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特開2023-115590金属フェノキシド化合物、エステル交換反応用触媒、およびカルボン酸エステルの製造方法
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  • 特開-金属フェノキシド化合物、エステル交換反応用触媒、およびカルボン酸エステルの製造方法 図1
  • 特開-金属フェノキシド化合物、エステル交換反応用触媒、およびカルボン酸エステルの製造方法 図2
  • 特開-金属フェノキシド化合物、エステル交換反応用触媒、およびカルボン酸エステルの製造方法 図3
  • 特開-金属フェノキシド化合物、エステル交換反応用触媒、およびカルボン酸エステルの製造方法 図4
  • 特開-金属フェノキシド化合物、エステル交換反応用触媒、およびカルボン酸エステルの製造方法 図5
  • 特開-金属フェノキシド化合物、エステル交換反応用触媒、およびカルボン酸エステルの製造方法 図6
  • 特開-金属フェノキシド化合物、エステル交換反応用触媒、およびカルボン酸エステルの製造方法 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115590
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】金属フェノキシド化合物、エステル交換反応用触媒、およびカルボン酸エステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 39/235 20060101AFI20230814BHJP
   C07C 69/653 20060101ALI20230814BHJP
   C07C 67/03 20060101ALI20230814BHJP
   B01J 31/02 20060101ALI20230814BHJP
   C07D 453/04 20060101ALI20230814BHJP
   C07D 333/16 20060101ALI20230814BHJP
   C07D 303/16 20060101ALI20230814BHJP
   C07F 3/02 20060101ALI20230814BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230814BHJP
【FI】
C07C39/235 CSP
C07C69/653
C07C67/03
B01J31/02 101Z
C07D453/04
C07D333/16
C07D303/16
C07F3/02 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017891
(22)【出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】石原 一彰
【テーマコード(参考)】
4C048
4G169
4H006
4H039
4H048
【Fターム(参考)】
4C048AA01
4C048BB13
4C048CC01
4C048UU03
4C048XX05
4G169AA06
4G169AA11
4G169BA21A
4G169BA21B
4G169BA27A
4G169BA27B
4G169BC02A
4G169BC02B
4G169BC03A
4G169BC04A
4G169BC10A
4G169BC10B
4G169BE01A
4G169BE01B
4G169BE06A
4G169BE06B
4G169BE37A
4G169BE37B
4G169CB25
4G169CB75
4G169DA04
4G169EC27
4G169FA01
4H006AA01
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB40
4H006AC48
4H006BA02
4H006BA06
4H006BA29
4H006BJ20
4H006BJ50
4H006BM10
4H006BM71
4H006BP10
4H006FC52
4H006KA03
4H039CA66
4H039CD40
4H048AA01
4H048AA03
4H048AB40
4H048VA20
4H048VA60
(57)【要約】
【課題】目的とするカルボン酸エステルを高収率で合成することができる金属フェノキシド化合物、金属フェノキシド化合物を含むエステル交換反応用触媒、およびカルボン酸エステルの製造方法を提供する。
【解決手段】下記式(1)または下記式(2)で表される、金属フェノキシド化合物。
[化1]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)または下記式(2)で表される、金属フェノキシド化合物。
【化1】
(式(1)中、MはNa、KまたはLiであり、X1は置換基を有していてもよい炭化水素基またはシリル基であり、Y1は水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、ニトロ基、エステル基のいずれかであり、Z1は置換基を有していてもよい炭化水素基である。なお、2つのX1基は同じ基であってもよいし、異なる基であってもよく、2つのY1は同じ基であってもよいし、異なる基であってもよく、2つのZ1は同じ基であってもよいし、異なる基であってもよい。)
【化2】
(式(2)中、X2は置換基を有していてもよい炭化水素基またはシリル基であり、Y2は水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、ニトロ基、エステル基のいずれかであり、Z2は置換基を有していてもよい炭化水素基である。なお、2つのX2基は同じ基であってもよいし、異なる基であってもよく、2つのY2は同じ基であってもよいし、異なる基であってもよく、2つのZ2は同じ基であってもよいし、異なる基であってもよい。)
【請求項2】
前記X1が分岐状のアルキル基である、請求項1に記載の金属フェノキシド化合物。
【請求項3】
前記X2が分岐状のアルキル基である、請求項1に記載の金属フェノキシド化合物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の金属フェノキシド化合物を含む、エステル交換反応用触媒。
【請求項5】
下記式(1)で表される金属(I)フェノキシド化合物および下記式(2)で表されるマグネシウム(II)フェノキシド化合物のうち少なくとも1種を含むエステル交換反応用触媒の存在下に、エステル化合物とアルコールとを接触させることによりエステル交換反応を行う工程を含む、カルボン酸エステルの製造方法。
【化3】
(式(1)中、MはNa、KまたはLiであり、X1は置換基を有していてもよい炭化水素基またはシリル基であり、Y1は水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、ニトロ基、エステル基のいずれかであり、Z1は置換基を有していてもよい炭化水素基である。なお、2つのX1基は同じ基であってもよいし、異なる基であってもよく、2つのY1は同じ基であってもよいし、異なる基であってもよく、2つのZ1は同じ基であってもよいし、異なる基であってもよい。)
【化4】
(式(2)中、X2は置換基を有していてもよい炭化水素基またはシリル基であり、Y2は水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、ニトロ基、エステル基のいずれかであり、Z2は置換基を有していてもよい炭化水素基である。なお、2つのX2基は同じ基であってもよいし、異なる基であってもよく、2つのY2は同じ基であってもよいし、異なる基であってもよく、2つのZ2は同じ基であってもよいし、異なる基であってもよい。)
【請求項6】
前記エステル化合物が(メタ)アクリル酸エステルである、請求項5に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
【請求項7】
前記アルコールが第1級アルコールまたは第2級アルコールである、請求項5に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属フェノキシド化合物、エステル交換反応用触媒、およびカルボン酸エステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カルボン酸エステルは、医薬品、香料、化成品等の様々な分野に用いられている。カルボン酸エステルの製造方法としては、例えば、メチルエステルとアルコールとでエステル交換反応を行ってカルボン酸エステルを得る方法が用いられる。エステル交換反応には、触媒が用いられている。エステル交換反応の触媒としては、例えば、フェノール性水酸基の少なくとも1つのオルト位に置換基を有するフェノール類の有機オニウム塩を含むものが挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-203171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の触媒では、目的とするカルボン酸エステルの収率が低いという課題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、目的とするカルボン酸エステルを高収率で合成することができる金属フェノキシド化合物、金属フェノキシド化合物を含むエステル交換反応用触媒、およびカルボン酸エステルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]下記式(1)または下記式(2)で表される、金属フェノキシド化合物。
【0007】
【化1】
(式(1)中、MはNa、KまたはLiであり、X1は置換基を有していてもよい炭化水素基またはシリル基であり、Y1は水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、ニトロ基、エステル基のいずれかであり、Z1は置換基を有していてもよい炭化水素基である。なお、2つのX1基は同じ基であってもよいし、異なる基であってもよく、2つのY1は同じ基であってもよいし、異なる基であってもよく、2つのZ1は同じ基であってもよいし、異なる基であってもよい。)
【0008】
【化2】
(式(2)中、X2は置換基を有していてもよい炭化水素基またはシリル基であり、Y2は水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、ニトロ基、エステル基のいずれかであり、Z2は置換基を有していてもよい炭化水素基である。なお、2つのX2基は同じ基であってもよいし、異なる基であってもよく、2つのY2は同じ基であってもよいし、異なる基であってもよく、2つのZ2は同じ基であってもよいし、異なる基であってもよい。)
【0009】
[2]前記X1が分岐状のアルキル基である、[1]に記載の金属フェノキシド化合物。
【0010】
[3]前記X2が分岐状のアルキル基である、[1]に記載の金属フェノキシド化合物。
【0011】
[4][1]~[3]のいずれかに記載の金属フェノキシド化合物を含む、エステル交換反応用触媒。
【0012】
[5]下記式(1)で表される金属(I)フェノキシド化合物および下記式(2)で表されるマグネシウム(II)フェノキシド化合物のうち少なくとも1種を含むエステル交換反応用触媒の存在下に、エステル化合物とアルコールとを接触させることによりエステル交換反応を行う工程を含む、カルボン酸エステルの製造方法。
【0013】
【化3】
(式(1)中、MはNa、KまたはLiであり、X1は置換基を有していてもよい炭化水素基またはシリル基であり、Y1は水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、ニトロ基、エステル基のいずれかであり、Z1は置換基を有していてもよい炭化水素基である。なお、2つのX1基は同じ基であってもよいし、異なる基であってもよく、2つのY1は同じ基であってもよいし、異なる基であってもよく、2つのZ1は同じ基であってもよいし、異なる基であってもよい。)
【0014】
【化4】
(式(2)中、X2は置換基を有していてもよい炭化水素基またはシリル基であり、Y2は水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、ニトロ基、エステル基のいずれかであり、Z2は置換基を有していてもよい炭化水素基である。なお、2つのX2基は同じ基であってもよいし、異なる基であってもよく、2つのY2は同じ基であってもよいし、異なる基であってもよく、2つのZ2は同じ基であってもよいし、異なる基であってもよい。)
【0015】
[6]前記エステル化合物が(メタ)アクリル酸エステルである、[5]に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
【0016】
[7]前記アルコールが第1級アルコールまたは第2級アルコールである、[5]に記載のカルボン酸エステルの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、目的とするカルボン酸エステルを高収率で合成することができる金属フェノキシド化合物、金属フェノキシド化合物を含むエステル交換反応用触媒、およびカルボン酸エステルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】6,6´-(プロパン-2,2-ジイル)ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノール)のH-NMRのスペクトルを示す図である。
図2】6,6´-(プロパン-2,2-ジイル)ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノール)の13C-NMRのスペクトルを示す図である。
図3】触媒製造例1で得られた化合物のH-NMRのスペクトルを示す図である。
図4】触媒製造例1で得られた化合物の13C-NMRのスペクトルを示す図である。
図5】触媒製造例2で得られた化合物のH-NMRのスペクトルを示す図である。
図6】触媒製造例2で得られた化合物の13C-NMRのスペクトルを示す図である。
図7】実施例25、実施例26、比較例24および比較例25において、反応時間と収率の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の金属フェノキシド化合物、エステル交換反応用触媒、およびカルボン酸エステルの製造方法の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0020】
[金属フェノキシド化合物]
本実施形態に係る金属フェノキシド化合物は、下記式(1)または下記式(2)で表される。
【0021】
【化5】
【0022】
