(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115472
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20230814BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20230814BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20230814BHJP
C23C 16/50 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
H05H1/46 M
H01L21/31 C
C23C16/455
C23C16/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017698
(22)【出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(72)【発明者】
【氏名】平山 昌樹
【テーマコード(参考)】
2G084
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
2G084AA03
2G084AA05
2G084BB05
2G084BB14
2G084BB21
2G084CC05
2G084CC06
2G084CC12
2G084CC33
2G084DD02
2G084DD15
2G084DD21
2G084DD23
2G084DD41
2G084DD55
2G084FF04
2G084FF15
2G084FF39
4K030EA05
4K030EA06
4K030FA01
4K030GA02
4K030KA17
5F045AA08
5F045AE15
5F045AE17
5F045AE19
5F045AE21
5F045DP03
5F045EB03
5F045EC05
5F045EF05
5F045EH04
5F045EH05
5F045EH08
5F045EH14
(57)【要約】
【課題】チャンバ内に導入されたガスの滞留時間を制御することが可能なプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】開示されるプラズマ処理装置は、チャンバ及び基板支持部を備える。チャンバは、その内部に処理空間を提供する。基板支持部は、チャンバ内に設けられている。チャンバは、側壁及び天部を有する。側壁は、処理空間を囲むように該処理空間の側方で延在する。天部は、基板支持部の上方で延在する。天部は、上部電極を含む。上部電極は、複数のガス孔及び複数の溝を提供する。複数のガス孔は、処理空間にガスを導入するために処理空間に向けて開口する。複数の溝は、処理空間に向けて開口する。複数の溝は、互いに異なる断面形状を有する二つ以上の溝を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その内部に処理空間を提供するチャンバと、
前記チャンバ内に設けられた基板支持部と、
を備え、
前記チャンバは、
前記処理空間を囲むように該処理空間の側方で延在する側壁と、
前記基板支持部の上方で延在する天部であり、前記処理空間にガスを導入するために前記処理空間に向けて開口する複数のガス孔を提供する上部電極を含む、該天部と、
を有し、
前記上部電極は、前記処理空間に向けて開口する複数の溝を提供し、
前記複数の溝は、互いに異なる断面形状を有する二つ以上の溝を含む、
プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記複数のガス孔は、前記複数の溝に向けて開口するガス孔を含んでおらず、前記上部電極の下面において前記複数の溝が形成されていない領域で開口している、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記複数の溝の各々は、その幅に対するその深さの固有の比を有しており、
前記二つ以上の溝の各々は、該二つ以上の溝のうち他の溝の前記比と異なる前記比を有する、
請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記二つ以上の溝は、第1の溝及び第2の溝を含み、
前記第1の溝の幅が該第1の溝の深さよりも大きく、前記第2の溝の幅が該第2の溝の深さよりも小さい、
請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記複数の溝は、環形状を有し、前記上部電極の中心軸線に対して周方向に延在し、
前記複数の溝の個数は、五つ以上であり、
前記複数の溝は、前記中心軸線に直交する径方向に沿って配列されている、
