(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117560
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】成膜方法及び成膜装置
(51)【国際特許分類】
C23C 16/04 20060101AFI20230817BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20230817BHJP
C23C 16/56 20060101ALI20230817BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20230817BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20230817BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
C23C16/04
C23C16/455
C23C16/56
H01L21/31 C
H01L21/316 X
H01L21/28 301R
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020187
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】東雲 秀司
(72)【発明者】
【氏名】河野 有美子
(72)【発明者】
【氏名】布瀬 暁志
【テーマコード(参考)】
4K030
4M104
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA01
4K030AA11
4K030AA14
4K030AA16
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4K030FA10
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4K030JA11
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4K030LA02
4K030LA15
4M104BB04
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4M104BB30
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4M104FF18
5F045AA06
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5F058BH12
5F058BH16
(57)【要約】
【課題】SAMのブロック性能を向上する、技術を提供する。
【解決手段】成膜方法は、下記(A)~(C)を含む。(A)第1膜と、前記第1膜とは異なる材料で形成される第2膜とを表面の異なる領域に有する基板を準備する。(B)前記基板の表面に対してカルボン酸またはホスホン酸のガスを供給することで、前記第1膜の表面に対して前記第2膜の表面に選択的に自己組織化単分子膜を形成する。(C)前記(B)の後に、前記自己組織化単分子膜を用いて前記第2膜の表面における対象膜の形成を阻害しつつ、前記第1膜の表面に前記対象膜を形成する。前記(C)は、(Ca)前記対象膜の前駆体ガスを前記基板の表面に対して供給することと、(Cb)カルボン酸またはホスホン酸のガスを酸化ガスとして前記基板の表面に対して供給することと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)第1膜と、前記第1膜とは異なる材料で形成される第2膜とを表面の異なる領域に有する基板を準備することと、
(B)前記基板の表面に対してカルボン酸またはホスホン酸のガスを供給することで、前記第1膜の表面に対して前記第2膜の表面に選択的に自己組織化単分子膜を形成することと、
(C)前記(B)の後に、前記自己組織化単分子膜を用いて前記第2膜の表面における対象膜の形成を阻害しつつ、前記第1膜の表面に前記対象膜を形成することと、
を有し、
前記(C)は、(Ca)前記対象膜の前駆体ガスを前記基板の表面に対して供給することと、(Cb)カルボン酸またはホスホン酸のガスを酸化ガスとして前記基板の表面に対して供給することと、を含む、成膜方法。
【請求項2】
