(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119447
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】飲料、呈味向上剤、及び呈味向上方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/38 20210101AFI20230821BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20230821BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20230821BHJP
A23L 33/105 20160101ALN20230821BHJP
A23L 33/16 20160101ALN20230821BHJP
A23L 33/10 20160101ALN20230821BHJP
【FI】
A23L2/38 B
A23L2/00 B
A23L2/52
A23L33/105
A23L33/16
A23L33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022359
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】591082421
【氏名又は名称】丸善製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】中村 冬馬
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 潤
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LE05
4B018MD03
4B018MD04
4B018MD06
4B018MD07
4B018MD61
4B018ME14
4B018MF01
4B117LC03
4B117LG18
4B117LK01
4B117LK06
4B117LK08
4B117LP01
4B117LP12
(57)【要約】
【課題】鉄、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される1種以上のミネラルを含有していながらも、これらのミネラルの呈味を向上させることができる飲料、飲料における鉄、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される1種以上のミネラルの呈味向上剤、及び飲料における鉄、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される1種以上のミネラルの呈味向上方法を提供する。
【解決手段】(A)ポリメトキシフラボン類を合計0.5~15mg/100mLと、
(B)鉄、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される1種以上のミネラルを合計0.05~100mg/100mLと、を含む飲料である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリメトキシフラボン類を合計0.5~15mg/100mLと、
(B)鉄、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される1種以上のミネラルを合計0.05~100mg/100mLと、を含むことを特徴とする飲料。
【請求項2】
容器詰め飲料である請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
鉄、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される1種以上のミネラルを合計0.05~100mg/100mL含有する飲料に用いられ、
(A)ポリメトキシフラボン類を含み、
前記(A)成分が、前記飲料に合計0.5~15mg/100mLの濃度で配合されることを特徴とする飲料における鉄、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される1種以上のミネラルの呈味向上剤。
【請求項4】
鉄、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される1種以上のミネラルを合計0.05~100mg/100mL含有する飲料に、ポリメトキシフラボン類を合計0.5~15mg/100mLの濃度で配合することを含むことを特徴とする飲料における鉄、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される1種以上のミネラルの呈味向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される1種以上のミネラルを含む飲料、飲料における鉄、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される1種以上のミネラルの呈味向上剤、及び飲料における鉄、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される1種以上のミネラルの呈味向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の健康志向の高まりから、鉄、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される1種以上のミネラルを配合した健康食品が数多く市販されている。しかしながら、このような健康食品は、鉄、カルシウム、又はマグネシウム特有の苦味等の香味を有しているため、飲食物として利用しにくいという問題がある。そこで、鉄、カルシウム、又はマグネシウム特有の香味を改善する技術として、レバウディオサイドAを用いる技術(例えば、特許文献1参照)や糖リン酸エステルを用いる技術(例えば、特許文献2参照)などが提案されている。
【0003】
