(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117652
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】把持用具、マイクロ波加熱用の前処理用具、および、当該把持用具を使用したマイクロ波加熱用の試料準備方法
(51)【国際特許分類】
B01L 9/06 20060101AFI20230817BHJP
G01N 1/44 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
B01L9/06
G01N1/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020336
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】曽我 賢一
【テーマコード(参考)】
2G052
4G057
【Fターム(参考)】
2G052AD26
2G052AD32
2G052AD46
2G052DA02
2G052DA26
2G052DA33
2G052EB11
2G052GA13
2G052GA15
2G052GA24
4G057AE12
4G057AE22
(57)【要約】
【課題】マイクロ波加熱用の試料を準備する際、複数の試料を扱いながら、精密さが求められ、且つ、容器の清浄さがもとめられるという困難な状況に直面することとなっていた。
【解決手段】円筒容器の上部外周を囲むことで、前記円筒容器へ着脱可能に取り付く、輪状で伸縮性を有する締結部材と、前記締結部材に接続され、且つ、タグ部材を有する把持部材とを、備える把持用具を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒容器の上部外周を囲むことで、前記円筒容器へ着脱可能に取り付く、輪状で伸縮性を有する締結部材と、
前記締結部材に接続され、且つ、タグ部材を有する把持部材とを、備えることを特徴とする把持用具。
【請求項2】
前記締結部材がOリングであり、前記把持部材が結束バンドであることを特徴とする請求項1に記載の把持用具。
【請求項3】
前記締結部材が、フッ素樹脂製ゴム製またはエチレンプロピレンジエンゴム製であり、前記把持部材が、フッ素樹脂製、ポリエチレン製、ポリプロピレン製、ポリ塩化ビニル製から選択されるいずれか1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の把持用具。
【請求項4】
マイクロ波加熱用の前処理用具であって、
円筒形状であってフッ素樹脂製の試料分解用容器と、
前記試料分解用容器が隙間無く嵌装されるセラミック製円筒容器と、
前記セラミック製円筒容器が隙間無く嵌装されるプラスチック製外筒と、
前記試料分解用容器が収容される、前記試料分解用容器の外径より大きな内径を有する除電用用具と、
請求項1から3のいずれかに記載の把持用具とで、構成されることを特徴とするマイクロ波加熱用の前処理用具。
【請求項5】
前記プラスチック製外筒の下部と、前記タグ部材とに、対応するシンボルが記載されていることを特徴とする請求項4に記載のマイクロ波加熱用の前処理用具。
【請求項6】
マイクロ波加熱用の試料準備方法であって、
円筒形状を有するフッ素樹脂製の試料分解用容器の上部に、前記試料分解用容器へ着脱可能に取り付く、輪状で伸縮性を有する締結部材と、前記締結部材に接続され、且つ、所定のシンボルが記載されたタグ部材を有する把持部材とを備える把持用具を取付け、把持用具付き試料分解用容器を作成する、試料分解用容器準備工程と、
秤量台へ、前記把持用具付き試料分解用容器が収容される前記把持用具付き試料分解用容器の外径より大きな内径を有する除電用用具を載せ、前記除電用用具に前記把持用具付き試料分解用容器を挿入して自立させ、試料を前記把持用具付き試料分解用容器に装入して所定量の試料を量り取る、試料秤量工程と、
前記試料秤量工程後、前記把持用具付き試料分解用容器内へ前処理用試薬を投入する、前処理用試薬添加工程と、
前記試料分解用容器が隙間無く嵌装されるセラミック製円筒容器と、前記セラミック製円筒容器が隙間無く嵌装されるプラスチック製外筒であって前記タグ部材に記載された所定のシンボルに対応するシンボルが当該外筒の下部に記載されているプラスチック製外筒とを、重ねた重装装置を組み立てる重装装置組立工程と、
前記前処理用試薬添加工程後、前記把持用具付き試料分解用容器を、前記対応するシンボルが記載されているプラスチック製外筒を有する重装装置に挿入し、前記把持用具付き試料分解用容器から前記把持用具を取外す、試料分解用容器挿入工程とを、有することを特徴とするマイクロ波加熱用の試料準備方法。
【請求項7】
