(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117607
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】冷凍麺類の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20230817BHJP
【FI】
A23L7/109 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020258
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000226998
【氏名又は名称】株式会社日清製粉グループ本社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】捨田利 望実
(72)【発明者】
【氏名】石田 一晃
(72)【発明者】
【氏名】田村 翔平
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 純子
【テーマコード(参考)】
4B046
【Fターム(参考)】
4B046LA06
4B046LB02
4B046LC09
4B046LP35
4B046LP41
4B046LP51
4B046LP58
4B046LP69
4B046LQ04
4B046LQ05
4B046LQ06
(57)【要約】
【課題】冷凍焼けが生じにくい冷凍麺類を提供すること。
【解決手段】本発明の冷凍麺類の製造方法は、麺線を加熱調理する加熱調理工程と、前記加熱調理工程を経た麺線の表面を乾燥させる表面乾燥工程と、前記表面乾燥工程を経た麺線を冷凍する第1の冷凍工程と、前記第1の冷凍工程を経た麺線に水性液体を付与する液体付与工程と、前記液体付与工程を経た麺線を冷凍する第2の冷凍工程とを有する。前記表面乾燥工程では、麺線の表面を気流により乾燥することができる。前記液体付与工程では、麺線の表面に水性液体を噴霧することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
麺線を加熱調理する加熱調理工程と、
前記加熱調理工程を経た麺線の表面を乾燥させる表面乾燥工程と、
前記表面乾燥工程を経た麺線を冷凍する第1の冷凍工程と、
前記第1の冷凍工程を経た麺線に水性液体を付与する液体付与工程と、
前記液体付与工程を経た麺線を冷凍する第2の冷凍工程と、
を有する冷凍麺類の製造方法。
【請求項2】
前記表面乾燥工程に供される直前の麺線の含水率が50~70質量%であり、
前記表面乾燥工程は、乾燥前の麺線の重量に対し1~25質量%減量するように行われる、請求項1に記載の冷凍麺類の製造方法。
【請求項3】
前記表面乾燥工程では、麺線の表面を気流により乾燥する、請求項1又は2に記載の冷凍麺類の製造方法。
【請求項4】
前記液体付与工程では、麺線の表面に水性液体を噴霧する、請求項1~3の何れか1項に記載の冷凍麺類の製造方法。
【請求項5】
前記麺類はパスタ類である、請求項1~4の何れか1項に記載の冷凍麺類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理した麺類を冷凍してなる冷凍麺類に関する。
【背景技術】
【0002】
麺類は比較的人気の高い食品であるが、調理に大量の湯が必要になるなど、喫食可能な状態にするまでに比較的手間がかかる。そこで、加熱調理した麺類を冷凍した冷凍麺類が広く普及している。冷凍麺類は、電子レンジ等の加熱調理器で加熱するだけで簡便に喫食可能な状態となるため、人気がある。一方で冷凍麺類は、冷凍保存中に麺の表面から水分が蒸発し、麺本来の色が失われて白っぽくなる等の現象、いわゆる「冷凍焼け」が起きる場合がある。冷凍焼けした冷凍麺類は、変色によって外観が劣るだけでなく、これを電子レンジで加熱しても冷凍焼けした部分は硬い食感となってしまうため食味食感にも劣り、商品価値が著しく低下したものとなる。
【0003】
冷凍麺類の冷凍焼けを防止する技術として、特許文献1には、調理済み麺類に、水、油脂及び増粘多糖類を含有し且つ粘度が特定範囲にある組成物を付着させた後、該調理済み麺類を冷凍する方法が記載されている。
【0004】
