(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116194
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 25/02 20060101AFI20230815BHJP
F04C 29/12 20060101ALI20230815BHJP
F04C 18/18 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
F04C25/02 K
F04C29/12 A
F04C18/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018854
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】大渕 真志
(72)【発明者】
【氏名】塩川 篤志
【テーマコード(参考)】
3H129
【Fターム(参考)】
3H129AA06
3H129AA15
3H129AB06
3H129BB36
3H129CC03
3H129CC25
(57)【要約】
【課題】気体に含まれる粉体をロータ室から良好に排出することができる真空ポンプを提供する。
【解決手段】真空ポンプ1は、ロータ5室を内部に有するポンプケーシング6と、ロータ室5内に配置された一対のルーツロータ8と、一対のルーツロータ8を支持する一対の回転軸9を備える。ポンプケーシング6は、ロータ室5に連通する気体入口12および気体出口13を有しており、ロータ室5を形成する内壁22と、気体出口13を形成する内壁23との接続部25は、各ルーツロータ8の回転中心RCおよび下死点LPを通って延びるロータ中心線CL上に位置しているか、またはロータ中心線CLよりも外側に位置している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのロータ室を内部に有するポンプケーシングと、
前記ロータ室内に配置された少なくとも一対のルーツロータと、
前記一対のルーツロータを支持する少なくとも一対の回転軸を備え、
前記ポンプケーシングは、前記ロータ室に連通する気体入口および気体出口を有しており、
前記ロータ室を形成する内壁と、前記気体出口を形成する内壁との接続部は、各ルーツロータの回転中心および下死点を通って延びるロータ中心線上に位置しているか、または前記ロータ中心線よりも外側に位置している、真空ポンプ。
【請求項2】
前記気体出口の幅は、前記気体入口の幅よりも大きい、請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項3】
前記一対のルーツロータは、一対の二葉ルーツロータであり、前記回転中心から前記接続部までの直線の前記ロータ中心線に対する角度は、0度~35度の範囲内にある、請求項1または2に記載の真空ポンプ。
【請求項4】
前記一対のルーツロータは、一対の三葉ルーツロータであり、前記回転中心から前記接続部までの直線の前記ロータ中心線に対する角度は、0度~45度の範囲内にある、請求項1または2に記載の真空ポンプ。
【請求項5】
前記少なくとも一対のルーツロータは、一対の第1ルーツロータと、気体の移送方向において前記一対の第1ルーツロータの下流側に配置された一対の第2ルーツロータを含み、
前記少なくとも1つのロータ室は、前記一対の第1ルーツロータが配置される第1ロータ室と、前記一対の第2ルーツロータが配置される第2ロータ室を含み、
前記ポンプケーシングは、前記第1ロータ室に連通する第1気体入口および第1気体出口と、前記第2ロータ室に連通する第2気体入口および第2気体出口を有しており、
前記第1ロータ室を形成する内壁と、前記第1気体出口を形成する内壁との第1接続部は、各第1ルーツロータの回転中心および下死点を通って延びる第1ロータ中心線よりも外側に位置しており、
前記第2ロータ室を形成する内壁と、前記第2気体出口を形成する内壁との第2接続部は、各第2ルーツロータの回転中心および下死点を通って延びる第2ロータ中心線上に位置しているか、または前記第2ロータ中心線よりも外側に位置しており、