前記前処理用試薬として、酸溶液またはアルカリ溶液を投入することを特徴とする請求項6に記載のマイクロ波加熱用の試料準備方法。
【請求項8】
前記締結部材がOリングであり、前記把持部材が結束バンドであることを特徴とする請求項6または7に記載の発明に記載のマイクロ波加熱用の試料準備方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒容器に取り付く把持用具、マイクロ波加熱用の前処理用具、および、当該把持用具を使用したマイクロ波加熱用の試料準備方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波加熱装置によるマイクロ波加熱分解法は、試料へマイクロ波を照射することで高圧かつ高温状態をつくりだし当該試料を分解して溶液化する方法であって、主に無機分析で使用されるものである。得られた溶液は、そのまま、または適宜希釈して従来公知の方法、例えば、ICP発光分光分析法、ICP質量分析法、原子吸光光度法等で測定され、試料中の含有元素の定性分析または定量分析が行なわれる。
【0003】
例えば、特許文献1には、マイクロ波加熱分解法に用いる高圧反応用の容器システムであって、壁を通して半径方向に延びる圧力ベント孔を備えたプラグ付きポリマー製シリンダー反応容器、容器を受ける支持フレーム、支持フレーム内の反応容器の配向及び半径方向に延びるベント孔を規定された単一の位置に制限するための容器上及びフレーム上で補完する鍵構造要素を含む、容器システムが開示されている。
一方、特許文献2には、調理容器と安定的に結合および分離される調理容器用着脱式取っ手が開示されている。
さらに、特許文献3には、底部に磁石を有する取手本体部と、前記磁石に磁力により吸着する磁性素材を有する吸着補助体とを備える着脱式取手が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-073264号公報
【特許文献2】特表2018-515256号公報
【特許文献3】特開2014-108263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1にも記載されているように、マイクロ波加熱分解法は、密封状態にある試料分解用容器へマイクロ波を照射することにより高温かつ高圧状態をつくりだし、当該試料分解用容器内の試料を短時間で分解させることができる加熱方法である。
ここで、化学的安定性を考慮して試料分解用容器として、フッ素樹脂製のものが用いられる場合が多い。ところがフッ素樹脂製の試料分解用容器を用いた場合、高圧下では変形してしまう。そこで当該変形を抑えるために高圧下でも変形しない、例えばセラミック製円筒容器内に、フッ素樹脂製の試料分解用容器を隙間無く嵌装する手法が取られている。試料分解用容器は、セラミック製円筒容器が隙間無くプラスチック製外筒へ嵌装された重装装置に挿入されることになる。
【0006】
マイクロ波加熱分解法が適用される試料と前処理用試薬とが入った試料分解用容器が、挿入された重装装置は、マイクロ波加熱装置のローターに複数本(例えば、8本)が設置される。そして当該ローターはマイクロ波加熱装置内に設置され、当該ローターを回転させながらマイクロ波を照射することで、マイクロ波がそれぞれの試料分解用容器に対して均一に照射される。
【0007】
このとき試料分解用容器、セラミック製円筒容器およびプラスチック製外筒の表面であってマイクロ波が透過する部分に異物が存在すると、加熱の状態が不均一になる可能性がある。
一方、試料は、定量分析用の試料である場合が多く、取り扱いや秤量等に精密さが求められる場合が多い。
【0008】
この結果、マイクロ波加熱分解法の試料準備段階においては、複数の試料を扱いながら、精密さが求められ、且つ、容器の清浄さがもとめられるという困難な状況に直面することとなる。
例えば、試料分解用容器の取扱いにおいて、その外側を把持するときがある。そうすると、外周面に汚れが付着する可能性がある。また、試料分解用容器の取扱いにおいて、内壁面の上端部を把持するときがある。そのとき試料分解用容器の内壁に触れることで、試料中に汚染物質を混入させたり、内壁に付着した試料の持出しとなったりするため、微量不純物の分析のような精密分析を行う場合、正しい分析結果が得られないことにつながる。また、試料分解用容器の内壁に手を触れることは、内壁に付着した薬液による薬傷の恐れも生じる。さらに、フッ素樹脂製の試料分解用容器を使用した場合、静電気が生じるために、内壁への試料の付着を避けることができない。
【0009】
ここで本発明者は、試料分解用容器へ着脱式取っ手を適用することにより上述の状況を改善できるのではないかと考え、例えば特許文献2、3に記載された着脱式取っ手を検討した。
