(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116159
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】麺皮類用穀粉組成物、及びこれを用いた麺皮類の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20230815BHJP
【FI】
A23L7/109 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018797
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】301049777
【氏名又は名称】日清製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 久美子
(72)【発明者】
【氏名】宮田 敦行
(72)【発明者】
【氏名】長井 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】津田 恭征
(72)【発明者】
【氏名】豊田 肇
(72)【発明者】
【氏名】町田 多恵
【テーマコード(参考)】
4B046
【Fターム(参考)】
4B046LA09
4B046LC01
4B046LG29
4B046LG53
(57)【要約】
【課題】生地の二次加工性に優れ、かつ良好な食感を有する麺皮類の提供。
【解決手段】AOAC2011.25法で分析される食物繊維量が20質量%以上の高食物繊維小麦粉を、穀粉中に15~100質量%含有する、麺皮類用穀粉組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
AOAC2011.25法で分析される食物繊維量が20質量%以上の高食物繊維小麦粉を、穀粉中に15~100質量%含有する、麺皮類用穀粉組成物。
【請求項2】
前記高食物繊維小麦粉における、コンカナバリンA法で分析された総澱粉中のアミロース含有量が30質量%以上である、請求項1記載の穀粉組成物。
【請求項3】
前記高食物繊維小麦粉がSBEIIaの活性が低い改変小麦由来の小麦粉である、請求項1又は2記載の穀粉組成物。
【請求項4】
前記麺皮類が春巻皮、餃子の皮、焼売の皮、ワンタンの皮、又は小籠包の皮である、請求項1~3のいずれか1項記載の穀粉組成物。
【請求項5】
AOAC2011.25法で分析される食物繊維量が20質量%以上の高食物繊維小麦粉を、穀粉中に15~100質量%含有する原料粉を用いる、麺皮類の製造方法。
【請求項6】
前記高食物繊維小麦粉における、コンカナバリンA法で分析された総澱粉中のアミロース含有量が30質量%以上である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記高食物繊維小麦粉がSBEIIaの活性が低い改変小麦由来の小麦粉である、請求項5又は6記載の方法。
【請求項8】
前記麺皮類が春巻皮、餃子の皮、焼売の皮、ワンタンの皮、又は小籠包の皮である、請求項5~7のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麺皮類用穀粉組成物、及びこれを用いた麺皮類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
餃子、焼売、春巻、小籠包などの麺皮食品は、具材を包む麺皮の食感が良いものが好まれる。また、これらの麺皮食品は、製造後すぐに食されるだけでなく、常温、冷蔵又は冷凍で保存された後、電子レンジで再加熱して食されることが少なくないため、電子レンジで再加熱された後にも食感の良さを保つことができることが望まれる。
【0003】
