(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023011878
(43)【公開日】2023-01-24
(54)【発明の名称】二重硬化性の光学的に透過性の接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 123/00 20060101AFI20230117BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230117BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20230117BHJP
C09J 109/00 20060101ALI20230117BHJP
C09J 109/02 20060101ALI20230117BHJP
C09J 5/00 20060101ALI20230117BHJP
C09J 123/26 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
C09J123/00
C09J11/06
C09J11/08
C09J109/00
C09J109/02
C09J5/00
C09J123/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177922
(22)【出願日】2022-11-07
(62)【分割の表示】P 2018538120の分割
【原出願日】2017-01-19
(31)【優先権主張番号】62/281,876
(32)【優先日】2016-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/362,411
(32)【優先日】2016-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】デカト、 アルフレッド エー.
(72)【発明者】
【氏名】ジン、 シュフア
(72)【発明者】
【氏名】ドボラク、 デイビッド ピー.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】光学的に透過性の/透明な、液体の二重硬化(湿気)及び光硬化接着剤を提供する。
【解決手段】A.湿気硬化性ポリオレフィン系オリゴマーを含むか、又は含まない、光-及び/又は熱-硬化性ポリオレフィン系オリゴマー;B.適切な硬化条件下でオリゴマーの硬化を誘発及び/又は促進するための硬化パッケージ;並びに、C.光-及び/又は熱-硬化性ポリオレフィン系オリゴマー又は湿気硬化性ポリオレフィン系オリゴマーとの硬化条件下で反応性でない少なくとも1種のポリオレフィン系ポリウレタンを含む、接着剤組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A.湿気硬化性ポリオレフィン系オリゴマーを含むか、又は含まない、光-及び/又は熱-硬化性ポリオレフィン系オリゴマー;
B.適切な硬化条件下でオリゴマーの硬化を誘発及び/又は促進するための硬化パッケージ;並びに、
C.光-及び/又は熱-硬化性ポリオレフィン系オリゴマー又は湿気硬化性ポリオレフィン系オリゴマーとの硬化条件下で反応性でない少なくとも1種のポリオレフィン系ポリウレタン
を含む、接着剤組成物。
【請求項2】
硬化パッケージが、オリゴマーの硬化を誘発及び/又は促進するのに適切な、1若しくは複数の硬化剤及び/又は1若しくは複数の触媒を含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
硬化パッケージが光開始剤を含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
硬化パッケージが熱開始剤を含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
硬化パッケージが湿気硬化触媒を含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
湿気硬化触媒が、組成物全体の約0.01重量%~約1.0重量%の量で存在する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
光開始剤が、組成物全体の約0.1重量%~約3.0重量%の量で存在する、請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
熱開始剤が、組成物全体の約0.1重量%~約3.0重量%の量で存在する、請求項3に記載の組成物。
【請求項9】
硬化後、0~2のヘイズ値及び0~2の黄色度値を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
ポリオレフィン系オリゴマーが、ポリブタジエン、水素化ポリブタジエン、ブチルゴム、ポリイソブチレン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される骨格を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
ポリオレフィン系オリゴマーを含む湿気硬化性樹脂が、末端アルコキシ基及び/又はペンダントアルコキシ基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
光-又は熱-硬化性ポリオレフィン系オリゴマーが、末端及び/又は(メタ)アクリレート基及び/又はビニル基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
ポリオレフィン系オリゴマーを含む湿気硬化性樹脂が、組成物全体の約5重量%~約80重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
光-又は熱-硬化性ポリオレフィン系オリゴマーが、組成物全体の約5重量%~約80重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
湿気硬化性ポリオレフィン系オリゴマーが、構造:
M-(U-P)n-U-M
(式中、Mは、1又は複数の湿気硬化性基を表し、Uは、ウレタン又はウレア結合を含む成分を表し、そしてPは、ポリオレフィン骨格を表し、そしてnは、1~100である。)
を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
