(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119209
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】牛の評価装置及び牛の評価方法
(51)【国際特許分類】
A01K 29/00 20060101AFI20230821BHJP
【FI】
A01K29/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021948
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】平田 晃
(72)【発明者】
【氏名】西川 純
(72)【発明者】
【氏名】川出 哲生
(57)【要約】
【課題】多様な飼育現場に適用することが可能な牛の評価装置及び牛の評価方法を提供すること。
【解決手段】牛の評価装置100は、立位にある牛を略真後ろから撮像した二次元の撮像画像50を取得し、撮像画像50から牛の輪郭線60を抽出し、輪郭線60から牛の身体の横幅方向の大きさに関する基準寸法を特定し、輪郭線60の最も左側の最左点から輪郭線60の内側に基準寸法の第1割合に相当する第1距離と基準寸法の第2割合に相当する第2距離それぞれ離れかつ離れた方向に略直交する2つの直線330、332で挟まれた基準範囲306を特定し、輪郭線60のうち基準範囲306内に位置する連続する部分上の複数の点307から複数の直線310a~310eを決定し、決定した複数の直線310a~310eの最大傾き、最小傾き、又は平均傾きを算出し、算出した最大傾き、最小傾き又は平均傾きから牛の肉付きを評価する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立位にある牛を略真後ろ又は略正面から撮像した二次元の撮像画像を取得する画像取得部と、
前記撮像画像から、前記牛の輪郭線を抽出する抽出部と、
前記輪郭線から前記牛の身体の横幅方向の大きさに関する基準寸法を特定し、前記輪郭線の最も左側の最左点、最も右側の最右点、又は最も上側の最上点から前記輪郭線の内側に前記基準寸法の第1割合に相当する第1距離と前記基準寸法の第2割合に相当する第2距離それぞれ離れかつ離れた方向に略直交する2つの直線で挟まれた基準範囲を特定し、前記輪郭線のうち前記基準範囲内に位置する連続する部分上の複数の点から1又は複数の直線を決定する決定部と、
前記決定部が決定した前記1又は複数の直線の傾き又は前記傾きから得られる値を算出する算出部と、
前記算出部が算出した前記傾き又は前記傾きから得られる値から、前記牛の肉付きを評価する評価部と、を備える牛の評価装置。
【請求項2】
前記決定部は、前記輪郭線が抽出された抽出画像内で前記輪郭線の前記最左点を通り垂直方向に伸びる直線と、前記抽出画像内で前記輪郭線の前記最右点を通り垂直方向に伸びる直線と、の間の距離を、前記牛の身体の横幅方向に関する前記基準寸法として特定する、請求項1に記載の牛の評価装置。
【請求項3】
前記決定部は、前記輪郭線の前記最左点又は前記最右点から前記輪郭線の内側に前記第1距離と前記第2距離それぞれ離れた前記2つの直線の間に位置する前記基準範囲を特定し、前記第1割合として16%以上の値を用い、前記第2割合として40%以下の値を用いる、請求項2に記載の牛の評価装置。
【請求項4】
前記決定部は、前記第1割合として16%以上24%以下の値を用い、前記第2割合として28%以上40%以下の値を用いる、請求項3に記載の牛の評価装置。
【請求項5】
前記決定部は、前記輪郭線の前記最上点から前記輪郭線の内側に前記第1距離と前記第2距離それぞれ離れた前記2つの直線の間に位置する前記基準範囲を特定し、前記第1割合として15%以上の値を用い、前記第2割合として35%以下の値を用いる、請求項2に記載の牛の評価装置。
【請求項6】
前記決定部は、前記第1割合として15%以上25%以下の値を用い、前記第2割合として28%以上35%以下の値を用いる、請求項5に記載の牛の評価装置。
【請求項7】
前記決定部は、前記1又は複数の直線として、前記基準範囲の両端における前記輪郭線上の点を通る1本の直線を決定する、請求項1から6のいずれか一項に記載の牛の評価装置。
【請求項8】
前記決定部は、前記1又は複数の直線として、前記輪郭線のうち前記基準範囲内に位置する連続する部分上の前記複数の点から複数の直線を決定し、
前記算出部は、前記複数の直線の最大傾き、最小傾き、または平均傾きを算出する、請求項1から6のいずれか一項に記載の牛の評価装置。
【請求項9】
前記評価部は、前記牛の肉付きの評価としてボディコンディションスコアを評価する、請求項1から8のいずれか一項に記載の牛の評価装置。
【請求項10】
前記牛を撮像する撮像部を備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の牛の評価装置。
【請求項11】
立位にある牛を略真後ろ又は略正面から撮像した二次元の撮像画像から前記牛の輪郭線を抽出し、
抽出した前記輪郭線から前記牛の身体の横幅方向の大きさに関する基準寸法を特定し、前記輪郭線の最も左側の最左点、最も右側の最右点、又は最も上側の最上点から前記輪郭線の内側に前記基準寸法の第1割合に相当する第1距離と前記基準寸法の第2割合に相当する第2距離それぞれ離れかつ離れた方向に略直交する2つの直線で挟まれた基準範囲を特定し、前記輪郭線のうち前記基準範囲内に位置する連続する部分上の複数の点から1又は複数の直線を決定し、
決定した前記1又は複数の直線の傾き又は前記傾きから得られる値を算出し、
算出した前記傾き又は前記傾きから得られる値から、前記牛の肉付きを評価する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする牛の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛の評価装置及び牛の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
牛の飼養管理におけるエネルギーバランスを評価するために、牛の体脂肪の付着状態(肉付き状態)を評価することが行われている。体脂肪の付着状態を示す指標の1つとしてボディコンディションスコアがある。通常、ボディコンディションスコアの判定は獣医師や酪農の専門家によって行われるが、人が判定をするために判定基準があいまいとなり、判定にばらつきが生じてしまう。一方、動物の三次元画像に基づいて身体の状態を示すスコアを評価する方法(例えば特許文献1)や、動物を撮像した二次元画像に基づいて身体の状態を示すスコアを評価する方法(例えば特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2012-510278号公報
