(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119253
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】クロムスパッタリングターゲットおよびクロムスパッタリングターゲットの製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20230821BHJP
C22C 1/04 20230101ALI20230821BHJP
B22F 3/24 20060101ALI20230821BHJP
B22F 3/15 20060101ALI20230821BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20230821BHJP
【FI】
C23C14/34 A
C22C1/04 E
B22F3/24 C
B22F3/15 M
B22F1/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022050
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000101710
【氏名又は名称】アルバック成膜株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(72)【発明者】
【氏名】細谷 守男
(72)【発明者】
【氏名】中畦 修
(72)【発明者】
【氏名】赤峰 隆義
(72)【発明者】
【氏名】大山 准平
【テーマコード(参考)】
4K018
4K029
【Fターム(参考)】
4K018AA40
4K018BA20
4K018BB04
4K018BB06
4K018BD09
4K018EA11
4K018FA06
4K018FA08
4K018KA29
4K029AA09
4K029AA24
4K029BA07
4K029CA05
4K029DC03
4K029DC04
4K029DC09
(57)【要約】
【課題】パーティクルの発生が抑制されたクロムスパッタリングターゲットおよびクロムスパッタリングターゲットの製造方法を提供する。
【解決手段】金属クロム又はクロム合金の多結晶体からなり、ターゲットの表面における、多結晶体に含まれる結晶粒20の結晶粒界30の幅が0.65μm以下であるクロムスパッタリングターゲット10およびその製造方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属クロム又はクロム合金の多結晶体からなり、
ターゲットの表面における、前記多結晶体に含まれる結晶粒の結晶粒界の幅が0.65μm以下である
ことを特徴とするクロムスパッタリングターゲット。
【請求項2】
結晶粒界の幅が0.40μm以下である
ことを特徴とする請求項1に記載のクロムスパッタリングターゲット。
【請求項3】
前記結晶粒の平均結晶粒径が250~400μmである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のクロムスパッタリングターゲット。
【請求項4】
不純物濃度が30~100ppmである
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のクロムスパッタリングターゲット。
【請求項5】
クロムスパッタリングターゲットの製造方法であって、
金属クロム又はクロム合金を含有する原料粉末を準備する準備工程と、
前記原料粉末にHIP処理を行いターゲット素材を得るHIP処理工程と、
前記HIP処理工程の後に、前記ターゲット素材を再加熱する再加熱工程と、を含み、
前記HIP処理工程における加熱温度よりも、前記再加熱工程における再加熱温度が高い
ことを特徴とするクロムスパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項6】
前記HIP処理工程における加熱温度が1100℃以上1300℃以下であり、圧力が110MPa以上130MPa以下であり、
前記再加熱工程における再加熱温度が1200℃以上1600℃以下である
ことを特徴とする請求項5に記載のクロムスパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項7】
前記HIP処理工程の保定時間が2時間以上6時間以下であり、
前記再加熱工程における再加熱の保定時間が2時間以上5時間以下である
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のクロムスパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項8】
前記準備工程において、粒度300μm以下の前記原料粉末を得る
ことを特徴とする
