(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119373
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】給送装置、及び、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 3/54 20060101AFI20230821BHJP
B65H 1/04 20060101ALI20230821BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
B65H3/54 330
B65H1/04 320A
G03G15/00 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022246
(22)【出願日】2022-02-16
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.エチケットブラシ
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100117215
【弁理士】
【氏名又は名称】北島 有二
(72)【発明者】
【氏名】田中 瑞来
【テーマコード(参考)】
2H072
3F343
【Fターム(参考)】
2H072BA03
2H072BA12
2H072BA17
2H072BA20
2H072BB01
3F343FA02
3F343FB01
3F343FC13
3F343GA02
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343HD17
3F343HE02
3F343HE29
3F343JD09
3F343JD18
(57)【要約】
【課題】載置部に積載された複数枚のシートの積載高さが変化しても、載置部上のシートの搬送部材に対する給送圧を適正化する。
【解決手段】昇降可能に構成されて複数枚のシートPを積載可能な載置部105と、載置部105に積載された最上方のシートPを所定の給送方向に給送するピックアップローラ51(搬送部材)と、載置部105に積載された最上方のシートPがピックアップローラ51に圧接するように載置部105を付勢するスプリング106(弾性部材)と、が設けられている。そして、少なくとも載置部105に積載された複数枚のシートPの積載高さHが所定値Hx以上であるときに、積載高さHの減少に応じて載置部105に積載された複数枚のシートPに対して下方に向けて与える負荷の大きさを減ずるブラシ状部材110(負荷調整手段)が設けられている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降可能に構成されて、複数枚のシートを積載可能な載置部と、
前記載置部に積載された最上方のシートを所定の給送方向に給送する搬送部材と、
前記載置部に積載された最上方のシートが前記搬送部材に圧接するように前記載置部を付勢する弾性部材と、
少なくとも前記載置部に積載された複数枚のシートの積載高さが所定値以上であるときに、前記積載高さの減少に応じて前記載置部に積載された複数枚のシートに対して下方に向けて与える負荷の大きさを減ずる負荷調整手段と、
を備えたことを特徴とする給送装置。
【請求項2】
前記載置部に積載された複数枚のシートの側端面に当接可能なフェンス面がそれぞれ形成された一対のサイドフェンスを備え、
前記負荷調整手段は、前記一対のサイドフェンスのフェンス面にそれぞれ設置されたブラシ状部材であることを特徴とする請求項1に記載の給送装置。
【請求項3】
前記ブラシ状部材は、ブラシ毛の倒れ方向が下方になるように設置されたことを特徴とする請求項2に記載の給送装置。
【請求項4】
前記ブラシ状部材は、隣接するブラシ毛とブラシ毛との上下方向の間隔が、給送可能な最も薄いシートの厚さよりも短いことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の給送装置。
【請求項5】
前記搬送部材は、ピックアップローラであって、
前記ブラシ状部材は、前記ピックアップローラに対して前記給送方向の上流側であって、前記フェンス面の上部に設置されたことを特徴とする請求項2~請求項4のいずれかに記載の給送装置。
【請求項6】
前記載置部は、前記ブラシ状部材に対して前記給送方向の上流側に位置する支軸を中心に回動することで昇降することを特徴とする請求項5に記載の給送装置。
【請求項7】
少なくとも前記載置部に積載された複数枚のシートの積載高さが前記所定値以上であるときに、前記積載高さの減少に応じて前記載置部に積載された複数枚のシートに対して前記ブラシ状部材が接触する前記給送方向の幅が減少することを特徴とする請求項2~請求項6のいずれかに記載の給送装置。
【請求項8】
前記負荷調整手段は、前記載置部に積載された複数枚のシートの積載高さが前記所定値未満であるときに、前記載置部に積載された複数枚のシートに対して前記負荷を与えないことを特徴とする請求項1~請求項7のいずれかに記載の給送装置。
