(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118487
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】プログラム、情報処理システム、端末装置、出力方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/12 20060101AFI20230818BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20230818BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
G06F3/12 367
G06F3/12 392
G06F3/12 304
G06F3/12 387
B41J29/38 201
H04N1/00 127B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021455
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】久保 直彦
【テーマコード(参考)】
2C061
5C062
【Fターム(参考)】
2C061AP01
2C061AP07
2C061CL10
2C061HN05
2C061HN15
2C061HP06
2C061HQ01
5C062AA02
5C062AA05
5C062AA12
5C062AA14
5C062AA35
5C062AA36
5C062AB20
5C062AB22
5C062AB23
5C062AB38
5C062AB40
5C062AB42
5C062AC04
5C062AC05
5C062AC22
5C062AC34
(57)【要約】
【課題】出力装置が対応する出力方法で出力することができるプログラムを提供すること。
【解決手段】本発明は、端末装置10を、ジョブの出力方法に関する対応情報を出力装置30から取得する出力方法取得部と、前記出力方法取得部が取得した対応情報に基づいて、前記出力装置が対応している前記出力方法によるジョブの出力要求を前記出力装置に送信する通信部、として機能させるためのプログラムを提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置を、
ジョブの出力方法に関する対応情報を出力装置から取得する出力方法取得部と、
前記出力方法取得部が取得した対応情報に基づいて、前記出力装置が対応している前記出力方法によるジョブの出力要求を前記出力装置に送信する通信部、
として機能させるためのプログラム。
【請求項2】
前記出力方法取得部は、予め設定されている優先順位に基づいて、前記出力方法に関する前記対応情報を前記出力装置から順番に取得し、
取得した前記出力方法に前記出力装置が対応していない場合、前記出力方法取得部は、次に優先順位が高い、前記出力方法に関する前記対応情報を前記出力装置から取得する請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記出力装置が、前記端末装置から受信したジョブの識別情報を出力システムに送信し、前記出力システムから前記ジョブの識別情報に対応付けられている前記ジョブを取得し、該ジョブを印刷する第一の出力方法に対応している場合、
前記通信部は、前記出力システムから受信した前記ジョブの識別情報及び前記ジョブの出力要求を前記出力装置に送信することを特徴とする請求項1又は2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記出力装置が、前記第一の出力方法に対応していない場合、
前記出力方法取得部は、前記出力装置のメーカーが独自に有する第二の出力方法に対応しているかを前記出力装置に問い合わせ、
前記出力装置が前記第二の出力方法に対応している場合、前記通信部は、前記出力システムから受信した前記ジョブの文書データ及び出力要求を前記出力装置に送信することを特徴とする請求項3に記載のプログラム。
【請求項5】
前記出力装置が、前記第二の出力方法に対応していない場合、
前記出力方法取得部は、前記出力装置が汎用的な第三の出力方法に対応しているかを前記出力装置に問い合わせ、
前記出力装置が前記第三の出力方法に対応している場合、前記通信部は、前記出力システムから受信した前記ジョブの文書データ及び出力要求を前記出力装置に送信することを特徴とする請求項4に記載のプログラム。
【請求項6】
前記出力方法取得部は、前記出力装置が対応している全ての前記出力方法に関する前記対応情報を取得し、
前記端末装置を、
予め設定されている優先順位により前記出力装置に要求する前記出力方法を決定する出力方法決定部として機能させることを特徴とする請求項1に記載のプログラム。
【請求項7】
前記端末装置を、
前記出力方法取得部が取得した、前記出力装置が対応している前記出力方法の一覧を表示する表示制御部と、
前記出力方法の一覧から、前記出力装置に要求する前記出力方法の選択を受け付ける操作受付部、
として機能させることを特徴とする請求項6に記載のプログラム。
【請求項8】
ユーザーの識別情報に対応付けられている前記ジョブの一覧を出力システムから受信し、表示した前記ジョブの一覧から、前記出力装置に出力を要求する前記ジョブの選択を受け付けることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項9】
前記出力方法取得部は、前記第一の出力方法及び前記第二の出力方法に対応しているかを前記出力装置に問い合わせる場合、近距離無線通信を使用し、
前記出力装置が、前記第二の出力方法に対応していない場合、
前記出力方法取得部は、近距離無線通信からWi-Fiに切り替えて、前記出力装置が前記第三の出力方法に対応しているかを前記出力装置に問い合わせることを特徴とする請求項5に記載のプログラム。
【請求項10】
端末装置と出力装置とが通信できる情報処理システムであって、
前記端末装置が、
ジョブの出力方法に関する対応情報を出力装置から取得する出力方法取得部と、
前記出力方法取得部が取得した対応情報に基づいて、前記出力装置が対応している前記出力方法によるジョブの出力要求を前記出力装置に送信する通信部と、を有し、
前記出力装置が、
前記端末装置から受信した前記ジョブの出力要求に応じて、前記端末装置から受信した前記出力方法により前記ジョブを実行することを特徴とする情報処理システム。
【請求項11】
ジョブの出力方法に関する対応情報を出力装置から取得する出力方法取得部と、
前記出力方法取得部が取得した対応情報に基づいて、前記出力装置が対応している前記出力方法によるジョブの出力要求を前記出力装置に送信する通信部と、
を有することを特徴とする端末装置。
【請求項12】
端末装置が行う出力方法であって、
出力方法取得部が、ジョブの出力方法に関する対応情報を出力装置から取得するステップと、
通信部が、前記出力方法取得部が取得した対応情報に基づいて、前記出力装置が対応している前記出力方法によるジョブの出力要求を前記出力装置に送信するステップと、
を有することを特徴とする出力方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、情報処理システム、端末装置、及び出力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザーが操作する端末装置から印刷ジョブをネットワーク上の出力システムに送信しておき、ユーザーが任意の出力装置から出力システムの印刷ジョブをダウンロードして印刷するプルプリントサービス(ロケーションフリー印刷、セキュア印刷等ともいう)が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1には、携帯端末から印刷指示したドキュメントを、画像形成装置が出力サービスから取得し、印刷する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、出力装置が対応する出力方法で出力することが行われてないという問題がある。例えば、プルプリントサービスに対応していない出力装置であっても、この出力装置が別の出力方法で出力が可能である場合に、別の出力方法で出力することが行われていない。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、出力装置が対応する出力方法で出力することができるプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑み、本発明は、端末装置を、ジョブの出力方法に関する対応情報を出力装置から取得する出力方法取得部と、前記出力方法取得部が取得した対応情報に基づいて、前記出力装置が対応している前記出力方法によるジョブの出力要求を前記出力装置に送信する通信部、として機能させるためのプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0007】
出力装置が対応する出力方法で出力することができるプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】出力システムに蓄積されている印刷ジョブを出力装置が印刷するまでの流れのうち、端末装置でユーザーが印刷ジョブを選択して、任意の出力装置にプル印刷が可能かどうかを問い合わせる流れの概念図である。
【
図2】出力装置がプル印刷可能な場合に、出力装置が印刷ジョブを印刷する流れを説明する概念図である。
【
図3】出力装置のケイパビリティによるとプル印刷に対応していない場合に、端末装置が改めて別の出力方法における印刷可否を出力装置から取得し、その方法で印刷を行う流れを説明する概念図である。
【
図4】情報処理システムのシステム構成図の一例である。
【
図5】端末装置のハードウェア構成図の一例である。
【
図6】出力システムのハードウェア構成図の一例である。
【
図7】出力装置のハードウェア構成図の一例である。
