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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118767
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】荷役作業指示支援システム
(51)【国際特許分類】
   B65G 63/00 20060101AFI20230818BHJP
【FI】
B65G63/00 J
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100628
(22)【出願日】2023-06-20
(62)【分割の表示】P 2020119794の分割
【原出願日】2020-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】株式会社三井E&S
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】市村 欣也
(72)【発明者】
【氏名】多田 淳一
(57)【要約】
【課題】熟練のノウハウを持つプランナやコントローラを必要とする事無く、現在の荷役形態にも対応し、作業能率の向上を図る事のできる蔵置計画を立てる事がでる荷役作業指示支援システムを提供する。
【解決手段】本船とコンテナターミナル、及び外来シャーシとの間でコンテナの授受を行う際にコンテナターミナル内での荷役作業指示を支援するシステムであって、コンテナターミナル内におけるコンテナの蔵置位置を管理するTOS12と、前記コンテナターミナル内に搬入されるコンテナの蔵置位置の算出を行うAIPS20と、を有し、TOS12は、AIPS20から提供される情報の採否を判定するための判定/入力部17を備えていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本船とコンテナターミナル、及び外来シャーシとの間でコンテナの授受を行う際にコンテナターミナル内での荷役作業指示を支援するシステムであって、
コンテナターミナル内におけるコンテナの蔵置位置を管理するターミナルオペレーションシステムと、前記コンテナターミナル内に搬入されるコンテナの蔵置位置の算出を行うAIプランニングシステムと、を有し、
前記ターミナルオペレーションシステムは、前記AIプランニングシステムから提供される情報の採否を判定するための判定/入力部を備えていることを特徴とする荷役作業指示支援システム。
【請求項2】
前記ターミナルオペレーションシステムは、少なくともコンテナ関連情報を記録した第1データベースと、
前記第1データベースのデータを使いながらコンテナターミナルの荷役作業を管理するためのサブシステム群と、を備え、
前記判定/入力部において採用された情報も前記サブシステム群への入力情報とされることを特徴とする請求項1に記載の荷役作業指示支援システム。
【請求項3】
前記AIプランニングシステムから提供される情報が前記判定/入力部において採用できないと判断された場合には、前記AIプランニングシステムに対して新たな蔵置位置の算出を求める処理を実行することを特徴とする請求項2に記載の荷役作業指示支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナターミナルにおける荷役効率の向上を図るための蔵置計画の立案に寄与する荷役作業指示支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンテナターミナルでは、荷役機械によるCO排出量の抑制や、外来シャーシによるゲート前渋滞の抑制、および荷役機械運転者の負担軽減の観点から、作業能率の向上や、外来シャーシの待ち時間の低減について、種々の出願が成されている。
【0003】
例えば出願人は、特許文献1に開示されているような海運貨物の搬出入の効率化を図るための支援システムを提案している。特許文献1に開示されている技術は、コンテナを陸運するトレーラ(外来シャーシ)の位置情報と、コンテナターミナルにおいてコンテナの搬出入情報を統括するターミナルユニットの情報を連携させ、コンテナの荷繰りを行う構内クレーンの運転者に対し、時間の経過と共に変化する荷繰り作業の優先順位を通達し、それに応じて荷繰り作業を実行させるというものである。このようなシステムを利用する事により、コンテナ搬出入の効率化を図る事ができ、コンテナを陸運する外来シャーシの待ち時間の短縮、渋滞発生の抑制を図る事ができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-223964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
