このパージ用ガスを排気口で吸引してガス流を形成すると共に天板によってこのガス流を整流しており、この整流されたガス流によって加熱処理中の基板にパーティクルが付着することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、基板を加熱し当該基板に形成された塗布膜を乾燥させる加熱処理の面内均一性を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、基板を加熱処理する加熱装置であって、基板が載置され、該載置された基板を加熱する熱板と、前記熱板の上方の空間へガスを流入させるガス流入部と、前記空間から排気する排気部と、を備え、前記ガス流入部と前記排気部は、平面視において前記熱板に載置された基板を挟み互いに対向するように設けられ、前記空間の排気部側へ、前記ガス流入部側に向かう方向に、ガスを供給するガス供給部をさらに備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板を加熱し当該基板に形成された塗布膜を乾燥させる加熱処理の面内均一性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態にかかる加熱装置の構成の概略を示す横断面図である。
【
図2】第1実施形態にかかる加熱装置の構成の概略を示す縦断面図である。
【
図4】第1実施形態にかかる加熱処理の効果を説明するための図である。
【
図5】第1実施形態にかかる加熱装置によるウェハWの加熱処理の他の例を説明する。
【
図6】第1実施形態にかかる加熱装置によるウェハWの加熱処理の他の例を説明する。
【
図7】第2実施形態にかかる加熱装置の構成の概略を示す横断面図である。
【
図8】第2実施形態にかかる加熱処理の効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体デバイス等の製造プロセスでは、半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という。)等の基板上にレジスト膜等の塗布膜が形成される。
基板上に塗布膜が形成された場合、塗布膜の乾燥度合いを調節するため、基板に対し加熱処理が行われる。この加熱処理は、通常、基板が載置され当該基板を加熱する熱板を有する加熱装置で行われる。
【0009】
加熱装置では、加熱により塗布膜から気化した溶媒を回収すること等を目的として、その内部が排気されている。加熱装置における排気方式としては、熱板の周縁部上方にガスの吐出口を設け、熱板の中央部上方に排気口を設け、熱板の周縁部から中央部に流れる気流を形成して排気する方式がある。また、その他の排気方式としては、熱板の奥側に排気口を設け、熱板の手前側にガスの吐出口を設け、手前側から奥側へ一方向流の気流を形成して排気する方式がある。膜種によっても結果は変わるが、後者の方式は、前者の方式に比べて、基板面内均一に塗布膜を乾燥することができる。ただし、後者の方式は、基板における上記一方向流の下流側の部分において、塗布膜の乾燥が不十分となる場合がある。例えば塗布膜が厚い場合である。また、上記一方向流の下流側の部分における乾燥の不十分性を解消する方法としては、基板の加熱時間を長くする方法がある。しかし、この方法では、上記一方向流の下流側の部分とは異なる部分において、塗布膜の固化が進み、その後に現像等を行ったときに塗布膜が意図せず残ってしまうこと、すなわち、残渣が生じてしまうことがある。
【0010】
そこで、本開示にかかる技術は、基板を加熱し当該基板に形成された塗布膜を乾燥させる加熱処理の面内均一性を向上させる。
【0011】
以下、本実施形態にかかる加熱装置及び加熱方法について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において、実質的に同一の機能構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
(第1実施形態)
<加熱装置>
図1及び
図2はそれぞれ、第1実施形態にかかる加熱装置の構成の概略を示す横断面図及び縦断面図である。
図3は、
図2の部分拡大図である。
【0013】
加熱装置1は、
図1及び
図2に示すように、内部を密閉可能な筐体10を有する。筐体10は、例えば、直方体形状を有し、隔壁11によって上部領域12と下部領域13とが隔てられている。筐体10における上部領域12側の一方の側壁には、基板としてのウェハWの搬入出口10aが形成され、該搬入出口10aに対して開閉シャッタ10bが設けられている。
【0014】
