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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118643
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20230818BHJP
   B41J 2/04 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
B41J2/14 501
B41J2/14
B41J2/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071570
(22)【出願日】2022-04-25
(31)【優先権主張番号】P 2022021088
(32)【優先日】2022-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】時田 寛也
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF23
2C057AG14
2C057AM18
2C057AN07
2C057BF04
2C057DB07
(57)【要約】
【課題】本発明では、吐出口からの液体の吐出圧力の低下を抑制することを課題とする。
【解決手段】インクを吐出する複数のノズル14と、複数のノズル14にそれぞれ連通する液体流路40と、液体流路40にインクを供給する供給口16aと、を備えた液体吐出ヘッド10であって、液体流路40は、供給口16aに連通する本流部41と、ノズル14に連通し、本流部41から枝分かれした複数の支流部42とを有し、搬送直交方向Bに隣接するノズル14が二つ以上並べられたノズル列141が形成され、ノズル列141の配列方向が、搬送直交方向Bに対して傾斜することを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する複数の吐出口と、
前記複数の吐出口のそれぞれに連通する液体流路と、
前記液体流路に液体を供給する供給口と、を備えた液体吐出ヘッドであって、
液体吐出ヘッドと記録媒体との相対移動方向に直交する方向に隣接する吐出口が二つ以上並べられた吐出口の列が形成され、
前記吐出口の列の配列方向が、液体吐出ヘッドと記録媒体との相対移動方向に直交する方向に対して傾斜することを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
全ての前記吐出口の前記相対移動方向の位置が異なる請求項1記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
複数の前記吐出口が前記相対移動方向に等間隔に配置される請求項1記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
全ての前記吐出口が前記相対移動方向に等間隔に配置される請求項3記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記吐出口の列として、第1の吐出口の列と、前記第1の吐出口の列の前記相対移動方向一方側で、前記第1の吐出口の列に隣接する第2の吐出口の列とを有し、
前記第1の吐出口の列の最も前記相対移動方向一方側に配置された吐出口が、前記第2の吐出口の列の最も前記相対移動方向他方側に配置された吐出口よりも前記相対移動方向他方側に配置される請求項1記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記液体流路は、前記供給口に連通する本流部と、前記吐出口に連通し、前記本流部から枝分かれした複数の支流部とを有する請求項1記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記液体流路に配置され、対応する前記吐出口を開閉する開閉弁を複数備え、
前記開閉弁が対応する前記吐出口を開くことにより、対応する前記吐出口から液体を吐出する請求項1記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項1から7いずれか1項に記載の液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドを記録媒体に対して相対的に移動させる移動機構と、を備えた液体吐出装置。
【請求項9】
