(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117618
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】成膜方法及び成膜システム
(51)【国際特許分類】
C23C 14/14 20060101AFI20230817BHJP
【FI】
C23C14/14 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020276
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】北田 亨
(72)【発明者】
【氏名】石橋 翔太
(72)【発明者】
【氏名】小島 康彦
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029AA24
4K029BA21
4K029BA52
4K029BB10
4K029CA05
4K029DC16
4K029EA03
4K029EA08
4K029GA01
4K029JA01
4K029JA02
4K029JA05
4K029KA01
4K029KA09
(57)【要約】
【課題】引張応力を有しタングステンを含有するアモルファス合金膜を形成する。
【解決手段】成膜方法は、タングステンを含有する非晶質の合金膜を基板上に形成する工程と、その後、前記合金膜が結晶化しない温度で、前記基板を加熱する工程と、を含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タングステンを含有する非晶質の合金膜を基板上に形成する工程と、
その後、前記合金膜が結晶化しない温度で、前記基板を加熱する工程と、を含む、成膜方法。
【請求項2】
前記形成する工程は、スパッタリングにより前記合金膜を形成する、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記形成する工程において、前記基板を収容する処理容器内の圧力は1mTorr~10mTorrである、請求項2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記形成する工程は、タングステン濃度が10%~80%の前記合金膜を形成する、請求項3に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記結晶化しない温度は、前記形成する工程で形成される前記合金膜のタングステン濃度に応じて予め設定される、請求項1~4のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項6】
前記形成する工程は、膜内に圧縮応力を有する前記合金膜を形成し、
前記加熱する工程は、加熱により、前記合金膜内の応力を圧縮応力から引張応力にする、請求項1~5のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項7】
前記加熱する工程における加熱温度は、前記形成する工程における基板の温度より高い、請求項6に記載の成膜方法。
【請求項8】
成膜装置と、
加熱装置と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記成膜装置により、タングステンを含有する非晶質の合金膜を基板上に形成する工程と、
その後、前記加熱装置により、前記合金膜が結晶化しない温度で、前記基板を加熱する工程と、を実行するよう、制御を行う、成膜システム。
【請求項9】
前記形成する工程は、前記成膜装置によるスパッタリングにより前記合金膜を形成する、請求項8に記載の成膜システム。
【請求項10】
前記成膜装置は、前記基板を収容する処理容器を有し、
前記形成する工程において、前記処理容器内の圧力は1mTorr~10mTorrである、請求項9に記載の成膜システム。
【請求項11】
前記形成する工程は、前記成膜装置により、タングステン濃度が10%~80%の前記合金膜を形成する、請求項10に記載の成膜システム。
【請求項12】
前記結晶化しない温度は、前記形成する工程で形成される前記合金膜のタングステン濃度に応じて予め設定される、請求項8~11のいずれか1項に記載の成膜システム。
【請求項13】
前記形成する工程は、膜内に圧縮応力を有する前記合金膜を形成し、
前記加熱する工程は、加熱により、前記合金膜内の応力を圧縮応力から引張応力にする、請求項8~12のいずれか1項に記載の成膜システム。
【請求項14】
