(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119093
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20230821BHJP
【FI】
H05H1/46 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021731
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 武尚
(72)【発明者】
【氏名】山澤 陽平
(72)【発明者】
【氏名】藤原 直樹
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084BB05
2G084BB06
2G084BB14
2G084BB26
2G084BB28
2G084CC13
2G084CC33
2G084DD03
2G084DD13
2G084DD25
2G084DD38
2G084DD55
2G084DD67
(57)【要約】
【課題】コンタミネーションの発生を抑えると共に、プラズマ処理の均一性を向上させる。
【解決手段】プラズマ処理装置は、第1のアンテナおよび第2のアンテナを備える。第1のアンテナは、誘電体窓を介してチャンバの上方に設けられ、導電性の材料により線状に形成されている。第1の電力供給部は、第1のアンテナにRF電力を供給する。第2のアンテナは、導電性の材料により線状に形成され、両端が開放されており、第1のアンテナと誘導結合する。また、第2のアンテナは、第1のアンテナから供給されたRF電力の波長の1/2倍の波長で共振することにより、チャンバ内にRF電力を放射し、チャンバ内のガスをプラズマ化させる。第2のアンテナにおいて、第1の部分と誘電体窓の下面との距離、および、第2の部分と誘電体窓の下面との距離は、第1の中間部分と誘電体窓の下面との距離よりも長い。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収容するチャンバと、
前記チャンバの上部を構成する誘電体窓と、
前記誘電体窓を介して前記チャンバの上方に設けられ、導電性の材料により線状に形成された第1のアンテナと、
前記第1のアンテナにRF(Radio Frequency)電力を供給する第1の電力供給部と、
導電性の材料により線状に形成され、両端が開放されており、前記第1のアンテナと誘導結合し、前記第1のアンテナから供給されたRF電力の1/2波長で共振することにより、前記チャンバ内にRF電力を放射し、前記チャンバ内のガスをプラズマ化させる第2のアンテナと、
を備え、
前記第2のアンテナは、
前記第2のアンテナにおける一方の端部である第1の端部から前記第2のアンテナの中央部へ向かって第1の距離離れた第1の位置よりも前記第1の端部側の前記第2のアンテナの部分である第1の部分と、
前記第2のアンテナにおける他方の端部である第2の端部から前記第2のアンテナの中央部へ向かって第2の距離離れた第2の位置よりも前記第2の端部側の前記第2のアンテナの部分である第2の部分と、
前記第1の部分と前記第2の部分との間の前記第2のアンテナの部分である第1の中間部分と
を有し、
前記第1の部分と前記誘電体窓の下面との間の距離、および、前記第2の部分と前記誘電体窓の下面との間の距離は、前記第1の中間部分と前記誘電体窓の下面との間の距離よりも長いプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記第1のアンテナおよび前記第2のアンテナは、線状の材料により環状に形成されており、
前記第2のアンテナは、前記第1のアンテナを囲むように、前記第1のアンテナに沿って、前記第1のアンテナの外側に配置されている請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記誘電体窓を介して前記チャンバの上方に設けられ、導電性の線状の材料により環状に形成され、前記第2のアンテナを囲むように、前記第2のアンテナの外側に配置されている第3のアンテナと、
前記第3のアンテナにRF電力を供給する第2の電力供給部と
を備え、
前記第3のアンテナは、
前記第2のアンテナと誘導結合し、前記第2の電力供給部から供給されたRF電力を、前記第2のアンテナに供給する請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記第1の部分と前記誘電体窓の下面との距離は、前記第1の部分における前記第2のアンテナ上の位置毎に、当該位置に発生した電圧の大きさに応じた距離であり、
前記第2の部分と前記誘電体窓の下面との距離は、前記第2の部分における前記第2のアンテナ上の位置毎に、当該位置に発生した電圧の大きさに応じた距離である請求項1から3のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記第1の部分と前記誘電体窓の下面との距離は、
前記第1の部分に発生した電圧によって前記第1の部分の下方の前記誘電体窓の下面に発生する電界の強度が予め定められた強度以下となる距離であり、
前記第2の部分と前記誘電体窓の下面との距離は、
前記第2の部分に発生した電圧によって前記第2の部分の下方の前記誘電体窓の下面に発生する電界の強度が予め定められた強度以下となる距離である請求項1から4のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記第1の部分の下方の前記誘電体窓の下面は、前記第1の部分から離れる方向へ突出しており、前記第2のアンテナに沿って前記第1の位置の下方から前記第1の端部の下方へ進むに従って突出量が大きくなっており、
前記第2の部分の下方の前記誘電体窓の下面は、前記第2の部分から離れる方向へ突出しており、前記第2のアンテナに沿って前記第2の位置の下方から前記第2の端部の下方へ進むに従って突出量が大きくなっている請求項1から5のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記第1のアンテナおよび前記第2のアンテナは、線状の材料により環状に形成されており、
前記第1のアンテナは、前記第2のアンテナを囲むように、前記第2のアンテナの外側に配置されている請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記誘電体窓を介して前記チャンバの上方に設けられ、導電性の線状の材料により環状に形成され、前記第1のアンテナを囲むように、前記第1のアンテナの外側に配置されており、前記第1のアンテナと誘導結合する第4のアンテナを備え、
前記第4のアンテナは、
前記第4のアンテナの両端が開放され、前記第1のアンテナから供給されたRF電力の1/2波長で共振することにより、前記チャンバ内にRF電力を放射し、前記チャンバ内にプラズマを生成し、
