(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023116983
(43)【公開日】2023-08-23
(54)【発明の名称】網点印刷物用データの作成方法
(51)【国際特許分類】
H04N 1/405 20060101AFI20230816BHJP
G06F 3/12 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
H04N1/405 512
G06F3/12 308
G06F3/12 344
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022019421
(22)【出願日】2022-02-10
(71)【出願人】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】大井 誠
(72)【発明者】
【氏名】秋山 洋平
【テーマコード(参考)】
5C077
【Fターム(参考)】
5C077LL04
5C077LL19
5C077MP01
5C077NN02
5C077NN06
5C077NN07
5C077PP19
5C077PP68
5C077TT02
5C077TT08
(57)【要約】
【課題】マスク処理する形状に対応した滑らかな階調表現が可能な網点印刷物用データを提供する。
【解決手段】網点印刷物用データの作成方法の網点画像データ作成ステップでは、グレースケール画像データに複数の網点を付与して網点画像データを作成する。マスク画像データ作成ステップでは、網点画像データをマスク処理する形状に応じて変形させてマスク画像データを作成する。濃度測定ステップでは、マスク画像データの各網点による濃度を測定する。濃度調整ステップでは、グレースケール画像データの濃度に基づいて、マスク画像データの各網点による濃度を調整して網点印刷物用データを作成する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グレースケール画像データを複数の網点に変換して網点画像データを作成する網点画像データ作成ステップと、
前記網点画像データをマスク処理する形状に応じて変形させてマスク画像データを作成するマスク画像データ作成ステップと、
前記マスク画像データの各網点による濃度を測定する濃度測定ステップと、
前記グレースケール画像データの濃度に基づいて、前記マスク画像データの各網点における面積率を調整して網点印刷物用データを作成する濃度調整ステップと、を備える
網点印刷物用データの作成方法。
【請求項2】
前記濃度調整ステップでは、前記グレースケール画像データの濃度と前記マスク画像データの各網点における面積率が異なる部分を濃度調整範囲に決定し、濃度調整範囲の各網点おける面積率を調整する請求項1に記載の網点印刷物用データの作成方法。
【請求項3】
前記網点印刷物用データの各網点における面積率が、前記グレースケール画像データの対応する箇所の濃度と同じになるまで前記濃度調整ステップを繰り返す請求項1又は2記載の網点印刷物用データの作成方法。
【請求項4】
グレースケール画像データの階調をマスク処理する形状に基づいて調整して調整グレースケール画像データを作成する調整グレースケール画像データ作成ステップと、
前記調整グレースケール画像データに複数の網点を付与して調整済み網点画像データを作成する調整済み網点画像データ作成ステップと、
前記調整済み網点画像データを前記マスク処理する形状に応じて変形させて網点印刷物用データを作成する画像変形ステップと、を備える網点印刷物用データの作成方法。
【請求項5】
前記画像変形ステップ後に、前記網点印刷物用データの各網点における面積率が、前記グレースケール画像データの対応する箇所の濃度と異なる場合に、前記調整グレースケール画像データの階調を調整する調整ステップと、前記調整済み網点画像データ作成ステップと、前記画像変形ステップとを繰り返す請求項4に記載の網点印刷物用データの作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、網点印刷物用データの作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷物に連続階調画像を付す場合に、網点の画線構成(以下「スクリーン」という。)を適用することが知られている。スクリーンは、円、楕円、菱形、四角、砂目等の形状からなる微小な(1インチ当たり100~600個程度)画線を有する。そして、スクリーンでは、微小な画線の大小により単位面積当たりの画線面積率を変化させて、連続階調を再現する。
【0003】