式(1)中、MはNa、KまたはLiであり、X1は置換基を有していてもよい炭化水素基またはシリル基であり、Y1は水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、ニトロ基、エステル基のいずれかであり、Z1は置換基を有していてもよい炭化水素基である。なお、2つのX1基は同じ基であってもよいし、異なる基であってもよく、2つのY1は同じ基であってもよいし、異なる基であってもよく、2つのZ1は同じ基であってもよいし、異なる基であってもよい。
【0023】
Na、K、Liは一価の金属であるため、上記式(1)で表される金属フェノキシド化合物は、金属(I)フェノキシド化合物と言うこともできる。(I)は金属の価数を表す。
なお、MがNaの時、メタクリル酸エステルとアルコールとのエステル交換反応において特に優れた触媒活性を示す。
【0024】
式(1)中、X1は、置換基を有していてもよい炭化水素基である。炭化水素基は、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基が挙げられる。また、炭化水素基は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよいし、あるいは環構造を有していてもよい。
【0025】
脂肪族炭化水素基は、特段の制限はないが、不飽和結合を含んでいてもよい。具体的には、アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基が挙げられる。芳香族炭化水素基は、特段の制限はないが、アリール基が挙げられる。
【0026】
また、炭化水素基が有していてもよい置換基としては、特段の制限はなく、任意の置換基が挙げられる。なかでも、置換基を有していてもよい炭化水素基としては、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、スルフィド結合、ジスルフィド結合、ウレタン結合、ニトロ基、シアノ基、ケトン基、ホルミル基、アセタール基、チオアセタール基、スルホニル基、シリル基、置換基を有していてもよいカルボキシ基、ハロゲン原子、ケイ素原子およびリン原子等から選択される1以上の、結合、基または原子を有する炭化水素基であることが好ましい。
【0027】
炭化水素基の炭素原子数は、反応性および入手容易性の観点から、1以上であることが好ましく、一方、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、7以下であることがさらに好ましく、4以下であることが特に好ましい。
【0028】
あるいは、式(1)中、X1は、置換基を有していてもよいシリル基である。置換基には、脂肪族炭化水素基または芳香族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基は、特段の制限はないが、不飽和結合を含んでいてもよい。具体的には、アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基が挙げられる。芳香族炭化水素基は、特段の制限はないが、アリール基が挙げられる。
【0029】
上記のなかでもX1はアルキル基であることが好ましく、また、上述の炭素原子数を有するアルキル基がより好ましい。このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等のアルキル基等が挙げられる。これらのなかでも、X1は分岐状のアルキル基(分岐アルキル基)であることが最も好ましい。分岐アルキル基としては、イソブチル基、tert-ブチルが好ましく、tert-ブチルがより好ましい。
【0030】
式(1)中、Y1は、水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、ニトロ基、エステル基のいずれかである。置換基を有していてもよい炭化水素基としては、特に限定されないが、X1と同じ基が挙げられ、好ましい基も同じ基が挙げられるが、最も好ましい基としては、水素原子、直鎖状のアルキル基または分岐状のアルキル基が挙げられ、具体的には、水素原子、メチル基、またはtert-ブチル基が挙げられる。
【0031】
式(1)中、Z1は、置換基を有していてもよい炭化水素基である。置換基を有していてもよい炭化水素基としては、特に限定されないが、X1と同じ基が挙げられ、好ましい基も同じ基が挙げられるが、最も好ましい基としては、直鎖状のアルキル基、分岐状のアルキル基、アリール基が挙げられ、具体的には、メチル基、またはtert-ブチル基が挙げられる。
【0032】
なお、式(1)で表される金属(I)フェノキシド化合物は、エステル化合物とアルコールとのエステル交換反応において優れた触媒活性を示す。
【0033】
上記式(1)で表される金属(I)フェノキシド化合物の好ましい形態としては、具体的には、下記式(3)で表されるナトリウム(I)フェノキシド化合物が挙げられる。
【0034】
【化6】
【0035】
なお、式(3)中、t-Buはtert-ブチル基を表す。
【0036】
上記式(3)で表されるナトリウム(I)フェノキシド化合物は、メタクリル酸エステルとアルコールとのエステル交換反応において特に優れた触媒活性を示す。
【0037】
【化7】
【0038】
式(2)中、X2は置換基を有していてもよい炭化水素基またはシリル基であり、Y2は水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、ニトロ基、エステル基のいずれかであり、Z2は置換基を有していてもよい炭化水素基である。なお、2つのX2基は同じ基であってもよいし、異なる基であってもよく、2つのY2は同じ基であってもよいし、異なる基であってもよく、2つのZ2は同じ基であってもよいし、異なる基であってもよい。
【0039】
Mgは二価の金属であるため、上記式(2)で表される金属フェノキシド化合物は、マグネシウム(II)フェノキシド化合物と言うこともできる。(II)はマグネシウムの価数を表す。
【0040】
X2に関して、置換基を有していてもよい炭化水素基としては、式(1)中のX1で挙げた置換基を有していてもよい炭化水素基が挙げられ、好ましい基もX1と同じであり分岐アルキル基が最も好ましい。
【0041】
X2に関して、シリル基としては、式(1)中のX1で挙げた置換基を有していてもよいシリル基が挙げられる。
【0042】
式(2)中、Y2は、水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、ニトロ基、エステル基のいずれかである。置換基を有していてもよい炭化水素基としては、式(1)中のY1と同じ基が挙げられ、好ましい基もY1と同じである。
【0043】
式(2)中、Z2は、置換基を有していてもよい炭化水素基であるが、置換基を有していてもよい炭化水素基としては、式(1)中のZ1と同じ基が挙げられ、好ましい基もZ1と同じである。
【0044】
なお、式(2)で表されるマグネシウム(II)フェノキシド化合物は、エステル化合物とアルコールとのエステル交換反応において優れた触媒活性を示す。
【0045】
上記式(2)で表されるマグネシウム(II)フェノキシドの好ましい形態としては、具体的には、下記式(4)で表されるマグネシウム(II)フェノキシド化合物、下記式(5)で表されるマグネシウム(II)フェノキシド化合物、が挙げられる。
【0046】
【化8】
【0047】
【化9】
【0048】
なお、式(4)および式(5)中、t-Buはtert-ブチル基を表す。
【0049】
上記式(4)および式(5)で表されるマグネシウム(II)フェノキシド化合物は、メタクリル酸エステルとアルコールとのエステル交換反応において特に優れた触媒活性を示す。
【0050】
本実施形態に係る金属フェノキシド化合物によれば、目的とするカルボン酸エステルを高収率で合成することができるエステル交換反応用触媒が得られる。
【0051】
[金属フェノキシド化合物の製造方法]
(式(1)で表される金属(I)フェノキシド化合物の製造方法)
上記式(1)で表される金属(I)フェノキシド化合物の製造方法としては、目的とする金属(I)フェノキシド化合物が得られる限りにおいて特段の制限はなく、公知の方法により製造することができる。
例えば、下記式(6)で表される2位に上記のX1に相当する置換基を有し、4位に上記のY1に相当する置換基を有するフェノールを溶解した無水アセトンに、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラートを加えて、その混合物を室温(25℃)で6時間~24時間撹拌する。次いで、前記混合物に0℃でアルコールを加えて、1時間撹拌する。次いで、得られた懸濁液をろ過し、粗生成物を0℃で、アルコールで洗浄し、クロロホルムに粗生成物を溶解し、さらにシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、下記式(7)で表される化合物を得る。
アルコールとしては、メタノール、エタノール等が用いられる。
【0052】
【化10】
【0053】
【化11】
【0054】
次いで、上記式(7)で表される化合物を溶解した無水テトラヒドロフランに、金属(I)アルコキシドを加えて、その混合物を室温(25℃)で15分~1時間撹拌する。次いで、揮発性物質を除去し、残留物を室温(25℃)で、減圧下で2時間~6時間乾燥し、黄色化合物を得る。
得られた黄色化合物が上記式(1)で表される金属(I)フェノキシド化合物である。
金属(I)アルコキシドと上記式(7)で表される化合物との混合比は、2:1のモル比となるようにすることが好ましい。
金属(I)アルコキシドとしては、例えば、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムメトキシドが用いられる。
【0055】
(式(2)で表されるマグネシウム(II)フェノキシド化合物の製造方法)
上記式(2)で表されるマグネシウム(II)フェノキシド化合物の製造方法としては、目的とするフェノキシド化合物が得られる限りにおいて特段の制限はなく、公知の方法により製造することができる。
例えば、上記式(1)で表される金属(I)フェノキシド化合物の製造方法と同様に、上記式(7)で表される化合物を得る。但し、マグネシウム(II)アルコキシドと上記式(7)で表される化合物との混合比は、1:1のモル比となるようにすることが好ましい。
次いで、上記式(7)で表される化合物を溶解した無水テトラヒドロフランに、ジ-n-ブチルマグネシウムを加えて、その混合物を室温(25℃)で15分~1時間撹拌する。次いで、揮発性物質を除去し、残留物を、減圧下、室温(25℃)で、2時間~6時間乾燥し、白色化合物を得る。
得られた白色化合物が上記式(2)で表されるマグネシウム(II)フェノキシド化合物である。
ジ-n-ブチルマグネシウムと上記式(7)で表される化合物との混合比は、1:1のモル比となるようにすることが好ましい。
【0056】
[エステル交換反応用触媒]
本実施形態に係るエステル交換反応用触媒は、エステル化合物とアルコールとでエステル交換反応を行ってカルボン酸エステルを得るためのエステル交換反応用触媒であって、上記式(1)で表される金属(I)フェノキシド化合物または上記式(2)で表されるマグネシウム(II)フェノキシド化合物を含む。
【0057】
本実施形態に係るエステル交換反応用触媒によれば、目的とするカルボン酸エステルを高収率で合成することができる。
【0058】
[カルボン酸エステルの製造方法]
本発明に係るカルボン酸エステルの製造方法は、上記式(1)で表される金属(I)フェノキシド化合物および上記式(2)で表されるマグネシウム(II)フェノキシド化合物のうち少なくとも1種を含むエステル交換反応用触媒の存在下に、エステル化合物とアルコールとを接触させることによりエステル交換反応を行う工程を含み、当該工程によってカルボン酸エステルを得る方法である。
【0059】
エステル化合物とアルコールとのエステル交換反応として、例えば、下記式(8)に、メタクリル酸エステルと第1級アルコールとのエステル交換反応に関する化学式を示す。下記式(9)に、アクリル酸エステルと第1級アルコールとのエステル交換反応に関する化学式を示す。
【0060】
【化12】
【0061】
【化13】
【0062】
上記式(8)及び(9)中、R1およびR3は、それぞれ、炭素原子数1以上のアルキル基である。なかでも、R1およびR3は、それぞれ、炭素数1以上のアルキル基であることが好ましく、一方、10以下のアルキル基であることが好ましく、6以下のアルキル基であることがさらに好ましく、2以下のアルキル基であることが特に好ましい。
上記式(8)及び(9)中、R2はアルキル基を表す。なかでも、R2-OHが第1級アルコールの場合、R2は炭素数2以上のアルキル基であることが好ましく、炭素数3以上のアルキル基であることがさらに好ましく、炭素数4以上のアルキル基であることが特に好ましく、一方、炭素数30以下のアルキル基であることが好ましく、炭素数20以下のアルキル基であることがさらに好ましく、炭素数20以下のアルキル基であることが特に好ましい。
【0063】
R2-OHが第2級アルコールの場合、R2は炭素数3以上のアルキル基であることが好ましく、炭素数4以上のアルキル基であることがさらに好ましく、炭素数5以上のアルキル基であることが特に好ましく、一方、炭素数30以下のアルキル基であることが好ましく、炭素数25以下のアルキル基であることがさらに好ましく、炭素数20以下のアルキル基であることが特に好ましい。
【0064】
R2-OHが第3級アルコールの場合、R2は炭素数4以上のアルキル基であることが好ましく、一方、炭素数30以下のアルキル基であることが好ましく、炭素数25以下のアルキル基であることがさらに好ましく、炭素数20以下のアルキル基であることが特に好ましい。
【0065】
以下、本実施形態に係るカルボン酸エステルの製造方法の詳細を説明する。
まず、フラスコ等の反応容器に、乾燥処理済みのモレキュラーシーブ、上記式(1)で表される金属(I)フェノキシド化合物および上記式(2)で表されるマグネシウム(II)フェノキシド化合物のうち少なくとも1種を含むエステル交換反応用触媒、および(メタ)アクリル酸エステルを所定量加え、その混合物を室温(25℃)で1分~5分撹拌した後、アルコールを加えて懸濁液を得る。
次いで、その懸濁液を所定の反応温度で30分~96時間撹拌して、(メタ)アクリル酸エステルとアルコールとでエステル交換反応を行った後、その懸濁液を精製し、カルボン酸エステルを得る。
【0066】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、特段の制限はないが、エステル部分の炭素数が1以上10以下の(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましく、エステル部分の炭素数が6以下の(メタ)アクリル酸エステルであることがさらに好ましく、エステル部分の炭素数が2以下の(メタ)アクリル酸エステルであることが特に好ましく、メタクリル酸メチルまたはアクリル酸メチルが最も好ましい。
