(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023011538
(43)【公開日】2023-01-24
(54)【発明の名称】試験測定装置及びデータ圧縮供給方法
(51)【国際特許分類】
G01R 13/20 20060101AFI20230117BHJP
【FI】
G01R13/20 U
G01R13/20 R
G01R13/20 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111535
(22)【出願日】2022-07-12
(31)【優先権主張番号】63/220,883
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/859,989
(32)【優先日】2022-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】キース・ディー・ルール
(57)【要約】
【課題】試験測定装置の波形データを非可逆圧縮できるようにする。
【解決手段】試験測定装置10は、被試験デバイス26に接続され、波形データを生成する。ユーザ・インタフェース20を介して、ユーザ入力を受けて、波形データのデータ形式を特定し、このデータ形式に応じて波形データを圧縮する。ユーザ入力で波形全体の表示する指示を受けた場合では、ディスプレイ(内部クライアントの例)22の解像度は、入手可能な波形データよりも解像度が低いので、波形データを解像度に合わせて間引きした圧縮データに変換して、表示メモリ23に送信すれば、処理速度が速くなる。圧縮データなので、外部クライアント24へ送る際も送信速度が速くなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の被試験デバイスに接続するように構成された少なくとも1つの試験ポートを含む1つ以上のポートと、
1つ以上のユーザ入力を受けるユーザ・インタフェースと、
1つ以上の上記被試験デバイスから取り込まれた波形データを記憶するメモリと、
1つ以上のプロセッサと
を具え、
1つ以上の上記プロセッサが、
上記ユーザ入力に基づいて、要求される1つ以上のデータ形式を決定する処理と、
上記波形データを要求される1つ以上の上記データ形式に対応するデータ要素のみを含む圧縮データに変換する処理と、
上記圧縮データをクライアントへ送信する処理と
を1つ以上の上記プロセッサに行わせるプログラムを実行するよう構成される試験測定装置。
【請求項2】
上記クライアントが、上記試験測定装置内にある内部クライアント又は上記試験測定装置の外部にある外部クライアントである請求項1の試験測定装置。
【請求項3】
上記ユーザ入力は、特定の試験データを要求する暗黙的な選択を含み、1つ以上の上記プロセッサに1つ以上の要求される上記データ形式を決定させるプログラムは、1つ以上の上記プロセッサに、上記特定の試験データに基づいて1つ以上の要求される上記データ形式を決定させるプログラムを含む請求項1の試験測定装置。
【請求項4】
用途を配慮して試験測定装置のデータを圧縮して供給する方法であって、
1つ以上の被試験デバイスから波形データを取り込む処理と、
ユーザ・インタフェースを介してユーザ入力を受ける処理と、
上記ユーザ入力に基づいて1つ以上の要求されるデータ形式を決定する処理と、
上記波形データを、1つ以上の要求される上記データ形式に対応するデータ要素のみを含む圧縮データに変換する処理と、
上記圧縮データをクライアントへ送信する処理と
を具えるデータ圧縮供給方法。
【請求項5】
上記ユーザ入力を受ける処理は、特定の試験データを要求する暗黙的な選択を受ける処理を含み、1つ以上の要求される上記データ形式を決定する処理は、上記特定の試験データに基づいて1つ以上の要求される上記データ形式を決定する処理を含む請求項4記載のデータ圧縮供給方法。
【請求項6】
1つ以上の要求される上記データ形式は、波形全体を表示するためのデータ、波形全体に関する輝度情報、タイミング測定のデータ、バス動作のデータ、波形の範囲及びデータ形式の組合せの中の1つ以上を含む請求項4記載のデータ圧縮供給方法。
【請求項7】
上記波形データを上記圧縮データに変換する処理が、間引き波形、2次元ヒストグラム、エッジのデータ、バス動作のデータ、選択した波形の範囲のみのデータに関するデータ要素及び複数のデータ要素の組み合わせの中の1つ以上に、上記波形データを変換する処理を有する請求項4記載のデータ圧縮供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試験測定装置に関し、特に、試験測定装置で取得した波形データを効率的に送信するための圧縮技術に関する。
【背景技術】