【
図8】情報処理システムが有する端末装置、出力システム、及び、出力装置の機能をブロックに分けて説明する機能ブロック図の一例である。
【
図9】ユーザーが印刷ジョブを出力システムに登録する処理を説明するシーケンス図の一例である。
【
図10】出力装置がプル印刷できる場合に、出力装置が印刷ジョブを実行し、排紙するまでのシーケンス図である。
【
図11】プル印刷時に端末装置がディスプレイに表示する画面遷移の一例を示す図である。
【
図12】プル印刷時の出力装置の画面遷移例を示す図である。
【
図13】出力装置がプル印刷できない場合に、出力装置がメーカー独自の出力方法で印刷ジョブを実行し、排紙するまでのシーケンス図の一例である。
【
図14】メーカー独自の出力方法による印刷時に端末装置がディスプレイに表示する画面遷移の一例を示す図である。
【
図15】メーカー独自の出力方法による印刷時の出力装置の画面遷移例を示す図である。
【
図16】出力装置がプル印刷できない場合に、出力装置が別の出力方法(Mopria/AirPrintなど)で印刷ジョブを実行し、排紙するまでのシーケンス図の一例である。
【
図17】Mopria/AirPrintなどによる印刷時に端末装置がディスプレイに表示する画面遷移の一例を示す図である。
【
図18】出力装置が対応している出力方法を端末装置が一度に問い合わせ、優先順位にしたがって、出力方法を決定するフローチャート図の一例である。
【
図19】端末装置が表示する出力方法設定画面を示す図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、情報処理システムと情報処理システムが行う出力方法について図面を参照しながら説明する。
【0010】
<本実施例の情報処理システムの概略>
図1は、出力システム50に蓄積されている印刷ジョブを出力装置30が印刷するまでの流れのうち、端末装置10でユーザーが印刷ジョブを選択して、任意の出力装置30にプル印刷が可能かどうかを問い合わせる流れの概要図である。
【0011】
本実施形態の情報処理システム100では、「出力システム(クラウド)に蓄積されている印刷ジョブ(印刷権限が設定されている)」を印刷する機能を提供しているため、「誰が」印刷しようとしているのかを、出力システム50、端末装置10、及び、出力装置30の三者がそれぞれ知る必要がある。このため、クラウド上では、認証サービス101が「誰が(ユーザー)」を一元管理する。
【0012】
また、出力システム50は、各ユーザーの印刷ジョブをクラウド上に蓄積し、ユーザーからの印刷ジョブの投入、印刷ジョブの引き取り要求を受け付ける(印刷サービス102の提供)。ストレージ103は、印刷ジョブの実際の蓄積場所である(ストレージサービスの提供)。
【0013】
1.端末装置10はユーザー個人が占有する専用端末であり、予め該ユーザー自身のユーザーID(ここでは出力システム50が個人を特定するための識別情報)で認証サービス101にログインしている。端末装置10にはユーザーに紐付いたトークン(ユーザーに認可された処理を表す)が発行される。
【0014】
2.認証サービス101にログインしている場合、端末装置10はトークンを用いて、認証サービス101と連携している印刷サービス102から、該ユーザーの印刷ジョブの一覧を参照することができる。印刷ジョブの一覧とは、たとえばファイル名、ジョブID、登録日時、ユーザーID等、印刷ジョブを特定するために必要な情報が、テーブル状にまとめられたものである。
【0015】
3.ユーザーは、印刷サービス102から取得した印刷ジョブの一覧を端末装置10で確認し、印刷したい印刷ジョブを選択する。
【0016】
4.ユーザーは、端末装置10を操作して印刷を実行したい出力装置30を選択する(指示する)。端末装置10は例えば、BLE(Bluetooth Low Energy、近距離無線通信技術。登録商標)を用いて出力装置30と通信する。BLEは一例に過ぎず、端末装置10が二次元コードにより出力装置30のIPアドレス/ポートを取得してもよいし、IPアドレス/ポートを指定したうえでTCP/IP通信などで行ってもよい。同一のネットワーク上であれば、端末装置10は、Bonjourなどの既存技術により出力装置30をサーチしてもよい。
【0017】
5.上記手順により、ユーザーが出力装置30を特定した場合、出力装置30がプル印刷のケイパビリティを有しているかどうかを端末装置10が出力装置30に問い合わせる。ケイパビリティとは、ある出力装置におけるジョブの出力方法に関する対応情報である。ケイパビリティには、出力方法に対応している又はしていない旨が含まれる。
【0018】
図2は、選択された出力装置30がプル印刷可能な場合に、出力装置30が印刷ジョブを印刷する流れを説明する概念図である。
【0019】
1.ユーザーは選択した印刷ジョブの印刷を端末装置10に指示すると、端末装置10が印刷指示(ユーザーID、ジョブID等)を出力装置30に送信する。
【0020】
2.出力装置30は、端末装置10から受信したユーザーIDを指定して、認証サービス101でユーザー認証を行う。
【0021】
3.認証が成功すると、認証サービス101は、印刷サービス102においてユーザーが認証済みであることを示すトークンを発行し、出力装置30に送信する。
【0022】
4.出力装置30は、該当のトークンを用いて、ジョブIDで特定される印刷ジョブを印刷サービス102から取得する。
【0023】
5.出力装置30は、取得した印刷ジョブを実行する。
【0024】
図2の処理1では、端末装置10がパスワード(成りすまし防止のための本人しか知らない暗号)を出力装置30に送信してもよい。セキュリティ向上のためにパスワードではなく認証サービス101が発行したワンショットパスワードを端末装置10が出力装置30に送信してもよい。処理2で出力装置30は、ワンショットパスワードとユーザーIDにより認証を受ける。
【0025】
図3は、出力装置30のケイパビリティによるとプル印刷に対応していない場合に、端末装置10が改めて別の出力方法における印刷可否を出力装置30から取得し、その方法で印刷を行う流れを説明する図である。
図3では、別の出力方法として、Mopria(登録商標。以下略。)とAirPrint(登録商標。以下略。)を例として説明する。Mopriaは、Android(登録商標)で広く普及しているドライバレス印刷方法である。AirPrintはiOS(登録商標)で広く普及しているドライバレス印刷方法である。特に、家庭内の出力装置30はこの汎用的な出力方法であるMopria/AirPrintに対応し始めている。
【0026】
1.出力装置30がプル印刷に対応していない場合、端末装置10は、Mopria/AirPrintでのケイパビリティを出力装置30から取得する。端末装置10は自機のOSに応じた出力方法を問い合わせればよい。ここではMopriaによる印刷が可能であるとする。
【0027】
2.端末装置10は、選択された印刷ジョブの文書データを印刷サービス102から取得する。
【0028】
3.必要に応じ、端末装置10は文書データのファイル形式をMopriaに適した形式に変換する。例えば、Mopria/AirPrintは、PDFに対応している。
【0029】
4.端末装置10は、選択された文書データと印刷設定を出力装置30に送信する。
【0030】
5.出力装置30は、取得した印刷ジョブを取得した印刷設定で実行する。
【0031】
なお、Mopria、AirPrintはあくまでも一例であり、たとえばMicrosoft社の提供するUniversal Printサービス(登録商標)であってもよいし、その他、世の中一般で広く又は一部で知られている汎用的な出力方法であってもよい。
【0032】
また、出力装置30のメーカー等が提供するメーカー独自の出力方法により、端末装置10が出力を試みてもよい。
【0033】
このように、本実施形態の出力システム50は、端末装置10が出力装置30からケイパビリティを取得することで、端末装置10から印刷が可能な出力装置30の範囲を広げることができる。また、ユーザーは端末装置10を操作すればよいので、出力装置30を操作する(触れる)必要がない。一般的なプル印刷では、ユーザーが出力装置30から印刷ジョブを選択するなど、出力装置30に触れる必要がある。
【0034】
<用語について>
印刷ジョブとは印刷を要求された文書データを出力装置30が印刷する際の実行単位となる処理である。印刷ジョブには少なくとも文書データが含まれ、更に印刷設定が含まれる場合がある。画像形成装置のジョブを印刷ジョブというが、その他の機器では機器の機能に応じた名称のジョブが実行される。文書データには、文字だけでなく画像や図形などが含まれてもよいし、画像のみであってもよい。
【0035】
対応情報とは、ジョブの出力方法に関して、出力装置が出力方法に対応している又はしていない旨を含む情報である。本実施形態では、対応情報はケイパビリティという用語で説明される。対応情報は、プル印刷(第一の出力方法の一例)が可能か否か、メーカー独自の出力方法(第二の出力方法の一例)が可能か否か、又は、Mopria/AirPrint(第三の出力方法の一例)が可能か否か含んでよい。
【0036】
プル印刷とは、ユーザーが予めサーバーに登録しておいた印刷ジョブを、出力装置がダウンロードして印刷するサービスである。ユーザーが出力装置の近くにいる状態で印刷物が排紙されるので、印刷物が報知される心配がない。プル印刷には、ユーザーが出力装置で印刷ジョブを選択したり、ジョブIDを入力したりする方法がある。また、ユーザーが端末装置を操作パネルの代わりに使い、印刷ジョブを指示するタッチレスタイプのプル印刷もある。本実施形態では、タッチレスタイプのプル印刷を説明する。プル印刷は、ロケーションフリー印刷、セキュア印刷等と呼ばれる場合がある。
【0037】
<システム構成例>
図4は、本実施例の情報処理システム100のシステム構成図の一例である。情報処理システム100は端末装置10、出力システム50、及び、出力装置30を有している。