【0067】
アルコールとしては、特段の制限はなく、1価のアルコールまたは2価以上の多価アルコールが挙げられる。
【0068】
1価のアルコールとしては、第1級アルコール、第2級アルコールまたは第3級アルコールが挙げられる。また、多価アルコールとしては、ジオール、トリオール、テトラオール、不安定アルコール等が挙げられ、いずれも使用することができる。
【0069】
第1級アルコールとしては、特段の制限はないが、炭素数2以上の第1級アルコールであることが好ましく、一方、目的とするカルボン酸エステルの精製負荷を低減させるために、炭素数30以下の第1級アルコールであることが好ましい。このような第1級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパン-1-オール、ブタン-1-オール、ペンタン-1-オール、ヘキサン-1-オール、ヘプタン-1-オール、オクタン-1-オール、ノナン-1-オール、デカン-1-オール、ウンデカン-1-オール、ドデカン-1-オール、トリデカン-1-オール、テトラデカン-1-オール、ペンタデカン-1-オール、ヘキサデカン-1-オール、ヘプタデカン-1-オール、オクタデカン-1-オール、ノナデカン-1-オール、イコサン-1-オール、ヘネイコサン-1-オール、ドコサン-1-オール、トリコサン-1-オール、テトラコサン-1-オール、ペンタコサン-1-オール、ヘキサコサン-1-オール、ヘプタコサン-1-オール、オクタコサン-1-オール、ノナコサン-1-オール、トリアコンタン-1-オール、ポリコサノール、2-メチル:2-メチルプロパン-1-オール、3-メチル:3-メチルブタン-1-オール等が挙げられる。これらのなかでも、第1級アルコールは、炭素数3以上の第1級アルコールであることがより好ましく、炭素数4以上の第1級アルコールであることが特に好ましく、一方、炭素数20以下の第1級アルコールであることがより好ましく、炭素数10以下の第1級アルコールであることが特に好ましい。
【0070】
第2級アルコールとしては、特段の制限はないが、第2級アルコールとしては、特段の制限はないが、炭素数3以上の第2級アルコールであることが好ましく、炭素数4以上の第2級アルコールであることがより好ましく、炭素数5以上の第2級アルコールであることが特に好ましく、一方、炭素数30以下の第2級アルコールであることが好ましく、炭素数25以下の第2級アルコールであることがより好ましく、炭素数20以下の第2級アルコールであることが特に好ましい。このような第2級アルコールとしては、例えば、プロパン-2-オール、ブタン-2-オール、ペンタン-2-オール、ヘキサン-2-オール、ヘプタン-2-オール、2-メチル:2-メチルブタン-1-オール等が挙げられる。
【0071】
第3級アルコールとしては、特段の制限はないが、炭素数4以上の第3級アルコールであることが好ましく一方、炭素数30以下の第3級アルコールであることが好ましく、炭素数25以下の第3級アルコールであることがより好ましく、炭素数20以下の第3級アルコールであることが特に好ましい。このような第3級アルコールとしては、1-アダマンタノール、tert-ブタノール等が挙げられる。
【0072】
ジオールとしては、特段の制限はないが、炭素数1以上のジオールであることが好ましく、炭素数2以上のジオールであることがより好ましく、一方、炭素数30以下のジオールであることが好ましく、炭素数25以下のジオールであることがより好ましく、炭素数20以下のジオールであることが特に好ましい。このようなジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、下記式(10)で表される1,4-ベンゼンジメタノール、下記式(11)で表される1,6-ヘキサンジオール、下記式(12)で表される1,4-ブチンジオール等が挙げられる。
【0073】
【化14】
【0074】
【化15】
【0075】
【化16】
【0076】
トリオールとしては、特段の制限はないが、炭素数1以上のトリオールであることが好ましく、炭素数2以上のトリオールであることがより好ましく、一方、炭素数30以下のトリオールであることが好ましく、炭素数25以下のトリオールであることがより好ましい。このようなトリオールとしては、下記式(13)で表されるトリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0077】
【化17】
【0078】
テトラオールとしては、特段の制限はないが、炭素数1以上のテトラオールであることが好ましく、炭素数2以上のテトラオールであることがより好ましく、一方、炭素数30以下のテトラオールであることが好ましく、炭素数25以下のテトラオールであることがより好ましい。このようなテトラオールとしては、ヘキサン-1、2、3、6-テトラオール等が挙げられる。
【0079】
不安定アルコールとしては、分子内に化学反応を起こしやすい構造を持つアルコールを意味する。これらについて特段の制限はないが、炭素数2以上の不安定アルコールであることが好ましく、炭素数3以上の不安定アルコールであることがより好ましく、一方、炭素数30以下の不安定アルコールであることが好ましく、炭素数25以下の不安定アルコールであることがより好ましい。このような不安定アルコールとしては、下記式(14)で表される(R)-オキシラン-2-メタノール、下記式(14)で表されるアリルアルコール等が挙げられる。
【0080】
【化18】
【0081】
【化19】
【0082】
上記のアルコールのなかでも、反応性に優れるために、第1級アルコールまたは第2級アルコールが好ましい。
【0083】
(メタ)アクリル酸エステルとアルコールとの配合比、言い換えれば、アルコールに対する(メタ)アクリル酸エステルのモル比は、特段の制限はないが、1以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、一方、50以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましい。アルコールに対する(メタ)アクリル酸エステルのモル比が1以上50以下であれば、(メタ)アクリル酸エステルとアルコールとでエステル交換反応が進行しやすくなる。(メタ)アクリル酸エステルとアルコールは、それぞれ1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、(メタ)アクリル酸および/またはアルコールをそれぞれ2種以上用いる場合は、その合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0084】
(メタ)アクリル酸エステルとアルコールとのエステル交換反応温度は、-20℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがさらに好ましく、一方、100℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。反応温度が-20℃以上であれば、(メタ)アクリル酸エステルとアルコールとでエステル交換反応が進行しやすくなる。また、反応温度が100℃以下であれば、加温によるエネルギーの消費量を抑制することができる。
【0085】
(メタ)アクリル酸エステルとアルコールとのエステル交換反応は溶媒中で行ってもよいし、無溶媒で行ってもよい。ただし、生産性および溶媒回収の負荷を考慮すると、無溶媒で行うことが好ましい。なお、無溶媒とは、アルコールに対する溶媒量が30質量%以下であることを意味するものとする。
【0086】
一方、溶媒を使用する場合、溶媒としては、特段の制限はないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、アニソール、メチル-tert-ブチルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-メチルシクロヘキサノン、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0087】
金属フェノキシド化合物としては、上述の通り、上記式(1)で表される金属(I)フェノキシド化合物および上記式(2)で表されるマグネシウム(II)フェノキシド化合物のうち少なくとも1種が挙げられるが、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、上記式(1)から選択される1種以上の金属(I)フェノキシド化合物と上記式(2)から選択される1種以上のマグネシウム(II)フェノキシド化合物を用いてもよいし、上記式(1)から選択される金属(I)フェノキシド化合物の中から2種以上を用いてもよいし、上記式(2)から選択されるマグネシウム(II)フェノキシド化合物の中から2種以上を用いてもよい。
【0088】
アルコールに対する上記式(1)で表される金属(I)フェノキシド化合物および上記式(2)で表されるマグネシウム(II)フェノキシド化合物の合計量は特段の制限はないが、エステル交換反応を効率よく促進させるために、アルコール1molに対して、0.001mol以上であることが好ましく、0.003mol以上であることがさらに好ましく、0.005mol以上であることが特に好ましく、一方、反応後の精製負荷を低減させるために0.20mol以下であることが好ましく、0.15mol以下であることがより好ましく、0.10mol以下であることが特に好ましい。
【0089】
なお、本実施形態において、上記金属フェノキシド化合物が触媒として作用するが、本発明の効果を損なわない限りにおいて、該金属フェノキシド化合物以外に他の触媒を併用してもよい。
【0090】
また、反応系中には上記化合物以外の化合物が存在していてもよい。例えば、重合禁止剤を用いてもよい。重合禁止剤としては特段の制限はなく、例えば、4-アセチルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピぺリジン-1-オキシル(4-アセトアミド-TEMPO)、ジメチルジチオカルバミン酸銅(II)、フェノチアジン、メトキノン、ハイドロキノン等の公知の重合禁止剤を用いることができる。
【0091】
また、反応系中にはエステル交換反応に関与しないガスを吹込むこともできる。例えば、空気、窒素、等を吹込みながらエステル交換反応を実施することができる。
【0092】
上記の懸濁液の精製方法としては、特に限定されないが、シリカゲルカラム(移動相:ヘキサン・酢酸メチル)を用いて精製する方法、洗浄、濾過、蒸留等が挙げられ、それらの精製方法は、特に制限されず、一般的に開示されている方法で行えばよい。
【0093】
本発明に係るカルボン酸エステルの製造方法によれば、目的とするカルボン酸エステルを高収率で合成することができる。
【実施例0094】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0095】
[6,6´-(プロパン-2,2-ジイル)ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノール)の製造例]
2,4-ジ-tert-ブチルフェノール(2.1g、10.0mmol)を溶解した無水アセトン(368μL、5.0mmol)に、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート(0.6mL、5.0mmol)を加えて、その混合物を、窒素下、室温(25℃)で16時間撹拌した。次いで、前記混合物に0℃でメタノールを加えて、1時間撹拌した。次いで、得られた懸濁液をろ過し、粗生成物を0℃で、メタノールで洗浄した。次いで、クロロホルムに粗生成物を溶解し、さらにシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:n-ヘキサン:酢酸エチル=8:1)で精製して、白色化合物を得た。
図1に得られた化合物のH-NMRのスペクトルを示す。図2に得られた化合物の13C-NMRのスペクトルを示す。得られた化合物のH-NMRおよび13C-NMRの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):1.28(s,18H,2C(CH)、1.36(s,18H,2C(CH)、1.73(s,6H,2CH)、4.99(s,2H,2OH)、7.30(d,J=2.28Hz,2H,2ArH)、7.40(d,J=2.28Hz,2H,2ArH)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):29.0(2C)、29.7(6C)、31.9(6C)、34.8(2C)、35.3(2C)、40.6(1C)、119.9(2C)、124.2(2C)、130.8(2C)、137.6(2C)、143.1(2C)、151.9(2C)。
上記の測定データから、下記式(16)で表される6,6´-(プロパン-2,2-ジイル)ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノール)が得られていることが確認された。下記式(17)に2,4-ジ-tert-ブチルフェノールと無水アセトンのエステル交換反応により6,6´-(プロパン-2,2-ジイル)ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノール)を合成する反応式を示す。
【0096】
【化20】
【0097】
【化21】
【0098】
[触媒製造例1]
(エステル交換反応用触媒の製造)
6,6´-(プロパン-2,2-ジイル)ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノール)(12.4mg、0.025mmol)を溶解した無水テトラヒドロフラン(140μL)に、ナトリウムメトキシド(10μL、0.050mmol)を加えて、その混合物を、窒素下、室温(25℃)で30分撹拌した。次いで、揮発性物質を除去し、残留物を、減圧下(<5Torr)、室温(25℃)で、3時間乾燥し、黄色化合物を得た。
図3に得られた化合物のH-NMRのスペクトルを示す。図4に得られた化合物の13C-NMRのスペクトルを示す。得られた化合物のH-NMRおよび13C-NMRの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):1.28(s,18H,2C(CH)、1.36(s,18H,2C(CH)、1.73(s,6H,2CH)、7.30(d,J=2.28Hz,2H,2ArH)、7.41(d,J=2.28Hz,2H,2ArH)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):29.0(2C)、29.7(6C)、31.9(6C)、34.8(2C)、35.3(2C)、40.5(1C)、119.8(2C)、124.2(2C)、130.6(2C)、137.5(2C)、143.1(2C)、151.8(2C)。
