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特開2023-115732放熱構造形成用部材、電子装置の製造方法、及び、電子装置
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  • 特開-放熱構造形成用部材、電子装置の製造方法、及び、電子装置 図1
  • 特開-放熱構造形成用部材、電子装置の製造方法、及び、電子装置 図2
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  • 特開-放熱構造形成用部材、電子装置の製造方法、及び、電子装置 図10
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115732
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】放熱構造形成用部材、電子装置の製造方法、及び、電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/373 20060101AFI20230814BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20230814BHJP
【FI】
H01L23/36 M
H01L23/36 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018113
(22)【出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】大越 将司
(72)【発明者】
【氏名】高岩 寿行
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 由佳
(72)【発明者】
【氏名】赤井 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】高野 希
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 弘行
(72)【発明者】
【氏名】藤本 大輔
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BC05
5F136FA02
5F136FA03
5F136FA52
5F136FA62
5F136FA63
5F136FA67
5F136FA82
(57)【要約】
【課題】放熱構造を簡易な手段で形成することができる、放熱構造形成部材、電子装置の製造方法、及び、電子装置を提供する。
【解決手段】放熱構造形成用部材1は、熱伝導性粒子12及び接着剤組成物14を含む接着剤層10と、接着剤層10上に配置される金属箔層20と、を備える。電子装置100,200の製造方法は、放熱構造形成用部材1の接着剤層10に電子部品103,201が接するように、放熱構造形成用部材1及び電子部品103,201の少なくとも一方を配置する工程を備える。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性粒子及び接着剤組成物を含む接着剤層と、
前記接着剤層上に配置される金属箔層と、
を備える、放熱構造形成用部材。
【請求項2】
前記熱伝導性粒子を構成する材料の熱伝導率は、80W/m・K以上である、
請求項1に記載の放熱構造形成用部材。
【請求項3】
前記金属箔層の厚みは、1μm以上200μm以下である、
請求項1又は2に記載の放熱構造形成用部材。
【請求項4】
前記熱伝導性粒子の含有量は、前記熱伝導性粒子を除く前記接着剤層の全体積を基準として1体積%以上である、
請求項1~3の何れか一項に記載の放熱構造形成用部材。
【請求項5】
前記熱伝導性粒子は、第1平均粒径を有する第1熱伝導性粒子と、前記第1平均粒径よりも大きい第2平均粒径を有する第2熱伝導性粒子とを、含む、
請求項1~4の何れか一項に記載の放熱構造形成用部材。
【請求項6】
前記熱伝導性粒子は、尖形状の第1熱伝導性粒子と、略球形状の第2熱伝導性粒子と、を含む、
請求項1~5の何れか一項に記載の放熱構造形成用部材。
【請求項7】
前記接着剤層と前記金属箔層とが別体として設けられ、使用時に前記金属箔層に前記接着剤層が接着可能である、
請求項1~6の何れか一項に記載の放熱構造形成用部材。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載の放熱構造形成用部材の前記接着剤層に電子部品が接するように、前記放熱構造形成用部材及び前記電子部品の少なくとも一方を配置する工程を備える、電子装置の製造方法。
【請求項9】
前記放熱構造形成用部材の前記接着剤層に前記電子部品が接した後、前記放熱構造形成用部材に対して加熱及び加圧の少なくとも一方を行う工程を更に備える、
請求項8に記載の電子装置の製造方法。
【請求項10】
前記接着剤層が加圧された場合に、加圧された後の前記接着剤層の厚みが前記熱伝導性粒子の平均粒径よりも薄くなる、
請求項9に記載の電子装置の製造方法。
【請求項11】
基材に前記電子部品を実装する工程を更に備え、
前記配置する工程では、前記基材に実装された前記電子部品の上に前記放熱構造形成用部材を配置する、
請求項8~10の何れか一項に記載の電子装置の製造方法。
【請求項12】
前記放熱構造形成用部材の前記金属箔層の上に少なくとも一つの絶縁層を形成する工程を更に備え、
前記形成する工程では、前記放熱構造形成用部材の前記金属箔層が当該電子装置の側面から露出するように前記絶縁層を形成する、
請求項11に記載の電子装置の製造方法。
【請求項13】
前記配置する工程では、前記電子部品の接続端子とは逆側の面が前記接着剤層に接着されるように、前記放熱構造形成用部材の上に前記電子部品を配置し、
前記放熱構造形成用部材の上に配置された前記電子部品を絶縁材料で封止する工程を更に備える、
請求項9又は10に記載の電子装置の製造方法。
【請求項14】
前記電子部品の前記接続端子に接続される導体部を含む再配線層を形成する工程を更に備える、
請求項13に記載の電子装置の製造方法。
【請求項15】
請求項1~7の何れか一項に記載の放熱構造形成用部材と、
前記放熱構造形成用部材の前記接着剤層に接するように配置された電子部品と、
を備える、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放熱構造形成用部材、電子装置の製造方法、及び、電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップ等の電子部品を含む電子装置では、半導体チップ等の電子部品が発熱することがあり、電子部品と放熱部材とを熱的に接続する放熱構造が設けられている。特許文献1には、このような放熱構造を、電子装置である半導体装置に設ける方法の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-009505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体装置等の電子装置に放熱構造を設ける場合、電子装置における層構造を構成する樹脂フィルム等に熱伝導体を通すための加工が必要になり、製造プロセスが煩雑化してしまうことがある。そこで、より簡素化された製造プロセスで放熱構造を設けることができる、電子装置の製造方法が望まれている。