しかしながら、特許文献2に記載された着脱式取っ手では、当該取っ手の着脱片が試料分解用容器の内壁に触れることになる。このため、試料中に汚染物質を混入させたり、試料分解用容器の内壁に付着した試料を持出したりする課題は解決されない。
一方、特許文献3に開示された着脱式取手においても、吸着補助体が試料分解用容器の内壁に触れることになり、特許文献2と同様の課題は解決されない。
【0010】
さらに、マイクロ波加熱装置内に設置する複数の試料を扱っていながら、容器の外側面に適宜マーキングすることは上述した加熱の状態が不均一になる可能性があるため、例えば、プラスチック製外筒の、嵌装された試料分解用容器と干渉しない範囲の底部に識別表示をすることが行われている。そのとき、試料分解用容器側には識別表示がなされていないので、試料の取り違えを起こし易いという別の課題があることにも想到した。
そこで、本発明は、容器外周面の清浄さを保ち、容器内壁面を汚染させず、簡単に脱着が可能で識別可能なタグ部材を有する把持用具を提供することを目的とする。また、本発明は、上述した把持用具を組み入れたマイクロ波加熱用の前処理用具、および該前処理用具を用いたマイクロ波加熱用の試料準備方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するため、本発明者は研究を行った。そして試料分解用容器の上部外周を囲むことで、試料分解用容器へ着脱可能に取り付く、輪状で伸縮性を有する締結部材と、前記締結部材に接続され、且つ、タグ部材を有する把持部材とを備える把持用具に想到した。さらに、当該把持用具は、マイクロ波加熱分解法に用いられる試料分解用容器に限られず、一般的な操作に用いられる円筒容器へも適用可能なことにも想到した。
【0012】
即ち、上述の課題を解決するための第1の発明は、
円筒容器の上部外周を囲むことで、前記円筒容器へ着脱可能に取り付く、輪状で伸縮性を有する締結部材と、
前記締結部材に接続され、且つ、タグ部材を有する把持部材とを、備えることを特徴とする把持用具である。
第2の発明は、
前記締結部材がOリングであり、前記把持部材が結束バンドであることを特徴とする第1の発明に記載の把持用具である。
第3の発明は、
前記締結部材が、フッ素樹脂製ゴム製またはエチレンプロピレンジエンゴム製であり、前記把持部材が、フッ素樹脂製、ポリエチレン製、ポリプロピレン製、ポリ塩化ビニル製から選択されるいずれか1種であることを特徴とする第1または第2の発明に記載の把持用具である。
第4の発明は、
マイクロ波加熱用の前処理用具であって、
円筒形状であってフッ素樹脂製の試料分解用容器と、
前記試料分解用容器が隙間無く嵌装されるセラミック製円筒容器と、
前記セラミック製円筒容器が隙間無く嵌装されるプラスチック製外筒と、
前記試料分解用容器が収容される、前記試料分解用容器の外径より大きな内径を有する除電用用具と、
第1から第3の発明のいずれかに記載の把持用具とで、構成されることを特徴とするマイクロ波加熱用の前処理用具である。
第5の発明は、
前記プラスチック製外筒の下部と、前記タグ部材とに、対応するシンボルが記載されていることを特徴とする第4の発明に記載のマイクロ波加熱用の前処理用具である。
第6の発明は、
マイクロ波加熱用の試料準備方法であって、
円筒形状を有するフッ素樹脂製の試料分解用容器の上部に、前記試料分解用容器へ着脱可能に取り付く、輪状で伸縮性を有する締結部材と、前記締結部材に接続され、且つ、所定のシンボルが記載されたタグ部材を有する把持部材とを備える把持用具を取付け、把持用具付き試料分解用容器を作成する、試料分解用容器準備工程と、
秤量台へ、前記把持用具付き試料分解用容器が収容される前記把持用具付き試料分解用容器の外径より大きな内径を有する除電用用具を載せ、前記除電用用具に前記把持用具付き試料分解用容器を挿入して自立させ、試料を前記把持用具付き試料分解用容器に装入して所定量の試料を量り取る、試料秤量工程と、
前記試料秤量工程後、前記把持用具付き試料分解用容器内へ前処理用試薬を投入する、前処理用試薬添加工程と、
前記試料分解用容器が隙間無く嵌装されるセラミック製円筒容器と、前記セラミック製円筒容器が隙間無く嵌装されるプラスチック製外筒であって前記タグ部材に記載された所定のシンボルに対応するシンボルが当該外筒の下部に記載されているプラスチック製外筒とを、重ねた重装装置を組み立てる重装装置組立工程と、
前記前処理用試薬添加工程後、前記把持用具付き試料分解用容器を、前記対応するシンボルが記載されているプラスチック製外筒を有する重装装置に挿入し、前記把持用具付き試料分解用容器から前記把持用具を取外す、試料分解用容器挿入工程とを、有することを特徴とするマイクロ波加熱用の試料準備方法である。
第7の発明は、