前記第4のアンテナの両端における一方の端部である第3の端部から前記第4のアンテナの中央部へ向かって第3の距離離れた第3の位置よりも前記第3の端部側の前記第4のアンテナの部分である第3の部分と、
前記第4のアンテナの両端における他方の端部である第4の端部から前記第4のアンテナの中央部へ向かって第4の距離離れた第4の位置よりも前記第4の端部側の前記第4のアンテナの部分である第4の部分と、
前記第3の部分と前記第4の部分との間の前記第4のアンテナの部分である第2の中間部分と
を有し、
前記第3の部分と前記誘電体窓の下面との間の距離、および、前記第4の部分と前記誘電体窓の下面との間の距離は、前記第2の中間部分と前記誘電体窓の下面との間の距離よりも長い請求項7に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記第2のアンテナと前記誘電体窓の下面との間の距離は、前記第1のアンテナと前記誘電体窓の下面との間の距離よりも短い請求項1から8のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記第2のアンテナは、前記第1のアンテナおよびグランドに接続されていない請求項1から9のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の種々の側面および実施形態は、プラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、渦巻状の第1の高周波アンテナと、一端が開放または接地され、他端が開放され、第1の高周波アンテナの内側または外側に配置された渦巻状の第2の高周波アンテナとを有するプラズマ処理装置が開示されている。第1の高周波アンテナおよび第2の高周波アンテナは、誘電体窓を介して処理容器に隣接して配置されている。このプラズマ処理装置では、第1の高周波アンテナと第2の高周波アンテナとが誘導結合し、第1の高周波アンテナに供給された電力によって第2の高周波アンテナが共振することにより、処理容器内に供給された処理ガスがプラズマ化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、コンタミネーションの発生を抑えると共に、プラズマ処理の均一性を向上させることができるプラズマ処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面は、プラズマ処理装置であって、チャンバと、誘電体窓と、第1のアンテナと、第1の電力供給部と、第2のアンテナとを備える。チャンバは、基板を収容する。誘電体窓は、チャンバの上部を構成する。第1のアンテナは、誘電体窓を介してチャンバの上方に設けられ、導電性の材料により線状に形成されている。第1の電力供給部は、第1のアンテナにRF(Radio Frequency)電力を供給する。第2のアンテナは、導電性の材料により線状に形成され、両端が開放されており、第1のアンテナと誘導結合する。また、第2のアンテナは、第1のアンテナから供給されたRF電力の波長の1/2倍の波長で共振することにより、チャンバ内にRF電力を放射し、チャンバ内のガスをプラズマ化させる。また、第2のアンテナは、第1の部分と、第2の部分と、第1の中間部分とを有する。第1の部分は、第2のアンテナの両端における一方の端部である第1の端部から第2のアンテナの中央部へ向かって第1の距離離れた第1の位置よりも第1の端部側の第2のアンテナの部分である。第2の部分は、第2のアンテナにおける他方の端部である第2の端部から第2のアンテナの中央部へ向かって第2の距離離れた第2の位置よりも第2の端部側の第2のアンテナの部分である。第1の中間部分は、第1の部分と第2の部分との間の第2のアンテナの部分である。第1の部分と誘電体窓の下面との距離、および、第2の部分と誘電体窓の下面との距離は、第1の中間部分と誘電体窓の下面との距離よりも長い。
【発明の効果】
【0006】
本開示の種々の側面および実施形態によれば、コンタミネーションの発生を抑えると共に、プラズマ処理の均一性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態におけるプラズマ処理装置の一例を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態におけるアンテナの配置の一例を示す概略斜視図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態におけるアンテナの形状の一例を説明するための模式図である。
【
図4】
図4は、アンテナから放射される電界の強度の分布を説明するための図である。
【
図5A】
図5Aは、比較例におけるアンテナと誘電体窓の下面との距離の分布の一例を示す図である。
【
図5B】
図5Bは、誘電体窓の下面における電界の強度の分布の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本実施形態におけるアンテナと誘電体窓の下面との距離の分布の一例、および、誘電体窓の下面における電界の強度の分布の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、アンテナの形状の他の例を示す模式図である。
【
図8】
図8は、アンテナの形状の他の例を示す模式図である。
【
図9】
図9は、アンテナの形状の他の例を示す模式図である。
【
図11】
図11は、第2の実施形態におけるアンテナおよび誘電体窓の形状の一例を示す模式図である。
【
図12】
図12は、第2の実施形態における誘電体窓の下面の形状の一例を示す概略斜視図である。
【
図13】
図13は、アンテナに沿う方向から見た場合のアンテナの周辺における誘電体窓の突条部の形状の一例を示す断面図である。
【
図14】
図14は、アンテナに直交する方向から見た場合のアンテナの端部付近における誘電体窓の突条部の形状の一例を示す断面図である。
【
図15】
図15は、第3の実施形態におけるアンテナの配置の一例を示す概略斜視図である。
【
図16】
図16は、第4の実施形態におけるアンテナの配置の一例を示す概略斜視図である。
【
図17】
図17は、第5の実施形態におけるアンテナの配置の一例を示す概略斜視図である。
【
図18】
図18は、第5の実施形態におけるアンテナの形状の一例を説明するための模式図である。
【
図19】
図19は、第5の実施形態におけるアンテナの形状の一例を説明するための模式図である。
【
図20】
図20は、第6の実施形態におけるプラズマ処理装置の一例を示す概略断面図である。
【
図21】
図21は、第6の実施形態におけるプラズマ処理装置の他の例を示す概略断面図である。
【
図22】
