(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023117899
(43)【公開日】2023-08-24
(54)【発明の名称】凹部にルテニウムを埋め込む方法、及び装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/285 20060101AFI20230817BHJP
H01L 21/3205 20060101ALI20230817BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20230817BHJP
C23C 16/06 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
H01L21/285 C
H01L21/88 M
H01L21/88 B
H01L21/28 301R
C23C16/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020708
(22)【出願日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 真人
(72)【発明者】
【氏名】石坂 忠大
【テーマコード(参考)】
4K030
4M104
5F033
【Fターム(参考)】
4K030AA14
4K030AA16
4K030BA01
4K030CA04
4K030DA02
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4M104HH13
4M104HH16
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5F033XX10
(57)【要約】
【課題】 ボイドの形成を抑えつつ、凹部内にルテニウムを埋め込むこと。
【解決手段】基板上の絶縁膜に形成された凹部に対してルテニウムを埋め込むにあたり、前記基板に対してルテニウム原料を供給し、前記凹部内にルテニウムが埋め込まれるように、第1のルテニウム膜を成膜した後、凹部が前記第1のルテニウム膜の成膜を停止する。そして前記基板に対してオゾンガスを供給して、前記凹部内の底部側の前記第1のルテニウムを残した状態で、前記凹部の側壁が露出するまで前記第1のルテニウム膜をエッチングする。次いで、前記基板に対してルテニウム原料を供給し、前記凹部内にルテニウムを充填するように、第2のルテニウム膜を成膜する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の絶縁膜に形成された凹部に対してルテニウムを埋め込む方法であって、
前記基板に対してルテニウム原料を供給し、前記凹部内にルテニウムが埋め込まれるように、第1のルテニウム膜を成膜する工程と、
前記第1のルテニウム膜を成膜する工程を停止し、前記基板に対してオゾンガスを供給して、前記凹部内の底部側の前記第1のルテニウムを残した状態で、前記凹部の側壁が露出するまで前記第1のルテニウム膜をエッチングする工程と、
次いで、前記基板に対してルテニウム原料を供給し、前記凹部内にルテニウムを充填するように、第2のルテニウム膜を成膜する工程と、を含む方法。
【請求項2】
前記凹部の側壁側からのルテニウムの成膜速度よりも、前記底部側からのルテニウムの成膜速度が大きく、前記第1のルテニウム膜を成膜する工程よりも、前記第2のルテニウム膜を成膜する工程の方が、前記側壁側と前記底部側との間の成膜速度差が大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ルテニウム膜をエッチングする工程では、前記オゾンガスの供給による前記ルテニウム膜のエッチングと、前記基板に水素ガスを供給することによる、オゾンとルテニウムとの反応生成物の除去と、を交互に繰り返し実施する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
絶縁膜は金属を含む膜上に形成され、前記凹部の底部に露出する前記金属を含む膜上に、前記第1のルテニウム膜が成膜される、請求項1ないし3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