上記の測定データから、下記式(18)で表される化合物が得られていることが確認された。下記式(19)に6,6´-(プロパン-2,2-ジイル)ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノール)とナトリウムメトキシドの反応により下記式(18)で表される化合物を合成する反応式を示す。
【0099】
【化22】
【0100】
【化23】
【0101】
[触媒製造例2]
(エステル交換反応用触媒の製造)
6,6´-(プロパン-2,2-ジイル)ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノール)(49.6mg、0.10mmol)を溶解した無水テトラヒドロフラン(200μL)に、ジ-n-ブチルマグネシウム(以下、「BuMg」と略す。1.0Mヘプタン溶液、100μL、0.10mmol)を加えて、その混合物を、窒素下、室温(25℃)で30分撹拌した。次いで、揮発性物質を除去し、残留物を、減圧下(<5Torr)、室温(25℃)で、3時間乾燥し、白色化合物を得た。
図5に得られた化合物のH-NMRのスペクトルを示す。図6に得られた化合物の13C-NMRのスペクトルを示す。得られた化合物のH-NMRおよび13C-NMRの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):1.28(s,18H,2C(CH)、1.36(s,18H,2C(CH)、1.73(s,6H,2CH)、7.30(d,J=2.28Hz,2H,ArH)、7.40(d,J=2.28Hz,2H,2ArH)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):29.0(2C)、29.7(6C)、31.9(6C)、34.8(2C)、35.3(2C)、40.5(1C)、119.9(2C)、124.2(2C)、130.7(2C)、137.5(2C)、143.1(2C)、151.8(2C)。
上記の測定データから、下記式(20)で表される化合物が得られていることが確認された。下記式(21)に6,6´-(プロパン-2,2-ジイル)ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノール)とジ-n-ブチルマグネシウムの反応により下記式(20)で表される化合物を合成する反応式を示す。
【0102】
【化24】
【0103】
【化25】
【0104】
[触媒製造例3]
(エステル交換反応用触媒の製造)
ジ-n-ブチルマグネシウムの代わりにマグネシウムエトキシドを11.4mg(0.10mmol)用いたこと以外は触媒製造例2と同様にして、白色化合物を得た。
得られた化合物のH-NMRおよび13C-NMRの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):1.28(s,18H,2C(CH)、1.36(s,18H,2C(CH)、1.73(s,6H,2CH)、7.30(d,J=2.28Hz,2H,ArH)、7.40(d,J=2.28Hz,2H,2ArH)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):29.0(2C)、29.7(6C)、31.9(6C)、34.8(2C)、35.3(2C)、40.5(1C)、119.9(2C)、124.2(2C)、130.7(2C)、137.5(2C)、143.1(2C)、151.8(2C)。
上記の測定データから、下記式(22)で表される化合物が得られていることが確認された。
【0105】
【化26】
【0106】
[触媒製造例4]
(エステル交換反応用触媒の製造)
ナトリウムメトキシド108mg(2.0mmol)と、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール440mg(2.0mmol)とを、メタノール5mLに溶解し、室温(25℃)で30分間撹拌した。
撹拌終了後、減圧下で溶液から揮発性物質を除去した後、残留物を室温(25℃)にて減圧下(665Pa未満)で2時間乾燥し、白色化合物を得た。
得られた化合物のH-NMRおよび13C-NMRの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:DMSO-d)δ(ppm):1.30(s,18H)、2.00(s,3H)、6.42(s,2H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:DMSO-d)δ(ppm):21.6、30.2(6C)、34.6(2C)、109.5、123.6(2C)、134.9(2C)、167.9。
上記の測定データから、下記式(23)で表されるナトリウム2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシド(以下、「NaOAr-1」と略す。)が得られていることが確認された。
【0107】
【化27】
【0108】
[触媒製造例5]
(エステル交換反応用触媒の製造)
マグネシウムエトキシド(以下、「Mg(OEt)」と略す。)228.9mg(2.0mmol)と、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール881mg(4.0mmol)とを、メタノール5mLに溶解し、室温(25℃)で30分間撹拌した。
撹拌終了後、減圧下で溶液から揮発性物質を除去した後、残留物を室温(25℃)にて減圧下(665Pa未満)で2時間乾燥し、白色化合物を得た。
得られた化合物のH-NMRおよび13C-NMRの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:benzene-d)δ(ppm):1.38(s,36H)、2.25(s,6H)、7.06(s,4H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:benzene-d)δ(ppm):21.5(2C)、30.5(12C)、34.4(4C)、125.9(4C)、128.5(2C)、136.0(4C)、152.1(2C)。
上記の測定データから、下記式(24)で表されるマグネシウム2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシド(以下、「Mg(OAr)」と略す。)が得られていることが確認された。
【0109】
【化28】
【0110】
[触媒製造例6]
(エステル交換反応用触媒の製造)
マグネシウムエトキシドの代わりにジ-n-ブチルマグネシウムを2mL(1.0mol/Lヘプタン溶液、2.0mmol)用いたこと以外は触媒製造例5と同様にして、白色化合物を得た。
得られた化合物のH-NMRおよび13C-NMRの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:benzene-d)δ(ppm):1.38(s,36H)、2.25(s,6H)、7.06(s,4H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:benzene-d)δ(ppm):21.5(2C)、30.5(12C)、34.4(4C)、125.9(4C)、128.5(2C)、136.0(4C)、152.1(2C)。
上記の測定データから、上記式(24)で表されるMg(OAr)が得られていることが確認された。
【0111】
[実施例1]
(カルボン酸エステルの製造)
フラスコに、乾燥処理済みのモレキュラーシーブ5Åを400mg、上記式(18)で表されるナトリウム(I)フェノキシド化合物を12.4mg(0.025mmol)、メタクリル酸メチル(以下、「MMA」と略すこともある。)1.49mL(室温(25℃))(14mmol)、重合禁止剤として4-アセチルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル0.42mg(0.0020mmol)および内部標準物質としてジメチルスルホン18.8mg(0.20mmol)を加え、その混合物を室温(25℃)で1分間撹拌した後、ベンジルアルコール(以下、「BnOH」と略すこともある。)0.206mL(2.0mmol)を加えて懸濁液を得た。
次いで、その懸濁液を室温(25℃)で10分間撹拌した。
反応の進行は薄層クロマトグラフィーによってモニタリングした。反応が終了したことを薄層クロマトグラフィーで確認した後、懸濁液の一部をサンプリングして、収率をH-NMR(CDCl)で求めたところ、99%を超えていた。
収率を求めるために用いたサンプルを懸濁液に戻して、得られた懸濁液をそのままシリカゲルカラム(移動相:ヘキサン・酢酸メチル)で精製し、実施例1の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):1.97(s,3H)、5.20(s,2H)、5.59(s,1H)、6.16(s,1H)、7.30-7.40(m,5H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):18.5、66.5、125.9、128.1(2C)、128.2、128.6(2C)、136.2、136.3、167.3。
IR(neat)3034、2957、1719、1637、1454、1319、1294、1159cm-1
HRMS(DART+) calcd for C1113 [M+H] 177.0916、found 177.0912。
上記の測定データから、下記式(25)で表されるベンジルメタクリレートが得られていることが確認された。下記式(26)にメタクリル酸メチルとベンジルアルコールのエステル交換反応によりベンジルメタクリレートを合成する反応式を示す。
目的生成物の収率はシリカゲルカラムクロマトグラフィーで副生成物と分離した上で、電子天びんで質量を直接計量することにより目的生成物の収率を算出したところ99%を超えていた。
【0112】
【化29】
【0113】
【化30】
【0114】
[比較例1]
(カルボン酸エステルの製造)
上記式(18)で表されるナトリウム(I)フェノキシド化合物の代わりに上記NaOAr-1を12.2mg(0.050mmol)用い、懸濁液を室温(25℃)で30分間撹拌したこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):1.97(s,3H)、5.20(s,2H)、5.59(s,1H)、6.16(s,1H)、7.30-7.40(m,5H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):18.5、66.5、125.9、128.1(2C)、128.2、128.6(2C)、136.2、136.3、167.3。
IR(neat)3034、2957、1719、1637、1454、1319、1294、1159cm-1
HRMS(DART+) calcd for C1113 [M+H] 177.0916、found 177.0912。
上記の測定データから、上記式(25)で表されるベンジルメタクリレートが得られていることが確認された。
収率は99%を超えていた。
【0115】
実施例1と比較例1の比較から、実施例1は、比較例1よりも反応時間(懸濁液の撹拌時間)が短く、上記式(18)で表されるナトリウム(I)フェノキシド化合物は、上記NaOAr-1よりも触媒活性が高いことが分かった。
【0116】
[実施例2]
(カルボン酸エステルの製造)
ベンジルアルコールの代わりに下記式(27)で表されるrel-(1R,2S,5R)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサノール、313mg(2.0mmol)を用い、懸濁液を室温(25℃)で30分間撹拌したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMRおよびIRの測定データは、文献(ACS Catal.2021,11,199-207)に記載されたものと一致したことから、下記式(28)で表されるメタクリル酸メチルとrel-(1R,2S,5R)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサノールのエステルが得られていることが確認された。
収率は99%を超えていた。
【0117】
【化31】
【0118】
【化32】
【0119】
[比較例2]
(カルボン酸エステルの製造)
上記式(18)で表されるナトリウム(I)フェノキシド化合物の代わりに上記NaOAr-1を12.2mg(0.050mmol)用い、懸濁液を室温(25℃)で3時間撹拌したこと以外は実施例2と同様にして、比較例2の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMRおよびIRの測定データは、文献(ACS Catal.2021,11,199-207)に記載されたものと一致したことから、上記式(28)で表されるメタクリル酸メチルとrel-(1R,2S,5R)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサノールのエステルが得られていることが確認された。
収率は99%を超えていた。
【0120】
実施例2と比較例2の比較から、実施例2は、比較例2よりも反応時間(懸濁液の撹拌時間)が短く、上記式(18)で表されるナトリウム(I)フェノキシド化合物は、上記NaOAr-1よりも触媒活性が高いことが分かった。
【0121】
[実施例3]
(カルボン酸エステルの製造)
ベンジルアルコールの代わりに下記式(29)で表されるコレステロール、769mg(2.0mmol)を用い、懸濁液を室温(25℃)で15時間撹拌したこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):0.68(s,3H)、0.86(d,J=6.6Hz,3H)、0.87(d,J=6.6Hz,3H)、0.92(d,J=6.4Hz,3H)、0.95-1.69(m,24H)、1.77-2.04(m,8H)、2.36(d,J=8.2Hz,2H)、4.67(m,1H)、5.38(d,J=4.6Hz,1H)、5.53(m,1H)、6.08(s,1H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):12.0、18.5、18.9、19.5、21.2、22.7、23.0、24.0、24.4、27.9、28.2、28.4、32.0、32.1、36.0、36.3、36.8、37.2,38.3、39.7、39.9、42.5、50.2、56.3、56.8、74.4、122.8、125.1、137.0、139.9、167.0。
IR(KBr)2947、1718、1638、1467、1375、1324、1295、1171、1012cm-1
HRMS(EI) calcd for C3150 [M] 454.3811、found 454.3818。