近年、食物繊維素材を配合した生地から製造される食品が提供されている。しかし、従来の食物繊維を多く含む生地は、作業性が低く、また該生地から得られた食品は食感が低下しがちである。特許文献1には、水不溶性食物繊維(IDF)と水溶性高分子食物繊維(HSDF)の総量が5質量%以下であり、水溶性低分子食物繊維(LSDF)の量が25質量%以上である加工澱粉からなる水溶性食物繊維強化剤、これをベーカリー食品や麺などの食品に使用すること、及び該食物繊維強化剤を添加した食品の食感が良好であることが記載されている。特許文献2には、粉原料中に難消化性澱粉が1~50質量%含有されている春巻皮が、生地焼成時にベタつきや脆さがなく作業性が良好であり、且つ調理後の経時的な食感低下や電子レンジ等で再加熱した際の食感低下が抑制されることが記載されている。特許文献3には、揚げ春巻の皮用の組成物に膨潤度5以下の膨潤度抑制澱粉を配合すること、該揚げ春巻の皮が経時的な食感低下や電子レンジ等で調理した際の食感低下が抑えられていること、該膨潤度抑制澱粉としてハイアミロース澱粉を使用できることが記載されている。
【0004】
穀物に含まれる澱粉にはアミロースとアミロペクチンが含まれる。アミロースは、消化酵素による消化性が悪く、そのため、ヒトの消化酵素で消化されない難消化性成分、すなわち食物繊維として機能し得、難消化性澱粉に分類される。高アミロース澱粉としては、高アミロース型トウモロコシ由来の高アミロースコーンスターチがよく知られている。また近年、澱粉合成に関連する酵素に変異を有することでアミロース含量を増加させた高アミロース小麦が開発されている(非特許文献1、2)。特許文献4~7には、澱粉分枝酵素SBEIIaの遺伝子の点変異を有し、SBEIIaの活性が低下しており、穀粒に含まれる澱粉のアミロース含有量が高い高アミロース小麦が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-95316号公報
【特許文献2】特開2015-156807号公報
【特許文献3】特開2003-199518号公報
【特許文献4】特表2007-504803号公報
【特許文献5】特表2008-526690号公報
【特許文献6】特表2015-504301号公報
【特許文献7】特表2019-527054号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J Jpn Assoc Dietary Fiber Res, 2003, 7(1):20-25
【非特許文献2】Trends in Food Science and Technology, 2006, 17:448-456
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、食物繊維を豊富に含有しているにもかかわらず生地の二次加工性に優れ、かつ良好な食感を有する麺皮類を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、AOAC2011.25法で分析される食物繊維量が20質量%以上の高食物繊維小麦粉を、穀粉中に15~100質量%含有する、麺皮類用穀粉組成物を提供する。
また本発明は、AOAC2011.25法で分析される食物繊維量が20質量%以上の高食物繊維小麦粉を、穀粉中に15~100質量%含有する原料粉を用いる、麺皮類の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の穀粉組成物によれば、食物繊維を豊富に含有しているにもかかわらず二次加工性に優れた麺皮類用生地を製造することができる。本発明の穀粉組成物を用いて製造した麺皮類は、焼き、茹で、蒸し、油ちょうなどの様々な方法で調理したときにいずれも良好な食感を有することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、麺皮類用穀粉組成物、及びそれを用いる麺皮類の製造方法を提供する。本発明で製造される麺皮類は、その原料穀粉中に、AOAC2011.25法で分析される食物繊維量が20質量%以上である高食物繊維小麦粉を含有することを特徴とする。従前、食品成分表又は食品表示基準における食物繊維の分析方法としては、プロスキー法(AOAC985.29法)、プロスキー変法(AOAC991.43法)、AOAC2001.03法などが採用されていた。しかし、これらの方法で分析される食物繊維には、コーデックス食品委員会が定義した食物繊維(ALINORM 09/32/26)のうち、一部の難消化性澱粉、イヌリン、大豆オリゴ糖などの低分子量水溶性食物繊維が含まれていなかった。これに対し、AOAC2011.25法は、一部の難消化性澱粉、イヌリン、大豆オリゴ糖などの低分子量水溶性食物繊維も分析可能な方法である。好ましくは、本発明で使用される高食物繊維小麦粉における、AOAC2011.25法で分析される食物繊維量は、20~50質量%であり、より好ましくは25~48質量%である。