【0005】
本開示は、放熱構造を簡易な手段で形成することができる、放熱構造形成部材、電子装置の製造方法、及び、電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、一側面として、放熱構造形成用部材に関する。この放熱構造形成用部材は、熱伝導性粒子及び接着剤組成物を含む接着剤層と、接着剤層上に配置される金属箔層と、を備える。
【0007】
この放熱構造形成用部材は、熱伝導性粒子を含む接着剤層と、接着剤材層上に配置される金属箔層とを備えており、この金属箔層を放熱部材として用いることができるように構成されている。この放熱構造形成用部材を用いて、放熱対象の電子部品(例えば、発熱する半導体チップ等の電子部品)に接着剤層を貼り付けて当該発熱部品と金属箔層とを熱的に接続することで、放熱構造を容易に形成することができる。即ち、この放熱構造形成用部材によれば、放熱構造を簡易な手段で形成することができる。
【0008】
上記の放熱構造形成用部材において、熱伝導性粒子を構成する材料の熱伝導率は、80W/m・K以上であることが好ましい。この場合、放熱対象の部品からの熱を放熱部材である金属箔層に効率的に伝えることができ、放熱性能を向上することが可能となる。
【0009】
上記の放熱構造形成用部材において、金属箔層の厚みは、1μm以上200μm以下であることが好ましい。この場合、金属箔層の平面方向における外側領域まで熱を伝えやすくなり、放熱性能を向上することが可能となる。
【0010】
上記の放熱構造形成用部材において、熱伝導性粒子の含有量は、熱伝導性粒子を除く接着剤層の全体積を基準として1体積%以上であることが好ましい。この場合、放熱対象の部品からの熱を放熱部材である金属箔層に確実に伝えることができ、放熱性能を向上することが可能となる。
【0011】
上記の放熱構造形成用部材において、熱伝導性粒子は、第1平均粒径を有する第1熱伝導性粒子と、第1平均粒径よりも大きい第2平均粒径を有する第2熱伝導性粒子とを、含んでもよい。この場合、放熱構造形成用部材を設置する放熱対象の部品等の平坦度が低くとも、何れかの熱伝導性粒子によって金属箔層を放熱対象の部品に接続することができ、放熱対象の部品と放熱部材である金属箔層とをより確実に熱的に接続することができる。これにより、放熱性能を向上することができる。ここで用いる平均粒径は、任意の粒子300個(pcs)について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により粒径の測定を行い、得られた粒径の平均値である。なお、粒子が突起を有する場合等、粒子の形状が球形ではない場合、粒子の粒径は、SEMの画像における粒子に外接する円の直径とする。以下も同様である。
【0012】
上記の放熱構造形成用部材において、熱伝導性粒子は、尖形状の第1熱伝導性粒子と、略球形状の第2熱伝導性粒子と、を含んでもよい。放熱対象の電子部品の表面には被膜(例えば酸化被膜)等が形成されてしまうことがある。このような場合であっても、熱伝導性粒子が尖形状の粒子を含んでいることにより、かかる被膜を貫通して、放熱対象の部品と放熱部材である金属箔層とをより確実に熱的に接続することができる。これにより、放熱性能を向上することができる。また、被膜等を貫通しやすくなることから、放熱構造形成用部材で放熱構造を形成する場合、当該部材又は放熱対象の電子部品等を加圧する際の圧力を低くすることができる。これにより、放熱構造形成用部材を用いた製造される電子装置等において、圧力が強すぎることによる不具合を低減することが可能となる。
【0013】
上記の放熱構造形成用部材において、接着剤層と金属箔層とが別体として設けられ、使用時に金属箔層に接着剤層が接着可能であってもよい。この場合、接着剤層と金属箔層とを別々に用意することができるため、熱伝導性粒子、接着剤組成物、又は、金属箔層において、より最適な材料構成を選択することができる。
【0014】
本開示は、別の側面として、電子装置の製造方法に関する。この電子装置の製造方法は、上述した何れかの態様の放熱構造形成用部材の接着剤層に電子部品が接するように、放熱構造形成用部材及び電子部品の少なくとも一方を配置する工程を備える。
【0015】
この電子部品の製造方法は、熱伝導性粒子を含む接着剤層と接着剤層上に配置される金属箔層とを備えた放熱構造形成用部材を用いて、電子部品を製造している。そして、放熱対象の電子部品(例えば、発熱する半導体チップ等の電子部品)に接着剤層を接するように配置して、放熱構造を形成している。よって、この電子部品の製造方法によれば、放熱構造を簡易な手段で形成することができる。
【0016】
上記の電子部品の製造方法は、放熱構造形成用部材の接着剤層に電子部品が接した後、放熱構造形成用部材に対して加熱及び加圧の少なくとも一方を行う工程を更に備えることが好ましい。加圧される場合、接着剤層中の熱伝導性粒子が潰され、これにより、電子部品と金属箔層との熱的な接続を熱伝導性粒子によって確実に行うことが可能となる。また、加熱される場合、接着剤層の接着剤組成物が熱硬化性の樹脂組成物等であると、より確実に硬化させることができる。
【0017】
上記の電子部品の製造方法において、接着剤層が加圧された場合に、加圧された後の接着剤層の厚みが熱伝導性粒子の平均粒径よりも薄くなってもよい。この場合、放熱対象の電子部品からの熱を、接着剤層よりも大きい径を有する熱伝導性粒子を介して金属箔層により確実に伝えることができ、放熱性能を向上させることが可能となる。
【0018】
上記の電子部品の製造方法は、基材に電子部品を実装する工程を更に備えてもよく、配置する工程では、基材に実装された第1電子部品の上に放熱構造形成用部材を配置してもよい。この場合において、上記の電子部品の製造方法は、放熱構造形成用部材の金属箔層の上に少なくとも一つの絶縁層を形成する工程を更に備えてもよく、形成する工程では、放熱構造形成用部材の金属箔層が当該電子装置の側面から露出するように絶縁層を形成する。これにより、電子部品が多層構造であっても、放熱部材である金属箔層が側面から露出するため、放熱機能を奏することが可能となる。
【0019】
上記の電子部品の製造方法において、配置する工程では、電子部品の接続端子とは逆側の面が接着剤層に接着されるように、放熱構造形成用部材の上に電子部品を配置してもよく、当該方法は、放熱構造形成用部材の上に配置された電子部品を絶縁材料で封止する工程を更に備えてもよい。この場合において、当該方法は、電子部品の接続端子に接続される導体部を含む再配線層を形成する工程を更に備えてもよい。
