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特開2023-115847情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023115847
(43)【公開日】2023-08-21
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/00 20060101AFI20230814BHJP
【FI】
G01R31/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018308
(22)【出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100198568
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 絵美
(72)【発明者】
【氏名】オグントインボ ボラジ
(72)【発明者】
【氏名】唐鎌 考寛
(72)【発明者】
【氏名】片山 昇
(72)【発明者】
【氏名】小林 輪
【テーマコード(参考)】
2G036
【Fターム(参考)】
2G036AA19
2G036BA46
2G036BB09
2G036BB22
(57)【要約】
【課題】温度に応じたインピーダンス軌跡を容易に予測する。
【解決手段】情報処理システム1は、所定数の設定温度それぞれで、周波数ごとに算出されたインピーダンスに基づいて、インピーダンス温度変化モデルを生成するモデル生成手段282と、インピーダンス温度変化モデルに基づいて、未設定温度における第1のインピーダンス軌跡を予測するインピーダンス軌跡予測手段283と、回路モジュール11のインピーダンスの周波数依存性を示す第2のインピーダンス軌跡と、第1のインピーダンス軌跡とに基づいて回路モジュール11の異常状態を判定する判定手段372と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定数の設定温度それぞれで、周波数ごとに算出された、回路モジュールのインピーダンスに基づいて、周波数ごとに、前記インピーダンスの温度変化を出力するインピーダンス温度変化モデルを生成するモデル生成手段と、
前記インピーダンス温度変化モデルに基づいて、前記設定温度とは異なる未設定温度におけるインピーダンスの周波数依存性を示す第1のインピーダンス軌跡を予測するインピーダンス軌跡予測手段と、
前記回路モジュールのインピーダンスの周波数依存性を示す第2のインピーダンス軌跡と前記第1のインピーダンス軌跡とに基づいて前記回路モジュールの異常状態を判定する判定手段と、
を備える情報処理システム。
【請求項2】
前記モデル生成手段は、前記インピーダンスの絶対値及び偏角の、温度との関係に基づいて、前記インピーダンス温度変化モデルを生成する、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記モデル生成手段は、前記絶対値及び前記偏角の、前記温度との関係を線形関数若しくは非線形関数、又は非線形モデルで近似することによって、前記インピーダンス温度変化モデルを生成する、請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
所定数の設定温度それぞれで、周波数ごとに算出された、回路モジュールのインピーダンスに基づいて、周波数ごとに、前記インピーダンスの温度変化を出力するインピーダンス温度変化モデルを生成するモデル生成手段と、
前記インピーダンス温度変化モデルに基づいて、前記設定温度とは異なる未設定温度におけるインピーダンスの周波数依存性を示す第1のインピーダンス軌跡を予測するインピーダンス軌跡予測手段と、
を備える情報処理装置。
【請求項5】
情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
所定数の設定温度それぞれで、周波数ごとに算出された、回路モジュールのインピーダンスに基づいて、周波数ごとに、前記インピーダンスの温度変化を出力するインピーダンス温度変化モデルを生成する工程と、
前記インピーダンス温度変化モデルに基づいて、前記設定温度とは異なる未設定温度におけるインピーダンスの周波数依存性を示す第1のインピーダンス軌跡を予測する工程と、
を含む情報処理方法。
【請求項6】
情報処理装置を、
所定数の設定温度それぞれで、周波数ごとに算出された、回路モジュールのインピーダンスに基づいて、周波数ごとに、前記インピーダンスの温度変化を出力するインピーダンス温度変化モデルを生成するモデル生成手段と、
前記インピーダンス温度変化モデルに基づいて、前記設定温度とは異なる未設定温度におけるインピーダンスの周波数依存性を示す第1のインピーダンス軌跡を予測するインピーダンス軌跡予測手段と、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気回路に交流電圧を印加してインピーダンスを測定し、測定したインピーダンスに基づいて電気機器の劣化を判定する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、電気機器の回路モジュールに交流電圧を印加してインピーダンスを測定し、測定したインピーダンスに基づいて等価回路として表した回路モジュールのパラメータを推定することによって、劣化を判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-21718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、等価回路のパラメータに温度に関する情報が内包されており、様々な温度での等価回路のパラメータを算出するために、予め温度を細かく変更してインピーダンスを算出しておく必要があった。このように、電気機器の、温度に応じたインピーダンスの周波数依存性を示すインピーダンス軌跡を予め把握しておくことには、多くの作業負荷を要し、容易ではなかった。
【0006】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、電気機器の、温度に応じたインピーダンス軌跡を容易に予測することができる情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る情報処理システムは、
所定数の設定温度それぞれで、周波数ごとに算出された、回路モジュールのインピーダンスに基づいて、周波数ごとに、前記インピーダンスの温度変化を出力するインピーダンス温度変化モデルを生成するモデル生成手段と、
前記インピーダンス温度変化モデルに基づいて、前記設定温度とは異なる未設定温度におけるインピーダンスの周波数依存性を示す第1のインピーダンス軌跡を予測するインピーダンス軌跡予測手段と、
前記回路モジュールのインピーダンスの周波数依存性を示す第2のインピーダンス軌跡を算出するインピーダンス軌跡算出手段と、
前記第1のインピーダンス軌跡と、前記第2のインピーダンス軌跡とに基づいて前記回路モジュールの異常状態を判定する判定手段と、
を備える。
【0008】
本発明の一実施形態に係る情報処理装置は、
所定数の設定温度それぞれで、周波数ごとに算出された、回路モジュールのインピーダンスに基づいて、周波数ごとに、前記インピーダンスの温度変化を出力するインピーダンス温度変化モデルを生成するモデル生成手段と、
前記インピーダンス温度変化モデルに基づいて、前記設定温度とは異なる未設定温度におけるインピーダンスの周波数依存性を示す第1のインピーダンス軌跡を予測するインピーダンス軌跡予測手段と、
を備える。
【0009】
本発明の一実施形態に係る情報処理方法は、
情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
所定数の設定温度それぞれで、周波数ごとに算出された、回路モジュールのインピーダンスに基づいて、周波数ごとに、前記インピーダンスの温度変化を出力するインピーダンス温度変化モデルを生成する工程と、
