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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119134
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20230821BHJP
【FI】
H05H1/46 L
H05H1/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021813
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山澤 陽平
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084BB05
2G084BB14
2G084CC04
2G084CC05
2G084CC08
2G084CC13
2G084DD03
2G084DD13
2G084DD38
(57)【要約】
【課題】プラズマ処理の均一性を向上させる。
【解決手段】プラズマ処理装置は、チャンバ、窓部材、ガス導入口、およびアンテナを備える。チャンバは、基板を収容する。窓部材は、チャンバの上部を構成する。ガス導入口は、チャンバの側壁および窓部材の少なくともいずれかに設けられ、チャンバ内にガスを供給する。アンテナは、窓部材を介してチャンバの上方に設けられ、導電性の材料により線状に形成されている。アンテナは、チャンバ内にRF電力を放射することによりチャンバ内に供給されたガスをプラズマ化する。アンテナは、第1のコイルと、複数の第2のコイルとを有する。第1のコイルには、RF電力が供給される。第2のコイルは、同一形状に形成され、第1のコイルの周囲に、第1のコイルの中心軸を中心として回転対称に複数配置されている。それぞれの第2のコイルの一端には、可変容量コンデンサが1つずつ接続されている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収容するチャンバと、
前記チャンバの上部を構成する窓部材と、
前記チャンバの側壁および前記窓部材の少なくともいずれかに設けられ、前記チャンバ内にガスを供給するガス導入口と、
前記窓部材を介して前記チャンバの上方に設けられ、導電性の材料により線状に形成されたアンテナであって、前記チャンバ内にRF(Radio Frequency)電力を放射することにより前記チャンバ内に供給されたガスをプラズマ化するアンテナと
を備え、
前記アンテナは、
RF電力が供給される第1のコイルと、
同一形状に形成され、前記第1のコイルの周囲に、前記第1のコイルの中心軸を中心として回転対称に複数配置されている複数の第2のコイルと
を有し、
それぞれの前記第2のコイルの一端には、可変容量コンデンサが1つずつ接続されているプラズマ処理装置。
【請求項2】
それぞれの前記第2のコイルの他端は接地されており、
それぞれの前記可変容量コンデンサの一端は前記第2のコイルの一端に接続されており、それぞれの前記可変容量コンデンサの他端は接地されている請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
それぞれの前記第2のコイルの他端はコンデンサを介して接地されており、
それぞれの前記可変容量コンデンサの一端は前記第2のコイルの一端に接続されており、それぞれの前記可変容量コンデンサの他端は接地されている請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
それぞれの前記第2のコイルの一端および他端は、対応する前記可変容量コンデンサを介して接続されている請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
それぞれの前記第2のコイルの他端は、開放されており、
それぞれの前記第2のコイルの一端は、対応する前記可変容量コンデンサを介して接地されている請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
それぞれの前記第2のコイルの他端は、
当該第2のコイルの一端よりも前記第1のコイルから遠い位置に配置されている請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
それぞれの前記第2のコイルの他端は、
当該第2のコイルの一端よりも前記窓部材から遠い位置に配置されている請求項5または6に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記第1のコイルは、前記中心軸を中心として回転対称な形状である請求項1から7のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記第1のコイルは、互いに離間して配置された複数のコイルを有する請求項1から8のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
それぞれの前記第2のコイルは、湾曲しており、