【特許文献2】欧州特許第2027770号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の評価方法は、動物の三次元画像を用いて身体の状態を示すスコアを算出するため、大掛かりな設備が設置された特定の場所での撮像が必要であり、多様な飼育現場に適用することは難しい。特許文献2に記載の評価方法では、動物の二次元画像を用いるが、動物を上方から撮像した二次元画像を用いるため、動物を上方から撮像できる設備が設置された特定の場所での撮像が必要であり、特許文献1と同様に、多様な飼育現場に適用することは難しい。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みなされたものであり、多様な飼育現場に適用することが可能な牛の評価装置及び牛の評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の牛の評価装置は、立位にある牛を略真後ろ又は略正面から撮像した二次元の撮像画像を取得する画像取得部と、前記撮像画像から、前記牛の輪郭線を抽出する抽出部と、前記輪郭線から前記牛の身体の横幅方向の大きさに関する基準寸法を特定し、前記輪郭線の最も左側の最左点、最も右側の最右点、又は最も上側の最上点から前記輪郭線の内側に前記基準寸法の第1割合に相当する第1距離と前記基準寸法の第2割合に相当する第2距離それぞれ離れかつ離れた方向に略直交する2つの直線で挟まれた基準範囲を特定し、前記輪郭線のうち前記基準範囲内に位置する連続する部分上の複数の点から1又は複数の直線を決定する決定部と、前記決定部が決定した前記1又は複数の直線の傾き又は前記傾きから得られる値を算出する算出部と、前記算出部が算出した前記傾き又は前記傾きから得られる値から、前記牛の肉付きを評価する評価部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、多様な飼育現場に適用することが可能な牛の評価装置及び牛の評価方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る牛の評価装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態における制御部の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、画像取得部が取得する画像の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、抽出部が実行する処理を説明するための図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態における決定部及び算出部が実行する処理を説明するための図である。
【
図6】
図6(a)から
図6(c)は、肉付きの異なる牛の撮像画像である。
【
図7】
図7(a)及び
図7(b)は、牛の肉付きと、算出部が算出する直線の傾きと、の関係を示す図である。
【
図8】
図8は、ボディコンディションスコアと、算出部が算出した複数の直線の最大傾き、最小傾き、及び平均傾きと、の相関を調査した実験結果である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態に係る牛の評価装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、第1の実施形態における牛の肉付きの評価方法の一例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、第1の実施形態の変形例における決定部及び算出部が実行する処理を説明するための図である。
【
図12】
図12は、ボディコンディションスコアと算出部が算出した直線の傾きとの相関を調査した実験結果を示す図である。
【
図13】
図13は、第2の実施形態における決定部及び算出部が実行する処理を説明するための図である。
【
図14】
図14は、ボディコンディションスコアと、算出部が算出した複数の直線の平均傾きと、の相関を調査した実験結果を示す図である。
【
図15】
図15(a)は、立位にある牛を略真後ろから撮像した撮像画像、
図15(b)は、
図15(a)の牛を略正面から撮像した撮像画像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
《第1の実施形態》
以下、第1の実施形態に係る牛の評価装置100について、
図1~
図10に基づいて説明する。
図1には、第1の実施形態に係る牛の評価装置100の構成がブロック図にて示されている。
図2には、制御部22の機能構成がブロック図にて示されている。本第1の実施形態では、評価装置100は、作業者が携帯して利用する携帯型情報機器であるとする。携帯型情報機器として、例えばスマートフォン、タブレット型パソコン、PDA(Personal Digital Assistant)、スマートグラス等が挙げられる。評価装置100は、例えば、電話機能やメール機能、インターネット等に接続するための通信機能、及びプログラムを実行するためのデータ処理機能等を有する。
【0010】
評価装置100は、
図1に示すように、表示部12と、操作部14と、通信部16と、撮像部18と、記憶部20と、制御部22と、を備える。
【0011】
表示部12は、画像や、各種情報、及びタッチ操作ボタン等の操作入力用画像等を表示する表示デバイスである。
【0012】
操作部14は、タッチパネルやスイッチ等のデバイスである。タッチパネルは、作業者が触れたことに応じて情報入力を受け付け、受け付けた情報を制御部22に送信する。タッチパネルは、例えば表示部12に組み込まれている。したがって、タッチパネルは、作業者が表示部12の表面をタッチすることに応じて、種々の情報入力を受け付ける。スイッチは、作業者から評価装置100に対する操作を受け付ける操作部材であり、受け付けた情報を制御部22に送信する。
【0013】
通信部16は、他の機器と近距離無線通信(例えばNFC(Near Field Communication))を行ったり、ネットワークに接続された他の機器と無線通信(例えば携帯電話回線や無線LAN(Local Area Network)等を用いた通信)を行ったりする通信インターフェースである。
【0014】
撮像部18は、静止画や動画等の画像を撮像するデバイスである。撮像部18は、評価装置100を携帯する作業者が操作部14を操作することに応じて撮像する。作業者は、牛の肉付きを評価する場合に、撮像部18によって立位にある牛を略真後ろから撮像する。略真後ろから撮像するとは、牛の左右の腰角周りの輪郭が写る範囲で撮像することである。したがって、作業者は、例えば、牛の後方数m(例えば1m~2m)の位置から、牛の左右の腰角周りの輪郭が写るように撮像する。
【0015】
記憶部20は、牛の撮像画像や牛の輪郭線を抽出した抽出画像、牛の肉付きを評価した評価結果等、各種情報を記憶する。
【0016】
制御部22は、牛の評価装置100の各部を制御する処理部である。
図2に示すように、制御部22は、画像取得部30、抽出部32、決定部38、算出部34、及び評価部36を有する。
【0017】
図3には、画像取得部30が取得する画像の一例が示されている。
図3に示すように、画像取得部30は、例えば、立位にある牛を略真後ろから撮像した撮像画像50を取得する。取得する牛の撮像画像50は、撮像部18が撮像した画像であってもよいし、他の機器が撮像した画像を通信部16により受信した画像であってもよい。また、取得する牛の撮像画像50は、記憶部20に記憶されていたものの中から作業者が操作部14を用いて選択したものであってもよい。画像取得部30は、取得した牛の撮像画像50を表示部12に表示してもよい。これにより、作業者は、これから肉付きを評価する牛を表示部12上で視覚的に認識することができる。
【0018】
図4は、抽出部32が実行する処理を説明するための図である。
図4に示すように、抽出部32は、画像取得部30が取得した牛の撮像画像50から、牛の輪郭をなぞった輪郭線60を抽出する。輪郭線60の抽出は、一般的に知られた画像処理技術を用いることができる。抽出部32は、抽出した牛の輪郭線60のみを表した抽出画像51を表示部12に表示してもよい。これにより、作業者は、これから肉付きを評価する牛の輪郭を表示部12上で視覚的に認識することができる。抽出画像51の外形は撮像画像50の外形と同じであり、画像の枠に対する牛の位置は抽出画像51と撮像画像50とで同じである。
【0019】