ことを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載のクロムスパッタリングターゲットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロムスパッタリングターゲットおよびクロムスパッタリングターゲットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クロムスパッタリングターゲットは、クロム薄膜の形成に広く用いられている。特に近年、クロム薄膜を用いたフォトマスクの高品質化が要望されており、ターゲットに由来するパーティクル汚染の問題が深刻化している。パーティクルとはクロム薄膜上の微粒子のことで、たとえば、径がサブミクロン以上の大きさのものを指す。このようなパーティクルがフォトマスク上に存在すると、フォトマスクパターンの欠陥などを引き起こし、製品の歩留まりを著しく低下させる。
【0003】
ここで、クロムターゲットの製造方法としては、一般的に溶解法、粉末冶金法に大別される。粉末冶金法としては、Hot Press(HP)法、Hot Isostatic Press(HIP:熱間等方加圧)法等が知られている。HIP法では、金属クロム微粉末を軟鉄製などの缶に入れて真空脱気し、この金属クロム微粉末を軟鉄製の缶ごと高温下において不活性ガスで加圧することでインゴット(ターゲット素材)を作製し、さらにインゴットを機械加工することでクロムスパッタリングターゲットを製造する方法である。
【0004】
例えば、特許文献1に開示される技術では、出発原料となる電解金属クロムフレークを微粉砕することなく、直接または粗粉砕してHIP処理にて成型することで、電解精製で得られた高純度金属クロムの品質を損なうことなく、極低酸素量のクロムターゲットが得られるとされている。また、特許文献2に開示される技術では、ターゲット表面に露出した、ターゲット中に存在する介在物の径およびその面積の割合を規定することで、パーティクルの少ないスパッタリング表面が得られるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-196885号公報
【特許文献2】特開平06-17246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1又は特許文献2に開示される技術を用いたとしても、不純物を低減させるための原料の調製などが必要でありコスト増加につながるなどして、パーティクル(異物)の発生を効果的に抑制することはできなかった。
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、パーティクルの発生が抑制されたクロムスパッタリングターゲットおよびクロムスパッタリングターゲットの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
クロムスパッタリングターゲットは結晶粒を含む焼結体から構成されるが、本発明者らが鋭意検討した結果によれば、クロムスパッタリングターゲットを構成する結晶粒の間に形成される結晶粒界に異物が析出することがわかった。そして、本発明者らは、ターゲットの表面においてこのような異物が所定量以上生じた部分では、スパッタリングをした際にスパッタレートが他の部分より遅くなり、ターゲットの表面で突起が形成された結果、電界集中が起こり、このような電界集中が起こった箇所においてパーティクルの発生確率が高いことを見出した。
【0009】
(1)本発明の一態様に係るクロムスパッタリングターゲットは、
金属クロム又はクロム合金の多結晶体からなり、
ターゲットの表面における、前記多結晶体に含まれる結晶粒の結晶粒界の幅が0.65μm以下である
ことを特徴とする。
(2)上記(1)に記載のクロムスパッタリングターゲットでは、
結晶粒界の幅が0.40μm以下であってもよい。
(3)上記(1)又は(2)に記載のクロムスパッタリングターゲットでは、
前記結晶粒の平均結晶粒径が250~400μmであってもよい。
(4)上記(1)から(3)のいずれか1項に記載のクロムスパッタリングターゲットでは、
不純物濃度が30~100ppmであってもよい。
(5)本発明の一態様に係るクロムスパッタリングターゲットの製造方法は、
クロムスパッタリングターゲットの製造方法であって、
金属クロム又はクロム合金を含有する原料粉末を準備する準備工程と、
前記原料粉末にHIP処理を行いターゲット素材を得るHIP処理工程と、
前記HIP処理工程の後に、前記ターゲット素材を再加熱する再加熱工程と、を含み、
前記HIP処理工程における加熱温度よりも、前記再加熱工程における再加熱温度が高いことを特徴とする。
(6)上記(5)に記載のクロムスパッタリングターゲットの製造方法では、
前記HIP処理工程における加熱温度が1100℃以上1300℃以下であり、圧力が110MPa以上130MPa以下であり、
前記再加熱工程における再加熱温度が1200℃以上1600℃以下であってもよい。
(7)上記(5)又は(6)に記載のクロムスパッタリングターゲットの製造方法では、