前記第1気体出口の幅は、前記第2気体出口の幅よりも大きい、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の真空ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプに関し、特に半導体デバイス、液晶パネル、LED、太陽電池等の製造に使用されるプロセスガスを排気する用途に好適に使用される真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、液晶パネル、LED、太陽電池等を製造する製造プロセスにおいては、プロセスガスをプロセスチャンバ内に導入してエッチング処理やCVD処理等の各種処理を行っている。プロセスチャンバに導入されたプロセスガスは、真空ポンプによって排気される。一般に、高い清浄度が必要とされるこれらの製造プロセスに使用される真空ポンプは、気体の流路内にオイルを使用しない、いわゆるドライ真空ポンプである。このようなドライ真空ポンプの代表例として、ロータ室内に配置された一対のルーツロータを互いに反対方向に回転させて、気体を移送する容積式真空ポンプがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プロセスガスは、副生成物からなる粉体を含むことがある。このような粉体は、プロセスガスとともに真空ポンプ内に流入する。粉体の大部分は、プロセスガスとともに真空ポンプから排出されるが、粉体の一部はロータ室内に留まり、ロータ室内に徐々に堆積する。粉体は、ロータ室の内壁およびルーツロータの外面上に堆積し、結果としてルーツロータの回転が阻害されてしまうことがある。
【0005】
そこで、本発明は、気体に含まれる粉体をロータ室から良好に排出することができる真空ポンプを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、少なくとも1つのロータ室を内部に有するポンプケーシングと、前記ロータ室内に配置された少なくとも一対のルーツロータと、前記一対のルーツロータを支持する少なくとも一対の回転軸を備え、前記ポンプケーシングは、前記ロータ室に連通する気体入口および気体出口を有しており、前記ロータ室を形成する内壁と、前記気体出口を形成する内壁との接続部は、各ルーツロータの回転中心および下死点を通って延びるロータ中心線上に位置しているか、または前記ロータ中心線よりも外側に位置している、真空ポンプが提供される。
【0007】
一態様では、前記気体出口の幅は、前記気体入口の幅よりも大きい。
一態様では、前記一対のルーツロータは、一対の二葉ルーツロータであり、前記回転中心から前記接続部までの直線の前記ロータ中心線に対する角度は、0度~35度の範囲内にある。
一態様では、前記一対のルーツロータは、一対の三葉ルーツロータであり、前記回転中心から前記接続部までの直線の前記ロータ中心線に対する角度は、0度~45度の範囲内にある。
一態様では、前記少なくとも一対のルーツロータは、一対の第1ルーツロータと、気体の移送方向において前記一対の第1ルーツロータの下流側に配置された一対の第2ルーツロータを含み、前記少なくとも1つのロータ室は、前記一対の第1ルーツロータが配置される第1ロータ室と、前記一対の第2ルーツロータが配置される第2ロータ室を含み、前記ポンプケーシングは、前記第1ロータ室に連通する第1気体入口および第1気体出口と、前記第2ロータ室に連通する第2気体入口および第2気体出口を有しており、前記第1ロータ室を形成する内壁と、前記第1気体出口を形成する内壁との第1接続部は、各第1ルーツロータの回転中心および下死点を通って延びる第1ロータ中心線よりも外側に位置しており、前記第2ロータ室を形成する内壁と、前記第2気体出口を形成する内壁との第2接続部は、各第2ルーツロータの回転中心および下死点を通って延びる第2ロータ中心線上に位置しているか、または前記第2ロータ中心線よりも外側に位置しており、前記第1気体出口の幅は、前記第2気体出口の幅よりも大きい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ロータ室に連通する気体出口の幅が大きくなり、気体に含まれる粉体はロータ室内にとどまりにくくなる。結果として、粉体は気体とともにロータ室から排出され、ロータ室内に堆積する粉体の量を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】真空ポンプ装置の一実施形態を示す断面図である。