上記の測定データから、下記式(30)で表されるコレステリルメタクリレートが得られていることが確認された。
収率は99%を超えていた。
【0122】
【化33】
【0123】
【化34】
【0124】
[比較例3]
(カルボン酸エステルの製造)
上記式(18)で表されるナトリウム(I)フェノキシド化合物の代わりに上記NaOAr-1を12.2mg(0.050mmol)用い、懸濁液を室温(25℃)で24時間撹拌したこと以外は実施例3と同様にして、比較例3の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):0.68(s,3H)、0.86(d,J=6.6Hz,3H)、0.87(d,J=6.6Hz,3H)、0.92(d,J=6.4Hz,3H)、0.95-1.69(m,24H)、1.77-2.04(m,8H)、2.36(d,J=8.2Hz,2H)、4.67(m,1H)、5.38(d,J=4.6Hz,1H)、5.53(m,1H)、6.08(s,1H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):12.0、18.5、18.9、19.5、21.2、22.7、23.0、24.0、24.4、27.9、28.2、28.4、32.0、32.1、36.0、36.3、36.8、37.2,38.3、39.7、39.9、42.5、50.2、56.3、56.8、74.4、122.8、125.1、137.0、139.9、167.0。
IR(KBr)2947、1718、1638、1467、1375、1324、1295、1171、1012cm-1
HRMS(EI) calcd for C3150 [M] 454.3811、found 454.3818。
上記の測定データから、上記式(30)で表されるコレステリルメタクリレートが得られていることが確認された。
収率は94%であった。
【0125】
実施例3と比較例3の比較から、実施例3は、比較例3よりも反応時間(懸濁液の撹拌時間)が短く、かつ収率が高く、上記式(18)で表されるナトリウム(I)フェノキシド化合物は、上記NaOAr-1よりも触媒活性が高いことが分かった。
【0126】
[実施例4]
(カルボン酸エステルの製造)
ベンジルアルコールの代わりに下記式(31)で表される8-メチル-8-アゾビシクロ3.2.1オクタン-3-オール、278mg(2.0mmol)を用い、懸濁液を室温(25℃)で12時間撹拌したこと以外は実施例1と同様にして、実施例4の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):1.73(d,J=15.0Hz,2H)、1.91-2.10(m,4H)、1.96(s,3H)、2.15(dt,J=15.0,4.1Hz,2H)、2.29(s,3H)、3.11(brs,2H)、5.06(t,J=5.3Hz,1H)、5.57(s,1H)、6.09(s,1H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):18.3、25.7(2C)、36.7(2C)、40.5(2C)、59.8、67.7、125.2、136.9、166.7。
IR(neat)2943、1715、1448、1316、1296、1170、1063、1036cm-1
HRMS(FAB+) calcd for C1220NO [M+H] 210.1494、found 210.1485。
上記の測定データから、下記式(32)で表される(1R,3r,5S)-8-メチル-8-アゾビシクロ[3.2.1]オクタン-3-イルメタクリレートが得られていることが確認された。
収率は99%を超えていた。
【0127】
【化35】
【0128】
【化36】
【0129】
[比較例4]
(カルボン酸エステルの製造)
上記式(18)で表されるナトリウム(I)フェノキシド化合物の代わりに上記NaOAr-1を12.2mg(0.050mmol)用い、懸濁液を室温(25℃)で24時間撹拌したこと以外は実施例4と同様にして、比較例4の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):1.73(d,J=15.0Hz,2H)、1.91-2.10(m,4H)、1.96(s,3H)、2.15(dt,J=15.0,4.1Hz,2H)、2.29(s,3H)、3.11(brs,2H)、5.06(t,J=5.3Hz,1H)、5.57(s,1H)、6.09(s,1H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):18.3、25.7(2C)、36.7(2C)、40.5(2C)、59.8、67.7、125.2、136.9、166.7。
IR(neat)2943、1715、1448、1316、1296、1170、1063、1036cm-1
HRMS(FAB+) calcd for C1220NO [M+H] 210.1494、found 210.1485。
上記の測定データから、上記式(32)で表される(1R,3r,5S)-8-メチル-8-アゾビシクロ[3.2.1]オクタン-3-イルメタクリレートが得られていることが確認された。
収率は88%であった。
【0130】
実施例4と比較例4の比較から、実施例4は、比較例4よりも反応時間(懸濁液の撹拌時間)が短く、かつ収率が高く、上記式(18)で表されるナトリウム(I)フェノキシド化合物は、上記NaOAr-1よりも触媒活性が高いことが分かった。
【0131】
[実施例5]
(カルボン酸エステルの製造)
ベンジルアルコールの代わりに下記式(33)で表されるイソボルネオール、309mg(2.0mmol)を用い、懸濁液を室温(25℃)で10分間撹拌したこと以外は実施例1と同様にして、実施例5の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):0.85(s,3H)、0.86(s,3H)、1.02(s,3H)、1.07-1.21(m,2H)、1.57(m,1H)、1.67-1.88(m,4H)、1.93(s,3H)、4.71(m,1H)、5.52(d,J=1.4Hz,1H)、6.07(s,1H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):11.5、18.4、19.9、20.1、27.1、33.7、38.9、45.1、47.0、48.9、81.2、125.0、136.9、166.9。
IR(neat)2955、2879、1717、1638、1455、1327、1298、1163、1054cm-1
HRMS(FAB+) calcd for C1422NaO [M+Na]
245.1517、found 245.1509。
上記の測定データから、下記式(34)で表されるイソボルニルメタクリレートが得られていることが確認された。
収率は99%を超えていた。
【0132】
【化37】
【0133】
【化38】
【0134】
[比較例5]
(カルボン酸エステルの製造)
上記式(18)で表されるナトリウム(I)フェノキシド化合物の代わりに上記NaOAr-1を12.2mg(0.050mmol)用い、懸濁液を室温(25℃)で30分間撹拌したこと以外は実施例5と同様にして、比較例5の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):0.85(s,3H)、0.86(s,3H)、1.02(s,3H)、1.07-1.21(m,2H)、1.57(m,1H)、1.67-1.88(m,4H)、1.93(s,3H)、4.71(m,1H)、5.52(d,J=1.4Hz,1H)、6.07(s,1H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):11.5、18.4、19.9、20.1、27.1、33.7、38.9、45.1、47.0、48.9、81.2、125.0、136.9、166.9。
IR(neat)2955、2879、1717、1638、1455、1327、1298、1163、1054cm-1
HRMS(FAB+) calcd for C1422NaO [M+Na]
245.1517、found 245.1509。
上記の測定データから、上記式(34)で表されるイソボルニルメタクリレートが得られていることが確認された。
収率は95%であった。
【0135】
実施例5と比較例5の比較から、実施例5は、比較例5よりも反応時間(懸濁液の撹拌時間)が短く、かつ収率が高く、上記式(18)で表されるナトリウム(I)フェノキシド化合物は、上記NaOAr-1よりも触媒活性が高いことが分かった。
【0136】
[実施例6]
(カルボン酸エステルの製造)
ベンジルアルコールの代わりに下記式(35)で表される5-ノナノール、289mg(2.0mmol)を用い、懸濁液を室温(25℃)で30分間撹拌したこと以外は実施例1と同様にして、実施例6の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMRおよびIRの測定データは、文献(ACS Catal.2021,11,199-207)に記載されたものと一致したことから、下記式(36)で表されるノナン-5-イルオクチルメタクリレートが得られていることが確認された。
収率は99%を超えていた。
【0137】
【化39】
【0138】
【化40】
【0139】
[比較例6]
(カルボン酸エステルの製造)
上記式(18)で表されるナトリウム(I)フェノキシド化合物の代わりに上記NaOAr-1を12.2mg(0.050mmol)用い、懸濁液を室温(25℃)で3時間撹拌したこと以外は実施例6と同様にして、比較例6の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMRおよびIRの測定データは、文献(ACS Catal.2021,11,199-207)に記載されたものと一致したことから、上記式(36)で表されるノナン-5-イルオクチルメタクリレートが得られていることが確認された。
収率は99%であった。
【0140】
実施例6と比較例6の比較から、実施例6は、比較例6よりも反応時間(懸濁液の撹拌時間)が短く、かつ収率が高く、上記式(18)で表されるナトリウム(I)フェノキシド化合物は、上記NaOAr-1よりも触媒活性が高いことが分かった。
【0141】
[実施例7]
(カルボン酸エステルの製造)
ベンジルアルコールの代わりに下記式(37)で表されるキニン、649mg(2.0mmol)を用い、懸濁液を室温(25℃)で3時間撹拌したこと以外は実施例1と同様にして、実施例7の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMRおよびIRの測定データは、文献(ACS Catal.2021,11,199-207)に記載されたものと一致したことから、下記式(38)で表されるキニンのメタクリル酸エステルが得られていることが確認された。
収率は99%を超えていた。
【0142】
【化41】
【0143】
【化42】
【0144】
[比較例7]
(カルボン酸エステルの製造)
上記式(18)で表されるナトリウム(I)フェノキシド化合物の代わりに上記NaOAr-1を12.2mg(0.050mmol)用い、懸濁液を室温(25℃)で6時間撹拌したこと以外は実施例7と同様にして、比較例7の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMRおよびIRの測定データは、文献(ACS Catal.2021,11,199-207)に記載されたものと一致したことから、上記式(38)で表されるキニンのメタクリル酸エステルが得られていることが確認された。
収率は99%を超えていた。
【0145】
実施例7と比較例7の比較から、実施例7は、比較例7よりも反応時間(懸濁液の撹拌時間)が短く、上記式(18)で表されるナトリウム(I)フェノキシド化合物は、上記NaOAr-1よりも触媒活性が高いことが分かった。
【0146】
[実施例8]
(カルボン酸エステルの製造)
ベンジルアルコールの代わりに下記式(39)で表されるゲラニオール、309mg(2.0mmol)を用い、懸濁液を室温(25℃)で10分間撹拌したこと以外は実施例1と同様にして、実施例8の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):1.60(s,3H)、1.68(s,3H)、1.72(s,3H)、1.94-1.96(m,3H)、2.03-2.14(m,4H)、4.67(d,J=7.3Hz,2H)、5.08(tm,J=6.9Hz,1H)、5.38(tm,J=6.9Hz,1H)、5.55(m,1H)、6.10(m,1H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):16.6、17.8、18.5、25.8、26.4、39.6、61.8、118.6、123.9、125.4、131.9、136.7、142.1、167.7。
IR(neat)2926、1719、1638、1451、1377、1313、1293、1162、1010cm-1
HRMS(DART+) calcd for C1423 [M+H] 223.1698、found 223.1696。
上記の測定データから、下記式(40)で表されるゲラニルメタクリレートが得られていることが確認された。
収率は99%を超えていた。
【0147】
【化43】
【0148】
【化44】
【0149】
[比較例8]
(カルボン酸エステルの製造)
上記式(18)で表されるナトリウム(I)フェノキシド化合物の代わりに上記NaOAr-1を12.2mg(0.050mmol)用い、懸濁液を室温(25℃)で1時間撹拌したこと以外は実施例8と同様にして、比較例8の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):1.60(s,3H)、1.68(s,3H)、1.72(s,3H)、1.94-1.96(m,3H)、2.03-2.14(m,4H)、4.67(d,J=7.3Hz,2H)、5.08(tm,J=6.9Hz,1H)、5.38(tm,J=6.9Hz,1H)、5.55(m,1H)、6.10(m,1H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):16.6、17.8、18.5、25.8、26.4、39.6、61.8、118.6、123.9、125.4、131.9、136.7、142.1、167.7。
IR(neat)2926、1719、1638、1451、1377、1313、1293、1162、1010cm-1
HRMS(DART+) calcd for C1423 [M+H] 223.1698、found 223.1696。
上記の測定データから、上記式(40)で表されるゲラニルメタクリレートが得られていることが確認された。
収率は99%を超えていた。
【0150】