前記移動機構により、前記液体吐出ヘッドを記録媒体に対して前記相対移動方向へ移動させるとともに、前記吐出口の列を形成する各吐出口に対して、前記各吐出口の前記相対移動方向の位置ズレ量の分だけタイミングをずらして、前記各吐出口から液体を吐出させる請求項8記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出ヘッドには吐出口が複数設けられる。記録媒体への画像形成時には、この吐出口列から液体を吐出することにより、記録媒体の搬送方向下流側の部分から順次画像を形成していく。
【0003】
しかし、記録媒体の搬送方向の同じ位置に複数の吐出口が並設された構成では、画像形成時に吐出口の列を構成する各吐出口から同じタイミングで液体を吐出する必要がある。
【0004】
例えば特許文献1(特表2020-501889号公報)のプリントヘッドでは、ノズルを回転させるなど、ノズルの位置を調整可能な移動機構を設けた発明が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
各吐出口が共通の液体流路で連通する構成では、複数の吐出口を閉じている開閉弁を開き、複数の吐出口から同時に液体を吐出させると、吐出口に加えられる圧力の低下により吐出口からの液体の吐出力が低下するという問題があった。そこで本発明では、吐出口からの液体の吐出圧力の低下を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明は、液体を吐出する複数の吐出口と、前記複数の吐出口のそれぞれに連通する液体流路と、前記液体流路に液体を供給する供給口と、を備えた液体吐出ヘッドであって、液体吐出ヘッドと記録媒体との相対移動方向に直交する方向に隣接する吐出口が二つ以上並べられた吐出口の列が形成され、前記吐出口の列の配列方向が、液体吐出ヘッドと記録媒体との相対移動方向に直交する方向に対して傾斜することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、吐出口からの液体の吐出圧力の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドの外観斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドの全体断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る液体流路および吐出口の配置を示す図である。
図4】本発明と異なる吐出口の配置を示す図である。
図5】液体流路の他の例を示す図である。
図6】吐出口の配置の例を示す図である。
図7】単一の流路によって構成される液体流路を示す図である。
図8】液体吐出装置の全体概略構成図である。
図9】液体供給手段および駆動制御装置の一例を示す概略構成図である。
図10】(a)~(c)は開閉弁の開閉動作によるインクの吐出を示す図で、(d)はその時の駆動パルスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドの外観説明図である。図1(a)は液体吐出ヘッドの全体斜視図、図1(b)は同ヘッドの全体側面図である。本実施形態の液体吐出ヘッドは、液体としてのインクを吐出する。
【0010】
液体吐出ヘッド10は、第1筐体としての第1ハウジング11aと、第2筐体としての第2ハウジング11bとを備える。第2ハウジング11bは第1ハウジング11aに積層および接合される。第1ハウジング11aは金属等の熱伝導性の高い材質からなり、第2ハウジング11bは樹脂等の熱伝導性の低い材質からなる。以下の説明において2つのハウジングを総称する場合は、ハウジング11と記す。
【0011】
また、第1ハウジング11aは、その正面と背面に、加熱手段としてのヒータ12を備える。ヒータ12は温度制御が可能であり、第1ハウジング11aを加熱する。また第2ハウジング11bは、その上部に電気信号の通信のためのコネクタ13を備える。
【0012】
図2は、本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッド10の全体断面図で図1(a)のA-A線矢視断面図である。第1ハウジング11aは、板部材としてのノズル板15を保持する。ノズル板15は、液体を吐出する吐出口としてのノズル14を備える。また、第1ハウジング11aは、液体供給部である液体流路40を備える。液体流路40は、供給ポート16側からのインクを、ノズル板15上を経て回収ポート18側へ送る。