輪郭線60の上部の左右両側には山部61a、61bが存在する。山部61a、61bは、牛の腰角に対応する部分である。山部61aは、山部61aの輪郭線60上の略中央の点を頂点62aとし、頂点62aから輪郭線60の上部中央側(牛の背骨側)に伸びる第1曲線部63aと、頂点62aから輪郭線60の側部下側(牛の腹側)に伸びる第2曲線部64aと、を有する。同様に、山部61bは、山部61bの輪郭線60上の略中央の点を頂点62bとし、頂点62bから輪郭線60の上部中央側(牛の背骨側)に伸びる第1曲線部63bと、頂点62bから輪郭線60の側部下側(牛の腹側)に伸びる第2曲線部64bと、を有する。なお、第1曲線部63a、63bは、山部61a、61bの輪郭線60上の略中央の点(頂点62a、62b)から他方の山部側(牛の背骨側)に伸びる曲線部であるといえる。また、第2曲線部64a、64bは、山部61a、61bの輪郭線60上の略中央の点(頂点62a、62b)から、第1曲線部63a、63bとは反対側に伸びる曲線部であるといえる。
【0020】
図5は、第1の実施形態における決定部38及び算出部34が実行する処理を説明するための図である。
図5は、輪郭線60の上側部分を拡大した図であり、図の明瞭化のために模式的に図示している(以下の同様な図においても同じ)。
図5に示すように、決定部38は、まず、輪郭線60から牛の身体の横幅方向の大きさに関する基準寸法を特定する。本第1の実施形態では、輪郭線60の最も左側の最左点302を通り抽出画像51内で垂直方向(上下方向)に伸びる垂直線304と、輪郭線60の最も右側の最右点303を通り抽出画像51内で垂直方向(上下方向)に伸びる垂直線305と、の間の距離Wを基準寸法として特定する。最左点302は、例えば、抽出画像51内で上下方向に伸びる垂直線を左側から輪郭線60の近づけて行き、垂直線が輪郭線60に最初に接した点を最左点302と特定することができる。また、その他の方法によって最左点302を特定してもよく、例えば、抽出画像51をX-Y座標系に変換し、抽出画像51の各画素のX、Y座標から最左点302を特定してもよいし、輪郭線60のなかで抽出画像51の左側の端辺からの距離が最も短い点を最左点302としてもよい。最右点303についても同様である。
【0021】
次いで、決定部38は、特定した基準寸法Wの第1割合に相当する第1距離と、基準寸法Wの第2割合に相当する第2距離と、を特定する。そして、決定部38は、輪郭線60の最左点302から輪郭線60の内側に第1距離だけ離れかつ離れた方向に略直交(例えば直交)する直線330と、最左点302から輪郭線60の内側に第2距離だけ離れかつ離れた方向に略直交(例えば直交)する直線332と、で挟まれた基準範囲306を特定する。本第1の実施形態では、決定部38は、第1割合として20%を用いて、第1距離として0.2Wを特定し、第2割合として30%を用いて、第2距離として0.3Wを特定する。したがって、基準範囲306は、最左点302を通る垂直線304から0.2W以上0.3W以下で離れた範囲であるとも言える。次いで、決定部38は、輪郭線60のうちの基準範囲306内に位置する連続する部分上の複数の点307を特定し、複数の点307のうちの2つの点を通る複数の直線310a、310b、310c、310d、310eを決定する。本第1の実施形態では、複数の点307は、直線330、332と輪郭線60とが交差する2点と、基準範囲306を左右方向に5等分する4本の垂直線と輪郭線60とが交差する4点と、であるとする。また、本第1の実施形態では、複数の直線310a~310eは、6つの点307から得られる5組の隣接する2つの点の組み合わせそれぞれを通る5本の直線310a~310eとする。
【0022】
算出部34は、決定部38が決定した直線310a~310eの抽出画像51内で水平方向(左右方向)に伸びる水平線に対する傾きを算出する。本第1の実施形態では、決定部38が決定した直線310a~310eが抽出画像51内で左下から右上に伸びている場合の傾きを正とし、右下から左上に伸びている場合の傾きを負とする。算出部34は、複数の直線310a~310eそれぞれの傾きから、最大傾き、最小傾き、又は平均傾きを求める。算出部34が算出する直線310a~310eの傾きは、山部61aの傾斜の度合いを示す指標値の1つである。
【0023】
評価部36は、算出部34が算出した直線310a~310eの最大傾き、最小傾き、又は平均傾きから、撮像画像50に写された牛の肉付きを評価する。肉付きとして、例えばボディコンディションスコアを評価する。
【0024】
ここで、算出部34が算出する直線310a~310eの最大傾き、最小傾き、又は平均傾きと、ボディコンディションスコアと、の関係について説明する。なお、ボディコンディションスコアは、体脂肪の付着状態を示す指標であり、例えば1.00~5.00の点数を付ける場合があり、値が大きいほど肉付きが良いことを意味する。
【0025】
図6(a)から
図6(c)は、肉付きの異なる牛の撮像画像50である。
図6(a)は、肉付きが悪い牛の撮像画像50、
図6(b)は、
図6(a)の牛よりも肉付きが良い牛の撮像画像50、
図6(c)は、肉付きが更に良い牛の撮像画像50である。
図6(a)の牛は、専門家によるボディコンディションスコアの評価は2.25であった。
図6(b)の牛は3.00であり、
図6(c)の牛は4.00であった。
図6(a)から
図6(c)に示すように、肉付きが異なる(すなわちボディコンディションスコアが異なる)ことで、腰角周りの肉付きが変化し、立位にある牛を略真後ろから見たときの腰角の形状が異なることが確認できる。
【0026】
図7(a)及び
図7(b)は、牛の肉付きと、算出部34が算出する複数の直線310a~310eの傾きと、の関係を示す図である。
図7(b)は、
図7(a)の牛より肉付きのよい牛の輪郭線60を示している。
図7(a)及び
図7(b)に示すように、肉付きの違いによって、直線310a~310eの傾き具合が異なる。このことから、直線310a~310eの傾きを求めることで、牛の肉付きを評価できると考えられる。
【0027】
[実験]
獣医師等の専門家が評価したボディコンディションスコアと、算出部34が算出した直線310a~310eの最大傾き、最小傾き、及び平均傾きと、の相関を調査する実験を行った。実験は、乳牛(ホルスタイン種)に対して行った。
【0028】
図8には、ボディコンディションスコアと、算出部34が算出した複数の直線310a~310eの最大傾き、最小傾き、及び平均傾きと、の相関を調査した実験結果が示されている。
図8の横軸(x軸)は専門家が評価したボディコンディションスコアであり、縦軸は算出部34が算出した傾きである。
図8中の複数の黒丸は直線310a~310eの最大傾きを用いたときの乳牛1頭1頭の結果を示していて、点線の直線はそのときの近似直線(回帰直線)を示している。複数の黒四角は直線310a~310eの最小傾きを用いたときの乳牛1頭1頭の結果を示していて、一点鎖線の直線はそのときの近似直線(回帰直線)を示している。複数の黒三角は直線310a~310eの平均傾きを用いたときの乳牛1頭1頭の結果を示していて、破線の直線はそのときの近似直線(回帰直線)を示している。
図8に示すように、直線310a~310eの最大傾き、最小傾き、及び平均傾きのいずれを用いた場合であっても、傾きの負の値が大きくなるほどボディコンディションスコアは低くなり、傾きの正の値が大きくなるほどボディコンディションスコアは高くなっている。最大傾きを用いた点線の近似直線はy=0.2084x-0.4895と求まり、決定係数R
2は0.6317であった。最小傾きを用いた一点鎖線の近似直線はy=0.2528x-1.0665と求まり、決定係数R
2は0.8772であった。平均傾きを用いた破線の近似直線はy=0.2203x-0.7692と求まり、決定係数R