前記インピーダンス温度変化モデルに基づいて、前記設定温度とは異なる未設定温度におけるインピーダンスの周波数依存性を示す第1のインピーダンス軌跡を予測する工程と、
を含む。
【0010】
本発明の一実施形態に係るプログラムは、
情報処理装置を、
所定数の設定温度それぞれで、周波数ごとに算出された、回路モジュールのインピーダンスに基づいて、周波数ごとに、前記インピーダンスの温度変化を出力するインピーダンス温度変化モデルを生成するモデル生成手段と、
前記インピーダンス温度変化モデルに基づいて、前記設定温度とは異なる未設定温度におけるインピーダンスの周波数依存性を示す第1のインピーダンス軌跡を予測するインピーダンス軌跡予測手段と、
として機能させる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、電気機器の、温度に応じたインピーダンス軌跡を容易に予測することができる情報処理システム、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る情報処理システムの概略構成を示す図である。
図2図1に示す電気機器の概略構成を示す図である。
図3図1及び図2に示す情報処理装置の概略構成を示すブロック図である。
図4図1及び図2に示す判定装置の概略構成を示すブロック図である。
図5図1に示す端末装置の概略構成を示すブロック図である。
図6図2に示す回路モジュールのインピーダンス軌跡の一例の温度変化を示す図である。
図7図2に示す回路モジュールのインピーダンス軌跡の他の例を周波数ごとに示す図である。
図8図7に示すインピーダンス軌跡から周波数ごとに抽出した、インピーダンスの絶対値及び偏角を示す図である。
図9】温度変化モデルを用いて予測したインピーダンス軌跡の一例を示す図である。
図10】本発明の一実施形態に係る情報処理装置の動作の一例を示すフローチャートのである。
図11図10に示す、温度変化モデルを生成する動作の詳細な一例を示すフローチャートのである。
図12】本発明の一実施形態に係る判定装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図13A】正常状態である回路モジュールのインピーダンス軌跡であるテストデータの一例を示す図である。
図13B】異常状態である回路モジュールのインピーダンス軌跡であるテストデータの一例を示す図である。
図14A図13Aに示すテストデータを用いた判定結果の一例を示す図である。
図14B図13Bに示すテストデータを用いた判定結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る情報処理システム1について説明する。情報処理システム1は、電気機器10が備える回路モジュール11(図2参照)の異常状態を判定するシステムである。情報処理システム1は、回路モジュール11の状態に基づいて、電気機器10の異常状態を判定するシステムであってもよい。
【0015】
図1に示すように、情報処理システム1は、情報処理装置20と、判定装置30と、端末装置40と、を備える。図1及び図2に示す例では、情報処理装置20は、異常状態を判定する対象である回路モジュール11を備える電気機器10に組み込まれている。図1及び図2では、1つの電気機器10に1つの情報処理装置20及び判定装置30が組み込まれている構成が示されているが、1つの電気機器10に複数の情報処理装置20が組み込まれている構成であってもよいし、1つの電気機器10に複数の判定装置30が組み込まれている構成であってもよい。また、複数の電気機器10のそれぞれに1つ以上の情報処理装置20が組み込まれている構成であってもよいし、複数の電気機器10のそれぞれに1つ以上の判定装置30が組み込まれている構成であってもよい。
【0016】
情報処理装置20と判定装置30とは、互いに通信可能である。また、情報処理装置20及び判定装置30と、端末装置40とは、ネットワーク50を介して通信可能である。ネットワーク50は、無線通信可能なネットワークであってもよいし、有線通信可能なネットワークであってもよい。または、ネットワーク50は、無線通信可能なネットワークと、有線通信可能なネットワークとの両方を含むネットワークであってよい。
【0017】
電気機器10は、情報処理システム1が異常状態を判定する対象となる機器である。電気機器10は、電気を用いて動作する任意の機器であってよい。電気機器10は、例えば、プラント内に設置された機器を制御可能なPLC(Programmable Logic Controller)、センサ、インバータ、監視用パソコン等の直流回路が組み込まれた機器全般であってよい。
【0018】
図2に示すように、電気機器10は、回路モジュール11-1~11-Nと、ベースボード12と、を備える。回路モジュール11-1~11-N(Nは正の整数)について特に区別する必要がない場合は、単に回路モジュール11と記載する場合がある。図2においては、電気機器10がN個の回路モジュール11-1~11-Nを備える場合を示しているが、電気機器10が備える回路モジュール11の個数は任意の個数であってよい。
【0019】
回路モジュール11は、ある特定の機能を実現するための回路を含む。回路モジュール11は、例えば、電源モジュール、CPU(Central Processing Unit)モジュール、I/Oモジュール、アナログ入力モジュール、デジタル入力モジュール又はモータ制御モジュール等であってよい。回路モジュール11は、回路構成要素として、例えば、抵抗、キャパシタ、インダクタ、ダイオード、トランジスタ又はトランス等を含んでよい。
【0020】
回路モジュール11は、電源ライン13及びGND(Ground:接地)ライン14を介してベースボード12と接続している。電源ライン13は、回路モジュール11が生成した直流電圧、又は、回路モジュール11に供給される直流電圧が印加されている配線である。例えば回路モジュール11-1が電源モジュールである場合、回路モジュール11-1は、回路モジュール11-1が生成した直流電圧が印加されている電源ライン13を介してベースボード12と接続している。また、例えば回路モジュール11-2がCPUモジュールである場合、回路モジュール11-2は、回路モジュール11-2に供給される直流電圧が印加されている電源ライン13を介してベースボード12と接続している。
【0021】
ベースボード12は、各回路モジュール11と電気的に接続している。各回路モジュール11は、ベースボード12を介して相互に電気的に接続していてよい。例えば、回路モジュール11-1と、回路モジュール11-2とは、ベースボード12を介して電気的に接続していてよい。図2においては、回路モジュール11とベースボード12とを接続する配線として、電源ライン13及びGNDライン14のみを示しているが、回路モジュール11とベースボード12とを接続する配線として信号ラインが更にあってもよい。
【0022】
図1及び図2に示す情報処理装置20は、電気機器10の異常状態を判定するために、図2に示すような回路モジュール11についての、インピーダンスの周波数依存性を示すインピーダンス軌跡を予測する装置である。情報処理装置20は、電気機器10に予め組み込まれていてもよいし、出荷後の電気機器10に増設装置として組み込まれてもよい。
【0023】
図1及び図2に示す判定装置30は、電気機器10が備える回路モジュール11の異常状態を判定する装置である。また、判定装置30は、回路モジュール11の異常状態に基づいて電気機器10の異常状態を判定する装置であってもよい。判定装置30は、電気機器10に予め組み込まれていてもよいし、出荷後の電気機器10に増設装置として組み込まれてもよい。
【0024】
図2に示す例では、情報処理装置20は、回路モジュール11-1とベースボード12とを接続する電源ライン13の電圧及び電流を検出できるように、電気機器10の内部に設置されている。この場合、情報処理装置20は、回路モジュール11-1の異常状態を判定することができる。図2に示す構成は一例であり、情報処理装置20は、他の回路モジュール11とベースボード12とを接続する電源ライン13の電圧及び電流を検出できるように設置されていてもよい。また、複数の情報処理装置20が電気機器10の内部に設置されていてもよい。
