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特開2023-116346画像形成装置、画像形成方法およびプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116346
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】画像形成装置、画像形成方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/21 20060101AFI20230815BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
B41J2/21
B41J2/01 401
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019095
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】岩波 智史
(72)【発明者】
【氏名】上原 健太郎
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA07
2C056EB27
2C056EB37
2C056EB58
2C056EC12
2C056EC34
2C056EE18
2C056FA10
2C056HA58
(57)【要約】      (修正有)
【課題】搬送方向における記録媒体とヘッドとの相対的な搬送量のずれを検出可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】有色インクを吐出する第1ノズル601と、下地用インクを吐出する第2ノズル602と、記録媒体の搬送方向における第1ノズルとは異なる位置に配置され、有色インクを吐出する第3ノズル603とを含むヘッドと、主走査方向に沿った記録媒体とヘッドとの相対移動と、搬送方向に沿った記録媒体とヘッドとの所定搬送量の相対移動と、有色インクおよび下地用インクの吐出とを制御する制御部と、有色インクにより形成されたテストパターンを読取る読取部とを有し、第1ノズルからの吐出により第1テストパターンを形成し、第3ノズルからの吐出により第2テストパターンを形成し、第2ノズルから吐出される下地用インクにより第1および第2テストパターンそれぞれの上または下に重なるようにマスク画像M3を形成する画像形成装置。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有色インクを吐出する第1ノズルと、下地用インクを吐出する第2ノズルと、記録媒体の搬送方向における前記第1ノズルとは異なる位置に配置され、有色インクを吐出する第3ノズルと、を含むヘッドと、
前記搬送方向に交差する主走査方向に沿った前記記録媒体と前記ヘッドとの相対移動と、前記搬送方向に沿った前記記録媒体と前記ヘッドとの所定搬送量の相対移動と、前記ヘッドによる有色インクおよび下地用インクそれぞれの吐出と、を制御する制御部と、
前記ヘッドから吐出された有色インクにより前記記録媒体に形成されたテストパターンを読取る読取部と、を有し、
前記制御部は、前記第1ノズルから吐出される有色インクにより前記記録媒体に第1テストパターンを形成し、前記第3ノズルから吐出される有色インクにより前記記録媒体に第2テストパターンを形成し、前記第2ノズルから吐出される下地用インクにより前記第1テストパターンおよび前記第2テストパターンそれぞれの上または下に重なるようにマスク画像を形成するように制御し、
前記読取部は、前記第1テストパターンおよび前記第2テストパターンの位置を読み取る、画像形成装置。
【請求項2】
前記ヘッドは、前記搬送方向における上流から順に、前記第1ノズル、前記第2ノズルおよび前記第3ノズルを有する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1ノズルから吐出される有色インクにより前記第1テストパターンの一部を形成した後、前記ヘッドと前記記録媒体を前記搬送方向に前記所定搬送量、相対移動させ、前記第2ノズルから吐出される下地用インクにより前記第1テストパターンの上に重なるように前記マスク画像を形成し、その後、さらに前記ヘッドと前記記録媒体を前記搬送方向に前記所定搬送量、相対移動させ、前記第3ノズルから吐出される有色インクにより前記マスク画像の上に前記第2テストパターンを形成するように制御する、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1ノズルから吐出される有色インクにより前記第1テストパターンの一部を形成し、前記第2ノズルから吐出される下地用インクにより、前記第1テストパターンの一部が消えない濃度によって前記第1テストパターンの上に重なるように前記マスク画像を形成するように制御する、請求項2または請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ヘッドは複数のヘッドを含み、
前記制御部は、前記記録媒体を前記搬送方向とは逆の方向に相対移動させる動作を行うことなく、前記搬送方向における前記記録媒体と前記ヘッドとの相対的な搬送量のずれを検出するように制御する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記下地用インクは、白色のインクである、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記下地用インクは、前記第1テストパターンと前記マスク画像との間において所定のコントラストを有する白以外の色のインクである、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
画像形成装置による画像形成方法であって、前記画像形成装置が、
有色インクを吐出する第1ノズルと、下地用インクを吐出する第2ノズルと、記録媒体の搬送方向における前記第1ノズルとは異なる位置に配置され、有色インクを吐出する第3ノズルと、を有するヘッドにより、有色インクと下地用インクとを吐出し、
制御部により、前記搬送方向に交差する主走査方向に沿った前記記録媒体と前記ヘッドとの相対移動と、前記搬送方向に沿った前記記録媒体と前記ヘッドとの所定搬送量の相対移動と、前記ヘッドによる有色インクおよび下地用インクそれぞれの吐出と、を制御し、
読取部により、前記ヘッドから吐出された有色インクにより前記記録媒体に形成されたテストパターンを読取り、
前記制御部は、前記第1ノズルから吐出される有色インクにより前記記録媒体に第1テストパターンを形成し、前記第3ノズルから吐出される有色インクにより前記記録媒体に第2テストパターンを形成し、前記第2ノズルから吐出される下地用インクにより前記第1テストパターンおよび前記第2テストパターンそれぞれの上または下に重なるようにマスク画像を形成するように制御し、
前記読取部は、前記第1テストパターンおよび前記第2テストパターンの位置を読み取る、画像形成方法。
【請求項9】
有色インクを吐出する第1ノズルと、下地用インクを吐出する第2ノズルと、記録媒体の搬送方向における前記第1ノズルとは異なる位置に配置され、有色インクを吐出する第3ノズルと、を有するヘッドにより、有色インクと下地用インクとを吐出し、
制御部により、前記搬送方向と交差する主走査方向に沿った前記記録媒体と前記ヘッドとの相対移動と、前記搬送方向に沿った前記記録媒体と前記ヘッドとの所定搬送量の相対移動と、前記ヘッドによる有色インクおよび下地用インクそれぞれの吐出と、を制御し、
読取部により、前記ヘッドから吐出された有色インクにより前記記録媒体に形成されたテストパターンを読取り、
前記制御部は、前記第1ノズルから吐出される有色インクにより前記記録媒体に第1テストパターンを形成し、前記第3ノズルから吐出される有色インクにより前記記録媒体に第2テストパターンを形成し、前記第2ノズルから吐出される下地用インクにより前記第1テストパターンおよび前記第2テストパターンそれぞれの上または下に重なるようにマスク画像を形成するように制御し、
前記読取部は、前記第1テストパターンおよび前記第2テストパターンの位置を読み取る、処理を画像形成装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像形成方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主走査方向および主走査方向と交差する記録媒体の搬送方向のそれぞれに沿ったヘッドと記録媒体との相対移動と、ヘッドによるインクの吐出と、を制御することにより、記録媒体に画像を形成する画像形成装置が知られている。
【0003】
上記の画像形成装置として、撮像部により撮像された撮像画像における位置ずれ量に応じた位置ずれ量の実距離を算出し、キャリッジの移動方向ごとに対象物の搬送量を補正する構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この画像形成装置は、ヘッドにより一対の第1マーカを形成し、該一対の第一マーカの形成時と異なる傾きのヘッドにより第2マーカを形成したテストパターンを撮像して、撮像画像から第1マーカ間の距離と第2マーカの位置ずれ量との比率を算出し、その比率に基づいて第2マーカの位置ずれ量の実距離を算出して搬送量に係わるパラメータを調整するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成では、記録媒体が透明である場合等に、記録媒体に形成されたテストパターンを検出できず、搬送方向における記録媒体とヘッドとの相対的な搬送量のずれを検出できない場合がある。
【0005】