前記HIP処理工程の保定時間が2時間以上6時間以下であり、
前記再加熱工程における再加熱の保定時間が2時間以上5時間以下であってもよい。
(8)上記(5)から(7)のいずれか1項に記載のクロムスパッタリングターゲットの製造方法では、
前記準備工程において、粒度300μm以下の前記原料粉末を得るようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、パーティクルの発生が抑制されたクロムスパッタリングターゲットおよびクロムスパッタリングターゲットの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係るクロムスパッタリングターゲット中の結晶粒と結晶粒界を説明するための模式図である。
【
図2】従来のクロムスパッタリングターゲット中の結晶粒と結晶粒界を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について例を挙げて説明するが、本発明は以下で説明する例に限定されないことは自明である。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本発明の効果が得られる限り、他の数値や材料を適用してもよい。また、以下の実施形態の各構成要素は、互いに組み合わせることができる。
【0013】
以下、本発明に係るクロムスパッタリングターゲットの一実施形態を説明する。
図1は、本実施形態に係るクロムスパッタリングターゲット中の結晶粒と結晶粒界を説明するための図であって、クロムスパッタリングターゲットの断面の模式図ある。
図1に示すように、本実施形態に係るクロムスパッタリングターゲット10は、結晶粒20を有し、結晶粒20の間に結晶粒界30が形成される。
【0014】
[結晶粒]
本実施形態に係るクロムスパッタリングターゲット10は、結晶粒20を有する。結晶粒20は、主な成分としてクロムを含む。結晶粒中のクロムの含有量は99.99%以上である。また結晶粒20は、Fe、Si、Mo、V、Mn、Ni、W等の不可避不純物元素を含んでいてもよい。
【0015】
結晶粒20の平均結晶粒径は、250~400μmであることが好ましく、350~400μmであることがより好ましい。結晶粒20の平均結晶粒径がこの大きさであることで、結晶粒界の幅がより狭くなるという効果がある。結晶粒20の平均結晶粒径は、クロムスパッタリングターゲットの任意の1視野について、倍率100倍の光学顕微鏡で観察した画像から、画像解析ソフトウェアを用いて複数の結晶粒径を測定し、その算術平均値とする。
【0016】
[結晶粒界]
結晶粒界30は、結晶粒20の間に形成される。本実施形態に係るクロムスパッタリングターゲット10では、クロムスパッタリングターゲット10の表面における、結晶粒界30の幅(粒界幅)が0.65μm以下である。
【0017】
結晶粒界30は以下の方法で確認できる。測定の対象とするクロムスパッタリングターゲット10と同じ材料から試料を切り出し、切り出した試料を一般的な組織観察ができる鏡面まで研磨した後、王水もしくはそれに相当するエッチング液でエッチングを行う。エッチングされた試料を光学顕微鏡にて倍率100倍で観察し、この観察視野において、黒い線状帯として認識される箇所を結晶粒界30とする。なお、この観察視野において、結晶粒20は結晶粒界30に囲まれた平面領域のように観察される。
【0018】
結晶粒界30の幅とは、上述した観察視野において、結晶粒界30に沿った方向に直交する方向における結晶粒界30の長さを意味する。本実施形態に係るクロムスパッタリングターゲット10では、結晶粒界の幅が0.65μm以下である。結晶粒界30の幅は、複数の測定箇所の算術平均値とし、結晶粒界の幅が0.65μm以下であるとは、この平均値が0.65μm以下であることを意味する。
【0019】
より具体的には、結晶粒界30の幅は、走査型電子顕微鏡によって得られた画像(SEM像)を基に、その大きさを測定することにより得られる。結晶粒界30は、SEM像のコントラストを画像処理ソフトで変更することで結晶粒界30の境界を際立たせることで測定することが好ましい。
【0020】
本実施形態に係るクロムスパッタリングターゲット10では、結晶粒界30の幅が0.40μm以下であることがより好ましい。
【0021】
本実施形態に係るクロムスパッタリングターゲット10では、不純物濃度が30~100ppmであることが好ましい。不純物濃度が30~100ppmであることで、結晶粒径が大きくなるという効果がある。不純物濃度は、ICP発光分光分析装置やグロー放電質量分析装置で測定できる。
【0022】
ここで、
図2は、従来のクロムスパッタリングターゲットを説明するための図あって、
図1と同様の模式図である。
図2に示すように、従来のクロムスパッタリングターゲット11では、結晶粒21の間に結晶粒界31が形成されるが、結晶粒界31の幅が、例えば0.90μm程度であった。
【0023】
