(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117630
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】流体搬送装置及び液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/18 20060101AFI20230817BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20230817BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
B41J2/18
B41J2/175 501
B41J2/175 503
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020299
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】吉田 知史
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA26
2C056EC16
2C056EC17
2C056EC18
2C056EC32
2C056EC40
2C056FA04
2C056FA13
2C056KB04
2C056KB08
2C056KB16
(57)【要約】
【課題】流体の流速変化(圧変化)が機能に悪影響を及ぼすような流体使用部材に対して流体を搬送する場合であっても、搬送困難な流体を適用することが可能となる。
【解決手段】流路201,202を通じて流体を搬送する流体搬送装置200であって、前記流路内の流体に対して流速変化を生じさせる流速変化動作を実行する流速変化動作手段241と、前記流速変化動作手段に前記流速変化動作を実行させるタイミングを制御する制御手段300とを有することを特徴とするものである。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を通じて流体を搬送する流体搬送装置であって、
前記流路内の流体に対して流速変化を生じさせる流速変化動作を実行する流速変化動作手段と、
前記流速変化動作手段に前記流速変化動作を実行させるタイミングを制御する制御手段とを有することを特徴とする流体搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体搬送装置において、
前記流路は、前記流体を排出する流体排出機構内の機構内流路と、該流体排出機構まで前記流体を搬送し又は該流体排出機構から排出される流体を搬送する機構外流路とを含み、
前記流速変化動作手段は、前記機構外流路内の流体に対して前記流速変化動作を実行することを特徴とする流体搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の流体搬送装置において、
前記流路は、前記流体を排出する流体排出機構内の機構内流路と、該流体排出機構まで前記流体を搬送し又は該流体排出機構から排出される流体を搬送する機構外流路とを含み、
前記流速変化動作手段は、前記機構内流路内の流体に対して前記流速変化動作を実行することを特徴とする流体搬送装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の流体搬送装置において、
前記流体は、液体であり、
前記流体排出機構は、圧力室内の圧力を変化させることにより該圧力室内の前記液体をノズルから吐出する液体吐出ヘッドであることを特徴とする流体搬送装置。
【請求項5】
請求項4に記載の流体搬送装置において、
前記流速変化動作手段は、前記液体吐出ヘッドの非吐出動作期間中に前記流速変化動作を実行し、前記液体吐出ヘッドの吐出動作期間中には前記流速変化動作を実行しないことを特徴とする流体搬送装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の流体搬送装置において、
前記流速変化動作手段は、流体中における固形物質の分散状態を維持し又は流体中の沈殿した固形物質を再分散させる流体分散力を前記流路内の流体に発生させるように、前記流速変化動作を実行することを特徴とする流体搬送装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の流体搬送装置において、
前記流速変化動作手段は、流体にチクソトロピーを発現させて流体の粘度を低下させるせん断力を前記流路内の流体に発生させるように、前記流速変化動作を実行することを特徴とする流体搬送装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の流体搬送装置において、
前記流速変化動作手段は、前記流体に対する流路抵抗を変化させることにより前記流速変化動作を実行することを特徴とする流体搬送装置。
【請求項9】
請求項8に記載の流体搬送装置において、
前記流速変化動作手段は、前記流路中に設けられる弁の開閉動作により前記流速変化動作を実行することを特徴とする流体搬送装置。
【請求項10】
請求項8に記載の流体搬送装置において、
前記流路は、共通流路から分岐して再び合流する複数の並列流路を含み、
前記複数の並列流路は、互いに流路抵抗が異なっており、
前記流速変化動作手段は、前記複数の並列流路の中から流体を通過させる並列流路を選択的に切り替える流路切替手段の切替動作により、前記流速変化動作を実行することを特徴とする流体搬送装置。
【請求項11】
請求項10に記載の流体搬送装置において、
前記複数の並列流路は、互いに流路断面積が異なっていることを特徴とする流体搬送装置。
【請求項12】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の流体搬送装置において、
前記流路は、共通流路から分岐して再び合流する複数の並列流路を含み、
前記複数の並列流路は、流速変化を生じさせ流体を搬送する流速変化ポンプが配置された並列流路と、流速変化を抑制し流体を搬送する流速変化抑制ポンプが配置された並列流路とを含み、
前記流速変化動作手段は、前記流速変化ポンプの搬送動作により前記流速変化動作を実行し、
前記制御手段は、前記複数の並列流路の中から流体を通過させる並列流路を切り替える流路切替手段の切替動作により、前記タイミングを制御することを特徴とする流体搬送装置。
【請求項13】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の流体搬送装置において、
前記流路には、流速変化を生じさせ流体を搬送する第一動作状態と流速変化を抑制し流体を搬送する第二動作状態とを切り替えて搬送動作を行うことが可能な流速変化切替ポンプが配置されており、
前記流速変化動作手段は、前記流速変化切替ポンプを前記第一動作状態で搬送動作させることにより前記流速変化動作を実行し、
前記制御手段は、前記流速変化切替ポンプの動作状態の切替動作により、前記タイミングを制御することを特徴とする流体搬送装置。
【請求項14】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の流体搬送装置において、
前記流路は、共通流路から分岐して再び合流する複数の並列流路を含み、
前記複数の並列流路は、搬送流量が相対的に多い大流量ポンプが配置された並列流路と、搬送流量が相対的に少ない小流量ポンプが配置された並列流路とを含み、
前記流速変化動作手段は、前記複数の並列流路の中から流体を通過させる並列流路を選択的に切り替える流路切替手段の切替動作により、前記流速変化動作を実行することを特徴とする流体搬送装置。
【請求項15】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の流体搬送装置において、
前記流路には、搬送流量が相対的に多い第一流量状態と搬送流量が相対的に少ない第二流量状態とを切り替えて搬送動作を行うことが可能な流量切替ポンプが配置されており、
前記流速変化動作手段は、前記流量切替ポンプの動作状態を切り替える動作により、前記流速変化動作を実行することを特徴とする流体搬送装置。
【請求項16】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の流体搬送装置において、
前記流路は、共通流路から分岐して再び合流する複数の並列流路を含み、
前記複数の並列流路は、順方向へ流体を搬送する順方向ポンプが配置された並列流路と、逆方向へ流体を搬送する逆方向ポンプが配置された並列流路とを含み、
前記流速変化動作手段は、前記複数の並列流路の中から流体を通過させる並列流路を選択的に切り替える流路切替手段の切替動作により、前記流速変化動作を実行することを特徴とする流体搬送装置。
【請求項17】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の流体搬送装置において、
前記流路は、共通流路から分岐して再び合流する複数の並列流路を含み、
前記共通流路には、流速変化を生じさせ流体を搬送する流速変化ポンプが配置されており、
前記複数の並列流路は、アキュムレータが接続された並列流路と、アキュムレータが接続されていない並列流路とを含み、
前記流速変化動作手段は、前記流速変化ポンプの搬送動作により前記流速変化動作を実行し、
前記制御手段は、前記複数の並列流路の中から流体を通過させる並列流路を切り替える流路切替手段の切替動作により、前記タイミングを制御することを特徴とする流体搬送装置。
【請求項18】
圧力室内の圧力を変化させることにより該圧力室内の液体をノズルから吐出する液体吐出ヘッドを備えた液体を吐出する装置であって、
流路を通じて前記液体を前記液体吐出ヘッドへ搬送する液体搬送手段を有し、
前記液体搬送手段として、請求項1乃至17のいずれか1項に記載の流体搬送装置を用いることを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体搬送装置及び液体を吐出する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、流路を通じて流体を搬送する流体搬送装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1は、インクカートリッジからヘッドタンクを通じて記録ヘッド(流体使用部材)にインク(流体)を搬送する装置が開示されている。この装置は、ヘッドタンクと記録ヘッドとの間にインクをインクカートリッジへ戻すためのインク戻り路が設けられている。ヘッドタンクからのインクは、三方弁の切り替え動作により、記録ヘッドへ接続されるインク供給路又はインク戻り路へと選択的に搬送される。この装置では、インク戻り路を通じてインクを循環させることにより、インク内の沈降粒子(固形物質)が攪拌される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、流体の流速変化(圧変化)が機能に悪影響を及ぼすような流体使用部材(例えば液体吐出ヘッド)に対する従来の流体搬送装置は、例えば流体中に分散する固形物質の沈降性が高い流体や粘度の高い流体などの搬送困難な流体の搬送に適用することができないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、流路を通じて流体を搬送する流体搬送装置であって、前記流路内の流体に対して流速変化を繰り返し生じさせる流速変化動作を実行する流速変化動作手段と、前記流速変化動作手段に前記流速変化動作を実行させるタイミングを制御する制御手段とを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、流体の流速変化(圧変化)が機能に悪影響を及ぼすような流体使用部材に対して流体を搬送する場合であっても、例えば流体中に分散する固形物質の沈降性が高い流体や粘度の高い流体などの搬送困難な流体を適用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態の画像形成システムの一例を示す概略構成図。