本発明は、搬送方向における記録媒体とヘッドとの相対的な搬送量のずれを検出可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る画像形成装置は、有色インクを吐出する第1ノズルと、下地用インクを吐出する第2ノズルと、記録媒体の搬送方向における前記第1ノズルとは異なる位置に配置され、有色インクを吐出する第3ノズルと、を含むヘッドと、前記搬送方向に交差する主走査方向に沿った前記記録媒体と前記ヘッドとの相対移動と、前記搬送方向に沿った前記記録媒体と前記ヘッドとの所定搬送量の相対移動と、前記ヘッドによる有色インクおよび下地用インクそれぞれの吐出と、を制御する制御部と、前記ヘッドから吐出された有色インクにより前記記録媒体に形成されたテストパターンを読取る読取部と、を有し、前記制御部は、前記第1ノズルから吐出される有色インクにより前記記録媒体に第1テストパターンを形成し、前記第3ノズルから吐出される有色インクにより前記記録媒体に第2テストパターンを形成し、前記第2ノズルから吐出される下地用インクにより前記第1テストパターンおよび前記第2テストパターンそれぞれの上または下に重なるようにマスク画像を形成するように制御し、前記読取部は、前記第1テストパターンおよび前記第2テストパターンの位置を読み取る。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、搬送方向における記録媒体とヘッドとの相対的な搬送量のずれを検出可能な画像形成装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る画像形成装置の内部を透視して示す斜視図である。
図2】実施形態に係る画像形成措置の内部構成例を示す上面図である。
図3】実施形態に係るキャリッジの構成例を示す図である。
図4】実施形態に係る撮像部の構成例を示す斜視図である。
図5】実施形態に係る撮像部の構成例を示す分解斜視図である。
図6図4のX1方向から見た撮像部の縦断面図である。
図7図4のX2方向から見た撮像部の縦断面図である。
図8】第1実施形態に係る撮像部の平面図である。
図9】基準チャートを例示する図である。
図10】基準チャートを有していない撮像部の縦断面図である。
図11図10の撮像部をX2方向から見た平面図である。
図12】搬送ローラ周りの構成例を示す図である。
図13】実施形態に係る画像形成装置のハードウェア構成例の図である。
図14】実施形態に係るCPUの機能構成例の図である。
図15】記録媒体に形成されたテストパターンを例示する図である。
図16】実施形態に係るテストパターンの形成方法を例示する図である。
図17】撮像画像における一対の第2マーカ間の距離と第1マーカの位置ずれ量との比率の算出方法例を示す図である。
図18】実施形態に係る画像形成装置の動作を例示する第1図である。
図19】実施形態に係る画像形成装置の動作を例示する第2図である。
図20】実施形態に係る画像形成装置の動作を例示する第3図である。
図21】実施形態に係る画像形成装置の動作を例示する第4図である。
図22】マスク画像の作用を説明する図である。
図23】ヘッド配置の第1変形例を示す図である。
図24】ヘッド配置の第2変形例を示す図である。
図25】ヘッド配置の第3変形例を示す図である。
図26】変形例に係る画像形成装置の構成を例示する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一の構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
また以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための画像形成装置を例示するものであって、本発明を以下に示す実施形態に限定するものではない。以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張している場合がある。
【0011】
[実施形態]
<画像形成装置100の構成例>
図1から図3を参照して、実施形態に係る画像形成装置100の構成について説明する。図1は、画像形成装置100の内部を透視して示す斜視図である。図2は、画像形成装置100の内部構成の一例を示す上面図である。図3は、キャリッジ5の構成の一例を示す図である。
【0012】
図1に示すように、画像形成装置100は、主走査方向(図中矢印A方向)に往復移動するキャリッジ5を有する。キャリッジ5は、主走査方向に沿って延設された主ガイドロッド3により支持されている。また、キャリッジ5には連結片5aが設けられている。連結片5aは、主ガイドロッド3と平行に設けられた副ガイド部材4に係合し、キャリッジ5の姿勢を安定化させる。
【0013】
キャリッジ5は、駆動プーリ9と従動プーリ10との間に張架されたタイミングベルト11に連結している。駆動プーリ9は、主走査モータ8の駆動により回転する。従動プーリ10は、駆動プーリ9との間の距離を調整する機構を有し、タイミングベルト11に対して所定のテンションを与える機能を有する。
【0014】
キャリッジ5は、主走査モータ8の駆動によりタイミングベルト11が送り動作を行うことにより、主走査方向に往復移動する。キャリッジ5の移動量や移動速度は、例えば図2に示すように、キャリッジ5に設けられた主走査エンコーダセンサ131がエンコーダシート14のマークを検知して出力するエンコーダ値に基づいて制御される。
【0015】
図3に示すように、キャリッジ5は、ヘッド6A、6Bおよび6Cを搭載している。ヘッド6A、6Bおよび6Cのそれぞれは、有色インクを吐出する第1ノズルと、下地用インクを吐出する第2ノズルと、副走査方向における第1ノズルとは異なる位置に配置され、有色インクを吐出する第3ノズルと、を含む。副走査方向は、主走査方向と交差する方向であり、搬送方向の一例である。
【0016】
ヘッド6Aは、イエロー(Y)インクを吐出する多数のノズルを並べたノズル列6Ay、シアン(C)インクを吐出する多数のノズルを並べたノズル列6Ac、マゼンタ(M)インクを吐出する多数のノズルを並べたノズル列6Am、およびブラック(K)インクを吐出する多数のノズルを並べたノズル列6Akを、一列ずつ有する。同様に、ヘッド6Cは、ノズル列6Cy、6Cc、6Cm、6Ckが一列ずつ有する。ヘッド6Bは、ホワイト(W)インクを吐出する多数のノズルを並べたノズル列6Bw1、6Bw2、6Bw3、6Bw4の4列を有する。
【0017】
以下、これらのヘッド6A、6Bおよび6Cを総称してヘッド6と表記する。ヘッド6は、その吐出面(ノズル面)が下方(記録媒体P側)に向くように、キャリッジ5に支持されている。
【0018】
ヘッド6にインクを供給するためのインク供給体であるカートリッジ7は、キャリッジ5には搭載されず、画像形成装置100内の所定の位置に配置されている。カートリッジ7とヘッド6はパイプで連結されており、このパイプを介して、カートリッジ7からヘッド6に対してインクが供給される。
【0019】
図2に示すように、画像形成装置100は、ヘッド6の吐出面と対向する位置にプラテン16を有する。プラテン16は、ヘッド6から記録媒体P上にインクを吐出する際に、記録媒体Pを支持する。プラテン16は、厚み方向に貫通する貫通孔を多数有し、個々の貫通孔を取り囲むようにリブ状の突起を有する。画像形成装置100は、プラテン16の記録媒体Pを支持する面とは反対側に設けられた吸引ファンを作動させることにより、プラテン16上から記録媒体Pが脱落することを抑制できる。
【0020】
画像形成装置100は、副走査モータ12(図13参照)によって駆動される搬送ローラにより記録媒体Pを挟持し、プラテン16上を、副走査方向(図2中矢印B方向)に沿って記録媒体Pを間欠的に搬送する。
【0021】
画像形成装置100は、副走査方向に並ぶように形成された多数のノズルをヘッド6に有する。本実施形態では、画像形成装置100は、記録媒体Pを副走査方向に間欠的に搬送し、記録媒体Pの搬送が停止している間に、キャリッジ5を主走査方向に往復移動させながら、画像データに応じてヘッド6のノズルを選択的に駆動し、ヘッド6からプラテン16上の記録媒体P上にインクを吐出することにより記録媒体Pに画像を形成する。
【0022】
また画像形成装置100は、ヘッド6の信頼性を維持するための維持機構15を有する。維持機構15は、ヘッド6の吐出面の清掃やキャッピング、ヘッド6からの不要なインクの排出等を行う。
【0023】
図3に示すように、キャリッジ5には、記録媒体P上に形成されたテストパターンTP(図15参照)を撮像するための撮像部20を有する。
【0024】
撮像部20は、ヘッド6から吐出される有色インクにより記録媒体Pに形成されたテストパターンTPを読取る読取部の一例である。本実施形態では特に、撮像部20は、テストパターンTPに含まれる第1テストパターンおよび第2テストパターンの位置を読み取る。
【0025】
画像形成装置100は、上記の各構成要素を外装体1の内部に有する。外装体1は開閉可能なカバー部材2を有する。画像形成装置100は、メンテナンス時やジャム発生時に、カバー部材2を開けることにより、外装体1の内部に設けられた各構成要素に対して作業を行うことができるようになっている。
【0026】
図3で示した撮像部20は、テストパターンTPと同時に撮像される基準チャートを有するものと、有していないものがある。基準チャートとは、例えば、各基準パッチ(図9参照)のRGB値を用いてテストパターンTPの測色値を算出するものである。
【0027】
<撮像部20の第1例>