しかしながら、上記提案の技術では、鉄、カルシウム、又はマグネシウム特有の香味を十分に満足するレベルで緩和できているとはいえず、更なる改良が求められている。
【0004】
ポリメトキシフラボン類は、筋肉疾患の改善作用などの様々な作用を有することが知られており、ブラックジンジャーなどの植物の抽出物中に含まれていることが知られている(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、前記ポリメトキシフラボン類が、鉄、カルシウム、又はマグネシウム特有の香味を緩和することができることは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07-031407号公報
【特許文献2】特開2003-079337号公報
【特許文献3】特開2016-193906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、鉄、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される1種以上のミネラルを含有していながらも、これらのミネラルの呈味を向上させることができる飲料、飲料における鉄、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される1種以上のミネラルの呈味向上剤、及び飲料における鉄、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される1種以上のミネラルの呈味向上方法を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、飲料における鉄、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される1種以上のミネラルの呈味向上に関して、ポリメトキシフラボン類に優れた効果があることを知見した。
【0008】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> (A)ポリメトキシフラボン類を合計0.5~15mg/100mLと、
(B)鉄、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される1種以上のミネラルを合計0.05~100mg/100mLと、を含むことを特徴とする飲料である。
<2> 容器詰め飲料である前記<1>に記載の飲料である。
<3> 鉄、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される1種以上のミネラルを合計0.05~100mg/100mL含有する飲料に用いられ、
(A)ポリメトキシフラボン類を含み、
前記(A)成分が、前記飲料に合計0.5~15mg/100mLの濃度で配合されることを特徴とする飲料における鉄、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される1種以上のミネラルの呈味向上剤である。
<4> 鉄、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される1種以上のミネラルを合計0.05~100mg/100mL含有する飲料に、ポリメトキシフラボン類を合計0.5~15mg/100mLの濃度で配合することを含むことを特徴とする飲料における鉄、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される1種以上のミネラルの呈味向上方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、鉄、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される1種以上のミネラルを含有していながらも、これらのミネラルの呈味を向上させることができる飲料、飲料における鉄、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される1種以上のミネラルの呈味向上剤、及び飲料における鉄、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される1種以上のミネラルの呈味向上方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(飲料)
本発明の飲料は、(A)ポリメトキシフラボン類(以下、「(A)成分」と称することがある。)と、(B)鉄、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される1種以上のミネラル(以下、「(B)成分」と称することがある。)とを少なくとも含み、必要に応じてさらにその他の成分を含む。
【0011】
<(A)成分>
前記(A)成分は、ポリメトキシフラボン類である。前記(A)成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0012】
-ポリメトキシフラボン類-
前記ポリメトキシフラボン類は、下記構造式(A)で表される化合物である。前記ポリメトキシフラボン類は、塩の態様であってもよい。
【化1】
前記構造式(A)中、R
1~R
6はそれぞれ水素(-H)、ヒドロキシル基(-OH)、及びメトキシ基(-OCH
3)のいずれかであり、かつR
1~R
6は2つ以上のメトキシ基を含む。
【0013】
前記ポリメトキシフラボン類は、公知の化合物であり、市販品を使用してもよいし、公知の方法により製造したものを使用してもよい。
また、前記ポリメトキシフラボン類は、植物抽出物の態様のものを使用してもよい。
【0014】
前記ポリメトキシフラボン類は、例えば、植物から抽出することができる。前記植物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ブラックジンジャー(黒ショウガ)(学名:Kaempferia parviflora)が好ましい。前記ブラックジンジャーから抽出することができるポリメトキシフラボン類としては、5,7,3’,4’-テトラメトキシフラボン、3,5,7,3’,4’-ペンタメトキシフラボン、5,7-ジメトキシフラボン、5,7,4’-トリメトキシフラボン、3,5,7-トリメトキシフラボン、及び3,5,7,4’-テトラメトキシフラボンが挙げられる。これらの中でも、5,7-ジメトキシフラボン、3,5,7,3’,4’-ペンタメトキシフラボンを含むことが好ましい。