【0002】
オシロスコープなどの試験測定装置は、高速のデジタル化及びアクイジション・システムを使用して、大量の測定データを取り込む。この取り込まれたデータは、通常、試験測定装置のローカル・ストレージに保存される。しかし、ユーザは、この取り込まれたデータを、遠隔にある装置、コンピューティング・デバイス又はシステムへと移動させて分析する機能を希望することも多い。試験測定装置から取り込まれたデータを移動する従来の技術は、遅くて面倒である。測定データをネットワーク経由で移動させる時間を大幅に短縮できれば、ユーザには、素晴らしいメリットとなろう。データ量を減らすことは、これを達成する1つの方法となり得る。
【0003】
既存の高圧縮技術は非可逆的(lossy)であり、圧縮プロセスによって、データ内容の一部が失われる。それでも、多くのアプリケーションで、これを受け入れることができるのは、そのデータに、それ専用のアプリケーションがあるためである。例えば、MP3エンコーダは、その使用目的が、オーディオの再生であることが前提としてわかっている。従って、圧縮によるトレードオフにも、うまく対応できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-215516号公報
【特許文献2】特開2016-176775号公報
【特許文献3】特開2020-041864号公報
【特許文献4】特開2008-122423号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】トランジスタ技術SPECIAL編集部編、「ディジタル・オシロスコープ活用ノート」、「5-2 トリガ回路のしくみ」、第85~87頁、
図2(回路ブロック図)、トランジスタ技術SPECIAL for フレッシャーズ No.99、CQ出版株式会社、2007年7月1日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、オシロスコープやデジタイザなどの試験測定装置からの波形データには、多くの用途があり、一般的な非可逆・高圧縮技術を用いることは困難又は不可能である。
【0007】
そこで、本発明の実施形態は、こうした従来の課題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示技術の実施形態には、オシロスコープやデジタイザなどの試験測定装置を用いて非可逆データ圧縮(lossy compression)を行う方法がある。ユーザは、意図するデータの用途を暗黙的又は明示的に試験測定装置に認識させる入力を供給し、これによって、試験測定装置が不要なデータ要素を削除できるようにする。これにより、データの高い圧縮を実現できる。試験測定装置は、変換されたデータに対して既存の可逆圧縮技術(lossless compression)を使用し、データを更に圧縮しても良い。
【0009】
波形データの用途が多岐にわたることが、波形データに高いデータ圧縮技術を適用することを困難にしている。リアルタイム・オシロスコープ、サンプリング・オシロスコープ、デジタイザなどの試験測定装置には、波形のどの要素がクライアントにとって不要かを知る方法がない。従って、波形データには、一般的な高圧縮技術はない。
【0010】
本開示技術のいくつかの実施形態では、クライアントが、試験測定装置に、データの用途を定義するための情報を提供する。この情報は、波形/データ表示やタイミング測定のように、ユーザが目的とする用途を定義することで、結果的に生じるものであっても良い。本願の説明では、このように得られる用途情報を暗黙的用途情報と呼び、この場合、試験測定装置は、その用途(アプリケーション)に基づいて、適切な圧縮方法を判断しても良い。一方、明示的な用途情報は、生の波形データではなく、ユーザが具体的なデータ形式を要求する結果として得られるものであっても良い。こうした情報を試験測定装置が受けることで、試験測定装置は、必要な情報は維持しつつ、非可逆的なデータ圧縮を実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、試験測定装置の一実施形態のブロック図を示す。
【
図2】
図2は、試験測定装置によるデータ圧縮の4つの例を示す。
【
図3】
図3は、用途認識型データ圧縮方法の一実施形態のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本開示技術による試験測定装置の一実施形態のブロックを示す。本願の実施形態は、概して、オシロスコープ、デジタル・マルチメータ(DMM)、ソース・メジャー・ユニット(SMU)などの試験測定装置が含まれても良い。これらの装置の中には、試験と測定のどちらか一方を実行するものもあるが、「試験測定装置」という用語は、これらの装置における試験と測定の両方又は一方に適用される。