【0038】
端末装置10と出力システム50は、ネットワークN1を介して通信する。本実施例のネットワークN1は、3G,4G、5G、LTEなどの公衆回線を利用したネットワークである。公衆回線とは、拠点間を結ぶ通信回線において、不特定のユーザーが物理的に同じ回線を共有して利用する回線である。例えば、携帯電話網、PHS通信網が挙げられる。なお、端末装置10は、Wi-Fiなどの無線LANでアクセスポイントに接続し、インターネットを介して出力システム50と通信することも、有線で通信することも可能である。
【0039】
端末装置10と出力装置30はネットワークN2を介して通信する。本実施例のネットワークN2は、NFC(Near Field Communication)、Bluetooth(登録商標)、Bluetooth(登録商標) Low Energyなどの近距離無線通信を利用したネットワークである。この他、ネットワークN2は、赤外線通信、可視光通信など、比較的近距離で通信するネットワークであればよい。
【0040】
出力装置30と出力システム50はネットワークN3を介して通信する。本実施例のネットワークN3は、出力装置30と出力システム50が設置されている施設などに構築されているLAN、複数のLANを有するWAN、及び、インターネット等が想定される。出力装置30と出力システム50が通信できればよい。ネットワークN3は有線又は無線のどちらで構築されてもよく、また、有線と無線が組み合わされていてもよい。また、出力装置30が、公衆回線に接続して出力システム50と通信してもよい。
【0041】
端末装置10はコンピュータとしての機能を有し、後述するアプリが動作している。アプリは、印刷ジョブを出力システム50に登録したり、印刷ジョブを取得して(ダウンロードして)一覧で表示したりする機能を有している。また、端末装置10は、印刷ジョブを編集又は削除する機能を有していてよい。なお、端末装置10ではこのアプリとは別にユーザーが文書データを作成することを支援したりインターネット上から取得したりするような一般的なアプリも動作する。また、端末装置10で動作するアプリは出力システム50に蓄積されている印刷ジョブを出力装置30に印刷させる機能(出力装置30と通信を開始して印刷ジョブを送信する)を有している。
【0042】
端末装置10は、具体的には、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末、ゲーム機、PDA(Personal Digital Assistant)、デジタルカメラ、ウェアラブルPC(Personal Computer)、PC、ゲーム機などであるがこれらには限られない。
【0043】
出力システム50は、例えばインターネット上の1つ以上の情報処理装置である。ネットワーク上の情報処理装置をサーバーという場合がある。サーバーとは、クライアントからの要求に対して情報や処理結果を提供する機能を果たすコンピュータやソフトウェアである。
【0044】
出力システム50は端末装置10から送信された印刷ジョブを蓄積し、また、出力装置30からの要求に応じて印刷ジョブを出力装置30に送信する。出力システム50は1つ以上の情報処理装置を有する。出力システム50はインターネット上に存在してもよいし、オンプレミスに存在してもよい。インターネット上に存在する場合はクラウドコンピューティングに対応しているとよい。クラウドとは、特定のハードウェア資源を意図しない場合に用いられる用語である。出力システム50はクラウドシステム、サーバシステムなどと呼ばれる場合がある。
【0045】
また、出力システム50は印刷ジョブを保存するためのストレージを有する。このストレージはインターネット上のディスクスペースをユーザーに提供するサービスで使用されるストレージでよい。出力システム50はオンラインストレージと呼ばれる場合もある。出力システム50は、一般ユーザーも企業も利用することができる。企業の場合、自社でファイルサーバ環境を構築する必要がなく、必要な分だけ容量を増減することができる。
【0046】
出力装置30は、印刷ジョブを実行するプリンタ、画像形成装置、画像処理装置、複写機、複合機、又は、MFP(Multi-function Peripheral/Product/Printer)などである。本実施例では、出力装置30はプリンタ機能を有していればよい。
【0047】
また、出力装置30はプリンタ機能以外でデータを出力する機能を有する機器であってもよい。出力装置30は、例えば、プロジェクタ、HUD(Head Up Display)装置、電子黒板、デジタルサイネージなどである。これらの機器の場合、出力装置30は出力システム50から取得した映像、文書、音楽などのデータを出力する(表示、再生など)。
【0048】
この他、出力装置30は通信機能を備えた装置であれば、プリンタ等に限られない。出力装置30は、例えば、産業機械、撮像装置、集音装置、医療機器、ネットワーク家電、自動車(Connected Car)、ノートPC、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、ゲーム機、PDA(Personal Digital Assistant)、デジタルカメラ、ウェアラブルPC又はデスクトップPC等であってもよい。
【0049】
<ハードウェア構成>
続いて、
図5~
図7を用いて情報処理システムのハードウェア構成について説明する。
【0050】
<<端末装置>>
図5は、端末装置10のハードウェア構成図である。
図5に示されているように、端末装置10は、CPU401、ROM402、RAM403、EEPROM404、CMOSセンサ405、撮像素子I/F406、加速度・方位センサ407、メディアI/F409、GPS受信部411を備えている。
【0051】
これらのうち、CPU401は、端末装置10全体の動作を制御する。ROM402は、CPU401やIPL等のCPU401の駆動に用いられるプログラムを記憶する。RAM403は、CPU401のワークエリアとして使用される。EEPROM404は、CPU401の制御にしたがって、端末装置10用のプログラム(アプリ)等の各種データの読み出し又は書き込みを行う。CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ405は、CPU401の制御にしたがって被写体(主に自画像)を撮像して画像データを得る内蔵型の撮像手段の一種である。なお、CMOSセンサは、CCD(Charge Coupled Device)センサ等の撮像手段であってもよい。撮像素子I/F406は、CMOSセンサ405の駆動を制御する回路である。加速度・方位センサ407は、地磁気を検知する電子磁気コンパスやジャイロコンパス、加速度センサ等の各種センサである。メディアI/F409は、フラッシュメモリ等の記録メディア408に対するデータの読み出し又は書き込み(記憶)を制御する。GPS受信部411は、GPS衛星からGPS信号を受信する。
【0052】
また、端末装置10は、遠距離通信回路412、CMOSセンサ413、撮像素子I/F414、マイク415、スピーカ416、音入出力I/F417、ディスプレイ418、外部機器接続I/F(Interface)419、近距離通信回路420、近距離通信回路420のアンテナ420a、及びタッチパネル421を備えている。
【0053】
これらのうち、遠距離通信回路412は、ネットワークN1を介して、他の機器と通信する回路である。CMOSセンサ413は、CPU401の制御にしたがって被写体を撮像して画像データを得る内蔵型の撮像手段の一種である。撮像素子I/F414は、CMOSセンサ413の駆動を制御する回路である。マイク415は、音を電気信号に変える内蔵型の回路である。スピーカ416は、電気信号を物理振動に変えて音楽や音声などの音を生み出す内蔵型の回路である。音入出力I/F417は、CPU401の制御にしたがってマイク415及びスピーカ416との間で音信号の入出力を処理する回路である。ディスプレイ418は、被写体の画像や各種アイコン等を表示する液晶や有機EL(Electro Luminescence)などの表示手段の一種である。外部機器接続I/F419は、各種の外部機器を接続するためのインターフェースである。近距離通信回路420は、NFCやBluetooth(登録商標)等の通信回路である。タッチパネル421は、ユーザーがディスプレイ418を押下することで、端末装置10を操作する入力手段の一種である。
【0054】
また、端末装置10は、バスライン410を備えている。バスライン410は、
図5に示されているCPU401等の各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバスやデータバス等である。
【0055】
<<出力システム>>
図6は、出力システム50のハードウェア構成図である。
図6に示されているように、出力システム50は、コンピュータによって構築されており、
図6に示されているように、CPU501、ROM502、RAM503、HD504、HDD(Hard Disk Drive)コントローラ505、ディスプレイ506、外部機器接続I/F(Interface)508、ネットワークI/F509、バスライン510、キーボード511、ポインティングデバイス512、光学ドライブ514、メディアI/F516を備えている。
【0056】
これらのうち、CPU501は、出力システム50全体の動作を制御する。ROM502は、IPL等のCPU501の駆動に用いられるプログラムを記憶する。RAM503は、CPU501のワークエリアとして使用される。HD504は、プログラム等の各種データを記憶する。HDDコントローラ505は、CPU501の制御にしたがってHD504に対する各種データの読み出し又は書き込みを制御する。ディスプレイ506は、カーソル、メニュー、ウィンドウ、文字、又は画像などの各種情報を表示する。外部機器接続I/F508は、各種の外部機器を接続するためのインターフェースである。この場合の外部機器は、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリやプリンタ等である。ネットワークI/F509は、ネットワークN1,N3を利用してデータ通信をするためのインターフェースである。バスライン510は、
