(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119449
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】煙灰除去装置
(51)【国際特許分類】
F28G 7/00 20060101AFI20230821BHJP
F28D 7/16 20060101ALI20230821BHJP
F23J 3/00 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
F28G7/00 Z
F28D7/16 Z
F23J3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022362
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【弁理士】
【氏名又は名称】辻川 典範
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】真壁 祐太
【テーマコード(参考)】
3K261
3L103
【Fターム(参考)】
3K261GA06
3K261GA17
3L103AA27
3L103BB05
3L103CC02
3L103CC27
3L103DD03
3L103DD61
(57)【要約】
【課題】水管群に対してより強固に接合することができるうえ、該接合部分の点検や補修を容易に行なうことが可能な煙灰除去装置を提供する。
【解決手段】 本発明の煙灰除去装置は、一平面上に平行に配設された複数本の水管群5に対して該一平面の一方の面側から溶接により取り付けられる四角筒状体11からなる第1基台部10と、第1基台部10において該溶接側とは反対側に着脱可能に結合された第2基台部20と、第2基台部20に取り付けられた被打撃体30と、被打撃体30を該一平面に対して垂直な方向から打撃する打撃機構40とを備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一平面上に平行に配設された複数本の水管群に対して前記一平面の一方の面側から溶接により取り付けられる四角筒状体からなる第1基台部と、前記第1基台部において該溶接側とは反対側に着脱可能に結合された第2基台部と、前記第2基台部に取り付けられた被打撃体と、前記被打撃体を前記一平面に対して垂直な方向から打撃する打撃機構とを備えた煙灰除去装置。
【請求項2】
前記第1基台部及び前記第2基台部は、互いに対向する第1フランジ及び第2フランジをそれぞれ有しており、これら第1フランジ及び第2フランジ同士を締結するボルト・ナットにより前記着脱可能に結合されている、請求項1に記載の煙灰除去装置。
【請求項3】
前記四角筒状体は、前記複数本の水管群を横断した状態で該複数本の水管に溶接される1対の互いに対向する櫛板と、これら1対の櫛板の端部同士を接続すると共に、前記複数本の水管群のうちの両側に溶接される1対の互いに対向する矩形板とから構成される、請求項1又は2に記載の煙灰除去装置。
【請求項4】
前記第1基台部は、前記複数本の水管群に溶接により取り付けられたときに前記四角筒状体によって囲まれる領域内に位置する水管に対して、該水管の延在方向に沿って溶接されるリブが前記矩形板に平行に設けられている、請求項3に記載の煙灰除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙灰除去装置に関し、特に廃熱ボイラーの水管群を打撃することでそれらの表面に付着したダストを除去する煙灰除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
銅精錬プラントの自熔炉から排出される亜硫酸ガスを含んだ排ガスは、1300℃程度の高温状態にあるので、硫酸プラントで処理する前に廃熱ボイラーに導入して廃熱回収を行っている。この廃熱ボイラーは、一般的には輻射部とその下流側の対流部とで構成されており、それぞれの壁部は、複数本の水管を平行に配列すると共に隣接する水管同士をヒレ状の板材を介して接続させてパネル状に一体化したいわゆる水管壁によって構成されている。これら複数本の水管の各々はその端部においてU字管によって隣接する直管に連通しており、水管の内部をボイラー水が一方向に循環できるようになっている。かかる構成により、輻射部の入口から導入された排ガスはこれら水管群内を流れるボイラー水と熱交換することによって、廃熱回収が行なわれる。
