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特開2023-118869紫外及び可視波長のプラズモニックフォトカソードエミッタ
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  • 特開-紫外及び可視波長のプラズモニックフォトカソードエミッタ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118869
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】紫外及び可視波長のプラズモニックフォトカソードエミッタ
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/073 20060101AFI20230818BHJP
   H01J 37/06 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
H01J37/073
H01J37/06 A
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110436
(22)【出願日】2023-07-05
(62)【分割の表示】P 2021547727の分割
【原出願日】2020-02-14
(31)【優先権主張番号】62/806,822
(32)【優先日】2019-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/789,650
(32)【優先日】2020-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イオーケイミディ カテリナ
(72)【発明者】
【氏名】デルガド ギルダルド
(72)【発明者】
【氏名】ヒル フランシス
(72)【発明者】
【氏名】ロペス ガリー
(72)【発明者】
【氏名】ゴンザレス ミゲル エー
(72)【発明者】
【氏名】ブロディー アラン
(57)【要約】
【課題】フォトカソードの量子効率(QE)を高める。
【解決手段】フォトカソードエミッタであり、透明基板、フォトカソード層及びそれら透明基板・フォトカソード層間に配置されたプラズモニック構造アレイを備えうる。そのプラズモニック構造をスポット閉じ込め構造、並びにフォトカソードをバイアスするための電気的下地層として、働かせることができる。そのプラズモニック構造により、サブ波長サイズで入射光を閉じ込めることができる。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトカソードエミッタであって、
透明基板と、
フォトカソード層と、
それら透明基板・フォトカソード層間に配置されたプラズモニック構造アレイと、
前記フォトカソード層と逆側の前記プラズモニック構造アレイ上に配置された、ドープド広バンドギャップ半導体層と、
を備えるフォトカソードエミッタ。
【請求項2】
請求項1に記載のフォトカソードエミッタであって、前記透明基板が、紫外線熔融シリカ、CaF、石英、サファイア、MgF及びLiFのうち一種類又は複数種類を含有するフォトカソードエミッタ。
【請求項3】
請求項1に記載のフォトカソードエミッタであって、前記フォトカソード層が負電子親和力又は正電子親和力素材を含有するフォトカソードエミッタ。
【請求項4】
請求項3に記載のフォトカソードエミッタであって、前記フォトカソード層が、Cs、CsBr、CsI、Ba、BaO及びBaオン難燃酸化物のうち一種類又は複数種類を有するフォトカソードエミッタ。
【請求項5】
請求項1に記載のフォトカソードエミッタであって、前記ドープド広バンドギャップ半導体層がドーパントを含有しており、そのドーパントがモリブデン及びタングステンのうち少なくとも一方であるフォトカソードエミッタ。
【請求項6】
請求項1に記載のフォトカソードエミッタであって、前記プラズモニック構造が複数個のプラズモニックキャビティを画定するフォトカソードエミッタ。
【請求項7】
フォトカソードエミッタであって、
透明基板と、
フォトカソード層と、
それら透明基板・フォトカソード層間に配置されたプラズモニック構造アレイと、
前記プラズモニック構造アレイ・前記フォトカソード層間の層
を有し、その層がそれらプラズモニック構造アレイ・フォトカソード層間の格子マッチングを担うフォトカソードエミッタ。
【請求項8】
請求項7に記載のフォトカソードエミッタであって、
