(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116793
(43)【公開日】2023-08-22
(54)【発明の名称】粘着フィルム及び粘着剤層付き偏光板
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20230815BHJP
C09J 133/06 20060101ALI20230815BHJP
C09J 133/14 20060101ALI20230815BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/06
C09J133/14
C09J11/06
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102345
(22)【出願日】2023-06-22
(62)【分割の表示】P 2022120534の分割
【原出願日】2015-05-07
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】長倉 毅
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 良
(72)【発明者】
【氏名】吉田 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 昌世
(57)【要約】
【課題】光学部材を貼合した積層体の表面硬度の測定値に誤差を生じることがなく、耐久性、リワーク性も兼ね備えた粘着フィルム及び粘着剤層付き偏光板の提供。
【解決手段】アクリル系ポリマーが、(1)主成分の(メタ)アクリル系モノマーの合計100重量部のうち、ブチルアクリレートを少なくとも40重量部以上含有し、カルボキシル基含有共重合性ビニルモノマーを含まず、Tgが-35℃以上であり、粘着剤組成物が、(2)水酸基含有共重合性ビニルモノマーを0.1~10重量部を共重合してなる、酸価が0.1以下で、重量平均分子量が100万以上のアクリル系ポリマーの(3)架橋剤としてイソシアネート化合物のみを0.01~1.0重量部含有し、シランカップリング剤を0.01~0.5重量部含有してなり、ゲル分率が40~85%であり、粘着剤層の厚さが1μm~20μmであり、粘着力が10N/25mm以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の鉛筆硬度が2H以上である光学部材と、その他の光学部材との層間に用いられる、アクリル系ポリマーからなる粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層において、
前記アクリル系ポリマーが、(1)主成分の(メタ)アクリル系モノマーとして、アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーと、芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーと、窒素含有ビニルモノマーと、脂環族を有する(メタ)アクリレートモノマーと、からなるアクリル系モノマー群の中から選択された少なくとも1種以上のモノマーの合計100重量部のうち、ブチルアクリレートを少なくとも40重量部以上含有し、カルボキシル基含有共重合性ビニルモノマーを含まず、
前記アクリル系ポリマーのTgが-35℃以上であり、
前記粘着剤組成物が、前記主成分の(メタ)アクリル系モノマーの合計100重量部と、(2)水酸基含有共重合性ビニルモノマーを0.1~10重量部と、を共重合してなる、酸価が0.1以下で、重量平均分子量が100万以上の共重合体からなるアクリル系ポリマーと、前記主成分の(メタ)アクリル系モノマーの合計100重量部に対して、(3)架橋剤としてイソシアネート化合物のみを0.01~1.0重量部含有し、さらに、エポキシ基、(メタ)アクリロキシ基、メルカプト基、アミノ基からなる群から選択された少なくとも一種類の、有機官能基を有するシランカップリング剤を、0.01~0.5重量部含有してなり、
前記アクリル系ポリマーを架橋した後のゲル分率が40~85%であり、
前記粘着剤層の厚さが1μm~20μmであり、
前記粘着剤層を、被着体に貼り合わせた後に70℃×10日で保管した後の粘着力が、10N/25mm以下であることを特徴とする粘着フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の粘着フィルムが用いられた、偏光板と、液晶ディスプレイパネル又は有機エレクトロルミネッセンスディスプレイパネルとの貼り合わせ用粘着フィルム。
【請求項3】
請求項1に記載の粘着フィルムが用いられた粘着剤層付き偏光板。
【請求項4】
請求項1に記載の粘着フィルムが用いられ、構成材料としてλ/4および/又はλ/2の位相差を持つ位相差フィルムが用いられた粘着剤層付き偏光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材の層間の貼合などに用いられる、厚さが1μm~20μmである薄膜の粘着剤層、及び、この粘着剤層を、離型フィルムの間に挟持した粘着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶パネルの上に、静電容量式のタッチパネルを外付けした各種の表示装置、例えば、スマートフォン、タブレット端末、タブレットPCなどが広く使用されている。このような表示装置では、液晶パネルとタッチパネルの間に物理的な空間が存在している。このため、液晶パネルの上面やタッチパネルの下面で外部光などが反射して、特に、屋外などの明るい環境下での視認性が低下するという問題があった。