湿気硬化性樹脂が、構造:
【化1】
を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
熱硬化性ポリオレフィン系オリゴマーが、構造:
H-(U-P)n-U-H
(式中、Hは、1又は複数の(メタ)アクリレート又はビニル基を表し、Uは、ウレタン又はウレア結合を含む成分を表し、そしてPは、ポリオレフィン骨格を表し、そしてnは1~100である。)
を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
光硬化性ポリオレフィン系オリゴマーが、構造:
Ph-(U-P)n-U-Ph
(式中、Phは、1又は複数の光硬化性基を表し、Uは、ウレタン又はウレア結合を含む成分を表し、そしてPは、ポリオレフィン骨格を表し、そしてnは、1~100である。)
を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
ポリオレフィン系オリゴマーが、ポリオレフィンジオールとイソシアナトアルコキシシランとの反応生成物により形成されるポリウレタンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
ポリオレフィン系オリゴマーが、ポリブタジエンジオールとイソシアナトトリメトキシシランとの反応生成物により形成されるポリウレタンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
ポリオレフィン系オリゴマーが、約10,000~約15,000の平均分子量(Mw)を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
ポリオレフィン系オリゴマーが、約10,000~約15,000の平均分子量(Mw)を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
(メタ)アクリレートモノマーをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
希釈剤、増粘剤、安定化剤、着色剤、顔料、酸化防止剤、可塑剤、レオロジー調整剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される成分をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
a)ディスプレイパネルと、カバーレンズ又はタッチパネルを含む上部基材とを提供する工程;
b)請求項1に記載の接着剤組成物を、上部基材とディスプレイパネルとの間に配置されるように提供する工程;及び、
c)電磁スペクトルの放射線、熱、及び湿気のうちの少なくとも1つにばく露することによって接着剤組成物を硬化させる工程
を含む、光学アセンブリを製造するプロセス。
【請求項26】
a)光学アセンブリを加熱することによってディスプレイパネルから上部基材を取り外す工程;
b)取り外した基材及びディスプレイパネルを室温(25℃)まで冷却する工程;並びに、
c)上部基材及び/又はディスプレイパネルから接着剤を剥離する工程
を含む、光学アセンブリを再加工するプロセス。
【請求項27】
ディスプレイパネルと、ディスプレイパネル用の上部基材と、それらの間に配置された請求項1に記載の接着剤組成物の反応生成物と、を含む光学アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
分野
本発明は、光学的に透過性の(transparent)/透明な(clear)液体の二重硬化(湿気)及び光硬化接着剤に関する。より詳細には、本発明は、液体の光学的に透過性の/透明な接着剤であって、湿気硬化性ポリオレフィン系オリゴマーを含むか含まない、少なくとも1種の光-及び/又は熱-硬化性ポリオレフィン系オリゴマー;適切な硬化条件下でオリゴマーの硬化を誘発及び/又は促進するための硬化パッケージ;並びに、光-及び/又は熱-硬化性ポリオレフィン系オリゴマー又は湿気硬化性ポリオレフィン系オリゴマーとの硬化条件では反応しない、少なくとも1種のポリオレフィン系ポリウレタン、を有する、接着剤に関する。本発明はまた、このような光学的に透明な接着剤を含む光学アセンブリにも関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の簡単な説明
液体の、光学的に透明な又は透過性の接着剤(「LOCA」又は「LOCAs」)は、光学レンズ、ディスプレイパネル、及びタッチスクリーンの基材への接合など、透明性(clarity)及び透過性(transparency)が必要な用途に使用されてきた。そのような光学部品は、電話、コンピュータスクリーン、及び他の画像装置などの電子デバイスに一般的に使用されている。しかしながら、いくつかの市販されているLOCAは、接合に光硬化と熱硬化の組み合わせを使用する。熱硬化は、多くの用途において、特に接合しようとする部品が熱感受性である場合に欠点を有する。湿気及び光硬化性のLOCAが存在するが、これらのLOCAは、ポリ(メタ)アクリレート骨格をベースとする樹脂を有し、湿気に対して目に見える程のバリア特性をもたらさない。
【0003】
米国特許出願公開第2015/0376476A1号には、約10重量パーセント~約90重量パーセントのポリオレフィン系ポリマーであって、湿気官能基と光硬化官能基の両方を含有するポリマーを、湿気硬化性官能基のみを有するポリオレフィン系ポリマーと組み合わせて含む化学線及び湿気二重硬化性組成物が開示されている。
【0004】
ポリオレフィン系オリゴマーをベースとする湿気硬化樹脂を含めるという選択肢を提供することが望しく、ここで、湿気硬化オリゴマーは、望ましくは、光硬化性基を欠いており、光-及び/又は熱-硬化性樹脂(それ自体が、ポリオレフィンオリゴマーをベースとする)とブレンドされている。
【0005】
本発明は、その選択肢を提供し、そのようにすることで、電磁スペクトラムの放射線及び/又は熱へばく露されると光硬化性及び/又は熱硬化性であるオリゴマーに加えて、湿気硬化性オリゴマーの使用により、暗領域で硬化することができる光学的に透過性の/透明な液体ポリオレフィン系接着剤を提供する。さらに、そのように提供された光学的に透過性の/透明な液体ポリオレフィン系接着剤は、接合ラインに改善されたバリア特性を付与し、ひいては、該接着剤が使用されるデバイスに改善された保護特性を付与する。例えば、タッチスクリーン用途における接着性の接合/シールのバリア特性の改善は、デバイスの電子部中への接合ラインを介した湿気透過への耐性を向上させる。加えて、ポリオレフィンン骨格は、ポリ(メタ)アクリレート骨格とは異なった、また場合によってはそれより改善された機械的特性を与える。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明の一態様には、