図22は、アンテナの構成の他の例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、開示されるプラズマ処理装置の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により、開示されるプラズマ処理装置が限定されるものではない。
【0009】
ところで、両端が開放されたアンテナを用いた共振現象では、アンテナの中央部よりもアンテナの端部の方がアンテナから放射さる電界の強度が高くなる。そのため、アンテナの端部付近において、アンテナから放射される電界によりイオン等の荷電粒子が引き寄せられ、引き寄せられた荷電粒子によりアンテナの端部の近傍の部材がスパッタリングされる場合がある。これにより、アンテナの端部の近傍の部材からコンタミネーションが発生する場合がある。
【0010】
また、アンテナの端部付近では、アンテナから放射される電界の強度分布が急激に変化するため、アンテナから放射される電界の強度分布が乱れる。これにより、プラズマの分布が乱れ、プラズマを用いた基板の処理の均一性が低下する場合がある。
【0011】
そこで、本開示は、コンタミネーションの発生を抑えると共に、プラズマ処理の均一性を向上させることができる技術を提供する。
【0012】
(第1の実施形態)
[プラズマ処理装置10の構成]
図1は、第1の実施形態におけるプラズマ処理装置10の一例を示す概略断面図である。プラズマ処理装置10は、アルミニウム等の導電体により形成されたチャンバ11を備える。チャンバ11の側壁には、基板Wを搬入および搬出するための開口110が設けられており、ゲートバルブ111により開閉可能となっている。チャンバ11は接地されている。
【0013】
チャンバ11の底の略中央には、アルミニウム等の導電性の材料で構成され、処理対象の基板Wが載せられる略円板形状のサセプタ21が設けられている。サセプタ21は、プラズマ中のイオンの引き込み用(バイアス用)の電極としても機能する。サセプタ21は、絶縁体からなる略円筒形状のサセプタ支持部22によって支持されている。
【0014】
また、サセプタ21には、給電棒32および整合器31を介してバイアス用のRF電源30が接続されている。サセプタ21には、RF電源30から、例えば13MHzの周波数のRF電力が供給される。RF電源30からサセプタ21に供給されるRF電力の周波数および電力は、後述する制御装置100によって制御される。
【0015】
サセプタ21の上面には、静電吸着力により基板Wを保持するための静電チャック23が設けられており、静電チャック23の外周側には、基板Wの周囲を囲むようにエッジリング24が設けられている。エッジリング24は、フォーカスリングと呼ばれることもある。
【0016】
また、サセプタ21の内部には、例えば冷却水等の冷媒を通流させるための流路212が形成されている。流路212は、配管213を介して不図示のチラーユニットに接続されており、当該チラーユニットから温度調節された冷媒が配管213を介して流路212内に供給される。チラーユニットにおける冷媒の温度は、後述する制御装置100によって制御される。
【0017】
サセプタ21の内部には、静電チャック23と基板Wとの間に、例えばHeガス等の伝熱ガスを供給するためのガス供給管214が設けられている。ガス供給管214は、静電チャック23を貫通しており、ガス供給管214内の空間は、静電チャック23と基板Wとの間の空間に連通している。
【0018】
また、サセプタ支持部22の外側壁とチャンバ11の内側壁との間には、多数の貫通孔が形成された環状のバッフル板12が設けられている。また、チャンバ11の底には、排気口13が形成されており、排気口13は、排気管14を介して排気装置15に接続されている。排気装置15は、後述する制御装置100によって制御される。
【0019】
チャンバ11の上部には、例えば石英等の誘電体により略円板状に形成された誘電体窓53が設けられている。誘電体窓53は、チャンバ11の上部を構成する。誘電体窓53の上方側の空間は、アルミニウム等の導電体により略円筒状に形成されたシールドボックス51によって覆われている。シールドボックス51は、チャンバ11を介して接地されている。シールドボックス51および誘電体窓53の中央には開口が形成されており、当該開口には、チャンバ11内に処理ガスを供給するためのガス供給管41が設けられている。
【0020】
ガス供給管41には、バルブ46およびMFC(Mass Flow Controller)45を介してガス供給源44が接続されている。本実施形態において、ガス供給源44は、例えばCF4ガスや塩素ガス等のエッチング用の処理ガスの供給源である。MFC45は、ガス供給源44から供給される処理ガスの流量を制御する。バルブ46は、MFC45によって流量が制御された処理ガスのガス供給管41内への供給および供給遮断を制御する。ガス供給管41内に供給された処理ガスは、噴射部42を介してチャンバ11内に供給される。
【0021】
チャンバ11の上方であって、誘電体窓53とシールドボックス51とで囲まれた空間内には、導電性の材料により形成された線路によって構成されたアンテナ54およびアンテナ55が収容されている。アンテナ54およびアンテナ55は、ガス供給管41を囲むようにガス供給管41の周囲に設けられている。アンテナ54は第1のアンテナの一例であり、アンテナ55は第2のアンテナの一例である。
【0022】
アンテナ54は、例えば銅等の導電性の材料により線状に形成されている。本実施形態において、アンテナ54は、線状の材料により環状に形成されている。アンテナ54の一端は、整合器62を介して、プラズマ生成用のRF電力を供給するためのRF電源61に接続されている。RF電源61は、例えば27MHzの周波数のRF電力を整合器62を介してアンテナ54に供給する。また、アンテナ54の他端は、接地されている。RF電源61は、第1の電力供給部の一例である。
【0023】
アンテナ55は、例えば銅等の導電性の材料により線状に形成されており、両端が開放されている。また、アンテナ55は、アンテナ54と誘導結合し、アンテナ54から供給されたRF電力の波長の1/2倍の波長で共振することにより、チャンバ11内にRF電力を放射し、チャンバ11内の処理ガスをプラズマ化させる。本実施形態において、アンテナ55は、アンテナ54に接続されておらず、接地もされていない。即ち、アンテナ55は、電気的にフローティング状態となっている。
【0024】
制御装置100は、ROM(Read Only Memory)またはRAM(Random Access Memory)等のメモリと、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサとを有する。制御装置100内のメモリには、レシピ等のデータやプログラム等が格納されている。制御装置100内のプロセッサは、制御装置100内のメモリに格納されたプログラムを読み出して実行することにより、制御装置100内のメモリに格納されたレシピ等のデータに基づいてプラズマ処理装置10の各部を制御する。