また、筐体10は、ウェハWを冷却して温度調節する温度調節領域14を搬入出口10a側すなわち手前側(図のY方向負側)に有すると共に、ウェハWを加熱する加熱領域15を奥側(図のY方向正側)に有し、これら温度調節領域14と加熱領域15とが隔壁16により隔てられている。隔壁16には、ウェハWが載置された後述の冷却板20が通過する開口16aが形成されている。開口16aの長手方向(図のX方向)の長さ(幅)は、少なくともウェハWの直径より大きい。開口16aに対しては、当該開口16aの開口度を調整するシャッタ16bが設けられている。本実施形態において、開口16aは、後述の熱板30の上方の空間へガスを流入させるガス流入部として機能する。
【0015】
温度調節領域14内には、ウェハWが載置され該載置されたウェハWを冷却し温度調節する冷却板20が設けられ、加熱領域15内には、ウェハWが載置され該載置されたウェハWを加熱する熱板30が設けられている。冷却板20と熱板30と前述の開口16aは、例えば
図1及び
図2のY方向に沿って並んで設けられている。
【0016】
熱板30は、厚みのある略円盤形状を有している。熱板30は、水平な上面を有し、当該上面には、例えばウェハWを吸引する図示しない吸引口が設けられており、この吸引口からの吸引により、ウェハWを熱板30上に吸着保持できる。また、熱板30は、上記水平な上面が上部領域12に露出するように設けられている。
【0017】
熱板30の内部には、
図2に示すように、熱板30を加熱する加熱機構31が設けられている。加熱機構31としては、例えば抵抗加熱ヒータ等が用いられ、後述する制御部100により加熱機構31への電力の供給量を制御することにより、熱板30を所定の設定温度に制御することができる。
【0018】
熱板30には、上下方向に貫通する複数の貫通孔32が形成されている。貫通孔32には、昇降ピン33が設けられている。昇降ピン33は、モータ等の駆動源を有する昇降駆動機構34によって昇降可能に構成されている。昇降ピン33は、貫通孔32内を通過して熱板30の上面から突出し、ウェハWを支持した状態で昇降することができる。昇降ピン33及び昇降駆動機構34は、基板を昇降させる昇降機構を構成する。
【0019】
熱板30は、当該熱板30の外周部を支持する平面視環状の支持リング35を介して支持部材(図示せず)により、筐体10内で支持されている。
【0020】
冷却板20は、
図1に示すように、上部領域12に設けられており、略方形の平板形状を有し、熱板30側の端面が円弧状に湾曲している。冷却板20には、Y方向に沿った2本の切り欠き21が形成されており、冷却板20が、昇降ピン33及び冷却板20の下方に設けられた
図2の昇降ピン22と干渉するのを防止できる。昇降ピン22は、モータ等の駆動源を有する昇降駆動機構23によって昇降可能に構成されている。また、冷却板20には、例えばペルチェ素子等の温度調節部材(図示せず)が内蔵されている。
【0021】
冷却板20は、
図2に示すように支持アーム24に支持されている。支持アーム24には、モータ等を有する駆動部25が取り付けられている。駆動部25は、下部領域13においてY方向に延伸するレール26に取り付けられている。レール26は、冷却板20の下方から開口16aの下方近傍まで延伸している。上述の駆動部25により、冷却板20は、レール26に沿って熱板30の上方まで移動することができる。なお、支持アーム24との干渉を避けるため、隔壁11には、冷却板20の移動方向(図のY方向)に沿って延びると共に支持アーム24が挿通されるスリット11aが設けられている。
【0022】
また、上部領域12における加熱領域15には、天板40が設けられている。天板40は、熱板30の上方に熱板30と対向するように設けられている。天板40には、例えば、抵抗加熱ヒータ等の加熱機構(図示せず)が設けられている。天板40は、後述の制御部100の制御の下、上記加熱機構により、室温より高く且つ熱板30より低い温度に制御されている。また、天板40は、その下面のうち、少なくとも平面視で熱板30上のウェハWと重なる部分が、凹み等がない平坦面となっている。
【0023】
さらに、上部領域12における加熱領域15には、排気部としての排気口50が設けられている。排気口50は、熱板30の上方の空間Sを排気するためのものであり、例えば、一端が排気管52を介して排気ポンプ等の排気装置53に接続された排気ダクト51の他端が接続されている。
【0024】
また、排気口50は、平面視において熱板30に載置されたウェハWを挟み、開口16aと対向するように設けられている。言い換えると、開口16aが熱板30より手前側(図のY方向負側)に設けられているのに対し、排気口50は、熱板30より奥側(図のY方向正側)に設けられている。排気口50を介した排気が行われると、
