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特開2023-118158ジヒドロキシ樹脂、エポキシ樹脂、その製造方法、及びエポキシ樹脂組成物並びに硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118158
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】ジヒドロキシ樹脂、エポキシ樹脂、その製造方法、及びエポキシ樹脂組成物並びに硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/06 20060101AFI20230818BHJP
   C08G 59/22 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
C08G59/06
C08G59/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022020935
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【弁理士】
【氏名又は名称】原 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(72)【発明者】
【氏名】梶 正史
(72)【発明者】
【氏名】スレスタ ニランシ゛ャン
(72)【発明者】
【氏名】大神 浩一郎
【テーマコード(参考)】
4J036
【Fターム(参考)】
4J036AD19
4J036DA01
4J036DB05
4J036DB06
4J036DB11
4J036DB15
4J036DC02
4J036DC03
4J036DC06
4J036DC10
4J036FB07
4J036JA05
4J036JA07
4J036JA08
4J036JA11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】良好な難燃性を有し、かつ耐熱性、耐湿性等にも優れた硬化物を得ることができ、積層、成形、注型、接着等の用途に有用なエポキシ樹脂及びジヒドロキシ化合物を提供することにある。
【解決手段】下記一般式(1)、

(ここで、A、B及びDは特定の芳香族基を示す)
で表されるジヒドロキシ樹脂をエピクロルヒドリンと反応させることで得られるエポキシ樹脂。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるジヒドロキシ樹脂。
【化1】

(ここで、Aは独立してベンゼン、ナフタレン、または下記一般式(2)、
【化2】

(但し、Xは単結合、-CH2-、-O-、-CO-、-S-、-SO2-、-C(CF3)2-、-O-φ-O-を示す。ここでφはフェニレン基を示す。)
で表されるビスフェニレン骨格を有する4価の芳香族基を示し、Bは独立してナフタレン、または下記一般式(3)、
【化3】

(但し、Yは単結合、-CH2-、-O-、-C(CH3)2-を示し、R1、R2は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~9の炭化水素基を示し、mは0~2の数を示す。)
で表される2価の芳香族基を示し、Dは独立にナフタレン、または下記一般式(4)、
【化4】

(但し、Zは単結合、-CH2-、-O-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、フルオレニル基を示し、R3、R4は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~9の炭化水素基を示し、pは0~2の数を示す。)
で表される2価の芳香族基を示し、nは0.1~25の数を表す。)
【請求項2】
下記一般式(5)で表されるエポキシ樹脂。
【化5】

(ここで、A、B、Dおよびnは、式(1)と同義である。)
【請求項3】
請求項1に記載のジヒドロキシ樹脂とエピクロルヒドリンを反応させることを特徴とする請求項2に記載のエポキシ樹脂の製造方法。
【請求項4】
エポキシ樹脂及び硬化剤よりなるエポキシ樹脂組成物において、請求項1に記載のジヒドロキシ樹脂を配合してなるエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
エポキシ樹脂及び硬化剤よりなるエポキシ樹脂組成物において、請求項2に記載のエポキシ樹脂を配合してなるエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
請求項4または5に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性に優れるとともに、難燃性、耐湿性等にも優れた硬化物を与えるエポキシ樹脂、及びそれを用いたエポキシ樹脂組成物並びにその硬化物に関するものであり、プリント配線板、半導体封止等の電気電子分野の絶縁材料、炭素繊維複合材料等の分野で好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
近年、特に先端材料分野の進歩にともない、より高性能なベース樹脂の開発が求められており、耐熱性、耐湿性等の機能向上に加えて、環境面および安全性向上の観点から、難燃性に優れた樹脂の開発が求められている。また、エポキシ樹脂組成物を調整する際の溶剤溶解性等の取扱性の向上も重要な課題となっている。
【0003】
しかしながら、これまで知られているエポキシ樹脂には、これらの要求を十分に満足するものは未だ知られていない。例えば、特許文献1にはスーパーエンプラに分類されるエーテルエーテルケトン構造を持つエポキシ樹脂が提案されているが、成形性に難があるとともに、依然、耐熱性が十分ではなかった。これらの特性を改善するために、特許文献2には、イミド構造を有するビスフェノール化合物を硬化剤としたエポキシ樹脂組成物が提案されているが、樹脂の相溶性および耐熱性の点で十分ではなかった。特許文献3には、溶剤溶解性が改善されたイミド構造を有するエポキシ樹脂が開示されているが、耐熱性の観点で十分に満足するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-46615号公報
【特許文献2】特開平4-328121号公報
【特許文献3】特開2014-132074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、優れた耐熱性、耐湿性を有する硬化物を得ることができ、積層、成形、注型、接着等の用途に有用なジヒドロキシ樹脂、エポキシ樹脂およびその製造方法並びにそれらを用いたエポキシ樹脂組成物、更にはその硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は 下記一般式(1)で表されるジヒドロキシ樹脂である。
【化1】