前記第1のコイルから離れる方向に凸となる向きで前記第1のコイルの周囲に配置されている請求項1から9のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記第1のコイルと、それぞれの前記第2のコイルとは、同一の平面内に配置されている請求項1から10のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の種々の側面および実施形態は、プラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマプロセスにおいて、プロセスの均一性は、歩留まり向上において重要な要素である。近年の半導体デバイスの微細化の進展や半導体基板の大口径化に伴って、プロセスの均一性ますます重要性を増している。下記の特許文献1には、アンテナのコイルを基板に対向する位置に複数設けることにより、チャンバ内のプラズマの分布を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5227245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、プラズマ処理の均一性を向上させることができるプラズマ処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面は、プラズマ処理装置であって、チャンバと、窓部材と、ガス導入口と、アンテナとを備える。チャンバは、基板を収容する。窓部材は、チャンバの上部を構成する。ガス導入口は、チャンバの側壁および窓部材の少なくともいずれかに設けられ、チャンバ内にガスを供給する。アンテナは、窓部材を介してチャンバの上方に設けられ、導電性の材料により線状に形成されている。アンテナは、チャンバ内にRF(Radio Frequency)電力を放射することによりチャンバ内に供給されたガスをプラズマ化する。アンテナは、第1のコイルと、複数の第2のコイルとを有する。第1のコイルには、RF電力が供給される。第2のコイルは、同一形状に形成され、第1のコイルの周囲に、第1のコイルの中心軸を中心として回転対称に複数配置されている。それぞれの第2のコイルの一端には、可変容量コンデンサが1つずつ接続されている。
【発明の効果】
【0006】
本開示の種々の側面および実施形態によれば、プラズマ処理の均一性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示の一実施形態におけるプラズマ処理システムの一例を示す概略断面図である。
図2図2は、アンテナの形状および配置の一例を示す平面図である。
図3図3は、第2のコイルの形状および配置の他の例を示す平面図である。
図4図4は、第2のコイルの形状および配置の他の例を示す平面図である。
図5図5は、第2のコイルの形状および配置の他の例を示す平面図である。
図6図6は、第2のコイルの形状および配置の他の例を示す平面図である。
図7図7は、第1の実施形態におけるアンテナの回路構成の一例を示す接続図である。
図8図8は、第2の実施形態におけるアンテナの回路構成の一例を示す接続図である。
図9図9は、第3の実施形態におけるアンテナの回路構成の一例を示す接続図である。
図10図10は、第2のコイルの端部と窓部材との間の距離の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、開示されるプラズマ処理装置の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により、開示されるプラズマ処理装置が限定されるものではない。
【0009】
本開示は、プラズマ処理の均一性をさらに向上させることができる技術を提供する。
【0010】
(第1の実施形態)
[プラズマ処理システム100の構成]
以下に、プラズマ処理システム100の構成例について説明する。図1は、本開示の一実施形態におけるプラズマ処理システム100の一例を示す概略断面図である。プラズマ処理システム100は、誘導結合型のプラズマ処理装置1および制御部2を含む。プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30、および排気システム40を含む。プラズマ処理チャンバ10は、プラズマ処理チャンバ10の上部を構成する窓部材101を含む。本実施形態において、窓部材101は、例えば石英やセラミック等の誘電体によって構成される。なお、窓部材101は、例えばアルミ等の金属(導電体)、または、例えばシリコン等の半導体によって構成されてもよい。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11、ガス導入部、およびアンテナ50を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置されている。アンテナ50は、窓部材101を介してプラズマ処理チャンバ10の上方に設けられており、銅等の導電性の材料により線状に形成されている。アンテナ50は、中心軸Xを中心として回転対称に配置されている。「回転対称」とは、図形を特徴付ける対称性の一種であり、nを2以上の整数とした場合、図形をある中心の周りを(360/n)°回転させると自らの図形と重なる性質である。アンテナ50は、プラズマ処理チャンバ10内にRF電力を放射することにより、プラズマ処理チャンバ10内に供給されたガスをプラズマ化する。プラズマ処理チャンバ10は、窓部材101、プラズマ処理チャンバ10の側壁102、および基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。
