(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116521
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】二重特異性抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体抗体及び使用方法
(51)【国際特許分類】
C12P 21/08 20060101AFI20230815BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230815BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230815BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230815BHJP
C07K 16/46 20060101ALN20230815BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20230815BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230815BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20230815BHJP
【FI】
C12P21/08
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61P25/00
A61P43/00
C07K16/46 ZNA
C07K16/28
C12N15/13
C12N15/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023085860
(22)【出願日】2023-05-25
(62)【分割の表示】P 2021204767の分割
【原出願日】2016-09-30
(31)【優先権主張番号】15188067.1
(32)【優先日】2015-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.NONIDET
(71)【出願人】
【識別番号】514099673
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】デュール, ハーラルト
(72)【発明者】
【氏名】フェン, ゼバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ゲプフェルト, ウルリヒ
(72)【発明者】
【氏名】イムホフ-ユング, ザビーネ
(72)【発明者】
【氏名】クライン, クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ラリヴィエール, ローラン
(72)【発明者】
【氏名】モルホイ, ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】レーグラ, イェルク トーマス
(72)【発明者】
【氏名】リューガー, ペトラ
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー, ヴォルフガング
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ヒトCD20及びヒトトランスフェリン受容体に対する二重特異性抗体を製造する方法を提供する。
【解決手段】i)二重特異性抗体が産生されるように、二重特異性抗体をコードする一又は複数の核酸を含む細胞を培養する工程、及びii)細胞又は培地から二重特異性抗体を回収し、それにより二重特異性抗体を製造する工程を含む、二重特異性抗体を製造する方法であって、二重特異性抗体が、a)抗体軽鎖及び抗体重鎖の対を二つ含み、重鎖及び軽鎖の対のそれぞれにより形成される結合部位が第一の抗原に特異的に結合する、一の抗体と、b)結合部位が第二の抗原に特異的に結合する、一のさらなるFab断片とを含み、二重特異性抗体が、特定のアミノ酸配列を含み、第一の抗原がヒトCD20タンパク質であり、第二の抗原がヒトトランスフェリン受容体である、方法とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)抗体軽鎖及び抗体重鎖の対を二つ含み、重鎖及び軽鎖の対のそれぞれにより形成される結合部位が第一の抗原に特異的に結合する、一の抗体と、
b)抗体の重鎖の一つのC末端に融合し、結合部位が第二の抗原に特異的に結合する、一のさらなるFab断片
とを含む二重特異性抗体であって、
抗体軽鎖のそれぞれが、定常軽鎖ドメイン(CL)において、123位でアミノ酸残基アルギニン(野生型グルタミン酸残基の代替;E123R変異)を、124位でアミノ酸残基リジン(野生型グルタミン残基の代替;Q124K変異)(Kabatに従って番号付け)を含み、
抗体重鎖のそれぞれが、第一定常重鎖ドメイン(CH1)において、147位でグルタミン酸残基(野生型リジン残基の代替;K147E変異)を、213位でグルタミン酸残基(野生型リジンアミノ酸残基の代替;K213E変異)(Kabat EU indexに従って番号付け)を含み、
第二の抗原に特異的に結合するさらなるFab断片が、定常軽鎖ドメイン(CL)及び定常重鎖ドメイン1(CH1)が互いに置き換わるように、ドメイン交差を含み、
第一の抗原がヒトCD20タンパク質であり、第二の抗原がヒトトランスフェリン受容体である、抗体。
【請求項2】
さらなるFab断片が、ペプチド性リンカーにより、重鎖のC末端に融合している、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
a)さらなるFab断片に融合している重鎖が、C末端重鎖アミノ酸残基として、トリペプチドLSPを有し、そのプロリンが、さらなるFab断片の、又はペプチド結合を介するペプチド性リンカーの第一のアミノ酸残基に直接融合し、
b)さらなるFab断片に融合していない重鎖が、C末端重鎖アミノ酸残基として、トリペプチドLSP又はSPG又はPGKを有する
請求項1又は2に記載の抗体。
【請求項4】
a)ヒトサブクラスIgG1の完全長抗体、又は
b)ヒトサブクラスIgG4の完全長抗体、又は
c)変異L234A、L235A及びP329Gを有するヒトサブクラスIgG1の完全長抗体
d)変異S228P、L235E及びP329Gを有するヒトサブクラスIgG4の完全長抗体
e)両方の重鎖中に変異L234A、L235A及びP329Gを、一方の重鎖中に変異T366W及びS354Cを、それぞれの他方の重鎖中に変異T366S、L368A、Y407V及びY349Cを有するヒトサブクラスIgG1の完全長抗体
f)両方の重鎖中に変異S228P及びP329Gを、一方の重鎖中に変異T366W及びS354Cを、それぞれの他方の重鎖中に変異T366S、L368A、Y407V及びY349Cを有するヒトサブクラスIgG4の完全長抗体
g)両方の重鎖中に変異L234A、L235A、P329G、I253A、H310A及びH435Aを、一方の重鎖中に変異T366W及びS354Cを、それぞれの他方の重鎖中に変異T366S、L368A、Y407V及びY349Cを有するヒトサブクラスIgG1の完全長抗体
h)両方の重鎖中に変異L234A、L235A、P329G、M252Y、S254T及びT256Eを、一方の重鎖中に変異T366W及びS354Cを、それぞれの他方の重鎖中に変異T366S、L368A、Y407V及びY349Cを有するヒトサブクラスIgG1の完全長抗体、又は
i)両方の重鎖中に変異L234A、L235A、P329G、H310A、H433A及びY436Aを、一方の重鎖中に変異i)T366W、及びii)S354C又はY349Cを、それぞれの他方の重鎖中に変異i)T366S、L368A及びY407V、並びにii)Y349C又はS354Cを有するヒトサブクラスIgG1の完全長抗体である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項5】
二重特異性抗体が、
i)70%以上の配列番号01に対する配列同一性を有する軽鎖、
ii)70%以上の配列番号02に対する配列同一性を有する重鎖、
iii)70%以上の配列番号03に対する配列同一性を有する軽鎖、及び
iv)70%以上の配列番号04に対する配列同一性を有する重鎖Fab断片
を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項6】
二重特異性抗体が、配列番号01のアミノ酸配列を有する軽鎖、配列番号02のアミノ酸配列を有する重鎖、配列番号03のアミノ酸配列を有する軽鎖、及び配列番号04のアミノ酸配列を含む抗体Fab断片を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項7】
モノクローナルである、請求項1から6のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の抗体と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的製剤。
【請求項9】
医薬としての使用のための、請求項1から7のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項10】
多発性硬化症の治療のための、請求項1から7のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項11】
医薬の製造における、請求項1から7のいずれか一項に記載の抗体の使用。
【請求項12】
医薬が多発性硬化症の治療を目的とする、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
医薬が、CD20を発現する脳隔離B細胞の枯渇を目的とする、請求項11に記載の使用。
【請求項14】
多発性硬化症を有する個体を治療する方法であって、個体に請求項1から7のいずれか一項に記載の抗体の有効量を投与することを含む、方法。
【請求項15】
個体において、CD20を発現する脳隔離B細胞を枯渇させる方法であって、CD20を発現する脳隔離B細胞を枯渇させるために、個体に、請求項1から7のいずれか一項に記載の抗体の有効量を投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトCD20及びヒトトランスフェリン受容体に対する二重特異性抗体、それらの産生のための方法、これらの抗体を含有する薬学的組成物、並びにそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
リンパ球は、白血球の複数の集団の一つである。それらは、外来抗原を特に認識し、それらに応答する。リンパ球の三つの主なクラスは、Bリンパ球(B細胞)、Tリンパ球(T細胞)及びナチュラルキラー(NK)細胞である。Bリンパ球は、抗体産生に関与する細胞であり、液性免疫を提供する。B細胞は骨髄内で成熟し、その細胞表面上に抗原結合抗体を発現する骨髄を残す。ナイーブB細胞が初めに、膜結合抗体が特異的である抗原に遭遇するとき、細胞は急速に分裂し始め、その子孫は記憶B細胞及び「形質細胞」と呼ばれるエフェクター細胞に分化する。記憶B細胞はより長い寿命を有し、元の親細胞と同じ特異性を有する膜結合抗体を発現し続ける。形質細胞は膜結合抗体を産生しないが、その代わりに分泌形態の抗体を産生する。分泌された抗体は、液性免疫の主要なエフェクター分子である。
【0003】
CD20抗原(ヒトBリンパ球限定文化抗原、Bp35とも称される。)は、プレB及び成熟Bリンパ球に位置するほぼ35kDaのモル重量を有する疎水性膜貫通タンパク質である(Valentine et al., J. Biol. Chem. 264 (1989) 11282-11287;及びEinfeld et al., EMBO J. 7(1988)711-717)。抗原はまた、90%を上回るB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)に発現する(Anderson et al., Blood 63 (1984) 1424-1433)が、造血幹細胞、プロB細胞、正常な形質細胞、又はその他正常な組織には見られない(Tedder et al., J. Immunol. 135(1985)973- 979)。CD20は、細胞サイクル開始及び分化のための活性化プロセスにおける初期段階を制御し(Tedder et al., 上記)、場合によってはカルシウムイオンチャネルとして機能する(Tedder et al., J. Cell. Biochem. 14D (1990) 195)と考えられている。
【0004】
B細胞リンパ腫におけるCD20の発現故に、この抗原はこのようなリンパ腫を治療するための有用な治療標的であった。B細胞リンパ腫におけるCD20の発現故に、この抗原は、そのようなリンパ腫の「標的化」の候補として機能しうる。本質的に、このような標的化は、B細胞のCD20表面抗原に特異的な抗体が患者に投与されるものとして、一般化することができる。これらの抗CD20抗体は、正常及び悪性B細胞の両方の(表面上)CD20抗原に特異的に結合し;CD20表面抗原に結合した抗体は、腫瘍性B細胞の破壊及び枯渇をもたらしうる。さらに、腫瘍を破壊する潜在能力を有する化学物質又は放射性標識は、薬剤が腫瘍性B細胞に特異的に「送達される」ように、抗CD20抗体にコンジュゲートされうる。手法とは無関係に、主な目標は腫瘍を破壊することであり;利用される特定の抗CD20抗体により特異的な手法を決定することができ、したがって、CD20抗原を標的化するために利用できる手法は、大幅に変化しうる。例えば、ヒトCD20抗原に対する遺伝子改変キメラマウス/ヒトモノクローナル抗体であるリツキシマブ(RITUXAN(登録商標))抗体(Genentech、Inc., South San Francisco, California, USAから市販されている。)は、再発した又は難治性の低悪性度又は濾胞性、CD20陽性、B細胞非ホジキンリンパ腫を有する患者の治療に使用される。リツキシマブは、米国特許第5736137号及び同第5776456号において「C2B8」と称される抗体である。in vitro作用機序研究は、RITUXAN(登録商標)がヒト補体を結合し、補体依存性細胞傷害(CDC)を通じてリンパB細胞株を溶解することを示している(Reff, M.E., et. al., Blood 83 (1994) 435-445)。加えて、RITUXAN(登録商標)は、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)に関するアッセイにおいて有意な活性を有する。in vivoでの前臨床研究は、RITUXAN(登録商標)が、おそらく補体及び細胞媒介プロセスを介して、カニクイザルの末梢血、リンパ節及び骨髄からB細胞を枯渇させることを示している(Reff et al., Blood 83)。NHLの治療に示される他の抗CD20抗体は、放射性同位体に結合しているマウス抗体であるZevalinTM、Yttrium-90(IDEC Pharmaceuticals, San Diego, CA, USA)、I-131にコンジュゲートしている別の完全マウス抗体であるBexxarTM(Corixa, WA, USA)を含む。
【0005】
CD20はまた、自己免疫疾患を治療するのに有用な標的抗原である。リツキシマブはまた、様々な非悪性自己免疫傷害において研究されており、その中でB細胞及び自己抗体は、疾患病態生理学において役割を果たすとみられる(例えば、Edwards et al., Biochem. Soc. Trans. 30(2002)824-828を参照のこと)。リツキシマブは、例えば、関節リウマチ(RA)(Leandro et al., Ann. Rheum. Dis. 61(2002)883-888; Edwards et al., Arthritis Rheum. 46(Suppl. 9) (2002) S46; Stahl et al., Ann. Rheum. Dis. 62 (Suppl. 1) (2003) OP004; Emery et al., Arthritis Rheum. 48 (2003) S439)、狼瘡(Eisenberg, Arthritis. Res. Ther. 5 (2003) 157-159; Leandro et al., Arthritis Rheum. 46 (2002) 2673-2677; Gorman et al., Lupus, 13 (2004) 312-316)、免疫性血小板減少性紫斑病(D’Arena et al., Leuk. Lympoma 44(2003)561-562; Stasi et al., Blood 98 (2001) 952-957; Saleh et al., Semin. Oncol. 27 (Suppl. 12) (2000) 99-103; Zaia et al., Haematologica 87 (2002) 189-195; Ratanatharathorn et al., Ann. Int. Med. 133(2000)275-279)、赤芽球ろう(Auner et al., Br. J. Hematol. 116 (2002) 725-728);自己免疫性貧血(Zaja et al., Haematologica 87 (2002) 189-195 (erratum appears in Haematologica 87 (2002) 336)、寒冷凝集素症(Layios et al., Leukemia 15 (2001) 187-188; Berentsen et al., Blood 103 (2004) 2925-2928; Berentsen et al., Br. J. Hematol. 115 (2001) 79-83 ;Bauduer, Br. J. Hematol. 112 (2001) 1083-1090; Damiani et al., Br. J. Hematol. 114 (2001) 229-234)、B型インシュリン抵抗性症候群(Coll et al., N. Engl. J. Med. 350 (2004) 310-311、混合性クリオグロブリン血症(De Vita et al., Arthritis Rheum. 46 Suppl. 9 (2002) S206/S469)、重症筋無力症(Zaja et al., Neurology 55 (2000) 1062-1063; Wylam et al., J. Pediatr. 143 (2003) 674-677)、ウェゲナー肉芽腫症(Specks et al., Arthritis & Rheumatism 44 (2001) 2836-2840)、難治性尋常性天疱瘡(Dupuy et al., Arch. Dermatol. 140 (2004) 91-96)、皮膚筋炎(Levine, Arthritis Rheum. 46(Suppl. 9)(2002)S1299)、シェーグレン症候群(Somer et al., Arthritis & Rheumatism 49 (2003) 394-398)、活性II型混合性クリオグロブリン血症(Zaja et al., Blood 101 (2003) 3827-3834)、尋常性天疱瘡(Dupay et al., Arch. Dermatol. 140 (2004) 91-95)、自己免疫性神経障害(Pestronk et al., J. Neurol. Neurosurg. Psychiatry 74 (2003) 485-489)、腫瘍随伴性オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群(Pranzatelli et al. Neurology 60(Suppl. 1) (2003) PO5.128:A395)、及び再発性寛解型多発性硬化症(RRMS)(Cross et al.(abstract) “Preliminary results from a phase II trial of Rituximab in MS” Eighth Annual Meeting of the Americas Committees for Research and Treatment in Multiple Sclerosis (2003) 20-21)の兆候及び症候を軽減する可能性があると報告されている。
【0006】
リツキシマブを用いた治療に関する出版物は、Perotta and Abuel, Blood 10 (l998) (part 1-2) 88B; Perotta et al., Blood 94 (1999) 49 (abstract); Matthews, R., Ann. Rheum. Di’s, 上記; Leandro et al., Arthritis and Rheumatism 44 (9): S370 (2001); Leandro et al., Arthritis and Rheumatism 46 (2002) 2673-2677; Weide et al., Lupus 12 (2003) 779-782; Edwards and Cambridge, Rheumatology 40 (2001) 205-211; Cambridge et al., Arthritis Rheum. 46 (Suppl. 9) (2002) S1350; Edwards et al., Arthritis and Rheumatism 46 (2002) S197; Levine and Pestronk, Neurology 52 (1999) 1701-1704; De Vita et al., Arthritis & Rheum. 46 (2002) 2029-2033; Hidashida et al., Annual Scientific Meeting of the American College of Rheumatology; Oct 24-29; New Orleans, LA 2002; Tuscano, J., Annual Scientific Meeting of the American College of Rheumatology; Oct 24-29; New Orleans, LA 2002; Martin and Chan, Immunity 20 (2004) 517-527; Silverman and Weisman, Arthritis and Rheumatism 48 (2003) 1484-1492; Kazkaz and Isenberg, Current opinion in pharmacology 4 (2004) 398-402; Virgolini and Vanda, Biomedicine & pharmacotherapy 58 (2004)299-309; Klemmer et al., Arthritis and Rheumatism 48 (2003) 9,S (SEP) S624-S624; Kneitz et al., Immunobiology 206 (2002) 519-527; Arzoo et al., Annals of the Rheumatic Diseases 61 (2002) p922-924; Comment in Ann. Rheum. Dis. 61 (2002) 863-866; “Future Strategies in Immunotherapy” by Lake and Dionne, in Burger’s Medicinal Chemistry and Drug Discovery (2003 by John Wiley & Sons, Inc.); Liang and Tedder, Wiley Encyclopedia of Molecular Medicine, Section: CD20 as an Immunotherapy Target, 2002 entitled “CD20”; Appendix 4A entitled “Monoclonal Antibodies to Human Cell Surface Antigens” by Stockinger et al., Eds:Coligan et al., in Current Protocols in Immunology (2003 John Wiley & Sons, Inc.); Penichet and Morrison, “CD Antibodies/molecules:Definition;Antibody Engineering” in Wiley Encyclopedia of Molecular Medicine Section:Chmeric, Humanized and Human Antibodies;posted online 15 January, 2002;Specks et al., Arthritis & Rheumatism 44 (2001) 2836-2840; Koegh et al., “Rituximab for Remission Induction in Severe ANCA-Associated Vasculitis:Report of a Prospective Open-Label Pilot Trial in 10 Patients”, American College of Rheumatology, Session Number: 28-100, Session Title:Vasculitis, Session Type: ACR Concurrent Session, Primary Category:28 Arthritis, Session 10/18/2004 (http://www.abstractsonline.com/viewer/SearchResults.asp); Eriksson, Kidney and Blood Pressure Research 26 (2003) 294;Jayne et al., Kidney and Blood Pressure Research, 26 (2003) 294; Jayne, poster 88 (11th International Vasculitis and ANCA workshop), 2003 American Society of Nephrology;Stone and Specks in the Clinical Trial Research Summary of the 2002-2003 Immune Tolerance Network, http://www.immunetolerance.org/reseaTclT/autoimmune/trial s/stone.html;Leandro et at, Arthritis Rheum. 48(Suppl. 9) (2003)Sl 160を含む。
【0007】