特許文献1には、特殊形状網点印刷物、並びに特殊網点の作成方法が開示されている。特殊形状網点とは、各々の網点が特殊な形状を有するものであり、当該網点の形状を変化させることで階調表現を行う網点である。
図10に示すように、従来の特殊形状網点を用いた網点印刷物では、特殊形状網点を含むユニットの集まりであるセルを規則的に所定のピッチでマトリックス状に配置している。
【0004】
ここで、スクリーンにおける「セル」と「ユニット」について説明する。「セル」は、網点の画線を構成する基本単位である。すなわち、スクリーンは、複数のセルが隙間なく埋め尽くされるように並べられて構成されている。「セル」の形状は、例えば、正方形、長方形、正六角形等を挙げることができる。そして、「セル」は、1個の「ユニット」又は複数の「ユニット」から構成されている。「ユニット」は、網点或いは特殊形状網点を含む。
【0005】
従来の網点印刷物用データを作成する場合は、階調表現を実施する濃度に基づいて、セルごとにハーフトーンスクリーニング(網点のぼかし処理)を実施する。そして、印刷物上に印刷する画像の形状に応じたマスク処理を実施する。これにより、階調画像を形成する網点印刷物用データが作成される。
【0006】
図10に示すように、スクリーンを網点の配列方向と平行な線分で構成される正方形又は長方形にマスク処理した場合には、全ての特殊形状網点により階調表現を実施することができる。その結果、印刷領域に合わせた階調表現が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来技術では、規則的に並べられた特殊形状網点(通常形状の網点でもよい)により構成される画像を基にしてマスク処理を行うため、
図11に示すように、マスク処理する形状が、例えば、網点の配列方向と平行な線分で構成されない略円弧状である場合は、輪郭部分に該当する網点の形状が維持されない。したがって、マスク処理する形状が網点の配列方向と平行な線分で構成されない場合は、階調を正確に表現できないという問題が生じる。
【0009】
本発明の目的は、上記の問題点を考慮し、マスク処理する形状に対応した滑らかな階調表現が可能な網点印刷物用データの作成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の網点印刷物用データの作成方法は、網点画像データ作成ステップと、マスク画像データ作成ステップと、濃度測定ステップと、濃度調整ステップと、を備える。網点画像データ作成ステップでは、グレースケール画像データに複数の網点を付与して網点画像データを作成する。マスク画像データ作成ステップでは、網点画像データをマスク処理する形状に応じて変形させてマスク画像データを作成する。濃度測定ステップでは、マスク画像データの各網点における面積率を測定する。濃度調整ステップでは、グレースケール画像データの濃度に基づいてマスク画像データの各網点における面積率を調整して網点印刷物用データを作成する。
【0011】
また、本発明の網点印刷物用データの作成方法は、調整グレースケール画像データ作成ステップと、調整済み網点画像データ作成ステップと、画像変形ステップと、を備える。調整グレースケール画像データ作成ステップでは、グレースケール画像データの階調をマスク処理する形状に基づいて調整して調整グレースケール画像データを作成する。調整済み網点画像データ作成ステップでは、調整グレースケール画像データに複数の網点を付与して調整済み網点画像データを作成する。画像変形ステップでは、調整済み網点画像データをマスク処理する形状に応じて変形させて網点印刷物用データを作成する。
【発明の効果】
【0012】
上記構成の網点印刷物用データの作成方法によれば、マスク処理する形状に対応した滑らかな階調表現が可能な網点印刷物用データを作成することができる。
なお、上述した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る網点印刷物用データを用いて印刷された画像を模式的に表した図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る網点印刷物用データの第1の作成方法を説明する図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る網点印刷物用データの第1の作成方法を説明する図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る網点印刷物用データの第2の作成方法を説明する図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