【
図2】同画像形成システムにおけるヘッドユニットの構成を説明するために、ヘッドユニットに対向する連続シートのシート面法線方向からヘッドユニットを見たときの説明図。
【
図3】同画像形成システムにおける液体吐出ヘッドを示す外観斜視説明図。
【
図4】同液体吐出ヘッドのノズル列方向と直交する断面説明図。
【
図5】実施形態における液体循環機構の構成及び動作を説明するための説明図。
【
図6】(a)は、液体吐出ヘッドの非吐出動作期間中に流速変化動作(脈動動作)を実行したときのヘッド駆動電圧と流速変化とを示す説明図。(b)は、液体吐出ヘッドの吐出動作期間中に流速変化動作(脈動動作)を実行しないときのヘッド駆動電圧と流速変化とを示す説明図。
【
図7】(a)は、液体吐出ヘッドの非吐出動作期間中に流速変化動作(脈動動作)を実行したときの液体循環機構内の流速変化を示す説明図。(b)は、液体吐出ヘッドの吐出動作期間中に流速変化動作(脈動動作)を実行しないときの液体循環機構内の流速変化を示す説明図。
【
図8】変形例1における液体循環機構の構成及び動作を説明するための説明図。
【
図9】変形例2における液体循環機構の構成及び動作を説明するための説明図。
【
図10】変形例2における液体循環機構の他の構成及び動作を説明するための説明図。
【
図11】変形例3における液体循環機構の構成及び動作を説明するための説明図。
【
図12】(a)は、脈動状態切替ポンプを脈動抑制状態で動作させるときの各ポンプヘッドの脈動位相を左図に示し、同脈動状態切替ポンプの出力合成脈動を右図に示した説明図。(b)は、脈動状態切替ポンプを脈動発生状態で動作させるときの各ポンプヘッドの脈動位相を左図に示し、同脈動状態切替ポンプの出力合成脈動を右図に示した説明図。
【
図13】変形例4における液体循環機構の構成及び動作を説明するための説明図。
【
図14】変形例5における液体循環機構の構成及び動作を説明するための説明図。
【
図15】変形例5における液体循環機構の他の構成及び動作を説明するための説明図。
【
図16】変形例6における液体循環機構の構成及び動作を説明するための説明図。
【
図17】変形例7における液体循環機構の構成及び動作を説明するための説明図。
【
図18】変形例8における液体循環機構の構成及び動作を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を、液体を吐出する装置であるインクジェットプリンタからなる画像形成装置を含む画像形成システムに適用した一実施形態について説明する。
なお、本発明は、液体吐出ヘッドの方式に限定されることはなく、ピエゾ方式の液体吐出ヘッド、バブルジェット(登録商標)方式の液体吐出ヘッド、静電型の液体吐出ヘッド等のいずれの方式でも適用可能である。
【0009】
図1は、本実施形態の画像形成システム1000の一例を示す概略構成図である。
本実施形態の画像形成システム1000は、記録材としての連続体である連続シート10を搬送する巻き出し装置1と、巻き出し装置1により搬送される連続シート10に対して液体を吐出して画像を形成する画像形成装置5と、画像が形成された連続シート10を排出する巻き取り装置9と、を備えている。画像形成装置5は、巻き出し装置1により搬送された連続シート10をヘッドユニット50に搬送する搬送部3、画像が形成された連続シート10を乾燥する乾燥部7などを備えている。
【0010】
連続シート10は、巻き出し装置1のシートロール11から送り出され、巻き出し装置1、搬送部3、乾燥部7、巻き取り装置9の各ローラによって搬送されて、巻き取り装置9の印刷ロール91にて巻き取られる。連続シート10は、画像形成装置5において、ヘッドユニット50に対向して搬送され、ヘッドユニット50から吐出される液体(画像形成用インク)によって画像が形成される。
【0011】
ヘッドユニット50には、例えば、シート搬送方向上流側から順に4色分のフルライン型ヘッドアレイ51K,51C,51M,51Yと、各ヘッドアレイ51K,51C,51M,51Yにそれぞれ対応する液体循環機構200K,200C,200M,200Yとが配置されている。各ヘッドアレイ51K,51C,51M,51Yは、1又は2以上の液体吐出ヘッドを備えており、それぞれ、搬送される連続シート10に対してブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の液体を吐出する。
【0012】
図2は、ヘッドユニット50の構成を説明するために、ヘッドユニット50に対向する連続シート10のシート面法線方向からヘッドユニット50を見たときの説明図である。
本実施形態の各ヘッドアレイ51K,51C,51M,51Yは、
図2に示すように、液体吐出ヘッド100をベース部材52上に千鳥状に並べて配置したものである。詳しくは、各ヘッドアレイ51K,51C,51M,51Yに配置される複数の液体吐出ヘッド100は、ノズル列方向がシート幅方向(シート搬送方向に対して直交する方向)に一致するように配置される。そして、隣り合う液体吐出ヘッド100同士のシート搬送方向位置を互い違いにずらして、隣り合う液体吐出ヘッド100のノズル列のシート幅方向位置が互いに部分的に重複するように、配置される。
【0013】
図3は、本実施形態における液体吐出ヘッド100を示す外観斜視説明図である。
図4は、本実施形態における液体吐出ヘッド100のノズル列方向と直交する断面説明図である。
本実施形態の液体吐出ヘッド100は、ノズル板101と、流路板102と、振動板部材103とを積層接合した構造部を備えている。また、液体吐出ヘッド100は、振動板部材103の振動領域(振動板)130を変位させる圧力発生手段としての圧電アクチュエータ111と、液体吐出ヘッド100のフレーム部材を兼ねている共通液室部材120と、カバー129とを備えている。なお、流路板102と振動板部材103とで構成される部分を流路部材140という。
【0014】
ノズル板101には、液体を吐出する複数のノズル104が形成されている。
【0015】
流路板102には、ノズル104にノズル連通路105を介して連通している圧力室としての個別液室106、個別液室106に通じる供給側流体抵抗部107、供給側流体抵抗部107に通じる液導入部108となる貫通穴や溝部が形成されている。ノズル連通路105は、ノズル104と個別液室106とにそれぞれ連なって通じる流路である。また、液導入部108は、振動板部材103の開口109を介して供給側共通液室110に通じている。
【0016】
振動板部材103は、流路板102の個別液室106の壁面を形成する変形可能な振動領域130を有する。振動板部材103は、例えば2層構造(限定されない)であり、流路板102側から、薄肉部を形成する第1層と、厚肉部を形成する第2層とで構成され、第1層で個別液室106に対応する部分に変形可能な振動領域130を形成している。
【0017】
振動板部材103の個別液室106とは反対側には、振動板部材103の振動領域130を変形させる駆動手段(アクチュエータ手段、圧力発生手段)としての電気機械変換素子を含む圧電アクチュエータ111が配置されている。圧電アクチュエータ111は、例えば、ベース部材113上に接合した圧電部材をハーフカットダイシングによって溝加工して所要数の柱状の圧電素子112を所定の間隔で櫛歯状に形成したものである。圧電素子112は、振動板部材103の振動領域130に形成した島状の厚肉部である凸部130aに接合される。また、圧電素子112には、フレキシブル配線部材115が接続されている。
【0018】
共通液室部材120には、供給側共通液室110と排出側共通液室150とが形成されている。供給側共通液室110は、供給ポート171に通じ、排出側共通液室150は排出ポート181に通じている。共通液室部材120は、例えば、第1共通液室部材121及び第2共通液室部材122によって構成され、第1共通液室部材121が流路部材140の振動板部材103側に接合され、第1共通液室部材121に第2共通液室部材122が積層して接合されている。
【0019】
第1共通液室部材121は、液導入部108に通じる供給側共通液室110の一部である下流側共通液室110Aと、排出流路151に通じる排出側共通液室150とを形成している。また、第2共通液室部材122は、供給側共通液室110の残部である上流側共通液室110Bを形成している。また、流路板102には、各個別液室106にノズル連通路105を介して通じる流路板102の面方向に沿って延びる排出流路151が形成されている。排出流路151は排出側共通液室150に通じている。
【0020】
本実施形態の液体吐出ヘッド100においては、例えば、圧電素子112に印加する電圧を基準電位(中間電位)から下げることによって圧電素子112が収縮し、振動板部材103の振動領域130が引かれて個別液室106の容積が膨張する。これにより、個別液室106内に液体が流入する。一方、圧電素子112に印加する電圧を上げて圧電素子112を積層方向に伸長させ、振動板部材103の振動領域130をノズル104に向かう方向へ変形させることで、個別液室106の容積が収縮する。これにより、個別液室106内の液体が加圧され、ノズル104から液体が吐出される。
【0021】
ノズル104から吐出されない個別液室106内の液体は、排出流路151から排出側共通液室150へと排出され、排出側共通液室150から外部の循環経路を通じて供給側共通液室110に再度供給される。なお、ヘッドの駆動方法については、上記の例(引き-押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行うこともできる。
【0022】
図5は、本実施形態における流体搬送装置としての液体循環機構200の構成及び動作を説明するための説明図である。
なお、液体循環機構200は、各ヘッドアレイ51K,51C,51M,51Yのそれぞれに設けられているが、その構成及び動作について実質的に同じである。
【0023】
ヘッドアレイ51の液体吐出ヘッド100から見て流路上流側(液体吐出ヘッド100へ液体を供給する供給路201)には、液体を貯留する供給側加圧タンク211が配置されている。また、ヘッドアレイ51の液体吐出ヘッド100から見て流路下流側(液体吐出ヘッド100から液体を排出する排出路202)にも、液体を貯留する排出側加圧タンク212が配置されている。
【0024】