【0013】
第2ハウジング11bは、供給ポート16および回収ポート18を備える。供給ポート16および回収ポート18は、液体流路40の一方側および他方側にそれぞれ接続される。供給ポート16と回収ポート18との間には、複数の液体吐出モジュール30を配置している。液体吐出モジュール30は液体流路40内のインクをノズル14から吐出する。また液体吐出モジュール30の上部に規制部材20が設けられる。
【0014】
液体吐出モジュール30は、第1ハウジング11aに設けたノズル14の数に対応しており、本例では1列に並べた8個のノズル14に対応する8個の液体吐出モジュール30を備えた構成を示している。なお、ノズル14および液体吐出モジュール30の数および配列は上記に限るものではない。例えば、ノズル14および液体吐出モジュール30の数は、複数ではなく1個であってもよい。また、ノズル14および液体吐出モジュール30の配列は、1列ではなく、複数列であってもよい。
【0015】
なお、図2において符号19は、第1ハウジング11aと第2ハウジング11bとの接合部に設けたシール部材である。本例ではシール部材としてOリングを用いており、第1ハウジング11aと第2ハウジング11bとの接合部からのインクの漏れを防いでいる。
【0016】
上記の構成により、供給ポート16は、加圧した状態のインクを外部から取り込み、インクを矢印a1方向へ送り、インクを液体流路40に供給する。液体流路40は、供給ポート16からのインクを矢印a2方向へ送る。そして、回収ポート18は、液体流路40に沿って配置したノズル14から吐出しなかったインクを矢印a3方向へ回収する。
【0017】
液体吐出モジュール30は、液体流路40に配置された開閉弁31と、駆動体としての圧電素子32を備える。開閉弁31は各ノズル14に対応して設けられ、ノズル14を開閉する。圧電素子32は開閉弁31を駆動する。また圧電素子32は電圧の印加により、図2の上下方向である長手方向に伸縮作動する。
【0018】
上記の構成において、圧電素子32を作動して開閉弁31を上方向へ動かした場合は、開閉弁31によって閉じていたノズル14が開いた状態になり、ノズル14からインクを吐出することができる。また、圧電素子32を作動して開閉弁31を下方向へ動かした場合は、開閉弁31の先端部がノズル14を封止してノズル14が閉じた状態になり、ノズル14からインクは吐出しなくなる。
【0019】
次に、ノズル14および液体流路40の配置について、図3を用いてより詳細に説明する。図3はノズル14および液体流路40を図2の上方向から見た平面図である。
【0020】
図3に示すように、図2の供給ポート16に設けられた供給口16aから液体流路40へインクが供給される。
【0021】
液体流路40は、供給側本流部41と、複数の支流部42と、回収側本流部43とを備える。供給側本流部41は供給口16aに連通する。支流部42は、供給側本流部41から枝分かれして設けられた流路であり、支流部42内に複数のノズル14を有する。各支流部42は下流側で回収側本流部43に合流する。回収側本流部43は回収ポート18(図2参照)に設けられた回収口18aに連通する。
【0022】
供給側本流部41および回収側本流部43は、記録媒体搬送方向Aと直交する方向に延在する。各支流部42は記録媒体搬送方向Aに対して傾斜した方向へ延在する。
【0023】
この記録媒体搬送方向Aは、液体吐出ヘッドによる液体の吐出動作時に、記録媒体が液体吐出ヘッドに対して移動する方向であり、シリアル型の液体吐出ヘッドにおける副走査方向でもある。以下、この方向を単に移動方向とも呼び、この移動方向の上流側あるいは下流側を、それぞれ単に上流側あるいは下流側とも呼ぶ。また、図3の両矢印Bはこの移動方向に直交する方向のうち、図3の紙面に直交する方向であるインクの吐出方向(あるいはノズル14の延在方向で図2の上下方向)に直交する方向であり、以下、この方向を搬送直交方向とも呼ぶ。この搬送直交方向はシリアル型の液体吐出ヘッドにおける主走査方向でもある。ただし、方向Aは必ずしも記録媒体を搬送する方向に限らず、液体吐出ヘッド側を移動させて記録媒体に液体を吐出する後述の液体吐出装置においては、液体吐出ヘッドの移動方向である。つまり、方向Aは液体吐出ヘッドと記録媒体との相対移動方向である。また、方向Bは液体吐出ヘッドと記録媒体との相対移動方向である方向Aに直交する方向であるが、この方向もまた、後述の液体吐出装置のように液体吐出ヘッドと記録媒体との相対移動方向であってもよい。
【0024】