前記前処理用試薬として、酸溶液またはアルカリ溶液を投入することを特徴とする第6の発明に記載のマイクロ波加熱用の試料準備方法である。
第8の発明は、
前記締結部材がOリングであり、前記把持部材が結束バンドであることを特徴とする第6または第7の発明に記載のマイクロ波加熱用の試料準備方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、容器外周面の清浄さを保ち、容器内壁面を汚染させず、簡単に脱着が可能で識別可能なタグ部材を有する把持用具を提供することができる。そのことで、一般的な操作に用いられる試験管等の円筒容器や、マイクロ波加熱分解法に用いられる試料分解用容器において、試料秤量工程や前処理用試薬投入工程の操作を行った場合、当該容器の表面の清浄さを損なうことがなくなった。また、複数の容器を用いて試料の準備工程を実施する際、容器の清浄さを担保しながら、取り違えを回避することができた。さらに、試薬を容器へ投入する際における、手指に薬傷を負う可能性も大きく減らすことができた。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】実施例1に係る把持用具における締結部材と把持部材との接続部分の拡大写真である。
【
図3】実施例1に係る試料分解用容器の側面写真である。
【
図4】実施例1に係る把持用具付き試料分解用容器の側面写真である。
【
図5】実施例1に係る除電用用具の側面写真である。
【
図6】実施例1に係る把持用具付き試料分解用容器を除電用用具に挿入し自立させた際の側面写真である。
【
図7】実施例1に係る把持用具付き試料分解用容器を重装装置に挿入し自立させた際の側面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る把持用具は、円筒容器の上部外周を囲むことで円筒容器へ着脱可能に取り付く、輪状で伸縮性を有する締結部材と、締結部材に接続された把持部材とを備えるものである。本発明に係る把持用具は、試験管立てに載置された試験管等、一般的な円筒容器に適用することができるが、特に、マイクロ波加熱装置に用いる試料分解用容器へ好適に適用することができる。
【0016】
さらに、本発明に係る把持用具はマイクロ波加熱装置に用いる試料分解用容器に取付けられ、マイクロ波加熱装置に用いる重装装置を構成するセラミック製円筒容器およびプラスチック製外筒と、試料分解用容器ヘ試料を装填し秤量する際に用いる除電用用具と共に、マイクロ波加熱用前処理用具を構成する。
【0017】
そこで、本発明に係る把持用具の実施形態例について、1.本発明に係る把持用具の構成、を説明し、次に、マイクロ波加熱装置に用いる試料分解用容器へ適用した場合を例として、2.本発明に係る把持用具を用いたマイクロ波加熱における試料準備工程、3.本発明に係る把持用具および除電用用具を用いたことによる効果、の順に説明する。
【0018】
1.本発明に係る把持用具の構成
本発明に係る把持用具は、一般的な操作に用いられる試験管等の円筒容器やマイクロ波加熱分解法に用いられる試料分解用容器の上部外周を囲むことで、円筒容器や試料分解用容器へ着脱可能に取り付く、輪状で伸縮性を有する締結部材と、前記締結部材に接続された把持部材とを備えるものである。以下、(1)円筒容器および試料分解用容器、(2)締結部材、(3)把持部材、(4)タグ部材、の順に説明する。
尚、本発明において円筒容器や試料分解用容器の上部とは、円筒容器や試料分解用容器の全長を100%としたとき、上部5%以上25%以下、好ましくは上部10%以上20%以下の範囲である。
【0019】
(1)円筒容器および試料分解用容器
本発明に係る把持用具が取付く円筒容器の例としては、円柱状の上端開放型の有底容器があり、当該容器の底部は半球状でも平面状でも良い。材質は、剛性が担保できるものであれば、金属、ガラス、セラミック、プラスチック等、特に限定されない。具体的には、試験管、沈殿管、ビーカー、ボトル、保存容器等が、それに該当する。
【0020】
本発明に係る把持用具は、上述した円筒容器の中でも、特にマイクロ波加熱用の前処理装置を構成する試料分解用容器へ好適に用いることができる。
当該試料分解用容器は、後述するマイクロ波加熱用の前処理用具を構成する円柱状等の柱状形状を有し上端開放型の有底容器であり、容器の底部は半球状であるフッ素樹脂製の試料分解用容器である。尚、試料分解用容器の材質としては、フッ素樹脂以外にも耐熱耐圧石英ガラスが用いられる。しかし、耐熱耐圧石英ガラスを用いた試料分解用容器は肉厚のため重い、衝撃により割れて破損する、前処理用試薬としてフッ化水素酸溶液やアルカリ溶液が使用できない、といった課題がある。そのため、耐熱耐圧石英ガラスに比べて軽量で、破損しにくく、フッ化水素酸溶液やアルカリ溶液への耐久性に優れたフッ素樹脂製の試料分解用容器であって、上端開放型の有底容器であり底部が半球状となっている場合が多い。