これらの加圧タンク211,212には、それぞれ、圧縮空気を規定圧まで減圧するレギュレータ221,222が接続されている。これらのレギュレータ221,222により、供給側加圧タンク211の圧力PAと、排出側加圧タンク212の圧力PBは、PA>PBの関係となるように調整されている。これらの圧力PA,PBの差圧ΔP(=PA-PB)により、供給側加圧タンク211内に充填された液体が、液体吐出ヘッド100を経由して排出側加圧タンク212に流れ込むという液体の流れを生み出すことができる。
【0025】
また、本実施形態では、排出側加圧タンク212と供給側加圧タンク211との間は戻し路203によって連通している。戻し路203には、流体に搬送力を付与する搬送力付与手段としての戻しポンプ231が設けられている。この戻しポンプ231が稼働することで、排出側加圧タンク212に流れ込んだ液体は、排出側加圧タンク212から戻し路203を経由して供給側加圧タンク211へ搬送される。
【0026】
以上のようにして、本実施形態では、供給側加圧タンク211、供給路201、液体吐出ヘッド100、排出路202、排出側加圧タンク212、戻し路203、供給側加圧タンク211という循環路(流路)を通じて、液体が搬送される。
【0027】
ここで、液体吐出ヘッド100を通過するように液体を循環させる液体循環機構200では、液体吐出ヘッド100の安定した吐出性能を確保するため、液体吐出ヘッド100の供給路201や排出路202内における液体の流速ばらつきを抑制するのが好ましい。そのためには、液体を搬送するための搬送力の変動(圧力変動)を極力小さくすることが好ましい。
【0028】
そのため、本実施形態では、供給路201から液体吐出ヘッド100を経由して排出路202に達するまでの流路については、供給側加圧タンク211の圧力PAと排出側加圧タンク212の圧力PBとの差圧ΔPを利用した搬送力により液体を搬送する差圧搬送を行う。この差圧搬送によれば、レギュレータ221,222により各加圧タンク211,212の圧力PA,PBを制御することにより、圧力変動(搬送力変動)が抑制された状態で液体を搬送することが可能である。
【0029】
なお、このような差圧搬送ではなく、流路上に設けられるポンプによって液体を搬送するポンプ搬送を用いる場合、ポンプの機能上、ポンプの駆動によって流速変化が繰り返される。以下、このポンプによる流速変化が繰り返される動きを「脈動」という。このような脈動が生じるポンプを使って、供給路201から液体吐出ヘッド100を経由して排出路202に達するまでの流路の液体搬送を行うと、液体吐出ヘッド100内の液体に当該脈動による圧力変動が伝わり、液体吐出ヘッド100の安定した吐出性能を実現することができない。
【0030】
ただし、ポンプの中には、脈動を極力抑えられる機構を搭載した構成のものが存在するので、このようなポンプを採用することで、液体吐出ヘッド100の安定した吐出性能をある程度は実現することが可能である。特に、流路内にアキュムレータを配置して、流路内の液体に生じる脈動を減衰させれば、より安定した吐出性能を実現することが可能である。
【0031】
ところが、このような脈動(流速変化の繰り返し)が抑制された構成は、例えば、液体中に分散する固形物質の沈降性が高い液体の搬送に採用すると、流速変化が少ないために、固形物質が沈降しやすい。そのため、固形物質の分散状態を維持した適切な状態で液体を搬送することが困難である。また、粘度の高い液体の搬送に採用すると、流速変化が少ないために、粘度が高い状態のまま維持され、搬送それ自体が困難である。
【0032】
なお、脈動(流速変化の繰り返し)が抑制された構成であっても、その流路のつなぎ目などの箇所で流路抵抗の変化が生じる。この流路抵抗の変化により、液体中における固形物質の分散状態を維持し又は液体中の沈殿した固形物質を再分散させるのに必要な流体分散力が発生したり、流体の粘度を低下させるせん断力が発生したりする。しかしながら、流路のつなぎ目などの箇所での流路抵抗変化によって発生する程度の弱い流体分散力では、固形物質の含有量が多い液体などの沈降性が高い液体を、適切な分散状態で搬送することはできない。また、流路のつなぎ目などの箇所での流路抵抗変化によって発生する程度の弱いせん断力では、液体に十分なチクソトロピーを発現させて、適切な搬送が可能な程度まで粘度を低下させることはできない。
【0033】
また、沈降性が高い液体を搬送する場合、例えば、液体吐出ヘッド100を使用せずに長期保管した後に再稼働させるときや、一定時間吐出しなかった後に吐出動作を再開させるときなど、一定時間の搬送停止状態が続いた後の液体を搬送するときには、液体中の固形物質の沈降を解消する必要がある。脈動(流速変化の繰り返し)が抑制された構成では、液体の搬送を行うだけでは固形物質の沈降を解消することができない。そのため、長期保管前に、液体吐出ヘッド内の滞留液体や流路内の滞留液体を洗浄液などで洗浄して空にしたり、再開時に、液体吐出ヘッド内の液体を(洗浄液を含めて)捨て射ちして沈殿物を排除したりする動作が行われる。
【0034】
例えば、従来の画像形成装置では、印刷を行わない時、液体吐出ヘッドを搭載したキャリッジなどがノズルの清浄化などのための維持機構部への一時帰還時、あるいは、印刷前のウォーミングアップ動作や印刷終了後のエンドシーケンス時などにおいて、流路内の滞留液体を維持機構部にて、捨て射ち動作をする。この捨て射ち動作は、液体吐出ヘッド内および流路内の液体中で固形物質が沈殿することや、粘度の高い状態の流体の粘度が下がる前に、液体吐出ヘッドのノズルや流路を塞いでしまったり、塞がずとも低粘度状態になって凝集した凝集体が流路を流れることで液体吐出ヘッドのノズルなどの狭小部に詰まることによる不具合を回避するのに有効である。しかしながら、このような捨て射ち動作は、待機時間を発生させたり、液体の無駄な消費につながったりするという問題がある。
【0035】
また、粘度の高い液体を搬送する場合、一定時間の搬送停止状態が続いた後の液体を搬送するときには、高い粘度状態になっている液体の粘度を、搬送可能な程度まで低下させる必要がある。脈動(流速変化の繰り返し)が抑制された構成では、液体の搬送動作を開始しても、十分なチクソトロピーを発現させるほどのせん断力を与えることができず、流体の搬送を行うことができないだけでなく、最悪の場合、装置自体の故障にもつながる懸念がある。そのため、再開時のウォーミングアップ動作として、攪拌部材によりタンク内の液体を攪拌して液体に強いせん断力をくわえてチクソトロピーを発現させ、粘度を低下させてから液体を搬送する動作が行われる。しかしながら、このような動作は、待機時間を発生させるなどの問題がある。
【0036】
更に、液体の沈降性を低く抑えるために液体の粘度を高めると、上述したように安定した搬送(特に一定時間の搬送停止状態が続いた後の搬送)を実現することが困難となる。逆に、安定した搬送を実現するために液体の粘度を低く抑えると、液体の沈降性が高まり、分散状態での搬送(特に一定時間の搬送停止状態が続いた後の搬送)を実現することが困難となる。
【0037】
そこで、本実施形態においては、流路内の液体に対して繰り返しの流速変化(脈動)を生じさせる流速変化動作(脈動動作)を実行する流速変化動作手段を設け、この流速変化動作手段が流速変化動作を実行するタイミングを制御することで、搬送困難な液体の適切な搬送性(沈降性の高い液体の分散状態での液体搬送、高粘度液体の粘度を低下させた状態での液体搬送)と、液体吐出ヘッド100からの安定した吐出機能の確保とを両立する。
【0038】
なお、液体に対して繰り返しの流速変化(脈動)は、流速が高くなったり低くなったりする周期的な連続波形を示す変化に限らず、非連続波形、ランダム波形、単発波形、振れ幅の強弱、正弦形状から矩形形状・パルス形状などを含めたあらゆる「波打ち」波形全般を意味する。そして、流速変化動作手段は、流路内の液体に対してこのような波形を示す流速変化(圧力変化)を生じさせることのできる手段である。
【0039】
本実施形態においては、
図5に示すように、液体吐出ヘッド100と供給側加圧タンク211とをつなぐ供給路201に、流速変化動作手段である脈動発生部材の一例として、弁(バルブ)である電磁弁241が設けられている。電磁弁241は、制御手段としての制御部300の制御により、供給路201の断面積を狭めたり拡げたりすることができ、流路抵抗を変更できる流路抵抗変更手段として機能する。
【0040】
なお、
図5の例では、流速変化動作手段(電磁弁241)を、流体排出機構である液体吐出ヘッド100の流路上流側の供給路201に配置しているが、液体吐出ヘッド100の流路下流側の排出路202に配置してもよい。流速変化動作手段の特性によっては、流体排出機構の流路上流側と流路下流側とで、発生させることのできる流速変化の大きさが変わってくることがあるので、その特性を考慮して配置箇所を適宜選択する。
【0041】
図6(a)及び(b)並びに
図7(a)及び(b)は、流速変化動作手段(電磁弁241)に流速変化動作(脈動動作)を実行させるタイミングを説明するための説明図である。
本実施形態においては、
図6(a)及び
図7(a)に示すように、液体吐出ヘッド100の非吐出動作期間中(液体吐出ヘッド100に駆動電圧波形が印加されない期間中)に、電磁弁241による流速変化動作(脈動動作)が実行される。この流速変化動作(脈動動作)は、電磁弁241の開閉を繰り返す動作(開閉動作)を行うことにより、供給路201内の液体に対する流路抵抗を繰り返し変化させ、繰り返しの流速変化を生じさせる。供給側加圧タンク211から液体吐出ヘッド100を経由して排出側加圧タンク212まで液体搬送を行っているときに、上述したような電磁弁241の開閉動作を行うことにより、
図6(a)の下図に示すように、供給路201内の液体には、開閉動作に対応した繰り返しの流速変化が生じる。
【0042】
具体的には、電磁弁241を絞る(閉じる)と、供給路201の流路抵抗(電磁弁241が配置されている箇所の流路抵抗)が上昇し、供給路201内の液体の流速(圧)が一時的に低下する。続いて、電磁弁241を開放する(開く)と、供給路201の流路抵抗(電磁弁241が配置されている箇所の流路抵抗)が低下し(元に戻り)、供給路201内の液体の流速(圧)が一時的に上昇する。これにより、電磁弁241の開閉動作に応じた繰り返しの流速変化を発生させることができる。
【0043】
特に、本実施形態の供給路201は、弾性チューブなどの拡縮性を有する流路部材によって構成されている。この場合、電磁弁241を閉じて一時的に上昇した圧により供給路201が膨張した後、電磁弁241を開いて圧が低下するタイミングで弾性復元力によるオーバーシュートが作用して供給路201が縮む。その後は、電磁弁241を開いたままでも、供給路201の弾性復元力の作用により、一定時間、供給路201の拡縮が繰り返される減衰振動現象が発生し、供給路201の拡縮(振動)が収束するまで、繰り返しの流速変化が発生する。
【0044】
このように供給路201内の液体に発生する繰り返しの流速変化(脈動)は、
図7(a)に示すように、液体吐出ヘッド100内の流路や排出路202などの液体にも伝播し、繰り返しの流速変化(脈動)を生じさせる。なお、
図7中における符号R1、R2で示す矢印の太さは、流速(圧)の大きさの違いを表している。その結果、供給路201内の液体はもとより、液体吐出ヘッド100内の液体にも排出路202内の液体にも、繰り返しの流速変化が生じ、減衰振動に伴った加速度が作用することになる。
【0045】