図6に示されているCPU501等の各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバスやデータバス等である。
【0057】
また、キーボード511は、文字、数値、各種指示などの入力のための複数のキーを備えた入力手段の一種である。ポインティングデバイス512は、各種指示の選択や実行、処理対象の選択、カーソルの移動などを行う入力手段の一種である。光学ドライブ514は、着脱可能な光記録媒体に対する各種データの読み出し又は書き込みを制御する。なお、光記録媒体は、CD、DVD、Blu-Ray(登録商標)等でよい。メディアI/F516は、フラッシュメモリ等の記録メディア515に対するデータの読み出し又は書き込み(記憶)を制御する。
【0058】
<<出力装置>>
図7は、出力装置30のハードウェア構成図である。
図7では出力装置30として画像形成装置が想定されている。
図7に示されているように、出力装置30は、コントローラ910、近距離通信回路920、エンジン制御部930、操作パネル940、ネットワークI/F950を備えている。
【0059】
これらのうち、コントローラ910は、コンピュータの主要部であるCPU901、システムメモリ(MEM-P)902、ノースブリッジ(NB)903、サウスブリッジ(SB)904、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)906、記憶部であるローカルメモリ(MEM-C)907、HDDコントローラ908、及び、記憶部であるHD909を有し、NB903とASIC906との間をAGP(Accelerated Graphics Port)バス921で接続した構成となっている。
【0060】
これらのうち、CPU901は、出力装置30の全体制御を行う制御部である。NB903は、CPU901と、MEM-P902、SB904、及びAGPバス921とを接続するためのブリッジであり、MEM-P902に対する読み書きなどを制御するメモリコントローラと、PCI(Peripheral Component Interconnect)マスタ及びAGPターゲットとを有する。
【0061】
MEM-P902は、コントローラ910の各機能を実現させるプログラムやデータの格納用メモリであるROM902a、プログラムやデータの展開、及びメモリ印刷時の描画用メモリなどとして用いるRAM902bとからなる。なお、RAM902bに記憶されているプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD、DVD、Blu-Ray(登録商標)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0062】
SB904は、NB903とPCIデバイス、周辺デバイスとを接続するためのブリッジである。ASIC906は、画像処理用のハードウェア要素を有する画像処理用途向けのIC(Integrated Circuit)であり、AGPバス921、PCIバス922、HDDコントローラ908及びMEM-C907をそれぞれ接続するブリッジの役割を有する。このASIC906は、PCIターゲット及びAGPマスタ、ASIC906の中核をなすアービタ(ARB)、MEM-C907を制御するメモリコントローラ、ハードウェアロジックなどにより画像データの回転などを行う複数のDMAC(Direct Memory Access Controller)、並びに、スキャナ部931及びプリンタ部932との間でPCIバス922を介したデータ転送を行うPCIユニットとからなる。なお、ASIC906は、USB(Universal Serial Bus)のインターフェースや、IEEE1394(Institute of Electrical and Electronics Engineers 1394)のインターフェースを有していてもよい。
【0063】
MEM-C907は、コピー用画像バッファ及び符号バッファとして用いるローカルメモリである。HD909は、画像データの蓄積、印刷時に用いるフォントデータの蓄積、フォームの蓄積を行うためのストレージである。HD909は、CPU901の制御にしたがってHD909に対するデータの読出又は書込を制御する。AGPバス921は、グラフィック処理を高速化するために提案されたグラフィックスアクセラレータカード用のバスインタフェースであり、MEM-P902に高スループットで直接アクセスすることにより、グラフィックスアクセラレータカードを高速にすることができる。
【0064】
また、近距離通信回路920には、近距離通信回路のアンテナ920aが備わっている。近距離通信回路920は、NFC、Bluetooth(登録商標)等の通信回路である。
【0065】
更に、エンジン制御部930は、スキャナ部931及びプリンタ部932によって構成されている。また、操作パネル940は、現在の設定値や選択画面等を表示させ、操作者からの入力を受け付けるタッチパネル等のパネル表示部940a、並びに、濃度の設定条件などの画像形成に関する条件の設定値を受け付けるテンキー及びコピー開始指示を受け付けるスタートキー等からなるハードキー940bを備えている。コントローラ910は、出力装置30全体の制御を行い、例えば、描画、通信、操作パネル940からの入力等を制御する。スキャナ部931又はプリンタ部932には、誤差拡散やガンマ変換などの画像処理部分が含まれている。
【0066】
なお、出力装置30は、操作パネル940のアプリケーション切り替えキーにより、ドキュメントボックス機能、コピー機能、プリンタ機能、及びファクシミリ機能を順次に切り替えて選択することが可能となる。出力装置30は、ドキュメントボックス機能の選択時にはドキュメントボックスモードとなり、コピー機能の選択時にはコピーモードとなり、プリンタ機能の選択時にはプリンタモードとなり、ファクシミリモードの選択時にはファクシミリモードとなる。
【0067】
また、ネットワークI/F950は、ネットワークN3を利用してデータ通信をするためのインターフェースである。近距離通信回路920及びネットワークI/F950は、PCIバス922を介して、ASIC906に電気的に接続されている。
【0068】
<情報処理システムの機能について>
続いて、
図8を参照して情報処理システム100が提供する機能について説明する。
図8は、情報処理システム100が有する端末装置10、出力システム50、及び、出力装置30の機能をブロックに分けて説明する機能ブロック図の一例である。
【0069】
<<端末装置の機能について>>
端末装置10は第一通信部11、ジョブ登録部12、第一表示制御部13、第一近距離無線通信部14、ジョブ一覧取得部15、第一操作受付部16、出力方法取得部17、出力要求部18、文書データ取得部19、及び、出力方法決定部20を有する。端末装置10が有するこれら各機能部は、
図5に示された各構成要素のいずれかが、EEPROM404からRAM403に展開されたプログラム(アプリ又はWebブラウザ)に従ったCPU401からの命令により動作することで実現される機能又は手段である。
【0070】
第一通信部11は、ネットワークN1に接続し、第一記憶部1000に記憶されている登録先情報23を使用して、出力システム50と通信を行う。登録先情報23は、印刷ジョブの登録先を示す情報である。詳細は表1で説明する。上記のように、第一通信部11は、公衆回線(3G/4G/LTEなど)や無線LAN等に接続し、印刷ジョブを出力システム50に送信する。なお、無線に限定されることはなく有線LANなどを経由して送信してもよい。また、第一通信部11は印刷ジョブの一覧や文書データを出力システム50から受信する。
【0071】
ジョブ登録部12は、文書データを出力装置30が印刷するための印刷ジョブとして出力システム50に送信する。印刷ジョブが文書データ+印刷設定とすると、ジョブ登録部12はユーザーが設定した印刷設定又はデフォルトの印刷設定を文書データと共に送信する。ただし、本実施例では、端末装置10が出力システム50に送信する段階で印刷ジョブと称するものの、これは説明を容易にするためであり、端末装置10は単に文書データのみを印刷ジョブとして出力システム50に送信してもよい。この場合は、印刷時に端末装置10又は出力装置30にユーザーが印刷設定するか、又は、デフォルトの印刷設定が用いられる。
【0072】
ジョブ一覧取得部15は、第一通信部11を介してトークンを出力システム50に送信し、出力システム50からトークンで特定されるユーザーに対応づけられている印刷ジョブの一覧を取得する。
【0073】
第一表示制御部13は、UI(ユーザインタフェース)となる画面の生成及びディスプレイ418への表示を行う。端末装置10がアプリを実行する場合、予め決まっているレイアウト用の部品に出力システム50から取得した情報を配置して画面を生成する。端末装置10がWebブラウザを実行する場合、出力システム50から送信される画面情報を解析してディスプレイ418に表示する。
【0074】
第一操作受付部16は、端末装置10に対する各種の操作を受け付ける。第一操作受付部16は、例えば、印刷ジョブとして登録する文書データの選択、一括印刷、及び、実行する印刷ジョブの選択などの指示をユーザーから受け付ける。
【0075】
第一近距離無線通信部14は、近距離無線(NFC/Bluetooth(登録商標)/Bluetooth(登録商標) LE、赤外線通信、可視光通信など)により出力装置30と通信を行う。第一近距離無線通信部14は、QRコード(登録商標)のようなバーコード又は二次元バーコードを出力装置30に読み取らせて情報を送信してもよい。
【0076】