【0011】
基板支持部11は、本体部111およびリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板Wを支持するための中央領域である基板支持面111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域であるリング支持面111bとを有する。基板Wはウエハと呼ばれることもある。本体部111のリング支持面111bは、平面視で本体部111の基板支持面111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の基板支持面111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の基板支持面111a上の基板Wを囲むように本体部111のリング支持面111b上に配置されている。
【0012】
一実施形態において、本体部111は、基台1110および静電チャック1111を含む。基台は、導電性部材を含む。基台1110の導電性部材は下部電極として機能する。静電チャック1111は、基台1110の上に配置される。静電チャック1111の上面は、基板支持面111aである。リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。1又は複数の環状部材のうち少なくとも1つはエッジリングである。また、図示は省略するが、基板支持部11は、静電チャック1111、リングアセンブリ112、および基板Wのうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ1111a、伝熱媒体、流路1110a、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。流路1110aには、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と基板支持面111aとの間に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0013】
ガス導入部は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。一実施形態において、ガス導入部は、中央ガス注入部(CGI:Center Gas Injector)13を含む。中央ガス注入部13は、基板支持部11の上方に配置され、窓部材101に形成された中央開口部に取り付けられる。中央ガス注入部13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス流路13b、および少なくとも1つのガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス流路13bを通過してガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。なお、ガス導入部は、中央ガス注入部13に加えて、またはその代わりに、側壁102に形成された1または複数の開口部に取り付けられる1または複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。サイドガス注入部は、ガス導入口の一例である。
【0014】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21および少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応するガスソース21からそれぞれに対応する流量制御器22を介して中央ガス注入部13に供給するように構成されている。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラまたは圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調またはパルス化する1またはそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0015】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF(Radio Frequency)電源31を含む。RF電源31は、ソースRF信号およびバイアスRF信号のような少なくとも1つのRF信号を、アンテナ50、または、アンテナ50および基板支持部11の導電性部材に供給するように構成される。RF信号は、RF電力と呼んでもよい。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1またはそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を基板支持部11の導電性部材に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオンを基板Wに引き込むことができる。