【0015】
前記ブラックジンジャーから前記ポリメトキシフラボン類を抽出する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、特開2016-193906号公報に記載の方法などが挙げられる。
【0016】
前記ブラックジンジャー抽出物におけるポリメトキシフラボン類の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.1~20質量%が挙げられる。
【0017】
前記(A)成分の前記飲料における合計含有量としては、0.5~15mg/100mLであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記(A)成分として、2種以上のポリメトキシフラボンを用いる場合の各ポリメトキシフラボンの使用量の比(質量比)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0018】
飲料における前記(A)成分の含有量の測定方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、下記条件で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定することができる。
-HPLC条件-
・ カラム : Ascentis Express C18(SUPELCO)
・ 移動相 : A)水:トリフルオロ酢酸=1000:1
B)メタノール
0-15min(40%A)、
15.01-25min(100%B)、
25.01-35min(40%A)
・ カラム温度 : 40℃
・ 注入量 : 20μL
・ 流速 : 0.6mL/min
・ 検出条件 : UV265nm
【0019】
<(B)成分>
前記(B)成分は、鉄、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される1種以上のミネラルである。前記(B)成分は、上記したミネラルのうち1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
-鉄-
前記鉄は、公知の化合物であり、市販品を使用してもよいし、公知の方法により製造したものを使用してもよい。
【0021】
本発明において用いられる鉄が塩の形態にある場合は、これを遊離体(フリー体)の量に換算した上で飲料中の鉄の含有量を算出することができる。また、本発明において飲料中の鉄の含有量は、ICP発光分光分析装置(ICP-AES)を用いて公知の方法により測定することができる。
【0022】
鉄の供給源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硫酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、ビス-グリシン酸塩、アミノ酸キレート、炭酸塩、酸化物、水酸化物、塩化物、リン酸塩、ピロリン酸塩、酢酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、ヘム鉄などが挙げられる。これらの中でも、硫酸鉄、クエン酸鉄、ピロリン酸鉄、フマル酸鉄、ヘム鉄が好ましい。
また、天然物由来の鉄を供給源とすることもできる。具体的にはミネラルウォーターが挙げられる。
なお、前記鉄は、水和物であってもよい。
【0023】
-カルシウム-
前記カルシウムは、公知の化合物であり、市販品を使用してもよいし、公知の方法により製造したものを使用してもよい。
【0024】
本発明において用いられるカルシウムが塩の形態にある場合は、これを遊離体(フリー体)の量に換算した上で飲料中のカルシウムの含有量を算出することができる。また、本発明において飲料中のカルシウムの含有量は、ICP発光分光分析装置(ICP-AES)を用いて公知の方法により測定することができる。
【0025】
カルシウムの供給源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硫酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、ビス-グリシン酸塩、アミノ酸キレート、炭酸塩、酸化物、水酸化物、塩化物、リン酸塩、ピロリン酸塩、酢酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩などが挙げられる。これらの中でも、硫酸カルシウム、クエン酸リンゴ酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、乳酸グルコン酸カルシウムが好ましい。
また、天然物由来のカルシウムを供給源とすることもできる。具体的にはミネラルウォーターが挙げられる。
なお、前記カルシウムは、水和物であってもよい。
【0026】
-マグネシウム-
前記マグネシウムは、公知の化合物であり、市販品を使用してもよいし、公知の方法により製造したものを使用してもよい。
【0027】
本発明において用いられるマグネシウムが塩の形態にある場合は、これを遊離体(フリー体)の量に換算した上で飲料中のマグネシウムの含有量を算出することができる。また、本発明において飲料中のマグネシウムの含有量は、ICP発光分光分析装置(ICP-AES)を用いて公知の方法により測定することができる。
【0028】
前記マグネシウムの供給源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硫酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、ビス-グリシン酸塩、アミノ酸キレート、炭酸塩、酸化物、水酸化物、塩化物、リン酸塩、ピロリン酸塩、酢酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩などが挙げられる。これらの中でも、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、グルコン酸マグネシウムが好ましい。
