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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119366
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】計測システムおよび計測方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/593 20170101AFI20230821BHJP
【FI】
G06T7/593
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022237
(22)【出願日】2022-02-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、ムーンショット型農林水産研究開発事業委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】徳田 献一
(72)【発明者】
【氏名】高地 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】林 篤司
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA13
5L096CA05
5L096FA09
5L096FA66
5L096FA67
5L096FA69
5L096FA76
(57)【要約】
【課題】熱画像のマッチングにおいて、照射によらずにランダムパターンが得られる技術を提供する。
【解決手段】発熱または吸熱する第1の部材と前記第1の部材と異なる材質で構成された第2の部材により構成されるランダムパターンシート110.111,112と、ランダムパターンシート110,111,112を異なる2つの視点から撮影し、第1の熱画像と第2の熱画像を撮影する赤外線カメラ101,102と、ランダムパターンシートのランダムパターンを利用して第1の熱画像と第2の熱画像のステレオマッチングを行う処理装置であるPC120とを備える計測システム。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱または吸熱する第1の部材と前記第1の部材と異なる材質で構成された第2の部材により構成されるランダムパターンと、
前記ランダムパターンを異なる2つの視点から撮影し、第1の熱画像と第2の熱画像を撮影する赤外線カメラと、
前記ランダムパターンを利用して前記第1の熱画像と前記第2の熱画像のステレオマッチングを行う処理装置と
を備える計測システム。
【請求項2】
前記第1の部材は、発熱する粒状体であり、前記粒状体が平坦な面を有する前記第2の部材の表面に多数ランダムに散布されている請求項1に記載の計測システム。
【請求項3】
前記発熱する粒状体は、酸化の過程にある鉄粉である請求項2に記載の計測システム。
【請求項4】
前記発熱する粒状体は、水分と反応している酸化カルシウムの粒または燃えている炭の粒である請求項2に記載の計測システム。
【請求項5】
前記吸熱する第1の部材は、尿素および/または硝酸アンモニウムを含む粒であり、水分と尿素および/または硝酸アンモニウムが反応することで、前記吸熱が生じる請求項1に記載の計測システム。
【請求項6】
前記吸熱する第1の部材は、氷またはドライアイスの粒である請求項1に記載の計測システム。
【請求項7】
前記第1の部材と前記第2の部材は共に平板状であり、積層されており、
撮影される側の部材がランダムパターンに加工されている請求項1に記載の計測システム。
【請求項8】
前記第1の部材と前記第2の部材は熱伝導率の異なる複数の棒状の部材であり、
前記複数の棒状の部材をランダムに並ぶように束ねて集合体とし、
前記集合体の一端を加熱または冷却することで、前記集合体の他端に前記ランダムパターンが形成される請求項1に記載の計測システム。
【請求項9】
前記第1の部材は鉄粉であり、
前記第2の部材は、磁性を帯びており、
前記第1の部材が前記第2の部材の表面に磁力で付着している請求項1に記載の計測システム。
【請求項10】
前記第1の部材は、
炭素材料と、
前記炭素材料の外気との接触を抑制する被覆および/または前記炭素材料の酸化を抑制する材料を含む請求項1に記載の計測システム。
【請求項11】
前記第1の部材が発熱または吸熱し、
前記第2の部材が吸熱または発熱する請求項1に記載の計測システム。
【請求項12】
発熱または吸熱する第1の部材と前記第1の部材と異なる材質で構成された第2の部材により構成されるランダムパターンを異なる2つの視点から撮影することで第1の熱画像と第2の熱画像を得、