CD20抗体に関する特許及び特許公開は、米国特許第5,776,456号、米国特許第5,736,137号、米国特許第5,843,439号、米国特許第6,399,061号、米国特許第6,682,734号、米国特許公開第2002/0197255号、米国特許公開第2003/0021781号、米国特許公開第2003/0082172号、米国特許公開第2003/0095963号、米国特許公開第2003/0147885号;米国特許第6,455,043号;国際公開第00/09160号;国際公開第00/27428号;国際公開第00/27433号;国際公開第00/44788号;国際公開第01/10462号;国際公開第01/10461号;国際公開第01/10460号;米国特許公開第2001/0018041号、米国特許公開第2003/0180292号、国際公開第01/34194号;米国特許公開第2002/0006404号;国際公開第02/04021号;米国特許公開第2002/0012665号;国際公開第01/74388号;米国特許公開第2002/0058029号;米国特許公開第2003/0103971号;米国特許公開第2002/0009444号;国際公開第01/80884号;国際公開第01/97858号;米国特許公開第2002/0128488号;国際公開第02/34790号;国際公開第02/060955号;国際公開第02/096948号;国際公開第02/079255号;米国特許第6,171,586号;国際公開第98/56418号;国際公開第98/58964号;国際公開第99/22764号;国際公開第99/51642号;米国特許第6,194,551号;米国特許第6,242,195号;米国特許第6,528,624号;米国特許第6,538,124号;国際公開第00/42072号;国際公開第00/67796号;国際公開第01/03734号;米国特許公開第2002/0004587号;国際公開第01/77342号;米国特許公開第2002/0197256号;米国特許公開第2003/0157108号;米国特許第6,565,827号;米国特許第6,090,365号;米国特許第6,287,537号;米国特許第6,015,542号;米国特許第5,843,398号;米国特許第5,595,721号;米国特許第5,500,362号;米国特許第5,677,180号;米国特許第5,721,108号;米国特許第6,120,767号;米国特許第6,652,852号;米国特許第6,410,391号;米国特許第6,224,866号;国際公開第00/20864号;国際公開第01/13945号;国際公開第00/67795号;米国特許公開第2003/0133930号;国際公開第00/74718号;国際公開第00/76542号;国際公開第01/72333号;米国特許第6,368,596号;米国特許第6,306,393号;米国特許公開第2002/0041847号;米国特許公開第2003/0026801号;国際公開第02/102312号;米国特許公開第2003/0068664号;国際公開第03/002607号;国際公開第03/049694号;米国特許公開第2002/0009427号;米国特許公開第2003/0185796号;国際公開第03/061694号;米国特許公開第2003/0219818号;米国特許公開第2003/0219433号;国際公開第03/068821号;国際特許公開第2002/0136719;国際公開第2004/032828号;国際公開第2004/035607号;米国特許公開第2004/0093621号;米国特許第5,849,898;EP0,330,191;米国特許第4,861,579号;EP0,332,865;国際公開第95/03770号;米国特許公開第2001/0056066号;国際特許公開第2004/035607号;国際特許公開第2004/056312号;米国特許公開第2004/0093621号;国際特許公開第2004/103404号を含む。CD20抗体に関する出版物は、Teeling, J., et al., Blood 10(2004)1182を含む。
【0008】
国際公開第2014/033074号は、血液脳関門上の受容体を結合する血液脳関門シャトル及びその使用方法に関する。低親和性の血液脳関門受容体抗体及びその使用が、国際公開第2012/075037号で報告されている。国際公開第2014/189973号は、抗トランスフェリン受容体抗体及びその使用方法に関する。脳エフェクター実体、リンカー、及び血液脳関門受容体に結合する一の一価の結合実体を含む血液脳関門シャトルモジュールが、国際公開第2015/101588号で報告された。国際公開第2010/033587号は、患者の進行性多発性硬化症を治療するための方法、及びその使用説明書を含む製造品に関する。抗CD20抗体を用いた治療に応答性のある疾患に罹患した患者において、抗CD20抗体の少なくとも一の枯渇用量を患者に投与することを含む、疾患を治療し、停止させ、予防する方法が、国際公開第2012/096924で報告された。Hawker, K.等(Ann. Neurol. 66(2009)460-471)は、原発性進行性多発性硬化症を有する患者におけるリツキシマブのランダム化二重盲検プラセボ対照の多施設治験の結果について報告した。
【発明の概要】
【0009】
本明細書で報告される一態様は、
a)(完全長)抗体軽鎖及び(完全長)抗体重鎖の対を二つ含み、(完全長)重鎖及び(完全長)軽鎖の対のそれぞれにより形成される結合部位が第一の抗原に特異的に結合する、一の抗体と、
b)(完全長)抗体の一の重鎖の任意のC末端に融合し、結合部位が第二の抗原に特異的に結合する、一のさらなるFab断片
を含む二重特異性抗体であって、
(完全長)抗体軽鎖のそれぞれが、定常軽鎖ドメイン(CL)において、123位でアミノ酸残基アルギニン(野生型グルタミン酸残基の代替;E123R変異)を、124位でアミノ酸残基リジン(野生型グルタミン残基の代替;Q124K変異)(Kabatに従って番号付け)を含み、
(完全長)抗体重鎖のそれぞれが、第一の定常重鎖ドメイン(CH1)において、147位でグルタミン酸残基(野生型リジン残基の代替;K147E変異)を、213位でグルタミン酸残基(野生型リジンアミノ酸残基の代替;K213E変異)(Kabat EUインデックスに従って番号付け)を含み、
第二の抗原に特異的に結合するさらなるFab断片が、定常軽鎖ドメイン(CL)及び定常重鎖ドメイン1(CH1)が互いに置き換えわるように、ドメイン交差を含み、
第一の抗原がヒトCD20であり、第二の抗原がヒトトランスフェリン受容体である、二重特異性抗体である。
【0010】
一実施態様において、さらなるFab断片は、ペプチド性リンカーにより、重鎖のC末端に融合している。
【0011】
一実施態様において、Fab断片の重鎖可変ドメインのN末端は、(完全長)重鎖のC末端又はペプチド性リンカーのC末端に融合している。
【0012】
一実施態様において、
a)さらなるFab断片に融合している(完全長)重鎖は、C末端重鎖アミノ酸残基としてトリペプチドLSPを有し、そのプロリンが、さらなるFab断片の、又はペプチド結合を介してペプチド性リンカーの第一のアミノ酸残基に直接融合し、
b)さらなるFab断片に融合していない(完全長)重鎖が、C末端重鎖アミノ酸残基として、トリペプチドLSP又はSPG又はPGKを有する
【0013】
一実施態様では、(完全長)抗体は、
a)ヒトサブクラスIgG1の完全長抗体、
b)ヒトサブクラスIgG4の完全長抗体、
c)変異L234A、L235A及びP329Gを有するヒトサブクラスIgG1の完全長抗体、
d)変異S228P、L235E及びP329Gを有するヒトサブクラスIgG4の完全長抗体、
e)両方の重鎖中に変異L234A、L235A及びP329Gを、一方の重鎖中に変異i)T366W、及びii)S354C又はY349Cを、それぞれの他方の重鎖中に変異i)T366S、L368A及びY407V、並びにii)Y349C又はS354Cを有するヒトサブクラスIgG1の完全長抗体、
f)両方の重鎖中に変異S228P、L235E、P329Gを、一方の重鎖中に変異i)T366W、及びii)S354C又はY349Cを、それぞれの他方の重鎖中に変異i)T366S、L368A及びY407V、並びにii)Y349C又はS354Cを有するヒトサブクラスIgG4の完全長抗体、
g)両方の重鎖中に変異L234A、L235A、P329G、I253A、H310A及びH435Aを、一方の重鎖中に変異i)T366W、及びii)S354C又はY349Cを、それぞれの他方の重鎖中に変異i)T366S、L368A及びY407V、並びにii)Y349C又はS354Cを有するヒトサブクラスIgG1の完全長抗体、又は
h)両方の重鎖中に変異L234A、L235A、P329G、M252Y、S254T及びT256Eを、一方の重鎖中に変異i)T366W、及びii)S354C又はY349Cを、それぞれの他方の重鎖中に変異i)T366S、L368A及びY407V、並びにii)Y349C又はS354Cを有するヒトサブクラスIgG1の完全長抗体、又は
i)両方の重鎖中に変異L234A、L235A、P329G、H310A、H433A及びY436Aを、一方の重鎖中に変異i)T366W、及びii)S354C又はY349Cを、それぞれの他方の重鎖中に変異i)T366S、L368A及びY407V、並びにii)Y349C又はS354Cを有するヒトサブクラスIgG1の完全長抗体である。
【0014】
一実施態様において、さらなるFab断片は、変異T366Wを含む重鎖のC末端、又は変異T366S、L368A及びY407Vを含む重鎖のC末端に融合している。
【0015】
一実施態様において、
(完全長)抗体は、両方の重鎖中に変異L234A、L235A及びP329Gを、一の重鎖中に変異T366W及びS354Cを、それぞれの他の重鎖中に変異T366S、L368A、Y407V及びY349Cを有するヒトサブクラスIgG1の(完全長抗体)であり、
さらなるFab断片は、変異T366Wを含む重鎖のC末端、又は変異T366S、L368A及びY407Vを含む重鎖のC末端に融合している。
【0016】
一実施態様において、二重特異性抗体は
i)70%以上の配列番号01に対する配列同一性を有する軽鎖、
ii)70%以上の配列番号02に対する配列同一性を有する重鎖、
iii)70%以上の配列番号03に対する配列同一性を有する軽鎖、及び
iv)70%以上の配列番号04に対する配列同一性を有する重鎖Fab断片
を含み、ここで、
配列番号01はアミノ酸配列
DIVMTQTPLSLPVTPGEPASISCRSSKSLLHSNGITYLYWYLQKPGQSPQLLIYQMSNLVSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCAQNLELPYTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDRKLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
を有し、
配列番号02はアミノ酸配列
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYAFSYSWINWVRQAPGQGLEWMGRIFPGDGDTDYNGKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARNVFDGYWLVYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVEDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDEKVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALGAPIEKTISKAKGQPREPQVCTLPPSRDELTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
を有し、
配列番号03はアミノ酸配列
AIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLAWYQQKPGKAPKLLIYRASTLASGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQNYASSNVDNTFGGGTKVEIKSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSC
を有し、
配列番号04はアミノ酸配列
QSMQESGPGLVKPSQTLSLTCTVSGFSLSSYAMSWIRQHPGKGLEWIGYIWSGGSTDYASWAKSRVTISKTSTTVSLKLSSVTAADTAVYYCARRYGTSYPDYGDASGFDPWGQGTLVTVSSASVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
を有する。
【0017】
本明細書で報告される一実施態様は、配列番号01のアミノ酸配列を有する(完全長)軽鎖、配列番号02のアミノ酸配列を有する(完全長)重鎖、配列番号03のアミノ酸配列を有する(完全長)軽鎖、及び配列番号04のアミノ酸配列を含む抗体Fab断片を含む二重特異性抗体である。
【0018】
一実施態様では、二重特異性抗体はモノクローナルである。
【0019】
本明細書で報告される一態様は
a)各結合部位が第一の抗原に特異的に結合する、第一及び第二のFab断片、
b)結合部位が第二の抗原に特異的に結合し、可変軽鎖ドメイン(VL)及び可変重鎖ドメイン(VH)が互いに置き換えられるようにドメインクロスオーバーを含む、第三のFab断片、
c)第一のFc領域ポリペプチド及び第二のFc領域ポリペプチドを含むFc領域、
を含み、
第一及び第二のFab断片がそれぞれ、重鎖断片及び完全長軽鎖を含み、
第一のFab断片の重鎖断片のC末端が、第一のFc領域ポリペプチドのN末端に融合しており、
第二のFab断片の重鎖断片のC末端が、第三のFab断片の可変軽鎖ドメインのN末端に融合し、第三のFab断片の重鎖定常ドメイン1のC末端が、第二のFc領域ポリペプチドのN末端に融合しており、
第一及び第二のFab断片の完全長抗体軽鎖のそれぞれが、定常軽鎖ドメイン(CL)において、123位でアミノ酸残基アルギニン(野生型グルタミン酸残基の代替;E123R変異)を、124位でアミノ酸残基リジン(野生型グルタミン残基の代替;Q124K変異)(Kabatに従って番号付け。)を含み、
第一及び第二のFab断片の重鎖断片のそれぞれが、第一の定常重鎖ドメイン(CH1)において、147位でグルタミン酸残基(野生型リジン残基の代替;K147E変異)を、213位でグルタミン酸残基(野生型リジンアミノ酸残基の代替;K213E変異)(Kabat EUインデックスに従って番号付け。)を含み、
第一の抗原がヒトCD20であり、第二の抗原がヒトトランスフェリン受容体である、
二重特異性抗体である。
【0020】
一実施態様において、第一及び第二のFc領域ポリペプチドは、
a)ヒトサブクラスIgG1のFc領域ポリペプチド、
b)ヒトサブクラスIgG4のFc領域ポリペプチド、
c)変異L234A、L235A及びP329Gを有するヒトサブクラスIgG1のFc領域ポリペプチド、
d)変異228P、L235E及びP329Gを有するヒトサブクラスIgG4のFc領域ポリペプチド、
e)両方のFc領域ポリペプチド中に変異L234A、L235A及びP329Gを、一のFc領域ポリペプチド中に変異T366W及びS354Cを、それぞれの他のFc領域ポリペプチド中に変異T366S、L368A、Y407V及びY349Cを有するヒトサブクラスIgG1のFc領域ポリペプチド、
f)両方のFc領域ポリペプチド中にS228P、L235E及びP329Gを、一のFc領域ポリペプチド中に変異T366W及びS354Cを、それぞれの他のFc領域ポリペプチド中に変異T366S、L368A、Y407V及びY349Cを有するヒトサブクラスIgG4のFc領域ポリペプチド、
g)両方のFc領域ポリペプチド中に変異L234A、L235A、P329G、I253A、H310A及びH435Aを、一のFc領域ポリペプチド中に変異T366W及びS354Cを、それぞれの他のFc領域ポリペプチド中に変異T366S、L368A、Y407V及びY349Cを有するヒトサブクラスIgG1のFc領域ポリペプチド、又は
h)両方のFc領域ポリペプチドに変異L234A、L235A、P329G、M252Y、S254T及びT256Eを、一のFc領域ポリペプチド中に変異T366W及びS354Cを、それぞれ他のFc領域ポリペプチド中に変異T366S、L368A、Y407V及びY349Cを有するヒトサブクラスIgG1のFc領域ポリペプチド、又は
i)両方のFc領域ポリペプチド中に変異L234A、L235A、P329G、H310A、H433A及びY436Aを、一のFc領域ポリペプチド中に変異T366W及びS354Cを、それぞれ他のFc領域ポリペプチド中に変態T366S、L368A、Y407V及びY349Cを有するヒトサブクラスIgG1のFc領域ポリペプチドである。
【0021】
一実施態様において、第三のFab断片の鎖の一本は、変異T366Wを含むFc領域ポリペプチド、又は変異T366S、L368A及びY407Vを含むFc領域ポリペプチドに融合している。
【0022】
一実施態様において、二重特異性抗体は
i)少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は95%以上の配列番号14に対する配列同一性を有する軽鎖、
ii)少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は95%以上の配列番号15に対する配列同一性を有する重鎖、
iii)少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は95%以上の配列番号16に対する配列同一性を有する交差抗体鎖、
iv)少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は95%以上の配列番号17に対する配列同一性を有する修飾された重鎖
を含み、ここで、
配列番号14はアミノ酸配列
DIVMTQTPLSLPVTPGEPASISCRSSKSLLHSNGITYLYWYLQKPGQSPQLLIYQMSNLVSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCAQNLELPYTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDRKLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
を有し、
配列番号15はアミノ酸配列
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYAFSYSWINWVRQAPGQGLEWMGRIFPGDGDTDYNGKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARNVFDGYWLVYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVEDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDEKVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALGAPIEKTISKAKGQPREPQVCTLPPSRDELTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
を有し、
配列番号16はアミノ酸配列
QSMQESGPGLVKPSQTLSLTCTVSGFSLSSYAMSWIRQHPGKGLEWIGYIWSGGSTDYASWAKSRVTISKTSTTVSLKLSSVTAADTAVYYCARRYGTSYPDYGDASGFDPWGQGTLVTVSSASVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
を有し、
配列番号17はアミノ酸配列
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYAFSYSWINWVRQAPGQGLEWMGRIFPGDGDTDYNGKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARNVFDGYWLVYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVEDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDEKVEPKSCDGGGGSGGGGSAIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLAWYQQKPGKAPKLLIYRASTLASGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQNYASSNVDNTFGGGTKVEIKSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALGAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPCRDELTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
を有する。
【0023】
本明細書で報告される一実施態様は、それぞれが配列番号14のアミノ酸配列を有する二の完全長軽鎖、配列番号15のアミノ酸配列を有する完全長重鎖、配列番号16のアミノ酸配列を有する交差抗体鎖、及び配列番号17のアミノ酸配列を有する修飾された重鎖を含む二重特異性抗体である。
【0024】
一実施態様では、二重特異性抗体はモノクローナルである。
【0025】
本明細書で報告される一態様は、本明細書で報告される二重特異性抗体をエンコードする単離された核酸である。
【0026】
本明細書で報告される一態様は、本明細書で報告される二重特異性抗体をエンコードする本明細書で報告される単離された核酸を含む宿主細胞である。
【0027】
本明細書で報告される一態様は、以下の工程を含む、本明細書で報告される二重特異性抗体を産生する方法である:
a)二重特異性抗体が産生されるように、本明細書で報告される宿主細胞を培養すること
b)細胞又は培養媒体から二重特異性抗体を回収し、それにより、本明細書で報告される二重特異性抗体を産生すること
【0028】
本明細書で報告される一態様は、本明細書で報告される二重特異性抗体と細胞傷害性剤とを含むイムノコンジュゲートである。
【0029】
本明細書で報告される一態様は、本明細書で報告される二重特異性抗体と薬学的に許容される担体とを含む薬学的製剤である。
【0030】
本明細書で報告される一態様は、医薬としての使用のための本明細書で報告される抗体である。
【0031】
本明細書で報告される一態様は、がんの治療のための本明細書で報告される抗体である。
【0032】
本明細書で報告される一態様は、B細胞増殖性疾患の治療での使用のための、本明細書で報告される二重特異性抗体である。
【0033】
本明細書で報告される一態様は、CD20を発現する腫瘍細胞の成長の阻害における使用のための、本明細書で報告される二重特異性抗体である。一実施態様において、阻害するのは脳内においてである。
【0034】
本明細書で報告される一態様は、カルシノーマの治療における使用のための本明細書で報告される二重特異性抗体である。好ましい一実施態様において、カルシノーマは、脳の又は脳内のカルシノーマである。
【0035】
本明細書で報告される一態様は、リンパ腫の治療における使用のための本明細書で報告される二重特異性抗体である。好ましい一実施態様において、リンパ腫は中枢神経系原発リンパ腫(PCNSL)である。
【0036】
本明細書で報告される一態様は、自己免疫疾患の治療における使用のための本明細書で報告される二重特異性抗体である。一実施態様において、自己免疫疾患は多発性硬化症である。好ましい一実施態様において、自己免疫疾患は、二次進行型多発性硬化症である。
【0037】
本明細書で報告される一態様は、CD20を発現する腫瘍細胞の枯渇における使用のための本明細書で報告される二重特異性抗体である。一実施態様において、枯渇させるのは脳においてである。
【0038】
本明細書で報告される一態様は、CD20を発現する循環B細胞の枯渇における使用のための本明細書で報告される二重特異性抗体である。一実施態様において、枯渇するもは脳においてである。
【0039】
本明細書で報告される一態様は、CD20を発現する脳隔離B細胞の枯渇における使用のための本明細書で報告される二重特異性抗体である。
【0040】
本明細書で報告される一態様は、医薬の製造における本明細書で報告される二重特異性抗体の使用である。
【0041】
一実施態様では、医薬は、増殖型疾患の治療を目的とするものである。一実施態様において、増殖型疾患は、B細胞増殖性疾患である。一実施態様において、増殖型疾患は、B細胞リンパ腫である。好ましい一実施態様において、増殖型疾患は、原発性中枢神経系原発リンパ腫である。
【0042】
一実施態様では、医薬は腫瘍の治療を目的とする。
【0043】
一実施態様では、医薬はヒトカルシノーマの治療を目的とする。
【0044】
一実施態様では、医薬は自己免疫疾患の治療を目的とする。一実施態様において、自己免疫疾患は、乾癬及び皮膚炎(例えばアトピー性皮膚炎)を含む炎症性皮膚疾患のような炎症反応疾患;全身性強皮症及び硬化症;炎症性腸疾患(例えばクローン病及び潰瘍性大腸炎)に関連する反応;呼吸窮迫症候群(成人性呼吸促迫症候群;ARDSを含む);皮膚炎;髄膜炎;脳炎;ブドウ膜炎;大腸炎;糸球体腎炎;湿疹及び喘息のようなアレルギー状態並びにT細胞の浸潤及び慢性炎症反応を含むその他の状態;アテローム性動脈硬化症;白血球接着不全症;関節リウマチ;全身性エリテマトーデス(SLE);糖尿病(例えばI型糖尿病又はインスリン依存性糖尿病);多発性硬化症;レイノー症候群;自己免疫性甲状腺炎;アレルギー性脳脊髄炎;シェーグレン症候群;若年発症糖尿病;結核、サルコイドーシス、多発性筋炎、肉芽腫症及び脈管炎で典型的にみられるサイトカイン及びT-リンパ球により媒介される急性及び遅発性過敏症に関連する免疫応答;悪性貧血(アジソン病);白血球漏出を含む疾患;中枢神経系(中枢神経系)炎症性疾患;多臓器損傷症候群;溶血性貧血(クリオグロブリン血症又はクームス陽性貧血を含むがこれらに限定されない。);重症筋無力症;抗原抗体複合体媒介性疾患;抗糸球体基底膜疾患;抗リン脂質症候群;アレルギー性神経炎;グレーブス病;ランバート・イートン筋無力症症候群;水疱性類天疱瘡;天疱瘡;自己免疫性多腺性内分泌障害;ライター疾患;スティフマン症候群;ベーチェット病;巨細胞動脈炎;免疫複合体性腎炎;IgA腎症;IgM多発性神経障害;免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)又は自己免疫性血小板減少症から成る群より選択される。一実施態様では、医薬は多発性硬化症の治療を目的とする。好ましい一実施態様において、医薬は、二次進行型多発性硬化症の治療を目的とする。
【0045】
一実施態様において、医薬はCD20を発現する腫瘍を枯渇させることを目的とする。一実施態様において、枯渇させるものは脳である。
【0046】
一実施態様において、医薬はCD20を発現する循環B細胞を枯渇させることを目的とする。一実施態様において、枯渇させるものは脳である。
【0047】
一実施態様において、医薬はCD20を発現する脳隔離B細胞を枯渇させることを目的とする。
【0048】
本明細書で報告される一態様は、増殖型疾患を有する個体を治療する方法であって、本明細書で報告される二重特異性抗体の有効量を個体に投与することを含む方法である。一実施態様において、増殖型疾患は、B細胞増殖性疾患である。
【0049】
本明細書で報告される一態様は、カルシノーマを有する個体を治療する方法であって、本明細書で報告される二重特異性抗体の有効量を個体に投与することを含む方法である。好ましい一実施態様において、カルシノーマは、脳の又は脳内のカルシノーマである。
【0050】
本明細書で報告される一態様は、リンパ腫を有する個体を治療する方法であって、本明細書で報告される二重特異性抗体の有効量を個体に投与することを含む方法である。好ましい一実施態様において、リンパ腫は中枢神経系原発リンパ腫(PCNSL)である。
【0051】
本明細書で報告される一態様は、自己免疫疾患を有する個体を治療する方法であって、本明細書で報告される二重特異性抗体の有効量を個体に投与することを含む方法である。一実施態様において、自己免疫疾患は多発性硬化症である。好ましい一実施態様において、自己免疫疾患は、二次進行型多発性硬化症である。
【0052】
本明細書で報告される一態様は、個体においてCD20を発現する腫瘍細胞の成長を阻害するための方法であって、CD20を発現する腫瘍細胞の成長を阻害するために、本明細書で報告される二重特異性抗体の有効量を個体に投与することを含む方法である。一実施態様において、阻害するものは脳である。
【0053】
本明細書で報告される一態様は、個体においてCD20を発現する腫瘍細胞を枯渇させるための方法であって、CD20を発現する腫瘍細胞を枯渇させるために、本明細書で報告される二重特異性抗体の有効量を個体に投与することを含む方法である。一実施態様において、阻害するものは脳である。
【0054】
本明細書で報告される一態様は、個体においてCD20を発現する循環B細胞を枯渇させるための方法であって、CD20を発現する循環B細胞を枯渇させるために、本明細書で報告される二重特異性抗体の有効量を個体に投与することを含む方法である。一実施態様において、阻害するものは脳である。