出力方法取得部17は、第一近距離無線通信部14又は第一通信部11を介して、出力装置30から出力方法(プル印刷、メーカー独自の出力方法、Mopria/AirPrintなど)に関するケイパビリティを出力装置30に問い合わせる。出力方法取得部17は、出力装置30の近くの二次元コード(ケイパビリティが含まれる)を読み取ってもよいし、赤外線通信、可視光通信、NFCなどで問い合わせてもよい。
【0077】
出力要求部18は、ケイパビリティに基づいて、出力装置30が対応している出力方法による印刷ジョブ又は文書データの出力を出力装置30に要求する。
【0078】
文書データ取得部19は、ユーザーが印刷ジョブの一覧から選択した文書データを、第一通信部11を介して、出力システム50に要求し、取得する。
【0079】
出力方法決定部20は、例えば出力方法に予め優先順位が決まっており、この優先順位にしたがって、出力方法を問い合わせる順番や、出力装置30に出力要求する出力方法を決定する。
【0080】
また、端末装置10は、
図5に示したEEPROM404,RAM403又はROM402の1つ以上により構成される第一記憶部1000を有している。第一記憶部1000には文書データ記憶部21が構築されると共に、登録先情報23、及び、ジョブ識別情報24が記憶される。このうち文書データ記憶部21にはユーザーが生成した文書データ又はインターネット等から取得した文書データが記憶される。文書データ記憶部21はネットワーク上にあってもよい。ユーザーが選択した文書データは印刷ジョブとして出力システム50に登録される。
【0081】
登録先情報23について表1を用いて説明する。
【0082】
【表1】
表1は、登録先情報23の一例を模式的に示す。登録先情報23は、印刷ジョブの登録先を含む情報である。一例として、登録先情報23は、出力システムID、URL、ユーザー名及びパスワードを有する。出力システムIDは、出力システム50を特定するための情報であり、出力システム50を一意に識別するための情報とも言える。なお、IDとは複数の対象から、ある特定の対象を一意的に区別するために用いられる名称、符号、文字列、数値などの組み合わせをいう。IDは、識別情報と呼ばれる場合がある。
【0083】
URLは、ネットワーク上でアクセス可能なファイルやサービスなどの資源の場所と通信方式を表す情報である。URLは、資源の場所を示すアドレス情報を含んでよい。本実施例では出力システム50のアドレスが含まれる。ユーザー名とパスワードはユーザーが出力システム50にログインするためのログイン情報である。一度、ログインした後は、トークンが保存される場合がある。
【0084】
<<出力システム>>
続いて、出力システム50の機能について説明する。なお、
図8の出力システム50では、認証サービス101、印刷サービス102又はストレージ103を区別せずに記載した。出力システム50は、第三通信部51、印刷ジョブ蓄積処理部52、印刷ジョブ提供部53、及び、認証部54を有する。出力システム50が有するこれら各機能部は、
図6に示された各構成要素のいずれかが、HD504からRAM503に展開されたプログラムに従ったCPU501からの命令により動作することで実現される機能又は手段である。
【0085】
第三通信部51は、ネットワークN1又はN3に接続して、端末装置10及び出力装置30と各種のデータの送受信を行う。本実施例では、第三通信部51は、主に端末装置10から印刷ジョブを受信し、出力装置30に印刷ジョブを送信する。出力システム50はデータセンタなどに存在するので、第三通信部51は高速なLANなどに接続されている。したがって、第三通信部51は、直接、公衆回線に接続しておらず、電話会社のゲートウェイを介して端末装置10と通信する。
【0086】
印刷ジョブ蓄積処理部52は、第三通信部51が端末装置10から受信した印刷ジョブを印刷ジョブ記憶部61に蓄積する。蓄積時に印刷ジョブ蓄積処理部52はジョブ識別情報24を採番して、ファイル名(文書データ名)などと共に保持する。
【0087】
印刷ジョブ提供部53は、ジョブIDを指定した印刷ジョブの要求を第三通信部51が出力装置30から受信した場合、ジョブIDに対応づけられている印刷ジョブを印刷ジョブ記憶部61から取得して、第三通信部51を介して出力装置30に送信する。また、印刷ジョブ提供部53は、ジョブIDを指定した文書データの要求を第三通信部51が端末装置10から受信した場合、ジョブIDに対応づけられている文書データを印刷ジョブ記憶部61から取得して、第三通信部51を介して端末装置10に送信する。印刷ジョブ蓄積処理部52と印刷ジョブ提供部53は上記の印刷サービス102を提供する。
【0088】
認証部54は、端末装置10を操作するユーザーを認証する。認証部54は、例えば、第三通信部51によって受信された認証要求に含まれている認証情報(ユーザーID及びパスワード)が予め保持する認証情報と一致するか否かにより、ユーザーを認証する。なお、認証情報は、ICカードのカード番号、顔や指紋などの生体認証情報等でもよい。また、認証部54は、外部の認証システムやOAUTHなどの認証方法で認証してもよい。認証が成功すると認証部54はユーザーに認可された処理を示すトークンを発行する。認証部54は上記の認証サービス101を提供する。
【0089】
また、出力システム50は、
図6に示したHD504,RAM503又はROM502の1つ以上により構成される第二記憶部5000を有している。第二記憶部5000には印刷ジョブ記憶部61が構築される。表2に印刷ジョブ記憶部61に記憶される情報を示す。
【0090】
【表2】
表2は、印刷ジョブ記憶部61に記憶されている印刷ジョブ情報を模式的に示す。印刷ジョブ情報には、ファイル名、ジョブID、端末装置識別情報、ファイルURL、ファイルサイズ、ユーザーID、及び、登録日時の各項目が登録されている。
【0091】
・ファイル名は、文書データのファイル名である。
【0092】
・ジョブIDは、出力システム50が印刷ジョブごとに採番した、印刷ジョブの識別情報である。
【0093】
・端末装置識別情報は、端末装置10が生成して自機に設定したか、又は、出力システム50が生成して端末装置10に送信した、端末装置10の識別情報である。
【0094】
・ファイルURLは、文書データが蓄積されている場所(ネットワーク上のアドレス)を示す。ファイルパスでもよいし、文書データが印刷ジョブ記憶部61に保存されていてもよい。
【0095】
・ファイルサイズは、文書データのデータサイズである。ファイルサイズは、ユーザーが文書データをダウンロードするか否かを判断する目安にもなる。
【0096】
・ユーザーIDは、印刷ジョブを登録したユーザーの識別情報である。
【0097】
・登録日時は、ユーザーが印刷ジョブを登録した日時である。登録日時は、出力システム50が印刷ジョブの有効期限を判断するための情報にもなる。
【0098】
<<出力装置>>
続いて、出力装置30の機能について説明する。出力装置30は、第二近距離無線通信部31、第二操作受付部32、第二表示制御部33、第二通信部34、印刷ジョブ取得部35、出力部36、及び、認証要求部37を有している。出力装置30が有するこれら各機能部は、
図7に示された各構成要素のいずれかが、HD905からRAM902bに展開されたプログラムに従ったCPU901からの命令により動作することで実現される機能又は手段である。
【0099】
第二近距離無線通信部31は、ネットワークN2に接続し、近距離無線(NFC/Bluetooth(登録商標)/Bluetooth(登録商標) LEなど)により端末装置10と通信する。第二近距離無線通信部31は、自分の存在を示す電波を定期的に周囲に送信している。端末装置10が電波の到達範囲に接近するとこの電波を検出して、端末装置10の第一近距離無線通信部14と第二近距離無線通信部31との間で自動的に通信が開始する。本実施例では、第二近距離無線通信部31は、端末装置10からユーザーID、ワンショットパスワード、印刷設定及びジョブIDを受信する。また、第二近距離無線通信部31が出力方法の問い合わせを受信する場合がある。
【0100】
第二操作受付部32は、出力装置30に対する各種の操作を受け付ける。例えば、ユーザーが手動で印刷ジョブを選択する場合には、印刷ジョブの選択を受け付ける。本実施形態では、ユーザーが出力装置30を直接、操作する状況は生じない。
【0101】
第二表示制御部33は、出力システム50から取得した印刷ジョブを印刷する場合に、印刷ジョブの一覧画面、ユーザーに操作を案内する画面、又は、状況を報知する画面等を操作パネルに表示する。本実施形態では、ユーザーが操作するための画面でなく、状況を報知する画面が表示されうる。
【0102】
第二通信部34は、ネットワークN3を介して出力システム50と各種のデータを送受信する。本実施例では、 第二通信部34は、ユーザーIDとワンショットパスワードを送信してトークンを受信し、トークンとジョブIDを送信して、印刷ジョブを受信する。また、第二通信部34が文書データと印刷設定を受信する場合がある。第二通信部34が出力方法の問い合わせを受信する場合がある。
【0103】
印刷ジョブ取得部35は、第二通信部34を介して、ジョブID(端末装置10から受信する)を出力システム50に送信し、出力システム50からジョブIDに対応づけられている印刷ジョブを取得する。
【0104】
出力部36は、印刷ジョブ取得部35が取得した印刷ジョブを実行することで、文書データを用紙などのシート材に印刷する。印刷することを出力するという場合がある。
【0105】
認証要求部37は、第二通信部34を介して、ユーザーIDとワンショットパスワードを指定して出力システム50に認証要求を送信し、出力システム50からトークンを取得する。ユーザーIDとワンショットパスワードは端末装置10から送信される。
【0106】
<動作手順>
<<印刷ジョブの登録>>
続いて、
図9を参照して、ユーザーが印刷ジョブを出力システム50に登録する処理を説明する。
図9は、ユーザーが印刷ジョブを出力システム50に登録する処理を説明するシーケンス図の一例である。
