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特開2023-116363液体を吐出する装置、駆動波形生成装置、ヘッド駆動方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116363
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】液体を吐出する装置、駆動波形生成装置、ヘッド駆動方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/015 20060101AFI20230815BHJP
   B41J 2/045 20060101ALI20230815BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/045
B41J2/01 403
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019129
(22)【出願日】2022-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】230100631
【弁護士】
【氏名又は名称】稲元 富保
(72)【発明者】
【氏名】吉田 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】田熊 健一
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056FA04
2C056FA13
2C056HA01
2C057AF28
2C057AG44
2C057AN05
2C057AR16
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】サテライトの抑制とミストの抑制を図る液体を吐出する装置、ヘッド駆動装置、ヘッド駆動方法を提供する。
【解決手段】駆動波形Vaは、液体を吐出させない非吐出パルスP1と、液体吐出ヘッドの圧力室106を収縮させて液体を吐出させる収縮波形要素a2を含む吐出パルスP2と、圧力室106を収縮させる収縮波形要素c3を含む第1波形P3と、を時系列で連続して含み、非吐出パルスP1と吐出パルスP2との間隔は、圧力室106の共振周期Tcの2/3~4/3であり、非吐出パルスP1の波高値Vp1は、吐出パルスP2で吐出される液体の滴速度Vjが極小値となるときの波高値Vpp1の±10%以内であり、吐出パルスP2の収縮波形要素a2の開始から第1波形P3の収縮波形要素c3の開始までの時間Teは、圧力室106の共振周期Tcの±1/6~5/6倍である。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出ヘッドに与える複数の駆動パルスを含む駆動波形を生成する駆動波形生成手段を備え、
前記駆動波形は、液体を吐出させない非吐出パルスと、前記液体吐出ヘッドの圧力室を収縮させて前記液体を吐出させる収縮波形要素を含む吐出パルスと、前記圧力室を収縮させる収縮波形要素を含む第1波形と、を時系列で連続して含み、
前記非吐出パルスと前記吐出パルスとの間隔は、前記圧力室の共振周期の2/3~4/3であり、
前記非吐出パルスの波高値は、前記吐出パルスで吐出される液体の滴速度が極小値となるときの波高値の±10%以内であり、
前記吐出パルスの前記収縮波形要素の開始から前記第1波形の前記収縮波形要素の開始までの時間は、前記圧力室の共振周期の±1/6~5/6倍である
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項2】
液体吐出ヘッドに与える複数の駆動パルスを含む駆動波形を生成する駆動波形生成手段を備え、
前記駆動波形は、液体を吐出させる第1吐出パルスと、前記液体を吐出させない非吐出パルスと、前記液体吐出ヘッドの圧力室を収縮させて前記液体を吐出させる収縮波形要素を含む第2吐出パルスと、前記圧力室を収縮させる収縮波形要素を含む第1波形と、を時系列で連続して含み、
前記非吐出パルスは、単体で、前記液体を吐出させない程度にメニスカスを振動させる微駆動波形として使用可能であり、
前記第1吐出パルスと前記非吐出パルスとの間隔、前記非吐出パルスと前記第2吐出パルスとの間隔は、それぞれ共振の関係にあり、
前記非吐出パルスの波高値は、前記第1吐出パルスを印加後、前記非吐出パルスを印加し、更に前記第2吐出パルスを印加して前記液体を吐出させたときの滴速度が極小値になる波高値の±10%以内であり、
前記第2吐出パルスの前記収縮波形要素の開始から前記第1波形の前記収縮波形要素の開始までの時間は、前記圧力室の共振周期の±1/6~5/6倍である
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項3】
液体吐出ヘッドに与える複数の駆動パルスを含む駆動波形を生成する駆動波形生成手段を備え、
前記駆動波形は、液体を吐出させる第1吐出パルスと、前記液体を吐出させない非吐出パルスと、前記液体吐出ヘッドの圧力室を収縮させて前記液体を吐出させる収縮波形要素を含む第2吐出パルスと、前記圧力室を収縮させる収縮波形要素を含む第1波形と、を時系列で連続して含み、
前記非吐出パルスは、単体で、前記液体を吐出させない程度にメニスカスを振動させる微駆動波形として使用可能であり、
前記第1吐出パルスと前記非吐出パルスとの間隔、前記非吐出パルスと前記第2吐出パルスとの間隔は、それぞれ共振の関係にあり、
前記第1吐出パルスの波高値は、前記第1吐出パルスを印加後、前記非吐出パルスを印加し、更に前記第2吐出パルスを印加して前記液体を吐出させたときの滴速度が極小値になる波高値の±10%以内であり、
前記第2吐出パルスの前記収縮波形要素の開始から前記第1波形の前記収縮波形要素の開始までの時間は、前記圧力室の共振周期の±1/6~5/6倍である
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項4】
前記非吐出パルスの波高値は、前記非吐出パルスと前記第2吐出パルスを印加したときの液体の滴速度が極大値になる波高値よりも低い
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の液体を吐出する装置。
【請求項5】
液体吐出ヘッドに与える複数の駆動パルスを含む駆動波形を生成する駆動波形生成装置であって、
前記駆動波形は、液体を吐出させない非吐出パルスと、前記液体吐出ヘッドの圧力室を収縮させて前記液体を吐出させる収縮波形要素を含む吐出パルスと、前記圧力室を収縮させる収縮波形要素を含む第1波形と、を時系列で連続して含み、
前記非吐出パルスと前記吐出パルスとの間隔は、前記圧力室の共振周期の2/3~4/3であり、
前記非吐出パルスの波高値は、前記吐出パルスで吐出される液体の滴速度が極小値となるときの波高値の±10%以内であり、
前記吐出パルスの前記収縮波形要素の開始から前記第1波形の前記収縮波形要素の開始までの時間は、前記圧力室の共振周期の±1/6~5/6倍である
ことを特徴とする駆動波形生成装置。
【請求項6】
液体吐出ヘッドに与える複数の駆動パルスを含む駆動波形を生成する駆動波形生成装置であって、
前記駆動波形は、液体を吐出させる第1吐出パルスと、前記液体を吐出させない非吐出パルスと、前記液体吐出ヘッドの圧力室を収縮させて前記液体を吐出させる収縮波形要素を含む第2吐出パルスと、前記圧力室を収縮させる収縮波形要素を含む第1波形と、を時系列で連続して含み、
前記非吐出パルスは、単体で、前記液体を吐出させない程度にメニスカスを振動させる微駆動波形として使用可能であり、
前記第1吐出パルスと前記非吐出パルスとの間隔、前記非吐出パルスと前記第2吐出パルスとの間隔は、それぞれ共振の関係にあり、
前記非吐出パルスの波高値は、前記第1吐出パルスを印加後、前記非吐出パルスを印加し、更に前記第2吐出パルスを印加して前記液体を吐出させたときの滴速度が極小値になる波高値の±10%以内であり、
前記第2吐出パルスの前記収縮波形要素の開始から前記第1波形の前記収縮波形要素の開始までの時間は、前記圧力室の共振周期の±1/6~5/6倍である
ことを特徴とする駆動波形生成装置。
【請求項7】
液体吐出ヘッドに与える複数の駆動パルスを含む駆動波形を生成する駆動波形生成装置であって、
前記駆動波形は、液体を吐出させる第1吐出パルスと、前記液体を吐出させない非吐出パルスと、前記液体吐出ヘッドの圧力室を収縮させて前記液体を吐出させる収縮波形要素を含む第2吐出パルスと、前記圧力室を収縮させる収縮波形要素を含む第1波形と、を時系列で連続して含み、
前記非吐出パルスは、単体で、前記液体を吐出させない程度にメニスカスを振動させる微駆動波形として使用可能であり、
前記第1吐出パルスと前記非吐出パルスとの間隔、前記非吐出パルスと前記第2吐出パルスとの間隔は、それぞれ共振の関係にあり、
前記第1吐出パルスの波高値は、前記第1吐出パルスを印加後、前記非吐出パルスを印加し、更に前記第2吐出パルスを印加して前記液体を吐出させたときの滴速度が極小値になる波高値の±10%以内であり、
前記第2吐出パルスの前記収縮波形要素の開始から前記第1波形の前記収縮波形要素の開始までの時間は、前記圧力室の共振周期の±1/6~5/6倍である
ことを特徴とする駆動波形生成装置。
【請求項8】
液体吐出ヘッドに与える複数の駆動パルスを含む駆動波形を生成し、前記駆動波形を前記液体吐出ヘッドに与えて液体を吐出させるヘッド駆動方法であって、
前記駆動波形は、液体を吐出させない非吐出パルスと、前記液体吐出ヘッドの圧力室を収縮させて前記液体を吐出させる収縮波形要素を含む吐出パルスと、前記圧力室を収縮させる収縮波形要素を含む第1波形と、を時系列で連続して含み、
前記非吐出パルスと前記吐出パルスとの間隔は、前記圧力室の共振周期の2/3~4/3であり、
前記非吐出パルスの波高値は、前記吐出パルスで吐出される液体の滴速度が極小値となるときの波高値の±10%以内であり、
前記吐出パルスの前記収縮波形要素の開始から前記第1波形の前記収縮波形要素の開始までの時間は、前記圧力室の共振周期の±1/6~5/6倍である
ことを特徴とするヘッド駆動方法。
【請求項9】