【0003】
しかしながら、上記の銅製錬の自熔炉では、原料の硫化精鉱のほか、副原料としての上記廃熱ボイラーの後段の集塵機で回収した煙灰、フラックスなどのカラミ(スラグ)調整剤、補助燃料等が空気又は酸素富化空気と共に自熔炉の反応塔内に吹き込まれて燃焼されるため、該自熔炉から排出される排ガスは煙灰(ダスト)を含んでいる。このように、煙灰を含んだ排ガスが廃熱ボイラーに導入されると、上記水管壁のうち廃熱ボイラーの内側の面には煙灰が付着する。この煙灰には、原料の硫化精鉱に由来する硫黄分等の腐食性物質が含まれているため、水管壁に煙灰が付着したまま放置すると、この付着部分が腐食することがあった。そこで、例えば特許文献1に示すように、廃熱ボイラーには上記の水管壁に付着した煙灰を振動により振り落とす煙灰除去装置が一般的に設けられている。これにより、廃熱ボイラーの外側から定期的に水管壁を打撃して振動させることができるので、該水管壁に付着した煙灰を効果的に振り落とすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような煙灰除去装置を用いて廃熱ボイラーの外側から水管壁を打撃により振動させる場合は、一平面上に平行に配設された複数本の水管に対して、該一平面の一方の面側から該煙灰除去装置を溶接により取り付ける必要がある。そのため、打撃を繰り返すうちにこの溶接部分に割れが生じることがあった。このように溶接部分に割れが生じてもそのまま使用し続けると、最終的に水管から煙灰除去装置が離脱してしまい、水管群に付着した煙灰を除去できなくなるばかりか、煙灰除去装置が落下して下方の機器を破損させるおそれがあった。本発明はかかる従来の煙灰除去装置が抱える問題点に鑑みてなされたものであり、水管群に対してより強固に接合することができるうえ、該接合部分の点検や補修を容易に行なうことが可能な煙灰除去装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る煙灰除去装置は、一平面上に平行に配設された複数本の水管群に対して前記一平面の一方の面側から溶接により取り付けられる四角筒状体からなる第1基台部と、前記第1基台部において該溶接側とは反対側に着脱可能に結合された第2基台部と、前記第2基台部に取り付けられた被打撃体と、前記被打撃体を前記一平面に対して垂直な方向から打撃する打撃機構とを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、振動対象となる水管群に対してより強固に接合することができるうえ、この接合部分の点検や補修を容易に行なうことができるので、その工業的価値は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の煙灰除去装置が適用される廃熱ボイラーの部分切取斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態の煙灰除去装置の側面図である。
【
図4】
図2の煙灰除去装置の第2基台部を取り外してその取り外した部分から第1基台部を見たときの正面図である。
【
図7】
図2の煙灰除去装置を構成する第1基台部の代替例の正面図である。
【
図10】
図2の煙灰除去装置が有する被打撃体の側面図である。
【
図11】本発明の比較例の煙灰除去装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.銅製錬プラントの廃熱ボイラー
先ず、本発明の実施形態の煙灰除去装置が好適に用いられる銅製錬プラントの廃熱ボイラーについて説明する。乾式製錬により原料の硫化鉱から高品位の銅を製造する銅製錬プラントでは、一般的に自熔炉、転炉、及び精製炉により銅品位30%程度の硫化鉱からなる銅精鉱を処理して銅品位を99%程度まで高めた後、電解精製により銅品位99.99%程度の電気銅を製造している。これらのうち、自熔炉においては、その反応塔(リアクションシャフト)から装入される硫化鉱は、自身の酸化反応熱で熔融すると同時に酸化される。これにより、銅品位60~65%程度のマットと、酸化鉄や珪酸などからなるスラグとが生成され、これらは自熔炉のセットラ内においてそれぞれ下層側及び上層側に分離された後、別々に抜き出されて下流側で更に処理される。この自熔炉における硫化鉱の酸化では、亜硫酸ガス(SO2)を高濃度で含む高温の排ガスが自熔炉のアップテイクから排出されるため、この排ガスは廃熱ボイラーに導入されてボイラー水との熱交換により廃熱回収された後、硫酸の原料ガスとして硫酸製造設備に送られる。