第1のルテニウム膜を成膜する工程を実施する前に、前記凹部の底部に露出する前記金属を含む膜を覆う金属酸化膜を除去する工程を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記金属を含む膜は、前記絶縁膜よりも成膜選択比が高く、前記凹部の側壁側からのルテニウムの成膜速度よりも、前記凹部の底部側からのルテニウムの成膜速度が大きくなる、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記金属を含む膜は、チタンシリサイド膜、ルテニウム膜、タングステン膜、銅膜、チタン膜、酸化ルテニウム膜からなる膜の群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記絶縁膜は、シリコン酸化膜、またはシリコン窒化膜である、請求項1ないし7に記載のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
第1のルテニウム膜を成膜する工程と、前記第1のルテニウム膜をエッチングする工程と、第2のルテニウム膜を成膜する工程とは、前記基板を130~200℃の範囲内の共通の温度に加熱した状態で実施される、請求項1ないし8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
基板上の絶縁膜に形成された凹部に対してルテニウムを埋め込む装置であって、
前記基板を収容する処理容器と、
前記処理容器に、ルテニウム原料を供給するルテニウム原料供給部と、
前記処理容器に、オゾンガスを供給するオゾンガス供給部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記処理容器内の前記基板に対し、前記ルテニウム原料供給部から前記ルテニウム原料を供給し、前記凹部内にルテニウムが埋め込まれるように、第1のルテニウム膜を成膜するステップと、前記第1のルテニウム膜を成膜するステップを停止し、前記前記オゾンガス供給部からオゾンガスを供給して、前記凹部内の底部側の前記第1のルテニウムを残した状態で、前記凹部の側壁が露出するまで前記第1のルテニウム膜をエッチングするステップと、次いで、前記ルテニウム原料供給部から前記ルテニウム原料を供給し、前記凹部内にルテニウムを充填するように、第2のルテニウム膜を成膜するステップと、を実行するための制御信号を出力するように構成された、装置。
【請求項11】
前記凹部の側壁側からのルテニウムの成膜速度よりも、前記底部側からのルテニウムの成膜速度が大きく、前記第1のルテニウム膜を成膜するステップよりも、前記第2のルテニウム膜を成膜するステップの方が、前記側壁側と前記底部側との間の成膜速度差が大きい、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記処理容器に、水素ガスを供給する水素ガス供給部を備え、
前記制御部は、前記ルテニウム膜をエッチングするステップでは、前記オゾンガスの供給による前記ルテニウム膜のエッチングと、前記基板に水素ガスを供給することによる、オゾンとルテニウムとの反応生成物の除去と、を交互に繰り返し実施するための制御信号を出力する、請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
前記絶縁膜は金属を含む膜上に形成され、前記凹部の底部に露出する前記金属を含む膜上に、前記第1のルテニウム膜が成膜される、請求項10ないし12のいずれか一つに記載の装置。
【請求項14】
前記金属を含む膜は、前記絶縁膜よりも成膜選択比が高く、前記凹部の側壁側からのルテニウムの成膜速度よりも、前記凹部の底部側からのルテニウムの成膜速度が大きくなる、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記金属を含む膜は、チタンシリサイド膜、ルテニウム膜、タングステン膜、銅膜、チタン膜、酸化ルテニウム膜からなる膜の群から選択される、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記絶縁膜は、シリコン酸化膜、またはシリコン窒化膜である、請求項10ないし15に記載のいずれか一つに記載の装置。
【請求項17】
前記処理容器内の基板を加熱する加熱部を備え、
前記制御部は、第1のルテニウム膜を成膜するステップと、前記第1のルテニウム膜をエッチングするステップと、第2のルテニウム膜を成膜するステップとにおいて、前記加熱部により、前記基板が130~200℃の範囲内の共通の温度に加熱した状態で実施されるように制御信号を出力する、請求項10ないし16のいずれか一つに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、凹部にルテニウムを埋め込む方法、及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、半導体装置の製造用の基板上に形成された絶縁膜にホールやトレンチなどの凹部を形成し、この凹部内に配線材料であるルテニウム(Ru)を埋め込むため、ルテニウム膜の成膜を行う処理がある。