【請求項9】
前記載置部に積載された複数枚のシートの端面に当接可能なフェンス面が形成されたフェンス部材を備え、
前記負荷調整手段は、前記フェンス面に設置されたブラシ状部材であって、
前記ブラシ状部材は、上方における水平方向の幅が、下方における水平方向の幅に比べて、小さいことを特徴とする請求項1~請求項8のいずれかに記載の給送装置。
【請求項10】
前記載置部に積載された複数枚のシートの端面に当接可能なフェンス面が形成されたフェンス部材を備え、
前記負荷調整手段は、前記フェンス面に設置されたブラシ状部材であって、
前記ブラシ状部材は、上方に位置するブラシ毛の剛度が、下方に位置するブラシ毛の剛度に比べて、小さいことを特徴とする請求項1~請求項9のいずれかに記載の給送装置。
【請求項11】
昇降可能に構成されて、複数枚のシートを積載可能な載置部と、
前記載置部に積載された最上方のシートを所定の給送方向に給送する搬送部材と、
前記載置部に積載された最上方のシートが前記搬送部材に圧接するように前記載置部を付勢する弾性部材と、
少なくとも前記載置部に積載された複数枚のシートの積載高さが所定値以上であるときに、最上方のシートが前記搬送部材に圧接する力を減ずる負荷を与える負荷部材と、
を備え、
前記負荷部材は、前記積載高さに応じて、前記載置部に積載された複数枚のシートに与える負荷が変化することを特徴とする給送装置。
【請求項12】
請求項1~請求項11のいずれかに記載の給送装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、用紙(転写紙)や原稿などのシートを給送する給送装置と、それを備えた複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機や印刷機等の画像形成装置と、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、昇降可能な載置部(底板)に積載された複数枚のシートのうち最上方のシートが搬送部材(ピックアップローラ)に圧接するように、弾性部材によって載置部を上方に付勢して、その状態で最上方のシートを搬送部材によって給送する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
一方、特許文献2には、給紙トレイ(載置部)に積載された最上方のシートが浮き上がってスキューしながら給送される不具合を防止することを目的として、サイドシートガイド(サイドフェンス)に、起毛を有する傾斜規制部材を設置する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術は、給送動作が進んで載置部に積載された複数枚のシートの積載高さ(積載枚数)が変化(減少)したときに、弾性部材による付勢によって載置部上の最上方のシートが搬送部材に圧接する力(給送圧)が適正範囲から外れてしまうことがあった。そして、そのように給送圧が安定しないことにより、給送装置におけるシートの給送も安定しなかった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、載置部に積載された複数枚のシートの積載高さが変化しても、載置部上のシートの搬送部材に対する給送圧が適正化される、給送装置、及び、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明における給送装置は、昇降可能に構成されて、複数枚のシートを積載可能な載置部と、前記載置部に積載された最上方のシートを所定の給送方向に給送する搬送部材と、前記載置部に積載された最上方のシートが前記搬送部材に圧接するように前記載置部を付勢する弾性部材と、少なくとも前記載置部に積載された複数枚のシートの積載高さが所定値以上であるときに、前記積載高さの減少に応じて前記載置部に積載された複数枚のシートに対して下方に向けて与える負荷の大きさを減ずる負荷調整手段と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、載置部に積載された複数枚のシートの積載高さが変化しても、載置部上のシートの搬送部材に対する給送圧が適正化される、給送装置、及び、画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】この発明の実施の形態における画像形成装置を示す全体構成図である。
【
図4】給送装置においてシートの積載高さが減少していく状態を示す図である。
【
図5】給送装置の一部を給送方向上流側からみた図である。
【
図6】シートの積載高さと、給送圧(ピックアップ圧)と、の関係を示すグラフである。
【
図7】比較例としての、シートの積載高さと、給送圧(ピックアップ圧)と、の関係を示すグラフである。
【
図8】変形例としての、給送装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0010】