特許文献2には、冷凍麺類の一種である冷凍パスタを解凍して喫食した際のテクスチャーが粘着性で軟らかく粗悪であるという問題を解決し得る、冷凍パスタの製造法として、沸騰水で加熱する等して予備加熱したパスタを、40~60%の水分含量まで部分乾燥した後、ソース及び水又は水と混合し、次いで冷凍する工程を有するものが記載されている。特許文献2は冷凍パスタのテクスチャーの改善を目的とした技術を開示するものであり、特許文献2には冷凍焼けについては記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開公報第2013/172118号
【特許文献2】特開平05-211849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、冷凍焼けが生じにくい冷凍麺類を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、麺線を加熱調理する加熱調理工程と、前記加熱調理工程を経た麺線の表面を乾燥させる表面乾燥工程と、前記表面乾燥工程を経た麺線を冷凍する第1の冷凍工程と、前記第1の冷凍工程を経た麺線に水性液体を付与する液体付与工程と、前記液体付与工程を経た麺線を冷凍する第2の冷凍工程と、を有する冷凍麺類の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、冷凍焼けが生じにくく、冷凍していない調理済み麺と同等の食感を有する冷凍麺類を提供することができる。
【0009】
本明細書において「冷凍焼け」とは、冷凍麺類の冷凍保存中に麺類が部分的に乾燥する現象をいう。冷凍焼けは、麺類に含有される水分が蒸発したり、麺類内を移動したりすることにより生じ、麺類の表面が白っぽく変色する、麺類が硬化する、麺線形状の麺類の太さが細くなる等の現象が見られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は冷凍麺類に関するものであるところ、本発明で言う「麺類」には、麺と称される食品全般が包含される。具体的には例えば、パスタ類、うどん、蕎麦、素麺、冷麦、中華麺、フォー、ビーフン等を例示できる。
【0011】
本発明が特に好適な麺類として、パスタ類が挙げられる。一般にパスタ類は、独特のつややかな黄色の表面が特徴で、冷凍焼けを生じやすい傾向があるが、本発明の冷凍麺類の製造方法によって製造された冷凍パスタ類は冷凍焼けが生じにくく、食感に優れたものとなり得る。前記「パスタ類」には、麺線形状のロングパスタが包含される。
【0012】
本発明の冷凍麺類の製造方法では、原料として麺線を用いる。本発明において「麺線」とは、形状が細長い麺類を指す。麺線の太さ(麺線の長手方向と直交する方向の長さ)は特に制限されず、製造する冷凍麺類の種類に応じて適宜設定できる。
本発明で用いる麺線は、生麺でもよく、生麺に乾燥処理を施した乾麺でもよい。一般に、生麺の絶乾法による含水率は10~40質量%程度、乾麺の絶乾法による含水率は15質量%以下程度である。
【0013】
本発明では、麺線の製造方法は特に制限されず、従来公知の方法を利用できる。麺線の製造方法は、典型的には、穀粉類を含む粉体原料と水等の液体原料とを混合して生地を調製し、該生地を常法に従って麺線形状に成形する工程を含む。斯かる工程を経て得られる麺線は、乾燥処理が施されていない生麺である。乾麺の麺線を製造する場合は、生麺の麺線に加熱処理等の乾燥処理を施す。また、生地の成形方法は特に制限されず、例えば、所定形状の押出ノズルから生地を高圧で押し出す押出成形法でもよく、あるいは、生地を麺帯状に高圧で押し出して麺帯を得、該麺帯をローラー等によって圧延し、更に切り刃で切り出す方法でもよい。
【0014】
前記粉体原料に含まれる穀粉類には、穀粉及び澱粉が含まれ、本発明ではこれらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。穀粉としては、小麦粉、米粉、大麦粉、ライ麦粉等が挙げられ、該小麦粉としては、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、全粒粉、デュラム粉(デュラムセモリナ、デュラム小麦粉を含む)等が挙げられる。澱粉としては、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、米澱粉、小麦澱などの未加工澱粉;未加工澱粉に、架橋、リン酸化、アセチル化、エーテル化、酸化、α化などの加工処理の1種以上を施した加工澱粉が挙げられる。前記粉体原料は、穀粉類以外に必要に応じ、麺類の製造に使用可能な各種原料、例えば、糖類、油脂類、色素、調味料等を含有してもよい。