【0011】
本発明で使用される高食物繊維小麦粉は、含有する澱粉自体が難消化性であるために食物繊維含有量が高い小麦粉である。本発明で使用される高食物繊維小麦粉の例としては、高アミロース小麦由来の小麦粉が挙げられる。好ましくは、本発明で使用される高食物繊維小麦粉は、アミロース含量が30質量%以上の高アミロース小麦粉である。より好ましくは、アミロース含量が35質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上の高アミロース小麦粉が使用される。本発明で使用される高食物繊維小麦粉は、澱粉自体の難消化性に起因せずに難消化性を示す小麦粉、例えばふすま由来の食物繊維(セルロース等)の存在により難消化性を示す小麦粉(ふすま粉、上記の高アミロース小麦に由来しない全粒粉など)とは区別される。
【0012】
小麦粉のアミロース含有量とは、該小麦粉に含まれる総澱粉中のアミロース含有量をいう。本明細書における小麦粉のアミロース含有量は、コンカナバリンA(ConA)法により分析された値として定義され、例えば、該小麦粉をMegazyme社のアミロース/アミロペクチン分析キット(AMYLOSE/AMYLOPECTIN ASSAY KIT)で分析することで測定することができる。従来一般的なアミロース含有量の分析方法としては、(1) アミロースのヨウ素に対する結合能の高さを利用した方法(ヨウ素親和力測定法;例えば電流滴定法、比色定量法、AACC61-03法など)、(2) アミロペクチンとConAが特異的に結合することを利用した方法(ConA法)が知られている。しかし(1)を利用した方法ではアミロース量がより高く算出される傾向がある。例えば、非特許文献1や非特許文献2に記載されるSGP-1遺伝子の機能欠失型変異(null変異)を有する高アミロース小麦粉のアミロース含有量は、ヨウ素親和力測定法では37質量%程度であるが、ConA法では31質量%程度である。なお、従来一般的な小麦粉のアミロース含有量は、ヨウ素法では32質量%未満、ConA法では28質量%未満である。
【0013】
本発明において高食物繊維小麦粉として使用され得る高アミロース小麦粉の例としては、澱粉分枝酵素SBEIIaの活性が低い改変小麦由来の小麦粉が挙げられる。そのような改変小麦由来の小麦粉の例としては、特許文献4~7に記載される、SBEIIaの遺伝子の変異を有し、SBEIIaの活性が低下している高アミロース小麦由来の小麦粉が挙げられる。より具体的な例としては、穀粒中のSBEIIaタンパク質の量又は活性が野生型小麦穀粒中の量又は活性の2%よりも低い高アミロース小麦由来の小麦粉、1つ以上、例えば1つ又は2つのSBEIIa遺伝子のnull変異を有する高アミロース小麦由来の小麦粉、などが挙げられる。
【0014】
例えば、本発明で使用される高食物繊維小麦粉は、前述した高アミロース小麦の穀粒を通常の手順で製粉することによって製造することができる。例えば、本発明で使用される高食物繊維小麦粉は、該高アミロース小麦の穀粒の胚乳画分のみを実質的に含む小麦粉であってもよく、又は、該高アミロース小麦の穀粒の胚乳画分に加えてさらに胚芽やふすま画分を含む小麦粉(例えば全粒粉)であってもよい。
【0015】
本発明で使用される高食物繊維小麦粉は、灰分が、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.2~0.8質量%である。本明細書における小麦粉の灰分は、直接灰化法(ISS Standard Methods No.104/1)に従って測定した値をいう。
【0016】
本発明において、前述した高食物繊維小麦粉は、麺皮類の原料穀粉として使用される。すなわち、該高食物繊維小麦粉を含有する原料穀粉は、麺皮類用穀粉組成物において使用され、該穀粉組成物を用いて麺皮類が製造される。当該原料穀粉のうち、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上が該高食物繊維小麦粉である。他方、当該原料穀粉中の該高食物繊維小麦粉の量は、100質量%以下であればよく、例えば90質量%以下又は80質量%以下であり得る。したがって、本発明の麺皮類用穀粉組成物における該高食物繊維小麦粉の含有量は、該穀粉組成物に含まれる穀粉の全質量中、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上であり、かつ100質量%以下であればよく、又は90質量%以下もしくは80質量%以下であってもよい。