【0025】
図2においては、情報処理装置20及び判定装置30が電気機器10の内部に設置されている構成を示しているが、情報処理装置20及び判定装置30の設置場所は電気機器10の内部に限られない。異常状態を判定する対象である回路モジュール11とベースボード12とを接続する電源ライン13の電圧及び電流を検出可能であれば、情報処理装置20及び判定装置30のいずれか1つ以上が電気機器10の外部に設置されていてもよい。
【0026】
図1に戻って、端末装置40は、判定装置30から判定結果を受信する装置である。判定結果は、判定装置30が、回路モジュール11の異常状態を判定した結果であってもよいし、電気機器10の異常状態を判定した結果であってもよい。
【0027】
端末装置40は、汎用のコンピュータであってもよいし、情報処理システム1に専用のコンピュータであってもよい。端末装置40が汎用のコンピュータである場合、端末装置40は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、ノートPC(Personal Computer)、デスクトップPC又はサーバ等であってよい。端末装置40が判定装置30から状態情報を受信することで、端末装置40の操作者は、電気機器10の遠隔地においても、回路モジュール11又は電気機器10の異常状態を知ることができる。
【0028】
(情報処理装置のハードウェア構成)
図3を参照して、情報処理装置20のハードウェア構成について説明する。情報処理装置20は、交流電圧印加部21と、電圧検出部22と、電流検出部23と、温度設定部24と、フィルタ25と、通信部26と、記憶部27と、制御部28と、を備える。
【0029】
交流電圧印加部21は、電源ライン13に交流電圧を印加可能な電圧印加手段である。交流電圧印加部21が電源ライン13に交流電圧を印加すると、電源ライン13には交流電流が流れる。交流電圧印加部21は、電源ライン13に交流電流を流すことが可能な電流印加手段であってもよい。交流電圧印加部21が電源ライン13に交流電流を流すと、電源ライン13には交流電圧が印加される。すなわち、交流電圧印加部21が電源ライン13に交流電圧を印加しても、交流電圧印加部21が電源ライン13に交流電流を流しても、電源ライン13には同じ事象が発生する。したがって、交流電圧印加部21が電源ライン13に交流電圧を印加可能であることと、交流電圧印加部21が電源ライン13に交流電流を流すことが可能であることとは同義である。以後、交流電圧印加部21が電源ライン13に交流電圧を印加するものとして説明する。ただし、交流電圧印加部21が電源ライン13に交流電流を流すと読み替えても同じ効果が得られる。この場合も、電源ライン13には結果的に交流電圧が印加されることになるからである。
【0030】
交流電圧印加部21は、交流電圧を発生可能な信号発生器を含む。交流電圧印加部21は、判定の対象である回路モジュール11が接続している電源ライン13と、当該回路モジュール11が接続しているGNDライン14とに接続している。交流電圧印加部21は、判定の対象である回路モジュール11が接続している電源ライン13に交流電圧を印加可能である。
【0031】
電圧検出部22は、電源ライン13の電圧を検出可能な電圧検出手段である。電圧検出部22は、任意の形式の電圧センサであってよい。電圧検出部22は、判定の対象である回路モジュール11が接続している電源ライン13と、判定の対象である回路モジュール11が接続しているGNDライン14との間に接続している。電圧検出部22は、判定の対象である回路モジュール11が接続している電源ライン13の電圧を検出する。
【0032】
電流検出部23は、電源ライン13に流れる電流を検出可能な電流検出手段である。電流検出部23は、任意の形式の電流センサであってよい。電流検出部23は、判定の対象である回路モジュール11が接続している電源ライン13に接続している。電流検出部23は、判定の対象である回路モジュール11が接続している電源ライン13に流れる電流を検出する。
【0033】
温度設定部24は、電気機器10が設置されている環境の温度(設定温度)を設定可能な温度設定手段である。具体的には、温度設定部24は、電気機器10が備える回路モジュール11が設置されている環境の設定温度を設定可能な温度設定手段であってもよい。例えば、温度設定部24は、電気機器10を収容している恒温槽の温度を任意の手法により変化させることにより、電気機器10が設置されている環境の設定温度を変化させることができる。設定温度を変化させる範囲は、電気機器10が設置される環境の設定温度として想定される範囲であってよい。設定温度を変化させる範囲は、例えば、10℃~60℃の範囲などであってよい。
【0034】
フィルタ25は、所定の周波数範囲以外の周波数成分の信号を減衰させることが可能なフィルタである。フィルタ25は、例えばバンドパスフィルタ又はローパスフィルタであってよい。フィルタ25は、判定の対象である回路モジュール11が接続している電源ライン13に発生している電圧の周波数成分のうち、所定の周波数範囲以外の周波数成分を減衰させる。ここで、所定の周波数範囲は、交流電圧印加部21が電源ライン13に印加する交流電圧の周波数の範囲である。例えば、交流電圧印加部21が10Hzから100kHzまでの間の複数の周波数の交流電圧を電源ライン13に印加する場合、所定の周波数範囲は10Hz~100kHzである。フィルタ25は、例えば、判定の対象である回路モジュール11が接続している電源ライン13と、判定の対象である回路モジュール11が接続しているGNDライン14との間に並列に接続されていてよい。また、フィルタ25は、例えば、交流電圧印加部21の前段又は後段に配置されていてもよい。交流電圧印加部21の前段に配置する場合、フィルタ25は、ローパスフィルタであってよい。
【0035】
フィルタ25がバンドパスフィルタである場合、フィルタ25は、複数のバンドパスフィルタを切り替える構成であってもよい。この場合、フィルタ25は、交流電圧印加部21が電源ライン13に印加する交流電圧の周波数に応じて、使用するバンドパスフィルタを切り替えてよい。
【0036】
フィルタ25がローパスフィルタであり、ローパスフィルタが交流電圧印加部21の前段に配置されている場合、フィルタ25は1つのローパスフィルタで構成することができる。この場合、フィルタ25をシンプルな構成で実現することができる。
【0037】
通信部26は、無線又は有線を介して外部装置と通信する1つ以上の通信インタフェースである。通信部26は、判定装置30と通信する通信インタフェースを含む。通信部26は、ネットワーク50を介して端末装置40と通信する通信インタフェースを含む。
【0038】
記憶部27は、1つ以上のメモリである。本実施形態において、「メモリ」は、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリ等であるが、これらに限られず任意のメモリとすることができる。記憶部27は、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してよい。記憶部27は、例えば情報処理装置20に内蔵されるが、任意のインタフェースを介して情報処理装置20に外部から接続される構成も可能である。
【0039】
制御部28は、1つ以上のプロセッサである。本実施形態において「プロセッサ」は、汎用のプロセッサ、特定の処理に特化した専用のプロセッサ等であるが、これらに限られず任意のプロセッサとすることができる。制御部28は、情報処理装置20全体の動作を制御する。情報処理装置20の動作の詳細については後述する。
【0040】
(判定装置のハードウェア構成)
図4を参照して、判定装置30のハードウェア構成について説明する。判定装置30は、交流電圧印加部31と、電圧検出部32と、電流検出部33と、フィルタ34と、通信部35と、記憶部36と、制御部37と、を備える。交流電圧印加部31、電圧検出部32、電流検出部33、フィルタ34、及び記憶部36のハードウェア構成は、それぞれ、上述した交流電圧印加部21、電圧検出部22、電流検出部23、フィルタ25、及び記憶部27のハードウェア構成と同じである。