【0010】
上記の廃熱ボイラーは、例えば
図1に示すような輻射部1とその下流側の対流部2とから構成され、自熔炉から排出された上記排ガスは、入口側ダクト3を介して紙面左側の白矢印で示すように輻射部1の胴体部の側面に設けられた排ガス入口から導入され、輻射部1及び対流部2の各々に設けられている水管群内を流れるボイラー水と熱交換することで排ガスの熱エネルギーが回収される。その後、対流部2の胴体部の側面に設けられた排ガス出口を出て紙面右側の白矢印で示すように出口側ダクト4を介して硫酸製造設備に送られる。
【0011】
上記の輻射部1及び対流部2の胴体部の各々は、略直方体形状の上部と、該上部の下側に位置し、対向する壁面同士の間隔が下方に向かうに従って狭くなるテーパー構造の下部とから構成されており、上記の排ガスに伴って上記の廃熱ボイラー内に入った煙灰は、これら輻射部1及び対流部2内の空間を排ガスが通過する間に重力により落下し、上記のテーパー構造の下部に集められる。この下部に集められた煙灰は、図示しないチェーンコンベア等の煙灰排出装置によって胴体部から排出される。
【0012】
上記の輻射部1及び対流部の各々の胴体部に設けられている水管群5は、上記排ガスの熱エネルギーを効率よく回収できるように配設されている。これは、例えば輻射部1及び対流部2の胴体部の側壁をいわゆる水管壁で形成することで実現できる。この水管壁は、一平面上に平行に配設された複数本の水管と、隣接する水管同士を接合するフィンなどの板状の接続部とをパネル状に組み立てた構造体である。なお、上記の水管壁では、U字管で隣接する上端部同士及び下端部同士を交互に接合することで水管を蛇行状に張り巡らすことができる。また、対流部2には胴体部内側の空間部分にも水管群が吊り下げられている。
【0013】
なお、水管群5を配設する構造は上記の水管壁に限定されるものではなく、水管群をパネル状に組み立てた構造体を、輻射部1や対流部2を構成する壁部の内側に平行に設けてもよい。具体的には、水管群をパネル状に組み立てた構造体を、該胴体部を構成する鉄皮の内張り材であるキャスタブルの内壁面に、該パネル状の構造体の面が略平行になるように取り付けてもよい。いずれの場合においても、廃熱ボイラー内に配設された水管群5の外周部には、排ガス中に含まれる煙灰が付着するため、この付着した煙灰を定期的に除去することが必要になる。このため、廃熱ボイラーには水管群5を定期的に振動させることで、そこに付着した煙灰を除去する煙灰除去装置6が設けられている。なお、廃熱ボイラーの胴体部の外壁側には、この煙灰除去装置6が設けられている領域を除いて一般的に保温材7が設けられている。次に、上記の廃熱ボイラーに適用される本発明の実施形態の煙灰除去装置6について、ボイラー水の流れるパネル状の水管群5が水管壁である場合を例に挙げて説明する。
【0014】
2.煙灰除去装置
本発明の実施形態の煙灰除去装置6は、
図2及び3に示すように、前述した輻射部1や対流部2の胴体部を構成する水管壁としての一平面上に平行に配設された複数本の水管群5に対して、該胴体部の外側から溶接により取り付けられた四角筒状体からなる第1基台部10と、第1基台部10において水管群5との溶接側とは反対側に着脱可能に結合された第2基台部20と、第2基台部20に取り付けられた被打撃体30と、被打撃体30を上記一平面に対して垂直な方向から打撃する打撃機構40とを備えている。
【0015】
このように、本発明の実施形態の煙灰除去装置6は、第2基台部20が第1基台部10に着脱可能に結合されているので、煙灰除去装置6を廃熱ボイラーに取り付ける際、