前記フォトカソード層が、GaN、Al(In)GaN(P)の合金、Cs(K)Te(Sb)、CsI及びCsBrのうち一種類又は複数種類を含有するフォトカソードエミッタ。
【請求項9】
請求項7に記載のフォトカソードエミッタであって、
前記透明基板が、紫外線熔融シリカ、CaF、石英、サファイア、MgF及びLiFのうち一種類又は複数種類を含有するフォトカソードエミッタ。
【請求項10】
請求項7に記載のフォトカソードエミッタであって、
前記プラズモニック構造が金属質素材のアレイを有するフォトカソードエミッタ。
【請求項11】
請求項10に記載のフォトカソードエミッタであって、
前記金属質素材がアルミニウムであるフォトカソードエミッタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件開示はフォトカソードエミッタに関する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願への相互参照)
本願では、2019年2月17日付米国仮特許出願第62/806822号に基づく優先権を主張し、参照によりその開示内容を繰り入れることとする。
【0003】
半導体製造業界の進展により歩留まり管理に、とりわけ計量及び検査システムに課される要請が強まっている。限界寸法が縮まり続けているだけでなく、業界ではより短時間で高歩留まり高付加価値生産を達成することが求められている。歩留まり問題を察知してからそれを正すまでの合計時間を縮めることが、半導体製造業者にとり投資収益率の決め手となっている。
【0004】
半導体デバイス、例えば論理デバイス及びメモリデバイスを製造する際には、通常、多数の製造プロセスを用い半導体ウェハを処理することで、それら半導体デバイスの様々なフィーチャ(外形特徴)及び複数個の階層を形成する。例えばリソグラフィなる半導体製造プロセスでは、半導体ウェハ上に配列されたフォトレジストへとレティクルからパターンを転写する。半導体製造プロセスの更なる例としては、これに限られるものではないが化学機械研磨(CMP)、エッチング、堆積及びイオンインプランテーションがある。単一の半導体ウェハ上に配列をなし複数個の半導体デバイスを作成し、それらを個別の半導体デバイスへと分けるようにするとよい。
【0005】
電子ビームは、半導体製造時に多種多様なアプリケーションにて用いられる。例えば電子ビームを変調し、半導体ウェハ、マスクその他のワークピース上にある電子感応レジスト上へと差し向けることで、そのワークピース上に電子パターンを発生させることができる。電子ビームを用いウェハを検査すること、例えばそのウェハに発する電子又はウェハにて反射された電子の検出により欠陥、異常又は不要物体を検出することもできる。
【0006】
こうした検査プロセスは半導体製造中の様々な工程にて用いられており、それによりその製造プロセスの歩留まり向上ひいては利益増進が促進されている。検査は、常に、半導体デバイス例えば集積回路(IC)の製造の重要部分とされてきた。しかしながら、半導体デバイスの寸法が小さくなるにつれ、小さめな欠陥でもデバイスに不調が起きうるようになったため、許容しうる半導体デバイスの首尾よい製造上、検査がかつてなく重要になってきている。例えば、半導体デバイスの寸法が小さくなるにつれて、相対的に小さな欠陥でさえもそれら半導体デバイスに不要な異常を引き起こしかねないことから、より小さなサイズの欠陥の検出が必要になってきている。
【0007】
電子ビームの生成にはフォトカソードが用いられてきた。1本の光ビームをフォトカソードシステム上に入射させることで、高電子流密度送給が可能な1本の高輝度電子ビームを発生させることができる。加速器、電子顕微鏡、リソグラフィツール又は検査ツールの照明等のアプリケーションでは、プレーナなフォトカソード構造を用いることができる。リソグラフィツールや検査ツールでは、その光生成された電子ビームを、数ナノメートルサイズのスポットへと集束させることが必要になりうる。電子光学系の限界故に、そうした小スポット条件がフォトカソード平面上での初期スポットサイズに転嫁され、それが紫外波長でさえもサブ波長値に制限されることとなりうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0285128号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
フォトカソード付のプラズモニック構造が赤外波長、即ちプラズモニクスに用いられる最も一般的な貴金属例えば金及び銀が強い共鳴を呈する波長にて、試行されている。これらの構造が示すところによれば、プラズモン共鳴により、可視又は紫外波長(120~700nm)でのフォトカソードの量子効率(QE)を高めることができる。QEが高まるとはいえ最終的なQEは低めであり、金属のQEと比較した場合でもそうなる。