図4から図8を参照して、基準チャートを有する撮像部20の具体例について説明する。図4は、撮像部の外観を示す斜視図である。図5は、撮像部20の分解斜視図である。図6は、図4中のX1方向から見た撮像部20の縦断面図である。図7は、図4中のX2方向から見た撮像部20の縦断面図である。図8は、撮像部20の平面視図である。
【0028】
撮像部20は、例えば矩形の箱状に形成された筐体51を有する。筐体51は、例えば、所定の間隔を空けて対向する底板部51aおよび天板部51bと、これら底板部51aと天板部51bとを繋ぐ側壁部51c、51d、51eおよび51fを有する。
【0029】
筐体51の底板部51aと側壁部51d、51eおよび51fは、例えばモールド成形により一体に形成されており、これに対して天板部51bと側壁部51cとが着脱可能となっている。図5では天板部51bと側壁部51cとを取り外した状態を示している。
【0030】
画像形成装置100は、例えば筐体51の一部が所定の支持部材に支持された状態において、テストパターンTPが形成された記録媒体Pの搬送経路に撮像部20を有する。図6および図7に示すように、画像形成装置100は、搬送される記録媒体Pに対して筐体51の底板部51aが間隙dを介して略平行な状態で対向するように、所定の支持部材により撮像部20を支持する。
【0031】
撮像部20は、テストパターンTPが形成された記録媒体Pと対向する筐体51の底板部51aに、筐体51の外部のテストパターンTPを筐体51の内部から撮像可能にするための開口部53を有する。また撮像部20は、筐体51の底板部51aの内面側に、支え部材63を介して開口部53と隣り合うようにして、基準チャート300を有する。基準チャート300は、テストパターンTPの測色やRGB値の取得を行う際に、センサ部26によりテストパターンTPとともに撮像されるものである。
【0032】
また、撮像部20は、筐体51内部の天板部51b側に、回路基板54を有する。 図8に示すように、回路基板54は、締結部材54bによって固定され、回路基板54側の面が開放されている四角の箱形状の筐体51を有する。なお、筐体51は、四角の箱形状に限るものではなく、例えば、開口部53が形成されている底板部51aを有する円筒の箱形状や楕円筒の箱形状等であってもよい。
【0033】
また撮像部20は、筐体51の天板部51bと回路基板54との間に、画像を撮像するセンサ部26を有する。図6に示すように、センサ部26は、CCD(Charge Coupled Device )センサまたはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ等の二次元センサ27と、センサ部26の撮像範囲の光学像を二次元センサ27の受光面(撮像領域)に結像する結像レンズ28とを有する。二次元センサ27は、被写体からの反射光を受光する受光素子が二次元に並ぶ受光素子アレイである。
【0034】
撮像部20は、例えば、筐体51の側壁部51eと一体に形成されたセンサホルダ56によりセンサ部26を保持する。センサホルダ56には、回路基板54に形成された貫通孔54aと対向する位置にリング部56aが設けられている。リング部56aは、センサ部26の結像レンズ28側の突出した部分の外形形状に倣った大きさの貫通孔を有する。撮像部20は、結像レンズ28側の突出した部分をセンサホルダ56のリング部56aに挿通することにより、結像レンズ28が回路基板54の貫通孔54aを介して筐体51の底板部51a側を臨むようにして、センサホルダ56によってセンサ部26を保持する。
【0035】
撮像部20は、図6中の一点鎖線で示す光軸が筐体51の底板部51aに対して略垂直となり、且つ、開口部53と後述の基準チャート300とが撮像範囲に含まれるように、センサホルダ56により位置決めされた状態においてセンサ部26を保持する。これにより、センサ部26は、二次元センサ27の撮像領域の一部で、筐体51外部のテストパターンTPを、開口部53を介して撮像できる。加えて、センサ部26は、二次元センサ27の撮像領域の他の一部で、筐体51の内部に配置された基準チャート300を撮像できる。
【0036】
センサ部26は、各種の電子部品が実装される回路基板54に対して、例えばフレキシブルケーブルを介して電気的に接続する。また、回路基板54は、画像形成装置100のメイン制御基板に対して撮像部20を接続するための接続ケーブルが装着される外部接続コネクタ57を有する。
【0037】
撮像部20は、センサ部26の中心を通る副走査方向の中心線OA上であって、センサ部26の中心からそれぞれ副走査方向に所定量だけ等間隔で離れた位置の回路基板54に、一対の光源58を有する。光源58は、センサ部26による撮像時にその撮像範囲を略均一に照明する。光源58としては、例えば省スペースであり、省電力に有利なLED(Light Emitting Diode)等が好適である。
【0038】
図7図8に示すように、撮像部20は、結像レンズ28の中心を基準として、開口部53と基準チャート300が並ぶ方向と直交する方向に均等に配置された一対のLEDを光源58として有する。
【0039】
光源58として用いる2つのLEDは、例えば回路基板54の底板部51a側の面に実装される。但し、光源58は、センサ部26の撮像範囲を拡散光により略均一に照明できる位置に配置されればよく、必ずしも回路基板54に直接実装されていなくてもよい。また、2つのLEDは、二次元センサ27を中心として対称位置に配置されることにより、基準チャート300側と同一照明条件での撮像面の撮像が可能である。
【0040】
なお、本実施形態では、光源58としてLEDを例示したが、光源58の種類はLEDに限定されるものではない。例えば、光源58は有機EL等であってもよい。有機ELを光源58として用いた場合には、太陽光の分光分布に近い照明光が得られるため、測色精度の向上が期待できる。
【0041】
図8に示すように、センサ部26は、光源58と二次元センサ27の直下に、光吸収体55cを備えている。光吸収体55cは、光源58からの光を二次元センサ27以外の方向に反射または吸収する。光吸収体55cは、鋭角な形状を有し、光源58からの入射光が光吸収体55c内面へ反射するように形成されており、入射方向へは反射しない構造を有する。
【0042】
また筐体51は、その内部において、センサ部26と該センサ部26により開口部53を介して撮像される筐体51外部のテストパターンTPとの間の光路中に、光路長変更部材59を有する。
【0043】
光路長変更部材59は、光源58の光に対して十分な透過率を有する屈折率nの光学素子である。光路長変更部材59は、筐体51外部のテストパターンTPの光学像の結像面を筐体51内部の基準チャート300の光学像の結像面に近づける機能を有する。
【0044】
撮像部20は、センサ部26と筐体51外部の被写体との間の光路中に光路長変更部材59を配置することによって光路長を変更する。これにより、撮像部20は、筐体51外部のテストパターンTPの光学像の結像面と、筐体51内部の基準チャート300の結像面とを、ともにセンサ部26の二次元センサ27の受光面に合わせるようにしている。従って、センサ部26は、筐体51外部のテストパターンTPと筐体51内部の基準チャート300との双方にピントの合った画像を撮像できる。
【0045】
図6に示すように、光路長変更部材59は、一対のリブ60および61によって、底板部51a側の面の両端部が支持されている。また、光路長変更部材59の天板部51b側の面と回路基板54との間に押さえ部材62が配置されることにより、光路長変更部材59が筐体51内部で動かないようになっている。光路長変更部材59は、筐体51の底板部51aに設けられた開口部53を塞ぐように配置される。このため、光路長変更部材59は、筐体51外部から開口部53を介して筐体51内部に進入するインクミストや塵埃などの不純物が、センサ部26や光源58、基準チャート300等に付着するのを防止する機能も有する。
【0046】
なお、以上説明した撮像部20の機械的な構成はあくまで一例であり、これに限らない。撮像部20は、少なくとも、筐体51内部に設けられた光源58が点灯している間に、筐体51内部に設けられたセンサ部26により、筐体51外部のテストパターンTPを、開口部53を介して撮像する構成であればよい。撮像部20は、上記の構成に対して様々な変形や変更が可能である。
【0047】
例えば、本実施形態に係る撮像部20は、筐体51の底板部51aの内面側に基準チャート300を有する。しかしながら、筐体51の底板部51aの基準チャート300が配置される位置に開口部53とは別の開口部を設けるとともに、この開口部が設けられた位置に筐体51の外側から基準チャート300を取り付ける構成であってもよい。この場合には、センサ部26は、開口部53を介して記録媒体Pに形成されたテストパターンTPを撮像するとともに、開口部53とは別の開口部を介して、筐体51の底板部51aに外側から取り付けられた基準チャート300を撮像する。この例では、基準チャート300に汚れなどの不良が生じた場合に、交換を容易に行える利点がある。
【0048】
<基準チャート300の構成例>
図9を参照して、撮像部20の筐体51に配置される基準チャート300の具体例について説明する。図9は、基準チャートの具体例を示す図である。
【0049】
図9に示す基準チャート300は、測色用の測色パッチを配列した複数の測色パッチ列310~340、距離計測用ライン350、およびチャート位置特定用マーカ360を有する。
【0050】
測色パッチ列310~340は、YMCKの1次色の測色パッチを階調順に配列した測色パッチ列310と、RGBの2次色の測色パッチを階調順に配列した測色パッチ列320と、グレースケールの測色パッチを階調順に配列した測色パッチ列(無彩色の階調パターン)330と、3次色の測色パッチを配列した測色パッチ列340と、を含む。
【0051】