2は0.8996であった。このことから、ボディコンディションスコアと、算出部34が算出する直線310a~310eの傾きと、には強い相関関係があることが確認された。
【0029】
このように、ボディコンディションスコアと算出部34が算出する直線310a~310eの傾きとには強い相関関係があることから、評価部36は直線310a~310eの最大傾き、最小傾き、又は平均傾きから牛の肉付きを評価することで、牛の肉付きを精度良く評価できることが分かる。評価部36は、例えば、記憶部20に記憶された、傾きとボディコンディションスコアとが関連付けられたスコア情報を用いてボディコンディションスコアを評価する。
【0030】
表1には、記憶部20に記憶されたスコア情報の一例が示されている。表1に示すように、スコア情報においては、傾きとボディコンディションスコアとが関連付けられている。例えば、傾きが-a未満の場合のボディコンディションスコアは1.00、-a以上-b未満の場合のボディコンディションスコアは1.50、・・・、-d以上+e未満の場合のボディコンディションスコアは3.00等のように、傾きとボディコンディションスコアとが関連付けられている。なお、表1では、ボディコンディションスコアが0.5刻みの場合を例に示したが、その他の場合でもよい。例えば、0.25刻みの場合でもよいし、2.00~4.00の間は0.25刻みで、それ以外は0.50刻みの場合でもよい。なお、最大傾き、最小傾き、及び平均傾きではそれぞれ別の表を用いる。
【表1】
【0031】
なお、記憶部20に記憶されるスコア情報は、傾きとボディコンディションスコアとが関連付けられた情報であれば、表1に示したスコア情報以外であってもよい。例えば、
図8に示す近似直線のような一次関数(y=ax+b)がスコア情報として記憶部20に記憶されていてもよい。この場合、yに傾きを代入することで得られたxの値に対して四捨五入や、切り上げ、切り捨て等の端数処理を行ってボディコンディションスコアを評価してもよい。
【0032】
図9は、第1の実施形態に係る牛の評価装置100のハードウェア構成を示すブロック図である。
図9に示すように、牛の評価装置100は、記憶装置70、メモリ71、プロセッサ72、通信インターフェース73、入力装置74、表示装置75、及び撮像装置76を有する。これらの各部はバス77により相互に接続される。
【0033】
記憶装置70は、フラッシュメモリ等の不揮発性の半導体メモリであって、牛の評価プログラム78を記憶する。
【0034】
メモリ71は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等のようなデータを一時的に記憶するハードウェアである。
図1における記憶部20は、記憶装置70とメモリ71によって実現される。
【0035】
プロセッサ72は、牛の評価装置100の各部を制御するCPU(Central Processing Unit)等のハードウェアである。プロセッサ72は、メモリ71と協働して牛の評価プログラム78を実行する。このように、メモリ71とプロセッサ72とが協働して牛の評価プログラム78を実行することにより、
図2における制御部22の各機能が実現される。
【0036】
通信インターフェース73は、牛の評価装置100を他の機器と近距離無線通信又はネットワークを介した無線通信をさせるためのハードウェアである。通信インターフェース73により
図1における通信部16が実現される。
【0037】
入力装置74は、作業者が牛の評価装置100を操作するためのタッチパネルやスイッチ等の入力デバイスである。入力装置74により
図1における操作部14が実現される。
【0038】
表示装置75は、
図1における表示部12を実現するためのハードウェアであり、牛の撮像画像50や抽出画像51、牛の肉付きの評価結果等を表示するための液晶ディスプレイ等の表示デバイスである。
【0039】
撮像装置76は、
図1における撮像部18を実現するためのハードウェアであり、レンズや撮像素子等を備える。
【0040】
次に、第1の実施形態における牛の肉付きの評価方法の一例について、
図10のフローチャートに沿って説明する。
図10の処理は、評価装置100の制御部22によって実行される。なお、記憶部20には、一例として表1のようなスコア情報が格納されているとする。
【0041】
図10の処理では、まず、ステップS10において、制御部22の画像取得部30は、牛の評価プログラム78が起動されるまで待機する。この場合、作業者の操作(例えば操作部14への入力操作又はマイク(不図示)への音声入力等)に応じて制御部22が牛の評価プログラム78を起動した段階で、ステップS12に移行する。
【0042】
ステップS12に移行すると、画像取得部30は、肉付きの評価を行う牛が撮像された撮像画像50を取得する(
図3参照)。牛の撮像画像50は、立位にある牛が略真後ろから撮像された画像である。画像取得部30は、例えば、作業者が撮像部18を用いて撮像した牛の撮像画像を取得する。なお、画像取得部30は、通信部16を介して他の機器から受信した牛の撮像画像、又は記憶部20に記憶された複数の牛の撮像画像の中から作業者が操作部14を操作することで選択した牛の撮像画像を取得してもよい。なお、画像取得部30は、牛の評価プログラム78が起動した後に、作業者が撮像部18によって牛を撮像できるよう、カメラ機能を立ち上げてもよい。作業者が撮像部18によって牛を撮像した場合、撮像した牛の画像と、この撮像画像を選択するか否かを問う選択ボタンと、を表示部12に表示し、作業者が選択しないことを選んだ場合、カメラ機能を再度立ち上げるようにしてもよい。
【0043】
制御部22の抽出部32は、ステップS14において、ステップS12で取得した牛の撮像画像50から牛の輪郭をなぞった輪郭線60を抽出する(
図4参照)。これにより、牛の輪郭線60が示された抽出画像51が生成される。輪郭線60を抽出するにあたり、抽出部32は、輪郭線60を良好な精度で抽出するために、撮像画像50内の牛以外の背景を除去する処理を行ってもよい。
【0044】
次いで、ステップS16では、制御部22の決定部38は、輪郭線60から牛の身体の横幅方向の大きさに関する基準寸法を特定し、輪郭線60の最左点302から基準寸法の第1割合に相当する第1距離だけ離れた直線330と、基準寸法の第2割合に相当する第2距離だけ離れた直線332と、で挟まれた基準範囲306を特定する(
図5参照)。そして、決定部38は、輪郭線60のうちの基準範囲306内に位置する連続する部分上の複数の点307から複数の直線310a~310eを特定する(
図5参照)。本第1の実施形態では、決定部38は、輪郭線60の最左点302を通る垂直線304と、輪郭線60の最右点303を通る垂直線305と、の間の距離Wを、牛の身体の横幅方向の大きさに関する基準寸法として特定する。そして、決定部38は、輪郭線60の最左点302から0.2Wだけ離れた直線330と0.3Wだけ離れた直線332とで挟まれた基準範囲306を特定し、輪郭線60のうちの基準範囲306内に位置する連続する部分上の複数の点307のうち隣接する2つの点の組を通る複数の直線310a~310eを決定する(
図5参照)。
【0045】
次いで、ステップS18では、制御部22の算出部34は、ステップS16で決定した複数の直線310a~310eの最大傾き、最小傾き、又は平均傾きを算出する。
【0046】
次いで、ステップS20では、制御部22の評価部36は、ステップS18で算出した直線310a~310eの最大傾き、最小傾き、又は平均傾きと、記憶部20に記憶された表1のようなスコア情報とから、撮像画像50に写された牛の肉付き(ボディコンディションスコア)を評価する。
【0047】