【
図3】ロータ室を形成する内壁と、気体出口を形成する内壁との接続部の他の実施形態を示す断面図である。
【
図4】ロータ室を形成する内壁と、気体出口を形成する内壁との接続部のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【
図5】気体出口の他の実施形態を示す断面図である。
【
図6】三葉ルーツロータの一実施形態を示す断面図である。
【
図7】真空ポンプ装置の他の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、真空ポンプ装置の一実施形態を示す断面図である。以下に説明する実施形態の真空ポンプ装置は、容積式真空ポンプ装置である。特に、
図1に示す真空ポンプ装置は、気体の流路内にオイルを使用しない、いわゆるドライ真空ポンプ装置である。ドライ真空ポンプ装置は、気化したオイルが上流側に流れることがないので、高い清浄度が必要とされる半導体デバイスの製造装置に好適に使用することができる。
【0011】
図1に示すように、真空ポンプ装置は、真空ポンプ1と、この真空ポンプ1を駆動する電動機2を備えている。真空ポンプ1は、ロータ室5を内部に有するポンプケーシング6と、ロータ室5内に配置された一対のルーツロータ8と、一対のルーツロータ8を支持する一対の回転軸9を備えている。各ルーツロータ8と各回転軸9は、一体構造物であってもよい。
図1では1つのルーツロータ8および1つの回転軸9のみが描かれているが、一対のルーツロータ8がロータ室5内に配置されており、一対の回転軸9にそれぞれ支持されている。電動機2は一対の回転軸9のうちの一方に連結されている。一実施形態では、一対の電動機2が、一対の回転軸9にそれぞれ連結されていてもよい。
【0012】
本実施形態のルーツロータ8は、単段ポンプロータであるが、一実施形態では、ルーツロータ8は、多段ポンプロータであってもよい。
【0013】
ポンプケーシング6は、ロータ室5に連通する気体入口12と気体出口13を有している。気体入口12は、移送すべき気体で満たされたチャンバ(図示せず)に連結される。一例では、気体入口12は、半導体デバイスの製造装置のプロセスチャンバに連結され、真空ポンプ1は、プロセスチャンバに導入されたプロセスガスを排気する用途に使用される。
【0014】
真空ポンプ1は、ポンプケーシング6の側壁6Aの外側に位置するギヤハウジング16をさらに備えている。ギヤハウジング16の内部には、互いに噛み合う一対のギヤ20が配置されている。なお、
図1では1つのギヤ20のみが描かれている。これらギヤ20は、回転軸9にそれぞれ固定されている。電動機2は、図示しないモータドライバによって回転し、電動機2が連結された一方の回転軸9は、ギヤ20を介して、電動機2が連結されていない他方の回転軸9を反対方向に回転させる。
【0015】
回転軸9は、ポンプケーシング6の一方の側壁6Aに保持された軸受17と、ポンプケーシング6の他方の側壁6Bに保持された軸受18により回転可能に支持されている。電動機2は、ポンプケーシング6の側壁6Bの外側に位置するモータハウジング14と、モータハウジング14内に配置されたモータロータ2Aおよびモータステータ2Bを有している。
【0016】
一実施形態では、一対の回転軸9にそれぞれ連結された一対の電動機2が設けられてもよい。一対の電動機2は、図示しないモータドライバによって同期して反対方向に回転し、一対の回転軸9および一対のルーツロータ8を同期して反対方向に回転させる。この場合のギヤ20の役割としては、突発的な外的要因によるルーツロータ8の同期回転の脱調を防ぐことにある。
【0017】
電動機2によってルーツロータ8が回転すると、気体は気体入口12からポンプケーシング6内に吸い込まれる。気体は、回転するルーツロータ8によって気体入口12から気体出口13に移送される。
【0018】
図2は、