(ここで、Aは独立してベンゼン、ナフタレン、または下記一般式(2)、
【化2】

(但し、Xは単結合、-CH2-、-O-、-CO-、-S-、-SO2-、-C(CF3)2-、-O-φ-O-を示す。ここでφはフェニレン基を示す。)
で表されるビスフェニレン骨格を有する4価の芳香族基を示し、Bは独立してナフタレン、または下記一般式(3)、
【化3】

(但し、Yは単結合、-CH2-、-O-、-C(CH3)2-を示し、R1、R2は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~9の炭化水素基を示し、mは0~2の数を示す。)
で表される2価の芳香族基を示し、Dは独立にナフタレン、または下記一般式(4)、
【化4】

(但し、Zは単結合、-CH2-、-O-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、フルオレニル基を示し、R3、R4は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~9の炭化水素基を示す。)
で表される2価の芳香族基を示し、nは0.1~25の数を表す。)
【0007】
また、本発明は下記一般式(5)、
【化5】

(ここで、A、B、Dおよびnは、式(1)と同義である。)
で表されるエポキシ樹脂であり、上記一般式(1)で表されるジヒドロキシ樹脂とエピクロルヒドリンを反応させることを特徴とする式(5)で表されるエポキシ樹脂の製造方法である。
【0008】
さらに、本発明は上記一般式(1)のジヒドロキシ樹脂または、上記一般式(5)のエポキシ樹脂を、硬化剤成分中の硬化剤、またはエポキシ樹脂成分中のエポキシ樹脂の必須成分として配合してなるエポキシ樹脂組成物であり、これらのエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のイミド構造を有するジヒドロキシ樹脂またはエポキシ樹脂を必須成分として含むエポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物は、耐熱性、耐湿性等に優れた特長を有し、積層、成形、注型、接着等の用途に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1で得られたジヒドロキシ樹脂AのGPCチャートを示す。
図2】実施例1で得られたジヒドロキシ樹脂AのIRスペクトルを示す。
図3】実施例5で得られたジヒドロキシ樹脂AのGPCチャートを示す。
図4】実施例6で得られたエポキシ樹脂AのGPCチャートを示す。
図5】実施例6で得られたエポキシ樹脂AのIRスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のジヒドロキシ樹脂は、一般式(1)で表される。
【化6】

ここで、Aは独立してベンゼン、ナフタレン、または下記一般式(2)、
【化7】

で表されるビスフェニレン骨格を有する4価の芳香族基を示し、Xは単結合、-CH2-、-O-、-CO-、-S-、-SO2-、-C(CF3)2-、-O-φ-O-を示す。ここでφはフェニレン基を示す。
【0012】
耐熱性の点からは、式(1)のAがベンゼン、または式(2)のXが単結合、-CO-のものが好ましく、硬化剤との相溶性、溶剤溶解性等の観点からは、式(2)のXが-C(CF3)2-、-O-、-SO2-、-O-φ-O-のものが好ましい。
【0013】
式(1)において、Bはナフタレン、または下記一般式(3)、
【化8】