【0017】
本発明の麺皮類用穀粉組成物は、前述した高食物繊維小麦粉以外の他の穀粉を含有していてもよい。当該他の穀粉の例としては、前述した高食物繊維小麦粉以外の小麦粉(典型的にはアミロース含有量が28質量%未満の小麦粉)、米粉、コーンフラワー、大麦粉、モチ大麦粉、そば粉、大豆粉、オーツ麦粉、ライ麦粉、はとむぎ粉、ひえ粉、あわ粉などが挙げられ、これらのいずれか1種又は2種以上を使用することができる。好ましくは、該他の穀粉は該高食物繊維小麦粉以外の小麦粉であり、その例としては、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉、全粒粉、ふすま粉、熱処理小麦粉などから選択される1種又は2種以上が挙げられる。
【0018】
本発明の麺皮類用穀粉組成物は、前記高食物繊維小麦粉を含有する原料穀粉以外に、他の材料を含有することができる。当該他の材料としては、麺皮類の製造に通常使用され得るもの、例えば、澱粉類、食塩、小麦蛋白質(グルテン)、大豆蛋白質、乳蛋白質、卵黄粉、卵白粉、全卵粉、脱脂粉乳等の蛋白質素材、乳類、増粘多糖類(ローカストビーンガム、ジェランガム、グアーガム、キサンタン ガム、カラギーナン等)、アミノ酸(アラニン、グリシン、リジン等)、油脂類、乳化剤、膨張剤、かんすい、焼成カルシウム、食物繊維、甘味料、香辛料、調味料、ビタミン、ミネラル類、栄養強化剤、デキストリン(難消化性含む)、保水剤、保存剤、酵素剤、pH調整剤、アルコール、着色料、香料、イースト、色素、酸化還元剤などが挙げられ、これらのいずれか1種又は2種以上を使用することができる。該澱粉類としては、例えば、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉等の澱粉、及びこれらにα化、アセチル化、エーテル化、エステル化、酸化処理、架橋処理等の処理を施した加工澱粉が挙げられる。
【0019】
本発明の麺皮類用穀粉組成物における、穀粉の総量、ならびに他の材料の配合量は、製造する麺皮類の種類や所望される性質に応じて適宜変更することができる。好ましくは、該穀粉組成物における穀粉(前記高食物繊維小麦粉及び他の穀粉を含む)の総量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。
【0020】
本発明で提供される麺皮類は、原料粉として前記本発明の麺皮類用穀粉組成物を用いる以外は、通常の手順に従って製造することができる。具体的には、本発明の麺皮類用穀粉組成物を用いて生地を調製し、次いで必要に応じてこれを形成又は焼成することで麺皮類を製造することができる。
【0021】
好適には、前述した麺皮の原料粉を水分とともに混合することで、麺皮の生地を調製する。生地の調製に使用する水分としては、水、塩水、ガス含有水(炭酸水等)、かん水、酸性水溶液、アルカリ水溶液などが挙げられる。使用する水分の量は、製造する麺皮の種類に応じて適宜調整すればよいが、原料粉100質量部に対して、春巻皮の生地の場合は100~180質量部が好ましく、餃子、焼売、ワンタン、小龍包の皮の生地の場合は25~60質量部が好ましい。生地の調製の際には、必要に応じて油脂、卵液、及び上述したその他の材料などを添加してもよい。
【0022】
春巻皮の生地の調製の際には、最初に生地のpHを酸性域又はアルカリ性域に調整し、次いで該生地のpHを中性付近に再調整すると好ましい。このように生地のpHを調整することにより、春巻皮の食感がより向上する。生地のpH調整の手順は、特開2009-044986号公報の記載に準じて行うことができる。すなわち、最初に生地を酸性域に調整する場合、好ましくはpH3.0~5.5、より好ましくはpH3.0~4.5の範囲に生地のpHを調整する。一方、最初に生地をアルカリ性域に調整する場合、好ましくはpH8.0~10.5、より好ましくはpH9.0~10.5の範囲に生地のpHを調整する。