【0015】
本発明の冷凍麺類の製造方法は、麺線を加熱調理する加熱調理工程を有する。麺線を加熱調理することで、麺線に含まれる澱粉がα化され、麺線は喫食可能な状態となる。麺線の加熱調理は、麺線のα化処理とも言える。
前記加熱調理工程において、麺線の加熱調理法は特に制限されず、従来公知の方法を利用でき、例えば、80~100℃の湯を用いた茹で調理、飽和水蒸気を用いた蒸し調理など、水分の存在下での加熱調理法が挙げられる。麺類を水分の存在下で加熱調理する場合の調理条件(調理時間等)としては、例えば、加熱調理前の麺線の乾燥質量100質量部に対して、加熱調理後の麺線の質量が180~300質量部となる条件が挙げられる。
【0016】
本発明の冷凍麺類の製造方法は、前記加熱調理工程を経た麺線(調理済み麺線)の表面を乾燥させる表面乾燥工程を有する。前記表面乾燥工程では、麺線の表面又は該表面及びその近傍(以下、これらの部分を「表層部」と総称する。)のみを乾燥させ、表層部よりも麺線の中心側に位置する内層部は乾燥させない。すなわち前記表面乾燥工程で行う麺線の乾燥処理は、麺線の表層部のみを乾燥させる部分乾燥処理である。
【0017】
前記表面乾燥工程における麺線の乾燥方法としては、前記部分乾燥処理が可能な方法であればよく、例えば、麺線の表面を気流により乾燥する方法が挙げられる。
前記の気流による乾燥方法は、例えば、公知の送風乾燥方法、熱風乾燥方法を用いて行うことができる。前記気流としては、例えば、常温の空気、高温の空気(熱風)、水蒸気、過熱水蒸気が挙げられ、これらの2種以上を組み合わせて用いることもできる。気流の速度は特に制限されないが、例えば、5~30m/秒の範囲内のものを用いることができる。
前記の気流による乾燥方法を実施する場合、乾燥対象の麺線が置かれる環境の雰囲気温度は、常温でもよく、常温よりも高温でもよい。好ましい乾燥条件の一例として、前記雰囲気温度が好ましくは20~200℃、より好ましくは50~150℃であり、乾燥時間(例えば、麺線に気流を吹き付ける時間)が好ましくは10秒間~30分間、より好ましくは40秒間~10分間である条件が挙げられる。
前記表面乾燥工程は、典型的には、乾燥装置を用いて行われる。前記乾燥装置としては、麺線の乾燥に使用可能なものを特に制限なく用いることができ、例えば、棚式、流動層式、ベルトコンベア式等の乾燥装置が挙げられる。
【0018】
前記表面乾燥工程において、麺線の乾燥が不十分であると、最終的に得られる冷凍麺類の冷凍焼け防止効果が不十分となるおそれがあり、また、麺線を過度に乾燥させると、麺線の表面だけでなく、全体の乾燥が進んでしまい、麺線が硬くなり、喫食性に欠けるといった問題が生じる。
このような点を考慮すると、例えば、前記表面乾燥工程に供される直前の麺線(調理済み麺線)の含水率が50~70質量%である場合、前記表面乾燥工程は、乾燥前の麺線の重量に対し、好ましくは1~25質量%、より好ましくは2~8質量%減量するように行われることが好ましい。これにより、前記不都合を防止しつつ、冷凍麺類の冷凍焼け防止効果を一層向上させることが可能となる。麺線の含水率は、乾燥温度(雰囲気温度、麺線に吹き付ける気流の温度)、乾燥時間、麺線に吹き付ける気流の速度等を適宜調整することで調整可能である。
【0019】
本発明の冷凍麺類の製造方法は、前記表面乾燥工程を経た麺線(表面乾燥処理された調理済み麺線)を冷凍する第1の冷凍工程を有する。前記第1の冷凍工程における麺線の冷凍方法は特に制限されず、麺類を冷凍する際に通常行われる冷凍方法を採用することができ、例えば、急速冷凍、緩慢冷凍が挙げられる。
【0020】
本発明の冷凍麺類の製造方法は、前記第1の冷凍工程を経た麺線(調理済み冷凍麺線)に水性液体を付与する液体付与工程を有する。前記水性液体としては、通常は水(具体的には例えば、清水、精製水、水道水)を用いるが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、水に添加剤を含有させたものを用いることもできる。前記水性液体は、水溶液、懸濁液、油液、水と油脂とを含む液、乳化液等であり得る。前記添加剤として例えば、食塩、出し汁、煮汁等の調味料、増粘剤、乳化剤、油脂類、色素等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