【0003】
特許文献1には、基板の表面に、導電材料(例えばRu)が露出した第1領域と、絶縁材料(例えばLow-k材料)が露出した第2領域とを有する基板について、第1領域に選択的に対象膜(例えばRu膜)を形成する技術が記載されている。さらに特許文献1には、対象膜を成膜する前の基板にオゾンガスを供給し、絶縁材料の表面のOH基を増やすことにより、第1領域への対象膜形成の選択性を高めることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、ボイドの形成を抑えつつ、凹部内にルテニウムを埋め込む技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、基板上の絶縁膜に形成された凹部に対してルテニウムを埋め込む方法であって、
前記基板に対してルテニウム原料を供給し、前記凹部内にルテニウムが埋め込まれるように、第1のルテニウム膜を成膜する工程と、
前記第1のルテニウム膜を成膜する工程を停止し、前記基板に対してオゾンガスを供給して、前記凹部内の底部側の前記第1のルテニウムを残した状態で、前記凹部の側壁が露出するまで前記第1のルテニウム膜をエッチングする工程と、
次いで、前記基板に対してルテニウム原料を供給し、前記凹部内にルテニウムを充填するように、第2のルテニウム膜を成膜する工程と、を含む方法である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ボイドの形成を抑えつつ、凹部内にルテニウムを埋め込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本開示のルテニウムの埋め込みが実施される凹部内構造の第1の例である。
【
図1B】前記ルテニウムの埋め込みが実施される凹部内構造の第2の例である。
【
図2】前記ルテニウムの埋め込みを実施するための成膜装置の構成例である。
【
図3】実施形態に係る成膜処理の第1の作用図である。
【
図9】参照例における成膜サイクルに対するルテニウム膜厚の変化を示すグラフである。
【
図10】実施例における成膜サイクルに対するルテニウム膜厚の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<ウエハの表面構造>
本開示のルテニウムの埋め込みが行われる基板であるシリコンウエハ(以下、「ウエハ」という)に形成される凹部の構成例を
図1A、
図1Bに示す。
例えば論理素子(Logic)用のMOS-FET(電界効果トランジスタ)においては、拡散層との接続のため、層間絶縁膜に形成された凹部に配線用の金属の埋め込みが行われる。半導体デバイスの微細化に伴い、配線用の金属の低抵抗化が求められており、低抵抗材料であるルテニウムが注目されている。
【0010】
図1A、
図1Bは、ウエハWの本体であるシリコン層401の上層側に絶縁膜202を成膜すると共に、当該絶縁膜202を貫通する凹部を形成した構造を示している。
図1Aに例示する絶縁膜202に形成された凹部内には、シリコン層401との電気的なコンタクトを取るためのエピタキシャル層402、TiSix層403、コンタクト用のルテニウム30aが、下層側からこの順に積層されている。さらにルテニウム30aの上層側には、残りの凹部を埋めるプラグ用のルテニウム30bが積層されている。
図1Aに示す構成においては、TiSix層403上にルテニウム30aが積層される領域、及びルテニウム30a上にルテニウム30bが積層される領域が、本開示が適用されるルテニウムの埋め込み領域3A、3Bに相当する。
【0011】
また
図1Bに例示する絶縁膜202の凹部内には、シリコン層401との電気的なコンタクトを取るためのメタルゲート404、タングステン層405が、下層側からこの順に積層されている。さらにタングステン層405の上層側には、ルテニウム30cが積層されている。
図1Bに示す構成において、TiSix層403上にルテニウム30cが積層される領域が、本開示が適用されるルテニウムの埋め込み領域3Cに相当する。
【0012】
ここで、凹部へのルテニウム30a~30cの埋め込みを実施するにあたり、ウエハWに対してルテニウムの原料ガスを供給すると、凹部の内部よりも、開口付近にて膜形成が優先的に進行する傾向がある(後述する
図4の第1のルテニウム膜31も参照)。この状態でルテニウム膜の成膜を継続すると、凹部内への原料ガスの進入が妨げられ、やがてルテニウム膜により凹部の開口が閉塞された状態となってしまう。こうして形成されたルテニウム膜は、凹部に埋め込まれたルテニウム30a~30cにボイド(空隙)が形成されてしまうおそれが高い。ボイドの形成は、配線材料であるルテニウム30a~30cの抵抗値を上昇させてしまう要因となる。