る網点印刷物用データ作成装置の構成例を示すブロック図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る網点印刷物用データ作成装置における画像処理部の内部構成例を示すブロック図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る網点印刷物用データ作成処理(階調有り)の例を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の一実施形態に係る網点印刷物用データ作成処理(階調無し)の例を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の一実施形態に係る網点印刷物用データにおけるマスク処理する形状の変形例を示す図である。
【
図10】従来の網点印刷データの作成においてスクリーンを正方形又は長方形にマスク処理する例を示す説明図である。
【
図11】従来の網点印刷データの作成においてスクリーンを略円弧状にマスク処理する例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る網点印刷物用データの作成方法について、
図1~
図9を参照して説明する。なお、各図において共通の構成には、同一の符号を付している。
【0015】
(網点印刷物用データを用いて印刷された画像)
まず、一実施形態に係る網点印刷物用データを用いて印刷された画像について、
図1を参照して説明する。
図1(A)は、一実施形態に係る網点印刷物用データを用いて印刷された画像を模式的に表した図である。
図1(B)は、
図1(A)に示す画像における複数の網点が並ぶ方向を示す図である。
【0016】
図1(A)に示す画像1は、規則的に並べられた複数の網点によって連続階調を表す画像であり、網点印刷物用データを用いて印刷物に印刷される。画像1の輪郭(外形)は、適当な幅を有する円弧状に設定されている。なお、複数の網点によって連続階調を表す画像の形状としては、適当な幅を有する円弧状に限定されず、適宜設定することができる。
【0017】
図1(B)に示すように、画像1を形成する複数の網点は、画像1の輪郭に沿って規則的に並べられている。すなわち、複数の網点は、画像1の周方向及び径方向(幅方向)に沿って並べられている。画像1の周方向に並ぶ複数の網点は、同じ大きさに設定されている。一方、径方向に並ぶ複数の網点は、内周側に向かうにつれて小さくなるように設定されている。これにより、画像1は、一定の濃度で表される。
【0018】
(網点印刷物用データの作成)
次に、網点印刷物用データの作成について、
図2~
図4を参照して説明する。
図2及び
図3は、網点印刷物用データの作成方法1を説明する図である。
図4は、網点印刷物用データの作成方法2を説明する図である。
【0019】
以下、複数の網点で表される画像を網点印刷画像とする。そして、網点印刷画像を印刷するためのデータを網点印刷物用データとする。また、ここでは、形状が適当な幅を有する円弧状であり、同一濃度の網点印刷画像に係る網点印刷物用データの作成方法を説明する。
【0020】
(作成方法1)
まず、一定の濃度に設定された長方形の画像を示すグレースケール画像データ(
図2(A)参照)を作成する。すなわち、網点印刷画像のサイズに合わせて、基となるグレースケール画像データのサイズを変更する。基となるグレースケール画像データは、あらかじめ記憶部に記憶されたものでもよく、サーバや一般通信網を介して提供されたものであってもよい。
【0021】
次に、作成したグレースケール画像データ(
図2(A)参照)に、複数の網点をマトリックス状に配置する。これにより、
図2(B)に示す網点画像データが作成される。そして、網点画像データにおいて、各網点を結ぶ仮想のグリッドを形成する。
【0022】
次に、仮想のグリッドをマスク処理する形状に合わせて変形させて、マスク画像データを作成する(
図2(C)参照)。なお、マスク処理する形状は、網点印刷画像の形状である。マスク画像データにおいて、複数の網点は、マスク処理する形状(印刷する画像の輪郭)に沿って配置される。
【0023】
図2(C)に示すように、マスク画像データに係る画像の径方向の外側では、周方向に隣り合う網点間の距離が広くなる。一方、マスク画像データに係る画像の径方向の内側では、周方向に隣り合う網点間の距離が狭くなる。したがって、網点を同じ大きさにすると、網点印刷画像の濃度が不均一になる。
【0024】
そこで、マスク画像データに発生する濃度の不均一を解消するため、隣り合う網点間の距離に応じて網点の大きさを変化させることで濃度を調整する。