前記(B)と前記(Ca)と前記(Cb)を含むサイクルを繰り返し実行する、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
(D)前記(C)の後に、前記基板の表面に対してプラズマ化した水素含有ガスを供給することで、前記(Ca)で前記対象膜に付いたカルボン酸またはホスホン酸の残滓を除去することを含む、請求項1または2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記(B)と前記(Ca)と前記(Cb)と前記(D)を含むサイクルを繰り返し実行する、請求項3に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記(B)と前記(Cb)とで、同じカルボン酸または同じホスホン酸のガスが用いられる、請求項1~4のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項6】
前記(Cb)で用いられるカルボン酸またはホスホン酸のガスは、前記(B)で用いられるカルボン酸またはホスホン酸のガスよりも短い直鎖を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項7】
前記(Cb)で用いられるカルボン酸またはホスホン酸のガス供給量は、前記(B)で用いられるカルボン酸またはホスホン酸のガス供給量よりも少量である、請求項1~6のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項8】
前記(B)で用いられるカルボン酸は、CF3(CF2)2COOH、CF3COOH、C6H5COOH、及びCH3(CH2)nCOOH(nは2~10の整数)からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項9】
前記第1膜は絶縁膜であり、前記第2膜は導電膜である、請求項1~8のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項10】
前記導電膜は、Cu膜、Co膜、Ru膜、又はW膜である、請求項9に記載の成膜方法。
【請求項11】
処理容器と、
前記処理容器の内部で前記基板を保持する保持部と、
前記処理容器の内部にガスを供給するガス供給機構と、
前記処理容器の内部からガスを排出するガス排出機構と、
前記処理容器に対して前記基板を搬入出する搬送機構と、
前記ガス供給機構、前記ガス排出機構及び前記搬送機構を制御し、請求項1~9のいずれか1項に記載の成膜方法を実施する制御部と、
を備える、成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成膜方法及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自己組織化単分子膜(Self-Assembled Monolayer:SAM)を用いて基板表面の一部における対象膜の形成を阻害しつつ、基板表面の別の一部に対象膜を形成する成膜方法が記載されている。SAMの前駆体として、チオール系化合物またはシラン系化合物を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一態様は、SAMのブロック性能を向上する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様の成膜方法は、下記(A)~(C)を含む。(A)第1膜と、前記第1膜とは異なる材料で形成される第2膜とを表面の異なる領域に有する基板を準備する。(B)前記基板の表面に対してカルボン酸またはホスホン酸のガスを供給することで、前記第1膜の表面に対して前記第2膜の表面に選択的に自己組織化単分子膜を形成する。(C)前記(B)の後に、前記自己組織化単分子膜を用いて前記第2膜の表面における対象膜の形成を阻害しつつ、前記第1膜の表面に前記対象膜を形成する。前記(C)は、(Ca)前記対象膜の前駆体ガスを前記基板の表面に対して供給することと、(Cb)カルボン酸またはホスホン酸のガスを酸化ガスとして前記基板の表面に対して供給することと、を含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、SAMのブロック性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る成膜方法を示すフローチャートである。