【0107】
S1:ユーザーは端末装置10で動作するアプリに認証情報(ユーザーIDとパスワード、生体認証情報等)を入力してログインする。第一操作受付部16はログイン操作を受け付ける。
【0108】
S2:第一通信部11は、認証情報を指定して認証要求を出力システム50に送信する。出力システム50の第三通信部51は認証要求を受信する。認証部54は、認証情報による認証が成功すると、ユーザーに認可された処理に対応付けられているトークンを端末装置10に送信する。
【0109】
S3:端末装置10の第一通信部11はトークンを受信し、ログインできたので、第一表示制御部13がメインメニュー等を表示する。なお、ログインはユーザーがアプリを使う際に、一回行えばよい。
【0110】
S4:ユーザーはメインメニューから印刷ジョブを投入するボタンを押下し、更に、印刷ジョブとして登録する文書データを選択する。第一操作受付部16が文書データを受け付ける。
【0111】
S5:ユーザーが印刷ジョブを投入する操作を行うと、第一操作受付部16が受け付ける。
【0112】
S6:第一通信部11は、文書データとトークンを指定して印刷ジョブの投入を出力システム50に要求する。出力システム50の第三通信部51が文書データとトークンを受信し、認証部54がトークンに基づいてユーザーを認証する。印刷ジョブ蓄積処理部52はジョブIDを採番して、文書データを出力装置30が解釈可能なプリンタ言語に変換すると共に、元の文書データと変換後の文書データを印刷ジョブ記憶部61に保存する。
【0113】
なお、
図9では、端末装置10で動作するアプリを通じて印刷ジョブを出力システム50に登録しているが、これは一例であってPCから投入してもよいし、端末装置10が出力システム50に文書データを電子メールすることで登録してもよい。
【0114】
<<プル印刷>>
次に、
図10を参照して、ユーザーが登録した印刷ジョブをプル印刷で出力装置30が印刷する処理を説明する。
図10は、出力装置30がプル印刷できる場合に、出力装置30が印刷ジョブを実行し、排紙するまでのシーケンス図である。
【0115】
S11~S13:ユーザーが、アプリにログインしていない場合は、ログインを行う。ログイン方法は
図9と同様でよい。
【0116】
S14:ユーザーがメニューからプル印刷のボタンを押下する。第一操作受付部16が押下を受け付ける。
【0117】
S15:端末装置10の第一通信部11は、ログイン時に認証部54から受け取っているトークンを用いて、出力システム50に印刷ジョブの一覧を要求する。
【0118】
S16:出力システム50の第三通信部51が印刷ジョブの一覧の要求を受信し、印刷ジョブ提供部53がトークンによりユーザーを識別し、そのユーザーIDに対応付けられている印刷ジョブの一覧を印刷ジョブ記憶部61から取得する。第三通信部51は印刷ジョブの一覧を端末装置10に送信する。印刷ジョブの一覧とは、たとえばファイル名、ジョブID、登録日時、ユーザーID等、印刷ジョブを特定するために必要な情報が、テーブル状にまとめられたものである。印刷ジョブの一覧は、この他、部数、有効期限、サムネイル画像等を含んでもよい。
【0119】
S17:端末装置10の第一通信部11は印刷ジョブの一覧を受信し、第一表示制御部13が表示する。
【0120】
S18:ユーザーが印刷したい印刷ジョブを選択する。第一操作受付部16が選択を受け付ける。
【0121】
S19:ユーザーは、必要に応じて、予め設定されている印刷設定(カラー/モノクロ、印刷部数、両面/片面、集約等)を変更する。第一操作受付部16が変更を受け付ける。
【0122】
S20:ユーザーが印刷スタートをアプリに入力する。第一操作受付部16が入力を受け付ける。
【0123】
S21:これにより、端末装置10の第一近距離無線通信部14が周囲のBluetooth(登録商標)のアドバタイズパケットをサーチする。第一近距離無線通信部14はアドバタイズデータに含まれるサービスUUID(Universally Unique Identifier)が所定のものである場合、出力装置30が見つかったと判断する。複数の出力装置30が見つかった場合、出力装置30の製品名などがリストで表示されるので、ユーザーは所望の出力装置30を選択する。
【0124】
S22:出力方法取得部17は、第一近距離無線通信部14を介して、出力装置30に対しプル印刷が可能か否かのケイパビリティを問い合わせる。ケイパビリティの判断を印刷から開始することは出力方法決定部20により予め決定されている。なお、Bluetooth(登録商標)では、通信に「キャラクタリスティック」と呼ばれるデータ構造が使用される。ただし、Bluetooth(登録商標)以外の通信方法が使用されてもよく、Wi-Fiを用いたTCP/IP通信など他の技術であってもよい。Bluetooth(登録商標)の場合、非接触かつ印刷時に都度の設定を必要としないため、利便性を鑑み代表的な例として記載した。
【0125】
S23:出力装置30の第二近距離無線通信部31は問い合わせを受信し、出力部36からプル印刷の可否を取得する。ここでは、プル印刷が可能だったとして、第二近距離無線通信部31はプル印刷可能を端末装置10に送信する。なお、プル印刷ができない場合には、プル印刷ができない旨を端末装置10が受信できる場合だけでなく、端末装置10が第一近距離無線通信部14で出力装置30と通信できない(無応答)の場合も含む。
【0126】
S24:プル印刷が可能だった場合、出力要求部18は、第一近距離無線通信部14を介して、ユーザーID、ジョブID、ワンショットパスワード及び印刷設定を指定して、出力装置30にプル印刷を要求する。ワンショットパスワードは、一定時間のみ有効な使い捨てのパスワードであり、端末装置10がステップS20の印刷スタートの後、認証部54から取得しておく。
【0127】
S25:出力装置30の第二近距離無線通信部31は印刷要求を受信し、受信したユーザーID、ジョブID、ワンショットパスワード及び印刷設定を指定して、印刷ジョブ取得部35に印刷を依頼する。
【0128】
S26:端末装置10は出力装置30との通信が不要になったので、第一近距離無線通信部14が通信を切断する。
【0129】
S27:印刷要求できたので、端末装置10の第一表示制御部13は送信完了を表示する。
【0130】
S28:印刷ジョブの取得には、要求元(この場合ユーザ)が正規のユーザー本人であるかの認証が必要であり、印刷ジョブ取得部35は、ユーザーIDとワンショットパスワードを認証要求部37に渡してユーザー認証を要求する。
【0131】
S29:認証要求部37はユーザーIDとワンショットパスワードを指定してユーザー認証を出力システム50に要求する。この認証方法は一例に過ぎず、具体的な認証方式については省略する。認証が成功すると、認証要求部37はトークンを取得する。このトークンは、ワンショットパスワードで得られたものなので、
図9で端末装置10が得たトークンとは内容が異なるが、少なくとも印刷ジョブを取得できるトークンである。
【0132】
S30:認証要求部37は印刷ジョブ取得部35にこのトークンを渡す。
【0133】
S31:印刷ジョブ取得部35は、第二通信部34を介して、ジョブIDとトークンを指定して、出力システム50からジョブIDで特定された印刷ジョブを取得する。出力システム50の第三通信部51はジョブIDとトークンを受信し、認証部54がトークンでユーザーを認証すると、印刷ジョブ提供部53がジョブIDに対応付けられている印刷ジョブを印刷ジョブ記憶部61から取得する。第三通信部51が印刷ジョブを出力装置30に送信する。
【0134】
S32:印刷ジョブ取得部35は取得した印刷ジョブと印刷設定を出力部36に渡し、印刷ジョブの実行を要求する。
【0135】
S33:出力部36が印刷ジョブを実行する。ユーザーは印刷結果(排紙された用紙)を取得することができる。
【0136】
図11は、端末装置10がディスプレイに表示する画面遷移の一例を示す。ユーザーは端末装置10を操作してアプリを起動する。これによりメニュー画面300が表示される(
図11(a))。ユーザーはメニュー画面300でファイル送信ボタン301を押下する。これにより、メニュー画面300が印刷ファイル選択画面310に遷移する(
図11(b))。印刷ファイル選択画面310には、
図9のステップS4に示したように、文書データ記憶部21に記憶されている印刷ジョブのリストが表示される。ユーザーは出力システム50に送信する文書データを選択する。ユーザーが文書データを送信する操作を行うと、印刷ファイル選択画面310が送信完了画面320に遷移する(
図11(c))。送信完了画面320はユーザーが完了ボタン322を押下するとメニュー画面300に戻る(
図11(a))。
【0137】
次に、ユーザーがメニュー画面300の印刷ファイル選択ボタン302を押下すると、
図10のステップS17に示したように、メニュー画面300が印刷ジョブ一覧画面330に遷移する(
図11(d))。なお、印刷ジョブの一覧にはジョブIDが含まれている。
【0138】
ユーザーが印刷ジョブ一覧画面330で印刷する印刷ジョブを選択し印刷開始ボタン332を押下する(ステップS20に相当)。これにより、印刷ジョブ一覧画面330が印刷実行画面340に遷移する(
図11(e))。印刷実行画面340は、ステップS27で表示される送信完了に相当する。
【0139】
次に、
図12を参照して、出力装置30側の画面遷移について説明する。
図12は、プル印刷時の出力装置30の画面遷移例である。
【0140】
図12(a)は端末装置10と出力装置30の近距離無線通信部の開始で出力装置30が表示する通信開始画面351である。通信開始画面351を表示する前の出力装置30はアプリの一覧を表示するなどのホーム画面やコピー用の画面などであり、出力装置30の設計によって異なってよい。通信開始画面351では、出力装置30が「携帯端末と通信中です」というメッセージ352を表示している。通信開始画面351の表示中、端末装置10がユーザーID、ジョブID、ワンショットパスワード及び印刷設定を出力装置30に送信している。ユーザーID、ジョブID、ワンショットパスワード及び印刷設定の送信が完了すると、