図4に示すように、第2基台部20が取り外された第1基台部10だけの状態で水管群5に接合することができる。これにより、第1基台部10において水管群5との接合側とは反対側の端部を開放した状態で水管群5の接合作業を行なうことができる。よって、水管群5に対して第1基台部10を内側と外側の両側から隅肉溶接することができるので、より強固に接合することが可能になる。更に、この第1基台部10と水管群5との接合部の点検作業を行なうときは、第2基台部20を取り外すことで第1基台部10の内側の隅肉溶接も目視で点検することができるうえ、接合部に補修が必要になった場合は、第1基台部10の内側も容易に補修することができる。
【0016】
また、本発明の実施形態の煙灰除去装置6は、全体的に廃熱ボイラーの胴体部の外側に設けられているため、可動部分を有する被打撃体30や打撃機構40が煙灰によって作動不良になったり、これら被打撃体30及び打撃機構40を含む煙灰除去装置6の構成要素が排ガスによって熱ダメージを受けたりするのを防ぐことができる。以下、かかる本発明の実施形態の煙灰除去装置6を構成する各構成要素について具体的に説明する。
【0017】
(1)第1基台部
第1基台部10は、両端が開放された四角筒状体11と、第2基台部20との着脱可能な接続部となる角形フランジ形状の第1連結手段12とから構成される。前者の四角筒状体11は、水管群5の延在方向に沿って配置される1対の互いに対向する略矩形板状の縦壁部11aと、これら1対の縦壁部11aの上端部同士及び下端部同士をそれぞれ接合する1対の互いに対向する板状の横壁部11bとからなる。後者の1対の横壁部11bは、廃熱ボイラーの胴体部の外側において、該胴体部の水管壁を構成する一平面上に平行に並ぶ複数本の水管群5を横断するように設けられる。そのため、この1対の横壁部11bは、これら複数本の水管群5及びそれらの隣接するもの同士を接合するフィンなどの板状の接続部5aにより形成される該横断方向の凹凸形状に嵌め込むことができるように、その一側縁部が切り欠かれて全体的に櫛板状になっている。
【0018】
具体的に説明すると、四角筒状体11を構成する横壁部11bは、水管群5に対向する側の一側縁部側において、複数本の水管群5が嵌め込まれるように各水管の外径に略一致する半径を有する円弧状又はアーチ状に切り欠かれている。なお、
図2に示す水管壁は、廃熱ボイラーの内側の面が平坦になるように、各水管の外周部のうち廃熱ボイラーの最も内側に位置する部分にその接線方向に延在する接続部5aが取り付けられて断面略Ω形状になっているが、隣接する水管同士を接続する接続部の形状はこれに限定されるものではなく、隣接する水管の中心軸同士を結ぶ平面上に板状の接続部が取り付けられてもよい。
【0019】
図3の横壁部11bにおいては、両端部の2個の扇形の切り欠きと、それらの間に位置する4個のアーチ状の切り欠きとが等ピッチで設けられた例が示されており、これら合計6個の切り欠きのうち、両端部を除く4個の切り欠き部分にそれぞれ4本の水管がそれらの延在方向に垂直な断面形状のほぼ全体が嵌め込まれ、該両端部の2個の切り欠き部分にはそれぞれ2本の水管の延在方向に垂直な断面形状の約半分が嵌め込まれるようなっている。そして、前述したように、煙灰除去装置6を水管群5に取り付ける際、第2基台部20のない第1基台部10だけの状態で溶接することができるので、
図4のV-V線断面図である
図5に示すように、1対の横壁部11bの各々において、その両側から水管群5の外周面及び板状の接続部5aに対して隅肉溶接することが可能になる。同様に、
図4のVI-VI線断面図である
図6に示すように、1対の縦壁部11aの各々においても、その両側から1本の水管の外周面に対して隅肉溶接することが可能になる。
【0020】
水管群5に対して第1基台部10をより強固に取り付けるため、
図7及び8に示すように、第1基台部10にはその四角筒状体11によって囲まれる領域内に位置する1又は複数本の水管の各々に溶接されるリブ11cが設けられることが好ましい。具体的には、各リブ11cは水管群5の延在方向に沿って設けられた略矩形の板状体からなり、その面が四角筒状体11の縦壁部11aの面と平行であり、且つ水管に対向する側の一側縁部が端から端まで水管の外周面に当接した状態で該水管に溶接されるように各リブ11cの両端部がそれぞれ横壁部11bの内面側に溶接されている。これにより、後述する打撃機構40で被打撃体30を打撃することで発生させた振動を、水管群5により効率的に伝達することが可能になる。