支流部42に沿って、複数のノズル14が設けられる。本実施形態では、支流部42内の各ノズル14は等間隔に配置される。各ノズル14に対応してその上部に液体吐出モジュール30(図2参照)が設けられる。
【0025】
図3に示すように、記録媒体にインクが吐出される際には、供給口16aからインクが供給される。そして、インクを吐出するノズル14に対応する液体吐出モジュール30の駆動によって得られる圧力により、ノズル14からインクが吐出される。
【0026】
ここで、本実施形態と異なるノズル14の配置を図4に示す。図4に示す液体吐出ヘッドでは、ノズル14が搬送方向Aと直交する方向に配列される。つまり、各ノズル14が搬送方向Aの同じ位置に設けられる。
【0027】
このようなノズル14の配列では、記録媒体90が図4の上側から下方向へ搬送されてくると、記録媒体90の搬送方向Aの下流側部分から順次インクが吐出されて画像が形成される。この際、複数のノズル14から記録媒体90の搬送方向Aの同じ位置にインクを吐出する必要がある場合には、各ノズル14による吐出のタイミングが同じになる。しかし、一度にインクを吐出するノズル14の数が多くなるほど、ノズル14に加えられる圧力が減少してしまう。これは、供給口16aから液体流路40に供給されるインクの液量および流速が同時に駆動される開閉弁の数によらず略一定であるのに対して、一つのノズル14から吐出されるインクの流量および吐出流速は、開放されるノズル14の断面積の合計値が大きくなるほど減少するためである。例えば、図4の8つのノズル14から同時にインクが吐出される場合、1つのノズル14のみから吐出される場合と比較すると圧力損失は8倍になる。また特に、各ノズル14が設けられる個別液室同士が直列に配置される構成では、この課題が顕著であり、下流側へ向かうに従って、インクの流量および吐出速度が減少してしまう。
【0028】
以上のように、一度にインクを吐出するノズル14の数が多くなるほど、各ノズル14からのインクの吐出能力は低下してしまう。これに対して本実施形態では、各ノズル14の相対移動方向の位置をずらすことにより、各ノズル14からのインクの吐出タイミングをずらして同時吐出を回避し、上記の吐出能力の低下を防止している。
【0029】
具体的には、図3の各支流部42の最も上流側に配置されたノズル14によって形成されるノズル列141は、その配列方向が、搬送方向Aに直交する方向である搬送直交方向Bに対して傾斜して直線状に配置されている。別の言い方をすると、ノズル列141を構成する各ノズル14は搬送方向Aの位置が異なっており、図3の右側のノズル14ほど搬送方向Aの下流側に配置される。このノズル列141は、搬送直交方向Bに隣接するノズル14が二つ以上並べられたノズル14の群である。ただし、搬送直交方向Bに隣接する二つのノズル14とは、搬送方向Aの重なる位置に配置される二つのノズル14を必ずしも意味するものではなく、図6(a)の「1-1」のノズル14と「1-2」のノズル14のように、搬送方向Aに重ならない位置に配置されたものを含むものである。別の言い方をすると、ノズル列は、本実施形態の図3のようにノズル面上で略行列状に配置されたノズル14のうち、その搬送直交方向Bの列のことでもある。ただし、この行列状の配置とは、搬送直交方向Bの列が一列のものを含むものである。また、ここで言うノズル14の配置とは、厳密には、ノズル14のノズル面15a(図2参照)における配置であり、別の言い方をすると、ノズル14の吐出方向下流側の開口端の配置である。
【0030】
このように、搬送直交方向Bの異なる位置に配列された複数のノズル14の配置を搬送方向にずらすことで、各ノズル14から記録媒体へインクを吐出するタイミングをずらすことができる。これにより、複数のノズル14のそれぞれが共通の液体流路40と流体的に連通する構成において、複数のノズル14からのインクの同時吐出による吐出圧力の低下を防止できる。なお、ノズル列141を構成する各ノズル14の搬送方向の位置ズレ量は、記録媒体の搬送方向Aの記録解像度よりも小さい値か、あるいは、整数倍でない値に設定される。これにより、上記のように吐出タイミングをずらすことができる。
【0031】
次に、液体流路40の変形例について図5を用いて説明する。
【0032】