【0041】
通信部35は、無線又は有線を介して外部装置と通信する1つ以上の通信インタフェースである。通信部35は、情報処理装置20と通信する通信インタフェースを含む。通信部35は、ネットワーク50を介して端末装置40と通信する通信インタフェースを含む。
【0042】
制御部37は、1つ以上のプロセッサである。制御部37は、判定装置30全体の動作を制御する。判定装置30の動作の詳細については後述する。
【0043】
なお、上述では、情報処理装置20と判定装置30とが別体として構成されている例を説明したが、情報処理装置20と判定装置30とは一体として構成されていてもよい。情報処理装置20と判定装置30とが一体として構成している例において、判定装置30は、交流電圧印加部31、電圧検出部32、電流検出部33、フィルタ34、通信部35、及び記憶部36を備えなくてもよく、情報処理装置20が備える交流電圧印加部21、電圧検出部22、電流検出部23、フィルタ25、通信部26、及び記憶部27を用いて処理を実行してもよい。
【0044】
また、判定装置30は、温度測定部をさらに備えてもよい。このような構成において、温度測定部は、電気機器10が設置されている環境の温度(測定温度)を測定可能な温度測定手段である。具体的には、温度測定部は、電気機器10が備える回路モジュール11が設置されている環境の温度を設定可能な温度測定手段であってもよい。温度測定部は、任意の形式の温度センサであってよい。
【0045】
(端末装置のハードウェア構成)
図5を参照して、端末装置40のハードウェア構成について説明する。端末装置40は、通信部41と、記憶部42と、表示部43と、制御部44と、を備える。
【0046】
通信部41は、無線又は有線を介して外部装置と通信する1つ以上の通信インタフェースである。通信部41は、ネットワーク50を介して情報処理装置20及び判定装置30と通信する通信インタフェースを含む。
【0047】
記憶部42は、1つ以上のメモリである。記憶部42は、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してよい。記憶部42は、例えば端末装置40に内蔵されるが、任意のインタフェースを介して端末装置40に外部から接続される構成も可能である。
【0048】
表示部43は、任意のディスプレイである。表示部43は、例えば液晶ディスプレイ又はOEL(Organic Electro-luminescence)ディスプレイ等であってよい。
【0049】
制御部44は、1つ以上のプロセッサである。制御部44は、端末装置40全体の動作を制御する。端末装置40の動作の詳細については後述する。
【0050】
(情報処理装置のソフトウェア構成)
図3を参照して、情報処理装置20のソフトウェア構成について説明する。情報処理装置20の動作の制御に用いられる1つ以上のプログラムが記憶部27に記憶されている。当該1つ以上のプログラムは、制御部28によって読み込まれると、制御部28をインピーダンス算出手段281、モデル生成手段282、及びインピーダンス軌跡予測手段283として機能させる。
【0051】
制御部28の各手段の概要について説明する。
【0052】
インピーダンス算出手段281は、所定数の設定温度それぞれで、周波数ごとに、回路モジュール11に接続されている電源ライン13の電流及び電圧に基づいて、回路モジュール11のインピーダンスを算出する手段である。所定数は、追って詳細に説明される、インピーダンス(複素数)における、絶対値及び偏角の、温度との関係を近似する関数の種類に応じて定まる数である。例えば、関数に多項式を用いる場合には、所定数は、関数の次数に1以上を加算した数とすることができる。
【0053】
モデル生成手段282は、所定数の設定温度それぞれで、周波数ごとに算出された、回路モジュール11のインピーダンスに基づいて、周波数ごとに、インピーダンスの温度変化を出力するインピーダンス温度変化モデルを生成する手段である。また、モデル生成手段282は、インピーダンス算出手段281によって算出されたインピーダンスの絶対値及び偏角の、温度との関係に基づいて、インピーダンス温度変化モデルを生成する手段であってもよい。さらに、モデル生成手段282は、インピーダンス算出手段281によって算出されたインピーダンスにおける、絶対値及び偏角の、温度との関係を線形関数若しくは非線形関数、又は非線形モデルで近似することによって、インピーダンス温度変化モデルを生成する手段であってもよい。線形関数は一次関数とすることができ、非線形関数は任意の関数(例えば、任意の次数の多項式)とすることができる。
【0054】
インピーダンス軌跡予測手段283は、モデル生成手段282によって生成されたインピーダンス温度変化モデルに基づいて、設定温度とは異なる未設定温度におけるインピーダンスの周波数依存性を示すインピーダンス軌跡(第1のインピーダンス軌跡)を予測する手段である。
【0055】
なお、電気機器10の回路モジュール11(負荷)が稼働する際の特性は、負荷の消費電力量と、負荷が設置されている環境の温度との組み合わせによって定まるため、制御部28の各手段は、負荷ごとに、以下で詳細に説明する動作を実行する。
【0056】
(情報処理装置の動作)
以下、情報処理装置20の動作について説明する。本実施形態においては、情報処理装置20が回路モジュール11-1のインピーダンス軌跡を予測する場合を例に挙げて説明する。
【0057】
温度設定部24は、回路モジュール11-1が設置されている環境の温度(設定温度)を設定する。温度設定部24は、環境を所定数の設定温度それぞれに設定し、交流電圧印加部21、電圧検出部22、電流検出部23、フィルタ25、及びインピーダンス算出手段281は、所定数の設定温度それぞれで、以降において説明する動作を実行する。
【0058】
交流電圧印加部21は、制御部28からの指示に基づいて、電気機器10の稼働中に、複数の周波数の交流電圧Vを電源ライン13に交流電圧を印加する。電源ライン13に電圧Vが印加されると、電源ライン13に交流電流I(以下、単に「電流I」とも記載する)が流れる。交流電圧印加部21が印加する複数の周波数は、回路モジュール11-1のインピーダンスZを測定するための適切な周波数として予め設定された周波数であってよい。例えば、交流電圧印加部21は、10Hz~100kHzの周波数の範囲に含まれる複数の周波数の交流電圧Vを電源ライン13に印加する。
【0059】
インピーダンス算出手段281は、温度設定部24によって設定された所定数の設定温度ごとに、電圧検出部22が検出した電圧Vと、電流検出部23が検出した電流Iとに基づいて、回路モジュール11-1のインピーダンスZを、以下の数式(1)により計算する。
Z=V/I (1)
【0060】
インピーダンス算出手段281は、電圧検出部22が検出した電圧Vの振幅|V|と、電流検出部23が検出した電流Iの振幅|I|とに基づいて、回路モジュール11-1のインピーダンスZの絶対値|Z|を、以下の数式(2)により計算してよい。
|Z|=|V|/|I| (2)
【0061】
また、インピーダンス算出手段281は、電圧検出部22が検出した電圧Vの位相ArgVと、電流検出部23が検出した電流Iの位相ArgIとに基づいて、回路モジュール11-1のインピーダンスZの位相θを、以下の数式(3)により計算してよい。
θ=ArgV-ArgI (3)
【0062】
図6は、インピーダンス算出手段281によって算出された、所定数の設定温度それぞれでの、インピーダンスの周波数依存性を示すインピーダンス軌跡の一例を示す図である。図6において、インピーダンス軌跡は、横軸がインピーダンスの実部Re(Z)を示し、縦軸がインピーダンスの虚部-Im(Z)を示す複素平面上に示されている。また、図6でプロットされている点は、設定温度が高いほど黒に近く、設定温度が低いほど白に近い色で表されている。
【0063】