前記加熱する工程における加熱温度は、前記形成する工程における基板の温度より高い、請求項13に記載の成膜システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成膜方法及び成膜システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板上にW(タングステン)含有膜前駆体を形成する工程と、W含有膜前駆体上に、絶縁膜を形成する工程と、絶縁膜を形成した後に熱処理を行い、W含有膜前駆体をW含有膜に改質する工程と、絶縁膜を除去する工程と、を備えたことを特徴とするW含有膜の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、引張応力を有しタングステンを含有するアモルファス合金膜を形成する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、タングステンを含有する非晶質の合金膜を基板上に形成する工程と、その後、前記合金膜が結晶化しない温度で、前記基板を加熱する工程と、を含む、成膜方法である。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、引張応力を有しタングステンを含有するアモルファス合金膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】スパッタリングにより形成したタングステンシリサイド膜の膜応力と、スパッタリングガスとしてのArガスの流量との関係を示す図である。
【
図2】スパッタリングにより形成したタングステンシリサイド膜の電気抵抗率と、スパッタリングガスとしてのArガスの流量との関係を示す図である。
【
図3】本実施形態にかかる成膜システムとしてのウェハ処理システムの構成の概略を示す平面図である。
【
図4】成膜装置の構成の概略を示す縦断面図である。
【
図5】ロードロック装置の構成の概略を示す縦断面図である。
【
図6】ウェハ処理システム1を用いた成膜処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図7】タングステンシリサイド膜の加熱による膜応力変化の評価のために行った試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体デバイス等の製造プロセスにおいては、半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という)等の基板に対して、エッチング処理に用いるハードマスク(HM)用に、タングステンシリサイド(WSi)膜を形成する場合がある。
WSi膜は、シリコン(Si)膜やチタニウムナイトライドに比べ、エッチング対象膜であるシリコンオキサイド(SiO2)膜に対する選択比が高く、膜厚を薄くすることが可能なため、微細加工に有利である。また、WSi膜は、非晶質(アモルファス)にすることにより、HMへ加工したときに、結晶や粒界に起因するラフネスを低減することができる。
【0009】
ところで、HM用の膜は、WSi膜に限らず、一般的に、内部応力が圧縮応力ではなく引張応力であることが求められる。圧縮応力の場合、HMへ加工したときに、パターンに歪み(wiggling)が発生することがあるからである。
【0010】
WSi膜は、スパッタリングにより形成する場合、スパッタリングガス(working gas)の流量すなわち圧力を高くすることにより、WSi膜の膜応力を引張応力にすることができる場合がある。具体的には以下の通りである。
【0011】
図1は、スパッタリングにより形成したWSi膜の膜応力と、スパッタリングガスとしてのArガスの流量との関係を示す図である。
図1において、横軸はArガスの流量を示し、縦軸は膜応力を示している。
図2は、スパッタリングにより形成したWSi膜の電気抵抗率と、スパッタリングガスとしてのArガスの流量との関係を示す図である。
図1及び
図2において、横軸はArガスの流量を示している。また、
図1において縦軸はWSi膜の膜応力を示しており、
図2において縦軸はWSi膜の電気抵抗率を示している。なお、
図1及び
図2は、形成したWSi膜のW濃度が80%のときの結果を示している。
【0012】
図1に示すように、形成したWSi膜のW濃度が80%の場合、膜形成時のArガス流量が50sccm以下であると、WSi膜の膜応力は圧縮応力であるが、150sccmであると、同膜応力は引張応力である。しかし、