【0020】
本開示は、更に別の側面として、電子装置に関する。この電子装置は、上述した何れかの態様の放熱構造形成用部材と、放熱構造形成用部材の接着剤層に接するように配置された電子部品と、を備える。
【発明の効果】
【0021】
本開示によれば、放熱構造を簡易な手段で提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、放熱構造形成用部材の一実施形態を示す断面図である。
図2図2の(a)~(d)は、図1に示す放熱構造形成用部材を用いて電子装置を製造する方法を順に説明するための図である。
図3図3の(a)~(c)は、図2の(d)に続いて、電子装置を製造する方法を順に説明するための図である。
図4図4は、図2の(d)で貼り付けた放熱構造形成用部材を加熱及び加圧した状態を示す断面図である。
図5図5は、図2及び図3で示した方法で製造される電子装置を示す断面図である。
図6図6の(a)~(c)は、図1に示す放熱構造形成用部材を用いて別の電子装置を製造する方法を順に説明するための図である。
図7図7は、図6で示した方法で製造される電子装置を示す断面図である。
図8図8は、放熱構造形成用部材の変形例を示す断面図である。
図9図9は、図8に示す放熱構造形成用部材に用いられる粒子を説明する図である。
図10図10は、図8に示す放熱構造形成用部材を加圧した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態について詳細に説明する。以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。なお、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0024】
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。数値範囲「A~B」という表記においては、両端の数値A及びBがそれぞれ下限値及び上限値として数値範囲に含まれる。本明細書において、例えば、「10以上」という記載は、「10」と「10を超える数値」とを意味し、数値が異なる場合もこれに準ずる。また、例えば、「10以下」という記載は、「10」と「10未満の数値」とを意味し、数値が異なる場合もこれに準ずる。
【0025】
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート、及び、それに対応するメタクリレートの少なくとも一方を意味する。「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル酸」等の他の類似の表現においても同様である。また、「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。また、以下で例示する材料は、特に断らない限り、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0026】
一実施形態に係る放熱構造形成用部材は、熱伝導性粒子及び接着剤組成物を含む接着剤層と、前記接着剤層上に配置される金属箔層と、を備える。前記熱伝導性粒子を構成する材料の熱伝導率は、80W/m・K以上であってもよい。前記金属箔層の厚みは、1μm以上200μm以下であってもよい。前記熱伝導性粒子の含有量は、前記熱伝導性粒子を除く前記接着剤層の全体積を基準として1体積%以上であってもよい。前記熱伝導性粒子は、第1平均粒径を有する第1熱伝導性粒子と、前記第1平均粒径よりも大きい第2平均粒径を有する第2熱伝導性粒子とを、含んでもよい。前記熱伝導性粒子は、尖形状の第1熱伝導性粒子と、球状の第2熱伝導性粒子と、を含んでもよい。前記接着剤層と前記金属箔層とが別体として設けられ、使用時に前記金属箔層に前記接着剤層が接着可能であってもよい。
【0027】
一実施形態に係る電子装置の製造方法は、上述した何れかの態様を備える放熱構造形成用部材の前記接着剤層に電子部品が接するように、前記放熱構造形成用部材及び前記電子部品の少なくとも一方を配置する工程を備える。前記電子装置の製造方法は、前記放熱構造形成用部材の前記接着剤層に前記電子部品が接した後、前記放熱構造形成用部材に対して加熱及び加圧の少なくとも一方を行う工程を更に備えてもよい。前記接着剤層が加圧された場合に、加圧された後の前記接着剤層の厚みが前記熱伝導性粒子の平均粒径よりも薄くなってもよい。前記電子装置の製造方法は、基材に前記電子部品を実装する工程を更に備えてもよく、前記配置する工程では、前記基材に実装された前記第1電子部品の上に前記放熱構造形成用部材を配置してもよい。前記電子装置の製造方法は、前記放熱構造形成用部材の前記金属箔層の上に少なくとも一つの絶縁層を形成する工程を更に備えてもよく、前記形成する工程では、前記放熱構造形成用部材の前記金属箔層が当該電子装置の側面から露出するように前記絶縁層を形成してもよい。また、前記配置する工程では、前記電子部品の接続端子とは逆側の面が前記接着剤層に接着されるように、前記放熱構造形成用部材の上に前記電子部品を配置してもよく、前記電子装置の製造方法は、前記放熱構造形成用部材の上に配置された前記電子部品を絶縁材料で封止する工程を更に備えてもよい。前記電子装置の製造方法は、前記電子部品の前記接続端子に接続される導体部を備えた再配線層を形成する工程を更に備えてもよい。
【0028】
一実施形態に係る半導体装置は、上述した何れかの態様を備える放熱構造形成用部材と、前記放熱構造形成用部材の前記接着剤層に接するように配置された電子部品と、を備える。
【0029】
図1は、放熱構造形成用部材の一実施形態を示す断面図である。図1に示すように、放熱構造形成用部材1(以下「放熱用部材1」と略す)は、接着剤層10、金属箔層20、及び、保持フィルム30を備えて構成される。放熱用部材1は、電子装置100(図5を参照)又は電子装置200(図7を参照)の放熱構造体を形成するための部材として使用される。放熱用部材1を用いた電子装置100,200の製造方法の詳細については後述する。なお、放熱用部材1は、保持フィルム30を備えない構成であってもよい。
【0030】