【0016】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、アンテナ50に結合され、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ生成用のソースRF信号を生成するように構成される。ソースRF信号は、ソースRF電力と呼んでもよい。一実施形態において、ソースRF信号は、13MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1または複数のソースRF信号は、アンテナ50に供給される。第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部11の導電性部材に結合され、バイアスRF信号を生成するように構成される。バイアスRF信号は、バイアスRF電力と呼んでもよい。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1または複数のバイアスRF信号は、基板支持部11の導電性部材に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号およびバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0017】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、バイアスDC生成部32aを含む。一実施形態において、バイアスDC生成部32aは、基板支持部11の導電性部材に接続され、バイアスDC信号を生成するように構成される。生成されたバイアスDC信号は、基板支持部11の導電性部材に印加される。一実施形態において、バイアスDC信号が、静電チャック1111内の電極のような他の電極に印加されてもよい。種々の実施形態において、バイアスDC信号は、パルス化されてもよい。なお、バイアスDC生成部32aは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0018】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁および真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0019】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部または全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aを含んでもよい。コンピュータ2aは、例えば、処理部(CPU:Central Processing Unit)2a1、記憶部2a2、および通信インターフェース2a3を含んでもよい。処理部2a1は、記憶部2a2に格納されたプログラムに基づいて種々の制御動作を行うように構成され得る。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0020】
[アンテナ50の構成]
図2は、アンテナ50の形状および配置の一例を示す平面図である。アンテナ50は、内側コイル51と、外側コイル52とを有する。内側コイル51は、第1のコイルの一例である。本実施形態において、内側コイル51および外側コイル52は、中心軸Xに交差する同一の平面(例えば水平面)内に設けられている。しかし、開示の技術はこれに限られず、内側コイル51および外側コイル52は、異なる平面内に設けられていてもよい。あるいは、内側コイル51および外側コイル52の少なくとも一部が内側コイル51および外側コイル52が配置された平面と異なる平面内に配置されていてもよい。
【0021】
内側コイル51には、電源30からRF電力が供給される。内側コイル51は、電源30から供給されたRF電力によって磁界を発生させ、発生した磁界により外側コイル52と誘導結合する。そして、内側コイル51は、電源30から供給されたRF電力の一部をプラズマ処理チャンバ10内に放射し、他の一部を外側コイル52に供給する。本実施形態において、内側コイル51は、互いに離間したコイル51aおよびコイル51bを有する。コイル51aおよびコイル51bは、中心軸Xを中心として回転対称に配置されている。即ち、内側コイル51は、中心軸Xを中心として回転対称な形状である。
【0022】
図2の例では、コイル51aおよびコイル51bは、それぞれ、中心軸Xを中心として、中心軸Xのまわりを1.5周まわる渦巻状に形成されている。また、図2の例では、コイル51aの最外周の端部は、中心軸Xに対して、コイル51bの最外周の端部と反対の位置に配置されており、コイル51aの最内周の端部は、中心軸Xに対して、コイル51bの最内周の端部と反対の位置に配置されている。これにより、プラズマ処理空間10sに形成されるプラズマに対して、コイル51aおよびコイル51bの端部から放射される不連続な電磁波の影響を緩和することができる。
【0023】
なお、図2の例では、内側コイル51は、渦巻状に形成された2つのコイル51aおよびコイル51bを有するが、開示の技術はこれに限られない。内側コイル51を構成するコイルは、中心軸Xを中心とする回転対称の形状を有するものであれば、直線状、折れ線状、曲線状、放射状、多角形状、またはこれらの組み合わせのような形状であってもよい。
【0024】