で表される2価の芳香族基を示す。ここで、Yは単結合、-CH2-、-O-、-C(CH3)2-を示し、R1、R2は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~9の炭化水素基を示し、mは0~2の数を示す。
【0014】
耐熱性の点から、Bはナフタレン、または式(3)におけるYが単結合のものが好ましく、エポキシ樹脂との相溶性、溶剤溶解性等の観点からは、Bはナフタレン、または式(3)におけるYは-CH2-、-O-、-C(CH3)2-が好ましい。特に、エポキシ樹脂との相溶性、溶剤溶解性等の観点から、Bがナフタレン、または式(3)においてイミド基が置換する炭素原子に隣接するR1またはR2の少なくともいずれか一方が炭素数1~9の炭化水素基であることが好ましい。望ましいナフタレン骨格としては、1,4-置換体、1,5-置換体、1,6-置換体、2,6-置換体、2,7-置換体等が例示されるが、溶剤溶解性および耐熱性の観点から、1,5-置換体である。また、式(3)の望ましいR1またはR2としては、メチル基、エチル基、フェニル基である。これらの構造とすることにより、その立体障害でイミド環とBの芳香環との平面性が低下し、分子間の配向が阻害されてエポキシ樹脂との相溶性、溶剤溶解性等が向上する。mは0~2の数であるが、好ましくは、0または1である。
【0015】
式(1)において、Dは独立してナフタレン、または下記一般式(4)、
【化9】

で表される2価の芳香族基を示す。ここで、Zは単結合、-CH2-、-O-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、フルオレニル基を示し、R3、R4は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~9の炭化水素基を示し、pは0~2の数を示す。
【0016】
耐熱性の点から、Dはナフタレン、または、式(4)におけるZが単結合、-CO-、フルオレニル基のものが好ましく、エポキシ樹脂との相溶性、溶剤溶解性等の観点から、-CH2-、-O-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、フルオレニル基のものが好ましい。特に、耐熱性および溶剤溶解性の観点から、Dがナフタレン骨格、または式(4)におけるZがフルオレニル基のものが好ましく、さらには式(4)でイミド基が置換した炭素原子に隣接するR3またはR4の少なくともいずれか一つが炭素数1~9の炭化水素基であることが特に好ましい。望ましいナフタレン骨格としては、1,5-置換体であり、式(4)の望ましいR3またはR4としては、メチル基、エチル基、フェニル基である。これらの構造とすることにより、その立体障害でイミド環とDの芳香環との平面性が低下し、分子間の配向が阻害されて硬化剤との相溶性、溶剤溶解性等が向上する。pは0~2の数であるが、好ましくは、1または2である。
【0017】
一般式(1)において、nは繰り返し数であり、0.1から25の数を表す。繰り返し数の異なる複数の化合物の混合物である場合は、nの平均値(Σn/Σ分子数)が0.1から25の範囲にあるものである。好ましいnの値又はその平均値は、適用する用途に応じて異なる。例えば、フィラーの高充填率化が要求される半導体封止材の用途には、低粘度であるものが望ましく、nの値又はその平均値は0.1~15、好ましくは0.5~10、さらに好ましくは1.0~7.0、特に好ましくは1.1~5.0のものである。また、回路材料、繊維強化複合材料等の用途に適用する場合には、フィルム性および靭性付与等の観点から、nの値又はその平均値は3~25、好ましくは5~25、さらに好ましくは8~25のものである。
【0018】
本発明のジヒドロキシ化合物は、重量平均分子量が500~15,000であることが好ましい。低粘度が要求される用途には、500~2,500の範囲であることが望ましく、フィルム性および靭性付与が要求される用途においては、2,000~15,000の範囲にあることが望ましい。また、本発明のジヒドロキシ化合物の水酸基当量は、低粘度が要求される用途には、好ましくは300~3,000g/eq.、より好ましくは350~2,000g/eq.さらに好ましくは400~1,500g/eq.、さらに好ましくは500~1,300g/eq.の範囲である。また、軟化点は、好ましくは120~350℃、より好ましくは150~300℃の範囲である。
【0019】
また、本発明のエポキシ樹脂は、一般式(5)で表される。
【化10】