【0010】
フォトカソードエミッタの改善が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1実施形態ではフォトカソードエミッタが提供される。本フォトカソードエミッタは、透明基板と、フォトカソード層と、それら透明基板・フォトカソード層間に配置されたプラズモニック構造アレイと、を備える。
【0012】
前記フォトカソード層を、GaN、Al(In)GaN(P)の合金、Cs(K)Te(Sb)、CsI及びCsBrのうち一種類又は複数種類を含有するものとすることができる。
【0013】
前記透明基板を、紫外線熔融シリカ、CaF、石英、サファイア、MgF及びLiFのうち一種類又は複数種類を含有するものとすることができる。
【0014】
本フォトカソードエミッタは、更に、前記フォトカソード層から見て前記プラズモニック構造アレイとは逆側に配置されたキャップ層を有するものと、することができる。そのキャップ層を、ルテニウムを含有するものとすることができる。
【0015】
前記プラズモニック構造は、金属質素材のアレイを有するものとすることができる。その金属質素材をアルミニウムとすることができる。
【0016】
本フォトカソードエミッタは、更に、前記プラズモニック構造アレイ・前記フォトカソード層間に層を有するものとすることができる。それらプラズモニック構造アレイ・フォトカソード層間の格子マッチングを担う層である。
【0017】
本フォトカソードエミッタは、更に、前記プラズモニック構造アレイ上に配置されており前記フォトカソード層とは逆側にあるドープド広バンドギャップ半導体層を有するものとすることができる。ある実施形態によれば、本フォトカソードエミッタは更に、負電子親和力又は正電子親和力素材を含有するものとすることができる。ある実施形態によれば、本フォトカソードエミッタは更に、Cs、CsBr、CsI、Ba、BaO及びBaオン難燃酸化物のうち一種類又は複数種類を有するものとすることができる。ある実施形態によれば、本フォトカソードエミッタは更にドーパント、例えばモリブデン及びタングステンのうち少なくとも一方を含有するものとすることができる。前記プラズモニック構造を、複数個のプラズモニックキャビティを画定するものとすることができる。
【0018】
第2実施形態では方法が提供される。本方法ではフォトカソードを準備する。透明基板と、フォトカソード層と、それら透明基板・フォトカソード層間に配置されたプラズモニック構造アレイと、を有するフォトカソードである。そのフォトカソードに光ビームを差し向け、そのフォトカソードにて電子ビームを発生させる。
【0019】
前記フォトカソードを、更に、前記フォトカソード層から見て前記プラズモニック構造アレイとは逆側に配置されたキャップ層を有するものとすることができる。
【0020】
前記プラズモニック構造を、金属質素材のアレイを有するものとすることができる。
【0021】
前記透明基板を、前記プラズモニック構造アレイ上に配置されており前記フォトカソード層とは逆側にあるドープド広バンドギャップ半導体層を有するものと、することができる。ある実施形態ではそのプラズモニック構造により複数個のプラズモニックキャビティが画定される。
【0022】
前記フォトカソードは、更に、前記プラズモニック構造アレイ・前記フォトカソード層間に層を有するものと、することができる。それらプラズモニック構造アレイ・フォトカソード層間の格子マッチングを担う層である。
【0023】
本件開示の性質及び目的をより遺漏なく理解頂くため、後掲の詳細記述と併せ以下の添付図面を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本件開示に係るフォトカソードの第1実施形態の断面図である。
図2】あるプラズモニックAl/CsTeフォトカソード例に係る層厚最適化計算を描いた図である。
図3】あるプラズモニックAl/CsTeフォトカソード例に係る層厚最適化計算を描いた図である。
図4】あるプラズモニックAl/CsTeフォトカソード例に係る層厚最適化計算を描いた図である。
図5】本件開示に係るフォトカソードの第2実施形態の斜視図である。
図6】本件開示に係るフォトカソードの第3実施形態の斜視図である。
図7】本件開示に係る方法のフローチャートである。
図8】本件開示に係るシステムの実施形態のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