A.湿気硬化性ポリオレフィン系オリゴマーを含むか、又は含まない、光-及び/又は熱-硬化性ポリオレフィン系オリゴマー;
B.適切な硬化条件下でオリゴマーの硬化を誘発及び/又は促進するための硬化パッケージ;並びに、
C.光-及び/又は熱-硬化性ポリオレフィン系オリゴマー又は湿気硬化性ポリオレフィン系オリゴマーとの硬化条件下で反応性でない少なくとも1種のポリオレフィン系ポリウレタン
を含む、接着剤組成物が含まれる。
【0007】
湿気硬化性ポリオレフィン系オリゴマーが存在してもよく、以下の構造を有し得る:
M-(U-P)n-U-M
(式中、Mは、1又は複数の湿気硬化性基を表し、Uは、ウレタン又はウレア結合を含む成分を表し、そしてPは、ポリオレフィン骨格を表し、そしてnは、1~100である。)。
【0008】
一例として、湿気硬化性樹脂は、構造:
【0009】
【0010】
熱硬化性ポリオレフィン系オリゴマーは、構造:
H-(U-P)n-U-H
(式中、Hは、1又は複数の(メタ)アクリレート又はビニル基を表し、Uは、ウレタン又はウレア結合を含む成分を表し、そしてPは、ポリオレフィン骨格を表し、そしてnは、1~100である。)
を有する。
【0011】
光硬化性ポリオレフィン系オリゴマーは、構造:
Ph-(U-P)n-U-Ph
(式中、Phは、1又は複数の光硬化性基、例えば(メタ)アクリレートを表し、Uは、ウレタン又はウレア結合を含む成分を表し、そしてPは、ポリオレフィン骨格を表し、そしてnは、1~100である。)
を有する。
【0012】
このような光硬化性ポリオレフィン系オリゴマーの市販の例としては、Sartomer,Exton,PAからのCN9014及びCN9070が挙げられる。
【0013】
本明細書に記載の3つのタイプのオリゴマー(例えば、湿気-、光-、又は熱-硬化性)のいずれか又はすべてのベースとなるポリオレフィン系オリゴマーは、ポリブタジエン、ブチルゴム、ポリイソブチレン、及びそれらのヒドロキシル化型、並びにそれらの組み合わせから選択される骨格を有する。
【0014】
熱硬化性ポリオレフィン系オリゴマーは、組成物全体の約5重量%~約85重量%、望ましくは約5重量%~約30重量%、より望ましくは約7重量%~約15重量%の量で存在し得る。
【0015】
光硬化性ポリオレフィン系オリゴマーは、組成物全体の約5重量%~約85重量%、望ましくは約5重量%~約30重量%、より望ましくは約7重量%~約15重量%の量で存在し得る。
【0016】
湿気硬化性ポリオレフィン系オリゴマーは、使用される場合、組成物全体の約5重量%~約85重量%、望ましくは約15重量%~約70重量%、より望ましくは約30重量%~約60重量%の範囲で存在し得る。
【0017】
硬化性(本明細書で企図される3つの硬化様式のいずれかに基づく硬化性)ポリオレフィン系オリゴマーがポリブタジエンオリゴマーをベースとする場合、オリゴマーの平均分子量(GPCによって決定される)は約2,000~約3,000である。オリゴマーの平均残留物は、1,000Mw未満のポリマーが約0.02%であり、約500Mw未満のポリマーが約ゼロ%である。このオリゴマーの多分散指数(Mw/Mn)は約1~1.3である。
【0018】
硬化性ポリオレフィン系オリゴマーがブチルゴムオリゴマーをベースとする場合、オリゴマーの平均分子量(GPCによって決定される)は約10,000~約15,000である。オリゴマーの平均残留物は、1,000Mw未満のポリマーが約1.8%であり、5000Mw未満のポリマーが0.9%である。このオリゴマーの多分散指数(Mw/Mn)は約1.9~2.14である。
【0019】
硬化性ポリオレフィン系オリゴマーがポリイソブチレンオリゴマーをベースとする場合、オリゴマーの平均分子量(GPCによって決定される)は約10,000~約15,000である。オリゴマーの平均残留物は、望ましくは1,000Mw未満のポリマーについては0%であり、500Mw未満のポリマーについては0%であり、多分散性指数(Mw/Mn)は約1~2.22である。
【0020】
光-及び/又は熱-硬化性ポリオレフィン系オリゴマー又は湿気硬化性ポリオレフィン系オリゴマーとの硬化条件下で反応しないポリオレフィン系ポリウレタンは、以下:
HO-U-P-U-OH
(式中、Uは、ウレタン又はウレア結合を含む成分を表し、そしてPは、ポリオレフィン骨格を表す。)
によって表され得る。
【0021】
硬化パッケージ(curative package)は、オリゴマーの硬化を誘発及び/又は促進するのに適切な、1若しくは複数の硬化剤(curative)及び/又は1若しくは複数の触媒を含む。例えば、硬化パッケージは、光開始剤、熱開始剤、湿気硬化触媒、及びそれらの組み合わせを含み得る。
【0022】
本発明の別の態様では、以下の工程を含む光学アセンブリを製造するプロセスが提供される:ディスプレイパネル及びカバーレンズ又はタッチパネルなどの上部基材を提供する工程;本発明の二重硬化性の光学的に透過性の接着剤組成物をディスプレイパネル上に配置する工程;、及び、二重硬化性の光学的に透過性の接着剤組成物を、湿気にばく露されているか又はばく露されていない状態で、高温及び/又は電磁放射線にばく露することによって硬化させる工程。
【0023】
本発明のさらに別の態様には、以下の工程を含む光学アセンブリを再加工するプロセスが含まれる:光学アセンブリを加熱することによってディスプレイパネルから上部基材を取り外す工程;取り外した基材及びディスプレイパネルを室温(25℃)まで冷却する工程;並びに、上部基材及び/又はディスプレイパネルから接着剤を剥離する工程。このプロセスは、本発明の二重硬化性の光学的に透過性の接着剤組成物をディスプレイパネル上に配置する工程;並びに、二重硬化性の光学的に透明な接着剤組成物を、湿気にばく露されているか又は曝されていない状態で、高温条件及び/又は電磁放射線にばく露することによって硬化させる工程をさらに含み得る。
【0024】