【0021】
(2)締結部材
本発明に係る把持用具は輪状で伸縮性を有する締結部材によって、円筒容器や試料分解用容器(本発明において、「円筒容器等」と略記する場合がある。)の上部外周を囲むことで、円筒容器等へ着脱可能に取り付くものである。
【0022】
当該締結部材は、円筒容器等の外周を取り囲む紐状であって樹脂製の部材である。但し、円筒容器等と内容物との重量を保持できる以上の、円筒容器等の外周との摩擦力を担保できなければならない。当該観点から、締結部材としては、円筒容器等の外周へ簡単に着脱でき、弛みが生じにくく、摩擦力が担保できる、輪状で伸縮性を有するゴム製のリングやマジックテープ(登録商標)を好適に用いることができる。さらに好ましくは、ゴム製のリングとして、市販のOリングを用いることができる。Oリングは、多様なサイズのものが市販されているので、入手が容易で、円筒容器等の外周長さに応じた最適のサイズのものを選定でき、安価である。
【0023】
さらに、円筒容器等へ前処理用試薬として酸溶液やアルカリ溶液を投入することを考慮すれば、Oリングの材質は、耐薬品性を有するものを選定することが好ましい。具体的には、フッ素樹脂製ゴムまたはエチレンプロピレンジエンゴムが好ましい。
【0024】
以上、説明した構成により、本発明に係る把持用具は、円筒容器等の内壁に触れることがないため、試料中に汚染物質を混入させたり、円筒容器等の内壁に付着した試料を持出したりする問題が発生しない。
【0025】
(3)把持部材
本発明に係る把持用具は、前記締結部材に接続された把持部材を有している。
把持部材の前記締結部材への接続方法に特に限定は無いが、例えば、締結部材を巻き込んで把持部材を固定する方法がある。「締結部材を巻き込んで」とは、把持部材の一部が締結部材と円筒容器等の隙間に挟まれた状態であり、締結部材が円筒容器等の外周を取り囲む際の締結部材の締め付けにより、円筒容器等と締結部材と把持部材とが一体に固定された状態をいう。
【0026】
把持部材は、手指で把持し易いサイズを有する棒状または帯状であって、締結部材を巻き込んで、円筒容器等とその内容物との重量を支えることができる固定力の強度が求められる。例えば、市販されているマドラー(かき混ぜ棒)の先端へ、熱を加える等により折り曲げ、その円筒容器等側の先端が締結部材を巻き込むような形状に加工することで当該固定力を担保しても良い。
【0027】
また、把持部材として、市販の樹脂製の結束バンド(インシュロック・タイ(登録商標))を用いることも好ましい。市販の樹脂製の結束バンドは棒状または帯状の部材であって、その結束機能を利用して、例えばOリング等の締結部材ヘ確実に固定をすることができる。
そして、結束バンドは多様なサイズのものが市販されているので、入手が容易で、円筒容器等の大きさや、手指での把持し易さに応じた最適のサイズのものを選定でき、安価である。
【0028】
尚、把持部材として結束バンドを用いた場合、手指で把持し易さや、円筒容器等とその内容物との重量を支える観点から、所定の剛性を有するものを選定することが好ましい。また、円筒容器等ヘ酸溶液やアルカリ溶液を添加する観点から、把持部材の材質は、耐薬品性を有するものを選定する。具体例としては、フッ素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリ塩化ビニルが好ましい。ポリ塩化ビニルは、剛性、耐アルカリ溶液の観点から硬質ポリ塩化ビニルが適している。フッ素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリ塩化ビニルの把持部材を用いれば、マイクロ波加熱用の前処理用具を構成するフッ素樹脂製の試料分解用容器へも好ましく使用することができる。
【0029】
以上、説明した本発明に係る把持用具を用いる構成により、試料の準備工程を実施する際、円筒容器等の表面の清浄さを担保できる。さらに、前処理用試薬を円筒容器等へ投入する際に、前処理用試薬が円筒容器等の外側に流れ出るといった事態が発生した場合であっても、手指に薬傷を負う可能性を大きく減らすことができる。
【0030】
(4)タグ部材
タグ部材の例としては、荷札、付箋等が一般的であるが、本発明に係る把持用具に用いるタグ部材は、円筒容器等の表面の清浄を担保する観点、および、操作性の観点から把持部材に取り付けられる荷札、付箋等の形であることが好ましい。そして、必要に応じて記載する数字、文字等のシンボルが容易に記載でき、且つ、円筒容器等を用いた秤量操作等を阻害しないサイズを有していることが好ましい。