すなわち、流速が上がるときにはプラスの加速度が作用し、流速が下がるときにはマイナスの加速度が作用し、このような加速度が強弱、正負で液体に加わることで、当該液体に対して流体分散力やせん断力を付与することができる。その結果、この流体分散力により、液体中における固形物質の分散状態を維持し又は液体中の沈殿した固形物質を再分散させることができる。また、このせん断力により、液体にチクソトロピーを発現させて粘度を低下させることができ、適切な搬送が可能となる。なお、これは、例えば、一定の流速で流れる潮流に対して、海岸などの波打ち際での押し波、引き波での海中物に対する抵抗力の変化を想像すると理解の助けとなる。
【0046】
なお、電磁弁241の開閉動作を行う期間には、液体吐出ヘッド100から液体が排出されないようにする液体排出抑制を実施するのが好ましい。これにより、液体吐出ヘッド100内の流速(圧)が高まったときに液体吐出ヘッド100から液体が漏れ出るような事態を抑制することができる。
【0047】
一方で、本実施形態においては、
図6(b)及び
図7(b)に示すように、液体吐出ヘッド100の吐出動作期間中(液体吐出ヘッド100に駆動電圧波形が印加される期間中)は、電磁弁241による流速変化動作(脈動動作)を実行しない。つまり、液体吐出ヘッド100の吐出動作期間中は、例えば電磁弁241を開放状態に維持する。この場合、差圧搬送により、供給側加圧タンク211から電磁弁241を通って液体吐出ヘッド100を経由して排出側加圧タンク212まで液体が搬送されるので、
図6(b)の下図に示すように、供給路201内の液体には流速変化がほとんど生じない。
【0048】
したがって、液体吐出ヘッド100の吐出動作期間中に、電磁弁241の開閉動作に応じた流速変化が液体吐出ヘッド100内の液体に伝播されることによって吐出機能が阻害されることがない。よって、本実施形態によれば、液体吐出ヘッド100の非吐出動作期間中に繰り返し流速変化(脈動)を発生させて搬送困難な液体の適切な搬送性を確保しつつ、液体吐出ヘッド100の吐出動作期間中には繰り返し流速変化(脈動)を発生させないようにして液体吐出ヘッド100からの安定した吐出機能を確保することができる。
【0049】
また、本実施形態においては、レギュレータ221の規定圧を大きくしたり、レギュレータ222の規定圧を小さくしたり大気開放したりすることで、差圧ΔPを大きくすることができる。これにより、電磁弁241の開閉動作による流速変化の振れ幅(つまり「波打ち」の振れ幅)を大きくすることが可能である。
【0050】
また、例えば、電磁弁241の閉動作時の絞り量やその絞り速度(時間)、絞っている時間、開動作時の開放速度(時間)、次の絞りを開始するタイミング、などを適宜調整することにより、電磁弁241の開閉動作に応じた繰り返し流速変化の発生状態を変えることができる。したがって、これらの調整は、得られる液体の分散状態や粘度状態などの条件に合わせて行うのが好ましい。
【0051】
本実施形態によれば、沈降性の高い液体や高粘度の液体であっても適切に搬送することが可能となる。つまり、これまで適切な搬送ができないことを理由に使用されなかった沈降性の高い液体や高粘度の液体を使用することが可能となる。しかも、本実施形態によれば、従来実施されていた「捨て射ち」を行う必要がなく、液体の無駄な消費を抑制することもできる。もちろん、本実施形態においても、「捨て射ち」を実施する構成を採用してもよい。
【0052】
〔変形例1〕
次に、本実施形態における流体搬送装置である液体循環機構200の一変形例(以下、本変形例を「変形例1」という。)について説明する。
図8は、本変形例1における液体循環機構200の構成及び動作を説明するための説明図である。
本変形例1は、上述した実施形態の構成に、洗浄処理及び捨て射ち動作を実施する構成を付加したものである。なお、本変形例1では、上述した実施形態と重複する説明は適宜省略する。他の変形例の説明についても同様である。
【0053】
本変形例1において、供給路201における電磁弁241の流路下流側には、電磁弁からなる三方弁251が設けられている。この三方弁251には、洗浄液が貯留されている洗浄液用加圧タンク213に連通する洗浄液路204が接続されている。また、排出路202にも電磁弁からなる三方弁252が設けられている。この三方弁252には、廃液タンク214が接続されている。
【0054】
また、本変形例1においては、液体吐出ヘッド100による「捨て射ち」時の液体(インクと洗浄液との混合液体)を受ける実施するための液体受け部260が設けられている。この液体受け部260は、液体吐出ヘッド100から吐出される洗浄液を含む液体(「捨て射ち」の液体)を受け取る。液体受け部260には、受け取った液体を廃液タンク214へ搬送するための廃液路205が接続されている。
【0055】
また、本変形例1において、洗浄液路204には電磁弁からなる253が設けられている。供給路201の三方弁251は、洗浄液路204の三方弁253により、洗浄液用加圧タンク213の下部に接続されている液用通路204Aと、洗浄液用加圧タンク213の上部に接続されている気体用通路204Bとに選択的に接続される。
【0056】
本変形例1において、洗浄処理を実施しない非洗浄実施期間では、制御部300は、三方弁251を制御して、液体吐出ヘッド100と供給側加圧タンク211とを接続し、液体吐出ヘッド100と洗浄液用加圧タンク213とを切り離す。また、この非洗浄実施期間では、制御部300は、三方弁252を制御して、液体吐出ヘッド100と排出側加圧タンク212とを接続し、液体吐出ヘッド100と廃液タンク214とを切り離す。この状態は、上述した実施形態と同じ状態であり、液体吐出ヘッド100の吐出動作期間中には、差圧搬送により矢印R1で示すようにほぼ一定の流速で液体が搬送され、非吐出動作期間中に電磁弁241の流速変化動作(脈動動作)が実行されることで、繰り返しの流速変化(脈動)を生じさせた状態で液体が搬送される。
【0057】
一方、本変形例1において、洗浄処理を実施する洗浄実施期間では、液体吐出ヘッド100並びに供給路201及び排出路202を洗浄する洗浄処理が実施される。この洗浄実施期間では、制御部300は、三方弁251を制御して、液体吐出ヘッド100と洗浄液路204とを接続し、液体吐出ヘッド100と供給側加圧タンク211とを切り離す。また、この洗浄実施期間では、制御部300は、三方弁252を制御して、液体吐出ヘッド100と廃液タンク214とを接続し、液体吐出ヘッド100と排出側加圧タンク212とを切り離す。
【0058】
洗浄液用加圧タンク213には、電磁バルブ242を介して、圧縮空気を規定圧まで減圧するレギュレータ223が接続されている。このレギュレータ223により、洗浄液用加圧タンク213の圧力PCは、廃液タンク214の圧力PDよりも大きくなる関係(PC>PD)に調整されている。これらの圧力PC,PDの差圧ΔP(=PC-PD)により、洗浄液路204の三方弁253が供給路201の三方弁251と液用通路204Aとを接続しているとき、洗浄液用加圧タンク213内に充填された洗浄液が洗浄液路204を通じて液体吐出ヘッド100を経由して廃液タンク214に流れ込むという液体の流れRcを生み出すことができる。
【0059】
一方、洗浄液路204の三方弁253が供給路201の三方弁251と気体用通路204Bとを接続しているとき、洗浄液用加圧タンク213の上部に存在する加圧状態の気体(空気)が洗浄液路204を通じて液体吐出ヘッド100を経由して廃液タンク214に流れ込むという気体の流れRaを生み出すことができる。
【0060】
本変形例1では、三方弁253の切替動作により、液体吐出ヘッド100に対して洗浄液と気体とが交互に流れる流れRcaを生み出すことができる。本変形例1では、この流れRcaにより、液体吐出ヘッド100内の滞留液体並びに供給路201及び排出路202内の滞留液体を、図中矢印Rwで示すように、排出路202から三方弁252を介して廃液タンク214へ流し、洗浄処理を行う。また、液体吐出ヘッド100のノズルを適宜開放することで、液体吐出ヘッド100内に微量に残留する液体も洗浄することができる。
【0061】
洗浄処理後に再稼働する際には、制御部300は、三方弁251を制御して、液体吐出ヘッド100と供給側加圧タンク211とを接続し、液体吐出ヘッド100と洗浄液用加圧タンク213とを切り離す。また、制御部300は、三方弁252を制御して、液体吐出ヘッド100と排出側加圧タンク212とを接続し、液体吐出ヘッド100と廃液タンク214とを切り離す。この結果、差圧搬送により矢印R1で示す流れで供給側加圧タンク211内の液体が搬送され、液体吐出ヘッド100等に液体が充填される。
【0062】
続いて、液体受け部260の対向位置に配置される液体吐出ヘッド100から液体(インクと洗浄液との混合液体)を吐出する「捨て射ち」を実施する。これにより、液体吐出ヘッド100等内の混合液体が液体受け部260へ排出される。その結果、液体吐出ヘッド100等内は供給側加圧タンク211から搬送された液体によって満たされ、印刷動作の準備が完了する。
【0063】
なお、本変形例1においては、洗浄処理のための洗浄液用加圧タンク213や廃液タンク214、液体受け部260、三方弁253などが必要となるため、大型化、重量増、費用増という懸念がある。また、供給側加圧タンク211の液体を捨て射ち動作によって排出することによる無駄な消費が伴う点も懸念される。
【0064】
〔変形例2〕
次に、本実施形態における流体搬送装置である液体循環機構200の他の変形例(以下、本変形例を「変形例2」という。)について説明する。
図9は、本変形例2における液体循環機構200の構成及び動作を説明するための説明図である。
本変形例2は、流速変化動作手段として、上述した実施形態における電磁弁241に代えて、互いに流路抵抗が異なる複数の並列流路201A,201Bを三方弁254,255により選択的に切り替える構成を採用したものである。
【0065】
本変形例2において、供給路201は、共通流路から分岐して再び合流する複数の並列流路201A,201Bを含み、一方の並列流路201Aは他方の並列流路201Bよりも流路断面積が狭く形成されている。供給側加圧タンク211に連通する供給路201の部分(共通流路)から2つの並列流路201A,201Bに分岐する分岐点には電磁弁からなる三方弁254が配置されている。また、液体吐出ヘッド100に連通する供給路201の部分(共通流路)に2つの並列流路201A,201Bが合流する合流点には電磁弁からなる三方弁255が配置されている。
【0066】
本変形例2において、液体吐出ヘッド100の吐出動作期間中は、制御部300は、液体吐出ヘッド100と供給側加圧タンク211との間が一方の並列流路201Aを介して連通するように、三方弁254,255を制御する。この状態は、上述した実施形態と同じ状態であり、液体吐出ヘッド100の吐出動作期間中には、差圧搬送により矢印R1で示すようにほぼ一定の流速で液体が搬送される。
【0067】
一方、本変形例2において、非吐出動作期間中に繰り返しの流速変化(脈動)を発生させる場合には、制御部300は、液体吐出ヘッド100と供給側加圧タンク211との間の流路が、一方の並列流路201Aを経由する流路と他方の並列流路201Bを経由する流路とに交互に切り替わるように、流路切替手段としての三方弁254,255の切替動作を制御する。
【0068】