実施例8と比較例8の比較から、実施例8は、比較例8よりも反応時間(懸濁液の撹拌時間)が短く、上記式(18)で表されるナトリウム(I)フェノキシド化合物は、上記NaOAr-1よりも触媒活性が高いことが分かった。
【0151】
[実施例9]
(カルボン酸エステルの製造)
ベンジルアルコールの代わりに下記式(41)で表される2,2,2-トリフルオロエタノールを200mg(2.0mmol)、上記式(18)で表されるナトリウム(I)フェノキシド化合物を24.8mg(0.050mmol)を用い、懸濁液を室温(25℃)で24時間撹拌したこと以外は実施例1と同様にして、実施例9の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMRおよびIRの測定データは、文献(ACS Catal.2021,11,199-207)に記載されたものと一致したことから、下記式(42)で表される2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレートが得られていることが確認された。
収率は93%であった。
【0152】
【化45】
【0153】
【化46】
【0154】
[比較例9]
(カルボン酸エステルの製造)
上記式(18)で表されるナトリウム(I)フェノキシド化合物の代わりに上記NaOAr-1を24.4mg(0.10mmol)用いたこと以外は実施例9と同様にして、比較例9の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMRおよびIRの測定データは、文献(ACS Catal.2021,11,199-207)に記載されたものと一致したことから、上記式(42)で表される2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレートが得られていることが確認された。
収率は88%であった。
【0155】
実施例9と比較例9の比較から、実施例9は、比較例9よりも収率が高く、上記式(18)で表されるナトリウム(I)フェノキシド化合物は、上記NaOAr-1よりも触媒活性が高いことが分かった。
【0156】
[実施例10]
(カルボン酸エステルの製造)
ベンジルアルコールの代わりに下記式(43)で表される1,4-ブタンジオール、180mg(2.0mmol)を用い、懸濁液を室温(25℃)で20分撹拌したこと以外は実施例1と同様にして、実施例10の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMRおよびIRの測定データは、文献(ACS Catal.2021,11,199-207)に記載されたものと一致したことから、下記式(44)で表されるブタン-1,4-ジイルビス(2-メチルアクリレート)が得られていることが確認された。
収率は99%を超えていた。
【0157】
【化47】
【0158】
【化48】
【0159】
[比較例10]
(カルボン酸エステルの製造)
上記式(18)で表されるナトリウム(I)フェノキシド化合物の代わりに上記NaOAr-1を12.2mg(0.050mmol)用い、懸濁液を室温(25℃)で1時間撹拌したこと以外は実施例10と同様にして、比較例10の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMRおよびIRの測定データは、文献(ACS Catal.2021,11,199-207)に記載されたものと一致したことから、上記式(44)で表されるブタン-1,4-ジイルビス(2-メチルアクリレート)が得られていることが確認された。
収率は99%を超えていた。
【0160】
実施例10と比較例10の比較から、実施例10は、比較例10よりも反応時間(懸濁液の撹拌時間)が短く、上記式(18)で表されるナトリウム(I)フェノキシド化合物は、上記NaOAr-1よりも触媒活性が高いことが分かった。
【0161】
[実施例11]
(カルボン酸エステルの製造)
ベンジルアルコールの代わりに下記式(45)で表される1,4-ベンゼンジメタノールを276mg(2.0mmol)、上記式(18)で表されるナトリウム(I)フェノキシド化合物を24.8mg(0.050mmol)を用い、懸濁液を室温(25℃)で2時間撹拌したこと以外は実施例1と同様にして、実施例11の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):1.97(s,6H)、5.20(s,4H)、5.59(m,2H)、6.16(s,2H)、7.38(s,4H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):18.5(2C)、66.2(2C)、126.1(2C)、128.4(4C)、136.2(2C)、136.3(2C)、167.3(2C)。
IR(KBr)2966、2931、1701、1635、1456、1373、1319、1295、1156cm-1
HRMS(FAB+) calcd for C1618NaO [M+Na]
297.1103、found 297.1099。
上記の測定データから、下記式(46)で表される1,4-フェニレンビス(メチレン)ビス(2-メタクリレート)が得られていることが確認された。
収率は99%を超えていた。
【0162】
【化49】
【0163】
【化50】
【0164】
[比較例11]
(カルボン酸エステルの製造)
上記式(18)で表されるナトリウム(I)フェノキシド化合物の代わりに上記NaOAr-1を24.4mg(0.10mmol)用い、懸濁液を室温(25℃)で5時間撹拌したこと以外は実施例11と同様にして、比較例11の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):1.97(s,6H)、5.20(s,4H)、5.59(m,2H)、6.16(s,2H)、7.38(s,4H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):18.5(2C)、66.2(2C)、126.1(2C)、128.4(4C)、136.2(2C)、136.3(2C)、167.3(2C)。
IR(KBr)2966、2931、1701、1635、1456、1373、1319、1295、1156cm-1
HRMS(FAB+) calcd for C1618NaO [M+Na]
297.1103、found 297.1099。
上記の測定データから、上記式(46)で表される1,4-フェニレンビス(メチレン)ビス(2-メタクリレート)が得られていることが確認された。
収率は99%を超えていた。
【0165】
実施例11と比較例11の比較から、実施例11は、比較例11よりも反応時間(懸濁液の撹拌時間)が短く、上記式(18)で表されるナトリウム(I)フェノキシド化合物は、上記NaOAr-1よりも触媒活性が高いことが分かった。
【0166】
[実施例12]
(カルボン酸エステルの製造)
ベンジルアルコールの代わりに下記式(47)で表されるトリエチレングリコール、300mg(2.0mmol)、上記式(18)で表されるナトリウム(I)フェノキシド化合物を24.8mg(0.050mmol)を用い、懸濁液を室温(25℃)で20分間撹拌したこと以外は実施例1と同様にして、実施例12の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMRおよびIRの測定データは、文献(ACS Catal.2021,11,199-207)に記載されたものと一致したことから、下記式(48)で表されるトリエチレングリコールジメタクリレートが得られていることが確認された。
収率は99%を超えていた。
【0167】
【化51】
【0168】
【化52】
【0169】
[比較例12]
(カルボン酸エステルの製造)
上記式(18)で表されるナトリウム(I)フェノキシド化合物の代わりに上記NaOAr-1を24.4mg(0.10mmol)用い、懸濁液を室温(25℃)で30分間撹拌したこと以外は実施例12と同様にして、比較例12の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMRおよびIRの測定データは、文献(ACS Catal.2021,11,199-207)に記載されたものと一致したことから、上記式(48)で表されるトリエチレングリコールジメタクリレートが得られていることが確認された。
収率は99%を超えていた。
【0170】
実施例12と比較例12の比較から、実施例12は、比較例12よりも反応時間(懸濁液の撹拌時間)が短く、上記式(18)で表されるナトリウム(I)フェノキシド化合物は、上記NaOAr-1よりも触媒活性が高いことが分かった。
【0171】
[実施例13]
(カルボン酸エステルの製造)
ベンジルアルコールの代わりに下記式(49)で表されるトリメチロールプロパン、268mg(2.0mmol)、上記式(18)で表されるナトリウム(I)フェノキシド化合物を24.8mg(0.050mmol)を用い、懸濁液を室温(25℃)で38時間撹拌したこと以外は実施例1と同様にして、実施例13の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):0.95(t,J=7.8Hz,3H)、1.58(q,J=7.8Hz,2H)、1.94(s,9H)、4.16(s,6H)、5.58(s,3H)、6.09(s,3H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):7.5、18.3(3C)、23.5、41.2、64.4(3C)、126.1(3C)、136.0(3C)、167.0(3C)。
IR(neat)2967、1724、1638、1455、1322、1294、1154cm-1
HRMS(FAB+) calcd for C1826NaO [M+Na]
361.1627、found 361.1623。
上記の測定データから、下記式(50)で表される2-エチル-2-((メタクリロイロキシ)メチル)プロパン-1,3-ジイルビス(2-メタクリレート)が得られていることが確認された。
収率は99%を超えていた。
【0172】
【化53】
【0173】
【化54】
【0174】
[比較例13]
(カルボン酸エステルの製造)
上記式(18)で表されるナトリウム(I)フェノキシド化合物の代わりに上記NaOAr-1を24.4mg(0.10mmol)用い、懸濁液を室温(25℃)で48時間撹拌したこと以外は実施例13と同様にして、比較例13の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):0.95(t,J=7.8Hz,3H)、1.58(q,J=7.8Hz,2H)、1.94(s,9H)、4.16(s,6H)、5.58(s,3H)、6.09(s,3H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):7.5、18.3(3C)、23.5、41.2、64.4(3C)、126.1(3C)、136.0(3C)、167.0(3C)。
IR(neat)2967、1724、1638、1455、1322、1294、1154cm-1
HRMS(FAB+) calcd for C1826NaO [M+Na]
361.1627、found 361.1623。
上記の測定データから、上記式(50)で表される2-エチル-2-((メタクリロイロキシ)メチル)プロパン-1,3-ジイルビス(2-メタクリレート)が得られていることが確認された。
収率は99%であった。
【0175】
実施例13と比較例13の比較から、実施例13は、比較例13よりも反応時間(懸濁液の撹拌時間)が短く、かつ収率が高く、上記式(18)で表されるナトリウム(I)フェノキシド化合物は、上記NaOAr-1よりも触媒活性が高いことが分かった。
【0176】
実施例1~実施例13の結果と比較例1~比較例13の結果とから、上記式(18)で表されるナトリウム(I)フェノキシド化合物は、上記NaOAr-1よりも触媒活性が高いことが分かった。
【0177】
[実施例14]
(カルボン酸エステルの製造)
フラスコに、乾燥処理済みのモレキュラーシーブ5Åを400mg、上記式(20)で表されるマグネシウム(II)フェノキシド化合物を47.5mg(0.10mmol)、アクリル酸メチル(以下、「MA」と略すこともある。)1.26mL(室温(25℃))(14mmol)、重合禁止剤としてビス(ジメチルジチオカルバミド酸)銅(II)1.2mg(0.0040mmol)および内部標準物質としてジメチルスルホン18.8mg(0.20mmol)を加え、その混合物を室温(25℃)で1分間撹拌した後、ベンジルアルコール(以下、「BnOH」と略すこともある。)0.206mL(2.0mmol)を加えて懸濁液を得た。
次いで、その懸濁液を室温(25℃)で20分間撹拌した。
反応の進行は薄層クロマトグラフィーによってモニタリングした。反応が終了したことを薄層クロマトグラフィーで確認した後、懸濁液の一部をサンプリングして、収率をH-NMR(CDCl)で求めたところ、99%を超えていた。
収率を求めるために用いたサンプルを懸濁液に戻して、得られた懸濁液をそのままシリカゲルカラム(移動相:ヘキサン・酢酸メチル)で精製し、実施例14の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):5.19(s,2H)、5.84(dd,J=10.4,1.6Hz,1H)、6.16(dd,J=17.4,10.5Hz,1H)、6.44(dd,J=17.2,1.4Hz,1H)、7.31-7.41(m,5H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):66.4、128.3(2C)、128.4(2C)、128.7(2C)、131.2、135.9、166.1。
IR(neat)3034、2954、1953、1725、1634、1455、1406、1295、1269、1186、1049cm-1
HRMS(FAB+) calcd for C1010 [M] 162.0681、found 162.0680。
上記の測定データから、下記式(51)で表されるベンジルアクリレートが得られていることが確認された。下記式(52)にアクリル酸メチルとベンジルアルコールのエステル交換反応によりベンジルアクリレートを合成する反応式を示す。
目的生成物の収率はシリカゲルカラムクロマトグラフィーで副生成物と分離した上で、電子天びんで質量を直接計量することにより目的生成物の収率を算出したところ99%を超えていた。
【0178】
【化55】
【0179】
【化56】
【0180】
[比較例14]
(カルボン酸エステルの製造)