次いで、ステップS22では、評価部36は、ステップS20で評価したボディコンディションスコアを表示部12に表示すると共に、記憶部20に記憶する。例えば、評価部36は、牛の撮像画像50と共にボディコンディションスコアを表示部12に表示してもよい。また、評価部36は、作業者が操作部14を操作して入力した牛の個体識別番号等の個体識別情報と、評価したボディコンディションスコアと、を関連付けて記憶部20に記憶してもよい。なお、評価部36は、作業者が操作部14を操作することで入力した個体識別情報を取得する場合に限られず、牛の体に取り付けられた識別票の画像を撮像部18が撮像した撮像画像から個体識別情報を取得する場合や、RFID(Radio Frequency Identification)技術を用いて、牛の体に取り付けられたRFタグから通信部16が個体識別情報を受信することで取得する場合等でもよい。また、カメラや通信装置を牛舎内外の通路に設置し、通路を通過する牛をセンサで検出できるようにしておき、通路を通過する牛をカメラが撮像した撮像画像を通信部16が取得し、その撮像画像に写された識別票の画像から個体識別情報を取得してもよいし、通路を通過する牛に取り付けられたRFタグから通信装置が個体識別情報を受信し、通信部16が通信装置から個体識別情報を受け取ることで取得してもよい。また、評価部36は、ボディコンディションスコアを評価した牛の個体識別番号と、当該牛を撮像した撮像画像50と、撮像日と、当該牛のボディコンディションスコアと、を関連付けた1つの情報として記憶部20に記憶してもよい。
【0048】
[変形例]
上記第1の実施形態では、決定部38は複数の直線310a~310eを決定する場合を例に示したが、1つの直線を決定する場合でもよい。
図11は、第1の実施形態の変形例における決定部38及び算出部34が実行する処理を説明するための図である。
図11に示すように、決定部38は、
図5において説明した方法と同じ方法によって基準範囲306を特定する。そして、決定部38は、基準範囲306の両端での輪郭線60上の点307を特定し、2つの点307を通る直線310を決定する。
【0049】
算出部34は、決定部38が決定した直線310の傾きを算出する。評価部36は、算出部34が算出した傾きから、牛の肉付きを評価する。
【0050】
[実験]
獣医師等の専門家が評価したボディコンディションスコアと、算出部34が算出した直線310の傾きと、の相関を調査する実験を行った。実験は、乳牛(ホルスタイン種)に対して行った。
【0051】
図12には、ボディコンディションスコアと算出部34が算出した直線310の傾きとの相関を調査した実験結果が示されている。
図12の横軸(x軸)は専門家が評価したボディコンディションスコアであり、縦軸は算出部34が算出した傾きである。
図12中の複数の黒丸は実験をした乳牛1頭1頭の結果を示していて、点線の直線は近似直線(回帰直線)を示している。
図12に示すように、基準範囲306の両端における輪郭線60上の2つの点307を通る直線310の傾きを用いた場合でも、傾きの負の値が大きくなるほどボディコンディションスコアは低くなり、傾きの正の値が大きくなるほどボディコンディションスコアは高くなる。近似直線はy=0.2223x-0.7697と求まり、決定係数R
2は0.8844であった。このことから、基準範囲306の両端における輪郭線60上の2つの点307を通る直線310の傾きから牛の肉付きを評価する場合でも、牛の肉付きを精度良く評価できることが分かる。
【0052】
以上説明したように、本第1の実施形態及びその変形例によれば、画像取得部30は、立位にある牛を略真後ろから撮像した二次元の撮像画像50を取得する(
図3参照)。抽出部32は、撮像画像50から、牛の輪郭線60を抽出する(
図4参照)。決定部38は、輪郭線60の最左点302を通る垂直線304と、輪郭線60の最右点303を通る垂直線305と、の距離Wを、輪郭線60から牛の身体の横幅方向の大きさを示す基準寸法として特定する(
図5参照)。そして、決定部38は、輪郭線60上の最左点302から輪郭線60の内側に基準寸法Wの20%(第1割合)に相当する第1距離だけ離れた直線330と、30%(第2割合)に相当する第2距離だけ離れた直線332と、で挟まれた基準範囲306を特定し、輪郭線60のうちの基準範囲306内に位置する連続する部分上の複数の点307から1又は複数の直線310又は310a~310eを決定する(
図5、
図11参照)。算出部34は、決定部38が決定した直線310又は310a~310eの傾き又は各々の傾きから得られる平均傾きを算出する。評価部36は、算出部34が算出した傾き又は傾きから得られる平均傾きから、撮像画像50に写された牛の肉付きを評価する。このように、本第1の実施形態及びその変形例では、立位にある牛を略後ろから撮像した二次元の撮像画像50を用いて牛の肉付きを評価するため、牛を三次元に撮像するための特別な設備や牛を上方から撮像するための特別な設備を必要とせず、多様な飼育現場に適用することができる。また、2次元画像である撮像画像50に牛が大きく写された場合でも、小さく写された場合でも、直線の傾きは変化しないことから、直線の傾きから牛の肉付きを評価することで、正規化等の処理を行わなくても牛の肉付きを良好に評価することができる。更に、人が牛の肉付きを評価する場合は、判定基準があいまいとなって判定にばらつきが起こるが、本第1の実施形態及びその変形例では、制御部22が牛の肉付きの判定を行うため、判定のばらつきを抑えることができる。更に、立位にある牛を略真後ろから撮像した二次元の撮像画像50を用いて牛の肉付きを評価することから、スマートフォン等の携帯性に優れて汎用性の高い評価装置100を用いることができる。
【0053】
また、本第1の実施形態及びその変形例では、
図5及び
図11のように、決定部38は、輪郭線60の最左点302を通る垂直線304と、輪郭線60の最右点303を通る垂直線305と、の間の距離Wを、牛の身体の横幅方向に関する基準寸法として特定する。このような基準寸法Wを用いて基準範囲306を特定し、特定した基準範囲306内の輪郭線60上の複数の点307から決定した直線310又は310a~310eの傾きは、
図8及び
図12のように、ボディコンディションスコアとの相関性が高い。したがって、このような基準寸法Wを用いることで、牛の肉付きを精度良く評価することができる。
【0054】
また、本第1の実施形態の変形例では、
図11のように、決定部38は、基準範囲306の両端における輪郭線60上の2つ点307を通る直線310を決定する。直線310の決定は複数の直線310a~310eの決定よりも簡易な処理でできるとともに、直線310の傾きも直線310a~310eの傾きを算出する場合に比べて簡易な処理で算出できる。また、直線310の傾きを用いた場合でも、
図12のように、ボディコンディションスコアとの相関性が高い。したがって、牛の肉付きを簡易な処理によって、精度良く評価することができる。
【0055】
なお、上記第1の実施形態において、決定部38が複数の直線310a~310eを決定した場合、算出部34は複数の直線310a~310eの平均傾きを算出する場合が好ましい。
図8で説明したように、平均傾きは、ボディコンディションスコアとの相関性を示す決定係数R
2が高い。したがって、評価部36が平均傾きからボディコンディションスコアを評価することで、牛の肉付きを精度良く評価することができる。
【0056】
[基準範囲306について]
上記第1の実施形態及びその変形例では、輪郭線60の最左点302から輪郭線60の内側に基準寸法Wの20%(第1割合)に相当する第1距離だけ離れた直線330と、基準寸法Wの30%(第2割合)に相当する第2距離だけ離れた直線332と、で挟まれた範囲を基準範囲306とする場合を例に示した。ここでは、輪郭線60の最左点302からどの程度離れた範囲を基準範囲306とすることが好ましいかについて説明する。