まず、
図1にて、画像形成装置1における全体の構成・動作について説明する。
図1において、1は画像形成装置としての複写機、2は原稿Dの画像情報を光学的に読み込む原稿読込部、3は原稿読込部2で読み込んだ画像情報に基づいた露光光Lを感光体ドラム5上に照射する露光部、4は感光体ドラム5上にトナー像(画像)を形成する作像部、7は感光体ドラム5上に形成されたトナー像をシートPに転写する転写部(画像形成部)、を示す。
また、10はセットされた原稿Dを原稿読込部2に搬送する原稿搬送部(自動原稿搬送装置)、12、13は給紙カセット内に収容されたシートPを給送する給送装置、を示す。
また、17は転写部7に向けてシートPを搬送するレジストローラ対(搬送ローラ対)、20はシートP上に担持されたトナー像(未定着画像)を定着する定着装置、21は定着装置20に設置された定着ローラ、22は定着装置20に設置された加圧ローラ、31は装置本体1から排紙されたシートPが積載される排紙トレイ、を示す。
また、105は各給送装置12、13において昇降可能な載置部、50は各給送装置12、13に設置された給送手段としての給送機構、を示す。
【0011】
図1を参照して、画像形成装置本体1における、通常の画像形成時の動作について説明する。
まず、原稿Dは、原稿搬送部10の搬送ローラによって、原稿台から図中の矢印方向に搬送(給送)されて、原稿読込部2上を通過する。このとき、原稿読込部2では、上方を通過する原稿Dの画像情報が光学的に読み取られる。
そして、原稿読込部2で読み取られた光学的な画像情報は、電気信号に変換された後に、露光部3(書込部)に送信される。そして、露光部3からは、その電気信号の画像情報に基づいたレーザ光等の露光光Lが、作像部4の感光体ドラム5上に向けて発せられる。
【0012】
一方、作像部4において、感光体ドラム5は
図1の時計方向に回転しており、所定の作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程)を経て、感光体ドラム5上に画像情報に対応した画像(トナー像)が形成される。
その後、感光体ドラム5上に形成された画像は、画像形成部としての転写部7で、レジストローラ対17により搬送されたシートP上に転写される。
【0013】
一方、転写部7(画像形成部)に搬送されるシートPは、次のように動作する。
まず、画像形成装置本体1の複数の給送装置12、13のうち、1つの給送装置が自動又は手動で選択される(例えば、下段の給送装置13が選択されたものとする。)。そして、給送装置13に収納された用紙などのシートPの最上方の1枚が、給送機構50によって給送されて、搬送経路Kに向けて搬送される。その後、シートPは、複数の搬送ローラが配設された搬送経路Kを通過して、レジストローラ対17の位置に達する。このとき、レジストローラ対17は、回転停止した状態であって、そのニップにシートPの先端が突き当たることで、シートPの斜行(スキュー)が補正されることになる。
そして、レジストローラ対17の回転が開始されて、レジストローラ対17によって、斜行(スキュー)が補正された後のシートPが、感光体ドラム5上に形成された画像と位置合わせをするためにタイミングを合わせて、転写部7(画像形成部)に向けて搬送される。
【0014】
そして、転写工程後のシートPは、転写部7の位置を通過した後に、搬送経路を経て定着装置20に達する。定着装置20に達したシートPは、定着ローラ21と加圧ローラ22との間に送入されて、定着ローラ21から受ける熱と双方の部材21、22から受ける圧力とによってトナー像が定着される(定着工程である)。トナー像が定着された定着工程後のシートPは、定着ローラ21と加圧ローラ22との間(定着ニップである。)から送出された後に、画像形成装置本体1から排出されて、出力画像として排紙トレイ31上に積載されることになる。
こうして、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0015】
次に、
図2、
図3等を用いて、本実施の形態における給送装置について詳述する。
なお、以下、装置本体1に内接された複数の給送装置12、13のうち、下段の給送装置13について説明するが、上段の給送装置12も設置位置が異なる点を除いて下段の給送装置13とほぼ同様の構成となっているため、その説明を省略することにする。
【0016】
図2、
図3等を参照して、給送装置13には、複数枚のシートP(シート束PT)を積載可能に構成された載置部105(底板)、載置部105に載置されたシートPを給送するための給送機構50、一対のサイドフェンス101、102、エンドフェンス103、基準フェンス107、弾性部材としてのスプリング106、等が設置されている。
載置部105は、載置された最上方のシートPの給送方向下流側(