【
図2】
図2(A)はステップS1の一例を示す図であり、
図2(B)はステップS2の一例を示す図であり、
図2(C)はステップS3の一例を示す図である。
【
図3】
図3(A)はステップS41の一例を示す図であり、
図3(B)はステップS42の一例を示す図であり、
図3(C)はステップS5の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、変形例に係る成膜方法を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、一実施形態に係る成膜装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0009】
図1~
図3を参照して、一実施形態に係る成膜方法について説明する。成膜方法は、例えば
図1に示すステップS1~S6を含む。なお、成膜方法は、少なくともステップS1及びS3~S4を含めばよく、例えばステップS2及びS5~S6を含まなくてもよい。また、成膜方法は、
図1に示すステップS1~S6以外のステップを含んでもよい。
【0010】
図1のステップS1は、
図2(A)に示すように、基板1を準備することを含む。基板1は、不図示の下地基板を有する。下地基板は、例えば、シリコンウェハ、化合物半導体ウェハ、又はガラス基板である。
【0011】
基板1は、基板表面1aの異なる領域に、絶縁膜11と導電膜12を有する。基板表面1aは、例えば基板1の上面である。絶縁膜11と導電膜12は、下地基板の上に形成される。下地基板と絶縁膜11との間、または下地基板と導電膜12との間には、別の機能膜が形成されてもよい。絶縁膜11は第1膜の一例であり、導電膜12は第2膜の一例である。なお、第1膜の材質と第2膜の材質は、特に限定されない。
【0012】
絶縁膜11は、例えば層間絶縁膜である。層間絶縁膜は、好ましくは低誘電率(Low-k)膜である。絶縁膜11は、特に限定されないが、例えばSiO膜、SiN膜、SiOC膜、SiON膜、又はSiOCN膜である。ここで、SiO膜とは、シリコン(Si)と酸素(O)を含む膜という意味である。SiO膜のSiとOの原子比は通常1:2であるが、本願におけるSiO膜のSiとOの原子比は1:2には限定されない。SiN膜、SiOC膜、SiON膜、及びSiOCN膜について同様である。絶縁膜11は、基板表面1aに凹部を有する。凹部は、トレンチ、コンタクトホール又はビアホールである。
【0013】
導電膜12は、例えば絶縁膜11の凹部に充填される。導電膜12は、例えば金属膜である。金属膜は、例えば、Cu膜、Co膜、Ru膜、又はW膜である。なお、導電膜12は、キャップ膜であってもよい。つまり、絶縁膜11の凹部には不図示の第2導電膜が埋め込まれ、第2導電膜を導電膜12が覆ってもよい。第2導電膜は、導電膜12とは異なる金属で形成される。
【0014】
基板1は、図示しないが、基板表面1aに第3膜をさらに有してもよい。第3膜は、例えばバリア膜である。バリア膜は、絶縁膜11と導電膜12の間に形成され、導電膜12から絶縁膜11への金属拡散を抑制する。バリア膜は、特に限定されないが、例えば、TaN膜、又はTiN膜である。ここで、TaN膜とは、タンタル(Ta)と窒素(N)を含む膜という意味である。TaN膜におけるTaとNの原子比は1:1には限定されない。TiN膜について同様である。
【0015】
基板1は、図示しないが、基板表面1aに第4膜をさらに有してもよい。第4膜は、例えばライナー膜である。ライナー膜は、導電膜12とバリア膜の間に形成される。ライナー膜は、バリア膜の上に形成され、導電膜12の形成を支援する。導電膜12は、ライナー膜の上に形成される。ライナー膜は、特に限定されないが、例えば、Co膜、又はRu膜である。
【0016】
図1のステップS2は、
図2(B)に示すように、基板表面1aを洗浄することを含む。基板表面1aに存在する汚染物22(
図2(A)参照)を除去できる。汚染物22は、例えば金属酸化物と有機物の少なくとも1つを含む。金属酸化物は、例えば導電膜12と大気との反応によって形成される酸化物であり、いわゆる自然酸化膜である。有機物は、例えば炭素を含む堆積物であり、基板1の処理過程で付着する。基板表面1aの洗浄は、ドライ処理と、ウエット処理のいずれでもよい。
【0017】
