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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115377
(43)【公開日】2023-08-18
(54)【発明の名称】半導体ウェーハ
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/06 20060101AFI20230810BHJP
   C30B 15/00 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
C30B29/06 502Z
C30B15/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109141
(22)【出願日】2023-07-03
(62)【分割の表示】P 2021106674の分割
【原出願日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】16/915,095
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】鳴嶋 康人
(72)【発明者】
【氏名】宇都 雅之
(57)【要約】
【課題】これまで達成できなかった低い抵抗率を有する半導体ウェーハを提供する。
【解決手段】ドーパントとしてリンが添加された単結晶シリコンから切断された直径が300mmの半導体ウェーハであって、半導体ウェーハの抵抗率は0.8mΩ・cm以下であり、半導体ウェーハの断面に表れるストリエーションは当該半導体ウェーハの中心部に単一のピークを有する上凸形状を有する。ストリエーションの高さxと抵抗率yは以下の関係式を満たす。
y-1.556×10-6 x3 +1.439×10-4 x2 -1.469×10-2 x+9.700×10-1
【選択図】図7A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドーパントとしてリンが添加された単結晶シリコンから切断された直径が300mmの半導体ウェーハであって、
前記半導体ウェーハの抵抗率は0.8mΩ・cm以下であり、
前記半導体ウェーハの断面に表れるストリエーションは当該半導体ウェーハの中心部に単一のピークを有する上凸形状を有し、
前記ストリエーションの高さxと前記抵抗率yとが以下の関係式:
y-1.556×10-6 x3 +1.439×10-4 x2 -1.469×10-2 x+9.700×10-1
を満たす半導体ウェーハ。
【請求項2】
ドーパントとしてリンが添加された単結晶シリコンから切断された直径が200mmの半導体ウェーハであって、
前記半導体ウェーハの抵抗率は0.6mΩ・cm以下であり、
前記半導体ウェーハの断面に表れるストリエーションは当該半導体ウェーハの中心部に単一のピークを有する上凸形状を有し、
前記ストリエーションの高さxと前記抵抗率yとが以下の関係式:
y-1.588×10-6 x3 + 1.331×10-4 x2 - 1.195×10-2 x+7.649×10-1
を満たす半導体ウェーハ。
【請求項3】
ドーパントとしてリンが添加された単結晶シリコンから切断された直径が150mmの半導体ウェーハであって、
前記半導体ウェーハの抵抗率は0.6mΩ・cm以下であり、
前記半導体ウェーハの断面に表れるストリエーションは当該半導体ウェーハの中心部に単一のピークを有する上凸形状を有し、
前記ストリエーションの高さxと前記抵抗率yとが以下の関係式:
y ≧ -1.478×10-6 x3 + 7.824×10-5 x2 - 9.744×10-3 x+7.176×10-1
を満たす半導体ウェーハ。
【請求項4】
ドーパントとして砒素が添加された単結晶シリコンから切断された直径が300mmの半導体ウェーハであって、
前記半導体ウェーハの抵抗率yは1.6mΩ・cm以下であり、
前記半導体ウェーハの断面に表れるストリエーションは当該半導体ウェーハの中心部に単一のピークを有する上凸形状を有し、
前記ストリエーションの高さxと前記抵抗率yとが以下の関係式:
y2.886×10-6 x3 +3.319×10-4 x2 -4.192×10-2 x+2.082
を満たす半導体ウェーハ。
【請求項5】
ドーパントとして砒素が添加された単結晶シリコンから切断された直径が200mmの半導体ウェーハであって、
前記半導体ウェーハの抵抗率は1.4mΩ・cm以下であり、
前記半導体ウェーハの断面に表れるストリエーションは当該半導体ウェーハの中心部に単一のピークを有する上凸形状を有し、