接着剤層10は、複数の熱伝導性粒子12及び接着剤組成物14を含んで構成される。より具体的には、接着剤層10において、複数の熱伝導性粒子12が接着剤組成物14内に分散するように含まれている。接着剤層10は、例えば1μm以上100μm以下の厚みを有している。接着剤層10の接着剤組成物14は、熱伝導性粒子12以外の固形分として定義される。接着剤組成物14は、放熱用部材1による電子装置100,200の製造が行われる前においては、表面を乾燥させたBステージ状態、すなわち半硬化状態であってもよい。接着剤層の厚さは、以下の方法により測定することができる。まず、放熱用部材1を2枚のガラス(厚み:1mm程度)で挟み込む。次いで、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名:JER811、三菱ケミカル株式会社製)100gと、硬化剤(商品名:エポマウント硬化剤、リファインテック株式会社製)10gとからなる樹脂組成物で注型する。その後、研磨機を用いて断面研磨を行い、走査型電子顕微鏡(SEM、商品名:SE-8020、株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて接着剤層の厚さを測定する。また、後述する金属箔層の厚みも同様の方法で測定する。
【0031】
[熱伝導性粒子の構成]
熱伝導性粒子12は、熱伝導性を有する略球形状の粒子であり、Au、Ag、Ni、Cu、Fe、Co、Mo、Zn、はんだ等の金属で構成された金属粒子、又は、カーボンで構成されたカーボン粒子などから構成される。熱伝導性粒子12は、放熱対象の電子部品からの熱を金属箔層20に効率的に伝える観点から、例えば80W/m・K以上の熱伝導率を有する材料から構成される。熱伝導性粒子12を構成する材料の熱伝導率は、好ましくは200W/m・K以上であり、より好ましくは400W/m・K以上である。ここで規定する熱伝導率は、室温での値である。熱伝導性粒子12は、ガラス、セラミック、プラスチック(ポリスチレン等)などを含むコアと、上記金属又はカーボンを含み、コアを被覆する被覆層とを備える熱伝導性粒子であってもよい。熱伝導性粒子12は、これらの中でも、熱溶融性の金属で形成された金属粒子、又はプラスチックを含むコアと、金属又はカーボンを含み、コアを被覆する被覆層とを備える熱伝導性粒子であってもよい。
【0032】
熱伝導性粒子12は、一実施形態において、ポリスチレン等のポリマー粒子(プラスチック粒子)からなるコアと、コアを被覆する金属層とを含む。ポリマー粒子は、好ましくはその表面の実質的に全体が金属層で被覆されているが、接続材料としての機能が維持される範囲で、ポリマー粒子の表面の一部が金属層で被覆されずに露出していてもよい。ポリマー粒子は、例えば、スチレン及びジビニルベンゼンから選ばれる少なくとも1種のモノマーをモノマー単位として含む重合体を含む粒子であってもよい。
【0033】
金属層は、Ni、Ni/Au、Ni/Pd、Cu、NiB、Pd、Ag、Au、Ru等の各種の金属により形成されていてもよい。金属層は、NiとAuとの合金、NiとPdとの合金等からなる合金層であってよい。金属層は、複数の金属層からなる多層構造であってよい。例えば、金属層は、Ni層とAu層とからなっていてもよい。金属層は、めっき、蒸着、スパッタ、はんだ等で作製されてもよい。金属層は薄膜(例えば、めっき、蒸着、スパッタ等で形成される薄膜)であってもよい。熱伝導性粒子12にはんだを利用した場合、または複層構造の最外層にはんだを利用した場合、放熱用部材1を金属箔層20に熔融接合し、合金化による安定した接続を得ることができる。はんだとしては、スズまたはスズ合金を含むものが利用できる。スズ合金としては、例えば、In-Sn合金、In-Sn-Ag合金、Sn-Au合金、Sn-Bi合金、Sn-Bi-Ag合金、Sn-Ag-Cu合金、Sn-Cu合金等を用いることができる。
【0034】
絶縁性向上の観点から、熱伝導性粒子12は、絶縁層を有していてもよい。具体的には、例えば、コア(例えばポリマー粒子)と、コアを被覆する金属層等の被覆層とを含む熱伝導性粒子における被覆層の外側に、被覆層を更に覆う絶縁層が設けられていてもよい。絶縁層は熱伝導性粒子の最表面に位置する最表面層であってよい。絶縁層は、シリカ、アクリル樹脂等の絶縁性材料から形成された層であってよい。熱伝導性粒子12が絶縁層を有することにより、電子装置内に放熱用部材1が配置された場合に不要な又は意図しない導通等を引き起こすことを防止することができる。なお、熱伝導性粒子12は、絶縁層を有しない構成であってもよい。また、絶縁層の代わりに絶縁性の粒子を配置してもよい。絶縁性の粒子は、シリカ、アクリル樹脂等の絶縁性材料から形成されてもよい。
【0035】
熱伝導性粒子12の平均粒径Dpは、分散性及び熱伝導性に優れる観点から、1μm以上であってよく、2μm以上であってよく、5μm以上であってよい。熱伝導性粒子の平均粒径Dpは、分散性及び熱伝導性に優れる観点から、100μm以下であってよく、50μm以下であってよく、30μm以下であってよく、20μm以下であってよい。上記観点から、熱伝導性粒子12の平均粒径Dpは、1μm以上100μm以下であってよく、5μm以上50μm以下であってよく、5μm以上30μm以下であってよく、5μm以上20μm以下であってよい。
【0036】
熱伝導性粒子12の最大粒径は、分散性及び熱伝導性に優れる観点から、1μm以上であってもよく、2μm以上であってもよく、5μm以上であってもよい。熱伝導性粒子12の最大粒径は、分散性及び熱伝導性に優れる観点から、100μm以下であってもよく、50μm以下であってもよく、30μm以下であってもよく、20μm以下であってもよい。上記観点から、熱伝導性粒子12の最大粒径は、1μm以上50μm以下であってもよく、2μm以上30μm以下であってもよく、5μm以上20μm以下であってもよい。
【0037】
熱伝導性粒子12の平均粒径Dpは、接着剤層10の厚みより大きくてもよい。この場合、熱伝導性粒子12の一部が金属箔層20の反対側に位置する接着剤層10の表面から露出する、又は、金属箔層20の反対側に位置する接着剤層10の表面が、熱伝導性粒子12の存在する部分だけ熱伝導性粒子12の形態に追従して、凸形状を有する。この構成によれば、後述する放熱構造の形成において、熱伝導性粒子12を用いて金属箔層20を放熱部材とする際に、熱伝導性粒子12を適切に潰す等して、より良好な放熱構造を形成することができる。また、熱伝導性粒子12は、第1平均粒径を有する第1熱伝導性粒子と、第1平均粒径よりも大きい第2平均粒径を有する第2熱伝導性粒子とを含んで構成されてもよい。言い換えると、粒径の異なる熱伝導性粒子12が接着剤組成物14に含まれる形態であってもよい。異なる粒径は、2種類以上、例えば3種類、4種類等であってもよい。この場合、電子装置100を製造する際、放熱用部材1を設置する部分(例えば電子部品の表面)の平坦度が低くとも、何れかの熱伝導性粒子によって金属箔層20を放熱対象の電子部品に接続でき、放熱構造を安定的に形成することが可能となる。
【0038】
本明細書では、任意の粒子300個(pcs)について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により粒径の測定を行い、得られた粒径の平均値を平均粒径Dpとし、得られた最も大きい値を粒子の最大粒径とする。なお、粒子が突起を有する場合等(図8及び図9等を参照)、粒子の形状が球形ではない場合、粒子の粒径は、SEMの画像における粒子に外接する円の直径とする。