【0003】
この視認性が低下するという問題を解決する方法として、タッチパネルの機能を液晶の画素の中に組み込むインセル方式の表示装置(例えば、特許文献1を参照。)が提案されてきた。しかし、複雑な製造工程を経るため、製品の歩留まりが低下すること、画像の表示性能を向上させることが技術的に困難であること、などの理由により実用化されなかった。
【0004】
その一方で、最近では、オンセル方式の表示装置(例えば、特許文献2を参照。)が提案されている。オンセル方式の表示装置は、カラーフィルタと偏光板の間に、透明電極パターンからなるタッチセンサーを形成し、タッチパネルの機能をカラーフィルタ基板と偏光板の間に作り込むものである。オンセル方式は、製品の歩留まりの低下が少ないという長所がある。このため、オンセル方式は、タッチパネルを組み込んだ液晶パネルの有望な製造技術として、今後の発展が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-258182号公報
【特許文献2】特開2014-044501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の各種の表示装置において、光学部材の層間を貼合するため、粘着剤層が汎用的に使用されている。しかし、少なくとも一方の光学部材の表面が、ハードコート層などの表面処理により表面硬度を高めた(例えば、表面の鉛筆硬度が2H以上など)光学部材である場合、光学部材の貼合に使用する粘着剤層が軟らかく、且つ粘着剤層が厚いと、光学部材を貼合した積層体の表面硬度を測定した時に、測定誤差を生じるという問題があった。
これは、光学部材を貼合した積層体のハードコート層の上から鉛筆で触れたときに、光学部材自体の表面硬度が高くても、光学部材の基材フィルムが薄膜化され剛性が低下していること、及び粘着剤層が軟らかいことに起因して光学部材が凹み、見掛け上の表面硬度が低くなるという現象である。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、光学部材の層間の貼合に用いても、光学部材を貼合した積層体の表面硬度の測定値に誤差を生じることがなく、耐久性、リワーク性も兼ね備えた、粘着剤層及び粘着フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明は、従来技術に比べて粘着剤層の厚さを1μm~20μmと薄膜化すると共に、薄膜化した粘着剤層であっても従来と同等の粘着力とするために、主成分の(メタ)アクリル系モノマーとして、アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーと、芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーと、窒素含有ビニルモノマーと、脂環族を有する(メタ)アクリレートモノマーと、からなるアクリル系モノマー群の中から選択された少なくとも1種以上のモノマーの合計100重量部のうち、ブチルアクリレートを少なくとも40重量部以上含有させ、さらに、粘着剤層の腐食性を低減するために、カルボキシル基含有共重合性ビニルモノマーを含まないアクリル系ポリマーとすることを技術思想としている。
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明は、光学部材の貼合に用いられる粘着剤層であって、前記粘着剤層が、アクリル系ポリマーと、架橋剤とを含有する粘着剤組成物を架橋してなり、前記アクリル系ポリマーが、(1)主成分の(メタ)アクリル系モノマーとして、アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーと、芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーと、窒素含有ビニルモノマーと、脂環族を有する(メタ)アクリレートモノマーと、からなるアクリル系モノマー群の中から選択された少なくとも1種以上のモノマーの合計100重量部のうち、ブチルアクリレートを少なくとも40重量部以上含有し、カルボキシル基含有共重合性ビニルモノマーを含まず、前記アクリル系ポリマーのTgが-35℃以上-10℃以下であり、前記粘着剤組成物が、前記主成分の(メタ)アクリル系モノマーの合計100重量部と、(2)水酸基含有共重合性ビニルモノマーを0.1~10重量部と、を共重合してなる、酸価が0.1以下で、重量平均分子量が100万以上の共重合体からなるアクリル系ポリマーと、前記主成分の(メタ)アクリル系モノマーの合計100重量部に対して、(3)架橋剤としてイソシアネート化合物のみを0.01~1.0重量部を含有し、さらに、エポキシ基、(メタ)アクリロキシ基、メルカプト基、アミノ基からなる群から選択された少なくとも一種類の、有機官能基を有するシランカップリング剤を、0.01~0.5重量部の割合で含有してなり、前記アクリル系ポリマーを架橋した後のゲル分率が40~85%であり、前記粘着剤層の厚さが1μm~20μmであり、厚み180μmの偏光板フィルムの片面に、厚さ10μmの粘着剤層を転写して得た粘着フィルムの、無アルカリガラスに対する剥離試験を、JIS Z0237に準拠して、180°方向に300mm/minの速度で行い、得られた厚さ10μmの粘着剤層の粘着力が1.5~8.0N/25mmであり、前記粘着剤層の屈折率が1.47~1.50であることを特徴とする粘着剤層を提供する。
【0010】