特許請求の範囲記載の主題を特定の諸実施形態により記述するが、本願にて説明されている諸利益及び諸特徴が全ては提供されない諸実施形態を含め、他の諸実施形態も本件開示の技術的範囲内である。様々な構造的、論理的、処理ステップ的及び電子的改変を、本件開示の技術的範囲から離隔せずになすことができる。従って、別項の特許請求の範囲への参照によってのみ、本件開示の技術的範囲が定まる。
【0026】
フォトカソード上のレーザスポットの小型化を果たすため、本願開示の諸実施形態ではサブ波長寸法のプラズモニック構造を用いる。金属プラズモニック構造は、スポット閉じ込め構造として、並びにそのフォトカソードをバイアスするための電気的下地層として、働かせることができる。そのプラズモニック構造により、入射光をサブ波長サイズに閉じ込める(例.直径100nm以下の電子ビームを生成する)ことができる。そのプラズモニック構造を、可視波長及び紫外波長にて強い共鳴を呈するものとすることで、数個のフォトカソード例えばCsTe、CsKTe、GaN、CsI、CsBrその他の素材が高いQEを呈する高輝度光源を、作り出すこともできる。そのプラズモニック構造にて、紫外波長及び可視波長にて強いプラズモン共鳴を呈する金属その他の素材、例えばアルミニウムを用いることができる。
【0027】
本願開示の諸実施形態は、フォトカソードが高いQEを呈する波長にて稼働する。小さなスポットを生成することで、マルチ電子ビーム配列に拡張可能な高輝度エミッタが実現される。
【0028】
実施形態では、紫外波長及び可視波長にて動作する透過モードのフォトカソードに取り付けられたプラズモニックな構成が開示される。この構造は、そのフォトカソードのQEが最大となる一方でそのプラズモニックアパーチャを経てサブ波長スポットに至る光透過が増強される波長にて、動作させることができる。ビーム1本あたり数十nAを供給することができる。
【0029】
図1は、第1実施形態のフォトカソード100の断面図である。本フォトカソード100は、透明基板101、フォトカソード層103、並びにそれら透明基板101・フォトカソード層103間に配置されたプラズモニック構造アレイ102を有している。フォトカソード層103は、GaN、Al(In)GaN(P)の合金、Cs(K)Te(Sb)、CsI、CsBrその他の素材のうち一種類又は複数種類で作成すること、例えばそれを含有するものにすることができる。透明基板101は、紫外線熔融シリカ、CaF、石英、サファイア、MgF、LiFその他の素材のうち一種類又は複数種類で作成すること、例えばそれを含有するものにすることができる。透明基板101は、紫外波長及び可視波長にて透明なものとすることができる。フォトカソード層103は、紫外波長及び可視波長にて高いQEを呈するものとすることができる。最大効率波長にて高QEフォトカソードを用いることで、高輝度エミッタを実現することができる。光源(図示せず)からはそのフォトカソード100に光を差し向けることができ、そのフォトカソードにより1本又は複数本の電子ビームが生成されることとなる。
【0030】
プラズモニック構造102は、金属素材105(図1にてハッチングで以て描かれているそれ)のアレイを、有するものとすることができる。この金属質素材105はアルミニウム、メタマテリアルその他の素材とすることができる。光をその金属質素材105に射突させることで、共鳴を発生させることができる。その金属素材105を、紫外波長及び可視波長にて強い共鳴を呈するものとすることができる。例えば、強い共鳴を共鳴ピークに対応付けることができる。
【0031】
プラズモニック構造102及び金属素材105を、高スループット検査システムに適したサブ波長スポット群にしつつ多数の電子ビーム向けに拡張することができる。
【0032】
本フォトカソード100は、必須ではないが、フォトカソード層103から見てプラズモニック構造アレイ102とは逆側に配置されたキャップ層104を有するものと、することができる。キャップ層104はルテニウムその他の低仕事関数金属で作成すること、例えばそれを含有するものにすることができる。例えば、キャップ層104を、ルテニウム合金を含有するものにすることができる。キャップ層104に低仕事関数金属を含有させることで、長寿命動作が可能となる。
【0033】