【0055】
本明細書で報告される一態様は、個体においてCD20を発現する脳隔離B細胞を枯渇させるための方法であって、CD20を発現する脳隔離B細胞を枯渇させるために、本明細書で報告される二重特異性抗体の有効量を個体に投与することを含む方法である。
【0056】
本明細書で報告される一態様は、ヒトにおける多発性硬化症を治療する方法であって、ヒトCD20に結合し、B細胞を枯渇させる本明細書で報告される抗体の治療的有効量をヒトに投与することを含み、抗体が細胞傷害性剤とコンジュゲートしていない方法である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
ノブ・イントゥー・ホール二量体化モジュール及び抗体工学におけるその使用は、Carter P.;Ridgway J.B.B.;Presta L.G.:Immunotechnology, Volume 2, Number 1, February 1996, pp.73-73に記載されている。CH3ドメインにおけるさらなるジスルフィド架橋は、Merchant, A.M., et al., Nat. Biotechnol. 16(1998)677-681で報告されている。
【0058】
ヒト免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖のヌクレオチド配列に関する一般情報は以下に与えられている:Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD(1991)。
【0059】
本明細書で使用される場合、重鎖及び軽鎖の全ての定常領域及びドメインアミノ酸位置は、Kabat, et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD(1991)に記載されるカバット番号付けシステムに従って番号付けられ、本明細書では「Kabatに従って番号付け」と称される。特に、Kabat, et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD(1991)のKabat番号付けシステム(647~660ページを参照のこと。)は、カッパ及びラムダアイソタイプの軽鎖定常ドメインCLに使用され、Kabat EUインデックス番号付けシステム(661~723ページを参照のこと。)は、定常重鎖ドメインに使用される(CH1、ヒンジ、CH2及びCH3、本明細書では、この場合「Kabat EUインデックスに従って番号付け」と称することによりさらに明確にする。)。
【0060】
I.定義
「血液脳関門」又は「BBB」は、脳毛細血管内皮細胞原形質膜内の密着結合によって形成される末梢循環と脳及び脊髄との間の生理的関門を指し、脳への分子(尿素(60ダルトン)のような非常に小さな分子さえも含む。)の輸送を制限する密着した関門を生じる。脳内のBBB、脊髄内の血液脊髄関門、及び網膜内の血液網膜関門は、CNS内の近接する毛細血管関門であり、本明細書ではまとめて血液脳関門又はBBBと称する。BBBはまた、血液CSF関門(脈絡叢)を包含し、この関門は、毛細管内皮細胞ではなく上衣細胞からなる。
【0061】
用語「抗ヒトCD20抗体」及び「ヒトCD20に特異的に結合する抗体」は、CD20を標的とする際に診断薬及び/又は治療剤として抗体が有用であるように、十分な親和性でヒトCD20に結合可能な抗体を指す。
【0062】
したがって、該用語は、ヒトCD20の短縮された断片に結合する抗体も包含する。
【0063】
CD20抗原に結合する抗体の例は以下を含む:現在「リツキシマブ」(「RITUXAN(登録商標)」)と呼ばれている「C2B8」(米国特許第5,736,137号);「Y2B8」と表されるイットリウム-[90]-標識化2B8マウス抗体(米国特許第5,736,137号);131Iで標識され、「131I-B1」抗体(BEXXARTM)を生成してもよいマウスIgG2a「B1」(米国特許第5,595,721号);マウスモノクローナル抗体「1F5」(Press et al., Blood 69(1987)584-591);「キメラ2H7」抗体(米国特許第5,677,180号);International Leukocyte Typing Workshopより入手可能なモノクローナル抗体L27、G28-2、93-1B3、B-C1又はNU-B2(Valentine et al., In:Leukocyte Typing III(McMichael, Ed.)p. 440, Oxford University Press(1987));及び米国特許第8,883,980号に記載されるモノクローナル抗体。
【0064】
「CD20」抗原は、末梢血又はリンパ器官からのB細胞の90%超の表面上にみられる、およそ35kDaの非グリコシル化リンタンパク質である。CD20は、早期プレB細胞発生中に発現し、形質細胞の分化まで残る。CD20は、正常B細胞及び悪性B細胞の両方に存在する。文献中のCD20の別名は、「Bリンパ球拘束性抗原」又は「Bp35」を含む。CD20抗原は、例えば、Clark et al. Proc. Natl. Acad. Sci USA 82(1985)1766に記載されている。配列番号05も参照のこと。
【0065】
本明細書中の「自己免疫疾患」とは、個体自体の組織から又はそれに対して生じる非悪性疾患又は障害である。本明細書で使用される用語「自己免疫疾患」は、悪性又はがん性疾患又は状態を特異的に除外し、特に、B細胞リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、ヘアリー細胞白血病及び慢性骨髄芽球性白血病を除外する。自己免疫疾患又は障害の例は、限定されないが、乾癬及び皮膚炎(例えばアトピー性皮膚炎)を含む炎症性皮膚疾患のような炎症反応疾患;全身性強皮症及び硬化症;炎症性腸疾患(例えばクローン病及び潰瘍性大腸炎)に関連する反応;呼吸窮迫症候群(成人性呼吸促迫症候群;ARDSを含む);皮膚炎;髄膜炎;脳炎;ブドウ膜炎;大腸炎;糸球体腎炎;湿疹及び喘息のようなアレルギー状態並びにT細胞の浸潤及び慢性炎症反応を含むその他の状態;アテローム性動脈硬化症;白血球接着不全症;関節リウマチ;全身性エリテマトーデス(SLE);糖尿病(例えばI型糖尿病又はインスリン依存性糖尿病);多発性硬化症;レイノー症候群;自己免疫性甲状腺炎;アレルギー性脳脊髄炎;シェーグレン症候群;若年発症糖尿病;結核、サルコイドーシス、多発性筋炎、肉芽腫症及び脈管炎で典型的にみられるサイトカイン及びT-リンパ球により媒介される急性及び遅発性過敏症に関連する免疫応答;悪性貧血(アジソン病);白血球漏出を含む疾患;中枢神経系(中枢神経系)炎症性疾患;多臓器損傷症候群;溶血性貧血(クリオグロブリン血症又はクームス陽性貧血を含むがこれらに限定されない。);重症筋無力症;抗原抗体複合体媒介性疾患;抗糸球体基底膜疾患;抗リン脂質症候群;アレルギー性神経炎;グレーブス病;ランバート・イートン筋無力症症候群;水疱性類天疱瘡;天疱瘡;自己免疫性多腺性内分泌障害;ライター疾患;スティフマン症候群;ベーチェット病;巨細胞動脈炎;免疫複合体性腎炎;IgA腎症;IgM多発性神経障害;免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)又は自己免疫性血小板減少症を含む。
【0066】
「アンタゴニスト」は、B細胞表面マーカーに結合する際に、哺乳類におけるB細胞を殺すか又は枯渇させる、及び/又は、例えばB細胞により生じる液性応答を減少させる又は防ぐことによって一又は複数のB細胞機能に干渉する分子である。アンタゴニストは、それを用いて治療された哺乳類におけるB細胞を枯渇させる(すなわち、循環B細胞レベルを減少させる)ことができる。このような枯渇は、様々な機序、例えば、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)、B細胞増殖の阻害及び/又は(例えばアポトーシスによる)B細胞死の誘発によって達成されうる。アンタゴニストは、抗体、合成又は天然配列ペプチド、及びB細胞マーカーに結合し、任意選択的に細胞傷害性剤とコンジュゲートしているか又はそれに融合している小分子を含む。
【0067】
「増殖阻害」アンタゴニストは、アンタゴニストが結合する抗原を発現している細胞の増殖を予防するか又は低減するものである。例えば、アンタゴニストは、B細胞の増殖をin vivo又はin vitroで予防又は低減しうる。
【0068】
「アポトーシスを誘導する」アンタゴニストは、アネキシンVの結合、DNAの断片化、細胞収縮、小胞体の拡張、細胞断片化、及び/又は膜小胞の形成(アポトーシス小体と呼ばれる。)などの標準的なアポトーシスアッセイにより決定される、例えばB細胞の、プログラム細胞死を誘導するものである。
【0069】
問題の抗原、例えばB細胞表面マーカーを「結合する」アンタゴニストは、アンタゴニストが、抗原を発現する細胞を標的化するための治療剤として有用であるように、十分な親和性及び/又は結合力でその抗原を結合することができるものである。
【0070】
「中枢神経系」又は「CNS」とは、身体機能をコントロールする神経組織の複合体を指し、脳及び脊髄を含む。
【0071】
「血液脳関門受容体」(本明細書では「BBBR」と略される。)は、BBBのいたる所へ分子を伝達することができ、外因性投与分子の伝達に使用されうる脳内皮細胞に発現した細胞外膜結合受容体タンパク質である。本明細書のBBBRの例は、トランスフェリン受容体(TfR)、インスリン受容体、インスリン様成長因子受容体(IGF-R)、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(LRP1)及び低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8(LRP8)を含むがこれらに限定されない低密度リポタンパク質受容体、並びにヘパリン結合上皮増殖因子様成長因子(HB-EGF)を含む。一つの好ましいBBBRは、トランスフェリン受容体(TfR)である。
【0072】
「トランスフェリン受容体」(「TfR」)は、脊椎動物からの鉄取り込みに含まれる二のジスルフィド結合サブユニット(それぞれの見かけの分子量は約90,000Da。)で構成されている膜透過糖タンパク質(約180,000Daの分子量を有する)である。一実施態様において、本明細書で言及されるTfRは、例えばSchneider et al.(Nature 311(1984)675-678)にあるようなアミノ酸配列を含むヒトTfRである。
【0073】
「多重特異性抗体」とは、同一の抗原又は二の異なる抗原上の少なくとも二の異なるエピトープに関して結合特異性を有する抗体を表す。例示的な多重特異性抗体は、BBBRと脳抗原の両方を結合しうる。多重特異性抗体は、完全長抗体又は抗体断片(例えばF(ab’)2二重特異性抗体)又はそれらの組合せ(例えば、完全長抗体プラスさらなるscFv又はFab断片)として調製されうる。二、三又はそれ以上(例えば四)の機能抗原結合部位を有する改変抗体もまた報告されている(例えば、米国特許公開第2002/0004587号を参照のこと)。
【0074】
本明細書における目的のための「アクセプターヒトフレームワーク」とは、下記に定義されるように、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークから得られる軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワーク又は重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワーク「から得られる」アクセプターヒトフレームワークは、その同一のアミノ酸配列を含んでもよく、又はそれはアミノ酸配列の変化を含んでもよい。いくつかの実施態様において、アミノ酸変化の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、又は2以下である。いくつかの実施態様において、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列又はヒトコンセンサスフレームワーク配列と配列が同一である。
【0075】
「親和性」は、分子(例えば、抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合相互作用の総和の強度を指す。本明細書で使用する場合、特に断らない限り、「結合親和性」は、結合対(例えば、抗体と抗原)のメンバー間の1:1の相互作用を反映する本質的な結合親和性を指す。一般的に、分子XのそのパートナーYに対する親和性は、解離定数(kd)によって表される。親和性は、本明細書中に記載のものを含む、表面プラズモン共鳴のような当技術分野で既知の一般的な方法により測定することができる。
【0076】
「親和性成熟」抗体とは、変化を有しない親抗体と比較して、一又は複数の超可変領域(HVR)に一又は複数の変化があり、かかる変化が抗原に対する抗体の親和性の改善をもたらす抗体を指す。
【0077】
本明細書における用語「抗体」は最も広い意味で使用され、種々の抗体構造を包含し、限定されるものではないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及び、所望の抗原結合活性を示す限り、抗体断片を含む。
【0078】
用語「抗体依存性細胞傷害性(ADCC)」とは、Fc受容体結合により媒介される機能であり、エフェクター細胞の存在下での、本明細書で報告されるような抗体による標的細胞の溶解を指す。一実施態様において、新たに単離されたPBMC(末梢血単核細胞)又は単球若しくはNK(ナチュラルキラー)細胞のようなバフィコートからの精製されたエフェクター細胞のような、エフェクター細胞の存在下で本明細書で報告された抗体を有するCD19を発現する赤血球系細胞(例えば、組換えヒトCD19を発現するK562細胞)の調製物の処理により、ADCCは測定される。標的細胞は51Crで標識され、続いて抗体とインキュベートされる。標識された細胞は、エフェクター細胞とインキュベートされ、上清は放出された51Crについて分析される。コントロールは、エフェクター細胞を含むが抗体を含まない標的内皮細胞のインキュベーションを含む。FcγRI及び/又はFcγRIIA又はNK細胞を組換え発現する(本質的にFcγRIIIAを発現する)細胞などの細胞を発現するFcγ受容体への結合を測定することによって、ADCCを媒介する初期段階を誘導する抗体の能力が調査される。一つの好ましい実施形態において、NK細胞上のFcγRへの結合が測定される。
【0079】
「抗体断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部分を含む、インタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例には、限定されるものではないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディ;線形抗体;単鎖抗体分子(例えばscFv);及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が含まれる。
【0080】
用語「キメラ」抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部分が特定の起源又は種に由来し、一方重鎖及び/又は軽鎖の残りは異なる起源又は種に由来する抗体を指す。
【0081】
抗体の「クラス」は、その重鎖が保有する定常ドメイン又は定常領域の種類を指す。抗体には5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、これらの幾つかは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IGA1及びIgA2等のサブクラス(アイソタイプ)に更に分かれる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
【0082】
本明細書で用いられる「細胞傷害性薬物」という用語は、細胞の機能を阻害又は阻止し及び/又は細胞死又は破壊を生ずる物質を指す。細胞傷害性剤は、限定されるものではないが、放射性同位体(例えばAt211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位体):化学療法剤又は薬物(例えばメトトレキセート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン又は他の挿入剤);増殖阻害剤;酵素及びその断片、例えば核酸分解酵素;抗生物質;小分子毒素等の毒素、又は細菌、真菌、植物若しくは動物由来の酵素活性毒素(それらの断片及び/又は変異体を含む)、及び以下に開示される種々の抗腫瘍剤又は抗癌剤を含む。
【0083】
用語「補体依存性細胞傷害性(CDC)」は、補体の存在下での、本明細書で報告されるような抗体により誘導される細胞の溶解を指す。一実施態様において、CDCは、補体の存在下での、本明細書で報告されるような抗体でのヒト内皮細胞を発現するCD19の処理により、測定される。一実施態様において、細胞はカルセインで標識される。抗体が30μg/mlの濃度で標的細胞の20%以上の溶解を誘導する場合、CDCが見られる。補体因子C1qへの結合はELISAで測定されうる。そのようなアッセイにおいては、主に、ELISAプレートは、抗体の濃度域でコーティングされ、精製されたヒトC1q又はヒト血清が添加される。C1q結合は、C1qに対する抗体により、続いてペロキシダーゼで標的されたコンジュゲートにより、検出される。結合(最大結合Bmax)の検出は、ペロキシダーゼ基質ABTS(登録商標)(2,2’-アジノ-ジ-[3-エチルベンズチアゾリン-6-スルホネート(6)])に関して405nmの光学濃度(OD405)として測定される。
【0084】
「エフェクター機能」とは、抗体のクラスにより変わる、抗体のFc領域に起因する生物活性を指す。抗体エフェクター機能の例には:C1q結合及び補体依存性細胞傷害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御;及びB細胞活性化が含まれる。
【0085】
Fc受容体結合依存性エフェクター機能は、抗体のFc領域と、造血細胞上の特殊化細胞表面受容体であるFc受容体(FcR)との相互作用により媒介することができる。Fc受容体は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)を介した、免疫複合体の食作用による抗体でコーティングされた病原体の除去と、対応する抗体でコーティングされた赤血球及び種々の他の細胞標的(例えば、腫瘍細胞)の溶解との両方を媒介することが示されている(例えば、Van de Winkel, J.G. and Anderson, C.L., J. Leukoc. Biol. 49(1991)511-524を参照のこと。)。FcRは、免疫グロブリンアイソタイプに関するそれらの特異性により定義される:IgG抗体に関するFc受容体は、FcγRと表される。Fc受容体結合は、例えば、Ravetch, J.V. and Kinet, J.P., Annu. Rev. Immunol. 9(1991)457-492;Capel, P.J., et al., Immunomethods 4(1994)25-34;de Haas, M., et al., J. Lab. Clin. Med. 126(1995)330-341;及びGessner, J.E., et al., Ann. Hematol. 76(1998)231-248に記載されている。
【0086】
IgG抗体のFc領域(FcγR)に関する受容体の架橋は、食作用、抗体依存性細胞傷害性、及び炎症メディエーターの放出、並びに免疫複合体除去及び抗体産生の制御を含む広範なエフェクター機能を引き起こす。ヒトにおいては、3つのクラスのFcγRの特徴が明らかにされてきている:
- FcγRI(CD64)は、高い親和性を有するモノマーIgGを結合し、マクロファージ、単球、好中球及び好酸球上で発現すること。アミノ酸残基E233-G236、P238、D265、N297、A327及びP329(KabatのEUインデックスに従い番号付け。)の少なくとも一のFc領域IgGにおける改変は、FcγRIへの結合を減少させる。IgG1及びIgG4に置換される、233~236位のIgG2残基は、FcγRIへの結合を103倍減少させ、抗体-感受性化赤血球に対するヒト単球応答を削減した(Armour, K.L., et al., Eur. J. Immunol. 29(1999)2613-2624)。
- FcγRII(CD32)は、中程度から低い親和性で複合体化したIgGに結合し、広く発現している。この受容体は、二のサブタイプ、FcγRIIA及びFcγRIIBに分けることができる。FcγRIIAは、殺傷に関与する多くの細胞(例えば、マクロファージ、単球、好中球)に見られ、殺傷プロセスを活性化することができるようである。FcγRIIBは、阻害過程で役割を果たすようであり、B-細胞、マクロファージ、及びマスト細胞及び好酸球で見られる。それは、B細胞上では、更なる免疫グロブリンの産生及び例えばIgEクラスへのアイソタイプスイッチングを抑制するよう機能するようである。マクロファージ上では、FcγRIIBは、FcγRIIAを通じて媒介されるような、食作用を阻害するよう作用する。好酸球及びマスト細胞上では、B型は、その分離した受容体へのIgE結合を通じたこれらの細胞の活性化を抑制するのを助けうる。FcγRIIAへの減少した結合は、例えば、アミノ酸残基E233-G236、P238、D265、N297、A327、P329、D270、Q295、A327、R292及びK414(KabatのEUインデックスに従い番号付け。)の少なくとも一の変異を有するIgGFc領域を含む抗体で見られる。
- FcγRIII(CD16)は、中程度から低い親和性でIgGに結合し、二種類で存在する。FcγRIIIAは、NK細胞、マクロファージ、好酸球並びにいくつかの単球及びT細胞上で見られ、ADCCを媒介する。FcγRIIIBは、好中球で多く発現する。FcγRIIIAへの減少した結合は、例えば、アミノ酸残基E233-G236、P238、D265、N297、A327、P329、D270、Q295、A327、S239、E269、E293、Y296、V303、A327、K338及びD376(KabatのEUインデックスに従い番号付け。)の少なくとも一の変異を有するIgGFc領域を含む抗体で見られる。
【0087】
Fc受容体に関するヒトIgG1上の結合部位のマッピング、上述の変異部位並びにFcγRI及びFcγRIIAへの結合を測定するための方法が、Shields, R.L., et al., J. Biol. Chem. 276(2001)6591-6604に記載されている。
【0088】
薬剤、例えば、薬学的製剤の「有効量」は、所望の治療的又予防的結果を達成するために必要な用量及び期間での有効な量を指す。
【0089】
本明細書で使用される用語「Fc受容体」とは、受容体に関連する細胞質ITAM配列の存在によって特徴を明らかにされた活性化受容体を指す(例えば、Ravetch, J.V. and Bolland, S., Annu. Rev. Immunol. 19(2001)275-290を参照のこと)。このような受容体は、FcγRI、FcγRIIA及びFcγRIIIAである。用語「FcγRの非結合」とは、10μg/mlの抗体濃度で、本明細書で報告される抗体のNK細胞への結合が、国際公開第2006/029879号で報告される抗OX40L抗体LC.001でみられる結合の10%以下であることを表す。
【0090】
IgG4は減少したFcR結合を示すが、他のIgGサブクラスの抗体は強い結合を示す。しかしながら、Pro238、Asp265、Asp270、Asn297(Fc糖の損失))、Pro329及び234、235、236及び237 Ile253、Ser254、Lys288、Thr307、Gln311、Asn434、及びHis435は、FcR結合を提供する(変更された場合は減少する)残基である(Shields, R.L., et al., J. Biol. Chem. 276(2001)6591-6604;Lund, J., et al., FASEB J. 9(1995)115-119;Morgan, A., et al., Immunology 86(1995)319-324;and EP 0 307 434)。一実施態様において、本明細書で報告される抗体は、IgG1又はIgG2サブクラスのものであり、変異PVA236、GLPSS331、及び/又はL234A/L235Aを含む。一実施態様において、本明細書で報告される抗体は、IgG4サブクラスのものであり、変異L235Eを含む。一実施態様において、抗体は変異S228Pをさらに含む。
【0091】
本明細書において用語「Fc領域」は、定常領域の少なくとも一部を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために用いられる。この用語は、天然配列Fc領域及び変異体Fc領域を含む。一実施態様において、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226又はPro230から重鎖のカルボキシル末端にまで及ぶ。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在しても、存在しなくてもよい。
【0092】
一実施態様において、本明細書で報告されるような抗体は、Fc領域として、ヒト起源由来のFc領域を含む。一実施態様において、Fc領域は、ヒト定常領域の全部分を含む。抗体のFc領域は、補体活性化、C1q結合、C3活性化及びFc受容体結合に直接関与する。補体系に対する抗体の影響は特定の条件に依存するが、C1qへの結合は、Fc領域に規定された結合部位により引き起こされる。そのような結合部位は当該技術分野で既知であり、例えばLukas, T.J., et al., J. Immunol. 127(1981)2555-2560;Brunhouse, R. and Cebra, J.J., Mol. Immunol. 16(1979)907-917;Burton, D.R., et al., Nature 288(1980)338-344;Thommesen, J.E., et al., Mol. Immunol. 37(2000)995-1004;Idusogie, E.E., et al., J. Immunol.164(2000)4178-4184;Hezareh, M., et al., J. Virol. 75(2001)12161-12168;Morgan, A., et al., Immunology 86(1995)319-324;及びEP0307434により記載されている。そのような結合部位は、例えばL234、L235、D270、N297、E318、K320、K322、P331、及びP329(KabatのEUインデックスに従い番号付け。)である。通常、サブクラスIgG1、IgG2、及びIgG3の抗体は、補体活性化、C1q結合及びC3結合を示すが、その一方IgG4は補体系を活性化せず、C1qに結合せず、C3を活性化しない。
【0093】
「抗体のFc領域」は、当業者に周知であり、抗体のパパイン切断に基づいて定められる用語である。一実施態様では、Fc領域はヒトFc領域である。一実施態様では、Fc領域は、変異S228P及び/又はL235E(KabatのEUインデックスに従い番号付け。)を含むヒトIgG4サブクラスのFc領域である。一実施態様では、Fc領域は、変異L234A及び/又はL235A(KabatのEUインデックスに従い番号付け。)を含むヒトIgG1サブクラスのFc領域である。
【0094】
「フレームワーク」又は「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般に四つのFRのドメイン、即ちFR1、FR2、FR3、及びFR4で構成される。したがって、HVR及びFR配列は一般的に、VH(又はVL)の以下の配列に現れる:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0095】