図3には、濃度の調整の大小が示されており、
図3において黒色が濃くなるほど濃度の調整範囲が大きい。
【0025】
図3に示すように、マスク画像データに係る画像の径方向の外側における網点間の距離は、網点画像データ(
図2(B)参照)における網点間の距離との差が小さい。その結果、マスク画像データにおける外周側は、濃度の調整値(網点の大きさの変化)が小さくなる。一方、マスク画像データにおける内周側の網点間の距離は、網点画像データ(
図2(B)参照)における網点間の距離との差が大きい。その結果、マスク画像データにおける内周側は、濃度の調整値(網点の大きさの変化)が大きくなる。
【0026】
濃度の調整後、ハーフトーンスクリーニングを実施する。これにより、網点印刷物用データが作成される。このような作成方法1は、各網点の大きさを細かく調整して、グレースケール画像データの階調に近づけることができる。したがって、作成方法1は、階調表現が豊かな画像(例えば、顔画像等の写真階調画像)を形成する場合に実施することが好ましい。
【0027】
(作成方法2)
まず、作成方法1と同様に、一定の濃度に設定された長方形の画像を示すグレースケール画像データ(
図2(A)参照)を作成する。次に、グレースケール画像データをマスク処理する形状に合わせて変形した場合の濃度変化を想定して、グレースケール画像データの階調を調整する。これにより、調整グレースケール画像データ(
図4(A)参照)が作成される。
【0028】
次に、調整グレースケール画像データに、複数の網点をマトリックス状に配置する。これにより、
図4(B)に示す調整済み網点画像データが作成される。そして、調整済み網点画像データにおいて、各網点を結ぶ仮想のグリッドを形成する。
図4(B)に示すように、複数の網点は、調整グレースケール画像データが表す濃度に応じて大きさが設定されている。つまり、複数の網点は、調整済み網点画像データに係る画像における一方(下方)の長辺に向かうにつれて小さくなっている。調整済み網点画像データに係る画像における一方の長辺は、網点印刷物用データに係る画像における内周側に対応する。
【0029】
次に、仮想のグリッドをマスク処理する形状に合わせて変形させて、マスク画像データを作成する(
図4(C)参照)。
図4(C)に示すように、マスク画像データに係る画像における外周側では、周方向に隣り合う網点間の距離が広くなり、網点が相対的に大きくなっている。一方、マスク画像データに係る画像における内周側では、周方向に隣り合う網点間の距離が狭くなり、網点が相対的に小さくなっている。したがって、網点印刷画像の濃度が均一になる。
【0030】
マスク画像データの作成後、ハーフトーンスクリーニングを実施する。これにより、網点印刷物用データが作成される。このような作成方法2は、マスク処理する形状に合わせて変形した場合の濃度変化を想定して濃度の調整を行うため、各網点の面積率を細かく調整しない。したがって、第2の作成方法は、単純な模様の画像や階調が乏しい画像を形成する場合に実施することが好ましい。
【0031】
(網点印刷物用データ作成装置の構成)
次に、網点印刷物用データを作成する装置の構成を、
図5を参照して説明する。
図5は、網点印刷物用データを作成する装置の構成例を示すブロック図である。
【0032】
図5に示すように、網点印刷物用データを作成する装置は、制御部10と、記憶部15と、設定項目入力部16と、画像データ入力部17と、画像処理部18と、画像データ出力部19と、を備える。
【0033】
制御部10は、CPU11、ROM12及びRAM13を有する。CPU11は、画像データの作成に係る各機能を実現するソフトウェアのプログラムコードをROM12から読み出してRAM13にロードし、実行する。ROM12は、CPU11が動作するために必要なプログラムやデータ等を記録している。RAM13には、CPU11の演算処理の途中で発生した変数やパラメータ等が一時的に書き込まれ、これらの変数やパラメータ等がCPU11によって適宜読み出される。
【0034】
記憶部15は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)からなり、基となるグレースケール画像データや、作成した網点印刷物用データ等を記憶する。なお、CPU11は、記憶部15に記憶されているプログラムをRAM13に展開して各処理を実行してもよい。
【0035】
設定項目入力部16は、不図示の操作部及び表示部を含む。表示部はユーザへのメッセージを表示し、操作部はユーザによる操作指示を受け付ける。ユーザは、設定項目入力部16を用いて、例えば、網点の形状、網点印刷画像の形状、基となるグレースケール画像データのサイズ及び形状等を選択する。なお、設定項目入力部16は、タッチパネル機能を有する表示部であってもよい。