請求項4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記径方向における前記複数のガス孔のピッチは、前記径方向における前記複数の溝のピッチと同一である、請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記複数の溝の各々の幅は、前記径方向における前記複数のガス孔のピッチの1/2以上である、請求項5又は6に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記上部電極の中心軸線に直交する径方向における前記複数の溝の深さの分布は、段階的に変化している、請求項1~7の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記複数の溝の開口端の面積は、前記上部電極の下面において前記複数の溝が形成されていない領域の面積よりも大きい、請求項1~8の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記側壁は、前記処理空間に向けて開口する一つ以上の溝を提供し、
該一つ以上の溝は、環形状を有し、前記側壁の中心軸線に対して周方向に延在している、
請求項1~9の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
誘電体から形成されており前記上部電極の外周に沿って周方向に延在する導入部であって、前記処理空間でプラズマを生成するためにVHF波又はUHF波である電磁波を伝播する該導入部を更に備える、
請求項1~10の何れか一項に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理装置が基板に対するプラズマ処理において用いられている。下記の特許文献1には、一種のプラズマ処理装置が記載されている。特許文献1に記載されたプラズマ処理装置は、チャンバ、基板支持部、シャワーヘッド、誘電体窓、及びVHF発生源を備える。チャンバは、その内部に処理空間を提供する。基板支持部は、チャンバ内に設けられている。シャワーヘッドは、基板支持部の上方に設けられている。シャワーヘッドは、チャンバ内にガスを導入する。チャンバ内に導入されたガスは、チャンバ内でガス流を形成する。誘電体窓は、シャワーヘッドを囲むようにシャワーヘッドとチャンバとの間に介在する。VHF発生源は、VHF波帯の電磁波を発生する。VHF発生源からの電磁波は、誘電体窓を介してチャンバ内に導入される。チャンバ内に導入された電磁波により、チャンバ内でガスからプラズマが生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、チャンバ内に導入されたガスの滞留時間を制御することが可能なプラズマ処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、チャンバ及び基板支持部を備える。チャンバは、その内部に処理空間を提供する。基板支持部は、チャンバ内に設けられている。チャンバは、側壁及び天部を有する。側壁は、処理空間を囲むように該処理空間の側方で延在する。天部は、基板支持部の上方で延在する。天部は、上部電極を含む。上部電極は、複数のガス孔及び複数の溝を提供する。複数のガス孔は、処理空間にガスを導入するために処理空間に向けて開口する。複数の溝は、処理空間に向けて開口する。複数の溝は、互いに異なる断面形状を有する二つ以上の溝を含む。
【発明の効果】
【0006】
一つの例示的実施形態によれば、チャンバ内に導入されたガスの滞留時間を制御することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す断面図である。
【
図2】一つの例示的実施形態に係る上部電極の拡大断面図である。
【
図3】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置の上部電極を下方から見た拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、種々の例示的実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、チャンバ及び基板支持部を備える。チャンバは、その内部に処理空間を提供する。基板支持部は、チャンバ内に設けられている。チャンバは、側壁及び天部を有する。側壁は、処理空間を囲むように該処理空間の側方で延在する。天部は、基板支持部の上方で延在する。天部は、上部電極を含む。上部電極は、複数のガス孔及び複数の溝を提供する。複数のガス孔は、処理空間にガスを導入するために処理空間に向けて開口する。複数の溝は、処理空間に向けて開口する。複数の溝は、互いに異なる断面形状を有する二つ以上の溝を含む。
【0010】