用語「完全長抗体」、「インタクトな抗体」、及び「全抗体」は、本明細書中で互換的に使用され、天然型抗体構造と実質的に類似の構造を有するか、又は本明細書で定義されるFc領域を含む重鎖を有する抗体を指す。「完全長抗体」は、抗原結合可変領域と、軽鎖定常ドメイン(CL)及び重鎖定常ドメインCH1、CH2及びbCH3とを含む抗体である。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列変異体でありうる。より詳細には、完全長抗体は、二本の抗体軽鎖(それぞれ、軽鎖可変ドメイン及び軽鎖定常ドメインを含む。)及び二本の抗体重鎖(それぞれ、重鎖可変ドメイン、ヒンジ領域及び重鎖定常ドメインCH1、CH2及びCH3を含む。)を含む。C末端アミノ酸残基K又はGKは、完全長抗体の二の抗体重鎖に存在するか又は互いに独立せずに存在してもよい。
【0096】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」及び「宿主細胞培養物」は互換的に使用され、外因性の核酸が導入された細胞を指し、そのような細胞の子孫を含む。宿主細胞は、「形質転換体」及び「形質転換された細胞」を含み、それには初代形質転換細胞及び、継代の数に関係なく、それに由来する子孫が含まれる。子孫は親細胞と核酸含量が完全に同一でなくてもよく、変異を含んでいてもよい。本明細書には、最初に形質転換された細胞においてスクリーニング又は選択されたものと同じ機能又は生物活性を有する変異型子孫が含まれる。
【0097】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」とは、ヒト免疫グロブリンVL又はVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に存在するアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般的には、ヒト免疫グロブリンVL又はVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからなされる。一般的に、配列のサブグループは、Kabat, E.A. et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Bethesda MD(1991), NIH Publication 91-3242, Vols. 1-3のサブグループである。一実施態様において、VLについて、サブグループは上掲のKabatらのサブグループカッパIである。一実施態様において、VHについて、サブグループは上掲のKabatらのサブグループIIIである。
【0098】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVRのアミノ酸残基及びヒトFRのアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。特定の実施態様において、ヒト化抗体は、少なくとも一つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、HVR(例えば、CDR)のすべて又は実質的にすべてが、非ヒト抗体のものに対応し、FRのすべて又は実質的にすべてが、ヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は、場合によって、ヒト抗体由来の抗体定常領域の少なくとも一部を含んでもよい。抗体の「ヒト化型」、例えば、非ヒト抗体は、ヒト化を遂げた抗体を指す。
【0099】
本明細書で用いられる「超可変領域」又は「HVR」という用語は、配列が超可変である、アミノ酸残基ストレッチを含む抗体可変ドメインの領域(「相補性決定領域」すなわち「CDR」)及び/又は構造的に既定されるループ(「超可変ループ」)を形成する抗体可変ドメインの領域及び/又は抗原に接触する残基(「抗原コンタクト(antigen contact)」を含有する抗体可変ドメインの領域のそれぞれを指す。一般的に、抗体は、VHに三つ(H1、H2、H3)、VLに三つ(L1、L2、L3)の計六つのHVRを含む。
【0100】
HVRは、
(a)アミノ酸残基26~32(L1)、50~52(L2)、91~96(L3)、26~32(H1)、53~55(H2)、及び96~101(H3)に生じる超可変ループ(Chothia, C. and Lesk, A.M., J. Mol. Biol. 196(1987)901-917);
(b)アミノ酸残基24~34(L1)、50~56(L2)、89~97(L3)、31~35b(H1)、50~65(H2)、及び95~102(H3)に生じるCDR(Kabat, E.A. et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD(1991), NIH Publication 91-3242.);
(c)アミノ酸残基27c~36(L1)、46~55(L2)、89~96(L3)、30~35b(H1)、47~58(H2)、及び93-101(H3)に生じる抗原コンタクト(MacCallum et al., J. Mol. Biol. 262(1996)732-745);並びに
(d)HVRアミノ酸残基46~56(L2)、47~56(L2)、48~56(L2)、49~56(L2)、26~35(H1)、26~35b(H1)、49~65(H2)、93~102(H3)、及び94~102(H3)を含む、(a)、(b)、及び/又は(c)の組み合わせ
を含む。
【0101】
特に断らない限り、可変ドメイン内のHVR残基及び他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書では上掲のKabatらに従って番号が付けられる。
【0102】
「イムノコンジュゲート」とは、細胞傷害性剤を含むがそれに限定されない、一又は複数の異種分子にコンジュゲートした抗体である。
【0103】
「個体」又は「被験者」とは、哺乳動物である。哺乳動物には、限定されないが、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウマ)、霊長類(例えば、ヒト、及びサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、げっ歯類(例えば、マウス及びラット)が含まれる。特定の実施態様において、個体又は被検者はヒトである。
【0104】
「単離された」抗体とは、その自然環境の成分から分離されたものである。いくつかの実施態様において、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)又はクロマトグラフィー(例えば、イオン交換又は逆相HPLC)により決定される場合、95%又は99%を上回る純度に精製される。抗体純度の評価法の総説としては、例えばFlatman, S., et al., J. Chromatogr. B 848(2007)79-87を参照のこと。
【0105】
「単離された」核酸とは、その自然環境の成分から分離された核酸分子を指す。単離された核酸は、核酸分子を通常含む細胞に含まれる核酸分子を含むが、核酸分子は、染色体外又はその自然の染色体上の位置とは異なる染色体位置に存在している。
【0106】
「抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体抗体をコードする単離された核酸」は、抗体の重鎖及び軽鎖(又はその断片)をコードする一又は複数の核酸分子を指し、これには、単一のベクター又は別々のベクター中のこのような核酸分子、及び宿主細胞の一又は複数の位置に存在するこのような核酸分子が含まれる。
【0107】
本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」とは、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味し、即ち、例えば、天然に生じる変異を含むか又はモノクローナル抗体調製物の製造時に発生し、一般的に少量で存在している可能性のある変異体抗体を除き、集団を構成する個々の抗体は同一であり、及び/又は同じエピトープに結合する。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を通常含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。したがって、修飾語「モノクローナル」は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の製造を必要とするものとして解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、限定されるものではないが、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部又は一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法を含む様々な技術によって作製することができ、モノクローナル抗体を作製するためのこれらの方法及びその他の例示的な方法は本明細書に記載されている。
【0108】
「ネイキッド抗体」とは、異種の部分(例えば、細胞傷害性部分)又は放射性標識にコンジュゲートしていない抗体を指す。ネイキッド抗体は薬学的製剤中に存在してもよい。
【0109】
「天然型の抗体」とは、天然に生じる、様々な構造をとる免疫グロブリン分子を指す。例えば、天然型のIgG抗体は、ジスルフィド結合している二つの同一の軽鎖と二つの同一の重鎖からなる約150000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端に、各重鎖は可変重鎖ドメイン又は重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)を有し、その後に3つの定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3)が続き、それにより第一の定常ドメインと第二の定常ドメインとの間にヒンジ領域が位置している。同様に、各軽鎖は、N末端からC末端にかけて、可変軽鎖ドメイン又は軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)、続いて定常軽鎖(CL)ドメインを有する。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)とラムダ(λ)と呼ばれる、二つの種類のうちのいずれかに割り当てることができる。
【0110】
「添付文書」という用語は、治療製品の商品包装に通例含まれる説明書を指すのに用いられ、そのような治療製品の適応症、用法、用量、投与、併用療法、使用に関する禁忌及び/又は注意事項についての情報を含む。
【0111】
参照ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、最大の配列同一性パーセントを得るように配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入した後の、いかなる保存的置換も配列同一性の一部とみなさない、参照ポリペプチドのアミノ酸残基と同一である候補配列のアミノ酸残基の百分率として定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のためのアラインメントは、当分野の技術の範囲内にある種々の方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアのような公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成することができる。当業者であれば、比較する配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するのに必要な任意のアルゴリズムを含めた、配列を整列させるための適切なパラメータを決定することができる。しかしながら、ここでの目的のためには、%アミノ酸配列同一性の値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムはジェネンテック社によって作製され、ソースコードは米国著作権庁、ワシントンD.C.,20559に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている。また、ALIGN-2は、ジェネンテック社(South San Francisco, California)から公的に入手可能であり、又はそのソースコードからコンパイルしてもよい。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIXのV4.0Dを含む、UNIXオペレーティングシステム上での使用のためにコンパイルされるべきである。すべての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定されて変動しない。
【0112】
アミノ酸配列比較にALIGN-2が用いられる状況では、所与のアミノ酸配列Bとの又はそれに対する、所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(あるいは、所与のアミノ酸配列Bと若しくはそれに対して、ある程度のアミノ酸配列同一性%を有するか又は含む所与のアミノ酸配列Aと言うこともできる)は次のように計算される:
分率X/Yの100倍
ここで、Xは配列アラインメントプログラムALIGN-2により、AとBのそのプログラムのアラインメントにおいて同一であるとして一致したスコアのアミノ酸残基の数であり、YはBの全アミノ酸残基数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと異なる場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性とは異なることは理解されるであろう。特に断らない限り、本明細書で使用されるすべての%アミノ酸配列同一性値は、ALIGN-2コンピュータプログラムを使用して、直前の段落で説明したように得られる。
【0113】
用語「薬学的製剤」は、その中に含有されている活性成分の生物学的活性が有効になることを可能にするような形態であって、製剤が投与される対象にとって許容できないほど毒性であるさらなる成分を含まない調製物を指す。
【0114】
「薬学的に許容される担体」は、対象に非毒性である、有効成分以外の薬学的製剤の成分を指す。薬学的に許容される担体は、限定されなるものではないが、バッファー、賦形剤、安定剤又は保存剤を含む。
【0115】
本明細書で用いられる場合、「治療(treatment)」(及び「治療する(treat)」又は「治療すること(treating)」など、その文法的変形)は、治療されている個体の自然経過を変えようと試みる臨床的介入を指し、予防のため、又は臨床病理の過程において実施されうる。治療の望ましい効果には、限定されないが、疾患の発症又は再発を予防すること、症状の緩和、疾患の直接的又は間接的な病理学的帰結の縮小、転移を予防すること、疾患の進行の速度を遅らせること、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解又は予後の改善が含まれる。いくつかの実施態様において、本明細書で報告される抗体は、疾患の発症を遅延させるか、又は疾患の進行を遅らせるために使用される。
【0116】
用語「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の抗原への結合に関与する抗体の重鎖又は軽鎖のドメインを指す。通常、天然型抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれVH及びVL)は、各々が四つの保存されたフレームワーク領域(FR)と三つの超可変領域(HVR)とを含む類似構造を有する(例えば、Kindt, T.J. et al., Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., N.Y.(2007), page 91を参照のこと)。抗原結合特異性を付与するには、単一のVH又はVLドメインで十分である。さらに、特定の抗原に結合する抗体を、その抗原に特異的に結合する抗体に由来するVHドメイン又はVLドメインを用いて単離し、相補的なVLドメイン又はVHドメインそれぞれのライブラリーをスクリーニングすることができる(例えば、Portolano, S., et al., J. Immunol. 150(1993)880-887;Clackson, T., et al., Nature 352(1991)624-628を参照のこと)。
【0117】
本明細書で使用される用語「ベクター」は、それが連結されている別の核酸を伝播することができる核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター及び導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターを含む。ある種のベクターは、それが作動可能に連結された核酸の発現を指示することができる。このようなベクターは、本明細書では「発現ベクター」と言う。
【0118】
本明細書で補助療法として用いられる場合の「免疫抑制剤」なる用語は、本明細書中で治療される哺乳類の免疫系を抑制又は遮断するように働く物質を表す。これは、サイトカイン産生を抑制する、自己抗原の発現を下方制御又は抑制する、或いはMHC抗原を遮断する物質を含む。そのような薬剤の例には、2-アミノ-6-アリール-5-置換ピリミジン;アザチオプリン;シクロホスファミド;ブロモクリプチン;ダナゾール;ダプソン;グルタルアルデヒド(米国特許第4120649に記載のようにMHC抗原を遮蔽する。);MHC抗原及びMHC断片に対する抗イデオタイプ抗体;シクロスポリンA;グルココルチコステロイドのようなステロイド、例えば、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、及びデキサメタゾン;サイトカイン若しくはサイトカイン受容体アンタゴニスト(抗インターフェロン-γ、-β、若しくは-α抗体、抗腫瘍壊死因子-α抗体、抗腫瘍壊死因子-β抗体、抗インターロイキン-2抗体及び抗IL-2受容体抗体を含む);抗LFA-1抗体(抗CD11a及び抗CD18抗体を含む);抗L3T4抗体;異種性抗リンパ球グロブリン;pan-T抗体、好ましくは抗CD3若しくは抗CD4/CD4a抗体;LFA-3結合ドメインを含む可溶型ペプチド(国際公開第90/08187号);ストレプトキナーゼ;TGF-β;ストレプトドルナーゼ;宿主由来のRNA若しくはDNA;FK506;RS-61443;デオキシスペルグアリン;ラパマイシン;T細胞受容体(米国特許第5114721号);T細胞受容体断片(Offner et al. Science 251(1991)430-432;国際公開第90/11294号;Ianeway, Nature 341(1989)482;及び国際公開第91/01133号);並びにT細胞受容体抗体(EP340109)、例えばT10B9が含まれる。
【0119】
「化学療法剤」は、がんの治療に有用な化学的化合物である。化学療法剤の例には、アルキル化剤、例えばチオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXANTM);アルキルスルホネート、例えばブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン;アジリジン、例えばベンゾドーパ、カルボクオン、メツレドーパ及びウレドーパエチレンイミン及びメチラメラミン(アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンエチオホスホラミド及びトリメチロールメラミンを含む。);ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン;抗生物質、例えばアクラシノマイシン、アクチノマイシン、アウスラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、プロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗物質、例えばメトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えばデノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート;プリン類似体、例えばフルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えばアンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5-FU;アンドロゲン、例えばカルステロン、ドロモスタノロンプロピオネート、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗アドレナール、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充剤、例えばフォリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジクオン;エルフォルニチン;エリプチニウムアセテート;エトグルシド;ガリウムニトレート;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ミトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, N.J.)及びドキセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金類似体、例えばシスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオリニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラミシン;カペシタビン;並びに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸又は誘導体が含まれる。この定義にさらに含まれるものは、腫瘍に対するホルモン作用を制限又は阻害するよう作用する抗ホルモン剤(例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びトレミフェン(フェアストン)を含む。);並びに抗アンドロゲン、例えばフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド及びゴセレリン;並びに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸又は誘導体である。
【0120】
II.組成物及び方法
一態様において、本発明は、一つには、本明細書で報告される二重特異性抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体抗体が改善された特性を有するという発見に基づいている。ある実施態様において、二重特異性抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体抗体が提供される。本明細書で報告される抗体は、例えば、パーキンソン病又は多発性硬化症の診断又は治療に有用である。
【0121】
A.例示的な二重特異性抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体抗体
一態様において、本発明は、ヒトCD20及びヒトトランスフェリン受容体に結合する単離された二重特異性抗体を提供する。抗体は、(完全長)コア抗体及び特定のドメインが交差して変化している融合したFab断片から成る二重特異性抗体である。したがって、結果として生じる二重特異性抗体は不斉である。それゆえ、二重特異性抗体は、いわゆるノブ変異(HCknob)を有する第一の重鎖及びいわゆるホール変異(HChole)を有する第二の重鎖を使用したノブ・イントゥー・ホールと呼ばれるヘテロ二量体化技術を使用して産生される。
【0122】
本発明の一態様である抗体0039は、配列番号06から09のアミノ酸配列を有する四つのポリペプチドで構成されている。
【0123】
抗体0039は
a)それぞれ、完全長抗体軽鎖及び完全長抗体重鎖の二対を含み、完全長重鎖及び完全長軽鎖のそれぞれの対により形成される結合部位が第一の抗原に特異的に結合する、一の抗体と、
b)完全長抗体の一の重鎖のC末端に融合し、結合部位が第二の抗原に特異的に結合する、一のさらなるFab断片を含み、
完全長抗体軽鎖のそれぞれが、定常軽鎖ドメイン(CL)において、123位でアミノ酸残基アルギニン(野生型グルタミン酸残基の代替;E123R変異)を、124位でアミノ酸残基リジン(野生型グルタミン残基の代替;Q124K変異)(Kabatに従って番号付け。)を含み、
完全長抗体重鎖のそれぞれが、第一の定常重鎖ドメイン(CH1)において、147位でグルタミン酸残基(野生型リジン残基の代替;K147E変異)を、213位でグルタミン酸残基(野生型リジンアミノ酸残基の代替;K213E変異)(Kabat EUインデックスに従って番号付け。)を含み、
第二の抗原に特異的に結合するさらなるFab断片が、軽鎖可変ドメイン(VL)及び重鎖可変ドメイン(VH)が互いに置き換えられるように、ドメイン交差を含み、
第一の抗原がヒトCD20であり、第二の抗原がヒトトランスフェリン受容体である、
二重特異性抗体である。
【0124】
本発明の一態様である抗体0041は、配列番号01から03及び10のアミノ酸配列を有する四つのポリペプチドで構成されている。
【0125】
抗体0041は
a)それぞれ、完全長抗体軽鎖及び完全長抗体重鎖の二対を含み、完全長重鎖及び完全長軽鎖のそれぞれの対により形成される結合部位が第一の抗原に特異的に結合する、一の抗体と、
b)完全長抗体の一の重鎖のC末端に融合し、結合部位が第二の抗原に特異的に結合する、一のさらなるFab断片を含み、
完全長抗体軽鎖のそれぞれが、定常軽鎖ドメイン(CL)において、123位でアミノ酸残基アルギニン(野生型グルタミン酸残基の代替;E123R変異)を、124位でアミノ酸残基リジン(野生型グルタミン残基の代替;Q124K変異)(Kabatに従って番号付け。)を含み、
完全長抗体重鎖のそれぞれが、第一の定常重鎖ドメイン(CH1)において、147位でグルタミン酸残基(野生型リジン残基の代替;K147E変異)を、213位でグルタミン酸残基(野生型リジンアミノ酸残基の代替;K213E変異)(Kabat EUインデックスに従って番号付け。)を含み、
第二の抗原に特異的に結合するさらなるFab断片が、定常軽鎖ドメイン(CL)及び定常重鎖ドメイン1(CH1)が互いに置き換えられるように、ドメイン交差を含み、
第一の抗原がヒトCD20であり、第二の抗原がヒトトランスフェリン受容体である、
二重特異性抗体である。
【0126】
本発明の一態様である抗体0040は、配列番号11から13及び22のアミノ酸配列を有する三つのポリペプチドで構成されている。
【0127】
抗体0040は
a)それぞれ、完全長抗体軽鎖及び完全長抗体重鎖の二対を含み、完全長重鎖及び完全長軽鎖のそれぞれの対により形成される結合部位が第一の抗原に特異的に結合する、一の抗体と、
b)完全長抗体の一の重鎖のC末端に融合し、結合部位が第二の抗原に特異的に結合する、一のさらなるFab断片を含み、
第二の抗原に特異的に結合するさらなるFab断片が、定常軽鎖ドメイン(CL)及び定常重鎖ドメイン1(CH1)が互いに置き換えられるように、ドメイン交差を含み、
第一の抗原がヒトCD20であり、第二の抗原がヒトトランスフェリン受容体である、
二重特異性抗体である。
【0128】
本発明の一態様である抗体0042は、配列番号14から17のアミノ酸配列を有する四つのポリペプチドで構成されている。
【0129】
抗体0042は
a)第一の抗原に特異的に結合する第一の抗体に由来する第一の軽鎖及び第一の重鎖;並びに
b)第二の抗原に特異的に結合する第二の抗体に由来する第二の軽鎖及び第二の重鎖を含み、
第二の軽鎖において、定常ドメインCLは第二の重鎖の定常ドメインCH1で置き換えられ、