液体吐出ヘッドに与える複数の駆動パルスを含む駆動波形を生成し、前記駆動波形を前記液体吐出ヘッドに与えて液体を吐出させるヘッド駆動方法であって、
前記駆動波形は、液体を吐出させる第1吐出パルスと、前記液体を吐出させない非吐出パルスと、前記液体吐出ヘッドの圧力室を収縮させて前記液体を吐出させる収縮波形要素を含む第2吐出パルスと、前記圧力室を収縮させる収縮波形要素を含む第1波形と、を時系列で連続して含み、
前記非吐出パルスは、単体で、前記液体を吐出させない程度にメニスカスを振動させる微駆動波形として使用可能であり、
前記第1吐出パルスと前記非吐出パルスとの間隔、前記非吐出パルスと前記第2吐出パルスとの間隔は、それぞれ共振の関係にあり、
前記非吐出パルスの波高値は、前記第1吐出パルスを印加後、前記非吐出パルスを印加し、更に前記第2吐出パルスを印加して前記液体を吐出させたときの滴速度が極小値になる波高値の±10%以内であり、
前記第2吐出パルスの前記収縮波形要素の開始から前記第1波形の前記収縮波形要素の開始までの時間は、前記圧力室の共振周期の±1/6~5/6倍である
ことを特徴とするヘッド駆動方法。
【請求項10】
液体吐出ヘッドに与える複数の駆動パルスを含む駆動波形を生成し、前記駆動波形を前記液体吐出ヘッドに与えて液体を吐出させるヘッド駆動方法であって、
前記駆動波形は、液体を吐出させる第1吐出パルスと、前記液体を吐出させない非吐出パルスと、前記液体吐出ヘッドの圧力室を収縮させて前記液体を吐出させる収縮波形要素を含む第2吐出パルスと、前記圧力室を収縮させる収縮波形要素を含む第1波形と、を時系列で連続して含み、
前記非吐出パルスは、単体で、前記液体を吐出させない程度にメニスカスを振動させる微駆動波形として使用可能であり、
前記第1吐出パルスと前記非吐出パルスとの間隔、前記非吐出パルスと前記第2吐出パルスとの間隔は、それぞれ共振の関係にあり、
前記第1吐出パルスの波高値は、前記第1吐出パルスを印加後、前記非吐出パルスを印加し、更に前記第2吐出パルスを印加して前記液体を吐出させたときの滴速度が極小値になる波高値の±10%以内であり、
前記第2吐出パルスの前記収縮波形要素の開始から前記第1波形の前記収縮波形要素の開始までの時間は、前記圧力室の共振周期の±1/6~5/6倍である
ことを特徴とするヘッド駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体を吐出する装置、駆動波形生成装置、ヘッド駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出ヘッドから液体を吐出するとき、主滴の吐出に伴って生じる尾引きによるサテライト滴を抑制することが求められる。
【0003】
従来、液体を吐出させない非吐出パルスと、液体を吐出させる吐出パルスとを時系列で連続して含み、非吐出パルスの波高値をVp1、非吐出パルスと吐出パルスとの時間間隔をTd、固有振動周期をTcとするとき、時間間隔Tdは、Tc-0.2Tc~Tc+0.45Tcの範囲内であり、非吐出パルスの波高値Vp1は、吐出パルスで吐出される液体の滴速度が極小値となるときの波高値Vpp1の-10%~+10%の範囲内であるようにした駆動波形が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-011108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の構成にあっては、サテライトを抑制できるが、ミストが発生することがあるという課題が判明した。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、サテライト及びミストの発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の請求項1に係る液体を吐出する装置は、
液体吐出ヘッドに与える複数の駆動パルスを含む駆動波形を生成する駆動波形生成手段を備え、
前記駆動波形は、液体を吐出させない非吐出パルスと、前記液体吐出ヘッドの圧力室を収縮させて前記液体を吐出させる収縮波形要素を含む吐出パルスと、前記圧力室を収縮させる収縮波形要素を含む第1波形と、を時系列で連続して含み、
前記非吐出パルスと前記吐出パルスとの間隔は、前記圧力室の共振周期の2/3~4/3であり、
前記非吐出パルスの波高値は、前記吐出パルスで吐出される液体の滴速度が極小値となるときの波高値の±10%以内であり、
前記吐出パルスの前記収縮波形要素の開始から前記第1波形の前記収縮波形要素の開始までの間隔は、前記圧力室の共振周期の±1/6~5/6倍である
構成とした。
【0008】
本発明によれば、サテライト及びミストを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る液体を吐出する装置としての印刷装置の概略説明図である。
図2】同印刷装置の吐出ユニットの平面説明図である。
図3】ヘッドの一例のノズル配列方向と直交する方向の断面説明図である。
図4】同じくノズル配列方向に沿う断面説明図である。
図5】同印刷装置のヘッド駆動制御装置に係る部分のブロック説明図である。
図6】本発明の第1実施形態における駆動波形の説明に供する説明図である。
図7】非吐出パルスの波高値を変化させたときの滴速度Vjと滴量Mjの変化の一例を示す説明図である。
図8】吐出パルスの波高値を滴速度Mjが一定になるように調整したときのサテライト滴の変化の一例を示す説明図である。
図9】サテライトレスとできる非吐出パルスの波高値の最大値、最小値と、その電圧比率の関係、及び、非吐出パルスと吐出パルスとの間の時間と非吐出パルスの波高値の説明に供する説明図である。
図10】サテライトレスとできる非吐出パルスと吐出パルスとの間の時間と非吐出パルスの波高値の説明に供する説明図である。
図11】サテライトレス波形によるサテライトの抑制効果とミストの発生の説明に供するパルスレーザー粒子化装置で観察した吐出状態の合成画像を含む説明図である。
図12】第1波形の収縮波形要素によるミスト抑制効果の説明に供する駆動波形の説明図である。
図13図13図12の各駆動波形を与えて液体吐出ヘッドから液体を吐出させたときの吐出状態をパルスレーザー粒子化装置で観察した合成画像を含む説明図である。
図14】吐出パルスの収縮波形要素の開始から第1波形の開始までの時間とミスト量及びサテライト長の関係の説明に供する説明図である。
図15】本発明の第2実施形態における駆動波形の説明に供する説明図である。
図16】同じく第1吐出パルス、非吐出パルスの波高値と滴速度との関係の一例を示す説明図である。
図17】第1吐出パルスを使用しない場合の第非吐出パルスの波高値と第2吐出パルスの波高値及びサテライト滴の滴速度の変化の一例を示す説明図である。
図18】第2施形態の第1吐出パルスと非吐出パルスとの間隔と第2吐出パルスの波高値及びサテライト滴の滴速度の変化の一例を示す説明図である。
図19】同じく非吐出パルスの波高値と滴速度との関係の一例を示す説明図である。
図20】同じく非吐出パルスの波高値と第2吐出パルスの波高値及びサテライト滴の滴速度の変化の一例を示す説明図である。
図21】同じく非吐出パルスの波高値と第2吐出パルスの波高値及びサテライト滴の滴速度の変化の一例を示す説明図である。
図22】同じく非吐出パルスの波高値と第2吐出パルスの波高値及びサテライト滴の滴速度の変化の一例を示す説明図である。
図23】同じく非吐出パルスの波高値と第2吐出パルスの波高値及びサテライト滴の滴速度の変化の一例を示す説明図である。
図24】同じくサテライトレスとなる非吐出パルスの波高値の最大値、最小値と、その電圧比率の関係の一例を示す説明図である。
図25】同じくサテライトレスとなる時間Td12及び非吐出パルスの波高値の説明に供する説明図である。
図26】同じくサテライトレスとなる時間Td12及び非吐出パルスの波高値の説明に供する説明図である。
図27】同じくサテライトレスとなる時間Td12及び非吐出パルスの波高値の説明に供する説明図である。
図28】同じくサテライトレスとなる時間Td12及び非吐出パルスの波高値の説明に供する説明図である。
図29】本発明の第3実施形態におけるサテライトレスとなる時間Td12及び非吐出パルスの波高値の説明に供する説明図である。
図30】同じくサテライトレスとなる時間Td12及び非吐出パルスの波高値の説明に供する説明図である。
図31】同じくサテライトレスとなる時間Td12及び非吐出パルスの波高値の説明に供する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態に係る液体を吐出する装置としての印刷装置について図1及び図2を参照して説明する。図1は同印刷装置の概略説明図、図2は同印刷装置の吐出ユニットの平面説明図である。
【0011】
印刷装置1は、液体を吐出する装置であり、シート材Pを搬入する搬入部10と、前処理部20と、印刷部30と、乾燥部40と、搬出部50とを備えている。印刷装置1は、搬入部10から搬入(供給)されるシート材Pに対し、前処理手段である前処理部20で必要に応じて前処理液を付与(塗布)し、印刷部30で液体を付与して所要の印刷を行い、乾燥部40でシート材Pに付着した液体を乾燥させた後、シート材Pを搬出部50に排出する。
【0012】
搬入部10は、複数のシート材Pを収容する搬入トレイ11(下段搬入トレイ11A、上段搬入トレイ11B)と、搬入トレイ11からシート材Pを1枚ずつ分離して送り出す給送装置12(12A、12B)とを備え、シート材Pを前処理部20に供給する。
【0013】
前処理部20は、例えばインクを凝集させ、裏写りを防止する作用効果を有する処理液をシート材Pの印刷面に付与する処理液付与手段である塗布部21などを備えている。
【0014】
印刷部30は、シート材Pを周面に担持して回転する担持部材(回転部材)であるドラム31と、ドラム31に担持されたシート材Pに向けて液体を吐出する液体吐出部32を備えている。
【0015】
また、印刷部30は、前処理部20から送り込まれたシート材Pを受け取ってドラム31との間でシート材Pを渡す渡し胴34と、ドラム31によって搬送されたシート材Pを受け取って乾燥部40に渡す受け渡し胴35を備えている。
【0016】