確かに上記のような技術を利用すれば、荷役作業の効率が向上する事より、外来シャーシの待ち時間を低減することができる。また、従来に比べ、荷役機械によるCO排出量も低減することができると考えられる。
【0006】
しかし現在、港湾荷役の現場では、高齢化と成り手不足で作業員が不足していると共に、熟練作業者が不足しており、荷繰作業の回数を少なくできる蔵置位置計画のノウハウを持つプランナ、コントローラが少なくなっている。
【0007】
また、コンテナ船の大型化により、1船あたりの作業量が以前より増えると共に、物流サービスの細分化が進んだ事に起因して、従来のプランナ、コントローラのノウハウだけでは最適解を導き出せなくなってきている。
【0008】
さらに、熟練者のノウハウを必要としない知識情報システムをターミナルオペレーションシステム(TOS)に組み込もうとすると、システム処理の遅延を招き、データベースの更新等、必要とされる処理の即応性に支障を来たすおそれがあったり、TOS外の情報システムの情報を効率良く入手できなかったりする。
【0009】
そこで本願では、熟練のノウハウを持つプランナやコントローラを必要とする事無く、現在の荷役形態にも対応し、作業能率の向上を図る事のできる蔵置計画を立てる事ができる荷役作業指示支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る荷役作業指示支援システムは、本船とコンテナターミナル、及び外来シャーシとの間でコンテナの授受を行う際にコンテナターミナル内での荷役作業指示を支援するシステムであって、コンテナターミナル内におけるコンテナの蔵置位置を管理するターミナルオペレーションシステムと、前記コンテナターミナル内に搬入されるコンテナの蔵置位置の算出を行うAIプランニングシステムと、を有し、前記ターミナルオペレーションシステムは、前記AIプランニングシステムから提供される情報の採否を判定するための判定/入力部を備えていることを特徴とする荷役作業指示支援システム。
【0011】
また、上記のような特徴を有する荷役作業指示支援システムにおける前記ターミナルオペレーションシステムは、少なくともコンテナ関連情報を記録した第1データベースと、前記第1データベースのデータを使いながらコンテナターミナルの荷役作業を管理するためのサブシステム群と、を備え、前記判定/入力部において採用された情報も前記サブシステム群への入力情報とする構成とすると良い。
【0012】
さらに、上記のような特徴を有する荷役作業指示支援システムでは、前記AIプランニングシステムから提供される情報が前記判定/入力部において採用できないと判断された場合には、前記AIプランニングシステムに対して新たな蔵置位置の算出を求める処理を実行する構成とすることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
上記のような特徴を有する荷役作業指示支援システムによれば、判定/入力部での判定は、経験値に基づくものでなく、実施可能な情報か否かの判定であれば良いため、熟練のノウハウを持つプランナやコントローラを必要とする事無く、作業能率の向上を図る事のできる蔵置計画を立てる事ができる。また、本船が大型化した現在の荷役形態にも対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る荷役作業指示支援システムの構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態に係る荷役作業指示支援システムを用いた蔵置計画立案の流れを説明するためのフロー図である。
図3】コンテナターミナルにおける実作業と、AIによる蔵置計画立案のタスク状況の違いとデータ授受の状況を説明するための図である。
図4】第1データベース、第2データベースに記録されている蔵置位置の変化を説明するための図である。
図5】第2実施形態に係る荷役作業指示支援システムをシミュレータに適用する場合の例を示すブロック図である。
図6】複数のTOSに対して1つのAIPSを備える構成とした場合の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の荷役作業指示支援システムに係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
[第1実施形態:構成]
まず、図1を参照して、第1実施形態に係る荷役作業指示支援システム10について説明する。本実施形態に係る荷役作業指示支援システム10は、ターミナルオペレーションシステム(以下、単にTOS12と称す)と、AIプランニングシステム(以下、単にAIPS20と称す)を組み合わせる事を基本として構成されている。
【0016】