図6に示すように、例えば、設定温度が15℃では、インピーダンスが周波数の変化に伴って変化することによって、インピーダンス軌跡は、複素平面において円を形成している。また、設定温度が15℃より高くなるにつれて、インピーダンス軌跡は、複素平面において、より大きい円を形成し、最高の設定温度である60℃では、インピーダンス軌跡は、複素平面において、最も大きい円を形成している。このように、インピーダンス軌跡は、設定温度に依存している。
【0064】
図7は、インピーダンス算出手段281によって算出されたインピーダンス軌跡の他の例を示す図である。図7において、インピーダンス軌跡は、横軸がインピーダンスの実部Re(Z)を示し、縦軸がインピーダンスの虚部-Im(Z)を示す複素平面上に示されている。図7においては、同じ周波数でのインピーダンスを示す点が同じ濃度で示されている。例えば、図7において破線で囲まれた範囲にプロットされている点で示されているインピーダンスは、いずれも周波数10Hzでのインピーダンスであり、設定温度により異なる値をとっている。
【0065】
モデル生成手段282は、インピーダンス算出手段281によって算出されたインピーダンス軌跡に基づいて、周波数ごとに、インピーダンスの温度変化を推定するためのインピーダンス温度変化モデルを生成する。
【0066】
発明者らは、電源ライン13に印加される交流電圧Vの周波数がfであるとき、インピーダンスの絶対値xT_f^(図7では、原点から、温度T,周波数fにおけるインピーダンスを示す点までの距離)が設定温度Tに対して以下の数式(4)に示す関係にあることを見出した。数式(4)では、aは、xT_f^を算出するための、周波数fにおける設定温度Tに対する係数であり、bは、xT_f^を算出するための、周波数fにおける設定温度Tに対する切片である。また、xT_f^における記号^は、xT_fの上に付された記号を示すものとする。
T_f^ = a×T+b (4)
【0067】
また、発明者らは、電源ライン13に印加される交流電圧Vの周波数がfであるとき、インピーダンスの偏角θT_f図7では、原点と、温度T及び周波数fにおけるインピーダンスを示す点とを結ぶ直線が横軸に対してなす角度)が設定温度Tに対して以下の数式(5)に示す関係にあることを見出した。数式(5)では、cは、xT_f^を算出するための、周波数fにおける設定温度Tに対する係数であり、dは、xT_f^を算出するための、周波数fにおける設定温度Tに対する切片である。また、θT_f^における記号^は、θT_fの上に付された記号を示すものとする。
θT_f^ = c×T+d (5)
【0068】
モデル生成手段282は、インピーダンス算出手段281によって算出されたインピーダンス軌跡が示すインピーダンスの絶対値xT_f及び偏角θT_fの、設定温度Tとの関係に基づいて、インピーダンス温度変化モデルを生成する。そのために、モデル生成手段282は、インピーダンスの絶対値及び偏角の、設定温度との関係を近似する関数のパラメータ(本例では、a、b、c、及びd)を算出する。
【0069】
具体的には、まず、モデル生成手段282は、周波数fごとに、各設定温度Tでのインピーダンスの絶対値xT_f及び偏角θT_fを抽出する。
【0070】
一例として、モデル生成手段282は、2つの設定温度T(例えば、20℃及び50℃)について、インピーダンスの絶対値xT_f及び偏角θT_fを抽出してもよい。
【0071】
他の例として、モデル生成手段282は、周波数ごとに、2より多くの設定温度Tについて、インピーダンスの絶対値xT_f及び偏角θT_fを抽出してもよい。例えば、図8に示すように、モデル生成手段282は、例えば、周波数10Hzでの設定温度20℃、21℃、・・・、50℃それぞれにおける絶対値x20_10、x21_10、・・・x50_10を抽出する。モデル生成手段282は、周波数10Hzでの設定温度20℃、21℃、・・・、50℃それぞれにおける偏角θ20_10、θ21_10、・・・、θ50_10を抽出する。さらに、モデル生成手段282は、例えば、周波数100kHzでの設定温度20℃、21℃、・・・、50℃それぞれにおける絶対値x20_100k、x21_100k、・・・x50_100kを抽出する。モデル生成手段282は、周波数100kHzでの設定温度20℃、21℃、・・・、50℃それぞれにおける偏角θ20_100k、θ21_100k、・・・、θ50_100kを抽出する。
【0072】
詳細な説明は省略するが、同様にして、モデル生成手段282は、10Hz及び100kHz以外の各周波数fについても、それぞれ絶対値xT_f及び偏角θT_fを抽出してもよい。
【0073】
そして、モデル生成手段282は、周波数fごとに、所定数(本例では2以上)の設定温度Tについて、当該設定温度Tと、当該設定温度Tでのインピーダンスとを用いて温度変化モデルを生成する。具体的には、モデル生成手段282は、周波数fごとに、所定数(本例では2以上)の設定温度Tについて、当該設定温度Tと、当該設定温度Tでのインピーダンスの絶対値xT_fとを用いて、例えば最小二乗法により、数式(4)の係数a及び切片bを算出する。また、モデル生成手段282は、周波数fごとに、所定数(本例では2以上)の設定温度Tについて、当該設定温度Tと、当該設定温度Tでのインピーダンスの偏角θT_fとを用いて、例えば最小二乗法により、数式(5)の係数c及び切片dを算出する。モデル生成手段282は、このようにして算出した係数a及び切片bによって表される数式(4)、並びに係数c及び切片dによって表される数式(5)を温度変化モデルとする。なお、モデル生成手段282は、機械学習により、係数a、切片b、係数c、及び切片dを算出してもよい。
【0074】
記憶部27は、モデル生成手段282によって生成された温度変化モデルを記憶してもよい。また、通信部26は、モデル生成手段282によって生成された温度変化モデルを判定装置30及び端末装置40の1つ以上に送信してもよい。
【0075】
上述した例において、モデル生成手段282は、数式(4)及び数式(5)で示すような、絶対値xT_f及び偏角θT_fを、設定温度Tの一次関数で近似した温度変化モデルを生成したが、これに限られない。例えば、モデル生成手段282は、絶対値xT_f及び偏角θT_fを設定温度Tの二次関数で近似した温度変化モデルを生成してもよい。このような例において、モデル生成手段282は、周波数fごとに、所定数(本例では、3以上)の設定温度Tについて、当該設定温度Tと、当該設定温度Tでのインピーダンスとを用いて温度変化モデルを生成する。さらに、モデル生成手段282は、絶対値xT_f及び偏角θT_fを設定温度Tの任意の関数で近似した温度変化モデルを生成してもよい。
【0076】
なお、絶対値xT_f及び偏角θT_fを設定温度Tの一次関数で近似した温度変化モデルを生成する例において、上述した所定数は、2以上である。また、絶対値xT_f及び偏角θT_fを設定温度Tの二次関数で近似した温度変化モデルを生成する例において、上述した所定数は、3以上である。所定数が大きいほど、高い精度でインピーダンス軌跡を予測することができる温度変化モデルを生成することができる。また、インピーダンスにおける、絶対値及び偏角の、温度との関係を線形関数又は二次関数で近似する場合、所定数を5以上とすることによって、実運用において所望される程度の高い精度でインピーダンス軌跡を予測する温度変化モデルを生成することができることが、発明者らによって見出された。
【0077】
また、絶対値xT_f及び偏角θT_fを設定温度Tの二次関数で近似した温度変化モデルを生成するには、絶対値xT_f及び偏角θT_fを設定温度Tの一次関数で近似した温度変化モデルを生成する場合に比べて、多くの設定温度Tでのデータを必要とするが、高い精度でインピーダンス軌跡を予測する温度変化モデルを生成することができる。温度変化モデルをいずれの関数で近似するかは、当該温度変化モデルを生成するために設定する設定温度Tの数に応じたデータを用意するための作業負荷、インピーダンス軌跡の予測において所望される精度等に応じ、目的によって、適宜決定することができる。
【0078】