【0021】
上記の水管の外周面に対する各リブ11cの一側縁部の当接は、該水管を含む水管群5を廃熱ボイラーの胴体部の外側から真正面に見たときに該外周部のうち最も突出している部分に当接させることが好ましい。これにより、
図9に示すように、水管に対してその法線方向で且つ水管群5が並ぶ一平面に垂直な方向にリブ11cの面をほぼ一致させることができるので、リブ11cを水管の外周面に溶接する際に、該リブ11cの両面側に容易に隅肉溶接することができる。その結果、リブ11cと水管とをより強固に接合することができるうえ、例えば定期修理において煙灰除去装置6を点検する際、第2基台部20を第1基台部10から取り外すことにより、廃熱ボイラーの外側から第1基台部10の四角筒状体11の内側を目視にて覗くことができるので、水管とリブ11cとの接合状態を容易に確認することができる。更に、この点検の結果、溶接部に割れ等の不具合が生じて接合が不充分である場合であっても容易に補修することが可能になる。
【0022】
上記の四角筒状体11のうち、水管群5に接合する側の端部とは反対側の開放端部の周縁部に前述した角形フランジ形状の第1連結手段12が周設されている。この第1連結手段12には、その厚み方向に貫通するボルト孔12aが周方向に全周に亘って設けられており、ここに挿通させるボルトによって後述する第2基台部20とフランジ結合される。
【0023】
(2)第2基台部
第2基台部20は、被打撃体30を立設させる支持台21と、前述した第1基台部10の第1連結手段12に着脱可能に接続される角形フランジ形状の第2連結手段22とから構成される。これらのうち、前者の支持台21は、フランジと称する同形状の互いに対向する1対の矩形の第1板状体と、それら各々の幅方向の中央部に垂直に接続するウエブと称する矩形の第2板状体とからなり、市販のH形鋼を使用することができる。これら1対の第1板状体のうち、第1基台部10側のフランジの周縁部に、上記の角形フランジ形状の第2連結手段22が周設されることになる。なお、支持台21の強度を高めるため、
図3に示すように、ウエブ(第2板状体)の両面に、1対のフランジ(第1板状体)の対向面側同士を接続する複数本の矩形の補強板21aを設けるのが好ましい。この第2連結手段22には、上記の第1基台部10の角形フランジ形状の第1連結手段12に設けられたボルト孔に対応する位置に、厚み方向に貫通するボルト孔22aが設けられている。これにより、第1基台部10と第2基台部20とを着脱可能に締結することが可能になる。
【0024】
すなわち、水管群5に既に取り付けられた状態の第1基台部10に第2基台部20を結合する場合は、第1基台部10の第1連結手段12と第2基台部20の第2連結手段22とをそれらのボルト孔12a、22a同士が対向するように位置合わせした後、これらボルト孔12a、22aにボルトを挿通させてナットで締め付ければよい。また、第2基台部20を第1基台部10から取り外すときは、上記とは逆の手順を行なえばよい。なお、
図3には簡単のため第1連結手段12及びに第2連結手段22のコーナー部のボルト孔のみをボルト・ナットで締め付ける場合が図示されているが、全てのボルト孔をボルト・ナットで締め付けるのが好ましい。
【0025】
(3)被打撃体
上記の第2基台部20の支持台21を構成する1対のフランジ(第1板状体)のうち、第1基台部10に対向する側とは反対側のフランジの中央部に、被打撃体30が設けられている。この被打撃体30は、打撃機構40によって与えられる衝撃力を第2基台部20及び第1基台部10を介して水管群5に効果的に伝えることができるものであれば特に限定はないが、例えば
図10に示すように、打撃機構40によって打撃される円柱状の被打撃部分31a及びその被打撃面とは反対側から突出する円柱状の突出部分31bからなるヘッド部31と、複数のリブ32aで第2基台部20に接合されており、ヘッド部31をその打撃方向に往復動可能に支持する支持部32と、上記のヘッド部31の突出部分31bに外嵌させて被打撃部分31aと支持部32とで挟持させることで、打撃機構40による打撃時に弾性変形して振動時間を持続させる役割を担う皿バネ33とから構成するのが好ましい。