図12(b)の通信中画面353が表示される。
【0141】
図12(b)は、通信中画面353の一例を示す。通信中画面353では、出力装置30が「出力システム50から印刷ジョブを取得しています」というメッセージ354を表示している。通信中画面353の表示中、出力装置30がユーザーIDとワンショットパスワードで認証を受け、ジョブIDを出力システム50に送信し、印刷ジョブを受信している。印刷ジョブの受信が完了すると、
図12(c)の印刷中画面355が表示される。
【0142】
図12(c)は、印刷中画面355の一例を示す。印刷中画面355では、出力装置30が「印刷中」というメッセージ356を表示している。印刷中画面355の表示中、出力装置30は印刷ジョブを印刷している。出力装置30は、メッセージ356だけでなく印刷中のファイル名を表示してもよい。印刷ジョブの実行(出力)が完了すると、メッセージ356が消去され、ホーム画面等に戻る。
【0143】
<<メーカー独自の出力方法による印刷>>
次に、プル印刷できない出力装置30が、メーカー独自の出力方法で出力する処理を説明する。
図13は、出力装置30がプル印刷できない場合に、出力装置30がメーカー独自の出力方法で印刷ジョブを実行し、排紙するまでのシーケンス図である。なお、
図13の説明では主に
図10との相違を説明する。ステップS41~S53は
図10と同様でよい。ただし、ステップS53では、プル印刷ができない旨を端末装置10が受信する。
【0144】
S54:プル印刷ができない場合、出力方法取得部17は、第一近距離無線通信部14を介して、出力装置30に対しメーカー独自の出力方法による印刷が可能か否かのケイパビリティを問い合わせる。問い合わせ方法はプル印刷の可否の場合と同様でよい。なお、優先順位に基づいて、プル印刷の次にメーカー独自の出力方法を問い合わせることは、出力方法決定部20に予め設定されている。
【0145】
S55:出力装置30の第二近距離無線通信部31は問い合わせを受信し、出力部36からメーカー独自の出力方法の可否を取得する。ここでは、メーカー独自の出力方法が可能だったとして、第二近距離無線通信部31はメーカー独自の出力方法が可能である旨を端末装置10に送信する。なお、出力方法取得部17は、近距離無線通信でなく、Wi-Fiを用いたTCP/IP通信など他の通信方法で問い合わせしてよい。
【0146】
S56:端末装置10は出力装置30との通信が不要になったので、第一近距離無線通信部14が通信を切断する。
【0147】
S57:端末装置10が出力装置30に印刷要求できなかったので、端末装置10の第一表示制御部13は送信失敗を表示する。この場合、第一表示制御部13は、「メーカー独自の出力方法で出力します」等のメッセージを表示するとよい(
図14(a))。
【0148】
S58:プル印刷できない場合、端末装置10の文書データ取得部19は、第一通信部11を介して、選択された印刷ジョブに含まれるジョブIDとトークンを指定して文書データを出力システム50に要求する。出力システム50の第三通信部51はジョブIDとトークンを受信し、認証部54がトークンでユーザーを認証すると、印刷ジョブ提供部53がジョブIDに対応付けられている文書データを印刷ジョブ記憶部61から取得する。第三通信部51が文書データを出力装置30に送信する。
【0149】
S59:端末装置10の第一通信部11が文書データを受信する。文書データ取得部19は必要に応じて、文書データのファイル形式を変換する。例えば、出力装置30が対応しているプリンタ言語がPCLXLならPCLXLベースの印刷データに変換し、PS(Post Script)ならPSベースの印刷データに変換する。ただし変換を出力装置30が行ってもよい。
【0150】
S60:また、出力装置30がプル印刷できない場合、出力装置30の第二近距離無線通信部31は、プル印刷が不可能であるという情報と共に、出力装置30に大容量データを送信するための経路情報を端末装置10に送信しておく。この経路情報とは、Wi-Fiダイレクト又はWi-FiのSSID/暗号化キー、出力装置30のIPアドレス、ポート番号等、TCP/IP通信が可能な経路情報である。ただし、大容量(印刷に必要なファイルを転送するのに十分耐えられる帯域を確保可能な経路)であれば、経路情報は他の経路でもよい。
【0151】
経路情報を受けとった端末装置10の第一通信部11は、経路情報にしたがって、出力装置30に再接続する。端末装置10の第一通信部11は、経路情報で接続したTCP/IP通信で文書データと印刷設定を指定し、メーカー独自の出力方法による印刷要求を出力装置30に送信する。出力装置30の第二通信部34は、文書データと印刷設定を受信する。
【0152】
S61:出力部36が文書データを印刷する。ユーザーは印刷結果(排紙された用紙)を取得することができる。
【0153】
このように、端末装置10は、プル印刷が可能でない出力装置30がメーカー独自の出力方法に対応している場合、メーカー独自の出力方法により印刷できる。
【0154】
図14は、端末装置10がディスプレイに表示する画面遷移の一例を示す。なお、
図14では、
図11(d)からの画面遷移を説明する。ステップS57では、
図14(a)に示すように、出力装置30がプル印刷に対応しておらず、メーカー独自の出力方法に対応しているため、「メーカー独自の出力方法で出力します」というメッセージ111を第一表示制御部13が表示する。
【0155】
次に、ステップS58で端末装置10が出力システム50と通信を開始すると、
図14(b)に示すように、第一表示制御部13が「サーバーから文書データ受信中」等のメッセージ112を表示する。
【0156】
次に、ステップS60で端末装置10が出力装置30に文書データの送信を開始すると、
図14(c)に示すように、第一表示制御部13が「出力装置に文書データ送信中」等のメッセージ113を表示する。送信完了すると、
図14(d)に示すように、第一表示制御部13が「送信完了」等のメッセージ114を表示する。
【0157】
次に、
図15を参照して、出力装置30側の画面遷移について説明する。
図15は、メーカー独自の出力方法による印刷時の出力装置30の画面遷移例である。なお、
図15の説明では主に
図12との相違を説明する。
【0158】
まず、
図15(a)については、端末装置10と出力装置30が、近距離無線通信が可能である場合を想定したため、
図12(a)と同様でよい。しかし、プル印刷できない場合、端末装置10はユーザーID、ジョブID、ワンショットパスワード及び印刷設定を出力装置30に送信しない。このため、近距離無線通信が切断されると、通信開始画面351が終了する。その後、端末装置10が出力システム50から取得した文書データの出力装置30への送信を開始すると、
図15(b)の通信中画面360が表示される。
【0159】
図15(b)は、通信中画面360の一例を示す。通信中画面360では、出力装置30が「端末装置から文書データを受信しています」というメッセージ361を表示している。通信中画面360の表示中、出力装置30が端末装置10から文書データを受信している。文書データの受信が完了すると、
図15(c)の印刷中画面355が表示される。印刷中画面355は
図12(c)と同様でよい。
【0160】
<<プル印刷とは別の出力方法(Mopria/AirPrintなど)による印刷>>
次に、プル印刷できない出力装置30が、別の出力方法(Mopria/AirPrintなど)で出力する処理を説明する。
図16は、出力装置30がプル印刷できない場合に、出力装置30が別の出力方法(Mopria/AirPrintなど)で印刷ジョブを実行し、排紙するまでのシーケンス図である。なお、
図16の説明では主に
図13との相違を説明する。ステップS71~S85は
図13のS41~S55と同様でよい。
【0161】
S86:プル印刷及びメーカー独自の出力方法による印刷ができない場合、出力方法取得部17は、第一通信部11を介して、出力装置30に対しMopria/AirPrintによる印刷が可能か否かのケイパビリティを問い合わせる。なお、優先順位に基づいて、メーカー独自の出力方法の次にMopria/AirPrintの出力方法を問い合わせることは、出力方法決定部20に予め設定されている。
【0162】
また、端末装置10のOSによって、Mopria又はAirPrintのどちらに対応しているか決まるので、出力方法取得部17は、OSに応じてMopria又はAirPrintのどちらかを問い合わせればよい。出力装置30の第二通信部34は問い合わせを受信し、出力部36からMopria/AirPrintによる印刷の可否を取得し、端末装置10に送信する。
【0163】
なお、ステップS86で近距離無線通信が使用されていないのは、プル印刷及びメーカー独自の出力方法による印刷ができない出力装置30の場合、ユーザーが使用しようとした出力装置30が家庭等に配置されており、出力装置30がBluetooth(登録商標)に対応していないことがあるためである。一方、出力装置30が家庭等に配置されている場合、端末装置10はWi-Fi に接続できる場合が多い。このため、端末装置10は同一ネットワーク内の機器サーチ(出力装置30の検索)や、IPアドレスの指定などによって出力装置30と通信できる。
【0164】
したがって、ステップS81~S85の近距離無線通信によるケイパビリティの取得は、端末装置10が出力装置30と一切通信できない場合も含んでいる。出力方法取得部17は、プル印刷及びメーカー独自の出力方法による印刷ができない場合、近距離無線通信からWi-Fiに切り替えて、Mopria/AirPrintによる印刷が可能か否かのケイパビリティを問い合わせる。ステップS82で近距離無線通信できないことが分かった場合、その時点で、出力方法取得部17は、近距離無線通信でなく、Wi-Fiを用いたTCP/IP通信など他の通信方法で問い合わせしてよい。あるいは、プル印刷の可否を問い合わせる時点で、出力方法取得部17が、近距離無線通信でなく、Wi-Fiを用いたTCP/IP通信など他の通信方法で問い合わせしてよい。