【0057】
[実験]
輪郭線60の最左点302から輪郭線60の内側に基準寸法Wの第1割合以上第2割合以下で離れた範囲を基準範囲306とするにあたり、第1割合と第2割合を様々な値に変えることで複数の基準範囲306を特定した。そして、
図8及び
図12と同様に、獣医師等の専門家が評価したボディコンディションスコアと、複数の基準範囲306各々において輪郭線60上の複数の点307のうちの2点を通る傾きと、の相関を求め、相関性を示す近似直線から決定係数R
2を算出した。
【0058】
表2及び表3には、輪郭線60の最左点302からの距離を異ならせた複数の基準範囲306各々において、ボディコンディションスコアと直線の傾きとの相関を示す近似直線から得られた決定係数R2が示されている。表2の左側(下側)における基準範囲306と決定係数R2は、基準範囲306の両端における輪郭線60上の2点を通る1本の直線の傾きとボディコンディションスコアとの相関を示す近似直線から求めたものである。中央及び右側(上側)における基準範囲306と決定係数R2は、基準範囲306内に0.05Wの間隔で位置する輪郭線60上の複数の点307のうちの隣接する2点を通る複数の直線の平均傾きとボディコンディションスコアとの相関を示す近似直線から求めたものである。表3は、基準範囲306内に0.02Wの間隔で位置する輪郭線60上の複数の点307のうちの隣接する2点を通る複数の直線の平均傾きとボディコンディションスコアとの相関を示す近似直線からを求めたものである。
【0059】
表2及び表3に示すように、基準範囲を0.2W~0.3W、0.2W~0.35W、0.2W~0.4W、0.16W~0.34W、0.18W~0.32W、0.22W~0.3W、0.22W~0.28Wとした場合に大きな決定係数R2が得られた。このことから、輪郭線60の最左点302から基準寸法Wの第1割合以上第2割合以下で離れた範囲を基準範囲306とする場合では、第1割合を16%以上の値とし、第2割合を40%以下の値とすることで、大きな決定係数R2が得られることが分かる。
【0060】
【0061】
したがって、決定部38は、輪郭線60の最左点302から輪郭線60の内側に基準寸法Wの第1割合に相当する第1距離だけ離れた直線330と、基準寸法Wの第2割合に相当する第2距離だけ離れた直線332と、で挟まれた基準範囲306を特定する場合、第1割合として16%以上の値を用い、第2割合として40%以下の値を用いることが好ましい。これにより、牛の肉付きを精度良く評価することができる。牛の肉付きを精度良く評価する点から、第1割合は16%以上24%以下の値を用いることが好ましく、18%以上22%以下の値を用いる場合がより好ましく、19%以上21%以下の値を用いる場合が更に好ましい。第2割合は28%以上40%以下の値を用いることが好ましく、30%以上38%以下の値を用いる場合がより好ましく、34%以上36%以下の値を用いる場合が更に好ましい。また、基準範囲306の抽出画像51内の水平方向(牛の横幅方向)における幅は0.05W以上が好ましく、0.08W以上がより好ましく、0.1W以上が更に好ましい。
【0062】
なお、上記第1の実施形態及びその変形例では、決定部38は、輪郭線60の最左点302から輪郭線60の内側に基準寸法Wの第1割合に相当する第1距離だけ離れた直線330と、基準寸法Wの第2割合に相当する第2距離だけ離れた直線332と、で挟まれた範囲を基準範囲306と特定する場合を例に示した。しかしながら、この場合に限られず、決定部38は、輪郭線60の最右点303から輪郭線60の内側に基準寸法Wの第1割合に相当する第1距離だけ離れた直線と、基準寸法Wの第2割合に相当する第2距離だけ離れた直線とで挟まれた範囲を基準範囲306と特定する場合でもよい。この場合でも、第1割合及び第2割合は上述した値を用いることが好ましい。最右点303を用いて基準範囲306を特定する場合では、基準範囲306内の輪郭線60上の複数の点307を通る直線の傾きの正負とボディコンディションスコアとの関係が、最左点302を用いて基準範囲306を特定する場合とは反対になる。すなわち、直線の傾きの正の値が大きくなるほどボディコンディションスコアは低くなり、傾きの負の値が大きくなるほどボディコンディションスコアは高くなる。
【0063】
なお、上記第1の実施形態において、算出部34は、基準範囲306内の輪郭線60上の複数の点307を通る複数の直線310a~310eの傾きの中央値を算出してもよい。
【0064】
なお、上記第1の実施形態において、決定部38は、基準範囲306内の輪郭線60上の複数の点307のうち1つの点を挟んで両側に位置する2つの点(1つ飛びの2点)の組を通る直線や、2つの点を挟んで両側に位置する2つの点(2つ飛びの2点)の組を通る直線を決定してもよい。また、決定部38は、複数の点307から最小二乗法により求まる近似直線(回帰直線)を決定してもよい。
【0065】
なお、上記第1の実施形態において、評価部36は、基準範囲306内の輪郭線60上の複数の点307を通る複数の直線310a~310eそれぞれの傾きから得られる複数のボディコンディションスコアのうちの最大値によって牛の肉付きを評価してもよいし、最小値によって牛の肉付きを評価してもよいし、平均値によって牛の肉付きを評価してもよい。また、評価部36は、最左点302から求めた基準範囲306において決定された1又は複数の直線の傾きから得られたボディコンディションスコアと、最右点303から求めた基準範囲306において決定された1又は複数の直線の傾きから得られたボディコンディションスコアと、の平均値によって牛の肉付きを評価してもよい。
【0066】
《第2の実施形態》
上記第1の実施形態及びその変形例では、決定部38は輪郭線60の最左点302又は最右点303から輪郭線60の内側に基準寸法の第1割合に相当する第1距離だけ離れた直線と、基準寸法の第2割合に相当する第2距離だけ離れた直線と、で挟まれた範囲を基準範囲306とする場合を例に示した。本第2の実施形態では、決定部38は輪郭線60の最も上側の最上点91から輪郭線60の内側に基準寸法の第1割合に相当する第1距離だけ離れた直線と、基準寸法の第2割合に相当する第2距離だけ離れた直線と、で挟まれた範囲を基準範囲306aとする場合について説明する。
【0067】
図13は、第2の実施形態における決定部38及び算出部34が実行する処理を説明するための図である。
図13に示すように、決定部38は、第1の実施形態と同じく、輪郭線60の最左点302を通る垂直線304と輪郭線60の最右点303を通る垂直線305との間の距離Wを、基準寸法として特定する。次いで、決定部38は、輪郭線60の最上点91から輪郭線60の内側に基準寸法Wの20%(第1割合)に相当する第1距離(0.2W)だけ離れかつ離れた方向に略直交する直線330aと、基準寸法Wの30%(第2割合)に相当する第2距離(0.3W)だけ離れかつ離れた方向に略直交する直線332aと、で挟まれた範囲を基準範囲306aとして特定する。すなわち、基準範囲306aは、最上点91を通る水平線から0.2W以上0.3W以下で離れた範囲であると言える。最上点91は、例えば、抽出画像51内の水平線を上側から輪郭線60の近づけて行き、水平線が輪郭線60に最初に接した点を最上点91と特定することができる。また、その他の方法によって最上点91を特定してもよく、例えば、抽出画像51をX-Y座標系に変換し、抽出画像51の各画素のX、Y座標から最上点91を特定してもよいし、輪郭線60のなかで抽出画像51の上側の端辺からの距離が最も短い点を最上点91としてもよい。
【0068】