前記ランダムパターンを利用して前記第1の熱画像と前記第2の熱画像のステレオマッチングを行う計測方法。
【請求項13】
前記第1の部材は多数の粒状体であり、
前記第2の部材は面を有し、
前記多数の粒状体を前記第2の部材の前記面の表面に散布することで、前記ランダムパターンが形成される請求項10に記載の計測方法。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の熱画像間の対応関係を求める技術に関する。
【背景技術】
【0002】
熱画像(赤外線画像とも呼ばれる)を用いたステレオ写真計測が知られている(例えば、特許文献1を参照)。ステレオ写真計測では、ペアとなる2枚の写真のマッチング(対応関係の特定)を行う必要がある。マッチングは、ランダムドットパターンのようなランダムなパターンを利用すると効率がよい。
【0003】
特許文献1には、ランダムドットパターンの赤外線パターンを照射し、ペアとなる熱画像間のマッチングを行う点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-019346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
赤外線のランダムドットパターンを照射する方法は、照射装置が必要となる。このような背景において、本発明は、熱画像のマッチングにおいて、照射によらずにランダムパターンが得られる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、発熱または吸熱する第1の部材と前記第1の部材と異なる材質で構成された第2の部材により構成されるランダムパターンと、前記ランダムパターンを異なる2つの視点から撮影し、第1の熱画像と第2の熱画像を撮影する赤外線カメラと、前記ランダムパターンを利用して前記第1の熱画像と前記第2の熱画像のステレオマッチングを行う処理装置とを備える計測システムである。
【0007】
本発明において、前記第1の部材は、発熱する粒状体であり、前記粒状体が平坦な面を有する前記第2の部材の表面に多数ランダムに散布されている態様が挙げられる。本発明において、前記発熱する粒状体は、酸化の過程にある鉄粉である態様が挙げられる。本発明において、前記発熱する粒状体は、水分と反応している酸化カルシウムの粒または燃えている炭の粒である態様が挙げられる。
【0008】
本発明において、前記吸熱する第1の部材は、尿素および/または硝酸アンモニウムを含む粒であり、水分と尿素および/または硝酸アンモニウムが反応することで、前記吸熱が生じる態様が挙げられる。本発明において、前記吸熱する第1の部材は、氷またはドライアイスの粒である態様が挙げられる。
【0009】
本発明において、前記第1の部材と前記第2の部材は共に平板状であり、積層されており、撮影される側の部材がランダムパターンに加工されている態様が挙げられる。本発明において、前記第1の部材と前記第2の部材は熱伝導率の異なる複数の棒状の部材であり、前記複数の棒状の部材をランダムに並ぶように束ねて集合体とし、前記集合体の一端を加熱または冷却することで、前記集合体の他端に前記ランダムパターンが形成される態様が挙げられる。
【0010】
本発明において、前記第1の部材は鉄粉であり、前記第2の部材は、磁性を帯びており、前記第1の部材が前記第2の部材の表面に磁力で付着している態様が挙げられる。本発明において、前記第1の部材は、炭素材料と、前記炭素材料の外気との接触を抑制する被覆および/または前記炭素材料の酸化を抑制する材料を含む態様が挙げられる。本発明において、前記第1の部材が発熱または吸熱し、前記第2の部材が吸熱または発熱する態様が挙げられる。
【0011】
本発明は、発熱または吸熱する第1の部材と前記第1の部材と異なる材質で構成された第2の部材により構成されるランダムパターンを異なる2つの視点から撮影することで第1の熱画像と第2の熱画像を得、前記ランダムパターンを利用して前記第1の熱画像と前記第2の熱画像のステレオマッチングを行う計測方法である。
【0012】
上記の計測方法において、前記第1の部材は多数の粒状体であり、前記第2の部材は面を有し、前記多数の粒状体を前記第2の部材の前記面の表面に散布することで、前記ランダムパターンが形成される態様が挙げられる。
【発明の効果】
【0013】
発明によれば、熱画像のマッチングにおいて、照射によらずにランダムパターンが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態の概念図である。