インピーダンス軌跡予測手段283は、モデル生成手段282によって生成された、周波数ごとの温度変化モデルに、未設定温度を入力し、当該未設定温度におけるインピーダンスを出力させ、その周波数依存性をインピーダンス軌跡(第1のインピーダンス軌跡)として予測する。未設定温度は、温度変化モデルを生成した際の設定温度とは異なる温度である。例えば、インピーダンス軌跡予測手段283は、絶対値xT_f及び偏角θT_fを、上述した数式(4)及び数式(5)に示すような、温度の一次関数で近似した温度変化モデルに未設定温度を入力し、インピーダンスを出力させ、その周波数依存性を第1のインピーダンス軌跡(図9参照)として予測することができる。
【0079】
記憶部27は、インピーダンス軌跡予測手段283によって予測された第1のインピーダンス軌跡を記憶してもよい。また、通信部26は、インピーダンス軌跡予測手段283によって予測された第1のインピーダンス軌跡を判定装置30及び端末装置40の1つ以上に送信してもよい。
【0080】
(判定装置のソフトウェア構成)
図4を参照して、判定装置30のソフトウェア構成について説明する。判定装置30の動作の制御に用いられる1つ以上のプログラムが記憶部36に記憶されている。当該1つ以上のプログラムは、制御部37によって読み込まれると、制御部37をインピーダンス軌跡算出手段371、判定手段372として機能させる。
【0081】
制御部37の各手段の概要について説明する。
【0082】
インピーダンス軌跡算出手段371は、回路モジュール11のインピーダンスの周波数依存性を示すインピーダンス軌跡(第2のインピーダンス軌跡)を算出する手段である。
【0083】
判定手段372は、インピーダンス軌跡算出手段371によって算出された、回路モジュール11のインピーダンスの周波数依存性を示すインピーダンス軌跡(第2のインピーダンス軌跡)と、インピーダンス軌跡予測手段283によって予測された、インピーダンス軌跡(第1のインピーダンス軌跡)とに基づいて回路モジュール11の異常状態を判定する手段である。
【0084】
(判定装置の動作)
以下、判定装置30の動作について説明する。本実施形態においては、判定装置30が回路モジュール11-1の異常状態を判定する場合を例に挙げて説明する。
【0085】
判定装置30の交流電圧印加部31、電圧検出部32、電流検出部33、及びフィルタ34は、交流電圧印加部21、電圧検出部22、電流検出部23、フィルタ25と同様に動作する。
【0086】
インピーダンス軌跡算出手段371は、回路モジュール11-1に複数の周波数それぞれの交流電圧を印加して測定された電圧V及び電流Iに基づいて、インピーダンスを算出する。これによって、インピーダンス軌跡算出手段371は、インピーダンスの周波数依存性を示すインピーダンス軌跡(第2のインピーダンス軌跡)を算出する。
【0087】
そして、判定手段372は、インピーダンス軌跡算出手段371によって算出されたインピーダンス軌跡(第2のインピーダンス軌跡)と、インピーダンス軌跡予測手段283によって予測されたインピーダンス軌跡(第1のインピーダンス軌跡)とに基づいて回路モジュール11-1の異常状態を判定する。具体的には、判定手段372は、第1のインピーダンス軌跡と第2のインピーダンス軌跡との差に基づいて回路モジュール11-1の異常状態を判定してもよい。
【0088】
例えば、判定手段372は、第1のインピーダンス軌跡と第2のインピーダンス軌跡との差が小さいほど大きい値を示す正常度を、機械学習によって学習された学習モデルを用いて、算出してもよい。そして、判定手段372は、正常度が閾値以上であるか否かを判定してもよい。判定手段372は、正常度が閾値以上であると判定した場合、回路モジュール11-1が異常状態でないと判定する。また、判定手段372は、正常度が閾値未満であると判定した場合、回路モジュール11-1の異常状態を判定する。
【0089】
同様にして、判定手段372は、回路モジュール11-2~11-Nについてそれぞれ生成された温度変化モデルに基づいて、回路モジュール11-2~11-Nの状態を判定してもよい。
【0090】
さらに、判定手段372は、電気機器10が備える回路モジュール11-1~11-Nの1つ以上の状態に基づいて、電気機器10の異常状態を判定してもよい。例えば、判定手段372は、電気機器10が備える1以上の回路モジュール11のいずれもが正常状態であると判定すると、当該電気機器10が正常状態であると判定する。判定手段372は、電気機器10が備える1以上の回路モジュール11のいずれかが異常状態であると判定すると、当該電気機器10が異常であると判定する。
【0091】
なお、上述したように、判定装置30が温度測定部をさらに備える構成において、温度測定部は、交流電圧印加部31、電圧検出部32、電流検出部33、及びフィルタ34が動作しているときの回路モジュール11-1が設置されている環境の温度(測定温度)を測定してもよい。そして、インピーダンス軌跡算出手段371は、温度測定部によって測定された測定温度での、インピーダンス軌跡(第2のインピーダンス軌跡)を算出してもよい。このような構成では、判定手段372は、インピーダンス軌跡算出手段371によって算出された、回路モジュール11のインピーダンスの周波数依存性を示すインピーダンス軌跡(第2のインピーダンス軌跡)と、インピーダンス軌跡予測手段283によって予測された、未設定温度を測定温度とした場合のインピーダンス軌跡(第1のインピーダンス軌跡)とに基づいて回路モジュール11の異常状態を判定してもよい。
【0092】
これにより、例えば、回路モジュール11において、正常状態における温度変化に伴うインピーダンス軌跡の変化と、異常の進行に伴うインピーダンス軌跡の変化との差が小さい場合(例えば、環境の温度が30℃であるときの正常状態であるインピーダンスの軌跡と、環境の温度が50℃であるときの異常状態であるインピーダンスの軌跡との差が小さい場合)、温度測定部によって測定された測定温度でのインピーダンス軌跡(第2のインピーダンス軌跡)を用いることによって、誤検知が発生するのを抑制することができる。
【0093】
(端末装置のソフトウェア構成)
通信部41は、判定装置30よって判定された判定結果を、判定装置30から受信する。制御部44は、受信した判定結果を、表示部43に表示させてもよい。これにより、端末装置40の操作者は、遠隔地においても電気機器10の異常状態を把握することができる。また、制御部44は、受信した判定結果を、記憶部42に記憶させてもよい。
【0094】
通信部41は、情報処理装置20によって生成された温度変化モデルを、情報処理装置20から受信する。制御部44は、受信した温度変化モデルを、表示部43に表示させてもよいし、記憶部42に記憶させてもよい。
【0095】
(情報処理装置の動作を示すフローチャート)
続いて、図10に示すフローチャートを参照して、本発明の一実施形態に係る情報処理装置20の動作について説明する。図10に示すフローチャートは、情報処理装置20が実行する、回路モジュール11のインピーダンスの温度変化モデルを生成するための情報処理方法を示すものである。
【0096】
ステップS101:温度設定部24は、制御部28の制御に基づいて、回路モジュール11が設置されている環境の設定温度を、所定数の設定温度Tのうちの一の設定温度Tに設定する。
【0097】
ステップS102:交流電圧印加部21は、制御部28の制御に基づいて、電源ライン13に印加する予定の複数の周波数fのうちの一の周波数fの交流電圧を、回路モジュール11に接続されている電源ライン13に印加する。
【0098】
ステップS103:電圧検出部22は、電源ライン13の電圧Vを検出する。電流検出部23は、電源ライン13に流れる電流Iを検出する。
【0099】
ステップS104:制御部28は、電圧検出部22が検出した電圧Vと、電流検出部23が検出した電流Iとに基づいて、判定の対象である回路モジュール11のインピーダンスを算出する。
【0100】