前記粘着剤組成物が、さらにシランカップリング剤を0.01~0.5重量部含有することが好ましい。
【0011】
前記粘着剤組成物に含まれる架橋剤が、イソシアネート化合物であり、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体およびヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体の中から選択された少なくとも1種以上を含有することが好ましい。
【0012】
前記粘着剤組成物中の(2)水酸基含有共重合性ビニルモノマーが、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、からなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0013】
前記粘着フィルムを、被着体である無アルカリガラスに貼り合わせた後に70℃×10日で保管した後の前記粘着力が、10N/25mm以下であることが好ましい。
【0014】
また、本発明は、前記粘着剤層が、離型フィルムの片面に形成されてなり、離型フィルム/粘着剤層/離型フィルムの構成であることを特徴とする粘着フィルムを提供する。
【0015】
また、本発明は、基材の片面上に、前記粘着剤層が積層されたことを特徴とする粘着フィルムを提供する。
【0016】
また、本発明は、前記粘着フィルムが用いられた、偏光板と、液晶ディスプレイパネル又は有機エレクトロルミネッセンスディスプレイパネルとの貼り合わせ用粘着フィルムを提供する。
【0017】
また、本発明は、前記粘着フィルムが用いられた粘着剤層付き偏光板を提供する。
【0018】
また、本発明は、前記粘着フィルムが用いられ、構成材料としてλ/4および/又はλ/2の位相差を持つ位相差フィルムが用いられた粘着剤層付き偏光板を提供する。
【0019】
また、本発明は、光学フィルムの少なくとも一方の面に、前記粘着剤層が積層されている粘着剤層付き光学フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、光学部材の層間の貼合に用いても、表面硬度を維持することが可能で、耐久性、リワーク性も兼ね備えた、粘着剤層及び粘着フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
本発明の粘着剤層は、表面の鉛筆硬度が2H以上である光学部材と、その他の光学部材との層間に用いられる、アクリル系ポリマーからなる粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層において、前記アクリル系ポリマーが、(1)主成分の(メタ)アクリル系モノマーとして、アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーと、芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーと、窒素含有ビニルモノマーと、脂環族を有する(メタ)アクリレートモノマーと、からなるアクリル系モノマー群の中から選択された少なくとも1種以上のモノマーの合計100重量部のうち、ブチルアクリレートを少なくとも40重量部以上含有し、カルボキシル基含有共重合性ビニルモノマーを含まず、前記アクリル系ポリマーのTgが-35℃以上であり、前記粘着剤組成物が、前記主成分の(メタ)アクリル系モノマーの合計100重量部と、(2)水酸基含有共重合性ビニルモノマーを0.1~10重量部と、を共重合してなる、酸価が0.1以下で、重量平均分子量が100万以上の共重合体からなるアクリル系ポリマーと、前記主成分の(メタ)アクリル系モノマーの合計100重量部に対して、(3)架橋剤としてイソシアネート化合物を0.01~1.0重量部を含有してなり、前記アクリル系ポリマーを架橋した後のゲル分率が40~85%であり、前記粘着剤層の厚さが1μm~20μmであり、厚さ10μmの粘着剤層の粘着力が1.5~8.0N/25mmであり、前記光学部材を、前記粘着剤層を介して無アルカリガラスに貼り合わせて行う表面の鉛筆硬度の測定値が、前記光学部材の表面の鉛筆硬度と同じ2H以上であることを特徴とする。
【0022】
本発明に係わるアクリル系ポリマーは、第1モノマー群に属するモノマー(主成分モノマー)と、第2モノマー群に属するモノマー(官能基モノマー)とを、それぞれ1種以上共重合して得られた共重合体である。第1モノマー群に属するモノマーとして、アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーと、芳香族基を有するアクリレートモノマーと、窒素含有ビニルモノマーと、脂環族を有する(メタ)アクリレートモノマーとからなるモノマー群の少なくとも1種以上を使用することができる。第2モノマー群に属するモノマーとして、水酸基含有共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種以上を使用することができる。本明細書中、(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートの総称である。
【0023】