【0025】
[アンテナ54およびアンテナ55の配置]
図2は、第1の実施形態におけるアンテナ54およびアンテナ55の配置の一例を示す概略斜視図である。本実施形態において、アンテナ54の一端は、整合器62を介してRF電源61に接続されており、アンテナ54の他端は接地されている。
【0026】
また、本実施形態において、アンテナ55は、2周以上、略円形の渦巻状に形成されている。また、本実施形態におけるアンテナ55の端部付近は、例えば
図2に示されるように、端部から予め定められた長さの範囲において、誘電体窓53から離れるような形状となっている。本実施形態において、アンテナ55は、アンテナ54を囲むように、アンテナ54に沿って、アンテナ54の外側に配置されている。以下では、渦巻状に形成されたアンテナ55の一端を端部P
out、他端を端部P
inと定義する。端部P
outは第1の端部の一例であり、端部P
inは第2の端部の一例である。
【0027】
図3は、第1の実施形態におけるアンテナ55の形状の一例を説明するための模式図である。
図3には、アンテナ55の延在方向に沿ってアンテナ55および誘電体窓53を展開した場合のアンテナ55および誘電体窓53の一例が模式的に示されている。本実施形態において、誘電体窓53の下面(アンテナ55側の面と反対側の面)は、平坦である。
【0028】
図3の例において、端部P
outからアンテナ55に沿って予め定められた距離ΔL
1離れたアンテナ55上の位置を位置P
1、端部P
inからアンテナ55に沿って予め定められた距離ΔL
2離れたアンテナ55上の位置を位置P
2と定義する。また、
図3の例において、端部部分551は、位置P
1よりも端部P
out側の範囲のアンテナ55の部分であり、端部部分552は、位置P
2よりも端部P
in側の範囲のアンテナ55の部分である。また、
図3の例において、中間部分553は、位置P
1から位置P
2までの距離ΔL
3の範囲のアンテナ55の部分である。位置P
1は第1の位置の一例であり、位置P
2は第2の位置の一例である。また、距離ΔL
1は第1の距離の一例であり、距離ΔL
2は第2の距離の一例である。また、端部部分551は第1の部分の一例であり、端部部分552は第2の部分の一例であり、中間部分553は第1の中間部分の一例である。
【0029】
本実施形態において、アンテナ55の端部部分551と誘電体窓53の下面との距離Δd
1は、例えば
図3に示されるように、アンテナ55の中間部分553と誘電体窓53の下面との距離Δd
3よりも長い。また、アンテナ55の端部部分552と誘電体窓53の下面との距離Δd
2は、例えば
図3に示されるように、アンテナ55の中間部分553と誘電体窓53の下面との距離Δd
3よりも長い。距離Δd
1および距離Δd
2は、同じ距離であってもよく、異なる距離であってもよい。なお。本実施形態において、アンテナ55の中間部分553と誘電体窓53の下面との距離Δd
3は、例えば
図3に示されるように略一定である。
【0030】
また、本実施形態におけるアンテナ55の端部部分551では、例えば
図3に示されるように、アンテナ55の線路に沿って位置P
1から端部P
outへ進むに従って、端部部分551と誘電体窓53の下面との間の距離が大きくなっている。同様に、本実施形態におけるアンテナ55の端部部分552では、例えば
図3に示されるように、アンテナ55の線路に沿って位置P
2から端部P
inへ進むに従って、端部部分552と誘電体窓53の下面との間の距離が大きくなっている。
【0031】
ここで、アンテナ55に電流が流れると、アンテナ55から電磁波が放射される。例えば
図4に示されるように、アンテナ55から電界E
0の電磁波が放射された場合、アンテナ55から距離rの地点における電束密度D
rは、例えば下記の(1)式のように表される。
【数1】
上記(1)式におけるαは、比例定数である。
【0032】
アンテナ55の長さを2Lとした場合、アンテナ55の中央部を基準として、アンテナ55の中央部からアンテナ55に沿って距離x離れた位置においてアンテナ55上に発生する電圧V(x)は、例えば下記の(2)式のように表される。
【数2】
上記(2)式におけるV
mは、アンテナ55に発生する電圧の最大値である。
【0033】
アンテナ55から放射される電界の強度E
0(x)は、アンテナ55に発生する電圧V(x)に比例する。また、アンテナ55と誘電体窓53の下面との距離をz(x)と定義すると、誘電体窓53の下面における電界の強度E(x)は、距離z(x)に反比例する。従って、誘電体窓53の下面における電界の強度E(x)は、例えば下記の(3)式のように表される。
【数3】
【0034】
例えば
図5Aに示されるように、アンテナ55と誘電体窓53の下面との間の距離z(x)がアンテナ55の線路全体にわたって一定である場合、誘電体窓53の下面における電界の強度E(x)は、例えば
図5Bのような分布となる。
図5Aは、比較例におけるアンテナ55と誘電体窓53の下面との距離z(x)の分布の一例を示す図である。
図5Bは、誘電体窓53の下面における電界の強度E(x)の分布の一例を示す図である。
【0035】
図5Aの縦軸では、アンテナ55と誘電体窓53の下面との距離z(x)が1に規格化されている。また、
図5Aの横軸では、長さ2Lのアンテナ55の中央部を基準として、中央部からアンテナ55の端部までのアンテナ55上の距離が長さLで規格化されている。また、
図5Bの縦軸では、アンテナ55に対応する誘電体窓53の下面の各位置における電界の強度E(x)が、アンテナ55の端部に対応する誘電体窓53の下面の位置の電界の強度で規格化されている。また、
図5Bの横軸では、長さ2Lのアンテナ55の中央部に対応する誘電体窓53の下面の位置を基準として、中央部から端部までのアンテナ55に対応する誘電体窓53の下面の各位置までの距離が長さLで規格化されている。
【0036】
ここで、誘電体窓53の下面がスパッタリングされても誘電体窓53の下面からコンタミネーションが発生しない最大の電界の強度をE
maxと定義する。誘電体窓53の下面からコンタミネーションが発生しないようにするためには、例えば下記の(4)式に示されるように、誘電体窓53の下面における電界の強度E(x)は、電界の強度E
max以下である必要がある。
【数4】
【0037】
上記(4)式により、アンテナ55と誘電体窓53の下面との距離z(x)は、下記の(5)式を満たす必要がある。
【数5】
【0038】
例えば
図5Bに示された電界の強度E(x)の分布において、誘電体窓53の下面からコンタミネーションが発生しない最大の電界の強度E
maxを、誘電体窓53の下面における電界の強度E(x)の最大値の0.8倍であると仮定する。