図1のA-A線断面図である。
図2に示すように、本実施形態の各ルーツロータ8は二葉ルーツロータである。気体入口12はポンプケーシング6の一方側に位置し、気体出口13はポンプケーシング6の反対側に位置している。一対のルーツロータ8は、気体入口12と気体出口13との間に位置している。ルーツロータ8と、ロータ室5を形成するポンプケーシング6の内壁22とは非接触であり、かつ2つのルーツロータ8同士も非接触である。これらルーツロータ8は、ロータ室5内で矢印で示すように反対方向に回転する。
【0019】
ルーツロータ8が回転するに従い、ルーツロータ8の外面と、ロータ室5を形成する内壁22との間に閉じられた空間が形成される。気体入口12から流入した気体は、この閉じられた空間を満たし、一対のルーツロータ8が逆方向に回転することで、気体は気体入口12から気体出口13に移送される。このような閉じられた空間内の気体の移送が連続的に行われることで、気体は真空ポンプ1によって排気される。
【0020】
気体入口12と気体出口13は、ロータ室5に連通している。気体出口13を形成する内壁23は、ロータ室5を形成する内壁22に接続されている。
図2に示すように、ロータ室5を形成する内壁22と、気体出口13を形成する内壁23との接続部25は、ロータ中心線CLよりも外側に位置している。ロータ中心線CLは、各ルーツロータ8の回転中心RCおよび下死点LPを通って延びる直線である。ルーツロータ8の下死点LPは、回転するルーツロータ8の最下端に相当する。ここで、「ロータ中心線CLよりも外側に位置する」とは、ロータ室5の中心点CPからロータ中心線CLを横切った位置にあることを意味する。
【0021】
気体出口13の幅W2は、気体入口12の幅W1よりも大きい。例えば、気体出口13の幅W2は、気体入口12の幅W1の1.1~2.0倍、好ましくは1.7倍である。
【0022】
本実施形態の真空ポンプ1が取り扱う気体の例として、CVD装置、エッチング装置などの半導体デバイス製造装置で使用されるプロセスガスが挙げられる。このプロセスガスは、副生成物からなる粉体が含まれる。
図2から分かるように、気体出口13の幅W2は、気体入口12の幅W1よりも大きいので、粉体は、ロータ室5内にとどまりにくく、結果として粉体がロータ室5内に堆積しにくい。したがって、本実施形態によれば、ロータ室5内での粉体の堆積に起因するルーツロータ8の回転不具合(例えば回転停止)が防止できる。
【0023】
本実施形態では、各ルーツロータ8は二葉ルーツロータである。気体を気体入口12から気体出口13まで移送するためには、ルーツロータ8の外面と、ロータ室5を形成する内壁22との間に閉じられた空間が形成される必要がある。この観点から、ロータ室5を形成する内壁22と、気体出口13を形成する内壁23との接続部25は、気体入口12よりも気体出口13に近い。回転中心RCから接続部25までの直線NLのロータ中心線CLに対する角度αは、0度~35度の範囲内にある。一実施形態では、接続部25は、ロータ中心線CL上に位置してもよい。
【0024】
気体出口13の幅W2は、気体入口12の幅W1よりも大きいのであるが、上述したように、ルーツロータ8の外面と、ロータ室5を形成する内壁22との間には、閉じられた空間が形成されるので、真空ポンプ1の排気性能は実質的に低下しない。
【0025】
図2に示す実施形態では、2つのルーツロータ8のうちの一方に関連する接続部25とロータ中心線CLとの配置について説明しているが、他方のルーツロータ8に関連する接続部とロータ中心線との配置も同様であるので、その重複する説明と符号の図示を省略する。
【0026】
図3に示すように、ロータ室5を形成する内壁22と、気体出口13を形成する内壁23との接続部25は、円弧形状の断面を有してもよい。あるいは、
図4に示すように、ロータ室5を形成する内壁22と、気体出口13を形成する内壁23との接続部25は、面取り形状の断面を有してもよい。
図3および
図4に示す形状によれば、気体の乱流が起こりにくく、粉体をスムーズに気体出口13に送ることができる。
【0027】
図2乃至
図4に示す実施形態では、気体出口13を形成する内壁23はロータ中心線CLと平行であり、気体出口13の幅は一定である。一実施形態では、