他方の並列流路201Bは、流路断面積が一方の並列流路201Aよりも広いため、一方の並列流路201Aよりも流路抵抗が小さい。そのため、液体吐出ヘッド100と供給側加圧タンク211との間の液体が他方の並列流路201Bを通過する時期における流速は、一方の並列流路201Aを通過する時期における流速よりも速いものとなる。
【0069】
すなわち、本変形例2によれば、上述した三方弁254,255の切替動作により、供給路201の全体の流路抵抗を繰り返し変化させることができ、これにより、供給路201を通過する液体に繰り返しの流速変化(脈動)を発生させることができる。その結果、供給側加圧タンク211から液体吐出ヘッド100を経由して排出側加圧タンク212に至るまでの流路を流れる液体に、
図9の矢印R2に示すように、繰り返しの流速変化(脈動)を発生させることができる。
【0070】
本変形例2においては、制御部300により三方弁254,255の切替動作の制御内容を適宜変更することにより、繰り返しの流速変化(脈動)の発生状態を変えることができる。
【0071】
なお、本変形例2は、他方の並列流路201Bの流路断面積が一方の並列流路201Aよりも広く、他方の並列流路201Bの流路抵抗が一方の並列流路201Aよりも小さい例で説明したが、
図10に示すように、一方の並列流路201Aの流路断面積が他方の並列流路201Bよりも広く、一方の並列流路201Aの流路抵抗が他方の並列流路201Bよりも小さい構成であってもよい。
【0072】
本変形例2では、流速変化動作手段の構成を、液体吐出ヘッド100の流路上流側に配置した例で説明しているが、液体吐出ヘッド100の流路下流側に配置してもよい。この流速変化動作手段の特性(三方弁254,255のオリフィス径の違い、並列流路201A,201Bの材質や径の違いなど)によっては、液体吐出ヘッド100の流路上流側と流路下流側とで、発生させることのできる流速変化の大きさが変わってくることがあるので、その特性を考慮して配置箇所を適宜選択する。
【0073】
〔変形例3〕
次に、本実施形態における流体搬送装置である液体循環機構200の更に他の変形例(以下、本変形例を「変形例3」という。)について説明する。
図11は、本変形例3における液体循環機構200の構成及び動作を説明するための説明図である。
本変形例3は、上述した実施形態における差圧搬送に代えてポンプ搬送を用いるとともに、流速変化動作手段として、上述した実施形態における電磁弁241に代えて、単一で脈動抑制状態と脈動発生状態とを切り替え可能な脈動状態切替ポンプ232を採用したものである。
【0074】
本変形例3においては、差圧搬送に代えてポンプ搬送を用いるため、排出路202には排出側加圧タンク212が配置されておらず、排出路202が供給側加圧タンク211に直接(戻し路203を用いずに)接続されている。供給側加圧タンク211には、圧縮空気を規定圧まで減圧するレギュレータ221が接続され、供給側加圧タンク211を加圧して供給側加圧タンク211の圧力PAが調整されている。
【0075】
供給路201には脈動状態切替ポンプ232が配置され、この脈動状態切替ポンプ232のポンプ圧PPによる液体搬送力によって、供給側加圧タンク211、供給路201、液体吐出ヘッド100、排出路202、供給側加圧タンク211という循環路(流路)を通じて、液体が搬送される。
【0076】
本変形例3は、液体の循環流路を構成するうえでは、加圧タンクが1つで足りる点で簡易な構成である。ただし、ポンプ搬送の場合、一般には、液体搬送力を付与するポンプそれ自体がもつ脈動が、そのまま液体の繰り返し流速変化(脈動)をもたらす構成であるため、液体吐出ヘッド100の吐出動作期間中に、繰り返し流速変化(脈動)が液体吐出ヘッド100に伝播すると、安定した吐出機能が阻害される。
【0077】
ここで、近年、ポンプ脈動を極力抑制できる脈動抑制ポンプ(流速変化抑制ポンプ)が開発されている。このような脈動抑制ポンプとしては、例えば、複数のポンプヘッドを搭載し、それぞれのポンプヘッドがもつ脈動の位相を時系列的にずらすように構成して、各ポンプヘッドの脈動特性を打ち消すようにしたものが挙げられる。この脈動抑制ポンプを用いることで、安定した吐出機能を維持することが可能である。しかしながら、このような脈動抑制ポンプを用いると、沈降性の高い液体や粘度の高い液体などを十分な搬送性をもって搬送することができない。
【0078】
そこで、本変形例3においては、ポンプ搬送に用いるポンプとして、流速変化を繰り返し生じさせながら液体を搬送する第一動作状態(ポンプ脈動が生じる脈動発生状態)と、流速変化を抑制しながら液体を搬送する第二動作状態(ポンプ脈動が抑制された脈動抑制状態)とを切り替えて搬送動作を行うことが可能な流速変化切替ポンプである脈動状態切替ポンプ232を用いる。そして、脈動状態切替ポンプ232の動作状態の切替は、制御部300によって制御する。
【0079】
具体的には、脈動状態切替ポンプ232は、例えば3つのポンプヘッドを搭載し、それぞれのポンプヘッドがもつ脈動の位相を制御部300によって制御することができるようになっている。そして、制御部300は、
図12(a)の左図に示すように、脈動状態切替ポンプ232における3つのポンプヘッドの脈動位相を時系列的にずらして各ポンプヘッドの脈動特性が打ち消されるように脈動状態切替ポンプ232を動作させることで、
図12(a)の右図に示すように、脈動状態切替ポンプ232から出力されるポンプ脈動が抑制された脈動抑制状態にすることができる。また、制御部300は、
図12(b)の左図に示すように、脈動状態切替ポンプ232における3つのポンプヘッドの脈動位相を合わせるように脈動状態切替ポンプ232を動作させることで、
図12(b)の右図に示すように、脈動状態切替ポンプ232から出力されるポンプ脈動が発生した脈動発生状態にすることができる。
【0080】
本変形例3において、液体吐出ヘッド100の吐出動作期間中は、制御部300は、脈動状態切替ポンプ232を制御して、脈動状態切替ポンプ232の動作状態が脈動抑制状態になるようにする。これにより、液体吐出ヘッド100の吐出動作期間中には、矢印R1で示すようにほぼ一定の流速で液体が搬送される。
【0081】
一方、本変形例3において、非吐出動作期間中に繰り返しの流速変化(脈動)を発生させる場合には、制御部300は、脈動状態切替ポンプ232の動作状態を脈動発生状態にする。これにより、供給路201を通過する液体に繰り返しの流速変化(脈動)を発生させることができ、その結果、供給側加圧タンク211から液体吐出ヘッド100を経由して再び供給側加圧タンク211に戻る循環路を流れる液体に、
図11の矢印R2に示すように、繰り返しの流速変化(脈動)を発生させることができる。
【0082】
なお、本変形例3では、脈動状態切替ポンプ232を、液体吐出ヘッド100の流路上流側に配置した例で説明しているが、液体吐出ヘッド100の流路下流側に配置してもよい。脈動状態切替ポンプ232の特性によっては、液体吐出ヘッド100の流路上流側と流路下流側とで、発生させることのできる流速変化の大きさが変わってくることがあるので、その特性を考慮して配置箇所を適宜選択する。
【0083】
〔変形例4〕
次に、本実施形態における流体搬送装置である液体循環機構200の更に他の変形例(以下、本変形例を「変形例4」という。)について説明する。
図13は、本変形例4における液体循環機構200の構成及び動作を説明するための説明図である。
本変形例4は、上述した実施形態における差圧搬送に代えてポンプ搬送を用いるとともに、流速変化動作手段として、上述した実施形態における電磁弁241に代えて、複数の並列流路201A,201Cのうちの他方の並列流路201Cに設置される脈動発生ポンプ234を採用したものである。
【0084】
本変形例4において、供給路201は、共通流路から分岐して再び合流する複数の並列流路201A,201Cを含み、一方の並列流路201Aには流速変化抑制ポンプとしての脈動抑制ポンプ233が配置され、他方の並列流路201Cには流速変化ポンプとしての脈動発生ポンプ234が配置されている。そして、供給側加圧タンク211に連通する供給路201の部分(共通流路)から2つの並列流路201A,201Cに分岐する分岐点には電磁弁からなる三方弁254が配置されている。また、液体吐出ヘッド100に連通する供給路201の部分(共通流路)に2つの並列流路201A,201Cが合流する合流点には電磁弁からなる三方弁255が配置されている。
【0085】
本変形例4において、液体吐出ヘッド100の吐出動作期間中は、制御部300は、液体吐出ヘッド100と供給側加圧タンク211との間が一方の並列流路201Aを介して連通するように、三方弁254,255を制御する。これにより、液体吐出ヘッド100の吐出動作期間中には、脈動抑制ポンプ233によるポンプ搬送により、矢印R1で示すように、繰り返し流速変化(脈動)が抑制された状態で、ほぼ一定の流速で液体が搬送される。
【0086】
一方、本変形例4において、非吐出動作期間中に繰り返しの流速変化(脈動)を発生させる場合には、制御部300は、液体吐出ヘッド100と供給側加圧タンク211との間が他方の並列流路201Cを介して連通するように、三方弁254,255を制御する。これにより、脈動発生ポンプ234によるポンプ搬送により、供給路201を通過する液体は繰り返しの流速変化(脈動)が発生した状態で搬送される。その結果、供給側加圧タンク211から液体吐出ヘッド100を経由して排出側加圧タンク212に至るまでの流路を流れる液体に、
図13の矢印R2に示すように、繰り返しの流速変化(脈動)を発生させることができる。
【0087】
本変形例4では、流速変化動作手段の構成を、液体吐出ヘッド100の流路上流側に配置した例で説明しているが、液体吐出ヘッド100の流路下流側に配置してもよい。この流速変化動作手段の特性(脈動抑制ポンプ233や脈動発生ポンプ234の特性の違いなど)によっては、液体吐出ヘッド100の流路上流側と流路下流側とで、発生させることのできる流速変化の大きさが変わってくることがあるので、その特性を考慮して配置箇所を適宜選択する。
【0088】
〔変形例5〕
次に、本実施形態における流体搬送装置である液体循環機構200の更に他の変形例(以下、本変形例を「変形例5」という。)について説明する。
図14は、本変形例5における液体循環機構200の構成及び動作を説明するための説明図である。
本変形例5は、上述した実施形態における差圧搬送に代えてポンプ搬送を用いるとともに、流速変化動作手段として、上述した実施形態における電磁弁241に代えて、互いに搬送流量が異なるポンプ235,236が設置された複数の並列流路201A,201Cを三方弁254,255により選択的に切り替える構成を採用したものである。
【0089】
本変形例5において、供給路201は、共通流路から分岐して再び合流する複数の並列流路201A,201Cを含み、一方の並列流路201Aには搬送流量が相対的に少ない小流量ポンプ235が配置され、他方の並列流路201Cには搬送流量が相対的に多い大流量ポンプ236が配置されている。そして、供給側加圧タンク211に連通する供給路201の部分(共通流路)から2つの並列流路201A,201Cに分岐する分岐点には電磁弁からなる三方弁254が配置されている。また、液体吐出ヘッド100に連通する供給路201の部分(共通流路)に2つの並列流路201A,201Cが合流する合流点には電磁弁からなる三方弁255が配置されている。