本発明に係わる粘着剤組成物において、アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、イソヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、イソウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソトリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、イソテトラデシル(メタ)アクリレートなどの少なくとも1種以上が挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートモノマーのアルキル基は、直鎖でも、分枝状でもよい。
本発明に係わるアクリル系ポリマーは、ブチルアクリレートを必須モノマーとする。アクリル系ポリマーが、第1モノマー群に属するモノマーの合計100重量部のうち、ブチルアクリレートを少なくとも40重量部以上、より好ましくは50重量部以上、特に好ましくは60重量部以上の割合で含有することが好ましい。
【0024】
本発明に係わる粘着剤組成物において、芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシブチル(メタ)アクリレート、2-(1-ナフチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(2-ナフチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、6-(1-ナフチルオキシ)ヘキシル(メタ)アクリレート、6-(2-ナフチルオキシ)ヘキシル(メタ)アクリレート、8-(1-ナフチルオキシ)オクチル(メタ)アクリレート、8-(2-ナフチルオキシ)オクチル(メタ)アクリレートなどの少なくとも1種以上が挙げられる。屈折率が高い粘着剤層を得るためには、芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上を配合することが好ましい。本発明に係わるアクリル系ポリマーは、第1モノマー群に属するモノマーの合計100重量部のうち、芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーを、30重量部以下の割合で含有することが好ましい。
【0025】
本発明に係わる粘着剤層の粘着剤組成物において、窒素含有ビニルモノマーとしては、アミド結合を含有する(メタ)アクリル系モノマー、アミノ基を含有する(メタ)アクリル系モノマー等が挙げられる。より具体的には、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルピペラジン、N-(メタ)アクリロイルアジリジン、N-(メタ)アクリロイルアゼチジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルアゼパン、N-(メタ)アクリロイルアゾカン等の、N-(メタ)アクリロイル置換の複素環式構造を有する環状窒素ビニル化合物;(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド等の無置換又はモノアルキル置換の(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピルアクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル-N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド等のジアルキル置換(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノイソプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-エチル-N-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-メチル-N-プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-メチル-N-イソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノ(メタ)アクリレート;N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-エチル-N-メチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-プロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-イソプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキル置換アミノプロピル(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリロニトリルなどの少なくとも1種以上が挙げられる。窒素含有ビニルモノマーとしては、水酸基を含有しないものが好ましく、水酸基およびカルボキシル基を含有しないものがより好ましい。本発明に係わるアクリル系ポリマーは、第1モノマー群に属するモノマーの合計100重量部のうち、窒素含有ビニルモノマーを、20重量部以下の割合で含有することが好ましい。
【0026】
本発明に係わる粘着剤組成物において、脂環族を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ビシクロヘプチル(メタ)アクリレート、ビシクロオクチル(メタ)アクリレート、ジメチルビシクロヘプチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートなどの少なくとも1種以上が挙げられる。環状アルキル(メタ)アクリレートモノマーのように、側鎖に飽和脂環族を有する(メタ)アクリレートモノマーを配合することにより、アクリル系ポリマーの極性を低くするため、低エネルギー表面に対する親和性に寄与する。本発明に係わるアクリル系ポリマーは、第1モノマー群に属するモノマーの合計100重量部のうち、脂環族を有する(メタ)アクリレートモノマーを、30重量部以下の割合で含有することが好ましい。