前処理部20から印刷部30へ搬送されてきたシート材Pは、渡し胴34に設けられた把持手段(シートグリッパ)によって先端が把持され、渡し胴34の回転に伴って搬送される。渡し胴34により搬送されたシート材Pは、ドラム31との対向位置でドラム31へ受け渡される。
【0017】
ドラム31の表面にも把持手段(シートグリッパ)が設けられており、シート材Pの先端が把持手段(シートグリッパ)によって把持される。ドラム31の表面には、複数の吸引穴が分散して形成され、吸引手段によってドラム31の所要の吸引穴から内側へ向かう吸い込み気流を発生させる。
【0018】
そして、渡し胴34からドラム31へ受け渡されたシート材Pは、シートグリッパによって先端が把持されるとともに、吸引手段による吸い込み気流によってドラム31上に吸着担持され、ドラム31の回転に伴って搬送される。
【0019】
液体吐出部32は、液体吐出手段である吐出ユニット33(33A~33D)を備えている。例えば、吐出ユニット33Aはシアン(C)の液体を、吐出ユニット33Bはマゼンタ(M)の液体を、吐出ユニット33Cはイエロー(Y)の液体を、吐出ユニット33Dはブラック(K)の液体を、それぞれ吐出する。また、その他、白色、金色(銀色)などの特殊な液体の吐出を行う吐出ユニットを使用することもできる。
【0020】
吐出ユニット33は、例えば、図2に示すように、複数のノズル104を配列したノズル列を複数列有する複数の液体吐出ヘッド(以下、単に「ヘッド」という。)100をベース部材331に千鳥状に配置したフルライン型ヘッドである。
【0021】
液体吐出部32の各吐出ユニット33は、印刷情報に応じた駆動信号によりそれぞれ吐出動作が制御される。ドラム31に担持されたシート材Pが液体吐出部32との対向領域を通過するときに、吐出ユニット33から各色の液体が吐出され、当該印刷情報に応じた画像が印刷される。
【0022】
乾燥部40は、印刷部30でシート材P上に付着した液体を乾燥させる。これにより、液体中の水分等の液分が蒸発し、シート材P上に液体中に含まれる着色剤が定着し、また、シート材Pのカールが抑制される。
【0023】
反転機構部60は、乾燥部40を通過したシート材Pに対して両面印刷をおこなうときに、スイッチバック方式で、シート材Pを反転する機構であり、反転されたシート材Pは印刷部30の搬送経路61を通じて渡し胴34よりも上流側に逆送される。
【0024】
搬出部50は、複数のシート材Pが積載される搬出トレイ51を備えている。乾燥部40から反転機構部60を介して搬送されてくるシート材Pは、搬出トレイ51上に順次積み重ねられて保持される。
【0025】
次に、ヘッド100の一例について図3及び図4を参照して説明する。図3は同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向の断面説明図、図4は同じくノズル配列方向に沿う断面説明図である。
【0026】
本実施形態の液体吐出ヘッド100は、ノズル板101と、個別流路部材である流路板102と、壁面部材としての振動板部材103とを積層接合している。そして、振動板部材103の振動領域(振動板)130を変位させる圧電アクチュエータ111と、ヘッドのフレーム部材を兼ねている共通流路部材120とを備えている。
【0027】
ノズル板101は、液体を吐出する複数のノズル104を配列した複数のノズル列を有している。
【0028】
流路板102は、複数のノズル104に通じる複数の圧力室106と、各圧力室106にそれぞれ通じる流体抵抗部を兼ねる個別供給流路107と、2以上の個別供給流路107に通じる液導入部となる中間供給流路108を形成している。
【0029】
振動板部材103は、流路板102の圧力室106の壁面を形成する変位可能な複数の振動板(振動領域)130を有する。ここでは、振動板部材103は2層構造(限定されない)とし、流路板102側から薄肉部を形成する第1層103Aと、厚肉部を形成する第2層103Bで構成されている。
【0030】
そして、薄肉部である第1層103Aで圧力室106に対応する部分に変形可能な振動領域130を形成している。振動領域130内には、第2層103Bで圧電アクチュエータ111と接合する厚肉部である凸部130aを形成している。
【0031】
そして、振動板部材103の圧力室106とは反対側に、振動板部材103の振動領域130を変形させる駆動手段(アクチュエータ手段、圧力発生素子)としての電気機械変換素子を含む圧電アクチュエータ111を配置している。
【0032】
この圧電アクチュエータ111は、ベース部材113上に接合した圧電部材にハーフカットダイシングによって溝加工をして、ノズル配列方向において、所要数の柱状の圧電素子112を所定の間隔で櫛歯状に形成している。そして、圧電素子112は、1つおきに、振動板部材103の振動領域130に形成した厚肉部である凸部130aに接合している。
【0033】
この圧電素子112は、圧電層と内部電極とを交互に積層したものであり、内部電極がそれぞれ端面に引き出されて外部電極(端面電極)に接続され、外部電極にフレキシブル配線部材115が接続されている。
【0034】
共通流路部材120は共通供給流路110を形成している。共通供給流路110は、振動板部材103に設けたフィルタ部を兼ねる開口部109を介して液導入部となる中間供給流路108に連通し、中間供給流路108を介して個別供給流路107に通じている。
【0035】
この液体吐出ヘッド100においては、例えば圧電素子112に与える電圧を基準電位(中間電位)から下げることによって圧電素子112が収縮し、振動板部材103の振動領域130が引かれて圧力室106の容積が膨張することで、圧力室106内に液体が流入する。
【0036】
その後、圧電素子112に印加する電圧を上げて圧電素子112を積層方向に伸長させ、振動板部材103の振動領域130をノズル104に向かう方向に変形させて圧力室106の容積を収縮させることにより、圧力室106内の液体が加圧され、ノズル104から液体が吐出される。
【0037】
次に、ヘッドを駆動するヘッド駆動制御装置に係る部分について図5のブロック説明図を参照して説明する。
【0038】
ヘッド100に対して駆動波形を与えるヘッド駆動制御装置400は、ヘッド制御部401と、本発明に係る駆動波形生成装置としての駆動波形生成手段を構成する駆動波形生成部402及び波形データ格納部403と、ヘッドドライバ410と、吐出タイミングを生成するための吐出タイミング生成部404を備えている。
【0039】
ヘッド制御部401は、吐出タイミングパルスstbを受信すると、駆動波形の生成のトリガーとなる吐出同期信号LINEを駆動波形生成部402へ出力する。また、ヘッド制御部401は、吐出同期信号LINEからの遅延量に当たる吐出タイミング信号CHANGEを駆動波形生成部402へ出力する。
【0040】
駆動波形生成部402は、吐出同期信号LINEと、吐出タイミング信号CHANGEに基づいたタイミングで共通駆動波形Vcomを生成する。
【0041】
ヘッド制御部401は、画像データを受け取り、この画像データをもとに、ヘッド100の各ノズル104から吐出させる液体の大きさに応じて共通駆動波形信号Vcomの所定波形を選択するためのマスク制御信号MNを生成する。マスク制御信号MNは吐出タイミング信号CHANGEに同期したタイミングの信号である。
【0042】
そして、ヘッド制御部401は、画像データSDと、同期クロック信号SCKと、画像データのラッチを命令するラッチ信号LTと、生成したマスク制御信号MNとを、ヘッドドライバ410に転送する。
【0043】
ヘッドドライバ410は、シフトレジスタ411、ラッチ回路412、階調デコーダ413、レベルシフタ414、及びアナログスイッチアレイ415を備える。
【0044】
シフトレジスタ411は、ヘッド制御部401から転送される画像データSD及び同期クロック信号SCKを入力する。ラッチ回路412は、シフトレジスタ411の各レジスト値を、ヘッド制御部401から転送されるラッチ信号LTによってラッチする。
【0045】
階調デコーダ413は、ラッチ回路412でラッチした値(画像データSD)とマスク制御信号MNとをデコードして結果を出力する。レベルシフタ414は、階調デコーダ413のロジックレベル電圧信号をアナログスイッチアレイ415のアナログスイッチASが動作可能なレベルへとレベル変換する。
【0046】
アナログスイッチアレイ415のアナログスイッチASは、レベルシフタ414を介して与えられる階調デコーダ413の出力でオン/オフするスイッチである。このアナログスイッチASは、ヘッド100が備えるノズル104毎に設けられ、各ノズル104に対応する圧電素子112の個別電極に接続されている。また、アナログスイッチASには、駆動波形生成部402からの共通駆動波形信号Vcomが入力されている。また、上述したようにマスク制御信号MNのタイミングが共通駆動波形Vcomのタイミングと同期している。
【0047】
したがって、レベルシフタ414を介して与えられる階調デコーダ413の出力に応じて適切なタイミングでアナログスイッチASのオン/オフが切り替えられることにより、共通駆動波形信号Vcomを構成する駆動パルスの中から各ノズル104に対応する圧電素子112に印加される駆動パルスが選択される。その結果、ノズル104から吐出される滴の大きさが制御される。
【0048】
吐出タイミング生成部404は、ドラム31の回転量を検出するロータリエンコーダ405の検出結果から、シート材Pが所定量移動される毎に吐出タイミングパルスstbを生成して出力する。ロータリエンコーダ405は、ドラム31と共に回転するエンコーダホイールと、エンコーダホイールのスリットを読取るエンコーダセンサで構成される。
【0049】
次に、本発明の第1実施形態における駆動波形について図6を参照して説明する。図6は同説明に供する説明図である。
【0050】
本実施形態の駆動波形Vaは、複数の駆動パルスとして、非吐出パルスP1、吐出パルスP2、第1波形P3を時系列で連続して含む。
【0051】
非吐出パルスP1は、圧力室106の液体を吐出されない程度に加圧する第1駆動パルスである。非吐出パルスP1は、圧力室106を膨張させる膨張波形要素a1と、膨張波形要素a1で膨張された状態を保持する保持波形要素b1と、保持波形要素b1で保持されている状態から圧力室106を収縮させる収縮波形要素c1とで構成される。