外側コイル52は、同一形状に形成された複数のコイル52a、コイル52b、コイル52c、およびコイル52dを有する。コイル52a~52dは、第2のコイルの一例である。コイル52a~52dのそれぞれは、内側コイル51のコイルの中心軸Xを中心として内側コイル51の周囲に回転対称に複数配置されている。コイル52a~52dのそれぞれは、内側コイル51と誘導結合し、内側コイル51から供給されたRF電力に応じて、プラズマ処理空間10sにRF電力を放射する。図2の例では、内側コイル51の周囲に回転対称に4つのコイル52a~52dが配置されているが、開示の技術はこれに限られない。内側コイル51の周囲に回転対称に複数のコイルが配置されていれば、外側コイル52を構成するコイルの数は、4つより少なくてもよく、4つより多くてもよい。また、コイルの数は偶数であってもよく、奇数であってもよい。
【0025】
また、本実施形態において、コイル52a~52dのそれぞれは湾曲しており、内側コイル51から離れる方向に凸となる向きで内側コイル51の周囲に配置されている。図2の例では、コイル52aは、内側コイル51から離れる方向Aに凸となる向きで内側コイル51の周囲に配置されており、コイル52bは、内側コイル51から離れる方向Bに凸となる向きで、内側コイル51の周囲に配置されている。同様に、コイル52cは、内側コイル51から離れる方向Cに凸となる向きで内側コイル51の周囲に配置されており、コイル52dは、内側コイル51から離れる方向Dに凸となる向きで、内側コイル51の周囲に配置されている。
【0026】
なお、図2の例では、外側コイル52が有するそれぞれのコイル52a~52dは湾曲した形状を有するが、開示の技術はこれに限られない。外側コイル52が有するそれぞれのコイル52a~52dは、同一の形状であれば、直線状、折れ線状、曲線状、放射状、多角形状、またはこれらの組み合わせのような形状であってもよい。
【0027】
例えば、外側コイル52が有するコイル52a~52dは、例えば図3に示されるように、内側コイル51の周囲に、中心軸Xを中心とする円周に沿って配置されてもよい。また、コイル52a~52dは、例えば図4に示されるように、隣り合うコイルの端部が、中心軸Xを中心とする円周方向において重なるように配置されてもよい。さらに、コイル52a~52dは、例えば図5に示されるように、隣り合うコイルの一部が重なるように配置されてもよい。
【0028】
あるいは、例えば図6に示されるように、それぞれのコイル52a~52dが、中心軸Xを中心として、中心軸Xのまわりを1.25周まわる渦巻状に形成されていてもよい。図6の例では、それぞれのコイル52a~52dが、中心軸Xを中心として、90°ずつずらして配置されている。これにより、プラズマ処理空間10sに形成されるプラズマに対して、コイル52a~52dの端部から放射される不連続な電磁波の影響を緩和することができる。
【0029】
なお、図3図6では、内側コイル51が配置される領域がハッチングで示されている。図3図6では、外側コイル52の形状のバリエーションについて記載されたが、図3図6に開示されたアンテナの形状のバリエーションは、内側コイル51に対しても適用することができる。
【0030】
[アンテナ50の回路構成]
図7は、第1の実施形態におけるアンテナ50の回路構成の一例を示す接続図である。内側コイル51が有するコイル51aおよびコイル51bの一端は、電源30に接続されており、コイル51aおよびコイル51bの他端は、コンデンサ510を介して接地されている。
【0031】
外側コイル52が有するコイル52a~52dのそれぞれには、可変容量コンデンサが1つずつ接続されている。図7の例では、コイル52aの一端である端部520aは、可変容量コンデンサ53aを介して接地されている。コイル52aの他端である端部521aは接地されている。コイル52bの一端である端部520bは、可変容量コンデンサ53bを介して接地されている。コイル52bの他端である端部521bは接地されている。コイル52cの一端である端部520cは、可変容量コンデンサ53cを介して接地されている。コイル52cの他端である端部521cは接地されている。コイル52dの一端である端部520dは、可変容量コンデンサ53dを介して接地されている。コイル52dの他端である端部521dは接地されている。なお、端部520a、端部520b、端部520c、および端部520dは、それぞれ、固定された容量のコンデンサを介して接地されてもよい。
【0032】
可変容量コンデンサ53a~53dの容量を調整することにより、それぞれのコイル52a~52dに流れる電流を調整することができる。それぞれの可変容量コンデンサ53a~53dの容量の個別調整は、例えば制御部2によって実行される。それぞれのコイル52a~52dに流れる電流を調整することにより、それぞれのコイル52a~52dの下方のプラズマ処理空間10sに形成されるプラズマの密度を調整することができる。例えば、それぞれのコイル52a~52dに流れる電流を同量、増減させることにより、中心軸Xを中心とする径方向のプラズマ密度の分布を調整することができる。また、例えば、それぞれのコイル52a~52dに流れる電流を異なる値となるように調整することにより、中心軸Xを中心とする周方向のプラズマ密度の分布を調整することができる。