また所望により、把持部材へ数字、文字等のシンボルを記載することで、把持部材にタグ部材の機能を兼用させることも可能である。
【0031】
以上、説明した本発明に係る把持用具を用いる構成により、複数の円筒容器等を用いて試料の準備工程を実施する際であっても、円筒容器等の清浄さを担保しながら、試料の取り違えを回避することができる。
【0032】
2.本発明に係る把持用具を用いたマイクロ波加熱における試料準備工程
マイクロ波加熱を行うための試料の準備において、本発明に係る把持用具を用いた試料準備工程について、(1)試料分解用容器準備工程、(2)試料秤量工程、(3)前処理用試薬投入工程、(4)重装装置準備工程、(5)試料分解用容器挿入工程、(6)マイクロ波加熱装置への重装装置設置工程、の順に実施する。そして、マイクロ波加熱が完了後、(7)分析工程、を実施する。以下、順に説明する。
【0033】
(1)試料分解用容器準備工程
把持用具の締結部材を拡張させて試料分解用容器の上部をくぐらせ、上述したように試料分解用容器の全長を100%としたとき、上部5%以上25%以下、好ましくは上部10%以上20%以下の範囲に把持用具を取り付け、把持用具付き試料分解用容器とした。尚、把持用具の把持部材へは、当該試料分解用容器に装填される試料を示す適宜なシンボルが記載されたタグ部材を付けるが、タグ部材を把持部材へ付けるタイミングは任意である。
【0034】
(2)試料秤量工程
試料秤量工程では、天秤を用いて試料分解用容器に規定量の試料を量り取る。試料は0.1mgのオーダーまで精確に量り取ることで定量分析値の誤差を抑制するため、精密天秤を使用することが好ましい。
しかし、重装装置に試料分解用容器を挿入すると、重量が大きいので精密天秤に載せることが困難である。そこで、試料分解用容器だけを精密天秤の秤量台に載せて秤量することが考えられる。ところが上述したように、試料分解用容器は自立できない形状になっているとの課題がある。
【0035】
さらに、フッ素樹脂製の試料分解用容器を使用している場合であって、試料が粉末、特に数μm以下の微粉末である場合、当該粉末試料を試料分解用容器に装填しようとしたとき、試料分解用容器との静電反発力を受けて飛び散ってしまうことがある。この結果、粉末試料の一部が試料分解用容器に装填できず、試料ロスの原因となる場合があるという課題が発生する場合がある。
【0036】
これらの課題を解決するため、本発明者は除電用用具を用いる構成に想到した。
具体的には、試料分解用容器を、導電性を有し自立可能な除電用用具に挿入し、当該試料分解用容器が挿入された除電用用具ごと天秤の秤量台に載せてしまうことで、作業性を向上させる構成に想到したものである。
但し、上述したように定量分析では、試料を0.1mgオーダーまで精確に量り取るため、秤量には精密天秤が使用される。ところが精密天秤は、例えば、最大200g程度までしか量ることができないため、除電用用具は軽量であることが求められる。
【0037】
除電用用具を軽量で自立可能にするには、例えば、アルミホイルまたは静電気除電シート等を試料分解用容器が収容できるように成形したもの、または、試料分解用容器の全長の70%から80%程度を容易に挿入することができるポリプロピレン等の軽量プラスチック容器へ、アルミホイルまたは静電気除電シート等を巻きつけたものを、除電用用具として用いることが好ましい。
【0038】
具体的な秤量操作としては、把持用具付き試料分解用容器の把持部材を手指でつまみ、精密天秤の秤量台に載せた試料分解用容器の外径より大きな内径を有する除電用用具に挿入する。そして、精密天秤のゼロ点補正をした後、試料分解用容器内に規定量の試料を量り取る。
【0039】
以上、説明した除電用用具を用いる構成により、把持用具付き試料分解用容器を自立させることができると共に、前述の粉末試料の飛び散りがなくなり試料ロスを防ぐことができたことから、試料を秤量する際の精確性、容易性、生産性が大きく向上した。
【0040】
(3)前処理用試薬投入工程
前処理用試薬投入工程では、「(2)試料秤量工程」後、把持用具付き試料分解用容器を除電用用具から抜出し、試料分解用容器内へ酸またはアルカリを前処理用試薬として投入する。
ここで、前処理用試薬としてガスの発生の恐れがある塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸等の酸溶液を用いる場合が多いので、局所排気設備の中で取り扱うのが好ましい。具体的には、把持部材を手指でつまんで、試料分解用容器を除電用用具から抜出し、局所排気設備内に移動させてから前処理用試薬を投入することが好ましい。
【0041】
前処理用試薬を投入する際、試料分解用容器の開口部付近に試料が付着していれば、当該前処理用試薬で下方へ流し落とす。尚、前処理用試薬の投入量は、必ずしも精確でなくてもよく、駒込ピペット、メスピペットに設けられている目盛りを参考にする程度の精度でよい。