ここで、A、B、Dおよびnは、式(1)と同義である。
【0020】
本発明のエポキシ樹脂の好ましい重量平均分子量は、600~18,000の範囲であり、より好ましくは600~3,000の範囲である。また、好ましいエポキシ当量は、400~9,000の範囲であり、より好ましくは400~5,000の範囲、さらに好ましくは400~3,000、特に好ましくは500~1,000の範囲である。これより大きいと、粘度および軟化点が高くなり、エポキシ樹脂組成物の調整が困難になるとともに、成形性が低下する。本発明のエポキシ樹脂の好ましい軟化点は、100~350℃、より好ましくは100~280℃の範囲である。また、加水分解性塩素は好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下である。
【0021】
本発明のエポキシ樹脂は、特に限定されるものではないが、一般式(1)で表されるジヒドロキシ樹脂とエピクロルヒドリンを反応させることにより製造することができる。この反応は、通常のエポキシ化反応と同様に行うことができる。
【0022】
例えば、一般式(1)で表されるジヒドロキシ樹脂を過剰のエピクロルヒドリンに溶解した後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の存在下に、50~150℃、好ましくは、60~120℃の範囲で1~10時間反応させる方法が挙げられる。この際、アルカリ金属水酸化物の使用量は、ジヒドロキシ樹脂中の水酸基1モルに対して0.8~2モル、好ましくは0.9~1.2モルの範囲である。また、エピクロルヒドリンはジヒドロキシ樹脂中の水酸基に対して過剰に用いられるが、通常、ジヒドロキシ樹脂中の水酸基1モルに対して、1.5~15モル、好ましくは2~8モルの範囲である。また、反応の際、四級アンモニウム塩等を添加することができる。四級アンモニウム塩としては、たとえばテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド等があり、その添加量としては、ジヒドロキシ化合物に対して、0.1~2.0wt%の範囲が好ましい。これより少ないと四級アンモニウム塩添加の効果が小さく、これより多いと難加水分解性塩素の生成が多くなり、高純度化が困難になる。更には、ジメチルスルホキシド、ジグライム、N-メチルピロリドン等の極性溶媒を用いても良く、その添加量は、ジヒドロキシ樹脂に対して、10~200wt%の範囲が好ましい。これより少ないと添加の効果が小さく、これより多いと容積効率が低下し経済上好ましくない。反応終了後、過剰のエピクロルヒドリンを留去し、残留物をトルエン、メチルイソブチルケトン等の溶剤に溶解、濾過した後、水洗して無機塩を除去し、次いで溶剤を留去することにより目的のエポキシ樹脂を得ることができる。
【0023】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂及び硬化剤よりなり、一般式(1)で表されるジヒドロキシ樹脂、または一般式(5)で表されるエポキシ樹脂を必須成分として配合したものである。
【0024】
一般式(1)で表されるジヒドロキシ樹脂を硬化剤成分の必須成分として配合してなるエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂としては、分子中にエポキシ基を2個以上有する通常のエポキシ樹脂はすべて使用できる。例を挙げれば、ビスフェノールA、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4’-ビフェノール、2,2’-ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン等の2価のフェノール類、あるいは、トリス-(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、フェノールノボラック、o-クレゾールノボラック等の3価以上のフェノール類、又は、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類から誘導されるグルシジルエーテル化物、あるいは上記一般式(5)で表されるエポキシ樹脂等がある。これらのエポキシ樹脂は、1種又は、2種以上を混合して用いることができる。
一般式(1)で表される本発明のジヒドロキシ樹脂を本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化成分の必須成分とする場合、以下に例示する他の硬化剤も混合して用いることができる。この場合、一般式(1)で表されるヒドロキシ樹脂の配合量は、硬化剤成分中、好ましくは5~100wt%の範囲、より好ましくは30~100wt%の範囲、さらに好ましくは50~100wt%の範囲、さらに好ましくは70~100wt%の範囲である。
【0025】
一般式(5)で表されるエポキシ樹脂を必須成分とする場合の硬化剤としては、一般にエポキシ樹脂の硬化剤として知られているものはすべて使用できる。例えば、ジシアンジアミド、多価フェノール類、酸無水物類、芳香族及び脂肪族アミン類等がある。具体的に例示すれば、多価フェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4’-ビフェノール、2,2’-ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール等の2価のフェノール類、あるいは、トリス-(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、フェノールノボラック、o-クレゾールノボラック、ナフトールノボラック、ポリビニルフェノール等に代表される3価以上のフェノール類、更にはフェノール類、ナフトール類又は、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4’-ビフェノール、2,2’-ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール等の2価のフェノール類のホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p-ヒドロキシベンズアルデヒド、p-キシリレングリコール等の縮合剤により合成される多価フェノール性化合物、等があり、酸無水物としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチル無水ハイミック酸、無水ナジック酸、無水トリメリット酸等がある。また、アミン類としては、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、p-キシリレンジアミン等の芳香族アミン類、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族アミン類、あるいは一般式(4)で表されるジヒドロキシ化合物がある。本発明の樹脂組成物には、これら硬化剤の1種又は、2種以上を混合して用いることができる。
一般式(5)で表される本発明のエポキシ樹脂を本発明のエポキシ樹脂組成物の必須成分とする場合、他のエポキシ樹脂を混合して用いることができる。他のエポキシ樹脂としては、前記一般式(1)で表されるジヒドロキシ樹脂を硬化成分の必須成分とする場合のエポキシ樹脂の例示化合物と同じであり、例示されたエポキシ樹脂の1種又は、2種以上を混合して用いることができる。この場合、一般式(5)で表されるエポキシ樹脂の配合量は、エポキシ樹脂成分中、好ましくは5~100wt%の範囲、より好ましくは10~70%の範囲、さらに好ましくは20~50%の範囲である。
【0026】
エポキシ樹脂と硬化剤の配合比率は、エポキシ基と硬化剤中の官能基が当量比で0.8~1.5の範囲であることが好ましい。この範囲外では硬化後も未反応のエポキシ基、又は硬化剤中の官能基が残留する可能性がある。
一般式(5)で表されるエポキシ樹脂と硬化剤の配合比率は、重量比で、0.2~1.0の範囲が好ましい。
【0027】
本発明のエポキシ樹脂組成物中には、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリウレタン、石油樹脂、インデンクマロン樹脂、フェノキシ樹脂等のオリゴマー又は高分子化合物を適宜配合してもよいし、無機充填剤、顔料、難然剤、揺変性付与剤、カップリング剤、流動性向上剤、等の添加剤を配合してもよい。無機充填剤としては、例えば、球状あるいは、破砕状の溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ粉末、アルミナ粉末、ガラス粉末、又はマイカ、タルク、炭酸カルシウム、アルミナ、水和アルミナ、等が挙げられ、顔料としては、有機系又は、無機系の体質顔料、鱗片状顔料等がある。揺変性付与剤としては、シリコン系、ヒマシ油系、脂肪族アマイドワックス、酸化ポリエチレンワックス、有機ベントナイト系、等を挙げることができる。
【0028】
本発明のエポキシ樹脂組成物中には、従来より公知の硬化促進剤を用いることができる。例を挙げれば、アミン類、イミダゾール類、有機ホスフィン類、ルイス酸等がある。添加量としては、通常、エポキシ樹脂100重量部に対して、0.2~5重量部の範囲である。また更に必要に応じて、本発明のエポキシ樹脂組成物には、カルナバワックス、OPワックス等の離型剤、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のカップリング剤、カーボンブラック等の着色剤、三酸化アンチモン等の難燃剤、シリコンオイル等の低応力化剤、ステアリン酸カルシウム等の滑剤等を使用できる。
【0029】
本発明の硬化物は、上記エポキシ樹脂組成物を注型、圧縮成形、トランスファー成形等の方法により、成形加工して得ることができる。成形する際の温度は、通常、120~280℃の範囲である。
【実施例0030】
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明を具体的に説明する。
実施例1(ジヒドロキシ樹脂Aの製造)
セパラブルフラスコに4,4’-オキシジフタル酸二無水物31.7g(0.10モル)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル10.2g(0.05モル)、5-アミノ-1-ナフトール16.8g(0.10モル)をN-メチルピロリドン(NMP)200mLに溶解し、80℃にて2時間反応させた。反応液にトルエン120mLを加えて昇温しながら、共沸により生成した水を除いた。その後、160℃に昇温し3時間反応を行った。この間、生成する水は系外に除いた。常温に冷却した後、蒸留水1Lを加えて、析出物をろ過により回収した後、水洗、乾燥を行い、粉末状の生成物52gを得た(ジヒドロキシ樹脂A)。水酸基当量は820g/eq.、軟化点は180℃であった。GPC測定から、重量平均分子量は1,670、数平均分子量は1,070であった。チャートを図1、赤外吸収スペクトルを図2に示す。得られた樹脂の構造は、下式(6)であり、GPC測定からnの平均値は1.5であった。
【化11】