【0013】
そこで本開示では、凹部にルテニウム30a~30cを埋め込む過程において、オゾン(O
3)ガスによりルテニウム膜の一部をエッチングする処理を実施し、凹部に埋め込まれたルテニウム30a~30cへのボイドの形成を抑える。
以下、
図2を参照しながら、凹部へのルテニウムの埋め込みを行うための装置である、成膜装置1の構成例について説明する。
【0014】
<成膜装置>
図2は、成膜装置1の全体構成を示す縦断側面図である。本例の成膜装置1は、ウエハWの表面にルテニウム原料の原料ガスを連続的に供給し、熱CVD法によりルテニウム膜を成膜し、凹部への埋め込みを行う装置として構成されている。
【0015】
図2に示す成膜装置1において、処理容器110は、上面が開口する略円筒状の容器である。蓋部131は、処理容器110の開口を気密に塞ぐように配置されると共に、後述のガスシャワーヘッド13を上面側から支持する。
処理容器110の下部側の側面には、排気ライン112が接続されている。排気ライン112には、例えばバタフライバルブからなる圧力調整バルブを含む真空排気部113が接続され、予め設定された圧力まで処理容器110内を減圧できるように構成されている。
【0016】
処理容器110の側面には、不図示の真空搬送室との間でウエハWの搬入出を行うための搬入出口114が形成されている。この搬入出口114はゲートバルブ115により開閉自在に構成されている。
【0017】
また処理容器110内にはウエハWを略水平に保持するための載置台12が設けられている。例えば載置台12は、円板状に構成され、その内部には、ウエハWを加熱するための加熱部であるヒータ120が埋設されている。ヒータ120は、例えば、シート状の抵抗発熱体より構成され、不図示の電源部から電力が供給されることにより発熱し、載置台12上に載置されたウエハWを加熱する。
【0018】
また、載置台12の下面中央には、下方に向けて伸びる支持部121が接続されている。支持部121は、処理容器110の底部を貫通し、処理容器110の下方側に配置された昇降板124に対してその下端部が接続されている。昇降板124は、昇降機構122の昇降軸によって下面側から支持されている。処理容器110と昇降板124との間は、支持部121の周囲を覆うように配置されたベローズ123が設けられ、処理容器110内を気密に保っている。
【0019】
上述の構成において、昇降機構122により昇降板124を昇降させると、載置台12は、処理位置と、その下方側に設定されたウエハWの受け渡し位置との間を昇降する。ウエハWは、載置台12に設けられた受け渡しピンを用いて不図示の搬送機構との間での受け渡しが行われるが、受け渡しピンの記載は省略してある。
【0020】
載置台12に配置されたウエハWと対向する位置には、ガスシャワーヘッド13が設けられている。既述のように、本例のガスシャワーヘッド13は、処理容器110の上面の開口を塞ぐ蓋部131によって支持されている。例えばガスシャワーヘッド13は、ガスを拡散させるための拡散室と、ウエハWに向けてガスを吐出するための多数の吐出孔とを備えている。
図2においては、これら拡散室や吐出孔の記載は省略してある。
【0021】
ガスシャワーヘッド13には、ガス供給路130の下流側端部が接続されている。このガス供給路130の上流側には、ルテニウム原料ガスの供給を行うための原料ガス供給管141が合流している。原料ガス供給管141には、下流側から順にバルブV14、流量計142が設けられ、その上流側端部は原料容器143に接続されている。原料容器143は、不図示のヒータにより加熱されるように構成され、その内部にルテニウム原料144として固体のドデカカルボニル三ルテニウム(Ru3(CO)12)を収容している。なお、ルテニウム原料144は、Ru3(CO)12の例に限定されるものではなく、例えばビスエチルシクロペンタジエニルルテニウム(Ru(EtCp)2)を用いてもよい。
【0022】
原料容器143には、キャリアガス供給管145の一端が原料容器143内に挿入されるように設けられている。キャリアガス供給管145の他端は、流量調節部M14を介してキャリアガスであるCOガスのガス供給源140に接続されている。原料ガス供給管141、キャリアガス供給管145、原料容器143、ガス供給源140等は、本例のルテニウム原料供給部を構成している。
【0023】