上記実施形態では、複数のガス孔から処理空間に導入されたガスは、チャンバ内でガス流を形成する。ガス流を形成するガスは、上部電極が提供する複数の溝の中で滞留する。複数の溝のうち二つ以上の溝は互いに異なる断面形状を有するので、複数の溝の各々でのガスの滞留時間は、各溝の断面形状により調整される。したがって、上記実施形態によれば、チャンバ内に導入されたガスの滞留時間を制御することが可能になる。
【0011】
一つの例示的実施形態において、複数のガス孔は、複数の溝に向けて開口するガス孔を含まなくてもよい。複数のガス孔は、上部電極の下面において複数の溝が形成されていない領域で開口していてもよい。この実施形態では、ガスは、複数の溝の中に直接的には導入されない。したがって、複数の溝の中でのガスの比較的長い滞留時間が確保される。
【0012】
一つの例示的実施形態において、複数の溝の各々は、その幅に対するその深さの固有の比を有していてもよい。二つ以上の溝の各々は、該二つ以上の溝のうち他の溝の比と異なる比を有してもよい。
【0013】
一つの例示的実施形態において、二つ以上の溝は、第1の溝及び第2の溝を含んでもよい。第1の溝の幅は、該第1の溝の深さよりも大きくてもよい。第2の溝の幅は、該第2の溝の深さよりも小さくてもよい。この実施形態では、第1の溝に滞留するガスの滞留時間よりも、第2の溝に滞留するガスの滞留時間は長い。
【0014】
一つの例示的実施形態において、複数の溝は、環形状を有してもよい。複数の溝は、上部電極の中心軸線に対して周方向に延在してもよい。複数の溝の個数は、五つ以上であってもよい。複数の溝は、中心軸線に直交する径方向に沿って配列されていてもよい。この実施形態によれば、径方向における所望の活性種の密度分布が得られるよう、径方向におけるガスの滞留時間を制御することが可能である。
【0015】
一つの例示的実施形態において、径方向における複数のガス孔のピッチは、径方向における複数の溝のピッチと同一であってもよい。
【0016】
一つの例示的実施形態において、複数の溝の各々の幅は、径方向における複数のガス孔のピッチの1/2以上であってもよい。
【0017】
一つの例示的実施形態において、中心軸線に直交する径方向における複数の溝の深さの分布は、段階的に変化していてもよい。この実施形態によれば、径方向における所望の活性種の密度分布が得られるよう、径方向におけるガスの滞留時間を段階的に制御することが可能である。
【0018】
一つの例示的実施形態において、複数の溝の開口端の面積は、上部電極の下面において複数の溝が形成されていない領域の面積よりも大きくてもよい。
【0019】
一つの例示的実施形態において、チャンバの側壁は、処理空間に向けて開口する一つ以上の溝を提供してもよい。一つ以上の溝は、環形状を有し、側壁の中心軸線に対して周方向に延在していてもよい。この実施形態では、ガスは、側壁に形成された一つ以上の溝の中で滞留する。したがって、この実施形態によれば、側壁の近傍におけるガスの滞留時間を長くすることにより、側壁の近傍で活性種の密度を高めることが可能である。
【0020】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置は、処理空間でプラズマを生成するためにVHF波又はUHF波である電磁波を伝播する導入部を更に備えてもよい。VHF帯又はUHF帯の高周波である電磁波は、上部電極の直下で定在波を発生し得る。この実施形態では、定在波が発生している状況下であっても、所望の活性種の密度の分布が得られるように、ガスの滞留時間を制御することが可能である。
【0021】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0022】
図1は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
図1に示すプラズマ処理装置1は、平行平板型のプラズマ処理装置である。プラズマ処理装置1は、電磁波によりプラズマを生成するように構成されている。プラズマ処理装置1は、チャンバ10及び基板支持部11を備える。
【0023】
チャンバ10は、略円筒形状を有する。チャンバ10は、その内部に処理空間Sを提供する。チャンバ10は、鉛直方向に沿って延在している。チャンバ10の中心軸線は、鉛直方向に延びる中心軸線AXである。チャンバ10は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金などの金属から形成されている。チャンバ10の処理空間S側の表面上には、耐腐食性を有する膜が形成されていてもよい。チャンバ10は、接地されている。
【0024】
基板支持部11は、チャンバ10内に設けられている。基板支持部11は、処理空間S内に配置されている。基板支持部11は、その上面の上に載置された基板Wを略水平に支持するように構成されている。基板支持部11は、略円盤形状を有している。一実施形態では、基板支持部11の中心軸線は、中心軸線AXである。基板支持部11上に載置された基板Wは、処理空間Sの中で処理される。チャンバ10の底部は、排気口12を提供している。排気口12には、排気装置が接続される。