ステップS105:制御部28は、電源ライン13に印加する予定の、全ての周波数fの交流電圧が電源ライン13に印加されたかを否か判定する。全ての周波数の交流電圧が電源ライン13に印加されていないと判定された場合(ステップS105のNo)、制御部28は、ステップS106に進む。全ての周波数の交流電圧が電源ライン13に印加されたと判定された場合(ステップS105のYes)、制御部28は、ステップS107に進む。
【0101】
ステップS106:制御部28は、交流電圧の周波数を、電源ライン13に印加する予定の交流電圧の、複数の周波数fのうちの、まだ印加されていない交流電圧の周波数fに変更する。周波数fが変更されると、情報処理装置20は、ステップS102に戻る。
【0102】
ステップS107:制御部28は、電気機器10に含まれている回路モジュール11における、設定温度での、インピーダンスの周波数依存性を示すインピーダンス軌跡を生成する。
【0103】
ステップS108:制御部28は、温度設定部24によって、回路モジュール11が配置されている環境の設定温度が、全ての設定温度に設定されたか否かを判定する。全ての設定温度に設定されていないと判定された場合(ステップS108のNo)、情報処理装置20は、ステップS109に進む。全ての設定温度に設定されたと判定された場合(ステップS108のYes)、情報処理装置20は、ステップS110に進む。
【0104】
ステップS109:温度設定部24は、制御部28の制御に基づいて、回路モジュール11が設置されている環境を所定数の設定温度のうちのまだ設定されていない設定温度に変更する。設定温度が変更されると、情報処理装置20は、ステップS101に戻る。
【0105】
ステップS110:制御部28は、所定数の設定温度での、インピーダンスの周波数依存性に基づいて、周波数ごとに、インピーダンスの温度変化を推定するためのインピーダンス温度変化モデルを生成する。
【0106】
ここで、ステップS110において制御部28がインピーダンス温度変化モデルを生成する動作の詳細を、図11を参照して、説明する。ここでは、絶対値及び偏角の、温度との関係を一次関数で近似する例について説明する。
【0107】
ステップS110-1:制御部28は、所定数の設定温度それぞれのインピーダンス軌跡を用いて、周波数ごとに、所定数の設定温度それぞれでのインピーダンスの絶対値及び偏角を抽出する。
【0108】
ステップS110-2:制御部28は、ステップS110-1で抽出されたインピーダンスの絶対値及び偏角の、設定温度との関係を近似する関数のパラメータを算出する。本例では、制御部28は、上述した数式(4)の係数a及び切片bをパラメータとして算出する。また、制御部28は、当該設定温度と、当該設定温度でのインピーダンスの偏角とを用いて数式(5)の係数c及び切片dをパラメータとして算出する。
【0109】
ここで、図10に戻って、以降の動作を説明する。
【0110】
ステップS111:制御部28は、周波数ごとの温度変化モデルに、設定温度とは異なる未設定温度を入力し、当該未設定温度におけるインピーダンスを出力させることによって、未設定温度におけるインピーダンスの周波数依存性を示すインピーダンス軌跡(第1のインピーダンス軌跡)を予測する。
【0111】
ステップS111の後、通信部26は、制御部28の制御により、第1のインピーダンス軌跡を判定装置30及び端末装置40の1つ以上に送信してもよい。また、記憶部27は、制御部28の制御により、第1のインピーダンス軌跡を記憶してもよい。
【0112】
(判定装置の動作を示すフローチャート)
続いて、図12に示すフローチャートを参照して、本発明の一実施形態に係る判定装置30の動作について説明する。図12に示すフローチャートは、判定装置30が回路モジュール11の異常状態を判定するための判定方法を示すものである。
【0113】
ステップS201:交流電圧印加部31は、制御部37の制御に基づいて、回路モジュール11に接続されている電源ライン13に交流電圧Vを印加する。
【0114】
ステップS202:電圧検出部32は、電源ライン13の電圧を検出する。電流検出部33は、電源ライン13に流れる電流を検出する。
【0115】
ステップS203:インピーダンス算出手段281は、電圧検出部32が検出した電圧と、電流検出部33が検出した電流とに基づいて、回路モジュール11のインピーダンスを算出する。
【0116】
ステップS204:制御部37は、電源ライン13に印加する予定の複数の周波数の交流電圧が全て電源ライン13に印加されたかを否か判定する。全ての周波数の交流電圧が電源ライン13に印加されていないと判定された場合(ステップS204のNo)、制御部37は、ステップS205に進む。全ての周波数の交流電圧が電源ライン13に印加されていると判定した場合(ステップS204のYes)、制御部37は、ステップS206に進む。
【0117】
ステップS205:制御部37は、交流電圧の周波数を、電源ライン13に印加する予定の交流電圧の、複数の周波数fのうちの、まだ印加されていない交流電圧の周波数fに変更する。周波数fが変更されると、判定装置30は、ステップS202に戻る。
【0118】
ステップS206:制御部37は、回路モジュール11における、インピーダンスの周波数依存性を示すインピーダンス軌跡(第2のインピーダンス軌跡)を生成する。
【0119】
ステップS207:制御部37は、ステップS206で生成されたインピーダンス軌跡(第2のインピーダンス軌跡)と、情報処理装置20によって予測されたインピーダンス軌跡(第1のインピーダンス軌跡)とに基づいて、正常度を算出する。
【0120】
ステップS208:制御部37は、正常度が閾値以上であるか否かを判定する。正常度が閾値以上であると判定された場合(ステップS208のYes)、判定装置30は、ステップS209に進む。正常度が閾値未満であると判定された場合(ステップS208のNo)、判定装置30は、ステップS210に進む。
【0121】
ステップS209:制御部37は、回路モジュール11が異常状態でないと判定する。
【0122】
ステップS210:制御部37は、回路モジュール11の異常状態を判定する。
【0123】
ステップS209又はステップS210の後、通信部35は、制御部37の制御により、回路モジュール11についての判定結果を端末装置40に送信してもよい。また、記憶部36は、制御部37の制御により、回路モジュール11についての判定結果を記憶してもよい。
【0124】
また、ステップS209又はステップS210の後、制御部37は、回路モジュール11の判定結果に基づいて、当該回路モジュール11を備える電気機器10が異常状態を判定してもよい。通信部35は、制御部37の制御により、電気機器10についての判定結果を端末装置40に送信してもよい。また、記憶部36は、制御部37の制御により、電気機器10についての判定結果を記憶してもよい。
【0125】
(検証結果)
ここで、本実施形態の情報処理システム1の検証結果について説明する。具体的には、本実施形態の判定装置30が、本実施形態の情報処理装置20によって予測されたインピーダンス軌跡(第1のインピーダンス軌跡)を用いて行った判定結果について、図13A、13B、14A、及び14Bを参照して説明する。
【0126】
図13Aは、本実施形態における、正常状態であることが確認されている回路モジュール11のインピーダンス軌跡を示す正常テストデータの一例を示す図である。図13Bは、本実施形態における、異常状態であることが確認されている回路モジュール11のインピーダンス軌跡を示す異常テストデータの一例を示す図である。
【0127】
判定装置30は、情報処理装置20によって予測されたインピーダンス軌跡(第1のインピーダンス軌跡)と、判定装置30のインピーダンス軌跡算出手段371によって算出された、図13Aに一例を示すインピーダンス軌跡(第2のインピーダンス軌跡)とに基づいて、回路モジュール11の異常状態を判定した。本例における判定において、上述した閾値は-0.15である。その結果、図14Aに示すように、40個の正常テストデータの全てにおいて、正常度が-0.15以上と算出され、これに伴い、全ての正常テストデータに関する回路モジュール11が正常状態であると判定された。すなわち、本実施形態の情報処理システム1によって、正しい判定結果を得ることができることが確認された。