図2の右側である。)が所定の高さ位置(ピックアップローラ51に当接する位置である。)に達するように、昇降可能に構成されている。具体的に、載置部105は、給送装置13内において、支軸105aを中心に回動可能に支持されている。そして、載置部105は、給送方向上流側端部に位置する支軸105aを中心に正逆方向に回動することで昇降するように構成されている。
また、
図2を参照して、給送機構50は、フィードローラ52、搬送部材としてのピックアップローラ51、分離ローラ53、等で構成されている。
【0017】
フィードローラ52は、載置部105に載置されたシートPに対して給送方向(
図2の白矢印方向である。)の先端側(下流側)に設置されていて、最上方のシートPの上面に接触してシートPの給送方向に沿うように回転(
図2の反時計方向の回転である。)して、ピックアップローラ51とともに、シートPを一点鎖線矢印で示す給送方向に給送するものである。
搬送部材としてのピックアップローラ51は、載置部105に載置された最上方のシートPの表面(上面)に当接した状態で、給送方向に沿うように
図2の反時計方向に回転して、そのシートPをフィードローラ52の位置に向けて搬送するものである。
分離ローラ53は、フィードローラ52との間にニップ部を形成するように設置されている。そして、分離ローラ53は、ニップ部に1枚のシートPが挟持されたときと、ニップ部にシートPが挟持されていないときと、には、給送方向に沿うように順方向(
図2の破線矢印方向であって、時計方向である。)に回転する。これに対して、分離ローラ53は、ニップ部に複数枚のシートが挟持されたときには、上述した順方向に対して逆方向(
図2の実線矢印方向であって、反時計方向である。)に回転する。これにより、ニップ部に挟持された複数枚のシートPのうち最上方のシートPがフィードローラ52の回転に沿って給送方向に給送されて、下方のシートPが給送方向(順方向)に対して逆方向に搬送されて、シートPの重送が抑止される。
【0018】
ここで、本実施の形態における給送装置13には、載置部105に積載された最上方のシートPがピックアップローラ51(搬送部材)に圧接するように載置部105を付勢する弾性部材としてのスプリング106(圧縮スプリング)が設けられている。
詳しくは、スプリング106(弾性部材)は、支軸105aを中心に回動可能な載置部105を上方に持ち上げるように構成されていて、載置部105に積載された最上方のシートPがピックアップローラ51(所定の高さ位置に固定されている。)に圧接することになる。
このような構成により、載置部105上に積載される複数枚のシートP(シート束PT)の積載高さH(枚数)によって、載置部105が上下方向に昇降して、載置部105に積載された最上方のシートPがピックアップローラ51に当接することになる。そして、載置部105上の最上方のシートPが、ピックアップローラ51によって、所定の給送方向(
図2、
図3の白矢印方向である。)に給送されることになる。
【0019】
なお、本実施の形態では、載置部105を上方に付勢する弾性部材として圧縮スプリング106を用いたが、弾性部材はこれに限定されることなく、例えば、弾性部材として引張スプリング、ねじりコイルスプリング、板バネなどを用いることもできる。また、本実施の形態では、載置部105を弾性部材(スプリング106)によって直接的に付勢するように構成したが、載置部105を別部材を介して弾性部材によって間接的に付勢するように構成することもできる。
また、本実施の形態では、ピックアップローラ51を所定の高さ位置に固定した。これに対して、ピックアップローラ51を、所定の高さ位置(載置部105上の最上方のシートPに当接する位置である。)と、その位置から上方に退避する退避位置と、の間を移動可能に構成することもできる。
【0020】
また、本実施の形態における給送装置13には、載置部105上に載置されたシートPの幅方向(
図2の紙面垂直方向であって、
図3の上下方向である。)の位置を規制する一対のサイドフェンス101、102(
図3参照)が設けられている。サイドフェンス101、102は、シートPを挟むように幅方向両端部にそれぞれ設置されていて、手動移動機構によってシートPの幅方向のサイズに合わせて幅方向に互いに連動して移動可能に構成されている(幅方向の間隔を増減可能に構成されている)。
また、本実施の形態における給送装置13には、載置部105上に載置されたシートPの給送方向(
図2の左右方向であって、
図3の左右方向である。)の位置を規制する基準フェンス107とエンドフェンス103とが設けられている。基準フェンス107は、シートPの給送方向下流側の側面(先端)が突き当てられるように設置されている。エンドフェンス103は、シートPの給送方向上流側の側面(後端)に当接するように設置されていて、手動移動機構によってシートPの給送方向のサイズに合わせて給送方向に移動可能に構成されている。
【0021】