距離計測用ライン350は、複数の測色パッチ列310~340を囲むように形成された略矩形状の枠である。チャート位置特定用マーカ360は、距離計測用ライン350の四隅の位置に設けられていて、各測色パッチの位置を特定するためのマーカとして機能する。センサ部26により撮像される基準チャート300の画像から、距離計測用ライン350とその四隅のチャート位置特定用マーカ360を特定することにより、基準チャート300の位置および各測色パッチの位置を特定することができる。
【0052】
測色用の測色パッチ列310~340を構成する各測色パッチは、センサ部26の撮像条件を反映した色味の基準としての機能を有する。なお、基準チャート300に配置されている測色用の測色パッチ列310~340の構成は、図9に示す例に限定されるものではなく、任意の測色パッチ列を適用することが可能である。画像形成装置100は、例えば、可能な限り色範囲が広く特定できる測色パッチを用いてもよいし、また、YMCKの1次色の測色パッチ列310や、グレースケールの測色パッチ列330は、画像形成装置100に使用される色材の測色値のパッチを用いてもよい。また、RGBの2次色の測色パッチ列320は、画像形成装置100で使用される色材で発色可能な測色値のパッチで構成されていてもよく、さらに、Japan Color等の測色値が定められた基準色票を用いてもよい。
【0053】
なお、本実施形態では、一般的なパッチ(色票)の形状の測色パッチ列310~340を有する基準チャート300を用いているが、基準チャート300は、必ずしもこのような測色パッチ列310~340を有する形態でなくてもよい。基準チャート300は、測色に利用可能な複数の色が、それぞれの位置を特定できるように配置された構成であればよい。
【0054】
基準チャート300は、筐体51の底板部51aの内面側に開口部53と隣り合うように配置されているため、センサ部26は、筐体51外部のテストパターンTPと並行して撮像することができる。なお、ここでの並行した撮像とは、筐体51外部のテストパターンTPと基準チャート300とを含む1フレームの画像データを取得することを意味する。つまり、画素ごとのデータ取得に時間差があっても、筐体51外部のテストパターンTPと基準チャート300とが1フレーム内に含まれる画像データを取得すれば、筐体51外部のテストパターンTPと基準チャート300とを並行して撮像したことになる。
【0055】
<撮像部20の第2例>
図10および図11を参照して、撮像部20の第2例として基準チャートを有していない撮像部20の具体例について説明する。図10は、撮像部の縦断面図である。図11は、図10の撮像部をX2方向から見た平面図である。
【0056】
図10に示すように、撮像部20は、キャリッジ5に固定されている基板41上に、光源42とセンサ部26とを有する。
【0057】
光源42は、例えばLEDを含み、被写体である記録媒体Pに形成されたテストパターンTPに照明光を照射する。テストパターンTPからの反射光(乱反射光または正反射光)はセンサ部26に入射する。光源42は、図11に示すように、記録媒体Pに形成されるテストパターンTPを取り囲むように4つ配置されており、テストパターンTPに均一な照明光を照射する。
【0058】
センサ部26は、CCDセンサやCMOSセンサなどの二次元センサ27と、結像レンズ28とを有する。センサ部26は、光源42からテストパターンTPに出射された照明光の反射光を、結像レンズ28を通して二次元センサ27に入射させる。二次元センサ27は、入射された光を光電変換によりアナログ信号に変換し、テストパターンTPの撮像画像として出力する。
【0059】
<搬送ローラ152周りの構成例>
被搬送物である記録媒体Pを搬送する構成について説明する。図12は、搬送ローラ152周りの構成の一例を示す図である。図12に示すように、記録媒体Pは、キャリッジ5の移動方向である主走査方向(図中矢印A方向)と直交する副走査方向(図中矢印B方向)に間欠的に搬送される。このとき、搬送ローラ152と同軸上に設けられたエンコーダ35が図示しない側板に設けられた副走査エンコーダセンサ132によって読み取られる。
【0060】
記録媒体Pの搬送量は、このようにして読み取られた情報に基づいて、副走査エンコーダセンサ132に電気的に接続したセンサ制御部124(図13参照)にて制御されている。この例では、エンコーダ35はロータリエンコーダとして構成されており、光学格子が円板状に配置され、角度、回転量および回転速度などが検出できるように構成されている。
【0061】
<画像形成装置100のハードウェア構成例>
次に、図13を参照しながら、本実施形態の画像形成装置100のハードウェア構成について説明する。図13は、第1の実施形態の画像形成装置のハードウェア構成図である。
【0062】
図13に示すように、画像形成装置100は、制御部130と、ヘッド6と、主走査エンコーダセンサ131と、撮像部20と、主走査モータ8と、搬送部150と、副走査モータ12と、を有する。
【0063】
制御部130は、CPU110と、ROM102と、RAM103と、ヘッドドライバ104と、主走査ドライバ105と、副走査ドライバ106と、制御用FPGA(Field-Programmable Gate Array)120と、を有する。
【0064】
制御部130は、メイン制御基板に搭載されている。またヘッド6、主走査エンコーダセンサ131および撮像部20は、キャリッジ5に搭載されている。また副走査エンコーダセンサ132、および搬送ローラ152は、搬送部150に搭載されている。
【0065】
制御部130は、主走査方向に沿った記録媒体Pとヘッド6との相対移動と、副走査方向に沿った記録媒体Pとヘッド6との所定搬送量の相対移動と、ヘッド6による有色インクおよび下地用インクそれぞれの吐出と、を制御する。
【0066】
本実施形態では特に、制御部130は、第1ノズルから吐出される有色インクにより記録媒体Pに第1テストパターンを形成し、第3ノズルから吐出される有色インクにより記録媒体Pに第2テストパターンを形成し、第2ノズルから吐出される下地用インクにより第1テストパターンおよび第2テストパターンそれぞれの上または下に重なるようにマスク画像を形成するように制御する。
【0067】
CPU110は、画像形成装置100の全体の制御を司る。例えば、CPU110は、RAM103を作業領域として利用して、ROM102に格納された各種の制御プログラムを実行し、画像形成装置100における各種動作を制御するための制御指令を出力する。
【0068】
本実施形態では、画像形成装置100は、テストパターンTPを形成する機能や距離計測装置としての機能、距離に基づいて記録媒体Pの搬送量に関わるパラメータを調整する機能等を、このCPU110により実現する。画像形成装置100が形成するテストパターンTPは、第1テストパターンと、第2テストパターンと、マスク画像と、を含む。
【0069】
ヘッドドライバ104、主走査ドライバ105、副走査ドライバ106は、それぞれ、ヘッド6、主走査モータ8、副走査モータ12を駆動するためのドライバである。
【0070】
制御用FPGA120は、CPU110と連携して画像形成装置100における各種動作を制御する。制御用FPGA120は、機能的な構成要素として、例えば、CPU制御部121、メモリ制御部122、インク吐出制御部123、センサ制御部124、およびモータ制御部125を有する。
【0071】
CPU制御部121は、CPU110と通信を行って、制御用FPGA120が取得した各種情報をCPU110に伝えるとともに、CPU110から出力された制御指令を入力する。
【0072】
メモリ制御部122は、CPU110がROM102やRAM103にアクセスするためのメモリ制御を行う。
【0073】
インク吐出制御部123は、CPU110からの制御指令に応じてヘッドドライバ104の動作を制御することにより、ヘッドドライバ104により駆動されるヘッド6からのインクの吐出タイミングを制御する。
【0074】
センサ制御部124は、主走査エンコーダセンサ131および副走査エンコーダセンサ132から出力されるエンコーダ値などのセンサ信号に対する処理を行う。 例えばセンサ制御部124は、主走査エンコーダセンサ131から出力されるエンコーダ値に基づいて、キャリッジ5の位置、移動速度、移動方向などを計算する処理を実行する。また、例えばセンサ制御部124は、副走査エンコーダセンサ132から出力されるエンコーダ値に基づいて、記録媒体Pを搬送する搬送ローラ152の回転速度や回転方向などを計算する処理を実行する。
【0075】
モータ制御部125は、CPU110からの制御指令に応じて主走査ドライバ105の動作を制御することにより、主走査ドライバ105により駆動される主走査モータ8を制御して、キャリッジ5の主走査方向への移動を制御する。また、モータ制御部125は、CPU110からの制御指令に応じて副走査ドライバ106の動作を制御することにより、副走査ドライバ106により駆動される副走査モータ12を制御して、搬送ローラ152による記録媒体Pの副走査方向への移動(搬送)を制御する。
【0076】
なお、以上の各部は、制御用FPGA120により実現する制御機能の一例であり、これら以外にも様々な制御機能を制御用FPGA120により実現する構成としてもよい。また、上記の制御機能の全部または一部を、CPU110または他の汎用のCPUにより実行されるプログラムによって実現する構成であってもよい。また、上記の制御機能の一部を、制御用FPGA120とは異なる他のFPGAやASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの専用のハードウェアにより実現する構成であってもよい。