ここでGPC測定は、装置:HLC-8320(東ソー(株)製)及びカラム:TSKgel SuperHZ2500×2本及びTSKgel SuperHZ2000×2本(何れも東ソー(株)製)を用い、溶媒:テトラヒドロフラン(THF)、流速:0.35ml/分、温度:40℃、検出器:RIの条件で行った。また、水酸基当量は、塩化アセチル溶液中で、水酸化カリウムによる電位差滴定を行うことにより測定した。得られた樹脂のシクロペンタノンへの溶解度は20以上であった。赤外吸収スペクトルは日本分光製、FT/IR-6100型赤外吸収分析計を用いてKBr錠剤法により測定した。
【0031】
実施例2(ジヒドロキシ樹脂Bの製造)
3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物53.7g(0.150モル)、1,5-ジアミノナフタレン12.2g(0.075モル),4-アミノ-m-クレゾール18.9g(0.150モル)を用いて、実施例1と同様の反応を行い、粉末状の生成物79gを得た(ジヒドロキシ樹脂B)。水酸基当量は642g/eq.、軟化点は273℃であった。GPC測定から、重量平均分子量は1,500、数平均分子量は1,090であった。得られた樹脂の構造は、下式(7)であり、GPC測定からnの平均値は1.3であった。
【化12】