なお、本実施の形態において、給送装置13は、シートPを積載可能な載置部105(給送カセット)が画像形成装置本体1から引き出される動作に連動して、スプリング106(弾性部材)による載置部105に対する付勢が解除されるように構成されている。これにより、ユーザーは、載置部105(給送カセット)を画像形成装置本体1から引き出した状態で、下降した状態の空の載置部105上にシートP(シート束PT)を容易にセット(補充)することが可能になる。そして、シートP(シート束PT)がセットされた載置部105(給送カセット)が画像形成装置本体1に装着されると、その装着動作に連動して、スプリング106(弾性部材)による載置部105に対する付勢がされるようになる。
そして、
図2に示すように、載置部105に載置された最上方のシートPの上面にピックアップローラ51が当接した状態でピックアップローラ51の反時計方向の回転駆動が開始されて、同じタイミングでフィードローラ52と分離ローラ53との回転が開始される。これにより、ピックアップローラ51によって載置部105に載置されたシート束PTのうち最上方のシートPが、フィードローラ52と分離ローラ53とのニップ部に向けて搬送されて、さらにそのニップ部から1枚のシートPがフィードローラ52(及び、ピックアップローラ51)によって画像形成部に向けて分離され搬送されることになる。
【0022】
以下、
図2~
図7等を用いて、本実施の形態における給送装置13(画像形成装置1)において、特徴的な構成・動作について説明する。
先に
図2、
図3等を用いて説明したように、給送装置13には、載置部105,搬送部材としてのピックアップローラ51、弾性部材としてのスプリング106、一対のサイドフェンス101、102、などが設けられている。
載置部105(底板)は、昇降可能に構成されるとともに、複数枚のシートP(シート束PT)を積載可能に構成されている。
ピックアップローラ51は、載置部105に積載された最上方のシートPを所定の給送方向(
図2~
図4の白矢印方向である。)に給送する搬送部材として機能している。
スプリング106は、載置部105に積載された最上方のシートPがピックアップローラ51(搬送部材)に圧接するように載置部105を付勢する弾性部材である。なお、このようにしてピックアップローラ51にシートPが圧接する力を「給送圧(ピックアップ圧)」と呼ぶ。
一対のサイドフェンス101、102は、載置部105に積載された複数枚のシートPの側端面に当接可能なフェンス面101a、102a(
図3~
図5参照)がそれぞれ形成された一対のフェンス部材である。
【0023】
ここで、
図3~
図5等を参照して、本実施の形態における給送装置13には、負荷調整手段としてのブラシ状部材110が設けられている。
このブラシ状部材110は、少なくとも載置部105に積載された複数枚のシートPの積載高さHが所定値Hx(後述する
図4(B)の積載高さH2より僅かに小さい値である。)以上であるときに、その積載高さHの減少に応じて載置部105に積載された複数枚のシートPに対して下方に向けて与える負荷(給送圧を減ずる方向の負荷である。)の大きさを減ずる負荷調整手段として機能している。
換言すると、少なくとも載置部105に積載された複数枚のシートPの積載高さHが所定値Hx以上であるときに、負荷調整手段としてのブラシ状部材110によって、給送動作がおこなわれてシート枚数が減少して積載高さHが徐々に減少するのにともない、給送圧(ピックアップ圧)が徐々に減少されるようになっている。
なお、本願明細書等において、負荷調整手段(ブラシ状部材110)は、載置部105に積載された複数枚のシートPの積載高さHが所定値Hx以上であるときに、最上方のシートPが搬送部材(ピックアップローラ51)に圧接する力を減ずる負荷を与える負荷部材であるとも言える。そして、本実施の形態において、負荷部材としてのブラシ状部材110は、載置部105上のシートPの積載高さHに応じて、載置部105に積載された複数枚のシートPに与える負荷が変化することになる。
【0024】
これは、給送動作が進んで載置部105に積載された複数枚のシートPの積載高さH(積載枚数)が減少していくと、スプリング106(弾性部材)による付勢によって載置部105上の最上方のシートPがピックアップローラ51に圧接する給送圧(ピックアップ圧)が減少してしまって、給送装置13におけるシートPの給送が安定しないためである。
具体的に、給送圧(ピックアップ圧)が高過ぎると、シートPとシートPとの間の摩擦による密着力が高くなって、シートPの重送が生じやすくなる。これに対して、給送圧(ピックアップ圧)が低過ぎると、シートPを給送(搬送)するための充分な搬送力が得られずに、シートPの不給送が生じやすくなる。
図6、
図7を参照して、本実施の形態において、シートPの重送も不給送も生じない給送圧(ピックアップ圧)の適正範囲は、1.5~9Nとなっている。
【0025】
給送圧(ピックアップ圧)は、概ね、載置部105におけるシート積載高さHに応じたスプリング106のスプリング力に対して、載置部105上のシートPの重量と、載置部105自体の重量と、を減じたものとなる。
したがって、