【0128】
また、情報処理システム1は、情報処理装置20によって予測されたインピーダンス軌跡(第1のインピーダンス軌跡)と、判定装置30のインピーダンス軌跡算出手段371によって算出された、図13Bに一例を示すインピーダンス軌跡(第2のインピーダンス軌跡)とに基づいて、回路モジュール11の状態を判定した。その結果、図14Bに示すように、40個の異常テストデータの全てにおいて、正常度が-0.15未満と算出され、これに伴い、異常テストデータの全てに関する回路モジュール11が異常状態であると判定された。すなわち、本実施形態の情報処理システム1によって、正しい判定結果を得ることができることが確認された。
【0129】
以上説明したように、本実施形態に係る情報処理システム1は、所定数の設定温度それぞれで、周波数ごとに算出された、回路モジュール11のインピーダンスに基づいて、周波数ごとに、インピーダンスの温度変化を出力するインピーダンス温度変化モデルを生成するモデル生成手段282と、インピーダンス温度変化モデルに基づいて、設定温度とは異なる未設定温度におけるインピーダンスの周波数依存性を示す第1のインピーダンス軌跡を予測するインピーダンス軌跡予測手段283と、回路モジュール11のインピーダンスの周波数依存性を示す第2のインピーダンス軌跡と、第1のインピーダンス軌跡とに基づいて回路モジュール11の異常状態を判定する判定手段372を含む。これにより、情報処理システム1は、回路モジュール11の、温度に応じたインピーダンス軌跡を、等価回路を用いることなく予測することができる。また、情報処理システム1は、多くの設定温度ではなく、例えば、少ない数(例えば、5(一次関数を用いる場合には2、二次関数を用いる場合には3であってもよい))の設定温度でのインピーダンスを算出することによって生成した温度変化モデルを用いて、任意の温度におけるインピーダンス軌跡を予測することができる。したがって、情報処理システム1は、予め多くの設定温度を設定するような手間を要することなく、インピーダンス軌跡を容易に予測することができる。これに伴い、回路モジュール11の異常状態を容易に判定することができる。
【0130】
また、本実施形態に係る情報処理装置20は、所定数の設定温度それぞれで、周波数ごとに算出された、電気機器10に含まれている回路モジュール11のインピーダンスに基づいて、周波数ごとに、インピーダンスの温度変化を出力するインピーダンス温度変化モデルを生成するモデル生成手段282と、インピーダンス温度変化モデルに基づいて、設定温度とは異なる未設定温度におけるインピーダンスの周波数依存性を示す第1のインピーダンス軌跡を予測するインピーダンス軌跡予測手段283と、を備える。これにより、情報処理システム1は、回路モジュール11の、温度に応じたインピーダンス軌跡を、等価回路を用いることなく予測することができる。また、情報処理システム1は、少ない数(例えば、5(一次関数を用いる場合には2、二次関数を用いる場合には3であってもよい))の設定温度でインピーダンスを算出することによって生成した温度変化モデルを用いて、任意の温度におけるインピーダンス軌跡を予測することができる。したがって、情報処理システム1は、予め、多くの設定温度を設定するような手間を要することなく、インピーダンス軌跡を容易に予測することができる。
【0131】
また、本実施形態に係る情報処理装置20は、インピーダンスの絶対値及び偏角の、温度との関係に基づいて、インピーダンス温度変化モデルを生成する。これにより、情報処理装置20は、電気機器10の、温度に応じたインピーダンス軌跡を高い精度で容易に予測することができる。
【0132】
(変形例)
なお、本実施形態に係る情報処理システム1に、特開2021-21718号公報に記載されている診断システムが備える構成のいずれか1つ以上を組み合わせてもよい。
【0133】
例えば、制御部28は、ノイズ電圧検出手段をさらに備えてもよい。このような構成において、ノイズ電圧検出手段は、電気機器10が実際に使用される環境において電気機器10が稼働しているときに、電気機器10が稼働中に電源ライン13に発生するノイズ電圧の大きさを検出して、記憶部27に記憶させておいてよい。あるいは、ノイズ電圧の大きさは、電気機器10の仕様に応じて定まる値として、あらかじめ記憶部27に記憶しておいてもよい。また、ノイズ電圧検出手段は、記憶部27が記憶しているノイズ電圧に基づいて、電気機器10に応じた値を算出してもよい。この際、ノイズ電圧検出手段は、例えば、記憶部27に記憶したこれらのノイズ電圧に基づいて、学習機能を用いて、電気機器10に応じた値を算出してもよい。
【0134】
また、制御部37は、ノイズ電圧検出手段をさらに備えてもよい。このような構成において、ノイズ電圧検出手段は、電気機器10が実際に使用される環境において電気機器10が稼働しているときに、電気機器10が稼働中に電源ライン13に発生するノイズ電圧の大きさを検出して、記憶部27に記憶させておいてよい。あるいは、ノイズ電圧の大きさは、電気機器10の仕様に応じて定まる値として、あらかじめ記憶部36に記憶しておいてもよい。また、ノイズ電圧検出手段は、記憶部36が記憶しているノイズ電圧に基づいて、電気機器10に応じた値を算出してもよい。この際、ノイズ電圧検出手段は、例えば、記憶部27に記憶したこれらのノイズ電圧に基づいて、学習機能を用いて、電気機器10に応じた値を算出してもよい。
【0135】
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種
々の変形及び修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変
形及び修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段、各ステップ
などに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段又は
ステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0136】
例えば、端末装置40の記憶部42が、制御部44をインピーダンス算出手段281、モデル生成手段282、インピーダンス軌跡予測手段283として機能させるプログラムの少なくとも1つを記憶していてもよい。この場合、端末装置40が、情報処理装置20の代わりに、インピーダンス算出手段281、モデル生成手段282、インピーダンス軌跡予測手段283のうちの少なくとも1つの手段による機能を実行してもよい。
【0137】
また、端末装置40の記憶部42が、制御部44をインピーダンス軌跡算出手段371、判定手段372として機能させるプログラムの少なくとも1つを記憶していてもよい。この場合、端末装置40が、情報処理装置20の代わりに、インピーダンス軌跡算出手段371、判定手段372のうちの少なくとも1つの手段による機能を実行してもよい。
【0138】
また、上述した実施形態において、情報処理装置20及び判定装置30の1つ以上が電気機器10のベースボード12と一体として構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0139】
1 情報処理システム
10 電気機器
11、11-1、11-2、11-N 回路モジュール
12 ベースボード
13 電源ライン
14 GNDライン
20 情報処理装置
21 交流電圧印加部
22 電圧検出部
23 電流検出部
24 温度設定部
25 フィルタ
26 通信部
27 記憶部
28 制御部
281 インピーダンス算出手段
282 モデル生成手段
283 インピーダンス軌跡予測手段
30 情報処理装置
31 交流電圧印加部
32 電圧検出部
33 電流検出部
34 フィルタ
35 通信部
36 記憶部
37 制御部
371 インピーダンス軌跡算出手段
372 判定手段
40 端末装置
41 通信部
42 記憶部
43 表示部
44 制御部
50 ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B