本フォトカソード100は、必須ではないが、プラズモニック構造アレイ102・フォトカソード層103間格子マッチングを担う層(図示せず)をプラズモニック構造アレイ102・フォトカソード層103間に有するものと、することもできる。これにより、本フォトカソード100内の様々な層の成長を改善することができる。プラズモニック構造アレイ102・フォトカソード層103間のこの層を十分薄くすることで、プラズモニック場をフォトカソード層103に浸透させることが可能となり、十分厚くすることで、フォトカソード層103の高品質成長を実現することができる。このオプション的な層の厚みは、例えば数nmとすればよい。一例としては、数nmのテーパ付AlGaNを用い、GaNを含有するフォトカソード層103との格子マッチングを行うことができる。
【0034】
本フォトカソード100の諸層の厚みを最適化して最適電子放出とすることができる。例えば、成長中に要因を監視すること等で、本フォトカソード100の諸層の厚みを、入射光が吸収されるよう且つ表面への移動中における過剰な電子散乱が回避されるよう最適化することができる。厳密な厚み及びプラズモニック構造寸法は、フォトカソード素材と光電子放出に用いられる波長とに依存しうる。例えば、シミュレーションで以て寸法を最適化することで、波長及び構造に依存しうる共鳴を増強することができる。加えて、プラズモニック構造寸法を、そのフォトカソード上における目的スポットサイズを踏まえ最適化することができる。Al/CsTeプラズモニックフォトカソードに係る厚み最適化例を図2図4に示す。
【0035】
例えば、266nm共鳴のブルズアイアパーチャ幾何では、ガラス基板が下、CsTe層が上に配置される。光は基板側から入射する。本例ではアルミニウム厚(h)が50nm、半導体厚(hs)が15nmである。
【0036】
本願開示のフォトカソードエミッタの輝度はフォトカソード素材及び励起波長に依存しうる。この輝度は合計電流に比例し、フォトカソード素材の放射率に反比例する。同じ入射光子束であれば、カソードの量子効率が高いほど電流が大きくなる。通常は、QE・放射率間にトレードオフが生じる。ある種のカソード、例えばGaNでは、高QEと低放射率とを両立させることができる。高輝度を実現するには二通りのパラメタを最適化すること、即ち放射率又は横エネルギを低くすること(例.最高で0.3eV)とQE又は合計電流を(1μA/mW超に)大きくすることとが必要となろう。
【0037】
ある例によれば、横エネルギ拡散により低放射率を達成し、小さなスポットをフォトカソード表面にて得ることができる。ナノメートルサイズの電子ビームスポットに集束させるには、電子光学系の限界故に、初期スポットを約100nmにすることが必要となろう。
【0038】
しかしながら、赤外では2~4光子の光電子放出プロセスが生じうるので、検査システムに適する大抵のフォトカソードは赤外にて低いQEを呈する(<10-5)。結果として、これまでの営為では、高スループットなマルチ電子ビーム式検査システム向けに適さない僅かpAの合計電流しか、達成されていなかった。
【0039】
本フォトカソード100によれば、電子ビーム1本当たり数十nAなるサブ波長スポットサイズ電子ビームのアレイを、生成することができる。本フォトカソード100によれば、サブ波長スポットにおける光透過を最大にし、高輝度を実現することもできる。本フォトカソード100の輝度は、熱電界エミッタのそれより高くすることができる。本フォトカソード100の動作は、高いQEが現れる値でのそれとすることができる。QEは、第一義的には、ある特定の波長における素材の吸収効率から、その素材内での光生成電子の散乱及び再結合による損失を減じたものである。そのため、通常は厚みの最適化が実行される。
【0040】
更に、本フォトカソード100はマルチビームシステムに拡張することができる。そのマルチビームシステムが受ける制限は、デバイス全体の空間的制約によるもののみとなりうる。
【0041】
QEは、一般に、波長の関数であり素材に依存している。QEは、第一義的には、ある特定の波長におけるその素材の吸収効率から、その素材内での光生成電子の散乱及び再結合による損失を減じたものである。そのため、厚みの最適化を実行すればよい。
【0042】
図5は第2実施形態のフォトカソードの斜視図であり、図6は第3実施形態のフォトカソードの斜視図である。これらは図1のフォトカソード100の変形例である。図5及び図6のフォトカソードは、サブミクロンアレイ化された低エネルギ拡散フォトカソード電子源である。図5及び図6のプラズモニック構造では、光吸収効率を80%超に高めることができる。バリウムに希土類金属酸化物を結合させたものを、その負電子親和力(NEA)層の一部として用いることができる。希土類金属酸化物及び好適な導体からなる非積層構造を、ドープド絶縁構造として用いることができる。例えば、その金属酸化物をAlやScとすることができる。そのドーパントをモリブデンやタングステンとすることができる。