図2に示すように、膜形成時のArガス流量が50sccm以下であるとWSi膜の電気抵抗率が低いが、150sccmであると同電気抵抗率が高い。WSi膜の電気的抵抗率が高いことはWSi膜の密度が低いことを意味し、密度が低いと上述の選択比も低くなる。また、膜形成時のArガス等のスパッタリングガスの流量が高いと、WSi膜は非晶質にならない。
上述の点は、WSi膜以外のタングステン(W)含有合金膜でも同様である。
【0013】
そこで、本開示にかかる技術は、引張応力を有しWを含有する非晶質の合金膜を形成する。
【0014】
以下、本実施形態にかかる成膜方法及び成膜システムを、図面を参照して説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0015】
<ウェハ処理システム>
図3は、本実施形態にかかる成膜システムとしてのウェハ処理システム1の構成の概略を示す平面図である。
【0016】
ウェハ処理システム1は、例えば、図示するように、複数のウェハKを収容可能なキャリアCが搬出入されるキャリアステーション10と、減圧下でウェハKに成膜処理を施す後述の成膜装置40を複数備えた処理ステーション11とを一体に接続した構成を有している。キャリアステーション10と処理ステーション11は、2つの加熱装置としてのロードロック装置12、13を介して、連結されている。
【0017】
ロードロック装置12、13は、室内を大気圧状態と真空状態とに切り替えられるように構成されたロードロック室12a、13aを形成する筐体を有する。ロードロック装置12、13は、後述する大気圧搬送装置20と真空搬送装置30を連結するように設けられている。本実施形態において、ロードロック装置12、13は、ウェハKを加熱する加熱装置としても機能する。ロードロック装置13も同様である。ロードロック装置12の構成の詳細については後述する。
【0018】
キャリアステーション10は、大気圧搬送装置20とキャリア載置台21を有している。なお、キャリアステーション10には、さらにウェハKの向きを調節するアライナ(図示せず)が設けられていてもよい。
【0019】
大気圧搬送装置20は、室内が大気圧下とされる大気搬送室22を形成する筐体を有する。大気搬送室22は、ロードロック装置12、13のロードロック室12a、13aとゲートバルブG1、G2を介して接続されている。大気搬送室22内には、大気圧下でロードロック室12a、13aとの間でウェハKを搬送する搬送機構23が設けられている。
【0020】
搬送機構23は、ウェハKを保持する2つの搬送アーム23a、23bを有している。搬送アーム23a、23bはそれぞれ多関節アームから構成される。搬送機構23は、搬送アーム23a、23bのいずれかによってウェハKを保持しながら搬送する構成となっている。
【0021】
キャリア載置台21は、大気圧搬送装置20において、ロードロック装置12、13の反対側の側面に設けられている。図示の例では、キャリア載置台21には、キャリアCを複数、例えば3つ載置できるようになっている。キャリア載置台21に載置されたキャリアC内のウェハKは、大気圧搬送装置20の搬送機構23の搬送アーム23a、23bにより大気搬送室22に対して搬入出される。
【0022】
処理ステーション11は、真空搬送装置30と複数の成膜装置40を有している。
【0023】
真空搬送装置30は、室内が減圧状態(真空状態)に保たれる真空搬送室31を形成する筐体を有し、該筐体は、密閉可能に構成されており、例えば平面視において略多角形状(図示の例では六角形状)をなすように形成されている。真空搬送室31は、ロードロック装置12、13のロードロック室12a、13aとゲートバルブG3、G4を介して接続されている。真空搬送室31内には、各成膜装置40の後述の真空処理室41との間でウェハKを搬送する搬送機構32が設けられている。
【0024】
搬送機構32は、ウェハKを保持する2つの搬送アーム32a、32bと、搬送アーム32a、32bそれぞれの根元部分を軸支する基台32cと、を有している。搬送機構32は、搬送アーム32a、32bのいずれかによってウェハKを保持しながら搬送する構成となっている。
【0025】
真空搬送装置30の真空搬送室31を形成する筐体の外側には、複数の成膜装置40、ロードロック装置12、13が、上記筐体の周囲を囲むように配置されている。複数の成膜装置40、ロードロック装置12、13は、上記筐体の側面部に対してそれぞれ対向するように、配置されている。
【0026】
成膜装置40は、減圧下でウェハKに成膜処理を施す。本実施形態において、成膜装置40はそれぞれ、ウェハK上に非晶質のWSi膜を形成する。また、成膜装置40はそれぞれ、減圧下の室内でウェハKに対して上記所定の処理が行われる真空処理室41を形成する筐体を有する。真空処理室41はそれぞれ、真空搬送装置30の真空搬送室31と仕切弁としてのゲートバルブG5を介して接続されている。