【0033】
以上、第1の実施形態について説明した。上記説明から明らかなように、本実施形態のプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10と、窓部材101と、ガス導入口13cと、アンテナ50とを備える。プラズマ処理チャンバ10は、基板Wを収容する。窓部材101は、プラズマ処理チャンバ10の上部を構成する。ガス導入口13cは、プラズマ処理チャンバ10の側壁および窓部材101の少なくともいずれかに設けられ、プラズマ処理チャンバ10内にガスを供給する。アンテナ50は、窓部材101を介してプラズマ処理チャンバ10の上方に設けられ、導電性の材料により線状に形成されている。アンテナ50は、プラズマ処理チャンバ10内にRF電力を放射することによりプラズマ処理チャンバ10内に供給されたガスをプラズマ化する。アンテナ50は、内側コイル51と、複数のコイル52a~52dとを有する。内側コイル51には、RF電力が供給される。コイル52a~52dは、同一形状に形成され、内側コイル51の周囲に、内側コイル51の中心軸Xを中心として回転対称に複数配置されている。それぞれのコイル52a~52dの一端には、可変容量コンデンサが1つずつ接続されている。このような構成のプラズマ処理装置1により、プラズマ処理の均一性を向上させることができる。
【0034】
また、上記した第1の実施形態において、それぞれのコイル52a~52dの他端は、接地されている。それぞれの可変容量コンデンサ53a~53dの一端はそれぞれのコイル52a~52dに接続されており、他端は接地されている。これにより、それぞれの可変容量コンデンサ53a~53dの容量を調整することにより、それぞれのコイル52a~52dに流れる電流を個別に調整することができる。
【0035】
また、上記した第1の実施形態において、内側コイル51は、中心軸Xを中心として回転対称な形状である。これにより、磁界をプラズマ処理チャンバ10内により均一に放射することができ、プラズマ処理の均一性を向上させることができる。
【0036】
また、上記した第1の実施形態において、内側コイル51は、互いに離間して配置された複数のコイル51aおよびコイル51bを有する。これにより、磁界をプラズマ処理チャンバ10内により均一に放射することができ、プラズマ処理の均一性を向上させることができる。
【0037】
また、上記した第1の実施形態において、コイル52a~52dのそれぞれは、湾曲しており、内側コイル51から離れる方向に凸となる向きで内側コイル51の周囲に配置されている。これにより、それぞれの可変容量コンデンサ53a~53の下方に放射される磁界の大きさを、それぞれ個別に精度良く調整することができる。
【0038】
また、上記した第1の実施形態において、内側コイル51と、それぞれのコイル52a~52dとは、中心軸Xに交差する同一の平面内に配置されている。これにより、プラズマ処理チャンバ10内に放射される磁界の分布を精度良く調整することができる。
【0039】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、外側コイル52が有するそれぞれのコイルの両端は、可変容量コンデンサを介して接続されている。図8は、第2の実施形態におけるアンテナ50の回路構成の一例を示す接続図である。例えば図8に示されるように、コイル52aの端部520aおよび端部521aは、可変容量コンデンサ53aを介して接続されており、コイル52bの端部520bおよび端部521bは、可変容量コンデンサ53bを介して接続されている。また、コイル52cの端部520cおよび端部521cは、可変容量コンデンサ53cを介して接続されており、コイル52dの端部520dおよび端部521dは、可変容量コンデンサ53dを介して接続されている。図8のような構成のアンテナ50であっても、可変容量コンデンサ53a~53dの容量を調整することにより、それぞれのコイル52a~52dに流れる電流を調整することができる。
【0040】
また、図8のような構成のアンテナ50では、プラズマ処理空間10sに形成されるプラズマと、それぞれのコイル52a~52dとの間の電位差を小さくすることができる。これにより、プラズマ処理空間10sに形成されるプラズマと、それぞれのコイル52a~52dとの間の容量結合を抑制することができる。
【0041】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、外側コイル52が有するそれぞれのコイルの一端は、可変容量コンデンサを介して接地されており、他端は開放されている。図9は、第3の実施形態におけるアンテナ50の回路構成の一例を示す接続図である。例えば図9に示されるように、コイル52aの端部520aは、可変容量コンデンサ53aを介して接地されており、端部521aは開放されている。コイル52bの端部520bは、可変容量コンデンサ53bを介して接地されており、端部521bは開放されている。コイル52cの端部520cは、可変容量コンデンサ53cを介して接地されており、端部521cは開放されている。コイル52dの端部520dは、可変容量コンデンサ53dを介して接地されており、端部521dは開放されている。図9のような構成のアンテナ50であっても、可変容量コンデンサ53a~53dの容量を調整することにより、それぞれのコイル52a~52dに流れる電流を調整することができる。