【0027】
第2モノマー群に属するモノマー(官能基モノマー)は、架橋剤として用いられる、イソシアネート化合物と反応することが可能な官能基を有する。このような官能基としては、水酸基のほかにも、カルボキシル基などがある。しかし、透明導電性フィルムのITO表面などの腐食し易い被着体に対する腐食性への影響を避ける観点から、アクリル系ポリマーが、カルボキシル基含有共重合性ビニルモノマーを含有しないことが好ましい。アクリル系ポリマーの酸価は、好ましくは0.1以下である。
【0028】
本発明に係わる粘着剤組成物において、水酸基含有共重合性ビニルモノマーとしては、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート類や、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の水酸基含有(メタ)アクリルアミド類などの少なくとも1種以上が挙げられる。中でも、水酸基含有共重合性ビニルモノマーが、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、からなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上であることが好ましい。本発明に係わるアクリル系ポリマーは、第1モノマー群に属するモノマーの合計100重量部に対して、水酸基含有共重合性ビニルモノマーを0.1~10重量部を含有することが好ましく、0.2~5.0重量部を含有することがより好ましく、0.2~4.0重量部を含有することが特に好ましい。
【0029】
前記アクリル系ポリマーとして使用される共重合体の重合方法は、特に限定されるものではなく、溶液重合法、乳化重合法等、適宜、公知の重合方法が使用可能である。前記アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリレートモノマーなどのアクリル系モノマーを50~100重量%含むことが好ましい。本発明では、アクリル系ポリマーのガラス転移温度(以下、Tgと記す。)は、-35℃以上が好ましい。Tgが-35℃未満であると、リワーク性及び耐久性が低下するので好ましくない。更に、Tgは、-35℃~-10℃であることが、より好ましい。Tgが-10℃を超えると、本発明に必要な粘着力が得られず好ましくない。また、前記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、100万以上が好ましく、100万~200万の範囲であることがより好ましい。
【0030】
前記粘着剤組成物は、上記のアクリル系ポリマーに、架橋剤や、適宜任意の添加剤を配合することで、必要とされる物性値などの特性を調整することができる。
【0031】
架橋剤としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート類のビュレット変性体やイソシアヌレート変性体、トリメチロールプロパンや、グリセリン等の3価以上のポリオールとのアダクト体などのポリイソシアネート化合物の少なくとも1種以上が挙げられる。
【0032】
架橋剤として使用されるイソシアネート化合物の含有量は、第1モノマー群に属するモノマーの合計100重量部に対して、0.01~1.0重量部が好ましい。架橋剤として、イソシアネート化合物のみを用いてもよい。イソシアネート化合物として、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体およびヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体の中から選択された少なくとも1種以上を含有することが好ましい。
【0033】
前記粘着剤組成物は、さらに、シランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤としては、1分子中に、少なくとも1つの有機官能基と、少なくとも1つの加水分解性基を有し、前記加水分解性基が、ケイ素原子に結合したアルコキシ基等である化合物が挙げられる。前記シランカップリング剤が、エポキシ基、(メタ)アクリロキシ基、メルカプト基、アミノ基からなる群から選択された少なくとも一種類の、有機官能基を有することが好ましい。ここで、(メタ)アクリロキシ基とは、アクリロキシ基(CH2=CHCOO-)、又は、メタクリロキシ基(CH2=C(CH3)COO-)を意味する。
【0034】
エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリメトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルメチルジメトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルメチルジエトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリエトキシシランなどが挙げられる。(メタ)アクリロキシ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシランなどが挙げられる。メルカプト基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(メチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(メチルアミノ)プロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。また、前記有機官能基を含み、オリゴマー化したアルコキシオリゴマー(シリコーンアルコキシオリゴマー)なども、シランカップリング剤として用いることができる。