【0025】
チャンバ10は、側壁20及び天部30を有する。側壁20は、例えば、略円筒形状を有する。側壁20は、処理空間Sを囲むように処理空間Sの側方で延在する。一実施形態では、側壁20の中心軸線は、中心軸線AXである。側壁20は、円筒形状を有し得る。側壁20は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金などの金属から形成されている。
【0026】
天部30は、基板支持部11の上方で延在する。天部30は、側壁20の上端開口を閉じている。天部30は、上部電極40を含む。天部30は、カバー31を更に含んでいてもよい。上部電極40は、略円盤形状を有している。一実施形態では、上部電極40の中心軸線は、中心軸線AXである。上部電極40は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金などの金属から形成されている。カバー31は、上部電極40を覆っており、部分的に上部電極40の上方で延在している。カバー31は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金などの金属から形成されている。カバー31は、上部電極40と当該カバー31との間に電磁波の導波路を形成している。
【0027】
以下、
図1と共に
図2を参照する。
図2は、一つの例示的実施形態に係る上部電極の拡大断面図である。上部電極40は、複数のガス孔41及びガス拡散室42を提供している。複数のガス孔41は、処理空間Sにガスを導入するために処理空間Sに向けて開口している。ガス拡散室42は、上部電極40の内部に提供されている。複数のガス孔41は、ガス拡散室42に接続しており、ガス拡散室42から下方に延びている。
【0028】
上部電極40は、複数の溝43を提供している。複数の溝43は、処理空間Sに向けて開口している。複数の溝43は、互いに異なる断面形状を有する二つ以上の溝を含む。「断面形状」とは、溝が延在する方向と直交する断面における、当該溝の形状を意味する。
図2に示すように、一実施形態では、複数の溝43の断面形状は、互いに異なる矩形であってもよい。また、「互いに異なる断面形状を有する二つ以上の溝を含む。」とは、ある1つの溝43と異なる断面形状を有した別の溝43が必ず存在するという意味である。
【0029】
一実施形態において、上部電極40の複数のガス孔41は、複数の溝43に向けて開口するガス孔を含んでいなくてもよい。
図2に示すように、複数のガス孔41は、上部電極40の下面において複数の溝43が形成されていない領域40cで開口していてもよい。例えば、領域40cは、上部電極40の下面において、複数の溝43のうち互いに隣り合う二つの溝の間に位置する。
【0030】
一実施形態において、複数の溝43の各々は、その幅に対するその深さの固有の比を有する。「幅」とは、溝が延在する方向と直交する断面における、当該溝の開口端の一端から他端までの距離を意味する。「深さ」とは、当該溝の開口端と当該溝の奥端の間の距離を意味する。一実施形態において、複数の溝43のうち互いに異なる断面形状を有する二つ以上の溝それぞれの固有の比は、互いに異なる。
図2に示すように、例えば、複数の溝43のうち溝43aは、幅W1及び深さD1を有する。また、複数の溝43のうち溝43bは、幅W2及び深さD2を有する。溝43aの比D1/W1と溝43bの比D2/W2は、互いに異なっている。
【0031】
一実施形態において、複数の溝43のうち互いに異なる断面形状を有する二つ以上の溝は、第1の溝及び第2の溝を含む。第1の溝の幅は、当該第1の溝の深さよりも大きく、第2の溝の幅は、当該第2の溝の深さよりも小さくてもよい。
図2に示す例では、溝43aの幅W1は、溝43aの深さD1よりも大きい。即ち、比D1/W1は、1よりも小さい。また、溝43bの幅W2は、溝43bの深さD2よりも小さい。即ち、比D2/W2は、1よりも大きい。
【0032】
一実施形態において、上部電極40の中心軸線AXに直交する径方向における、複数の溝43の深さの分布は、段階的に変化していてもよい。例えば、
図1に示すように、複数の溝43のうち最大の深さを有する溝が、上部電極40の中心と上部電極40の外縁との間の中間に位置するように、複数の溝43の深さの分布は、段階的に変化していてもよい。
【0033】
また、複数の溝43の深さの分布は、上部電極40の中心から当該中心と上部電極40の外縁との間の中間まで段階的に増加してもよく、当該外縁から当該中間まで段階的に増加してもよい。即ち、複数の溝43のうち上部電極40の中心と上部電極40の外縁との間の中間の近傍に形成された溝の深さは大きてもよく、複数の溝43のうち上部電極40の中心の近傍と上部電極40の外縁の近傍に形成された溝の深さは小さくてもよい。