いずれの場合も、上記の最初のpH調整の後、生地のpHを中性付近、好ましくはpH6.0~7.5、より好ましくはpH6.0~7.0の範囲に再調整する。最初のpH調整の際に生地のpHが3.0未満又は10.5超であると、後でpHを中性付近に再調整しても、生地焼成時の作業性が悪くなるか、又は生地に酸味、もしくはアルカリ剤に由来するえぐみが残ることがある。また、pH再調整した生地のpHが6.0未満又は7.5超である場合も、生地焼成時の作業性が悪くなるか、又は生地に酸味、もしくはアルカリ剤に由来するえぐみが残ることがある。一方、pH調製せずに通常の手順で生地を調製してもよく、その場合の生地のpHは、好ましくはpH6.0~7.5、より好ましくはpH6.0~7.0の範囲であるとよい。
【0023】
生地のpH調整には、食品に通常使用される酸性剤及びアルカリ剤を用いることができる。すなわち、pHを下げたい場合には酸性剤を、pHを上げたい場合にはアルカリ剤を用いればよい。酸性剤としては、例えば、酢酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸、酒石酸、アスコルビン酸等の有機酸、及びその塩などが挙げられ、これらを単独又はいずれか2種以上組み合わせて用いることができる。アルカリ剤としては、例えば、かんすい、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、縮合リン酸塩、焼成カルシウム、塩基性アミノ酸などが挙げられ、これらを単独又はいずれか2種以上組み合わせて用いることができる。
【0024】
上記の酸性剤又はアルカリ剤は、原料粉、すなわち本発明の麺皮類用穀粉組成物に含有されていてもよく、生地調製時に水分とともに該ミックスに添加されてもよく、又は一旦生地を調製した後、該生地に添加されてもよい。また、生地のpHの再調整は、最初に生地のpHを酸性域又はアルカリ性域に調整した直後に行ってもよく、最初のpH調整の後、生地を数時間~一晩置いてから行ってもよく、又は生地の焼成直前に行ってもよい。
【0025】
次いで、調製した生地から麺皮類を製造する。例えば、餃子、焼売、ワンタン、小龍包の皮の生地の場合、調製した生地をまとめ、次いで分割及び圧延するか、又は圧延及び成形することで生麺皮類を製造することができる。麺皮類の生地の調製、及び生地からの生麺皮の製造の手順は、常法に従えばよく、例えば、市販の麺皮製造機を用いることができる。必要に応じて、製造した生地を所望の形に裁断してもよい。
【0026】
春巻皮の生地は、流動状の生地を、加熱ドラム上に薄く塗布するか又は回転する加熱ドラム上に流し入れて、シート状に焼成することで製造することができる。必要に応じて、焼成したシート状の生地を所望の形に裁断してもよい。
【0027】
製造された生麺皮は、麺皮食品の製造に用いることができる。本明細書において「麺皮食品」とは、具材を麺皮で包むことで製造される食品であり、例えば、春巻、餃子、焼売、ワンタン、小龍包(包子)、ラビオリなどが挙げられる。このうち、春巻、餃子、焼売、ワンタン、小籠包が好ましい例として挙げられる。したがって、本発明で製造される麺皮は、麺皮食品の皮として使用され得る。好ましくは、本発明で製造される麺皮類は、油ちょう、蒸し調理、茹で調理、又は焼き調理用の麺皮類であり、より好ましくは春巻、餃子、焼売、ワンタン又は小籠包の皮である。本発明で製造される麺皮類の生地は、食物繊維を豊富に含有しているにもかかわらず二次加工性に優れているので、包餡等の作業が比較的容易である。
【0028】
製造された生麺皮を、必要に応じて具材を包んだ後、加熱調理、好ましくは油ちょう、蒸し調理、茹で調理、又は焼き調理することで、調理済み麺皮食品が製造される。あるいは、製造された生麺皮を冷蔵又は冷凍保存してもよい。あるいは、製造された生麺皮で具材を包んで未調理の麺皮食品を製造し、これを冷蔵又は冷凍保存してもよい。
【0029】
本発明の麺皮用小麦粉を含む麺皮から製造された調理済み麺皮食品は、良好な食感を有することができる。例えば、本発明で提供される麺皮類は、焼き、茹で、又は蒸し調理した場合には、ヒキがない、くちゃつきが少ない、弾力がある、などの良好な食感を有することができ、さらに調理後に電子レンジで再加熱された場合にもガミーな食感になりにくく良好な食感を維持することができる。また本発明で提供される麺皮類は、油ちょうした場合にも、ヒキが少ない、適度な硬さはあるが歯切れが良い、などの良好な食感を有することができる。