【0013】
本願の説明において、「クライアント」という用語は、試験測定装置にデータを要求するか又は試験測定装置からデータを受信するコンピューティング・デバイスなどの任意の装置を意味する。クライアントとしては、いくつかの例をあげれば、別の試験測定装置、コンピューティング・デバイス、ファイル・メモリなどがある。試験測定装置は、ネットワークを介して、外部のクライアントにデータを移動させても良い。試験測定装置は、この試験測定装置の内部にあって、圧縮データを受けるデバイスである内部クライアントを有していても良い。こうした内部クライアントとしては、ディスプレイ22(又は表示メモリ23)やメモリ14などのデバイスが含まれても良い。一般に、圧縮の利点は、遠距離又は近距離通信のために、有線又は無線などの通信リンクを介してデータを送信する際に最も顕著に示される。
【0014】
図1は、試験測定装置10の一実施形態のブロック図を示している。試験測定装置10は、非可逆圧縮データをクライアントに供給する。上述のように、クライアントは、ディスプレイ22(又は表示メモリ23)や内部メモリ14など、実際的には、試験測定装置10内に存在していても良い(これらを内部クライアントと呼ぶ)。その利点としては、例えば、試験測定装置10の処理速度の向上やファイル・サイズの縮小などがある。なお、本願説明では、内部メモリ14(これは、試験測定装置10の内部クライアントとなり得る)と、アクイジション・メモリ16に言及することもあるが、これらメモリは、メモリ中の別々の記憶位置であっても良いし、メモリ中の別々の記憶区画であっても良いし、別々のメモリ・デバイスであっても良いし、これらメモリの全てが1つのメモリとして構成されても良い。これらメモリのいずれか又は全てが、試験測定装置10とは別の試験測定装置上に存在していても良い。もし試験測定装置10が圧縮データを送信するファイル用のメモリ(ファイル・メモリと呼ぶ)が試験測定装置10の外部にある場合には、それは外部クライアント24になる。
【0015】
外部クライアント24は、試験測定装置10とは別の試験測定装置や他のコンピューティング・デバイスであっても良く、有線又は無線のポート18を介して、試験測定装置10に接続される。試験測定装置10には、1つ以上のプロセッサ12と、メモリ14とがある。メモリ14は、ユーザ情報、ユーザ入力(ユーザ入力情報)、データ、プロセッサによって実行される試験測定装置10を動作させるための命令、及びリポジトリなどを記憶しても良い。1つ以上のプロセッサ12は、メモリ14にあるプログラム(コード)を実行して、試験測定装置10上で、プロセッサ12に様々なタスクを実行させるように構成されている。試験測定装置10は、ポート18を介して外部クライアント24と通信する。
【0016】
ポート18は、更に、試験測定装置10を動作させるときに使用される試験プローブその他の形式の試験測定用アクセサリを、試験測定装置10に接続するための接続部を有していても良く、被試験デバイス(DUT)26からのアナログの入力信号を受けるよう構成される。アクイジション・メモリ16は、DUT26からポート18を介して受信したアナログの入力信号をデジタル化して生成される波形データ(単に「波形」とも呼ぶ)を一時的に記憶する。アクイジション・メモリ16に一時的に記憶された波形データは、周知のように、トリガの発生に応じて、メモリ14に転送されても良い(非特許文献1)。
【0017】
ユーザ・インタフェース20は、ノブ、ボタン、タッチスクリーン、コネクタを有していても良く、ユーザから後述するような情報の入力(ユーザ入力)を受けても良い。また、ユーザ・インタフェース20は、ディスプレイ22との組み合わせて、ユーザの試験測定装置10に対するインタラクティブな操作を実現しても良い。これにより、試験測定装置10のユーザは、ユーザ・インタフェース20を用いて、試験測定装置10とのインタラクティブなやりとりによって、試験測定装置10を操作するともに、試験測定装置10に対して必要なユーザ入力を行える。ユーザ入力は、後述のように、波形データの適切な処理のために利用されても良い。ユーザ入力の情報は、メモリ14に供給されても良く、メモリ14は、プロセッサ12に接続されても良い。
【0018】
試験測定装置10には、データの用途情報に応じた、いくつかの圧縮可能なデータ形式がある。圧縮可能なデータ形式としては、例えば、次のものがある。
・タイミング/バスに関する信号の状態に関連するエッジ(この場合、ユーザは、信号のエッジにのみ関心がある)
・波形のインターバル(この場合、信号は、状態が変化する)