【0036】
画像データ入力部17は、例えば、不図示のサーバから送信された画像データや、一般回線網を通じて送信された画像データを受信する。画像データ入力部17が受信した画像データは、例えば、記憶部15に記憶される。
【0037】
画像処理部18は、グレースケール画像データに画像処理を施して、網点印刷画像を印刷するための網点印刷物用データを作成する。画像データ出力部19は、画像処理部18により作成された網点印刷物用データを、サーバや印刷装置に送信する。また、画像処理部18により作成された網点印刷物用データは、記憶部15に記憶される。
【0038】
(画像処理部の機能構成)
次に、画像処理部18の内部構成について、
図6を参照して説明する。
図6は、画像処理部18の内部構成例を示すブロック図である。
【0039】
図6に示すように、画像処理部18は、階調調整部21と、網点付与部22と、画像変形部23と、画像濃度測定部24と、濃度調整範囲決定部25と、画像濃度調整部26とを有する。
【0040】
階調調整部21は、ユーザが入力した設定項目に基づいて、グレースケール画像データに係る画像の形状及びサイズを決定する。上述したように、グレースケール画像データには、複数の網点をマトリックス状に配置する。そのため、グレースケール画像データに係る画像の形状は、基本的に長方形や正方形に決定される。
【0041】
網点付与部22は、網点の形状を決定する。網点の形状は、例えば、円、楕円、菱形、四角、砂目等を挙げることができる。また、網点は、例えば、星型や十字型等の特殊形状網点であってもよい。また、網点付与部22は、グレースケール画像データに網点を付与して、網点画像データを作成する。
【0042】
画像変形部23は、網点画像データにおける各網点を結ぶ仮想のグリッドを、ユーザが入力したマスク処理する形状に合わせて変形させて、マスク画像データを作成する。画像濃度測定部24は、マスク画像データに係る画像の各領域の濃度を測定する。また、画像濃度測定部24は、グレースケール画像データに係る画像の各領域の濃度を測定する。
【0043】
濃度調整範囲決定部25は、画像濃度測定部24の測定結果を分析して、マスク画像データにおけるグレースケール画像データと異なる濃度の範囲を濃度調整範囲に決定する。画像濃度調整部26は、濃度調整範囲決定部25が決定した濃度調整範囲の濃度を調整し、グレースケール画像データの対応する範囲の濃度と同じにする。
【0044】
(網点印刷物用データ作成処理)
次に、網点印刷物用データを作成する装置による網点印刷物用データ作成処理について、
図7及び
図8を参照して説明する。
図7は、網点印刷物用データ作成処理(階調有り)の例を示すフローチャートである。
図8は、網点印刷物用データ作成処理(階調無し)の例を示すフローチャートである。
【0045】
(階調有り)
まず、階調有りのグレースケール画像データから網点印刷物用データを作成する処理方法について、
図7を用いて説明する。
【0046】
制御部10は、基となる階調有りのグレースケール画像の模様が複雑であるか否かを判定する(S1)。制御部10は、例えば、ユーザが入力した設定項目に基づいて、基となるグレースケール画像の模様が複雑であるか否かを判定する。この場合は、ユーザが、基となるグレースケール画像が複雑な模様であるか否かをあらかじめ入力しておくようにする。なお、制御部10は、例えば、グレースケール画像データを分析して、その分析結果から基となるグレースケール画像の模様が複雑であるか否かを判定してもよい。
【0047】
ステップS1において、制御部10が基となるグレースケール画像の模様が複雑であると判定したとき(S1がYES判定の場合)、制御部10は、画像処理部18に対して作成方法1の画像処理を実行する指令を送る。
【0048】
作成方法1の画像処理を実行する指令を受けた画像処理部18は、グレースケール画像データを作成する(S2)。すなわち、画像処理部18の階調調整部21が、基となるグレースケール画像の形状及びサイズを決定する。
【0049】
次に、画像処理部18の網点付与部22は、グレースケール画像データに網点を付与して、網点画像データを作成する(S3)。ステップS3は、本発明に係る網点画像データ作成ステップに対応する。
【0050】
次に、画像処理部18の画像変形部23は、網点画像データにおける各網点を結ぶ仮想のグリッドを、ユーザが入力したマスク処理する形状に合わせて変形させて、マスク画像データを作成する(S4)。ステップS4は、本発明に係るマスク画像データ作成ステップに対応する。