【0052】
非吐出パルスP1の膨張波形要素a1は中間電位(又は基準電位)Vmから電位V1まで立ち下がる波形であり、保持波形要素b1は電位V1を保持する波形であり、収縮波形要素c1は電位V1から中間電位Vmまで立ち上がる波形である。この非吐出パルスP1の波高値はVp1とする。
【0053】
吐出パルスP2は、圧力室106の液体を吐出させる第2駆動パルスである。吐出パルスP2は、圧力室106を膨張させる膨張波形要素a2と、膨張波形要素a2で膨張された状態を保持する保持波形要素b2と、保持波形要素b2で保持されている状態から圧力室106を収縮させる収縮波形要素c2とで構成される。
【0054】
吐出パルスP2の膨張波形要素a2は中間電位(又は基準電位)Vmから電位V2まで立ち下がる波形であり、保持波形要素b2は電位V2を保持する波形であり、収縮波形要素c2は電位V2から中間電位Vmまで立ち上がる波形である。この吐出パルスP2の波高値はVp2(Vp2>Vp1)とする。
【0055】
非吐出パルスP1の収縮波形要素c1の終了時点から吐出パルスP2の膨張波形要素a2の開始時点までの波形をパルス間保持波形要素d1とし、パルス間保持波形要素d1の時間をTdとする。時間Tdは、非吐出パルスP1と吐出パルスP2との間隔であり、言い換えれば、非吐出パルスP1と吐出パルスP2との間隔である。
【0056】
ここで、非吐出パルスP1と吐出パルスP2との間の時間Tdは、液体吐出ヘッド100の圧力室106の共振周期(固有振動周期)をTcとするとき、共振周期Tcの2/3~4/3倍としている。
【0057】
また、非吐出パルスP1の波高値Vp1は、吐出パルスP2で吐出される液体の滴速度Vjが極小値となるときの波高値Vpp1の±10%以内としている。
【0058】
これらの構成により、吐出パルスP2で吐出する滴のサテライトを抑制することができる。
【0059】
第1波形P3は、吐出パルスP2による液体吐出に伴う残留振動を抑制する波形である。なお、残留振動を抑制するとは、吐出パルスP2の収縮波形要素c2で圧力室106が収縮されて液体が吐出された後、第1波形P3を印加したときのメニスカスの残留振動が、第1波形P3を印加しないときよりも小さいことを意味する。
【0060】
第1波形P3は、圧力室106を収縮させる収縮波形要素c3と、収縮波形要素c3で収縮された状態を保持する保持波形要素b3と、保持波形要素b3で保持されている状態から圧力室106を膨張させる膨張波形要素a3とで構成される。
【0061】
本実施形態では、第1波形P3をパルス波形としているが、第1波形P3としては、少なくとも収縮波形要素c3を含めばよく、例えば、膨張波形要素a3がなく、収縮波形要素c3と保持波形要素b3とで第1波形P3を構成することもできる。
【0062】
第1波形P3の収縮波形要素c3は、中間電位(又は基準電位)Vmから電位V3まで立ち上がって圧力室106を収縮させる波形であり、吐出パルスP2の収縮波形要素c2によって収縮された圧力室106を更に収縮させる波形要素でもある。
【0063】
第1波形P3の保持波形要素b3は電位V3を保持する波形であり、膨張波形要素a3は電位V3から中間電位Vmまで立ち下がる波形である。この第1波形P3の波高値はVp3(Vp3>Vm)とする。
【0064】
吐出パルスP2の収縮波形要素c2の終了時点から第1波形P3の収縮波形要素c3の開始時点までの波形をパルス間保持波形要素d2とする。
【0065】
そして、吐出パルスP2の収縮波形要素c2の開始時点から第1波形P3の収縮波形要素c3の開始時点までの時間をTeとし、この時間Teは、共振周期Tcの±1/6~5/6倍としている。
【0066】
このように、吐出パルスP2の後に、吐出パルスP2の収縮波形要素c2によって収縮された圧力室106を更に収縮させる第1波形P3の収縮波形要素c3を配置する。そして、吐出パルスP2の収縮波形要素c2の開始から第1波形の収縮波形要素c3の開始までの時間Teを共振周期Tcの±1/6~5/6倍とする。これによって、ミストの発生を抑制することができる。
【0067】
以下、本実施形態の作用効果について図7以降を参照して具体的に説明する。
【0068】
先ず、図7は、吐出パルスP2の波高値Vp2を固定値とし、非吐出パルスP1の波高値Vp1を変化させたときの滴速度Vjと滴量Mjの変化の一例を示している。なお、非吐出パルスP1と吐出パルスP2との間の時間Tdは共振周期Tcの3/3倍=共振周期Tcである。
【0069】
この図7の結果から、波高値Vp1の値によって大きく3つの範囲S1、S2、S3に分けることができる。
【0070】
つまり、非吐出パルスP1の波高値Vp1が範囲S1内であるときには、波高値Vp1が大きくなるにつれて滴速度Vjが速くなる。これは、非吐出パルスP1の波高値Vp1を大きくするほど、メニスカス振動も大きくなり、その影響で、吐出パルスP2による滴の滴速度Vjが速くなっていることを示している。
【0071】
非吐出パルスP1の波高値Vp1が範囲S2内であるときには、範囲S1と範囲S2の境界を極大値とし、滴速度Vjが低下している。これは、メニスカス振動が大きくなりすぎて、メニスカスの単振動を超えた状態、つまり、メニスカスが溢れ気味になっている状態を示している。メニスカスが溢れ気味になっているため、吐出パルスP2によるエネルギーが効率よく伝わらず、滴速度Vjが低下している。
【0072】
非吐出パルスP1の波高値Vp1が範囲S3内であるときには、滴速度Vjは、範囲S2と範囲S3の境界を極小値(このときの波高値Vp1をピーク波高値Vpp1とする。)として増加している。
【0073】
また、範囲S1と範囲S2では滴量Mjは一定の傾きで増加していたのに対し、範囲S3ではその傾きが大きくなっていることが分かる。これは、非吐出パルスP1の波高値Vp1の電圧が大きくなりすぎて、非吐出パルスP1自身でも滴が吐出し始めていることを示している(この場合には、非吐出パルスP1は実質的に吐出パルスとなる。)。
【0074】
つまり、非吐出パルスP1で滴が吐出しているため、吐出パルスP2は通常の共振による吐出となり、波高値Vp1が大きくなるほど滴速度Vjが速くなっている。それと共に、非吐出パルスP1で吐出している滴と吐出パルスP2による滴の両方が吐出していくために、滴量Mjの傾きも範囲S1、範囲S2よりも大きくなっている。
【0075】
次に、図8は、滴速度Vjが一定になるようにしたときの非吐出パルスP1の波高値Vp1と吐出パルスP2の波高値Vp2の関係の一例を示している。なお、ここでも、非吐出パルスP1と吐出パルスP2との時間間隔Tdは共振周期Tcである。
【0076】
ここでも、図7の場合と同様に、非吐出パルスP1の波高値Vp1の値によって3つの範囲S1、S2、S3に分けることができる。
【0077】
まず、範囲S1では、非吐出パルスP1の波高値Vp1を大きくするに従って吐出パルスP2の波高値Vp2が低下する傾向が得られる。これは、非吐出パルスP1の波高値Vp1を大きくするに従ってメニスカス振動も大きくなるため、吐出パルスP2の波高値Vp2を小さくしても、滴速度Vjを一定に保てることを示している。
【0078】
範囲S2では、範囲S1と範囲S2との境界を極小値とし、滴速度Vjが増大している。これは、メニスカス振動が大きくなりすぎて、メニスカスの単振動を超えた状態、つまり、メニスカスが溢れ気味になっている状態を示している。メニスカスが溢れ気味になっているため、吐出パルスP2によるエネルギーが、効率よく伝わらず、より大きなエネルギーを加えないと滴速度Vjを一定に保てないことを示している。
【0079】
範囲S3では、範囲S2と範囲S3との境界を極大値とし、滴速度Vjが低下している。こちらも、前記図7の結果と同様に、非吐出パルスP1で滴が吐出しているため、吐出パルスP2は通常の共振による吐出となり、波高値Vp1が大きくなるに従って残留振動が大きくなり、波高値Vp2を小さくしても、滴速度Vjを一定に保てることを示している。
【0080】
次に、図8は、吐出パルスP2の波高値Vp2を滴速度Mjが一定になるように調整したときのサテライト滴の変化の一例を示している。
【0081】
サテライト滴速度Vjsは、非吐出パルスP1の波高値Vp1を大きくするに従って僅かに速くなる。しかしながら、吐出パルスP2の波高値Vp2が極大値をとる付近(上記の範囲S2とS3の境界付近)に対応する非吐出パルスP1の波高値Vp1の周辺で、サテライト滴速度Vjsが0になる(サテライトレス)領域S0がある。
【0082】
以上のサテライトレス領域が得られる説明は、非吐出パルスと吐出パルスとの間隔である非吐出パルスP1と吐出パルスP2との間の時間Tdが共振周期Tcと同じ場合である。そこで、時間Tdを共振周期Tcと異ならせて、上述したと同様に、吐出パルスP2の波高値Vp2を滴速度Mjが一定になるように調整し、非吐出パルスP1の変化に対するサテライト滴の変化を評価した。
【0083】
その結果、本実施形態では、非吐出パルスP1と吐出パルスP2との間の時間Tdを共振周期Tcの2/3~4/3倍としたときにサテライトレスとなる領域が確認された。
【0084】
次に、サテライトレスとできる非吐出パルスP1と吐出パルスP2との間の時間Td、共振周期Tc、非吐出パルスP1の波高値Vp1の関係について図9及び図10を参照して説明する。図9は、サテライトレスとできる非吐出パルスの波高値の最大値、最小値と、その電圧比率の関係、及び、非吐出パルスと吐出パルスとの間の時間と非吐出パルスの波高値の説明に供する説明図である。図10は、サテライトレスとできる非吐出パルスと吐出パルスとの間の時間と非吐出パルスの波高値の説明に供する説明図である。
【0085】
図9及び図10の横軸は、非吐出パルスP1と吐出パルスP2との間の時間Tdの共振周期Tc(共振タイミング)からのTc比率差分(Tc比率換算)を表している。例えば、Tc比率差分「0.1」というのは、共振周期Tcと同じ時間Tdよりも(0.1×Tc)分だけ長い時間Td(Td=Tc+0.1Tc)での評価結果であることを表している。
【0086】