上述の構成において、原料容器143におけるルテニウム原料144の加熱温度とガス供給源140からのCOガスの供給流量とを調節することにより、ガスシャワーヘッド13を介して処理容器110に供給されるキャリアガス(COガス)及びRu3(CO)12の供給流量を調節する。
【0024】
また、既述のガス供給路130には、反応調節用ガスであるCOガスを供給する構成としてもよい。
図2に示す成膜装置1において、ガス供給路130には、前記COガスの供給を行うためのCOガス供給管151が合流している。COガス供給管151の上流側端部には、COガス供給源150が接続され、上流側から順に流量調節部M15、バルブV15が介設されている。
【0025】
さらにガス供給路130には、第1のルテニウム膜31のエッチング用のオゾンガスの供給を行うためのオゾンガス供給管171が合流している。オゾンガス供給管171の上流側端部には、オゾンガス供給源170が接続され、上流側から順に流量調節部M17、バルブV17が介設されている。オゾンガス供給管171、オゾンガス供給源170等は、本例のオゾンガス供給部を構成している。
【0026】
このほか、ガス供給路130には、第1のルテニウム膜31のエッチングの際に生成した反応生成物の除去に用いる水素ガスの供給を行うための水素ガス供給管161が合流している。水素ガス供給管161の上流側端部には、水素ガス供給源160が接続され、上流側から順に流量調節部M16、バルブV16が介設されている。水素ガス供給管161、水素ガス供給源160、流量調節部M16、バルブV16は、本例の水素ガス供給部を構成している。
【0027】
成膜装置1は、真空搬送室との間で搬入出されるウエハWの受け渡しや、成膜装置1を構成する各部の動作を制御する制御部100を備えている。この制御部100は、例えば図示しないCPUと記憶部とを備えたコンピュータからなり、記憶部には、ルテニウムの成膜を行うために必要な制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記憶されている。プログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード、不揮発性メモリ等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0028】
<成膜処理>
上述の構成を備える成膜装置1を用い、ウエハW上の絶縁膜202に形成された凹部に対してルテニウムを埋め込む処理について
図3~
図8も参照しながら説明する。
図3~
図8においては、
図1A、
図1Bに例示した埋め込み領域3A~3Cを模式化して、下層膜201上の絶縁膜202に凹部21が形成された状態を示している。
【0029】
下層膜201は本例の「金属を含む膜」に相当し、チタンシリサイド(TiSix)膜、ルテニウム(Ru)膜、タングステン(W)膜、銅(Cu)膜、チタン(Ti)膜、酸化ルテニウム(RuO2)膜からなる金属を含む膜の群から選択されたものを用いる場合を例示することができる。一方、絶縁膜202は、シリコン酸化(SiO2)膜またはシリコン窒化(SiN)膜により構成する場合を例示できる。
【0030】
初めに、複数枚のウエハWを収容した不図示のキャリアから取り出された処理対象のウエハWが、真空搬送室を介して成膜装置1に搬送されてくる。この際、当該真空搬送室に接続された不図示の前処理装置により、下層膜201の表面を覆う金属酸化膜(自然酸化膜)を除去する処理を実施してもよい(金属酸化膜を除去する工程)。金属酸化膜を除去する処理としては、フッ化水素(HF)ガス及びアンモニア(NH3)ガスを用いて金属酸化膜を除去するCOR処理(Chemical Oxide Removal)、及びCOR処理の際に生成した反応生成物を昇華させて除去するPHT(Post heat treatment)処理を例示することができる。
【0031】
処理対象のウエハWが搬送されてきたら、成膜装置1のゲートバルブ115が開かれ、真空搬送室内に設けられている不図示のウエハ搬送機構を用いて処理容器110内にウエハWを搬入する。処理容器110内では、載置台12が受け渡し位置まで降下した状態で待機しており、不図示の受け渡しピンを介して載置台12にウエハWが受け渡される。しかる後、ウエハ搬送機構を退出させてゲートバルブ115を閉じ、処理容器110内の圧力調節を行う。また、載置台12を受け渡し位置から処理位置まで上昇させると共に、ヒータ120により、載置台12上のウエハWを、130~200℃の範囲内の150℃に加熱する。
【0032】
図3に模式的に示すように、載置台12上のウエハWの表面の絶縁膜202には凹部21が形成され、当該凹部21の底部には、金属酸化膜が除去された後の「金属を含む膜」である下層膜201の上面が露出した状態となっている。