【0034】
以下、
図1及び
図2と共に
図3を参照する。
図3は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置の上部電極を下方から見た拡大図である。
図3に示すように、複数の溝43は、環形状を有してもよい。複数の溝43は、中心軸線AXに対して周方向に延在していてもよい。
【0035】
一実施形態において、複数の溝43の個数は、五つ以上であってもよい。
図3に示す例では、複数の溝43の個数は、十一個である。複数の溝43は、中心軸線AXに直交する径方向に沿って配列されている。例えば、複数の溝43は、中心40aと外周40bとの間で径方向に沿って配列されている。
【0036】
一実施形態において、径方向における複数のガス孔41のピッチは、径方向における複数の溝43のピッチと同一であってもよい。複数のガス孔41の「ピッチ」とは、径方向において、複数のガス孔41のうち互いに隣り合う二つのガス孔の間の距離である。複数の溝43の「ピッチ」とは、径方向において、複数の溝43のうち互いに隣り合う二つの溝の間の距離である。
【0037】
一実施形態において、複数の溝43の各々の幅は、径方向における複数のガス孔41のピッチの1/2以上であってもよい。即ち、複数のガス孔41のうち互いに隣り合う二つのガス孔の間に設けられた溝43の幅は、当該二つのガス孔の間の径方向における距離の1/2以上であってもよい。
【0038】
一実施形態において、複数の溝43の開口端の総面積は、上部電極40の下面において複数の溝43が形成されていない領域40cの総面積よりも大きくてもよい。複数の溝43の開口端の面積は、上部電極40の下面の面積(上部電極40を下方から平面視した際の面積)の1/2以上であってもよい。
【0039】
一実施形態において、上述した側壁20は、処理空間Sに向けて開口する一つ以上の溝21を提供してもよい。
図1に示す例では、側壁20は、一つ以上の溝21として、複数の溝21を提供している。
図1に示すように、複数の溝21は、溝21a,21b,21cを含んでいてもよい。複数の溝21は、互いに異なる断面形状を有する二つ以上の溝を含んでもよい。複数の溝21の各々は、その幅に対するその深さの固有の比を有してもよい。例えば、溝21aの幅は、溝21aの深さよりも大きい。溝21bの幅は、溝21bの深さよりも小さい。
【0040】
複数の溝21は、環形状を有してもよい。複数の溝21は、中心軸線AXに対して周方向に延在してもよい。また、一実施形態において、複数の溝21のうち少なくとも一つは、基板支持部11の上面よりも上方に位置していてもよい。
【0041】
一実施形態において、プラズマ処理装置1は、電源3及び導入部4を更に備えていてもよい。電源3は、電磁波の発生器である。電磁波は、VHF波又はUHF波であってもよい。VHF波の帯域は30MHz~300MHzであり、UHF波の帯域は300MHz~3GHzである。電源3は、インピーダンス整合回路3mを介して上部電極40に接続されている。
【0042】
導入部4は、天部30の一部を構成している。導入部4は、酸化アルミニウムのような誘電体から形成されている。導入部4は、環形状を有し、上部電極40の外周に沿って周方向に延在している。電源3からの電磁波は、カバー31と上部電極40との間の導波路を通って、導入部4から処理空間Sに導入される。電磁波は、処理空間Sに導入されたガスを励起させて、当該ガスからプラズマを生成する。
【0043】
プラズマ処理装置1は、ガス源2を更に備える。ガス源2からのガスは、ガス拡散室42及び複数のガス孔41を介して処理空間Sに導入される。ガス源2から処理空間Sに導入されるガスは、例えば、成膜ガス又はクリーニングガスである。処理空間S内の圧力は、例えば、1Pa~300Paの範囲内の圧力に設定される。なお、複数の溝43の幅及び複数の溝21の幅は、処理空間S内でのガス分子の平均自由行程よりも大きい。
【0044】
プラズマ処理装置1では、複数のガス孔41から処理空間Sに導入されたガスは、チャンバ10内でガス流を形成する。ガス流を形成するガスは、上部電極40が提供する複数の溝43の中で滞留する。複数の溝43のうち二つ以上の溝は互いに異なる断面形状を有するので、複数の溝43の各々でのガスの滞留時間は、各溝の断面形状により調整される。したがって、チャンバ10内に導入されたガスの滞留時間を制御することが可能になる。また、チャンバ10内で生成されるプラズマ中の活性種の密度は、ガスの滞留時間に比例する。したがって、プラズマ処理装置1によれば、活性種の密度を制御することが可能である。これにより、基板Wに対する面内均一性の高いプラズマ処理が可能となる。
【0045】