図3において白色矢印で示すように、温度調節領域14の雰囲気が、開口16aを介して加熱領域15内に取り込まれ、熱板30と天板40との間を熱板30上のウェハWに沿って排気口50に向かう気流(一方向流)が形成される。
【0025】
排気口50は、例えば、
図1に示すように、開口16aから排気口50に向かう気流方向(図のY方向)と平面視で直交する方向(図のX方向)に幅を有している。具体的には、排気口50は、上記直交する方向に沿って等間隔で複数設けられている。排気口50の形成領域の上記直交する方向の幅は、ウェハWの直径と略同一である。
【0026】
また、排気口50は、
図2に示すように、熱板30より上方(具体的には、熱板30上のウェハWより上方)の位置であって、熱板30側ではなく、天板40側の位置に設けられている。加熱対象のウェハWに形成されていた膜が、加熱により昇華物を発生すものである場合、天板40の方が熱板30に比べて低温であるため、昇華物は天板40に固着しやすいが、上述のように排気口50を天板40側に設けることで、昇華物が天板40に固着するのをより抑制することができる。
【0027】
さらに、上部領域12における加熱領域15には、ガス供給部としてのガス供給管60が設けられている。ガス供給管60は、熱板30の上方の空間Sにパージガス(例えば圧縮空気や窒素ガス等の不活性ガス)を供給するためのものであり、例えば、配管61を介してパージガスの供給源62に接続されている。
【0028】
また、ガス供給管60は、排気口50と同様、熱板30より奥側(図のY方向正側)に設けられている。ガス供給管60は、
図3において灰色矢印で示すように、開口16aから排気口50に向かう気流方向(図のY方向)における下流側にあたる、熱板30の上方の空間Sの排気口50側へ、開口16a側に向かう方向(図のY方向負方向)に、パージガスを供給する。ガス供給管60のパージガスの供給先は、具体的には、熱板30上のウェハWの上方の空間Sの排気口50側である。
【0029】
ガス供給管60は、より具体的には、上記空間Sの排気口50側に、開口16a側に向かう方向且つ斜め上方向にパージガスを供給する。「斜め上方向」とは、ガス供給管60の吐出口63の吐出軸が、熱板30に載置されたウェハW上の塗布膜に当たらない方向であり、熱板30やウェハWにも当たらない方向である。
また、ガス供給管60は、排気口50より下方に位置している。
【0030】
さらに、ガス供給管60が有するパージガスの吐出口63は、例えば、
図1に示すように、開口16aから排気口50に向かう気流方向(図のY方向)と平面視で直交する方向(図のX方向)に幅を有している。具体的には、吐出口63は、上記気流方向と平面視で直交する方向のウェハWの幅の範囲に形成されている。より具体的には、吐出口63は、上記直交する方向に沿って等間隔で複数設けられ、複数の吐出口63が形成された領域の上記直交する方向の幅は、ウェハWの直径と略同一である。
【0031】
以上の加熱装置1には、
図1及び
図2に示すように制御部100が設けられている。制御部100は、例えばCPU等のプロセッサやメモリ等を備えたコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、上述の各部の駆動系等の動作を制御して、後述の加熱処理を制御するプログラムが格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な非一時的な記憶媒体Mに記録されていたものであって、当該記憶媒体Mから制御部100にインストールされたものであってもよい。記憶媒体Mは、一時的なものであっても、非一時的なものであってもよい。プログラムの一部または全ては専用ハードウェア(回路基板)で実現してもよい。
【0032】
<加熱処理の例1>
続いて、加熱装置1によるウェハWの加熱処理の一例を説明する。なお、以下の処理は制御部100の制御の下、行われる。また、加熱処理対象のウェハWには、ネガ型のレジスト液の塗布膜の厚膜が形成されているものとする。なお、本明細書において「厚膜」とは5000nm以上20000nm以下の厚さの膜をいう。
【0033】
まず、開閉シャッタ10bにより搬入出口10aが開状態とされ、加熱装置1の外部のウェハ搬送装置(図示せず)に保持されたウェハWが、搬入出口10aを介して、上部領域12における温度調節領域14内に搬入される。その後、昇降ピン22の上昇が行われ、昇降ピン22にウェハWが受け渡される。
【0034】
次いで、ウェハ搬送装置(図示せず)が温度調節領域14内から抜き出され、昇降ピン22が下降され、冷却板20にウェハWが受け渡される。また、開閉シャッタ10bにより搬入出口10aが閉状態とされる。