ここで、試料分解用容器の内壁に付着した試料を前処理用試薬で洗い流す際に、薬液と手指との接触が発生することがある。しかし、把持用具付き試料分解用容器を用いることで、薬液と手指との接触も回避することができる。また、上述した除電用用具を用いることで、静電気の作用によって試料の一部が試料分解用容器の内壁に付着することを抑制できる。この結果、前処理用試薬投入時に内壁に付着した試料を洗い流すような熟練作業が削減され、例えば、薬液を試料分解用容器の外に零すような事態も回避でき、安全性と作業効率とが向上する。
【0042】
さらに、前処理用試薬を投入した後、試料と前処理用試薬が反応してガスが発生することがある。その場合は、把持用具付き試料分解用容器を重装装置に挿入して自立させ、ガスの発生がなくなるまで局所排気設備の中で放置すれば良い。
【0043】
(4)重装装置組立工程
重装装置準備工程では、セラミック製円筒容器を、当該セラミック製円筒容器が隙間無く嵌装されるプラスチック製外筒へ嵌装し、重装装置を組立てる工程である。
【0044】
上述したように、セラミック製円筒容器は、高圧下においてフッ素樹脂製の試料分解用容器の変形や破壊を回避するために使用される。ここで、試料分解用容器は耐圧性向上のため、底部が半球状になっており、セラミック製円筒容器も当該試料分解用容器を隙間無く嵌装するため、底部が半球状になっており自立できない形状になっている。
【0045】
一方、プラスチック製外筒は、マイクロ波加熱装置のローターへ、試料分解用容器が嵌装されたセラミック製円筒容器を垂直に設置するために用いられるものであり、底部は平面で自立できる。結局、重装装置を組立てることにより、試料分解用容器が垂直に自立可能となる。
ここで、上述したようにマイクロ波の透過が不均一になることを回避するために、プラスチック製外筒の表面は清浄であることが求められる。しかし本発明者らは、プラスチック製外筒の全長を100%としたとき、下部5%より下の範囲にはマイクロ波が照射されないので、この部分であれば、例えばフエルトペン等によるシンボルの記載が可能であることに想到した。
そこで、プラスチック製外筒の下部に「(1)試料分解用容器準備工程」で説明した、本発明に係る把持用具のタグ部材に記載されたシンボルに対応するシンボルを記載しておく。
【0046】
(5)試料分解用容器挿入工程
試料分解用容器挿入工程では、「(3)前処理用試薬投入工程」が完了した把持用具付き試料分解用容器を、「(4)重装装置組立工程」で組立てた重装装置のセラミック製円筒容器内へ挿入する。このとき、把持用具付き試料分解用容器の前記タグ部材に記載された所定のシンボルに対応するシンボルがプラスチック製外筒下部に記載されている重装装置のセラミック製円筒容器内へ挿入する。
以上説明した構成により、同時に複数の試料分解用容器が関わる試料分解用容器挿入工程を実施しても、各々、挿入すべき重装装置ヘ容易且つ確実に挿入することができる。
【0047】
まず、把持用具付き試料分解用容器の把持部材を手指でつまみ、プラスチック外筒に嵌装されて自立しているセラミック製円筒容器へ挿入していく。ここで、「1.本発明に係る把持用具の構成 (2)締結部材」にて説明したように把持用具は、輪状で伸縮性を有する締結部材によって、試料分解用容器の上部外周を囲むことで試料分解用容器へ着脱可能に取り付いている。そこで、把持用具付近まで挿入した状態で把持用具をよじり、締結部材の伸縮性を利用して試料分解用容器から把持用具を外す。試料分解用容器から把持用具が外れたら、当該試料分解用容器をセラミック製円筒容器へ隙間無く嵌装する。
【0048】
(6)マイクロ波加熱装置への重装装置設置工程
「(5)試料分解用容器挿入工程」が完了したら、試料分解用容器を密封するため、試料分解用容器に所定の蓋を取付けて内部を密封する。次に、プラスチック外筒へもマイクロ波加熱装置のローターに固定するための所定の蓋を取付ける。そして、所定個数の試料分解用容器を挿入してローターに固定するための所定の蓋を取付けた重装装置をローターに組み込み、当該ローターをマイクロ波加熱装置内に固定する。固定できたら、マイクロ波を照射し、試料分解用容器内の試料と前処理用試薬からなる混合溶液を高温かつ高圧状態に保ち、試料を分解して溶液化する。ここで、複数本の試料分解用容器を挿入した蓋つき重装装置をセットできるマイクロ波加熱装置を用いることにより、複数個の試料分解処理が同時にできる。
【0049】
(7)分析工程
マイクロ波加熱が完了したら、溶液化した試料をメスフラスコのような定容容器に移し入れ、水、酸溶液またはアルカリ溶液等を加えて定容する。得られた溶液化した試料を従来公知の方法、例えば、ICP発光分光分析法、ICP質量分析法、原子吸光光度法等で測定することにより試料中の含有元素分析を行う。