【0051】
次に、画像処理部18の画像濃度測定部24は、マスク画像データ及びグレースケール画像データの各領域の濃度を測定する(S5)。ステップS5は、本発明に係る濃度測定ステップに対応する。
【0052】
次に、画像処理部18の濃度調整範囲決定部25は、マスク画像データにおける濃度調整範囲を決定する(S6)。濃度調整範囲は、マスク画像データにおけるグレースケール画像データと異なる濃度の範囲(領域)である。
【0053】
次に、画像処理部18の画像濃度調整部26は、濃度調整範囲の濃度を調整する(S7)。ステップS7の処理は、本発明に係る濃度調整ステップに対応する。ステップS7の処理では、濃度調整範囲の濃度がグレースケール画像データの対応する範囲の濃度と同じになるように調整する。
【0054】
次に、画像処理部18の画像濃度測定部24は、濃度調整範囲の濃度がグレースケール画像データの対応する範囲の濃度と同じになったか否かを判定する(S8)。ステップS8において、濃度調整範囲の濃度がグレースケール画像データの対応する範囲の濃度と同じになったと判定したとき(S8がYES判定の場合)、制御部10は、濃度を調整したマスク画像データを網点印刷物用データとする。そして、制御部10は、網点印刷物用データ作成処理(階調有り)を終了する。
【0055】
一方、ステップS8において、濃度調整範囲の濃度がグレースケール画像データの対応する範囲の濃度と同じになっていないと判定したとき(S8がNO判定の場合)、制御部10は、処理をステップS6に戻す。そして、濃度調整範囲の濃度がグレースケール画像データの対応する範囲の濃度と同じになるまで、ステップS6及びステップS7を繰り返す。
【0056】
このように、作成方法1の画像処理では、基となるグレースケール画像データの濃度と同じになるように、マスク画像データの濃度を調整して、網点印刷物用データを作成する。これにより、網点印刷物用データを用いて印刷した画像は、基となるグレースケール画像と同様に、マスク処理する形状に対応した滑らかな階調表現が可能になる。
【0057】
ステップS1において、制御部10が、基となるグレースケール画像の模様が複雑でないと判定したとき(S1がNO判定の場合)、制御部10は、画像処理部18に対して作成方法2の画像処理を実行する指令を送る。
【0058】
作成方法2の画像処理を実行する指令を受けた画像処理部18は、調整グレースケール画像データを作成する(S9)。ステップS9の処理は、本発明に係る調整グレースケール画像データ作成ステップに対応する。ステップS9の処理では、画像処理部18の階調調整部21が、基となるグレースケール画像の形状及びサイズを決定する。そして、階調調整部21は、グレースケール画像データをマスク処理する形状に合わせて変形した場合の濃度変化を想定して、グレースケール画像データの濃度(階調)を調整する。その結果、調整グレースケール画像データが作成される。
【0059】
次に、画像処理部18の画像濃度調整部26は、調整グレースケール画像データの濃度を微調整する(S10)。ステップS10の処理は、本発明に係る調整ステップに対応する。ステップS10の処理は、後述するステップS13がNO判定の場合に行う。したがって、ステップS9の処理後は、ステップS10の処理を省略して、ステップS11に移行する。
【0060】
次に、画像処理部18の網点付与部22は、調整グレースケール画像データに網点を付与して、調整済み網点画像データを作成する(S11)。ステップS11の処理は、本発明に係る調整済み網点画像データ作成ステップに対応する。
【0061】
次に、画像処理部18の画像変形部23は、調整済み網点画像データにおける各網点を結ぶ仮想のグリッドを、ユーザが入力したマスク処理する形状に合わせて変形させて、マスク画像データを作成する(S12)。ステップS12の処理は、本発明に係る画像変形ステップに対応する。
【0062】
次に、画像処理部18の画像濃度測定部24は、マスク画像データの濃度がグレースケール画像データの濃度と同じになったか否かを判定する(S13)。ステップS13において、マスク画像データの濃度がグレースケール画像データの濃度と同じになったと判定したとき(S13がYES判定の場合)、制御部10は、マスク画像データを網点印刷物用データとする。そして、制御部10は、網点印刷物用データ作成処理(階調有り)を終了する。
【0063】
一方、ステップS13において、マスク画像データの濃度がグレースケール画像データの濃度と同じになっていないと判定したとき(S13がNO判定の場合)、制御部10は、処理をステップS10に戻す。そして、マスク画像データの濃度がグレースケール画像データの濃度と同じになるまで、ステップS10からステップS12を繰り返す。