【0090】
本変形例5において、液体吐出ヘッド100の吐出動作期間中は、制御部300は、液体吐出ヘッド100と供給側加圧タンク211との間が一方の並列流路201Aを介して連通するように、三方弁254,255を制御する。これにより、液体吐出ヘッド100の吐出動作期間中には、小流量ポンプ235によるポンプ搬送により、液体が搬送される。本変形例5の小流量ポンプ235は、ポンプ脈動を極力抑制できる脈動抑制ポンプ(流速変化抑制ポンプ)であるため、小流量ポンプ235によるポンプ搬送により、矢印R1で示すように、繰り返し流速変化(脈動)が抑制された状態で、ほぼ一定の流速で液体が搬送される。
【0091】
一方、本変形例5において、非吐出動作期間中に繰り返しの流速変化(脈動)を発生させる場合には、制御部300は、液体吐出ヘッド100と供給側加圧タンク211との間の流路が、一方の並列流路201Aを経由する流路と他方の並列流路201Cを経由する流路とに交互に切り替わるように、流路切替手段としての三方弁254,255の切替動作を制御する。
【0092】
他方の並列流路201Cに設置される大流量ポンプ236は、その搬送流量が一方の並列流路201Aに設置される小流量ポンプ235よりも多いものである。そのため、液体吐出ヘッド100と供給側加圧タンク211との間の液体が他方の並列流路201Cを通過する時期における流速は、一方の並列流路201Aを通過する時期における流速よりも速いものとなる。
【0093】
すなわち、本変形例5によれば、上述した三方弁254,255の切替動作により、供給路201の流速を繰り返し変化させることができ、これにより、供給路201を通過する液体に繰り返しの流速変化(脈動)を発生させることができる。その結果、供給側加圧タンク211から液体吐出ヘッド100を経由して再び供給側加圧タンク211に戻る循環路を流れる液体に、
図14の矢印R2に示すように、繰り返しの流速変化(脈動)を発生させることができる。
【0094】
本変形例5においては、制御部300により三方弁254,255の切替動作の制御内容を適宜変更することにより、繰り返しの流速変化(脈動)の発生状態を変えることができる。
【0095】
なお、本変形例5は、一方の並列流路201Aに小流量ポンプ235を設置し、他方の並列流路201Cに大流量ポンプ236を設置した例で説明したが、
図15に示すように、一方の並列流路201Aに大流量ポンプ236を設置し、他方の並列流路201Cに小流量ポンプ235を設置してもよい。
【0096】
本変形例5では、流速変化動作手段の構成を、液体吐出ヘッド100の流路上流側に配置した例で説明しているが、液体吐出ヘッド100の流路下流側に配置してもよい。この流速変化動作手段の特性(小流量ポンプ235や大流量ポンプ236の特性の違いなど)によっては、液体吐出ヘッド100の流路上流側と流路下流側とで、発生させることのできる流速変化の大きさが変わってくることがあるので、その特性を考慮して配置箇所を適宜選択する。
【0097】
〔変形例6〕
次に、本実施形態における流体搬送装置である液体循環機構200の更に他の変形例(以下、本変形例を「変形例6」という。)について説明する。
図16は、本変形例6における液体循環機構200の構成及び動作を説明するための説明図である。
本変形例6は、上述した実施形態における差圧搬送に代えてポンプ搬送を用いるとともに、流速変化動作手段として、上述した実施形態における電磁弁241に代えて、互いに搬送方向が異なるポンプ237,238が設置された複数の並列流路201A,201Cを三方弁254,255により選択的に切り替える構成を採用したものである。
【0098】
本変形例6において、供給路201は、共通流路から分岐して再び合流する複数の並列流路201A,201Cを含み、一方の並列流路201Aには順方向(供給側加圧タンク211から液体吐出ヘッド100へ液体を送る方向)へ液体を搬送する液体搬送力をもつ順方向ポンプ237が配置され、他方の並列流路201Cには逆方向(液体吐出ヘッド100から供給側加圧タンク211へ液体を戻す方向)へ液体を搬送する液体搬送力をもつ逆方向ポンプ238が配置されている。そして、供給側加圧タンク211に連通する供給路201の部分(共通流路)から2つの並列流路201A,201Cに分岐する分岐点には電磁弁からなる三方弁254が配置されている。また、液体吐出ヘッド100に連通する供給路201の部分(共通流路)に2つの並列流路201A,201Cが合流する合流点には電磁弁からなる三方弁255が配置されている。
【0099】
本変形例6において、液体吐出ヘッド100の吐出動作期間中は、制御部300は、液体吐出ヘッド100と供給側加圧タンク211との間が一方の並列流路201Aを介して連通するように、三方弁254,255を制御する。これにより、液体吐出ヘッド100の吐出動作期間中には、順方向ポンプ237によるポンプ搬送により、液体が搬送される。本変形例6の順方向ポンプ237は、ポンプ脈動を極力抑制できる脈動抑制ポンプ(流速変化抑制ポンプ)であるため、順方向ポンプ237によるポンプ搬送により、矢印R1で示すように、繰り返し流速変化(脈動)が抑制された状態で、ほぼ一定の流速で液体が搬送される。
【0100】
一方、本変形例6において、非吐出動作期間中に繰り返しの流速変化(脈動)を発生させる場合には、制御部300は、液体吐出ヘッド100と供給側加圧タンク211との間の流路が、一方の並列流路201Aを経由する流路と他方の並列流路201Cを経由する流路とに交互に切り替わるように、流路切替手段としての三方弁254,255の切替動作を制御する。
【0101】
他方の並列流路201Cに設置される逆方向ポンプ238は、一時的に逆方向への液体搬送力を付与するため、供給路201の全体の液体搬送方向が逆向きになることはないが、順方向へ流れる液体に強いブレーキを加える。そのため、液体吐出ヘッド100と供給側加圧タンク211との間の液体が他方の並列流路201Cを通過する時期における流速は、一方の並列流路201Aを通過する時期における流速よりも遅いものとなる。
【0102】
すなわち、本変形例6によれば、上述した三方弁254,255の切替動作により、供給路201の流速を繰り返し変化させることができ、これにより、供給路201を通過する液体に繰り返しの流速変化(脈動)を発生させることができる。その結果、供給側加圧タンク211から液体吐出ヘッド100を経由して再び供給側加圧タンク211に戻る循環路を流れる液体に、
図16の矢印R2に示すように、繰り返しの流速変化(脈動)を発生させることができる。
【0103】
本変形例6においては、制御部300により三方弁254,255の切替動作の制御内容を適宜変更することにより、繰り返しの流速変化(脈動)の発生状態を変えることができる。
【0104】
本変形例6では、流速変化動作手段の構成を、液体吐出ヘッド100の流路上流側に配置した例で説明しているが、液体吐出ヘッド100の流路下流側に配置してもよい。この流速変化動作手段の特性(順方向ポンプ237や逆方向ポンプ238の特性の違いなど)によっては、液体吐出ヘッド100の流路上流側と流路下流側とで、発生させることのできる流速変化の大きさが変わってくることがあるので、その特性を考慮して配置箇所を適宜選択する。
【0105】
〔変形例7〕
次に、本実施形態における流体搬送装置である液体循環機構200の更に他の変形例(以下、本変形例を「変形例7」という。)について説明する。
図17は、本変形例7における液体循環機構200の構成及び動作を説明するための説明図である。
本変形例7は、上述した実施形態における差圧搬送に代えてポンプ搬送を用いるとともに、流速変化動作手段として、上述した実施形態における電磁弁241に代えて、供給路201に設置される流速変化ポンプとしての脈動発生ポンプ234を採用したものである。
【0106】
本変形例7において、排出路202は、共通流路から分岐して再び合流する複数の並列流路202A,202Cを含み、一方の並列流路202Aにはアキュムレータ270が配置されている。そして、液体吐出ヘッド100に連通する排出路202の部分(共通流路)から2つの並列流路202A,202Cに分岐する分岐点には電磁弁からなる三方弁256が配置されている。また、供給側加圧タンク211に連通する排出路202の部分(共通流路)に2つの並列流路202A,202Cが合流する合流点には電磁弁からなる三方弁257が配置されている。
【0107】
本変形例7において、液体吐出ヘッド100の吐出動作期間中は、制御部300は、液体吐出ヘッド100から供給側加圧タンク211までの排出路202が一方の並列流路202Aを経由するように、三方弁256,257を制御する。このとき、脈動発生ポンプ234により一方の並列流路202Aを流れる液体は、アキュムレータ270による脈動抑制効果により繰り返し流速変化(脈動)が抑制される。そして、このアキュムレータ270による脈動抑制効果は流路全体に伝わり、流路全体で繰り返し流速変化(脈動)が抑制された状態になる。よって、液体吐出ヘッド100の吐出動作期間中には、アキュムレータ270による脈動抑制効果が作用して、矢印R1で示すように、繰り返し流速変化(脈動)が抑制され、ほぼ一定の流速で液体が搬送される。
【0108】
一方、本変形例7において、非吐出動作期間中に繰り返しの流速変化(脈動)を発生させる場合には、制御部300は、液体吐出ヘッド100から供給側加圧タンク211までの排出路202が他方の並列流路202Cを経由するように、三方弁256,257を制御する。このとき、他方の並列流路202Cにはアキュムレータ270が接続されていないので、脈動抑制効果は生じない。したがって、脈動発生ポンプ234によるポンプ搬送により、繰り返しの流速変化(脈動)が発生した状態で液体が搬送される。その結果、供給側加圧タンク211から液体吐出ヘッド100を経由して排出側加圧タンク212に至るまでの流路を流れる液体に、
図17の矢印R2に示すように、繰り返しの流速変化(脈動)を発生させることができる。
【0109】
本変形例7では、並列流路202A,202C及び三方弁256,257の構成を、液体吐出ヘッド100の流路下流側に配置した例で説明しているが、液体吐出ヘッド100の流路上流側に配置してもよい。また、アキュムレータ270の特性の違いなどによっては、液体吐出ヘッド100あるいは脈動発生ポンプ234の流路上流側と流路下流側とで、発生させることのできる流速変化の大きさが変わってくることがあるので、その特性を考慮して配置箇所を適宜選択する。
【0110】
〔変形例8〕
次に、本実施形態における流体搬送装置である液体循環機構200の更に他の変形例(以下、本変形例を「変形例8」という。)について説明する。
図18は、本変形例8における液体循環機構200の構成及び動作を説明するための説明図である。
本変形例8は、上述した実施形態における差圧搬送に代えてポンプ搬送を用いるとともに、流速変化動作手段として、上述した実施形態における電磁弁241に代えて、単一で搬送流量を切り替え可能な流量切替ポンプ239を採用したものである。
【0111】
本変形例8において、供給路201には流量切替ポンプ239が配置され、この流量切替ポンプ239のポンプ圧による液体搬送力によって、供給側加圧タンク211、供給路201、液体吐出ヘッド100、排出路202、供給側加圧タンク211という循環路(流路)を通じて、液体が搬送される。