【0027】
以上のウェハ処理システム1には、制御装置50が設けられている。制御装置50は、例えばCPU等のプロセッサやメモリを備えたコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、ウェハ処理システム1におけるウェハ処理を制御するプログラムが格納されている。これらのプログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体Hに記録されていたものであって、当該記憶媒体Hから制御装置50にインストールされたものであってもよい。
【0028】
<成膜装置40>
図4は、成膜装置40の構成の概略を示す縦断面図である。
【0029】
成膜装置40は、図示するように、処理容器としての筐体100を備える。筐体100は、内部が減圧可能に構成され、ウェハKを収容するものであり、例えばアルミニウムから形成され、接地電位に接続されている。筐体100の底部には、当該筐体100内の空間を減圧するための排気装置60が接続されている。排気装置60は、真空ポンプ(図示せず)等を有しており、例えば、APCバルブ101を介して筐体100に接続される。
【0030】
また、筐体100の一方側(図のX方向正側)の側壁には、ウェハKの搬出入口102が形成されており、この搬出入口102には当該搬出入口102を開閉するためのゲートバルブG5が設けられている。
【0031】
筐体100内には、基板支持部としての載置台110が設けられている。載置台110は、当該載置台110に載置されたウェハKを支持する。載置台110は、静電チャック111、ベース部112を有する。
【0032】
静電チャック111は、例えば、誘電体膜と、当該誘電体膜の内層として設けられた電極と、を有し、ベース部112上に設けられている。静電チャック111の電極には、直流電源(図示せず)が接続されている。静電チャック111上に載置されたウェハKは、直流電源からの直流電圧を電極に印加することにより生じる静電吸着力によって、静電チャック111に吸着保持される。
【0033】
ベース部112は、例えば、アルミニウムを用いて円板状に形成されている。
載置台110は、ウェハKの加熱または冷却の少なくともいずれか一方を行う温度調節機構を有していてもよい。温度調節機構は、例えば抵抗加熱式のヒータや、冷却媒体の流路である。また、温度調節機構は、静電チャック111に設けてもよいし、ベース部112に設けてもよい。
【0034】
さらに、載置台110は、回転・移動機構113に接続されている。回転・移動機構113は、例えば支軸114及び駆動部115を有する。
支軸114は、筐体100の底壁を貫通するように、上下方向に延在する。この支軸114と筐体100の底壁との間には、封止部材SL1が設けられている。封止部材SL1は、支軸114が回転及び上下動可能であるように、筐体100の底壁と支軸114との間の空間を封止する部材であり、例えば、磁性流体シールである。支軸114の上端は、載置台110の下面中央に接続されており、下端は駆動部115に接続されている。
駆動部115は、例えばモータ等の駆動源を有し、支軸114を回転及び上下動させるための駆動力を発生する。支軸114がその軸線AXを中心に回転することに伴って、載置台110が上記軸線AXを中心に回転し、支軸114が上下動することに伴って、載置台110が上下動する。
【0035】
載置台110の上方には、金属材料のターゲット120を保持する、導電性材料で形成されたホルダ(カソード)121が複数設けられている。本実施形態においてホルダ121の数は2つである。
【0036】
ホルダ121は、筐体100内にターゲット120が位置するよう当該ターゲット120を保持する。このホルダ121は、筐体100の天井部に取り付けられている。筐体100における各ホルダ121の取り付け位置には、貫通口が形成されている。また、上記貫通口を囲うように筐体100の内壁面に絶縁部材103が設けられている。各ホルダ121は、上記貫通口を塞ぐように、絶縁部材103を介して筐体100に取り付けられている。
【0037】
ホルダ121は、ターゲット120が載置台110に向くように、当該ターゲット120を正面に保持する。
一実施形態において、各ターゲット120は、WとSiの両方を含有する。この実施形態の場合、各ターゲット120は、ウェハK上に形成される膜がアモルファスのWSi膜となるように、タングステン濃度及びシリコン濃度が調整されている。また、この実施形態の場合、成膜の際、2つのターゲット120のうち両方が用いられてもよいし、いずれか一方のみが用いられてもよい。