前記液体付与工程における水性液体の麺線への付与方法は、麺線の表面に水性液体を付着させ得る方法であればよく、例えば、麺線の表面に水性液体を噴霧する方法、水性液体中に麺線を浸漬する方法が挙げられる。本発明の所定の効果をより確実に奏させるようにする観点から、水性液体は麺線の表面全体に均一に付着させることが好ましく、斯かる好ましい態様をより確実に実現させる観点から、水性液体の麺線への付与方法としては、水性液体を噴霧する方法が特に好ましい。水性液体の噴霧は、公知のスプレー装置、シャワー装置等を用いて行うことができる。
【0022】
前記液体付与工程において、水性液体の麺線への付着量は、麺線の種類、水性液体の種類等に応じて適宜調整すればよく特に制限されないが、本発明の所定の効果を一層確実に奏させるようにする観点から、好ましくは前記表面乾燥工程で調理済み麺線から除された水分の重量、又はそれより多い重量である。例えば、前記表面乾燥工程で麺線から、該表面乾燥工程に供される直前の該麺線の8質量%に相当する水分を除去した場合、前記液体付与工程では該8質量%以上の水性液体を付与することが好ましい。
【0023】
本発明の冷凍麺類の製造方法は、前記液体付与工程を経た麺線(表面に水性液体が付着した調理済み冷凍麺線)を冷凍する第2の冷凍工程を有する。前記第2の冷凍工程における麺線の冷凍方法は特に制限されず、麺類を冷凍する際に通常行われる冷凍方法を採用することができ、例えば、急速冷凍、緩慢冷凍が挙げられる。前記第2の冷凍工程における麺線の冷凍方法は、前記第1の冷凍方法における麺線の冷凍方法と同じでもよく、異なっていてもよい。
【0024】
本発明の冷凍麺類の製造方法は、前述した複数の工程(加熱調理工程、表面乾燥工程、第1の冷凍工程、液体付与工程、第2の冷凍工程)を有するため、冷凍焼けが生じにくく、冷凍していない調理済み麺と同等の食感を有する冷凍麺類を提供することができる。その作用機序は定かではないが、以下のように推察される。
【0025】
冷凍麺類の冷凍焼けの典型的な発生メカニズムは、以下のようなものである。冷凍麺類(冷凍麺線の塊)は一般に、包装袋等の包装容器内に収容され、麺類包装体として冷凍温度帯の環境に保存されるところ、例えば、その冷凍保存中に麺類包装体を冷凍温度帯の環境から一時的に取り出す等して、麺類包装体の周囲の外気温が一時的に上昇すると、該麺類包装体の内部の気温及び該麺類包装体の内部の冷凍麺類の品温も上昇する。そして、麺類包装体を再び冷凍温度帯の環境に戻す等して、麺類包装体の周囲の外気温が急激に低下すると、該麺類包装体の内部の気温も同様に急激に低下するが、該麺類包装体の内部の冷凍麺類の品温は該気温のように急激には低下しないため、麺類包装体の冷凍保存中に「麺類包装体の内部の蒸気圧<麺類包装体の内部の冷凍麺線の表面の蒸気圧」という関係が生じ、これが原因で冷凍麺線の内部(表層部及び内層部)に存在する氷状態の水分が昇華する。このような、冷凍麺線からの温度変化に起因する氷の昇華が、冷凍焼けの主な原因の一つと考えられる。
これに対し、本発明の冷凍麺類の製造方法では、前記表面乾燥工程で麺線(調理済み麺線)の表層部のみを乾燥することにより該表層部の構造を収縮させてから、前記第1の冷凍工程で該麺線を冷凍し、該表層部を固める。この収縮状態の表層部の存在により、麺線の大部分を占める内層部からの温度変化に起因する氷の昇華が効果的に防止される。加えて、本発明の冷凍麺類の製造方法では、前記液体付与工程で麺線における前記収縮状態の表層部に水性液体を付与した後、前記第2の冷凍工程で該麺線を冷凍することで、該収縮状態の表層部の表面に該水性液体の冷凍物からなる氷膜を形成し、内層部からの温度変化に起因する氷の昇華の防止効果を高めている。つまり、本発明の冷凍麺類の製造方法によって製造される冷凍麺線は、外側から順に、氷膜、収縮状態の表層部、内層部を有し、前二者が該内層部からの氷の昇華を防止する機能を有するので、冷凍焼けが発生しにくい。
なお、前記のように麺線の表層部が収縮状態となると、麺線の喫食時の食感が硬く好ましくないものとなることが懸念されるが、喫食前に行う冷凍麺類の解凍作業により、麺線表面の前記氷膜が融解して麺線内部に浸透するため、斯かる懸念は払拭されている。
【0026】