上述したように、一実施形態においては、複数のガス孔41は、複数の溝43に向けて開口するガス孔を含まなくてもよい。複数のガス孔41は、上部電極40の下面において複数の溝43が形成されていない領域40cで開口していてもよい。この実施形態では、ガスは、複数の溝43の中に直接的には導入されない。したがって、複数の溝43の中でのガスの比較的長い滞留時間が確保される。
【0046】
また、上述したように、一実施形態においては、複数の溝43のうち上述した二つ以上の溝は、第1の溝(例えば溝43a)及び第2の溝(例えば溝43b)を含んでもよい。第1の溝の幅は、第1の溝の深さよりも大きくてもよい。第2の溝の幅は、第2の溝の深さよりも小さくてもよい。この実施形態では、例えば、第1の溝の幅及び第2の溝の幅を同じとした場合、第1の溝に滞留するガスの滞留時間よりも、第2の溝に滞留するガスの滞留時間は長い。
【0047】
また、上述したように、一実施形態においては、複数の溝43は、環形状を有していてもよく、中心軸線AXに対して周方向に延在していてもよく、中心軸線AXに直交する径方向に沿って配列されていてもよい。また、複数の溝43の個数は、五つ以上であってもよい。この実施形態によれば、径方向における所望の活性種の密度分布が得られるよう、径方向におけるガスの滞留時間を制御することが可能である。
【0048】
また、上述したように、一実施形態においては、中心軸線AXに直交する径方向における複数の溝43の深さの分布は、段階的に変化していてもよい。この実施形態によれば、径方向における所望の活性種の密度分布が得られるよう、径方向におけるガスの滞留時間を段階的に制御することが可能である。
【0049】
また、上述したように、一実施形態においては、側壁20は、一つ以上の溝21を提供してもよい。この実施形態では、ガスは、側壁20に形成された一つ以上の溝21の中で滞留する。したがって、この実施形態によれば、側壁20の近傍における処理ガスの滞留時間を長くすることにより、側壁20の近傍で活性種の密度を高めることが可能である。
【0050】
また、上述したように、一実施形態においては、VHF帯又はUHF帯が、導入部4を介して処理空間S内に導入されてもよい。導入部4から導入される電磁波は、上部電極40の直下で定在波を発生し得る。プラズマ処理装置1によれば、定在波が発生している状況下であっても、所望の活性種の密度の分布が得られるように、ガスの滞留時間を制御することが可能である。
【0051】
また、上部電極40の中心と外縁との間の中間の下方に定在波の節が発生する場合には、複数の溝43のうち当該中間に位置する溝が最大の深さを有するように、複数の溝43の深さの分布が段階的に変化してもよい。この場合、電位変化が少ない定在波の節の位置でのガスの滞留時間が長くなるので、径方向において比較的均一な活性種の密度の分布を得ることが可能である。
【0052】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0053】
例えば、複数の溝43の各々の断面形状は、矩形以外の形状であってもよい。複数の溝43の各々の断面形状は、多角形状であってもよく、曲線を含んでいてもよい。複数の溝43の各々は、その幅がその開口端において最大であるテーパ形状を有していてもよい。
【0054】
また、複数の溝43の各々の深さの分布は、複数の溝43のうち最小の深さを有する溝が上部電極40の外縁の近傍に位置するように、径方向において段階的に変化してもよい。例えば、複数の溝43の深さの分布は、径方向において上部電極40の中心から上部電極の外縁まで段階的に減少していてもよい。具体的には、複数の溝43のうち上部電極40の中心の近傍に形成された溝の深さは大きくてもよく、複数の溝43のうち上部電極40の外縁の近傍に形成された溝の深さは小さくてもよい。ガスが上部電極40の中心からチャンバ内に導入されて径方向外側に流れる場合には、複数の溝43がなければ、上部電極40の中心の直下でのガスの対流時間よりも、上部電極40の外縁の直下でのガスの滞留時間が長くなる。しかしながら、かかる深さの分布を有する複数の溝43によれば、径方向におけるガスの滞留時間の偏りを低減することが可能である。
【0055】
また、径方向における複数のガス孔41のピッチは、一定でなくてもよい。また、径方向における複数の溝43のピッチは、一定でなくてもよい。複数の溝43は、互いに接続されていてもよい。例えば、複数の溝43は、径方向に延在する溝によって、互いに接続されていてもよい。
【0056】
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0057】
1…プラズマ処理装置、4…導入部、10…チャンバ、11…基板支持部、20…側壁、21…一つ以上の溝、30…天部、40…上部電極、40c…領域、41…複数のガス孔、43…複数の溝、S…処理空間、AX…中心軸線。