これに対し、本実施形態に係るクロムスパッタリングターゲットでは、結晶粒界30の幅を0.65μm以下とすることで、スパッタリングをした際に電解集中が生じるような突起の形成が抑制される。そのため、パーティクルの発生が抑制され、その結果スパッタリング処理によって製造される製品の歩留まりが向上する。
【0024】
結晶粒界30は結晶の配向が乱れた領域であり、一般的には、結晶粒20の内部に比べて、不純物が偏析しやすい傾向がある。本実施形態に係るクロムスパッタリングターゲット10では、結晶粒20の内部に不純物が存在することがあるが、不純物が結晶粒20の内部に存在していたとしても、上述したような電解集中の要因となる突起の生成には関与しない。そのため、本実施形態に係るクロムスパッタリングターゲット10では、クロムスパッタリングターゲット10の全体に含まれる不純物の濃度を下げずとも、スパッタリング時のパーティクルの発生を抑制できる。
【0025】
なお、本実施形態に係るクロムスパッタリングターゲット10は、金属クロム又はクロム合金の多結晶体からなる。
【0026】
次に、本発明に係るクロムスパッタリングターゲットの製造方法の一実施形態を説明する。下記の実施形態に係るクロムスパッタリングターゲットの製造方法では、準備工程、HIP処理工程、再加熱工程をこの順に含む。各工程の前後には、他の工程が含まれてもよい。
【0027】
[準備工程]
準備工程では、クロム(Cr)を含有する原料粉末を準備する。原料粉末においては、クロムの純度が99.99%以上であることが好ましい。原料粉末の粒度は、焼結を安定させるという理由から、300μm以下であることが好ましい。また原料粉末においては、後処理による結晶粒界の幅の細線化という理由から、酸素濃度が50ppm以下であることが好ましい。
【0028】
[HIP処理工程]
HIP(熱間等方加圧)処理工程では、まず上記の原料粉末を成形型に充填する。成形型としては、ステンレス、鋼等からなる金属缶が用いられる。
【0029】
上述のようにして、原料粉末が充填された金属缶を真空密封する。原料粉末を真空密封した金属缶を、HIP処理を実施する熱間静水圧プレス装置の圧力容器内に装入する。そして、加熱および加圧により、金属缶に真空密封されたクロム粉末を焼結する。
【0030】
HIP処理工程では、加熱温度を1100℃以上1300℃以下、加圧圧力を110MPa以上130MPa以下とすることが好ましい。前述の条件を用いることで、焼結体をより緻密化することができる。なお、HIP処理工程の保定時間(加熱および加圧時間)は、2時間以上6時間以下であることが好ましい。上記条件で焼結させることでターゲット素材が製造できる。
【0031】
[再加熱工程]
再加熱工程では、上記のようにして得られたターゲット素材に対して、HIP処理工程における加熱温度よりも高い温度で再加熱処理を行う。再加熱工程における再加熱温度は、1200℃以上1600℃以下であることが好ましい。再加熱温度を1200℃以上1600℃以下とすることで再結晶を生じさせ結晶粒径を拡大させる効果がある。
【0032】
再加熱工程における再加熱の保定時間は、安定した再結晶粒を得るため、2時間以上5時間以下であることが好ましい。再加熱工程においては、加熱と共に、ターゲット素材に圧力を付与してもよい。
【0033】
ターゲット素材の再加熱は、不活性ガスを用いた公知の加熱炉などを用いて実施することが好ましい。
【0034】
本実施形態では、上記の再加熱工程を経たものをクロムスパッタリングターゲットと称する。本実施形態に係るクロムスパッタリングターゲットの製造方法によれば、結晶粒界の幅を小さくすることができ、クロムスパッタリングターゲットを使用した際のパーティクルの発生を抑制することができる。また、本実施形態に係るクロムスパッタリングターゲットの製造方法は、高純度の原料を必要としないため、クロムスパッタリングターゲットの製造コストの面でも有利である。
【0035】
上記の実施形態に係るクロムスパッタリングターゲットは、スパッタリング装置において、ガラスなどの基板上にクロムを形成するためのターゲットとして用いられる。
【実施例0036】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0037】
本実施例では、表1に示す3種のクロムスパッタリングターゲットを作成した。以下に、各クロムスパッタリングターゲットの製造方法を説明する。
【0038】
[実施例1]
実施例1では、以下の条件の原料粉末を準備した。この原料粉末に対し、以下の条件のHIP処理を行った。また、HIP処理の後に、以下の条件で再加熱処理を行った。
【0039】
(準備工程)
準備工程として、クロムの純度が99.99%、粒度300μm以下、酸素濃度50ppm以下である原料粉末を準備した。原料粉末の粒度は、ふるい分け法により測定した。原料粉末の酸素濃度は、不活性ガス融解―赤外線吸収法により測定した。
【0040】
(HIP処理工程)