【0033】
次いで、所定の温度に加熱されている原料容器143に対し、ガス供給源140からキャリアガスを供給する。この動作により、ルテニウム原料144から昇華したRu3(CO)12のガスがピックアップされ、キャリアガスと共にガスシャワーヘッド13から処理容器110へと供給される。このとき、ガスシャワーヘッド13に対して原料容器143と並列に接続されているCOガス供給源150から、反応調節用ガスであるCOガスの供給を行ってもよい。COガスは、Ru3(CO)12の分解を抑制し、ルテニウム膜の成膜速度を調節する機能を有する。
【0034】
上記の動作により、処理容器110内では、加熱されたウエハW上でRu3(CO)12が分解し、ウエハWの表面にルテニウムが堆積していく。このルテニウムの堆積により第1のルテニウム膜31が形成され、凹部21内へのルテニウムの埋め込みが進行していく(第1のルテニウム膜を成膜する工程)。
【0035】
ここで、下層膜201を構成する金属の膜として例示した、チタンシリサイド膜、ルテニウム膜、タングステン膜などは、絶縁膜202を構成するシリコン酸化膜やシリコン窒化膜と比較して、第1のルテニウム膜31の成膜選択比が高い。このため、凹部21の側壁側からのルテニウムの成膜速度よりも、凹部21の底部側からのルテニウムの成膜速度が大きくなる傾向がみられる。
図4には、左記の成膜速度の違いを、破線の矢印の長さの違いによって模式的に示している。
また、既述のように、凹部21においては、内部と比較して、開口付近にて膜形成が優先的に進行する傾向がある。
【0036】
これらの成膜時の特性により、
図4に示すように、第1のルテニウム膜を成膜する工程では、上下方向に細長い空間を残しつつ第1のルテニウム膜31の成膜が進行する。また、凹部21の開口付近では、上述の細長い空間を残したまま、開口幅が狭くなっていく。この状態にて第1のルテニウム膜31の成膜を継続すると、開口が閉塞し、凹部21内に埋め込まれたルテニウム30a~30cにボイドが形成されてしまう。
【0037】
そこで本例の成膜装置1においては、第1のルテニウム膜31の成膜を開始した後、予め設定されたタイミングにて、Ru
3(CO)
12ガス、COガスの供給を停止し、第1のルテニウム膜31の成膜を停止する。しかる後、例えば、ウエハWの加熱温度を130~200℃の範囲内の150℃に維持したまま、処理容器110内にオゾンガスを供給し、底部側ルテニウム31aの一部をエッチングする(
図5(a)、第1のルテニウム膜をエッチングする工程)。なお、
図5~
図8の説明においては、エッチングされた後の第1のルテニウム膜31を底部側ルテニウム31aと呼ぶ。
【0038】
上述の加熱温度範囲において、オゾンガスが、固体のルテニウムと反応すると、気体のRuO4、及び固体のRuO2が生成する。気体のRuO4は、排気ライン112より処理容器110の外部へ排出される。また、固体のRuO2の多くは、微粒子の状態で排気の流れに乗って処理容器110の外部へ排出される。一方、固体のRuO2の一部は、反応生成物32として下層膜201の表面にも付着する。
【0039】
そこで、本例の成膜装置1においては、第1のルテニウム膜31のエッチングを行う期間中に、オゾンガスの供給による第1のルテニウム膜31のエッチングと、ウエハWに水素ガスを供給することによる反応生成物32の除去とを交互に繰り返し実施する。水素ガスの供給により、RuO
4を還元してルテニウム(Ru)の状態に戻して反応生成物32を除去し(
図5(b))、次いでオゾンガス供給時のエッチングによって、還元後のルテニウムが下層膜201の表面から除去される。
【0040】
ここで
図5(a)、(b)には、エッチングを開始する前の第1のルテニウム膜31の縦断面形状の輪郭を一点鎖線で併記してある。同図に示されている例では、凹部21の開口が閉塞する前のタイミングにてオゾンガスの供給が開始され、第1のルテニウム膜31のエッチングが進行している。一方、ウエハWの表面に多数形成されている凹部21において、第1のルテニウム膜31の進行状況は、互いに相違する場合がある。従って、一部の凹部21においては、第1のルテニウム膜31の成膜が速く、オゾンガスの供給開始時に、凹部21の開口が閉塞してボイドが形成された状態となっているものも含まれる。この場合であっても、閉塞部分を形成している第1のルテニウム膜31がオゾンガスによりエッチングされた後、
図5(a)、(b)と同様の処理が進行する。
【0041】