第二の重鎖において、定常ドメインCH1は第二の軽鎖の定常ドメインCLで置き換えられ、
i)第一の軽鎖の定常ドメインCLにおいて、124及び123位のアミノ酸(Kabatに従って番号付け。)は、K、R及びHより選択されるアミノ酸によって互いに独立して置換され;第一の重鎖の定常ドメインCH1において、147及び213位のアミノ酸(KabatのEUインデックスに従って番号付け。)は、E又はDより選択されるアミノ酸によって互いに独立して置換されるか;又は
ii)第二の重鎖の定常ドメインCLにおいて、124及び123位のアミノ酸(Kabatに従って番号付け。)は、K、R及びHより選択されるアミノ酸によって互いに独立して置換され;第二の軽鎖の定常ドメインCH1において、147及び213位のアミノ酸(KabatのEUインデックスに従って番号付け。)は、E又はDより選択されるアミノ酸によって互いに独立して置換される
二重特異性抗体である。
【0130】
本明細書で報告される二重特異性抗体は、CHO細胞における一過性発現により得られた。収量を以下の表に示す。
【0131】
異なる発現プラスミド上のそれぞれのポリペプチドの異なる配分/組合せと、結果により生じたプラスミドの異なる比が、二重特異性抗体の組換え産生に使用されている。HEK293細胞で得られた結果を以下の表に示す。
【0132】
二重特異性抗体は、CHO細胞中、小規模で産生され、副生成物の分布は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを使用する第一の精製工程後及び調製用サイズ排除クロマトグラフィーを使用する第二の精製工程後に分析されている。結果を以下の表に示す。
【0133】
二重特異性抗体は、異なる細胞株で産生された。結果を以下の表に示す。
【0134】
抗体0039、0040、0041及び0042の凝集温度は、それぞれ、ほぼ54~56℃、ほぼ50~53℃、ほぼ51~53℃、及びほぼ55~57℃に決定された。
【0135】
全体として、抗体0041は、改善した特性を示しており、したがって、本発明の好ましい態様である。改善した特性は、とりわけ、改善した副生成物プロファイルにある。
【0136】
本明細書で報告される一態様は、
a)それぞれ、完全長抗体軽鎖及び完全長抗体重鎖の二対を含み、完全長重鎖及び完全長軽鎖のそれぞれの対により形成される結合部位が第一の抗原に特異的に結合する、一の抗体と、
b)完全長抗体の一の重鎖のC末端に融合し、結合部位が第二の抗原に特異的に結合する、一のさらなるFab断片
を含み、
完全長抗体軽鎖のそれぞれが、定常軽鎖ドメイン(CL)において、123位でアミノ酸残基アルギニン(野生型グルタミン酸残基の代替;E123R変異)を、124位でアミノ酸残基リジン(野生型グルタミン残基の代替;Q124K変異)(Kabatに従って番号付け。)を含み、
完全長抗体重鎖のそれぞれが、第一の定常重鎖ドメイン(CH1)において、147位でグルタミン酸残基(野生型リジン残基の代替;K147E変異)を、213位でグルタミン酸残基(野生型リジンアミノ酸残基の代替;K213E変異)(Kabat EU indexに従って番号付け。)を含み、
第二の抗原に特異的に結合するさらなるFab断片が、定常軽鎖ドメイン(CL)及び定常重鎖ドメイン1(CH1)が互いに置き換えられるように、ドメイン交差を含み、
第一の抗原がヒトCD20であり、第二の抗原がヒトトランスフェリン受容体である、
二重特異性抗体である。
【0137】
本明細書で報告される一態様は、
a)それぞれ、完全長抗体軽鎖及び完全長抗体重鎖の二対を含み、完全長重鎖及び完全長軽鎖のそれぞれの対により形成される結合部位が第一の抗原に特異的に結合する、一の抗体と、
b)完全長抗体の一の重鎖のC末端に融合し、結合部位が第二の抗原に特異的に結合する、一のさらなるFab断片
を含み、
完全長抗体軽鎖のそれぞれが、定常軽鎖ドメイン(CL)において、123位でアミノ酸残基アルギニン(野生型グルタミン酸残基の代替;E123R変異)を、124位でアミノ酸残基リジン(野生型グルタミン残基の代替;Q124K変異)(Kabatに従って番号付け。)を含み、
完全長抗体重鎖のそれぞれが、第一の定常重鎖ドメイン(CH1)において、147位でグルタミン酸残基(野生型リジン残基の代替;K147E変異)を、213位でグルタミン酸残基(野生型リジンアミノ酸残基の代替;K213E変異)(Kabat EUインデックスに従って番号付け。)を含み、
第二の抗原に特異的に結合するさらなるFab断片が、定常軽鎖ドメイン(CL)及び定常重鎖ドメイン1(CH1)が互いに置き換えられるように、ドメイン交差を含み、
第一の抗原がヒトCD20であり、第二の抗原がヒトトランスフェリン受容体であり、
ヒトCD20結合部位が、配列番号18のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列と、配列番号19のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)とを含み、
ヒトトランスフェリン受容体結合部位が、配列番号20のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列と、配列番号21のアミノ酸配列に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)とを含む、
二重特異性抗体である。
【0138】
特定の実施態様では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して置換(例えば保存的置換)、挿入、又は欠失を含むが、その配列を含む結合部位は、その抗原へ結合する能力を保持する。ある実施態様では、配列番号18又は20において、合計1から10のアミノ酸が置換、挿入、及び/又は欠失している。所定の実施態様において、置換、挿入、又は欠失は、HVR外の(即ちFR内の)領域で生じる。
【0139】
特定の実施態様では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の同一性を有するVL配列は、参照配列に対して置換(例えば保存的置換)、挿入、又は欠失を含むが、その配列を含む結合部位は、その抗原へ結合する能力を保持する。ある実施態様では、配列番号19又は21において、合計1から10のアミノ酸が置換、挿入、及び/又は欠失している。所定の実施態様において、置換、挿入、又は欠失は、HVR外の(即ちFR内の)領域で生じる。
【0140】
一実施態様において、ヒトCD20結合部位は、配列番号18にあるようなVH配列(その配列の翻訳後修飾を含む。)と、配列番号19にあるようなVL配列(その配列の翻訳後修飾を含む。)とを含む。
【0141】
一実施態様において、ヒトトランスフェリン受容体結合部位は、配列番号20にあるようなVH配列(その配列の翻訳後修飾を含む。)と、配列番号21にあるようなVL配列(その配列の翻訳後修飾を含む。)とを含む。
【0142】
一実施態様において、二重特異性抗体は
i)少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は95%以上の配列番号01に対する配列同一性を有する軽鎖、
ii)少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は95%以上の配列番号02に対する配列同一性を有する重鎖、
iii)少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は95%以上の配列番号03に対する配列同一性を有する軽鎖、及び
iv)少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は95%以上の配列番号04に対する配列同一性を有する重鎖Fab断片
を含み、ここで、
配列番号01はアミノ酸配列
DIVMTQTPLSLPVTPGEPASISCRSSKSLLHSNGITYLYWYLQKPGQSPQLLIYQMSNLVSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCAQNLELPYTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDRKLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
を有し、
配列番号02はアミノ酸配列
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYAFSYSWINWVRQAPGQGLEWMGRIFPGDGDTDYNGKFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARNVFDGYWLVYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVEDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDEKVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALGAPIEKTISKAKGQPREPQVCTLPPSRDELTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
を有し、
配列番号03はアミノ酸配列
AIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLAWYQQKPGKAPKLLIYRASTLASGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQNYASSNVDNTFGGGTKVEIKSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSC
を有し、
配列番号04はアミノ酸配列
QSMQESGPGLVKPSQTLSLTCTVSGFSLSSYAMSWIRQHPGKGLEWIGYIWSGGSTDYASWAKSRVTISKTSTTVSLKLSSVTAADTAVYYCARRYGTSYPDYGDASGFDPWGQGTLVTVSSASVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
を有する。
【0143】
本明細書で報告される一態様は、
a)それぞれ、完全長抗体軽鎖及び完全長抗体重鎖の二対を含み、完全長重鎖及び完全長軽鎖のそれぞれの対により形成される結合部位が第一の抗原に特異的に結合する、一の抗体と、
b)完全長抗体の一の重鎖のC末端に融合し、結合部位が第二の抗原に特異的に結合する、一のさらなるFab断片を含み、
完全長抗体軽鎖のそれぞれが、定常軽鎖ドメイン(CL)において、123位でアミノ酸残基アルギニン(野生型グルタミン酸残基の代替;E123R変異)を、124位でアミノ酸残基リジン(野生型グルタミン残基の代替;Q124K変異)(Kabatに従って番号付け。)を含み、
完全長抗体重鎖のそれぞれが、第一の定常重鎖ドメイン(CH1)において、147位でグルタミン酸残基(野生型リジン残基の代替;K147E変異)を、213位でグルタミン酸残基(野生型リジンアミノ酸残基の代替;K213E変異)(Kabat EU indexに従って番号付け。)を含み、
第二の抗原に特異的に結合するさらなるFab断片が、定常軽鎖ドメイン(CL)及び定常重鎖ドメイン1(CH1)が互いに置き換えられるように、ドメイン交差を含み、
第一の抗原がヒトCD20であり、第二の抗原がヒトトランスフェリン受容体であり、
ヒトCD20結合部位が、配列番号18のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)と、配列番号19のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)とを含み、
ヒトトランスフェリン受容体結合部位が、配列番号20のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)と、配列番号21のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)とを含む、
二重特異性抗体である。
【0144】
本明細書で報告される一態様は、
a)それぞれ、完全長抗体軽鎖及び完全長抗体重鎖の二対を含み、完全長重鎖及び完全長軽鎖のそれぞれの対により形成される結合部位が第一の抗原に特異的に結合し、完全長抗体が、それぞれ、CH1、CH2及びCH3ドメインを含む、二の完全長重鎖のFc領域ポリペプチドにより形成されるFc領域を含み、
b)完全長抗体の一の重鎖のC末端に融合し、結合部位が第二の抗原に特異的に結合する、一のさらなるFab断片を含み、
完全長抗体軽鎖のそれぞれが、定常軽鎖ドメイン(CL)において、123位でアミノ酸残基アルギニン(野生型グルタミン酸残基の代替;E123R変異)を、124位でアミノ酸残基リジン(野生型グルタミン残基の代替;Q124K変異)(Kabatに従って番号付け。)を含み、
完全長抗体重鎖のそれぞれが、第一の定常重鎖ドメイン(CH1)において、147位でグルタミン酸残基(野生型リジン残基の代替;K147E変異)を、213位でグルタミン酸残基(野生型リジンアミノ酸残基の代替;K213E変異)(Kabat EU indexに従って番号付け。)を含み、
第二の抗原に特異的に結合するさらなるFab断片が、定常軽鎖ドメイン(CL)及び定常重鎖ドメイン 1(CH1)が互いに置き換えられるように、ドメイン交差を含み、
第一の抗原がヒトCD20であり、第二の抗原がヒトトランスフェリン受容体であり、
ヒトCD20結合部位が、配列番号18のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)と、配列番号19のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)とを含み、
ヒトトランスフェリン受容体結合部位が、配列番号20のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)と、配列番号21のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)とを含み、
Fc領域ポリペプチドが
a)ヒトサブクラスIgG1のFc領域ポリペプチド、
b)ヒトサブクラスIgG4のFc領域ポリペプチド、
c)変異L234A、L235A及びP329Gを有するヒトサブクラスIgG1のFc領域ポリペプチド、
d)変異228P、L235E及びP329Gを有するヒトサブクラスIgG4のFc領域ポリペプチド、
e)両方のFc領域ポリペプチド中に変異L234A、L235A及びP329Gを、一方のFc領域ポリペプチド中に変異T366W及びS354Cを、それぞれの他方のFc領域ポリペプチド中に変異T366S、L368A、Y407V及びY349Cを有するヒトサブクラスIgG1のFc領域ポリペプチド、
f)両方のFc領域ポリペプチド中にS228P及びP329Gを、一方のFc領域ポリペプチド中に変異T366W及びS354Cを、それぞれの他方のFc領域ポリペプチド中に変異T366S、L368A、Y407V及びY349Cを有するヒトサブクラスIgG4のFc領域ポリペプチド、
g)両方のFc領域ポリペプチド中に変異L234A、L235A、P329G、I253A、H310A及びH435Aを、一方のFc領域ポリペプチド中に変異T366W及びS354Cを、それぞれの他方のFc領域ポリペプチド中に変異T366S、L368A、Y407V及びY349Cを有するヒトサブクラスIgG1のFc領域ポリペプチド、又は
h)両方のFc領域ポリペプチドに変異L234A、L235A、P329G、M252Y、S254T及びT256Eを、一方のFc領域ポリペプチド中に変異T366W及びS354Cを、それぞれ他方のFc領域ポリペプチド中に変異T366S、L368A、Y407V及びY349Cを有するヒトサブクラスIgG1のFc領域ポリペプチド、又は
i)両方の重鎖中に変異L234A、L235A、P329G、H310A、H433A及びY436Aを、一方の重鎖中に変異i)T366W、及びii)S354C又はY349Cを、それぞれの他方の重鎖中に変異i)T366S、L368A及びY407V、並びにii)Y349C又はS354Cを有するヒトサブクラスIgG1の完全長抗体である
二重特異性抗体である。
【0145】
さらなる態様において、上記のいずれかの実施態様に記載の二重特異性抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体抗体は、以下のセクション1~3に記載されているようにして、任意の機能を単独で又は組み合わせて組み込むことができる。
【0146】
1.キメラ及びヒト化抗体
ある実施態様において、本明細書で提供される抗体はキメラ抗体である。特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4816567号、及びMorrison, S.L. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81(1984)6851-6855)に記載されている。一例において、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、又はサル等の非ヒト霊長類由来の可変領域)とヒト定常領域とを含む。更なる例において、キメラ抗体は、クラス又はサブクラスが親抗体のものから変更されている「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合断片を含む。
【0147】
ある実施態様において、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、ヒトに対する免疫原性を低減するために、親の非ヒト抗体の特異性と親和性を保持したままヒト化されている。一般に、ヒト化抗体は、HVR(例えばCDR)(又はその一部)が非ヒト抗体に由来し、FR(又はその一部)がヒト抗体配列に由来する、一又は複数の可変ドメインを含む。ヒト化抗体はまた、場合によってヒト定常領域の少なくとも一部を含むであろう。いくつかの実施態様において、ヒト化抗体のいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性又は親和性を回復又は改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換される。
【0148】
ヒト化抗体及びそれらの製造方法については、例えば、Almagro, J.C. and Fransson, J., Front. Biosci. 13(2008)1619-1633に総説が、更に、例えばRiechmann, I. et al., Nature 332(1988)323-329;Queen, C. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86(1989)10029-10033;米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、及び同第7,087,409号;Kashmiri, S.V. et al., Methods 36(2005)25-34(特異性決定領域(SDR)グラフティングを記述。);Padlan, E.A., Mol. Immunol. 28(1991)489-498(「リサーフェイシング」を記述。);Dall’Acqua, W.F. et al., Methods 36(2005)43-60(「FRシャッフリング」を記述。);並びにOsbourn, J. et al., Methods 36(2005)61-68及びKlimka, A. et al., Br. J. Cancer 83(2000)252-260(FRシャッフリングへの「誘導選択」アプローチを記述。)に記載がある。
【0149】
ヒト化に用いられ得るヒトフレームワーク領域は、限定されないが、「ベストフィット」法を用いて選択されるフレームワーク領域(例えば、Sims, M.J. et al., J. Immunol. 151(1993)2296-2308を参照。);軽鎖又は重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter, P. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89(1992)4285-4289;及びPresta, L.G. et al., J. Immunol. 151(1993)2623-2632を参照。);ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域又はヒトの生殖細胞系フレームワーク領域(例えば、Almagro, J.C. and Fransson, J., Front. Biosci. 13(2008)1619-1633を参照。);及びFRライブラリスクリーニング由来のフレームワーク領域(例えば、Baca, M. et al., J. Biol. Chem. 272(1997)10678-10684 and Rosok, M.J. et al., J. Biol. Chem. 271(19969 22611-22618を参照。)を含む。
【0150】
2.ヒト抗体
ある実施態様において、本明細書で提供される抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当技術分野において既知の様々な技術を用いて生産することができる。ヒト抗体は、一般的に、van Dijk, M.A. and van de Winkel, J.G., Curr. Opin. Pharmacol. 5(2001)368-374及びLonberg, N., Curr. Opin. Immunol. 20(2008)450-459に記載されている。
【0151】
ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答してインタクトなヒト抗体又はヒト可変領域を有するインタクトな抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物に、免疫原を投与することによって調製することができる。このような動物は、典型的には内因性免疫グロブリン遺伝子座を置換するか、又は染色体外に存在するか若しくは該動物の染色体にランダムに組み込まれているヒト免疫グロブリン遺伝子座のすべて又は一部を含む。このようなトランスジェニックマウスでは、内因性免疫グロブリン遺伝子座は、通常は不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の概説については、Lonberg, N., Nat. Biotech. 23(2005)1117-1125を参照のこと。また、例えば、XENOMOUSETM技術を記載している米国特許代6,075,181号及び同第6,150,584号;HuMab(登録商標)技術を記載している米国特許第5,770,429号;K-M MOUSE(登録商標)技術を記載している、及びVelociMouse(登録商標)を記載している米国特許公開第2007/0061900号も参照のこと。このような動物により生成されるインタクトな抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることにより、更に改変されうる。
【0152】
ヒト抗体は、ハイブリドーマベースの方法によって作製することもできる。ヒトモノクローナル抗体の製造のためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒト異種骨髄腫細胞株が記述されている(例えば、Kozbor, D., J. Immunol. 133(1984)3001-3005;Brodeur, B.R. et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York(1987), pp. 51-63;及びBoerner, P. et al., J. Immunol. 147(1991)86-95)を参照のこと。)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されたヒト抗体は、Li, J. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103(2006)3557-3562にも記載されている。更なる方法は、例えば、米国特許第7189826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の産生を記載。)及びNi, J., Xiandai Mianyixue 26(2006)265-268(ヒト-ヒトハイブリドーマを記載。)に記載されるものを含む。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)も、Vollmers, H.P. and Brandlein, S., Histology and Histopathology 20(2005)927-937及びVollmers, H.P. and Brandlein, S., Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology 27(2005)185-191に記載されている。
【0153】
ヒト抗体はまた、ヒト由来のファージディスプレイライブラリーから選択されたFvクローン可変ドメイン配列を単離することによって生成することもできる。このような可変ドメイン配列は、次に所望のヒト定常ドメインと組み合わせてもよい。
【0154】
3.抗体変異体
ある実施態様において、本明細書で提供される二重特異性抗体のアミノ酸配列変異体が企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性を改善することが望まれる。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入することにより、又はペプチド合成により調製することができる。このような改変は、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/又は残基への挿入、及び/又は残基の置換を含む。最終コンストラクトが所望の特性、例えば、抗原結合を有していることを条件として、欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせを、最終構築物に到達させるために作製することができる。
【0155】
a)置換、挿入変異体、及び欠失変異体
ある実施態様では、一又は複数のアミノ酸置換を伴う抗体変異体が提供される。置換変異体の目的の部位は、HVR及びFRを含む。保存的置換は、「好ましい置換」と題して表1に示す。より実質的な変更は、「例示的置換」と題して表1に示し、アミノ酸側鎖のクラスを参照して下記にさらに説明する。アミノ酸置換は、目的の抗体に導入することができ、その産物は、所望の活性、例えば、抗原結合の保持/改善、免疫原性の低下、又はADCC又はCDCの改善についてスクリーニングされる。
表
【0156】
アミノ酸は共通の側鎖特性に従ってグループ化することができる。
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性の親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響する残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe
【0157】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの一クラスのメンバーを別のクラスのものと交換することを必要とする。
【0158】
置換変異体の一つの種類は、親抗体(例えばヒト化又はヒト抗体)の一又は複数の超可変領域残基を置換することを伴う。一般的には、結果として得られ、更なる研究のために選択された変異体は、親抗体と比較して、特定の生物学的特性に修飾(例えば、改善)(例えば、親和性の向上、免疫原性の低下)を有し、及び/又は親抗体の特定の生物学的特性を実質的に保持するであろう。例示的な置換型変異体は、親和性成熟抗体であり、例えば、本明細書に記載されるようなファージディスプレイに基づく親和性成熟技術を用いて、簡便に生成される。簡潔に言えば、一又は複数のHVR残基が変異し、変異体抗体は、ファージ上に表示され、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。