次いで、決定部38は、輪郭線60のうちの基準範囲306a内に位置する連続する部分上の複数の点307aを特定し、複数の点307aのうちの2つの点を通る複数の直線312a、312bを決定する。本第2の実施形態では、輪郭線60の左側部分において基準範囲306a内に位置する複数の点307aを特定する。複数の点307aは、直線330a、332aと輪郭線60が交差する2点と、基準範囲306aを上下方向に2等分する1本の水平線と輪郭線60が交差する1点と、であるとする。また、本第2の実施形態では、複数の直線312a、312bは、3つの点307aから得られる2組の隣接する2つの点の組み合わせそれぞれを通る2本の直線312a、312bとする。
【0069】
算出部34は、決定部38が決定した直線312a、312bの傾きを算出する。本第2の実施形態では、抽出画像51を時計回りに90°回転させ(すなわち、輪郭線60の最上点91が右側に位置するようにし)、直線312a、312bが回転後の抽出画像51内で水平方向(左右方向)に伸びる水平線に対する傾きを算出する。また、本第2の実施形態では、直線の傾きは、回転後の抽出画像51内で右下から左上に伸びている場合を正とし、左下から右上に伸びている場合を負とする。算出部34は、直線312a、312bの傾きから、最大傾き、最小傾き、又は平均傾きを算出するが、本第2の実施形態では平均傾きを算出するとする。算出部34が算出する直線312a、312bの傾きは、山部61aの傾斜の度合いを示す指標値の1つである。
【0070】
評価部36は、算出部34が算出した直線312a、310bの平均傾きから、撮像画像50に写された牛の肉付きを評価する。肉付きとして、例えばボディコンディションスコアを評価する。
【0071】
[実験]
獣医師等の専門家が評価したボディコンディションスコアと、算出部34が算出した複数の直線312a、312bの平均傾きと、の相関を調査する実験を行った。実験は、乳牛(ホルスタイン種)に対して行った。
【0072】
図14には、ボディコンディションスコアと、算出部34が算出した複数の直線312a、312bの平均傾きと、の相関を調査した実験結果が示されている。
図14の横軸(x軸)は専門家が評価したボディコンディションスコアであり、縦軸は算出部34が算出した平均傾きである。
図14中の複数の黒丸は実験をした乳牛1頭1頭の結果を示していて、点線の直線は近似直線(回帰直線)を示している。
図14に示すように、輪郭線60の最上点91から輪郭線60の内側に基準寸法Wの20%以上30%以下で離れた範囲を基準範囲306aとして特定した場合でも、傾き具合によってボディコンディションスコアが変化する。傾きの負の値が大きくなるほどボディコンディションスコアは低くなり、傾きの正の値が大きくなるほどボディコンディションスコアは高くなる。近似直線はy=0.1868x-0.5657と求まり、決定係数R
2は0.6210であった。このことから、輪郭線60の最上点91から輪郭線60の内側に基準寸法Wの20%以上30%以下で離れた範囲を基準範囲306aと特定する場合でも、牛の肉付きを精度良く評価できることが分かる。
【0073】
[基準範囲306aについて]
上記第2の実施形態では、輪郭線60の最上点91から輪郭線60の内側に基準寸法Wの20%以上30%以下で離れた範囲を基準範囲306aとする場合を例に示した。ここでは、輪郭線60の最上点91からどの程度離れた範囲を基準範囲306aとすることが好ましいかについて説明する。
【0074】
[実験]
輪郭線60の最上点91から輪郭線60の内側に基準寸法Wの第1割合以上第2割合以下で離れた範囲を基準範囲306aとするにあたり、第1割合と第2割合を様々な値に変えることで複数の基準範囲306aを特定した。そして、
図14と同様に、獣医師等の専門家が評価したボディコンディションスコアと、複数の基準範囲306a各々において輪郭線60上の複数の点307aのうちの2点を通る直線の傾きと、の相関を求め、相関を示す近似直線から決定係数R
2を算出した。
【0075】
表4には、輪郭線60の最上点91からの距離を異ならせた複数の基準範囲306a各々において、ボディコンディションスコアと直線の傾きとの相関を示す近似直線から得られた決定係数R
2が示されている。表4の左側(下側)における基準範囲306aと決定係数R
2は、基準範囲306aの両端における輪郭線60上の2つ点を通る1本の直線の傾きとボディコンディションスコアとの相関を示す近似直線から求めたものである。中央及び右側(上側)における基準範囲306aと決定係数R
2は、基準範囲306a内に0.05Wの間隔で位置する輪郭線60上の複数の点307のうちの隣接する2点を通る複数の直線の平均傾きとボディコンディションスコアとの相関を示す近似直線から求めたものである。
【表4】
【0076】
表4に示すように、基準範囲306aを0.2W~0.3W、0.15W~0.35Wとした場合に大きな決定係数R2が得られた。このことから、輪郭線60の最上点91から基準寸法Wの第1割合以上第2割合以下で離れた範囲を基準範囲306aとする場合、第1割合を15%以上の値とし、第2割合を35%以下の値とすることで、大きな決定係数R2が得られることが分かる。
【0077】
したがって、決定部38は、輪郭線60の最上点91から輪郭線60の内側に基準寸法Wの第1割合に相当する第1距離だけ離れた直線330aと、基準寸法Wの第2割合に相当する第2距離だけ離れた直線332aと、で挟まれた基準範囲306aを特定する場合、第1割合として15%以上の値を用い、第2割合として35%以下の値を用いることが好ましい。これにより、牛の肉付きを精度良く評価することができる。牛の肉付きを精度良く評価する点から、第1割合は15%以上25%以下の値を用いることが好ましく、17%以上23%以下の値を用いる場合がより好ましく、19%以上21%以下の値を用いる場合が更に好ましい。第2割合は25%以上35%以下の値を用いることが好ましく、27%以上33%以下の値を用いる場合がより好ましく、29%以上31%以下の値を用いる場合が更に好ましい。また、基準範囲306aの抽出画像51内の上下方向(牛の体高方向)における幅は0.05W以上が好ましく、0.08W以上がより好ましく、0.1W以上が更に好ましい。
【0078】
なお、上記第2の実施形態では、
図13のように、輪郭線60の左側部分において基準範囲306a内の複数の点307aから複数の直線312a、312bを決定する場合を例に示したが、輪郭線60の右側部分において基準範囲306a内の複数の点から直線を決定する場合でもよい。輪郭線60の右側部分を用いた場合、基準範囲306a内の輪郭線60上の複数の点を通る直線の傾きの正負とボディコンディションスコアとの関係が、輪郭線60の左側部分を用いた場合とは反対になる。すなわち、直線の傾きの正の値が大きくなるほどボディコンディションスコアは低くなり、傾きの負の値が大きくなるほどボディコンディションスコアは高くなる。
【0079】
なお、評価部36は、上記第1の実施形態と上記第2の実施形態を組み合わせ、最左点302から求めた基準範囲306において決定された1又は複数の直線の傾きから得られたボディコンディションスコアおよび最右点303から求めた基準範囲306において決定された1又は複数の直線の傾きから得られたボディコンディションスコアのいずれか一方又は両方と、最上点91から求めた基準範囲306aにおいて決定された1又は複数の直線から得られたボディコンディションスコアと、の平均値によって牛の肉付きを評価してもよい。
【0080】
なお、上記第1の実施形態及び上記第2の実施形態において、決定部38は、牛の身体の横幅方向の大きさを示す基準寸法として、山部61a、61bの頂点62a、62bの間の距離を特定してもよいし、山部61a、61bにおける最も上側の点の間の距離を特定してもよい。
【0081】
山部61aの頂点62aと山部61bの頂点62bは、以下の方法により特定することができる。例えば、