前記ストリエーションの高さxと前記抵抗率yとが以下の関係式:
y-5.514×10-6 x3 +3.872×10-4 x2 -2.216×10-2 x+1.500
を満たす半導体ウェーハ。
【請求項6】
ドーパントとして砒素が添加された単結晶シリコンから切断された直径が150mmの半導体ウェーハであって、
前記半導体ウェーハの抵抗率は1.4mΩ・cm以下であり、
前記半導体ウェーハの断面に表れるストリエーションは当該半導体ウェーハの中心部に単一のピークを有する上凸形状を有し、
前記ストリエーションの高さxと前記抵抗率yとが以下の関係式:
y-3.884×10-6 x3 +2.592×10-4 x2 -1.743×10-2 x+1.389
を満たす半導体ウェーハ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、低抵抗率ウェーハ及びウェーハの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウェーハは、例えば単結晶シリコン(monocrystalline silicon)や単結晶シリコン(single-crystal silicon)のような半導体を薄くスライスしたもので、一般的に、集積回路、パワー装置、又は太陽電池を製造するために太陽光発電装置の製造に使用される。ウェーハは、ウェーハ内蔵そしてウェーハ上に築くマイクロ電子装置の回路基板として機能し、添加、イオン注入、エッチング、あらゆる材料の薄膜蒸着、およびフォトリソグラフィパターニングなどの多くのマイクロ加工工程を経る。最終的に、個々の超小型回路はウェーハダイシングにより離間され、集積回路としてパッケージされる。
【0003】
ウェーハの特性は、前述の超小型回路やその他の半導体装置に影響を与える。従って、ウェーハの特性を改善することで、前述の半導体装置や回路の性能を向上できる。例えば、ウェーハが低抵抗率である場合、前述の半導体装置や回路の消費電力は少なく、モバイル装置の使用に適している。ウェーハがスライスされるシリコン結晶が異常成長した場合、かかる結晶性の欠損は材料の半導体特性を破壊する。結果、変形結晶は廃棄される必要がある。
【0004】
図1は、ウェーハの抵抗率とウェーハのドーパント濃度との既知の関係を示すグラフである。図1の曲線はアービンカーブと呼ばれ、ASTM F723-81を介して取得したものである。図1は、抵抗率R及びドーパント(キャリア)濃度(atoms/cm3)との関係を記載している。図1で示されるように、2つの曲線が示され、各曲線は異なるドーパントに対応する。下の曲線はリン濃度の関数として抵抗率を説明、上の曲線はホウ素濃度の関数として抵抗率を説明している。その他の理由として、リンはウェーハを負帯電(N型)するため、およびホウ素はウェーハを正帯電(P型)するために使用される。図1に示すように、どちらの場合も前述の抵抗率は総じてドーパント濃度に反比例する。ドーパントの濃度が等しい場合、リン添加ウェーハの抵抗率はホウ素添加ウェーハの抵抗率よりも低い。ウェーハの構造的および電気的完全性を破壊することなく、できる限り低い抵抗率を取得するために、より高いドーパント濃度は有利になりえる。
【0005】
図2は、既知のシリコン融液からシリコン単結晶を製造する過程に形成された結晶インゴットの断面図である。シリコン融液のドーパント濃度が増加する場合、シリコン融液から引き上げられたシリコンインゴットの抵抗率は減少することが知られているが、シリコン融液のドーパント濃度が高すぎる場合は、シリコン融液から引き上げられたシリコンインゴットは、例えばセルの樹枝状成長のような異常成長を示すことがある。つまり、シリコン融液にドーパントが多く存在すると、シリコン結晶インゴットは変形し、結晶性を破壊する可能性がある。下記の表(表1)は、シリコンインゴットの異常成長および抵抗率におけるドーパント濃度の影響を記載する実験データである。
【0006】
表1:ドーパントはリン(P)で、ストリエーション高さが4mm、引き上げ速度が0.4mm/分で200mmのウェーハの場合
【0007】
【表1】
【0008】
上記のデータより、ドーパント濃度が9.7×1019atoms/cm3に達すると異常成長が発生する。要は、これらの成長条件では、異常成長が確認されるまで、0.8mΩ・cmの最小抵抗率を達成するための最大ドーパント濃度は約9.5×1019atoms/cm3である。
【0009】