上記式(20)で表されるマグネシウム(II)フェノキシド化合物の代わりに上記Mg(OAr)を46.3mg(0.10mmol)用い、懸濁液を室温(25℃)で1時間撹拌したこと以外は実施例14と同様にして、比較例14の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):5.19(s,2H)、5.84(dd,J=10.4,1.6Hz,1H)、6.16(dd,J=17.4,10.5Hz,1H)、6.44(dd,J=17.2,1.4Hz,1H)、7.31-7.41(m,5H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):66.4、128.3(2C)、128.4(2C)、128.7(2C)、131.2、135.9、166.1。
IR(neat)3034、2954、1953、1725、1634、1455、1406、1295、1269、1186、1049cm-1
HRMS(FAB+) calcd for C1010 [M] 162.0681、found 162.0680。
上記の測定データから、上記式(51)で表されるベンジルアクリレートが得られていることが確認された。
収率は99%を超えていた。
【0181】
実施例14と比較例14の比較から、実施例14は、比較例14よりも反応時間(懸濁液の撹拌時間)が短く、上記式(20)で表されるマグネシウム(II)フェノキシド化合物は、上記Mg(OAr)よりも触媒活性が高いことが分かった。
【0182】
[実施例15]
(カルボン酸エステルの製造)
ベンジルアルコールの代わりに下記式(53)で表される1-ドデカノール、373mg(2.0mmol)を用い、懸濁液を室温(25℃)で30分間撹拌したこと以外は実施例14と同様にして、実施例15の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):0.88(t,J=6.9Hz,3H)、1.24-1.42(m,18H)、1.63-1.70(m,2H)、1.95(s,3H)、4.14(t,J=6.9Hz,2H)、5.55(m,1H)、6.10(s,1H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):14.3、18.5、22.8、26.1、28.7、29.4、29.5、29.8(3C)、29.9、32.1、65.0、125.3、136.7、167.6。
IR(neat)2921、2854、1719、1638、1467、1321、1296、1165cm-1
HRMS(FAB+) calcd for C1631 [M+H] 255.2324、found 255.2324。
上記の測定データから、下記式(54)で表されるドデシルメタクリレートが得られていることが確認された。
収率は99%を超えていた。
【0183】
【化57】
【0184】
【化58】
【0185】
[比較例15]
(カルボン酸エステルの製造)
上記式(20)で表されるマグネシウム(II)フェノキシド化合物の代わりに上記Mg(OAr)を46.3mg(0.10mmol)用い、懸濁液を室温(25℃)で1時間撹拌したこと以外は実施例15と同様にして、比較例15の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):0.88(t,J=6.9Hz,3H)、1.24-1.42(m,18H)、1.63-1.70(m,2H)、1.95(s,3H)、4.14(t,J=6.9Hz,2H)、5.55(m,1H)、6.10(s,1H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):14.3、18.5、22.8、26.1、28.7、29.4、29.5、29.8(3C)、29.9、32.1、65.0、125.3、136.7、167.6。
IR(neat)2921、2854、1719、1638、1467、1321、1296、1165cm-1
HRMS(FAB+) calcd for C1631 [M+H] 255.2324、found 255.2324。
上記の測定データから、上記式(54)で表されるドデシルメタクリレートが得られていることが確認された。
収率は99%を超えていた。
【0186】
実施例15と比較例15の比較から、実施例15は、比較例15よりも反応時間(懸濁液の撹拌時間)が短く、上記式(20)で表されるマグネシウム(II)フェノキシド化合物は、上記Mg(OAr)よりも触媒活性が高いことが分かった。
【0187】
[実施例16]
(カルボン酸エステルの製造)
ベンジルアルコールの代わりに下記式(55)で表されるチオフェン-2-イルメタノール、228mg(2.0mmol)を用い、懸濁液を室温(25℃)で2時間撹拌したこと以外は実施例14と同様にして、実施例16の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):5.35(s,2H)、5.85(dd,J=10.6,1.4Hz,1H)、6.14(dd,J=17.4,10.5Hz,1H)、6.45(dd,J=17.4,1.4Hz,1H)、6.99(dd,J=5.0,3.2Hz,1H)、7.12(d,J=3.7Hz,1H)、7.33(dd,J=5.0,1.4Hz,1H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):60.7、126.9、127.0、128.2、128.4、131.5、137.9、165.9。
IR(neat)3108、2954、1725、1634、1441、1407、1295、1261、1183cm-1
HRMS(DART+) calcd for CS [M] 168.0245、found 168.0246。
上記の測定データから、下記式(56)で表されるチオフェン-2-イルメチルアクリレートが得られていることが確認された。
収率は99%を超えていた。
【0188】
【化59】
【0189】
【化60】
【0190】
[比較例16]
(カルボン酸エステルの製造)
上記式(20)で表されるマグネシウム(II)フェノキシド化合物の代わりに上記Mg(OAr)を46.3mg(0.10mmol)用い、懸濁液を室温(25℃)で3時間撹拌したこと以外は実施例16と同様にして、比較例16の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):5.35(s,2H)、5.85(dd,J=10.6,1.4Hz,1H)、6.14(dd,J=17.4,10.5Hz,1H)、6.45(dd,J=17.4,1.4Hz,1H)、6.99(dd,J=5.0,3.2Hz,1H)、7.12(d,J=3.7Hz,1H)、7.33(dd,J=5.0,1.4Hz,1H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):60.7、126.9、127.0、128.2、128.4、131.5、137.9、165.9。
IR(neat)3108、2954、1725、1634、1441、1407、1295、1261、1183cm-1
HRMS(DART+) calcd for CS [M] 168.0245、found 168.0246。
上記の測定データから、上記式(56)で表されるチオフェン-2-イルメチルアクリレートが得られていることが確認された。
収率は99%を超えていた。
【0191】
実施例16と比較例16の比較から、実施例16は、比較例16よりも反応時間(懸濁液の撹拌時間)が短く、上記式(20)で表されるマグネシウム(II)フェノキシド化合物は、上記Mg(OAr)よりも触媒活性が高いことが分かった。
【0192】
[実施例17]
(カルボン酸エステルの製造)
ベンジルアルコールの代わりに下記式(57)で表される(1R)-ミルテノール、304mg(2.0mmol)を用い、懸濁液を室温(25℃)で15時間撹拌したこと以外は実施例14と同様にして、実施例17の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMRおよびIRの測定データは、文献(ACS Catal.2021,11,199-207)に記載されたものと一致したことから、下記式(58)で表される(1R)-ミルテニルアクリレートが得られていることが確認された。
収率は99%を超えていた。
【0193】
【化61】
【0194】
【化62】
【0195】
[比較例17]
(カルボン酸エステルの製造)
上記式(20)で表されるマグネシウム(II)フェノキシド化合物の代わりに上記Mg(OAr)を46.3mg(0.10mmol)用い、懸濁液を室温(25℃)で24時間撹拌したこと以外は実施例17と同様にして、比較例17の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMRおよびIRの測定データは、文献(ACS Catal.2021,11,199-207)に記載されたものと一致したことから、上記式(58)で表される(1R)-ミルテニルアクリレートが得られていることが確認された。
収率は99%であった。
【0196】
実施例17と比較例17の比較から、実施例17は、比較例17よりも反応時間(懸濁液の撹拌時間)が短く、かつ収率が高く、上記式(20)で表されるマグネシウム(II)フェノキシド化合物は、上記Mg(OAr)よりも触媒活性が高いことが分かった。
【0197】
[実施例18]
(カルボン酸エステルの製造)
ベンジルアルコールの代わりに上記式(39)で表されるゲラニオール、309mg(2.0mmol)を用い、懸濁液を室温(25℃)で20分間撹拌したこと以外は実施例14と同様にして、実施例18の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):1.60(s,3H)、1.68(s,3H)、1.72(s,3H)、2.03-2.14(m,4H)、4.68(d,J=7.4Hz,2H)、5.08(m,1H)、5.38(m,1H)、5.82(dd,J=10.5,1.4Hz,1H)、6.13(dd,J=17.0,10.0Hz,1H)、6.41(dd,J=17.4,1.4Hz,1H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):16.6、17.8、25.8、26.4、39.7、61.6、118.3、123.8、128.7、130.7、132.0、142.5、166.4。
IR(neat)2968、2925、2857、1725、1636、1445、1407、1378、1294、1270、1184、1045cm-1
HRMS(DART+) calcd for C1423 [M+H] 223.1698、found 223.1696。
上記の測定データから、下記式(59)で表されるゲラニルアクリレートが得られていることが確認された。
収率は99%を超えていた。
【0198】
【化63】
【0199】
[比較例18]
(カルボン酸エステルの製造)
上記式(20)で表されるマグネシウム(II)フェノキシド化合物の代わりに上記Mg(OAr)を46.3mg(0.10mmol)用い、懸濁液を室温(25℃)で1時間撹拌したこと以外は実施例18と同様にして、比較例18の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):1.60(s,3H)、1.68(s,3H)、1.72(s,3H)、2.03-2.14(m,4H)、4.68(d,J=7.4Hz,2H)、5.08(m,1H)、5.38(m,1H)、5.82(dd,J=10.5,1.4Hz,1H)、6.13(dd,J=17.0,10.0Hz,1H)、6.41(dd,J=17.4,1.4Hz,1H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):16.6、17.8、25.8、26.4、39.7、61.6、118.3、123.8、128.7、130.7、132.0、142.5、166.4。
IR(neat)2968、2925、2857、1725、1636、1445、1407、1378、1294、1270、1184、1045cm-1
HRMS(DART+) calcd for C1423 [M+H] 223.1698、found 223.1696。
上記の測定データから、上記式(59)で表されるゲラニルアクリレートが得られていることが確認された。
収率は99%を超えていた。
【0200】
実施例18と比較例18の比較から、実施例18は、比較例18よりも反応時間(懸濁液の撹拌時間)が短く、上記式(20)で表されるマグネシウム(II)フェノキシド化合物は、上記Mg(OAr)よりも触媒活性が高いことが分かった。
【0201】
[実施例19]
(カルボン酸エステルの製造)
ベンジルアルコールの代わりに下記式(60)で表されるオキシラン-2-メタノール、148mg(2.0mmol)を用い、懸濁液を室温(25℃)で6時間撹拌したこと以外は実施例14と同様にして、実施例19の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMRおよびIRの測定データは、文献(ACS Catal.2021,11,199-207)に記載されたものと一致したことから、下記式(61)で表されるオキシラン-2-イルアクリレートが得られていることが確認された。
収率は15%であった。
【0202】
【化64】
【0203】
【化65】
【0204】
[実施例20]
(カルボン酸エステルの製造)
懸濁液を室温(25℃)で25時間撹拌したこと以外は実施例19と同様にして、実施例20の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMRおよびIRの測定データは、文献(ACS Catal.2021,11,199-207)に記載されたものと一致したことから、上記式(61)で表されるオキシラン-2-イルアクリレートが得られていることが確認された。
収率は33%であった。
【0205】
[比較例19]
(カルボン酸エステルの製造)
上記式(20)で表されるマグネシウム(II)フェノキシド化合物の代わりに上記Mg(OAr)を46.3mg(0.10mmol)用い、懸濁液を室温(25℃)で18時間撹拌したこと以外は実施例19と同様にして、比較例19の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMRおよびIRの測定データは、文献(ACS Catal.2021,11,199-207)に記載されたものと一致したことから、上記式(61)で表されるオキシラン-2-イルアクリレートが得られていることが確認された。
収率は8%であった。
【0206】
実施例19と比較例19の比較から、実施例19は、比較例19よりも反応時間(懸濁液の撹拌時間)が短く、かつ収率が高く、上記式(20)で表されるマグネシウム(II)フェノキシド化合物は、上記Mg(OAr)よりも触媒活性が高いことが分かった。また、実施例20と比較例19の比較から、実施例20は、比較例19よりも収率が高く、上記式(20)で表されるフェノキシド化合物は、上記Mg(OAr)よりも触媒活性が高いことが分かった。
【0207】