また、天然物由来のマグネシウムを供給源とすることもできる。具体的にはミネラルウォーターが挙げられる。
なお、前記マグネシウムは、水和物であってもよい。
【0029】
前記(B)成分の前記飲料における合計含有量としては、0.05~100mg/100mLであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記鉄の前記飲料における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.05~10mg/100mLが好ましい。
前記カルシウムの前記飲料における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1~100mg/100mLが好ましい。
前記マグネシウムの前記飲料における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1~50mg/100mLが好ましい。
前記(B)成分として、2種以上のミネラルを用いる場合の各ミネラルの使用量の比(質量比)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0030】
<その他の成分>
前記飲料におけるその他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、飲料に用いることができる成分を目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アミノ酸、甘味料、酸味料、香料、ビタミン、色素類、酸化防止剤、乳化剤、保存料、エキス類、品質安定剤、食物繊維などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記飲料におけるその他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0031】
<飲料>
前記飲料の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、清涼飲料、栄養飲料、機能性飲料、フレーバードウォーター(ニアウォーター)系飲料などが挙げられる。前記飲料は、炭酸ガスを含む飲料であってもよいし、炭酸ガスを含まない飲料であってもよい。また、飲料には、ゼリー飲料も含まれる。前記飲料は、無色であってもよいし、有色であってもよく、また、透明であってもよいし、透明でなくてもよい。
前記炭酸ガスを含まない飲料としては、例えば、果汁飲料、コーヒー飲料、乳飲料、スポーツドリンク、茶飲料などが挙げられる。
前記炭酸ガスを含む飲料としては、例えば、コーラ、ダイエットコーラ、ジンジャーエール、サイダー、果汁風味が付与された炭酸水などが挙げられる。
これらの中でも、スポーツドリンク、乳飲料が好適に挙げられる。
【0032】
前記飲料は、前記(B)成分の苦味等の香味が低減された飲みやすい飲料である。したがって、前記(B)成分の生理作用を期待して継続摂取する飲料として、常温で長期保存でき、即時飲用可能な形態(RTD:Ready To Drink)とするのが、ユーザーの観点の簡便性から優れている。
【0033】
前記飲料は、加熱殺菌処理を経て得られる容器詰め飲料であることが好ましい。
前記容器の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)製容器、ポリエチレン製容器、ポリプロピレン製容器等のプラスチック製容器;ガラス製容器;金属製容器;紙製容器などが挙げられる。
前記容器の容量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、100mL~2Lなどが挙げられる。
【0034】
本発明の飲料の製造方法としては、特に制限はなく、公知の飲料の製造方法を適宜選択することができ、例えば、前記(A)成分、前記(B)成分、及び必要に応じて前記その他の成分を飲料の製造過程で配合し、製造する方法が挙げられる。また、本発明の飲料は、公知の方法により製造した飲料に、前記(A)成分、前記(B)成分、及び必要に応じて前記その他の成分を添加して製造することもできる。
前記各種成分の配合順序としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、本発明の飲料の製造においては、前記各種成分の含有量を調整する工程を含んでもよい。
また、本発明の飲料は、必要に応じて殺菌等の工程を経て、容器詰め飲料とすることができる。例えば、飲料を容器に充填した後に加熱殺菌等を行う方法や、飲料を殺菌してから無菌環境下で容器に充填する方法により、殺菌された容器詰め飲料を製造することができる。前記加熱殺菌処理は、食品衛生法に定められた殺菌条件で行うことができる。殺菌機としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、チューブ式殺菌機、プレート式殺菌機、FP(Flash Pastrization)プレート式殺菌機、UHT(Ultra High Temperature)殺菌装置などを用いることができる。加熱温度や処理時間としては、特に制限はなく、飲料の種類によって適宜選択して行うことができ、通常、60~150℃で1秒間~30分間加熱する。
【0035】
本発明の飲料は、鉄、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される1種以上のミネラルを含有していながらも、これらのミネラル独特の呈味である苦味などが緩和(抑制と称することもある。)されており、容易に摂取することができる。
【0036】
(呈味向上剤)