【0035】
続いて、ウェハWが載置された冷却板20が、開口16aを介して熱板30の上方に移動される。なお、熱板30は予め、所定の温度まで昇温されている。所定の温度とは、例えば、ウェハW上の塗布膜を構成するレジスト液の溶媒の沸点未満である。より具体的には、例えば溶媒がN-メチルピロリドン(沸点204℃)の場合、所定の温度とは100℃~120℃である。
【0036】
その後、昇降ピン33が受け渡し位置まで上昇されて、ウェハWが昇降ピン33に受け渡され、次いで冷却板20が熱板30の上方から退避する。
【0037】
次に、シャッタ16bにより開口16aが所定の開度とされると共に、排気口50を介した熱板30の上方の空間Sの排気が開始され、さらに、ガス供給管60からのパージガスの供給が開始される。
【0038】
その後、昇降ピン33が下降され、ウェハWが熱板30上に載置され、ウェハWの加熱が開始される。ウェハWを熱板30により加熱している間、排気口50を介した排気は継続され、開口16aから排気口50に向かう気流は形成され続ける共に、ガス供給管60からのパージガスの供給は継続され、熱板30の上方の空間Sの排気口50側へ、開口16a側に向かう方向(
図3のY方向負方向)に、パージガスが供給され続ける。
【0039】
ウェハWを熱板30により加熱している間、開口16aから排気口50に向かう気流が形成されていると、加熱されたウェハW上の塗布膜から気化した溶媒は、気化した所から上記気流に沿って流れて行く。そのため、ウェハWにおける上記気流方向の下流側(
図3等のY方向正側)の部分では、気化溶媒の濃度がその他の部分に比べて高くなる。特に塗布膜が厚膜の場合、気化溶媒の量が多いため、その傾向が顕著である。そして、気化溶媒の濃度が高い部分では、塗布膜から溶媒が気化しにくくなる。そのため、ウェハWにおける上記気流方向の下流側の部分において、塗布膜の乾燥が不十分となる場合があるものと考えられる。
【0040】
それに対し、本加熱処理では、上述のように、上記気流方向(
図3等のY方向)の下流側にあたる、熱板30の上方の空間Sの排気口50側へ、ガス供給管60からのパージガスが、開口16a側に向かう方向に供給される。そのため、上記気流方向(
図3等のY方向)の下流側にあたる、熱板30の上方の空間Sの排気口50側において、気化溶媒が高くなることを抑制することができる。したがって、ウェハW上の塗布膜の乾燥度合いを均一にすることができる。
【0041】
ウェハWを熱板30により加熱している間、ガス供給管60から供給されるパージガスの流量は、以下の条件を満たす流量である。すなわち、ガス供給管60から供給されるパージガスの流速が、排気口50を介した排気により形成される開口16aから排気口50に向かう気流よりも低くなる流量である。言い換えると、排気口50を介した排気により形成される開口16aから排気口50に向かう一方向流が維持される流量である。このような流量とすることにより、気化溶媒が排気できずに筐体10外に漏れるのを抑制することができる。
【0042】
熱板30によるウェハWの加熱を開始してから所定時間が経過し、ウェハWの加熱すなわちウェハW上の塗布膜の乾燥が完了すると、昇降ピン33が受け渡し位置まで上昇され、これによりウェハWが昇降ピン33により支持されると共に熱板30から離間され、熱板30によるウェハWの加熱が終了する。また、排気口50を介した排気及びガス供給管60からのパージガスの供給が停止される。
【0043】
次に、シャッタ16bにより開口16aが開状態とされ、冷却板20が、熱板30と昇降ピン33に支持されたウェハWとの間に挿入される。次いで、昇降ピン33が下降され、ウェハWが冷却板20に受け渡される。続いて、ウェハWが載置された冷却板20が温度調節領域14に移動される。そして、ウェハWが、冷却板20で所定の時間冷却され、温度調節される。
【0044】
その後、昇降ピン22が上昇され、これによりウェハWが昇降ピン22により支持されると共に冷却板20から離間される。次に、開閉シャッタ10bにより搬入出口10aが開状態とされ、ウェハ搬送装置(図示せず)が、搬入出口10aを介して、冷却板20と昇降ピン22に支持されたウェハWとの間に挿入される。次いで、昇降ピン22が下降され、ウェハWがウェハ搬送装置に支持される。そして、ウェハWがウェハ搬送装置により搬出され、加熱装置1によるウェハWの加熱処理が終了する。なお、加熱装置1により加熱処理されたウェハWは、例えば、次いで露光処理及び現像処理が行われパターンが形成され、その後、塗布膜の溶媒の沸点より高い温度で加熱処理される。
【0045】
<本実施形態の主な効果>