【0026】
(4)打撃機構
打撃機構40は、上記の被打撃体30のヘッド部31を安定的に打撃できるものであれば特に限定はないが、
図2及び3に示すように、圧縮エアーで駆動するエアーノッカー式の打撃装置を第2基台部20から立設する架台23に取り付けることで被打撃部30を効果的に打撃することができる。具体的には、第2基台部20の支持台21を構成する1対のフランジのうち、上記の被打撃体30が設けられているフランジには、被打撃体30をとり囲むように、架台23を構成する4本の支柱23aが立設しており、これら支柱23aの先端部に打撃機構40を固定する梁、枠体、矩形板材等の固定部23bが配設されている。この支柱23aの高さを適度な高さにすることで、非作動時はスプリングの付勢により本体内部に収納された状態にあるエアーノッカーのピストンが圧縮エアーの供給により本体内部から突出したとき、その先端部を被打撃体30のヘッド部31に良好に打撃させることができる。なお、打撃機構40にはハンマーが取り付けられたシャフトを回転させることでハンマーを重力により振り下ろして被打撃体30のヘッド部31を打撃するものでもよい。
【0027】
以上、本発明の実施形態の煙灰除去装置について自熔炉から排出される排ガスを熱回収する廃熱ボイラーに適用する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、上記と同様の水管群を有するボイラーであれば、本発明に係る煙灰除去装置を同様に適用することができる。例えば、銅製錬プラントの転炉から排出される排ガスを熱回収する廃熱ボイラーにおいても好適に適用することができる。
【実施例0028】
[実施例]
図2に示すような構造の煙灰除去装置6を33基用意し、これら全てを銅製錬プラントの自熔炉から発生する排ガスの廃熱回収を行なう廃熱ボイラーの水管壁に定期修理時に取り付け、次回の2年後の定期修理までの2年間に亘って該水管壁の水管群5をこれら煙灰除去装置6で定期的に打撃することで水管群5の表面に付着したダストを除去した。なお、第1基台部10の内側には、
図7~9に示すように四角筒状体11によって囲まれる領域内に位置する4本の水管にそれぞれ溶接される4枚の矩形板状のリブ11cを設けた。
【0029】
そして、2年経過後の定期修理時に、第2基台部20を第1基台部10から取り外して、第1基台部10と水管群5との接合状態を点検した。その結果、水管群5との溶接部分の一部に割れが認められたが、それ以外は溶接線の全長に亘るような割れや、水管群5から脱落するか脱落しそうな煙灰除去装置6はなかった。また、上記の溶接部分の一部の割れの補修においては、第1基台部10において第2基台部20との接続側の端部を開放することで、第1基台部10の四角筒状体11の内側にアクセスしやすく、極めて容易に補修することができた。
【0030】
[比較例]
比較のため、
図11に示すような実施例と同様の被打撃体130及び打撃機構140を備えたH型鋼からなる基台部120が、水管壁の水管群5を横断するように設けられている1対の櫛板状部材110に溶接されていること以外は上記の実施例の煙灰除去装置6と同様の比較例の煙灰除去装置106を33基用意し、これら全てを上記の実施例と同様の廃熱ボイラーの水管壁に取り付け、実施例と同様に2年間に亘って該水管壁の水管群5をこれら比較例の煙灰除去装置106で定期的に打撃することで水管群5の表面に付着したダストを除去した。なお、この比較例の煙灰除去装置106は、実施例の煙灰除去装置6のような第1基台部10がないので、1対の櫛板状部材110が互いに対向する側は基台部120との溶接を行なうことができなかった。よって、上側に取り付けた櫛板状部材110に対しては上側のみの隅肉溶接によって基台部120に片側溶接し、下側に取り付けた櫛板状部材110に対しては下側のみの隅肉溶接によって基台部120に片側溶接した。
【0031】
そして、2年経過後の定期修理時に、煙灰除去装置106と水管群との接合状態の点検を行った。その結果、ほぼ全ての溶接部分に割れが認められた。特に、33基のうちの11基においては、煙灰除去装置106が水管群から外れて脱落しており、それらを元の状態に復旧させるために、実施例に比べて多額の修理コストと長い作業時間を要した。