【0038】
各ホルダ121には、電源122が接続され、当該電源122から、負の直流電圧が印加される。負の直流電圧に代えて、交流電圧が印加されるようにしてもよい。
【0039】
さらに、各ホルダ121の背面側であって、筐体100の外側となる位置にマグネットユニット123が設けられている。マグネットユニット123は、対応するホルダ121に保持されたターゲット120の正面側に漏洩する磁場を形成する。
【0040】
マグネットユニット123は、移動機構124に接続されている。移動機構124は、マグネットユニット123を対応するホルダ121の背面に沿って所定の方向(
図4のY方向)に揺動させる。なお、移動機構124は、マグネットユニット123を揺動させるための駆動力を発生する駆動源(例えばモータ等)を含む駆動部(図示せず)を有する。
【0041】
さらに、成膜装置40は、筐体100内にガスを供給するガス供給部130を備えている。ガス供給部130は、スパッタリングガスである、アルゴン(Ar)ガス、クリプトン(Kr)ガス等の不活性ガスを筐体100内に供給する。
【0042】
ガス供給部130は、例えば、ガスソース131、マスフローコントローラ等の流量制御器132及びガス導入部133を有する。ガスソース131はスパッタリングガスを貯留している。ガスソース131はそれぞれ、流量制御器132を介してガス導入部133に接続されている。ガス導入部133は、ガスソース131からのガスを筐体100内に導入する部材である。
【0043】
なお、排気装置60、回転・移動機構113、電源122、移動機構124、ガス供給部130は、制御装置50に制御される。
【0044】
<ロードロック装置12>
続いて、ロードロック装置12について
図5を用いて説明する。
図5は、ロードロック装置12の構成の概略を示す縦断面図である。なお、ロードロック装置13の構成は、ロードロック装置12の構成と同様であるため、その説明を省略する。
【0045】
ロードロック装置12は、図示するように、処理容器としての筐体200を備える。筐体200は、内部が減圧可能に構成され、ウェハKを収容するものであり、例えばアルミニウムから形成されている。
筐体200の互いに対向する側壁にはそれぞれ搬入出口201a、201bが形成されており、搬入出口201a、201bにはそれぞれゲートバルブG1、G3が設けられている。
【0046】
筐体200の底部には、当該筐体200の内の空間を減圧するための排気口202が形成されている。排気口202には、真空ポンプ(図示せず)等を有する排気装置70が接続されている。
さらに、筐体200の底壁には、当該筐体200内を大気圧雰囲気に戻すための給気口203が形成されている。給気口203には、例えばN2ガス等の不活性ガスを供給するガス供給機構210が接続されている。
【0047】
また、筐体200内には、ウェハKを支持する支持部として、棒状の支持ピン220が複数本設けられている。各支持ピン220は、筐体200の底部から上方に延び出すように設けられている。
【0048】
さらに、筐体200の上部には、開口204が形成されており、この開口204を塞ぐように光学窓205が設けられている。光学窓205は、後述の光照射ユニットからの光を透過する材料から形成されている。
【0049】
筐体200の外側にあたる、光学窓205の上方には、支持ピン220に支持されたウェハKを光により加熱する加熱部230が設けられている。加熱部230は、光学窓205を介して支持ピン220と対向するように配置される。
【0050】
加熱部230は光照射ユニットUを有する。光照射ユニットUは、支持ピン220に支持されたウェハKを、光を照射することにより加熱する。光照射ユニットUは、平面視において、ウェハKに対応した形状を有し、例えば、平面視円状に形成されている。
この光照射ユニットUは、発光素子として、例えば、ウェハKを指向するLED231を複数有する。
【0051】
各LED231は、ウェハKに向けて光を照射する。各LED231は、ウェハKを加熱することが可能な光、例えば近赤外光や紫外光を出射する。LED231から出射された光(以下、「LED光」と省略することがある。)は、光学窓205を通過し、光学窓205を通過した光は、支持ピン220に支持されたウェハKに入射する。
光照射ユニットUは、当該光照射ユニットU全体で、支持ピン220に支持されたウェハKの全面にLED光を照射可能に構成されている。
【0052】