以上のように、本実施形態では、加熱装置1がガス供給管60を備え、開口16aと排気口50により形成される気流の方向の下流側にあたる、熱板30の上方の空間Sの排気口50側へ、開口16a側に向かう方向に、パージガスを供給している。このパージガスの供給により、上記下流側にあたる熱板30の上方の空間Sの排気側において、気化溶媒の濃度が高くなることを抑制することができる。したがって、ウェハWの上記下流側においても、他の部分と同様に、ウェハW上の塗布膜から溶媒気化するため、ウェハW上の塗布膜の乾燥度合いをウェハ面内均一にすることができる。また、本実施形態によれば、ウェハW上の塗布膜の乾燥度合いを均一にすることができるため、ウェハW上の塗布膜の乾燥が遅い部分のためにウェハWの塗布膜全体の加熱時間を長くする、等という対策が不要である。したがって、このような対策を取ったときのようにウェハW上に残渣が残るのを抑制することができる。
【0046】
さらに、本実施形態では、ガス供給管60が、上記空間Sの排気口50側へ、斜め上方向にパージガスを供給している。したがって、パージガスが、熱板30に載置されたウェハW上の塗布膜に直接当たることがないため、パージガスにより上記塗布膜が変形するのを防ぐことができる。
【0047】
また、本実施形態では、吐出口63が、上記気流方向と平面視で直交する方向のウェハWの幅の範囲に形成されている。吐出口63の形成幅が狭い場合、熱板30の上方すなわちウェハWの上方の空間Sの排気口50側において、吐出口63からのパージガスにより気化溶媒が分散される範囲が限定的になるおそれがある。このように限定的になると、膜質及び膜厚といった熱処理結果の均一性が悪化してしまう。それに対し、本実施形態では、吐出口63が上述のようにウェハWの幅の範囲に形成されているため、熱板30の上方すなわちウェハWの上方の空間Sの排気口50側において、略全ての範囲が吐出口63からのパージガスにより気化溶媒が分散される。したがって、本実施形態によれば、吐出口63からのパージガスにより、膜質及び膜厚といった熱処理結果の均一性が悪化するのを抑制することができる。つまり、本実施形態によれば、吐出口63からのパージガスが、開口16aから排気口50に向かう気流に与える影響を抑えつつ、気化溶媒の分散をウェハWの幅方向に対して効率良く行うことができる。
【0048】
図4に、実際に加熱処理を行った後のウェハW上のレジスト膜の面内分布を示す。本図では、上述した加熱処理のように、熱板30の上方の空間Sの排気口50側へパージガスを供給したケース(ケース1)と、パージガスの供給を行わなかったケース(ケース2)との上記面内分布を示している。ケース1とケース2とで、パージガスの供給の有無以外の処理条件は共通である。
【0049】
図示するように、本実施形態のようなパージガスの供給を行わないケース2では、開口16aと排気口50により形成される気流の方向の下流側にあたる排気口50側(図の領域R2)に、膜厚の薄い部分が存在していた。
一方、本実施形態のようにパージガスの供給を行なったケース1では、開口16aと排気口50により形成される気流の方向の下流側にあたる排気口50側(図の領域R1)において、ケース2に比べて、膜厚の薄い部分が減少していた。
これらの結果から、加熱処理時に、熱板30の上方の空間Sの排気口50側へパージガスを供給することで膜厚差を低減可能であること、すなわちウェハWに対する加熱処理の面内均一性の向上が可能であることが分かる。
【0050】
<加熱処理の例2>
続いて、加熱装置1によるウェハWの加熱処理の他の例を説明する。なお、前述の例1と同様な部分についてはその説明を省略する。
【0051】
本例においても、ウェハWは、冷却板20により、開口16aを介して熱板30の上方に移動される。
その後、昇降ピン33が受け渡し位置まで上昇されて、ウェハWが昇降ピン33に受け渡され、次いで冷却板20が熱板30の上方から退避する。
【0052】
次に、シャッタ16bにより開口16aが所定の開度とされると共に、排気口50を介した熱板30の上方の空間Sの排気が開始され、さらに、ガス供給管60からのパージガスの供給が開始される。
【0053】
その後、ウェハWが、
図5に示すように、受け渡し位置P1とは異なる位置(具体的には下方の位置)であって天板40からウェハWまでの距離が所定距離となる中間位置P2に移動され、その状態(第1の状態)で所定時間(例えば30秒~300秒)保たれ、熱板30からの熱により加熱されて、ウェハW上の塗布膜の乾燥が進められる。上記所定距離すなわち中間位置P2は、ウェハW上の塗布膜の材料の種類等に応じて予め定められ、また、上記所定時間は、ウェハW上の塗布膜の材料の種類や膜厚に応じて予め定められ、これらの情報は予め記憶部(図示せず)に記憶されている。