本発明の製造方法によって製造された冷凍麺類は、解凍することで喫食可能な状態となる。冷凍麺類の解凍方法は特に制限されず、自然解凍、緩慢解凍、加熱を伴う解凍(急速解凍)でもよい。急速解凍には、電子レンジ加熱、ボイル、蒸気による加熱、オーブン加熱等がある。
【実施例0027】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0028】
〔実施例1〕
市販の乾燥スパゲティ(株式会社日清製粉ウェルナ製、1.8mm)100gを、茹で歩留まりが240~242質量%となるように茹でた後、冷水で冷却し、ざるに入れて水分を十分に切り、調理済みスパゲティ(調理済み麺線)を得た(加熱調理工程)。
次に、気流により乾燥する方法を用いて、調理済みスパゲティの表面を乾燥させた(表面乾燥工程)。具体的には、乾燥機(エスペック株式会社製、「LU-114」)を用い、該乾燥機の乾燥室の温度を80℃として、該乾燥室に調理済みスパゲティを10分間収容した(乾燥時間10分)(表面乾燥工程)。
次に、乾燥機から調理済みスパゲティを取り出し、庫内温度-40℃の冷凍庫に30分間収容して急速冷凍し、冷凍スパゲティを得た(第1の冷凍工程)。
次に、冷凍庫から冷凍スパゲティを取り出し、冷凍スパゲティの表面全体に水を噴霧して付着させた(液体付与工程)。
そして、水を付着させた冷凍スパゲティを再び前記冷凍庫に30分間収容して急速冷凍し、目的の調理済み冷凍スパゲティ(冷凍麺類)を得た(第2の冷凍工程)。
【0029】
なお、本明細書において「茹で歩留まり」とは、茹で調理前の麺線の原料(ただし、生地調製時に使用した水(練り水)を含む)の質量に対する、茹で調理後の麺線(調理済み麺線)の質量の比率(百分率)である。例えば、100gの麺線を茹で、200gの調理済み麺線を得た場合、茹で調理前の原料への加水量に関わらず茹で歩留まりは200質量%となる。
【0030】
〔比較例1〕
実施例1と同じ加熱調理工程で得られた調理済みスパゲティを、庫内温度-40℃の冷凍庫に30分間収容して急速冷凍し、目的の調理済み冷凍スパゲティ(冷凍麺類)を得た。
【0031】
〔比較例2〕
実施例1において、第1の冷凍工程及び液体付与工程を実施せず、且つ表面乾燥工程の乾燥時間を5分とした点以外は実施例1と同様にして、目的の調理済み冷凍スパゲティ(冷凍麺類)を得た。
【0032】
〔比較例3〕
実施例1において、表面乾燥工程を実施せず、加熱調理工程で得られた調理済みスパゲティをそのまま第1の冷凍工程に供した点以外は実施例1と同様にして、目的の調理済み冷凍スパゲティ(冷凍麺類)を得た。
【0033】
〔比較例4〕
実施例1において、第1の冷凍工程を実施せず、表面乾燥工程を経た調理済みスパゲティをそのまま液体付与工程に供した点以外は実施例1と同様にして、目的の調理済み冷凍スパゲティ(冷凍麺類)を得た。
【0034】
〔評価試験〕
各実施例及び比較例で得られた調理済み冷凍スパゲティをプラスチック製の包装袋に入れて密封し、庫内温度-20℃~-3℃を行き来する恒温器で1カ月間冷凍保存した。1カ月経過後、包装袋から冷凍スパゲティを取り出し、冷凍焼けの程度を下記方法により評価した。
また、冷凍焼けの評価後、冷凍スパゲティを耐熱皿に載置し、ラップフィルムで上面を軽く覆った状態で、出力500Wの電子レンジで1分間加熱して喫食可能な状態とし、喫食時の食感を訓練されたパネルにより評価した。その結果を表1に示す。
【0035】
(冷凍焼けの評価基準)
5点:色の変化が全くない。
4点:冷凍焼けにより僅かに色の変化が認められるが許容範囲である。
3点:冷凍焼けにより若干色の変化が認められるが許容範囲である。
2点:冷凍焼けにより色の変化が認められる。
1点:冷凍焼けにより色の変化が大きく認められる。
【0036】
(食感の評価基準)
5点:十分且つ適度な硬さを有し、非常に良好な食感である。
4点:適度な硬さを有し、良好な食感である。
3点:過度な硬さ又は柔らかさを知覚することがあるが、悪くない食感である。
2点:硬すぎるか、又は柔らかすぎて、不良な食感である。
1点:非常に硬すぎるか、又は非常に柔らかすぎて、非常に不良な食感である。
【0037】
【0038】
表1に示すとおり、実施例1の冷凍麺類の製造方法は、麺線の加熱調理(加熱調理工程)と最終冷凍処理(第2の冷凍工程)との間に、表面乾燥処理、冷凍処理(第1の冷凍工程)、水性液体付与処理を順次実施しているため、これを満たさない比較例に比べて、冷凍麺類の冷凍焼けが生じにくく、食感に優れていた。