図5に示す液体流路40は、供給側本流部41および回収側本流部43が搬送方向Aに延在し、各支流部42は搬送直交方向Bに対して傾斜した方向へ延在する。本実施形態では、同一の支流部42内に配置されたノズル14によりノズル列141などが形成される。そして、このノズル列141の配列方向は搬送直交方向Bに対して傾斜している。別の言い方をすると、ノズル列141を形成するする各ノズル14は、各ノズル14の搬送方向Aの位置が異なっており、各支流部42の下流側のノズル14ほど、搬送方向Aの下流側(図5の下側)に配置される。
【0033】
本実施形態においても、ノズル列を形成する各ノズル14からインクを吐出するタイミングをずらすことができる。これにより、ノズル14からのインクの吐出能力の低下を防止できる。
【0034】
また図3図5の実施形態のように、液体流路40を、供給側本流部41や回収側本流部43、そして各支流部42によって構成することにより、搬送直交方向Bに沿ってノズル14を高密度に配置でき、液体吐出ヘッドを省スペース化できる。
【0035】
次に、ノズル14の配置の変形例について、図6(a)~(c)を用いて説明する。図6に示す「1-1」などの数字が各ノズル14に対応しており、それぞれの数字が各ノズル14の配置を示している。図6の「1-1」~「1-8」までが同じノズル列141(図5参照)を構成する各ノズル14を示している。同様に、「2-1」~「2-8」なども同じノズル列を構成する各ノズル14の配置を示している。
【0036】
図6(a)は「1-1」~「6-8」までの全てのノズル14が搬送方向Aに重ならないように配置されている。これにより、複数のノズル14によるインクの同時吐出を最大限に回避することができ、特に好ましい。また図6(a)では特に、全てのノズル14が搬送方向Aに等間隔に配置されている。これにより、各ノズル14による吐出特性をより均一に近づけることができ、好ましい。ただし、図6(a)のように全てノズル14を等間隔に配置することが最も好ましいが、その一部のみ等間隔に配置した構成であってもよい。
【0037】
また図6(a)では、同一のノズル列内での各ノズル14の位置ズレ量が、搬送方向Aに配列された各ノズル14同士の間隔よりも小さく設定される。具体的には、ノズル列141を構成する各ノズル14は、「2-1」のノズル14よりも搬送方向Aの上流側に配置されており、ノズル列141を構成する各ノズル14の搬送方向Aの位置ズレ量は、搬送方向Aに配列された「1-1」のノズル14と「2-1」のノズル14との間隔よりも小さく設定される。これにより、各ノズル14の搬送方向Aの位置をずらすことができ、各ノズル14からの同時吐出を回避できる。
【0038】
ただし、必ずしもすべてのノズル14の搬送方向Aの位置が異なっている必要はない。例えば図6(b)に示す配置では、各ノズル列の最後の二つのノズル14が、そのノズル列に隣接する下流側のノズル列の最初の二つのノズル14とそれぞれ搬送方向Aの位置が重なっている。例えば、第1のノズル列141の最後の二つのノズル「1-7」、「1-8」が、隣接する第2のノズル列142の最初の二つのノズル「2-1」、「2-2」とそれぞれ搬送方向Aの同じ位置に配置される。本実施形態においても、一部のノズル14の同時吐出を回避でき、ノズル14からの吐出圧力の低下を抑制できる。また、図6(a)のノズル14の配置と比較すると、液体吐出ヘッドを小型化できる。
【0039】
また、図6(c)に示すように、搬送方向Aに配列された各ノズル14同士の間隔を不均一にすることもできる。図6(c)では、各ノズル列同士の間に間隔が大きく設けられており、これにより、各ノズル14同士の搬送方向Aの間隔が不均一になっている。これにより、各ノズル14からの吐出タイミングをずらしやすくすることができる。
【0040】
また上記と異なる実施形態として、図7に示す流体流路40は、本流部と支流部に枝分かれせず、単一の流路のみによって構成される。この流体流路40にはノズル14が列状に配置された単一のノズル列141が形成される。そしてこのノズル列141の配列方向が、搬送直交方向Bに対して傾斜している。これにより、各ノズル14から記録媒体へインクを吐出するタイミングをずらすことができる。これにより、複数のノズル14のそれぞれが共通の液体流路40と流体的に連通する構成において、複数のノズル14からのインクの同時吐出による吐出圧力の低下を防止できる。
【0041】
次に、液体吐出ヘッドに液体としてのインクを供給する液体供給手段、および、液体吐出ヘッドからのインクの吐出を制御する駆動制御装置について図9を用いて説明する。図9は、液体供給手段および駆動制御装置の一例を示す概略構成図である。
【0042】