ここで、図9は、サテライトレス領域S0が生じる非吐出パルスP1の波高値Vp1の最大値(最大Vp1)、最小値(最小Vp1)と、その電圧比率の関係を示している。また、図9は、サテライトレス領域S0が生じる非吐出パルスP1の波高値Vp1の最大値、最小値と、吐出パルスP2の波高値Vp2がピークを取るとき(吐出パルスで吐出される液体の滴速度が極小値となるとき)の波高値Vp1(これを「ピーク波高値Vpp1」という。)の値をまとめたものを示している。
【0087】
図10は、非吐出パルスP1の波高値Vp1の最大値(最大Vp1)と最小値(最小Vp1)の電圧範囲をピーク波高値Vpp1からの電圧差の比率で表したものである。
【0088】
これらより、共振周期Tcを中心とし、非吐出パルスP1と吐出パルスP2との間の時間Tdがずれると、サテライトレスとできる非吐出パルスP1の波高値Vp1の電圧範囲が狭くなっていることが分かる。
【0089】
サテライトレスとできる非吐出パルスP1と吐出パルスP2の時間間隔Tdとしては、共振周期Tcの2/3~4/3倍である。
【0090】
また、非吐出パルスP1は、吐出パルスP2で吐出される液体の滴速度Vjが極小値となるとき、つまり、吐出パルスP2の波高値Vp2がピークを取るときの波高値Vp1であるピーク波高値Vpp1の±10%の範囲内であることが分かる。
【0091】
以下、非吐出パルスP1及び吐出パルスP2で構成され、非吐出パルスP1と吐出パルスP2との間の時間Td1を共振周期Tcの2/3~4/3倍とし、非吐出パルスP1の波高値Vp1を吐出パルスP2で液体を吐出させたときの滴速度Vjが極小値になるピーク波高値Vpp1の±10%以内とした波形を「サテライトレス波形」という。
【0092】
次に、サテライトレス波形によるサテライトの抑制効果とミストの発生について図11も参照して説明する。図11は、パルスレーザー粒子化装置で観察した吐出状態の合成画像を含む説明図である。図11(a)はサテライトレス波形の場合、(b)は第1実施形態の吐出パルスP2のみの単パルス波形の場合を示している。
【0093】
なお、パルスレーザー粒子化装置とは、一瞬の状態を撮影できる装置である。パルスレーザー粒子化装置は、高速度カメラのように、連続状態は撮影できないが、タイミングをずらして瞬間の状態を撮影することにより、サテライトなどの状態をはっきりととらえることができている。図11はその瞬間の画像をつないだ合成画像である。
【0094】
単パルス波形の場合には、図11(b)に示すように、41μs付近から分裂遷移が始まり、その後もサテライトが発生したままの状態が続き、また、ミストも発生している。
【0095】
これに対し、サテライトレス波形の場合には、図11(a)に示すように、38μs付近から分裂遷移が始まり、その後、サテライトが主滴に吸収されてサテライトレスの状態になるが、ミスト(微小滴)が舞っていることが分かる。
【0096】
つまり、サテライトレス波形によってサテライトを抑制することはできるが、サテライトレス波形でもパルスレーザー粒子化装置で確認できる程度のミストが残存している。
【0097】
次に、本実施形態における第1波形P3の収縮波形要素c3によるミスト抑制効果について図12及び図13も参照して説明する。図12は同説明に供する駆動波形の説明図であり、(a)はサテライト波形に続いて収縮波形要素を印加する駆動波形の説明図、(b)はサテライト波形に続いて膨張波形要素を印加する駆動波形の説明図である。図13図12の各駆動波形を与えて液体吐出ヘッドから液体を吐出させたときの吐出状態をパルスレーザー粒子化装置で観察した合成画像を含む説明図である。
【0098】
ここでは、上述した図11の結果を踏まえて、サテライトレス波形においてミストが発生するのは、吐出パルスP2に液体吐出後の残留振動の影響であると推測した。そこで、残留振動を抑制する波形として図12に示すような収縮波形要素又は膨張波形要素を吐出パルスP2に続いて印加する駆動波形を液体吐出ヘッドに与えて吐出状態を観察した。
【0099】
図12(a)に示す駆動波形Vaは、第1実施形態と同様に、吐出パルスP2に続いて、収縮波形要素c3を含む第1波形P3を配置している。なお、この駆動波形Vaにおいて、第1波形P3は、パルス状波形ではなく、収縮波形要素c3と、電位V3を保持する保持波形要素b3で構成している。
【0100】
ここで、吐出パルスP2の収縮波形要素c2の開始から第1波形P3の収縮波形要素c3の開始までの時間Teは、吐出パルスP2の収縮波形要素c2の立ち上がり時間をtr2とし、保持波形要素d2の時間をtd2とするとき、Te=tr+td2である。
【0101】
そして、この駆動波形Vaでは、吐出パルスP2の収縮波形要素c2の開始から第1波形P3の収縮波形要素c3の開始までの時間Teを半共振周期(0.5Tc=共振周期Tcの1/2倍)としている。これにより、第1波形P3の収縮波形要素c3は圧力室106の残留振動に対して逆位相となる。
【0102】
図12(b)に示す駆動波形Vbは、第1実施形態と異なり、吐出パルスP2に続いて、膨張波形要素a4を含む第1波形P4を配置している。なお、この駆動波形Vbにおいて、第1波形P4も、パルス状波形ではなく、中間電位Vmから波高値Vp3だけ電位V4まで立ち下がる膨張波形要素a4と、電位V4を保持する保持波形要素b4で構成している。
【0103】
そして、この駆動波形Vbでは、吐出パルスP2の収縮波形要素c2の開始から第1波形P4の膨張波形要素c4の開始までの時間Teを1共振周期(1Tc=共振周期Tcの1倍)としている。これにより、第1波形P4の膨張波形要素a4は圧力室106の残留振動に対して逆位相となる。
【0104】
上述した駆動波形の内、図12(a)の駆動波形Vaを印加した場合には、図13(a)に示すように、サテライトレスとなる吐出状態を保ちつつ、ミストの発生を抑制することができることが確認された。
【0105】
これに対し、図12(b)の駆動波形Vaを印加した場合には、図13(b)に示すように、後端滴の滴速度低下が大きくなって主滴に吸収されず、サテライトが発生してしまい、サテライトレスの効果が生じないことが確認された。
【0106】
このように、吐出パルスP2による液体吐出に伴う残留振動に対して逆位相となるタイミングで収縮波形要素を印加することで、サテライトの抑制及びミストの抑制を図れる。これに対して、吐出パルスP2による液体吐出に伴う残留振動に対して逆位相となるタイミングで膨張波形要素を印加した場合には、サテライトを抑制できない。
【0107】
次に、吐出パルスの収縮波形要素の開始から第1波形の開始までの時間Teとミスト量及びサテライト長の関係について図14を参照して説明する。図14は同説明に供する説明図であり、(a)は駆動波形Vaを印加した場合、(b)は駆動波形Vbを印加した場合をそれぞれ示している。
【0108】
図14において、ミストカウントはサテライトレス波形で規格化した値であり、単純プルパルスの場合のミスト量は0.3である。
【0109】
前述したように、圧力室106の共振周期Tcに対して、駆動波形Vaの収縮波形要素c3の場合には半共振周期(0.5Tc)後が、駆動波形Vbの膨張波形要素a4の場合には1共振周期(1Tc)後が、それぞれ逆位相の制振のタイミングとなる。
【0110】
駆動波形Vaを印加する場合、図14(a)に示すように、制振のタイミング(Te=0.5Tc)がミスト量としては最小値をとっており、時間Teが1.0Tc以上では単純プルパルスの場合よりもミスト量が増加している。また、時間Teが1.0Tcのときには、収縮波形要素c3による収縮がメニスカスの突き出しに重畳することで、第1波形P3によって液体が吐出されてサテライト化していることが分かる。
【0111】
また、駆動波形Vaを印加する場合、第1波形P3の収縮波形要素c3の開始タイミングを約0.8Tc以内とする、つまり、制振のタイミングである0.5Tcから1/3以内とすることで、単純プルパルスでのミスト量よりも減らせることも分かった。
【0112】
言い換えれば、吐出パルスP2の収縮波形要素c2の開始から第1波形P3の収縮波形要素c3の開始までの時間Teを、共振周期Tcの±1/6(=1/2-1/3)~5/6(1/2+1/3)倍にすることで、単純パルスでのミスト量よりも減らすことができる。
【0113】
これに対し、駆動波形Vbを印加する場合、図14(b)に示すように、制振のタイミング(Te=1Tc)がミスト量としては最小値をとっているが、サテライトが発生している。また、時間Teが1Tc以外のタイミングではミスト抑制の効果が得られない。
【0114】
このように、本実施形態では、非吐出パルスP1と吐出パルスP2との間隔Tdは、圧力室106の共振周期Tcの2/3~4/3であり、非吐出パルスP1の波高値Vp1は、吐出パルスP2で吐出される液体の滴速度Vjが極小値となるときのピーク波高値Vpp1の±10%以内であり、吐出パルスP2の収縮波形要素c2の開始から第1波形P3の収縮波形要素c3の開始までの間隔Teは、圧力室106の共振周期Tcの±1/6~5/6倍である駆動波形Vaを印加する。これにより、サテライトの抑制とミストの抑制を図ることができる。
【0115】
本実施形態の駆動波形生成装置は、液体を吐出させない非吐出パルスP1と、圧力室106を収縮させて液体を吐出させる収縮波形要素c2を含む吐出パルスP2と、圧力室106を収縮させる収縮波形要素c3を含む第1波形P3と、を時系列で連続して含み、非吐出パルスP1と吐出パルスP2との間隔Tdは、圧力室106の共振周期Tcの2/3~4/3であり、非吐出パルスP1の波高値Vp1は、吐出パルスP2で吐出される液体の滴速度Vjが極小値となるときのピーク波高値Vpp1の±10%以内であり、吐出パルスP2の収縮波形要素c2の開始から第1波形P3の収縮波形要素c3の開始までの間隔Teは、圧力室106の共振周期Tcの±1/6~5/6倍である駆動波形Vaを生成する。
【0116】
本実施形態のヘッド駆動方法は、液体を吐出させない非吐出パルスP1と、圧力室106を収縮させて液体を吐出させる収縮波形要素c2を含む吐出パルスP2と、圧力室106を収縮させる収縮波形要素c3を含む第1波形P3と、を時系列で連続して含み、非吐出パルスP1と吐出パルスP2との間隔Tdは、圧力室106の共振周期Tcの2/3~4/3であり、非吐出パルスP1の波高値Vp1は、吐出パルスP2で吐出される液体の滴速度Vjが極小値となるときのピーク波高値Vpp1の±10%以内であり、吐出パルスP2の収縮波形要素c2の開始から第1波形P3の収縮波形要素c3の開始までの間隔Teは、圧力室106の共振周期Tcの±1/6~5/6倍である駆動波形Vaを生成し、駆動波形Vaを液体吐出ヘッドに与えて液体を吐出させる。