【0043】
図5のフォトカソード200は、金バックプレーン203上に低温GaAs薄膜202を有している。低温GaAs薄膜202上のサブ波長金メッシュ201はプラズモニックキャビティ204を有している。それらプラズモニックキャビティ204は丸くすることもその他の形状とすることもでき、サブ波長金メッシュ201を貫き延びており、また必須ではないが低温GaAs薄膜202内へと延ばすことができる。金及びGaAsが開示されているが、他素材を用いることもできる。
【0044】
図6のフォトカソード250は、プラズモニック構造アレイ253上に配置されておりフォトカソード層252とは逆側にあるドープド広バンドギャップ半導体層254を有している。プラズモニック構造アレイ253は、例えば図5中に見られるそれの如く、複数個のプラズモニックキャビティを有するものとすることができる。ドープド広バンドギャップ半導体層254は、モリブデン及び/又はタングステン等といったドーパントを含有するものとすることができる。
【0045】
フォトカソード層252にNEA又は正電子親和力(PEA)素材252を含有させ、それを透明基板257の一部分とすることができる。例えば、フォトカソード層252を、Cs、CsBr、CsI、Ba、BaO及びBaオン難燃酸化物のうち一種類又は複数種類が備わる態で作成すること、例えばそれを含有するものとすることができる。例えば、その難燃酸化物をAlやScとすることができる。
【0046】
金属層255をドープド広バンドギャップ半導体層254上に配置することができる。その金属層255をプラズモニック構造アレイ253の一部分とすることや、プラズモニック構造アレイ253と同じ素材で作成することができる。
【0047】
必須ではないが、薄膜型電子増幅子(例.ダイアモンド)251をNEA層252上又はその付近に配置することができる。光源256により、フォトカソード250の何れかの側に光を差し向けることができる。
【0048】
図5のフォトカソード200を、図6のフォトカソード250の一部分とすることができる。即ち、GaAs薄膜202はドープド広バンドギャップ半導体層254の一例、サブ波長金メッシュ201はプラズモニック構造アレイ253の一例、金バックプレーン203は金属層255の一例たりうる。
【0049】
フォトカソード200及びフォトカソード250では、付加的な光吸収並びにそのドープドナノラミネートを介した電子供給がもとで効率改善が実現され、且つBa及びBaOの安定性が高いため寿命延長が実現される。フォトカソード200及びフォトカソード250により、20本超の電子ビームを有するマルチ電子ビームシステムを提供することができる。
【0050】
フォトカソード250では、プラズモニック構造アレイ253を用い光捕捉効率を高めることができる。NEA又はPEA素材252を用いることで、電子がその素材を離れ真空内に進入することができるよう、表面仕事関数を低めることができる。ナノラミネート(例.絶縁体/広バンドギャップ半導体のドーピング)を用いドープド広バンドギャップ半導体層254内に格子間状態を発生させることで、光電子放出に必要なエネルギの量を減らすことができる。そのナノラミネートにより、ドープド広バンドギャップ半導体層254の導電率を高めて電子輸送を改善することもできる。金属層255をそのプラズモニック光トラップの一部分とすることができる。光源256を照明に用い、オプション的な電子増幅子251を用いることで、合計での電子収量を高めることができる。
【0051】
フォトカソード250は、Scと電子用導通路たるタングステン又はモリブデンナノパーティクルとを用いる原子層堆積(ALD)により、作成することができる。バリウムを用いその表面上にBaOを形成することで、表面仕事関数を低めることができる。
【0052】
図7は方法300のフローチャートである。301ではフォトカソード、例えば本願開示のフォトカソード諸実施形態のうち一つを準備する。そのフォトカソードは、透明基板、フォトカソード層、並びにそれら透明基板・フォトカソード層間に配置されたプラズモニック構造アレイを有するものと、することができる。
【0053】
302ではそのフォトカソードに光ビームを差し向ける。303ではそのフォトカソードにて電子ビームを生成する。
【0054】
方法300におけるフォトカソードは、更に、そのフォトカソード層から見てプラズモニック構造アレイとは逆側に配置されたキャップ層を有するものと、することができる。