ちなみに、ドーパントが異なればウェーハの抵抗率の低下に違う効果が出る。図4Aと4Bは、2つの既知のドーパントを150mmのウェーハの抵抗率を低下させる効果に関して比較したものである。図4Aと4Bにおいて、ウェーハはそれぞれ、アンチモン(Sb)と砒素(As)が添加されている。両方のウェーハは、ストリエーション高さが3mmで、0.7mm/分で引き上げられた結晶から入手されたものである。図4Aと4Bは、砒素は、異常な成長を形成せずに抵抗率を下げるのにより効果的であることを示している。ここで、砒素(図4B)は、アンチモンの9.0mΩ・cmと比較し、異常成長発生前は約1.5mΩ・cmの最小抵抗率になっている(図4A)。
【0010】
単結晶シリコンウェーハの製造工程中、ストリエーションは、例えばシリコン単結晶の製造工程中に融液から単結晶を引き上げる速度などの結果として、ウェーハの断面の表面に生じる。シリコンインゴットのストリエーション高さは、米国特許第8,888,911号で記載されるように測定することが可能で、開示内容はその全てを本明細書に組み込むものとする。
【開示の概要】
【0011】
上記課題を鑑み、本開示の実施形態は、今まで達成できなかった低抵抗率のウェーハを提供することである。このことは、ウェーハを提供するための単結晶が成長する溶融シリコン中の所望のドーパント量を調整することによって達成できる。また実施形態には、所望のストリエーション高さを備える低抵抗率ウェーハも含まれる。
【0012】
実施形態には、抵抗率が0.7mΩ・cm以下、およびストリエーション高さが6ミリ(mm)以上のドーパントを含む半導体ウェーハが含まれる。実施形態には、ドーパントとしてリンを含む半導体ウェーハが含まれる。実施形態には、直径が約200mmの半導体ウェーハが含まれる。
【0013】
実施形態には、抵抗率が0.5mΩ・cm以下である半導体ウェーハが含まれる。
【0014】
実施形態には、抵抗率が0.8mΩ・cm以下、およびストリエーション高さが13ミリ(mm)以上のドーパントを含む半導体ウェーハが含まれる。実施形態には、ドーパントとしてリンを含む半導体ウェーハが含まれる。実施形態には、直径が約300mmの半導体ウェーハが含まれる。
【0015】
実施形態には、抵抗率が0.7mΩ・cm以下、およびストリエーション高さが22ミリ(mm)以上のドーパントを含む半導体ウェーハが含まれる。実施形態には、ドーパントとしてリンを含む半導体ウェーハが含まれる。実施形態には、直径が約300mmの半導体ウェーハが含まれる。
【0016】
実施形態には、抵抗率が1.6mΩ・cm、およびストリエーション高さが13ミリ(mm)以上のドーパントを含む半導体ウェーハが含まれる。実施形態には、ドーパントとして砒素を含む半導体ウェーハが含まれる。実施形態には、直径が約300mmの半導体ウェーハが含まれる。
【0017】
実施形態には、シリコン融液にドーパントを加え、シリコン融液から結晶を回転させながら引き上げ、引き上げ中にシリコン融液に3000ガウス(G)(0.3テスラ(T))以上である磁場をかけて半導体ウェーハを製造する方法が含まれる。実施形態において、結晶から切断された半導体ウェーハの抵抗率は0.8mΩ・cm以下で、ストリエーション高さは13mm以上である。実例による特徴には、直径が約300mmに等しい製造ウェーハが含まれる。
【0018】
実施形態には、シリコン融液に追加されるドーパントはリンである半導体ウェーハの製造方法を含む。実施形態には、ドーパントの蒸発を低減または抑制するためにシリコン融液に圧力をかける(以下、「成長圧力」と称す)ことが備わる半導体ウェーハの製造方法が含まれる。実施形態には、例えば、アルゴンガスなどのガス適用を介して成長圧力がかけられる。
【0019】
本開示の実施形態によれば、求められる性能を達成するために所望のドーパント、所望の抵抗率、所望のストリエーション高さを有するウェーハを上記の方法によって取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本開示の実施形態は、本開示の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ、以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。さらに:
図1図1は、本開示の実施形態に係るウェーハの抵抗率とウェーハのドーパント濃度との関係を示すグラフである。
図2図2は、異常成長の形成を示す単結晶インゴットの断面図の写真である。
図3A図3Aは、本開示の実施形態に係る異常成長発生前のストリエーション高さ及び達成可能な最小抵抗率の関係を示す。