TOS12は、少なくとも第1データベース14と、第1データベース14のデータを使いながらコンテナターミナルの荷役作業を管理するためのサブシステム群16、詳細を後述するAIPS20からの情報の採否を判定、及び情報の入力を行うための判定/入力部17、及びインターフェイス18を有する。第1データベース14は、コンテナターミナル内の種々の情報、特にコンテナに関連する情報(以下、コンテナ関連情報と称す)がコンテナ番号に関連づけて記録されている。
【0017】
コンテナ関連情報としては、少なくとも次の情報のうちの1つ以上を含むようにする。例えば、コンテナヤード内におけるコンテナ蔵置情報、各コンテナの搬出予約日、各コンテナの荷主、各コンテナの貨物種類、各コンテナをターミナル外で輸送する陸運業社、コンテナヤードに積まれているコンテナの搬出予約状況、及び通関状況等である。なお、本実施形態で書き換え等を要するデータは、もっぱら、コンテナ蔵置情報(コンテナが蔵置されている番地や段数等)である。
【0018】
サブシステム群16は、例えば本船プランニングシステム(以下、単にVP16aと称す)や、ヤードプランニングシステム(以下、単にYP16bと称す)、ヤードオペレーションシステム(以下、単にYO16cと称す)、及びインテグレーテッドゲートシステム(以下、単にIGS16dと称す)から構成されていれば良い。ここで、VP16aは、本船荷役プランを立てる際に利用される支援システムである。また、YP16bは、コンテナヤード内における蔵置座標を管理し、コンテナヤード内におけるプランニング業務を支援するためのシステムである。また、YO16cは、コンテナ荷役機械の配置管理や、各種作業者(運転者)への作業指示を行う際の支援システムである。さらに、IGS16dは、コンテナターミナルや、コンテナヤードにおいて外来シャーシ等の入出を管理する役割を担うシステムである。
【0019】
ここで、VP16aやYP16bは、プランナが荷役作業開始前に蔵置計画を立てる際に利用されるシステムであると共に、VP16a、YP16b、YO16c、IGS16dは、コントローラが、荷役作業の進捗に併せて、リアルタイムに蔵置計画を修正、調整する際に利用されるシステムである。このようなシステムを利用する事により、数値としての情報(例えばコンテナを蔵置する際の番地)を視覚的に表示、確認する事が可能となる。
【0020】
判定/入力部17は、サブシステム群16への入力情報をプランナやコントローラが直接入力するための要素であると共に、詳細を後述するAIPS20のAI24(AI:Artificial Intelligence:人工知能)によって求められた(算出された)蔵置位置の最適情報(最適蔵置計画)をサブシステム群16への入力情報として採用するか否かの判定を行うための要素である。判定/入力部17では、AI24によって求められた蔵置位置の最適情報がディスプレイ等に視覚的に表示され、プランナやコントローラ等の作業者がこれを確認する。作業者による確認の結果、サブシステム群16への入力情報として採用しても良いと判断した場合には、当該情報がサブシステム群16へ入力される。一方、入力情報として採用できないと判断した場合には、AIPS20に対して新たな蔵置位置の最適情報を求める処理など(例えば最新のコンテナ関連情報を新たに提供するなど)が採られる。
【0021】
インターフェイス18は、詳細を後述するAIPS20との間でデータの授受(照会)を行うための入出力機構の役割を担う要素である。インターフェイス18を介在させる事により、データやファイルの保存形式、変換形式が異なるシステム同士であっても、両者の間のデータ授受に互換性を持たせることが可能となる。なお、図面上においては、インターフェイス18を複数個所に設けているように示しているが、これはインターフェイスの形態として、システム的な物やソフト的な物など、種々の形態が存在する事から疑似的に示すものであり、種々の機能を持つインターフェイスとして1つの要素で示す場合との相違は無い。
【0022】
AIPS20は、少なくとも第2データベース22と、AI24、及びインターフェイス26を有する。第2データベース22は、AIPS20を機能させるための種々の情報に加え、第1データベース14に記録されたコンテナ関連情報のうちの、少なくともコンテナ蔵置情報と同様なデータが記録されている。
【0023】
第2データベース22は、第1データベース14から情報を受け取るのみで、第1データベース14にデータを書き込むことはしない。これにより、荷役作業に使われるTOS12のデータは、これまで通り高い信頼性と応答性を保つことができる。
【0024】