【0112】
本変形例8においては、ポンプ搬送に用いるポンプとして、搬送流量が相対的に多い第一流量状態(大流量状態)と搬送流量が相対的に少ない第二流量状態(小流量状態)とを切り替えて搬送動作を行うことが可能な流量切替ポンプ239を用いる。そして、流量切替ポンプ239の動作状態の切替は、制御部300によって制御する。
【0113】
本変形例8において、液体吐出ヘッド100の吐出動作期間中は、制御部300は、流量切替ポンプ239を制御して、流量切替ポンプ239の動作状態が小流量状態になるようにする。本変形例8の流量切替ポンプ239は、ポンプ脈動を極力抑制できる脈動抑制ポンプ(流速変化抑制ポンプ)であるため、流量切替ポンプ239が小流量状態でポンプ搬送を行うことにより、矢印R1で示すように、繰り返し流速変化(脈動)が抑制された状態で、ほぼ一定の流速で液体が搬送される。
【0114】
一方、本変形例8において、非吐出動作期間中に繰り返しの流速変化(脈動)を発生させる場合には、制御部300は、流量切替ポンプ239の動作状態が大流量状態と小流量状態とに交互に切り替わるように、流量切替ポンプ239を制御する。供給路201内の液体の流速は、大流量状態の流量切替ポンプ239で搬送されるときに速く、小流量状態の流量切替ポンプ239で搬送されるときに遅くなる。したがって、本変形例8によれば、流量切替ポンプ239の動作状態の切替動作により、供給路201の流速を繰り返し変化させることができる。その結果、供給側加圧タンク211から液体吐出ヘッド100を経由して再び供給側加圧タンク211に戻る循環路を流れる液体に、
図18の矢印R2に示すように、繰り返しの流速変化(脈動)を発生させることができる。
【0115】
なお、本変形例8では、流量切替ポンプ239を、液体吐出ヘッド100の流路上流側に配置した例で説明しているが、液体吐出ヘッド100の流路下流側に配置してもよい。流量切替ポンプ239の特性によっては、液体吐出ヘッド100の流路上流側と流路下流側とで、発生させることのできる流速変化の大きさが変わってくることがあるので、その特性を考慮して配置箇所を適宜選択する。
【0116】
以上のように、本実施形態並びに各変形例で説明した構成は、互いに組み合わせることも可能である。
【0117】
本明細書において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30[mPA・s]以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0118】
「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば、「液体吐出ユニット」は、液体循環機構200及び排出通路減圧機構のほか、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0119】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0120】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0121】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0122】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0123】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0124】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
【0125】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0126】
「液体を吐出する装置」には、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0127】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0128】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0129】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0130】
前記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0131】
前記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0132】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0133】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0134】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0135】
なお、本実施形態では、液体を搬送する例で説明しているが、液体に分類されない流体についても同様である。また、本実施形態では、搬送対象である流体がインクや塗料である画像形成分野の例で説明したが、他の分野への適用も可能である。本発明の実施例は、インクや塗料を中心とした印刷分野を例として記載しているが、他分野への適用も可能である。例えば、食品分野において、乳製品、飲料、スムージーなどの液状食材などの各種流体の搬送に適用することが可能である。また、工業、医薬品、油送管、石油精製ライン、発電所、船内の海水ライン、並びに、ポリマー及び化学製造パイプライン全般などの他分野での適用が考えられる。
【0136】
工業分野の一例としては、接着剤などの粘度の高い液体を容器に充填する接着剤供給/充填装置(ディスペンサや容器詰めフィラー)への適用が考えられる。また、例えば、リチウムイオン二次電池等の二次電池製造時などに利用されるプリンテッドエレクトロニクスとして、液体による電極パターンニング時の液体供給システムへの適用が考えられる。また、例えば、3Dプリンタや3Dバイオプリンティング(AM領域)において、液体として供給される造形材料の供給システムへの適用が考えられる。また、プラスチック代替材料としての液体材料を供給する供給システムへの適用が考えられる。また、例えば、植物プラントにおける植物への栄養供給(水・栄養剤)用の液体供給システムへの適用が考えられる。
【0137】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[第1態様]
第1態様は、流路(例えば循環路)を通じて流体(例えばインク等の液体)を搬送する流体搬送装置(例えば液体循環機構200)であって、前記流路内の流体に対して流速変化を繰り返し生じさせる流速変化動作(例えば脈動動作)を実行する流速変化動作手段(例えば電磁弁241など)と、前記流速変化動作手段に前記流速変化動作を実行させるタイミングを制御する制御手段(例えば制御部300)とを有することを特徴とするものである。
本態様においては、流速変化動作手段の流速変化動作により、流路内の流体に対して流速変化を繰り返し生じさせることができる。このような繰り返しの流速変化は、固形物質が分散した流体に対しては、流体中における固形物質の分散状態を維持し又は流体中の沈殿した固形物質を再分散させる流体分散力を発生させることが容易である。そのため、固形物質が分散した流体を良好な分散状態で搬送することが可能である。また、繰り返しの流速変化は、粘度の高い流体に対しては、チクソトロピーを発現させて流体の粘度を低下させるせん断力を発生させることが容易である。そのため、粘度の高い流体を、粘度を下げた状態で良好に搬送することが可能である。したがって、本態様によれば、流体中に分散する固形物質の沈降性が高い流体や、粘度の高い流体などの搬送困難な流体についても、十分な搬送性が得られる。
一方で、流路内の流体搬送中に繰り返しの流速変化が常時発生する流体搬送装置では、流体の流速変化(圧変化)が機能に悪影響を及ぼすような流体使用部材(例えば液体吐出ヘッドのような流体排出機構)に対して、適用することができない。
そこで、本態様においては、流速変化動作手段に流速変化動作を実行させるタイミングを制御する制御手段を設けている。これにより、流路内の流体に繰り返しの流速変化を生じさせる期間と、流路内の流体に繰り返しの流速変化を生じさせない期間とを設けることが可能となる。その結果、例えば、上述した流体使用部材が流体を使用する期間には流速変化動作を実行しないようにするなどの制御が可能となる。したがって、本態様によれば、流体の流速変化(圧変化)が機能に悪影響を及ぼすような流体使用部材に対して流体を搬送する場合でも、流速変化動作手段の流速変化動作を実行するタイミングを適宜制御することにより、流体使用部材の機能への悪影響を抑制しつつ、沈降性が高い流体や粘度の高い流体などの搬送困難な流体の十分な搬送性を得ることが可能である。よって、このような流体使用部材に対して流体を搬送する場合であっても、上述のような搬送困難な流体を適用することが可能となる。
【0138】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記流路は、前記流体を排出する流体排出機構(例えば液体吐出ヘッド100)内の機構内流路と、該流体排出機構まで前記流体を搬送し又は該流体排出機構から排出される流体を搬送する機構外流路(例えば供給路201、排出路202)とを含み、前記流速変化動作手段は、前記機構外流路内の流体に対して前記流速変化動作を実行することを特徴とするものである。
これによれば、機構外流路内における流体において、例えば、流体中における固形物質の分散状態を良好なものとし、あるいは、高粘度流体の粘度低下により搬送性を改善したりすることが可能となる。
【0139】
[第3態様]
第3態様は、第1又は第2態様において、前記流路は、前記流体を排出する流体排出機構内の機構内流路と、該流体排出機構まで前記流体を搬送し又は該流体排出機構から排出される流体を搬送する機構外流路とを含み、前記流速変化動作手段は、前記機構内流路内の流体に対して前記流速変化動作を実行することを特徴とするものである。
これによれば、機構内流路内における流体において、例えば、流体中における固形物質の分散状態を良好なものとし、あるいは、高粘度流体の粘度低下により搬送性を改善したりすることが可能となる。
【0140】
[第4態様]
第4態様は、第2又は第3態様において、前記流体は、液体であり、前記流体排出機構は、圧力室(例えば個別液室106)内の圧力を変化させることにより該圧力室内の前記液体をノズル104から吐出する液体吐出ヘッド100であることを特徴とするものである。
これによれば、流体の流速変化(圧変化)が吐出機能に悪影響を及ぼす液体吐出ヘッドに対して液体を搬送する場合でも、沈降性が高い液体や粘度の高い液体などの搬送困難な液体を適用することが可能となる。
【0141】
[第5態様]
第5態様は、第4態様において、前記流速変化動作手段は、前記液体吐出ヘッドの非吐出動作期間中に前記流速変化動作を実行し、前記液体吐出ヘッドの吐出動作期間中には前記流速変化動作を実行しないことを特徴とするものである。