本発明の別の態様では、ディスプレイパネルと;ディスプレイパネル用の上部基材と;ディスプレイパネルを上部基材に接着させる本発明の二重硬化性の光学的に透過性の接着剤組成物からなる接合と、を含む光学アセンブリが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
詳細な説明
LOCAに適用される場合、用語「液体」は、接着剤が室温(25℃)で液体であるか、又は、周囲条件で液体に溶融され、溶融状態でワークピース又はデバイスに塗布できることを意味する。望ましくは、本発明の組成物は、室温で液体である。
【0026】
「光学的に透明」という語句は、低い黄色度及び低いヘイズの読み値を含む。例えば、
本発明の組成物について、(透明なスライドに対して測定される)Datacolor 650装置における比色の読み値は、ヘイズが約0~2%、望ましくがヘイズは約0~1%未満であり;そして「黄色度b(yellowness b)」が0~2の値、望ましくは黄色度bが1未満(under)の値、より望ましくは0.5未満の値である。
【0027】
LOCAは、タッチパネル及びディスプレイデバイスの製造及びアセンブリにおいて、カバーレンズ、プラスチック又は他の光学材料を主センサユニットに又は互いに接合するために広く使用されている。LOCAは、デバイスの光学特性を改善するだけでなく、耐久性などの他の特性を改善する傾向がある。本発明のLOCAは、一般に、例えば、タッチパネルを主液晶ディスプレイに接合するために、また、レンズなどの任意の保護カバーをタッチパネルに接合するためにも使用される。LOCAの商業的用途としては、静電容量(capacitive)タッチパネル及び3Dテレビの組み立て及び製造が挙げられる。
【0028】
LOCAは、少なくとも約85%の光透過率を示す場合、光学的に透明であるとみなされる。光透過率の測定は、当業者には知られており、300μm厚のサンプルで、以下の透過率測定の試験方法に従って測定され得る:
・イソプロパノールで拭き取られており、その両端に2つの100μm厚のスペーサーテープが取り付けられた75mm×50mmの平らなマイクロスライド(Dow Corning,Midland,MI製のガラススライド)上にLOCAの小滴を置く。
・2枚目のガラススライドをLOCAを覆って所定の力で(under a force)取り付ける。
・UV光源下でLOCAを硬化させる。
・1枚のブランクガラススライドをバックグラウンドとして使用して、Agilentの分光計Cary 300を用いて、波長380nmから780nmの光透過率を測定する。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「オリゴマー」は、互いに連結した少なくとも2つのモノマー単位を含む比較的低分子量のポリマー化合物を指す。望ましくは、オリゴマーは、互いに連結した2~1000個のモノマー単位、より望ましくは、互いに連結した2~300個のモノマー単位を含む。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「(メタ)アクリル」は、アクリル、メタクリル、又はそれらの任意の組み合わせを示す。同様に、用語「(メタ)アクリルオキシ」は、アクリルオキシ、メタクリルオキシ、又はそれらの任意の組み合わせを示し;用語「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸、メタクリル酸、又はそれらの任意の組み合わせを示し;用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート、メタクリレート、又はそれらの任意の組み合わせを示し;用語「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド、メタクリルアミド、又はそれらの任意の組み合わせを示す。本発明に使用可能な(メタ)アクリレート中の(メタ)アクリル基の数は、特に限定されず、1又は複数であることができる。
【0031】
本発明の接着剤組成物は、貯蔵寿命が長く、光学アセンブリを形成するための積層中など、良好な加工性を示す。接着剤組成物は、様々な信頼性条件を経た後に黄変を示さない。さらに、接着剤組成物は過酷な信頼性条件下であっても優れた光学性能を示す。
【0032】
本発明の接着剤組成物は、均一でない表面上への塗布に好適であり、大型パネル及び小型パネルに使用することができ、間隙を充填するのに理想的であり、結露(condensation)及び曇りを回避し、極端な温度に対する耐性をもたらし、極薄のディスプレイデザインを可能にする。
【0033】
光学アセンブリの別の課題は、部品が組み立てられた後に欠陥が発見された場合に、LCDモジュール又は他の高価な部品を取り外して再使用し得るように、接着剤組成物を再加工し得る環境を作り出すことである。例えば、末端消費者が修理保証を求めて欠陥のあるディスプレイを返品する場合がある。そのような場合、ディスプレイ製造業者はディスプレイを分解し、接着剤残渣を除去することを望み、そしてLCDモジュールなどの高価な機能している部品を再利用しようとするであろう。従来の光硬化性LOCAでは、ディスプレイを分解した後、接着剤残渣は、構成部品に粘着した粘着性の小片にばらばらになる。有機溶剤を使用して残渣を洗浄することは、非常に時間がかかるだけでなく、重大な環境問題であり、また、労働安全衛生にも影響を及ぼす。
【0034】
したがって、本発明の一態様は、光学アセンブリの再加工をより容易に、より実用的にすることである。本発明はまた、この問題にも対処する。
【0035】
本発明の接着剤組成物は、必要な接合能と接着/シーラント性能の両方、及び優れたバリア特性をもたらすフィルムを形成することができる。加えて、特定の意図した用途のための機械的特性が強化され、また機械的特性を、ポリオレフィン特性、特に靱性及びバリア特性を利用できるように調整してもよい。
【0036】
本発明の組成物の調製において、湿気硬化性ポリオレフィン系オリゴマーは、使用される場合、ヒドロキシル末端ポリオレフィン(すなわち、ヒドロキシル末端ポリブタジエン、ヒドロキシル末端ブチルゴム、ヒドロキシル末端ポリイソブチレン)をアルコキシシラン含有イソシアネート、例えばトリメトキシシラン含有イソシアネート(すなわち、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン)と反応させて湿気硬化性ポリオレフィン系樹脂を調製することによって調製される。湿気硬化性官能性の程度は、当然、存在するヒドロキシル基の数によって変化させてよい。