図5に示すように、気体出口13を形成する内壁23は、ロータ室5の中心点CPからの距離とともに外側に傾斜してもよい。すなわち、気体出口13の幅は、ロータ室5の中心点CPからの距離とともに徐々に大きくなってもよい。このような形状とすることにより、粉体を含む気体は気体出口13をスムーズに通ることができる。
【0028】
ルーツロータ8は、
図6に示すように、三葉ルーツロータであってもよい。
図6に示す実施形態でも、ロータ室5を形成する内壁22と、気体出口13を形成する内壁23との接続部25は、各ルーツロータ8の回転中心RCおよび下死点LPを通って延びるロータ中心線CL上に位置しているか、またはロータ中心線CLよりも外側に位置している。特に説明しない
図6の実施形態の構成は、
図2を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0029】
図2を参照して説明した実施形態と同じように、ルーツロータ8の外面と、ロータ室5を形成する内壁22との間に閉じられた空間が形成される必要がある。この観点から、
図6に示す実施形態では、回転中心RCから接続部25までの直線NLのロータ中心線CLに対する角度αは、0度~45度の範囲内にある。
【0030】
図示しないが、ルーツロータ8は、四葉以上のルーツロータであってもよい。その場合でも、ロータ室5を形成する内壁22と、気体出口13を形成する内壁23との接続部25は、各ルーツロータ8の回転中心RCおよび下死点LPを通って延びるロータ中心線CL上に位置しているか、またはロータ中心線CLよりも外側に位置している。気体出口13の幅は、気体入口12の幅よりも大きいので、粉体は、ロータ室5内にとどまりにくく、結果として粉体がロータ室5内に堆積しにくい。
【0031】
図7は、真空ポンプ1の他の実施形態を示す断面図である。この実施形態の真空ポンプ1は、多段真空ポンプである。
図1乃至
図6を参照した実施形態の説明は、本実施形態の構成および動作にも適用できるので、その重複する説明を省略する。
【0032】
図7に示すように、真空ポンプ1は、複数のロータ室5A~5Eを内部に有するポンプケーシング6と、ロータ室5A~5E内にそれぞれ配置された複数対のルーツロータ8A~8Eと、複数対のルーツロータ8A~8Eを支持する一対の回転軸9を備えている。ルーツロータ8A~8Eと回転軸9は、一体構造物であってもよい。
図1では1セットのルーツロータ8A~8Eおよび回転軸9のみが描かれているが、複数対のルーツロータ8A~8Eがロータ室5A~5E内にそれぞれ配置されており、一対の回転軸9に支持されている。電動機2は一対の回転軸9のうちの一方に連結されている。一実施形態では、一対の電動機2が、一対の回転軸9にそれぞれ連結されていてもよい。
【0033】
ルーツロータ8A~8Eおよびロータ室5A~5Eは、気体の移送方向に沿って配列されている。すなわち、ルーツロータ8Aおよびロータ室5Aは、ポンプケーシング6内の気体の移送方向において最も上流側に位置している。ルーツロータ8Bおよびロータ室5Bは、ルーツロータ8Aおよびロータ室5Aの下流側に位置し、ルーツロータ8Cおよびロータ室5Cは、ルーツロータ8Bおよびロータ室5Bの下流側に位置し、ルーツロータ8Dおよびロータ室5Dは、ルーツロータ8Cおよびロータ室5Cの下流側に位置し、ルーツロータ8Eおよびロータ室5Eは、ルーツロータ8Dおよびロータ室5Dの下流側に位置している。ルーツロータ8Eおよびロータ室5Eは、ポンプケーシング6内の気体の移送方向において最も下流側に位置している。
【0034】
ポンプケーシング6は、ロータ室5Aに連通する気体入口12Aおよび気体出口13Aと、ロータ室5Bに連通する気体入口12Bおよび気体出口13Bと、ロータ室5Cに連通する気体入口12Cおよび気体出口13Cと、ロータ室5Dに連通する気体入口12Dおよび気体出口13Dと、ロータ室5Eに連通する気体入口12Eおよび気体出口13Eを有している。気体出口13Aは、図示しない流路を介して気体入口12Bに連通し、気体出口13Bは、図示しない流路を介して気体入口12Cに連通し、気体出口13Cは、図示しない流路を介して気体入口12Dに連通し、気体出口13Dは、図示しない流路を介して気体入口12Eに連通している。