図2】ランダムパターンを示す図面代用写真(A)と粒状発熱体の図面代用写真(B)である。
図3】粒状発熱体を用いたランダムパターンを示す図面代用写真(A)および(B)である。
図4】粒状発熱体を用いたランダムパターンの作成法を示す図である。
図5】ランダムパターンシートの断面図である。
図6】ランダムパターンシートの作成法を示す断面図(A)~(C)および斜視図(Dである。
図7】ランダムドットパターンの一例を示す図である。
図8】ランダムドットパターンの一例を示す図である。
図9】粒状発熱体の一例を示す図(A)と(B)である。
図10】ランダムパターンシートの断面図(A)と斜視図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.第1の実施形態
(構成)
図1には、本発明を利用した計測システムが示されている。図1には、植物100の熱画像のステレオ写真撮影を行う場合が示されている。熱画像の撮影の対象は植物に限定されない。ここでは、2台の赤外線カメラ101と102を用いる例が示されている。赤外線カメラを3台以上利用することも可能である。
【0016】
赤外線カメラ101と102は、重複する範囲を撮影するようにセッティングされており、異なる視点から植物100を撮影する。植物100の周囲には、発熱する粒状体を用いたランダムパターンシート110,111,112が配置されている。
【0017】
ランダムパターンシート110,111,112の作成法は後述する。なお、簡易的には、例えば板状の部材の表面に発熱する粒状体をランダムに散布することでランダムドットパターンを得ることができる。なお、ランダムドットパターンは、ランダムパターンの一例である。ドットで構成されないランダムパターンもある。ランダムパターンは、規則性ない模様が連続して表示されているものとして定義される。
【0018】
赤外線カメラ101と102は、できるだけ多くのランダムパターンが同時に撮影できるように位置や向きが調整されている。
【0019】
発熱する粒状体は、例えば酸化の過程にある鉄粉である。この場合、酸化に伴い発生する熱(酸化熱)を利用する。簡易的には、使い捨てカイロの中身を利用できる。使い捨てカイロの中身の主な成分は、鉄粉、水分、バーミュライト、活性炭である。水分は、鉄粉の酸化を進行させ、バーミュライトは水分を保水し、活性炭は酸化に必要な酸素の供給を促進する。使い捨てカイロを気密性の袋から出すと、鉄粉が空気中の酸素と反応して酸化反応が生じ、酸化熱が発生する。なお、粒状体を構成する粒の大きさは、熱画像中で粒として識別できる大きさとする。発熱量がある程度あれば、実際の粒の寸法が小さくても熱画像中において画像認識できる。
【0020】
図2(A)に可視画像用のランダムパターンの一例を示す。図2(A)には、多数の細かいドット状のパターンをランダムに配置したランダムドットパターンの例が示されている。図2(B)に使い捨てカイロの鉄粉を示す。この鉄粉を面上に塗布すると、ランダムドットパターンが形成される。この状態で鉄粉が発熱すると、ランダムドットパターンの熱画像が得られる。
【0021】
なお、このランダムパターンは、鉄粉が目視できるので、可視画像でもランダムパターンとして機能する。そのため、可視画像におけるマッチングにも利用できる。発熱する粒状体を撮影対象の周囲に撒いてランダムパターンを形成する形態も可能である。また、ランダムパターンを印刷したものの上に発熱体を撒いても、あるいは逆に発熱体の上に印刷したものを載せたような形態も可能である。
【0022】
図3(A)は、実験の様子を示すRGB画像である。図3(A)に示すように発熱する鉄粉を撒き、熱画像の撮影を行った。撮影した熱画像を図3(B)に示す。図3(B)に示すように、発熱する鉄粉が熱画像においてランダムドットパターンとして画像化されている。
【0023】
赤外線カメラ101と102により植物100を撮影し、2枚の熱画像を得る。この2枚の熱画像がステレオ熱画像となる。ステレオ熱画像とするには、この2枚の熱画像のマッチングが必要となる。この際、この2枚の熱画像において共通に写っているランダムパターンシート110,111,112のランダムパターン(図1の場合は、ランダムドットパターン)が利用される。
【0024】
ランダムパターンを利用したマッチングの原理は、可視画像の場合と同じである。例えば、上記熱画像で認識できるランダムパターンを異なる2つの視点から赤外線カメラで撮影し、第1の熱画像と第2の熱画像を得たとする。この2つの熱画像をステレオ熱画像とするには、2つの熱画像間のマッチングをとる必要がある。
【0025】