図5のように、抽出画像51内で上から左下に向かって傾いた傾斜直線55を抽出画像51の左上端点52から輪郭線60に向かって近づけて行き、傾斜直線55が輪郭線60に最初に接した点を左側に存在する山部61aの頂点62aと特定することができる。同様に、抽出画像51内で上から右下に向かって傾いた傾斜直線56を抽出画像51の右上端点54から輪郭線60に向かって近づけて行き、傾斜直線56が輪郭線60に最初に接した点を右側に存在する山部61bの頂点62bと特定することができる。傾斜直線55、56は、抽出画像51内の水平線から例えば30°~60°傾いた直線とすることが好ましく、40°~50°傾いた直線とすることがより好ましく、45°傾いた直線とすることが更に好ましい。
【0082】
山部61aの頂点62aと山部61bの頂点62bは、上記の方法によって特定される場合に限られず、その他の方法によって特定されてもよい。例えば、
図5のように、抽出画像51内で上から左下に向かって第1の所定角度で傾いた傾斜直線55aを左上端点52から輪郭線60に向かって近づけて最初に接する第1の点を特定し、第2の所定角度で傾いた傾斜直線55bを左上端点52から輪郭線60に向かって近づけて最初に接する第2の点を特定し、輪郭線60上において第1の点と第2の点の略中央に位置する点を山部61aの頂点62aと特定してもよい。同様に、抽出画像51内で上から右下に向かって第3の所定角度で傾いた傾斜直線56aを右上端点54から輪郭線60に向かって近づけて最初に接する第3の点を特定し、第4の所定角度で傾いた傾斜直線56bを右上端点54から輪郭線60に向かって近づけて最初に接する第4の点を特定し、輪郭線60上において第3の点と第4の点の略中央に位置する点を山部61bの頂点62bと特定してもよい。第1の所定角度および第3の所定角度は抽出画像51内の水平線から15°~30°とすることが好ましく、第2の所定角度および第4の所定角度は抽出画像51内の水平線から60°~75°とすることが好ましい。
【0083】
また、例えば、抽出画像51をX-Y座標系に変換し、抽出画像51の各画素のX、Y座標から2つの山部61a、61bの頂点62a、62bを特定してもよい。例えば、輪郭線60のなかで抽出画像51の左上端点52からの距離が最も短い点を山部61aの頂点62aとし、輪郭線60のなかで抽出画像51の右上端点54からの距離が最も短い点を山部61bの頂点62bとすることができる。
【0084】
また、上記いずれかの方法によって山部61aまたは山部61bのいずれか一方の頂点を特定し、特定した頂点を通る抽出画像51内の水平線が他方の山部の輪郭線60に交わる点を他方の山部の頂点と特定してもよい。なお、上記の方法以外の方法によって山部61aの頂点62aおよび山部61bの頂点62bを特定してもよい。なお、山部61a、61bの範囲については、様々な方法で特定することができる。例えば、山部61aの範囲は、山部61aの頂点62aを中心とした所定半径の円に含まれる輪郭線60の範囲とすることができる。所定半径は、例えば、山部61aの頂点62aと輪郭線60のうち最も上側に位置する最上点91との間の距離に所定の値(例えば0.5など)を掛けた値とすることができるが、その他の方法で得られる値であってもよい。また、山部61aの範囲は、山部61aの頂点62aから両側に所定長さの範囲としてもよい。所定長さは、例えば、上記所定半径の長さとしてもよいし、輪郭線60全体の長さに所定の値を掛けた長さとしてもよい。山部61bについても同様である。また、山部61a、61bの範囲については、機械学習等により特定することとしてもよい。
【0085】
なお、上記第1の実施形態及び第2の実施形態では、画像取得部30は、立位にある牛を略真後ろから撮像した撮像画像を取得する場合を例に示したが、立位にある牛を略正面から撮像した撮像画像を取得する場合でもよい。
図15(a)は、立位にある牛を略真後ろから撮像した撮像画像50、
図15(b)は、
図15(a)の牛を略正面から撮像した撮像画像50aである。
図15(a)に示すように、立位にある牛を略真後ろから撮像した場合に限られず、
図15(b)に示すように、立位にある牛を略正面から撮像した場合であっても、牛の左右の腰角周りの輪郭が写るように牛を撮像することができる。
【0086】
図16(a)及び
図16(b)は、
図15(a)及び
図15(b)の撮像画像50、50aから牛の輪郭線60を抽出した抽出画像51である。
図16(a)に示すように、立位にある牛を略真後ろから撮像した場合であっても、
図16(b)に示すように、立位にある牛を略正面から撮像した場合であっても、輪郭線60の上部の左右両側に腰角に対応する山部61a、61bを存在させることができる。よって、立位にある牛を略正面から撮像した撮像画像50aを用いても、略真後ろから撮像した撮像画像50を用いる場合と同じ方法によって、牛の肉付きを評価することができる。また、立位にある牛を略正面から撮像した二次元の撮像画像50aを用いる場合でも、略真後ろから撮像した撮像画像50を用いる場合と同様に、牛を上方から撮像するための特別な設備を必要とせず、多様な飼育現場に適用することができるとともに、携帯性に優れて汎用性の高いスマートフォン等の携帯型情報機器を評価装置とすることができる。
【0087】
なお、上記各実施形態では、牛の肉付きを評価する評価装置が、作業者が携帯して利用される、撮像部18を備える携帯型情報機器である場合を例に示したが、その他の場合でもよい。例えば、ネットワークに接続された他の機器と通信可能なサーバ等の据置型情報機器の場合でもよい。この場合、作業者は例えばスマートフォン等の携帯型情報機器を用いて撮像した牛の撮像画像を、ネットワークを介してサーバ等の据置型情報機器に送信する。据置型情報機器では、評価装置100と同様の処理を行って牛の肉付きを評価する。そして、据置型情報機器は、牛の肉付きの評価結果を、ネットワークを介して作業者が携帯する携帯型情報機器に送信する。これにより、スマートフォンに掛かる負荷を低減できる。また、牛舎内に固定又は移動可能にカメラを設置し、スマートフォン等の携帯型情報機器及びサーバ等の据置型情報機器は、牛舎内に設置されたカメラが撮像した立位にある牛の略真後ろ又は略正面の撮像画像を取得してもよい。
【0088】
なお、上記第1の実施形態及び第2の実施形態では、牛の肉付きとしてボディコンディションスコアを評価する場合を例に示したが、牛の肉付きを評価するその他の指標を評価する場合でもよい。また、各実験は、乳牛に対して行ったが、同様の骨格を有する肉牛も同様の結果になると考えられる。したがって、上記各実施形態は乳牛だけでなく肉牛にも適用できる。
【0089】
以上、本願発明の実施形態について詳述したが、本願発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本願発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0090】
12 表示部
14 操作部
16 通信部
18 撮像部
20 記憶部
22 制御部
30 画像取得部
32 抽出部
34 算出部
36 評価部
38 決定部
50、50a 撮像画像
51 抽出画像
52 左上端点
54 右上端点
55、55a、55b、56、56a、56b 傾斜直線
60 輪郭線
61a、61b 山部
62a、62b 頂点
63a、63b 第1曲線部
64a、64b 第2曲線部
91 最上点
100 評価装置
302 最左点
303 最右点
304、305 垂直線
306、306a 基準範囲
307、307a 点
310、310a、310b、310c、310d、310e 直線
312a、312b 直線
330、330a、332、332a 直線