こうして、下層膜201の凹部21内の底部側にルテニウム(底部側ルテニウム31a)を残した状態で、凹部21の側壁(下層膜201)が露出するまでエッチングを行う。ここで底部側とは、凹部21の深さの半分より下方側の範囲を例示することができる。また、第1のルテニウム膜31をエッチングにより除去する範囲は、既述の「上下方向に細長い空間」を構成する部分全体を除去する場合を例示できる。
【0042】
予め設定した時間、上述したオゾンガスによる第1のルテニウム膜31のエッチングを実施することにより、凹部21の底部に底部側ルテニウム31aを残しつつ、凹部21の側壁を露出させた構造が得られる(
図6)。なお、エッチングにより第1のルテニウム膜31を除去する範囲をやや高く設定し、
図6に示す底部側ルテニウム31aの上面に、既述の「上下方向に細長い空間」の下端部に相当する凹みが残った状態となっていてもよい。この場合でも、以下に説明する第2のルテニウム膜31bの埋め込みには大きな影響はない。
【0043】
次いで成膜装置1は、オゾンガスの供給を停止し、第1のルテニウム膜31のエッチングを終了する。しかる後、例えば、ウエハWの加熱温度を130~200℃の範囲内の150℃に維持したまま、Ru
3(CO)
12ガス、COガスの供給を再開して、第2のルテニウム膜31bの成膜を開始する(
図7、第2のルテニウム膜を成膜する工程)。第1のルテニウム膜31の成膜、オゾンガスによる第1のルテニウム膜31のエッチング、第2のルテニウム膜31bの成膜を共通の加熱温度で実施することにより、温度調節の待ち時間を消費することなく、共通の処理容器110内で、これらの異なる処理を実施することができる。
【0044】
また当該第2のルテニウム膜31bの成膜を実施する前に、第1のルテニウム膜31のエッチングを実施し、この際、エッチングガスとしてオゾンガスを用いている。このオゾンガスの採用により、底部側ルテニウム31aの上面と凹部21の側壁面、即ち絶縁膜202の表面との間での成膜速度の差を大きくする改質効果を得ることができる。
【0045】
即ち、エッチングされた底部側ルテニウム31aの表面は、既述の水素ガスの供給により反応生成物32が除去され、ルテニウムが露出した状態となっている。ここで、オゾンガスによるエッチングは、第1のルテニウム膜31を成膜したままの状態と比較して、底部側ルテニウム31aの表面粗さを増大させる作用があることを把握している。この結果、Ru3(CO)12ガスから生成した活性種の吸着面積が大きくなり、第2のルテニウム膜31bの成膜速度を増大させる効果が得られる。
【0046】
一方でオゾンガスは、絶縁膜202を構成するシリコン酸化膜やシリコン窒化膜の未結合手と反応して、Si-O結合を形成し、未結合手の含有量を低減させる作用がある。この結果、オゾンガスにより改質された後の絶縁膜202の表面には、Ru3(CO)12ガスから生成した活性種の吸着が阻害され、第2のルテニウム膜31bの成膜速度は大幅に低下する。
【0047】
図4を用いて説明したように、下層膜201を構成する金属を含む膜と、絶縁膜202との間には、凹部21の側壁側からのルテニウムの成膜速度よりも、凹部21の底部側からのルテニウムの成膜速度が大きくなる傾向がある。そして、上述のようにオゾンガスを用いた第2のルテニウム膜31bのエッチングの際に、凹部21の側壁面、底面が改質されることになる。この結果、第1のルテニウム膜31を成膜している期間よりも、第2のルテニウム膜31bを成膜している期間の方が、凹部21の側壁側と底部側との間の成膜速度差が大きくなる。
【0048】
特に、オゾンガスによって改質された絶縁膜202の表面からは、第2のルテニウム膜31bの成膜は殆ど進行せず、
図7に示すように、主として底部側ルテニウム31aの上面側から第2のルテニウム膜31bの成膜を進行させる、異方性の高い成膜処理を実施することができる。そして、当該異方性の高い成膜処理により、凹部21内に充填されるように底部側ルテニウム31aの表面から上方側へ向けて第2のルテニウム膜31bが成膜され、ボイドの形成を抑えつつ、凹部21内にルテニウムを埋め込むことができる(
図8)。
【0049】
こうして予め設定した時間、第2のルテニウム膜31bの成膜を実施したら、Ru3(CO)12ガス、COガスの供給を停止し、ウエハWの加熱を停止する。次いで、処理位置から受け渡し位置へと載置台12を降下させ、搬入時とは反対の動作により処理容器110からウエハWを搬出する。そして、不図示の真空搬送室などを介して搬送し、元のキャリアへ処理済みのウエハWを収容する。
【0050】
本実施の形態に係る成膜装置1によれば、凹部21に埋め込まれるルテニウム(第1のルテニウム膜31、第2のルテニウム膜31b)の成膜を2段階に分けている。そして、これらの成膜の間にオゾンガスを用いて第1のルテニウム膜31の一部をエッチング処理により除去する。これらの処理により、ボイドの形成を抑えつつ、凹部21内にルテニウムを埋め込むことができる。