【0037】
例えば、湿気硬化性ポリオレフィン系オリゴマーを調製するための概要は、以下のように表され得る:
【0038】
【0039】
光硬化性ポリオレフィン系オリゴマーは、ヒドロキシル化ポリオレフィンをアクリル化イソシアネートと反応させて、(メタ)アクリレートを含有するオリゴマーを形成することによって調製してもよい。(メタ)アクリル化の程度も、所望により調整して良い。
【0040】
光硬化性ブチルゴム系樹脂の例は、以下の構造を有し得る:
【0041】
【0042】
有用なヒドロキシル化ポリオレフィンとしては、ヒドロキシル化ポリブタジエン、ヒドロキシル化ブチルゴム、ヒドロキシル化ポリイソプレン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。これらのヒドロキシル化ポリオレフィンを、アルコキシ基(例えば、アルコキシシラン基)などの湿気硬化基を含むイソシアネート官能基化成分と反応させて、該オリゴマーを湿気硬化性にするか、代わりに、イソシアネート含有アクリレートと反応させて該オリゴマーを光硬化性にしてもよい。
【0043】
本発明では、望ましくは、湿気硬化性基と熱及び/又は光硬化性基との両方を同一分子上に含まないオリゴマーを選択して使用する。したがって、硬化メカニズムの各々について、別個のオリゴマーを含むことが望ましい。配合の観点からはより複雑でおそらく煩雑であるが、このアプローチは、ブレンド中に存在する各タイプの硬化性オリゴマーの量を減らすことによって、硬化のより良好な制御を可能にするために有利であることが判明している。例えば、湿気硬化性オリゴマーの添加により、硬化した接着剤組成物に改善されたバリア特性を付与することができ、これはいくつかの商業的用途において求められ得る。このような硬化メカニズムの制御は、単一の樹脂成分が両方のタイプの湿気硬化性基を含有していた場合は、より困難となる傾向にある。
【0044】
一方、単一の分子上に複数のタイプの硬化基を有することと比較すると、1つのメカニズムによってのみ硬化する樹脂の使用により、市販の、ひいては独自のものを製造するよりもおそらく安価なオリゴマーの使用も可能となる。従って、ポリオレフィン系オリゴマーのブレンド、特に、ポリブタジエン系オリゴマーのブレンド;ブチルゴム系オリゴマーのブレンド、及びポリイソプレン系オリゴマーのブレンドは、望ましい物性プロファイルを達成するための本発明の焦点である。
【0045】
非官能性ポリマーは、硬度及び弾性率などの接着性能を調整するために使用される。LOCA用途では、接着剤は、柔らかく低弾性である必要がある。低分子量ポリオレフィンオリゴマーと対比して、ポリウレタン樹脂を使用する利点は、ポリウレタン樹脂は、伸長率がより高く弾性性能を向上させ、高温でのクラック形成を防止することが示されていることである。
【0046】
ジイソシアネートは、実施例に示すように、オリゴマー又は伸長オリゴマー中にウレタン結合を形成するために有用である。ジイソシアネートは、以下から選択され得る:イソホロンジイソシアネート(「IPDI」)、IPDIイソシアヌレート、ポリマーIPDI、ナフタレン1,5-ジイソシアネート(「NDI」)、メチレンビスシクロヘキシルイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート(「MDI」)、ポリマーMDI、トルエンジイソシアネート(「TDI」)、TDIのイソシアヌレート、TDI-トリメチロールプロパン付加物、ポリマーTDI、ヘキサメチレンジイソシアネート(「HDI」)、HDIイソシアヌレート、HDIビウレート(biurate)、ポリマーHDI、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニル-4,4’-ジイソシアネート(「DDDI」)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(「TMDI」)、ノルボルナンジイソシアネート(「NDI」)、及び4,4’-ジベンジルジイソシアネート(「DBDI」)。またジイソシアネートの組み合わせを使用してもよい。またモノイソシアネートも本発明で使用され得る。
【0047】
ジイソシアネート化合物を(メタ)アクリレート含有ヒドロキシル化合物と反応させてウレタン含有(メタ)アクリレートを形成し、次いでこれをヒドロキシル化ポリオレフィンとさらに反応させて光硬化性ポリオレフィン系オリゴマーを形成することができる。
【0048】
上記のように使用され得る(メタ)アクリレート含有ヒドロキシル化合物の中には、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、3-ヒドロキシブチルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、3-(アクリロイルオキシ)-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-イソシアナトエチルメタクリレート、2-イソシアナトエチルアクリレート、及びポリ(プロピレングリコール)(メタ)アクリレートが含まれる。これらのヒドロキシル化化合物の組み合わせを使用してもよい。
【0049】
これらの(メタ)アクリレート含有ヒドロキシル化合物は、ジイソシアネートと反応すると、2-イソシアナトエチルアクリレート、2-イソシアナトエチルメタクリレート、3-イソシアナトプロピル(メタ)アクリレート、2-イソシアナトプロピル(メタ)アクリレート、4-イソシアナトブチル(メタ)アクリレート、3-イソシアナトブチル(メタ)アクリレート、及び2-イソシアナトブチル(メタ)アクリレートを形成し得る。
【0050】
湿気硬化性ポリオレフィン系オリゴマーを製造するには、アルコキシ含有イソシアネート、例えば、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルジメチルエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、及び3-イソシアナトプロピルジメチルメトキシシランを選択すべきである。
【0051】
本発明の接着剤組成物はまた、開始剤を含有し、その性質、種類、及び量は、選択したポリオレフィン系オリゴマーの性質、種類、及び量に依存する。