例えば、ステップS2は、基板表面1aに対して洗浄ガスを供給することを含む。洗浄ガスは、汚染物22の除去効率を向上すべく、プラズマ化してもよい。洗浄ガスは、例えばH2ガスなどの還元性ガスを含む。還元性ガスは、自然酸化膜などの酸化物と有機物を除去する。
【0018】
ステップS2の処理条件の一例を下記に示す。
H2ガスの流量:200sccm~10000sccm
Arガスの流量:20sccm~2000sccm
プラズマ生成用の電源周波数:400kHz~40MHz
プラズマ生成用の電力:50W~1000W
処理時間:10sec~600sec
処理温度(基板温度):100℃~250℃
処理圧力:100Pa~2000Pa。
【0019】
図1のステップS3は、
図2(C)に示すように、絶縁膜11の表面に対して導電膜12の表面に選択的にSAM17を形成することを含む。ステップS3は、SAM17の前駆体であるカルボン酸のガスを供給することを含む。
【0020】
カルボン酸は、カルボキシ基(COOH基)を含み、一般式「R-COOH」で表される。Rは、例えば、炭化水素基、又は炭化水素基の水素の少なくとも一部をフッ素に置換したものである。カルボン酸は、絶縁膜11の表面に比べて、導電膜12の表面に化学吸着しやすい。従って、導電膜12の表面に選択的にSAM17が形成される。
【0021】
カルボン酸は、例えば、CF3(CF2)2COOH、CF3COOH、C6H5COOH、及びCH3(CH2)nCOOH(nは2~10の整数)からなる群から選ばれる少なくとも1つを含む。以下、CF3(CF2)2COOHを、PFBA(Perfluorobutyric acid)とも記載する。
【0022】
カルボン酸は、チオール系化合物に比べて、Ru膜表面に化学吸着しやすい。従って、導電膜12がRu膜である場合に、SAM17の密度を向上できる。また、カルボン酸は、チオール系化合物に比べて、高温耐性に優れたSAM17を形成できる。従って、後述するステップS4(対象膜の形成)の処理温度を高く設定することも可能である。
【0023】
ステップS3の処理条件の一例を下記に示す。
PFBAガスの流量:10sccm~100sccm
処理時間:30sec~600sec
処理圧力:100Pa~300Pa
処理温度:100℃~250℃。
【0024】
なお、カルボン酸の代わりに、ホスホン酸が用いられてもよい。ホスホン酸は、一般式「R-P(=O)(OH)2」で表される。Rは、例えば、炭化水素基の水素の少なくとも一部をフッ素に置換したものである。ホスホン酸も、カルボン酸と同様に、絶縁膜11の表面に比べて、導電膜12の表面に化学吸着しやすい。従って、導電膜12の表面に選択的にSAM17が形成される。
【0025】
図1のステップS4は、
図3(A)及び
図3(B)に示すように、SAM17を用い導電膜12の表面における対象膜18の形成を阻害しつつ、絶縁膜11の表面に対象膜18を形成することを含む。対象膜18は、例えば絶縁膜であり、絶縁膜11の上に形成される。
【0026】
対象膜18は、特に限定されないが、例えばAlO膜、SiO膜、ZrO膜、又はHfO膜等である。ここで、AlO膜とは、アルミニウム(Al)と酸素(O)を含む膜という意味である。AlO膜のAlとOの原子比は通常2:3であるが、本願におけるAlO膜のAlとOの原子比は2:3には限定されない。SiO膜、ZrO膜、及びHfO膜について同様である。
【0027】
対象膜18は、例えばALD(Atomoic Layer Deposition)法で形成される。対象膜18として酸化膜をALD法で形成する場合、対象膜18の前駆体ガスと、酸化ガスとを基板表面1aに対して交互に供給する。対象膜18の前駆体ガスは、例えば酸化ガスによって酸化される金属元素または半金属元素を含有する。
【0028】
なお、対象膜18は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法で形成されてもよい。対象膜18として酸化膜をCVD法で形成する場合、対象膜18の前駆体ガスと、酸化ガスとを基板表面1aに対して同時に供給する。
【0029】
以下、ALD法で対象膜18を形成する場合について説明する。ステップS4は、
図1に示すように、ステップS41~S42を含む。
【0030】
ステップS41は、対象膜18の前駆体ガスを基板表面1aに対して供給することを含む。