【0064】
このように、作成方法2の画像処理では、グレースケール画像データをマスク処理する形状に合わせて変形した場合の濃度変化を想定する。そして、想定した濃度変化に応じてグレースケール画像データの濃度(階調)を調整し、網点印刷物用データを作成する。これにより、網点印刷物用データを用いて印刷した画像は、基となるグレースケール画像と同様に、マスク処理する形状に対応した滑らかな階調表現が可能になる。
【0065】
(階調無し)
次に、階調無しのグレースケール画像データから網点印刷物用データを作成する処理方法について、
図8を用いて説明する。
【0066】
制御部10は、階調無しのグレースケール画像データに係る画像の模様が複雑であるか否かを判定する(S21)。制御部10は、例えば、ユーザが入力した設定項目に基づいて、画像の模様が複雑であるか否かを判定する。
【0067】
ステップS21において、制御部10がグレースケール画像データに係る画像の模様が複雑であると判定したとき(S21がYES判定の場合)、制御部10は、画像処理部18に対して作成方法1の画像処理を実行する指令を送る。
【0068】
作成方法1の画像処理を実行する指令を受けた画像処理部18は、均一な濃度のグレースケール画像データを作成する(S22)。すなわち、画像処理部18の階調調整部21は、基となる均一な濃度のグレースケール画像(2値画像)の形状及びサイズを決定する。
【0069】
その後、画像処理部18は、ステップS23~S28の処理を行う。
図8に示すステップS23~S28の処理は、
図7に示すステップS3~S8の処理と同じである。そのため、ステップS23~S8の処理についての説明を省略する。
【0070】
上述したように、作成方法1の画像処理では、基となるグレースケール画像データの濃度と同じになるように、マスク画像データの濃度を調整して、網点印刷物用データを作成する。これにより、網点印刷物用データを用いて印刷した画像は、基となるグレースケール画像と同様に、マスク処理する形状に対応した滑らかな階調表現が可能になる。
【0071】
ステップS21において、制御部10が、基となるグレースケール画像の模様が複雑でないと判定したとき(S21がNO判定の場合)、制御部10は、画像処理部18に対して作成方法2の画像処理を実行する指令を送る。
【0072】
作成方法2の画像処理を実行する指令を受けた画像処理部18は、ステップS29~S33の処理を行う。
図8に示すステップS29~S33の処理は、
図7に示すステップS9~S13の処理と同じである。そのため、ステップS29~S33の処理についての説明を省略する。
【0073】
上述したように、作成方法2の画像処理では、グレースケール画像データをマスク処理する形状に合わせて変形した場合の濃度変化を想定する。そして、想定した濃度変化に応じてグレースケール画像データの濃度(階調)を調整し、網点印刷物用データを作成する。これにより、網点印刷物用データを用いて印刷した画像は、基となるグレースケール画像と同様に、マスク処理する形状に対応した滑らかな階調表現が可能になる。
【0074】
(マスク処理する形状の変形例)
次に、マスク処理する形状の変形例について、
図9を参照して説明する。
図9は、マスク処理する形状の変形例を示す図である。
【0075】
図9(A)は、マスク処理する形状が湾曲する帯状である場合の例を示している。この帯状の画像では、複数の特殊形状網点が輪郭に沿って並んでいる。複数の特殊形状網点は、全て同じ大きさに設定されている。これにより、
図9(A)に示す帯状の画像は、複数の特殊形状網点によって一定の濃度で表現される。なお、複数の網点からなる帯状の画像は、一定の濃度で表現されるものに限定されず、階調を有するものであってもよい。
【0076】
図9(B)は、マスク処理する形状が円形である場合の例を示している。この円形の画像では、複数の特殊形状網点が径方向及び周方向に沿って並んでいる。周方向に沿って並ぶ複数の特殊形状網点は同じ大きさであり、径方向に沿って並ぶ複数の特殊形状網点に沿って並ぶ複数の特殊形状網点は小さくなっている。これにより、
図9(B)に示す円形の画像は、複数の特殊形状網点によって一定の濃度で表現される。なお、複数の網点からなる円形の画像は、一定の濃度で表現されるものに限定されず、階調を有するものであってもよい。
【0077】
図9(C)は、マスク処理する形状が平行四辺形である場合の例を示している。この平行四辺形の画像では、複数の特殊形状網点が輪郭に沿って並んでいる。
図9(C)において、上下方向で対向する2辺に沿って並ぶ複数の特殊形状網点は同じ大きさである。また、