具体的には、第1の熱画像の画像内容と第2の熱画像の画像内容との対応関係を特定する処理が必要となる。簡単にいうと、第1の熱画像のある部分が第2の熱画像のどこに対応するのかを特定する処理が行われる。マッチング処理のアルゴリズムとしては、各種のものが知られているが、例えばテンプレートマッチング等が知られている。
【0026】
上記のマッチングを効率よく行うためにランダムパターンが利用される。ランダムパターンがない場合、マッチング誤差の増大、誤マッチングの発生といった問題が顕在化する。
【0027】
図1には、熱画像の画像データを処理し、上述したステレオマッチングに係る処理、ステレオ熱画像に基づく撮影対象物(植物100)の3Dモデルの作成を行う処理手段であるPC(パーソナル・コンピュータ)120が示されている。これらの処理を、専用のハードウェアやデータ処理サーバで行う形態も可能である。
【0028】
ここでは、2枚の熱画像によりステレオ熱画像を構成する例を示したが、3枚以上の熱画像を用いることも可能である。また、1台の赤外線カメラを移動させつつ熱画像の撮影を行い、次々とステレオ熱画像の組を得る手法も可能である。これは、sfmによる立体写真計測の場合と同じである。
【0029】
また、赤外線カメラを固定し、撮影対象を回転させて、多数の異なる視点から得た対象物の熱画像を得、これら多数の熱画像間のマッチングを行う際に、上記の発熱する粒状体を用いたランダムパターンを利用することもできる。
【0030】
(作成法)
図4図1のランダムパターンシート110~112の作成法の一例を示す。まず、ランダムパターンの突起を形成した糊スタンプ121を作成する。
【0031】
この糊スタンプ121の突起面に糊(接着剤や粘着剤)を付け、それを平坦な面を有する部材である台紙122にスタンプする。台紙122は紙を用いたが、熱伝導率の小さい材質であれば、木材や樹脂でもよい。
【0032】
糊がスタンプされた台紙122上に発熱する粒状体を散布し、糊が付いていない部分の粒状体を除去することで、台紙122の表面に発熱する粒状体123により構成されるランダムパターンが形成されたランダムパターンシート110~112を得る。
【0033】
(優位性)
発熱する粒状体によりランダムパターンを形成することで、ランダムパターンを赤外光の照射により作成する場合に必要となる赤外線照射装置を必要としない。また、この発熱する粒状体により構成されるランダムパターンは、可視画像におけるランダムパターンとしても機能する。
【0034】
2.第2の実施形態
図5には、板状のランダムパターン板200が示されている。ランダムパターン板200は、シート状の発熱体201と、その上の熱伝導率の悪い材質で構成された遮蔽ランダムパターン層202により構成されている。
【0035】
シート状の発熱体201は、通電により発熱する。遮蔽ランダムパターン層202は、熱伝導率の悪い例えば樹脂や発砲材料により構成される。遮蔽ランダムパターン層202は、ランダムパターンの隙間(開孔)を有し、この隙間においてシート状の発熱体202が露呈する。これにより、ランダムな発熱パターンが得られる。
【0036】
シート状の発熱体201を金属板とし、この金属板をヒータやペルチェ素子で加熱、あるいはペルチェ素子で冷却してもよい。加熱と冷却のいずれであっても、熱画像上でランダムパターン像が得られる。
【0037】
3.第3の実施形態
図6は、他の形態のランダムパターンシート300の作成法を示す断面図である。ここでは、電子回路に利用される銅箔基板を用意する。この銅箔基板は、樹脂製の基板301とその上に設けられた銅箔302により構成されている。
【0038】
まず、銅箔302の表面にマスクパターン層303を積層する(図6(A))。マスクパターン層は、銅箔基板に回路パターンを形成する公知の手法で利用されるもので、例えばフォトレジストで構成される。
【0039】
ここでは、ランダムパターン(例えば、図2(A)参照)を有するマスクパターン層303を形成する。マスクパターン層303を形成したら、公知のエッチング手法により、マスクされていない部分の銅箔を除去し、図6(B)の状態を得る。そして、マスクパターン層303を除去し、図3(C)および図3(D)に示すランダムパターンシート300を得る。
【0040】
ここで、残った銅箔が全てつながるようにマスクパターン層303のパターンを設定する。これは、残った銅箔に熱を伝導させるためである。こうして、ランダムターンを有する銅箔302が得られる。
【0041】