AI24は、コンテナターミナルにおける荷繰作業の回数が最小化されることとなる最適蔵置計画を立てる役割を担う要素である。具体的には、インターフェイス26を介して入力された情報と、第2データベース22に記録されているコンテナ蔵置情報に基づいて、荷繰作業の回数が最小化される蔵置計画(最適蔵置計画)を立てることとなる。なお、コンテナ関連情報には、気象情報や海象情報、船舶動静情報、道路交通情報、その他の情報等のうちのいずれか1つ以上を含むようにする事もできる。こうした情報は、AI24に外部システム28を接続することにより得るようにすれば良い。
【0025】
なお、蔵置計画のプランニングの際に用いるプログラムは、コンテナヤードに搬入されるコンテナ、例えば本船から荷下ろしされたコンテナの搬出日時の予測値と、この予測値に基づく蔵置位置の最適情報の算出を行うものとする。
【0026】
コンテナの搬出日時の予測値の算出は、例えばコンテナ関連情報に含まれる各コンテナの搬出予約日や、各コンテナの荷主、各コンテナの貨物種類、各コンテナをターミナル外で輸送する陸運業社、及び第2データベースに記録されたコンテナ蔵置情報等に基づいて成されるようにすれば良い。また、蔵置位置の最適情報は、当該コンテナの搬出日時の予測値と、他の積み上げコンテナの搬出予約状況、通関状況等に基づいて、対象コンテナの搬出予測値時点において、対象コンテナの上に積み重ねられているコンテナの数がゼロ、あるいは最小となる蔵置位置(最適蔵置位置)を導き出すようにすれば良い。このようにして求める予測値や蔵置位置の最適情報は、気象情報や海象情報、船舶動静情報、道路交通情報等の補足により、高い精度を得る事が可能となる。
【0027】
インターフェイス26は、上述したTOS12との間でデータの授受を行うための入出力機構の役割を担う要素である。
【0028】
[作用]
次に、図2に示すフローを参照しつつ、上記のような構成の荷役作業指示支援システム10による蔵置位置の算出についての流れを説明する。本実施形態に係る荷役作業指示支援システム10では、まず、TOS12からAISP20のAI24に対してインターフェイス18,26を介してコンテナ関連情報の一部が入力されると共に、AI24は、第2データベース22からコンテナ蔵置情報を取得する。この時AI24は、外部システムからも各種コンテナ関連情報を取得しても良い(ステップ10)。
【0029】
AI24は、入力情報に基づき、対象とされるコンテナの搬出日時の予測値を求めると共に、当該予測値における蔵置位置の最適情報を求める(ステップ20)。算出された蔵置位置の最適情報は、インターフェイス26,18を介してTOS12に入力される。また、AI24により算出された蔵置位置は、仮データとして第2データベース22にも入力され、第2データベース22に記録されたコンテナ蔵置情報の書き換えに用いられる(ステップ30)。
【0030】
TOS12内に入力された蔵置位置の最適情報は、インターフェイス18を介して判定/入力部17へ入力される。蔵置位置の最適情報が判定/入力部17に入力されると、プランナやコントローラ等の作業者により、サブシステム群16への入力情報として採用するか否かの判定が成される。なお、ここでの判定は、経験値に基づくものでなく、実施可能な情報か否かの判定であれば良い。
【0031】
コンテナターミナルでの荷役作業の進捗は、様々な状況に影響を受けることとなる。このため、緊急的にコンテナの搬入、搬出の順番が変わったり、搬出予定のコンテナが搬出されない場合もある。プランナやコントローラ等の作業者は、そうした状況に応じて判定/入力部17を介して情報の入力を行い、コンテナの蔵置位置を定める必要がある。
【0032】
よって、第2データベース22に記録されている情報と、実際のコンテナ蔵置情報(第1データベース14に記録されている情報)とにズレが生じる場合がある。このため、判定/入力部17では、作業者等による判定が必要となる(ステップ40)。
【0033】
判定/入力部17による判定により採用された蔵置位置の最適情報は、サブシステム群16に入力され、トランスファークレーンなどの荷役作業者への指示情報に反映され、荷役作業が行われる(ステップ50)。荷役作業が終了すると、第1データベース14に記録されているコンテナ蔵置情報が、実作業後の蔵置位置情報に基づいて更新される(ステップ60)。
【0034】
第1データベース14内のコンテナ蔵置位置情報の更新が成された後、更新に係る蔵置位置情報がインターフェイス18,26を介してAIPS20に送られ、第2データベース22内のコンテナ蔵置位置情報へ反映される(ステップ70)。
【0035】
ここで、コンテナターミナル内における実作業と、AI24のシミュレーションによる蔵置計画の立案との間には、図3に示すように、時間的タスクに差異が生じる。図3は、コンテナAからコンテナEを順次本船から荷下ろしし、搬送、荷繰りして蔵置位置へ配置する場合について、コンテナターミナル側のタスクと、AI24側のタスクと、情報伝達の流れについての例を示すものである。