【0050】
3.本発明に係る把持用具および除電用用具を用いたことによる効果
以上、説明したように、マイクロ波加熱における試料準備工程において本発明に係る把持用具を用いたことにより、試料分解用容器の準備から重装装置の組立まで、操作の精確性、容易性、生産性が大きく向上し、安全性も担保することができた。また、秤量工程において除電用用具を用いることにより、試料を秤量する場合の作業の精確性、容易性、生産性が大きく向上した。
【実施例0051】
実施例を参照しながら本発明を具体的に説明する。但し、本発明は当該具体例に限定さ
れる訳ではない。
【0052】
(実施例1)
本実施例において、マイクロ波加熱装置として、Anton Paar社製 Multiwave3000を準備した。そして、
図3に示す試料分解用容器、セラミック製円筒容器およびプラスチック製外筒は、いずれも当該マイクロ波加熱装置の純正のものを使用した。
また、精密天秤としてメトラートレド社製 ME204を準備した。
さらに、
図5に示す除電用用具として、ポリプロピレン容器(アズワン社製 アイボーイ PP広口びん 50mL)を3個準備し、内1個は底部を残し、それ以外は上部および底部を切り取って筒状にしたものを重ね、ビニールテープで止めて自立可能な有底円筒容器を得、その外周にアルミホイルを2重に巻き付けたものを準備した。
被測定試料として、平均粒径が0.5μm程度のニッケル微粉末を準備した。尚、当該試料は不純物としてアルカリ金属元素を含有している。
【0053】
締結部材として
図1の符号1に示すOリング(カクダイ社製 材質:フッ素樹脂製ゴム、内径:32mm)と、把持部材として
図1の符号2に示す結束バンド(へラマンタイトン社製 材質:ポリプロピレン、幅:4.8mm、長さ:250mm)とを準備した。
そして、
図2に示すように、結束バンド2のバンド部5でOリング1を巻き込み、当該バンド部5を結束バンド2のヘッド部6を通して引き絞り、Oリング1に結束バンド2を固定した。そして、バンド部5の長さが概ね40mmになるようにバンド部5を切断して、
図1の符号4に示す把持用具を作製した。
尚、
図1の符号3はタグ部材を示す。
【0054】
作製した把持用具を試料分解用容器(材質:PTFE、全長180mm)の上部の開口部から下方に向かって30mmのところに取付けて、
図4に示す把持用具付き試料分解用容器を作製した。
【0055】
次に、把持用具付き試料分解用容器の把持部材を手指でつまんで持ち、精密天秤の秤量台上に載せた除電用用具の口から容器内部ヘ把持用具付き試料分解用容器を挿入したところ、
図6に示すように把持用具が除電用用具の口に引っ掛かり、把持用具付き試料分解用容器は秤量台上で自立した。
【0056】
把持用具付き試料分解用容器に、試料を0.1g(0.1mg単位まで精確に秤量した。)量り取って装填した。
その後、把持部材を手指でつまみ、把持用具付き試料分解用容器を除電用用具から抜出し、局所排気設備内に移動させた。そして把持部材を手指でつまんだまま、駒込ピペットを使って前処理用試薬である濃度7mol/Lの硝酸溶液10mLを、試料分解用容器の開口部から投入し、10回振り混ぜて試料と混合した。
【0057】
試料と前処理用試薬とが入った把持用具付き試料分解用容器を、把持用具のタグ部材に記載された記号と、プラスチック外筒の下部部分に記載された記号との対応を確認しながら重装装置へ挿入した。このとき、把持用具が重装装置の口に引っ掛かり、
図7に示すように把持用具付き試料分解用容器は自立した。試料分解用容器内にてガスが発生したので、ガスの発生が停止するまで当該状態で局所排気設備内に放置した。
【0058】
ガスの発生が停止したことを確認した後、把持用具付き試料分解用容器から把持用具を、試料分解用容器の開口部に向かってよじりながら取外した後、試料分解用容器をセラミック製円筒容器内へ隙間無く嵌装した。その後、試料分解用容器へ蓋を取り付け、試料分解用容器を密封し、さらに、プラスチック外筒へ蓋を取り付けて試料分解用容器を挿入した蓋つき重装装置を組立てた。
【0059】
上述した操作を繰り返し、異なった試料が充填された試料分解用容器を挿入した蓋つき重装装置を8本組立てた。そして、8本の試料分解用容器を挿入した蓋つき重装装置をローターに設置した。
当該ローターを、マイクロ波加熱装置内に設置し、マイクロ波の出力を800Wに設定し15分間マイクロ波を照射して、試料分解用容器内の試料を溶液化した。
そして、溶液化した試料をメスフラスコに移し入れて定容し、原子吸光光度計(日立ハイテク社製 Z-2300)を用いて、試料に含まれるナトリウム量およびカリウム量を定量した。