【0035】
シランカップリング剤の含有量は、水酸基含有共重合性ビニルモノマーを除いたモノマー(第1モノマー群に属するモノマー)の合計100重量部に対して、0.01~0.5重量部が好ましい。
【0036】
その他任意の成分として、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤、硬化促進剤、可塑剤、充填剤、架橋触媒、架橋遅延剤、硬化遅延剤、加工助剤、老化防止剤などの公知の添加剤を適宜に配合することができる。これらは、単独で、もしくは2種以上併せて用いてもよい。
【0037】
本発明に係わる粘着剤層は、前記粘着剤組成物を基材や離型フィルムに塗布した後、粘着剤組成物を架橋することで得ることができる。架橋後の粘着剤層のゲル分率は、40~85%が好ましい。
【0038】
本発明に係わる粘着剤層を、光学部材の層間の貼合などに用いる場合、薄い粘着剤層であることが望ましい。粘着剤層の厚さは、1μm~20μmが好ましい。また、厚さ10μmの粘着剤層の粘着力が、1.5~8.0N/25mmであることが好ましい。なお、一般に、粘着剤層の粘着力は、粘着剤層の厚さに略比例している。粘着力の試験に使用される被着体としては、無アルカリガラス等のガラス板、樹脂フィルム等が挙げられる。
【0039】
本発明に係わる粘着剤層を、光学部材の層間の貼合などに用いる場合、粘着剤層と光学部材との界面での光線の反射を低減させるため、屈折率の差がなるべく小さいことが望ましい。このため、前記粘着剤層の屈折率が1.47~1.50であることが好ましい。
【0040】
本発明の粘着フィルムは、本発明の粘着剤層を、基材又は離型フィルムの片面上に形成することで製造することができる。粘着剤層の形成に用いる基材フィルムや、粘着面を保護する離型フィルム(セパレーター)としては、ポリエステルフィルムなどの樹脂フィルム等を用いることができる。基材フィルムには、樹脂フィルムの粘着剤層が形成された側とは反対面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤やコート剤、シリカ微粒子等による防汚処理、帯電防止剤の塗布や練り込み等による帯電防止処理を施すことができる。
【0041】
離型フィルムには、粘着剤層の粘着面と合わされる側の面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤などにより離型処理が施される。1つの粘着剤層の両面に、それぞれ離型フィルムの離型処理が施された面を合わせることで、「離型フィルム/粘着剤層/離型フィルム」の構成とすることもできる。この場合、両側の離型フィルムを、順次、あるいは同時に剥離して粘着面を表出することにより、光学フィルム等の光学部材と貼合可能になる。光学フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、防眩(アンチグレア)フィルム、紫外線吸収フィルム、赤外線吸収フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム等が挙げられる。
【0042】
本発明に係わる粘着剤層は、粘着剤層が厚くても、被着体の表面硬度を維持することができるので、被着体の少なくとも一方が、ハードコート層などにより表面硬度を高めた(例えば、表面の鉛筆硬度が2H以上など)光学部材である場合に、好適に使用することができる。リワーク性の観点から、粘着剤層を、被着体に貼り合わせた後に70℃×10日で保管した後の粘着力が、10N/25mm以下であることが好ましい。
【0043】
本発明の粘着剤層及び粘着フィルムは、偏光板を主とする液晶表示装置の周辺部材用の各種光学フィルム、タッチパネル用の各種光学フィルム、電子ペーパー用の各種光学フィルム、有機EL用の各種光学フィルム等の貼り合わせに用いることができる。また、これらの光学フィルムの少なくとも一方の面に、前記粘着剤層が積層されている粘着剤層付き光学フィルムとすることができる。離型フィルムで保護された粘着剤層を有する場合、離型フィルムを剥がして、「光学フィルム/粘着剤層」のように粘着剤層を表出させ、他の光学フィルムと貼合することにより、層間の貼合に粘着剤層が用いられた「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム」のような構成が得られる。
【0044】
本発明の粘着フィルムは、偏光板とディスプレイパネルとの貼り合わせに好適に用いられる。ディスプレイパネルとしては、例えば、液晶パネル又は有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネルが挙げられる。本発明の粘着フィルムは、粘着剤層付き偏光板の粘着剤層として好適に用いることができる。偏光板の構成材料として、λ/4又はλ/2の位相差を持つ位相差フィルムが用いられてもよい。位相差フィルムと偏光板との貼り合わせに、本発明の粘着剤層を使用することができる。