【0036】
具体的には、コンテナAを本船から荷下ろしする際に基となる既存のコンテナ蔵置状態は(1)(図4参照)の状態とする。AI24では、コンテナターミナル側でコンテナAの荷下ろしが終了する前に最適蔵置計画が算出され、TOS12へ蔵置計画の指示が伝達されることとなる。コンテナターミナル側では、コンテナAの荷下ろしが終了すると、コンテナBの荷下ろしが開始される。この時、コンテナAは、ターミナル内において構内シャーシによる搬送が成されている状態である。一方、AI24は、第2データベース22に記録された仮データである蔵置状態(2)(図4参照)を基礎としてコンテナBの最適蔵置計画の立案を行う。
【0037】
同様にして、コンテナC、コンテナDの最適蔵置計画については、仮想データである蔵置状態(3)、(4)(図4参照)を基礎として立案される。その後、コンテナターミナルにおいて、コンテナAの蔵置作業が終了すると、第1データベース14は、実際の蔵置状態である蔵置状態(5)(図4参照)として更新される。そして、この更新データはAIPS20へ送信され、第2データベース22に対し、第1データベース14の更新データ部分が反映される。これにより、コンテナEの最適蔵置計画については、仮想データと更新データが合わさった蔵置状態(6)(図4参照)を基礎として立案が成される。
【0038】
このように、本実施形態に係る荷役作業指示支援システム10によれば、第1データベース14の記録情報に対してAI24が干渉せず、第1データベース14は、蔵置作業実行後のデータ(実行データ)に基づく更新のみが成される構成としている。このため、AI24による演算処理やデータの更新が、TOS12における第1データベース14の更新時の即応性を阻害することがない。また、AI24の性能向上がTOS12側に影響を与えることも無い。
【0039】
[効果]
上記実施形態に係る荷役作業指示支援システム10によれば、蔵置計画にAI24を導入することで、熟練作業者のノウハウが無くとも蔵置計画を立てることが可能となる。これにより、非熟練作業者であっても、効率的な蔵置計画を立てることが可能となる。また、効率的な蔵置計画の立案により、荷役機械の動作が最小化され、環境負担を低減することもできる。さらに、大型化されたコンテナ船であっても、対応することが可能となる。
【0040】
また、上記実施形態に係る荷役作業指示支援システム10では、TOS12とAIPS20にそれぞれ第1データベース14と第2データベース22を配置し、第1データベース14の記録情報に対してAI24が干渉せず、第1データベース14は、サブシステムからの入力による実行データに基づく更新のみが成される構成とした。このため、AI24による演算処理やデータの更新が、TOS12の即応性や、データの信頼性を阻害することがない。また、AI24の性能向上がTOS12側に影響を与えることも無い。
【0041】
また、上記実施形態に係る荷役作業指示支援システム10では、TOS12とAIPS20をそれぞれ独立したシステムとして稼働させている。このため、それぞれのシステムの改善、更新を簡易かつ効率的に実施することができる。また、インターフェイス18,26を介在させてデータの授受を行うようにすることで、TOS12とAIPS20の互換性を考慮する必要性が低くなり、各システムを導入する際の自由度が高くなる。
【0042】
また、実施形態に係る荷役作業指示支援システム10は、TOS12自体の構成や情報処理の流れに変更を加える事無く構成することができる。このため、各地の港湾でも、AIPS20を構成する第2データベース22やAI24、及びインターフェイス26を準備するだけで容易かつ安価に展開させることができる。
【0043】
なお、上記実施形態では、AIPS20に対してTOS12が与える情報について、コンテナ関連情報の一部としていたが、VP16aやYP16bを用いてプランナが作成した蔵置計画に関する情報を入力するようにしても良い。
【0044】
[第2実施形態:構成]
次に、図5を参照して、第2実施形態に係る荷役作業指示支援システム10Aについて説明する。本実施形態に係る荷役作業指示支援システム10Aの構成の殆どは、上述した第1実施形態に係る荷役作業指示支援システム10と同様である。よって、その機能を同一とする箇所については、図面に同一符号を付して詳細な説明を省略することとする。
【0045】