【0159】
変更(例えば、置換)は、例えば抗体の親和性を向上させるために、HVRで行うことができる。このような改変は、HVRの「ホットスポット」、すなわち体細胞成熟過程中に高頻度で変異を受けるコドンによってコードされた残基(例えばChowdhury, P.S., Methods Mol. Biol. 207(2008)179-196を参照。)、及び/又は抗原に接する残基内で行うことができ、得られる変異体VH又はVLの結合親和性が試験される。二次ライブラリーから構築し選択し直すことによる親和性成熟が、例えばHoogenboom, H.R. et al. in Methods in Molecular Biology 178(2002)1-37に記載されている。親和性成熟のいくつかの実施態様において、多様性が、種々の方法(例えば、変異性PCR、鎖シャッフリング、又はオリゴヌクレオチドを標的とした変異誘発)のいずれかにより、成熟のために選択された可変遺伝子中に導入される。次いで、二次ライブラリーが作製される。次いで、該ライブラリーは、所望の親和性を持つ任意の抗体変異体を同定するためにスクリーニングされる。多様性を導入するする別の方法は、複数のHVR残基(例えば、一度に4から6残基)がランダム化されたHVR指向のアプローチを伴う。抗原結合に関与するHVR残基は、例えばアラニンスキャニング変異誘発又はモデリングを用いて、特異的に同定することができる。特に、CDR-H3及びCDR-L3が多くの場合標的とされる。
【0160】
ある実施態様において、置換、挿入又は欠失は、これらの改変が抗原に結合する抗体の能力を実質的に低下させない限り、一又は複数のHVR内で生じうる。例えば、実質的に結合親和性を低下させない保存的変更(例えば本明細書において提供される保存的置換)をHVR内で行うことができる。このような変更は、例えば、HVR内の残基に接する抗原の外側で生じる。上記の変異体VH配列及びVL配列に関するある実施態様において、各HVRは変化しないか、又はわずか一つ、二つ若しくは三つのアミノ酸置換を含む。
【0161】
変異誘発のために標的とすることができる抗体の残基又は領域を同定するための有用な方法は、Cunningham, B.C. and Wells, J.A., Science 244(1989)1081-1085により記載されるように「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれる。この方法では、標的残基の残基又はグループ(例えば、arg、asp、his、lys及びgluなどの荷電残基)が同定され、抗原と抗体との相互作用が影響を受けるかどうかを決定するために、中性又は負に帯電したアミノ酸(例えば、アラニン又はポリアラニン)により置換される。さらなる置換が、最初の置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸の位置に導入されうる。代替的に又は追加的に、抗体と抗原の接点を同定するための抗原-抗体複合体の結晶構造。そのような接触残基及び隣接残基は、置換の候補として標的とされてもよいし、又は排除されてもよい。変異体は、所望の特性を含むかどうかを決定するためにスクリーニングされうる。
【0162】
アミノ酸配列挿入物は、1残基から100以上の残基を有するポリペプチドの長さに及ぶアミノ-及び/又はカルボキシル末端融合体、並びに単一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入物を含む。末端挿入物の例は、N末端メチオニル残基を有する抗体を含む。抗体分子の他の挿入変異体は、抗体の血清半減期を延長させる酵素(例えばADEPTのための)又はポリペプチドに対する抗体のN末端又はC末端への融合物を含む。
【0163】
b)グリコシル化変異体
ある実施態様において、本明細書で提供される二重特異性抗体は、抗体がグリコシル化される程度を上昇又は低下させるように改変される。グリコシル化部位の抗体への付加又は欠失は、一又は複数のグリコシル化部位が創出又は削除されるようにアミノ酸配列を改変することにより、簡便に達成することができる。
【0164】
抗体がFc領域を含む場合には、それに付着する糖質を変えることができる。哺乳動物細胞によって産生された天然抗体は、典型的には、Fc領域のCH2ドメインのAsn297にN結合により一般に付着した分岐状の二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright, A. and Morrison, S.L., TIBTECH 15(1997)26-32を参照のこと。オリゴ糖は、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、並びに二分岐糖鎖構造の「幹」のGlcNAcに結合したフコースを含む。いくつかの実施態様において、本明細書で報告される抗体におけるオリゴ糖の修飾は、特定の改善された特性を有する抗体変異体を作製するためになされうる。
【0165】
一実施態様において、抗体変異体は、Fc領域に(直接的に又は間接的に)付着するフコースを欠く糖鎖構造を有して提供される。例えば、そのような抗体のフコースの量は、1%から80%、1%から65%、5%から65%又は20%から40%でありうる。フコースの量は、例えば、国際公開第2008/077546号に記載されているように、MALDI-TOF質量分析法によって測定されるAsn297に付着しているすべての糖構造の合計(例えば、コンプレックス、ハイブリッド及び高マンノース構造)に対して、Asn297の糖鎖中のフコースの平均量を計算することによって決定される。Asn297とはFc領域内のおよそ297位(Fc領域残基のEU番号付け)に位置するアスパラギン残基を指すが、Asn297は、抗体のわずかな配列変異に起因して、297位のおよそ±3アミノ酸上流又は下流に、すなわち294位から300位に位置する場合もある。このようなフコシル化変異体は、改善されたADCC機能を有しうる。例えば、米国特許公開第2003/0157108号;同第2004/0093621号を参照のこと。「脱フコシル化」又は「フコース欠損」抗体変異体に関連する出版物の例としては、米国特許出願公開第2003/0157108号、国際公開第2000/61739号、同第2001/29246号、米国特許出願公開第2003/0115614号、同第2002/0164328号、同第2004/0093621号、同第2004/0132140号、同第2004/0110704号、同第2004/0110282号、同第2004/0109865号、国際公開第2003/085119号、国際公開第2003/084570号、同第2005/035586号、同第2005/035778号、同第2005/053742号、同第2002/031140号、Okazaki, A. et al., J. Mol. Biol. 336(2004)1239-1249;Yamane-Ohnuki, N. et al., Biotech. Bioeng. 87(2004)614-622が含まれる。脱フコシル化抗体を産生する能力を有する細胞株の例には、タンパク質フコシル化を欠損しているLec13 CHO細胞(Ripka, J. et al., Arch. Biochem. Biophys. 249(1986)533-545;米国特許公開第2003/0157108号;及び国際公開第2004/056312号、特に実施例11)、及びノックアウト細胞株、例えばアルファ-1、6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki, N. et al., Biotech. Bioeng. 87(2004)614-622;Kanda, Y. et al., Biotechnol. Bioeng. 94(2006)680-688;及び国際公開第2003/085107号を参照。)が含まれる。
【0166】
例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分されている、二分オリゴ糖を有する抗体変異体が更に提供される。そのような抗体変異体は、低下したフコシル化及び/又は改善されたADCC機能を有しうる。そのような抗体変異体の例は、例えば、国際公開第2003/011878号;米国特許第6,602,684号;及び同第2005/0123546号に記載されている。Fc領域に付着したオリゴ糖中に少なくとも一のガラクトース残基を持つ抗体変異体も提供される。そのような抗体変異体は、改善されたCDC機能を有しうる。そのような抗体変異体の例は、例えば、国際公開第1997/30087号;同第1998/58964号;及び同第1999/22764号に記載されている。
【0167】
c)Fc領域変異体
ある実施態様において、一又は複数のアミノ酸修飾を、本明細書で提供される二重特異性抗体のFc領域に導入し、それによりFc領域変異体を生成することができる。Fc領域変異体は、一又は複数のアミノ酸位置でアミノ酸修飾(例えば置換)を含むヒトFc領域配列(例えばヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のFc領域)を含みうる。
【0168】
所定の実施態様において、本明細書は、in vivoにおける抗体の半減期が重要であるが、ある種のエフェクター機能(例えば補体及びADCC)が不要または有害である用途のための望ましい候補とならしめる、すべてではないが一部のエフェクター機能を有する抗体変異体を意図している。in vitro及び/又はin vivo細胞傷害性アッセイを、CDC及び/又はADCCの活性の低下/枯渇を確認するために実施することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実施して、抗体が、FcγR結合を欠く(それ故おそらくADCC活性を欠く)がFcRn結合能力を保持することを確実にすることができる。ADCCを媒介するための初代細胞であるNK細胞はFc(RIIIのみを発現する一方、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFcRの発現は、Ravetch, J.V. and Kinet, J.P., Annu. Rev. Immunol. 9(1991)457-492の464ページの表3に要約されている。目的の分子のADCC活性を評価するためのin vitroアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom, I. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83(1986)7059-7063を参照)及びHellstrom, I. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82(1985)1499-1502);米国特許第5,821,337号(Bruggemann, M. et al., J. Exp. Med. 166(1987)1351-1361を参照)に説明される。或いは、非放射性アッセイ法を用いることができる(例えば、フローサイトメトリー用のACTITM非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology, Inc. Mountain View, CA);及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ(Promega, Madison, WI)。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞を含む。或いは又は加えて、対象とする分子のADCC活性は、例えばClynes, R. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95(1998)652-656に開示されているような動物モデルでin vivoの評価がされうる。また、C1q結合アッセイを、抗体が体C1qに結合できないこと、したがってCDC活性を欠くことを確認するために実施することができる。例えば、国際公開第2006/029879号及び国際公開第2005/100402号のC1q及びC3c結合ELISAを参照のこと。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを実施することができる(例えば、Gazzano-Santoro, H. et al., J. Immunol. Methods 202(1996)163-171;Cragg, M.S. et al., Blood 101(2003)1045-1052;及びCragg, M.S. and M.J. Glennie, Blood 103(2004)2738-2743を参照)。FcRn結合、及びin vivoでのクリアランス/半減期の測定も、当分野で既知の方法を用いて行うことができる(例えば、Petkova, S.B. et al., Int. Immunol. 18(2006:1759-1769を参照)。
【0169】
エフェクター機能が低下した抗体は、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、及び329のうちの一又は複数の置換を伴うものを含む(米国特許第6737056号)。そのようなFc変異体は、残基265及び297のアラニンへの置換を有するいわゆる「DANA」Fc変異体を含めた、アミノ酸位置265、269、270、297、及び327のうちの二以上において置換を有するFc変異体を含む(米国特許第7332581号)。
【0170】
FcRへの改善又は減少した結合を有する特定の抗体変異体が記載されている。(例えば、米国特許第6,737,056号;国際公開第2004/056312号、及びShields, R.L. et al., J. Biol. Chem. 276(2001)6591-6604を参照)。
【0171】
特定の実施態様では、抗体変異体は、ADCCを改善する一又は複数のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298位、333位,及び/又は334位(残基のEU番号付け)における置換を含むFc領域を含む。
【0172】
いくつかの実施態様では、例えば、米国特許第6194551号、国際公開第99/51642号、及びIdusogie, E.E. et al., J. Immunol. 164(2000)4178-4184に記載されるような、改変された(即ち改善又は低減された)C1q結合及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)を生じる、Fc領域における改変がなされる。
【0173】
半減期が延長され、胎児への母性IgGの移送を担う(Guyer, R.L. et al., J. Immunol. 117(1976)587-593、及びKim, J.K. et al., J. Immunol. 24(1994)2429-2434)、新生児Fc受容体(FcRn)への結合性が改善された抗体は、米国特許出願公開第2005/0014934号に記載されている。これらの抗体は、FcRnへのFc領域の結合を改善する一又は複数の置換を伴うFc領域を含む。このようなFc変異体は、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424又は434のうちの一又は複数における置換、例えば、Fc-領域残基434の置換(米国特許第7371826号)を含むものを含む。
【0174】
また、Fc領域変異体の他の例に関するDuncan, A.R. and Winter, G., Nature 322(1988)738-740;米国特許第号;同第5,624,821号;及び国際公開第94/29351号も参照のこと。
【0175】
d)システイン操作抗体変異体
ある実施態様において、抗体の一又は複数の残基がシステイン残基で置換されているシステイン操作抗体、例えば「チオMAb」を作製することが望ましい場合がある。特定の実施態様において、置換される残基が抗体の接近可能な部位で生じる。これらの残基をシステインで置換することによって、反応性チオール基が抗体の接近可能部位に配置され、抗体を他の部分、例えば薬物部分又はリンカー-薬剤部分にコンジュゲートさせ、本明細書中でさらに記載されるように免疫コンジュゲートを作るために使用することができる。特定の実施態様では、以下の残基のうちのいずれかの一又は複数がシステインで置換される:軽鎖のV205(Kabatの番号付け);重鎖のA118(EU番号付け);及び重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)。システイン改変抗体は、例えば、米国特許第7521541号に記載のように生成されうる。
【0176】
e)抗体誘導体
ある実施態様において、本明細書で提供される二重特異性抗体は、当技術分野で知られており、容易に入手可能なさらなる非タンパク質部分を含むようにさらに修飾することができる。抗体の誘導体化に適した部分は、限定されるものではないが、水溶性ポリマーを含む。水溶性ポリマーの非限定的な例は、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレン(prolypropylene)オキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール、並びにそれらの混合物を含む(ただし、これらに限定されない)。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のために製造上の利点を有しうる。ポリマーは、任意の分子量であってよく、分枝状でも非分枝状でもよい。抗体に付着するポリマーの数は変化してもよく、一を超えるポリマーが付着する場合、それらは同じか又は異なる分子であってよい。一般的に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/又はタイプは、改善されるべき抗体の特定の特性又は機能、その抗体誘導体が限定条件の下での治療に使用されるかどうかを含めた(ただし、これらに限定されない)考慮事項に基づいて決定することができる。
【0177】
他の実施態様において、放射線への曝露によって選択的に加熱されてもよい非タンパク質部分と抗体とのコンジュゲートが提示される。一実施態様では、非タンパク質部分はカーボンナノチューブである(Kam, N.W. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102(2005)11600-11605)。放射線は、任意の波長であってよく、通常の細胞に害を与えないが抗体-非タンパク質部分の近位細胞が死滅する温度に非タンパク質部分を加熱する波長を含むがこれに限定されない。
【0178】
B.組換え方法及び組成物
抗体は、例えば米国特許第4816567号に記載されているような組み換え方法及び組成物を用いて製造される。一実施態様では、本明細書に記載される二重特異性抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体抗体をコードする単離された核酸が提供される。さらなる実施態様において、そのような核酸を含む一又は複数のベクター(例えば発現ベクター)が提供される。さらなる実施態様では、そのような核酸を含む宿主細胞が提供される。一実施態様において、宿主細胞は、真核生物細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又はリンパ系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。一実施態様において、上述のように、抗体の発現に適した条件下で、抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を培養することと、任意選択的に宿主細胞(又は宿主細胞培地)から抗体を回収することとを含む、二重特異性抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体抗体を作製する方法が提供される。
【0179】
二重特異性抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体抗体の組み換え生産のために、例えば上述のような、抗体をコードする核酸が単離され、宿主細胞内での更なるクローニング及び/又は発現のために、一又は複数のベクターに挿入される。このような核酸は、容易に単離することができ、一般的な手順を用いて(例えば、抗体の重鎖と軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)配列決定することができる。
【0180】
抗体をコードするベクターのクローニング又は発現に適した宿主細胞は、本明細書に記載の原核生物細胞又は真核細胞を含む。例えば、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が必要ない場合には、抗体は、細菌内で生成されうる。細菌における抗体断片及びポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5,789,199号、同第5789199号及び同第5840523号を参照のこと(大腸菌中の抗体断片の発現を記載しているCharlton, K.A., In:Methods in Molecular Biology, Vol. 248, Lo, B.K.C.(ed.), Humana Press, Totowa, NJ(2003), pp. 245-254も参照)。発現の後、抗体を、可溶性画分において細菌の細胞ペーストから単離し、更に精製することができる。
【0181】
原核生物に加えて、グリコシル化経路が「ヒト化」されていて、部分的又は完全なヒトのグリコシル化パターンを有する抗体の生成をもたらす真菌株及び酵母株を含めた糸状菌又は酵母などの真核微生物も、抗体をコードするベクターのための適切なクローニング宿主又は発現宿主である。Gerngross, T.U., Nat. Biotech. 22(2004)1409-1414;及びLi, H. et al., Nat. Biotech. 24(2006)210-215を参照のこと。
【0182】
グリコシル化抗体の発現に適した宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)からも得られる。無脊椎動物細胞の例は、植物細胞及び昆虫細胞を含む。多数のバキュロウイルス株が同定されており、これらは特にヨトウガ細胞のトランスフェクションのために、昆虫細胞と併せて使用することができる。
【0183】
植物細胞培養物を宿主として利用することもできる。例えば、米国特許第6,040,498号、同第6040498号、同第6420548号、同第7125978号及び同第6417429号(トランスジェニック植物における抗体生成に関するPLANTIBODIESTM技術を記載。)を参照。
【0184】
脊椎動物細胞も宿主として用いることができる。例えば、懸濁液中で増殖するように適合されている哺乳動物細胞株は有用でありうる。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40(COS-7)で形質転換されたサル腎臓CV1株;ヒト胚腎臓株(例えば、Graham, F.L. et al., J. Gen Virol. 36(1977)59-74)に記載された293細胞又は293細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK);マウスのセルトリ細胞(例えば、Mather, J.P., Biol. Reprod. 23(1980)243-252)に記載されるTM4細胞);サル腎細胞(CV1);アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76);ヒト子宮頚癌細胞(HELA);イヌ腎臓細胞(MDCK);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝細胞(HepG2);マウス乳腺腫瘍細胞(MMT060562);例えばMather, J.P. et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383(1982)44-68に記載されるTRI細胞;MRC5細胞;及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株は、DHFR-CHO細胞を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub, G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77(1980)4216-4220);並びにY0、NS0及びSp2/0などの骨髄腫細胞株を含む。抗体生成に適した特定の哺乳動物宿主細胞株の概説については、例えば、Yazaki, P. and Wu, A.M., Methods in Molecular Biology, Vol. 248, Lo, B.K.C.(ed.), Humana Press, Totowa, NJ(2004), pp. 255-268を参照。
【0185】
C.診断及び検出のための方法並びに組成物
特定の実施態様では、本明細書において提供される二重特異性抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体抗体のいずれもが、生物学的試料中のCD20の存在を検出するために有用である。本明細書で使用する「検出(する)」という用語は、定量的又は定性的検出を包含する。特定の実施態様では、生物学的サンプルは細胞又は組織を含む。
【0186】
一実施態様では、診断又は検出方法に使用される二重特異性抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体抗体が提供される。さらなる態様では、生物学的試料中におけるCD20の存在を検出する方法が提供される。ある実施態様において、該方法は、二重特異性抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体抗体のCD20への結合を許容する条件下で生体試料を本明細書に記載の二重特異性抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体抗体と接触させること、及び二重特異性抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体抗体とCD20との間に複合体が形成されているか否かを検出することを含む。そのような方法は、in vitro法又はin vivo法である。
【0187】
ある実施態様において、標識された二重特異性抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体抗体が提供される。標識は、限定されないが、(例えば、蛍光標識、発色団標識、高電子密度標識、化学発光標識、放射性標識などの)直接検出される標識又は部分、並びに、例えば、酵素反応又は分子間相互作用を介して間接的に検出される酵素又はリガンドのような部分が含まれる。このような標識の例には、限定されないが、ラジオアイソトープ32P、14C、125I、3H、及び131I、フルオロフォア、例えば希土類キレート又はフルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシェフェラーゼ、例えばホタルルシェフェラーゼ及び細菌ルシェフェラーゼ(米国特許第4737456号)、ルシェフェリン、2,3-ジヒドロフタルジネジオン、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリフォスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖オキシダーゼ、例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘテロサイクリックオキシダーゼ、例えばウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼを、色素前駆体、例えばHRP、ラクトペルオキシダーゼ、又はマイクロペルオキシダーゼ、ビオチン/アビジン、スピンラベル、バクテリオファージラベル、安定な遊離ラジカルなどを酸化するために過酸化水素を利用する酵素とカップリングさせたもの、などが含まれる。