【0054】
ウェハWにかかる中間位置P2すなわち第1の状態でウェハWの位置は、後述の第2の状態でのウェハWの位置よりも熱板30から離れた位置である。中間位置P2は、例えば、天板40から熱板30までの距離が30mmである場合に、ウェハWの裏面から熱板30までの距離が2~20mmとなる位置である。中間位置P2は、熱板30の表面からウェハWの下面までの距離よりも天板40からウェハWの表面すなわち上面までの距離が小さくなる位置であってもよい。また、中間位置P2は、ガス供給管60から吐出されるガスによる塗布膜への局所的な悪影響を避けるために、ガス供給管60の吐出口63の吐出軸AXが当該ウェハWの裏面と交差する位置であってもよい。ガスによる塗布膜への局所的な悪影響は、例えば、吐出されたガスの勢いを受けての変形や、揮発溶剤濃度が極端に低い空間に触れることによる膜厚ムラの悪化等が挙げられる。
【0055】
次いで、昇降ピン33が下降され、前述の第1の状態よりも天板40とウェハWとの間隔が大きい状態(第2の状態)とされ、具体的には、ウェハWが熱板30上に載置された状態とされる。その状態で、ウェハWが所定の処理温度まで加熱され、ウェハW上の塗布膜の厚膜の乾燥がさらに進められる。
【0056】
この第2の状態で加熱する前に行われる工程での状態すなわち前述した第1の状態は、第2の状態よりも天板40とウェハWとの間隔が小さい場合、天板40とウェハWの間の空間における圧力損失が大きい。また、この場合、熱板30の表面からウェハWの下面までの間隔は、第1の状態のほうが第2の状態よりも大きくなり、つまり熱板30とウェハWの間の空間における圧力損失も小さくなる。したがって、排気口50を介した排気量を変化させなくても、第1の状態と第2の状態との間で、ウェハWの上方でその表面に沿った気流の強さを変化させることができる。具体的には、第1の状態で加熱する工程は、第2の状態で加熱する工程よりも、ウェハ表面に沿って流れる気流が相対的に弱い状態で、ウェハW上の塗布膜の乾燥が進められる。
【0057】
第1の状態で加熱する工程は、塗布膜の流動性が第2の状態での加熱のときにウェハWの表面に沿って流れる相対的に強い気流の影響を受けない程度に落ちるまで行われ、その後で昇降ピン33が下降されて、上述のように第2の状態に移行する。
また、第1の状態で加熱する工程において、中間位置P2を、熱板30の表面からウェハWの下面までの距離よりも天板40からウェハWの表面すなわち上面までの距離が小さくなる位置に設定する場合を前述した。この設定は、ウェハWの下面側及び表面側の2つの空間の圧力損失の相対的関係上、第1状態で加熱する工程におけるウェハWの表面に沿う気流が顕著に弱まるため、例えば、後述する膜厚ムラを大きく改善すべきときに用いることができる。
【0058】
第1の状態での塗布膜の乾燥及び第2の状態での塗布膜の乾燥の間、排気口50を介した排気は継続され、開口16aから排気口50に向かう気流は形成され続ける共に、ガス供給管60からのパージガスの供給は継続される。
【0059】
第2の状態でのウェハWの加熱を開始してから所定時間が経過し、ウェハW上の塗布膜の乾燥が完了すると、前述の例1と同様に、ウェハWが、温度調節領域14に移動された後、冷却板20で所定の時間冷却され、温度調節される。そして、ウェハWがウェハ搬送装置により搬出され、加熱装置1によるウェハWの加熱処理が終了する。
【0060】
本例の場合、溶媒の気化が多い第2の状態での塗布膜の乾燥の間、開口16aから排気口50に向かう気流が形成されている。そして、上記乾燥の間、気流方向の下流側にあたる、熱板30の上方の空間Sの排気口50側へ、ガス供給管60からのパージガスが、開口16a側に向かう方向に供給される。そのため、本例においても、上記乾燥の間、上記気流方向(
図3等のY方向)の下流側にあたる、熱板30の上方の空間Sの排気口50側において、気化溶媒濃度が高くなることを抑制することができる。
【0061】
また、前述の加熱処理の例1の場合、本発明者らが鋭意調査したところ、塗布膜材料の種類等によって、排気口50に向かう気流方向と平行な膜厚ムラが生じること、すなわち、膜厚の薄い部分または厚い部分が上記気流方向と平行に生じることがある。それに対し、本例の加熱処理では、塗布膜の流動性が高い初期段階では、ウェハWの表面に沿って流れる気流の弱い状態で塗布膜の乾燥を進め、上記気流の影響を受けない程度に塗布膜の硬化が進んだ後から、上記気流を強い状態として気化溶媒を除去しながら塗布膜の硬化をさらに進める。そのため、本例によれば、排気口50に向かう気流方向と平行な膜厚ムラが生じるのを抑制することができる。
【0062】