【実施例0045】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0046】
<アクリル系ポリマーの製造>
[実施例1]
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、反応装置内の空気を窒素ガスで置換した。その後、反応装置にブチルアクリレート75重量部、t-ブチルアクリレート25重量部、8-ヒドロキシオクチルアクリレート1.0重量部とともに溶剤(酢酸エチル)を60重量部加えた。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を2時間かけて滴下させ、65℃で6時間反応させ、実施例1に用いるアクリル系ポリマー溶液を得た。
[実施例2~5及び比較例1~3]
モノマーの組成を各々、表1の(1)群及び(2)群の記載のようにする以外は、上記の実施例1に用いるアクリル系ポリマー溶液1と同様にして、実施例2~5及び比較例1~3に用いるアクリル系ポリマー溶液を得た。
【0047】
<粘着剤組成物、粘着剤層及び粘着フィルムの製造>
[実施例1]
上記のとおり製造した実施例1のアクリル系ポリマー溶液に対して、コロネートHX(HDIのイソシアヌレート体)0.2重量部、KBM-803(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)0.05重量部を加えて撹拌混合して実施例1の粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物を、離型フィルム(シリコーン樹脂コートされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)の上に塗布後、90℃で乾燥することによって溶剤を除去した後、23℃、50%RHの雰囲気下で7日間エージングすることにより、粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤層を、離型フィルムの片面上に有する、実施例1の粘着フィルムを得た。
[実施例2~5及び比較例1~3]
添加剤の組成を各々、表1の(3)群及び(4)群の記載のようにする以外は、上記の実施例1の粘着フィルムと同様にして、実施例2~5及び比較例1~3の粘着フィルムを得た。
【0048】
【0049】
表1では、(1)群の、アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーと、芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーと、窒素含有ビニルモノマーと、脂環族を有する(メタ)アクリレートモノマーとからなるモノマー群の合計を、100重量部として求めた。また、(2)群から(4)群までの添加割合として、重量部の数値を括弧で囲んで示す。なお、(2)群は、官能基含有モノマー、すなわち、水酸基含有共重合性ビニルモノマー及びカルボキシル基含有共重合性ビニルモノマーとからなるモノマー群である。(3)群は、架橋剤である。(4)群は、シランカップリング剤である。
【0050】
また、表1に用いた各成分の略記号の化合物名を、表2に示す。なお、コロネート(登録商標)HX及びLは日本ポリウレタン工業株式会社の商品名であり、KBM-403、KBM-802及びKBM-803は信越化学工業株式会社の商品名である。TDIはトリレンジイソシアネートを意味し、TMPはトリメチロールプロパンを意味し、HDIはヘキサメチレンジイソシアネートを意味する。
【0051】
【0052】
<試験方法及び評価>
実施例1~5及び比較例1~3における粘着フィルムから、離型フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)を剥がして、粘着剤層を表出させ、偏光板(フィルム)の片面に粘着剤層を転写した。
【0053】
<粘着力の測定方法>
厚み180μmの偏光板(フィルム)の片面に、厚さ10μmの粘着剤層を転写して、試料となる粘着フィルム(粘着剤層付き光学フィルム)を得た。得られた粘着フィルムを、無アルカリガラスのアセトンで洗浄した非錫面に圧着ロールで貼り合わせ、50℃、0.5MPa×20分間の条件でオートクレーブ処理した後、23℃×50%RHの雰囲気下に戻し、1時間経過させた。その後の粘着フィルムの剥離強度を、引張試験機によって、JIS Z0237「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準拠して測定し、180°方向に300mm/minの速度で剥離した時の剥離強度を、粘着フィルムの粘着剤層の粘着力(N/25mm)とした。
【0054】
<酸価の測定方法>
アクリル系ポリマーの試料を、溶剤(ジエチルエーテルとエタノールを体積比2:1で混合したもの)に溶かして測定試料とした。その測定試料を、電位差自動滴定装置(京都電子工業製、AT-610)を用いて、濃度が約0.1mol/lの水酸化カリウムエタノール溶液で電位差滴定を行い、試料を中和するために必要な水酸化カリウムエタノール溶液の量を測定した。そして、下記式より、アクリル系ポリマーの酸価を求めた。
酸価=(B×f×5.611)/S
B=滴定に用いた0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)
f=0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液のファクター
S=試料の固形分の質量(g)
【0055】
<ゲル分率の測定方法>
