(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115106
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】研削装置
(51)【国際特許分類】
B24B 55/02 20060101AFI20230810BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20230810BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
B24B55/02 B
B24B7/04 A
H01L21/304 631
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099742
(22)【出願日】2023-06-19
(62)【分割の表示】P 2018210968の分割
【原出願日】2018-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】福原 啓介
(57)【要約】
【課題】メンテナンス作業を効率的に実施可能で、且つ研削水を一定の場所に吐出させて効率的にウェハ及び砥石を冷却する研削装置を提供する。
【解決手段】研削装置1は、ウェハWを吸着保持するチャック11と、ウェハWを研削する砥石20が下端に装着され、チャック11の上方に設けられて昇降可能なスピンドル21と、スピンドル21を収容し、昇降可能に設けられたジャケット23と、ウェハW又は砥石20の少なくとも一方に向けて研削水を吐出し、ジャケット23と一体で昇降可能に設けられた複数のノズル51を有する研削水供給機構50と、を備えている。複数のノズル51は、研削水を一定の位置に吐出するように研削水を吐出する向きが固定されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハを吸着保持するチャックと、
前記ウェハを研削する砥石が下端に装着され、前記チャックの上方に設けられて昇降可能なスピンドルと、
前記スピンドルを収容し、昇降可能に設けられたジャケットと、
前記ウェハ及び前記砥石の少なくとも一方に向けて研削水を吐出し、前記ジャケットと一体で昇降可能に設けられた複数のノズルを有する研削水供給機構と、
を備え、
前記複数のノズルは、前記研削水を一定の位置に吐出するように前記研削水を吐出する向きが固定されている、ことを特徴とする研削装置。
【請求項2】
前記複数のノズルは、前記ジャケットの外側の下端に設けられている、ことを特徴とする請求項1記載の研削装置。
【請求項3】
前記研削水供給機構は、前記砥石が前記ウェハを研削する研削条件に応じて、前記複数のノズルのうち前記研削水を通水させるノズルを切替可能に構成されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の研削装置。
【請求項4】
前記複数のノズルは、前記チャック内の第1の位置に対応して配置された少なくとも1つの第1のノズルと、前記チャック内において前記第1の位置よりも前記砥石が前記ウェハに接触する加工ラインに近い第2の位置に対応して配置された少なくとも1つの第2のノズルと、から成る、ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の研削装置。
【請求項5】
前記第1の位置は、前記砥石が前記ウェハの中心から外周に向かって前記ウェハを研削するダウンカットの加工ラインに対応し、
前記第2の位置は、前記砥石が前記ウェハの外周から中心に向かって前記ウェハを研削するアップカットの加工ラインに対応する、ことを特徴とする請求項4に記載の研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハを砥石で研削する研削装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造分野では、シリコンウェハ等の半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という)を薄膜に形成するために、ウェハの裏面を研削する裏面研削が行われている。
【0003】
特許文献1には、クーラント供給機構17の先端に設けられたノズルから砥石12とウェハWとの間に研削水(冷却水)が供給されながら、チャックテーブル11に吸着保持されたウェハWの上面を砥石12で研削する研削加工装置10が開示されている。
【0004】
クーラント供給機構17は、非接触式のセンサ15を搭載するアーム状のセンサ移動機構18及び接触式センサ等を収容するチャンバの側面に設置されている。クーラント供給機構17のノズルは、フレキシブルホースに接続されており、研削水の供給位置を任意に変更することができるように構成されている。なお、符号は特許文献1における符号である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の研削加工装置10では、狭いチャンバ内に様々な機器が配置されていることにより、メンテナンス作業の際には、フレキシブルホースを屈曲させてノズルを砥石12の近傍から退避させなければならず、メンテナンス作業が煩雑になりがちであった。また、オペレータがフレキシブルホースを手作業で屈曲させてノズルの位置を調整するため、研削水の吐出位置が一定でない虞があるという問題があった。
【0007】
そこで、メンテナンス作業を効率的に実施可能で、且つ研削水を一定の場所に吐出させて効率的にウェハ及び砥石を冷却するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る研削装置は、ウェハを吸着保持するチャックと、前記ウェハを研削する砥石が下端に装着され、前記チャックの上方に設けられて昇降可能なスピンドルと、前記スピンドルを収容し、昇降可能に設けられたジャケットと、前記ウェハ及び前記砥石の少なくとも一方に向けて研削水を吐出し、前記ジャケットと一体で昇降可能に設けられた複数のノズルを有する研削水供給機構と、を備え、前記複数のノズルは、前記研削水を一定の位置に吐出するように前記研削水を吐出する向きが固定されている。