図4(A)~(C)を参照して、シート積載高さHが減少するほど、給送圧(ピックアップ圧)が小さくなることになる(
図7参照)。
また、同じシート積載高さHであっても、シートサイズが小さくなれば、シートPの重量も小さくなって、給送圧(ピックアップ圧)が大きくなることになる。具体的に、
図7のグラフQ1、Q2(又は、グラフR1、R2)を参照して、A6サイズ(小サイズ)のシートPが載置部105に積載された場合には、A3サイズ(大サイズ)のシートPが載置部105に積載された場合に比べて、シート積載高さH(横軸)に対する給送圧(縦軸)の変化の割合(勾配)が大きくなる。
そして、このようにシート積載高さHばかりでなく、シートサイズによっても、変化する給送圧を所定の適正範囲(本実施の形態では、1.5~9Nの範囲である。)に収めるためには、スプリング106(弾性部材)のスプリング力を調整する方策や、シート積載高さHの変化に関わらず載置部105にスプリング力を減ずる負荷を一様にかける方策(例えば、特許文献2のように、ブラシ状の傾斜規制部材によってスプリング力を減ずる負荷を一様にかける場合などである。)をとっても解決することができない。例えば、
図7のグラフQ1、Q2に示すようなシート積載高さH(横軸)と給送圧(縦軸)との関係にある給送装置13に対して、グラフQ1(A6サイズ)の重送が発生する領域を発生しない範囲内に収めるために、単純にスプリング106のスプリング力を調整して、
図7のグラフR1、R2に示すようなシート積載高さH(横軸)と給送圧(縦軸)との関係になるように設定した場合、グラフR1(A6サイズ)、R2(A3サイズ)のそれぞれに不給送が発生する領域が生じてしまう(積載高さHが小さいときに不給送が生じてしまう)。
【0026】
これに対して、本実施の形態では、負荷調整手段としてのブラシ状部材110によって、
図6のグラフS1、S2に示すように、少なくとも載置部105に積載された複数枚のシートPの積載高さHが所定値Hx(本実施の形態では、20mm程度である。)以上であるときに、積載高さHが徐々に減少するのにともない、給送圧(ピックアップ圧)が減少されるようになっている。そのため、シートサイズに関わらず、シート積載高さHが変化しても、給送圧(ピックアップ圧)が、シートPの重送も不給送も生じない範囲(1.5~9N)に収まることになる。
【0027】
特に、本実施の形態では、ブラシ状部材110(負荷調整手段)は、載置部105に積載された複数枚のシートPの積載高さHが所定値Hx(本実施の形態では、20mm程度である。)以上であるときに、その積載高さHの減少に応じて載置部105に積載された複数枚のシートPに対して下方に向けて与える負荷の大きさを減じている。
そして、ブラシ状部材110(負荷調整手段)は、載置部105に積載された複数枚のシートPの積載高さHが所定値Hx(本実施の形態では、20mm程度である。)未満であるときに、載置部105に積載された複数枚のシートPに対して負荷を与えないようにしている。
このように構成することで、積載高さHが小さいときの不給送に対する余裕度が増して、シート積載高さHやシートサイズに関わらず、給送圧(ピックアップ圧)をシートPの重送も不給送も生じない範囲(1.5~9N)にさらに収めやすくなる。
【0028】
さらに詳しくは、
図3、
図5等を参照して、負荷調整手段としてのブラシ状部材110は、一対のサイドフェンス101、102のフェンス面101a、102aにそれぞれ設置されている。
これにより、載置部105に積載されたシートPに対して、幅方向両端からバランス良くブラシ状部材110の負荷がかかることになるため、ピックアップローラ51による給送がさらに安定化することになる。
【0029】
また、
図5等を参照して、ブラシ状部材110は、ブラシ毛の倒れ方向が下方(載置部105が上昇する方向に反する方向である。)になるように設置されている。
具体的に、本実施の形態では、ブラシ状部材110として、略矩形状であって、エチケットブラシと略同等のものを用いている。そして、ブラシ状部材110は、ナイロンなどからなるブラシ毛(植毛、起毛)が所定の倒れ方向に一様に傾斜するように構成されている。
このように、ブラシ毛の倒れ方向が下方になることで、載置部105に積載されたシートPに対してブラシ状部材110の負荷(下方への負荷である。)をかけやすくなる。
なお、ブラシ状部材110は、ブラシ毛の毛崩れを軽減するため、熱溶断加工によってブラシ毛の長さが整えられている。
【0030】
また、
図3、
図4等を参照して、ブラシ状部材110は、ピックアップローラ51に対して給送方向の上流側(
図3、
図4の左側である。)であって、フェンス面101a、102aの上部(上部の一部である。)に、両面テープなどを介して設置(貼着)されている。
また、
図4(A)~(C)を参照して、載置部105は、ブラシ状部材110に対して給送方向の上流側に位置する支軸105aを中心に回動することで昇降する。