また、ウェハWの表面に沿って流れる気流を弱くする方法としては、空間Sからの排気量を低下させる方法が考えられる。しかし、この方法では、塗布膜からの気化溶媒が空間Sの外部すなわち加熱装置1の外部に漏れ出すおそれがある。それに対し、本例では、空間Sからの排気量を低下させずに、ウェハWの表面に沿って流れる気流を弱くしている。したがって、本例によれば、気化溶媒が外部へ漏れ出すリスクを抑制しながら、排気口50に向かう気流方向と平行な膜厚ムラが生じるのを抑制することができる。
【0063】
また、ウェハWの表面に沿って流れる気流を弱くする方法としては、空間Sに取り込む気体の流量を低下させる方法が考えられる。しかし、この方法では、塗布膜からの気化溶媒をウェハWの上方から適切に除去することができず、塗布膜の乾燥速度が低下しスループットが悪化するおそれがある。それに対し、本例では、空間Sに取り込む気体の流量を低下させずに、ウェハWの表面に沿って流れる気流を弱くしている。したがって、本例によれば、塗布膜の乾燥速度の低下を抑制しながら、排気口50に向かう気流方向と平行な膜厚ムラが生じるのを抑制することができる。
【0064】
<加熱処理の例2>
続いて、加熱装置1によるウェハWの加熱処理の他の例を説明する。なお、前述の例1、2と同様な部分についてはその説明を省略する。
【0065】
本例においても、ウェハWは、冷却板20により、開口16aを介して熱板30の上方に移動される。
その後、昇降ピン33が受け渡し位置まで上昇されて、ウェハWが昇降ピン33に受け渡され、次いで冷却板20が熱板30の上方から退避する。
【0066】
次に、シャッタ16bにより開口16aが所定の開度とされると共に、排気口50を介した熱板30の上方の空間Sの排気が開始され、さらに、ガス供給管60からのパージガスの供給が開始される。
【0067】
その後、ウェハWが、
図6に示すように、受け渡し位置P1とは異なる位置(具体的には下方の位置)であって熱板30からウェハWまでの距離が前述の第1の状態すなわち一点鎖線で示す中間位置P2より近くなる昇温位置P3に移動され、その状態で、熱板30からの熱によりウェハWが加熱され、ウェハWの温度が、第1の状態での加熱時の目標温度に近い温度とされる。
【0068】
その後、前述の例2と同様に、ウェハW上の塗布膜の乾燥が第1の状態で行われ、その後、同乾燥が第2の状態で行われる。
【0069】
昇温位置P3でのウェハWの加熱、第1の状態での塗布膜の乾燥及び第2の状態での塗布膜の乾燥の間、排気口50を介した排気は継続され、開口16aから排気口50に向かう気流は形成され続ける共に、ガス供給管60からのパージガスの供給は継続される。
【0070】
第2の状態でのウェハW上の塗布膜の乾燥が完了すると、前述の例1、2と同様に、ウェハWが、温度調節領域14に移動された後、冷却板20で所定の時間冷却され、温度調節される。そして、ウェハWがウェハ搬送装置により搬出され、加熱装置1によるウェハWの加熱処理が終了する。
【0071】
本例によれば、ウェハWが第1の状態での加熱時の目標温度に到達するまでの時間を短縮することができる。
【0072】
(第2実施形態)
<加熱装置>
図7は、第2実施形態にかかる加熱装置の構成の概略を示す横断面図である。
図7の加熱装置1aは、
図1等に示した加熱装置1の構成に加え、別のガス供給部としてのガス供給管110、111を有している。
【0073】
ガス供給管110、111は、ガス供給管60と同様、上部領域12における加熱領域15に設けられている。また、ガス供給管110、111は、ガス供給管60と同様、熱板30の上方の空間S(
図2参照)にパージガス(例えば圧縮空気や窒素ガス等の不活性ガス)を供給するためのものであり、例えば、配管112、113を介してパージガスの供給源114、115に接続されている。
【0074】
ただし、ガス供給管110、111は、ガス供給管60と異なり、開口16aから排気口50に向かう気流方向と平面視において直交する方向(図のX方向)にかかる、熱板30に載置されたウェハWの側方に設けられている。また、ガス供給管110、111は、
図7において灰色矢印で示すように、熱板30の上方の空間S(
図2参照)に、上記直交する方向(図のX方向)にパージガスを供給する。
【0075】
具体的には、ガス供給管110は、上記直交する方向にかかる、熱板30に載置されたウェハWの一方側(図のX方向正側)の側方に設けられ、熱板30の上方の空間Sに、上気直交する方向の他方側(図のX方向負側)に向けてパージガスを供給する。また、ガス供給管111は、上記直交する方向にかかる、熱板30に載置されたウェハWの他方側(図のX方向負側)の側方に設けられ、熱板30の上方の空間Sに、上気直交する方向の一方側(図のX方向正側)に向けてパージガスを供給する。