得られた樹脂のNMPへの溶解度は20以上であった。
【0032】
実施例3(ジヒドロキシ樹脂Cの製造)
4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物31.7g(0.070モル)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル7.2g(0.035モル),4-アミノ-m-クレゾール8.8g(0.070モル)を用いて、実施例1と同様の反応を行い、粉末状の生成物36gを得た(ジヒドロキシ樹脂C)。水酸基当量は657g/eq.、軟化点は155℃であった。GPC測定から、重量平均分子量は1,900、数平均分子量は1,270であった。得られた樹脂の構造は、下式(8)であり、GPC測定からnの平均値は1.3であった。
【化13】

得られた樹脂のシクロペンタノンへの溶解度は20以上であった。
【0033】
実施例4(ジヒドロキシ樹脂Dの製造)
4,4’-オキシジフタル酸二無水物38.0g(0.120モル)、9,9-ビス(4-アミノ-3-メチルフェニル)フルオレン23.1g(0.060モル),4-アミノ-m-クレゾール15.1g(0.120モル)を用いて、実施例1と同様の反応を行い、粉末状の生成物70gを得た(ジヒドロキシ樹脂D)。水酸基当量は712g/eq.、軟化点は280℃であった。GPC測定から、重量平均分子量は2,020、数平均分子量は1,240であった。得られた樹脂の構造は、下式(9)であり、GPC測定からnの平均値は1.7であった。
【化14】