このような構成により、給送動作が繰り返されて載置部105におけるシート積載高さH(積載枚数)が減少していくと、支軸105aを中心にした載置部105の回動角度(傾斜角度)が増加することになる。
そして、少なくとも載置部105に積載された複数枚のシートPの積載高さHが所定値Hx以上であるときに、積載高さHの減少に応じて載置部105に積載された複数枚のシートPに対してブラシ状部材110が接触する給送方向の幅X(載置部105の傾斜した載置面に沿った方向の接触幅である。)が減少することになる。
【0031】
具体的に、本実施の形態では、シート積載高さHが所定値Hx以上であって、
図4(A)に示すように充分に大きなシート積載高さH1である場合の接触幅X1(ブラシ状部材110に接触する給送方向の幅である。)は、
図4(B)に示すように小さなシート積載高さH2である場合の接触幅X2に比べて、大きくなる。そのため、シート積載高さHが所定値Hx以上の場合には、シート積載高さHが減少するほど、載置部105に積載されたシートPに対するブラシ状部材110の負荷(給送圧を減ずる力である。)が小さくなる。
また、シート積載高さHが所定値Hx未満であって、
図4(C)に示すように、充分に小さなシート積載高さH3になると、ブラシ状部材110にシートPが接触しない(接触幅Xが0になる)。
これにより、シート積載高さHやシートサイズに関わらず、給送圧(ピックアップ圧)がシートPの重送も不給送も生じない範囲に収まることになる。
【0032】
ここで、ブラシ状部材110は、隣接するブラシ毛とブラシ毛との上下方向の間隔が、給送可能な最も薄いシートPの厚さ(例えば、坪量52g/m2程度である。)よりも短いことが好ましい。
このように構成することで、載置部105に積載されたシートPとシートPとの間に、ブラシ状部材110のブラシ毛が入り込んで、ブラシ状部材110による負荷(給送圧を減ずる力である。)が発揮されやすくなる。
【0033】
以下、ブラシ状部材110(負荷調整手段)の機能について、さらに補足的に説明する。
本実施の形態において、負荷調整手段としてのブラシ状部材110による減圧(給送圧に対する減圧である。)は、シートP(載置部105)を持ち上げる加圧力(スプリング106のスプリング力である。)に比例するものであるが、シートPとブラシ状部材110との接触幅Xに対しても比例するものである。
図4(A)に示すように、シート積載高さH1が充分に高い場合、シートPとブラシ状部材110との接触幅X1は、ブラシ状部材110の幅にほぼ一致する。これに対して、
図4(B)に示すように、シート積載高さH2が徐々に低くなっていくと、シートPとブラシ状部材110との接触幅X2も徐々に低くなって、やがて
図4(C)に示すように接触幅が0になる。具体的に、
図6のグラフS1、S2に示すように、積載高さHが高いほど、ブラシ状部材110が設置されないとき(グラフQ1、Q2参照)からの給送圧(ピックアップ圧)の低下が大きく、積載高さHが低いときほど、給送圧(ピックアップ圧)の低下が小さく、さらに積載高さHが所定値Hx未満では給送圧(ピックアップ圧)の低下が発生しない(グラフS1、S2がグラフQ1、Q2に重なる)。
これにより、積載高さHが高いときであっても重送が発生せず、積載高さHが低いときであっても不給送が発生せずに、良好な給送性能が維持されることになる。
【0034】
<変形例>
図8に示すように、変形例における給送装置13は、載置部105が支軸105aを中心に回動して昇降するのではなくて、載置部105が載置面の略水平状態を維持しながら昇降するように構成されている。
そして、変形例においても、載置部105に積載された複数枚のシートP(シート束PT)の端面に当接可能なフェンス面101a、102aが形成されたフェンス部材としてのサイドフェンス101、102が設けられ、そのフェンス面101a、102aに負荷調整手段としてのブラシ状部材110が設けられている。
ここで、
図8(A)に示すブラシ状部材110は、上方における水平方向の幅Xが、下方における水平方向の幅に比べて、小さくなるように、略三角状に形成されている。
これに対して、
図8(B)に示すブラシ状部材110は、上方に位置するブラシ毛の剛度が、下方に位置するブラシ毛の剛度に比べて、小さくなるように形成されている。詳しくは、このようなブラシ毛の剛度の差異は、ブラシ毛の太さ、長さ、材質などを異ならせることによって生じさせることができる。具体的に、ブラシ毛の太さが上方から下方に向けて徐々に太くなるようにしたり、ブラシ毛の長さが上方から下方に向けて徐々に長くなるようにしたり、ブラシ毛の剛性が上方から下方に向けて徐々に大きくなるように上下方向の位置ごとにブラシ毛の材質を異なるものにしたり、することができる。
そして、これらのように構成された給送装置13であっても、少なくとも載置部105に積載された複数枚のシートPの積載高さHが所定値Hx以上であるときに、積載高さHの減少に応じて載置部105に積載された複数枚のシートPに対して下方に向けて与える負荷の大きさをブラシ状部材110(負荷調整手段)によって減ずることができる。