【0117】
次に、本発明の第2実施形態における駆動波形について図15を参照して説明する。図15は同説明に供する説明図である。
【0118】
本実施形態の駆動波形Vaは、複数の駆動パルスとして、第1吐出パルスP11、非吐出パルスP12、第2吐出パルスP13、第1波形P14を時系列で連続して含む。
【0119】
第1吐出パルスP11は、圧力室106の液体を加圧して液体を吐出させる第1駆動パルスである。第1吐出パルスP11は、圧力室106を膨張させる膨張波形要素a11と、膨張波形要素a11で膨張された状態を保持する保持波形要素b11と、保持波形要素b11で保持されている状態から圧力室106を収縮させて液体を吐出させる収縮波形要素c11とで構成される。
【0120】
第1吐出パルスP11の膨張波形要素a11は中間電位(又は基準電位)Vmから電位V11まで立ち下がる波形であり、保持波形要素b11は電位V11を保持する波形であり、収縮波形要素c11は電位V11から中間電位Vmまで立ち上がる波形である。この第1吐出パルスP11の波高値はVp11とする。
【0121】
非吐出パルスP12は、液体が吐出されず、メニスカスを振動させる程度に圧力室106の液体を加圧する微駆動波形として使用可能な第2駆動パルスである。非吐出パルスP12は、圧力室106を膨張させる膨張波形要素a12と、膨張波形要素a12で膨張された状態を保持する保持波形要素b12と、保持波形要素b12で保持されている状態から圧力室106を収縮させてメニスカスを振動させる収縮波形要素c12とで構成される。
【0122】
非吐出パルスP12の膨張波形要素a12は中間電位(又は基準電位)Vmから電位V12(V12<V11)まで立ち下がる波形であり、保持波形要素b12は電位V12を保持する波形であり、収縮波形要素c12は電位V12から中間電位Vmまで立ち上がる波形である。この非吐出パルスP12の波高値はVp12とする。
【0123】
第2吐出パルスP13は、圧力室106の液体を加圧して液体を吐出させる第3駆動パルスである。第2吐出パルスP13は、圧力室106を膨張させる膨張波形要素a13と、膨張波形要素a13で膨張された状態を保持する保持波形要素b13と、保持波形要素b13で保持されている状態から圧力室106を収縮させて液体を吐出させる収縮波形要素c13とで構成される。
【0124】
第2吐出パルスP13の膨張波形要素a13は中間電位(又は基準電位)Vmから電位V13(V13>V11)まで立ち下がる波形であり、保持波形要素b13は電位V13を保持する波形であり、収縮波形要素c13は電位V13から中間電位Vmまで立ち上がる波形である。この第2吐出パルスP13の波高値はVp13とする。
【0125】
第1吐出パルスP11の収縮波形要素c11の終了時点から非吐出パルスP12の膨張波形要素a12の開始時点までの波形をパルス間保持波形要素d11とし、パルス間保持波形要素d11の時間(第1吐出パルスP11と非吐出パルスP12との時間間隔)をTd11とする。
【0126】
非吐出パルスP12の収縮波形要素c12の終了時点から第2吐出パルスP13の膨張波形要素a13の開始時点までの波形をパルス間保持波形要素d12とし、パルス間保持波形要素d12の時間(非吐出パルスP12と第2吐出パルスP13との時間間隔)をTd12とする。
【0127】
ここで、第1吐出パルスP11と非吐出パルスP12との間隔(時間Td11)は、共振の関係にある。ここでの共振の関係とは、第1吐出パルスP11によって圧力室106の液体を加圧したときの残留振動によって非吐出パルスP12によって圧力室106の液体を加圧するときの圧力が増幅される関係である。
【0128】
同様に、非吐出パルスP12と第2吐出パルスP13との間隔(時間Td12)は、共振の関係にある。ここでの共振の関係とは、非吐出パルスP12によって圧力室106の液体を加圧したときの残留振動によって第2吐出パルスP13によって圧力室106の液体を加圧するときの圧力が増幅される関係である。
【0129】
本実施形態では、非吐出パルスP12と第2吐出パルスP13との時間時間Td12は、液体吐出ヘッド100の圧力室106の共振周期Tcの3/4~5/4倍としている。
【0130】
また、非吐出パルスP12の波高値Vp12は、第1吐出パルスP11を印加後、非吐出パルスP12を印加し、更に第2吐出パルスP13を印加して液体を吐出させたときの滴速度Vjが極小値になる波高値Vp12(ピーク波高値Vpp12)の±10%の範囲内としている。
【0131】
これらの構成により、第2吐出パルスP13で吐出する滴のサテライトを抑制することができる。
【0132】
第1波形P14は、第2吐出パルスP13による液体吐出に伴う残留振動を抑制するパルスである。なお、残留振動を抑制するとは、第2吐出パルスP2の収縮波形要素c13で圧力室106が収縮されて液体が吐出された後、第1波形P14を印加したときのメニスカスの残留振動が、第1波形P14を印加しないときよりも小さいことを意味する。
【0133】
第1波形P14は、圧力室106を収縮させる収縮波形要素c14と、収縮波形要素c14で収縮された状態を保持する保持波形要素b14と、保持波形要素b14で保持されている状態から圧力室106を膨張させる膨張波形要素a14とで構成される。
【0134】
本実施形態でも、第1波形P14をパルス波形としているが、第1波形としては、少なくとも収縮波形要素c14を含めばよく、例えば、前述した図12(a)と同様に、膨張波形要素a14がなく、収縮波形要素c14と保持波形要素b14とで第1波形P14を構成することもできる。
【0135】
第1波形P14の収縮波形要素c14は、中間電位(又は基準電位)Vmから電位V14まで立ち上がって圧力室106を収縮させる波形であり、第2吐出パルスP13の収縮波形要素c13によって収縮された圧力室106を更に収縮させる波形要素でもある。
【0136】
第1波形P14の保持波形要素b14は電位V14を保持する波形であり、膨張波形要素a14は電位V14から中間電位Vmまで立ち下がる波形である。この第1波形P14の波高値はVp14(Vp14>Vm)とする。
【0137】
第2吐出パルスP13の収縮波形要素c13の終了時点から第1波形P14の収縮波形要素c14の開始時点までの波形をパルス間保持波形要素d13とする。
【0138】
そして、第2吐出パルスP13の収縮波形要素c13の開始時点から第1波形P14の収縮波形要素c14の開始時点までの時間をTeとし、この時間Teは、共振周期Tcの±1/6~5/6倍としている。
【0139】
このように、第2吐出パルスP13の後に、第2吐出パルスP13の収縮波形要素c13によって収縮された圧力室106を更に収縮させる第1波形P14の収縮波形要素c14を配置する。そして、第2吐出パルスP13の収縮波形要素c13の開始から第1波形P14の収縮波形要素c14の開始までの時間Teを共振周期Tcの±1/6~5/6倍とする。これによって、ミストの発生を抑制することができる。
【0140】
次に、本実施形態におけるサテライトレスの作用効果について図16以降を参照して具体的に説明する。
【0141】
先ず、図16は、第2吐出パルスP13の波高値Vp13を固定値とし、第1吐出パルスP11の波高値Vp11、あるいは、非吐出パルスP12の波高値Vp12を変化させたときの滴速度Vjの変化の一例を示している。なお、第1吐出パルスP11と非吐出パルスP12、非吐出パルスP12と第2吐出パルスP13は共振タイミングの関係にある。
【0142】
この図16の結果から、波高値Vp11、Vp12の値によって大きく3つの範囲S11、S12、S13に分けることができる。
【0143】
つまり、第1吐出パルスP11の波高値Vp11、あるいは、非吐出パルスP12の波高値Vp12が、範囲S11内であるときには、波高値Vp11が大きくなるにつれて滴速度Vjが速くなる。
【0144】
第1吐出パルスP11の波高値Vp11、あるいは、非吐出パルスP12の波高値Vp12が、範囲S12内であるときには、範囲S11と範囲S12の境界を極大値とし、滴速度Vjが低下している。
【0145】
第1吐出パルスP11の波高値Vp11、あるいは、非吐出パルスP12の波高値Vp12が、範囲S13内であるときには、範囲S12と範囲S13の境界を極小値(このときの波高値Vp11、Vp12をピーク波高値Vpp11、Vpp12とする。)とし、滴速度Vjが増加している。
【0146】
このときに、第1吐出パルスP11の波高値Vp11と非吐出パルスP12の波高値Vp12が、第1吐出パルスP11を印加後、非吐出パルスP12を印加し、更に第2吐出パルスP13を印加して液体を吐出させたときの滴速度Vjが極小値になる波高値Vpp11,あるいは、波高値Vpp12の±10%以内の電圧であるときに、サテライト滴速度が大幅に上昇し、条件によっては、サテライトがなくなる。
【0147】
言い換えれば、図16から分かるように、本実施形態において、非吐出パルスP12に代えて、第1吐出パルスP11の波高値Vp11を、第1吐出パルスP11を印加後、非吐出パルスP12を印加し、更に第2吐出パルスP13を印加して液体を吐出させたときの滴速度が極小値になる波高値Vpp11の±10%以内の電圧とすることでも、条件によっては、サテライトがなくなる。
【0148】
つまり、上記のように、サテライト滴速度が大幅に上昇し、条件によっては、サテライトがなくなるのは、第2吐出パルスP13による吐出が、第1吐出パルスP11、非吐出パルスP12による吐出エネルギーを受けることにあると考えられる。したがって、滴速度Vjが極小値になる波高値の±10%以内の吐出エネルギーを与えるのは非吐出パルスP12、第1吐出パルスP11のいずれでもよい。
【0149】
ここで、第1吐出パルスP11及び第2吐出パルスP13と非吐出パルス12を使用することの作用効果について説明する。
【0150】
先ず、第1吐出パルスP11を使用しないで、前記第1実施形態と同様に、非吐出パルスP12と第2吐出パルスP13で構成したパルス群におけるサテライトの抑制について図17を参照して説明する。