【実施例0030】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0031】
材料
・高アミロース小麦由来小麦粉(HAW):SBEIIa変異遺伝子を有する、SBEIIaの発現量の低い小麦穀粒から得られた高食物繊維小麦粉。食物繊維量:28.9質量%、アミロース含有量47.4質量%(総澱粉中)、灰分0.57質量%。
・準強力粉:食物繊維2.7質量%、アミロース含有量25.1質量%(総澱粉中)、灰分0.34質量%。
・ハイアミロースコーンスターチ:食物繊維59.9質量%、アミロース含有量86.5質量%(総澱粉中)。
食物繊維量はAOAC2011.25法により測定した。アミロース含量はアミロース/アミロペクチン分析キット(Megazyme社)により測定した。
【0032】
試験例1 春巻
表1記載の原料粉100質量部、水適量(125~130質量部)、食塩1質量部を市販の縦軸ミキサー(愛工舎製、商品名「卓上KENMIX」)に投入し、低速で30秒間、続いて中速で1分間混合して、流動状生地(pH6.4)を調製した。生地のpH調整を行う場合、調製した生地に酢酸を加えてpHを酸性(pH4.1)に調整した後、炭酸ナトリウムを加えてpHを中性付近(pH6.4)に再調整するか〔酸→中性〕、又は、調製した生地に炭酸ナトリウムを加えてpHをアルカリ性(pH9.3)に調整した後、酢酸を加えてpHを中性付近(pH6.4)に再調整した〔アルカリ→中性〕。調製した流動状生地を、ドラム型焼成機を用いてそのドラム面上で焼成し、厚さ0.5~0.55mmの帯状の春巻皮を製造した。流動状生地の焼成時の二次加工性を10名の訓練されたパネラーにより下記評価基準で評価し、選択した人数が多かった評価を採用した。
<評価基準>
(二次加工性)
○:焼成の作業について支障が無い
△:生地がべたつき、はがれづらく焼成作業にやや支障がある
【0033】
製造した春巻皮を190mm×190mmにカットし、カットした春巻皮の上に予め調理しておいた具材を載せて該春巻皮を巻き上げ、-40℃で冷凍した後、175~180℃のサラダ油で油ちょうして揚げ春巻を製造した。製造した揚げ春巻を4時間常温(25℃)放置した後、その食感を10名の訓練されたパネラーにより下記評価基準で評価し、10名の評価の平均点を求めた。結果を表1に示す。
<評価基準>
(硬さ、歯切れ)
5点:対照よりも硬さ、歯切れに優れる
4点:対照よりも硬さ、歯切れにやや優れる
3点:対照と同等である
2点:対照よりも硬さ、歯切れにやや劣る
1点:対照よりも硬さ、歯切れに劣る
(ヒキ)
5点:対照よりもヒキが弱く、優れる
4点:対照よりもヒキがやや弱く、やや優れる
3点:対照と同等である
2点:対照よりもヒキがやや強く、やや劣る
1点:対照よりもヒキが強く、劣る
【0034】
【0035】
試験例2 餃子
(1)生餃子の製造
表2記載の原料粉100質量部、水適量(34~44質量部)、食塩1質量部を混合し、市販の横型ミキサーにて高速で10分間混捏して生地を調製した。得られた生地を圧延及び切断して、厚さ約0.9mm、直径約90mmの餃子皮を製造した。製造した餃子皮の上に、皮1枚につき約15gの餃子具材を載せ、常法に従って具材を皮で包み込んで生餃子を製造した。皮の包餡時の作業性を10名の訓練されたパネラーにより下記評価基準で評価し、選択した人数が多かった評価を採用した。
<評価基準>
(作業性)
○:包餡作業について支障が無い
△:生地がべたつき、包餡作業にやや支障がある
【0036】
(2)焼き餃子
熱したフライパンに油をひき、(1)で製造した生餃子を並べ、餃子1個あたり20gの水を入れて蓋をし、蒸し焼きにした。7~8分程焼き、ふたを開けて水を飛ばし、油を回し入れて焼き目を付けて焼き餃子を製造した。製造した焼き餃子の皮の食感を、10名の訓練されたパネラーにより下記評価基準に従って評価し、10名の評価の平均点を求めた。結果を表2に示す。
<評価基準>
(ヒキ)
5点:対照よりもヒキが弱く、優れる
4点:対照よりもヒキがやや弱く、やや優れる
3点:対照と同等である
2点:対照よりもヒキがやや強く、やや劣る
1点:対照よりもヒキが強く、劣る
(くちゃつき)