【0055】
方法300におけるプラズモニック構造は、金属質素材のアレイを有するものとすることができる。
【0056】
方法300における透明基板は、そのプラズモニック構造アレイ上に配置されておりフォトカソード層とは逆側にあるドープド広バンドギャップ半導体層を有するものと、することができる。そのプラズモニック構造を、複数個のプラズモニックキャビティを画定するものとすることができる。
【0057】
方法300におけるフォトカソードは、更に、それらプラズモニック構造アレイ・フォトカソード層間に層を有するものと、することができる。プラズモニック構造アレイ・フォトカソード層間格子マッチングを担う層である。
【0058】
図8は一実施形態に係るシステム400のブロック図である。本システム400は、ウェハ404の画像を生成するよう構成された(電子カラム401を有する)ウェハ検査ツールを有している。
【0059】
そのウェハ検査ツールは出力獲得サブシステムを有しており、それが少なくともエネルギ源及び検出器を有している。その出力獲得サブシステムを電子ビーム式出力獲得サブシステムとすることができる。例えばある実施形態では、ウェハ404に向かうエネルギが電子によるものとされ、そのウェハ404から検出されるエネルギが電子によるものとなる。この要領でそのエネルギ源を電子ビーム源とすることができる。図8に示したのはその種の実施形態の一つであり、出力獲得サブシステムが電子カラム401を有し、それがコンピュータサブシステム402に結合されている。チャック(図示せず)によりウェハ404を保持することができる。
【0060】
同じく図8に示すように、電子カラム401は、電子を生成するよう構成された電子ビーム源403を有しており、それら電子が1個又は複数個の素子405によりウェハ404へと集束されている。電子ビーム源403は、例えば実施形態たる図1のフォトカソード100、図5のフォトカソード200又は図6のフォトカソード250を有するものと、することができる。1個又は複数個の素子405に含まれうるものとしては、例えばガンレンズ、アノード、ビーム制限アパーチャ、ゲートバルブ、ビーム流選択アパーチャ、対物レンズ及び走査サブシステムがあり、それらの何れにも、本件技術分野にて既知であり好適なあらゆる類種素子を含めることができる。
【0061】
ウェハ404からの返戻電子(例.二次電子)を、1個又は複数個の素子406により検出器407に集束させることができる。1個又は複数個の素子406に含まれうるものとしては例えば走査サブシステムがあり、これは素子(群)405に含まれている走査サブシステムと同じものにすることもできる。
【0062】
電子カラムには、本件技術分野にて既知であり好適な他の何れの素子をも組み込める。
【0063】
図8に示した電子カラム401は、電子がウェハ404にある斜め入射角にて差し向けられそのウェハ404から別の斜め角にて散乱されるよう構成されているが、電子ビームがウェハ404に向かう角度及びそこから散乱される角度は、好適な何れの角度であってもよい。加えて、その電子ビーム式出力獲得サブシステムを、複数個のモードを用い(例.異なる照明角、収集角等々で以て)ウェハ404の画像を生成するよう構成してもよい。電子ビーム式出力獲得サブシステムに備わる複数個のモードは、その出力獲得サブシステムの何らかの画像生成パラメタが異なるものとすることができる。
【0064】
コンピュータサブシステム402は検出器407に結合させることができ、ひいてはそのコンピュータサブシステム402を検出器407その他、ウェハ検査ツールの諸部材と電子通信させることができる。その検出器407にてウェハ404の表面からの返戻電子を検出することにより、そのウェハ404の電子ビーム画像を、コンピュータサブシステム402で以て形成することができる。それら電子ビーム画像にはあらゆる好適な電子ビーム画像が包含されうる。コンピュータサブシステム402はプロセッサ408及び電子データ格納ユニット409を有している。プロセッサ408には、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラその他のデバイスが含まれうる。
【0065】
なお、本願に図8を設けたのは、本願記載の諸実施形態にて用いうる電子ビーム式出力獲得サブシステムの構成を大略描出するためである。商用の出力獲得システムを設計する際に通常行われている通り、本願記載の構成を有する電子ビームベース出力獲得サブシステムを改変して、その出力獲得サブシステムの性能を最適化することができる。加えて、本願記載の諸システムを、既存のシステムを用い(例.本願記載の機能を既存システムに付加することで)実施することもできる。そうした類のシステムでは、本願記載の諸方法を、(例.そのシステムの他の機能に加え)そのシステムのオプション的機能として提供することができる。これに代え、本願記載のシステムを完全に新規なシステムとして設計してもよい。