次に、肉厚が2.8mmで、内径216.3mm×高さ100mmの空間を有する円筒のステンレス缶の空間内に、上述の原料粉末を充填した。このとき、ステンレス缶の外面に振動を与えることによってタッピングを実施した。粉末充填密度は、4g/cm3であった。粉末充填密度は、ステンレス缶の空間内に充填されたクロム粉末の重量を測定し、空間の容積で割ることによって算出した。
【0041】
次に、クロム粉末をステンレス缶内に真空密封し、原料粉末を真空密封したステンレス缶を、熱間静水圧プレス装置の圧力容器内に装入し、この圧力容器内の雰囲気を、温度1150℃、圧力120MPaで3時間保持し、クロム粉末を焼結した。その後、室温まで冷却したインゴットを切削し、内部の焼結体(径164mm×高さ68mm)を取り出した。この焼結体を、機械加工により径164mm×厚さ8mmの大きさに加工し、ターゲット素材を得た。
【0042】
(再加熱処理)
次に、上述のターゲット素材を加熱炉にて温度1400℃で、2時間加熱し、冷却後径160mm×厚さ6mmの大きさに加工して、クロムスパッタリングターゲットを得た。
【0043】
(比較例1)
比較例1では、実施例1と同じ粉末を準備し、この原料粉末に対し、以下の条件のHIP処理を行った。HIP処理後のターゲット素材に対して再加熱処理は実施せず、HIP処理後に機械加工を施したものをクロムスパッタリングターゲットとした。
【0044】
(準備工程)
実施例1と同じ準備工程を実施した。
【0045】
(HIP処理工程)
充填の条件も実施例1と同じであり、充填密度も実施例1と同じであった。
【0046】
次に、クロム粉末をステンレス缶内に真空密封し、原料粉末を真空密封したステンレス缶を、熱間静水圧プレス装置の圧力容器内に装入し、この圧力容器内の雰囲気を、温度1150℃、圧力120MPaで3時間保持し、クロム粉末を焼結した。その後、室温まで冷却したインゴットを切削し、内部の焼結体(径164mm×高さ68mm)を取り出した。この焼結体を、機械加工により径160mm×厚さ6mmの大きさに加工し、クロムスパッタリングターゲットを得た。
【0047】
(比較例2)
比較例2では、実施例1と同じ粉末を準備し、この原料粉末に対し、以下の条件のHIP処理を行った。HIP処理後のターゲット素材に対して再加熱処理は実施せず、HIP処理後に機械加工を施したものをクロムスパッタリングターゲットとした。
【0048】
(準備工程)
実施例1と同じ準備工程を実施した。
【0049】
(HIP処理工程)
充填の条件も実施例1と同じであり、充填密度は実施例1と同じであった。
【0050】
次に、クロム粉末をステンレス缶内に真空密封し、原料粉末を真空密封したステンレス缶を、熱間静水圧プレス装置の圧力容器内に装入し、この圧力容器内の雰囲気を、温度1250℃、圧力120MPaで3時間保持し、クロム粉末を焼結した。その後、室温まで冷却したインゴットを切削し、内部の焼結体(径164mm×高さ68mm)を取り出した。この焼結体を、機械加工により径160mm×厚さ6mmの大きさに加工し、クロムスパッタリングターゲットを得た。
【0051】
以上の製造方法によって得られた各クロムスパッタリングターゲットについて、以下の方法で、表1に示す各項目を測定した。
(平均結晶粒径)
平均結晶粒径は、三谷商事株式会社製WinROOFを用いて、画像解析法により測定した。
【0052】
(結晶粒界の幅)
各クロムスパッタリングターゲットから10×10×6mmの大きさに試料を切り出し、切り出した試料を一般的な組織観察ができる鏡面まで研磨を行った。この試料に対し、王水またはそれに相当するエッチング液で、エッチングを行った。エッチングされた試料について、光学顕微鏡を用いて、倍率100倍で結晶粒界を確認した。
図3に、実施例1の試料の断面の光学顕微鏡像を示す。また、
図4に、比較例1の試料の断面の光学顕微鏡像を示す。
図3と
図4からわかるように、実施例1の試料の断面では、比較例1の試料の断面と比較して、結晶粒界の幅が狭いことがわかる。
図3及び
図4は、結晶粒径の測定用の画像である。
【0053】
また、日立ハイテク社製SU-70装置(走査型電子顕微鏡)を用いて、上記実施形態の手段によって結晶粒界の幅を測定した。
【0054】
各実施例および比較例に係るクロムスパッタリングターゲットを2個ずつ作成し、各クロムスパッタリングターゲットを用いて350枚のクロム薄膜を作成した。そして、各クロム薄膜上の欠陥の個数を調べた。表1に、クロム薄膜1枚当たりの、所定の大きさの欠陥の個数を示す。
【0055】
【0056】
表1の結果より、同程度の平均結晶粒径を有する比較例2と比べて、本発明に係る実施例1のクロムスパッタリングターゲットでは、パーティクルの発生が抑制され、欠陥が少ないことが理解される。また、平均結晶粒径を小さくした比較例1のクロムスパッタリングターゲットと比較しても、本発明に係る実施例1のクロムスパッタリングターゲットでは、パーティクルの発生が抑制され、欠陥が少ないことが理解される。