これによれば、流速変化動作による液体の流速変化(圧変化)に起因する液体吐出ヘッドの吐出機能への悪影響を抑制しつつも、流速変化動作による液体の繰り返しの流速変化によって沈降性が高い流体や粘度の高い流体などの搬送困難な流体の十分な搬送性を得ることが可能である。よって、液体吐出ヘッドに対しても、上述のような搬送困難な流体を適用することが可能となる。
【0142】
[第6態様]
第6態様は、第1乃至第5態様のいずれかにおいて、前記流速変化動作手段は、流体中における固形物質の分散状態を維持し又は流体中の沈殿した固形物質を再分散させる流体分散力を前記流路内の流体に発生させるように、前記流速変化動作を実行することを特徴とするものである。
これによれば、流速変化動作による液体の繰り返しの流速変化によって、沈降性が高い流体の十分な搬送性(高い分散状態での搬送)を得ることが可能である。よって、流体の流速変化(圧変化)が機能に悪影響を及ぼすような流体使用部材に対して流体を搬送する場合でも、沈降性が高い流体を適用することができる。
【0143】
[第7態様]
第7態様は、第1乃至第6態様のいずれかにおいて、前記流速変化動作手段は、流体にチクソトロピーを発現させて流体の粘度を低下させるせん断力を前記流路内の流体に発生させるように、前記流速変化動作を実行することを特徴とするものである。
これによれば、流速変化動作による液体の繰り返しの流速変化によって、静止状態で粘度の高い流体の粘度を低下させて十分な搬送性(流体の安定した搬送)を得ることが可能である。よって、流体の流速変化(圧変化)が機能に悪影響を及ぼすような流体使用部材に対して流体を搬送する場合でも、粘度の高い流体を適用することができる。
【0144】
[第8態様]
第8態様は、第1乃至第7態様のいずれかにおいて、前記流速変化動作手段は、前記流体に対する流路抵抗を変化させることにより前記流速変化動作を実行することを特徴とするものである。
これによれば、流体に対する流路抵抗を変化させる動作によって流路内の流体に繰り返しの流速変化を生じさせることができる。
【0145】
[第9態様]
第9態様は、第8態様において、前記流速変化動作手段は、前記流路中に設けられる弁(例えば電磁弁241)の開閉動作により前記流速変化動作を実行することを特徴とするものである。
これによれば、流路中に設けられる弁の開閉動作により、流体に対する流路抵抗を変化させて、流路内の流体に繰り返しの流速変化を生じさせることができる。
【0146】
[第10態様]
第10態様は、第8態様において、前記流路は、共通流路(例えば供給路201)から分岐して再び合流する複数の並列流路201A,201Bを含み、前記複数の並列流路は、互いに流路抵抗が異なっており、前記流速変化動作手段は、前記複数の並列流路の中から流体を通過させる並列流路を選択的に切り替える流路切替手段(例えば三方弁254,255)の切替動作により、前記流速変化動作を実行することを特徴とするものである。
これによれば、変形例2で説明したように、互いに流路抵抗が異なっている複数の並列流路の中から、流体を通過させる並列流路を選択的に切り替えるという流路切替手段の切替動作により、当該流路を流れる流体に対する流路抵抗を変化させて、流路内の流体に繰り返しの流速変化を生じさせることができる。
【0147】
[第11態様]
第11態様は、第10態様において、前記複数の並列流路は、互いに流路断面積が異なっていることを特徴とするものである。
これによれば、互いに流路抵抗が異なる複数の並列流路を簡易に実現することができる。
【0148】
[第12態様]
第12態様は、第1乃至第7態様のいずれかにおいて、前記流路は、共通流路(例えば供給路201)から分岐して再び合流する複数の並列流路201A,201Cを含み、前記複数の並列流路は、流速変化を繰り返し生じさせながら流体を搬送する流速変化ポンプ(例えば脈動発生ポンプ234)が配置された並列流路201Cと、流速変化を抑制しながら流体を搬送する流速変化抑制ポンプ(例えば脈動抑制ポンプ233)が配置された並列流路201Aとを含み、前記流速変化動作手段は、前記流速変化ポンプの搬送動作により前記流速変化動作を実行し、前記制御手段は、前記複数の並列流路の中から流体を通過させる並列流路を選択的に切り替える流路切替手段(例えば三方弁254,255)の切替動作により、前記タイミングを制御することを特徴とするものである。
これによれば、変形例4で説明したように、流路切替手段の切替動作により、流路内の流体に繰り返しの流速変化を生じさせるときには、流速変化ポンプが配置された並列流路へ切り替え、流路内の流体に繰り返しの流速変化を生じさせないときには、流速変化ポンプが配置されていない並列流路へ切り替えることができる。
【0149】
[第13態様]
第13態様は、第1乃至第7態様のいずれかにおいて、前記流路には、流速変化を繰り返し生じさせながら流体を搬送する第一動作状態(例えば脈動発生状態)と流速変化を抑制しながら流体を搬送する第二動作状態(例えば脈動抑制状態)とを切り替えて搬送動作を行うことが可能な流速変化切替ポンプ(例えば脈動状態切替ポンプ232)が配置されており、前記流速変化動作手段は、前記流速変化切替ポンプを前記第一動作状態で搬送動作させることにより前記流速変化動作を実行し、前記制御手段は、前記流速変化切替ポンプの動作状態の切替動作により、前記タイミングを制御することを特徴とするものである。
これによれば、変形例3で説明したように、流速変化切替ポンプの動作状態の切替動作により、流路内の流体に繰り返しの流速変化を生じさせるときには、流速変化切替ポンプの動作状態を第一動作状態に切り替え、流路内の流体に繰り返しの流速変化を生じさせないときには、流速変化切替ポンプの動作状態を第二動作状態に切り替えることができる。
【0150】
[第14態様]
第14態様は、第1乃至第7態様のいずれかにおいて、前記流路は、共通流路(例えば供給路201)から分岐して再び合流する複数の並列流路201A,201Cを含み、前記複数の並列流路は、搬送流量が相対的に多い大流量ポンプ236が配置された並列流路201Cと、搬送流量が相対的に少ない小流量ポンプ235が配置された並列流路201Aとを含み、前記流速変化動作手段は、前記複数の並列流路の中から流体を通過させる並列流路を選択的に切り替える流路切替手段の切替動作により、前記流速変化動作を実行することを特徴とするものである。
これによれば、変形例5で説明したように、互いに搬送流量の異なるポンプが配置された複数の並列流路の中から、流体を通過させる並列流路を選択的に切り替えるという流路切替手段の切替動作により、流路内の流体に繰り返しの流速変化を生じさせることができる。
【0151】
[第15態様]
第15態様は、第1乃至第7態様のいずれかにおいて、前記流路には、搬送流量が相対的に多い第一流量状態(例えば大流量状態)と搬送流量が相対的に少ない第二流量状態(例えば小流量状態)とを切り替えて搬送動作を行うことが可能な流量切替ポンプ239が配置されており、前記流速変化動作手段は、前記流量切替ポンプの動作状態を切り替える動作により、前記流速変化動作を実行することを特徴とするものである。
これによれば、変形例8で説明したように、流量切替ポンプの動作状態の切替動作により、流路内の流体に繰り返しの流速変化を生じさせることができる。
【0152】
[第16態様]
第16態様は、第1乃至第7態様のいずれかにおいて、前記流路は、共通流路(例えば供給路201)から分岐して再び合流する複数の並列流路201A,201Cを含み、前記複数の並列流路は、順方向へ流体を搬送する順方向ポンプ237が配置された並列流路201Aと、逆方向へ流体を搬送する逆方向ポンプ238が配置された並列流路201Cとを含み、前記流速変化動作手段は、前記複数の並列流路の中から流体を通過させる並列流路を選択的に切り替える流路切替手段(例えば三方弁254,255)の切替動作により、前記流速変化動作を実行することを特徴とするものである。
これによれば、変形例6で説明したように、互いに搬送方向の異なるポンプが配置された複数の並列流路の中から、流体を通過させる並列流路を選択的に切り替えるという流路切替手段の切替動作により、流路内の流体に繰り返しの流速変化を生じさせることができる。
【0153】
[第17態様]
第17態様は、第1乃至第7態様のいずれかにおいて、前記流路は、共通流路(例えば排出路202)から分岐して再び合流する複数の並列流路202A,202Cを含み、前記共通流路には、流速変化を繰り返し生じさせながら流体を搬送する流速変化ポンプ(例えば脈動発生ポンプ234)が配置されており、前記複数の並列流路は、アキュムレータ270が接続された並列流路202Aと、アキュムレータが接続されていない並列流路202Cとを含み、前記流速変化動作手段は、前記流速変化ポンプの搬送動作により前記流速変化動作を実行し、前記制御手段は、前記複数の並列流路の中から流体を通過させる並列流路を選択的に切り替える流路切替手段(例えば三方弁256,257)の切替動作により、前記タイミングを制御することを特徴とするものである。
これによれば、変形例7で説明したように、流路切替手段の切替動作により、流路内の流体に繰り返しの流速変化を生じさせるときには、アキュムレータが接続されていない並列流路202Cへ切り替え、流路内の流体に繰り返しの流速変化を生じさせないときには、アキュムレータが接続された並列流路202Aへ切り替えることができる。
【0154】
[第18態様]
第18態様は、圧力室(例えば個別液室106)内の圧力を変化させることにより該圧力室内の液体をノズル104から吐出する液体吐出ヘッド100を備えた液体を吐出する装置(例えば画像形成装置5)であって、流路を通じて前記液体を前記液体吐出ヘッドへ搬送する液体搬送手段(例えば液体循環機構200)を有し、前記液体搬送手段として、第1乃至第17態様のいずれかの流体搬送装置を用いることを特徴とするものである。
本態様によれば、例えば液体中に分散する固形物質の沈降性が高い液体や粘度の高い液体などの搬送困難な液体を適用した液体を吐出する装置を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0155】
1 :巻き出し装置
3 :搬送部
5 :画像形成装置
7 :乾燥部
9 :巻き取り装置
10 :連続シート
50 :ヘッドユニット
51 :ヘッドアレイ
100 :液体吐出ヘッド
104 :ノズル
106 :個別液室
110 :供給側共通液室
111 :圧電アクチュエータ
112 :圧電素子
120 :共通液室部材
140 :流路部材
150 :排出側共通液室
200 :液体循環機構
201 :供給路
201A~201C:並列流路
202 :排出路
202A,202C:並列流路
203 :戻し路
204 :洗浄液路
204A :液用通路
204B :気体用通路
205 :廃液路
211 :供給側加圧タンク
212 :排出側加圧タンク
213 :洗浄液用加圧タンク
214 :廃液タンク
221~223:レギュレータ
231 :戻しポンプ
232 :脈動状態切替ポンプ
233 :脈動抑制ポンプ
234 :脈動発生ポンプ
235 :小流量ポンプ
236 :大流量ポンプ
237 :順方向ポンプ
238 :逆方向ポンプ
239 :流量切替ポンプ
241 :電磁弁
242 :電磁バルブ
251~257:三方弁
260 :液体受け部
270 :アキュムレータ
300 :制御部
1000 :画像形成システム
【先行技術文献】
【特許文献】
【0156】