図3B図3Bは、本開示の実施形態に係る異常成長発生前のストリエーション高さ及び達成可能な最小抵抗率の関係を示す。
図3C図3Cは、本開示の実施形態に係る異常成長発生前のストリエーション高さ及び達成可能な最小抵抗率の関係を示す。
図3D図3Dは、本開示の実施形態に係る異常成長発生前のストリエーション高さ及び達成可能な最小抵抗率の関係を示す。
図3E図3Eは、本開示の実施形態に係る異常成長発生前のストリエーション高さ及び達成可能な最小抵抗率の関係を示す。
図3F図3Fは、本開示の実施形態に係る異常成長発生前のストリエーション高さ及び達成可能な最小抵抗率の関係を示す。
図4A図4Aは、2つのドーパント間のウェーハの抵抗率を下げる効果を示す。
図4B図4Bは、2つのドーパント間のウェーハの抵抗率を下げる効果を示す。
図5A図5Aは、本開示の実施形態に係る200mmウェーハのストリエーション高さを示す。
図5B図5Bは、本開示の実施形態に係る300mmウェーハのストリエーション高さを示す。
図6図6は、本開示の実施形態に係るシリコンウェーハの断面図においてストリエーション高さを測定する方法を示す。
図7A図7Aは、実施形態に係る正のストリエーション高さを示す。
図7B図7Bは、実施形態に係る負のストリエーション高さを示す。
図8A図8Aは、実施形態に係るシリコン単結晶ウェーハの製造工程中に印加される磁場と前述のストリエーション高さとの関係を示す。
図8B図8Bは、実施形態に係るシリコン単結晶ウェーハの製造工程中に印加される磁場と前述のストリエーション高さとの関係を示す。
図9A図9Aは、異常成長発生前にシリコンインゴットの引き上げ速度が許容されるドーパント濃度の量に与える影響をさまざまなストリエーション高さで示す。
図9B図9Bは、異常成長発生前にシリコンインゴットの引き上げ速度が許容されるドーパント濃度の量に与える影響をさまざまなストリエーション高さで示す。
図9C図9Cは、異常成長発生前にシリコンインゴットの引き上げ速度が許容されるドーパント濃度の量に与える影響をさまざまなストリエーション高さで示す。
図10A図10Aは、異常成長発生前にシリコンインゴットの引き上げ速度がウェーハの抵抗率の低下に与える影響をさまざまなストリエーション高さで示す。
図10B図10Bは、異常成長発生前にシリコンインゴットの引き上げ速度がウェーハの抵抗率の低下に与える影響をさまざまなストリエーション高さで示す。
図10C図10Cは、異常成長発生前にシリコンインゴットの引き上げ速度がウェーハの抵抗率の低下に与える影響をさまざまなストリエーション高さで示す。
図11図11は、ガス供給口や圧力制御バルブを備える結晶引き上げ装置を示す。
図12A図12Aはウェーハ抵抗率とガスの流量との関係を示すグラフである。
図12B図12Bはウェーハ抵抗率とガスの圧力との関係を示すグラフである。
【開示の実施の形態】
【0021】
ここで示される事項は、一例として挙げ、本開示の実施形態を例示的に説明するだけのものであり、実施形態の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に実施形態の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明は実施形態の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0022】
本明細書において、「約」または「実質上」という用語が数値に関連して使用される場合、関連する数値は記載の数値のおおよそ±10%許容範囲であることを意図する。さらに、本明細書のパーセンテージに言及された場合、これらのパーセンテージは重量(つまり重量パーセント)に基づくことを意図する。「最大~まで」の表現は、ゼロから記載される上限値の量でその間の全ての値が含まれる。範囲が指定される場合、その範囲内の全ての値が、例えば0.1%の単位で含まれる。さらに、「一般的に」や「実質的に」という用語が幾何学的図形に関連して使用される場合、幾何学的図形の精度は求められないが、図形の許容度が開示の範囲内であることを意図する。記載特徴の管状部材は円筒形であっても、正方形、長方形、楕円形、三角形などの他の筒状断面形状であっても検討される。
【0023】