【0052】
使用される場合、熱開始剤は、ペルオキシ材料、例えば、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、及びペルエステルから選択され得、これらは、適切な高温条件下で分解してペルオキシフリーラジカルを形成する。熱開始剤としては、一部の例を挙げると、ラウロイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、及びtert-アミルペルオキシピバレートなどが挙げられる。アゾニトリルもまた、高温条件に曝されるとフリーラジカルを生成し、このため本発明の組成物と共に使用するのに適している。
【0053】
熱開始剤は、組成物全体の約0.1重量%~約3.0重量%、望ましくは組成物全体の約0.5重量%~約2.0重量%の量で使用され得る。
【0054】
使用される場合、光開始剤は、以下から選択され得る:ベンジルケタール、ヒドロキシケトン、アミンケトン、及びアシルホスフィンオキシド、例えば2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-アセトン、ジフェニル(2,4,6-トリフェニルベンゾイル)-ホスフィンオキシド、2-ベンジル-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、ベンゾインジメチルケタールジメトキシアセトフェノン、α-ヒドロキシベンジルフェニルケトン、1-ヒドロキシ-1-メチルエチルフェニルケトン、オリゴ-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)アセトン、ベンゾフェノン、メチルo-ベンジルベンゾエート、メチルベンゾイルホルメート、2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジsec-ブトキシアセトフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、2-イソプロピルチオキサンテノン、2-メチルアントロン、2-エチルアントロン、2-クロロアントロン、1,2-ベンズアントロン、ベンゾイルエーテル、ベンゾインエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α-フェニルベンゾイン、チオキサンテノン、ジエチルチオキサンテノン、1,5-アセトナフトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、エチルp-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、及びそれらの組み合わせ。
【0055】
望ましくは、光開始剤は、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-アセトンとジフェニル(2,4,6-トリフェニルベンゾイル)-ホスフィンオキシドとの組み合わせである。
【0056】
光開始剤は、組成物全体の約0.1重量%~約3.0重量%、望ましくは組成物全体の約0.5重量%~約2.0重量%の量で使用され得る。
【0057】
湿気硬化触媒は任意であるが、湿気硬化性ポリオレフィン系オリゴマーが本発明の組成物の一部である場合、望ましくは湿気硬化を達成するために有用な量で本発明の組成物中に組み込まれる。
【0058】
例えば、湿気硬化触媒の有用な量としては、組成物全体の約0.01重量%~約1.0重量%、望ましくは組成物全体の約0.05重量%~約0.5重量%の量である。
【0059】
有機金属触媒を湿気硬化触媒として含めてもよい。有機金属触媒は、望ましくは、例えば第一スズオクトアート、ジブチルスズジラウレート、及びジブチルスズジアセテートなどの、有機スズ触媒である。
【0060】
様々な追加の添加剤を本発明の組成物中に組み込んでもよく、反応性及び非反応性希釈剤、増粘剤、安定化剤、モノマー、着色剤、顔料、酸化防止剤、可塑剤、触媒、促進剤、フリーラジカル捕捉剤、フリーラジカル開始剤、レオロジー調整剤、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0061】
これらの添加剤は、それらの意図される目的に十分な量で、一般には組成物全体の約0.1重量%~約2重量%の量で使用される。
【0062】
本発明において有用なモノマー添加剤は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリルアミドから選択され得、これらは望ましくは組成物の流動性の要件を妨げないように、常温で液体であることが望ましい。本明細書で使用される場合、用語「常温」は、約25℃を意味する。
【0063】
(メタ)アクリレートに関して、本発明の組成物は、様々な単官能性(メタ)アクリレート及び多官能性(メタ)アクリレートを含み得る。
【0064】
有用な単官能性(メタ)アクリレートの実例としては、アルキル(メタ)アクリレート、アルケニル(メタ)アクリレート、及びヘテロシクロ(メタ)アクリレートが挙げられる。アルキル基は、望ましくは、1~20個、望ましくは1~10個の炭素原子を有する置換又は無置換のアルキル基であってよく、任意選択で、1~10個の炭素原子を有するアルキル基、1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基、6~10個の炭素原子を有するアリールオキシ基、又は2~10個の炭素原子を有するエポキシ基から選択される少なくとも1個の置換基を有する。
【0065】
(メタ)アクリレートのアルケニル基は、望ましくは、2~20個の炭素原子、望ましくは2~10個の炭素原子を有する置換又は非置換のアルケニル基であってよく、任意選択で、1~10個の炭素原子を有するアルキル基、1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基、6~10個の炭素原子を有するアリールオキシ基、2~10個の炭素原子を有するエポキシ基、ヒドロキシル基等から選択される少なくとも1個の置換基を有する。
【0066】