したがって、載置部105に積載された複数枚のシートPの積載高さHが変化しても、載置部105上の最上方のシートPのピックアップローラ51に対する給送圧(ピックアップ圧)が適正範囲から外れにくくなる。
なお、本変形例では、ブラシ状部材110が設置されるフェンス部材としてサイドフェンス101、102を用いたが、ブラシ状部材110が設置されるフェンス部材として基準フェンス107やエンドフェンス103を用いることもできる。
【0035】
以上説明したように、本実施の形態における給送装置13は、昇降可能に構成されて複数枚のシートPを積載可能な載置部105と、載置部105に積載された最上方のシートPを所定の給送方向に給送するピックアップローラ51(搬送部材)と、載置部105に積載された最上方のシートPがピックアップローラ51に圧接するように載置部105を付勢するスプリング106(弾性部材)と、が設けられている。そして、少なくとも載置部105に積載された複数枚のシートPの積載高さHが所定値Hx以上であるときに、積載高さHの減少に応じて載置部105に積載された複数枚のシートPに対して下方に向けて与える負荷の大きさを減ずるブラシ状部材110(負荷調整手段)が設けられている。
これにより、載置部105に積載された複数枚のシートPの積載高さHが変化しても、載置部105上の最上方のシートPのピックアップローラ51に対する給送圧(ピックアップ圧)を適正化することができる。
【0036】
なお、本実施の形態では、モノクロの画像形成装置1に設置される給送装置13に対して本発明を適用したが、カラーの画像形成装置に設置される給送装置に対しても当然に本発明を適用することができる。
また、本実施の形態では、電子写真方式の画像形成装置1に設置される給送装置13に対して本発明を適用したが、本発明の適用はこれに限定されることなく、その他の方式の画像形成装置(例えば、インクジェット方式の画像形成装置や、孔版印刷機などである。)に設置される給送装置に対しても本発明を適用することができる。
また、本実施の形態では、画像形成装置1の内部に設置された給送装置13に対して本発明を適用したが、画像形成装置1の外部に露呈するように設置された給送装置(例えば、手差し用の給送装置である。)や、原稿Dを給送(搬送)する給送装置としての原稿搬送部10(自動原稿搬送装置)に対しても本発明を適用することができる。
そして、それらのような場合であっても、本実施の形態のものと同様の効果を得ることができる。
【0037】
また、本実施の形態では、載置部105の全部を昇降可能(回動可能)に構成したが、載置部105の一部(給送方向下流側の部分である。)のみを昇降可能(回動可能)に構成することもできる。
また、本実施の形態では、搬送部材としてピックアップローラ51(ローラ部材)を用いたが、搬送部材はこれに限定されることなく、例えば、搬送部材として搬送ベルト(ベルト部材)を用いることもできる。
また、本実施の形態では、負荷調整手段としてブラシ状部材を用いたが、負荷調整手段はこれに限定されることなく、載置部105に積載されたシートPに対して下方に向けて負荷を与え得るものであれば良く、例えば、負荷調整手段として、摩擦係数の高いフィルム状のものや、表面にギザギザした凹凸を有する部材などを用いることもできる。また、負荷調整手段は、フェンス部材のフェンス面に一体的に形成したものであっても良い。
また、本実施の形態では、シート積載高さHが所定値Hx以上であるときに積載高さHの減少に応じて負荷調整手段による負荷を減じて、シート積載高さHが所定値Hx未満であるときに負荷調整手段による負荷がゼロになるように構成した。これに対して、シート積載高さHが所定値Hx未満であるときの給送性を充分に担保できるような場合には、積載高さHの減少に応じて負荷調整手段による負荷を減ずるように構成することもできる。
そして、それらのような場合であっても、本実施の形態のものと同様の効果を得ることができる。
【0038】
なお、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【0039】
なお、本願明細書等において、「シート」とは、通常の用紙(紙)の他に、コート紙、ラベル紙、OHPシート等のシート状の記録媒体のすべてを含むものと定義する。
【符号の説明】
【0040】
1 画像形成装置(画像形成装置本体)、
13 給送装置、
51 ピックアップローラ(搬送部材、ローラ部材)、
101、102 サイドフェンス(フェンス部材)、
101a、102a フェンス面、
103 エンドフェンス、
105 載置部(底板)、
106 スプリング(弾性部材)、
107 基準フェンス、
110 ブラシ状部材(負荷調整手段、負荷部材)、
P シート、 PT シート束。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0041】
【特許文献1】特許第2966163号公報
【特許文献2】特開2006-56653号公報