【0009】
この構成によれば、ノズルがジャケットと一体で昇降可能に構成されていることにより、メンテナンスの際に、ノズルがオペレータの作業スペースに干渉しないため、メンテナンス作業を効率的に実施することができる。また、メンテナンスの度にノズルの向きを変更する必要がないため、研削水を一定の場所に吐出させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、ノズルがジャケットと一体で昇降可能に構成されていることにより、メンテナンスの際に、ノズルがオペレータの作業スペースに干渉しないため、メンテナンス作業を効率的に実施することができる。また、メンテナンスの度にノズルの向きを変更する必要がないため、研削水を一定の場所に吐出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る研削装置を上方から視た平面図。
【
図5】ダウンカットの様子を模式的に示す平面図及び側面図。
【
図6】アップカットの様子を模式的に示す平面図及び側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0013】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0014】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0015】
研削装置1は、ウェハWの一方面(被加工面)を平面に研削するものである。研削装置1は、工程に応じた1つまたは複数のチャンバCに区画されている。複数のチャンバCを設けることにより、複数のウェハWを連続して加工することができる。
図1は、チャンバC内の構成を示す平面図である。
図2は、研削装置1を示す斜視図である。
【0016】
研削装置1は、インデックステーブル10と、インデックステーブル10上に配置されてウェハWの他方面を吸着保持するチャック11を備えている。
【0017】
インデックステーブル10は、回転軸12を中心に回転可能であり、複数のチャック11が回転軸12を中心に等間隔で同心円上に設けられている。
【0018】
チャック11は、上面にアルミナ等の多孔質材料からなる図示しない吸着体が埋設されている。チャック11は、内部を通って表面に延びる図示しない管路を備えている。管路は、図示しないロータリージョイントを介して真空源、圧縮空気源又は給水源に接続されている。真空源が起動すると、チャック11に載置されたウェハWがチャック11に吸着保持される。また、圧縮空気源又は給水源が起動すると、ウェハWとチャック11との吸着が解除される。
【0019】
また、研削装置1は、砥石20と、スピンドル21と、スピンドル送り機構22と、を備えている。砥石20には、例えばカップ型砥石が用いられる。砥石20は、スピンドル21の下端に取り付けられている。スピンドル21は、砥石20とともに回転可能に構成されている。
【0020】
スピンドル送り機構22は、スピンドル21を収容するジャケット23を垂直方向(
図2の紙面上下方向)に昇降させるように構成されている。スピンドル送り機構22は、ジャケット23とコラム24とを連結する2本のリニアガイド25と、ジャケット23を垂直方向に昇降させる公知のボールネジスライダ機構26と、を備えている。
【0021】
チャンバC内には、固定式厚み測定器30及び移動式厚み測定器40が設けられている。
【0022】
固定式厚み測定器30は、ウェハW上の半径方向の所定位置においてウェハ厚みを定点測定する。固定式厚み測定器30は、一対のセンサヘッド31、32を備えている。センサヘッド31は、ウェハWの上面に接触可能に配置されており、センサヘッド31の下端の高さを測定する。センサヘッド32は、センサヘッド31の外側に配置され、チャック11の上面に接触可能に設けられており、センサヘッド32の下端の高さを測定する。センサヘッド31、32の各測定値の差が、ウェハWの厚みとなる。
【0023】
移動式厚み測定器40は、ウェハW上の半径方向に移動しながらウェハWの厚みを測定する。移動式厚み測定器40は、センサ41と、センサ41が先端に設けられたアーム42と、を備えている。
【0024】
センサ41は、研削加工中に非接触式でウェハWの厚みを測定する膜厚センサである。センサ41は、例えば、分光干渉式の膜厚センサが好ましい。分光干渉式の膜厚センサは、振動等の外乱に強く、高精度でウェハWの厚みを測定することができる。以下では、センサ41として、分光干渉式の膜厚センサを採用した場合を例に説明する。
【0025】
センサ41の図示しないセンサヘッドは、ウェハWに向けて光を照射し、またウェハWの上面及び下面で反射した光が干渉した反射光を受光する。反射光は、分光器によって分光され、後述する制御装置が、ウェハWの上面で反射した光とウェハWの下面で反射した光との光路差に基づいてウェハWの厚みを算出する。
【0026】
アーム42は、駆動軸43を支点としてウェハWの半径方向に搖動可能である。アーム42は、センサ41がウェハWの外周縁から砥石20に干渉しない位置までをスキャンできるように搖動可能である。
【0027】
固定式厚み測定器30及び移動式厚み測定器40は、メンテナンス作業を行う際にオペレータがチャンバC内にアクセスする開口部Oに対してスピンドル21を挟んで反対側に設けられている。
【0028】
研削水供給機構50は、砥石20とウェハWとの間に研削水(冷却水)を供給する。なお、研削水供給機構50の具体的構成については後述する。