その他のタイミング・ベースの圧縮可能な形式としては、時間レンジ(範囲)があり、これは、例えば、ある1つのインターバルについて表示をズーミングするような特定のインターバル、又は、複数の特定インターバルに関する情報である。複数の特定インターバルの例としては、アイドル状態のデータは削除し、バースト状態のあるインターバルだけのデータ(波形範囲)を送信する場合や、マッチングしたパターンのみを含むインターバルのデータがある。
【0019】
更に別の圧縮可能なデータ形式としては、例えば、デコードを可能にするためのタイミング情報を有するビット・ストリームがある。また、試験測定装置10には、典型的には、ディスプレイ・スクリーンがあるが、これは、入手可能なデータ・サンプルのストリームよりも解像度が低い。これは、データ・ストリームを間引きする余地があることを意味するので、ディスプレイの解像度に合致するようにサンプルを選択的に削減しても良い。更に別の圧縮可能なデータ形式としては、2次元のヒストグラムでデータを表示する場合があり、試験測定装置10は、ヒストグラムを構成するのに十分なデータだけを送信すれば良く、全てのサンプルを含める必要はない。試験測定装置10は、波形データの複数のエッジの時間レンジ(範囲)のように、上述したデータ形式やこれらを変形したデータ形式を組み合わせても良い。これらは、多種多様な圧縮可能なデータ形式の例に過ぎず、全ての圧縮可能なデータ形式を完全に網羅することを意図したものではないし、そうした仮定を示唆するものでもない。
【0020】
上述したデータ形式やこれらを変形したデータ形式によれば、必要なデータ形式の多くをカバーできる。これらのデータ形式の夫々は、ベースとなるリアルタイム波形データからの大幅なデータ削減が可能となる。これは、オプションで標準的な可逆圧縮技術と組み合わせることで、データ・サイズを更に大幅に削減し、もって、ネットワークの伝送時間を短縮することができる。以下の説明では、データ形式という用語は、エッジ、波形全体、ヒストグラムなど、要求されているデータの形式を指す。データ要素という用語は、圧縮データを構成する要素を指す。これは非可逆圧縮であるため、圧縮データは、不要なデータを削除した後に残ったデータから構成される。
【0021】
図2は、4つの例において、データ転送時の圧縮と、削減データの推定値について、図式に表したものである。第1の例は、全波形データの表示を要求する処理を含む。試験測定装置は、波形データの全てを表示するのに十分な解像度をディスプレイが持たないため、波形データを間引きする。ある特定の波形に関して収集された全てのデータ・サンプルよりも低い個数のサンプルが表示されても、波形表示を見る者は、その違いに気付かないであろう。1ギガ・サンプルの波形データついて、データを1,000,000分の1に減らしても、まだ、表示に適した1000サンプルが得られる。表示の場合では、データは、8,000,000,000バイトから8000バイトに圧縮される。以下の説明において、データ削減の推定値は、1ギガの波形データに基づいている。
【0022】
第2の例として、要求されるデータ形式が2次元(2D)ヒストグラムを含む場合には、別の形式のデータ削減が行われる。この例では、クライアントは、全波形の表示に関して輝度情報(Intensity Information:サンプルの頻度情報)を要求する。すると、試験測定装置は、波形データを2Dヒストグラムに変換する。送信されるデータは、全波形データに比較して、非常に少数のデータ要素で構成される。典型的なサンプリング・オシロスコープの場合、ヒストグラムは、高さ752×幅1000、各要素の幅は8バイトで、サンプリング・オシロスコープの1つの2Dヒストグラムは、約800万バイトである。圧縮は、元のデータのサイズに依存する。一実施形態では、プロセスは、1ビット又は1シンボルを1つの2Dヒストグラムとし、全てのビット又はシンボルを重ね合わせてアイ・ダイアグラムを作成する。1000万ビット又は1000万ユニット・インターバル(UI)からは、1UI当たり10サンプルを有するとして、1億サンプルが生じる。各サンプルは、4バイトであり、結果として4億バイトが生じる。圧縮処理では、合計が400,000,000バイトから8,000,000バイトになり、50分の1に圧縮される。これは、オシロスコープその他の試験測定装置の種類によって異なり、上述の説明は一例にすぎない。リアルタイム・オシロスコープは、通常、ヒストグラムがもっと小さいため、圧縮率が高くなる。
【0023】
第3の例として、更に別のデータ形式は、上述した波形のエッジなどのタイミング測定用のデータである。試験測定装置は、波形データを、エッジ・データのみを含むように変換する。エッジの現れ方は波形毎に異なって同じではないので、データの圧縮量も変化するが、エッジ・データのみとすることで、データ転送時に、データは、おおよそ10分の1に圧縮されるであろう。