(メタ)アクリレートのヘテロシクロ基は、望ましくは、2~20個の炭素原子、望ましくは2~10個の炭素原子を有する置換又は非置換の複素環基であってよく、N及びOから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含み、そして任意選択で、1~10個の炭素原子を有するアルキル基、1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基、6~10個の炭素原子を有するアリールオキシ基、又は2~10個の炭素原子を有するエポキシ基から選択される少なくとも1個の置換基を有する。
【0067】
単官能性(メタ)アクリレートの具体例としては、これらに限定されるものではないが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフリル(メタ)アクリレート、ラウリルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソデシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、オクタデシルアクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、モルホリン(メタ)アクリレート、及びカプロラクトンアクリレートが挙げられる。
【0068】
有用な多官能性(メタ)アクリレートの具体例としては、これらに限定されるものではないが、エチレングリコールジメタクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、及びペンタエリスリトールテトラアクリレートが挙げられる。
【0069】
また(メタ)アクリルアミド添加剤を本発明で使用してもよく、非置換(メタ)アクリルアミド、N-アルキル置換(メタ)アクリルアミド、又はN,N-ジアルキル置換(メタ)アクリルアミドであってよい。N-アルキル置換(メタ)アクリルアミドでは、アルキル置換基は、望ましくは1~8個の炭素原子を有し、例えばN-エチルアクリルアミド、N-オクチルアクリルアミド等である。N,N-ジアルキル置換(メタ)アクリルアミドでは、アルキル置換基は、望ましくは1~4個の炭素数を有し、例えばN,N-ジメチルアクリルアミド及びN,N-ジエチルアクリルアミドである。
【0070】
シランなどの接着促進剤もまた、本発明の組成物において有用である。
【0071】
本発明の接着剤組成物は、当技術分野において知られている従来の方法によって接合される基材に適用され得る。本発明の接着剤組成物は、ガラス、金属、及びプラスチック基材に対して優れた接合性を有する。本発明の接着剤組成物を基材上の所定の領域に塗布した後、UV領域などの電磁スペクトルの放射線を先ず照射し、これにより、例えば5~30秒以内に、光到達可能な領域の接着剤組成物に迅速な硬化をもたらすことができる。あるいは、又はそれに加えて、熱へのばく露を使用して、本発明の接着剤組成物を硬化又はさらに硬化させてもよい。
【0072】
暗領域において接着剤組成物を硬化させるために、湿気硬化メカニズムが有用であり得る。これに関して、完全な湿気硬化は、完全な硬化を達成するために1日かかる場合がある。
【0073】
本発明の接着剤組成物の粘度は、種々の用途及びプロセス条件に応じて広い範囲で、例えば、25℃で1,000mPa・s~10000mPa・s(Brookfield粘度計、スピンドルNo.52、回転数1rpmで測定)の範囲で調整され得る。
【実施例0074】
実施例1:
50%湿気硬化性官能化ポリブタジエンの調製
オーバーヘッドスターラー、熱電対、及び窒素入/出口を備えたジャケット付き反応容器に、ヒドロキシル末端ポリブタジエン(201.19g、0.065モル)を添加し、60℃に加熱した。その温度になったら、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン(13.32g、0.065モル)を添加し、さらに4時間混合させた。FT-IRを使用して反応の進行をモニターし、2200cm-1のNCOバンドの消失を、反応が完了した証拠とした。透明かつ無色の樹脂を滴下して、50%官能化湿気硬化性ポリブタジエン系成分(210.7g、収率98.2%)を得た。GPCにより測定した平均分子量(Mw)は5717であり;多分散性指数(Mw/Mn)は1.13であり;平均ポリマー残留物の読み値は:ポリマー<1,000MWが0.026%;ポリマー<500MWが0.000%であった。
【0075】
実施例2:
75%アクリレート官能基化ブチルゴムの調製
オーバーヘッドスターラー及び熱電対を備えたジャケット付き反応容器に、ヒドロキシル末端ブチルゴム(251.28g、0.036モル)を添加し、75℃に加熱した。その温度になったら、2-イソシアナトエチルアクリレート(7.60g、0.064モル)を添加し、さらに5時間混合させた。FT-IRを使用して反応の進行をモニターし、2200cm-1のNCOバンドの消失を反応が完了した証拠とした。透明かつ無色の樹脂を滴下して、75%アクリレート官能化ブチルゴム(250.1g、収率96.6%)を得た。GPCにより測定した平均分子量(Mw)は12,711であり;多分散性指数(Mw/Mn)は2.14であり;平均ポリマー残留物の読み値は、ポリマー<1,000MWが1.862%;ポリマー<500MWが0.991%であった。
【0076】
実施例3:
100%メタクリレート官能化ブチルゴムの調製
オーバーヘッドスターラー及び熱電対を備えたジャケット付き反応容器に、ヒドロキシル末端ブチルゴム(284.20g、0.041モル)を添加し、75℃に加熱した。その温度になったら2-イソシアナトエチルメタクリレート(12.60g、0.082モル)を添加し、さらに5時間混合させた。FT-IRを使用して反応の進行をモニターし、2200cm-1のNCOバンドの消失を反応が完了した証拠とした。透明かつ無色の樹脂を滴下して100%メタクリレート官能化ブチルゴム(288.5g、収率97.2%)を得た。
【0077】
実施例4:
50%アクリレート官能化ポリブタジエンの調製
オーバーヘッドスターラー及び熱電対を備えたジャケット付き反応容器に、ヒドロキシル末端ポリブタジエン(265.3g、0.086モル)を添加し、60℃に加熱した。その温度になったら、2-イソシアナトエチルアクリレート(11.47g、0.081モル)を添加し、さらに4時間混合させた。FT-IRを使用して反応の進行をモニターし、2200cm-1のNCOバンドの消失を、反応が完了した証拠とした。透明かつ無色の樹脂を滴下して100%メタクリレート官能化ブチルゴム(271.8.5g、収率98.2%)を得た。
【0078】
実施例5:
伸長ポリブタジエン(2:1 OH:NCO)の調製
オーバーヘッドスターラー、熱電対、及び窒素入/出口を備えたジャケット付き反応容器に、ヒドロキシル末端ポリブタジエン(323.75g、0.104モル)を添加し、60℃に加熱した。その温度になったら、1,6-ヘキサンジイソシアネート(8.80g、0.052モル)を(1mL/分)で計量供給し、さらに6時間混合させた。FT-IRを使用して反応の進行をモニターし、2200cm-1のNCOバンドの消失を、反応が定量的収率で完了した証拠とした。GPCにより測定した平均分子量(Mw)は14,590であり;多分散性指数(Mw/Mn)は1.56であり;平均ポリマー残留物の読み値は、ポリマー<1,000Mwが0.00%;ポリマー<500Mwが0.00%であった。
【0079】
実施例6:
伸長ポリブタジエン(1.8:1 OH:NCO)の調製
オーバーヘッドスターラー、熱電対、及び窒素入/出口を備えたジャケット付き反応容器に、ヒドロキシル末端ポリブタジエン(214.23g、0.069モル)を添加し、60℃に加熱した。その温度になったら、1,6-ヘキサンジイソシアネート(6.47g、0.039モル)を(1mL/分)で計量供給し、さらに6時間混合させた。FT-IRを使用して反応の進行をモニターし、2200cm-1のNCOバンドの消失を、反応が定量的収率で完了した証拠とした。GPCにより測定した平均分子量(Mw)は20,850であり;多分散性指数(Mw/Mn)は1.54であり;平均ポリマー残留物の読み値は、ポリマー<1,000Mwが0.00%;ポリマー<500Mwが0.00%であった。
【0080】
実施例7:
伸長ポリブタジエン(1.6:1 OH:NCO)の調製
オーバーヘッドスターラー、熱電対、及び窒素入/出口を備えたジャケット付き反応容器に、ヒドロキシル末端ポリブタジエン(213.87g、0.069モル)を添加し、60℃に加熱した。その温度になったら、1,6-ヘキサンジイソシアネート(7.26g、0.043モル)を(1mL/分)で計量供給し、さらに6時間混合させた。FT-IRを使用して反応の進行をモニターし、2200cm-1のNCOバンドの消失を、反応が定量的収率で完了した証拠とした。GPCにより測定した平均分子量(Mw)は26,432であり;多分散性指数(Mw/Mn)は1.63であり;平均ポリマー残留物の読み値は、ポリマー<1,000Mwが0.00%;及びポリマー<500Mwが0.00%であった。
【0081】
実施例8:
伸長ポリブタジエン(1.4:1 OH:NCO)
オーバーヘッドスターラー、熱電対、及び窒素入/出口を備えたジャケット付き反応容器に、ヒドロキシル末端ポリブタジエン(218.34g、0.070モル)を添加し、60℃に加熱した。その温度になったら、1,6-ヘキサンジイソシアネート(8.48g、0.050モル)を(1mL/分)で計量供給し、さらに6時間混合させた。FT-IRを使用して反応の進行をモニターし、2200cm-1のNCOバンドの消失を、反応が定量的収率で完了した証拠とした。GPCにより測定した平均分子量(Mw)は37,777であり;多分散指数(Mw/Mn)は1.78であり;平均ポリマー残留物の読み値は、ポリマー<1,000Mwが0.00%;ポリマー<500Mwが0.00%であった。
【0082】
実施例9:
光-及び湿気-硬化性の光学的に透明な接着剤配合物
実施例9及び3つの比較例(比較例1~3)は、湿気硬化性オリゴマー(合成実施例1から)及びSartomerからCN9070の商品表示で市販されている及びアクリレート官能化ポリオレフィンオリゴマーを含有する光-及び湿気-硬化性LOCA配合物である。実施例9はまた、非官能性ポリウレタン(上記合成実施例5から)も有し;比較例1は、このような非官能性ポリウレタンを有さず;比較例2及び3は合成実施例1及び2で原料として用いたヒドロキシル末端オリゴマーを含む。サンプルの配合を下記の表Aに示す。
【0083】
【0084】
実施例10:
性能評価
実施例9の接着剤組成物の評価方法は以下のとおりである。
【0085】
光硬化は、少なくとも約3000m3/cm2のUV放射線を放射する水銀アークランプを使用して行った。湿気硬化は、約23℃の温度及び約50%の相対湿度の湿度チャンバで行った。最初に水銀アークランプにばく露し、次いで所定の時間、湿度チャンバ内に留置することによって、UV及び湿気二重硬化を用いた。水分硬化速度を表面タックフリー時間で測定し、ショア00硬度をASTM D2240に従って測定した。
【0086】
ラミネーション厚(又はギャップ)が12.5ミル(約318μm)である2枚のガラススライドの間にLOCAを配置し、UV光へのばく露による硬化を前述のように行った。結果として積層アセンブリが形成され、そして次いで、約95℃の高温条件及びQUV(QUV Accelerated Weathering Tester)(0.68W/m2@340nm、50℃)に約500時間にばく露した。これらの老化条件では、接合ラインの欠陥が発生する場合があり、その場合は、観察及び記録した。性能試験の結果を、下記の表Bに要約する。
【0087】
【0088】
この評価は、非官能性ポリオレフィン系ポリウレタンの添加により、硬度を下げ、また高温及びQUV老化下の気泡又は亀裂の形成を防止することができることを示す結果をもたらした。
【0089】
実施例11:
光及び/又は湿気硬化性の光学的に透明な接着剤の光学特性
実施例9の光学特性及び信頼性試験を評価し、その結果を下記の表Cに示す。光学特性測定のためのサンプルは、12.5ミル(約318μm)の厚さ(又はギャップ)をその間に有する2枚のガラススライドアセンブリを用意することによって作製した。サンプルは、前述したように、UVのみ、湿気のみ、又はUV及び湿気二重硬化によって硬化させた。光学特性、典型的には、透過率、ヘイズ、及びb*値(黄色度)を、Datacolor Corporationから入手可能なDatacolor 650装置により、ASTM D1003に準拠して測定した。またサンプルを、以下のような信頼性試験条件に供した:硬化サンプルを、3つの異なる時間(168、500、及び1000時間)の間、高温高湿度チャンバ(約85℃、相対湿度85%)、高温(約95℃)、及び上記の条件下でQUVに置いた。
【0090】
【0091】
望ましくは、ヘイズ値及び黄色度値は共に1.0未満であり、したがって、本発明の目的のために十分に光学的に透明であるとみなされる。