液体吐出装置は、4つの液体吐出ヘッドとしての液体吐出ヘッド10a~10dと、各液体吐出ヘッド10a~10dから吐出するインク91a~91dを収容した密閉容器としてのタンク51a~51dを備えている。なお、以下の説明において、これら各インクを総称する場合はインク91と記す。また、各タンクを総称する場合は、タンク51と記す。
【0043】
タンク51と液体吐出ヘッド10の注入口(図2に示した供給ポート16)とは、それぞれチューブ52を介して接続している。一方、タンク51は、エアーレギュレータ53を含むパイプ54を介してコンプレッサ55に接続している。コンプレッサ55はタンク51に加圧空気を供給する。これにより、液体吐出ヘッド10内のインク91は加圧状態になり、前述の開閉弁を開けばノズル14からインク91が吐出する。ここで、コンプレッサ55、エアーレギュレータ53を含むパイプ54、タンク51、およびチューブ52は、液体吐出ヘッド10に対してインク91を加圧供給する液体供給手段の一例である。
【0044】
また図2の回収ポート18から回収されたインクをタンク51に戻し、ポンプなどによりタンク51と液体吐出ヘッド10との間でインクを循環させる構成であってもよい。
【0045】
駆動制御装置83は、駆動パルス生成部である波形発生回路84と増幅回路85とを有する。波形発生回路84が後述する駆動パルス波形を生成し、増幅回路85が必要な値まで電圧値を増幅する。そして、増幅された電圧が圧電素子32に印加される。この電圧の印加により、駆動制御装置83は、開閉弁31の開閉を制御し、液体吐出ヘッドからのインクの吐出を制御する。ただし、波形発生回路84が十分な値の電圧を印加できる場合には増幅回路85は省略してもよい。
【0046】
波形発生回路84は、圧電素子32に印加する電圧の時間経過に伴う波形である駆動パルスを生成する。波形発生回路84は、外部のPCや装置内部のマイコンから印刷データを入力され、この入力データに基づいて駆動パルスを生成する。波形発生回路84は、圧電素子32に印加する電圧を変更でき、複数の駆動パルスを生成できる。前述のように、波形発生回路84が駆動パルスを生成することにより、圧電素子32が駆動パルスに従って伸縮し、開閉弁31を開閉移動させる。
【0047】
次に、駆動制御装置83が圧電素子32に電圧を印加して開閉弁31を駆動する様子について図10を用いて説明する。図10(a)~(c)は開閉弁の開閉の様子を示す図で、図10(d)はその際の開閉弁の変位量を示すもので、横軸に時間t[s]、縦軸に開閉弁の変位量C[mm]を示している。ここで言う開閉弁の変位量とは、図10(a)の開閉弁31がノズル板15に当接し、開閉弁31がノズル14を閉じた位置を0として、そこから開閉弁31が図10(a)の上方向である開き方向へ移動した量を示すものである。
【0048】
なお、駆動制御装置83は、圧電素子32に対して電圧のパルスである駆動パルスを印加して圧電素子32を伸縮させ、開閉弁を駆動させる。この駆動パルスは開閉弁の変位量と比例関係にある。つまり、駆動制御装置83が形成する時間tに対する駆動パルスは、図10(d)の時刻tの変化に対する開閉弁の変位量の推移と同様の形状の波形をなす。このため、以降の説明では、図10(d)に示す変位量Cの波形が駆動パルスの波形である(駆動パルスの波形と等しい)ものとして説明する。
【0049】
圧電素子32への印加電圧を0Vにした状態では、図10(a)に示すように、圧電素子32が伸張して開閉弁31がノズル板15に当接する。これにより、開閉弁31がノズル14を閉じる。本実施例では、ノズル14を閉じるときは電圧を0Vとしているが、後述の所定電圧よりも小さな電圧であれば0V以外としてもよい。
【0050】
また圧電素子32に電圧を印加することにより、圧電素子32が収縮する。これにより、図10(b)に示すように、開閉弁31が図10(b)の上方向へ移動し、開閉弁31とノズル板15との間に隙間領域50が形成される。そして、圧電素子32に対する電圧の印加をやめることにより、あるいは印加する電圧を小さくすることにより、図10(c)に示すように、再び開閉弁31がノズル板15に当接してノズル14を閉じる。
【0051】
ノズル14の開放時には、コンプレッサ55(図9参照)によりインク91が加圧されている。従って、図10(b)のように、インク91の液圧により開放されたノズル14からインクが吐出される。また、図10(c)のように、開閉弁31が閉じられていく過程で、隙間領域50のインク91が加圧されてノズル14から押し出される。
【0052】