図3(A)に示すように、導電膜12の表面にはSAM17が形成されているので、絶縁膜11の表面に選択的に前駆体ガスが吸着する。
【0031】
ステップS42は、カルボン酸のガスを酸化ガスとして基板表面1aに対して供給することを含む。カルボン酸のガスは、対象膜18の前駆体ガスに含まれる金属元素または半金属元素を酸化することで、
図3(B)に示すように、対象膜18を形成する。また、カルボン酸のガスは、対象膜18の形成中に、絶縁膜11の表面にSAM17を補充でき、SAM17のブロック性能を向上できる。
【0032】
ステップS42とステップS3とで、同じカルボン酸のガスが用いられてもよい。同じカルボン酸のガスを用いれば、使用するガスの種類を少なくでき、ガス毎に設けられる個別配管の数を低減できる。なお、後述するように、ステップS42とステップS3とで、異なるカルボン酸のガスが用いられてもよい。
【0033】
なお、酸化ガスとして、カルボン酸のガスの代わりに、ホスホン酸のガスが用いられてもよい。ホスホン酸のガスも、カルボン酸のガスと同様に、対象膜18の前駆体ガスに含まれる金属元素または半金属元素を酸化することで、対象膜18を形成することが可能である。また、ホスホン酸のガスも、カルボン酸のガスと同様に、対象膜18の形成中に、絶縁膜11の表面にSAM17を補充でき、SAM17のブロック性能を向上できる。
【0034】
ステップS42とステップS3とで、同じホスホン酸のガスが用いられてもよい。同じホスホン酸のガスを用いれば、使用するガスの種類を少なくでき、ガス毎に設けられる個別配管の数を低減できる。なお、後述するように、ステップS42とステップS3とで、異なるホスホン酸のガスが用いられてもよい。
【0035】
ステップS4の処理条件の一例を下記に示す。なお、下記の処理条件において、TMA(トリメチルアルミニウム)ガスは、AlO膜の前駆体ガスである。
・ステップS41
TMAガスの流量:50sccm
処理時間:0.1sec~2sec
処理温度:100℃~250℃
処理圧力:133Pa~1200Pa。
・ステップS42
PFBAガスの流量:50sccm~200sccm
処理時間:0.5sec~2sec
処理温度:100℃~250℃
処理圧力:133Pa~1200Pa。
【0036】
ステップS42で用いられるカルボン酸またはホスホン酸のガス供給量は、ステップS3で用いられるカルボン酸またはホスホン酸のガス供給量よりも少量であってもよい。これにより、ステップS42で対象膜18に付くカルボン酸またはホスホン酸の残滓を低減できる。残滓は、例えば炭化水素基または炭化水素基の水素の少なくとも一部をフッ素に置換したものである。ガス供給量は、単位時間当たりの流量を時間積分することで求める。
【0037】
図1のステップS5は、
図3(C)に示すように、基板表面1aに対してプラズマ化した水素含有ガスを供給することで、ステップS42で対象膜18に付いたカルボン酸またはホスホン酸の残滓を除去する。これにより、対象膜18の膜質を向上できる。
【0038】
ステップS5で用いられる水素含有ガスは、例えば、H2ガス、H2Oガス、NH3ガス、又はN2H4ガスなどである。CH4ガスなどの炭化水素ガスも使用可能である。なお、残滓が少ない場合、ステップS5は不要である。
【0039】
図示しないが、ステップS42において、SAM17のブロック性能が完全ではなく、対象膜18の周縁が絶縁膜11の表面から横にはみ出し、導電膜12の表面の一部を覆うことがある。この場合、ステップS5は、後述するように対象膜18の周縁をエッチングすることを含んでもよい。対象膜18の開口を拡大でき、基板1の配線抵抗を低減できる。
【0040】
SAM17がフッ素を含む場合、プラズマ化した水素含有ガスとSAM17の反応によってフッ素と炭素を含む活性種が生成する。生成した活性種が、対象膜18の周縁をエッチングする。対象膜18の周縁は、揮発性の化合物となり、排気によって除去される。揮発性の化合物は、フッ素を含むか、フッ素と炭素を含む。
【0041】
フッ素と炭素を含む活性種は、上記の通り、プラズマ化した水素含有ガスとSAM17との反応によって生成する。従って、SAM17の近傍のみに活性種が生成する。それゆえ、対象膜18の周縁がエッチングされるのに対して、対象膜18の中央(絶縁膜11の表面に堆積する部位)はエッチングされない。対象膜18の周縁のみを選択的に除去できる。
【0042】
ステップS5の処理条件の一例を下記に示す。
H2ガスの流量:200sccm~10000sccm