エージング終了後、偏光板に貼り合わせる前の、測定試料の粘着剤層の質量を正確に測定し、トルエン中に24時間浸漬後、200メッシュの金網で濾過する。その後、濾過物を100℃、1時間乾燥した後、残渣の質量を正確に測定して、以下の式から粘着剤層(架橋後の粘着剤層)のゲル分率を算出した。
ゲル分率(%)=不溶部分質量(g)/粘着剤層の質量(g)×100
【0056】
<耐久性の試験方法>
粘着力の測定方法と同様の方法で作成した10cm角の粘着フィルムを、無アルカリガラスのアセトンで洗浄した非錫面に圧着ロールで貼り合わせて、測定試料を作成した。作成した測定試料を、所定の雰囲気(80℃dry雰囲気、または60℃×90%RHの雰囲気)下に250時間放置後、23℃×50%RH雰囲気下に取り出し、1時間後に粘着フィルムの状態を目視で観察して耐久性を判断した。目視による観察の判定基準は、次のとおりとした。
○・・粘着フィルムの剥がれ及び発泡が全くない。
△・・粘着フィルムの一部に剥がれ及び発泡が発生している。
×・・粘着フィルムの全体に剥がれ及び発泡が発生している。
【0057】
<リワーク性の試験方法>
粘着力の測定と同様の方法で作成した10cm角の粘着フィルムを、同様の方法で無アルカリガラスの非錫面に貼り合わせて作成した試料を、70℃の雰囲気下に10日間放置後、23℃の雰囲気下に取り出し、1時間放置後の粘着フィルムの粘着力を測定してリワーク性を判断した。リワーク性の判定基準は、次のとおりとした。
○・・70℃×10日後の粘着力が1.5~10N/25mmである。
△・・70℃×10日後の粘着力が10N/25mmより大きいが、20N/25mm以下である。
×・・70℃×10日後の粘着力が20N/25mmより大きい(剥がすことができない)。
【0058】
<鉛筆硬度の測定方法>
鉛筆硬度が2Hのハードコート層を表面に有する偏光板に、所定の厚さ(表4)の粘着剤層を転写して試料とする。試料の粘着剤層を介して、無アルカリガラスに偏光板を貼り合わせた後、JIS K5600の引っかき硬度(鉛筆法)に準拠して試料表面の鉛筆硬度試験を行い、「ハードコート層/偏光板/粘着剤層/無アルカリガラス」の層構成における、ハードコート層の表面の鉛筆硬度を測定した。
【0059】
表3、及び表4に、評価結果を示す。なお、結果を特に示さないが、アクリル系ポリマーの酸価は、カルボキシル基含有共重合性ビニルモノマーを使用していない実施例1~5及び比較例2~3では0.1以下であった。また、アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、いずれも100万以上であった。
【0060】
【0061】
【0062】
本発明に係わる粘着フィルムである、実施例1~5の粘着フィルムは、アクリル系ポリマーが、主成分の(メタ)アクリル系モノマーの合計100重量部のうち、ブチルアクリレートを少なくとも40重量部以上含有している。また、実施例1~5のアクリル系ポリマーは、カルボキシル基含有共重合性ビニルモノマーを含まず、アクリル系ポリマーのTgが-35℃以上であり、酸価が0.1以下であり、重量平均分子量が100万以上であり、架橋後のゲル分率が40~85%である。また、粘着剤層を介して無アルカリガラスに貼合した偏光板の表面の鉛筆硬度が、見掛け上においても2Hのままであった。このことにより、本発明に係わる粘着フィルムを使用すれば、光学部材を貼合した積層体の表面硬度の測定値に誤差を生じることがない。
また、実施例1~5の粘着剤層は、厚さ10μmの粘着剤層の粘着力が1.5~8.0N/25mmであり、且つ、耐久性が優れていた。また、実施例1~5の粘着フィルムを、被着体に貼り合わせた後、70℃×10日で保管した後の粘着力が、10N/25mm以下であることにより、リワーク性にも優れていた。すなわち、実施例1~5の粘着フィルムによれば、従来技術における要求事項および問題を克服することができた。
【0063】
比較例1の粘着フィルムは、アクリル系ポリマーにカルボキシル基含有共重合性ビニルモノマーを含むため、アクリル系ポリマーの酸価が0.1より大きくなった。また、比較例1の粘着フィルムは、アクリル系ポリマーにブチルアクリレートを含まず、架橋剤の含有量が過多であり、アクリル系ポリマーのTgが-35℃より低いためか、リワーク性がやや悪く、60℃×90%RHの耐久性が悪かった。また、粘着剤層を介して無アルカリガラスに貼合した偏光板の表面の鉛筆硬度が、見掛け上において2HからHに低下した。
【0064】
比較例2の粘着フィルムは、アクリル系ポリマーにブチルアクリレートを含まず、アクリル系ポリマーのTgが-35℃より低く、架橋剤の含有量が過多であった。また、架橋後のゲル分率が高いためか、厚さ10μmの粘着剤層の粘着力が1.5N/25mmより小さく、80℃dryの耐久性がやや悪く、60℃×90%RHの耐久性が悪かった。また、粘着剤層を介して無アルカリガラスに貼合した偏光板の表面の鉛筆硬度が、見掛け上において2HからHに低下した。
【0065】
比較例3の粘着フィルムは、アクリル系ポリマーに水酸基含有共重合性ビニルモノマー及びカルボキシル基含有共重合性ビニルモノマーを含まないため、架橋剤を用いても、架橋後のゲル分率が0%であった(実質的には架橋していない)。また、アクリル系ポリマーのTgが-35℃より低く、粘着力が非常に大きく、リワーク性及び耐久性が悪かった。また、粘着剤層を介して無アルカリガラスに貼合した偏光板の表面の鉛筆硬度が、見掛け上において2HからHに低下した。
【0066】
このように、比較例1~3の粘着フィルムでは、従来技術における要求事項および問題を克服することができなかった。