[実施例21]
(カルボン酸エステルの製造)
ベンジルアルコールの代わりに上記式(33)で表されるイソボルネオール、309mg(2.0mmol)を用い、懸濁液を室温(25℃)で11時間撹拌したこと以外は実施例14と同様にして、実施例21の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):0.85(d,J=3.2Hz,6H)、1.01(s,3H)、1.07-1.21(m,2H)、1.57(m,1H)、1.67-1.87(m,4H)、4.75(dd,J=7.3,3.7Hz,1H)、5.79(dd,J=10.5,1.4Hz,1H)、6.09(dd,J=17.4,10.5Hz,1H)、6.34(dd,J=17.4,1.4Hz,1H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):11.5、19.9、20.2、27.1、33.8、38.8、45.1、47.0、48.9、81.2、129.3、130.0、165.8。
IR(neat)2956、2879、1720、1636、1619、1455、1406、1390、1296、1199、1109cm-1
HRMS(ESI+) calcd for C1320NaO [M+Na]
231.1356、found 231.1353。
上記の測定データから、下記式(62)で表されるイソボルニルアクリレートが得られていることが確認された。
収率は99%を超えていた。
【0208】
【化66】
【0209】
[比較例20]
(カルボン酸エステルの製造)
上記式(20)で表されるマグネシウム(II)フェノキシド化合物の代わりに上記Mg(OAr)を46.3mg(0.10mmol)用いたこと以外は実施例21と同様にして、比較例20の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):0.85(d,J=3.2Hz,6H)、1.01(s,3H)、1.07-1.21(m,2H)、1.57(m,1H)、1.67-1.87(m,4H)、4.75(dd,J=7.3,3.7Hz,1H)、5.79(dd,J=10.5,1.4Hz,1H)、6.09(dd,J=17.4,10.5Hz,1H)、6.34(dd,J=17.4,1.4Hz,1H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):11.5、19.9、20.2、27.1、33.8、38.8、45.1、47.0、48.9、81.2、129.3、130.0、165.8。
IR(neat)2956、2879、1720、1636、1619、1455、1406、1390、1296、1199、1109cm-1
HRMS(ESI+) calcd for C1320NaO [M+Na]
231.1356、found 231.1353。
上記の測定データから、上記式(62)で表されるイソボルニルアクリレートが得られていることが確認された。
収率は72%であった。
【0210】
実施例21と比較例20の比較から、実施例21は、比較例20よりも収率が高く、上記式(20)で表されるマグネシウム(II)フェノキシド化合物は、上記Mg(OAr)よりも触媒活性が高いことが分かった。
【0211】
[実施例22]
(カルボン酸エステルの製造)
ベンジルアルコールの代わりに上記式(27)で表されるrel-(1R,2S,5R)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサノール、313mg(2.0mmol)を用い、懸濁液を室温(25℃)で24時間撹拌したこと以外は実施例14と同様にして、実施例22の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMRおよびIRの測定データは、文献(ACS Catal.2021,11,199-207)に記載されたものと一致したことから、下記式(63)で表されるアクリル酸メチルとrel-(1R,2S,5R)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサノールのエステルが得られていることが確認された。
収率は99%を超えていた。
【0212】
【化67】
【0213】
[比較例21]
(カルボン酸エステルの製造)
上記式(20)で表されるマグネシウム(II)フェノキシド化合物の代わりに上記Mg(OAr)を46.3mg(0.10mmol)用い、懸濁液を室温(25℃)で48時間撹拌したこと以外は実施例22と同様にして、比較例21の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMRおよびIRの測定データは、文献(ACS Catal.2021,11,199-207)に記載されたものと一致したことから、上記式(63)で表されるアクリル酸メチルとrel-(1R,2S,5R)-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサノールのエステルが得られていることが確認された。
収率は90%であった。
【0214】
実施例22と比較例21の比較から、実施例22は、比較例21よりも反応時間(懸濁液の撹拌時間)が短く、かつ収率が高く、上記式(20)で表されるマグネシウム(II)フェノキシド化合物は、上記Mg(OAr)よりも触媒活性が高いことが分かった。
【0215】
[実施例23]
(カルボン酸エステルの製造)
ベンジルアルコールの代わりに下記式(64)で表される1,6-ヘキサンジオール、236mg(2.0mmol)を用い、懸濁液を室温(25℃)で24時間撹拌したこと以外は実施例14と同様にして、実施例23の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):1.41-1.44(m,4H)、1.66-1.73(m,4H)、4.16(t,J=6.4Hz,4H)、5.82(dd,J=10.1,1.4Hz,2H)、6.12(dd,J=17.4,10.5Hz,2H)、6.40(dd,J=17.4,1.4Hz,2H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):25.7(2C)、28.6(2C)、64.6(2C)、128.6(2C)、130.7(2C)、166.4(2C)。
IR(neat)2941、2862、1718、1636、1620、1467、1409、1274、1197cm-1
HRMS(DART+) calcd for C1219 [M+H] 227.1283、found 227.1284。
上記の測定データから、下記式(65)で表されるヘキサン-1,6-ジイルジアクリレート(3r)が得られていることが確認された。
収率は99%を超えていた。
【0216】
【化68】
【0217】
【化69】
【0218】
[比較例22]
(カルボン酸エステルの製造)
上記式(20)で表されるマグネシウム(II)フェノキシド化合物の代わりに上記Mg(OAr)を46.3mg(0.10mmol)用い、懸濁液を室温(25℃)で48時間撹拌したこと以外は実施例23と同様にして、比較例22の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):1.41-1.44(m,4H)、1.66-1.73(m,4H)、4.16(t,J=6.4Hz,4H)、5.82(dd,J=10.1,1.4Hz,2H)、6.12(dd,J=17.4,10.5Hz,2H)、6.40(dd,J=17.4,1.4Hz,2H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):25.7(2C)、28.6(2C)、64.6(2C)、128.6(2C)、130.7(2C)、166.4(2C)。
IR(neat)2941、2862、1718、1636、1620、1467、1409、1274、1197cm-1
HRMS(DART+) calcd for C1219 [M+H] 227.1283、found 227.1284。
上記の測定データから、上記式(65)で表されるヘキサン-1,6-ジイルジアクリレート(3r)が得られていることが確認された。
収率は99%であった。
【0219】
実施例23と比較例22の比較から、実施例23は、比較例22よりも反応時間(懸濁液の撹拌時間)が短く、かつ収率が高く、上記式(20)で表されるマグネシウム(II)フェノキシド化合物は、上記Mg(OAr)よりも触媒活性が高いことが分かった。
【0220】
[実施例24]
(カルボン酸エステルの製造)
ベンジルアルコールの代わりに上記式(49)で表されるトリメチロールプロパン、240mg(2.0mmol)を用い、懸濁液を室温(25℃)で24時間撹拌したこと以外は実施例14と同様にして、実施例24の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):0.93(t,J=7.8Hz,3H)、1.56(q,J=6.8Hz,2H)、4.18(s,6H)、5.86(d,J=10.6Hz,3H)、6.11(dd,J=17.0,10.0Hz,3H)、6.41(d,J=17.4Hz,3H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):7.6、23.3、41.0、64.3(3C)、128.1(3C)、131.3(3C)、166.0(3C)。
IR(neat)2970、1725、1635、1619、1467、1408、1270、1182、1061cm-1
HRMS(DART+) calcd for C1521 [M+H] 297.1338、found 297.1340。
上記の測定データから、下記式(66)で表される2-((アクリロイロキシ)メチル)-2-エチルプロパン-1,3-ジイルジアクリレートが得られていることが確認された。
収率は90%であった。
【0221】
【化70】
【0222】
[比較例23]
(カルボン酸エステルの製造)
上記式(20)で表されるマグネシウム(II)フェノキシド化合物の代わりに上記Mg(OAr)を46.3mg(0.10mmol)用いたこと以外は実施例24と同様にして、比較例23の化合物を得た。
得られた化合物のH-NMR、13C-NMR、IRおよびHRMSの測定データを以下に示す。
H-NMRデータ(400MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):0.93(t,J=7.8Hz,3H)、1.56(q,J=6.8Hz,2H)、4.18(s,6H)、5.86(d,J=10.6Hz,3H)、6.11(dd,J=17.0,10.0Hz,3H)、6.41(d,J=17.4Hz,3H)。
13C-NMR(100MHz、溶媒:CDCl)δ(ppm):7.6、23.3、41.0、64.3(3C)、128.1(3C)、131.3(3C)、166.0(3C)。
IR(neat)2970、1725、1635、1619、1467、1408、1270、1182、1061cm-1
HRMS(DART+) calcd for C1521 [M+H] 297.1338、found 297.1340。
上記の測定データから、上記式(66)で表される2-((アクリロイロキシ)メチル)-2-エチルプロパン-1,3-ジイルジアクリレートが得られていることが確認された。
収率は71%であった。
【0223】
実施例24と比較例23の比較から、実施例24は、比較例23よりも収率が高く、上記式(20)で表されるマグネシウム(II)フェノキシド化合物は、上記Mg(OAr)よりも触媒活性が高いことが分かった。
【0224】
実施例14~実施例24の結果と比較例14~比較例23の結果とから、上記式(20)で表されるマグネシウム(II)フェノキシド化合物は、上記Mg(OAr)よりも触媒活性が高いことが分かった。
【0225】
[実施例25]
(カルボン酸エステルの製造)
フラスコに、乾燥処理済みのモレキュラーシーブ5Åを400mg、触媒製造例2で得られたフェノキシド化合物(以下、「触媒2」と略す。)を47.5mg(0.10mmol)、アクリル酸メチル1.26mL(室温(25℃))(14mmol)、重合禁止剤としてビス(ジメチルジチオカルバミド酸)銅(II)1.2mg(0.0040mmol)および内部標準物質としてジメチルスルホン18.8mg(0.20mmol)を加え、その混合物を室温(25℃)で1分間撹拌した後、イソボルネオール309mg(2.0mmol)を加えて懸濁液を得た。
次いで、その懸濁液を室温(25℃)で撹拌した。
反応の進行は薄層クロマトグラフィーによってモニタリングした。1時間毎に、懸濁液の一部をサンプリングして、収率をH-NMR(CDCl)で求めた。結果を図7および表1に示す。
【0226】
[実施例26]
(カルボン酸エステルの製造)
触媒2の代わりに3,3’,5,5’-テトラ-tert-ブチル-[1,1’ -ビフェニル]-2,2’ -ジオールとジ-n-ブチルマグネシウムから触媒製造例3で得られたマグネシウム(II)フェノキシド化合物(以下、「触媒3」と略す。)を43.2mg(0.10mmol)用いたこと以外は実施例25と同様にして、懸濁液を室温(25℃)で撹拌した。
反応の進行は薄層クロマトグラフィーによってモニタリングした。1時間毎に、懸濁液の一部をサンプリングして、収率をH-NMR(CDCl)で求めた。結果を図7および表1に示す。
【0227】
[比較例24]
(カルボン酸エステルの製造)
触媒2の代わりに触媒製造例5で得られたMg(OAr)(以下、「触媒5」と略す。)を46.3mg(0.10mmol)用いたこと以外は実施例25と同様にして、懸濁液を室温(25℃)で撹拌した。
反応の進行は薄層クロマトグラフィーによってモニタリングした。1時間毎に、懸濁液の一部をサンプリングして、収率をH-NMR(CDCl)で求めた。結果を図7および表1に示す。
【0228】
[比較例25]
(カルボン酸エステルの製造)
触媒2の代わりに触媒製造例6で得られたMg(OAr)(以下、「触媒6」と略す。)を46.3mg(0.10mmol)用いたこと以外は実施例25と同様にして、懸濁液を室温(25℃)で撹拌した。
反応の進行は薄層クロマトグラフィーによってモニタリングした。1時間毎に、懸濁液の一部をサンプリングして、収率をH-NMR(CDCl)で求めた。結果を図7および表1に示す。
【0229】
【表1】
【0230】
図7および表1に示す結果から、BuMgを用いて製造した触媒6は、Mg(OEt)を用いて製造した触媒5よりも触媒活性に優れることが分かった。
また、BuMgを用いて製造した触媒2は、BuMgを用いて製造した触媒6よりも触媒活性に優れ、8時間以内にエステル交換反応が完結した。一方、BuMgを用いて製造した触媒3は、触媒5や触媒6よりも触媒活性に劣ることが分かった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7