Arガスの流量:20sccm~2000sccm
プラズマ生成用の電源周波数:400kHz~40MHz
プラズマ生成用の電力:50W~1000W
処理時間:10sec~600sec
処理温度(基板温度):100℃~250℃
処理圧力:100Pa~2000Pa。
【0043】
プラズマ化した水素含有ガスは、対象膜18に付いた残滓を除去するのみならず、SAM17をも除去する。そこで、ステップS5の後に、ステップS4を再度実施する前に、ステップS3を再度実施する(
図1参照)。ステップS3、S41、S42及びS5を含むサイクルを繰り返し実施することで、膜質に優れ且つ膜厚の厚い対象膜18を絶縁膜11の表面に選択的に形成できる。1回のサイクルで形成される対象膜18の厚みは、1原子レベル~数原子レベルであり、1nm未満である。
【0044】
ステップS3、S41、S42及びS5は、例えば同一の処理容器内で繰り返し実施される。同一の処理容器内に各種のガスを所望の順番で供給することで、ステップS3、S41、S42及びS5を繰り返し実施する。隣り合うステップの間には、アルゴンガスなどの不活性ガスを処理容器内に供給することで、処理容器内に残存する各種のガスを排出するステップがあってもよい。
【0045】
図1のステップS6は、ステップS3、S41、S42及びS5を設定回数実施したか否かをチェックすることを含む。実施回数が設定回数に達していない場合(ステップS6、NO)、対象膜18の膜厚が目標膜厚に達していないので、ステップS3、S41、S42及びS5を再度実施する。一方、実施回数が設定回数に達している場合(ステップS6、YES)、対象膜18の膜厚が目標膜厚に達しているので、今回の処理を終了する。ステップS6の設定回数は、対象膜18の目標膜厚に応じて設定されるが、例えば20回~80回である。
【0046】
次に、
図4を参照して、変形例に係る成膜方法について説明する。ステップS42で対象膜18に付くカルボン酸またはホスホン酸の残滓が少ない場合、
図1のステップS5が実施されなくても、対象膜18の膜質が良い。そして、ステップS5が実施されなければ、SAM17が除去されないので、ステップS4を再度実施する前に、ステップS3を再度実施する必要もない。
【0047】
本変形例の成膜方法は、
図4に示すように、ステップS41及びS42を含むサイクルを繰り返し実施することで、所望の膜厚を有する対象膜18を絶縁膜11の表面に選択的に形成する。1回のサイクルで形成される対象膜18の厚みは、1原子レベル~数原子レベルであり、1nm未満である。
【0048】
ステップS42で用いられるカルボン酸またはホスホン酸のガスは、ステップS3で用いられるカルボン酸またはホスホン酸のガスよりも短い直鎖を有してもよい。直鎖とは、炭素原子が枝分かれなく環も作らずに、直線状に連なっている部位のことである。直鎖が長いほど、SAM17のブロック性能が良い反面、対象膜18に付く残滓が多くなる。
【0049】
上記の通り、ステップS42で用いられるカルボン酸またはホスホン酸のガスがステップS3で用いられるカルボン酸またはホスホン酸のガスよりも短い直鎖を有していれば、対象膜18の形成中に絶縁膜11の表面にSAM17を補充できると共に、対象膜18に付くカルボン酸またはホスホン酸の残滓を低減できる。
【0050】
次に、
図5を参照して、上記の成膜方法を実施する成膜装置100について説明する。
図5に示すように、成膜装置100は、第1処理部200Aと、第2処理部200Bと、搬送部400と、制御部500とを有する。第1処理部200Aは、
図1のステップS2を実施する。第2処理部200Bは、
図1のステップS3~S5を含むサイクルを繰り返し実施する。第1処理部200Aと、第2処理部200Bとは、同様の構造を有する。従って、第1処理部200Aのみで、
図1のステップS2~S5の全てを実施することも可能である。搬送部400は、第1処理部200A、及び第2処理部200Bに対して、基板1を搬送する。制御部500は、第1処理部200A、第2処理部200B、及び搬送部400を制御する。
【0051】
搬送部400は、第1搬送室401と、第1搬送機構402とを有する。第1搬送室401の内部雰囲気は、大気雰囲気である。第1搬送室401の内部に、第1搬送機構402が設けられる。第1搬送機構402は、基板1を保持するアーム403を含み、レール404に沿って走行する。レール404は、キャリアCの配列方向に延びている。