図5Bを参照すると、誘電体窓53の下面における電界の強度E(x)の最大値の0.8倍以上となるアンテナ55の範囲は、アンテナ55の端部からΔLまでの範囲である。この範囲において、アンテナ55と誘電体窓53の下面との距離を増加させれば、誘電体窓53の下面における電界の強度E(x)を、誘電体窓53の下面からコンタミネーションが発生しない最大の電界の強度E
maxよりも低く抑えることができる。
【0039】
そこで、アンテナ55の端部からΔLまでの範囲において、アンテナ55の形状を、誘電体窓53の下面の電界の強度E(x)の増加を相殺するような形状にすることが考えられる。即ち、端部部分551の形状を、端部部分551と誘電体窓53の下面との距離z(x)が、端部部分551のアンテナ55上の位置毎に、当該位置に発生した電圧の大きさに応じた距離となる形状とすることが考えられる。同様に、端部部分552の形状を、端部部分552と誘電体窓53の下面との距離z(x)が、端部部分552のアンテナ55上の位置毎に、当該位置に発生した電圧の大きさに応じた距離となる形状とすることが考えられる。このような曲線は、例えば下記の(6)式で表される。
【数6】
【0040】
上記(6)式において、例えばアンテナ55と誘電体窓53の下面との距離が一定の場合の誘電体窓53の下面の電界の強度の最大値の0.8倍をE
maxとすると、端部からΔLまでの範囲のアンテナ55の形状は、例えば
図6の上のグラフの実線のようになる。この場合、線路の端部からΔLまでの範囲に対応する誘電体窓53の下面の電界の強度E(x)は、例えば
図6の下のグラフに示されるように、誘電体窓53の下面における電界の強度E(x)の最大値の0.8倍に抑えられる。このように、端部部分551と誘電体窓53の下面との距離は、端部部分551に発生した電圧によって端部部分551の下方の誘電体窓53の下面に発生する電界の強度が予め定められた強度(例えばE
max)以下となる距離である。同様に、端部部分552と誘電体窓53の下面との距離は、端部部分552に発生した電圧によって端部部分551の下方の誘電体窓53の下面に発生する電界の強度が予め定められた強度(例えばE
max)以下となる距離である。
【0041】
なお、例えば
図6の上のグラフの点線のように、距離z(x)が(6)式で表される距離z(x)よりも長くなる形状であれば、例えば
図6の下のグラフの点線のように、誘電体窓53の下面における電界の強度E(x)の最大値の0.8倍よりもさらに低くなる。なお、アンテナ55と誘電体窓53の下面との距離z(x)が一定の増加率で増加させる形状の方が、アンテナ55の加工の容易性の観点では好ましい。そのため、本実施形態のアンテナ55では、アンテナ55と誘電体窓53の下面との距離z(x)を一定の増加率で増加させる形状が採用されている。即ち、本実施形態において、端部部分551は、アンテナ55に沿って位置P
1から端部P
outへ進むに従って誘電体窓53の下面から離れるように延在している。また、端部部分552は、アンテナ55に沿って位置P
2から端部P
inへ進むに従って誘電体窓53の下面から離れるように延在している。
【0042】
また、(6)式で表される距離z(x)となる形状550よりも距離z(x)が長くなる形状であれば、アンテナ55の端部部分551および552の形状は、例えば
図7のような曲線状であってもよく、例えば
図8のようなステップ状であってもよい。なお、いずれの場合であっても、アンテナ55の全長は、供給されるRF波電力の波長の1/2倍の整数倍の長さである。
【0043】
また、誘電体窓53の下面における電界の強度E(x)が低くなりすぎると、チャンバ11内においてプラズマの着火が難しくなる場合がある。そのため、アンテナ55と誘電体窓53の下面との距離z(x)は、プラズマが容易に着火する範囲内の電界の強度をチャンバ11内に放射可能な距離であることが好ましい。
【0044】
以上、第1の実施形態について説明した。上記説明から明らかなように、本実施形態のプラズマ処理装置10は、チャンバ11と、誘電体窓53と、アンテナ54と、RF電源61と、アンテナ55とを備える。チャンバ11は、基板Wを収容する。誘電体窓53は、チャンバ11の上部を構成する。アンテナ54は、誘電体窓53を介してチャンバ11の上方に設けられ、導電性の材料により線状に形成されている。RF電源61は、アンテナ54にRF電力を供給する。アンテナ55は、導電性の材料により線状に形成され、両端が開放されており、アンテナ54と誘導結合する。また、アンテナ55は、アンテナ54から供給されたRF電力の波長の1/2倍の波長で共振することにより、チャンバ11内にRF電力を放射し、チャンバ11内のガスをプラズマ化させる。また、アンテナ55は、端部部分551と、端部部分552と、中間部分553とを有する。端部部分551は、アンテナ55における一方の端部である端部Poutからアンテナ55の中央部へ向かって距離ΔL1離れた位置P1よりも端部Pout側のアンテナ55の部分である。端部部分552は、アンテナ55における他方の端部である端部Pinからアンテナ55の中央部へ向かって距離ΔL2離れた位置P2よりも端部Pin側のアンテナ55の部分である。中間部分553は、端部部分551と端部部分552との間のアンテナ55の部分である。端部部分551と誘電体窓53の下面との距離、および、端部部分552と誘電体窓53の下面との距離は、中間部分553と誘電体窓53の下面との距離よりも長い。これにより、コンタミネーションの発生を抑えると共に、プラズマ処理の均一性を向上させることができる。
【0045】
また、上記した第1の実施形態において、アンテナ54およびアンテナ55は、線状の材料により環状に形成されている。また、アンテナ55は、アンテナ54を囲むように、アンテナ54に沿って、アンテナ54の外側に配置されている。これにより、コンタミネーションの発生を抑えると共に、プラズマ処理の均一性を向上させることができる。
【0046】
また、上記した第1の実施形態において、アンテナ55の端部部分551と誘電体窓53の下面との距離Δd1は、端部部分551におけるアンテナ55上の位置毎に、当該位置に発生した電圧の大きさに応じた距離である。また、アンテナ55の端部部分552と誘電体窓53の下面との距離Δd2は、端部部分552におけるアンテナ55上の位置毎に、当該位置に発生した電圧の大きさに応じた距離である。これにより、アンテナ55の端部付近の下方の誘電体窓53の下面に過大な電界が発生することを抑制することができ、コンタミネーションの発生を抑えることができる。
【0047】
また、上記した第1の実施形態において、アンテナ55の端部部分551と誘電体窓53の下面との距離Δd1は、端部部分551に発生した電圧によって端部部分551の下方の誘電体窓53の下面に発生する電界の強度が予め定められた強度以下となる距離である。また、アンテナ55の端部部分552と誘電体窓53の下面との距離Δd2は、端部部分552に発生した電圧によって端部部分552の下方の誘電体窓53の下面に発生する電界の強度が予め定められた強度以下となる距離である。これにより、アンテナ55の端部付近の下方の誘電体窓53の下面に発生する電界の強度を一定値以下に抑えることができる。