図示しない発熱体により銅箔302を加熱すると、熱伝導率の差により、銅箔が残った部分が基板に比較して高温になる。このため、ランダムパターンの温度差が生じ、ランダムパターンの熱画像が得られる。この場合、銅箔がないドット部分が相対的に低温で銅箔がある部分が相対的に高温となるランダムドットパターンが得られる。ランダムパターンシート300を赤外線カメラで撮影するとランダムドットパターンの熱画像が得られる。
【0042】
基板としてフレキシブルな樹脂フィルムを利用することもできる。この場合、ランダムパターンシート300を曲面に貼り付けるような使い方が可能となる。
【0043】
銅箔部分の放射効率を高めるために銅箔の表面に炭素膜やセラックス層を積層してもよい。高温部分の放射効率を高めることで、より鮮明なメリハリのあるランダムパターンの熱画像を得ることができる。
【0044】
また、銅箔302を冷却する形態も可能である。この場合、銅箔がないドット部分が相対的に高温で銅箔がある部分が相対的に低温となるランダムドットパターンが得られる。
【0045】
4.第4の実施形態
2種類の棒を用いてランダムパターンを形成することもできる。以下、この例を説明する。図7には、相対的に高熱伝導率の金属の棒604と、相対的に低熱伝導率の樹脂の棒605をランダムに集めて束ねたものでランダムパターン603を構成する例が示されている。
【0046】
金属としては、銅、アルミニウム、真鍮等が挙げられる。樹脂としては、発砲スチロール等が挙げられる。棒の断面形状は、円形に限定されず、楕円、各種多角形が挙げられる。
【0047】
束ねられた棒の集合体は、下部が加熱または冷却槽601に入れられ、加熱または冷却槽601には、加熱液体または冷却液体602が貯められている。加熱または冷却は公知の適当な手段で行われるが、例えば加熱であれば、抵抗加熱ヒータやペルチェ素子、冷却であればペルチェ素子が利用される。
【0048】
例えば、加熱液体602を用いた場合、金属の棒604は相対的に高温となり、樹脂の棒603は相対的に低温となり、温度差により、上面に熱画像で認識されるランダムドットパターンが形成される。各棒の上面を色分けすることで、RGB画像で認識されるランダムドットパターンの形成も可能である。
【0049】
5.第5の実施形態
発熱する粒状体として酸化カルシウム(生石灰)を粒状にしたものを利用することもできる。酸化カルシウムは、水分を加えると発熱する。この性質を利用して、酸化カルシウムの粒状体を面上に散布して、ランダムに分布させ、そこに水を噴霧することで、酸化カルシウムを発熱させる。それを赤外線カメラで撮影することでランダムパターンが得られる。この場合、水分の量を調整することで、発熱反応を制御できる。また、保水性の材料を混ぜることで、発熱反応が継続する時間を調整することができる。
【0050】
酸化カルシウムは、土壌の上に直接撒くこともできる。この場合、植物の周囲の土の表面に熱的なランダムパターンを形成できる。これは、後述の炭、尿素、硝酸アンモニウム、氷、ドライアイスの場合も同じである。
【0051】
6.第6の実施形態
発熱する粒状体として燃えている炭を細かくしたものを用いることもできる。
【0052】
7.第6の実施形態
発熱する粒状体でなく、逆に温度が下がる(吸熱する)材料を用いてランダムパターンを形成することもできる。例えば、尿素や硝酸アンモニウムは、水分と反応すると吸熱し温度が下がる。これらを含んだ粒状体を用いると、熱画像で認識できるランダムパターンを形成できる。両者を混ぜて使うことも可能である。
【0053】
例えば、尿素および/または硝酸アンモニウムを含んだ多数の粒状体を樹脂板の上にランダムに散布する。通常にばら撒けば十分ランダムになる。そこに霧吹きで水を与えることで、尿素および/または硝酸アンモニウムと水分が反応し、吸熱反応が生じる。すなわち、ランダムパターンに温度が低い部分が生じ、熱的なランダムパターンが得られる。この場合、水分の量を調整することで、吸熱反応を制御できる。また、保水性の材料を混ぜることで、吸熱反応が継続する時間を調整することができる。
【0054】
8. 第7の実施形態
氷やドライアイスの粒を用いて熱画像で認識できるランダムパターンを形成することもできる。
【0055】
9.第8の実施形態
発熱する材料と吸熱する材料を同時に(併用して)使う形態も可能である。大事なのは、温度差のある部分でランダムパターンを形成する点にある。
【0056】
10.第10の実施形態
図8には、磁性を帯びた磁性体(例えば鉄)の円筒801に酸化前の鉄粉802を磁力によりランダムに付着させたランダムパターン柱800が示されている、磁性体の円筒801に磁性を与える方法としては、円筒801自体を磁石で構成する方法、円筒801の内部に磁石を貼り付ける方法がある。
【0057】
鉄粉802は、空気に触れることで酸化し、その際に発熱する。これにより、円柱801の表面に熱画像上で画像化されるランダムドットパターンが形成される。