本実施形態の駆動制御装置は、液体吐出ヘッドに設けられた各ノズルに対応する圧電素子を個別に制御することで、各ノズルから液体を吐出するタイミングをそれぞれ個別に制御できる。なお、圧電素子32として、印加される電圧が0Vになることで収縮し、0Vより大きい電圧を印加されることで伸張する特性を有するものを用いてもよい。
【0053】
次に、以上で説明した液体吐出ヘッド10を備えた液体吐出装置について説明する。
【0054】
図8は、液体吐出装置100の全体概略構成図である。図8(a)は液体吐出装置の側面図、図8(b)は同装置の平面図である。液体吐出装置100は、記録媒体としての液体付与対象500に対向して設置されている。液体吐出装置100は、X軸レール101と、このX軸レール101と交差するY軸レール102と、X軸レール101およびY軸レール102と交差するZ軸レール103を備える。特に本実施形態では、各レール101,102,103は互いに直交する方向に延在する。
【0055】
Y軸レール102は、X軸レール101がY軸方向に移動可能なようにX軸レール101を保持する。また、X軸レール101は、Z軸レール103がX軸方向に移動可能なようにZ軸レール103を保持する。そして、Z軸レール103は、キャリッジ1がZ軸方向に移動可能なようにキャリッジ1を保持する。
【0056】
液体吐出装置100は、キャリッジ1をZ軸レール103に沿ってZ軸方向に動かす第1のZ方向駆動部92と、Z軸レール103をX軸レール101に沿ってX軸方向に動かすX方向駆動部72を備える。また、液体吐出装置100は、X軸レール101をY軸レール102に沿ってY軸方向に動かすY方向駆動部82を備える。さらに、液体吐出装置100は、キャリッジ1に対してヘッド保持体70をZ軸方向に動かす第2のZ方向駆動部93を備える。X方向駆動部72、Y方向駆動部82およびZ方向駆動部92は、液体吐出ヘッド10を液体付与対象500に対して相対移動させる移動機構である。
【0057】
前述した液体吐出ヘッドは、液体吐出ヘッド10のノズル14(図2参照)が液体付与対象500に対向するようにヘッド保持体70に取り付けられる。このように構成した液体吐出装置100は、X方向駆動部72、Y方向駆動部82およびZ方向駆動部92を含む移動機構によって、キャリッジ1をX軸、Y軸およびZ軸の方向に動かしながら、ヘッド保持体70に取り付けた液体吐出ヘッドから液体付与対象500に向けて液体の一例であるインクを吐出し、液体付与対象500に描画を行う。
【0058】
例えば、移動機構が液体吐出ヘッドを液体付与対象に対して図3に示す方向Aへ速度Vで移動させながら、駆動制御装置は、各ノズル列141の各ノズル14の方向Aの位置ズレ量の分だけ、タイミングをずらして各ノズル14からインクを吐出させる。これにより、液体付与対象に、矢印B方向に延びる一列のラスターラインを形成できる。これにより、各ノズル14からのインクの吐出圧力の低下を抑制しながらラスターラインを形成できる。なお、あるノズル14に、隣接するノズル14に対する方向Aの位置ズレ量を速度Vで割った時間だけタイミングをずらしてインクを吐出させる。また、方向Aに記録解像度分だけ間隔を隔ててラスターラインを順次形成することで、液体付与対象にベタ画像を形成できる。これにより、各ノズル14からのインクの吐出圧力の低下を抑制しながらベタ画像を形成できる。
【0059】
液体付与対象500は、例えば自動車や航空機の車体である。液体吐出装置100は、液体付与対象500に文字や写真などの任意の形状の画像を形成するものであってもよいし、一様な画像を形成するものすなわち塗装をおこなうものであってもよい。また、液体吐出ヘッドを含むキャリッジ1の位置を固定し、移動機構がキャリッジ1に対して液体付与対象500を移動させる構成であってもよい。また、移動機構は、X方向駆動部72、Y方向駆動部82およびZ方向駆動部92を別個に備える構成に替えて、キャリッジ1を支持するとともにX方向、Y方向およびZ方向にキャリッジ1を移動させるロボットアームなどの構成としてもよい。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0061】
「液体」にはインクだけでなく塗料を含む。
【0062】
本願において、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッドを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体吐出装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0063】