図面では、層や領域の寸法は図を明確にするために誇張されている場合がある。同様の符号は全体を通して同様の要素を意味する。同じ符号は明細書を通して同じ部品を示す。「下"beneath"」、「下"below"」、「下"lower"」、「上"above"」や「上"upper"」のような空間的な相対語は、図に示されるように、ある要素または特徴を別の要素や特徴との関係を容易に説明するために、ここでは使用される。空間的な相対語は図示される方向に加え、使用中または操作中の装置のさまざまな方向を含むとされている。例えば図面の装置がひっくり返された場合、異なる要素や特徴の「下"below"」や「下"beneath"」として記載された要素は、その異なる要素や特徴の「上"above"」の向きになる。従って、「下"below"」という単語は上下方向の両方を含むことができる。さもなければ装置は(90度又は他の方向に回転された)方向を向き、ここで使用される空間的な相対記述子は状況に応じて解釈される。
【0024】
実施形態は、その特徴の理想的特徴(及び中間構造)の概略図である断面図を参照し本明細書にて記載される。よって、例えば、製造技術及び/又は許容範囲の結果による図の形状からバリエーションが予期される。従って、実施形態は本明細書で示される領域の特定の形状に限定されると解釈されるべきではなく、例えば、製造から生じる形状の偏差を含むべきである。図面に示される領域は本来は図式的なものであり、それらの形状は、材料の実際の形状を説明するものではなく、実施形態の範囲を制限する目的はない。
【0025】
実施形態において、シリコン単結晶を形成する方法は、シリコン融液からシリコンを回転させながら引き上げ、シリコン融液を収容するルツボを回転させる方法を含む。引き上げ工程の間、ストリエーションは、融液結晶界面で形成され、したがって、シリコン結晶の断面に沿って、高さのあるストリエーションになる。ストリエーション高さとシリコン結晶の異常成長との間、およびストリエーション高さと前述のウェーハの抵抗率との間には関係が存在する可能性がある。特に、ストリエーション高さが増加するとシリコン融液のドーパント濃度の追加が可能となり、従って、異常成長を生じることなく結晶とそこから生じるウェーハの抵抗率を下げることができる。
【0026】
図3A~3Fは、本開示の実施形態に係るストリエーション高さ及び異なるドーパントのシリコンウェーハの抵抗率の関係を示す。図3A~3Cは、3つの異なる直径:150mm, 200mm, 及び300mmの砒素(As)ウェーハを示しており、全てにおいて、ストリエーション高さが増加すると(異常成長を形成せずに)抵抗率を下げる限界が改善された。図3Aが示すように、本発明によると、300mmのAsウェーハは、ストリエーション高さが13mmで異常成長を形成せずに1.6mΩ・cmの低い抵抗率を取得することができる。さらに、本発明によれば、ストリエーション高さをさらに増加させることで1.6mΩ・cmより低い抵抗率が可能であると示している。一実施形態では、300mmのAsウェーハに約4.0×1019atoms/cm3のヒ素濃度が使用され、約0.2回転/分(rpm)のルツボ回転速度、約0.2mm/分の結晶引き上げ速度、約0.3テスラ(T)(または3000ガウス(G))の磁場とした結果、ストリエーション高さは約13mm、抵抗率は約1.6mΩ・cmとなった。同様に、図3Bが示すように、200mmのAsウェーハは、ストリエーション高さが5mmで1.4mΩ・cmの低い抵抗率を取得することができる。さらに、本発明によれば、ストリエーション高さをさらに増加させることで1.4mΩ・cmより低い抵抗率が可能であると示している。他の実施形態では、約5.1×1019atoms/cm3の濃度のヒ素が200mmのウェーハに使用され、約6rpmのルツボ回転速度、約0.2mm/分の結晶引き上げ速度とした結果、ストリエーション高さは5mm、抵抗率は約1.4mΩ・cmとなった。この場合において、磁場は印加されなかった。最後に、図3Cが示すように、150mmのAsウェーハは、ストリエーション高さが約-1mm程度で1.4mΩ・cmの低い抵抗率を取得することができる。また、3つの全てのウェーハにおいてストリエーション高さを増加することで異常成長を形成せずに抵抗率を下げることが可能である。
【0027】
As添加ウェーハの各ウェーハサイズにおける、「Y」軸として表される抵抗率と、「X」軸として表されるストリエーション高さとの線形回帰の関係を下記に示す。
【0028】
300mm As添加ウェーハ: y=2.886×10-6 x3 +3.319×10-4 x2 -4.192×10-2 x+2.082.
【0029】
200mm As添加ウェーハ:y=-5.514×10-6 x3 +3.872×10-4 x2 -2.216×10-2 x+1.500.
【0030】
150mm As添加ウェーハ:y=-3.884×10-6 x3 +2.592×10-4 x2 -1.743×10-2 x+1.389.