【0151】
図17は非吐出パルスP12の波高値Vp12に対し、滴速度Vjが一定になるように第2吐出パルスP13の波高値Vp13を調整したときの第2吐出パルスP13の波高値Vp13及びサテライト滴の滴速度の関係の一例を示している。
【0152】
サテライト滴速度Vjsは、非吐出パルスP12の波高値Vp12を大きくするに従って僅かに速くなる。しかしながら、第2吐出パルスP13の波高値Vp13が極大値をとる付近(範囲S12とS13の境界付近)に対応する非吐出パルスP12の波高値Vp12の周辺で、サテライト滴速度Vjsが0になる(サテライトレス)領域S0がある。
【0153】
なお、以上のサテライトレス領域が得られる説明は、非吐出パルスP12と第2吐出パルスP13との間隔Td2を共振周期Tcと同じ(Td=Tc)にした場合である。
【0154】
ところで、サテライトレス領域が見られる波高値Vp12の条件は、範囲S12と範囲S13の境界付近の電圧値とする必要がある。つまり、非吐出パルスP12によりメニスカス振動が大きくなりすぎて、メニスカスが溢れ気味になっている範囲S12と、それを超えて非吐出パルスP12自身で滴が吐出し始めている範囲S13との境界付近の電圧を印加する必要がある。
【0155】
しかしながら、メニスカス振動が大きすぎる条件では、非吐出パルスP12を、メニスカスを振動させて乾燥を防ぐために通常使用される微駆動波形として使用することができなくなる。このような波高値の非吐出パルスP12では、メニスカスを暴れさせて次の吐出滴に影響を与え、吐出不良をもたらしたり、非吐出パルスP12(微駆動波形)自身で滴が吐出したりして、微駆動としての役割を果たせなくなってしまうからである。
【0156】
そのため、サテライトレスとメニスカス乾燥を防ぐための微駆動を両立させるためには、サテライトレスとなる専用の非吐出パルスが必要になる。つまり、波高値の高い(駆動電圧の高い)非吐出パルスと、微駆動波形としての駆動電圧の低い非吐出パルスの両方を駆動波形の中に設定する必要がある。その結果、駆動波形長が長くなり、駆動周波数を上げられにくくなる。
【0157】
次に、本実施形態における第1吐出パルスP11と非吐出パルスP12の間隔Td11に対する第2吐出パルスP13の波高値Vp13とサテライト滴速度Vjsの関係の一例について図18を参照して説明する。
【0158】
この例では、第1吐出パルスP11は滴速度が約5m/sとなるように波高値Vp11を設定した遅めの滴を吐出する吐出パルスとし、非吐出パルスP12はメニスカスを振動させる微駆動波形として用いることができる低い波高値Vp12の非吐出パルスとする。そして、非吐出パルスP12と第2吐出パルスP13との間の時間Td12は共振のタイミングとしている。なお、波高値Vp12は上述した範囲S11内の電圧に相当する電圧である。
【0159】
そして、第1吐出パルスP11と非吐出パルスP12との間隔Td11をパラメータとして、第1吐出パルスP11、非吐出パルスP12及び第2吐出パルスP13によるマージ滴の滴速度が7m/sとなるように、第2吐出パルスP13の波高値Vp13を調整した。
【0160】
このときの間隔Td11に対する波高値Vp13及びサテライト滴速度Vjsを図18に表している。
【0161】
図18より、第2吐出パルスP13の波高値Vp13は、第1吐出パルスP11と非吐出パルスP12による残留振動に応じて、周期的に変化していることが分かる。ただし、最初の共振タイミング、すなわち、波高値Vp13が小さくなるべき間隔Td11のタイミングでは、波高値Vp13の電圧が少し大きくなっている様子が見える。
【0162】
サテライト滴速度Vjsも、間隔Td11に応じて周期的に変化する様子が見られるが、最初の共振タイミング、すなわち、波高値Vp13の電圧が少し大きくなっているときにサテライトがなくなる領域S0が得られた。
【0163】
前述したよう、第1吐出パルスP11を使用しない場合には、非吐出パルスP12によって吐出するか否かの限界の電圧まで電圧を強めたときに、サテライトがなくなる、若しくは、サテライト滴速度が大幅に速くなる領域が得られる。
【0164】
これに対し、本実施形態では、第1吐出パルスP11を非吐出パルスP12の前に配置する。したがって、非吐出パルスP12によって加圧するとき、非吐出パルスP12によるメニスカス振動は第1吐出パルスP11の残留振動の影響を受けることになる。
【0165】
これにより、非吐出パルスP12の波高値Vp12が、サテライトがなくならない、あるいは、サテライト滴速度が大幅に速くならない低い電圧であっても、非吐出パルスP12によるメニスカス振動は液体を吐出するか否かの限界の振動まで増幅される。この結果、サテライトがなくなる、若しくは、サテライト滴速度が大幅に速くなる領域が得られる。
【0166】
このように、非吐出パルスP12の波高値Vp12を液体が吐出されない低い電圧にできることによって、非吐出パルスP12を、液体が吐出されることなくメニスカスを振動させることができる微駆動波形として使用することができる。
【0167】
つまり、メニスカスを振動させる微駆動パルスの前に吐出用の駆動パルスを配置することで、駆動パルスの残留振動によって微駆動パルスによる振動を増幅させ、微駆動パルスをサテライト抑制のためのパルスと同等の波形強さ(波高値)とすることができる。
【0168】
これにより、大滴や中滴のような複数滴でもサテライトレス、若しくは、サテライト滴速度を大幅に速くするとともに、サテライトレスのための専用の非吐出パルスを設ける必要がなくなり、駆動波形長を短くすることができ、高周波駆動させることが可能となる。
【0169】
次に、第2駆動パルスの波高値について図19を参照して説明する。図19は非吐出パルスP12と第2吐出パルスP13の2パルスのとき、第2吐出パルスP13の波高値Vp13を固定とし、非吐出パルスP12の波高値Vp12を変化させたときの滴速度Vjの変化の一例を示す説明図である。
【0170】
この場合も、滴速度Vjの変化は、波高値Vp12の値によって大きく3つの範囲S11、S12、S13に分けることができる。
【0171】
このとき、範囲S13の波高値Vp12は、非吐出パルスP12によって滴が吐出しようとしており、非吐出パルスではなくなってくる電圧である。そのため、非吐出パルスP12を微駆動波形として使用することができない。
【0172】
また、範囲S12の波高値Vp12は、非吐出パルスP12によりメニスカスが盛り上がり、単純振動ではなく、盛り上がり気味になっている電圧である。そのため、メニスカスのコントロールができなくなって、駆動を続けていると不吐出に繋がることが分かっている。
【0173】
そのため、非吐出パルスP12を微駆動波形(微駆動パルス)として使用する場合、範囲S11の波高値Vp12の電圧とすることが好ましい。つまり、非吐出パルスP12を微駆動波形(微駆動パルス)として使用する場合の波高値Vp12は、滴速度の極大値よりも滴速度が遅くなる電圧とすることが好ましい。
【0174】
次に、非吐出パルスP12と第2吐出パルスP13との間の時間Td12とサテライトの抑制との関係について図20ないし図23を参照して説明する。
【0175】
ここでは、非吐出パルスP12と第2吐出パルスP13との間の時間Td12を共振周期Tcと異ならせて、第2吐出パルスP13の波高値Vp13を滴速度が一定になるように調整し、非吐出パルスP12の変化に対するサテライト滴の変化を評価した。
【0176】
まず、図20は、非吐出パルスP12と第2吐出パルスP13との間の時間Td12を共振周期Tcに対して、(2/5)Tc短くした(Td12=Tc-(2/5)Tc)場合を示している。
【0177】
この条件では、サテライトレスとなる非吐出パルスP12の波高値Vp12の条件は見られない。
【0178】
次に、図21は、非吐出パルスP12と第2吐出パルスP13との間の時間Td12を共振周期Tcに対して、(1/4)Tc分短くした(Td12=Tc-(1/4)Tc)場合を示している。
【0179】
この条件では、Td12=Tcの場合よりも非吐出パルスP12の波高値Vp12の範囲は狭いが、サテライトレスとなる領域S0が確認された。
【0180】
次に、図22は、非吐出パルスP12と第2吐出パルスP13との間の時間Td12を共振周期Tcに対して、(1/3)Tc分長くした(Td12=Tc+(1/3)Tc)場合を示している。
【0181】
この条件では、Td12=Tcの場合よりも非吐出パルスP12の波高値Vp12の範囲は狭いが、サテライトレスとなる領域S0が確認された。
【0182】
次に、図23は、非吐出パルスP12と第2吐出パルスP13との間の時間Td12を共振周期Tcに対して、(1/2)Tc分長くした(Td12=Tc+1/2Tc)場合を示している。
【0183】
この条件では、サテライトレスとなる非吐出パルスP12の波高値Vp12の条件は見られない。また、時間Td12を(Tc+(1/2)Tc)より長くしても、サテライトレスとなる条件は確認できなかった。
【0184】
次に、以上の結果に基づき、サテライトレスとできる非吐出パルスP12と第2吐出パルスP13との間隔Td2と共振周期Tcとの関係、非吐出パルスP12の波高値Vp2について図24ないし図28を参照して説明する。
【0185】
図24は、サテライトレス領域S0が生じる非吐出パルスP12の波高値Vp12の最大値、最小値と、その電圧比率の関係を示している。
【0186】
図25の横軸は、非吐出パルスP12と第2吐出パルスP13との間の時間Td12の共振周期Tc(共振タイミング)からのTc比率差分(Tc比率換算)を表している。例えば、Tc比率差分「0.1」というのは、共振周期Tcと同じ時間Td12よりも(0.1×Tc)分だけ長い時間Td12(Td12=Tc+0.1Tc)での評価結果であることを表している。
【0187】
図26は、サテライトレスとなる非吐出パルスP12の波高値Vp12の最大値、最小値、第2吐出パルスP13の波高値Vp13がピークを取るとき(第2吐出パルスP13で吐出される液体の滴速度が極小値となるとき)の波高値Vp12(これを「ピーク波高値Vpp12」という。)の値をまとめたものを示している。
【0188】