【0039】
熱伝導性粒子12の含有量は、接続する電極の精細度等に応じて決められる。例えば、熱伝導性粒子12の配合量は、特に制限は受けないが、熱伝導性粒子を除く接着剤層の全体積を基準として、1体積%以上が好ましく、2体積%以上がより好ましい。上記配合量が1体積%以上であると、熱伝導性を高くすることができる。熱伝導性粒子12の配合量は、熱伝導性粒子を除く接着剤層の全体積を基準として、80体積%以下であってもよく、60体積%以下であってもよく、30体積%以下であってもよく、10体積%以下であってもよい。なお、「体積%」は23℃の硬化前の各成分の体積をもとに決定されるが、各成分の体積は、比重を利用して重量から体積に換算することができる。また、メスシリンダー等にその成分を溶解したり膨潤させたりせず、その成分をよくぬらす適当な溶媒(水、アルコール等)を入れたものに、その成分を投入し増加した体積をその成分の体積として求めることもできる。
【0040】
[接着剤層/接着剤組成物の構成]
接着剤層10を構成する接着剤組成物14は、硬化剤、モノマー、及びフィルム形成材を含有している。エポキシ樹脂モノマーを用いる場合は、硬化剤として、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素-アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド等を用いることができる。硬化剤をポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化したり、イソシアネートでマスクすると、可使時間が延長されるため、好適である。一方、アクリルモノマーを用いる場合は、硬化剤として、過酸化化合物、アゾ系化合物等の加熱により分解して遊離ラジカルを発生するものを用いることができる。
【0041】
エポキシモノマーを用いた場合の硬化剤は、目的とする接続温度、接続時間、保存安定性等により適宜選定される。硬化剤は、高反応性の点から、エポキシ樹脂組成物とのゲルタイムが所定の温度で10秒以内であることが好ましく、保存安定性の点から、40℃で10日間恒温槽に保管後にエポキシ樹脂組成物とのゲルタイムに変化がないことが好ましい。このような点から、硬化剤は、スルホニウム塩系、マイクロカプセル化したイミダゾール系硬化剤、イソシアネートマスクイミダゾール系であることが好ましい。
【0042】
アクリルモノマーを用いた場合の硬化剤は、目的とする接続温度、接続時間、保存安定性等により適宜選定される。高反応性と保存安定性の点から、半減期10時間の温度が40℃以上かつ半減期1分の温度が180℃以下の有機過酸化物又はアゾ系化合物が好ましく、半減期10時間の温度が60℃以上かつ半減期1分の温度が170℃以下の有機過酸化物又はアゾ系化合物がより好ましい。これらの硬化剤は、単独または混合して使用することができ、分解促進剤、抑制剤等を混合して用いてもよい。
【0043】
エポキシモノマー及びアクリルモノマーのいずれを用いた場合においても、接続時間を10秒以下とした場合、十分な反応率を得るために、硬化剤の配合量は、後述のモノマーと後述のフィルム形成材との合計100質量部に対して、0.1質量部以上40質量部以下とすることが好ましく、1質量部以上35質量部以下とすることがより好ましい。硬化剤の配合量が0.1質量部未満では、十分な反応率を得ることができず、良好な接着強度や小さな接続抵抗が得られにくくなる傾向にある。一方、硬化剤の配合量が40質量部を超えると、接着剤の流動性が低下したり、接続抵抗が上昇したり、接着剤の保存安定性が低下する傾向にある。
【0044】
また、モノマーとしては、エポキシ樹脂モノマーを用いる場合は、エピクロルヒドリンとビスフェノールAやビスフェノールF、ビスフェノールAD等から誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンとフェノールノボラックやクレゾールノボラックから誘導されるエポキシノボラック樹脂やグリシジルアミン、グリシジルエーテル、ビフェニル、脂環式等の1分子内に2個以上のグリシジル基を有する各種のエポキシ化合物等を用いることができる。
【0045】
アクリルモノマーを用いる場合は、ラジカル重合性化合物は、ラジカルにより重合する官能基を有する物質であることが好ましい。係るラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリレート、マレイミド化合物、スチレン誘導体等が挙げられる。また、ラジカル重合性化合物は、モノマー又はオリゴマーのいずれの状態でも使用することができ、モノマーとオリゴマーとを混合して使用してもよい。これらのモノマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0046】
フィルム形成材は、上記の硬化剤及びモノマーを含む粘度の低い組成物の取り扱いを容易にする作用を有するポリマーである。フィルム形成材を用いることによって、フィルムが容易に裂けたり、割れたり、べたついたりすることを抑制し、取り扱いが容易な接着剤層10が得られる。
【0047】
フィルム形成材としては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂が好適に用いられ、フェノキシ樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、キシレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ポリビスマレイミド樹脂等が挙げられる。さらに、これらのポリマー中には、シロキサン結合又はフッ素置換基が含まれていてもよい。これらの樹脂は、単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。上記の樹脂の中でも、接着強度、相溶性、耐熱性、及び機械強度の観点から、フェノキシ樹脂を用いることが好ましい。特に、エポキシモノマーを用いた場合、フィルム成形材としてポリビスマレイミド材を用いると、より強固な硬化物が得られるため、耐熱性又は機械強度の観点から好ましい。
【0048】
フィルム形成材の分子量が大きいほどフィルム形成性が容易に得られ、また、フィルムの流動性に影響する溶融粘度を広範囲に設定できる。フィルム形成材の分子量は、重量平均分子量で5000以上150000以下であることが好ましく、10000以上80000以下であることが特に好ましい。重量平均分子量を5000以上とすることで良好なフィルム形成性が得られやすく、150000以下とすることで他の成分との良好な相溶性が得られやすい。
【0049】
なお、本実施形態において、重量平均分子量は、下記の条件に従って、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)より標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定した値をいう。