【0024】
第4の例として、更に別のデータ形式としては、バス・データのようにバースト状態とアイドル状態があるデータがある。エッジ・データと同様に、これは、バスの動作状態に依存するが、試験測定装置は、例えば、バスがアクティブな期間に関する波形データ(即ち、バースト状態のデータ)のみを送信することによって、データを変換する。このように、バスの動作状態を指定して、その動作状態のみのデータを送信することによって、転送するデータは、大幅に削減される。よって、もしユーザが希望すれば、そのユーザ入力に応じて、上述の例とは逆に、アイドル状態のデータのみを送信する場合を選択しても良い。
【0025】
図3に、本願発明による処理の一実施形態のフローチャートを示す。ステップ30において、試験測定装置は、ユーザ・インタフェースを介してユーザ入力を受けるか、又は、もしユーザ入力がネットワークを経由する場合は、ポートを介してユーザ入力を受ける。このユーザ入力は、要求するデータ形式に関する明示的な情報、又は、データの意図する用途などに由来する暗黙的な情報を含んでも良い。例えば、このユーザ入力は、波形表示やタイミング測定などのような目的とする用途を定義してもよく、この情報から、プロセッサが処理して返す(リターンする)データ要素を決定する。これに代えて、ユーザ入力によって、データ形式を明示的に指定することで、必要なデータを特定しても良い。いずれの場合も、試験測定装置は、データの形式をステップ32で決定する。わかりやすくするために、ここでの説明では、データ形式が1つの場合に言及しているが、いくつかの実施形態では、データが複数のデータ形式を含んでいて、データを圧縮すると、様々な要素を有することになる場合もあることに注意されたい。
【0026】
データ形式を決定すると、試験測定装置は、ステップ34では、圧縮データを生成するために、エッジ・データを除く全てのデータを削除するなどによって不要なデータを削除するか、又は、ヒストグラムを生成するなどのデータ処理をすることによってデータを変換する。上述のように、このプロセスは、データが意図的に失われる非可逆圧縮から構成される。データ要素が準備された後、試験測定装置は、ステップ36において、オプションで可逆圧縮を適用して、転送するデータを更に削減しても良い。可逆データ圧縮では、データの欠落は発生しない。元のデータは、解凍処理(デコードとも呼ばれる)の後に圧縮データから正確に復元できる。可逆圧縮の例には、ハフマン符号化、シャノン・ファノ圧縮などの統計的な圧縮方法、LZ77やLZ78(Lempel-Ziv)などの辞書法ベースの圧縮方法が含まれる。非可逆圧縮のみによって、又は、非可逆圧縮と可逆圧縮の組み合わせによって、圧縮が行われたら、試験測定装置は、ステップ38において、圧縮データをクライアントに送信するが、これは、圧縮データをファイルに保存することを含んでいても良い。
【0027】
本開示技術の態様は、特別に作成されたハードウェア、ファームウェア、デジタル・シグナル・プロセッサ又はプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータ上で動作できる。本願における「コントローラ」又は「プロセッサ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC及び専用ハードウェア・コントローラ等を意図する。本開示技術の態様は、1つ又は複数のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)その他のデバイスによって実行される、1つ又は複数のプログラム・モジュールなどのコンピュータ利用可能なデータ及びコンピュータ実行可能な命令で実現できる。概して、プログラム・モジュールとしては、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含み、これらは、コンピュータその他のデバイス内のプロセッサによって実行されると、特定のタスクを実行するか、又は、特定の抽象データ形式を実現する。コンピュータ実行可能命令は、ハードディスク、光ディスク、リムーバブル記憶媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶しても良い。当業者には理解されるように、プログラム・モジュールの機能は、様々な実施例において必要に応じて組み合わせられるか又は分散されても良い。更に、こうした機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのようなファームウェア又はハードウェア同等物において全体又は一部を具体化できる。特定のデータ構造を使用して、本開示技術の1つ以上の態様をより効果的に実施することができ、そのようなデータ構造は、本願に記載されたコンピュータ実行可能命令及びコンピュータ使用可能データの範囲内と考えられる。