【0029】
研削装置1の動作は、図示しない制御装置によって制御される。制御装置は、研削装置1を構成する構成要素をそれぞれ制御するものである。制御装置は、例えばコンピュータであり、CPU、メモリ等により構成される。なお、制御装置の機能は、ソフトウェアを用いて制御することにより実現されても良く、ハードウェアを用いて動作することにより実現されても良い。
【0030】
次に、研削水供給機構50の具体的構成について、
図3、4に基づいて説明する。
【0031】
研削水供給機構50は、ジャケット23の下端から突設されたノズル51を備えている。ノズル51は、吐出口52を下方に向けて設けられている。ノズル51は、研削水を通す配管53に接続されており、研削水をウェハWと砥石20との間に供給する。ノズル51は、砥石20の回転方向Dに沿って4つ設けられている。なお、ノズル51の数は、4つに限定されるものではなく、3個以下でも、5個以上であっても構わない。なお、
図2~4では、配管53の一部を省略している。
【0032】
研削水を通す配管53には、バルブ54が介装されており、回転方向Dの一方側に設けられた2つのノズル51(以下、総じて「第1のノズル群A」という)又は回転方向Dの他方側に設けられた2つのノズル51(以下、総じて「第2のノズル群B」という)の何れかに研削水を通水できるように構成されている。
【0033】
ノズル51は、側面から視て略L字状に形成されている。また、ノズル51は、研削水の送水方向においてリジット(すなわち、屈曲不能)に構成されている。これにより、ノズル51は略同じ位置に研削水を供給することができる。また、ノズル51の基端側は、リンク機構55を介してジャケット23内に接続されている。これにより、ノズル51は、リンク機構を支点として回転可能であり、吐出口52の向きを微調整可能なため、砥石20及びウェハWを効率的に冷却することができる。
【0034】
次に、研削装置1の作用について、図面に基づいて説明する。
【0035】
まず、インデックステーブル10が回転することにより、ウェハWを吸着保持したチャック11がチャンバC内に搬送されて砥石20の下方に配置される。その後、スピンドル送り機構22が駆動して、砥石20がウェハWの近傍まで接近される。
【0036】
次に、第1のノズル群A又は第2のノズル群Bから研削水を吐出し、ウェハWと砥石20との間に研削水を供給する。
【0037】
第1のノズル群A又は第2のノズル群Bの何れから研削水を吐出するかは研削条件に応じて設定される。例えば、
図5(a)、(b)に示すように、砥石20がウェハWの中心から外周に向かってウェハWを研削する、いわゆるダウンカットの場合には、砥石20がウェハWに接触する加工ラインからウェハWの回転方向において離れた場所(第1の位置)で研削水を吐出することにより、ウェハW上に吐出された研削水がウェハWの回転に伴って加工ライン全体に拡散する。したがって、ダウンカットの場合には、第1の位置に配置された第1のノズル群Aから研削水を吐出する。
【0038】
一方、
図6(a)、(b)に示すように、砥石20がウェハWの外周から中心に向かってウェハWを研削する、いわゆるアップカットの場合には、ウェハWと砥石20とが同方向に回転するダウンカットに比べて研削で生じる摩擦熱が多いため、第1の位置に比べて加工ラインに近い位置(第2の場所)で研削水を吐出する必要がある。したがって、アップカットの場合には、第2の位置に配置された第2のノズル群Bから研削水を吐出する。
【0039】
このように、研削水供給機構50は、研削条件に応じて効率的に冷却可能なノズル51から研削水を吐出させることにより、研削水の使用量を低減することができる。
【0040】
次に、チャック11及び砥石20をそれぞれ回転させながら、砥石20をウェハW表面に押し当てる。研削装置1の研削条件は、例えば、チャック11の回転速度は300rpm、砥石20の番手は#6000、スピンドル21の回転速度は2000rpm、スピンドル送り機構22の送り速度は0.4μm/sである。
【0041】
研削装置1は、固定式厚み測定器30の測定値が所望の厚み(例えば、6μm)に達するまでウェハWを研削する。ウェハWの研削が終了すると、チャック11及び砥石20の停止し、砥石20が上方に退避した後に、インデックステーブル10が回転して、研削後のウェハWを次の工程(研磨、洗浄等)に搬送する。
【0042】
このようにして、本形態に係る研削装置1は、ノズル51がジャケット23と一体で昇降可能に構成されていることにより、メンテナンスの際に、ノズル51がオペレータの作業スペースに干渉しないため、メンテナンス作業を効率的に実施することができる。また、メンテナンスの度にノズル51の向きを変更する必要がないため、研削水を一定の場所に吐出させることができる。
【0043】
また、ノズル51が屈曲不能に構成されていることにより、ノズル51から吐出される研削水が一定の場所に安定して供給される。
【0044】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0045】
1 ・・・研削装置
10 ・・・インデックステーブル
11 ・・・チャック
12 ・・・回転軸
20 ・・・砥石
21 ・・・スピンドル
22 ・・・スピンドル送り機構
23 ・・・ジャケット
24 ・・・コラム
25 ・・・リニアガイド
26 ・・・ボールネジスライダ機構
30 ・・・固定式厚み測定器
31、32・・・センサヘッド
40 ・・・移動式厚み測定器
41 ・・・センサ
42 ・・・アーム
43 ・・・駆動軸
50 ・・・研削水供給機構
51 ・・・ノズル
52 ・・・吐出口
53 ・・・配管
54 ・・・バルブ
55 ・・・リンク機構
A ・・・第1のノズル群
B ・・・第2のノズル群
C ・・・チャンバ
O ・・・開口部