この「液体吐出装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0064】
例えば、「液体吐出装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0065】
また、「液体吐出装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0066】
上記「液体が付着可能なもの」とは、前述した記録媒体のことであり、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0067】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0068】
また、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0069】
また、「液体吐出装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0070】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0071】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1>
液体を吐出する複数の吐出口と、
前記複数の吐出口のそれぞれに連通する液体流路と、
前記液体流路に液体を供給する供給口と、を備えた液体吐出ヘッドであるであって、
液体吐出ヘッドであると記録媒体との相対移動方向に直交する方向に隣接する吐出口が二つ以上並べられた吐出口の列が形成され、
前記吐出口の列の配列方向が、液体吐出ヘッドであると記録媒体との相対移動方向に直交する方向に対して傾斜することを特徴とする液体吐出ヘッドであるである。
<2>
全ての前記吐出口の前記相対移動方向の位置が異なる<1>記載の液体吐出ヘッドである。
<3>
複数の前記吐出口が前記相対移動方向に等間隔に配置される<1>または<2>記載の液体吐出ヘッドである。
<4>
全ての前記吐出口が前記相対移動方向に等間隔に配置される<3>記載の液体吐出ヘッドである。
<5>
前記吐出口の列として、第1の吐出口の列と、前記第1の吐出口の列の前記相対移動方向一方側で、前記第1の吐出口の列に隣接する第2の吐出口の列とを有し、
前記第1の吐出口の列の最も前記相対移動方向一方側に配置された吐出口が、前記第2の吐出口の列の最も前記相対移動方向他方側に配置された吐出口よりも前記相対移動方向他方側に配置される<1>記載の液体吐出ヘッドである。
<6>
前記液体流路は、前記供給口に連通する本流部と、前記吐出口に連通し、前記本流部から枝分かれした複数の支流部とを有する<1>から<5>いずれか記載の液体吐出ヘッドである。
<7>
前記液体流路に配置され、対応する前記吐出口を開閉する開閉弁を複数備え、
前記開閉弁は対応する前記吐出口を開くことにより、対応する前記吐出口から液体を吐出する<1>から<6>いずれか記載の液体吐出ヘッドである。
<8>
<1>から<7>いずれか記載の液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドを記録媒体に対して相対的に移動させる移動機構と、を備えた液体吐出装置である。
<9>
前記移動機構により、前記液体吐出ヘッドを記録媒体に対して前記相対移動方向へ移動させるとともに、前記吐出口の列を形成する各吐出口に対して、前記各吐出口の前記相対移動方向の位置ズレ量の分だけタイミングをずらして、前記各吐出口から液体を吐出させる<8>記載の液体吐出装置である。
【符号の説明】
【0072】
10 液体吐出ヘッド
14 ノズル(吐出口)
141 ノズル列(吐出口の列)
15 ノズル板
15a ノズル面
16a 供給口
30 液体吐出モジュール
40 液体流路
41 供給側本流部(本流部)
42 支流部
43 回収側本流部
A 記録媒体搬送方向(液体吐出ヘッドと記録媒体との相対移動方向)
B 搬送直交方向(液体吐出ヘッドと記録媒体との相対移動方向に直交する方向)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0073】
【特許文献1】特表2020-501889号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10