【0077】
ヘッド6は、インクを吐出して画像を形成する複数のノズルを有し(図3参照)、CPU110および制御用FPGA120により動作制御されるヘッドドライバ104により駆動され、プラテン16上の記録媒体Pにインクを吐出して画像を形成する。
【0078】
主走査エンコーダセンサ131は、エンコーダシート14のマークを検知して得られるエンコーダ値を制御用FPGA120に出力する。このエンコーダ値は、制御用FPGA120のセンサ制御部124において、キャリッジ5の位置、移動速度および移動方向を計算するために用いられる。センサ制御部124がエンコーダ値から計算したキャリッジ5の位置、移動速度および移動方向は、CPU110に送られる。CPU110は、このキャリッジ5の位置、移動速度および移動方向に基づき、主走査モータ8を制御するための制御指令を生成してモータ制御部125に出力する。
【0079】
撮像部20は、CPU110による制御のもとで記録媒体P上に形成されたテストパターンTPを撮像し、撮像画像に対して各種処理を行うものであって、二次元センサ用CPU140、および二次元センサ27を有する。
【0080】
二次元センサ27は、CCDセンサまたはCMOSセンサ等であって、二次元センサ用CPU140から送られた各種設定信号に基づく所定の動作条件によって、テストパターンTPおよび枠線Fを撮像する。そして、二次元センサ27は、撮像した撮像画像を二次元センサ用CPU140に送る。
【0081】
二次元センサ用CPU140は、二次元センサ27の制御や二次元センサ27により撮像された撮像画像に対する処理を行う。具体的には、二次元センサ用CPU140は、撮像部20に各種設定信号を送ることにより、二次元センサ27の各種動作条件の設定を行う。また、二次元センサ用CPU140は、テストパターンTPを撮像した撮像画像からテストパターンTPのマーカを検出する機能や、撮像画像における距離と実距離との比率を算出する機能を実現する。
【0082】
また、撮像部20には、RAMやROMが備えられ、二次元センサ用CPU140は、例えば、RAMを作業領域として利用して、ROMに格納された各種の制御プログラムを実行し、撮像部20における各種動作を制御するための制御指令を出力する。また、二次元センサ用CPU140は、二次元センサ27の光電変換により得られたアナログ信号をデジタルの画像データにAD変換し、その画像データに対してシェーディング補正やホワイトバランス補正、γ補正、画像データのフォーマット変換などの各種の画像処理を行う機能を内蔵している。なお、撮像画像に対する各種の画像処理は、その一部あるいは全部を撮像部20の外部で行うように構成してもよい。
【0083】
副走査エンコーダセンサ132は、エンコーダ35を読み取って得られるエンコーダ値を制御用FPGA120に出力する。このエンコーダ値は、制御用FPGA120のセンサ制御部124において、記録媒体Pを搬送する搬送ローラ152の回転速度および回転方向を計算するために用いられる。センサ制御部124がエンコーダ値から計算した搬送ローラ152の回転速度および回転方向は、CPU110に送られる。CPU110は、この搬送ローラ152の回転速度および回転方向に基づき、副走査モータ12を制御するための制御指令を生成してモータ制御部125に出力する。
【0084】
搬送ローラ152は、モータ制御部125から受け取った制御指令に基づく回転速度および回転方向で回転することにより記録媒体Pを所定の搬送量により搬送する。
【0085】
本実施形態の画像形成装置100では、上述のCPU110および制御用FPGA120によって制御されるヘッドドライバ104、主走査ドライバ105および副走査ドライバ106と、これらにより駆動されるヘッド6、主走査モータ8および副走査モータ12により、記録媒体Pに画像を形成する画像形成部が構成される。
【0086】
図13では、二次元センサ用CPU140および撮像部20がキャリッジ5に搭載された構成となっていたが、二次元センサ用CPU140および撮像部20は、記録媒体P上に形成されたテストパターンTPを適切に撮像できるように配置されていればよく、必ずしもキャリッジ5に搭載されていなくてもよい。
【0087】
<CPU110の機能構成例>
図14を参照して、主に制御部130のCPU110により実現される機能について説明する。図14は、CPU110の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0088】
CPU110は、パターン形成部111と、実距離算出部114と、調整部115と、搬送制御部116と、を有する。CPU110は、例えば、RAM103を作業領域として利用して、ROM102に格納された制御プログラムを実行することにより、パターン形成部111、実距離算出部114、調整部115、および搬送制御部116等の機能を実現する。
【0089】
なお、本実施形態では、これらの機能をCPU110が実現する構成を例示するが、これらの機能の少なくとも一部を制御用FPGA120または撮像部20等のCPU110以外の構成部が実現してもよい。あるいはCPU110およびCPU110以外の構成部が分散処理することにより、上記の各機能の少なくとも一部を実現してもよい。
【0090】
また、撮像部20の二次元センサ用CPU140は、例えばRAMを作業領域として利用して、ROMに格納された制御プログラムを実現することにより、位置検出部142、および比率算出部143等の機能を実現する。
【0091】
搬送制御部116は、記録媒体Pを搬送する搬送部150の搬送ローラ152を制御する。例えば、搬送制御部116は、副走査エンコーダセンサ132から出力されるエンコーダ値に基づいて搬送ローラ152の回転速度や回転方向などを決定し、該回転速度や回転方向を示す制御指令を、制御用FPGA120を介して搬送部150の搬送ローラ152に送出することにより、搬送ローラ152による記録媒体Pの搬送を制御する。
【0092】
パターン形成部111は、例えばROM102等に予め格納されたパターンデータを読み込み、このパターンデータに応じた画像形成動作を画像形成部に行わせることにより、記録媒体P上にテストパターンTPを形成する。撮像部20は、パターン形成部111により記録媒体P上に形成されたテストパターンTPを撮像する。
【0093】
パターン形成部111は、画像形成部を用いて、第1マーカM1および一対の第2マーカM2aおよびM2bのいずれか一方を記録媒体Pに形成し、記録媒体Pが所定搬送量により搬送された後、先に形成された画像の上から白色インクで形成されるマスク画像M3を形成する。なお、第1マーカM1と、一対の第2マーカM2aおよびM2bと、マスク画像M3は、テストパターンTPに含まれる構成部位である。
【0094】
パターン形成部111は、白色インクによりマスク画像M3を形成した後、再び記録媒体Pが所定搬送量により搬送された後、搬送前に形成されていない第1マーカM1および一対の第2マーカM2aおよびM2bのいずれか他方を形成する。
【0095】
本実施形態では、パターン形成部111は、記録媒体Pに第1マーカM1を形成し、記録媒体Pが所定搬送量により搬送された後に、第1マーカM1の上から白色インクによりマスク画像M3を形成し、再び記録媒体Pが所定搬送量により搬送された後、一対の第2マーカM2aおよびM2bを形成する例を挙げて説明する。
【0096】
なお、第1マーカM1と一対の第2マーカM2aおよびM2bの形成順はどちらが先でもよく、パターン形成部111は、記録媒体Pに一対の第2マーカM2aおよびM2bを形成し、白色インクにより形成されるマスク画像M3を形成した後、記録媒体Pが所定搬送量により搬送された後に第1マーカM1を形成してもよい。
【0097】
<テストパターンTPの一例>
図15を参照して、テストパターンTPについて説明する。図15は、記録媒体Pに形成されたテストパターンTPの一例を示す図である。
【0098】
図15に示すように、テストパターンTPは、少なくとも第1マーカM1と一対の第2マーカM2aおよびM2bとを含むマーカのセットMMと、白色インクにより形成されるマスク画像M3と、を含む。
【0099】
図15に示すテストパターンTPは、一対の第2マーカM2aおよびM2b間の中間に第1マーカM1を有する。また、第1マーカM1および一対の第2マーカM2aおよびM2bは、ドットにより形成され、副走査方向(図中矢印B方向)に沿って形成される。
【0100】
白色インクにより形成されるマスク画像M3は、第1マーカM1が形成された後に、その上からかぶせて形成される。換言すると、マスク画像M3は、第1マーカM1の上に重なるように形成される。一対の第2マーカM2aおよびM2bは、白色インクで形成されるマスク画像M3の上に形成される。
【0101】
<テストパターンTPの形成方法>
図16を参照して、テストパターンTPの形成方法について説明する。図16は、テストパターンTPの形成方法の一例を示す図である。図16(a)は第1マーカM1を示す図、図16(b)は実搬送量L1を示す図、図16(c)は、マスク画像M3の上に形成された第2マーカM2aおよびM2bを示す図である。
【0102】
図16(a)、図16(b)および図16(c)に示すように、ヘッド6は、第1ノズル601と、第2ノズル602と、第3ノズル603と、を含む。第1ノズル601は、有色インクを吐出する。第2ノズル602は、下地用インクを吐出する。第3ノズル603は、副走査方向における第1ノズル601とは異なる位置に配置され、有色インクを吐出する。ヘッド6は、副走査方向における上流から順に、第1ノズル601、第2ノズル602および第3ノズル603を有する。
【0103】