(測定条件)
装置:東ソー株式会社製 GPC-8020
検出器:東ソー株式会社製 RI-8020
カラム:昭和電工マテリアルズ株式会社製 Gelpack GLA160S+GLA150S
試料濃度:120mg/3mL
溶媒:テトラヒドロフラン
注入量:60μL
圧力:2.94×106Pa(30kgf/cm
流量:1.00mL/min
【0050】
また、フィルム形成材の含有量は、硬化剤、モノマー、及びフィルム形成材の総量を基準として5重量%以上80重量%以下であることが好ましく、15重量%以上70重量%以下であることがより好ましい。5重量%以上とすることで良好なフィルム形成性が得られやすく、また、80重量%以下とすることで硬化性組成物が良好な流動性を示す傾向にある。また、接着剤層10を形成する接着剤組成物14は、充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、カップリング剤及びフェノール樹脂やメラミン樹脂、イソシアネート類等を更に含有していてもよい。
【0051】
充填剤を含有する場合、接続信頼性の向上が更に期待できる。充填剤の最大径は、熱伝導性粒子12の粒径未満であることが好ましく、充填剤の含有量は、接着剤層100体積部に対して5体積部以上60体積部以下であることが好ましい。充填剤の含有量が、5体積部以上50体積部以下であると、良好な接続信頼性が得られる傾向にある。
【0052】
[金属箔層の構成]
金属箔層20は、例えば銅箔、アルミ箔、ニッケル箔、ステンレス、チタン、又は、白金等から形成される。金属箔層20は、例えば、1μm以上200μm以下の厚みを有しており、10μm以上20μm以下の厚みを有してもよく、100μm以上200μm以下の厚みを有してもよい。金属箔層20の厚さは、3μm以上であってもよく、100μm以下であってもよく、25μm以下であってもよく、18μm以下であってもよい。金属箔層20の厚みが1μm以上200μm以下であることにより、金属箔層20の平面方向における外側領域まで熱を伝えやすくなり、放熱性能を向上することが可能となる。ここでいう金属箔層の厚みは、表面粗さRzを含む厚さである。金属箔層20は予め形成されているものであるため、その膜厚の均一化が図られている。
【0053】
金属箔層20の一方の表面20aと反対の表面20bの表面粗さは、特に限定されない。接着剤層10が形成された金属箔層20の表面20bの表面粗さRzは、熱伝導性粒子12の平均粒子径より小さくてもよい。これにより、熱伝導性粒子12を介した接続をより安定させることができる。金属箔層20の表面20a及び表面20bの表面粗さRzは同等でもよく、異なってもよい。この場合、金属箔層20の表面20a及び表面20bは、それぞれシャイニー面及びマット面であってもよい。シャイニー面である表面20aの表面粗さRzは、マット面である表面20bの表面粗さRzよりも小さい。金属箔層20は、シャイニー面が接着剤層10とは逆側の保持フィルム30側になるように配置してもよい。つまり、金属箔層20における平滑面が、電子装置100において外表面となるように配置されてもよい。シャイニー面の表面粗さRzは、0.01μm以上、0.5μm以上、1.0μm以上であってもよい。シャイニー面の表面粗さRzは、17μm以下、10μm以下、8.0μm以下、5.0μm以下、3.0μm以下であってもよい。シャイニー面の表面粗さRzは、例えば、0.01μm以上17μm以下であってもよく、0.5μm以上3.0μm以下であってもよい。金属箔層20のマット面の表面粗さRzは、例えば17μm以上であってよい。表面粗さRzは、JIS規格(JIS B 0601ー2001)に規定される方法を準拠して測定される十点平均粗さRzjisを意味し、市販の表面粗さ形状測定機を用いて測定された値をいう。例えば、ナノサーチ顕微鏡(株式会社島津製作所製「SFT-3500」)を用いて測定が可能である。
【0054】
[保持フィルム]
保持フィルム30は、接着剤層10及び金属箔層20を保護すると共に、放熱用部材1を使用して放熱構造を形成する際の形成作業を容易にするための部材である。保持フィルム30は、金属箔層20上に例えば接着により配置されるように構成されており、金属箔層20を保護する。別の保持フィルムが接着剤層10の裏面に配置され、接着剤層10を保護してもよい。保持フィルム30及び別の保持フィルムは、例えば、フッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート若しくはポリイミドなどの樹脂、又は、紙から構成される。なお、放熱用部材1は、保持フィルム30を有しない構成であってもよく、この場合、放熱用部材1の金属箔層20の表面20aは露出した状態となる。
【0055】
次に、放熱用部材1を用いて放熱構造を有する電子装置100を製造する方法(電子装置の製造方法)について、図2図4を参照して説明する。図2及び図3は、放熱用部材1を用いて電子装置を製造する方法を順に説明するための図である。図4は、図2の(d)で貼り付けた放熱用部材1を加熱及び加圧した状態の前後を示す断面図である。図2及び図3においては、放熱用部材1の保持フィルム30の記載は省略している。なお、以下の製造方法の説明において、各工程は別々に行われてもよいし、1の工程をしながら他の工程を並行して行ってもよい。
【0056】
まず、図2の(a)に示すように、配線基板101(基材)に開口102を設ける。開口102は、配線基板101の上面101a側からドリル又はレーザ等により形成する。配線基板101は、例えば、ガラスクロスに感光性樹脂を含浸させた樹脂シートの両面等に銅箔を設けて銅箔から配線を形成し、その上に更に別の樹脂シートを積層する等により形成することができる。配線基板101は、例えば、多層基板、コア基板、コアレス多層板、フレキシブル多層板、ビルドアップ多層板、多層再配線層から構成されてもよい。配線基板101の開口102内には、配線101bが露出する。図2の(a)では、1つの開口102を設けていたが、配線基板101に複数の開口102を設けてもよい。
【0057】
続いて、図2の(b)に示すように、配線基板101の開口102内に電子部品103を実装する。この実装により、配線基板101内の配線101bと電子部品103とが電気的及び機械的に接続される。電子部品103は、例えば、パワー半導体等の半導体デバイス、チップ抵抗、チップコンデンサ等である。電子部品103は、使用により発熱する部品であれば、他の電子部品であってもよい。図2の(b)では、1つの開口102内に1つの電子部品103を実装する例を示したが、1つの開口102内に2つ以上の電子部品103を実装してもよい。
【0058】