本発明の呈味向上剤は、鉄、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される1種以上のミネラルを合計0.05~100mg/100mL含有する飲料に用いられるものであって、(A)ポリメトキシフラボン類を少なくとも含み、必要に応じてさらにその他の成分を含む。
本発明の呈味向上剤は、飲料における鉄、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される1種以上のミネラルの呈味を向上させるものである。本明細書において、呈味の向上とは、鉄、カルシウム、及びマグネシウムが有する独特の呈味である香味や苦味を緩和することをいう。例えば、前記(A)成分を含まない飲料と比較して、香味や苦味が緩和された場合に、呈味が向上したということができる。
【0037】
<(A)成分>
前記(A)成分は、ポリメトキシフラボン類である。前記(A)成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
-ポリメトキシフラボン類-
前記ポリメトキシフラボン類は、上記した(飲料)の項目に記載のポリメトキシフラボン類と同様である。
【0039】
前記ポリメトキシフラボン類の前記呈味向上剤における含有量としては、特に制限はなく、使用量などに応じて適宜選択することができる。
【0040】
<その他の成分>
前記呈味向上剤におけるその他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、賦形剤、防湿剤、防腐剤、強化剤、増粘剤、乳化剤、酸化防止剤、甘味料、酸味料、調味料、水、飲食品に用いられる成分などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記呈味向上剤におけるその他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0041】
<態様>
前記呈味向上剤は、前記(A)成分と、必要に応じて前記その他の成分とを同一の包材に含む態様であってもよいし、前記各成分を別々の包材に入れ、使用時に併用する態様であってもよい。
前記呈味向上剤の形態としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、粉末、顆粒等の固体、水などの溶媒に溶解させた液体などが挙げられる。
【0042】
<使用>
前記呈味向上剤の使用方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、製造した飲料に添加する方法、飲料の製造過程で添加する方法などが挙げられる。これらは、1種単独の方法で行ってもよいし、複数の方法を組み合わせて行ってもよい。
【0043】
前記呈味向上剤における各種成分の飲料への配合順序としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、前記呈味向上剤における各種成分は、1回でまとめて添加してもよいし、複数回に分けて添加してもよい。
【0044】
前記呈味向上剤の使用量としては、特に制限はなく、前記(A)成分や、必要に応じて用いる前記その他の成分の使用量などを考慮して、適宜選択することができる。
【0045】
前記(A)成分の使用量としては、前記飲料に合計0.5~15mg/100mLの濃度で配合される限り、特に制限はなく、対象とする飲料の種類に応じて適宜選択することができる。
前記(A)成分として、2種以上のポリメトキシフラボンを用いる場合の各ポリメトキシフラボンの使用量の比(質量比)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0046】
前記呈味向上剤は、単独で使用してもよいし、他の呈味向上剤と組み合わせて使用してもよい。
【0047】
<飲料>
前記飲料としては、鉄、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される1種以上のミネラルを合計0.05~100mg/100mL含有する飲料である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した(飲料)の項目に記載のものと同様のものなどが挙げられる。
【0048】
(呈味向上方法)
本発明の呈味向上方法は、配合工程を少なくとも含み、必要に応じてさらにその他の工程を含む。
本発明の呈味向上方法は、飲料における鉄、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される1種以上のミネラルの呈味を向上させる方法である。
【0049】
<配合工程>
前記配合工程は、鉄、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される1種以上のミネラルを合計0.05~100mg/100mL含有する飲料に、ポリメトキシフラボン類を合計0.5~15mg/100mLの濃度で配合する工程である。
【0050】
-ポリメトキシフラボン類-
前記ポリメトキシフラボン類は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
前記ポリメトキシフラボン類は、上記した(飲料)の項目に記載のポリメトキシフラボン類と同様である。
【0052】
前記飲料に、前記ポリメトキシフラボン類を配合する方法としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、上記した本発明の呈味向上剤の<使用>の項目に記載した方法と同様にして行うことができ、使用量も同様とすることができる。
【0053】
<飲料>
前記飲料としては、鉄、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される1種以上のミネラルを合計0.05~100mg/100mL含有する飲料である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した(飲料)の項目に記載のものと同様のものなどが挙げられる。
【0054】