【0058】
ステレオ熱画像のマッチングにおいては、平面上に分布するランダムパターンに加えて、立体的に分布するランダムパターン、鉛直方向に分布するランダムパターンがあった方が3次元的なマッチングの点で好ましい。図8の例はこの目的のために好適である。
【0059】
酸化が終了すると、発熱も止み、また鉄粉802は酸化鉄となり磁性体としての性質(磁力に吸引される性質)が弱まる。よって、酸化後(発熱後)に鉄粉802を円筒801の表面から簡単に除去できる。
【0060】
ここでは、円筒の例を示したが、鉄粉を磁力で付着させる対象(母材)は、磁力を帯びた円柱、角筒、角柱、板状の部材であってもよい。例えば、第1の実施形態における台紙122を、磁力を帯びた板状の部材とする形態も可能である。
【0061】
円筒801をプラスチック磁石や樹脂中に磁石粉を分散させた材料で構成すると、発熱する鉄粉との温度差が際立ち、熱画像におけるランダムドットパターンをより際立たせることができる。
【0062】
11.第11の実施形態
図9に粒状発熱体の他の例を示す。図9には、細長い線状の発熱体を直径数mmの渦巻き形状とした粒状発熱体900が示されている。粒状発熱体900は、炭素材料で構成される芯901、芯901を覆う被覆902により構成された細長い線状の線材を渦巻き状にした構造を有する。線材の直径は0.1mm~0.5mm程度とする。粒状発熱体900を多数用意し、発熱する粉体として利用する。
【0063】
芯901を燃焼させることで発熱する粉体となる。芯901には酸化(燃焼)を抑えるために難燃性の添加物が混ぜられ、燃焼がゆっくりと進むように工夫されている。また、被覆902があることで、空気中の酸素と芯901の接触が抑制され、燃焼がゆっくりと進む。これにより、長時間の発熱が可能となる。
【0064】
渦巻き形状にせず、長さ数mmから数cmの短繊維状のものを粒状発熱体として利用することもできる。被覆902がない態様、燃焼を抑えるために難燃性の添加物を利用しない態様も可能である。
【0065】
12.第12の実施形態
発熱と吸熱を組み合わせてランダムパターンを形成してもよい。熱画像間でのマッチングは、ランダムパターンが熱画像上で明瞭に表示されている方がより効率よく行え、また誤マッチングを抑えることができる。
【0066】
例えば、発熱粒子を用いたランダムドットパターンの場合、当該発熱粒子と周囲との温度差が大きく、また温度勾配が強い程、熱画像上でのランダムドットパターンは明瞭となる。
【0067】
例えば、発熱する粒子と吸熱する粒子を面上にばら撒く(ランダムに散布する)ことで、上記の目的を達成する熱的なランダムドットパターンが得られる。
【0068】
例えば、発熱する面上に樹脂製のメッシュを置き、このメッシュ上に吸熱する粒子をばら撒く方法、あるいは逆に冷却された面上に樹脂製のメッシュを置き、このメッシュ上に発熱する粒子をばら撒く方法もある。ここで、メッシュの目の粗さは、粒子が通過しない寸法とする。メッシュは、発熱体と吸熱体が直接ふれないようにするため用いられる。またメッシュを樹脂製とするのは、熱伝導を抑え、発熱粒子の発熱時間または吸熱粒子の吸熱時間を確保するためである。
【0069】
また、図10に示すように、発熱層921、その上のランダムパターンの熱絶縁層922(例えば樹脂の層)、その上の同じくランダムパターンとされた吸熱層(冷却層)923と積層したランダムパターンシート920も可能である。また、吸熱層921、その上のランダムパターンの熱絶縁層922、その上の同じくランダムパターンとされた発熱層923と積層したランダムパターンシート920も可能である。この場合、ドットパターン924と周囲の温度差が大きく、また周囲との温度勾配が急峻となるので、熱画像中でエッジが際立ち、明瞭なドットパターンとなる。
【符号の説明】
【0070】
100…熱画像の対象となる植物、101…赤外線カメラ、102…赤外線カメラ、110,111,112…ランダムパターンシート、120…データ処理用のPC、121…スタンプ、122…台紙、123…発熱する粒状体(鉄粉)、200…ランダムパターン板、201…シート状の発熱体、202…遮蔽ランダムパターン層、300…ランダムパターンシート、301…樹脂製の基板、302…銅箔、601…加熱または冷却槽、602…加熱液体または冷却液体、603…ランダムパターン、604…金属の棒、605…樹脂の棒、800…ランダムパターン柱、801…円筒部材、802…酸化前の鉄粉。




図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10