【0051】
ここで、例えば第1のルテニウム膜31を成膜する前の段階で凹部21にオゾンガスを供給し、絶縁膜202の表面を改質する処理を実施することは、凹部21の底部に露出している絶縁膜202の表面に酸化膜を形成することに繋がってしまう。この結果、凹部21に埋め込まれるルテニウムとの間のコンタクト抵抗を上昇させる要因となるので好ましくない。COR処理やPHT処理により、金属酸化膜が予め除去された絶縁膜202上に第1のルテニウム膜31を積層し、その後、オゾンガスによる底部側ルテニウム31aや絶縁膜202の表面の改質を行うことにより、コンタクト抵抗の増大を抑えつつ、ボイドの形成を抑えたルテニウムの埋め込みを実施することができる。
【0052】
<バリエーション>
ここで、既述の例のように、第1のルテニウム膜31の成膜、オゾンガスによる第1のルテニウム膜31のエッチング、第2のルテニウム膜31bの成膜を共通の加熱温度で実施することは必須の要件ではない。例えば、第1のルテニウム膜31、第2のルテニウム膜31bの成膜と、オゾンガスによる第1のルテニウム膜31のエッチングとの間で、最適な処理温度が相違する場合には、これらの処理におけるウエハWの加熱温度を変更してもよい。また、共通の真空搬送室に対して、各処理を実施するための処理容器を接続し、互いに異なる処理容器内にてこれらの処理を実施してもよい。この場合には、真空搬送室と複数の処理容器を含む構成全体が、本開示のルテニウムを埋め込む装置となる。
【0053】
この他、
図5(a)、(b)を用いて説明した例のごとく、オゾンガスによる第1のルテニウム膜31のエッチングと、水素ガスによる反応生成物32の除去とを交互に繰り返し実施することも必須ではない。例えば、反応生成物32の影響が小さい場合には、所定の時間、オゾンガスによる第1のルテニウム膜31のエッチングをした後、水素ガスによる反応生成物32の除去を1回だけ行ってもよいし、水素ガスの供給を省略して反応生成物32の除去を実施しなくてもよい。
【0054】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【実施例0055】
(実験)ブランケットウエハの表面に、ルテニウム(Ru)膜、シリコン酸化(SiO2)膜などを形成し、オゾンガスによる改質処理を行った前後でのRu膜の成膜速度の変化を測定した。
【0056】
A.実験条件
(参照例)表面にRu膜、SiO2膜、タングステン(W)膜を各々形成したブランケットウエハを準備し、Ru3(CO)12ガスを用いてルテニウム膜の成膜を行った。Ru3(CO)12ガスを35秒間供給する成膜サイクルを2~4回繰り返し、これらのサイクルにおけるRu膜の膜厚を測定することにより、成膜速度の変化を確認した。成膜サイクルにおけるウエハWの加熱温度は150℃である。
(実施例)表面にRu膜、SiO2膜を各々形成したブランケットウエハをオゾンガスで処理した後、参照例と同様の条件でRu膜の成膜を行った。オゾンガスによる処理時のウエハWの加熱温度は150℃である。
【0057】
B.実験結果
図2に参照例の結果を示し、
図3に実施例の結果を示す。各グラフの横軸は、成膜サイクルの実施回数であり、縦軸は成膜されたRu膜の膜厚である。
オゾンガスによる処理を実施しない参照例では、Ru膜上とSiO
2膜(絶縁膜202に対応する)上とでそれぞれの成膜サイクル回数におけるRu膜(第1のルテニウム膜31に対応する)の成膜量に大きな相違はない。また、W膜(下層膜201に対応する)上では、同じ成膜回数(4回)にてRu膜の成膜量は大幅に上昇しているので、下層膜201を構成する金属を含む膜の選択により、成膜速度を向上させることが可能であることが分かる。従って、下層膜201が露出した状態から第1のルテニウム膜31の成膜を開始する場合に、凹部21の側壁側からのルテニウムの成膜速度よりも、底部側からのルテニウムの成膜速度を大きくする効果を発揮する。
【0058】
一方、オゾンガスによる処理を行った後の実施例では、参照例と比較して、SiO2膜上では、それぞれの成膜サイクル回数におけるRu膜の成膜量が低下している。これに対して、Ru膜上では、参照例と比較してRu膜の成膜量が大幅に上昇している。そして、膜厚がゼロの原点を含めると、オゾンガスによる処理を行うことにより、Ru膜(第1のルテニウム膜31に対応する)上のRu膜(第2のルテニウム膜31bに対応する)の成膜は、SiO2膜(絶縁膜202に対応する)上のRu膜の成膜と比較して成膜速度が大幅に上昇すると言える。