【0188】
D.イムノコンジュゲート
本発明はまた、本明細書で報告される、一又は複数の細胞傷害性剤、例えば化学療法剤若しくは薬物、増殖阻害剤、毒素(例えばタンパク質毒素、細菌、真菌、植物若しくは動物起源の酵素的に活性な毒素又はその断片)又は放射性同位体にコンジュゲートした二重特異性抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体抗体を含むイムノコンジュゲートを提供する。
【0189】
一実施態様において、イムノコンジュゲートは、二重特異性抗体が、メイタンシノイド(米国特許第5,208,020号、同第5,416,064号及びEP特許第0425235号を参照。アウリスタチン、例えば、モノメチルアウリスタチン薬物部分DE及びDF(MMAE及びMMAF)(米国特許第5,635,483号、同第5,780,588号及び同第7,498,298号を参照。);ドラスタチン;カリケアマイシン又はその誘導体(米国特許第5,712,374号、同第5,714,586号、同第5,739,116号、同第5,767,285号、同第5,770,701号、同第5,770,710号、同第5,773,001号及び同第5,877,296号;Hinman, L.M. et al., Cancer Res. 53(1993)3336-3342;及びLode, H.N. et al., Cancer Res. 58(1998)2925-2928を参照。);アントラサイクリン、例えば、ダウノマイシン又はドキソルビシン(Kratz, F. et al., Curr. Med. Chem. 13(2006)477-523; Jeffrey, S.C. et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 16(2006)358-362;Torgov, M.Y. et al., Bioconjug. Chem. 16(2005)717-721;Nagy, A. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97(2000)829-834;Dubowchik, G.M. et al., Bioorg. & Med. Chem. Letters 12(2002)1529-1532;King, H.D. et al., J. Med. Chem. 45(20029 4336-4343;及び米国特許第6,630,579号を参照。);メトトレキサート;ビンデシン;タキサン、例えばドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル、テセタキセル、及びオルタタキセル;トリコテセン;並びにCC1065を含むがこれらに限定されない一又は複数の薬物にコンジュゲートしている抗体-薬物コンジュゲート(ADC)である。
【0190】
他の実施態様において、イムノコンジュゲートは、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、(緑膿菌からの)外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、シナアブラギリタンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、ヨウシュヤマゴボウタンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、ニガウリ阻害剤、クルシン、クロチン、サポンソウ阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(エノマイシン)、及びトリコテセン(tricothecenes)を含む(ただし、これらに限定されない)酵素的に活性な毒素又はその断片にコンジュゲートしている、本明細書に記載の二重特異性抗体を含む。例えば、1993年10月28日公開の国際公開第93/21232号を参照のこと。
【0191】
他の実施態様では、イムノコンジュゲートは、放射性原子にコンジュゲートして放射性コンジュゲートを形成する、本明細書に記載の二重特異性抗体を含む。種々の放射性同位体が、放射性コンジュゲートの製造のために入手可能である。例としては、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位体を含む。放射性コンジュゲートは、検出用に使用される場合、シンチグラフ検査のための放射性原子、例えばTC99m若しくはI123、又は核磁気共鳴(NMR)画像法(磁気共鳴画像法、MRIとしても知られる)のためのスピン標識、例えば、再びヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン又は鉄を含みうる。
【0192】
二重特異性抗体と細胞傷害性剤とのコンジュゲートは、種々の二官能性カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダート HCl)、活性エステル(例えばジスクシンイミジルスベレート)、アルデヒド(例えばグルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えばビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えばビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えばトルエン 2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。例えば、リシンイムノトキシンは、Vitetta, E.S. et al., Science 238(1987)1098-1104に記載されているようにして調製することができる。炭素-14-標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体へのコンジュゲーションのためのキレート剤の例である。国際公開第94/11026を参照のこと。リンカーは、細胞内で細胞傷害性薬物の放出を容易にする「切断可能なリンカー」であってもよい。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカー(Chari, R.V. et al., Cancer Res. 52(1992)127-131;米国特許第5,208,020号)が使用されうる。
【0193】
本明細書に記載のイムノコンジュゲート又はADCは、限定されるものではないが、市販(例えばPierce Biotechnology, Inc., Rockford, IL., U.S.Aより)のBMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、スルホ-SMPB、及びSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)等の架橋試薬を用いて調製したものが特に考えらえる。
【0194】
本明細書で報告される二重特異性抗体のコンジュゲート及び一又は複数の小分子毒素、例えばカリケアマイシン、メイタンシン(米国特許第5,208,020号)、トリコセテン、及びCC1065もまた、本明細書で考慮されている。本発明の一実施態様において、二重特異性抗体は、一又は複数のメイタンシン分子(例えば、アンタゴニスト分子あたり約1から約10のメイタンシン分子)にコンジュゲートしている。メイタンシンは、例えば、May-SH3に還元され、修飾されたアンタゴニストと反応しうるMay-SS-Meに変換され(Chari et al. Cancer Research 52:127-131(1992))、メンタンシノイド-抗体コンジュゲートを生成する。
【0195】
あるいは、本明細書で報告される二重特異性抗体は、一又は複数のカリケアマイシン分子にコンジュゲートしている。抗生物質のカリケアマイシンファミリーはピコモル以下の濃度で二本鎖DNA破壊を生じさせる能力がある。使用されうるカリケアマイシンの構造類似体は、限定されないが、γ1 I、α2 I、α3 I、N-アセチル-γ1 I、PSAG及びθI 1(Hinman et al. Cancer Research 53:3336-3342(1993)及びLode et al. Cancer Research 58:2925-2928(1998))を含む。
【0196】
本発明は、核酸分解活性を有する化合物(例えば、リボヌクレアーゼ、又はデオキシリボヌクレアーゼ(すなわちDNase)のようなDNAエンドヌクレアーゼ)にコンジュゲートしている本明細書で報告される二重特異性抗体を更に考察する。
【0197】
別法として、本明細書で報告される二重特異性抗体及び細胞傷害性剤を含む融合タンパク質が、例えば組み換え技術又はペプチド合成により作製されうる。
【0198】
E.薬学的製剤
本明細書で報告される抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体抗体又はイムノコンジュゲートの薬学的製剤は、所望の度合いの純度を有するこのような抗体を、一又は複数の任意選択的な薬学的に許容される担体と混合することによって(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A.(ed.)(1980))、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態に調製される。通常、薬学的に許容される担体は、用いられる用量及び濃度で受容者に対して非毒性であり、限定されるものではないが、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸等のバッファー;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(例えばオクタデシルジメチオルベンジルアンモニウムクロリド、ヘキサメトニウムクロリド、ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド、フェノール、ブチル又はベンジルアルコール、メチル又はプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリジン等のアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストリンを含む単糖類、二糖類、及びその他の糖質;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール等の糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体);及び/又はポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含む。本明細書における例示的な薬学的に許容される担体は、可溶性の中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)などの介在性薬物分散剤、例えばrhuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International, Inc.)などのヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質をさらに含む。特定の典型的なsHASEGP及び使用法は、rhuPH20を含み、米国特許出願公開第2005/0260186号及び同第2006/0104968に記載されている。一態様では、sHASEGPは、コンドロイチナーゼなどの一又は複数の追加的グルコサミノグリカナーゼと組み合わせられる。
【0199】
例示的な凍結乾燥抗体製剤は、米国特許第6267958号に記載されている。水性抗体製剤は、米国特許第6171586号及び国際公開第2006/044908号に記載されているものを含み、後者の製剤はヒスチジン-酢酸緩衝液を含む。例示的な抗CD20抗体製剤は、国際公開第98/56418号に記載されており、参照により本明細書に明示的に援用される。
【0200】
皮下投与に適合している凍結乾燥製剤は、国際公開第97/04801号に記載されている。そのような凍結乾燥製剤は、適切な希釈剤で再構成されて高タンパク濃度にされてもよく、再構成された製剤は、本明細書で治療される哺乳動物に皮下投与されてもよい。
【0201】
本明細書中の製剤はまた、治療される特定の適応症に必要な一を超える活性成分、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的な活性を有するものを含有してもよい。そのような活性成分は、適切には、意図する目的に有効な量の組み合わせで存在する。
【0202】
活性成分は、例えばコアセルベーション技術又は界面重合法によって調製されたマイクロカプセル、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロースマイクロカプセル又はゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート(methylmethacylate))マイクロカプセルに、コロイド薬物送達システム(例えばリポソーム、アルブミンミクロスフィア、ミクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)に、又はマクロエマルジョンに封入することができる。これらの技術は、RemingtonのPharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol, A.(ed.)(1980)に開示されている。
【0203】
徐放性製剤が調製されてもよい。徐放性調製物の好適な例は、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスを含み、このマトリックスは成形品、例えばフィルム又はマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリックスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えばポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタメートとのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOTTM(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注射用ミクロスフェア)のような分解性乳酸-グリコール酸コポリマー及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸を含む。
【0204】
in vivo投与に使用される製剤は、一般的に滅菌されていなければならない。滅菌状態は、例えば、滅菌濾過膜を通して濾過することにより、容易に達成される。一実施態様では、製剤は等張である。
【0205】
F.治療方法及び組成物
本明細書で提供される二重特異性抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体抗体のいずれかが、治療方法に使用されうる。
【0206】
一態様では、医薬としての使用のための二重特異性抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体抗体が提供される。更なる態様では、B細胞増殖性疾患の予防及び/又は治療における使用のための二重特異性抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体抗体が提供される。一実施態様では、治療方法における使用のための二重特異性抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体抗体が提供される。ある実施態様では、B細胞増殖性疾患を有する個体の治療方法であって、二重特異性抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体抗体の有効量を個体に投与することを含む方法における使用のための、二重特異性抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体抗体が本明細書で提供される。このような一実施態様では、方法は更に、個体に対し、後述するような少なくとも一の追加的な治療剤の有効量を投与することを含む。さらなる実施態様において、本明細書では、CD20を発現する脳隔離B細胞の枯渇における使用のための二重特異性抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体抗体が提供される。ある実施態様において、本明細書では、CD20を発現する脳隔離B細胞を枯渇させるために、二重特異性抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体抗体の有効量を個体に投与することを含む、個体においてCD20を発現する隔離B細胞を枯渇させる方法における使用のための二重特異性抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体抗体が提供される。上記のいずれの実施態様に記載の「個体」も、好ましくはヒトである。
【0207】
更なる実施態様において、本明細書では、医薬の製造又は調製における二重特異性抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体抗体の使用が提供される。一実施態様では、医薬は、B細胞増殖性疾患の治療を目的とする。更なる実施態様において、本医薬は、B細胞増殖性に関連する疾患を有する個体に対し、医薬の有効量を投与することを含む、B細胞増殖型疾患を治療する方法で使用するためのものである。このような一実施態様では、方法は更に、個体に対し、後述するような少なくとも一の追加的な治療剤の有効量を投与することを含む。更なる実施態様では、CD20を発現する脳隔離B細胞の枯渇を目的とする。更なる実施態様において、該医薬は、CD20を発現する脳隔離B細胞を枯渇させるために、該医薬の有効量を個体に投与することを含む、個体においてCD20を発現する脳隔離B細胞を枯渇させる方法における使用を目的とするものである。上記のいずれの実施態様に記載の「個体」も、ヒトであってよい。
【0208】
更なる態様において、本発明は、B細胞増殖性疾患を治療する方法を提供する。一実施態様では、方法は、このようなB細胞増殖性疾患を有する個体に対し、有効量の二重特異性抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体抗体を投与することを含む。このような一実施態様では、方法は更に、個体に対し、後述するような少なくとも一の追加的な治療剤の有効量を投与することを含む。上記のいずれの実施態様に記載の「個体」も、ヒトであってよい。
【0209】
更なる態様において、本明細書では、個体においてCD20を発現する循環B細胞を枯渇させるための方法が提供される。一実施態様では、該方法は、CD20を発現する循環B細胞を枯渇させるために、個体に対し、有効量の二重特異性抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体抗体を投与することを含む。一実施態様において、「個体」はヒトである。
【0210】
更なる実施態様では、本発明では、例えば、上記治療方法のいずれかにおける使用のための、本明細書で提供される二重特異性抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体抗体のいずれかを含む薬学的製剤を提供する。一実施態様では、薬学的製剤は、本明細書に提供される二重特異性抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体抗体のいずれかと薬学的に許容される担体を含む。別の実施態様では、薬学的製剤は、本明細書に提供される二重特異性抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体抗体のいずれかと、例えば後述のような少なくとも一の追加的な治療剤を含む。
【0211】
本明細書で報告される抗体は、単独で又は他の薬剤と組み合わせて治療において使用することができる。例えば、本明細書で報告される抗体は、少なくとも一のさらなる治療剤と共投与されうる。ある実施態様において、追加的な治療剤は、治療に利用される本明細書で報告される二重特異性抗体と同じ又は異なるB細胞増殖性疾患を治療するのに有効な治療剤である。
【0212】
このような上記の併用療法は、併用投与(二以上の治療剤が、同一又は別々の製剤に含まれている)、及び本明細書で報告される抗体の投与が、さらなる治療剤(複数可)の投与の前、投与と同時、及び/又は投与の後に起こりうる個別投与を包含する。一実施態様において、二重特異性抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体抗体の投与及び追加的な治療剤の投与は、互いに、約1か月以内又は約1、2、若しくは3週間以内、又は1、2、3、4、5、若しくは6日間以内に生じる。本明細書で報告される抗体はまた、限定されないが、放射線療法、行動療法又は当該技術分野で知られる、治療又は予防される神経障害に適したその他の療法のような他の介入療法と組み合わせても使用することができる。
【0213】
本明細書で報告される抗体(及び任意のさらなる治療剤)は、非経口、肺内、及び鼻腔内を含めた任意の適切な手段により投与することができ、また、局所治療が望まれるのであれば、病巣内投与であってもよい。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内又は皮下投与が含まれる。投薬は、その投与が短期間か又は長期であるかどうかに部分的に依存して、任意の適切な経路、例えば、静脈内又は皮下注射などの注射により行うことができる。限定されないが、様々な時間点にわたる、単一又は複数回投与、ボーラス投与、パルス注入を含む様々な投薬スケジュールが本明細書において考慮される。
【0214】
加えて、二重特異性抗体は、例えば、二重特異性抗体の用量を減少させながら、パルス注入により適切に投与されうる。投薬は、その投与が短期間か又は長期であるかどうかに部分的に依存して、注射、静脈内又は皮下注射より行うことができる。
【0215】
本明細書で報告される抗体は、医療実施基準に一致した様式で製剤化され、投薬され、投与される。この文脈において考慮すべき因子としては、治療される特定の障害、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール及び医師にとって既知の他の因子が挙げられる。本発明の抗体は、必要ではないが任意で、問題の疾患の予防又は治療のために現在使用されている一又は複数の薬剤とともに製剤化される。そのような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する抗体の量、疾患又は治療の種類、及び上記以外の因子によって決まる。そのような他の薬剤は、一般的には本明細書に記載されているのと同じ用量及び投与経路で、又は本明細書に記載の用量の約1から99%で、又は経験的に/臨床的に妥当であると決定された任意の用量及び任意の経路で使用される。
【0216】
融合コンストラクト又は化合物をBBBに輸送する脂質ベースの方法は、限定されないが、BBBの血管内皮上の受容体を結合する一価の結合実体に結合するリポソーム中の融合コンストラクト又は化合物をカプセル化すること(例えば米国特許公開第2002/0025313を参照。)と、密度リポプロテイン粒子(例えば米国特許公開第2004/0204354号を参照。)又はアポリポプロテインE(例えば米国特許公開第2004/0131692を参照。)中の一価の結合実体をコーティングすることとを含む。
【0217】
疾患の予防又は治療に適した本明細書で報告される抗体の用量は、(単独で又は一若しくは複数のさらなる治療剤との併用で用いられる場合)治療される疾患の種類、抗体の種類、疾患の重症度及び経過、抗体の投与が予防的目的か治療的目的か、治療歴、患者の病歴及び抗体に対する応答、並びに主治医の裁量に依存するであろう。本発明の抗体は、単回又は一連の治療にわたって患者へ適切に投与される。疾患の種類及び重症度に応じて、例えば一回以上の別個の投与によるか、連続注入によるかに関わらず、約1μg/kg~15mg/kg(例えば0.5mg/kg~10mg/kg)の抗体又はイムノコンジュゲートが患者への投与のための初期候補用量となりうる。一つの典型的な1日用量は、上記の因子に応じて約1μg/kg~100mg/kg又はそれ以上の範囲であろう。数日以上にわたる反復投与に関しては、状態に応じて、治療は一般に疾患症状の望まれる抑制が起こるまで持続されるであろう。抗体の一の例示的投薬量は、約0.05mg/kg~約10mg/kgであろう。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg又は10mg/kgの一又は複数の用量(又はこれらのいずれかの組み合わせ)を患者に投与してよい。このような用量は断続的に、例えば毎週又は三週毎(例えば患者が約2から約20、例えば抗体の約6用量を受けるように)投与してよい。初期の高負荷用量の後、一以上の低用量を投与してよい。しかしながら、他の用量用法も有用でありうる。この治療法の進行は、従来の技術及びアッセイにより容易にモニタリングされる。
【0218】
上記の製剤又は治療方法はいずれも、二重特異性抗ヒトCD20/ヒトトランスフェリン受容体抗体の代わりに又はそれに加えて本明細書で報告されるイムノコンジュゲートを用い、行うことができる。
【0219】
B細胞表現抗原に結合する本明細書で報告される二重特異性抗体を含む組成物は、医学行動規範に一致した方法で製剤化され、投薬され、投与される。この文脈において考慮すべき因子としては、治療される特定の疾患又は障害、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、疾患又は障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール及び医師にとって既知の他の因子が挙げられる。投与されるアンタゴニストの治療的有効量は、そのような考慮によって制御されるであろう。
【0220】