図9(C)において、左右方向で対向する2辺に沿って並ぶ複数の特殊形状網点は、下方に向かうにつれて小さくなる。これにより、
図9(C)に示す平行四辺形の画像は、複数の特殊形状網点によって下方に向かうにつれて濃度が薄くなるように階調表現される。なお、複数の網点からなる平行四辺形の画像は、階調を有するものに限定されず、一定の濃度で表現されるものであってもよい。
【0078】
以上説明したように、上述した実施形態に係る網点印刷物用データの作成方法1は、網点画像データ作成ステップと、マスク画像データ作成ステップと、濃度測定ステップと、濃度調整ステップとを備える。網点画像データ作成ステップでは、グレースケール画像データに複数の網点を付与して網点画像データを作成する。マスク画像データ作成ステップでは、網点画像データをマスク処理する形状に応じて変形させてマスク画像データを作成する。濃度測定ステップでは、マスク画像データの各網点による濃度を測定する。濃度調整ステップでは、グレースケール画像データの濃度に基づいて、マスク画像データの各網点における面積率を調整して網点印刷物用データを作成する。
これにより、作成方法1で作成した網点印刷物用データを用いて印刷した画像は、基となるグレースケール画像と同様に、マスク処理する形状に対応した滑らかな階調を表現することができる。
【0079】
上述した実施形態に係る網点印刷物用データの作成方法1における濃度調整ステップでは、グレースケール画像データの濃度とマスク画像データの各網点による濃度が異なる部分を濃度調整範囲に決定し、濃度調整範囲の各網点における面積率を調整する。
これにより、マスク画像データの網点による濃度の調整を効率よく行うことができる。
【0080】
上述した実施形態に係る網点印刷物用データの作成方法1では、網点印刷物用データの各網点による面積率が、グレースケール画像データの対応する箇所の濃度と同じになるまで濃度調整ステップを繰り返す。これにより、マスク処理する形状に対応した滑らかな階調を高精度に表現することができる。
【0081】
上述した実施形態に係る網点印刷物用データの作成方法2は、調整グレースケール画像データ作成ステップと、調整済み網点画像データ作成ステップと、画像変形ステップと、を備える。調整グレースケール画像データ作成ステップでは、グレースケール画像データの階調をマスク処理する形状に基づいて調整して調整グレースケール画像データを作成する。調整済み網点画像データ作成ステップでは、調整グレースケール画像データに複数の網点を付与して調整済み網点画像データを作成する。画像変形ステップでは、調整済み網点画像データをマスク処理する形状に応じて変形させて網点印刷物用データを作成する。
これにより、作成方法2で作成した網点印刷物用データを用いて印刷した画像は、基となるグレースケール画像と同様に、マスク処理する形状に対応した滑らかな階調を表現することができる。
【0082】
上述した実施形態に係る網点印刷物用データの作成方法2では、画像変形ステップ後に、網点印刷物用データの各網点による濃度が、グレースケール画像データの対応する箇所の濃度と異なる場合に、調整グレースケール画像データの階調を調整する調整ステップと、調整済み網点画像データ作成ステップと、画像変形ステップとを繰り返す。
これにより、マスク処理する形状に対応した滑らかな階調を高精度に表現することができる。
【0083】
以上、本発明の網点印刷物用データの作成方法について、その作用効果も含めて説明した。しかしながら、本発明の網点印刷物用データの作成方法は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0084】
例えば、上述した実施形態では、基となるグレースケール画像の模様が複雑でない場合に、作成方法2で網点印刷物用データを作成した。しかし、基となるグレースケール画像の模様が複雑でない場合に、作成方法1で網点印刷物用データを作成してもよい。
【0085】
なお、基となるグレースケール画像の模様が複雑である場合に、作成方法2で網点印刷物用データを作成してもよい。しかし、階調を高精度に表現するには、マスク画像データの濃度を調整する作成方法1で網点印刷物用データを作成することが好ましい。
【符号の説明】
【0086】
1…画像、 10…制御部、 11…CPU、 12…ROM、 13…RAM、 15…記憶部、 16…設定項目入力部、 17…画像データ入力部、 18…画像処理部、 19…画像データ出力部、 21…階調調整部、 22…網点付与部、 23…画像変形部、 24…画像濃度測定部、 25…濃度調整範囲決定部、 26…画像濃度調整部