本実施形態に係る荷役作業指示支援システム10Aと、第1実施形態に係る荷役作業指示支援システム10との違いは、TOS12におけるシミュレータ30の有無にある。本実施形態に係るシミュレータ30は、AIPS20からフィードバックされた蔵置位置の最適情報に基づいて、予め定められた期間内におけるコンテナターミナル内のコンテナの動きと蔵置状況、荷役機器の動きをシミュレーションするための要素である。このため、TOS12には、シミュレータ30によってシミュレーションされたコンテナの蔵置状況を記録しておくためのデータベース(第3データベース32)が備えられている。
【0046】
なお、シミュレーション上においては、プランナやコントローラ等の作業者の介在が無い。このため、蔵置位置のイレギュラーが発生する事が無いため、第2データベース22に対して第3データベースに記録された情報を反映させる必要が無い。また、図5に示す例では、第1データベース14と第3データベース32とは、物理的に異なる記録媒体に構築する事を想定しているため、両者の間にインターフェイス18を設けているが、共通の記録媒体に2つのデータベースを構築するような場合には、インターフェイス18を設ける必要は無い。
【0047】
[作用]
このような特徴を有する荷役作業指示支援システム10Aでは、第1実施形態に係る荷役作業指示支援システム10が有する機能の他に、所定時間後(例えば3時間後)までにコンテナターミナルに搬入されるコンテナそれぞれに対する蔵置位置の最適情報をインターフェイス18を介して取得する事で、所定時間後までのコンテナの搬出入状況、荷役状況をシミュレーションし、その結果、あるいは仮想ターミナル内でのコンテナの蔵置状況や荷役状況を判定/入力部17へ入力する。
【0048】
判定/入力部17へシミュレーション結果等が入力されると、プランナやコントローラ等の作業者が、AIPS20からフィードバックされる蔵置位置の最適情報と、シミュレーション結果等を参酌して、AI24によって求められた蔵置位置の最適情報を採用するか否かを判定する。
【0049】
[効果]
このように、本実施形態に係る荷役作業指示支援システム10Aによれば、AI24によって求められた蔵置位置の最適情報を採用した場合に、コンテナがどのように荷役され、どのような結果を招くかを視覚的かつ定量的に認識する事が可能となる。よって、判定/入力部17において判定を下す作業者の熟練度が低い場合であっても、判定を容易に下すことが可能となる。なお、その他の作用、効果については、第1実施形態に係る荷役作業指示支援システム10と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
上記実施形態では、荷役作業支持支援システム10,10Aは、特定のコンテナターミナルを管理するためのTOS12に対して、対応するAIPS20が備えられているように説明している。しかしながら、本実施形態に係る荷役作業指示支援システム10(10A)は、図6に示すように、複数のコンテナターミナル(図6に示す例では3つのコンテナターミナル)をそれぞれ管理するTOS(図6に示す例では、AターミナルTOS12A、BターミナルTOS12B、CターミナルTOS12C)に対して1つのAIPS20を備えるように構成しても良い。
【0051】
このような構成の荷役作業支持支援システム10を構成する場合、AIPS20は、各TOS(AターミナルTOS12A、BターミナルTOS12B、CターミナルTOS12C)に備えられた第1データベース(第1データベース14A、第1データベース14B、第1データベース14C)のそれぞれに対応した第2データベース(第2データベース22A、第2データベース22B、第2データベース22C)を備えることとなる。このようにデータベースをターミナル毎に分ける事で、各ターミナルの情報が漏洩しないようになる。
【0052】
また、荷役作業支持支援システム10をこのような構成とする事によれば、AI24は、複数のコンテナターミナルにおける荷役状況を学習する事が可能となる。よって、コンテナを搬送する船社や、陸運業者、その他の状況に変化があり、コンテナが荷役されるコンテナターミナルが変わったとしても、対象とされるコンテナの搬出日時の予測値を精度良く求めると共に、当該予測値における蔵置位置の最適情報を求める事が可能となる。また、外部システムからの情報収集も簡素化することができる。
【符号の説明】
【0053】
10………荷役作業指示支援システム、12………TOS、12A………AターミナルTOS、12B………BターミナルTOS、12C………CターミナルTOS、14,14A,14B,14C………第1データベース、16………サブシステム群、16a………VP、16b………YP、16c………YO、16d………IGS、17………判定/入力部、18………インターフェイス、20………AIPS、22,22A,22B,22C………第2データベース、24………AI、26………インターフェイス、28………外部システム、30………シミュレータ、32………第3データベース。
図1
図2
図3
図4
図5
図6