本明細書で報告される二重特異性抗体は、B細胞増殖性疾患の治療の他に、自己免疫疾患の治療に使用することができる。自己免疫疾患又は障害の例は、限定されないが、免疫媒介血小板減少症、例えば、急性突発性血小板減少性紫斑病及び慢性突発性血小板減少性紫斑病、皮膚筋炎、シデナム舞踏病、ループス腎炎、リウマチ熱、多腺性症候群、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、連鎖球菌感染後腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、アジソン病、多形性紅斑、結節性多発動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓血管炎、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺機能亢進症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡、ウェゲナー肉芽腫症、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄癆、多発筋痛、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎及び線維性肺胞炎、乾癬及び皮膚炎(例えばアトピー性皮膚炎)を含む炎症性皮膚疾患のような炎症反応疾患;全身性強皮症及び硬化症;炎症性腸疾患(例えばクローン病及び潰瘍性大腸炎)に関連する反応;呼吸窮迫症候群(成人性呼吸促迫症候群;ARDSを含む);皮膚炎;髄膜炎;脳炎;ブドウ膜炎;大腸炎;糸球体腎炎;湿疹及び喘息のようなアレルギー状態並びにT細胞の浸潤及び慢性炎症反応を含むその他の状態;アテローム性動脈硬化症;白血球接着不全症;関節リウマチ;全身性エリテマトーデス(SLE);糖尿病(例えばI型糖尿病又はインスリン依存性糖尿病);多発性硬化症;レイノー症候群;自己免疫性甲状腺炎;アレルギー性脳脊髄炎;シェーグレン症候群;若年発症糖尿病;結核、サルコイドーシス、多発性筋炎、肉芽腫症及び脈管炎で典型的にみられるサイトカイン及びT-リンパ球により媒介される急性及び遅発性過敏症に関連する免疫応答;悪性貧血(アジソン病);白血球漏出を含む疾患;中枢神経系(中枢神経系)炎症性疾患;多臓器損傷症候群;溶血性貧血(クリオグロブリン血症又はクームス陽性貧血を含むがこれらに限定されない。);重症筋無力症;抗原抗体複合体媒介性疾患;抗糸球体基底膜疾患;抗リン脂質症候群;アレルギー性神経炎;グレーブス病;ランバート・イートン筋無力症症候群;水疱性類天疱瘡;天疱瘡;自己免疫性多腺性内分泌障害;ライター疾患;スティフマン症候群;ベーチェット病;巨細胞動脈炎;免疫複合体性腎炎;IgA腎症;IgM多発性神経障害;免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)又は自己免疫性血小板減少症を含む。
【0221】
しかしながら、上記のように、これらの示唆された量の二重特異性抗体は、多大な治療の裁量を受ける。適切な用量を選択すること及びスケジューリングの主要な要因は、上記のように、得られる結果である。例えば、進行中及び急性の疾患の治療には、比較的高用量が必要とされうる。疾患又は障害に応じて、最も有効な結果を得るために、アンタゴニストは、可能な限り、疾患又は障害の兆候、診断、出現、又は発生の近い時点で、又は疾患又は障害の緩和中に、投与される。
【0222】
本明細書で報告される単離された二重特異性抗体を患者へ投与することとは別に、本出願は、遺伝子治療による二重特異性抗体の投与も検討する。二重特異性抗体をコードする核酸のそのような投与は、「治療的有効量の二重特異性抗体を投与する」という表現により包含される。細胞内抗体を生成するための遺伝子治療の使用に関しては、例えば国際公開第96/07321号を参照のこと。
【0223】
核酸(任意選択的に、ベクターに含有される。)を患者の細胞へ入れるための二つの主な手法、すなわち、in vivo及びex vivoが存在する。In vivo送達に関して、核酸は、患者に、通常、二重特異性抗体が必要である部位に直接注射される。Ex vivo治療に関して、患者の細胞は除去され、核酸がそれらの単離された細胞へ導入され、修飾された細胞が患者へ直接又は、例えば患者へ移植されている多孔質膜内でカプセル化されて投与される(例えば、米国特許第4,892,538号及び同第5,283,187号を参照)。核酸を生細胞へ導入するための利用可能な様々な技術が存在する。技術は、核酸が培養された細胞へin vitroで、又は目的の宿主の細胞中in vivoでin vivo輸送されかに応じて、さまざまである。核酸を哺乳動物の細胞にin vitroで輸送するのに適した技術は、リポソームの使用、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE-デキストラン、リン酸カルシウム沈殿法などを含む。遺伝子のex vivo送達に一般に使用されるベクターは、レトロウイルスである。
【0224】
現在好ましいin vivo核酸輸送技術は、ウイルスベクター(例えばアデノウイルス、単純ヘルペスIウイルス、又はアデノ関連ウイルス)及び脂質ベースの系(遺伝子の脂質媒介輸送に有用な脂質は、例えば、DOTMA、DOPE及びDC-Cholである。)を伴うトランスフェクションを含む。いくつかの状況では、核酸源に、細胞表面膜タンパク質又は標的細胞に特異的な抗体などの標的細胞、標的細胞上の受容体に対するリガンドなどを標的とする薬剤を提供することが望ましい。リポソームが使用される場合、エンドサイトーシスと関連する細胞表面膜タンパク質に結合するタンパク質は、例えば、特定の細胞タイプにトロピックなカプシドタンパク質又はその断片、循環で内部移行を受けるタンパク質に対する抗体、及び細胞内局在を標的とし、細胞内半減期を増大するタンパク質を、標的化及び/又は取り込みを促進するために使用されうる。受容体媒介エンドサイトーシスの技術は、例えば、Wu et al., J. Biol. Chem. 262:4429-4432(1987);及びWagner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:3410-3414(1990)に記載されている。現在知られている遺伝子マーキング及び遺伝子療法プロトコールのレビューについては、Anderson et al., Science 256:808-813(1992)を参照のこと。また、国際公開第93/25673号及びその引例も参照のこと。
【0225】
追加の治療剤を抗体にコンジュゲートさえる一般的な技術はよく知られている(例えば、Arnon et al., “Monoclonal Antibodies for Immunotargeting of Drugs in Cancer Therapy”, in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Reisfeld et al.(eds.), pp. 243-56(Alan R. Liss, Inc. 1985);Hellstrom et al., “Antibodies For Drug Delivery”, in Controlled Drug Delivery(2nd Ed.), Robinson et al.(eds.), pp.623-53(Marcel Dekker, Inc. 1987);Thorpe, “Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review”, in Monoclonal Antibodies ’84:Biological And Clinical Applications, Pinchera et al.(eds.), pp. 475-506(1985);及びThorpe et al., “The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates”, Immunol. Rev., 62(1982)119-58を参照)。
【0226】
III.製造品
本明細書で報告される別の態様では、上述した疾患の治療、予防、及び/又は診断に有用な材料を含有する製造品が提供される。製造品は、容器と容器上の又は容器に付随するラベル又は添付文書を含む。好適な容器は、例としてボトル、バイアル、シリンジ、IV輸液バッグなどを含む。容器はガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成されうる。容器は、疾患の治療、予防、及び/又は診断に効果的である、単独の又は別の組成物と併用の組成物を収容し、滅菌のアクセスポートを有しうる(例えば、容器は皮下注射針で貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであってもよい)。該組成物中の少なくとも一の活性剤は、本明細書で報告される抗体である。ラベル又は添付文書は、該組成物が特定の疾患の治療のために使用されることを示す。さらに、製造品は、(a)本明細書で報告される抗体を含む組成物を中に収容する第一の容器、及び(b)さらなる細胞傷害性剤又はその他の治療剤含む組成物を中に収容する第二の容器を含んでもよい。本実施態様における製造品は、組成物が特定の病態を治療するために使用され得ることを示す添付文書を更に含んでもよい。或いは、又は加えて、製造品は、薬学的に許容可能な緩衝液、例えば注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液及びデキストロース溶液を含む第二(又は第三)の容器を更に含んでもよい。製造品は、他のバッファー、希釈剤、フィルタ、針、及びシリンジを含めた、商業的及び使用者の観点から望ましいその他の材料をさらに含んでもよい。
【0227】
上記のいずれの製造品も、本明細書で報告される二重特異性抗体の代わりに又はそれに加えて、本明細書で報告されるイムノコンジュゲートを含んでもよい。
【実施例0228】
以下は、本発明の方法及び組成物の実施例である。上に提供された一般的な説明を前提として、他の様々な実施態様が実施されうることが理解される。
【0229】
材料及び一般的な方法
ヒト免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖のヌクレオチド配列に関する一般情報は以下に与えられている:Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD(1991)。抗体鎖のアミノ酸は、Kabat(Kabat, E.A., et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD(1991))に従い、番号付けられ、参照される。
【0230】
組換えDNA技術
標準的な方法を使用して、Sambrook, J. et al., Molecular Cloning:A laboratory manual;Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989に記載されているようにDNAを操作した。分子生物学的試薬を、製造元の指示に従って使用した。
【0231】
遺伝子合成
所望の遺伝子セグメントを、化学合成により作製したオリゴヌクレオチドから調製した。特異的な制限エンドヌクレアーゼ切断部位に隣接する長い遺伝子セグメントを、PCR増幅を含むオリゴヌクレオチドのアニーリング及びライゲーションによって組み立て、その後示された制限部位を介してクローニングした。サブクローニングされた遺伝子断片のDNA配列を、DNA配列決定によって確認した。遺伝子合成断片は、Geneart(Regensburg, Germany)の所定の仕様に従って整理した。
【0232】
DNA配列決定
DNA配列は、MediGenomix GmbH(Martinsried, Germany)又はSequiServe GmbH(Vaterstetten, Germany)で実施された二本鎖配列決定により決定した。
【0233】
DNA及びタンパク質配列分析並びに配列データ管理
GCG(Genetics Computer Group, Madison, Wisconsin)のソフトウェアパッケージバージョン10.2及びInfomax’s Vector NT1 Advanceスイートバージョン8.0を、配列作成、マッピング、分析、注釈及び説明に使用した。
【0234】
発現ベクター
記載される二重特異性抗体の発現に関して、CMVイントロンAプロモーターの有無を問わないcDNA機構又はCMVプロモーターを含むゲノム機構のいずれかに基づく一過性発現に対する発現プラスミド(例えばHEK293細胞中)が適用されうる。
【0235】
抗体発現カセットの他に、ベクターは
- 大腸菌においてこのプラスミドの複製を可能にする複製開始点、及び
- 大腸菌にアンピシリン耐性を付与するs-ラクタマーゼ遺伝子
を含有する。
【0236】
抗体遺伝子の転写単位は、以下の要素から成る:
- 5’末端の固有の制限部位
- ヒトサイトメガロウイルスからの前早期エンハンサー及びプロモーター
- cDNA機構の場合のイントロンA配列
- ヒト抗体遺伝子に由来する5’-非翻訳領域
- 免疫グロブリン重鎖シグナル配列
- cDNAとして、又はエクソン-イントロン機構を有する核酸をコードするそれぞれの抗体鎖
- ポリアデニル化シグナル配列を有する3’非翻訳領域
- 終了配列、及び
- 3’末端の固有の制限部位。
【0237】
抗体鎖をコードする融合遺伝子を、PCR及び/又は遺伝子合成により生成し、例えば、固有の制限部位をそれぞれのベクターに使用して、一致した核酸セグメントの結合による既知の組換え法及び技術によって組み立てる。サブクローン核酸配を、DNA配列決定により確定する。一過性のトランスフェクションに関して、形質転換された大腸菌培養物からのプラスミド調製物により、大量のプラスミドを調製する(Nucleobond AX, Macherey-Nagel)。
【0238】
全てのコンストラクトノブ・イントゥー・ホールヘテロ二量体化技術は、第一のCH3ドメインにおける典型的なノブ(T366W)置換及び第二のCH3ドメインにおける対応するホール置換(T366S、L368A及びY407V)(並びに二の追加の導入システイン残基S354C/Y349’C)(上で示されるそれぞれの対応する重鎖(HC)配列に含有される)と共に使用した。
【0239】
細胞培養技術
Current Protocols in Cell Biology(2000), Bonifacino, J.S., Dasso, M., Harford, J.B., Lippincott-Schwartz, J. and Yamada, K.M.(eds.), John Wiley & Sons, Inc.に記載されるような標準的な細胞培養技術が使用される。
【0240】
HEK293系における一過性のトランスフェクション
二重特異性抗体を一過性発現によって産生する。したがって、製造業者の指示に従いHEK293系(Invitrogen)を使用して、それぞれのプラスミドを有するトランスフェクションを行う。簡潔には、無血清FreeStyleTM293発現培地(Invitrogen)における振盪フラスコ中又は撹拌された培養槽中のいずれかで懸濁状態で成長するHEK293細胞(Invitrogen)を、それぞれの発現プラスミド及び293fectinTM又はフェクチン(Invitrogen)のミックスを用いてトランスフェクトする。2Lの振盪フラスコ(Corning)に関して、HEK293細胞を、600mL中1.0*106細胞/mLの密度で播種し、120rpm、8%CO2でインキュベートする。翌日、A)600μgの総プラスミドDNA(1μg/mL)を含む20mLのOpti-MEM媒体(Invitrogen)と、B)1.2mLの293フェクチン又はフェクチン(2μl/mL)が補充されている20mlのOpti-MEM媒体との約42mLの混合物で、約1.5*106細胞/mLの細胞密度で細胞をトランスフェクトする。グルコース消費に従って、発酵中にグルコース溶液を添加する。5~10日後、分泌された抗体を含有する上清を採取し、抗体を上清から直接精製するか、又は上清を冷凍して、保存する。
【0241】
タンパク質定量
精製された抗体及び誘導体のタンパク質濃度を、Pace, et al., Protein Science 4(1995)2411-1423に従って、アミノ酸配列に基づいて計算されたモル吸光係数を用いて、280nmにおける光学濃度(OD)を決定することにより決定した。
【0242】
上清中の抗体濃度決定
細胞培養上清中の抗体及び誘導体の濃度をプロテインAアガロースビーズ(Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)を用いた免疫沈降法により推定した。したがって、60μLのプロテインAアガロースビーズを、TBS-NP40(150mMのNaCl及び1%Nonidet-P40が補充された50mMのTrisバッファー、pH7.5)中で3回洗浄した。続いて、1~15mLの細胞培養上清を、事前平衡化したTBS-NP40中のプロテインAアガロースビーズに適用した。室温で1時間インキュベートした後、ビーズを、Ultrafree-MC-フィルターカラム(Amicon)上で、0.5mLのTBS-NP40で一回、0.5mLの2倍のリン酸緩衝生理食塩水(2xPBS、Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)で二回、そして、0.5mLの100mMのNa-クエン酸バッファー(pH5.0)で簡潔に四回洗浄した。結合した抗体を、35μlのNuPAGE(登録商標)LDS試料バッファー(Invitrogen)を添加することにより溶出した。試料の半分をNuPAGE(登録商標)試料還元剤と組み合わせ、残りの半分を未還元のままにし、70℃で10分間加熱した。その結果として、5~30μlを4~12%のNuPAGE(登録商標)ビス-TrisSDS-PAGEゲル(Invitrogen)(非還元SDS-PAGEについてはMOPSバッファーを含み、還元SDS-PAGEについては、NuPAGE(登録商標)抗酸化剤ランニングバッファー添加剤(Invitrogen)を含むMESバッファーを含む。)に添加し、Coomassie Blueで染色した。
【0243】
細胞培養上清中の抗体の濃度を、アフィニティーHPLCクロマトグラフィーにより、定量的に測定した。簡潔には、プロテインAに結合する抗体を含有する細胞培養上清を、200mMのKH2PO4、100mMのクエン酸ナトリウム、pH7.4中Applied Biosystems Poros A/20カラムに適用し、Agilent HPLC 1100システム上、200mMのNaCl、100mMのクエン酸、pH2.5で溶出した。UV吸光度により、及びピークエリアの統合により、溶出した抗体を定量化した。生成した標準的なIgG1抗体が基準となった。
【0244】
あるいは、細胞培養上清中の抗体及び誘導体の濃度を、Sandwich-IgG-ELISAにより測定した。簡潔には、StreptaWell High Bind ストレプトアビジン A-96ウェルマイクロタイタープレート(Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)を、100μL/ウェルのビオチニル化抗ヒトIgG捕捉分子F(ab’)2<h-Fcγ>BI(Dianova)で0.1μg/mLで、室温で1時間、又は4℃で一晩コーティングし、続いて、200μL/ウェルのPBS、0.05%のTween(PBST,Sigma)で三回洗浄した。その後、細胞培養上清を含有するそれぞれの抗体のPBS(Sigma)中100μL/ウェルの希釈系列をウェルに添加し、シェーカー上で、室温で1~2時間インキュベートした。ウェルを200μL/ウェルのPBSTで三回洗浄し、結合した抗体を、シェーカー上室温での1~2時間のインキュベートによる検出抗体のように、100μlのF(ab’)2<hFcγ>POD(Dianova)で0.1μg/mLで検出した。非結合検出抗体を、200μL/ウェルPBSTで三回洗浄することにより、除去した。結合検出抗体を、100μLABTSの添加により検出し、その後インキュベートした。吸光度の決定は、405nmの測定波長でTecan Fluor分光計上で行われた(参照波長492nm)。
【0245】
調製用抗体精製
標準的なプロトコールを参照して、濾過された細胞培養上清から抗体を精製した。簡潔には、抗体を、プロテインA Sepharoseカラム(GE healthcare)に適用し、PBSで洗浄した。抗体の溶出をpH2.8で行い、その直後に中和した。凝集したタンパク質を、サイズ排除クロマトグラフィー(Superdex 200, GE Healthcare)により、PBS中又は150mMのNaCl(pH6.0)を含む20mMのヒスチジンバッファー中のモノマー抗体から分離させた。モノマー抗体画分をプールし、例えばMILLIPORE Amicon Ultra(30 MWCO)遠心濃縮機を使用して濃縮し(必要な場合)、-20℃又は-80℃で冷凍し、保存した。試料の一部を続くタンパク質分析、及び例えばSDS-PAGE、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)又は質量分析による分析的特徴付けに関して提供した。
【0246】
SDS-PAGE
製造元の指示に従って、NuPAGE(登録商標)Pre-Castゲルシステム(Invitrogen)を使用した。特に、10%又は4~12%のNuPAGE(登録商標)Novex(登録商標)ビス-TRIS Pre-Castゲル(pH6.4)及びNuPAGE(登録商標)MES(還元ゲル、NuPAGE(登録商標)抗酸化剤ランニングバッファー添加剤を含む)又はMOPS(非還元ゲル)ランニングバッファーを使用した。
【0247】
CE-SDS
微小流体Labchip技術(PerkinElmer, USA)を使用するCE-SDSによって、純度及び抗体完全性を分析した。したがって、5μlの抗体溶液を、製造元の指示に従って、HT Protein Express Reagent Kitを使用して、CE-SDS分析のために調製し、HT Protein Express Chipを使用してLabChip GXIIシステム上で分析した。LabChip GX Softwareを使用して、データを分析した。
【0248】
分析的サイズ排除クロマトグラフィー
凝集及びオリゴマー状態の抗体の決定に関するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を、HPLCクロマトグラフィーによって行った。簡潔には、プロテインA精製抗体を、Dionex Ultimate(登録商標)システム(Thermo Fischer Scientific)上、300mMのNaCl、50mMのKH2PO4/K2HPO4バッファー(pH7.5)中のTosoh TSKgel G3000SWカラムに、又は、Dionex HPLC-システム上、2倍のPBS中のSuperdex 200カラム(GE Healthcare)に適用した。UV吸光度により、及びピークエリアの統合により、溶出した抗体を定量化した。BioRad Gel Filtration Standard 151-1901が標準として機能した。
【0249】
質量分析
この切片は、正確な集合に重きを有する二重特異性抗体の特徴づけを説明する。予測される一次抗体を、脱グリコシル化されたインタクトな抗体の、及び特別な場合、脱グリコシル化/限定されたLysC消化抗体のエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)により分析した。
【0250】
抗体を、37℃で最大17時間、1mg/mlのタンパク質濃度で、リン酸又はTrisバッファー中N-GグリコシダーゼFで脱グリコシル化した。限定されたLysC(Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)消化を、Trisバッファー(pH8)中100μgの脱グリコシル化抗体で、それぞれ室温で120時間、又は37℃で40分間、行った。質量分析の前に、セファデックス G25カラム(GE Healthcare)上のHPLCを介して、試料を脱塩した。TriVersa NanoMate源(Advion)を備えたmaXis 4G UHR-QTOF MSシステム(Bruker Daltonik)上のESI-MSを介して、総質量を決定した。
【0251】
化学分解試験
試料を三のアリコートに分け、それぞれ、20mMのHis/His*HCl、140mMのNaCl、pH6.0又はPBS中に再バッファーし、40℃(His/NaCl)又は37℃(PBS)で保存した。コントロール試料を-80℃で保存した。
【0252】
インキュベート終了後、試料を、関連する活性濃度(BIAcore)、凝集(SEC)及び断片化(キャピラリー電気泳動又はSDS-PAGE)について分析し、治療されていないコントロールと比較した。
【0253】
熱安定性
20mMのヒスチジン/ヒスチジンクロリド、140mMのNaCl、pH6.0中、1mg/mLの濃度で試料を調製し、0.4μmフィルタを通じた遠心分離により、光学384ウェルプレートに移し、パラフィン油でカバーした。流体力学半径を、DynaPro Plate Reader(Wyatt)上、動的光散乱により繰り返し測定し、その一方、試料を0.05℃/分の速度で、25℃から80℃に加熱した。
【0254】
あるいは、試料を10μLのマイクロ-キュベットアレイに移し、266nmレーザーでの励起時の静的光散乱データ及び蛍光性データをOptim1000装置(Avacta Inc.)で記録し、その一方、試料を0.1℃/分の速度で25℃から90℃に加熱した。
【0255】
凝集開始温度は、流体力学半径(DLS)又は散乱光強度(Optim1000)が増加し始めた時の温度と定義されている。
【0256】
あるいは、試料を9μLのマルチキュベットアレイに移した。マルチキュベットアレイを、Optim1000装置(Avacta Analytical Inc.)中、0.1℃/分の一定速度で35℃から90℃に加熱した。装置は、ほぼ0.5℃毎に、データ点で266nmレーザーの散乱光の強度を継続して記録した。光散乱強度を、温度に対してプロットした。凝集開始温度(T_agg)は、散乱光強度が増加し始めた時の温度と定義されている。
【0257】
溶融温度は、蛍光性強度対波長グラフにおける変曲点として定義されている。
【0258】
実施例1
発現及び精製
一般的な材料及び方法のセクションで記載されるように、二重特異性抗体を産生した。
【0259】
二重特異性抗体を、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー及びサイズ排除クロマトグラフィーの組み合わせにより上清から精製した。質量分析による同一性、並びに分析特性、例えばCE-SDSによる純度、モノマー含有量及び安定性に関して、得られた生成物の特徴を明らかにした。
【0260】
予測される一次構造を、脱グリコシル化されたインタクトな抗体、及び脱グリコシル化/プラスミン消化又は脱グリコシル化/限定LysC消化された抗体のエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)により、一般的な方法のセクションに記載されるように、分析した。
【0261】
さらなる分析法(例えば熱安定性、質量分析及び機能評価)を、プロテインA及びSEC精製の後にのみ適用した。
【0262】
実施例2
in vitroでのトランスフェリン受容体への結合の決定
二重特異性抗体のマウストランスフェリン受容体への結合を、マウスX63.AG8-563骨髄腫細胞上FACS解析により試験する。Aβ抗体が、Ag8細胞へ非特異的に結合する特定の傾向を示す場合、特異的な結合は、20倍超の抗マウス-TfR抗体で共インキュベートにより定量化されうる。細胞を遠心分離により採取し、PBSで洗浄し、5×104細胞を100μLのRPMI/10%FCS中で、200nMの抗マウスTfR抗体を添加する又は添加しない、ポリペプチド融合体の1.5pMから10nMの希釈系列と、氷上で1.5時間インキュベートする。RPMI/10%のFCSで二回洗浄した後、細胞を、RPMI/19%のFCS中1:600の希釈で、Phycoerythrin(Jackson Immunoresearch)に結合したヤギ抗ヒトIgGで、氷上で1.5時間インキュベートする。細胞を再び洗浄し、RPMI/10%のFCSに再懸濁させ、Phycoerythrinの蛍光を、FACS-アレイ装置(Becton-Dickinson)上で測定する。
【0263】
実施例3
ヒトTfR-抗体相互作用に関する表面プラズモン共鳴をベースとする結合アッセイ
抗ヒトFab抗体(GE HEALTHCARE、カタログ番号28-9583-25)を用いて、供給業者のマニュアルに従い標準的なアミンカップリングケミストリーの手順を使用して前処理したC1センサチップ(GE Healthcare、カタログ番号BR1005-35)を備えたBIAcore B 4000(GE Healthcare)上で、結合実験を行った。
【0264】
反応速度論的な測定のため、25℃のリン酸バッファー生理食塩水pH7.4、0.05%のTween 20中、60秒の接触時間及び10μL/分の流量を適用して、試料抗体を固定化した。組換えHis6タグ化ヒトトランスフェリン受容体(R&D Systems、カタログ番号2474-TR-050)を、漸増濃度で適用し、シグナルを経時的にモニターした。30μL/分の流量での150秒の会合時間及び600秒の解離時間の平均的な期間を記録した。1:1結合モデル(ラングミュア等温線)を使用して、データをフィッティングした。