本発明の呈味向上剤及び呈味向上方法によれば、鉄、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される1種以上のミネラルを合計0.05~100mg/100mL含有する飲料における鉄、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される1種以上のミネラルの呈味を向上させることができる。
【実施例0055】
以下、試験例を説明するが、本発明は、これらの試験例に何ら限定されるものではない。
【0056】
(試験例1:ポリメトキシフラボン類による鉄の呈味改善)
水に、下記の表1-1~1-4に記載の配合量となるように、クエン酸鉄(林純薬工業株式会社製)と、ブラックジンジャー抽出物(丸善製薬株式会社製、ブラックジンジャー由来ポリメトキシフラボンである、5,7,3’,4’-テトラメトキシフラボン、3,5,7,3’,4’-ペンタメトキシフラボン、5,7-ジメトキシフラボン、5,7,4’-トリメトキシフラボン、3,5,7-トリメトキシフラボン、及び3,5,7,4’-テトラメトキシフラボンを合計10質量%含有)とを溶解させ、飲料とした。なお、下記の表1-1~1-4に記載の「Fe」の欄は、クエン酸鉄の量ではなく、鉄の量を表す。
【0057】
<評価>
調製した飲料について、香味の官能評価を行った。香味については鉄特有の香味の観点から主に評価した。具体的には、十分に訓練を受けた6名の専門パネリストにより、下記の評価基準で評価した。なお、評価温度は室温とした。
-評価基準-
5点 : 鉄特有の香味が大きく緩和されている。
4点 : 鉄特有の香味が緩和されている。
3点 : 鉄特有の香味がやや緩和されている。
2点 : 鉄特有の香味があり、後味に残る。
1点 : 鉄特有の香味が強く、後味に大きく残る。
【0058】
結果を下記の表1-1~1-4に示す。なお、評価の点数は、6名の専門パネリストによる評価の平均点である。
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
表1-1~1-4に示したように、鉄の濃度が0.05~10mg/100mLの飲料において、ポリメトキシフラボン類を0.5~15mg/100mL配合することで、鉄独特の香味を抑制することが分かった。
【0064】
(試験例2:ポリメトキシフラボン類によるカルシウムの呈味改善)
水に、下記の表2-1~2-4に記載の配合量となるように、乳酸カルシウム5水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)と、ブラックジンジャー抽出物(丸善製薬株式会社製、ブラックジンジャー由来ポリメトキシフラボンである、5,7,3’,4’-テトラメトキシフラボン、3,5,7,3’,4’-ペンタメトキシフラボン、5,7-ジメトキシフラボン、5,7,4’-トリメトキシフラボン、3,5,7-トリメトキシフラボン、及び3,5,7,4’-テトラメトキシフラボンを合計10質量%含有)とを溶解させ、飲料とした。なお、下記の表2-1~2-4に記載の「Ca」の欄は、乳酸カルシウム5水和物の量ではなく、カルシウムの量を表す。
【0065】
<評価>
調製した飲料について、香味の官能評価を行った。香味についてはカルシウム特有の苦味の観点から主に評価した。具体的には、十分に訓練を受けた6名の専門パネリストにより、下記の評価基準で評価した。なお、評価温度は室温とした。
-評価基準-
5点 : カルシウム特有の苦味が大きく緩和されている。
4点 : カルシウム特有の苦味が緩和されている。
3点 : カルシウム特有の苦味がやや緩和されている。
2点 : カルシウム特有の苦味があり、後味に残る。
1点 : カルシウム特有の苦味が強く、後味に大きく残る。
【0066】
結果を下記の表2-1~2-4に示す。なお、評価の点数は、6名の専門パネリストによる評価の平均点である。
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
表2-1~2-4に示したように、カルシウムの濃度が0.1~100mg/100mLの飲料において、ポリメトキシフラボン類を0.5~15mg/100mL配合することで、カルシウム特有の苦味を抑制することが分かった。
【0072】
(試験例3:ポリメトキシフラボン類によるマグネシウムの呈味改善)
水に、下記の表3-1~3-4に記載の配合量となるように、塩化マグネシウム6水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)と、ブラックジンジャー抽出物(丸善製薬株式会社製、ブラックジンジャー由来ポリメトキシフラボンである、5,7,3’,4’-テトラメトキシフラボン、3,5,7,3’,4’-ペンタメトキシフラボン、5,7-ジメトキシフラボン、5,7,4’-トリメトキシフラボン、3,5,7-トリメトキシフラボン、及び3,5,7,4’-テトラメトキシフラボンを合計10質量%含有)とを溶解させ、飲料とした。なお、下記の表3-1~3-4に記載の「Mg」の欄は、塩化マグネシウム6水和物の量ではなく、マグネシウムの量を表す。
【0073】
<評価>
調製した飲料について、香味の官能評価を行った。香味についてはマグネシウム特有の苦味の観点から主に評価した。具体的には、十分に訓練を受けた6名の専門パネリストにより、下記の評価基準で評価した。なお、評価温度は室温とした。
-評価基準-
5点 : マグネシウム特有の苦味が大きく緩和されている。
4点 : マグネシウム特有の苦味が緩和されている。
3点 : マグネシウム特有の苦味がやや緩和されている。
2点 : マグネシウム特有の苦味があり、後味に残る。
1点 : マグネシウム特有の苦味が強く、後味に大きく残る。
【0074】
結果を下記の表3-1~3-4に示す。なお、評価の点数は、6名の専門パネリストによる評価の平均点である。
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
表3-1~3-4に示したように、マグネシウムの濃度が0.1~50mg/100mLの飲料において、ポリメトキシフラボン類を0.5~15mg/100mL配合することで、マグネシウム特有の苦味を抑制することが分かった。