【0052】
また、搬送部400は、第2搬送室411と、第2搬送機構412とを有する。第2搬送室411の内部雰囲気は、真空雰囲気である。第2搬送室411の内部に、第2搬送機構412が設けられる。第2搬送機構412は、基板1を保持するアーム413を含み、アーム413は、鉛直方向及び水平方向に移動可能に、且つ鉛直軸周りに回転可能に配置される。第2搬送室411には、異なるゲートバルブGを介して第1処理部200Aと第2処理部200Bとが接続される。
【0053】
更に、搬送部400は、第1搬送室401と第2搬送室411の間に、ロードロック室421を有する。ロードロック室421の内部雰囲気は、図示しない調圧機構により真空雰囲気と大気雰囲気との間で切り換えられる。これにより、第2搬送室411の内部を常に真空雰囲気に維持できる。また、第1搬送室401から第2搬送室411にガスが流れ込むのを抑制できる。第1搬送室401とロードロック室421の間、及び第2搬送室411とロードロック室421の間には、ゲートバルブGが設けられる。
【0054】
制御部500は、例えばコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)501と、メモリ等の記憶媒体502とを有する。記憶媒体502には、成膜装置100において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部500は、記憶媒体502に記憶されたプログラムをCPU501に実行させることにより、成膜装置100の動作を制御する。制御部500は、第1処理部200Aと第2処理部200Bと搬送部400とを制御し、上記の成膜方法を実施する。
【0055】
次に、成膜装置100の動作について説明する。先ず、第1搬送機構402が、キャリアCから基板1を取り出し、取り出した基板1をロードロック室421に搬送し、ロードロック室421から退出する。次に、ロードロック室421の内部雰囲気が大気雰囲気から真空雰囲気に切り換えられる。その後、第2搬送機構412が、ロードロック室421から基板1を取り出し、取り出した基板1を第1処理部200Aに搬送する。
【0056】
次に、第1処理部200Aが、ステップS2を実施する。その後、第2搬送機構412が、第1処理部200Aから基板1を取り出し、取り出した基板1を第2処理部200Bに搬送する。この間、基板1の周辺雰囲気を真空雰囲気に維持でき、基板1の酸化を抑制できる。
【0057】
次に、第2処理部200Bが、ステップS3~S5を含むサイクルを繰り返し実施する。その後、第2搬送機構412が、第2処理部200Bから基板1を取り出し、取り出した基板1をロードロック室421に搬送し、ロードロック室421から退出する。続いて、ロードロック室421の内部雰囲気が真空雰囲気から大気雰囲気に切り換えられる。その後、第1搬送機構402が、ロードロック室421から基板1を取り出し、取り出した基板1をキャリアCに収容する。そして、基板1の処理が終了する。
【0058】
次に、
図6を参照して、第1処理部200Aについて説明する。なお、第2処理部200Bは、第1処理部200Aと同様に構成されるので、図示及び説明を省略する。
【0059】
第1処理部200Aは、略円筒状の気密な処理容器210を備える。処理容器210の底壁の中央部には、排気室211が設けられている。排気室211は、下方に向けて突出する例えば略円筒状の形状を備える。排気室211には、例えば排気室211の側面において、排気配管212が接続されている。
【0060】
排気配管212には、圧力制御器271を介して排気源272が接続されている。圧力制御器271は、例えばバタフライバルブ等の圧力調整バルブを備える。排気配管212は、排気源272によって処理容器210内を減圧できるように構成されている。圧力制御器271と、排気源272とで、処理容器210内のガスを排出するガス排出機構270が構成される。
【0061】
処理容器210の側面には、搬送口215が設けられている。搬送口215は、ゲートバルブGによって開閉される。処理容器210内と第2搬送室411(
図5参照)との間における基板1の搬入出は、搬送口215を介して行われる。
【0062】