また、ロードロック装置12は、支持ピン220に支持されたウェハKの温度を測定する温度センサ(図示せず)を有している。
【0053】
なお、排気装置70、ガス供給機構210、加熱部230は、制御装置50に制御される。特に加熱部230は、温度センサにより測定されるウェハKの温度が設定温度になるように、制御装置50に制御される。
【0054】
<成膜処理>
次に、ウェハ処理システム1を用いた成膜処理の一例について
図6を用いて説明する。
図6は、上記成膜処理の一例を説明するためのフローチャートである。なお、以下の処理は制御装置50の制御の下で行われる。
【0055】
(ステップS1:成膜装置40へ搬入)
まず、成膜装置40へウェハKが搬入される。
【0056】
具体的には、搬送機構23の搬送アーム23aが、キャリアC内に挿入され、1枚のウェハKを保持する。なお、ウェハKは、本成膜処理で形成されるWSi膜によるハードマスクのマスク対象のエッチング層として、酸化膜(例えばSiO2膜)を表面に有している。
次いで、搬送アーム23aが、キャリアCから抜き出されると共に、ゲートバルブG1が開状態とされ、その後、搬送アーム23aが大気圧搬送装置20からロードロック装置12の筐体200内に挿入され、搬送アーム23aから支持ピン220にウェハKが受け渡される。
【0057】
続いて、搬送アーム23aがロードロック装置12の筐体200から抜き出され、また、ゲートバルブG1が閉状態とされてロードロック装置12の筐体200内が密閉され、減圧される。
【0058】
ロードロック装置12からのウェハKの搬出タイミングとなると、ゲートバルブG3が開状態とされ、ロードロック装置12内と真空搬送装置30内とが連通される。そして、搬送機構32の搬送アーム32aが、ロードロック装置12の筐体200内に挿入され、支持ピン220からウェハKを受け取り、保持する。次いで、搬送アーム32aが、ロードロック装置12の筐体200から抜き出され、これにより、ウェハKがロードロック装置12から真空搬送室31内に搬送される。
【0059】
次に、ゲートバルブG3が閉状態とされた後、所望の成膜装置40に対するゲートバルブG5が開状態とされる。続いて、減圧された所望の成膜装置40の筐体100内に、ウェハKを保持した搬送アーム32aが挿入され、ウェハKが載置台110の上方に搬送される。次いで、上昇した支持ピン(図示せず)の上にウェハKが受け渡され、その後、搬送アーム32aは筐体100から抜き出され、ゲートバルブG5が閉じられる。それと共に、上記支持ピンの下降が行われ、ウェハKが、載置台110上に載置され、静電チャック111の静電吸着力により吸着保持される。
【0060】
(ステップS2:成膜)
搬入後、成膜装置40により、非晶質のWSi膜がウェハK上に形成される。
【0061】
本工程では、例えばスパッタリングにより、非晶質のWSi膜がウェハKの表面上に形成される。
具体的には、ガス供給部130から筐体100内に、スパッタリングガスとして例えばArガスが供給される。また、電源122から各ホルダ121に電力が供給されることにより、各ターゲット120に電力が供給され、また、載置台110が回転されると共にマグネットユニット123が揺動される。上記電力により、筐体100内のArガスが電離し、電離によって生じた電子が、マグネットユニット123がターゲット120の正面に形成した磁場(すなわち漏洩磁場)によってドリフト運動し、高密度なプラズマを発生させる。このプラズマ中に生じたArイオンによって、ターゲット120の表面がスパッタリングされ、スパッタ粒子がウェハK上に堆積され、非晶質のWSi膜が形成される。電源122からの電力供給を開始してから所定の時間Tが経過すると、電源122からの電力供給、ガス供給部130からのガスの供給、載置台110の回転及びマグネットユニット123の揺動も停止される。
【0062】
本工程で形成されるWSi膜のW含有度は、10%~80%である。W含有度を80%以下にすることにより、WSi膜をアモルファスにすることができ、10%以上とすることにより、マスク対象の酸化膜に対するWSi膜の選択比を十分高くすることができる。
【0063】
また、本工程においてガス供給部130からスパッタリングガスを供給する時の筐体100内の圧力すなわちスパッタリングガスの圧力は、1mTorr~10mTorrとされる。具体的には、筐体100内の圧力が1mTorr~10mTorrとなるように、スパッタリングガスの流量は調整される。筐体100内の圧力を1mTorr以下にすることにより、WSi膜をアモルファスにすることができ、且つ、WSi膜の選択比を十分高くすることができる。また、筐体100内の圧力を1mTorr以上とすることにより、高い生産性を維持することができる。