【0048】
なお、
図3の例では、アンテナ55において、中間部分553と端部部分551との間の角度、および、中間部分553と端部部分552との間の角度は固定であったが、開示の技術はこれに限られない。例えば
図9に示されるように、アンテナ55上の位置P
1に可動部558が設けられ、中間部分553と端部部分551との間の角度が変更可能であってもよい。同様に、アンテナ55上の位置P
2に可動部559が設けられ、中間部分553と端部部分552との間の角度が変更可能であってもよい。即ち、端部部分551は、位置P
1を支点として誘電体窓53から離れる方向に回動可能であり、端部部分552は、位置P
2を支点として誘電体窓53から離れる方向に回動可能でってもよい。
【0049】
これにより、例えばプラズマの着火時には、中間部分553と端部部分551との間の角度、および、中間部分553と端部部分552との間の角度を大きくすることにより、端部部分551および端部部分552と誘電体窓53の下面との距離を短くしてもよい。そして、プラズマの着火後は、中間部分553と端部部分551との間の角度、および、中間部分553と端部部分552との間の角度を小さくすることにより、端部部分551および端部部分552と誘電体窓53の下面との距離を長くしてもよい。これにより、プラズマをより容易に着火させることができると共に、プラズマ処理中のコンタミネーションの発生を抑えることができる。
【0050】
また、プラズマの着火後も、プラズマ処理の累積時間に応じて、中間部分553と端部部分551との間の角度、および、中間部分553と端部部分552との間の角度が変更されてもよい。これにより、プラズマ処理の進行に伴ってチャンバ11内の部品が消耗したり、チャンバ11内に反応副生成物が堆積することにより、チャンバ11内のプラズマの状態が変動することを抑えることができる。
【0051】
また、可動部558および可動部559は、例えば
図10に示されるように、アンテナ55上に複数設けられてもよい。例えば、プラズマ着火時には、アンテナ55の形状を
図10Aに示されるような形状とすることにより、端部部分551および端部部分552と誘電体窓53の下面との距離を短くする。これにより、プラズマをより容易に着火させることができる。また、例えば、プラズマの着火後は、アンテナ55の形状を
図10Bに示されるような形状とすることにより、端部部分551および端部部分552と誘電体窓53の下面との距離を長くする。これにより、コンタミネーションの発生を抑えることができる。また、誘電体窓53の下面への反応副生成物の堆積等によりチャンバ11内に放射される電界の強度が低下した場合には、アンテナ55の形状を例えば
図10Cのような形状としてもよい。これにより、端部部分551および端部部分552と誘電体窓53の下面との距離が短くなり、チャンバ11内に放射される電界の強度を維持することができる。
【0052】
なお、
図10A~
図10Cには、端部部分551に3つの可動部558が設けられているが、可動部558の数は、2つであってもよく、4つ以上であってもよい。また、
図10A~
図10Cには、端部部分552に3つの可動部559が設けられているが、可動部559の数は、2つであってもよく、4つ以上であってもよい。
【0053】
(第2の実施形態)
上記した第1の実施形態では、下面が平坦な誘電体窓53に対して、アンテナ55の端部付近と誘電体窓53の下面との距離が、アンテナ55の中央付近と誘電体窓53の下面との距離よりも長くなるようにアンテナ55が構成された。これに対し、本実施形態では、1つの平面に含まれる形状に構成されたアンテナ55に対して、アンテナ55の端部付近に対応する誘電体窓53の下面がアンテナ55から離れる方向に突出する形状となるように誘電体窓53が構成される。このようにしても、アンテナ55の端部付近と誘電体窓53の下面との距離を、アンテナ55の中央付近と誘電体窓53の下面との距離よりも長くすることができる。
【0054】
図11は、第2の実施形態におけるアンテナ55および誘電体窓53の形状の一例を示す模式図である。
図12は、第2の実施形態における誘電体窓53の下面の形状の一例を示す概略斜視図である。
図11には、アンテナ55を構成する線路の延在方向に沿ってアンテナ55を展開した場合のアンテナ55および誘電体窓53の一例が模式的に示されている。本実施形態において、アンテナ55は、銅等の導電性の線状の部材により、1つの平面に含まれる略円形の渦巻き状に形成されている。
【0055】
本実施形態において、誘電体窓53には、例えば
図11および
図12に示されるように、アンテナ55の端部部分551に対応する誘電体窓53の下面において、アンテナ55から離れる方向に突出する突条部531が形成されている。突条部531は、位置P
1から端部P
outへ向かうアンテナ55に沿って形成されている。また、突条部531は、アンテナ55の位置P
1に対応する位置から端部P
outに対応する位置に近づくに従って、アンテナ55から離れる方向への突出量が大きくなるように形成されている。
【0056】
また、本実施形態において、誘電体窓53には、例えば
図11および
図12に示されるように、アンテナ55の端部部分552に対応する誘電体窓53の下面において、アンテナ55から離れる方向に突出する突条部532が形成されている。突条部532は、位置P
2から端部P
inへ向かうアンテナ55に沿って形成されている。また、突条部532は、アンテナ55の位置P
2に対応する位置から端部P
inに対応する位置に近づくにし従って、アンテナ55から離れる方向への突出量が大きくなるように形成されている。
【0057】
なお、端部部分551に沿う方向における突条部531の断面形状は、例えば
図13に示されるように、端部部分551の表面と誘電体窓53の下面との距離がΔd
1となるような形状に形成されることが好ましい。端部部分552に沿う方向における突条部532の断面形状も、同様に、端部部分552の表面と誘電体窓53の下面との距離がΔd
2となるような形状に形成されることが好ましい。
【0058】
また、端部部分551の端部P
out付近における突条部531の断面形状についても、例えば
図14に示されるように、端部部分551の表面と誘電体窓53の下面との距離がΔd
1となるような形状に形成されることが好ましい。端部部分552の端部P
in付近における突条部532の断面形状についても、同様に、端部部分552の表面と誘電体窓53の下面との距離がΔd
2となるような形状に形成されることが好ましい。
【0059】