得られた樹脂のシクロペンタノンへの溶解度は20以上であった。
【0034】
実施例5(ジヒドロキシ樹脂Eの製造)
4,4’-オキシジフタル酸二無水物44.3g(0.140モル)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル21.5g(0.105モル),4-アミノ-m-クレゾール8.8g(0.070モル)を用いて、実施例1と同様の反応を行い、粉末状の生成物68gを得た(ジヒドロキシ樹脂E)。水酸基当量は1,228g/eq.、軟化点は300℃以上であった。GPC測定から、重量平均分子量は4,290、数平均分子量は2,350であった。GPCチャートを図3に示す。得られた樹脂の構造は、下式(10)であり、GPC測定からnの平均値は4.5であった。
【化15】

得られた樹脂のNMPへの溶解度は10であった。
【0035】
実施例6(エポキシ樹脂Aの合成)
実施例1で得たジヒドロキシ樹脂A24gをエピクロルヒドリン90g及びNMP90gに溶解し、減圧下(約130mmHg)、65℃にて48.6%水酸化ナトリウム水溶液4.8gを4時間かけて滴下した。この間、生成する水はエピクロルヒドリンとの共沸により系外に除き、留出したエピクロルヒドリンは系内に戻した。反応後、エピクロルヒドリンを減圧留去した後、反応液を大量の蒸留水に滴下した。生成物のろ過、水洗を行った後、乾燥し、黄褐色のエポキシ樹脂21gを得た(エポキシ樹脂A)。GPC測定から、重量平均分子量は1,340、数平均分子量は950であった。エポキシ当量は980g/eq.、軟化点は145℃であった。得られた樹脂のシクロペンタノンへの溶解度は20以上であった。GPCチャートを図4、赤外吸収スペクトルを図5に示す。
ここでエポキシ当量は、臭化テトラエチルアンモニウムの酢酸溶液中で、過塩素酸による電位差滴定を行うことにより測定した。加水分解性塩素は、樹脂試料0.5gを1,4-ジオキサン30mlに溶解させたものを1N-KOH/メタノール溶液5mlで30分間煮沸還流したものを、硝酸銀溶液で電位差滴定を行うことにより求めた。
【0036】
実施例7(エポキシ樹脂Bの合成)
実施例2で得たジヒドロキシ化合物B30g、エピクロルヒドリン130g、NMP130g、48.6%水酸化ナトリウム水溶液7.7gを用いて実施例6と同様に反応を行い、茶白色のエポキシ樹脂32gを得た(エポキシ樹脂B)。GPC測定から、重量平均分子量は1,200、数平均分子量は940であった。エポキシ当量は710g/eq.、軟化点は266℃であった。得られた樹脂のシクロペンタノンへの溶解度は20以上であった。
【0037】
実施例8~12及び比較例1~4
実施例3~5で合成した樹脂(ジヒドロキシ樹脂C~E)、実施例6、7で合成したエポキシ樹脂(エポキシ樹脂A、B)、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂C:日鉄ケミカル&マテリアル製、YSLV-80DE、エポキシ当量163g/eq.)、ビフェニル型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂D:三菱化学製、YX-4000H、エポキシ当量193)、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル(硬化剤A:水酸基当量101g/eq.)、フェノールノボラック(硬化剤B;アイカ工業製、BRG-557、水酸基当量104、軟化点83℃)を用い、硬化促進剤として
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(TPP)を用いて、表1に示す配合で樹脂組成物とした。
これを用いて成形(180℃、5分)した後、ポストキュア(180℃、4時間)を行って試験片を得て、種々の物性試験に供した。試験方法は、以下のとおり。結果を表1に示す。
【0038】
[評価]
(1)ガラス転移温度(Tg)、線膨張係数
日立ハイテクサイエンス製TMA7100型熱機械測定装置を用いて、昇温速度10℃/分にて測定した。
(2)熱分解開始温度、残炭率
日立ハイテクサイエンス製TG/DTA7300型熱重量測定装置により、窒素気流下、昇温速度10℃/分の条件で測定し、10wt%重量減少温度を熱分解開始温度とし、残炭率は700℃における重量残存率とした。
(3)吸水率
直径50mm、厚さ3mmの円盤を成形し、ポストキュア後、85℃、相対湿度85%の条件で100時間吸湿させた後の重量変化率とした。
【0039】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5