【0031】
図3D~3Fは、3つの異なる直径:150mm, 200mm, 及び300mmのリン(P)ウェーハを示しており、全てにおいて、ストリエーション高さが増加すると(異常成長を形成せずに)抵抗率を下げる限界が改善された。図3Dが示すように、本発明によると、300mmのPウェーハは、ストリエーション高さが13mmで異常成長を形成せずに0.8mΩ・cmの低い抵抗率を取得することができる。さらに、本発明によれば、ストリエーション高さをさらに増加させることで0.8mΩ・cmより低い抵抗率が可能であると示している。一実施形態では、約9.5×1019atoms/cm3のリン濃度が300mmウェーハに使用され、約0.2rpmのルツボ回転速度、約0.2mm/分の結晶引き上げ速度、および約0.3Tの磁場とした結果、ストリエーション高さは約13mm、抵抗率は約0.8mΩ・cmとなった。同様に、図3Eが示すように、200mmのPウェーハは、ストリエーション高さが16mmで0.6mΩ・cmの低い抵抗率を取得することができる。さらに、本発明によれば、ストリエーション高さをさらに増加させることで0.6mΩ・cmより低い抵抗率が可能であると示している。一実施形態では、約1.3×1020atoms/cm3のリン濃度が200mmのウェーハに使用され、約0.2rpmのルツボ回転速度、約0.2mm/分の結晶引き上げ速度、および約0.3Tの磁場とした結果、ストリエーション高さは約16mm、抵抗率は約0.6mΩ・cmとなった。最後に、図3Fが示すように、150mmのPウェーハは、ストリエーション高さが約13mm程度で0.6mΩ・cmの低い抵抗率を取得することができる。また、全てのウェーハにおいてストリエーション高さを増加することで異常成長を形成せずに抵抗率を下げることが可能である。
【0032】
P添加ウェーハの各ウェーハサイズにおける、「Y」軸として表される抵抗率と、「X」軸として表されるストリエーション高さとの線形回帰の関係を下記に示す。
【0033】
300mm P添加ウェーハ: y=-1.556×10-6 x3 +1.439×10-4 x2 -1.469×10-2 x+9.700×10-1.
【0034】
200mm P添加ウェーハ: y=-1.588×10-6 x3 + 1.331×10-4 x2 - 1.195×10-2 x+7.649×10-1.
【0035】
150mm P添加ウェーハ: y = -1.478×10-6 x3 + 7.824×10-5 x2 - 9.744×10-3 x+7.176×10-1.
【0036】
下記の表2は、さまざまなタイプのウェーハ(固定ドーパント濃度で)のストリエーション高さの範囲内で達成可能な最小抵抗率の数値的証拠を示している。
【0037】
【表2】
【0038】
図5Aと5Bは、本開示の実施形態に係る200mm及び300mmウェーハのストリエーション高さ測定を示す。両方のウェーハは、リンが添加されている。図5Aは、200mmのウェーハはストリエーション高さが18mmで約0.6mΩ・cmの抵抗率を取得可能であることを示す。図5Bは、300mmのウェーハはストリエーション高さが25mmで0.8mΩ・cmの抵抗率を取得可能であることを示す。これらの図面より、同じドーパントを使用した場合に、ストリエーション高さがより大きくても、小さな200mmウェーハよりも大きな300mmウェーハの方が低い抵抗率を達成することがより難しいと考えられる。
【0039】
図6は、本開示の実施形態に係るシリコンウェーハのストリエーション高さを測定する方法を示すグラフである。図6では、ストリエーション(成長縞)は、まずウェーハを割断し、例えばHF, CrO3やH2Oの組合せで断面像をエッチングして測定される。エッチング後に、エッチングされた断面像の写真が、光学顕微鏡などによって撮影される。写真に基づき、ストリエーションの角度は様々な間隔で(すなわち10mm間隔)で測定される。測定されたストリエーションの角度は、X軸がウェーハの端からウェーハの中心に向かう距離を表す曲線上に描かれる。前述の曲線は、図6で示されるように、ストリエーションの形状や高さを表す。
【0040】
図7Aと7Bは、実施形態に係る単結晶インゴットを作成する工程中の正と負のストリエーション高さ形成を示す。ストリエーション高さは、シリコン結晶インゴットがシリコン融液から引き上げられる場合に固液界面の高さを説明している。図7Aで示すように、ストリエーション高さが正の場合、固液界面がシリコン融液の表面より高いことを意味し、固液界面は凸形である。図7Bで示すように、ストリエーション高さが負の場合、固液界面がシリコン融液の表面より低いことを意味し、固液界面は凹形である。
【0041】