続いて、図2の(c)に示すように、配線基板101の開口102内に電子部品103が実装されると、配線基板101の配線101bと電子部品103との間にアンダーフィル104を塗布し、硬化する。これにより、配線基板101と電子部品103との接続部分が機械的に保護される。まだ、配線基板101と電子部品103との接続部分に絶縁性のアンダーフィル104が配置されることにより、絶縁性も確保される。
【0059】
続いて、上述した放熱用部材1を準備する。そして、図2の(d)に示すように、放熱用部材1を、配線基板101及び電子部品103上に配置する。この際、放熱用部材1の接着剤層10を配線基板101及び電子部品103側に向け、接着させる(配置する)。より詳細には、配線基板101の上面101a(開口102を設けた部分は除く)と電子部品103の上面103aが接着剤層10に接するように接着される。
【0060】
続いて、放熱用部材1が電子部品103等の上に配置されると、放熱用部材1を加熱及び加圧して、放熱用部材1を配線基板101及び電子部品103上にラミネートする。このラミネートにより、図4の(a)及び(b)に示すように、接着剤層10中の熱伝導性粒子12のうち放熱用部材1と電子部品103との間に位置する熱伝導性粒子が潰れ、これら潰れた熱伝導性粒子12aにより、電子部品103が放熱用部材1の金属箔層20に熱的に接続される。この際、加圧された後の接着剤層10の厚みが潰れた熱伝導性粒子12aの平均粒径よりも薄くなってもよい。これにより、熱伝導性粒子12aにより電子部品103が金属箔層20により確実に熱的に接続される。また、ラミネートの際の加熱により、放熱用部材1の接着剤層10の接着剤組成物14が硬化して、放熱用部材1が配線基板101の上に固定される。なお、この際、保持フィルム30は、緩衝材として機能し、配線基板101及び電子部品103の表面凹凸に対して放熱用部材1を十分に追従させることができる。その後、図4の(b)に示すように、金属箔層20が熱伝導性粒子12aにより電子部品103に熱的に接続されると、保持フィルム30を金属箔層20から剥離する。
【0061】
続いて、放熱用部材1が電子部品103に対して固定されると、図3の(a)に示すように、放熱用部材1の金属箔層20に所定のパターニングを行う。このようなパターニングは例えばエッチング等により行われ、金属箔層20に丸孔等の開口21が設けられる。開口21は、後述する導通ビアを形成した際に導通ビアが貫通するための領域であり、導通ビアの径よりも大きな孔となるように形成される。
【0062】
続いて、開口21が形成されると、図3の(b)に示すように、放熱用部材1の上に更に金属箔層105a付きの絶縁シート105を配置して、これにより、放熱用部材1の金属箔層20の上に絶縁層105bを形成する。この絶縁シート105は、例えば、ガラスクロスに感光性樹脂を含浸させた樹脂シートの一方の面に銅箔を設けたものであってもよい。絶縁層105bを形成する際には、放熱用部材1の金属箔層20が電子装置100の側面110から露出するように絶縁層105bを形成する。
【0063】
続いて、絶縁層105bが形成されると図3の(c)に示すように、配線基板101内に導通ビア106を形成すると共に、表面に位置する絶縁シート105の金属箔層105aを所定の配線パターンとなるようにパターニングする。この際、導通ビア106は、放熱用部材1の金属箔層20に接しないように、開口21を貫通するように形成される。なお、導通ビア106が熱伝導性粒子12に接しないように、上述した金属箔層20のパターニング工程において、金属箔層20と共に開口21に対応する接着剤層10の部分を除去するようにしてもよい。
【0064】
続いて、最外層の配線が形成されると、図5に示すように、絶縁シート105上に電子部品107を実装すると共に、アンダーフィル108の塗布及び硬化を行う。電子部品107は、例えば、半導体集積回路等の電子部品である。電子部品107は、使用時に発熱する部品であっても、発熱しない部品のいずれであってもよい。以上により、図5に示す半導体装置である電子装置100が作製される。
【0065】
電子装置100は、図5に示すように、開口102を有する配線基板101と、開口102内に実装された電子部品103と、電子部品103と接するように配置された放熱用部材1と、絶縁層105bと、電子部品107とを備えている。この電子装置100では、発熱性の電子部品103に熱的に接続されている放熱用部材1の金属箔層20が側面110まで延びるようになっている。これにより、装置に内蔵されている電子部品103で生じた熱が、潰れた熱伝導性粒子12a及び金属箔層20を伝わって、装置の外に放熱される。
【0066】
以上、本実施形態に係る放熱用部材1を用いた電子装置100の製造方法によれば、放熱対象の電子部品103に対して接着剤層10を貼り付けて発熱部品である電子部品103と金属箔層20とを熱的に接続することで、電子装置100に放熱構造を容易に形成することができる。即ち、この放熱用部材1及びそれを用いた製造方法によれば、放熱構造を簡易な手段で形成することができる。
【0067】
次に、図6を参照して、放熱用部材1を用いて別の電子装置200を製造する方法(電子装置の製造方法)について説明する。図6の(a)~(c)は、放熱用部材1を用いて別の電子装置200を製造する方法を順に説明するための図である。図6においては、放熱用部材1の保持フィルム30の記載は省略している。なお、上述した製造方法と同様、以下の製造方法の説明において、各工程は別々に行われてもよいし、1の工程をしながら他の工程を並行して行ってもよい。
【0068】
まず、図6の(a)に示すように、放熱用部材1の上に電子部品201を配置する。この配置の際、電子部品201の表面201a(電子部品201の接続端子201bとは逆側の面)を放熱用部材1の接着剤層10に接するように配置を行う。電子部品201は、例えば、パワー半導体等の半導体デバイス等である。電子部品201は、使用により発熱する部品であれば、他の電子部品であってもよい。この製造方法では、放熱用部材1を基台として用いるため、放熱用部材1の金属箔層20は厚めであることが好ましく、例えば、金属箔層20の厚さは100μm以上であってもよく、150μm以上であってもよく、200μm以下であってもよい。また、軽量化によるハンドリング性向上の観点からは、金属箔層20は、例えばアルミニウムから形成されていてもよい。但し、金属箔層20の厚み又は構成材料は、これらに限定されるものではない。
【0069】
なお、図6の(a)に示す工程において、例えばガラス板などに粘着剤が形成された支持台に金属箔層20を仮固定し、電子装置200を製造した後に支持台を取り除いてもよい。この場合、金属箔層20の厚みを薄くすることができ、例えば、10μm以上20μm以下の厚みの金属箔層20を用いることができる。また、図6の(a)に示す工程において、薄膜の金属箔層20を粘着剤などで厚膜の金属箔に仮固定しておき、電子装置200の製造後に厚膜の金属箔を取り除いてもよい。
【0070】