第1マーカM1は、第1ノズル601から吐出される有色インクにより記録媒体Pに形成される第1テストパターンの一例である。第2マーカM2aおよびM2bは、第3ノズル603から吐出される有色インクにより記録媒体Pに形成される第2テストパターンの一例である。マスク画像M3は、第2ノズル602から吐出される下地用インクにより第1マーカM1および第2マーカM2aおよびM2bそれぞれの上または下に重なるように形成されるマスク画像の一例である。
【0104】
図16(a)に示すように、パターン形成部111は、記録媒体Pに第1マーカM1を形成する。次に、図16(b)に示すように、搬送制御部116は、搬送ローラ152により記録媒体Pを副走査方向(図中矢印B方向)に実搬送量L1分、搬送する。
【0105】
そして、パターン形成部111は、白インクにより形成されるマスク画像M3を第1マーカM1の上からかぶせるように、換言すると第1マーカM1の上にマスク画像M3を重なるように形成する。そして、図16(c)に示すように、パターン形成部111は、実搬送量L2の搬送後に、白インクにより形成されるマスク画像M3の上から第2マーカM2aおよびM2bを形成する。
【0106】
この一対の第2マーカM2aおよびM2bは、第1マーカM1を形成するために有色インクを吐出した第1ノズル601から理想搬送量L3だけ離れたノズルを基準として、副走査方向の前後両側に距離eずつ離れた2つの第3ノズル603(指定ノズル)により形成される。理想搬送量L3は所定搬送量の一例である。
【0107】
なお、以下では、この基準とするノズルを基準ノズルと称し、基準ノズルから副走査方向の前後に距離eずつ離れた2つのノズルを指定ノズルと称する場合がある。また第3ノズル603は2つに限定されるものではなく、1つのノズルであってもよい。
【0108】
実際に搬送した実搬送量L1+L2と理想搬送量L3が同じだった場合には、一対の第2マーカM2aおよびM2bの副走査方向における中間位置である理想位置に第1マーカM1が形成されたテストパターンTPが形成される。一方、実搬送量L1+L2と理想搬送量L3が異なっていると、例えば、一対の第2マーカM2a、M2bの間であっても、いずれかのマーカに近い位置に第1マーカM1が形成されたテストパターンTPが形成される。
【0109】
そして、このテストパターンTPを撮影し、第1マーカM1と一対の第2マーカM2aおよびM2bの相対的な位置関係を算出することにより、理想搬送量L3と実搬送量L1+L2とのずれを検出することができる。なお、本実施形態では、第1マーカM1の理想位置が一対の第2マーカM2aおよびM2bの中間位置である例を説明するが、一対の第2マーカM2aおよびM2bの中間位置でなくてもよい。すなわち、第1マーカM1が一対の第2マーカM2aおよびM2bと共に撮像可能であって、予め定められた位置に形成されるのであれば、第1マーカM1の理想位置は、一対の第2マーカM2aおよびM2bのいずれか一方に近い位置でもよいし、一対の第2マーカM2aおよびM2bの間でなくてもよい。
【0110】
テストパターンTPを構成するマスク画像M3は、第2ノズル602から吐出された下地用インクにより形成される。記録媒体Pが透明であった場合、テストパターンTPを撮影するとき、テストパターンTPと重なる位置にプラテン16に存在する厚み方向に設けられた貫通孔や、画像形成動作において付着したインク汚れ等が存在すると、第1マーカM1と第2マーカM2aおよびM2bの相対的な位置関係の算出を妨げる場合がある。マスク画像M3は、貫通孔や汚れを隠し、算出の妨げになることを防止する機能を有する。
【0111】
<搬送量のずれ算出結果に基づく搬送量の補正処理例>
二次元センサ用CPU140の位置検出部142(図14参照)は、撮像部20により撮像された撮像画像に対して2値化処理などの所定の処理を施すことによって、撮像画像から第1マーカM1並びに一対の第2マーカM2aおよびM2bを各々検出する。
【0112】
二次元センサ用CPU140の比率算出部143は、撮像画像における第1マーカM1および一対の第2マーカM2aおよびM2bの位置に基づいて、撮像画像における一対の第2マーカM2aおよびM2b間の距離と、撮像画像における第1マーカM1の位置ずれ量との比率を算出する。
【0113】
具体的に図17を参照して、該比率の算出方法を説明する。図17は、撮像画像における一対の第2マーカM2aおよびM2b間の距離と第1マーカM1の位置ずれ量との比率の算出方法を説明する図である。
【0114】
図17に示すように、比率算出部143は、検出された一対の第2マーカM2aおよびM2bの位置から撮像画像における一対の第2マーカM1aおよびM1bの距離hを求める。そして、検出された第1マーカM1と、第1マーカM1の理想位置との差分により、撮像画像における第1マーカM1の位置ずれ量sを求める。
【0115】
ここで、第1マーカM1の理想位置とは、本実施形態では一対の第2マーカM2aおよびM2b間の中間に相当する位置、すなわち第2マーカM2aおよび第2マーカM2bのそれぞれの位置から、一対の第2マーカM2aおよびM2b間の距離の1/2の距離にある位置である。図17では、第2マーカM2aおよび第2マーカM2bのそれぞれの位置から等しい距離h/2にある位置(図17における距離a1の位置)である。
【0116】
従って、撮像画像における第1マーカM1の位置ずれ量sは、第2マーカM2aおよび第1マーカM1の理想位置間の距離a1と、第2マーカM2aおよび第1マーカM1の距離aとの差分となる。そして、撮像画像における第1マーカM1の位置ずれ量sを、撮像画像における一対の第2マーカM2aおよびM2b間の距離hで除算することで比率を算出する(s/h)。比率算出部143により算出された上記の比率は、実距離算出部114に渡される。
【0117】
CPU110の実距離算出部114(図14参照)は、一対の第2マーカM2aおよびM2b間の実距離と、比率算出部143により算出した比率とに基づいて、第1マーカM1の位置ずれ量の実距離を算出する。すなわち、実距離算出部114は、一対の第2マーカM2aおよびM2b間の実距離に、比率算出部143により算出した比率(図17では比率s/h)を乗算して、一対の第2マーカM2aおよびM2bに対する第1マーカM1の位置ずれ量sの実距離を算出する。実距離算出部114により算出された実距離は、調整部115に渡される。
【0118】
CPU110の調整部115は、実距離算出部114が算出した第1マーカM1の位置ずれ量sに基づいて、キャリッジ5の走査方向ごとに、搬送制御部116による記録媒体Pの搬送量に関わるパラメータの補正量を算出し、算出した補正量により調整する。記録媒体Pの搬送量に関わるパラメータとは、例えば、搬送ローラ152を回転させる回転速度を制御するパラメータ等である。調整部115は、これらのパラメータの調整値を制御用FPGA120に伝えることにより、搬送制御部116等による搬送ローラ152の制御動作を調整する。これにより、ヘッド6Aの往路と復路で傾きが異なる場合でも、インクの着弾位置の精度を向上させることができる。
【0119】
<画像形成装置100の動作例>
図18から図22を参照して画像形成装置100の動作について説明する。図18から図21は、画像形成装置の動作を例示する図であり、図18は第1図、図19は第2図、図20は第3図、図21は第4図である。図22は、マスク画像M3の作用を説明する図である。
【0120】
画像形成装置100のユーザが画像形成装置100本体により記録媒体Pの種類を設定するとき、特定の種類を選択すると、CPU110は、パターン形成部111により、図16において説明したテストパターンTPの形成方法に沿った手順によりテストパターンTPを出力する。なお、テストパターンTPを出力するため切替は、ユーザが操作部を用いて記録媒体Pが透明であるか否かを選択し、画像形成装置100に指示することにより行われてもよい。
【0121】
図18に示すように、画像形成装置100は、副走査方向における記録媒体Pの上流側にあるヘッド6Aに配置されているノズル列6AKにより、第1マーカM1、M1'、M1''およびM1'''を形成する。なお、第1マーカM1は、第1マーカM1、M1'、M1''およびM1'''の総称表記である。
【0122】
続いて、画像形成装置100は、記録媒体Pに形成した第1マーカM1、M1'、M1''およびM1'''を、実搬送量L1をN1回に分けて間欠搬送し、ヘッド6Bの位置まで搬送する。
【0123】
続いて、図19に示すように、画像形成装置100は、第1マーカM1をヘッド6Bの位置まで搬送した後、ヘッド6Bに配置されているノズル列6Bw1、6Bw2、6Bw3、6Bw4を使用して、白インクによりマスク画像M3を、第1マーカM1、M1'、M1''およびM1'''の上に重なるように形成する。
【0124】
続いて、画像形成装置100は、第1マーカM1、M1'、M1''およびM1'''の上に白インクによりマスク画像M3を重なるように形成した後、実搬送量L2をN2回に分けて間欠搬送し、ヘッド6Cの位置まで搬送する。
【0125】
続いて、画像形成装置100は、マスク画像M3が重なるように形成された第1マーカM1、M1'、M1''およびM1'''をヘッド6Cの位置まで搬送した後、一対の第2マーカM2a、M2a'、M2a''、M2a'''、M2b、M2b'、M2b''およびM2b'''と枠線Fを、マスク画像M3の上に形成する。なお、第2マーカM2aおよびM2bは、M2a'、M2a''、M2a'''、M2b、M2b'、M2b''およびM2b'''の総称表記である。
【0126】
図20に示すように、一対の第2マーカM2a、M2a'、M2a''、M2a'''、M2b、M2b'、M2b''およびM2b''' を形成するために使用されるノズルは、第1マーカM1、M1'、M1''およびM1'''を理想搬送量L3により搬送したときに、第1マーカM1、M1'、M1''およびM1'''に対するお互いの位置関係が等しい距離eとなるノズルである。