【0042】
また、図9のような構成のアンテナ50では、それぞれのコイル52a~52dの開放端の電圧が高くなる。これにより、低圧環境等のようにプラズマの着火が難しい条件であっても、プラズマを着火させることができる。ただし、プラズマ処理空間10sに形成されるプラズマと、コイル52a~52dとの間の電位差が大きくなると、プラズマとコイル52a~52dとの間で容量結合が起こり、プラズマのモードが容量結合モードになってしまう場合がある。そのため、それぞれのコイル52a~52dの開放端は、中心軸Xの方向において、プラズマ処理空間10sの中央から離れた位置に配置されることが好ましい。
【0043】
例えば図9に示されるように、中心軸Xの方向において、コイル52aの端部521aと内側コイル51との距離L2は、コイル52aの端部520aと内側コイル51との距離L1よりも長い。コイル52b~コイル52dについても同様である。なお、内側コイル51は、中心軸Xの方向において、プラズマ処理空間10sの略中央に配置されている。このように、本実施形態では、それぞれのコイル52a~コイル52dの開放端(端部521a~521d)は、コイル52a~コイル52dの端部(端部520a~520d)よりも内側コイル51から遠い位置に配置されている。これにより、プラズマ処理空間10sに形成されるプラズマにおいて、それぞれのコイル52a~52dの端部との間の容量結合の影響を抑制することができる。
【0044】
また、第3の実施形態では、それぞれのコイル52a~52dの開放端の電圧が高くなるため、開放端から放射さる電界の強度が大きくなる。そのため、開放端付近において、それぞれのコイル52a~52dから放射される電界によりイオン等の荷電粒子が引き寄せられ、引き寄せられた荷電粒子により開放端の近傍の窓部材101がスパッタリングされる場合がある。これにより、開放端の近傍の窓部材101からパーティクルが発生する場合がある。
【0045】
そこで、第3の実施形態では、例えば図10に示されるように、コイル52aの開放端である端部521aと窓部材101との間の距離D2は、コイル52aの端部520aと窓部材101との間の距離D1よりも長くすることが好ましい。コイル52b~コイル52dについても同様である。即ち、それぞれのコイル52a~52dの開放端(端部521a~521d)は、可変容量コンデンサが接続されているそれぞれのコイル52a~52dの端部(端部520a~520d)よりも窓部材101から遠い位置に配置されることが好ましい。これにより、窓部材101から発生するパーティクルを抑制することができる。
【0046】
[その他]
なお、本開示は、上記した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0047】
例えば、上記した各実施形態において、プラズマ処理空間10sに形成されているプラズマの状態を測定する装置を設け、測定されたプラズマの状態に基づいて、可変容量コンデンサ53a~53dのそれぞれの容量を調整してもよい。例えば、測定されたプラズマの分布に偏りがある場合には、コイル52a~52dにその偏りを抑制するような電流が流れるように、それぞれの可変容量コンデンサ53a~53dの容量を調整してもよい。そのような制御は、例えば制御部2によって実現される。
【0048】
また、前の工程において、基板W上におけるプロセスの偏りが検出された場合には、プラズマ処理装置1において、そのようなプロセスの偏りと逆の偏りを発生させるような偏ったプラズマの分布を意図的に生成させてもよい。これにより、複数の工程を経て製造される半導体装置において、全体としてプロセスの偏りを抑制することができ、半導体装置の品質を向上させることができる。
【0049】
なお、今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0050】
X 中心軸
W 基板
100 プラズマ処理システム
1 プラズマ処理装置
10 プラズマ処理チャンバ
10e ガス排出口
10s プラズマ処理空間
101 窓部材
102 側壁
11 基板支持部
111 本体部
111a 基板支持面
111b リング支持面
1110 基台
1110a 流路
1111 静電チャック
1111a ヒータ
112 リングアセンブリ
13 中央ガス注入部
13a ガス供給口
13b ガス流路
13c ガス導入口
20 ガス供給部
21 ガスソース
22 流量制御器
30 電源
31 RF電源
31a 第1のRF生成部
31b 第2のRF生成部
32 DC電源
32a バイアスDC生成部
40 排気システム
50 アンテナ
51 内側コイル
51a コイル
51b コイル
510 コンデンサ
52 外側コイル
520 端部
521 端部
52a コイル
52b コイル
52c コイル
52d コイル
53a 可変容量コンデンサ
53b 可変容量コンデンサ
53c 可変容量コンデンサ
53d 可変容量コンデンサ
2 制御部
2a コンピュータ
2a1 処理部
2a2 記憶部
2a3 通信インターフェース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10