続いて、放熱用部材1の上に電子部品201が配置されると、図6の(b)に示すように、放熱用部材1の上において電子部品201を覆うように絶縁材料である樹脂にて封止し、樹脂封止層202を形成する。樹脂封止層202を構成する封止樹脂は、例えばエポキシ樹脂等である。この封止の際に、上述した製造方法でのラミネート構成(図4を参照)と同様に、接着剤層10中の熱伝導性粒子12のうち金属箔層20と電子部品201との間に位置する熱伝導性粒子が潰れ、これら潰れた熱伝導性粒子12aにより、電子部品201が放熱用部材1の金属箔層20に熱的に接続される。また、封止の際の加熱により、放熱用部材1の接着剤層10が硬化して、電子部品201が放熱用部材1に対して固定される。なお、この製造方法では、保持フィルム30を用いていないが、保持フィルムを用いて製造を行ってもよい。
【0071】
続いて、封止工程が終了すると、封止樹脂で封止された電子部品201の接続端子201bが露出するまで樹脂封止層202を研磨して、樹脂封止層202aとする。
【0072】
続いて、電子部品201の接続端子201bが樹脂封止層202aから露出すると、図6の(c)に示すように、電子部品201の接続端子201bに接続される導体部203を含む再配線層204を形成する。再配線層204では、導体部203である配線203a,203b間の距離が、電子部品201から離れるにしたがって、徐々に広がるように形成される。再配線層204の形成は、従来の方法を用いて行えるため、詳細な説明は省略するが、再配線層204を設けることにより、電子部品201の接続端子201b間の距離を配線203a,203b間の距離まで広げることができ、基板等への実装を容易に行うことが可能となっている。以上により、図7に示す半導体装置である電子装置200が形成される。
【0073】
電子装置200は、導体部203を含む再配線層204と、導体部203に導通された接続端子201bを有する電子部品201と、電子部品201と接するように配置された放熱用部材1とを備えている。この電子装置200では、発熱性の電子部品201に熱的に接続されている放熱用部材1の金属箔層20が装置の表面(上面)に露出している。これにより、電子部品201で生じた熱が、潰れた熱伝導性粒子12a及び金属箔層20を伝わって、装置の外に放熱される。
【0074】
以上、本実施形態に係る放熱用部材1を用いた電子装置200の製造方法によれば、放熱対象の電子部品201に対して接着剤層10を貼り付けて発熱部品である電子部品201と金属箔層20とを熱的に接続することで、電子装置200に放熱構造を容易に形成することができる。即ち、この放熱用部材1及びそれを用いた製造方法によれば、放熱構造を簡易な手段で形成することができる。
【0075】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明してきたが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な実施形態に適用することができる。例えば、上記の実施形態では、放熱用部材1の熱伝導性粒子12は、略球形の粒子を例にとって説明してきたが、これに限定されない。即ち、図8に示すように、略球形状の熱伝導性粒子12(第2熱伝導性粒子)に加えて尖形状の熱伝導性粒子12A(第1熱伝導性粒子)を含む接着剤層10Aと、金属箔層20とを備える放熱用部材1Aを用いて、電子装置100,200の放熱構造を形成してもよい。
【0076】
熱伝導性粒子12Aは、図9の(a)に示すように、例えば、デンドライト状(樹枝状ともよばれる)を呈する粒子である。デンドライド状の熱伝導性粒子12Aは、1本の主軸15Aと、主軸15Aから二次元的又は三次元的に分岐する複数の枝16Aとを備えている。デンドライド状の熱伝導性粒子12Aでは、複数の枝16Aが、それぞれ尖形状の突起部16aを形成している。この突起部16aは、尖形状であることにより、接着剤組成物が電子部品との接続に用いられた場合に、電子部品の表面に形成される酸化被膜等を貫通可能となっている。なお、放熱用部材1Aは、粒子として尖形状の熱伝導性粒子12Aのみが接着剤層10内に配置された構成であってもよい。
【0077】
また、放熱用部材1Aに含まれる熱伝導性粒子は、例えば、図9の(b)に示すように、フレーク状を呈してもよい。フレーク状の熱伝導性粒子12Bは、平面又は曲面の主面15Bを備える板状(平板状、鱗片状とも呼ばれる)を呈している。フレーク状の熱伝導性粒子12Bは、その外縁16B上に尖形状の突起部16bを有してもよく、主面15B上に尖形状の突起部(図示せず)を有してもよい。この突起部16bは、尖形状であることにより、接着剤組成物が電子部品との接続に用いられた場合に、電子部品の表面に形成される酸化被膜等を貫通可能となっている。
【0078】
このような尖形状の熱伝導性粒子12A,12Bの含有量は、接続する電子部品の発熱量等に応じて決めることができる。例えば、熱伝導性粒子12A,12Bの配合量は、特に制限は受けないが、熱伝導性粒子を除く接着剤層10Aの全体積を基準として、2体積%以上が好ましく、8体積%以上がより好ましい。また、熱伝導性粒子12A,12Bの配合量は、熱伝導性粒子を除く接着剤層10Aの全体積を基準として、50体積%以下が好ましく、25体積%以下であってもよい。この場合において、球形状の熱伝導性粒子12の配合量は、熱伝導性粒子を除く接着剤層10Aの全体積を基準として、2体積%以上が好ましく、5体積%以上がより好ましい。また、熱伝導性粒子12の配合量は、熱伝導性粒子を除く接着剤層10Aの全体積を基準として、80体積%以下が好ましく、50体積%以下であってもよい。
【0079】
このような構成の放熱用部材1Aを用いた場合でも、図10に示すように、電子装置100,200を製造する際に、電子部品103,201と金属箔層20とを、熱伝導性粒子12,12A(又は12B)を加圧等で潰して熱伝導部とすることで、熱的に接続することが可能となる。このような放熱用部材1Aを用いても、上記の製造方法と同様に、放熱対象の電子部品103,201に対して接着剤層10Aを貼り付けて発熱部品である電子部品103,201と金属箔層20とを熱的に接続することで、電子装置100,200に放熱構造を容易に形成することができる。即ち、この放熱用部材1A及びそれを用いた製造方法によれば、放熱構造を簡易な手段で形成することができる。
【符号の説明】
【0080】
1,1A…放熱構造形成用部材、放熱用部材、10,10A…接着剤層、12,12A,12B…熱伝導性粒子、12a…熱伝導性粒子、14…接着剤組成物、20…金属箔層、20a…表面、20b…表面、30…保持フィルム、100,200…電子装置、103,201…電子部品。101…配線基板(基材)、102…開口、105b…絶縁層、204…再配線層。
図1
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図10