図8Aと8Bは、実施形態に係るシリコン単結晶ウェーハを製造工程中に印加される磁場と前述のストリエーション高さとの関係を示すグラフである。図8Aで示される単結晶ウェーハのサイズは300mmで、図8Bで示される単結晶ウェーハのサイズは200mmである。図8Aと8Bで示されるグラフは、引き上げ工程中の磁場とストリエーション高さとの関係を示す。とりわけ、これらの図は、300mm及び200mmの両方のウェーハにおいて、磁場の増加はストリエーション高さが増加することを示している。図8Aと8Bは、磁気がストリエーション高さにどのように影響する傾向があるかを示しているが、いずれにせよストリエーション高さの下限または上限を示すことを意図していない。シリコン融液を含むルツボの回転速度、結晶引き上げ速度、ドーパント濃度量などの磁場以外の要因が、さらにストリエーションがさまざまな高さになる原因になる可能性がある。
【0042】
図9A-9C及び10A-10Cは、実施形態に係る、シリコンインゴットの引き上げ速度がドーパント濃度及びウェーハの抵抗率に与える影響をそれぞれ示している。図9A-9C及び10A-10Cは、3つの代表的ストリエーション高さ、24mm、0mm、及び-20mmのウェーハを使用する実験を含んでいる。図9Aから9Cにより、引き上げ速度を下げた場合、3つのストリエーション高さはそれぞれ異常成長を形成することなく、より高いドーパント濃度(従って低い抵抗率)を可能にすることが分かる。図10Aから10Cは、図9Aから9Cの結果より、3つのストリエーション高さは全て、引き上げ速度が下がると抵抗率が低くなることを裏付けている。図9Aから9Cは、さらに、ストリエーション高さが大きいほど、異常成長発生前の所定の引き上げ速度では、ウェーハのドーパント濃度が高くなる(つまり、抵抗率は低くなる)傾向があることを示している。繰り返しになるが、図10Aから10Cは上記を裏付けており、24mmの最大ストリエーション高さの場合、この実験で例にとる引き上げ速度の範囲にわたり最も低い抵抗率を見せている。
【0043】
図11は、ガス供給口や圧力制御バルブを備える結晶引き上げ装置を示す。図12Aと12Bは、抵抗率とガスの流量との関係および抵抗率とガスの圧力との関係をそれぞれ示すグラフである。本発明の実施形態には、シリコン融液に付加されるドーパントはリンである半導体ウェーハの製造方法が含まれる。さらに、実施形態には、ドーパントの蒸発を低減または抑制するためにシリコン融液に圧力をかける(以下、「成長圧力」と称す)ことを備える半導体ウェーハの製造方法が含まれる。実施形態には、例えば、アルゴンガスなどのガス適用を介して成長圧力がかけられる。図11において、成長圧力はガス供給口(A)からガスの流量を制御しながら調節することができる。その流量は、バタフライバルブなどの圧力制御バルブを使ってガスを放出する圧力制御バルブ(B)で制御することもできる。実施形態には、ウェーハの抵抗率が0.7mΩ・cm以下の半導体ウェーハの製造方法が含まれる。ドーパントの蒸発抑制はウェーハの抵抗率の低下に繋がる。例えば、図12Bは、(80リットル/分の固定流量で)17キロパスカル(kPa)から27kPaへと圧力を上げると、ウェーハの抵抗率が約0.19mΩ・cm(約17%)低下することを示している。図12Aは、(17kPaの固定ガス圧力で)80リットル/分から40リットル/分へとガス流量を下げると、ウェーハの抵抗率が約0.08mΩ・cm(約7%)低下することを示している。
【0044】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本開示を限定するものと解釈されるものではない。本開示は実施形態の例を挙げて説明したが、ここで使われる文言は限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述または補正したように、その形態において本開示の範囲および精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、実施形態は、特定の構造、材料および特徴を参照しながら説明したが、実施形態はここに開示される事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、実施形態は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0045】
本開示は、上述した特徴に限定されることなく、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な変形および変更が可能である。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11
図12A
図12B