【0028】
開示された態様は、場合によっては、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はこれらの任意の組み合わせで実現されても良い。開示された態様は、1つ以上のプロセッサによって読み取られ、実行され得る1つ又は複数のコンピュータ可読媒体によって運搬されるか又は記憶される命令として実現されても良い。そのような命令は、コンピュータ・プログラム・プロダクトと呼ぶことができる。本願で説明するコンピュータ可読媒体は、コンピューティング・デバイスによってアクセス可能な任意の媒体を意味する。限定するものではないが、一例としては、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含んでいても良い。
【0029】
コンピュータ記憶媒体とは、コンピュータ読み取り可能な情報を記憶するために使用することができる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、コンピュータ記憶媒体としては、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、電気消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリやその他のメモリ技術、コンパクト・ディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、DVD(Digital Video Disc)やその他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置やその他の磁気記憶装置、及び任意の技術で実装された任意の他の揮発性又は不揮発性の取り外し可能又は取り外し不能の媒体を含んでいても良い。コンピュータ記憶媒体としては、信号そのもの及び信号伝送の一時的な形態は除外される。
【0030】
本願の説明は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。ある特定の特徴が特定の態様又は実施例に関連して開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様及び実施例との関連においても利用できる。
【0031】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。
実施例
【0032】
以下では、本願で開示される技術の理解に有益な実施例が提示される。この技術の実施形態は、以下で記述する実施例の1つ以上及び任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0033】
実施例1は、試験測定装置であって、1つ以上の被試験デバイスに接続するように構成された少なくとも1つの試験ポートを含む1つ以上のポートと、1つ以上のユーザ入力を受けるユーザ・インタフェースと、1つ以上の被試験デバイスから取り込まれた波形データを記憶するメモリと、1つ以上のプロセッサとを具え、上記ユーザ入力に基づいて、要求される1つ以上のデータ形式を決定する処理と、上記波形データを要求される1つ以上のデータ形式に対応するデータ要素のみを含む圧縮データに変換する処理と、圧縮データをクライアントへ送信する処理とを1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを1つ以上のプロセッサが実行するよう構成される。これにより、波形データを非可逆圧縮することが可能となる。
【0034】
実施例2は、実施例1の試験測定装置であって、上記1つ以上のポートは、外部クライアントに接続するための少なくとも1つの出力ポートを含む。
【0035】
実施例3は、実施例2の試験測定装置であって、少なくとも1つの出力ポートは、有線ポート又は無線ポートのうちの少なくとも1つを含む。
【0036】
実施例4は、実施例1から3のいずれかの試験測定装置であって、ユーザ・インタフェースはディスプレイを有する。
【0037】
実施例5は、実施例1から4のいずれかの試験測定装置であって、上記クライアントは、試験測定装置内にある内部クライアント又は上記試験測定装置の外部にある外部クライアントであって、ディスプレイ及びファイル・メモリの中の少なくとも1つを含む。
【0038】
実施例6は、実施例5の試験測定装置であって、上記ファイル・メモリは、上記試験測定装置の内部にある内部メモリ及び上記試験測定装置の外部にある外部メモリの中の少なくとも1つを含む。
【0039】