図26の横軸は、図25と同じく、非吐出パルスP12と第2吐出パルスP13との間の時間Td12の共振周期Tc(共振タイミング)からのTc比率差分(Tc比率換算)を表している。例えば、Tc比率差分「0.1」というのは、共振周期Tcと同じ時間Td12よりも(0.1×Tc)分だけ長い間隔Td2(Td2=Tc+0.1Tc)での評価結果であることを表している。
【0189】
図27及び図28は、非吐出パルスP12の波高値Vp22の最大値(最大Vp22)と最小値(最小Vp22)の電圧範囲をピーク波高値Vpp22からの電圧差の比率で表したものである。
【0190】
図27及び図28の横軸は、図26と同じく、非吐出パルスP12と第2吐出パルスP13との間隔Td22の共振周期Tc(共振タイミング)からのTc比率差分(Tc比率換算)を表している。例えば、Tc比率差分「0.1」というのは、共振周期Tcと同じ間隔Td22よりも(0.1×Tc)分だけ長い間隔Td22(Td2=Tc+0.1Tc)での評価結果であることを表している。
【0191】
これらより、共振周期Tcを中心とし、非吐出パルスP12と第2吐出パルスP13との間隔Td22がずれると、サテライトレスとできる非吐出パルスP12の波高値Vp22の電圧範囲が狭くなっていることが分かる。
【0192】
サテライトレスとできる非吐出パルスP12と第2吐出パルスP13との間の時間Td12としては、ここでは、共振周期Tcを中心に、±1/3Tc(Tc-(1/3)Tc~Tc+(1/3)Tcの範囲内(共振周期Tcの1/3~4/3倍)である。
【0193】
また、非吐出パルスP12は、第2吐出パルスP13で吐出される液体の滴速度Vjが極小値となるとき、つまり、第2吐出パルスP13の波高値Vp13がピークを取るときの波高値Vp12であるピーク波高値Vpp12の±10%以内であることが分かる。
【0194】
ここで、電圧マージンΔ10%(±5%:-5%~+5%)以上を確保するためには、非吐出パルスP12と第2吐出パルスP13との間の時間Td12は(Tc-(1/4)Tc~Tc+(1/4)Tc)の範囲内とすることが好ましい。
【0195】
また、電圧マージンΔ15%(±7.5%:-7.5%~+7.5%)以上を確保するためには、非吐出パルスP12と第2吐出パルスP13との間の時間Td12は(Tc-(1/6)Tc~Tc+(1/6)Tc)の範囲内とすることが好ましい。
【0196】
また、非吐出パルスP12と第2吐出パルスP13との間の時間Td12を共振周期Tc(Td12=Tc)とすることで、電圧マージンΔ20%(±10.0%:-10.0%~+10.0%)以上を確保することができる。
【0197】
次に、本発明の第3実施形態について図29ないし図31を参照して説明する。図29ないし図31は同実施形態におけるサテライトレスとできる非吐出パルスP12と第2吐出パルスP13との間の時間Td12と共振周期Tcとの関係、非吐出パルスP12の波高値Vp12の説明に供する説明図である。
【0198】
本実施形態の駆動波形Vaの波形構成は、前記第2実施形態と同様である。
【0199】
図29ないし図31は、非吐出パルスP12の波高値Vp12の最大値(最大Vp12)と最小値(最小Vp12)の電圧範囲をピーク波高値Vpp12からの電圧差の比率で表したものである。
【0200】
図29ないし図31の横軸は、非吐出パルスP12と第2吐出パルスP13との間の時間Td12の共振周期Tc(共振タイミング)からのTc比率差分(Tc比率換算)を表している。例えば、Tc比率差分「0.1」というのは、共振周期Tcと同じ時間Td12よりも(0.1×Tc)分だけ長い時間時間Td12(Td12=Tc+0.1Tc)での評価結果であることを表している。
【0201】
本実施形態では、サテライトレスとできる非吐出パルスP12と第2吐出パルスP13との間の時間Td12としては、Tc-0.2Tc~Tc+0.45Tc、言い換えれば、Tc-(1/5)Tc~Tc+(9/20)Tcの範囲内である。
【0202】
また、非吐出パルスP12は、第2吐出パルスP13で吐出される液体の滴速度Vjが極小値となるとき、つまり、第2吐出パルスP13の波高値Vp13がピークを取るときの波高値Vp12であるピーク波高値Vpp12の「-5%~+10%」の範囲内であることが分かる。
【0203】
ここで、電圧マージン±5%(-5%~+5%)以上を確保するためには、図30から非吐出パルスP12と第2吐出パルスP13との間の時間Td12は、Tc-0.1Tc~Tc+0.25Tc、言い換えれば、Tc-(1/10)Tc~Tc+(1/4)Tcの範囲内とすることが好ましい。
【0204】
また、電圧マージン±7.5%(-7.5%~+7.5%)以上を確保するためには、図31から非吐出パルスP12と第2吐出パルスP13との間の時間Td12は、Tc-0.07Tc~Tc+0.2Tcの範囲内、言い換えれば、Tc-(1/14)Tc~Tc+(1/5)Tcの範囲内とすることが好ましい。
【0205】
以上のように、第2実施形態及び第3実施形態における駆動波形生成装置は、液体を吐出させる第1吐出パルスP11と、液体を吐出させない非吐出パルスP12と、液体を吐出させる第2吐出パルスP13とを時系列で連続して含み、非吐出パルスP12は、単体で、液体を吐出させない程度にメニスカスを振動させる微駆動波形として使用可能であり、第1吐出パルスP11と非吐出パルスP12との間隔Td1、非吐出パルスP12と第2吐出パルスP13との間隔Td2は、それぞれ共振の関係にあり、非吐出パルスP12の波高値Vp2は、第1吐出パルスP11を印加後、非吐出パルスP12を印加し、更に第2吐出パルスP13を印加して液体を吐出させたときの滴速度Vjが極小値になる波高値Vpp2の-10%~+10%の範囲内の電圧としている駆動波形Vaを生成する。
【0206】
また、各実施形態における駆動波形生成装置において、液体を吐出させる第1吐出パルスP11と、液体を吐出させない非吐出パルスP12と、液体を吐出させる第2吐出パルスP13とを時系列で連続して含み、非吐出パルスP12は、単体で、液体を吐出させない程度にメニスカスを振動させる微駆動波形として使用可能であり、第1吐出パルスP11と非吐出パルスP12との間隔Td1、非吐出パルスP12と第2吐出パルスP13との間隔Td2は、それぞれ共振の関係にあり、第1吐出パルスP11の波高値Vp1は、第1吐出パルスP11を印加後、非吐出パルスP12を印加し、更に第2吐出パルスP13を印加して液体を吐出させたときの滴速度Vjが極小値になる波高値Vpp1の-10%~+10%の範囲内の電圧とすることができる。
【0207】
また、各実施形態におけるヘッド駆動方法は、液体を吐出させる第1吐出パルスP11と、液体を吐出させない非吐出パルスP12と、液体を吐出させる第2吐出パルスP13とを時系列で連続して含み、非吐出パルスP12は、単体で、液体を吐出させない程度にメニスカスを振動させる微駆動波形として使用可能であり、第1吐出パルスP11と非吐出パルスP12との間隔Td1、非吐出パルスP12と第2吐出パルスP13との間隔Td2は、それぞれ共振の関係にあり、非吐出パルスP12の波高値Vp2は、第1吐出パルスP11を印加後、非吐出パルスP12を印加し、更に第2吐出パルスP13を印加して液体を吐出させたときの滴速度Vjが極小値になる波高値Vpp2の-10%~+10%の範囲内の電圧とした駆動波形Vaを生成し、駆動波形Vaを液体吐出ヘッドに与えて液体を吐出させる。
【0208】
また、各実施形態におけるヘッド駆動方法において、液体を吐出させる第1吐出パルスP11と、液体を吐出させない非吐出パルスP12と、液体を吐出させる第2吐出パルスP13とを時系列で連続して含み、非吐出パルスP12は、単体で、液体を吐出させない程度にメニスカスを振動させる微駆動波形として使用可能であり、第1吐出パルスP11と非吐出パルスP12との間隔Td1、非吐出パルスP12と第2吐出パルスP13との間隔Td2は、それぞれ共振の関係にあり、第1吐出パルスP11の波高値Vp1は、第1吐出パルスP11を印加後、非吐出パルスP12を印加し、更に第2吐出パルスP13を印加して液体を吐出させたときの滴速度Vjが極小値になる波高値Vpp1の-10%~+10%の範囲内の電圧とした駆動波形Vaを生成し、駆動波形Vaを液体吐出ヘッドに与えて液体を吐出させることができる。
【0209】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0210】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0211】
また、「液体を吐出する装置」には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0212】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0213】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0214】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0215】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0216】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0217】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0218】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0219】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【符号の説明】
【0220】
1 印刷装置
10 搬入部
20 前処理部
30 印刷部
40 乾燥部
50 搬出部
21 塗布部
33 吐出ユニット
100 液体吐出ヘッド(ヘッド)
106 圧力室
112 圧電素子
400 ヘッド駆動制御部
401 ヘッド制御部
402 駆動波形生成部
403 波形データ格納部
410 ヘッドドライバ
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