【0064】
さらに、本実施形態では、本工程において、ウェハKの加熱や冷却は行われず、ウェハKは室温とされる。
【0065】
上述のような処理条件で形成されたアモルファスのWSi膜内の応力すなわち当該WSi膜の膜応力は圧縮応力となる。
また、本ステップS2で形成するWSi膜の厚さは例えば10~500nmである。
【0066】
(ステップS3:ロードロック装置12へ搬送)
次いで、加熱装置であるロードロック装置12へウェハKが搬送される。
【0067】
具体的には、ステップS1におけるロードロック装置12から成膜装置40への搬送と逆動作で、ウェハKが成膜装置40からロードロック装置12へ搬送され、支持ピン220に受け渡される。
【0068】
(ステップS4:加熱)
その後、ロードロック装置12により、アモルファスのWSi膜が結晶化しない温度で、ウェハKが加熱され、アモルファスのWSi膜内の応力が圧縮応力から引張応力にされ。
【0069】
具体的には、加熱部230の光照射ユニットUの全LED231が点灯され、LED光により、支持ピン220上のウェハKが加熱される。加熱開始から所定の加熱処理時間(例えば10分~30分)が経過すると、全LED231が消灯され、LED光によるウェハKの加熱が終了される。
【0070】
この加熱中、温度センサ(図示せず)に測定されるウェハKの温度が予め定められた設定温度になるよう光照射ユニットUは制御される。上記設定温度が高すぎるとWSi膜が結晶化してしまう。また、上記設定温度が低すぎるとアモルファスのWSi膜の膜応力がウェハKの加熱を行っても圧縮応力から引張応力へ変化しない。そのため、上記設定温度は、例えば、事前に行った試験に基づき、当該設定温度での加熱により、アモルファスのWSi膜が結晶化せず且つアモルファスのWSi膜の膜応力がウェハKの加熱により圧縮応力から引張応力へ変化するよう設定される。
【0071】
また、本発明者らが鋭意試験を重ねたところによれば、アモルファスのWSi膜が結晶化しない温度及びアモルファスのWSi膜の膜応力がウェハKの加熱により圧縮応力から引張応力へ変化する温度は、WSi膜のW濃度によって異なる。したがって、本加熱工程におけるウェハKの設定温度は、ステップS2で形成されるWSi膜のW濃度に応じて予め設定される。
【0072】
本ステップS4におけるウェハKの設定温度は、ステップS2の成膜時のウェハKの温度より高くしてもよい。
なお、アモルファスのWSi膜の膜応力が圧縮応力から引張応力へ変化するのであれば、加熱処理時間は、以上で例示した時間より短くてもよい。
【0073】
(ステップS5:搬出)
そして、加熱後のウェハKがウェハ処理システム1外に搬出される。
【0074】
具体的には、ステップS1におけるキャリアCからロードロック装置12への搬送と逆動作で、ウェハKがキャリアCに戻される。
これで一連の成膜処理が完了する。
【0075】
<評価試験>
以下、WSi膜の加熱による膜応力変化の評価のために行った試験について説明する。この評価試験では、複数のウェハKについて上述の成膜処理行った。また、この評価試験では、ウェハK毎に、アモルファスのWSi膜のW濃度またはステップS4の加熱工程でのウェハKの設定温度のいずれか一方を異ならせた。さらに、各ウェハKについて、ステップS2で形成するアモルファスのWSi膜の厚さを350nmとし、ステップS4の加熱工程での加熱処理時間を30分とした。そして、この評価試験ではステップS4の加熱工程前と後にWSi膜の応力を測定した。
図7は、この評価試験の結果を示す図である。
図7において、横軸は、ステップS4の加熱工程でのウェハKの設定温度を示し、縦軸は、膜応力を示している。また、
図7において、ステップS4の加熱工程でのウェハKの設定温度が室温(約25℃)のときのデータとは、ステップS4の加熱工程前のデータを意味する。
【0076】
図示するように、ステップS4の加熱工程前において、アモルファスのWSi膜の膜応力は、W濃度によらず圧縮応力であった。そして、W濃度が60%~80%の範囲では、ウェハKを加熱することにより、アモルファスのWSi膜の膜応力が圧縮応力から引張応力へ変化していた。ただし、圧縮応力から引張応力へ変化する温度は、WSi膜のW濃度によって異なっていた。具体的には、W濃度が高いほど、圧縮応力から引張応力へ変化する温度は高くなっていた。
【0077】
また、図示は省略するが、W濃度が60%~80%の範囲では、ステップS4の加熱工程での設定温度が500℃以下であれば、アモルファスのWSi膜が結晶化していなかった。さらに、ステップS4の加熱工程での加熱によりアモルファスのWSi膜が結晶化しない温度も、当該WiS膜のW濃度によって異なっていた。具体的には、W濃度が高いほど、上記結晶化しない温度は高くなっていた。