【0076】
ガス供給管110、111が有するパージガスの吐出口116、117は、例えば、開口16aから排気口50に向かう気流方向(図のY方向)に幅を有している。具体的には、吐出口116、117はそれぞれ、上記気流方向に沿って等間隔で複数設けられている。吐出口116、117の形成領域の上記気流方向の幅はそれぞれ、ウェハWの直径と略同一である。
【0077】
ガス供給管110、111を設けることにより、以下の効果がある。すなわち、ガス供給管110、110を設けておらず、上記直交する方向にかかるウェハWの側方から、上記直交する方向にパージガスを供給しない場合、
図8の左側において点線で示すように、ウェハWの周縁部における、上記直交する方向(図の左右方向)の両端部に、局所的に膜厚が薄い部分が生じることがある。言い換えると、上記直交する方向(図の左右方向)の端部に、局所的に乾燥が不足する部分が生じることがある。
【0078】
その理由としては以下が考えられる。すなわち、ガス供給管60からのパージガスの流量や当該流量と排気流量とのバランス等といった条件次第では、ウェハWの上記直交する方向にかかる両端部の上方において、筐体10の側壁が近いことから、開口16aから排気口50に向かう気流の流速が落ち、熱板30に載置されたウェハW上の塗布膜から気化した溶媒が比較的滞留しやすい。その結果、ウェハWの上記直交する方向にかかる両端部において、ウェハW上の塗布膜の乾燥不足が生じることがあるものと考えられる。
【0079】
それに対し、本実施形態では、熱板30に載置されたウェハWの上記直交する方向にかかる側方に設けられたガス供給管110、111から、熱板30の上方の空間Sに、上気直交する方向に向けて、補助的にパージガスを供給している。そのため、熱板30上のウェハWの上記直交する方向にかかる両端部の上方に、気化溶媒が滞留するのを抑制することができる。したがって、
図8の右側において点線で示すように、ウェハWの周縁部における、上記直交する方向(図の左右方向)の両端部に、局所的な膜厚が薄い部分が生じるのを抑制することができる。すなわち、ウェハW上の塗布膜の乾燥度合いをより均一にすることができる。
【0080】
なお、
図8に結果を示した評価は、上記直交する方向に向けてパージガスを供給することの簡易評価であり、ウェハWの中央部を含めた全体的な膜厚の面内均一性に関しては、加熱処理時の条件の最適化の余地はある。
【0081】
複数の吐出口116、117から供給するパージガスの流量は、加熱処理後の膜厚の面内均一性の許容範囲内で調整され得る。
複数の吐出口116から供給するパージガスの流量は、吐出口116間で互いに等しくてもよいし異なっていてもよい。例えば、各吐出口116からのパージガスの流量は、熱板30までの距離に応じて決められていてもよく、熱板30までの距離が最も近い吐出口からの流量、すなわち、熱板30における筐体10の側壁に最も近い部分に対応する吐出口116からの流量が最も大きくなるようにしてもよい。これにより、ウェハW上の塗布膜の乾燥度合いをさらに均一にすることができる。
この場合、例えば、吐出口116毎に、流量を調整するための調整弁が設けられる。
吐出口117からのパージガスの流量は、例えば対向する吐出口116からのパージガスの流量と同様であるが、異なっていてもよい。
【0082】
なお、ガス供給管110、111は、ガス供給管60と同様、排気口50より下方に位置している。また、ガス供給管110、111は、熱板30の上方の空間Sに、斜め上方向へ向けてパージガスを供給する。これによりガス供給管110、111からのパージガスが、熱板30に載置されたウェハW上の塗布膜に直接当たることがないため、ガス供給管110、111からのパージガスにより上記塗布膜が変形するのを防ぐことができる。
【0083】
(変形例)
以上の例では、塗布膜は、ネガ型のレジスト液から形成されていたが、ポジ型のレジスト液から形成されてもよい。また、塗布膜は、レジスト液以外の塗布液から形成されてもよい。
【0084】
また、以上の例では、熱板30の上方の空間Sにガスを流入させるガス流入部が、開口16aであったが、上記ガス流入部は、ガスを吐出するガス吐出部で構成されていてもよい。
【0085】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0086】
なお、上記までに説明した各構成は、添付の請求の範囲に明記した例以外にも、互いに組み合わせて実施及び利用され得る。
【符号の説明】
【0087】
1 加熱装置
1a 加熱装置
16a 開口
30 熱板
50 排気口
60 ガス供給管
S 空間
W ウェハ