実施例7は、実施例1から6のいずれかの試験測定装置であって、上記ユーザ入力は、データ形式の明示的な選択を含み、1つ以上のプロセッサに1つ以上の要求されるデータ形式を決定させるプログラムは、1つ以上のプロセッサにデータ形式を受信させるプログラムを含む。
【0040】
実施例8は、実施例1から7のいずれかの試験測定装置であって、上記ユーザ入力は、特定の試験データを要求する暗黙的な選択を含み、1つ以上のプロセッサに1つ以上の要求されるデータ形式を決定させるプログラムは、1つ以上のプロセッサに、特定の試験データに基づいて1つ以上の要求されるデータ形式を決定させるプログラムを含む。
【0041】
実施例9は、実施例1から8のいずれかの試験測定装置であって、1つ以上のプロセッサにデータを変換させるプログラムは、1つ以上のプロセッサに可逆圧縮をデータ要素に適用させるプログラムを更に含む。
【0042】
実施例10は、実施例1から9のいずれかの試験測定装置であって、上記クライアントが、外部コンピューティング・デバイスを含み、上記ユーザ・インタフェースが、上記外部コンピューティング・デバイスのユーザ・インタフェースを含み、1つ以上のプロセッサに上記圧縮データを上記クライアントへ送信させるプログラムは、1つ以上のプロセッサに上記圧縮データをネットワーク経由で上記外部コンピューティング・デバイスへ送信させるプログラムを含む。
【0043】
実施例11は、用途を配慮して試験測定装置のデータを圧縮して供給する方法であって、1つ以上の被試験デバイスから波形データを取り込む処理と、ユーザ・インタフェースを介してユーザ入力を受ける処理と、ユーザ入力に基づいて1つ以上の要求されるデータ形式を決定する処理と、1つ以上の要求されるデータ形式に対応するデータ要素のみを含む圧縮データに上記波形データを変換する処理と、圧縮データをクライアントへ送信する処理とを具えている。
【0044】
実施例12は、実施例11の方法であって、ユーザ入力を受ける処理は、1つ以上のデータ形式の明示的な選択を受ける処理を含み、1つ以上の要求されるデータ形式を決定する処理は、1つ以上のデータ形式の明示的な選択を使用する処理を含む。
【0045】
実施例13は、実施例11又は12のいずれかの方法であって、ユーザ入力を受ける処理は、特定の試験データを要求する暗黙的な選択を受ける処理を含み、1つ以上の要求されるデータ形式を決定する処理は、特定の試験データに基づいて1つ以上の要求されるデータ形式を決定する処理を含む。
【0046】
実施例14は、実施例11から13のいずれかの方法であって、圧縮データをクライアントに送信する処理は、有線又は無線ポートのいずれかを介して外部クライアントに圧縮データを送信する処理を含む。
【0047】
実施例15は、実施例11から14のいずれかの方法であって、上記圧縮データを上記クライアントへ送信する処理は、上記圧縮データを上記試験測定装置内の内部クライアントへ送信する処理を含む。
【0048】
実施例16は、実施例11から15のいずれかの方法であって、1つ以上の要求されるデータ形式は、波形全体を表示するためのデータ、波形全体に関する輝度情報、タイミング測定のデータ、バス動作のデータ、波形範囲及びデータ形式の組合せの中の1つ以上を含む。
【0049】
実施例17は、実施例11から16のいずれかの方法であって、波形データを圧縮データに変換する処理が、間引き波形、2次元ヒストグラム、エッジのデータ、バス動作のデータ、選択した波形範囲のみのデータに関するデータ要素及び複数のデータ要素の組み合わせの中の1つ以上に、上記波形データを変換する処理を有する。
【0050】
実施例18は、実施例11から17のいずれかの方法であって、圧縮データをクライアントへ送信する前に、圧縮データに可逆圧縮を適用する処理を更に含む。
【0051】
実施例19は、実施例11から18のいずれかの方法であって、上記クライアントが、外部コンピューティング・デバイスを含み、上記ユーザ・インタフェースが、上記外部コンピューティング・デバイスのユーザ・インタフェースを含み、上記圧縮データを上記クライアントへ送信する処理は、上記圧縮データをネットワークを介して上記外部コンピューティング・デバイスに送信する処理を含む。
【0052】
説明の都合上、本発明の具体的な実施例を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本発明は、添付の請求項以外では、限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0053】
10 試験測定装置
12 プロセッサ
14 メモリ
16 アクイジション・メモリ
18 ポート
20 ユーザ・インタフェース
22 ディスプレイ
23 表示メモリ
24 外部クライアント
26 被試験デバイス(DUT)