以上、第2の実施形態について説明した。上記説明から明らかなように、本実施形態において、端部部分551の下方の誘電体窓53の下面は、アンテナ55から離れる方向へ突出しており、アンテナ55に沿って位置P1の下方から端部Poutの下方へ進むに従って突出量が大きくなっている。また、端部部分552の下方の誘電体窓53の下面は、アンテナ55から離れる方向へ突出しており、アンテナ55に沿って位置P2の下方から端部Pinの下方へ進むに従って突出量が大きくなっている。これにより、コンタミネーションの発生を抑えると共に、プラズマ処理の均一性を向上させることができる。
【0060】
(第3の実施形態)
第1の実施形態では、アンテナ55は、アンテナ55の内側に配置されているアンテナ54と誘導結合し、アンテナ54から供給されたRF電力によって共振する。これに対し、本実施形態では、例えば
図15に示されるように、アンテナ55の内側にアンテナ54aが設けられ、アンテナ55の外側にもアンテナ54bが設けられる。
図15は、第3の実施形態におけるアンテナ54a、アンテナ54b、およびアンテナ55の配置の一例を示す概略斜視図である。
【0061】
アンテナ54aの一端は、整合器62aを介して、プラズマ生成用のRF電力を供給するためのRF電源61aに接続されている。アンテナ54aの他端は、接地されている。また、アンテナ54bの一端は、整合器62bを介して、プラズマ生成用のRF電力を供給するためのRF電源61bに接続されている。アンテナ54bの他端は、接地されている。アンテナ54aは第1のアンテナの一例であり、アンテナ54bは第3のアンテナの一例である。RF電源61aは第1の電力供給部の一例であり、RF電源61bは第2の電力供給部の一例である。
【0062】
アンテナ55は、アンテナ54aおよび54bと誘導結合し、アンテナ54aおよび54bから供給されたRF電力の波長の1/2倍の波長で共振することにより、チャンバ11内にRF電力を放射し、チャンバ11内の処理ガスをプラズマ化させる。アンテナ55は、電気的にフローティング状態となっている。
【0063】
以上、第3の実施形態について説明した。上記説明から明らかなように、本実施形態におけるプラズマ処理装置10は、アンテナ54bとRF電源61bとを備える。アンテナ55は、アンテナ54aを囲むように、アンテナ54aの外側に配置されている。アンテナ54aは、アンテナ55と誘導結合し、RF電源61aから供給されたRF電力をアンテナ55に供給する。アンテナ54bは、誘電体窓53を介してチャンバ11の上方に設けられ、導電性の線状の材料により環状に形成され、アンテナ55を囲むように、アンテナ55の外側に配置されている。アンテナ54bは、アンテナ55と誘導結合し、RF電源61bから供給されたRF電力をアンテナ55に供給する。これにより、コンタミネーションの発生を抑えると共に、プラズマ処理の均一性を向上させることができる。
【0064】
(第4の実施形態)
第1の実施形態では、アンテナ54は、アンテナ55の内側に配置されている。これに対し、本実施形態では、例えば
図16に示されるように、アンテナ54が、アンテナ55を囲むように、アンテナ55の外側に配置されている。
図16は、第4の実施形態におけるアンテナ54およびアンテナ55の配置の一例を示す概略斜視図である。このような構成であっても、アンテナ55は、アンテナ54と誘導結合し、アンテナ54から供給されるRF電力の波長の1/2倍の波長で共振することにより、チャンバ11内にRF電力を放射し、チャンバ11内の処理ガスをプラズマ化させることができる。また、プラズマ処理において、コンタミネーションの発生を抑えると共に、プラズマ処理の均一性を向上させることができる。
【0065】
(第5の実施形態)
第4の実施形態では、アンテナ55がアンテナ54の内側に配置されている。これに対し、本実施形態では、例えば
図17に示されるように、アンテナ54の内側にアンテナ55aが配置され、アンテナ54の外側にさらにアンテナ55bが配置されている。
図17は、第5の実施形態におけるアンテナ54、アンテナ55a、およびアンテナ55bの配置の一例を示す概略斜視図である。アンテナ55aおよびアンテナ55bは、銅等の導電性の線状の材料により環状に形成され、アンテナ54と誘導結合する。また、アンテナ55aおよびアンテナ55bは、両端が開放され、アンテナ54から供給されたRF電力の1/2波長で共振することにより、チャンバ11内にRF電力を放射し、チャンバ11内にプラズマを生成する。
【0066】
以下では、アンテナ55aの一端を端部Paout、他端を端部Painと定義し、アンテナ55bの一端を端部Pbout、他端を端部Pbinと定義する。アンテナ54は第1のアンテナの一例であり、アンテナ55aは第2のアンテナの一例であり、アンテナ55bは第4のアンテナの一例である。また、端部Paoutは第1の端部の一例であり、端部Painは第2の端部の一例であり、端部Pboutは第3の端部の一例であり、端部Pbinは第4の端部の一例である。
【0067】
図18は、第5の実施形態におけるアンテナ55aの形状の一例を説明するための模式図である。
図18には、アンテナ55aの延在方向に沿ってアンテナ55aおよび誘電体窓53を展開した場合のアンテナ55aおよび誘電体窓53の一例が模式的に示されている。本実施形態において、誘電体窓53の下面(アンテナ55a側の面と反対側の面)は、平坦である。
【0068】
図18の例において、端部P
aoutからアンテナ55aに沿って予め定められた距離ΔL
a1離れたアンテナ55a上の位置を位置P
a1、端部P
ainからアンテナ55aに沿って予め定められた距離ΔL
a2離れたアンテナ55a上の位置を位置P
a2と定義する。また、
図18の例において、端部部分551aは、位置P
a1よりも端部P
aout側の範囲のアンテナ55aの部分であり、端部部分552aは、位置P
a2よりも端部P
ain側の範囲のアンテナ55aの部分である。また、
図18の例において、中間部分553aは、位置P
a1から位置P
a2までの距離ΔL
a3の範囲のアンテナ55aの部分である。位置P
a1は、第1の位置の一例であり、位置P
a2は、第2の位置の一例である。また、距離ΔL
a1は、第1の距離の一例であり、距離ΔL
a2は、第2の距離の一例である。また、端部部分551aは、第1の部分の一例であり、端部部分552aは、第2の部分の一例であり、中間部分553aは、第1の中間部分の一例である。
【0069】
本実施形態において、アンテナ55aの端部部分551aと誘電体窓53の下面との距離Δd
a1は、例えば
図18に示されるように、アンテナ55aの中間部分553aと誘電体窓53の下面との距離Δd
a3よりも長い。また、アンテナ55aの端部部分552aと誘電体窓53の下面との距離Δd
a2は、例えば
図18に示されるように、アンテナ55aの中間部分553aと誘電体窓53の下面との距離Δd