【0078】
ここで、ステップS4の加熱工程でのウェハKの加熱により、アモルファスのWSi膜の膜応力が圧縮応力から引張応力へ変化する理由について説明する。
ステップS4の加熱工程でのウェハKの加熱により、ウェハKとアモルファスのWSi膜との両方が熱膨張する。ただし、アモルファスのWSi膜中のWの方がウェハK中のSiより熱膨張率が大きいため、加熱温度が十分高ければ、アモルファスのWSi膜の膜応力が引張応力に変化する。加熱が終了されると、ウェハKとアモルファスのWSi膜の両方の温度が低下していき、ウェハKとアモルファスのWSi膜との両方が熱収縮していく。このとき、アモルファスのWSi膜中のWの方がウェハKのSiに比べて熱収縮率が高いが、アモルファスのWSi膜に粘性があるため、アモルファスのWSi膜が例えば室温まで冷却されても、その膜応力は引張応力のままとなる。これが理由と考えられる。
【0079】
<本実施形態の主な効果>
以上のように、本実施形態にかかる成膜方法は、非晶質のWSi膜をウェハK上に形成するステップS2の成膜工程と、その後、非晶質のWSi膜が結晶化しない温度で、ウェハKを加熱するステップS4の加熱工程と、を含む。上記加熱工程により、ウェハK上の非晶質のWSi膜の膜応力を引張応力にすることができる。したがって、本実施形態によれば、引張応力を有する非晶質のWSi膜を形成することができる。
【0080】
また、本実施形態では、ステップS2の成膜工程時の筐体100内の圧力は、ステップS2で形成されるWSi膜が非晶質となる圧力(具体的には1mTorr以下)である。この圧力は、ステップS2で形成されるWSi膜が高密度となる圧力である。言い換えると、本実施形態によれば、高密度で選択比の高いWSi膜を形成することができる。
なお、ステップS4の加熱工程での加熱により、WSi膜の密度すなわち緻密性が損なわれることはない。
【0081】
さらに、本実施形態では、ステップS2で形成されるWSi膜のW濃度に応じてステップS4の加熱工程でのウェハKの設定温度を設定することにより、ステップS2で形成されるWSi膜のW濃度によらず、引張応力を有する非晶質のWSi膜を形成することができる。
【0082】
<変形例>
以上の例では、ターゲット120の両方がWとSiの両方を含有していたが、アモルファスのWSi膜を形成可能であれば、ターゲット120の一方がWのみ含有し、他方がSiのみ含有してもよい。
【0083】
また、以上の例では、成膜装置40とロードロック装置12、13として構成された加熱装置とが真空搬送装置30を介して一体となっていた。しかし、本開示の技術は、成膜装置40と加熱装置とが別体となっていてもよい。別体の場合、成膜装置40で成膜処理が施されたウェハKは、大気圧下で搬送され、加熱装置に搬入されてもよい。
【0084】
また、以上の例では、ステップS4の加熱工程におけるウェハKの設定温度が、ステップS2で形成されるWSi膜のW濃度に応じて予め設定されていた。これに代えて、ステップS4の加熱工程におけるウェハKの設定温度を、ステップS2で形成されるWSi膜のW濃度によらず加熱によりアモルファスのWSi膜を結晶化させることなくアモルファスのWSi膜の膜応力を圧縮応力から引張応力へ変化させることができる温度(例えば400℃)としてもよい。
【0085】
さらに、以上の例では、加熱用の光源としてLEDを用いていたが、LED以外の光源を加熱に用いてもよい。また、ウェハKの加熱方式は、光による方式に限られない。例えば、ウェハKが載置されるステージを加熱することによりウェハKを加熱するようにしてもよい。
【0086】
以上の例では、WSi膜をスパッタリングにより形成していたが、WSi膜の形成に他の成膜手法(例えばCVD法等)を用いてもよい。
【0087】
また、以上の例では、WSi膜を形成したが、本開示の技術は、Wを含有する合金膜であれば、WSi膜以外にも適用することができる。例えば、本開示の技術は、窒化タングステンシリサイド(WSiN)膜、硼化タングステンシリサイド(WSiB)膜、タングステンカーバイド(WC)膜、窒化タングステンカーバイド(WCN)膜、硼化タングステンカーバイド(WCB)膜等にも適用することができる。
【0088】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 ウェハ処理システム
12 ロードロック装置
13 ロードロック装置
40 成膜装置
50 制御装置
K ウェハ