【0066】
コンピュータサブシステム402を、何らかの好適要領にて(例.1個又は複数個の伝送媒体、例えば有線及び/又は無線伝送媒体を含むそれを介し)システム400の構成諸部材に結合させること、ひいてはそのプロセッサ408が出力を受け取れるようにすることができる。プロセッサ408を、その出力を用い多数の機能を実行するよう構成することができる。ウェハ検査ツールは、プロセッサ408から命令その他の情報を受け取ることができる。必須ではないが、プロセッサ408及び/又は電子データ格納ユニット409を他のウェハ検査ツール、ウェハ計量ツール又はウェハレビューツール(図示せず)と電子通信させ、それにより付加的な情報を受け取り又は命令を送るようにしてもよい。
【0067】
コンピュータサブシステム402、他のシステム(群)、或いは他のサブシステム(群)であり本願記載のものを、パーソナルコンピュータシステム、イメージコンピュータ、メインフレームコンピュータシステム、ワークステーション、ネットワーク機器、インターネット機器その他の装置を初め、様々なシステムの一部分としてもよい。また、そのサブシステム(群)又はシステム(群)を、本件技術分野にて既知で好適な何らかのプロセッサ、例えば並列プロセッサを有するものとしてもよい。加えて、そのサブシステム(群)又はシステム(群)を、スタンドアロンかネットワーク接続ツールかを問わず、高速処理プラットフォーム及びソフトウェアを有するものとしてもよい。
【0068】
プロセッサ408及び電子データ格納ユニット409を、システム400その他のデバイス内に配置しても、その一部分としてもよい。一例としては、プロセッサ408及び電子データ格納ユニット409を、スタンドアロン制御ユニットの一部分とし又は集中品質制御ユニット内のものとすることができる。複数個のプロセッサ408又は電子データ格納ユニット09を用いてもよい。
【0069】
プロセッサ408を、ハードウェア、ソフトウェア及びファームウェアのどのような組合せで実施してもよい。また、その機能であり本願記載のものを、単一ユニットで実行しても複数個の異なる部材間で分かち合ってもよいし、それら部材それぞれが翻ってハードウェア、ソフトウェア及びファームウェアのどのような組合せで実施されるのでもよい。プロセッサ408に様々な方法及び機能を実行・実施させるためのプログラムコード又は命令は可読格納媒体内、例えば電子データ格納ユニット409内にあるメモリやその他のメモリ内に格納すればよい。
【0070】
図8のシステム400は、諸実施形態の電子源100又は諸実施形態の方法300を用いうるシステムの単なる一例である。本システム400は、超高真空(UHV)環境その他の環境にて稼働させることができる。諸実施形態の電子源100を、欠陥レビューシステム、検査システム、計量システムその他、何らかの他種システムの一部分としてもよい。即ち、本願開示の諸実施形態により記述されている幾つかの構成を、異なる能力を有し異なるアプリケーション向けに多少の差はあれ適するシステム向けに、多様な要領にて仕立て上げることができる。
【0071】
本願開示のフォトカソード諸実施形態は、レティクル及びウェハ検査システム、1個又は複数個の電子源を用いるウェハ又はレティクル向け電子ビーム式検査システム、1個又は複数個の電子源を用いるウェハ又はレティクル向け電子ビーム式レビューシステム、或いは1個又は複数個の電子源を用いるウェハ又はレティクル向け電子ビーム計量システムにて用いることができる。本願開示のフォトカソード諸実施形態は、1個又は複数個の電子源を用いX線を生成する電子源使用システム、例えばウェハやレティクルの計量、レビュー又は検査向けのそれでも、用いることができる。例えば、本願開示の諸実施形態をマルチ電子源検査システム又はリソグラフィシステムにて用いることができる。
【0072】
1個又は複数個の具体的実施形態を基準にして本件開示を記述してきたが、理解し得るように、本件開示の技術的範囲から離隔することなく本件開示の他の諸実施形態をなすこともできる。従って、本件開示は、添付する特許請求の範囲及びその合理的解釈によってのみ限定されるものと認められる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8