a3よりも長い。距離Δd
a1および距離Δd
a2は、同じ距離であってもよく、異なる距離であってもよい。なお、本実施形態において、アンテナ55aの中間部分553aと誘電体窓53の下面との距離Δd
a3は、例えば
図18に示されるように略一定である。
【0070】
図19は、第5の実施形態におけるアンテナ55bの形状の一例を説明するための模式図である。
図19には、アンテナ55bの延在方向に沿ってアンテナ55bおよび誘電体窓53を展開した場合のアンテナ55bおよび誘電体窓53の一例が模式的に示されている。本実施形態において、誘電体窓53の下面(アンテナ55b側の面と反対側の面)は、平坦である。
【0071】
図19の例において、端部P
boutからアンテナ55bに沿って予め定められた距離ΔL
b1離れたアンテナ55b上の位置を位置P
b1、端部P
binからアンテナ55bに沿って予め定められた距離ΔL
b2離れたアンテナ55b上の位置を位置P
b2と定義する。また、
図19の例において、端部部分551bは、位置P
b1よりも端部P
bout側の範囲のアンテナ55bの部分であり、端部部分552bは、位置P
b2よりも端部P
bin側の範囲のアンテナ55bの部分である。また、
図19の例において、中間部分553bは、位置P
b1から位置P
b2までの距離ΔL
b3の範囲のアンテナ55bの部分である。位置P
b1は、第3の位置の一例であり、位置P
b2は、第4の位置の一例である。また、距離ΔL
b1は、第3の距離の一例であり、距離ΔL
b2は、第24距離の一例である。また、端部部分551bは、第3の部分の一例であり、端部部分552bは、第4の部分の一例であり、中間部分553bは、第2の中間部分の一例である。
【0072】
本実施形態において、アンテナ55bの端部部分551bと誘電体窓53の下面との距離Δd
b1は、例えば
図19に示されるように、アンテナ55bの中間部分553bと誘電体窓53の下面との距離Δd
b3よりも長い。また、アンテナ55bの端部部分552bと誘電体窓53の下面との距離Δd
b2は、例えば
図19に示されるように、アンテナ55bの中間部分553bと誘電体窓53の下面との距離Δd
b3よりも長い。距離Δd
b1および距離Δd
b2は、同じ距離であってもよく、異なる距離であってもよい。なお、本実施形態において、アンテナ55bの中間部分553bと誘電体窓53の下面との距離Δd
b3は、例えば
図19に示されるように略一定である。
【0073】
以上、第5の実施形態について説明した。このような構成であっても、アンテナ55aおよびアンテナ55bは、アンテナ54と誘導結合し、アンテナ54から供給されるRF電力の波長の1/2倍の波長で共振することにより、チャンバ11内にRF電力を放射することができる。これにより、チャンバ11内の処理ガスがプラズマ化される。また、プラズマ処理において、コンタミネーションの発生を抑えると共に、プラズマ処理の均一性を向上させることができる。
【0074】
(第6の実施形態)
第1の実施形態では、アンテナ54と、端部部分551および端部部分552を除くアンテナ55とは、同一平面内に配置されている。これに対し、本実施形態では、アンテナ54と、端部部分551および端部部分552を除くアンテナ55とは、例えば
図20に示されるように、異なる平面内に配置されている。
図20は、第6の実施形態におけるプラズマ処理装置10の一例を示す概略断面図である。
【0075】
図20の例では、アンテナ55は、アンテナ54よりも誘電体窓53の近くに配置されている。即ち、アンテナ55と誘電体窓53の下面との間の距離は、アンテナ54と誘電体窓53の下面との間の距離よりも短い。これにより、アンテナ55から放射されるRF電力が誘電体窓53を介してチャンバ11内に効率よく照射される。このような構成であっても、プラズマ処理において、コンタミネーションの発生を抑えると共に、プラズマ処理の均一性を向上させることができる。
【0076】
なお、アンテナ54は、例えば
図21に示されるように、
図21の上下方向において、アンテナ55の内側ではなく、アンテナ55と重なる領域に配置されていてもよい。
図21は、第6の実施形態におけるプラズマ処理装置10の他の例を示す概略断面図である。
【0077】
以上、第6の実施形態について説明した。このような構成であっても、プラズマ処理において、コンタミネーションの発生を抑えると共に、プラズマ処理の均一性を向上させることができる。
【0078】
[その他]
なお、本開示は、上記した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0079】
例えば、上記した各実施形態におけるアンテナ55は、導電性の線状の部材により略円形の渦巻状に形成されているが、開示の技術はこれに限られない。他の形態として、アンテナ55の全長が、供給されるRF波電力の波長の1/2倍の整数倍の長さであれば、アンテナ55の形状は、リング状(1周のみの略円形の形状)、直線状、十字状、放射状、ジグザグ状等の形状であってもよい。
【0080】
また、上記した各実施形態において、アンテナ54は、一端にRF電源61が接続され、他端が接地された導電性の線状の部材によりリング状(1周のみの略円形の形状)に形成されるが、開示の技術はこれに限られない。他の形態として、アンテナ54も、供給されるRF波電力の波長の1/2倍の波長で共振する共振アンテナであってもよい。この場合、RF電源61は、アンテナ54の中点またはその近傍に接続され、アンテナ54の中点の近傍が接地される。また、例えば
図22に示されるように、アンテナ54の両端(端部P
e1および端部P
e2)付近は、アンテナ54の中央部よりも誘電体窓53から離れるような形状であることが好ましい。これにより、プラズマ処理において、コンタミネーションの発生を抑えると共に、プラズマ処理の均一性を向上させることができる。
【0081】
なお、今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0082】
W 基板
10 プラズマ処理装置
100 制御装置
11 チャンバ
110 開口
111 ゲートバルブ
12 バッフル板
13 排気口
14 排気管
15 排気装置
21 サセプタ
212 流路
213 配管
214 ガス供給管
22 サセプタ支持部
23 静電チャック
24 エッジリング
30 RF電源
31 整合器
32 給電棒
41 ガス供給管
42 噴射部
44 ガス供給源
45 MFC
46 バルブ
51 シールドボックス
53 誘電体窓
531 突条部
532 突条部
54 アンテナ
54a アンテナ
54b アンテナ
55 アンテナ
550 形状
551 端部部分
552 端部部分
553 中間部分
558 可動部
559 可動部
61 RF電源
62 整合器