処理容器210内には、基板1を保持する保持部であるステージ220が設けられている。ステージ220は、基板表面1aを上に向けて、基板1を水平に保持する。ステージ220は、平面視で略円形状に形成されており、支持部材221によって支持されている。ステージ220の表面には、例えば直径が300mmの基板1を載置するための略円形状の凹部222が形成されている。凹部222は、基板1の直径よりも僅かに大きい内径を有する。凹部222の深さは、例えば基板1の厚さと略同一に構成される。ステージ220は、例えば窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックス材料により形成されている。また、ステージ220は、ニッケル(Ni)等の金属材料により形成されていてもよい。なお、凹部222の代わりにステージ220の表面の周縁部に基板1をガイドするガイドリングを設けてもよい。
【0063】
ステージ220には、例えば接地された下部電極223が埋設される。下部電極223の下方には、加熱機構224が埋設される。加熱機構224は、制御部500(
図5参照)からの制御信号に基づいて電源部(図示せず)から給電されることによって、ステージ220に載置された基板1を設定温度に加熱する。ステージ220の全体が金属によって構成されている場合には、ステージ220の全体が下部電極として機能するので、下部電極223をステージ220に埋設しなくてよい。ステージ220には、ステージ220に載置された基板1を保持して昇降するための複数本(例えば3本)の昇降ピン231が設けられている。昇降ピン231の材料は、例えばアルミナ(Al
2O
3)等のセラミックスや石英等であってよい。昇降ピン231の下端は、支持板232に取り付けられている。支持板232は、昇降軸233を介して処理容器210の外部に設けられた昇降機構234に接続されている。
【0064】
昇降機構234は、例えば排気室211の下部に設置されている。ベローズ235は、排気室211の下面に形成された昇降軸233用の開口部219と昇降機構234との間に設けられている。支持板232の形状は、ステージ220の支持部材221と干渉せずに昇降できる形状であってもよい。昇降ピン231は、昇降機構234によって、ステージ220の表面の上方と、ステージ220の表面の下方との間で、昇降自在に構成される。
【0065】
処理容器210の天壁217には、絶縁部材218を介してガス供給部240が設けられている。ガス供給部240は、上部電極を成しており、下部電極223に対向している。ガス供給部240には、整合器251を介して高周波電源252が接続されている。高周波電源252から上部電極(ガス供給部240)に450kHz~100MHzの高周波電力を供給することによって、上部電極(ガス供給部240)と下部電極223との間に高周波電界が生成され、容量結合プラズマが生成する。プラズマを生成するプラズマ生成部250は、整合器251と、高周波電源252と、を含む。なお、プラズマ生成部250は、容量結合プラズマに限らず、誘導結合プラズマなど他のプラズマを生成するものであってもよい。
【0066】
ガス供給部240は、中空状のガス供給室241を備える。ガス供給室241の下面には、処理容器210内へ処理ガスを分散供給するための多数の孔242が例えば均等に配置されている。ガス供給部240における例えばガス供給室241の上方には、加熱機構243が埋設されている。加熱機構243は、制御部500からの制御信号に基づいて電源部(図示せず)から給電されることによって、設定温度に加熱される。
【0067】
ガス供給室241には、ガス供給路261を介して、ガス供給機構260が接続される。ガス供給機構260は、ガス供給路261を介してガス供給室241に、
図1のステップS2~S5の少なくとも1つで用いられるガスを供給する。ガス供給機構260は、図示しないが、ガスの種類毎に、個別配管と、個別配管の途中に設けられる開閉バルブと、個別配管の途中に設けられる流量制御器とを含む。開閉バルブが個別配管を開くと、供給源からガス供給路261にガスが供給される。その供給量は流量制御器によって制御される。一方、開閉バルブが個別配管を閉じると、供給源からガス供給路261へのガスの供給が停止される。
【0068】
以上、本開示に係る成膜方法及び成膜装置の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0069】
1 基板
1a 基板表面
11 絶縁膜(第1膜)
12 導電膜(第2膜)
17 SAM(自己組織化単分子膜)