【0127】
続いて、画像形成装置100は、ヘッド6Cにより、一対の第2マーカM2a、M2a'、M2a''、M2a'''、M2b、M2b'、M2b''およびM2b'''と枠線Fを形成し、テストパターンTPを完成させた後、テストパターンTPを距離L4搬送し、撮像部20による撮像可能領域まで移動させる。
【0128】
続いて、図21に示すように、画像形成装置100は、撮像部20の撮像可能領域に移動した後、撮像部20によりでテストパターンTPを撮像し、第1マーカM1、M1'、M1''およびM1'''と、一対の第2マーカM2a、M2a'、M2a''、M2a'''、M2b、M2b'、M2b''およびM2b'''の相対的な位置関係を算出する。
【0129】
ここで、図22(a)に示すように、画像形成装置100が撮像部20によりテストパターンTPを撮像する場合に、プラテン16に設けられている貫通孔Hの位置と、テストパターンTPと、が重なる場合がある。第1マーカM1、M1'、M1''およびM1'''、または一対の第2マーカM2a、M2a'、M2a''、M2a'''、M2b、M2b'、M2b''およびM2b'''に貫通孔Hが重なると、相対的な位置関係を正しく算出することができなくなる場合がある。
【0130】
図22(b)に示すように、本実施形態では、マスク画像M3の上または下に、第1マーカM1、M1'、M1''およびM1'''、または一対の第2マーカM2a、M2a'、M2a''、M2a'''、M2b、M2b'、M2b''およびM2b'''を形成する。これにより、第1マーカM1、M1'、M1''およびM1'''、または一対の第2マーカM2a、M2a'、M2a''、M2a'''、M2b、M2b'、M2b''およびM2b'''と貫通孔Hが重なる場合にも、貫通孔Hはマスク画像M3により隠れるため、画像形成装置100は、相対的な位置関係を正しく算出可能になる。
【0131】
なお、本実施形態では、テストパターンTPの第1マーカM1、M1'、M1''およびM1'''と、一対の第2マーカM2a、M2a'、M2a''、M2a'''、M2b、M2b'、M2b''およびM2b'''を形成するために黒インクを使用しているが、別の色のインクを使用してもよい。また、第1マーカM1、M1'、M1''およびM1'''と、一対の第2マーカM2a、M2a'、M2a''、M2a'''、M2b、M2b'、M2b''およびM2b'''とで、異なる色を使用してもよい。
【0132】
また本実施形態では、テストパターンTPのマスク画像M3として白色インクを使用しているが、第1マーカM1、M1'、M1''およびM1'''と、一対の第2マーカM2a、M2a'、M2a''、M2a'''、M2b、M2b'、M2b''およびM2b'''に対してコントラスト差がある色ならば、白色以外のインクを使用してもよい。
【0133】
<画像形成装置100の作用効果>
従来から、記録媒体に形成されたテストパターンに基づき、画像形成装置による記録媒体の搬送量のずれを検出する技術が知られている。
【0134】
また上記の技術として、特許文献1には、撮像部により撮像された撮像画像における位置ずれ量に応じた位置ずれ量の実距離を算出し、キャリッジの移動方向ごとに対象物の搬送量を補正する構成が開示されている。この画像形成装置は、ヘッドにより一対の第1マーカを形成し、当該一対の第一マーカの形成時と異なる傾きのヘッドにより第2マーカを形成したテストパターンを撮像して、撮像画像から第1マーカ間の距離と第2マーカの位置ずれ量との比率を算出し、その比率に基づいて第2マーカの位置ずれ量の実距離を算出し、搬送量に係わるパラメータを調整するものである。
【0135】
しかしながら、特許文献1の技術では、記録媒体が透明である場合等に、記録媒体の背面にある搬送面の状態の影響を受けるため、記録媒体に形成されたテストパターンを検出できず、搬送量のずれを正しく検出できない場合がある。
【0136】
本実施形態では、画像形成装置100は、有色インクを吐出する第1ノズル601と、下地用インクを吐出する第2ノズル602と、副走査方向(記録媒体Pの搬送方向)における第1ノズル601とは異なる位置に配置され、有色インクを吐出する第3ノズル603と、を含むヘッド6を有する。また画像形成装置100は、主走査方向に沿った記録媒体Pとヘッド6との相対移動と、搬送方向に沿った記録媒体Pとヘッド6との実搬送量L1(所定搬送量)の相対移動と、ヘッド6による有色インクおよび下地用インクそれぞれの吐出と、を制御する制御部130を有する。さらに画像形成装置100は、ヘッド6から吐出された有色インクにより記録媒体Pに形成されたテストパターンTPを読取る撮像部20(読取部)を有する。
【0137】
制御部130は、第1ノズル601から吐出される有色インクにより記録媒体Pに第1マーカM1(第1テストパターン)を形成し、第3ノズル603から吐出される有色インクにより記録媒体Pに第2マーカM2aおよびM2b(第2テストパターン)を形成し、第2ノズル602から吐出される下地用インクにより第1マーカM1および第2マーカM2aおよびM2bそれぞれの上または下に重なるようにマスク画像M3を形成するように制御する。撮像部20は、第1マーカM1および第2マーカM2aおよびM2bの位置を読み取る。
【0138】
画像形成装置100は、上記構成により、ヘッド6と記録媒体Pの相対的な搬送方向において異なる位置に配置された第1マーカM1並びに第2マーカM2aおよびM2bを、マスク画像M3を背景にして、撮像部20により読み取ることができる。この結果、本実施形態では、記録媒体Pの背面にある搬送面の状態の影響を受けることなく、第1マーカM1並びに第2マーカM2aおよびM2bを正しく検出でき、副走査方向における記録媒体Pとヘッド6との相対的な搬送量のずれを検出可能な画像形成装置100を提供できる。
【0139】
なお、本実施形態では、副走査方向の搬送量のずれを求めるためには、少なくとも第1ノズル601と第3ノズル603が副走査方向の異なる位置に配置されればよく、第2ノズル602との位置関係は特に問わない。
【0140】
本実施形態では、主走査方向にキャリッジ5が移動し、副走査方向に記録媒体Pが移動する構成を例示したが、これらに限定されるものではない。記録媒体Pとキャリッジ5が相対移動できればよいため、主走査方向及び副走査方向の両方に記録媒体Pまたはキャリッジ5が移動する構成や、主走査方向に記録媒体Pが移動し、副走査方向にキャリッジ5が移動する構成であってもよい。
【0141】
また、本実施形態では、ヘッド6は、副走査方向における上流から順に、第1ノズル601、第2ノズル602および第3ノズル603を有する。換言すると、本実施形態では、テストパターンTPを検出するために使用される第1ノズル601と第3ノズル603が、マスク画像を形成する第2ノズル602を挟んで副走査方向に離して配置される。これにより、第1マーカM1を記録媒体Pに形成してから第2マーカM2aおよびM2bを記録媒体Pに形成するまでに、記録媒体Pを相対移動させる搬送量を大きくすることができる。画像形成装置100は、搬送量を長く確保できる分、搬送量のずれを拡大でき、より正しく搬送量のずれを検出できる。
【0142】
また、本実施形態では、制御部130は、第1ノズル601から吐出される有色インクにより第1マーカM1の一部を形成した後、ヘッド6と記録媒体Pを副走査方向に実搬送量L1相対移動させ、第2ノズル602から吐出される下地用インクにより第1マーカM1の上に重なるようにマスク画像M3を形成し、その後、さらにヘッド6と記録媒体Pを副走査方向に実搬送量L1相対移動させ、第3ノズル603から吐出される有色インクによりマスク画像M3の上に第2マーカM2aおよびM2bを形成するように制御する。これにより、画像形成装置100は、記録媒体Pの巻き戻し動作、すなわち記録媒体Pを副走査方向とは逆の方向に相対移動させる動作をせずにテストパターンTPの形成および読取ができる。この結果、画像形成装置100は、巻き戻し動作において発生する記録媒体Pのスキューや、搬送ローラ152でのスリップによる相対的な搬送量のずれの変化の影響を受けずに、撮像部20によるテストパターンTPの正確な読取が可能になる。
【0143】
また、制御部130は、第1ノズル601から吐出される有色インクにより第1マーカM1の一部を形成し、第2ノズル602から吐出される下地用インクにより、第1マーカM1の一部が消えない濃度によって第1マーカM1の上に重なるようにマスク画像M3を形成するように制御してもよい。画像形成装置100は、第1ノズル601から吐出された有色インクにより記録媒体Pに形成された第1マーカM1の一部が消えない程度の濃度によりマスク画像M3を重ねて形成することができるため、マスク画像M3による背景作用を維持しつつ、テストパターンTPを撮像部20により正しく読み取ることができる。
【0144】
また、ヘッド6は複数のヘッドを含み、制御部130は、記録媒体Pの巻き戻し動作を行うことなく、副走査方向における記録媒体Pとヘッド6との相対的な搬送御量のずれを検出するように制御してもよい。画像形成装置100は、記録媒体Pの巻き戻し動作をせずにテストパターンTPの形成および読取ができるため、巻き戻し動作において発生する記録媒体Pのスキューや、搬送ローラ152でのスリップによる相対的な搬送量のずれの変化の影響を受けずに、撮像部20によるテストパターンTPの正確な読取が可能になる。
【0145】
また本実施形態では、下地用インクは白色のインクである。これにより、テストパターンTPとマスク画像とのコントラストを大きくしやすくなる。