【0165】
また、出力装置30が家庭内にあるとは限らないので、近距離無線通信が可能であれば第一近距離無線通信部14が経路情報を取得して、出力方法取得部17が第一通信部11を介して、Mopria/AirPrintによる印刷が可能か否かのケイパビリティを問い合わせてよい。
【0166】
続くステップS87、S88は
図13のステップS56,S57と同様でよい。
【0167】
S89:Mopria/AirPrintによる印刷が可能な場合、端末装置10の文書データ取得部19は、第一通信部11を介して、選択された印刷ジョブに含まれるジョブIDとトークンを指定して文書データを出力システム50に要求する。出力システム50の第三通信部51はジョブIDとトークンを受信し、認証部54がトークンでユーザーを認証すると、印刷ジョブ提供部53がジョブIDに対応付けられている文書データを印刷ジョブ記憶部61から取得する。第三通信部51が文書データを出力装置30に送信する。
【0168】
S90:端末装置10の第一通信部11は文書データを受信し、文書データ取得部19は必要に応じて、文書データのファイル形式を変換する。例えば、Mopria/AirPrintが対応しているPDFに変換する。
【0169】
S91:端末装置10の第一通信部11は、TCP/IP通信で文書データと印刷設定を指定し、Mopria/AirPrintによる印刷要求を出力装置30に送信する。出力装置30の第二通信部34は、文書データと印刷設定を受信する。
【0170】
S92:出力部36が文書データを印刷する。ユーザーは印刷結果(排紙された用紙)を取得することができる。
【0171】
このように、端末装置10は、プル印刷及びメーカー独自の出力方法が可能でない出力装置30がMopria/AirPrintによる印刷に対応している場合、Mopria/AirPrintにより印刷できる。
【0172】
図17は、端末装置10がディスプレイに表示する画面遷移の一例を示す。なお、
図17では、
図14との相違を説明する。ステップS88では、
図17(a)に示すように、出力装置30がプル印刷とメーカー独自の出力方法に対応しておらず、Mopria/AirPrintに対応しているため、「Mopria/AirPrintで出力します」というメッセージ115を第一表示制御部13が表示する。以降の画面は
図14と同様になる。
【0173】
なお、出力装置30側の画面遷移は
図15と同様になる。ただし、
図15(a)の通信開始画面351において通信は、端末装置10が出力装置30と近距離無線通信できない場合が想定されるため、Wi-FiなどのTCP/IP通信が行われている。
【0174】
<出力装置が対応している全ての出力方法を問い合わせる場合>
図10、
図13、
図16では、プル印刷が可能でない場合にのみメーカー独自の出力方法又はMopria/AirPrintによる印刷が行われている。このように、端末装置10が各出力方法について対応の可否を順番に問い合わせるのでなく、出力装置30が対応している全ての出力方法を一度に問い合わせてもよい。
【0175】
図18は、出力装置30が対応している出力方法を端末装置10が一度に問い合わせ、優先順位にしたがって、出力方法を決定するフローチャート図の一例である。
図18では、この優先順位は、1.プル印刷、2.メーカー独自の出力方法、3.Mopria/AirPrintの順に高いとする。この優先順位は、ユーザーがアプリに設定できるとよい。一例として、プル印刷が最も優先されるのは、出力装置30がネットワークN3を使用して印刷ジョブをダウンロードできるので、通信時間が短いためである。次に、メーカー独自の出力方法が優先されるのは、端末装置10で動作するアプリは同じメーカーの出力装置30により印刷できるように設計されているため、文書データを再現性よく印刷できるためである。ただし、優先順位は一例である。
【0176】
まず、出力方法取得部17が、第一近距離無線通信部14又は第一通信部11を介して、出力装置30から出力装置30が対応している全ての出力方法を取得する(S101)。この処理は、例えば
図10のステップS22,S23で行われる。
【0177】
出力方法決定部20は、プル印刷が可能か否か判断し(S102)、可能な場合、プル印刷で印刷すると決定する(S103)。プル印刷の場合の処理は
図10のステップS24以降と同様でよい。
【0178】
プル印刷が可能でない場合(S102のNo)、出力方法決定部20は、メーカー独自の出力方法による印刷が可能か否か判断する(S104)。メーカー独自の出力方法による印刷が可能な場合(S104のYes)、出力方法決定部20はメーカー独自の出力方法で印刷すると決定する(S105)。メーカー独自の出力方法の処理は
図13のステップS58以降と同様でよい。
【0179】
メーカー独自の出力方法による印刷が可能でない場合(S104のNo)、出力方法決定部20はMopria/AirPrintによる印刷が可能か否か判断する(S106)。Mopria/AirPrintによる印刷が可能な場合(S106のYes)、出力方法決定部20はMopria/AirPrintにより印刷すると決定する(S107)。Mopria/AirPrintの場合の処理は
図16のステップS89以降と同様でよい。
【0180】
Mopria/AirPrintによる印刷が可能でない場合、第一表示制御部13は、例えば、印刷できない旨のエラーメッセージを表示する。
【0181】
こうすることで、各出力方法に対応しているか否かを端末装置10が個別に出力装置30に問い合わせる必要がなく、通信時間を短縮できる。また、ユーザーが所望の出力方法を優先的に使用できる。
【0182】
また、
図19に示すように、ユーザーが都度、所望の出力方法を端末装置10に設定することも可能である。
図19は、端末装置10が表示する出力方法設定画面120を示す。端末装置10がステップS102で出力装置30から出力装置30が対応している全ての出力方法を取得すると、この出力方法設定画面120が表示される。出力方法設定画面120は、「選択した出力装置は以下の出力方法に対応しています。文書の出力方法を選択して下さい。」というメッセージ121、出力方法の選択肢122~124、OKボタン125、及び、キャンセルボタン126を有している。したがって、ユーザーは、出力装置30が対応している出力方法から所望の出力方法を都度、選択できる。
【0183】
<主な効果>
以上説明したように、本実施形態の出力システム50は、端末装置10が出力装置30からケイパビリティを取得することで、端末装置10から印刷が可能な出力装置30の範囲を広げることができる。また、ユーザーは端末装置10を操作すればよいので、出力装置30を操作する(触れる)必要がない。一般的なプル印刷では、ユーザーが出力装置30から印刷ジョブを選択するなど、出力装置30に触れる必要がある。
【0184】
<その他の適用例>
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【0185】
例えば、本実施形態では、端末装置10が1つの印刷ジョブ又は文書データを出力しているが、複数の印刷ジョブ又は文書データをまとめて、出力装置30に印刷要求してよい。
【0186】
また、本実施例では出力装置30として主に画像形成装置を説明に使用したが、出力装置30は画像形成装置に限られない。出力装置30は、例えば、PJ(Projector:プロジェクタ)、電子黒板(電子式の黒板機能を有する白板)、デジタルサイネージ等の出力装置、HUD(Head Up Display)装置、産業機械、撮像装置、集音装置、医療機器、ネットワーク家電、自動車(Connected Car)、ノートPC、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、ゲーム機、PDA(Personal Digital Assistant)、デジタルカメラ、ウェアラブルPC又はデスクトップPC等であってもよい。これらの装置にとって出力とは、コンテンツの表示など装置の特性に合った出力でよい。
【0187】
また、
図8などの構成例は、端末装置10、出力システム50及び出力装置30による処理の理解を容易にするために、主な機能に応じて分割したものである。処理単位の分割の仕方や名称によって本願発明が制限されることはない。端末装置10、出力システム50及び出力装置30の処理は、処理内容に応じて更に多くの処理単位に分割することもできる。また、1つの処理単位が更に多くの処理を含むように分割することもできる。
【0188】
また、実施例に記載された装置群は、本明細書に開示された実施形態を実施するための複数のコンピューティング環境のうちの1つを示すものにすぎない。ある実施形態では、出力システム50は、サーバクラスタといった複数のコンピューティングデバイスを含む。複数のコンピューティングデバイスは、ネットワークや共有メモリなどを含む任意のタイプの通信リンクを介して互いに通信するように構成されており、本明細書に開示された処理を実施する。
【0189】
更に、出力システム50は、開示された処理ステップ、例えば
図10,
図13,
図16等を様々な組み合わせで共有するように構成できる。例えば、所定のユニットによって実行されるプロセスは、出力システム50が有する複数の情報処理装置によって実行され得る。また、出力システム50は、1つのサーバー装置にまとめられていても良いし、複数の装置に分けられていても良い。
【0190】
上記で説明した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【符号の説明】
【0191】
10 情報処理装置
30 出力装置
50 出力システム
100 情報処理システム
【先行技術文献】
【特許文献】
【0192】