5点:対照よりもくちゃつきが少なく、優れる
4点:対照よりもくちゃつきがやや少なく、やや優れる
3点:対照と同等である
2点:対照よりもくちゃつきがやや強く、やや劣る
1点:対照よりもくちゃつきが強く、劣る
(皮の弾力)
5点:対照よりも弾力に優れる
4点:対照と同等である
3点:対照よりも弾力がわずかに劣るが、良好ではある
2点:対照よりも弾力がやや劣る
1点:対照よりも弾力が劣る
【0037】
(3)レンジ再加熱餃子
(1)で製造した生餃子を蒸し器で3分間蒸した後、フライパンに油をひいて蒸し餃子を並べ加熱して焼き目を付けた。調理した焼き餃子を6個ずつ容器に入れて5℃で24時間保管した後、電子レンジで1600W25秒再加熱した。40℃に冷ました餃子の皮のガミー感及び食感(くちゃつき)を、10名の訓練されたパネラーにより下記、及び(2)と同じ評価基準に従って評価し、10名の評価の平均点を求めた。結果を表2に示す。
<評価基準>
(ガミー感)
5点:対照よりもガミー感が弱い
4点:対照よりもガミー感がやや弱い
3点:対照と同等のガミー感である
2点:対照よりもガミー感がやや強い
1点:対照よりもガミー感が強い
【0038】
(4)水餃子
(1)で製造した生餃子を沸騰したお湯で、餃子が浮いてくるまで(3分程度)茹で、水餃子を製造した。製造した水餃子の皮の食感(くちゃつき)を、10名の訓練されたパネラーにより(2)と同様の評価基準に従って官能評価し、10名の評価の平均点を求めた。結果を表2に示す。
【0039】
(5)揚げ餃子
(1)で製造した生餃子を160~170℃のサラダ油できつね色になるまで油ちょうし、揚げ餃子を製造した。製造した揚げ餃子の皮の食感を、10名の訓練されたパネラーにより下記評価基準に従って官能評価し、10名の評価の平均点を求めた。結果を表2に示す。
<評価基準>
(硬さ、歯切れ)
5点:対照よりも硬さ、歯切れに優れる
4点:対照よりも硬さ、歯切れにやや優れる
3点:対照と同等である
2点:対照よりも硬さ、歯切れにやや劣る
1点:対照よりも硬さ、歯切れに劣る
【0040】
【0041】
試験例3 焼売
(1)生焼売の製造
表2記載の原料粉100質量部に、食塩1質量部を水36質量部に添加した食塩水を加えて10分間混合し、そぼろ状の生地を調製した。得られた生地を製麺ロールにてロール間隙3.2mmで麺帯にまとめ、ビニール袋中で2時間熟成させた。熟成後の麺帯を再度製麺ロールにて圧延し、約0.5mm厚の麺帯にした後、形状7×7cmの正方形に裁断して焼売皮を得た。製造した焼売皮に1枚あたり約18gの具材を詰めて成型し、生焼売を製造した。皮の包餡時の作業性を10名の訓練されたパネラーにより下記評価基準で評価し、選択した人数が多かった評価を採用した。
<評価基準>
(作業性)
○:包餡作業について支障が無い
△:生地がべたつき、包餡作業にやや支障がある
【0042】
(2)蒸し焼売
1)で製造した生焼売を0.5気圧で8分間蒸しあげ、その後直ちに急速凍結し、-20℃にて10日間保存した後、冷凍された焼売を蒸し調理し、蒸し焼売を製造した。製造した蒸し焼売の食感を10名の訓練されたパネラーにより下記評価基準で評価し、10名の評価の平均点を求めた。結果を表3に示す。
<評価基準>
(くちゃつき)
5点:対照よりもくちゃつきが少なく、優れる
4点:対照よりもくちゃつきがやや少なく、やや優れる
3点:対照と同等である
2点:対照よりもくちゃつきがやや強く、やや劣る
1点:対照よりもくちゃつきが強く、劣る
(皮の弾力)
5点:対照よりも弾力に優れる
4点:対照と同等である
3点:対照よりも弾力がわずかに劣るが、良好ではある
2点:対照よりも弾力がやや劣る
1点:対照よりも弾力が劣る
【0043】
(3)レンジ再加熱焼売
1)で製造した生焼売を0.5気圧で8分間蒸しあげ、6個ずつ容器に入れて5℃で24時間保管した後、電子レンジで1600W25秒再加熱し、そのガミー感及び食感(くちゃつき)を、10名の訓練されたパネラーにより下記、及び(2)と同じ評価基準に従って評価し、10名の評価の平均点を求めた。結果を表3に示す。
<評価基準>
(ガミー感)
5点:対照よりもガミー感が弱い
4点:対照よりもガミー感がやや弱い
3点:対照と同等のガミー感である
2点:対照よりもガミー感がやや強い
1点:対照よりもガミー感が強い
【0044】