【0146】
また下地用インクは、第1マーカM1とマスク画像M3との間において所定のコントラストを有する白以外の色のインクであってもよい。この場合にも、テストパターンTPとマスク画像とのコントラストを大きくしやすくなる。
【0147】
<変形例>
実施形態は様々な変形が可能であるため、以下、変形例について説明する。
(ヘッド6の配置)
図23から図25を参照して、ヘッド6における配置の変形例について説明する。図23から図25は、ヘッド6における配置の変形例を示す図であり、図23は第1変形例、図24は第2変形例、図25は第3変形例をそれぞれ示す図である。
【0148】
図23から図25において、ヘッド6Aは有色インクを吐出する第1ノズル601を有する。ヘッド6Bは下地用インクを吐出する第2ノズル602を有する。ヘッド6Cは有色インクを吐出する第3ノズル603を有する。
【0149】
図23に示した第1変形例では、ヘッド6Aは、有色インクを吐出して第1マーカM1を記録媒体Pに形成し、ヘッド6Cは、有色インクを吐出して第2マーカM2aおよびM2bを記録媒体Pに形成する。その後、ヘッド6Bは、下地用インクを吐出してマスク画像M3を第1マーカM1並びに第2マーカM2aおよびM2bの両方の上に重なるように形成する。
【0150】
図24に示した第2変形例では、ヘッド6Aは、有色インクを吐出して第1マーカM1を記録媒体Pに形成し、ヘッド6Cは、有色インクを吐出して記録媒体Pに第2マーカM2aおよびM2bを記録媒体Pに形成する。その後、ヘッド6Bは、下地用インクを吐出してマスク画像M3を第1マーカM1並びに第2マーカM2aおよびM2bの両方の上に重なるように形成する。ヘッド6Cおよび6Bは、キャリッジ5の主走査方向への同じ移動により記録媒体Pに第2マーカM2aおよびM2b並びにマスク画像M3を形成する。
【0151】
図25に示した第3変形例では、ヘッド6Aは、有色インクを吐出して第1マーカM1を記録媒体Pに形成した後、ヘッド6Bは、下地用インクを吐出してマスク画像M3を第1マーカM1の上に重なるように形成する。ヘッド6Aおよび6Bは、キャリッジ5の主走査方向への同じ移動により、第1マーカM1およびマスク画像M3を記録媒体Pに形成する。その後、ヘッド6Cは、有色インクを吐出して第2マーカM2aおよびM2bを記録媒体Pに形成する。マスク画像M3は、第2マーカM2aおよびM2bの下に形成される。
【0152】
その他、例えば第3変形例において、副走査方向におけるヘッド6Bの長さをヘッド6Aおよび6Cに重なるような長さにしてもよい。
【0153】
実施形態では、キャリッジ5を主走査方向に沿った一方向のみの移動において有色インクおよび下地用インクを吐出する構成を例示したが、往復移動のそれぞれにおいて有色インクおよび下地用インクを吐出する構成であってもよい。
【0154】
第2変形例および第3変形例では、往復移動のそれぞれにおいて有色インクおよび下地用インクを吐出する場合には、往路移動と復路移動との間において第2マーカM2aおよびM2bとマスク画像M3の形成順序が逆になるが、どちらの順序でも撮像部20により第2マーカM2aおよびM2bを読取可能である。
【0155】
(画像形成装置の変形例)
図26は、変形例に係る画像形成装置100aの全体構成を例示する斜視図である。
【0156】
画像形成装置100aは、キャリッジ200と、記録媒体Pを載置するステージ13と、を備える。キャリッジ200は、複数のノズルが設けられた複数のヘッドを搭載し、ヘッドのノズルから有色インクおよび下地用インクを吐出することによって画像を形成する。ノズルは、ステージ13との対向面に設けられている。
【0157】
また、キャリッジ200のステージ13との対向面には、紫外線を照射する光源である照射ユニット400が設けられている。照射ユニット400は、ノズルから吐出された液体を硬化させる波長の光を照射する。
【0158】
左右の側板18aおよび18bにはガイドロッド19が架け渡されており、ガイドロッド19は、キャリッジ200をX方向(主走査方向)に移動可能に保持している。
【0159】
また、キャリッジ200、ガイドロッド19および側板18a,18bは一体となって、ステージ13の下部に設けられたガイドレール29に沿ってY方向(副走査方向)に移動可能となっている。更に、キャリッジ200は、Z方向(上下方向)に移動可能に保持されている。
【0160】
なお、図26の構成では、画像形成装置100aは、ヘッドを主走査方向に移動させながらノズルから記録媒体P上にインクを吐出する主走査動作と、ヘッドを副走査方向に移動させる副走査動作とを交互に繰り返し行い画像を形成する。
【0161】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の実施形態の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0162】
また実施形態は、画像形成方法も含む。例えば、画像形成方法は、画像形成装置による画像形成方法であって、前記画像形成装置が、有色インクを吐出する第1ノズルと、下地用インクを吐出する第2ノズルと、記録媒体の搬送方向における前記第1ノズルとは異なる位置に配置され、有色インクを吐出する第3ノズルと、を有するヘッドにより、有色インクと下地用インクとを吐出し、制御部により、前記搬送方向に交差する主走査方向に沿った前記記録媒体と前記ヘッドとの相対移動と、前記搬送方向に沿った前記記録媒体と前記ヘッドとの所定搬送量の相対移動と、前記ヘッドによる有色インクおよび下地用インクそれぞれの吐出と、を制御し、読取部により、前記ヘッドから吐出された有色インクにより前記記録媒体に形成されたテストパターンを読取り、前記制御部は、前記第1ノズルから吐出される有色インクにより前記記録媒体に第1テストパターンを形成し、前記第3ノズルから吐出される有色インクにより前記記録媒体に第2テストパターンを形成し、前記第2ノズルから吐出される下地用インクにより前記第1テストパターンおよび前記第2テストパターンそれぞれの上または下に重なるようにマスク画像を形成するように制御し、前記読取部は、前記第1テストパターンおよび前記第2テストパターンの位置を読み取る。このような画像形成方法により、上述した画像形成装置と同様の効果が得られる。なお、このような画像形成方法は、CPU、LSI等の回路、ICカード又は単体のモジュール等によって、実現されてもよい。
【0163】
また実施形態は、プログラムも含む。例えば、プログラムは、有色インクを吐出する第1ノズルと、下地用インクを吐出する第2ノズルと、記録媒体の搬送方向における前記第1ノズルとは異なる位置に配置され、有色インクを吐出する第3ノズルと、を有するヘッドにより、有色インクと下地用インクとを吐出し、制御部により、前記搬送方向と交差する主走査方向に沿った前記記録媒体と前記ヘッドとの相対移動と、前記搬送方向に沿った前記記録媒体と前記ヘッドとの所定搬送量の相対移動と、前記ヘッドによる有色インクおよび下地用インクそれぞれの吐出と、を制御し、読取部により、前記ヘッドから吐出された有色インクにより前記記録媒体に形成されたテストパターンを読取り、前記制御部は、前記第1ノズルから吐出される有色インクにより前記記録媒体に第1テストパターンを形成し、前記第3ノズルから吐出される有色インクにより前記記録媒体に第2テストパターンを形成し、前記第2ノズルから吐出される下地用インクにより前記第1テストパターンおよび前記第2テストパターンそれぞれの上または下に重なるようにマスク画像を形成するように制御し、前記読取部は、前記第1テストパターンおよび前記第2テストパターンの位置を読み取る、処理を画像形成装置に実行させる。このようなプログラムにより、上述した画像形成装置と同様の効果が得られる。
【0164】
また、実施形態の説明で用いた序数、数量等の数字は、全て本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。また、構成要素間の接続関係は、本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明の機能を実現する接続関係はこれに限定されない。
【0165】
また、機能ブロック図におけるブロックの分割は一例であり、複数のブロックを一つのブロックとして実現する、一つのブロックを複数に分割する、又は一部の機能を他のブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数のブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
【0166】
また、上記で説明した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【符号の説明】
【0167】
5、200 キャリッジ
6、6A、6B、6C ヘッド
601 第1ノズル
602 第2ノズル
603 第3ノズル
20 撮像部(読取部の一例)
26 センサ部
27 二次元センサ
28 結像レンズ
100、100a 画像形成装置
110 CPU
111 パターン形成部
114 実距離算出部
115 調整部
116 搬送制御部
130 制御部
140 二次元センサ用CPU
142、212 位置検出部
143、213 比率算出部
H 貫通孔
150 搬送部
L1、L2 実搬送量
L3 理想搬送量(所定搬送量の一例)
M1 第1マーカ
M2a、M2b 第2マーカ
M3 マスク画像
MM セット
P 記録媒体
TP テストパターン
【先行技術文献】
【特許文献】
【0168】
【特許文献1】特許6911335号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26