【0035】
電動機2がルーツロータ8A~8Eを回転させると、気体は、気体入口12Aを通ってロータ室5Aに吸い込まれる。気体は、ロータ室5A~5E内のルーツロータ8A~8Eによって順次圧縮され、気体出口13Eを通ってポンプケーシング6から排出される。
【0036】
図8は、
図7のB-B線断面図である。
図8に示すように、本実施形態のルーツロータ8A~8Eは三葉ルーツロータである。ロータ室5Aを形成する内壁22Aと、気体出口13Aを形成する内壁23Aとの接続部25Aは、ルーツロータ8Aの回転中心RC1と下死点LP1を通るロータ中心線CL1よりも外側に位置している。ルーツロータ8Aの回転中心RC1から接続部25Aまでの直線NL1のロータ中心線CL1に対する角度α1は、0度~45度の範囲内にある。気体出口の幅W4は、気体入口12Aの幅W3よりも大きい。
【0037】
図9は、
図7のC-C線断面図である。
図9に示すように、ロータ室5Eを形成する内壁22Eと、気体出口13Eを形成する内壁23Eとの接続部25Eは、ルーツロータ8Eの回転中心RC2と下死点LP2を通るロータ中心線CL2よりも外側に位置している。一実施形態では、接続部25Eは、ロータ中心線CL2に位置してもよい。ルーツロータ8Eの回転中心RC2から接続部25Eまでの直線NL2のロータ中心線CL2に対する角度α2は、0度~45度の範囲内にあり、かつ
図8に示す角度α1よりも小さい。気体出口13Eの幅W6は、気体入口12Eの幅W5よりも大きい。
【0038】
図示しないが、ロータ室5Bを形成する内壁と気体出口13Bを形成する内壁との接続部、ロータ室5Cを形成する内壁と気体出口13Cを形成する内壁との接続部、ロータ室5Dを形成する内壁と気体出口13Dを形成する内壁との接続部のそれぞれも、対応するロータ中心線よりも外側に位置しているか、または対応するロータ中心線上に位置している。
【0039】
図7乃至
図9を参照して説明した実施形態によれば、気体出口13A~13Eの幅は、気体入口12A~12Eの幅よりもそれぞれ大きいので、粉体は、ロータ室5A~5E内にとどまりにくく、結果として粉体がロータ室5A~5E内に堆積しにくい。
【0040】
図8と
図9との対比から分かるように、
図8に示す気体出口13Aの幅W4は、
図9に示す気体出口13Eの幅W6よりも大きい。これは、低圧側では気体出口の幅を大きくし、大気圧側では気体出口の幅を比較的小さくすると、粉体の排出が促進されることを示す粉体の流れのシミュレーションの結果に基づいている。本実施形態によれば、粉体を、ロータ室5A~5Eを順次通ってポンプケーシング6から排出することができる。
【0041】
気体出口13A~気体出口13Eの幅の関係は、気体出口13Aの幅が気体出口13Eの幅よりも大きい限りにおいて、特に限定されない。例えば、気体出口13A,13B,13Cの幅は互いに同じであって、かつ気体出口13D,13Eの幅よりも大きくてもよい。他の例では、気体出口13A,13B,13C,13D,13Eの幅は、ポンプケーシング6内の気体の移送方向に従って徐々に小さくしてもよい。
【0042】
図7に示す真空ポンプ1は、5段真空ポンプであるが、ルーツロータ8の段数は特に限定されない。例えば、真空ポンプ1は2対のルーツロータを備えた2段真空ポンプであってもよいし、または6対以上のルーツロータを備えた多段真空ポンプであってもよい。
【0043】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0044】
1 真空ポンプ
2 電動機
2A モータロータ
2B モータステータ
5,5A~5E ロータ室
6 ポンプケーシング
8,8A~8E ルーツロータ
9 回転軸
12,12A~12E 気体入口
13,13A~13E 気体出口
14 モータハウジング
16 ギヤハウジング
17 軸受
18 軸受
20 ギヤ
22 ポンプケーシングの内壁
23 気体出口の内壁
25 接続部
CL ロータ中心線
RC ルーツロータの回転中心
LP ルーツロータの下死点
CP ロータ室の中心点